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JP2012154125A - 温度プレストレス導入コンクリートのひび割れ抑制方法 - Google Patents

温度プレストレス導入コンクリートのひび割れ抑制方法 Download PDF

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JP2012154125A JP2011015565A JP2011015565A JP2012154125A JP 2012154125 A JP2012154125 A JP 2012154125A JP 2011015565 A JP2011015565 A JP 2011015565A JP 2011015565 A JP2011015565 A JP 2011015565A JP 2012154125 A JP2012154125 A JP 2012154125A
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Abstract

【課題】 温度プレストレスの導入過程でのひび割れの発生を抑制する。
【解決手段】 合成桁橋の鋼桁を予熱し、その上側に、コンクリート床版を形成するためのコンクリートを打設する。打設されたコンクリートがセメントの水和熱により温度上昇してピーク温度に達する時点よりも後で、鋼桁の予熱を継続すると仮定した条件の下で解析によって求められるひび割れ指数の経時変化(線d)が極小値をとるよりも前の期間に、鋼桁の実際の予熱を終了する。これにより、セメントの水和熱により温度上昇してピーク温度に達したコンクリートが外気温まで温度低下することに伴って収縮するときには、鋼桁も予熱の終了により温度低下させて収縮させるようにすることで、収縮するコンクリートが、体積変化しない鋼材によって拘束されることを回避して、実際のひび割れ指数の経時変化(線g)の極小値の値が大きくなるようにさせる。
【選択図】図1

Description

本発明は、鋼材にコンクリートの打設により形成するコンクリート部材を一体に接合する際に上記鋼材の温度変化による収縮を利用してプレストレスを導入するようにしてある上記コンクリート部材に、ひび割れが発生することを抑制するために用いる温度プレストレス導入コンクリートのひび割れ抑制方法に関するものである。
橋梁や高架道路を構成する橋梁構造の1つとして、鋼材としての鋼桁に、コンクリートの打設によって形成するコンクリート部材としてのコンクリート床版を一体に接合して構築するようにした鋼コンクリート構造物としての合成桁橋がある。
上記合成桁橋のような鋼コンクリート構造物を構築する際、その耐久性を向上させるために、PC鋼線やPC鋼棒を用いて上記鋼コンクリート合成構造物におけるコンクリート部材にプレストレスを導入する手法が広く用いられている。
しかし、上記PC鋼線やPC鋼棒を用いた機械的なプレストレス力の導入手法は、作業が複雑で時間がかかる。
そこで、鋼材にコンクリートの打設により形成するコンクリート部材を一体に接合して鋼コンクリート合成構造物を構築する際に、上記コンクリート部材に温度プレストレスを導入する手法が従来提案されている。
これは、鋼コンクリート合成構造物を構築するための鋼材に、コンクリート部材の接合作業を開始する前に、予め温度管理として通常は外気温(常温)よりも高い所定の温度を与えて該鋼材を膨張させておき、次に、この膨張した状態の鋼材に一体に接合するようにコンクリートを打設し、次いで、該打設されたコンクリートが固化した後に上記鋼材の温度管理を終了することにより、該打設されたコンクリートの固化により上記鋼材に一体に接合された状態で形成されるコンクリート部材に、該鋼材が外気温(常温)に復帰するまで温度低下することに伴って生じる該鋼材の収縮を利用したプレストレス(以下、温度プレストレスと云う)を導入させるようにしてある(たとえば、特許文献1参照)。
