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JP2012193088A - リチウムイオン電池用正極活物質の製造法 - Google Patents

リチウムイオン電池用正極活物質の製造法 Download PDF

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弘樹 山下
Shiho Ishihara
四穂 石原
Tsutomu Suzuki
務 鈴木
Kiyoshi Kanemura
聖志 金村
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Abstract

【課題】原料として塩化物を使用することなく、水熱反応により、リチウムイオン電池用正極活物質として有用なLi2FeSiO4等のオリビン型シリケート化合物を製造する方法を提供する。
【解決手段】リチウム化合物、ケイ酸化合物及び(R)2M(式中、Rは有機酸残基を示し、MはFe、Ni、Co又はMnを示す)で表される有機酸遷移金属塩を含有する塩基性水分散液を水熱反応させることを特徴とする、Li2MSiO4(式中、MはFe、Ni、Co及びMnから選ばれる1種又は2種以上を示す)で表されるオリビン型シリケート化合物の製造法。
【選択図】なし

Description

本発明は、リチウムイオン電池用正極活物質の製造法に関する。
リチウムイオン電池は、非水電解質電池の1種であり、携帯電話、デジタルカメラ、ノートPC、ハイブリッド自動車、電気自動車等広い分野に利用されている。リチウムイオン電池は、正極材料としてリチウム金属酸化物を用い、負極材料としてグラファイトなどの炭素材を用いるものが主流となっている。
この正極材料としては、コバルト酸リチウム(LiCoO2)、マンガン酸リチウム(LiMnO2)、リン酸鉄リチウム(LiFePO4)、ケイ酸鉄リチウム(Li2FeSiO4)等が知られている。このうち、LiFePO4やLi2FeSiO4等は、オリビン構造を有し、高容量のリチウムイオン電池用正極材料として有用である。
Li2FeSiO4等のケイ酸鉄リチウム系正極材料の製造法としては、Li源、鉄源及びケイ酸源の混合物を粉砕し、500〜900℃で焼成するという固相法が一般的である(特許文献1、2)。しかし、固相法では、不活性ガス雰囲気での焼成と粉砕を行う必要があり、複雑な操作が必要であるとともに、粒径や結晶度を制御することが困難である。
これに対し、非特許文献1及び2には、Li2Mn1-yFeySiO4(y=0〜1)を水熱合成で得られる旨の記載がある。
特開2001−266882号公報 特開2002−198050号公報
GS Yuasa Technical Report 2009年6月、第6巻、第1号、p21−26 R.Dominiko et al,Journal of Power Sources 184(2008),p462−468
しかしながら、リチウム源、鉄源及びシリケート源の3者を水に混合し、その混合液をそのまま水熱反応に付してもLi2FeSiO4の単一相は得られず、Fe3Si24(OH)4等が副生することが判明した。
また、非特許文献2にいては、Fe源としてFeCl2を用いており、反応装置の腐食等の問題がある。
従って、本発明の課題は、原料として塩化物を使用することなく、水熱反応により、リチウムイオン電池用正極活物質として有用なLi2FeSiO4等のオリビン型シリケート化合物を製造する方法を提供することにある。
そこで本発明者は、Fe源等の遷移金属源として有機酸遷移金属塩を採用し、当該有機酸遷移金属塩と、リチウム源と、ケイ酸源とを塩基性水分散液としておき、次いで水熱反応を行えば、副反応が生じることなく、純度の高い粒径の小さい均一なオリビン型シリケート化合物が得られることを見出した。さらに、得られたオリビン型シリケート化合物をカーボン担持して焼成して得られた材料を正極材料として用いたリチウムイオン電池は優れた電池特性を有することを見出した。
すなわち、本発明は、リチウム化合物、ケイ酸化合物及び(R)2M(式中、Rは有機酸残基を示し、MはFe、Ni、Co又はMnを示す)で表される有機酸遷移金属塩を含有する塩基性水分散液を水熱反応させることを特徴とする、Li2MSiO4(式中、MはFe、Ni、Co及びMnから選ばれる1種又は2種以上を示す)で表されるオリビン型シリケート化合物の製造法を提供するものである。
また、本発明は、上記の水熱反応で得られたオリビン型シリケート化合物にカーボン担持し、次いで焼成することを特徴とする、Li2MSiO4(Mは前記と同じ)で表されるオリビン型シリケート化合物を含有するリチウムイオン電池用正極活物質の製造法を提供するものである。
さらに本発明は、上記の正極活物質を含む正極を有するリチウムイオン電池を提供するものである。
本発明方法によれば、水熱反応により微細なオリビン型シリケート化合物が高純度で効率良く得られる。得られたオリビン型シリケート化合物を用いれば、優れた電池特性を有するリチウムイオン電池が得られる。
