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JP2012008158A - 反射防止部材の製造方法 - Google Patents

反射防止部材の製造方法 Download PDF

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JP2012008158A
JP2012008158A JP2010141230A JP2010141230A JP2012008158A JP 2012008158 A JP2012008158 A JP 2012008158A JP 2010141230 A JP2010141230 A JP 2010141230A JP 2010141230 A JP2010141230 A JP 2010141230A JP 2012008158 A JP2012008158 A JP 2012008158A
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Rinko Kai
倫子 甲斐
Yasuyuki Ishida
康之 石田
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Abstract

【課題】映り込み防止と低反射率、高透明性、さらに低干渉縞を両立した反射防止部材を、より簡単な製造工程で製造する方法を提供する。
【解決手段】支持基材の少なくとも片面に、塗料組成物を1回のみ塗布することで(以後、支持基材における塗料組成物を1回のみ塗布する側の面を、面Aという)、屈折率の異なる2層からなる反射防止層を形成することを特徴とする反射防止部材の製造方法であって、
該面Aの表面粗さ(JIS−B−0601:2001)が8nm以上40nm以下であることを特徴とする、反射防止部材の製造方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、反射防止部材の製造方法に関する。
反射防止部材は一般に、陰極管表示装置(CRT)、プラズマディスプレイパネル(PDP)や液晶表示装置(LCD)のような画像表示装置において、外光の反射によるコントラスト低下や像の映り込みを防止するために、光学干渉の原理を用いて反射率を低減するようにディスプレイの最表面に配置される。
このような反射防止部材として、特許文献1には「透明基材上フィルム上に、ハードコート層、高屈折率層及び低屈折率層を積層してなる反射防止フィルムにおいて、上記ハードコート層、又はハードコート層及び高屈折率層が、反応性有機珪素化合物を含有する電離放射線硬化型樹脂を主体として形成されていることを特徴とする反射防止フィルム」が記載されている。
このような反射防止部材においては近年、反射防止機能に加え、映り込み防止機能も合わせて求められており、次のものが提案されている。
特許文献2には、「樹脂基材フィルムと、前記樹脂基材フィルム表面上に積層された、表面に凹凸形状を有する防眩層とを備える防眩フィルムであって、前記防眩層は、下記式(1)で示されるアスペクト比が1を超える非真球状の光拡散性粒子が分散された透明樹脂からなる層であり、 前記防眩層表面が有する凹凸形状は、金属金型を用いたエンボス法によって形成される防眩フィルム。
アスペクト比=Lmax/Lver (1)
ここで、Lmaxは、前記光拡散性粒子の投影面積が最小となるように投影したときの投影
面の最大長さであり、Lverは、その投影面におけるLmax方向と直交する方向の最大長さである。」が記載されている。
さらに、反射防止部材を構成する層の層間界面の機能に着目したものとして、次のものが提案されている。
特許文献3には、「複数の透明層が形成されてなる光学フィルムであって、この光学フィルムを構成する第一の透明層と、この第一の透明層を接して形成された第二の透明層とが、屈折率の異なる材料からなり、かつ、この第一の透明層と第二の透明層との接触界面が光散乱性界面であることによって干渉縞の発生が抑制されたものであることを特徴とする、光学フィルム」、が記載されている。
特許文献4には、「透明基材の一方の面に凹凸を形成してなる透明フィルムの当該一方の面に、前記透明基材の屈折率よりも高い屈折率を有する高屈折率層と、高屈折率層の屈折率よりも低い屈折率を有する低屈折率層とをこの順に備えてなり、前記凹凸が透明基材を変形することにより形成されたものであり、[1]〜[2]を満たす反射防止フィルム
[1]0.04≦Ra≦0.25μm
[2]0.001≦Ra/Sm≦0.005
(Ra及びSmは、それぞれJIS B0601:1994に基づいて測定される算術平均粗さ及び凹凸の平均間隔である)」、が記載されている。
また、1回の塗布によって2つの層を形成する反射防止部材およびその製造方法として、次のものが提案されている。
特許文献5には、「バインダー樹脂中に低屈折率微粒子と中乃至高屈折率微粒子が分散されているコーティング組成物を用いてワンコートにて形成された塗膜を含む反射防止積層体であって、該低屈折率微粒子としてフッ素系化合物により処理されているシリカ微粒子が用いられることにより、比重の差により塗膜の上部乃至中間部において低屈折率微粒子が偏在し、且つ中間部乃至下部において中乃至高屈折率微粒子が偏在していることを特徴とする反射防止積層体」、が記載されている。
特開平9−254324号公報 特開2009−122371号公報 特開2005−107005号公報 特開2009−211061号公報 特開2007−272132号公報
本発明が解決しようとする課題は、映り込み防止と低反射率、高透明性、さらに低干渉縞を両立した反射防止部材を、より簡単な製造工程で製造する方法を提供することである。
上記課題に対し前述の公知技術は次の状況にある。
特許文献1では、低反射率、高透明性に関しては、求められている水準に達しているが、本発明者らが確認したところ映り込み防止については、特に考慮されておらず、そのため求められる水準に対し劣り、また製造工程も少なくとも3回の塗布を必要としているため、煩雑である。
特許文献2では、映り込みの防止に対して、非真球状の光拡散性粒子と金属金型を用いたエンボス法を組み合わせることにより、映り込みの防止を達成しているが、その透明性を表わす指標として、ヘイズが2〜40%と高く、あくまで一般的な防眩性フィルムの範疇であり、現在求められている映り込みを防止しながら高透明性と低反射率を両立した反射防止部材とはいえないものである。
特許文献3、4では、反射防止部材を構成する層の層間界面の機能に着目しているが、その目的は干渉縞の防止と白味の防止にあり、さらにその粗さの程度や対象とする界面の粗さが粗い。映り込みの防止と干渉ムラの抑制には効果があるが、光散乱性界面のため低反射率や高透明性との両立ができない。さらに、製造工程も煩雑なものとなっており、課題の達成は困難である。
特許文献5では、ワンコートで2層を得るもので、反射防止層を形成する低屈折率層と高屈折率層の界面が明瞭ではなく渾然一体としているため、明確な境界をもった反射防止層と比べて各屈折率層間の剥離の問題は解消されると記載されている。しかし、渾然一体とした明瞭でない界面のため、反射率、透明性の低下が予想され、課題の達成は困難である。
また、特許文献1から5のいずれにおいても、本発明の製造方法について着想に至っていない。
上記課題を解決するために本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、以下の発明を完成させた。すなわち、本発明は以下の通りである。
1)支持基材の少なくとも片面に、塗料組成物を1回のみ塗布することで(以後、支持基材における塗料組成物を1回のみ塗布する側の面を、面Aという)、屈折率の異なる2層からなる反射防止層を形成することを特徴とする反射防止部材の製造方法であって、
該面Aの表面粗さ(JIS−B−0601:2001)が8nm以上40nm以下であることを特徴とする、反射防止部材の製造方法。
前記塗料組成物が、2種類以上の無機粒子、1種類以上のバインダー成分、及び金属キレートを含み、
該2種類以上の無機粒子のうち少なくとも1種類の無機粒子が、疎水性化合物Aにより処理された無機粒子であることを特徴とする、請求項1に記載の反射防止部材の製造方法。
2)前記塗料組成物が、2種類以上の無機粒子、1種類以上のバインダー成分、及び金属キレートを含み、
該2種類以上の無機粒子のうち少なくとも1種類の無機粒子が、疎水性化合物Aにより処理された無機粒子であることを特徴とする、前記1)に記載の反射防止部材の製造方法。
3)前記塗料組成物の粘度変化(Δη)が、0.1mPa・s以上10mPa・s以下であることを特徴とする、前記1)または2)に記載の反射防止部材の製造方法。
(ここでΔηとは、せん断速度0.1s−1における粘度ηと、せん断速度10s−1における粘度ηの差(η−η)を表す。)
4)前記塗料組成物が、以下の疎水性化合物Bを含有することを特徴とする、前記1)から3)のいずれかに記載の反射防止部材の製造方法。
疎水性化合物Bとは、フッ素化合物B、長鎖炭化水素化合物B、及びシリコーン化合物Bからなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物である。
フッ素化合物Bとは、炭素数4以上のフルオロアルキル基及び反応性部位を有する化合物である。
長鎖炭化水素化合物Bとは、炭素数8以上の炭化水素基及び反応性部位を有する化合物である。
シリコーン化合物Bとは、シロキサン基及び反応性部位を有する化合物である。
5)前記疎水性化合物Bが、フッ素化合物Bを含み、
該フッ素化合物Bの数平均分子量が300以上4000以下であることを特徴とする、前記4)に記載の反射防止部材の製造方法。
6)前記フッ素化合物Bは、振動式粘度計による粘度ηが1〜100mPa/sであり、かつ表面張力γが6〜26mN/mであることを特徴とする、前記5)に記載の反射防止部材の製造方法。
7)前記フッ素化合物Bが、下記一般式(A)のモノマー、一般式(B)のモノマー、一般式(A)のモノマーに由来するオリゴマー、及び一般式(B)のモノマーに由来するオリゴマーからなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物であることを特徴とする、前記5)又は6)に記載の反射防止部材の製造方法。
C=C(R)−COO−R−Rf1 ・・・一般式(A)
A−R−Rf1 ・・・一般式(B)
(式中、Rは水素原子またはメチル基、Rf1は炭素数4〜7の直鎖状または分岐状のフルオロアルキル基、R、Rは炭素数1〜10のアルキル基、Aは反応性部位である。)
本発明によれば、映り込み防止と、低反射率、高透明性、さらに低干渉縞を両立した反射防止部材を、より簡単な製造工程で製造する方法を提供できる。
本発明の反射防止部材の構成 従来の反射防止部材の構成 従来の反射防止部材の構成
まず、映り込み防止と低反射率、高透明性の両立について述べる。従来から知られた基本的な映り込み防止技術は、比較的大きな表面の凹凸形状を導入することにより、反射光を散乱させて、表面に形成される反射像を乱してわかりにくくするものである。しかしながら、この方法では、屈折率差が大きい表面で光を散乱するため、反射率は光の干渉効果を利用したもののように低くすることはできず、また著しく透明性を低下させてしまう。また、特許文献2ではアスペクト比の大きい粒子を内部に含むことにより、塗膜内部での光散乱に異方性をもたせ層内部での異方性散乱を強化して映り込みの防止を強化しているが、反射率の低下と透明性の向上は得られない。
次いで、干渉縞、透明性の両立について述べる。干渉縞は、塗布工程での液膜の揺らぎに起因する膜厚変化、乾燥工程での乾燥速度むらに起因する膜厚変化、および基材の厚みばらつきに起因して反射防止層の厚み変化が目視可能な長周期で現れることにより、干渉効果にズレが生じ、反射色の変化が目視されるものと考えられる。この課題に対し特許文献4、5では界面を光散乱性にすることにより干渉効果のズレを解決しているが、光散乱性になることにより、透明性が低下してしまう。
以上の結果、公知技術では課題のすべてを達成することはできない。次に、本発明が前述の課題を解決可能な理由を述べる。
本発明者らは、映り込み防止性能と低反射率、高透明性、および低干渉縞を両立する製造方法として、支持基材−反射防止層間の界面に着目し、反射防止層と支持基材の界面(面A)の粗さを特定の領域に制御することと、1回の塗料組成物を塗布することにより屈折率が異なる2つの層を形成する技術を組み合わせることによって、上記課題を解決可能なことを発見した。
これは、支持基材における塗料組成物を塗布する側の面を面Aとした際に、支持基材の該面Aを、本発明の範囲で組面化、即ち微細な凹凸を形成することにより、反射防止性能や透明性に影響が出ない範囲で反射光にわずかな乱れをもたらし、高透明性、映り込み防止の両立が可能となった。
また本発明は、前述のように支持基材と反射防止層とのなす界面が微細に入り組むことにより、高屈折率層の厚みが実質的に幅を有するため、膜厚変化による干渉効果のズレを吸収することができる。このとき界面が微細に入り組む量が光の波長に比べて十分に短いため、光散乱性が発生せず、透明性に影響を及ぼさない。
以下、本発明の実施の形態について具体的に述べる。
図1に本発明の反射防止部材の構成の一例を示す。本発明の反射防止部材1は、支持基材2の少なくとも片面上に、屈折率の異なる2層からなる反射防止層3が積層されている。なお支持基材における塗料組成物を塗布する側の面を、面Aとする。