ところで、コンクリートは、打設された後、硬化する際にひび割れが一旦生じてしまうと、該ひび割れが自然に修復されることはないため、コンクリートを施工する際には、有害なひび割れが生じないようにする必要がある。
そのために、打設されたコンクリートにおけるひび割れの発生確率の指標として、以下の式で算出されるひび割れ指数が一般的に用いられている。
cr(t)=ftk(t)/σ(t)
ここで、
cr(t):ひび割れ指数(tは材齢(コンクリート打設後の日数))
tk(t):材齢t日におけるコンクリート引張強度
σ(t):材齢t日におけるコンクリート最大主引張応力(引張応力の最大値)
なお、上記ひび割れ指数Icr(t)は、構造物の寸法形状、材料の熱特性、環境条件、施工方法の詳細な条件等の影響を取り入れた温度解析を行い、次いで、温度解析によって求められた温度分布の経時変化に基づく構造物の体積変化を求め、打設されたコンクリートへの拘束条件や材料の力学特性をモデル化して応力解析を行うことで求める手法が確立されている。
上記ひび割れ指数Icr(t)は、コンクリートに発生する引張応力に対する引張強度の比であり、したがって、その値が大きいほどひび割れが発生し難く、一方、値が小さいほどひび割れが発生し易いことを表す指標となる。
ところで、上記ひび割れ指数Icr(t)を求めるための計算式における分母側のコンクリート最大主引張応力σ(t)は、構造物の温度分布の経時変化に伴う該構造物の体積変化によって上記コンクリートに作用する拘束力に依存するものである。又、打設されたコンクリートは、硬化する際、セメントの水和熱によって一旦温度上昇した後、外気温まで温度低下すると、その後はほぼ外気温に一致する一定温度となる。よって、上記コンクリートを打設して接合する鋼材の温度が一定であれば、上記コンクリート最大主引張応力σ(t)の値は、上記コンクリートの温度が変化する間は変化するが、その後はほぼ一定となる。
一方、上記ひび割れ指数Icr(t)を求めるための計算式における分子側のコンクリート引張強度ftk(t)の値は、コンクリートの打設後、上記コンクリート最大主引張応力σ(t)が増加するよりも早い段階で比較的速やかに或る程度まで増加し、その後、時間の経過と共に漸次増加する。
そのために、通常、上記ひび割れ指数Icr(t)の経時変化は、極小値を取ることが明らかとなっている。
前記したように、コンクリートでは一旦生じたひび割れは自然に修復されることはないことから、コンクリートの上記ひび割れ指数Icr(t)を指標とする評価は、コンクリートの打設後に経時変化する該ひび割れ指数Icr(t)がとる極小値の大小によって判断される。
特開2004−92333号公報
ところが、特許文献1に示された鋼コンクリート合成構造物のコンクリート部材へ温度プレストレスを導入する手法は、コンクリートが固化して、該コンクリートが十分な強度を発現するまで鋼材の温度管理を継続し、その後、上記コンクリートが所定の強度を発現する段階で鋼材の温度管理を停止して該鋼材を常温に復帰させるようにしてあるが、かかる手法では、温度管理期間が長くなるという問題があると共に、打設されたコンクリートが水和熱によって温度上昇した後、常温(外気温)に戻る過程で生じるコンクリート自体の体積変化に伴うひび割れ指数の低下を抑制することについては何ら考慮されていないというのが実状である。
すなわち、レディーミクストコンクリートに関するJIS規格(JIS A5308)によれば、呼び強度を保障する材齢の指定がない場合、強度試験を行うためには28日の材齢が必要である。
したがって、上記特許文献1に示された手法では、呼び強度を保障する材齢の指定がないレディーミクストコンクリートを使用する場合は、該コンクリートが硬化して十分な強度を発現するとされているコンクリート打設後の28日間という長期に亘って鋼材の温度を管理し続ける必要が生じるため、温度管理期間が長くなってしまい、上記鋼材の温度管理のための手間及びコストが嵩んでしまうというのが実状である。
