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JP2012254952A - 経皮吸収製剤 - Google Patents

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JP2012254952A JP2011128571A JP2011128571A JP2012254952A JP 2012254952 A JP2012254952 A JP 2012254952A JP 2011128571 A JP2011128571 A JP 2011128571A JP 2011128571 A JP2011128571 A JP 2011128571A JP 2012254952 A JP2012254952 A JP 2012254952A
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Kanji Takada
寛治 高田
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Abstract

【課題】目的物質の生物学的利用率が高い経皮吸収製剤を提供すること。
【解決手段】支持体と、該支持体上に複数形成された、体内溶解性かつ曳糸性の高分子物質からなる基剤と当該基剤に保持された目的物質とを有する円錐状又は角錐状の微細針とを、有する経皮吸収製剤であって、該支持体は硬質であり、該微細針は、先端部を有し目的物質を含む第1部分と底部を有し目的物質を含まない第2部分とを有し、該第1部分は、該経皮吸収製剤の投与時に体内に挿入される微細針の長さ以下の挿入方向長さを有する、経皮吸収製剤。
【選択図】図1

Description

本発明は、支持体と、該支持体上に複数形成された、目的物質を保持する微細針とを、有する経皮吸収製剤に関し、特に、支持体が硬質材料からなる上記経皮吸収製剤に関する。
薬物を高効率で経皮的に投与するための製剤技術として、微細針(マイクロニードル)が研究されている。微細針は、皮膚に刺しても痛みを感じないほどに微細化された針である。薬物を含む自己溶解型の微細針を皮膚から体内に挿入すると、微細針が自己溶解することにより、薬物が体内に投与される。
例えば、特許文献1には、体内溶解性かつ曳糸性の高分子物質を基剤として用いて微細針を形成することが記載されている。特許文献2には、上記微細針に含まれる目的物質の生物学的利用率(バイオアベイラビリティ)を向上させるために、微細針を体内挿入部分と押圧部分とに区分し、体内挿入部分のみに目的物質を保持させることが記載されている。
また、特許文献1及び2には、貼付剤シート等の支持体の上に上記微細針を複数形成した経皮吸収製剤保持シートも記載されている。
支持体と、支持体上に複数形成された、目的物質を保持する微細針とを、有する経皮吸収製剤において、支持体がシート状で柔軟性を有していると、微細針の先端方向は比較的自由に変化する。そのため、微細針を皮膚に接触させて加圧した場合に圧力の方向が微細針の挿入方向に一致し難く、皮膚に刺入されない微細針が多く発生する。
皮膚に刺入されない微細針が存在する場合、体内に投与される目的物質の量が減少し、結果として、目的物質の生物学的利用率が低下する。それゆえ、支持体は硬質材料から形成することが好ましい。
つまり、支持体が硬質であると、微細針の先端方向は揃い、一定に固定される。そのために、微細針を皮膚から刺入する際に、圧力の方向は微細針の挿入方向に一致し易く、皮膚に刺入されない微細針の数は減少する。
しかしながら、皮膚は柔軟性及び弾力性に富み、多数の微細針の方向が揃って固定されている場合、単に加圧するだけでは、微細針を皮膚に十分に深く刺入することは困難である。そのために、経皮吸収製剤の投与時に皮膚に刺入される微細針の刺入深度が浅くなり、体内に挿入されない微細針の部分が多く残ってしまう。
