以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。図1は、実施形態に係る車両用冷暖房装置の概略構成を表すシステム構成図である。本実施形態は、本発明の車両用冷暖房装置を電気自動車の冷暖房装置として具体化したものである。
車両用冷暖房装置1は、圧縮機2、室内凝縮器3、第1制御弁ユニット4、室外熱交換器5、第2制御弁ユニット6、蒸発器7およびアキュムレータ8を配管にて接続した冷凍サイクル(冷媒循環回路)を備える。車両用冷暖房装置1は、冷媒としての代替フロン(HFC−134a)が冷凍サイクル内を状態変化しながら循環する過程で、その冷媒の熱を利用して車室内の空調を行うヒートポンプ式の冷暖房装置として構成されている。
車両用冷暖房装置1は、また、冷房運転時と暖房運転時とで複数の冷媒循環通路を切り替えるように運転される。そして、この冷凍サイクルは、室内凝縮器3と室外熱交換器5とが凝縮器として並列に動作可能に構成され、また、蒸発器7と室外熱交換器5とが蒸発器として並列に動作可能に構成されている。すなわち、冷房運転時および暖房運転時に冷媒が循環する第1冷媒循環通路、暖房運転時にのみ冷媒が循環する第2冷媒循環通路、冷房運転時にのみ冷媒が循環する第3冷媒循環通路が形成される。
第1冷媒循環通路は、圧縮機2→室内凝縮器3→第2制御弁ユニット6→蒸発器7→アキュムレータ8→圧縮機2のように冷媒が循環する通路である。第2冷媒循環通路は、圧縮機2→室内凝縮器3→第2制御弁ユニット6→室外熱交換器5→第1制御弁ユニット4→アキュムレータ8→圧縮機2のように冷媒が循環する通路である。第3冷媒循環通路は、圧縮機2→第1制御弁ユニット4→室外熱交換器5→第2制御弁ユニット6→蒸発器7→アキュムレータ8→圧縮機2のように冷媒が循環する通路である。室外熱交換器5を流れる冷媒の流れは、第2冷媒循環通路が開放された場合と第3冷媒循環通路が開放された場合とで逆転する。つまり、室外熱交換器5における冷媒の入口と出口は、第2冷媒循環通路が開放された場合と第3冷媒循環通路が開放された場合とで切り替わる。
具体的には、圧縮機2の吐出室につながる通路が分岐し、その一方である第1通路21が室内凝縮器3の入口につながり、他方である第2通路22が室外熱交換器5の一方の出入口につながっている。室内凝縮器3の出口につながる第3通路23は、その下流側で分岐し、その一方である第1分岐通路26が第4通路24を介して蒸発器7につながり、他方である第2分岐通路27が第5通路25を介して室外熱交換器5の他方の出入口につながっている。第4通路24と第5通路25とは、接続通路28により接続されている。また、第2通路22の中間部においてバイパス通路29が分岐し、アキュムレータ8ひいては圧縮機2につながっている。さらに、蒸発器7の出口につながる戻り通路30が、バイパス通路29と逆止弁32(後述する)の下流側にて接続され、アキュムレータ8ひいては圧縮機2につながっている。
第1冷媒循環通路は、第1通路21,第3通路23,第1分岐通路26,第4通路24,戻り通路30を接続して構成される。第2冷媒循環通路は、第1通路21,第3通路23,第2分岐通路27,第5通路25,第2通路22,バイパス通路29を接続して構成される。第3冷媒循環通路は、第2通路22,第5通路25,接続通路28,第4通路24,戻り通路30を接続して構成される。そして、このような冷媒循環通路の切り替えを実現するために、圧縮機2と室外熱交換器5との接続部に第1制御弁ユニット4が設けられ、室内凝縮器3と室外熱交換器5と蒸発器7との接続部に第2制御弁ユニット6が設けられている。
車両用冷暖房装置1は、空気の熱交換が行われるダクト10を有し、そのダクト10における空気の流れ方向上流側から室内送風機12、蒸発器7、室内凝縮器3が配設されている。室内凝縮器3の上流側には、エアミックスドア14が回動自在に設けられ、室内凝縮器3を通過する風量と室内凝縮器3を迂回する風量との比率が調節される。また、室外熱交換器5に対向するように室外送風機16が配置されている。