又、通常、打設されたコンクリートでは、打設後の数日間、硬化の反応に伴うセメントの水和熱に起因して温度上昇が生じ、この温度上昇がピーク温度に達すると、その後、次第に外気温(常温)に戻るように温度低下するという温度変化が生じており、この温度変化に伴って、上記打設されたコンクリート自体に、温度上昇時には膨張し、その後の温度低下時には収縮するという体積変化が生じるようになる。
そのため、上記特許文献1に示された手法では、コンクリート合成構造物を構築するために前述したように温度管理された鋼材に接合するコンクリートを打設すると、該打設されたコンクリートは、打設後の数日で上記セメントの水和熱に起因する温度上昇時に膨張し、その後、常温まで温度低下するときに収縮しようとするが、このコンクリートの温度低下が生じるときにも、上記鋼材は前述した28日間の温度管理期間中であって或る所定温度に保持されていて体積変化が生じない状態であることから、該体積変化しない鋼材により上記温度低下に伴って収縮しようとするコンクリートの自由変形が拘束されることに伴い、上記コンクリートに引張応力が発生し易く、又、引張応力が大きくなり易い。
よって、上記特許文献1に示された手法では、前述したようにコンクリート引張強度ftk(t)をコンクリート最大主引張応力σ(t)で除することにより算出されるひび割れ指数Icr(t)の値が小さくなり易いため、鋼コンクリート合成構造物の構築時に温度プレストレスを導入するようにしてあるコンクリートにおけるひび割れの発生を抑制することが難しいというのが実状である。
更に、冬季等のように外気温が低い場合は、セメントの水和熱により一旦温度上昇したコンクリートの温度低下がより急速に生じるようになるが、この場合、コンクリートの引張強度が十分に発現されないうちにコンクリートの温度低下に伴う収縮が生じる虞があり、このような引張強度が十分に発現されていない状態で収縮するコンクリートの自由変形が、上記温度管理により体積変化が生じない状態の鋼材によって拘束されると、該コンクリートにひび割れがより発生し易くなってしまう。
そこで、本発明は、鋼材にコンクリートを一体に接合して合成床版等の鋼コンクリート合成構造物を構築する際に、鋼材の温度管理を行うことにより該鋼材に接合するコンクリートにプレストレス力を導入するようにしてある温度プレストレス導入コンクリートにおけるひび割れ指数の経時変化の極小値の低下を抑制することができて、該コンクリートにおけるひび割れの発生をより確実に回避することが可能な温度プレストレス導入コンクリートのひび割れ防止方法を提供しようとするものである。
本発明は、上記課題を解決するために、請求項1に対応して、鋼材にコンクリートの打設により形成するコンクリート部材を接合する際に、鋼材を予熱した状態で該鋼材に接合するためのコンクリートを打設し、次いで、上記打設されたコンクリートにおけるセメントの水和熱によって温度上昇する該コンクリートがピーク温度に達する時点よりも後で、上記打設されたコンクリートについて上記鋼材の予熱が継続して行われると仮定した条件の下での解析により求められるひび割れ指数の経時変化が極小値をとる時点よりも前となる期間に、上記鋼材の実際の予熱を終了し、該予熱の終了した鋼材の温度低下に伴う収縮により、該鋼材に接合された状態で上記コンクリートの硬化により形成させる上記コンクリート部材にプレストレスを導入するようにする温度プレストレス導入コンクリートのひび割れ防止方法とする。
又、上記構成において、鋼材を合成桁橋の鋼桁とし、コンクリートの打設により該鋼桁に接合するコンクリート部材を上記合成桁橋のコンクリート床版とするようにする
本発明の温度プレストレス導入コンクリートのひび割れ防止方法によれば、以下のような優れた効果を発揮する。