皮膚に刺入される微細針の刺入深度が浅い場合、体内に投与される目的物質の量が減少し、結果として、目的物質の生物学的利用率が低下する。また、体内に挿入されない微細針の部分が多く残ってしまい、微細針の体内に挿入されない部分に目的物が存在する場合も、その部分の目的物質は体内に投与されず、結果として、目的物質の生物学的利用率が低下する。
国際公開公報2006/080508 国際公開公報2009/066763
本発明は上記従来の問題を解決するものであり、その目的とするところは、目的物質の生物学的利用率が高い経皮吸収製剤を提供することにある。
本発明は、支持体と、該支持体上に複数形成された、体内溶解性かつ曳糸性の高分子物質からなる基剤と当該基剤に保持された目的物質とを有する円錐状又は角錐状の微細針とを、有する経皮吸収製剤であって、
該支持体は硬質であり、
該微細針は、先端部を有し目的物質を含む第1部分と底部を有し目的物質を含まない第2部分とを有し、
該第1部分は、該経皮吸収製剤の投与時に体内に挿入される微細針の長さ以下の挿入方向長さを有する、
経皮吸収製剤を提供する。
ある一形態においては、前記微細針は、100〜500μmの底部直径、及び100〜700μmの挿入方向長さを有し、30〜200本/cmの密度で支持体上に存在する。
ある一形態においては、前記第1部分は、微細針の先端部から233μm以下の挿入方向長さを有する。
ある一形態においては、前記支持体が、錠剤用賦形剤を打錠して得られたものである。
ある一形態においては、前記基剤を構成する物質が、コンドロイチン硫酸ナトリウム、デキストランおよびヒアルロン酸からなる群から選択される少なくとも一種を含む。
ある一形態においては、衝撃力が印加されて、微細針が皮膚に刺入される。
ある一形態においては、前記衝撃力は、1.77cmあたり5〜40Nの衝突圧により印加されるものである。
ある一形態においては、衝撃力が印加されて、微細針が皮膚に刺入され、その後、2次的加圧が行われて、微細針が皮膚内に刺入される。
ある一形態においては、前記2次的圧力が1.77cmあたり0.5〜2.5Nである。
本発明の経皮吸収製剤は、該経皮吸収製剤の投与時に体内に挿入される微細針の刺入深度が深く、また、目的物質は微細針の体内に挿入される部分に局在する。そのため、目的物質の高い生物学的利用率が達成される。
本発明の一実施形態である経皮吸収製剤の構造を示す部分斜視図である。 本発明の経皮吸収製剤に使用される微細針の一例を示す正面図である。 衝撃力を印加して皮膚に微細針を刺入する場合に、印加される速度、衝撃力と刺入深度との関係を示すグラフである。 in vitro で、衝撃力を印加して皮膚に微細針を刺入した後、更に2次的加圧を行って微細針を刺入する場合に、印加される衝撃力及び2次的加圧の圧力と刺入深度との関係を示すグラフである。 in vivo で、衝撃力を印加して皮膚に微細針を刺入した後、更に2次的加圧を行って微細針を刺入する場合に、印加される衝撃力及び2次的加圧の圧力と刺入深度との関係を示すグラフである。 先端部にインスリンを局在させた本発明の経皮吸収製剤およびインスリン溶液をラットに投与した後の血糖降下率の時間的推移を示すグラフである。
図1は、本発明の一実施形態である経皮吸収製剤の構造を示す部分斜視図である。この経皮吸収製剤は、支持体1と、該支持体上に複数形成された円錐状の微細針2を有している。
支持体1は微細針2を強固に固定することが可能な材料で構成される。支持体1は非水溶性である。支持体1は硬質であり、室温環境下で実質的に変形しない。また、支持体1は多孔性であり、微細針を成形する課程において、微細針の乾燥を妨げない。