実施例1及び比較例1で得られた凍結乾燥粉末のX線回折図を示す。 実施例1及び比較例1で得られた正極活物質を用いた電池の4サイクル目の放電容量を示す。 実施例1で得られた正極活物質を用いた電池の充放電曲線を示す。
本発明は、Li2MSiO4(式中、MはFe、Ni、Co又はMnから選ばれる1種又は2種以上を示す)で表されるオリビン型シリケート化合物の製造法である。当該オリビン型シリケート化合物の具体例としては、Li2FeSiO4、Li2NiSiO4、Li2CoSiO4、Li2MnSiO4、Li2(Fe)m(Mn)1-mSiO4(0<m<1である)等が挙げられる。このうち、原料コストの点からLi2FeSiO4、Li2MnSiO4が好ましく、Li2FeSiO4が特に好ましい。
本発明に用いられるリチウム化合物としては、水酸化リチウム(例えばLiOH・H2O)、炭酸リチウム(Li2CO3)、硫酸リチウム、酢酸リチウムが挙げられるが、水酸化リチウム、炭酸リチウムが特に好ましい。
ケイ酸化合物としては、反応性のあるシリカ化合物であれば特に限定されず、非晶質シリカ、Na4SiO4(例えばNa4SiO4・H2O)が好ましい。このうちNa4SiO4を用いた場合、水分散液が塩基性になるので、より好ましい。
本発明においては、遷移金属(M)源として、有機酸遷移金属塩((R)2M)を用いて水熱反応を行う点に特徴がある。通常、有機酸塩は固相法に用いられる原料であり、水熱反応に用いることにより副反応が抑制できることは全く予想外であった。遷移金属としては前記と同じものが用いられる。Rで示される有機酸としては、炭素数1〜20の有機酸が好ましく、炭素数2〜12の有機酸がより好ましい。より具体的な有機酸としては、シュウ酸、フマル酸等のジカルボン酸、乳酸等のヒドロキシカルボン酸、酢酸等の脂肪酸が挙げられる。
本発明におけるSi及びLiは、遷移金属に対してモル比で2倍以上用いることが好ましく、Si:Li:Mが1:1:2.5〜1:1:3程度がより好ましい。
水分散液中のリチウム化合物の濃度は、0.30〜3.00mol/lが好ましく、さらに1.00〜1.50mol/lが好ましい。また、ケイ酸化合物の濃度は、0.15〜1.50mol/lが好ましく、さらに0.50〜0.75mol/lが好ましい。また有機酸遷移金属塩の濃度は0.15〜1.50mol/lが好ましく、さらに0.50〜0.75mol/lが好ましい。
また、水分散液中には、必要により酸化防止剤を添加してもよく、酸化防止剤としては、ハイドロサルファイトナトリウム(Na224)、アンモニア水、亜硫酸ナトリウム等が使用できる。水分散液中の酸化防止剤の含有量は、多量に添加するとオリビン型シリケート化合物の生成を抑制してしまうため、遷移金属に対して等モル量以下が好ましく、遷移金属に対してモル比で0.5以下がさらに好ましい。
これらの成分の水分散液は、塩基性とするのが副反応を防止し、ケイ酸化合物を溶解するうえで重要である。水分散液のpHは、塩基性であればよいが、12.0〜13.5であるのが副反応(Fe34の生成)の防止、ケイ酸化合物の溶解性及び反応の進行の点で特に好ましい。該水分散液のpHの調整は、塩基、例えば、水酸化ナトリウムを添加することにより行ってもよいが、ケイ酸化合物としてNa4SiO4を用いるのが特に好ましい。
前記リチウム化合物、ケイ酸化合物及び有機酸遷移金属塩の添加順序は特に限定されない。また、大気条件下でもよい。
本発明においては、次に前記水分散液を水熱反応に付す。水熱反応は、100℃以上であればよく、130〜180℃が好ましく、さらに140〜160℃が好ましい。水熱反応は耐圧容器中で行うのが好ましく、130〜180℃で反応を行う場合この時の圧力は0.3〜0.9MPaとなり、140〜160℃で反応を行う場合の圧力は0.3〜0.4MPaとなる。水熱反応時間は1〜24時間が好ましく、さらに3〜12時間が好ましい。
当該水熱反応により、Li2MSiO4(Mは前記と同じ)が高収率で得られる。また、得られたLiMSiO4の平均粒径は10〜100nmとなり、その結晶度も高い。
得られたLi2MSiO4は、ろ過後、乾燥することにより単離できる。乾燥手段は、凍結乾燥、真空乾燥が用いられる。
得られたLi2MSiO4は、カーボン担持し、次いで焼成することにより、リチウムイオン電池用正極活物質とすることができる。カーボン担持は、Li2MSiO4に常法により、グルコース、フルクトース、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、サッカロース、デンプン、デキストリン、クエン酸等の炭素源及び水を添加し、次いで焼成すればよい。焼成条件は、不活性ガス雰囲気下又は還元条件下に400℃以上、好ましくは400〜800℃で10分〜3時間、好ましくは0.5〜1.5時間行うのが好ましい。かかる処理によりLi2MSiO4表面にカーボンが担持された正極活物質とすることができる。炭素源の使用量は、Li2MSiO4 100質量部に対し、炭素源に含まれる炭素として3〜15質量部が好ましく、炭素源に含まれる炭素として5〜10質量部がさらに好ましい。