(1)鋼材にコンクリートの打設により形成するコンクリート部材を接合する際に、鋼材を予熱した状態で該鋼材に接合するためのコンクリートを打設し、次いで、上記打設されたコンクリートにおけるセメントの水和熱によって温度上昇する該コンクリートがピーク温度に達する時点よりも後で、上記打設されたコンクリートについて上記鋼材の予熱が継続して行われると仮定した条件の下での解析により求められるひび割れ指数の経時変化が極小値をとる時点よりも前となる期間に、上記鋼材の実際の予熱を終了し、該予熱の終了した鋼材の温度低下に伴う収縮により、該鋼材に接合された状態で上記コンクリートの硬化により形成させる上記コンクリート部材にプレストレスを導入するようにしてあるので、上記打設されたコンクリートがセメントの水和熱によって温度上昇した後に温度低下することに伴って収縮するときに、体積変化しない鋼材によって該収縮しようとするコンクリートの自由変形が拘束されることをなくすことができる。したがって、上記鋼材の温度管理によってプレストレスが導入される上記コンクリート部材に、コンクリートが硬化する過程で引張応力が発生する虞を低減することができて、該コンクリート部材におけるひび割れの発生を抑制することができる。
(2)更に、本発明の温度プレストレス導入コンクリートのひび割れ抑制方法では、鋼材の予熱を行う期間を、従来のように打設したコンクリートが固化して該コンクリートが十分な強度を発現するまで温度管理するようにしてある鋼材の温度管理期間に比して、大幅に短くすることができる。よって、上記鋼材の予熱のための手間及びコストを削減することができる。
(3)鋼材を合成桁橋の鋼桁とし、コンクリートの打設により該鋼桁に接合するコンクリート部材を上記合成桁橋のコンクリート床版とするようにすることにより、鋼桁の上側に一体に接合するコンクリート床版に上記鋼桁の温度管理によるプレストレスを導入しながら合成桁橋を構築する工事を行う際に、該コンクリート床版にひび割れが生じる虞を抑制する工法を容易に実現することができる。
本発明の温度プレストレス導入コンクリートのひび割れ防止方法の実施の一形態を示すもので、(イ)はコンクリートの打設後に生じるコンクリートの温度の経時変化を示す図、(ロ)はコンクリートの打設後に生じる引張強度の経時変化を示す図、(ハ)はコンクリートの打設後に生じるひび割れ指数の経時変化を示す図である。 図1の温度プレストレス導入コンクリートのひび割れ防止方法を合成桁橋に適用して実施する手順を示すもので、(イ)は初期状態を、(ロ)は鋼桁の予熱を行う状態を、(ハ)は予熱された鋼桁上にコンクリート床版を形成するためのコンクリートを打設した状態を、(ニ)は鋼桁の予熱を終了した状態を、それぞれ示す概略側面図である。 図2(ロ)のA−A方向矢視拡大図である。 ひび割れ指数を求めるために用いた合成桁橋の解析モデルを示すもので、(イ)は概略斜視図、(ロ)は橋軸方向の一部分における断面図である。
以下、本発明を実施するための形態を図面を参照して説明する。
図1(イ)(ロ)(ハ)乃至図4(イ)(ロ)は本発明の温度プレストレス導入コンクリートのひび割れ防止方法の実施の一形態を示すもので、鋼材としての鋼桁2に、コンクリート部材としてのコンクリート床版3を、コンクリート3aの打設による該コンクリート床版3の形成と共に一体に接合して、鋼コンクリート合成構造物としての合成桁橋1を構築するときに、温度プレストレスを導入するようにしてある上記コンクリート床版3に適用する例を示すもので、以下のようにしてある。
すなわち、先ず、上記合成桁橋1を構築するための鋼桁2について、たとえば、図2(イ)に示す如く、該鋼桁2の長手方向における既設のコンクリート床版3が接合されている部分と、次回の施工継目4となる個所の間に、コンクリートの打設によって図2(イ)に二点鎖線で示す如きコンクリート床版3を新たに形成すると共にその接合作業を行う領域(以下、コンクリート接合領域と云う)5を設定する。この際、上記鋼桁2及び上記既設のコンクリート床版3は共に外気温T1と同じ温度となっている。