圧縮機2は、ハウジング内にモータと圧縮機構を収容する電動圧縮機として構成され、図示しないバッテリからの供給電流により駆動され、モータの回転数に応じて冷媒の吐出容量が変化する。この圧縮機2としては、レシプロ式、ロータリ式、スクロール式など、様々な形式の圧縮機を採用することができるが、電動圧縮機そのものは公知であるため、その説明については省略する。
室内凝縮器3は、車室内に設けられ、室外熱交換器5とは別に冷媒を放熱させる補助凝縮器として機能する。すなわち、圧縮機2から吐出された高温・高圧の冷媒が室内凝縮器3を通過する際に放熱する。エアミックスドア14の開度に応じて振り分けられた空気は、室内凝縮器3を通過する過程でその熱交換が行われる。
室外熱交換器5は、車室外に配置され、冷房運転時に内部を通過する冷媒を放熱させる室外凝縮器として機能する一方、暖房運転時には内部を通過する冷媒を蒸発させる室外蒸発器として機能する。室外送風機16は、吸い込み式の送風機であり、軸流ファンをモータにより回転駆動することにより外気を導入する。室外熱交換器5は、その外気と冷媒との間で熱交換をさせる。
蒸発器7は、車室内に配置され、内部を通過する冷媒を蒸発させる室内蒸発器として機能する。すなわち、第2制御弁ユニット6を構成する各制御弁(後述する)の通過により低温・低圧となった冷媒は、蒸発器7を通過する際に蒸発する。ダクト10の上流側から導入された空気は、その蒸発潜熱によって冷却される。このとき冷却・除湿された空気は、エアミックスドア14の開度に応じて室内凝縮器3を通過するものと、室内凝縮器3を迂回するものとに振り分けられる。室内凝縮器3を通過する空気は、その通過過程で加熱される。室内凝縮器3を通過した空気と迂回した空気とが室内凝縮器3の下流側にて混合されて目標の温度に調整され、図示しない吹出口から車内に供給される。例えば、ベント吹出口、フット吹出口、デフ吹出口等から車室内所定場所に向かって吹き出される。
アキュムレータ8は、蒸発器から送出された冷媒を気液分離して溜めておく装置であり、液相部と気相部とを有する。このため、仮に蒸発器7から想定以上の液冷媒が導出されたとしても、その液冷媒を液相部に溜めおくことができ、気相部の冷媒を圧縮機2に導出することができる。その結果、圧縮機2の圧縮動作に支障をきたすこともない。一方、本実施形態では、その液相部の冷媒の一部を圧縮機2に供給できるようにされており、圧縮機2に必要量の潤滑オイルを戻すことができるようになっている。
第1制御弁ユニット4は、切替弁31、逆止弁32および過熱度制御弁33を含む。切替弁31は、第2通路22を開閉する第1弁部と、バイパス通路29を開閉する第2弁部と、各弁部を駆動するソレノイドとを備える三方向電磁弁からなる。第1弁部は、その開弁により圧縮機2から第2通路22を介した室外熱交換器5への冷媒の流れを許容する。第2弁部は、その開弁により室外熱交換器5からバイパス通路29を介したアキュムレータ8への冷媒の流れを許容する。本実施形態では、切替弁31として、ソレノイドへの通電有無によって第1弁部および第2弁部の一方を開弁させて他方を閉弁させる開閉弁(オン/オフ弁)が用いられる。なお、切替弁31を弁部を駆動するアクチュエータはソレノイドでなくてもよく、ステッピングモータ等の電動機であってもよい。この切替弁31の具体的構成については後に詳述する。
逆止弁32は、バイパス通路29において切替弁31側への冷媒の逆流を防止する機械式の弁として構成されている。逆止弁32は、前後差圧(逆止弁32の上流側圧力と下流側圧力との差圧)が設定値(予め設定する開弁差圧)を超えると自律的に開弁する差圧弁であってもよい。
過熱度制御弁33は、暖房運転時において室外熱交換器5の出口側の過熱度(スーパーヒート)が予め設定された一定の過熱度(設定過熱度SH)に近づくよう冷媒の流れを制御する制御弁である。本実施形態では、過熱度制御弁33として、室外熱交換器5の出口側の冷媒の温度と圧力を感知して弁部を駆動する感温部を有する機械式の制御弁が用いられる。過熱度制御弁33は、感知した過熱度が設定過熱度SHよりも大きければ弁開度を絞り、室外熱交換器5の蒸発圧力を上昇させることにより、室外熱交換器5を通過する冷媒と外部の空気との熱交換量を小さくし、それにより過熱度を小さくして設定過熱度SHに近づける。逆に、感知された過熱度が設定過熱度SHよりも小さければ、過熱度制御弁33は、弁開度を大きくし、室外熱交換器5の蒸発圧力を低下させることにより、室外熱交換器5を通過する冷媒と外部の空気との熱交換量を大きくし、それにより過熱度を大きくして設定過熱度SHに近づける。このように、過熱度制御弁33は、室外熱交換器5の出口側の過熱度が設定過熱度SHに近づくよう自律的に動作する。この過熱度制御弁33の具体的構成については後に詳述する。