ここで面Aとは、易接着層、ハードコート層、帯電防止層などの反射防止層以外の機能層を有する支持基材を用いた場合や、薬品処理、機械的処理、コロナ放電処理、火焔処理、紫外線照射処理、高周波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理、混酸処理およびオゾン酸化処理等の処理が施された支持基材を用いた場合にも、塗布工程において反射防止層を形成する塗料組成物を塗布した側の支持基材面を指すため、機能層を有する支持基材の場合には機能層の側の面を、処理を施した支持基材の場合には、処理がなされた側の面を指す。
反射防止部材は、反射防止層を構成する2層が第1層と第2層とからなり、第1層、第2層、支持基材がこの順に積層される。そして、第1層が低屈折率層であり、第2層が高屈折率層であることが好ましい。
本発明は、支持基材の少なくとも片面に、塗料組成物を1回のみ塗布することで(以後、支持基材における塗料組成物を1回のみ塗布する側の面を、面Aという)、屈折率の異なる2層からなる反射防止層を形成することを特徴とする反射防止部材の製造方法であって、該面Aの表面粗さ(JIS−B−0601:2001)が8nm以上40nm以下であることを特徴とする、反射防止部材の製造方法である。
本発明では、支持基材における面Aの表面粗さが8nm以上40nm以下であることが重要であり、好ましくは10nm以上35nm以下、より好ましくは12nm以上30nm以下である。
面Aの表面粗さが8nmよりも小さくなると、得られる反射防止部材の支持基材と反射防止層との界面構造が図2の状態となり、支持基材と反射防止層との界面の物理的な観点の密着力の向上効果が小さくなるため、耐擦傷性、耐磨耗性に劣る事となる。さらに支持基材と反射防止層との界面に微細な凹凸構造が形成されないことにより、低干渉縞や映り込み防止性能が得られなくなる問題がある。
また面Aの表面粗さが40nmよりも大きくなると、得られる反射防止部材の支持基材と反射防止層との界面構造が図3の状態となり、支持基材と反射防止層との界面で光散乱が生じるため、低反射率や透明性等の性能が得られなくなる問題がある。
さらに1回の塗布で2層の反射防止層を形成する塗料組成物を塗布した際に、面Aの表面粗さが40nmよりも大きいと、自発的な層構造の形成が阻害され、明確な界面構造が形成できず、反射防止性能が得られなくなる。
そのため、本発明では面Aの表面粗さが8nm以上40nm以下であることが重要である。
[反射防止部材]
本発明により得られる反射防止部材とは、各種支持基材の少なくとも片面に、反射防止機能を有する層(屈折率の異なる2層からなる反射防止層)が形成された部材を指し、支持基材がプラスチックフィルムの場合には、一般に反射防止フィルムと呼ばれる。その必要性や要求される性能などは特開昭59−50401号公報に記載されている様に、好ましくは0.03以上、より好ましくは0.05以上の屈折率差を有する2層からなる反射防止層を支持基材上に積層させることで構成された様態である。また反射防止層を構成する2層の屈折率差は、5.0以下であることが好ましい(つまり、第1層と第2層の屈折率差は、好ましくは0.03以上、より好ましくは0.05以上であり、上限としては5.0以下とした態様である。)。この屈折率差とは、隣接する層間の屈折率を相対的に比較した値であり、相対的に屈折率が低い層を低屈折率層と呼び、相対的に屈折率が高い層を高屈折率層と呼ぶ。そして反射防止部材は、第1層が低屈折率層であり、第2層が高屈折率層であることが好ましい。
前述の通り、図1に本発明の反射防止部材の構造の1例を示すが、本発明では支持基材と接した第2層が、高屈折率の機能に加えて、耐傷性も有する態様が好ましい。この場合、該第2層は高屈折率ハードコート層と呼ぶ。また高屈折率ハードコート層は、支持基材2と低屈折率層5との接着を強化する機能も有することがさらに好ましい。高屈折率ハードコート層の強度は、1kg荷重の鉛筆硬度で、H以上であることが好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。上限については、強度が高い分には問題はないが、現実的には9H程度が上限である。
上述した本発明は、該支持基材の少なくとも片面上に、塗料組成物を1回のみ塗布することで、屈折率の異なる2層からなる反射防止層を形成することを特徴とする反射防止部材の製造方法である。
ここで塗料組成物を1回のみ塗布するとは、支持基材に対して1種類の塗料組成物を1回だけ塗布することを指す。そのため塗料組成物を1回のみ塗布とは、1回の塗布時に複数層からなる液膜を同時に1回塗布する多層同時塗布や、1回の塗布時に1層の液膜を複数回の塗布、乾燥する連続逐次塗布、1回の塗布時に1層の液膜を複数回塗布後に乾燥する、ウェットオンウェット塗布などは意味しない。
塗料組成物は、2種類以上の無機粒子と、1種類以上のバインダー成分とを含むことが好ましい。そして、2種類以上の無機粒子のうち少なくとも1種類の無機粒子が、疎水性化合物Aにより処理された無機粒子(以後、疎水性化合物Aにより処理された無機粒子を、疎水性処理無機粒子とよぶ)であることが好ましい。さらに塗料組成物は、金属キレート化合物を含むことが好ましい。無機粒子、バインダー成分、疎水性化合物A、疎水性処理無機粒子、金属キレート化合物については後述する。
塗料組成物を1回のみ塗布することで、支持基材上に屈折率の異なる2層からなる反射防止層を形成する原理は、塗料組成物中の2種類以上の無機粒子が、塗料組成物中をブラウン運動により運動し、気液、固液界面に到達した無機粒子が、表面自由エネルギー差によって、低表面エネルギー無機粒子は大気側へ、高表面エネルギー無機粒子は支持基材側へ固定されることにより、自発的に層構造(屈折率の異なる2層からなる反射防止層)が形成できると考えている。
反射防止層を構成する屈折率の異なる2層は、反射分光膜厚計によって、300〜800nmの範囲での反射率を測定し、該装置付属のソフトウェア[FE−Analysis]を用いることで、それぞれの層の屈折率を得ることができる。
具体的には、反射分光膜厚計(FE−3000、大塚電子株式会社製)を用いて反射率を測定し、大塚電子株式会社製[膜厚測定装置 総合カタログP6(非線形最小二乗法)]に記載の方法に従い、屈折率の波長分散の近似式としてCauchyの分散式(数式1)を用い最小二乗法(カーブフィッティング法)により、光学定数(C、C、C)を計算することで屈折率を測定することができる。なお、屈折率は、550nmにおける値を用いた。
Figure 2012008158
ここで、λは波長、C、C、Cは光学定数を表す。
なお、屈折率の異なる2層である高屈折率層(または高屈折率ハードコート層)と低屈折率層との間(第2層と第1層との間)には、無機粒子の配列による明確な界面があることが好ましい。
本発明における明確な界面とは、1つの層と他の層とが区別可能な状態をいう。区別可能な界面とは、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて断面を観察することにより、支持基材上の2層の界面の有無を判断した。
反射防止部材として良好な性能を示すには、分光測定において最低反射率が好ましくは0%以上1.0%以下、より好ましくは0%以上0.7%以下、さらに好ましくは0%以上0.6%以下であり、特に好ましくは0%以上0.5%以下であることが望ましい。
また、反射防止部材として良好な性質を示すには、更に透明性が高いことが望ましい。透明性が低いと画像表示装置として用いた場合、画像彩度の低下などによる画質低下が生じるために好ましくない。反射防止部材の透明性の評価にはヘイズ値を用いることができる。ヘイズはJIS K 7136(2000)に規定された透明性材料の濁りの指標である。ヘイズは小さいほど透明性が高いことを示す。反射防止部材のヘイズ値としては、好ましくは2.0%以下であり、より好ましくは1.8%未満、更に好ましくは1.5%未満であり、値が小さいほど透明性の点で良好であるものの、0%とすることは困難であり、現実的な下限値は0.01%程度と思われる。ヘイズ値が2.0%を超えると、画像劣化が生じる可能性が高くなるため好ましくない。
反射防止部材として良好な性質を示すには、第2層、第1層の厚みが特定の厚みであることが望ましく、第1層(低屈折率層)の厚みは、好ましくは50nm以上200nm以下、さらに好ましくは70nm以上150nm以下であり、特に好ましくは90nm以上130nm以下であることが望ましい。第1層(低屈折率層)の厚みが50nm未満であると、光の干渉効果が得られず反射防止効果が得られず画像の映り込みが大きくなるために好ましくない。また200nmを超える場合も光の干渉効果が得られなくなるため画像の映り込みが大きくなるために好ましくない。
反射防止部材には、さらに、易接着層、防湿層、帯電防止層、シールド層、下塗り層や保護層などを設けてもよい。シールド層は、電磁波や赤外線を遮蔽するために設けられる。反射防止部材中にこれらの層を形成するためには、支持基材としてこれらの層を有するフィルムを適用する方法などが挙げられる。
[金属キレート化合物]
塗料組成物は、金属キレート化合物を含むことが好ましい。本発明における金属キレート化合物とは、多座配位子を分子中に有する化合物が金属イオンを挟むようにして錯体を形成している化合物の総称である。
金属キレート化合物は、シラノールなどを含む樹脂の硬化を助成する効果があり、乾燥工程においてシラノールなどを含む樹脂の硬化が安定して進行する。そのため膜硬度が上昇し、耐擦傷性や耐磨耗性が向上するため、金属キレート化合物を含むことが好ましい。
また、その効果は加熱することにより促進され、乾燥工程に適している温度は、好ましくは100℃以上、より好ましくは130℃以上である。加熱温度を100℃以上とすることで、非常に短時間でシラノールなどを含む樹脂の硬化が安定して進行するために好ましい。
金属キレート化合物中の金属イオンは、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素及び金属元素などであれば特に限定されないが、好ましくはチタンまたはアルミニウム、より好ましくはアルミニウムを挙げることができる。
金属キレート化合物の具体例としては、例えば、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、アルミニウムアルキルアセトアセテート・ジイソプロピレート、アルミニウムビスエチルアセトアセテート・モノアセチルアセトネート、アルミニウムトリスアセチルアセトネート、アルミニウムエチルアセトアセテート・ジイソプロピレートなどのアルミニウムキレート化合物、トリエトキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリ−n−プロポキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリス(アセチルアセトナート)モノ(エチルアセトアセテート)チタンなどのチタンキレート化合、トリエトキシ・モノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム、トリ−n−プロポキシ・モノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム、トリス(アセチルアセトナート)モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウムなどのジルコニウムキレート化合物等の化合物を挙げることができる。
これらの金属キレート化合物は、1種あるいは2種以上を同時に使用しても良い。また、これらの金属キレート化合物において、塗料の安定性や膜硬化性寄与等の観点からアルミニウムキレート化合物が特に好ましい。
[塗料組成物中に含まれる無機粒子]
塗料組成物は、2種類以上の無機粒子を含むことが好ましい。そして無機粒子の種類数は、2種類以上20種類以下が好ましく、より好ましくは2種類以上10種類以下、さらに好ましくは2種類以上3種類以下であり、最も好ましくは2種類である。
ここで無機粒子の種類とは、無機粒子を構成する元素の種類によって決まる(後述する疎水性処理無機粒子においては、疎水性化合物Aにより処理される前の無機粒子を構成する元素の種類によって決まる。)。例えば、酸化チタン(TiO)と酸化チタンの酸素の一部をアニオンである窒素で置換した窒素ドープ酸化チタン(TiO2−x)とでは、無機粒子を構成する元素が異なるために、異なる種類の粒子である。また、同一の元素、例えばZn、Oのみからなる無機粒子(ZnO)であれば、その粒径が異なる無機粒子が複数存在しても、またZnとOとの組成比が異なっていても、これらは同一種類の無機粒子である。また酸化数の異なるZn粒子が複数存在しても、無機粒子を構成する元素が同一である限りは(この例ではZn以外の元素が全て同一である限りは)、これらは同一種類の無機粒子である。
初めに第1層(低屈折率層)構成成分として好適に使用される無機粒子に関して説明する。
塗料組成物の、2種類以上の無機粒子における少なくとも1種類の無機粒子は、疎水性化合物Aにより処理された無機粒子(疎水性処理無機粒子という)であることが好ましく、この疎水性処理無機粒子が第1層(低屈折率層)構成成分として好適である。(疎水性化合物Aについては後述。)この疎水性処理無機粒子の構成材料として好適な無機粒子は、Si,Na,K,Ca,およびMgから選択される元素を含む無機粒子が好ましく挙げられ、さらに好ましくは、シリカ粒子(SiO)、アルカリ金属フッ化物(NaF,KFなど)、およびアルカリ土類金属フッ化物(CaF、MgFなど)から選ばれる化合物を含む無機粒子であり、耐久性、屈折率などの点からシリカ粒子が特に好ましい。なお、疎水性化合物Aにより処理されたシリカ粒子は、以後疎水性処理シリカ粒子とよぶ。