次に、図2(ロ)及び図3に示すように、上記鋼桁2の長手方向における上記コンクリート接合領域5よりもやや長い範囲を、図2(ロ)及び図3に二点鎖線で示す如きコンクリート床版3を接合するための接合面となる該鋼桁2の上端面を露出させた状態で、保温性のある囲い6で覆う。その後、上記囲い6の内側の雰囲気温度を図示しないジェットヒーター(登録商標)等の暖房装置によって昇温させることにより、上記鋼桁2における上記囲い6で覆われた範囲を、外気温T1に比して或る温度高くなるように予め設定した予熱温度T2(T2>T1)に予熱する。
次いで、図2(ハ)に示すように、上記鋼桁2におけるコンクリート接合領域5の上側に予め設置した図示しないコンクリート床版形成用の型枠を用いて、該鋼桁2の上側に、コンクリート床版3を形成するためのコンクリート3aを打設する。なお、このコンクリート3aを打設する際には、上記図示しないコンクリート床版形成用の型枠内に、形成すべきコンクリート床版3の内部に必要とされる配筋が予め行われているものとする。
一方、上記合成桁橋1の構築現場での実作業とは別に、該合成桁橋1の鋼桁2及びコンクリート床版3からなる構造物の寸法形状を反映した解析モデルを用いて、該コンクリート床版3を形成するためのコンクリート3aの組成や材料の熱特性、施工方法やその養生の状態、上記鋼桁2の予熱温度T2、外気温T1等の環境条件、更には、上記コンクリート床版3を形成するコンクリート3aの硬化に影響する種々の要因を考慮に入れて、上記鋼桁2の予熱温度T2での予熱を継続して行うと仮定した条件の下で、上記打設したコンクリート3a(該コンクリート3aが次第に硬化することによって形成される上記コンクリート床版3を含む)の各部における温度分布の経時変化を解析する。
更に、上記コンクリート3aの温度分布の経時変化の解析結果から、上記コンクリート3a(該コンクリート3aが次第に硬化することによって形成される上記コンクリート床版3を含む)に発生する応力の経時変化を解析する。
その後、上記解析によって得られる上記コンクリート3aに発生する応力の引張方向についての最大値(コンクリート最大主引張応力)の経時変化と、該コンクリート3aの硬化に伴って発現するコンクリート引張強度ftk(t)の経時変化とを基に、前述したひび割れ指数を求める式を用いて、上記コンクリート3a(該コンクリート3aが次第に硬化することによって形成される上記コンクリート床版3を含む)についてのひび割れ指数の経時変化を解析し、その解析結果から、上記したように鋼桁2の予熱温度T2での予熱を継続すると仮定した条件の下でひび割れ指数Icr(t)が極小値を取る時点を求める。
具体的には、構築する合成桁橋1が、たとえば、橋軸方向に延びる一対の主桁としての鋼桁2の上側にコンクリート床版3を接合してなる形式の2主鈑桁橋である場合は、図4(イ)(ロ)に示すような解析モデル(図示する便宜上、図4(イ)(ロ)では橋幅方向中央位置CLから片側の領域のみが示してある)を作成し、該解析モデルについて、実際に構築する合成桁橋(2主鈑桁橋)1の実際の寸法を反映させた条件を以下のように設定する。
鋼桁(主桁)2の橋幅方向中央位置CLからの距離:2200mm
鋼桁(主桁)2の桁高:2700mm
コンクリート床版3の橋幅方向中央位置CLから橋幅方向の端部までの幅寸法:3960mm
コンクリート床版3の床版厚:320mm(鋼桁2の上部),220mm(鋼桁2の上部以外)
更に、上記コンクリート床版3を形成するために用いるコンクリート3aについての以下のような条件を設定する。
コンクリート呼び強度:30N/mm
単位セメント量:330kg/m
セメント種類:普通ポルトランドセメント
更に又、上記コンクリート3aの打設によってコンクリート床版3を形成する際の環境条件として、季節を冬季に設定する。
なお、図4(イ)(ロ)における符号7は、上記一対の鋼桁(主桁)2の長手方向所要間隔個所同士を繋ぐ橋幅方向に延びる横桁である。又、A2は図示しない橋台によって支持される支点、P2は図示しない橋脚によって支持される支点である(図2(イ)(ロ)(ハ)(ニ)も同様)。