好ましい支持体は、ポリエチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル及び塩素化ポリエチレン−スチレン樹脂等のプラスチックの多孔性板、及び非水溶性の錠剤用賦形剤から成る成形体である。
中でも好ましい支持体は非水溶性の錠剤用賦形剤から成る成形体である。生産性に優れ、滅菌などの医薬品製造プロセスに適するからである。錠剤用賦形剤は複数の成分を含有する組成物であってもよい。好ましい錠剤用賦形剤としては、酢酸セルロース、結晶セルロース、セルロース誘導体、キチン及びキチン誘導体などが挙げられる。
錠剤用賦形剤から成る成形体は錠剤と同様にして製造すればよい。例えば、錠剤用賦形剤を打錠機の臼に入れ、杵を用いて適当な打錠圧で打錠する。支持体の寸法は、臼の直径、錠剤用賦形剤の充填量及び打錠圧を増減することにより、適宜調節される。
支持体の形状は、例えば、直径が5〜50mm、好ましくは10〜35mm、厚さ1〜10mm、好ましくは2〜5mmの円盤状である。錠剤用賦形剤で作成した支持体の硬さは、皮膚に経皮吸収製剤の微細針を突刺した場合に実質的に変形せず、また、衝撃力を印加して皮膚に経皮吸収製剤の微細針を突刺した場合に崩壊しない程度であれば、特に限定されない。
外径2.0cm、内径1.2cm、高さ2.0cmの金属製の円筒の上に円盤状錠剤の支持体を置き、ディジタルフォースゲージ(FGP−50、日本電産シンポ工業)の先端に円錐状のアタッチメントを取り付けて崩壊強度を測定した場合、ある一形態では、支持体の崩壊強度は30〜50Nである。この場合、測定に使用した試料の厚さは2mmである。
図2は、本発明の経皮吸収製剤に使用される微細針の一例を示す正面図である。微細針は、尖っており、皮膚を貫くことができる先端部3を有する。また、微細針は、幅広であり、支持体に固着される底部4を有する。微細針の形状は略円錐状であってよく、略角錐状であってもよい。
微細針は、100〜500μm、好ましくは150〜400μm、より好ましくは200〜350μmの底部直径、及び100〜700μm、好ましくは150〜600μm、より好ましくは200〜550μmの挿入方向長さを有する。微細針の寸法がこの範囲外であると、強度が不足したり、刺入性が低下したりする。
また、微細針は、30〜200本/cm、好ましくは60〜160本/cm、より好ましくは80〜140本/cmの密度で支持体上に存在する。微細針の密度が30本未満であると目的物質の投与量が不十分になり易い。また、微細針の密度が200本を超えると微細針の刺入時における抵抗が増大し、刺入深度が浅くなる。
微細針は、第1部分21と第2部分22を有する。第1部分は先端部3を有し、第2部分は底部4を有する。また、第1部分と第2部分は境界面5を形成する。第1部分と第2部分の境界面は微細針の底面と略平行、又は実質的に平行である。
微細針の第1部分は投与の目的物質を含む。微細針の第2部分は目的物質を含まない。そして、第1部分は、該経皮吸収製剤の投与時に体内に挿入される微細針の長さ以下の挿入方向長さを有する。第1部分の挿入方向長さが体内に挿入される微細針の長さを超えると、超過部分に存在する目的物質は体内に投与されず、結果として、目的物質の生物学的利用率が低下する。
具体的には、第1部分の挿入方向長さは233μm以下である。好ましい実施形態では、経皮吸収製剤の投与時に微細針を233μmを超える深さまで刺入させることは困難である。例えば、第1部分の挿入方向長さは、190μm以下、又は160μm以下であってもよい。第一部分の長さの下限値は考慮する必要はない。例えば投与量が極端に少ない薬物であれば、第一部分の長さは、10μmでも構わない。
本発明の経皮吸収製剤は、例えば、鋳型を用いて微細針を形成し、次いで、形成された微細針を支持体に固定することにより製造される。鋳型としては、微細針の形状及び配置に対応する穴が設けられた板状材料を用いる。板状材料の材質には、フッ素樹脂、シリコン樹脂、ABS樹脂等が用いられる。