疎水性処理無機粒子の構成材料の無機粒子として好ましく用いられるシリカ粒子とは、一般例として、SiOなどのケイ素化合物から導出される粒子の総称である。そして本発明のより好ましい態様は、該シリカ粒子が中空シリカ粒子の態様である。ここで中空シリカ粒子とは、粒子の内部に空洞を有するシリカ粒子である。)。
続いて、第1層(低屈折率層)に好適な、疎水性処理無機粒子の構成材料である無機粒子の数平均粒子径について説明する。このような無機粒子の数平均粒子径(処理される前の数平均粒子径)が1nmよりも小さくなると、該粒子を含む塗料組成物より得られる反射防止部材における支持基材上の第1層(低屈折率層)中の空隙密度が低下することによる屈折率の上昇や透明度の低下が起こることがあるため好ましくなく、無機粒子の数平均粒子径(処理される前の数平均粒子径)が200nmよりも大きくなると、該粒子を含む塗料組成物より得られる反射防止部材の低屈折率層の厚さが厚くなり、良好な反射防止性能が得られなくなり好ましくない。そのため、塗料組成物中の疎水性化合物Aにより処理される無機粒子は、数平均粒子径(処理される前の数平均粒子径)が、好ましくは1nmから200nm、より好ましくは20nm以上200nm以下、更に好ましくは40nm以上150nm以下である。
ここで塗料組成物中の粒子の数平均粒子径とは、本発明の製造方法により得られる反射防止部材中の反射防止層を、透過型電子顕微鏡により観察して求めた粒子径をいう。倍率は50万倍とし、その画面に存在する100個の粒子の外径を測定し、その平均値とした。
ここで外径とは、粒子の最大の径(つまり粒子の長径であり、粒子中の最も長い径を示す)を表し、内部に空洞を有する粒子の場合も同様に、粒子の最大の径を表す。
疎水性処理無機粒子は、好適に空気側(最表面層)へ移動して、好適に第1層(低屈折率層)を形成できるため、塗料組成物に用いられる2種類以上の無機粒子の少なくとも1種類の無機粒子には、疎水性化合物Aによる処理がされていることが好ましい。なお、2種類以上の無機粒子の全ての無機粒子が疎水性処理無機粒子であるよりも、疎水性処理無機粒子と、該処理をされていない他の無機粒子(以後、疎水性処理無機粒子を除いた無機粒子を、他の無機粒子という)の両方を含む塗料組成物を用いる方が、屈折率差の大きい2層を得ることができるために、反射防止性の点で好ましい。つまり、本発明に用いる塗料組成物は、疎水性処理無機粒子と他の無機粒子の両方を各々少なくとも1種類含むことが好ましい。なお、他の無機粒子は第2層(高屈折率層)構成成分として好適に使用されるので、後ほど説明する。
また、疎水性化合物Aによる処理を施す無機粒子は、シリカ粒子であることが、つまり疎水性処理無機粒子としては、疎水性処理シリカ粒子であることが特に好ましい。
無機粒子に対する疎水性化合物Aによる処理工程は、一段階で行われても良いし、多段階で行われても良い。また、複数の段階で疎水性化合物Aを用いても良いし、一つの段階のみで疎水性化合物Aを用いても良い。
本発明における疎水性化合物Aとは、疎水基及び反応性部位を有する化合物である。
本発明における疎水性化合物Aの疎水基は、一般に疎水的な機能を有すれば特に限定されないが、疎水基の具体例としては、炭素数4以上のフルオロアルキル基、炭素数8以上の炭化水素基、及びシロキサン基からなる群より選ばれる少なくとも1つの官能基が例示される(なお、以下の説明においては、炭素数4以上のフルオロアルキル基と反応性部位とを有する化合物を、フッ素化合物Aといい、炭素数8以上の炭化水素基と反応性部位とを有する化合物を、長鎖炭化水素化合物Aといい、シロキサン基と反応性部位とを有する化合物を、シリコーン化合物Aという。)。また、無機粒子の処理に用いる疎水性化合物Aは、単一化合物でも良いし複数の異なる化合物を併用しても良い。なお疎水性化合物Aがフッ素化合物A、長鎖炭化水素化合物A、及びシリコーン化合物Aからなる群より選ばれるいずれかの化合物である場合には、後述する疎水性化合物Bと同一の化合物を使用することができる。
本発明における長鎖炭化水素化合物Aは、分子中に疎水基である炭素数8以上の炭化水素基と、反応性部位とを有する化合物を表す。炭素数8以上の炭化水素基は、炭素数が8以上30以下であることが好ましい。また炭素数8以上の炭化水素基は、直鎖構造、分岐構造、脂環構造を問わず選択することができる。長鎖炭化水素化合物Aとしてより好ましくは、その疎水基が炭素数10以上22以下の直鎖状アルキル基を有する化合物であり、アルキルアルコール、アルキルエポキシド、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート、アルキルカルボキシレート(酸無水物及びエステル類を含む)、などを用いることができる。
長鎖炭化水素化合物Aの具体例としては、オクタノール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ステアリルアルコール、などの多価アルコール、オクチルアクリレート、オクチルメタクリレート、2−ヒドロキシオクチルアクリレート、2−ヒドロキシオクチルメタクリレート、などのアクリレート(メタクリレート)、オクチルトリメトキシシランなどのアクリルシラン、などが挙げられる。
本発明におけるシリコーン化合物Aは、分子中に疎水基であるシロキサン基と、反応性部位とを有する化合物を表す。シリコーン化合物Aの反応性部位は、(メタ)アクリレート基が好ましく用いられる。
また本発明でいうシロキサン基とは、連続したシロキサン結合(−Si−O−)を骨格としたポリマーであり、シロキサン基としては、一般式(C)で示されるポリシロキサン基が好ましく用いられる。
−(Si(R)(R)−O)−・・・一般式(C)
(mは10〜200のいずれかの整数。)
(R、Rは特に限定されないが、炭素数1〜6のいずれかのアルキル基、フェニル基、3−アクリロイル−2−ヒドロキシプロピルシロキサン基、2−アクリロイル−3−ヒドロキシプロピルシロキサン基、末端アクリレート基を有するポリエチレングリコールプロピルエーテル基、末端ヒドロキシ基を有するポリエチレングリコールプロピルエーテル基、等から選択される。)
疎水基として一般式(C)のポリシロキサン基を有するシリコーン化合物Aの具体例は、下記一般式(III)で表されるジメチルシロキサン基と、さらに反応性部位とを有する化合物が挙げられる。ここで、Rは反応性部位を表し、Rの好ましい態様はメタクリル基、エポキシ基、又はカルボキシル基である。一般式(III)のジメチルシロキサン基と、さらに反応性部位とを有するシリコーン化合物Aの具体例として、X−22−164B,X−22−164C,X−22−5002、X−22−174D、X−22−167B(以上商品名、信越化学工業株式会社製)などが挙げられる。
Figure 2012008158
本発明におけるフッ素化合物Aとは、分子中に炭素数4以上のフルオロアルキル基と、反応性部位とを有する化合物を表す。なおフッ素化合物Aとは、後述するフッ素化合物Bと同様であり、フッ素化合物Aの詳細な説明及びその具体例は、後述するフッ素化合物Bの説明個所と同様である。
中空シリカ粒子などの無機粒子に直接フッ素化合物A等の疎水性化合物Aを導入する方法は、1分子中に疎水性セグメントとシリルエーテル基(シリルエーテル基が加水分解されたシラノール基を含む)との両方を持つ疎水性化合物Aを少なくとも1種類以上と開始剤とを共に撹拌することにより成される方法がある。しかし中空シリカ粒子などの無機粒子に直接疎水性化合物Aを導入する場合、反応性の制御が困難になったり、塗料化後塗布時に塗布斑等が発生しやすくなったりする場合がある。
また中空シリカ粒子などの無機粒子にフッ素化合物Aなどの疎水性化合物Aにより表面処理を行って、中空シリカ粒子などの無機粒子にフルオロアルキル基等の疎水基を導入する更なる方法としては、中空シリカ粒子などの無機粒子を架橋成分にて処理し、疎水性化合物Aとつなぎ合わせる方法がある。
また前述の疎水性化合物Aは、中空シリカ粒子などの無機粒子に対して直接表面処理することで、疎水性処理無機粒子を得ることもできるが、疎水性化合物Aによる表面処理前に、無機粒子を架橋成分にて処理しておくことが好ましい。中空シリカ粒子などの無機粒子を架橋成分にて処理する際の架橋成分としては、分子内にフッ素元素などの疎水基は無いが、フッ素化合物A等の疎水性化合物Aと反応可能な部位と、中空シリカ粒子などの無機粒子と反応可能な部位とを少なくとも一カ所ずつ持っている化合物を挙げることができる。そして、中空シリカ粒子などの無機粒子と反応可能な部位としては、反応性の観点からシリルエーテル及びシリルエーテルの加水分解物であることが好ましい。これら化合物は一般的にシランカップリング剤と呼ばれ、例としては、グリシドキシアルコキシシラン類、アミノアルコキシシラン類、アクリロイルシラン類、メタクリロイルシラン類、ビニルシラン類、メルカプトシラン類、などを用いることができる。
またこのような架橋成分としては、以下の一般式(I)の化合物が好ましい。つまり、本発明の塗料組成物に好適な疎水性処理無機粒子は、無機粒子を下記一般式(I)の架橋成分で一度処理し、それに続けて疎水性化合物Aで処理する方法が好ましい。このように2段階で処理することで、無機粒子に対して疎水性化合物Aを処理しやすくなるため好ましい。
B−R−SiR (OR3−n 一般式(I)
さらにこのような2段階で処理することで得られる疎水性処理無機粒子に関して、本発明の塗料組成物に好適な疎水性処理無機粒子Aのより好ましい形態は、シリカ粒子を下記一般式(I)で示される化合物で処理し、更に下記一般式(II)で示されるフッ素化合物Aで処理した粒子である。
B−R−SiR (OR3−n 一般式(I)
D−R−Rf2 一般式(II)
(上記一般式中のB、Dは反応性部位を示し、R、Rは炭素数1から3のアルキレン基及びそれらから導出されるエステル構造を示し、R、Rは水素又は炭素数が1から4のアルキル基を示し、Rf2はフルオロアルキル基を示し、nは0から2の整数を示し、それぞれ側鎖を構造中に持っても良い。)
一般式(I)の具体例としては、アクリロキシエチルトリメトキシシラン、アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、アクリロキシブチルトリメトキシシラン、アクリロキシペンチルトリメトキシシラン、アクリロキシヘキシルトリメトキシシラン、アクリロキシヘプチルトリメトキシシラン、メタクリロキシエチルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシブチルトリメトキシシラン、メタクリロキシヘキシルトリメトキシシラン、メタクリロキシヘプチルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン及びこれら化合物中のメトキシ基が他のアルコキシル基及び水酸基に置換された化合物を含むものなどが挙げられる。
一般式(II)の具体例としては、2,2,2−トリフルオロエチルアクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフロオロプロピルアクリレート、2−パーフルオロブチルエチルアクリレート、3−パーフルオロブチル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−パーフルオロヘキシルエチルアクリレート、3−パーフルオロヘキシル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−パーフルオロオクチルエチルアクリレート、3−パーフルオロオクチル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−パーフルオロデシルエチルアクリレート、2−パーフルオロ−3−メチルブチルエチルアクリレート、3−パーフルオロ−3−メトキシブチル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−パーフルオロ−5−メチルヘキシルエチルアクリレート、3−パーフルオロ−5−メチルヘキシル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−パーフルオロ−7−メチルオクチル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、テトラフルオロプロピルアクリレート、オクタフルオロペンチルアクリレート、ドデカフルオロヘプチルアクリレート、ヘキサデカフルオロノニルアクリレート、ヘキサフルオロブチルアクリレート、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルメタクリレート、2−パーフルオロブチルエチルメタクリレート、3−パーフルオロブチル−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−パーフルオロオクチルエチルメタクリレート、3−パーフルオロオクチル−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−パーフルオロデシルエチルメタクリレート、2−パーフルオロ−3−メチルブチルエチルメタクリレート、3−パーフルオロ−3−メチルブチル−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−パーフルオロ−5−メチルヘキシルエチルメタクリレート、3−パーフルオロ−5−メチルヘキシル−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−パーフルオロ−7−メチルオクチルエチルメタクリレート、3−パーフルオロ−7−メチルオクチルエチルメタクリレート、テトラフルオロプロピルメタクリレート、オクタフルオロペンチルメタクリレート、オクタフルオロペンチルメタクリレート、ドデカフルオロヘプチルメタクリレート、ヘキサデカフルオロノニルメタクリレート、1−トリフルオロメチルトリフルオロエチルメタクリレート、ヘキサフルオロブチルメタクリレートなどが挙げられる。