上記のようにして解析モデルについての種々の条件を設定した後、該解析モデルを用いて、たとえば、実際のコンクリート接合領域5が、図4(イ)に示すように、死荷重によって負曲げが発生するP2支点付近における橋軸方向に20mの領域である場合は、該領域について、前述したように、上記鋼桁2の予熱温度T2での予熱を継続すると仮定した条件の下で、コンクリート3aの打設によってコンクリート床版3を形成させる際の該コンクリート3a(コンクリート3aにより形成されるコンクリート床版3を含む)の各部における温度分布の経時変化を解析する。
これにより、上記コンクリート3a(コンクリート床版3)の温度分布の経時変化の結果は、図1(イ)に線aで示すような結果として得られる。
上記のようにして、上記コンクリート3a(コンクリート床版3)の温度分布の経時変化の解析結果が得られると、該解析結果を基に、上記鋼桁2の予熱温度T2での予熱を継続すると仮定した条件下で上記打設されたコンクリート3aが硬化してコンクリート床版3が形成される間に、該コンクリート3a(コンクリート床版3)に発生する応力の経時変化を解析する。
これにより、上記コンクリート3a(コンクリート床版3)に発生する引張方向の応力の経時変化の結果は、図1(ロ)に線bで示すような結果として得られる。
この際、上記コンクリート3aの硬化に伴って発現するコンクリート引張強度ftk(t)の経時変化は、図1(ロ)に線cで示すようになる。
よって、上記解析によって得られた上記コンクリート3aに発生する応力の引張方向についての最大値(コンクリート最大主引張応力)の経時変化と、該コンクリート3aの硬化に伴って発現するコンクリート引張強度ftk(t)の経時変化とを基に、前述したひび割れ指数を求める式を用いて上記コンクリート3aの硬化により形成される合成桁橋1のコンクリート床版3についてのひび割れ指数Icr(t)の経時変化を解析すると、その解析結果が、図1(ハ)に線dで示すようになる。よって、この図1(ハ)に線dで示された解析結果より、上記したように鋼桁2の予熱温度T2での予熱を継続すると仮定した条件の下でひび割れ指数Icr(t)の経時変化が極小値を取る時点は、コンクリート打設後の材齢8日の時点であることが分かる。
上記のようにして、鋼桁2の予熱温度T2での予熱を継続すると仮定した条件の下でひび割れ指数Icr(t)の経時変化が極小値を取る時点が求められると、本発明の温度プレストレス導入コンクリートのひび割れ防止方法では、図1(イ)に示したように、上記鋼桁2を外気温T1よりも所定温度高い予熱温度T2に予熱した状態で、上記鋼桁2におけるコンクリート接合領域5の上側に実際に打設されたコンクリート3aが、セメントの水和熱により温度上昇してピーク温度に達する時点よりも後で、上記鋼桁2の予熱温度T2での予熱を継続すると仮定した条件の下でひび割れ指数Icr(t)の経時変化が極小値を取る時点までの期間、より好ましくは、上記打設したコンクリート3aがセメントの水和熱によって温度上昇してピーク温度に達した時点から、上記鋼桁2の予熱温度T2での予熱を継続すると仮定した条件の下で上記ひび割れ指数Icr(t)の経時変化が極小値を取る時点までの日数がx日である場合、実際に鋼桁2の上側に打設したコンクリート3aがセメントの水和熱により温度上昇してピーク温度に達した時点よりも一日後から、x/2前後の日数が経過するまでの期間に、上記鋼桁2の予熱を終了するようにする。
具体的には、鋼桁2の上側に打設されたコンクリート3aがセメントの水和熱により温度上昇してピーク温度に達する時点が、図1(イ)の線aから分かるように、材齢1日の時点であり、一方、前述したように、上記鋼桁2の予熱温度T2での予熱を継続すると仮定した条件の下でひび割れ指数Icr(t)の経時変化が極小値を取る時点が、図1(ハ)から明らかなように材齢8日の時点である場合は、両時点の間の期間、より好ましくは、材齢2日から、その3日又は4日{≒(8−1)/2}後までの期間、したがって、たとえば、材齢4日のときに上記鋼桁2の予熱を終了する。