第2制御弁ユニット6は、過冷却度制御弁41(第1の過冷却度制御弁)、比例弁42、過冷却度制御弁43(第2の過冷却度制御弁)、逆止弁44を含む。過冷却度制御弁41は、室内凝縮器3から第3通路23を介して導入された冷媒を絞り膨張させて下流側に導出する「膨張装置」として機能するとともに、室内凝縮器3から蒸発器7および室外熱交換器5へ供給される冷媒の総流量を調整する「総流量弁」としても機能する。
過冷却度制御弁41は、室内凝縮器3の出口側の過冷却度(サブクール)が予め設定された一定の過冷却度(設定値SC1)に近づくよう冷媒の流れを制御する制御弁である。本実施形態では、過冷却度制御弁41として、室内凝縮器3の出口側の冷媒の温度と圧力を感知して弁部を駆動する感温部を有する機械式の制御弁が用いられる。過冷却度制御弁41は、室内凝縮器3の出口側の過冷却度が設定値SC1よりも大きくなると開弁方向に動作し、室内凝縮器3を流れる冷媒の流量を増加させる。このように冷媒の流量が増加すると、室内凝縮器3における冷媒の単位流量あたりの凝縮能力が小さくなるため、その過冷却度は小さくなる方向に変化する。
逆に、室内凝縮器3の出口側の過冷却度が設定値SC1よりも小さくなると、過冷却度制御弁41は、閉弁方向に動作し、室内凝縮器3を流れる冷媒の流量を減少させる。このように冷媒の流量が減少すると、室内凝縮器3における冷媒の単位流量あたりの凝縮能力が大きくなるため、その過冷却度は大きくなる方向に変化する。このように、過冷却度制御弁41は、その入口(室内凝縮器3の出口側)の過冷却度が設定値SC1となるよう自律的に動作する。
比例弁42は、三方向電磁比例弁として構成され、第3通路23から第1分岐通路26と第2分岐通路27とに分岐する分岐点に設けられている。すなわち、比例弁42は、第1分岐通路26の開度を制御する第1比例弁と、第2分岐通路27の開度を制御する第2比例弁とを含む「複合弁」として構成されている。
第1比例弁は、その弁部の開度が制御されることにより第1冷媒循環通路の開度を調整する。第2比例弁は、その弁部の開度が制御されることにより第2冷媒循環通路の開度を調整する。第1比例弁と第2比例弁は、各弁部を構成する弁体が一体に設けられ、一つのアクチュエータにて同時にリニア制御される。それにより、各弁部の開度の比率が制御される。すなわち、暖房運転時においては、過冷却度制御弁41により蒸発器7および室外熱交換器5へ供給される冷媒の総流量が調整され、その総流量が比例弁42によって設定された比率に振り分けられる。つまり、比例弁42は、アクチュエータの駆動量に応じて冷媒の流量を振り分ける「振分弁」として機能する。本実施形態では、比例弁42のアクチュエータがソレノイドからなるが、変形例においてはステッピングモータからなるものでもよい。
過冷却度制御弁43は、冷房運転時において室外熱交換器5から第5通路25および接続通路28を介して導入された冷媒を絞り膨張させて蒸発器7側に導出する「膨張装置」として機能する。過冷却度制御弁43は、冷房運転時において室外熱交換器5の出口側の過冷却度が予め設定された一定の過冷却度(設定値SC2)に近づくよう冷媒の流れを制御する制御弁である。本実施形態では、過冷却度制御弁43として、冷房運転時における室外熱交換器5の出口側の冷媒の温度と圧力を感知して弁部を駆動する感温部を有する機械式の制御弁が用いられる。過冷却度制御弁43は、室外熱交換器5の出口側の過冷却度が設定値SC2よりも大きくなると開弁方向に動作し、室外熱交換器5を流れる冷媒の流量を増加させる。このように冷媒の流量が増加すると、室外熱交換器5における冷媒の単位流量あたりの凝縮能力が小さくなるため、その過冷却度は小さくなる方向に変化する。