分子中にフルオロアルキル基Rf2を有さない一般式(I)で表される化合物を用いることにより、簡便な反応条件で、シリカ粒子表面を修飾することが可能となるばかりではなく、シリカ粒子表面に反応性を制御しやすい官能基を導入することが可能となり、その結果、反応性部位及びフルオロアルキル基Rf2を有するフッ素化合物A(一般式(II))を、一般式(I)で示される化合物を介して、シリカ粒子表面で反応させることが可能になる。
続いて疎水性処理無機粒子Aを除いた他の無機粒子に関して説明する。本発明に使用される塗料組成物は、2種類以上の無機粒子を含むことが好ましいが、該無機粒子の少なくとも1種類が他の無機粒子であることが好ましい。この疎水性処理無機粒子Aを除いた他の無機粒子は、第2層(高屈折率層)構成成分として好適に用いられる。
他の無機粒子は、特に限定されないが、金属や半金属の酸化物であることが好ましく、Zr,Ti,Al,In,Zn,Sb,Sn,およびCeよりなる群から選ばれる少なくとも一つの金属や半金属の酸化物粒子であることがさらに好ましい。また第2層(高屈折率層)構成成分として好適に用いられる他の無機粒子は、シリカ粒子よりも屈折率が高い無機粒子が好ましく、具体的には酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化チタン(TiO)、酸化アルミニウム(Al)、酸化インジウム(In)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO)、酸化アンチモン(Sb)、およびインジウムスズ酸化物(In)から選ばれる少なくとも一つの金属酸化物、や半金属酸化物であり、特に好ましくはアンチモン含有酸化スズ(ATO)や酸化チタン(TiO)、酸化ジルコニウム(ZrO)である。
塗料組成物は、これら疎水性処理無機粒子Aを除いた他の無機粒子(金属酸化物や半金属酸化物からなる粒子など)を少なくとも1種類含むことが好ましい。より好ましくは疎水性処理無機粒子Aを除いた他の無機粒子を1種類以上5種類以下含む態様であり、特に好ましくは1種類含む態様である。
塗料組成物中の第2層(高屈折率層)構成成分として好適な他の無機粒子の数平均粒子径、特に低屈折率層構成成分として好適なシリカ粒子よりも屈折率が高い金属酸化物や半金属酸化物からなる無機粒子の平均粒子径は、好ましくは、1nmから150nm、より好ましくは2nmから100nmであり、さらに好ましくは25nm以下、特に好ましくは20nm以下である。他の無機粒子の数平均粒子径が1nmよりも小さくなると、他の無機粒子を主として含むこととなる層中の空隙密度が低下することによる透明度の低下が起こるため好ましくなく、他の無機粒子の数平均粒子径が150nmよりも大きくなると、高屈折率層の厚さが大きくなりすぎて良好な反射防止性能が得られにくくなり好ましくない。
塗料組成物中の第2層(高屈折率層)構成成分として好適な他の無機粒子の屈折率、特にシリカ粒子よりも屈折率が高い金属酸化物や半金属酸化物からなる無機粒子の屈折率としては、好ましくは1.58以上2.80以下、より好ましくは1.60以上2.50以下である。無機粒子の屈折率が1.58よりも小さくなると、第2層(高屈折率層)の屈折率が低下することがあり、無機粒子の屈折率が2.80よりも大きくなると、第2層(高屈折率層)と支持基材との屈折率差が上昇し、良好な反射防止性能が得られなくなり、また干渉模様が発生し外観が悪化することがある。
塗料組成物中の第2層(高屈折率層)構成成分として用いられる他の無機粒子については前述した通りだが、疎水性化合物Aによる処理がされた無機粒子がシリカ粒子の場合は、該シリカ粒子よりも屈折率が高い無機粒子であることが特に好ましく、このような該シリカ粒子よりも屈折率が高い無機粒子としては、数平均粒子径が1nmから150nmであり、かつ屈折率が1.60から2.80の金属酸化物や半金属酸化物が好ましく用いられる。そのような金属酸化物や半金属酸化物の具体例としては、アンチモン含有酸化スズ(ATO)及び/または酸化チタン(TiO)が挙げられ、特に反射防止性の点から屈折率が高い酸化チタンがより好ましい。
本発明に使用される塗料組成物において、疎水性処理無機粒子Aがフッ素処理シリカ粒子であり、他の無機粒子がシリカ粒子よりも屈折率が高い無機粒子である場合、支持基材の面Aに該塗料組成物を1回のみ塗布して、続いて乾燥することで、フッ素処理シリカ粒子を含有する第1層(低屈折率層)と、他の無機粒子を含有する第2層(高屈折率層)からなる反射防止層を、支持基材、第2層(高屈折率層)、第1層(低屈折率層)の順に好適に形成できるため好ましい態様である。
[塗料組成物の粘度]
本発明に使用される塗料組成物は、粘度変化(Δη)が0.1mPa・s以上10mPa・s以下であることが好ましい。塗料組成物を塗布乾燥させる過程において、有機溶媒の揮発に伴い固形分濃度が上昇し流動性が低下するが、塗料組成物の粘度変化(Δη)が0.1mPa・s以上10mPa・s以下である場合、流動性の低下を防ぐとともに、疎水性処理無機粒子同士の粒子間相互作用の抑制、該粒子同士の凝集体形成が抑制でき、屈折率の異なる2層の自発的な層形成が容易となり、良好な反射防止性を発現することが可能となる。
これらの点から、塗料組成物の粘度変化(Δη)は、0.1mPa・s以上9mPa・s以下がより好ましく、0.1mPa・s以上8mPa・s以下がさらに好ましく、0.1mPa・s以上7mPa・s以下が特に好ましい。
ここで、該塗料組成物の粘度変化(Δη)とは、せん断速度0.1s−1における粘度ηとせん断速度10s−1における粘度ηの粘度の差(η−η)である。なお、せん断速度0.1s−1における粘度ηとせん断速度10s−1における粘度ηは、一般的な回転レオメーターを用いて測定することができる。
塗料組成物の粘度変化(Δη)を0.1mPa・s以上10mPa・s以下とするためには、塗料組成物中の2種類以上の無機粒子における少なくとも1種類の無機粒子が疎水性処理無機粒子であることが重要であり、さらに後述する疎水性化合物Bを含む塗料組成物とすることによっても達成でき、さらにバインダー成分として1分子中に3個以上のアクリロイルオキシ基を有する多官能アクリレートを使用する方法も好ましい。
[疎水性化合物B]
塗料組成物は、以下の疎水性化合物Bを含むことが好ましい。塗料組成物が、疎水性化合物Bを含有することにより、該塗料組成物を用いて得られる反射防止部材の反射防止層には、疎水性化合物Bに由来する成分を含有することができる。
疎水性化合物Bとは、以下のフッ素化合物B、長鎖炭化水素化合物B、及びシリコーン化合物Bからなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物である。
本発明における疎水性化合物Bは、無機粒子同士の凝集体の形成を抑制する働きがあり、該塗料組成物を用いて得られる反射防止部材が、良好な反射防止性を発現することが可能のため、塗料組成物中に含むことが好ましく、より好ましい疎水性化合物Bとしては、フッ素化合物Bである。
また疎水性化合物Bは、疎水性処理無機粒子を得るための処理に用いられる疎水性化合物Aと同一化合物であってもよい。つまり、疎水性化合物Aとは疎水基及び反応性部位を有する化合物であるが、疎水性化合物Aがフッ素化合物A、長鎖炭化水素化合物A、シリコーン化合物Aから選ばれる場合には、疎水性化合物Bと疎水性化合物Aとは同一の化合物を取り得るが、この疎水性化合物Aと疎水性化合物Bとが同一化合物になっても問題はない。しかし、疎水性処理無機粒子を得るための処理に用いた疎水性化合物Aとは別に、粒子表面に結合していない疎水性化合物Bを含むことで、疎水性処理無機粒子が好適に空気側(最表面層)へ移動して、好適に低屈折率層を形成することができるため、本発明の塗料組成物は疎水性化合物Bを含むことが好ましい。
フッ素化合物Bとは、炭素数4以上のフルオロアルキル基及び反応性部位を有する化合物である。そして、本発明でいうフルオロアルキル基とは、アルキル基が持つ全ての水素がフッ素に置き換わった置換基であり、フッ素原子と炭素原子のみから構成される置換基である。なお、詳細については後述する。
長鎖炭化水素化合物Bとは、炭素数8以上の炭化水素基及び反応性部位を有する化合物である。つまり長鎖炭化水素化合物Bの好ましい態様などは、前述の長鎖炭化水素化合物Aの好ましい態様などの説明と同様であり、長鎖炭化水素Bの具体例も、前述の長鎖炭化水素Aの具体例と同様である。
シリコーン化合物Bとは、シロキサン基及び反応性部位を有する化合物である。そして、本発明でいうシロキサン基とは、連続したシロキサン結合(−Si−O−)を骨格としたポリマーであり、シリコーン化合物Bの好ましい様態としては、一般式(C)(−(Si(R)(R)−O)−)で示されるポリシロキサン基を有す態様である。
シリコーン化合物Bの好ましい態様などは、前述のシリコーン化合物Aの好ましい態様などの説明と同様であり、シリコーン化合物Bの具体例も、前述のシリコーン化合物Aの具体例と同様である。
また、本発明でいう反応性部位とは、熱または光などの外部エネルギーにより塗料組成物中のバインダー成分などと反応する部位をさす。このような反応性部位として、反応性の観点からアルコキシシリル基及びアルコキシシリル基が加水分解されたシラノール基や、カルボキシル基、水酸基、エポキシ基、ビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基などが挙げられる。
[フッ素化合物B]
塗料組成物は、前述のフッ素化合物Bを含むことが好ましい。塗料組成物が、フッ素化合物Bを含有することにより、該塗料組成物を用いて得られる反射防止部材の反射防止層には、フッ素化合物Bに由来する成分を含有することができる。
フッ素化合物B中のフルオロアルキル基の数は必ずしも一つである必要はなく、フッ素化合物Bは複数のフルオロアルキル基を有してもよい。
またフッ素化合物Bが有するフルオロアルキル基は、炭素数4以上であることが重要であるが、炭素数4〜7の直鎖状または分岐状のフルオロアルキル基Rf1であることが好ましい。フルオロアルキル基Rf1は、塗料組成物の乾燥時の疎水性処理無機粒子同士の粒子間相互作用の抑制の点から炭素数5以上7以下が好ましく、さらに好ましくは炭素数6以上7以下である。また分岐状に比べ直鎖状の方が立体障害が小さく、疎水性処理無機粒子に吸着し易い点から、フルオロアルキル基Rf1は直鎖状が好ましい。フルオロアルキル基を、炭素数4〜7の直鎖状または分岐状のフルオロアルキル基Rf1とすることにより、粒子の分離性が良化し、屈折率の異なる2層の自発的な層形成が容易になり、反射防止性が良化するため好ましい。
フッ素化合物B中の反応性部位は、後述する一般式(B)ではA、一般式(A)ではアクリル基(HC=C(R)−)である。フッ素化合物B中の反応性部位の数は、一つである必要はなく、複数の反応性部位を有してもよい。反応性部位は、反応性やハンドリング性の観点から、アルコキシシリル基あるいはシラノール基や、アクリロイル(メタクリロイル)基が好ましい。
フッ素化合物Bの数平均分子量は、300以上4000以下であることが好ましい。塗料組成物が、数平均分子量が300以上4000以下のフッ素化合物Bを含む場合、フッ素化合物Bの親和力により、フッ素化合物Bが疎水性処理無機粒子表面に吸着し、疎水性処理無機粒子同士の粒子間相互作用、または凝集体の形成を抑制し、その結果塗料組成物の乾燥時の流動性の低下を防止し、屈折率の異なる2層の自発的な層形成が容易となり、良好な反射防止性を発現することが可能となるため、数平均分子量が300以上4000以下のフッ素化合物Bを含むことが好ましい。
フッ素化合物Bは、振動式粘度計による粘度ηが1〜100mPa・sであり、かつ表面張力γが6〜26mN/mであることが好ましい。フッ素化合物Bの粘度ηは、より好ましくは1〜90mPa・sであり、さらに好ましくは1〜80mPa・sである。
ここで、振動式粘度計による粘度ηは、フッ素化合物Bを25℃にて測定したときの粘度を表し、株式会社エー・アンド・デイ社製の音叉型振動式粘度計SV−10Aにより測定することができる。振動式粘度計の原理は、液体中で振動子を一定幅にて共振させ、振動子の粘性抵抗を加振力となる電流値を測定することから粘度を求めるものである。より具体的には、音叉形状を有する2枚の板バネの中央に、電磁駆動部を設置して板バネを一定の設定振幅にて共振させ、粘性抵抗により異なる駆動電流を検出し、あらかじめ記憶させている検量線と対応させて演算し、粘度を測定するものである。
また本発明におけるフッ素化合物Bの表面張力γは、より好ましくは6mN/m以上24mN/m以下、さらに好ましくは6mN/m以上22mN/m以下である。
フッ素化合物Bの振動式粘度計による粘度η及び表面張力γは、疎水性処理無機粒子表面へのフッ素化合物Bの親和力を左右するパラメーターであり、フッ素化合物Bの粘度ηが1〜100mPa・sであり、かつ表面張力が6mN/m以上26mN/m以下であると、フッ素化合物Bの親和力により、フッ素化合物Bが疎水性処理無機粒子表面に吸着しやすくなり、疎水性処理無機粒子同士の凝集体の形成を抑制し、その結果塗料組成物の乾燥時の流動性の低下を防止し、屈折率の異なる2層の自発的な層形成が容易となり、良好な反射防止性を発現することが可能となる。そのためフッ素化合物Bは、振動式粘度計による粘度ηが1〜100mPa・sであり、かつ表面張力が6mN/m以上26mN/m以下であることが好ましい。