まず、微細針の第1部分の原料である基剤、目的物質及び水を混合して、第1原料混合物を調製する。基剤としては体内溶解性かつ曳糸性の高分子物質を使用する。体内溶解性高分子を用いることで目的物質の体内での放出効率が向上する。また、曳糸性高分子を用いることで微細針の強度が高くなり、皮膚に対する刺入性が向上する。
体内溶解性かつ曳糸性の高分子物質としては、洩糸性を有する多糖類、タンパク質、ポリビニルアルコール、カルボキシビニルポリマー、及びポリアクリル酸ナトリウムからなる群より選ばれた少なくとも1つの物質を用いる。なお、これらの高分子物質については、1種類だけを用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。
好ましくは、前記洩糸性の多糖類は、コンドロイチン硫酸ナトリウム、デキストラン、デキストラン硫酸、ヒアルロン酸、シクロデキストリン、ヒドロキシプロピルセルロース、アルギン酸、アガロース、プルラン、及びグリコーゲンおよびそれらの誘導体より選ばれた少なくとも1つの物質である。
0031
好ましくは、前記洩糸性のタンパク質は、血清アルブミン、血清α酸性糖タンパク質、コラーゲン、低分子コラーゲン及びゼラチンおよびそれらの誘導体より選ばれた少なくとも1つの物質である。
特に好ましい体内溶解性かつ曳糸性の高分子物質としては、コンドロイチン硫酸ナトリウム、デキストラン及びヒアルロン酸等が挙げられる。
目的物質としては、上記高分子物質に溶解又は分散して保持されうる物質であれば特に限定されない。例えば、高分子物質、低分子物質、化学物質、生理活性物質、タンパク質(組換え型または天然型)、ペプチド、多糖類など、全ての物質が目的物質として採用可能である。好ましくは、ペプチド、タンパク質、核酸、又は多糖類である。目的物質は、細胞、薬物、ワクチン、栄養素、又は化粧品用成分であってもよい。
目的物質が薬物やワクチン(ワクチン用抗原)の場合には、本発明の体表適用製剤を疾病の治療、予防、診断等に使用することができる。また、目的物質が化粧品用成分の場合には、皮膚老化の予防や改善、アンチエイジング、皮膚の美白維持、等の目的に使用できる。栄養素には、例えば健康食品・機能性食品成分が含まれる。
次いで、第1原料混合物を鋳型に載せ、要すれば、スキジー等の塗布用具又は塗布装置を用いて塗布圧をかけて、これを鋳型に形成された穴の中に充填する。充填を確実に行うために、遠心分離機等を用いて鋳型に遠心力を印加してもよい。
余分な第1原料混合物を除去した後、穴に充填された第1原料混合物を乾燥させる。乾燥は、目的物質の変質等を防止するために、50℃以下、好ましくは室温以下の温度で行われる。乾燥後、第1原料混合物の体積は減少する。
この現象を利用して、微細針の第1部分の挿入方向長さを調節することができる。すなわち、第1原料混合物を調製する際、第1原料混合物の固形分濃度は、第1原料混合物が鋳型の中で乾燥した後に、微細針の第1部分の挿入方向長さに対応する高さまで第1原料混合物の固形分が残存するのに適当な濃度に調節する。
次に、微細針の第2部分の原料である基剤及び水を混合して、第2原料混合物を調製する。次いで、乾燥した第1原料混合物が充填されている鋳型に第2原料混合物を載せ、要すれば、塗布用具又は塗布装置を用いて、これを鋳型に形成された穴の中に充填する。第2原料混合物が乾燥する前に、第2原料混合物に接触するように鋳型の上に支持体を重ねる。支持体は多孔性であり、第2混合物と接触して第二混合物の成分がアンカー効果で支持体内部の細孔へ侵入することにより強固に接合するとともに第2混合物に含まれる水を吸収し、放出することができる。充填を確実に行うために、遠心分離機等を用いて鋳型に遠心力を印加してもよい。次いで、穴に充填された第2原料混合物を乾燥させる。乾燥は、目的物質の変質等を防止するために、50℃以下、好ましくは室温以下の温度で行われる。その後、支持体を鋳型から剥がすことにより、本発明の経皮吸収製剤が得られる。