得られた正極活物質は、放電容量の点で優れており、リチウムイオン電池の正極材料として有用である。本発明の正極活物質を適用できるリチウムイオン電池としては、リチウムイオン二次電池であればよく、正極と負極と電解液とセパレータを必須構成とするものであれば特に限定されない。
ここで、負極については、リチウムイオンを充電時には吸蔵し、かつ放電時には放出することができれば、その材料構成で特に限定されるものではなく、公知の材料構成のものを用いることができる。たとえば、リチウム金属、グラファイト又は非晶質炭素等の炭素材料等である。そしてリチウムを電気化学的に吸蔵・放出し得るインターカレート材料で形成された電極、特に炭素材料を用いることが好ましい。
電解液は、有機溶媒に支持塩を溶解させたものである。有機溶媒は、通常リチウム二次電池の電解液の用いられる有機溶媒であれば特に限定されるものではなく、例えば、カーボネート類、ハロゲン化炭化水素、エーテル類、ケトン類、ニトリル類、ラクトン類、オキソラン化合物等を用いることができる。
支持塩は、その種類が特に限定されるものではないが、LiPF6、LiBF4、LiClO4及びLiAsF6から選ばれる無機塩、該無機塩の誘導体、LiSO3CF3、LiC(SO3CF32及びLiN(SO3CF32、LiN(SO2252及びLiN(SO2CF3)(SO249)から選ばれる有機塩、並びに該有機塩の誘導体の少なくとも1種であることが好ましい。
セパレータは、正極及び負極を電気的に絶縁し、電解液を保持する役割を果たすものである。たとえば、多孔性合成樹脂膜、特にポリオレフィン系高分子(ポリエチレン、ポリプロピレン)の多孔膜を用いればよい。
次に実施例を挙げて本発明を詳細に説明する。
実施例1
LiOH・H2O 4.20g(0.1mol)、非晶質シリカ1.50g(0.025mol)、シュウ酸鉄(FeC24・2H2O)5.00g(0.025mol)に超純水75cm3を加えて混合した(この時のpHは約12)。得られた混合液をオートクレーブに投入し、140℃で48hr水熱反応を行った。反応液をろ過後、凍結乾燥した。凍結乾燥(約12時間)して得られた粉末4.2gにポリビニルアルコール(炭素濃度として3%)及び超純水10cm3を加え、還元雰囲気下で700℃で1hr焼成した。
比較例1
LiOH・H2O 8.20g(0.2mol)、非晶質シリカ3.00g(0.05mol)及び超純水100cm3を混合した。一方、FeCl2・4H2O 3.98g(0.2mol)、アスコルビン酸0.59g(0.0033mol)及び超純水50cm3を混合した。両混合液を混合し、実施例1と同様に水熱反応(150℃、16hr)を行い、得られた反応液をろ過し、凍結乾燥(12時間)した。得られた粉末を実施例1と同様にカーボン担持焼成した。
試験例1
実施例1及び比較例1で得られた凍結乾燥粉末のX線回折を行った。得られたX線回折図を図1に示す。図1から明らかなように、比較例1で得られた粉末は、Fe3Si25(OH)4を副生していた。これに対し、実施例1で得られた粉末はLi2FeSiO4の単一相であり、高純度であることが判明した。
試験例2
実施例1及び比較例1で得られた焼成物を用い、リチウムイオン二次電池の正極を作製した。実施例1及び比較例1で得られた焼成物、ケッチェンブラック(導電剤)、ポリフッ化ビニリデン(粘結剤)を重量比75:15:10の配合割合で混合し、これにN−メチル−2−ピロリドンを加えて充分混練し、正極スラリーを調製した。正極スラリーを厚さ20μmのアルミニウム箔からなる集電体に塗工機を用いて塗布し、80℃で12時間の真空乾燥を行った。その後、φ14mmの円盤状に打ち抜いてハンドプレスを用いて16MPaで2分間プレスし、正極とした。
次いで、上記の正極を用いてコイン型リチウムイオン二次電池を構築した。負極には、φ15mmに打ち抜いたリチウム箔を用いた。電解液には、エチレンカーボネート及びエチルメチルカーボネートを体積比1:1の割合で混合した混合溶媒に、LIPF6を1mol/lの濃度で溶解したものを用いた。セパレータには、ポリプロピレンなどの高分子多孔フィルムなど、公知のものを用いた。これらの電池部品を露点が−50℃以下の雰囲気で常法により組み込み収容し、コイン型リチウム二次電池(CR−2032)を製造した。
製造したリチウムイオン二次電池を用いて定電流密度での充放電を4サイクル行った。このときの充電条件は電流0.1CA(33mA/g)、電圧4.5Vの定電流定電圧充電とし、放電条件は電流0.1CA、終止電圧1.5Vの定電流放電とした。温度は全て30℃とした。
得られた4サイクル目の放電容量を図2に示す。また、実施例1の正極材で構築した電池の充放電曲線を図2に示す。
図2及び図3より、本発明の正極材料を用いたリチウムイオン電池は優れた電池特性を有することがわかる。