塗料組成物中のフッ素化合物Bは、1種類であっても良いし、2種類以上を混合して用いてもよい。またフッ素化合物Bは、フッ素化合物Aと同一化合物となる場合があってもよい。また、塗料組成物中に紫外線などにより硬化するフッ素化合物Bを含有する場合は、酸素阻害を防ぐことができることから、紫外線による硬化工程での酸素濃度はできるだけ低い方が好ましく、窒素雰囲気下(窒素パージ)で硬化する方がより好ましい。
また本発明におけるフッ素化合物Bは、以下の一般式(A)のモノマー、一般式(B)のモノマー、一般式(A)のモノマーに由来するオリゴマー、及び一般式(B)のモノマーに由来するオリゴマーからなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物であることがより好ましい。
C=C(R)−COO−R−Rf1 ・・・一般式(A)
A−R−Rf1 ・・・一般式(B)
(式中、Rは水素原子またはメチル基、Rf1は炭素数4〜7の直鎖状または分岐状のフルオロアルキル基、Rは炭素数1〜10のアルキル基、Rは炭素数1〜10のアルキル基、Aは反応性部位である。)
なおフッ素化合物Bは、フルオロアルキル基および反応性部位を有するが、一般式(A)のモノマーや一般式(A)のモノマーに由来するオリゴマーについては、Rf1がフルオロアルキル基であり、HC=C(R)−が反応性部位である。また、一般式(B)のモノマーや一般式(B)のモノマーに由来するオリゴマーについては、Rf1がフルオロアルキル基であり、Aが反応性部位である。
一般式(A)のモノマーの具体例としては、2,2,2−トリフルオロエチルアクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフロオロプロピルアクリレート、2−パーフルオロブチルエチルアクリレート、3−パーフルオロブチル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−パーフルオロヘキシルエチルアクリレート、3−パーフルオロヘキシル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−パーフルオロオクチルエチルアクリレート、3−パーフルオロオクチル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−パーフルオロデシルエチルアクリレート、2−パーフルオロ−3−メチルブチルエチルアクリレート、3−パーフルオロ−3−メトキシブチル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−パーフルオロ−5−メチルヘキシルエチルアクリレート、3−パーフルオロ−5−メチルヘキシル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−パーフルオロ−7−メチルオクチル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、テトラフルオロプロピルアクリレート、オクタフルオロペンチルアクリレート、ドデカフルオロヘプチルアクリレート、ヘキサデカフルオロノニルアクリレート、ヘキサフルオロブチルアクリレート、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルメタクリレート、2−パーフルオロブチルエチルメタクリレート、3−パーフルオロブチル−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−パーフルオロオクチルエチルメタクリレート、3−パーフルオロオクチル−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−パーフルオロデシルエチルメタクリレート、2−パーフルオロ−3−メチルブチルエチルメタクリレート、3−パーフルオロ−3−メチルブチル−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−パーフルオロ−5−メチルヘキシルエチルメタクリレート、3−パーフルオロ−5−メチルヘキシル−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−パーフルオロ−7−メチルオクチルエチルメタクリレート、3−パーフルオロ−7−メチルオクチルエチルメタクリレート、テトラフルオロプロピルメタクリレート、オクタフルオロペンチルメタクリレート、オクタフルオロペンチルメタクリレート、ドデカフルオロヘプチルメタクリレート、ヘキサデカフルオロノニルメタクリレート、1−トリフルオロメチルトリフルオロエチルメタクリレート、ヘキサフルオロブチルメタクリレートなどが挙げられる。
また一般式(A)のモノマーに由来するオリゴマーの具体例としては、上記一般式(A)のモノマーを用いて、ラジカル重合などの反応により得られる、平均重合度2〜10程度の化合物が例示される。
一般式(B)のモノマーの具体例としては、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン(TSL8233、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)、トリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン(TSL8257、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)などをはじめとしたフルオロアルキル基を有するフルオロアルキルシランが例示される。
また一般式(B)のモノマーに由来するオリゴマーの具体例は、上述のフルオロアルキルシランに所定量の水を加え酸触媒の存在下にて副生するアルコールを留去しながら反応させることにより得られる化合物などが例示される。この反応により、フルオロアルキルシランの一部が加水分解し、更にこれらが縮合反応を起こしオリゴマーが得られる。加水分解率は使用する水の量によって調節することができる。加水分解に用いる水の量は、通常シランカップリング剤に対して1.5モル倍以上である。さらに得られるオリゴマーの平均重合度は2〜10の化合物であることが好ましい。
振動式粘度計による粘度ηが1mPa・s以上100mPa・s以下であり、かつ表面張力γが6mN/m以上26mN/m以下のフッ素化合物Bとするためには、炭素数4以上7以下の直鎖状または分岐状のフルオロアルキル鎖を有するのが好ましく、さらに前記一般式(A)のモノマー、(B)のモノマー、一般式(A)のモノマーに由来するオリゴマー、及び一般式(B)のモノマーに由来するオリゴマーから選ばれる少なくとも1種の化合物であることが好ましい。このようなフッ素化合物Bとして、2−パーフルオロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、2−パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシランなどが特に好ましい化合物として例示される。
[溶媒]
塗料組成物は、前述の2種類以上の無機粒子やフッ素化合物Bに加えて、さらに有機溶媒を含むことが好ましい。塗料組成物が有機溶媒を含むと、フッ素処理無機粒子の粒子間相互作用を抑制し、またフッ素処理無機粒子同士の凝集体が抑制しやすくなる。また、塗料組成物の乾燥時の流動性の低下を防止することが可能となるため、屈折率の異なる2層からなる反射防止層の自発的な層形成が容易となり、良好な反射防止性を発現することが可能となるため特に好ましい。
有機溶媒は、特に限定されるものではないが、通常、常圧での沸点が200℃以下の溶媒が好ましい。具体的には、水、アルコール類、ケトン類、エーテル類、エステル類、炭化水素類、アミド類、フッ素類等が用いられる。これらは、1種、または2種以上を組み合わせて用いることができる。具体的には、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メタノール、イソプロピルアルコール等が挙げられ、特に無機粒子の安定性の点からイソプロピルアルコール、プロピレングリコールなどが特に好ましい。
アルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、イソブタノール、n−ブタノール、tert−ブタノール、エトキシエタノール、ブトキシエタノール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ベンジルアルコール、フェニチルアルコール等を挙げることができる。ケトン類としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等を挙げることができる。エーテル類としては、例えば、ジブチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどを挙げることができる。エステル類としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル等を挙げることができる。芳香族類としては、例えば、トルエン、キシレン等を挙げることができる。アミド類としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等を挙げることができる。
また塗料組成物は、全成分の合計を100質量%とした際に、前記疎水性化合物Bを1質量%以上30質量%以下含むことが好ましく、より好ましくは2質量%以上25質量%以下、さらに好ましくは3質量%以上20質量%以下である。ここで、本発明の全成分とは、塗料組成物中に含まれる全成分を表し、有機溶媒、後述するバインダー成分、その他各種添加剤も含む全ての成分を表す。
塗料組成物が、全成分の合計100質量%において、前記疎水性化合物Bを1質量%以上30質量%以下含むことにより、疎水性化合物Bが疎水性処理無機粒子表面に吸着し、疎水性処理無機粒子同士の凝集体の形成を抑制し、その結果塗料組成物の乾燥時の流動性の低下を防止し、屈折率差の大きな2層の厚み制御が容易となり、良好な反射防止性を発現することが可能となるため、塗料組成物中の疎水性化合物Bを上述した含有量とすることが好ましい。また疎水性化合物Bは、塗料組成物を塗布し、乾燥させる過程における無機粒子の分散安定化に寄与するため、溶媒も含んだ全成分に対する割合が重要であり、無機粒子に対する割合ではなく、全成分に対する比率で疎水性化合物Bを上記範囲含有することが好ましい。
[バインダー成分]
塗料組成物は、更に、バインダー成分を含むことが好ましい。つまり、本発明の塗料組成物により得られる反射防止部材の反射防止層中の低屈折率層および高屈折率層には、前記した物質以外に別途塗料組成物中のバインダー成分に由来する成分(バインダー)を含んでいてもよい。ここで本発明において、塗料組成物中に含まれるバインダーを「バインダー成分」、反射防止部材中に含まれるバインダー成分に由来する成分を単に「バインダー」と表す。バインダー成分としては特に限定するものではないが、製造性の観点より、熱及び/または活性エネルギー線などにより、硬化可能なバインダー成分であることが好ましく、バインダー成分は一種類であっても良いし、二種類以上を混合して用いても良い。また、本発明における前記疎水性処理無機粒子や、前記疎水性処理無機粒子以外の無機粒子を膜中に保持する観点より、分子中にアルコキシシランやアルコキシシランの加水分解物や反応性二重結合を有しているバインダー成分であることが好ましい。
このようなバインダー成分として、成分中に多官能アクリレートを用いるのが好ましく、代表的なものを以下に例示する。1分子中に、3(より好ましくは4または5)個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する多官能アクリレートおよびその変性ポリマー、具体的な例としては、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサンメチレンジイソシアネートウレタンポリマーなどを用いることができる。これらの単量体は、1種または2種以上を混合して使用することができる。また、市販されている多官能アクリル系組成物としては三菱レーヨン株式会社;(商品名”ダイヤビーム”シリーズなど)、長瀬産業株式会社;(商品名”デナコール”シリーズなど)、新中村株式会社;(商品名”NKエステル”シリーズなど)、大日本インキ化学工業株式会社;(商品名”UNIDIC”など)、東亞合成化学工業株式会社;(”アロニックス”シリーズなど)、日本油脂株式会社;(”ブレンマー”シリーズなど)、日本化薬株式会社;(商品名”KAYARAD”シリーズなど)、共栄社化学株式会社;(商品名”ライトエステル”シリーズなど)などを挙げることができ、これらの製品を利用することができる。
[塗料組成物中のその他の成分]
本発明の塗料組成物としては、更に開始剤や硬化剤や触媒を含むことが好ましい。開始剤及び触媒は、疎水性処理無機粒子とバインダー成分との反応を促進したり、バインダー成分間の反応を促進するために用いられる。該開始剤としては、塗料組成物をアニオン、カチオン、ラジカル反応等による重合および/または縮合および/または架橋反応を開始あるいは促進できるものが好ましい。