得られた経皮吸収製剤はヒト又は動物の体内に目的物質を投与するために使用される。投与方法は、まず、経皮吸収製剤の微細針側の面(以下「前面」という。)を皮膚に向け、皮膚に対して所定の衝撃力を印加して、微細針を皮膚から体内へ刺入させる。皮膚は弾力性及び柔軟性に富み、復元力を有しているので、衝撃直後に微細針を離すと抜けてしまう。
衝撃力の印加は経皮吸収製剤の前面を高速で皮膚に衝突させることにより行うことができる。経皮吸収製剤を皮膚に衝突させる圧力(衝突圧)は、5〜40N、好ましくは10〜35N、より好ましくは15〜30Nである。経皮吸収製剤の衝突圧が15N未満であると微細針の刺入深度が浅くなる。また、経皮吸収製剤の衝突圧を35Nを超えて増大させても微細針の刺入深度はそれほど増さない。
衝突圧は、皮膚に衝突する部分の面積が1.77cmの経皮吸収製剤チップを使用して測定したため、表面積1.77cmあたりの力である。
衝突圧は、例えば、経皮吸収製剤を皮膚に衝突させる速度(衝突速度)を増減することにより、調節することができる。ある一形態においては、衝突速度は0.5から4m/秒、好ましくは1から3.5m/秒、より好ましくは2から3m/秒である。
経皮吸収製剤を皮膚に衝突させる方法は特に制限されない。例えば、棒の先端に経皮吸収製剤の微細針が形成されていない側の面(以下「背面」という。)を固定し、棒が前後に摺動しうるサイズの適当なガイド筒に入れ、経皮吸収製剤の前面を皮膚に向けて棒を高速で駆動すればよい。棒の駆動は、例えば、バネ及びゴム等の弾性体を用いて行うことができる。
衝撃力を印加することにより微細針を皮膚に刺入した後、経皮吸収製剤の背面から更に加圧する(2次的加圧)。そうすることで、刺入された微細針の深度がより深くなる。また、挿入された微細針が押し戻されて抜けることなく体内に維持される。つまり、微細針の第1部分全体が体内に挿入された状態が維持される。その結果、目的物質の生物学的利用率が向上する。
2次的加圧の圧力は0.5から2.5N、好ましくは1から2.5N、より好ましくは1.5から2.5Nである。この圧力が0.1N未満であると挿入された微細針が押し戻されて微細針の第1部分が対外に出てしまう可能性がある。また、この圧力を2.5Nを超えて増大させると皮膚への痛みなどの負担が生じるので好ましくない。
尚、2次的加圧の圧力は、皮膚に接触する部分の面積が1.77cmの経皮吸収製剤チップを使用して測定したため、面積1.77cmあたりの力である。
また、2次的加圧の時間は1〜5分、好ましくは2〜3分である。加圧時間が1分未満であると微細針の刺入深度はさして増大しない。また、3分を超えて加圧しても微細針の刺入深度は時間に比例して深くはならず、ほぼ頭打ちとなる。
以下の実施例により、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
参考例1
(衝突力を印加する突刺試験)
直径1.5センチメートルの円形内に深さ約500マイクロメートル、開口部直径約300マイクロメートルの逆円錐状細孔225個を有するシリコン樹脂製のメス型を準備した。また、コンドロイチン硫酸ナトリウム100mgに精製水300マイクロリットルを加えて粘調性濃厚液を調製した。この粘調性濃厚液をメス型の穴の上に塗布し、約3.0MPaの加圧下でスキジーにて挿入した後、卓上遠心分離器を用いてメス型ごと回転させ、遠心力を利用して加重下、充填した。乾燥後、コンドロイチン硫酸ナトリウム100mgに精製水300マイクロリットルを加えて調製した粘調性濃厚液をメス型上に塗布した。単発打錠器の臼に錠剤用酢酸セルロースを入れ、約10kNの打錠圧で作成した直径1.5cm、厚さ約2mmの円形の錠剤基盤をこれに被せ、乾燥、硬化させた。その後、基盤をメス型から剥がして、目的物質を含まない刺入試験用経皮吸収製剤を得た。この刺入試験用経皮吸収製剤の皮膚に接触する側の面(前面)の面積は1.77cmである。