Claims (7)

  1. リチウム化合物、ケイ酸化合物及び(R)2M(式中、Rは有機酸残基を示し、MはFe、Ni、Co又はMnを示す)で表される有機酸遷移金属塩を含有する塩基性水分散液を水熱反応させることを特徴とする、Li2MSiO4(式中、MはFe、Ni、Co及びMnから選ばれる1種又は2種以上を示す)で表されるオリビン型シリケート化合物の製造法。
  2. リチウム化合物が、水酸化リチウム、炭酸リチウム、硝酸リチウム、酢酸リチウム、硫酸リチウムから選ばれるものである請求項1記載のオリビン型シリケート化合物の製造法。
  3. ケイ酸化合物が、非晶質シリカ及びNa4SiO4から選ばれるものである請求項1又は2記載のオリビン型シリケート化合物の製造法。
  4. 有機酸遷移金属塩が、炭素数1〜20有機酸遷移金属塩である請求項1〜3のいずれか1項記載のオリビン型シリケート化合物の製造法。
  5. 塩基性水分散液のpHが、12.0〜13.5である請求項1〜4のいずれか1項記載のオリビン型シリケート化合物の製造法。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項記載の水熱反応終了後、得られたオリビン型シリケート化合物にカーボン担持し、次いで焼成することを特徴とする、Li2MSiO4(Mは前記と同じ)で表されるオリビン型シリケート化合物を含有するリチウムイオン電池用正極活物質の製造法。
  7. 請求項6記載の正極活物質を含む正極を有するリチウムイオン電池。
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