該開始剤、該硬化剤、及び触媒は、種々のものを使用できる。また、複数の開始剤を同時に用いても良いし、単独で用いても良い。さらに、酸性触媒や、熱重合開始剤や光重合開始剤を併用しても良い。酸性触媒の例としては、塩酸水溶液、蟻酸、酢酸などが挙げられる。熱重合開始剤の例としては、過酸化物、アゾ化合物が挙げられる。また、光重合開始剤の例としては、アルキルフェノン系化合物、含硫黄系化合物、アシルホスフィンオキシド系化合物、アミン系化合物などが挙げられるがこれらに限定されるものではないが、硬化性の点から、アルキルフェノン系化合物が好ましく、具体例としては、2.2−ジメトキシ−1.2−ジフェニルエタン−1−オン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−フェニル)−1−ブタン、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−(4−フェニル)−1−ブタン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−1−ブタン、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルフォリニル)フェニル]−1−ブタン、1−シクロヒキシル−フェニルケトン、2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−[4−(2−エトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、などが挙げられる。
なお、該開始剤及び該硬化剤の含有割合は、塗料組成物中のバインダー成分量100質量部に対して0.001質量部から30質量部が好ましく、より好ましくは0.05質量部から20質量部であり更に好ましくは0.1質量部から10質量部である。
その他として、本発明の塗料組成物には更に、界面活性剤、増粘剤、レベリング剤などの添加剤を必要に応じて適宜含有させても良い。
[支持基材]
支持基材は、ガラス板やプラスチックフィルムを用いることができるが、好ましくはプラスチックフィルムである。プラスチックフィルムの材料の例には、セルロースエステル(例、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、プロピオニルセルロース、ブチリルセルロース、アセチルプロピオニルセルロース、ニトロセルロース)、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステル(例、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−1,2−ジフェノキシエタン−4,4’−ジカルボキシレート、ポリブチレンテレフタレート)、ポリスチレン(例、シンジオタクチックポリスチレン)、ポリオレフィン(例、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテン)、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリメチルメタクリレート及びポリエーテルケトンなどが含まれるが、これらの中でも特にトリアセチルセルロース、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレートおよびポリエチレンナフタレートが好ましい。
前述の通り、支持基材における面Aの表面粗さは8nm以上40nm以下であることが重要である。なお支持基材としては、各種の機能層を有する、または各種の処理が施されたプラスチックフィルムを、支持基材として用いることが可能である。本発明においては、物性向上の点から機能層を有する支持基材を用いることが好ましい。機能層を有するプラスチックフィルムを、支持基材として用いた場合、面Aとしてはプラスチックフィルム側の面であっても、機能層側の面であっても特に限定されない。但し、得られる反射防止部材にハードコート性を持たせる場合には、ハードコート層を有するプラスチックフィルムのハードコート層側を面Aとすることが重要であり、また反射防止層と支持基材との接着性を向上させる場合には、易接着層を有するプラスチックフィルムの易接着層側を面Aとすることが重要である。そして機能層を有するプラスチックフィルムを支持基材として用いた際に、該機能層の側に反射防止部材を形成する場合(該機能層の側が面Aの場合)には、該機能層(面A)の表面粗さが、8nm以上40nm以下であることが重要である。そしてこの場合の面Aの表面粗さは、好ましくは10nm以上35nm以下、より好ましくは12nm以上30nm以下である。支持基材の反射防止層を形成する側の面(面A)に、微細な凹凸構造を形成することによって、該面A側に塗料組成物を1回塗布すると、層間密着力が向上し、耐擦傷性や耐磨耗性が得られる。また、微細な凹凸構造であることから、高透明性、低干渉縞、映り込み防止性能を両立可能である。
なお、本発明の好ましい態様においては、上述のようなハードコート層を有さない、耐擦傷性に欠けるプラスチックフィルムを支持基材として、該支持基材上に、該塗料組成物を1回塗布する工程を設けることによっても、反射防止性に加え耐擦傷性も付与できる。そのため本発明の好ましい態様においては、従来技術のように支持基材上にハードコート層を設ける必要はない(支持基材としてハードコート層を有するフィルムを使用する必要はない)利点を有する。
前記ハードコート層を有さない、耐擦傷性に欠けるプラスチックフィルムを支持基材として用いた態様の場合、得られる高屈折率層の厚みを厚くすることにより、高屈折率層を高屈折率ハードコート層とすることができるため、耐擦傷性の付与が可能である。また、この場合の高屈折率層の厚みは、好ましくは500nm以上4000nm以下、さらに好ましくは550nm以上3000nm以下であることが好ましい。
また、高屈折率層の厚みを500nm以上4000nm以下と厚くする場合、本発明において使用する塗料組成物の粘度変化(Δη)を、0.1mPa・s以上10mPa・s以下とすることが重要である。単に塗料組成物中の高屈折率層構成成分の含有比率を大きくすると、乾燥過程での有機溶媒の揮発に伴い固形分濃度が上昇し、疎水性処理無機粒子同士が凝集体を形成し、疎水性処理無機粒子の空気側(最表面層)への移動が困難となり、その結果反射防止性が失われる。そのため塗料組成物の粘度変化を上記範囲に調整することにより、高屈折率層の厚みを厚くすることが可能となる。
さらにより好ましくは、該塗料組成物がフッ素化合物B等の疎水性化合物Bを含有し、疎水性化合物Bを含有することにより、疎水性処理無機粒子同士の凝集を抑制することができ、屈折率の大きな2層の厚み制御が容易となる。そのため該塗料組成物を用いて得られる反射防止部材が良好な反射防止性を発現し、高屈折率層の厚みを厚くすることが可能となる。
また上述のように、支持基材は接着層、シールド層、滑り層などの各種機能層を有するフィルムとすることもできる。
支持基材の光透過率は、80%以上100%以下であることが好ましく、86%以上100%以下であることがさらに好ましい。ここで光透過率とは、光を照射した際に試料を透過する光の割合のことであり、JIS K 7361−1(1997)に従い測定することができる透明材料の透明性の指標である。反射防止部材の光透過率としては値が大きいほど良好であり、値が小さいとヘイズ値が上昇、画像劣化が生じる可能性が高くなるため好ましくない。ヘイズはJIS K 7136(2000)に規定された透明材料の濁りの指標である。ヘイズは小さいほど透明性が高いことを示す。
支持基材のヘイズは、0.01%以上2.0%以下であることが好ましく、0.05%以上1.0%以下であることがさらに好ましい。
支持基材の屈折率は、1.4〜1.7であることが好ましい。なお、ここでいう屈折率とは、光が空気中からある物質中に進む時、その界面で進行方向の角度を変える割合のことであり、JIS K 7142(1996)に規定されている方法により測定することができる。
支持基材は、赤外線吸収剤あるいは紫外線吸収剤を含有してもよい。赤外線吸収剤の含有量は、支持基材の全成分100質量%において0.01質量%以上20質量%以上であることが好ましく、0.05質量%以上10質量%以上であることがさらに好ましい。滑り剤として、不活性無機化合物の粒子を透明支持体に含有してもよい。不活性無機化合物の例には、SiO、TiO、BaSO、CaCO、タルクおよびカオリンが含まれる。更に、支持基材に、処理を実施してもよい。
[反射防止部材の製造方法]
反射防止部材の製造方法では、前述の塗料組成物を、支持基材の少なくとも片面上に、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法などの塗布方法によって1回のみ塗布する工程(塗布工程)を有することが重要である。そして、続いて塗布した塗料組成物を加熱などにより乾燥を行う工程(乾燥工程)により、反射防止部材を得ることができる。
本発明の製造方法によれば、前記塗料組成物を、支持基材の少なくとも片面上に1回のみ塗布する工程により、支持基材上に屈折率の異なる二層を同時に形成することができる。
この屈折率の異なる二層からなる反射防止層を同時に形成するメカニズムとして以下のモデルを考えている。以下では本発明の好ましい態様であるフッ素化合物Bを含む態様のメカニズムを例に取り説明する。
まず塗料組成物中では、疎水性処理無機粒子と親和性の高い疎水性化合物Bが、疎水性処理無機粒子表面に選択的に吸着し、疎水性処理無機粒子とその他無機粒子が均一に分散した状態を保っている。この塗料組成物を支持基材上に塗布した後においても、塗布された塗料組成物は同様に疎水性処理無機粒子とその他の無機粒子が均一に分散した状態を保っている。そして乾燥する工程において、低屈折率構成成分である疎水性処理無機粒子は、エネルギー的に安定な空気側(最表面)に移行し、最表層に疎水性処理無機粒子からなる低屈折率層を形成する。しかしこの状態では、乾燥途中であるため揮発しきれていない溶媒が多く存在し、揮発も並行して進行している。その揮発過程において一旦形成された低屈折率層が一度破壊されるものの、共存する低揮発性の疎水性化合物Bの存在により、溶媒が少ない状態であっても疎水性処理無機粒子同士が凝集することなく粒子の移動を容易にし、一度破壊された低屈折率層は再配列し再び均一な低屈折率層を形成することができ、下層に高屈折率層を形成するものと考えている。また疎水性化合物Bを含まない場合においてもこのように該塗料組成物の粘度変化(Δη)を0.1mPa・s以上10mPa・s以下とすることにより、疎水性処理無機粒子同士の凝集が抑制でき、疎水性化合物Bを含有する場合と同様の現象が起こり、1回のみ塗布する工程により支持基材上に屈折率の異なる二層を同時に形成することができるものと考えている。
上記のような反射防止部材を得るためには、得られる反射防止部材中から完全に溶媒を除去する事に加え、欠陥なく二層に分離させるという観点からも、乾燥工程では加熱することが好ましい。乾燥工程は、(A)材料余熱期間、(B)恒率乾燥期間、(C)減率乾燥期間に分けられるが、材料予熱期間(材料全体が乾燥する温度まで昇温する期間)から、恒率乾燥期間(塗液が動かなくなるまでの期間)にかけて、溶媒の蒸発に伴い屈折率の異なる二層を形成するが、二層を形成する無機粒子の移動に十分な時間を確保するため、風速が低く、できるだけ低温で乾燥することが好ましい。
この乾燥初期である(A)材料余熱期間や(B)恒率乾燥期間における風速としては、1m/s以上10m/s以下であることが好ましく、より好ましくは1m/s以上5m/s以下である。乾燥後期における減率乾燥期間においては、残存溶媒を減らせる点から、風速は10m/s以上70m/s以下であるのが好ましく、また温度は100℃以上200℃以下であるのが好ましい。加熱温度としては、用いる溶媒の沸点及びポリマーのガラス転移温度などから決定できるが特に限定される値ではない。乾燥工程における、加熱方式としては、熱風噴射、赤外線、マイクロ波、誘導加熱などが挙げられる。この中でも、乾燥初期である(A)材料余熱期間や(B)恒率乾燥期間においては、風速、温度の点から、塗布面に対し、平行に送風する熱風乾燥が好ましいが、特に限定されるものではない。また乾燥後期である(C)減率乾燥期間においては、汎用性、乾燥速度の点から塗布面に対し、垂直に送風する熱風乾燥であるのが好ましい。
さらに、乾燥工程後に形成された支持基材上の2層に対して、熱またはエネルギー線を照射する事によるさらなる硬化操作(硬化工程)を行ってもよい。硬化工程において、熱で硬化する場合には、室温から200℃であることが好ましく、溶媒の蒸発および、シラノールなどを含む樹脂の硬化助剤の観点から、より好ましくは100℃以上200℃以下、さらに好ましくは130℃以上200℃以下である。100℃以上とすることにより、残存する溶媒量が減少し、非常に短時間でシラノールなどを含む樹脂の硬化が進むために好ましい。
また、エネルギー線により硬化する場合には汎用性の点から電子線(EB線)及び/又は紫外線(UV線)であることが好ましい。また紫外線により硬化する場合は、酸素阻害を防ぐことができることから酸素濃度ができるだけ低い方が好ましく、窒素雰囲気下(窒素パージ)で硬化する方がより好ましい。酸素濃度が高い場合には、最表面の硬化が阻害され、硬化が不十分となり、耐擦傷性、耐アルカリ性が不十分となる場合がある。また、紫外線を照射する際に用いる紫外線ランプの種類としては、例えば、放電ランプ方式、フラッシュ方式、レーザー方式、無電極ランプ方式等が挙げられる。放電ランプ方式である高圧水銀灯を用いて紫外線硬化させる場合、紫外線の照度が100mW/cm以上3000mW/cm以下、好ましくは200mW/cm以上2000mW/cm以下、さらに好ましくは300mW/cm以上1500mW/cm以下となる条件で紫外線照射を行うことが好ましく、紫外線の積算光量が100mJ/cm以上3000mJ/cm以下、好ましく200mJ/cm以上2000mJ/cm以下、さらに好ましくは300mJ/cm以上1500mJ/cm以下となる条件で紫外線照射を行うことがより好ましい。ここで、紫外線照度とは、単位面積当たりに受ける照射強度で、ランプ出力、発光スペクトル効率、発光バルブの直径、反射鏡の設計及び被照射物との光源距離によって変化する。しかし、搬送スピードによって照度は変化しない。また、紫外線積算光量とは単位面積当たりに受ける照射エネルギーで、その表面に到達するフォトンの総量である。積算光量は、光源下を通過する照射速度に反比例し、照射回数とランプ灯数に比例する。