衝突力を印加して、in vitroでラットの皮膚に、得られた経皮吸収製剤の微細針を刺入する試験を行った。市販のディスポーザブル注射器「テルモシリンジss−20ESz」を準備し、その注射筒の先端を開放した。次いで、注射棒の先端に経皮吸収製剤の背面を固定し、先端を開放した注射筒に入れた。経皮吸収製剤の前面を剥離したラットの皮膚に向けて、ゴムを用いて注射棒を駆動することにより、微細針をラットの皮膚に衝突させた。その際、衝突圧を変化させて、微細針の刺入深度がどのように変化するかを測定した。その結果を図3に示す。
衝突圧を8.4Nから21.3Nまで上げたところ、刺入深度は20.8μmから63.2μmまで増大した。しかし、衝突圧をさらに40.2Nまで上げたが、刺入深度が増大する効果はそれほど認められなかった。
また、ヒトの皮膚を用いて同様の試験を行ったが、ラットとヒトの皮膚の間に有意差は認められなかった。さらに、ペントバルビタール麻酔下、ラットの腹部除毛皮膚に経皮吸収製剤を衝突させ、in vivo実験にて刺入深度を測定したところ、in vitro刺入試験と同様の結果が得られた。
参考例2
(in vitro 2次的加圧試験)
参考例1と同様にして刺入試験用経皮吸収製剤を製造し、衝突圧21.3Nにて、in vitroで微細針をラットおよびヒトの皮膚に刺入した。その後、引き続いて経皮吸収製剤の背面を加圧した(2次的加圧)。その際、圧力及び加圧時間を変化させて、微細針の刺入深度がどのように変化するかを測定した。その結果を図4に示す。
2次的加圧の圧力を強くすると刺入深度は比例して深くなった。また、2次的加圧時間を1分間から5分間へと延ばすと、刺入深度は深くなった。なお、ラットとヒトの皮膚の間に有意差は認められなかった。
参考例3
(in vivo 2次的加圧試験)
参考例1と同様にして刺入試験用経皮吸収製剤を製造し、衝突圧21.3Nにて、ペントバルビタール麻酔下、ラットの腹部除毛皮膚に経皮吸収製剤を衝突させ、in vivoで微細針をラットの皮膚に刺入した。その後、引き続いて経皮吸収製剤の背面を加圧した(2次的加圧)。その際、圧力及び加圧時間を変化させて、微細針の刺入深度がどのように変化するかを測定した。その結果を図5に示す。
参考例2と同様、2次的加圧力および加圧時間を1,2,3分間と増すにつれ皮膚内への刺入深度は深くなることが認められた。しかし、3分間以上の加圧をおこなっても加圧時間に比例したさらなる刺入深度の増大は認められなかった。
参考例1〜3の結果、経皮吸収製剤に21.3N〜40.2Nの衝突圧をかけて皮膚に刺入させ、その後、2次的加圧として2.5Nの圧力で3分間加重することにより、微細針の先端から212μmの長さを、また、10分間加重することにより、微細針の先端から233μmの長さを皮膚から体内へ挿入することが可能となった。
従って、マイクロニードルの先端から233μmの部分に薬物を局在させれば、目的物質の生物学的利用率として100%の値を達成することが可能になる。
実施例