これにより、上記鋼桁2の上側に打設されたコンクリート3aがセメントの水和熱によって温度上昇した後に温度低下するときには、上記予熱を終了した鋼桁2も温度低下するようになる。
したがって、上記鋼桁2の上側に打設されたコンクリート3aがセメントの水和熱によって温度上昇した後に温度低下することに伴って収縮するときに、体積変化しない鋼材によって該収縮しようとするコンクリート3aの自由変形が拘束されることがなくなるため、該コンクリート3aに引張応力が発生し難くなる。
更に、この際、通常は、上記コンクリート3aの温度低下に伴う収縮の収縮量に比して、上記鋼桁2の温度低下に伴う収縮の収縮量の方が大きくなることから、図2(ハ)に示すように、上記コンクリート3aの硬化により形成されるコンクリート床版3に対し、上記鋼桁2の予熱温度T2から外気温T1までの温度低下に伴う収縮による温度プレストレスが導入されるようになる。
このように、本発明の温度プレストレス導入コンクリートのひび割れ抑制方法によれば、鋼材としての鋼桁2の上側にコンクリート3aを打設して一体に接合するときに該鋼桁2の温度管理によって該コンクリート3aの硬化により形成されるコンクリート部材としてのコンクリート床版3に温度プレストレスを導入することができると共に、該温度プレストレスを導入するコンクリート床版3に、コンクリート3aが硬化する過程で引張応力が発生する虞を低減することができて、ひび割れの発生を抑制することができる。
なお、上記したように材齢4日の時点で鋼桁2の保温を終了するという条件を新たに付加した条件の下で、上記と同様の手順によって上記コンクリート3a(コンクリート床版3)の温度分布の経時変化の解析結果を求めると、図1(イ)に線eで示すようになり、更に、この解析結果を基に、上記鋼桁2の予熱温度T2での予熱を材齢4日で終了するという条件を付加した下で上記打設されたコンクリート3aが硬化してコンクリート床版3が形成される間における該コンクリート3a(コンクリート床版3)に発生する引張方向の応力の最大値の経時変化を解析すると、図1(ロ)に線fで示すようになる。
上記結果を基に、前述したひび割れ指数Icr(t)を求める式を用いて、上記合成桁橋1のコンクリート3a(コンクリート床版3)についてのひび割れ指数Icr(t)の経時変化を解析すると、その解析結果が、図1(ハ)に線gで示すようになり、その極小値が、材齢約9日における2.64の値となる。この値は、図1(ハ)に線dで示された鋼桁2の予熱温度T2での予熱を継続すると仮定した条件の下で解析して得られたひび割れ指数Icr(t)の極小値である材齢8日における1.85という値に比して大きくなる。よって、このことからも、本発明の温度プレストレス導入コンクリートのひび割れ抑制方法によれば、鋼材としての鋼桁2の上側に打設して一体に接合するときに該鋼桁2の予熱温度T2から外気温T1までの温度低下に伴う収縮によって温度プレストレスを導入するようにしてあるコンクリート3a、更には、該コンクリート3aの硬化によって形成するコンクリート部材としてのコンクリート床版3について、ひび割れの発生を抑制することができる。
しかも、本発明の温度プレストレス導入コンクリートのひび割れ抑制方法では、鋼材としての上記鋼桁2の予熱を行う期間を、コンクリート3aの打設後、4日目までとしてあり、最大でも10日前後とすることができるため、該鋼桁2の予熱期間を、特許文献1に示されたもののように打設したコンクリートが固化して該コンクリートが十分な強度を発現するまで温度管理するようにしてある鋼材の温度管理期間に比して大幅に短くすることができる。よって、上記鋼材としての鋼桁2の予熱のための手間及びコストを削減することができる。