硬化を熱により行う場合、乾燥工程と硬化工程とを同時におこなってもよい。
また本発明の製法により得られた反射防止部材は、PDPなどの各種画像表示装置の視認側表面に設けることで、反射防止性に優れた画像表示装置を提供することができる。なおこの際は、反射防止部材における支持基材側を画像表示装置側として、反射防止部材などを設けることが重要である。
次に、実施例に基づいて本発明を説明するが、本発明は必ずしもこれらに限定されるものではない。なお、以下の高屈折率層構成成分とは前述の通り第2層構成成分であり、低屈折率層構成成分とは前述の通り第1層構成成分である。
[高屈折率層構成成分(A−8)の調整]
下記材料を混合し、高屈率層構成成分(A−8)を得た。
二酸化チタン粒子分散物 72質量部
(ELCOM 日揮触媒化成株式会社製: 固形分30質量%、数平均粒子径 8nm)
バインダー成分A 18質量部
(カヤラッドDPHA 日本化薬株式会社製:固形分100質量%)
2−プロパノール 1質量部
エチレングリコールモノブチルエーテル 9質量部
[高屈折率層構成成分(A−25)の調整]
前記、高屈折率層構成成分(A−8)に対し、二酸化チタン粒子分散物を下記のATO粒子分散物に変えた以外は同様にして、高屈折率層構成成分(A−25)を得た。
ATO粒子分散物
(リオデュラス 東洋インキ株式会社製:固形分30質量%、数平均粒子径 25nm)
[高屈折率層構成成分(B−8)の調整]
前記、高屈折率層構成成分(A−8)に対し、バインダー成分Aを下記材料に変えた以外は同様にして、高屈折率層構成成分(B−8)を得た。
バインダー成分B
(カヤラッドPET−30 日本化薬株式会社製:固形分100質量%)
[高屈折率層構成成分(B−15)の調整]
前記、高屈折率層構成成分(B−8)に対し、二酸化チタン粒子分散物を下記の二酸化ジルコニウム粒子分散物に変えた以外は同様にして、高屈折率層構成成分(B−15)を得た。
二酸化ジルコニウム粒子分散物
(OZ−S30K 日産化学工業株式会社製:固形分30質量%、数平均粒子径 15nm)
[低屈折率層構成成分の調整]
[低屈折率層構成成分(a)の調整]
中空シリカであるスルーリア(日揮触媒化成株式会社製中空シリカ:固形分濃度20質量%、数平均粒子径 60nm)15gに、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン1.37gと10質量%蟻酸水溶液0.17gを混合し、70℃にて1時間撹拌した。ついで、HC=CH−COO−CH−(CFF(疎水性化合物A) 1.38g及び2,2−アゾビスイソブチロニトリル0.057gを加えた後、60分間90℃にて加熱撹拌した。その後、イソプロピルアルコールを加え希釈し、固形分14質量%の低屈折率層構成成分(a)とした。
[低屈折率層構成成分(b)の調整]
低屈折率層構成成分(a)に対し、HC=CH−COO−CH−(CFFをHC=CH−COO−CH−(CFFに置き換えた以外は同様にして、低屈折率層構成成分(b)を得た。
[反射防止塗料組成物1]
下記材料を混合し反射防止塗料組成物1を得た。
低屈折率層構成成分(a) 7.1質量部
高屈折率層構成成分(A−8) 29質量部
疎水性化合物B(フッ素化合物B−1) 7.6質量部
2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン 0.36質量部
2−プロパノール 57質量部
(疎水性化合物Bについては、以下同様に表1に示す。)
[反射防止塗料組成物2]から[反射防止塗料組成物14]
反射防止塗料組成物1に対し、表1に示すように高屈折率層構成成分、低屈折率層構成成分、疎水性化合物Bを置き換えた以外は同様にして反射防止塗料組成物2から反射防止塗料組成物14を得た。
[反射防止塗料組成物15]
下記材料を混合し、反射防止塗料組成物15を得た。
低屈折率層構成成分(a) 7.1質量部
高屈折率層構成成分(A−8) 7.1質量部
2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン 0.10質量部
2−プロパノール 85.8質量部
[反射防止塗料組成物16]
反射防止塗料組成物15に対し、高屈折率層構成成分(A−8)を高屈折率層構成成分(A−25)に置き換えた以外は同様にして、反射防止塗料組成物16を得た。
[反射防止塗料組成物17]
下記材料を混合し反射防止塗料組成物17(低屈折率層塗料組成物)を得た。
低屈折率層構成成分(a) 13質量部
2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン 0.03質量部
2−プロパノール 86質量部
[反射防止塗料組成物18]
下記材料を混合し反射防止塗料組成物18(高屈折率層塗料組成物)を得た。
高屈折率層構成成分(A−8) 29質量部
2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン 0.36質量部
2−プロパノール 30質量部
[反射防止塗料組成物19]
下記材料を混合し反射防止塗料組成物19を得た。
低屈折率層構成成分(a) 7.1質量部
高屈折率層構成成分(A−8) 18質量部
2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン 0.22質量部
疎水性化合物B(フッ素化合物B−1) 4.8質量部
2−プロパノール 70.3質量部
[反射防止塗料組成物20]
下記材料を混合し反射防止塗料組成物20を得た。
低屈折率層構成成分(a) 7.1質量部
高屈折率層構成成分(A−8) 49.8質量部
2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン 0.63質量部
疎水性化合物B(フッ素化合物B−1) 13.1質量部
2−プロパノール 3.0質量部
[ハードコート塗料組成物1]
下記材料を混合し、ハードコート塗料組成物1を得た。
ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA) 30.0質量部
イルガキュア907(商品名、チバスペシャリティケミカルズ社製) 1.5質量部
メチルイソブチルケトン 73.5質量部
[ハードコート塗料組成物2]
下記材料を混合し、ハードコート塗料組成物2を得た。
ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA) 30.0質量部
コロイダルシリカ粒子分散物 5質量部
(ELCOM TO−1023SIV 日揮触媒化成株式会社
30重量% 数平均粒子径:25nm)
イルガキュア907(商品名、チバスペシャリティケミカルズ社製) 1.5質量部
メチルイソブチルケトン 73.5質量部
[ハードコート塗料組成物3]
下記材料を混合し、ハードコート塗料組成物3を得た。
ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA) 30.0質量部
コロイダルシリカ粒子分散物 10質量部
(ELCOM TO−1023SIV 日揮触媒化成株式会社
30重量% 数平均粒子径:25nm)
イルガキュア907(商品名、チバスペシャリティケミカルズ社製) 1.5質量部
メチルイソブチルケトン 73.5質量部
[ハードコート塗料組成物4]
下記材料を混合し、ハードコート塗料組成物4を得た。
ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA) 30.0質量部
コロイダルシリカ粒子分散物 5質量部
(ELCOM TO−1024SIV 日揮触媒化成株式会社
30重量% 数平均粒子径:45nm)
イルガキュア907(商品名、チバスペシャリティケミカルズ社製) 1.5質量部
メチルイソブチルケトン 73.5質量部
[ハードコート塗料組成物5]
下記材料を混合し、ハードコート塗料組成物5を得た。
ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA) 30.0質量部
コロイダルシリカ粒子分散物 10質量部
(ELCOM TO−1024SIV 日揮触媒化成株式会社
30重量% 数平均粒子径:45nm)
イルガキュア907(商品名、チバスペシャリティケミカルズ社製) 1.5質量部
メチルイソブチルケトン 73.5質量部
[ハードコート塗料組成物6]
下記材料を混合し、ハードコート塗料組成物6を得た。
ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA) 30.0質量部
コロイダルシリカ粒子分散物 5質量部
(ELCOM TO−1025SIV 日揮触媒化成株式会社
30重量% 数平均粒子径:120nm)
イルガキュア907(商品名、チバスペシャリティケミカルズ社製) 1.5質量部
メチルイソブチルケトン 73.5質量部
[ハードコート塗料組成物7]
下記材料を混合し、ハードコート塗料組成物7を得た。
ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA) 30.0質量部
コロイダルシリカ粒子分散物 10質量部
(ELCOM TO−1025SIV 日揮触媒化成株式会社
30重量% 数平均粒子径:120nm)
イルガキュア907(商品名、チバスペシャリティケミカルズ社製) 1.5質量部
メチルイソブチルケトン 73.5質量部
[ハードコート塗料組成物8]
下記材料を混合し、ハードコート塗料組成物8を得た。
ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA) 30.0質量部
コロイダルシリカ粒子分散物 12質量部
(ELCOM TO−1025SIV 日揮触媒化成株式会社
30重量% 数平均粒子径:120nm)
イルガキュア907(商品名、チバスペシャリティケミカルズ社製) 1.5質量部
メチルイソブチルケトン 73.5質量部
[ハードコート塗料組成物9]
下記材料を混合し、ハードコート塗料組成物9を得た。
ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA) 30.0質量部
コロイダルシリカ粒子分散物 20質量部
(ELCOM TO−1025SIV 日揮触媒化成株式会社
30重量% 数平均粒子径:120nm)
イルガキュア907(商品名、チバスペシャリティケミカルズ社製) 1.5質量部
メチルイソブチルケトン 73.5質量部
[易接着塗料組成物1]
下記材料を混合し、易接着塗料組成物1を得た。
水性アクリル樹脂 30.0質量部
(ニカゾールA08 日本カーバイド工業株式会社製 20重量%)
コロイダルシリカ粒子分散物 6.0質量部
(スノーテックスOL 日産化学工業株式会社 20重量% 数平均粒子径:40nm)
界面活性剤 0.1質量部
(オルフィンEXP4051F 日信化学工業株式会社製)
水 100質量部
[易接着塗料組成物2]
下記材料を混合し、易接着塗料組成物2を得た。
水性アクリル樹脂 30.0質量部
(ニカゾールA08 日本カーバイド工業株式会社製 20重量%)
コロイダルシリカ粒子分散物 1.5質量部
(スフェリカ140 日揮触媒化成株式会社 40重量% 数平均粒子径:140nm)
界面活性剤 0.1質量部
(オルフィンEXP4051F 日信化学工業株式会社製)
水 100質量部
[易接着塗料組成物3]
下記材料を混合し、易接着塗料組成物3を得た。
水性アクリル樹脂 30.0質量部
(ニカゾールA08 日本カーバイド工業株式会社製 20重量%)
コロイダルシリカ粒子分散物 3.0質量部
(スフェリカ140 日揮触媒化成株式会社 40重量% 数平均粒子径:140nm)
界面活性剤 0.1質量部
(オルフィンEXP4051F 日信化学工業株式会社製)
水 100質量部
[易接着塗料組成物4]
下記材料を混合し、易接着塗料組成物4を得た。
水性アクリル樹脂 30.0質量部
(ニカゾールA08 日本カーバイド工業株式会社製 20重量%)
コロイダルシリカ粒子分散物 3.0質量部
(シーホスターKEP30W 日本触媒株式会社製
20重量% 数平均粒子径:300nm)
界面活性剤 0.1質量部
(オルフィンEXP4051F 日信化学工業株式会社製)
水 100質量部
[支持基材の作製方法 1]
PET樹脂フィルム(東レ株式会社製 ルミラー T60)にコロナ処理を施し、コロナ処理面に、前記ハードコート塗料組成物1〜9をバーコーター(#16)で塗布後、下記に示す第一段階の乾燥を行い、次いで第二段階の乾燥を行った。
第一段階
熱風温度 70℃
熱風風速 2m/s
風向 塗布面に対して平行
乾燥時間 1.5分間
第二段階
熱風温度 130℃
熱風風速 5m/s
風向 塗布面に対して垂直
乾燥時間 1.5分間
乾燥後、160W/cmの高圧水銀灯ランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度600W/cm、積算光量500mJ/cmの紫外線を、酸素濃度0.1体積%の下で照射して硬化させ、ハードコート層を有する支持基材1〜4、9〜11、13、14とした。
[支持基材の作成方法 2]
PET樹脂フィルム(東レ株式会社製 ルミラー T60)にコロナ処理を施し、コロナ処理面に、易接着塗料組成物1〜4をバーコーター(#2)を用いて塗布後、下記に示す第一段階の乾燥を行い、次いで第二段階の乾燥を行った。