直径1.5センチメートルの円形内に深さ約500マイクロメートル、開口部直径約300マイクロメートルの逆円錐状細孔225個を有するシリコン樹脂製のメス型を準備した。また、インスリン10mg、エバンスブルー0.2mgおよびコンドロイチン硫酸ナトリウム10mgを秤量した後、70および75マイクロリットルの脱気精製水を各々加えて、粘調性の濃厚液をそれぞれ調製した。この粘調性濃厚液をメス型の穴の上に塗布し、約3.0MPaの加圧下でスキジーにて挿入した後、卓上遠心分離器を用いてメス型ごと回転させ、遠心力を利用して加重下、充填した。乾燥後、コンドロイチン硫酸ナトリウム440mgに精製水400マイクロリットルを加えて作成した粘調性濃厚液をメス型上に塗布した。単発打錠器の臼に錠剤用酢酸セルロースを入れ、約10kNの打錠圧で作成した直径約1.5cm、厚さ約2mmの錠剤基盤をこれに被せ、乾燥・硬化した。その後、基盤をメス型から剥がして、目的物質としてインスリンを含有する微細針を有する経皮吸収製剤2種を得た。
作成した2種の2層マイクロニードル・アレイ・チップ経皮吸収製剤の微細針をビデオマイクロスコープ(VH−5500、キーエンス社、)で観察し、青色に着色した第1部分の先端からの長さを測定した。181.2±4.2マイクロメートルおよび209.5±3.9マイクロメートルであった。
両製剤中のインスリン含量は1.58±0.03及び1.72±0.13 IUであった。ラットの除毛腹部皮膚に投与することにより有効性の検証を行った結果を図4に示す。対照製剤としてはインスリン溶液をラットに1.0単位を皮下注射により投与した。ラットの循環血漿中グルコース濃度の経時的な推移の測定結果を図6に示す。●は注射剤、○および△は約180ミクロンおよび約210ミクロン充填長の2層マイクロニードル・アレイ・チップに関するデータである。インスリンのマイクロニードル・アレイ・チップ製剤および注射剤をラットに投与した後における血糖降下面積の値を比較したところ、薬理学的アベイラビリティ(RPA)は各々98.07±0.8%及び98.08±3.1%となった。
1…支持体、
2…微細針、
21…第1部分、
22…第2部分、
3…先端部、
4…底部、
5…境界面。

Claims (9)

  1. 支持体と、該支持体上に複数形成された、体内溶解性かつ曳糸性の高分子物質からなる基剤と当該基剤に保持された目的物質とを有する円錐状又は角錐状の微細針とを、有する経皮吸収製剤であって、
    該支持体は硬質であり、
    該微細針は、先端部を有し目的物質を含む第1部分と底部を有し目的物質を含まない第2部分とを有し、
    該第1部分は、該経皮吸収製剤の投与時に体内に挿入される微細針の長さ以下の挿入方向長さを有する、
    経皮吸収製剤。
  2. 前記微細針は、100〜500μmの底部直径、及び100〜700μmの挿入方向長さを有し、30〜200本/cmの密度で支持体上に存在する請求項1に記載の経皮吸収製剤。
  3. 前記第1部分は、微細針の先端部から233μm以下の挿入方向長さを有する請求項1又は2に記載の経皮吸収製剤。
  4. 前記支持体が、錠剤用賦形剤を打錠して得られたものである請求項1〜3のいずれか一項に記載の経皮吸収製剤。
  5. 前記基剤を構成する物質が、コンドロイチン硫酸ナトリウム、デキストラン及びヒアルロン酸からなる群から選択される少なくとも一種を含む請求項1〜4のいずれか一項に記載の経皮吸収製剤。
  6. 衝撃力が印加されて、微細針が皮膚に刺入される請求項1〜5のいずれか一項に記載の経皮吸収製剤。
  7. 前記衝撃力は、1.77cmあたり5〜40Nの衝突圧により印加されるものである請求項6に記載の経皮吸収製剤。
  8. 衝撃力が印加されて、微細針が皮膚に刺入され、その後、2次的加圧が行われて、微細針が皮膚に刺入される請求項1〜5のいずれか一項に記載の経皮吸収製剤。
  9. 前記2次的圧力が1.77cmあたり0.5〜2.5Nである請求項8に記載の経皮吸収製剤。
JP2011128571A 2011-06-08 2011-06-08 経皮吸収製剤 Pending JP2012254952A (ja)

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