なお、本発明は上記実施の形態のみに限定されるものではなく、冬季等のように外気温が低い場合は、コンクリート床版3を形成するために打設したコンクリート3aを養生するときの条件として、該打設したコンクリート3aの上面又は下面、あるいは、上下両面等を保温養生するという条件を加えるようにしてもよい。この場合にも、上記保温養生されるコンクリート3aが、セメントの水和熱によって温度上昇してピーク温度に達した時点よりも後で、鋼桁2の予熱温度T2での予熱を継続すると仮定した条件の下でひび割れ指数Icr(t)の経時変化が極小値を取る時点よりも前の期間に、実際の鋼桁2の予熱を終了するようにすればよい。このようにすれば、外気温が低い場合にひび割れの発生し易い弱材齢時のコンクリート3aに、上記予熱を終了した鋼桁2の温度低下に伴う収縮によるプレストレスをより有効に伝えることが可能になる。
合成桁橋1としての2主鈑桁橋における各種寸法についての設定値、橋軸方向におけるコンクリート3aを打設する領域の位置、打設に用いるコンクリート3aの性状についての各設定値、環境条件等は、一例であり、よって、これらの条件を基に解析して得られる図1(イ)(ロ)(ハ)に示した各解析結果のグラフの数値、形も一例であって、実際に合成桁橋1を構築する際に鋼桁2の上側にコンクリート3aを打設して接合する際の設定条件に応じて、上記条件や解析結果と異なるものであってもよい。
更には、鋼材と、該鋼材に直接打設して一体に接合するようにしてあるコンクリート部材とからなる鋼コンクリート合成構造物であって、上記コンクリートの打設によりコンクリート部材を形成する際に、上記鋼材の該気温よりも高い或る予熱温度への予熱と、該予熱温度からの温度低下を行わせて、該鋼材の温度低下に収縮により該後材に接合するコンクリートに温度プレストレスを導入するようにしてあれば、図示した合成桁橋1以外の形式の橋梁や、橋梁以外のいかなる形式の鋼コンクリート合成構造物における温度プレストレス導入コンクリートのひび割れの抑制に適用してもよい。
この場合、いかなる形式の鋼コンクリート合成構造物における温度プレストレス導入コンクリートであっても、鋼材の予熱を、該鋼材に接合するために打設したコンクリートがセメント水和熱により温度上昇してピーク温度に達した時点よりも後で、且つ、上記鋼材の予熱を継続して行うと仮定した条件の下で上記打設されたコンクリートについて解析によって求められるひび割れ指数の経時変化が極小値を取る時点よりも前の期間内に、上記鋼材の実際の予熱を終了するようにすればよい。
その他本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々変更を加え得ることは勿論である。
1 合成桁橋
2 鋼桁(鋼材)
3a コンクリート
3 コンクリート床版(コンクリート部材)

Claims (2)

  1. 鋼材にコンクリートの打設により形成するコンクリート部材を接合する際に、鋼材を予熱した状態で該鋼材に接合するためのコンクリートを打設し、次いで、上記打設されたコンクリートにおけるセメントの水和熱によって温度上昇する該コンクリートがピーク温度に達する時点よりも後で、上記打設されたコンクリートについて上記鋼材の予熱が継続して行われると仮定した条件の下での解析により求められるひび割れ指数の経時変化が極小値をとる時点よりも前となる期間に、上記鋼材の実際の予熱を終了し、該予熱の終了した鋼材の温度低下に伴う収縮により、該鋼材に接合された状態で上記コンクリートの硬化により形成させる上記コンクリート部材にプレストレスを導入するようにすることを特徴とする温度プレストレス導入コンクリートのひび割れ防止方法。
  2. 鋼材を合成桁橋の鋼桁とし、コンクリートの打設により該鋼桁に接合するコンクリート部材を上記合成桁橋のコンクリート床版とするようにする請求項1記載の温度プレストレス導入コンクリートのひび割れ防止方法。
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