第一段階
熱風温度 100℃
熱風風速 2m/s
風向 塗布面に対して平行
乾燥時間 1.5分間
第二段階
熱風温度 150℃
熱風風速 5m/s
風向 塗布面に対して垂直
乾燥時間 1.5分間
乾燥硬化後、易接着層を有する支持基材5〜8とした。
[支持基材の作成方法 3]
PET樹脂フィルム(東レ株式会社製 ルミラー T60)にコロナ処理を施し、これを支持基材12とした。
[反射防止部材の作製1]
前述の方法にて作成した支持基材の面上に(支持基材がハードコート層や易接着層を有する場合には、ハードコート層や易接着層を有する面上に)、反射防止塗料組成物をバーコーター(#10)を用いて塗布後、下記に示す第一段階の乾燥を行い、次いで第二段階の乾燥を行った。
第一段階
熱風温度 35℃
熱風風速 1.5m/s
風向 塗布面に対して平行
乾燥時間 1.5分間
第二段階
熱風温度 130℃
熱風風速 7m/s
風向 塗布面に対して垂直
乾燥時間 2分間
なお、熱風の風速は動静圧管による測定値を使用した。
乾燥後、160W/cmの高圧水銀灯ランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度600W/cm、積算光量800mJ/cmの紫外線を、酸素濃度0.1体積%の下で照射して硬化させた。
表3に示すように、反射防止塗料組成物1〜16を用い、実施例1〜20、23、24、比較例1〜3を作製した。
[反射防止部材の作製2]
反射防止部材の作成1に対して、反射防止塗料組成物19を使用し、塗布するバーコーターを(#10)から、(#6)に変更した以外は同様の方法で行い、実施例21の反射防止部材を作成した。
[反射防止部材の作製3]
反射防止部材の作成1に対して、反射防止塗料組成物20を使用し、塗布するバーコーターを(#10)から、(#18)に変更した以外は同様の方法で行い、実施例22の反射防止部材を作成した。
[反射防止部材の作製4]
前述の方法にて作成した支持基材のハードコート層が形成されている面上に、塗料組成物19をバーコーター(#6)を用いて塗布後、乾燥装置にて、下記に示す乾燥を行った。
熱風温度 130℃
熱風風速 5m/s
風向 塗布面に対して垂直
乾燥時間 2分間
乾燥後、160W/cmの高圧水銀灯ランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度600W/cm、積算光量800mJ/cmの紫外線を、酸素濃度0.1体積%の下で照射して硬化させた。
さらに塗料組成物19が塗布、乾燥、硬化されている面上に、塗料組成物18をバーコーター(#4)を用いて塗布後、液膜厚み測定用のセンサーと膜面温測定用のセンサーを取り付けた乾燥装置にて、下記に示す乾燥を行った。
熱風温度 130℃
熱風風速 5m/s
風向 塗布面に対して垂直
乾燥時間 2分間
乾燥後、160W/cmの高圧水銀灯ランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度600W/cm、積算光量800mJ/cmの紫外線を、酸素濃度0.1体積%の下で照射して硬化させた。これにより、比較例4の反射防止部材を作製した。
[表面粗さRa(nm)]
表面粗さ計(SURFCORDER ET4000A:(株)小坂研究所製)を用い、JIS−B−0601:2001に基づき、下記測定条件にて測定を行った。Ra(表面粗さ)とは、測定される断面曲線から、カットオフ値λcの高域フィルタによって長波長成分を遮断して得られた輪郭曲線(粗さ曲線)を求め、その曲線の基準長さにおける高さ(平均線から測定曲線までの距離)の絶対値の平均値のことである。なお測定は、支持基材の塗料組成物を塗布する側の面である面Aについて行った。
<測定条件>
測定速度:0.1mm/S
評価長さ:10mm
カットオフ値λc:0.1mm
フィルタ:ガウンシアンフィルタ低域カット
[表面張力γ(mN/m)]
本発明におけるフッ素化合物Bの表面張力γは、自動接触角計(協和界面科学株式会社製、DM−501)により、25℃の環境下にてテフロン(登録商標)製のシリンジより液体のフッ素化合物Bを押し出し、シリンジの先端に液滴に形成された液滴の形状を付属の多機能統合解析ソフトである「FAMAS」により、「FAMAS取扱い説明書」に記載の方法に従い、表面張力を算出した。
算出に必要なパラメーターとして、化合物の密度が必要であるが、化合物の密度は、25℃の環境下にて密度比重計(京都電子工業株式会社製、DA―130N)を用いて測定した値を用いた。
[振動式粘度計による粘度η(mPa/s)]
本発明におけるフッ素化合物Bの振動式粘度計による粘度ηは、音叉型振動式粘度計(株式会社エー・アンド・デイ製、SV−10)を用いて、オプションである循環水ジャケットに通水して、25℃の環境下にて、「振動式粘度計取扱い説明書」に記載の方法に従い、粘度ηを測定した。
[数平均分子量]
本発明におけるフッ素化合物Bの数平均分子量は、テトラヒドロフランを溶媒にし、分子量既知の単分散ポリスチレンを標準物質として用い、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GC−2010 株式会社島津製作所)により測定して求めた。
[粘度変化Δη]
塗料組成物のせん断粘度η及びηは次のように測定した。測定装置はティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製レオメーターAR1000を使用し、測定用ジオメトリーには、直径40mm 角度2°のコーンアンドプレートを使用した。
測定は、測定温度25℃で、ステップ状にせん断速度を変化させた定常流測定を行った。具体的には、せん断速度100s−1で予備せん断(30秒間)後、せん断速度1000s−1から0.01s−1まで、対数間隔で計16点(1000s−1、10s−1、0.1s−1、0.01s−1の4点を含む16点)の測定を行った。このデータからせん断速度0.1s−1における粘度η(mPa・s)、および10s−1における粘度η(mPa・s)を求めた。そして、粘度ηと粘度ηの差である粘度変化Δη(=η−η)を求めた。
[耐擦傷性]
反射防止部材の反射防止層側に250g/cm荷重となるスチールウール(#0000)を垂直にあて、1cmの長さを10往復した際に目視される傷の概算本数を記載し、下記のクラス分けを行い3点以上を合格とした。
5点: 0本
4点: 1本以上 5本未満
3点: 5本以上 10本未満
2点: 10本以上 20本未満
1点: 20本以上
[耐摩耗性]
本光製作所製消しゴム摩耗試験機の先端(先端部面積 1cm)に、白ネル〔興和(株)製〕を取り付け、反射防止部材の反射防止層上に500gの荷重をかけて、5cmで5000回往復摩擦し、下記のクラス分けを行い3点以上を合格とした。
5点: 傷なし
4点: 1〜10本の傷
3点: 11〜20本の傷
2点: 21本以上の傷
1点: 試験部分の反射防止層が全面剥離
[透明性]
透明性は、ヘイズ値を測定して判定した。ヘイズ値の測定は、JIS K 7136(2000)に基づき、日本電色工業(株)製 ヘイズメーターを用いて、反射防止部材サンプルの支持基材とは反対側(反射防止層側)から光を透過するように装置に置いて測定を行い、ヘイズ値が2%未満を合格とした。
[反射防止性能]
反射防止性能の評価は島津製作所製分光光度計UV−3100を用いて400nmから800nmの波長範囲にて行い、最低反射率(ボトム反射率)を測定し、0.8%未満を合格とした。
[干渉縞]
反射防止部材の反射防止層を形成していない面(支持基材側の面)を、つや消し黒のスプレー塗料にて均一に塗布し、この試料について、斜めより三波長蛍光灯(FL20SS・EX−N/18(松下電器産業製)の付いた電気スタンド)で試料面を照射し、その時に見える干渉縞を目視で評価した。下記のクラス分けを行い3点以上を合格とした。
5点:干渉ムラが無く、きれいに見える
3点:干渉ムラが確認出来るが、使用上問題ないレベル
1点:干渉ムラが確認出来、使用上問題となるレベル
[映り込みの評価]
A4サイズに切り出した反射防止部材の反射防止層を形成している面を、PDPテレビ(TH-42PX500:松下電器(株)製)の画面表面に四隅をセロハンテープで固定し貼り付ける。室内照明を400〜500lxとし、テレビの電源を入れないで、テレビからの距離1.5mの位置から、テレビ前面に映った自分の像を観察する。下記のクラス分けを行い○以上を合格とした。
フィルム貼付部分と未貼付部分を比較して、
観察者の目の輪郭が視認できない:◎
観察者の目の輪郭が何とか視認できるが、未貼付と比較すると写像が不鮮明:○
観察者の目の輪郭が視認できる:×
[2層の層厚み]
透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて断面を観察することにより、支持基材上の2層の各層の厚みを測定した。各層の厚みは、以下の方法に従い測定した。TEMにより20万倍の倍率で撮影した画像から各層の厚みを読み取った。合計で10点の層厚みを測定して平均値とした。
表4に反射防止部材の評価結果をまとめた。評価項目について1項目でも合格とならないものについて、課題未達成と判断した。
表4に示すように本発明の実施例は、映り込み防止と低反射率、高透明性、低干渉縞、さらに製造工程の簡略化のいずれにおいても合格しており、本発明が解決しようとしている課題を達成している。
塗料組成物の粘度変化(Δη)が、本発明の好ましい範囲より大きい実施例13の反射防止部材では、透明性と反射防止性がやや劣っていたが、許容できる範囲であった。
塗料組成物が含有する疎水性化合物Bが、長鎖炭化水素化合物B、シリコーン化合物である実施例14、15では、耐磨耗性、透明性と反射防止性がやや劣っていたが、許容できる範囲であった。
塗料組成物が含有する疎水性化合物Bが、フッ素化合物Bであり、該フッ素化合物Bの数平均分子量が、本発明の好ましい範囲より小さい実施例18では、透明性と反射防止性がやや劣っていたが、許容できる範囲であった。
また、塗料組成物が含有する疎水性化合物Bが、フッ素化合物Bであり、該フッ素化合物Bの数平均分子量が、本発明の好ましい範囲より大きい実施例17の反射防止部材では、透明性と反射防止性がやや劣っていたが、許容できる範囲であった。
Figure 2012008158
Figure 2012008158
Figure 2012008158
Figure 2012008158
1 反射防止部材
2 支持基材
3 反射防止層
4 低屈折率層
5 高屈折率層
6 ハードコート層又は易接着層
7 プラスチックフィルム

Claims (7)

  1. 支持基材の少なくとも片面に、塗料組成物を1回のみ塗布することで(以後、支持基材における塗料組成物を1回のみ塗布する側の面を、面Aという)、屈折率の異なる2層からなる反射防止層を形成することを特徴とする反射防止部材の製造方法であって、
    該面Aの表面粗さ(JIS−B−0601:2001)が8nm以上40nm以下であることを特徴とする、反射防止部材の製造方法。
  2. 前記塗料組成物が、2種類以上の無機粒子、1種類以上のバインダー成分、及び金属キレートを含み、
    該2種類以上の無機粒子のうち少なくとも1種類の無機粒子が、疎水性化合物Aにより処理された無機粒子であることを特徴とする、請求項1に記載の反射防止部材の製造方法。
  3. 前記塗料組成物の粘度変化(Δη)が、0.1mPa・s以上10mPa・s以下であることを特徴とする、請求項1または2に記載の反射防止部材の製造方法。
    (ここでΔηとは、せん断速度0.1s−1における粘度ηと、せん断速度10s−1における粘度ηの差(η−η)を表す。)
  4. 前記塗料組成物が、以下の疎水性化合物Bを含有することを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の反射防止部材の製造方法。
    疎水性化合物Bとは、フッ素化合物B、長鎖炭化水素化合物B、及びシリコーン化合物Bからなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物である。
    フッ素化合物Bとは、炭素数4以上のフルオロアルキル基及び反応性部位を有する化合物である。
    長鎖炭化水素化合物Bとは、炭素数8以上の炭化水素基及び反応性部位を有する化合物である。
    シリコーン化合物Bとは、シロキサン基及び反応性部位を有する化合物である。
  5. 前記疎水性化合物Bが、フッ素化合物Bを含み、
    該フッ素化合物Bの数平均分子量が、300以上4000以下であることを特徴とする、請求項4に記載の反射防止部材の製造方法。
  6. 前記フッ素化合物Bは、振動式粘度計による粘度ηが1〜100mPa/sであり、かつ表面張力γが6〜26mN/mであることを特徴とする、請求項5に記載の反射防止部材の製造方法。
  7. 前記フッ素化合物Bが、下記一般式(A)のモノマー、一般式(B)のモノマー、一般式(A)のモノマーに由来するオリゴマー、及び一般式(B)のモノマーに由来するオリゴマーからなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物であることを特徴とする、請求項5又は6に記載の反射防止部材の製造方法。
    C=C(R)−COO−R−Rf1 ・・・一般式(A)
    A−R−Rf1 ・・・一般式(B)
    (式中、Rは水素原子またはメチル基、Rf1は炭素数4〜7の直鎖状または分岐状のフルオロアルキル基、R、Rは炭素数1〜10のアルキル基、Aは反応性部位である。)
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