逆に、室外熱交換器5の出口側の過冷却度が設定値SC2よりも小さくなると、過冷却度制御弁43は、閉弁方向に動作し、室外熱交換器5を流れる冷媒の流量を減少させる。このように冷媒の流量が減少すると、室外熱交換器5における冷媒の単位流量あたりの凝縮能力が大きくなるため、その過冷却度は大きくなる方向に変化する。このように、過冷却度制御弁43は、その入口(室外熱交換器5の出口側)の過冷却度が設定値SC2となるよう自律的に動作する。
逆止弁44は、接続通路28において過冷却度制御弁43側への冷媒の逆流を防止する機械式の弁として構成されている。
以上のように構成された車両用冷暖房装置1は、制御部100により制御される。制御部100は、各種演算処理を実行するCPU、各種制御プログラムを格納するROM、データ格納やプログラム実行のためのワークエリアとして利用されるRAM、入出力インターフェース等を備える。制御部100には、車両用冷暖房装置1に設置された図示しない各種センサ・スイッチ類からの信号が入力される。制御部100は、車両の乗員によりセットされた室温を実現するために各アクチュエータの制御量を演算し、各アクチュエータの駆動回路に制御信号を出力する。制御部100は、切替弁31や比例弁42の開閉制御のほか、圧縮機2,室内送風機12,室外送風機16およびエアミックスドア14の駆動制御も実行する。
制御部100は、比例弁42の駆動回路に設定したパルス信号を出力する駆動信号出力部を有する。具体的には、制御部100にて演算され、設定されたデューティ比のパルス信号を出力するPWM出力部が設けられるが、その構成自体には公知のものが採用されるため、詳細な説明を省略する。制御部100は、車室内外の温度、蒸発器7の吹き出し空気温度等、各種センサにて検出された所定の外部情報に基づいて比例弁42の設定開度を決定し、その開度がその設定開度となるようソレノイドに電流を供給する。なお、変形例として比例弁42のアクチュエータをステッピングモータにより構成する場合には、その開度がその設定開度となるようステッピングモータに制御パルス信号を出力する。
このような制御により、図示のように、圧縮機2は、その吸入室を介して吸入圧力Psの冷媒を導入し、これを圧縮して吐出圧力Pdの冷媒として吐出する。このとき、第2制御弁ユニット6における圧力は図示のようになる。すなわち、過冷却度制御弁41の上流側は高圧の上流側圧力p1となり、比例弁42における第1比例弁の下流側は低圧の下流側圧力p3となる。また、比例弁42における第2比例弁の下流側で過冷却度制御弁43の上流側は中間圧力p2となる。
次に、本実施形態の冷凍サイクルの動作について説明する。図2は、車両用冷暖房装置の動作を表す説明図である。(A)は冷房運転時の状態を示し、(B)は暖房運転時の状態を示し、(C)は特定暖房運転時の状態を示し、(D)は特殊冷暖房運転時の状態を示している。ここでいう「冷房運転」は、冷房機能が暖房機能よりも大きく機能する運転状態であり、「暖房運転」は、暖房機能が冷房機能よりも大きく機能する運転状態である。また、「特定暖房運転」は、蒸発器7を機能させない暖房運転(実質的に冷房機能なし)である。「特殊冷暖房運転」は、室外熱交換器5を機能させない冷房運転および暖房運転である。
各図の上段には冷凍サイクルの動作を説明するモリエル線図が示されている。その横軸がエンタルピーを表し、縦軸が各種圧力を表している。各図の下段には、冷凍サイクルの動作状態が示されている。図中の太線および矢印が冷媒の流れを示し、符号a〜gはモリエル線図のそれと対応している。また、図中の「×」は冷媒の流れが遮断されていることを示している。なお、同図の下段は図1に対応するが、エアミックスドア14等の図示を省略するなど便宜上簡略表記されている。
図2(A)に示すように、冷房運転時においては、第1制御弁ユニット4において切替弁31の第1弁部が開弁され、第2弁部が閉弁される。一方、第2制御弁ユニット6において比例弁42の第1比例弁が開弁され、第2比例弁が閉弁される。このため、バイパス通路29が遮断され、圧縮機2から吐出冷媒は室外熱交換器5に導かれるようになる。このとき、室外熱交換器5は室外凝縮器として機能する。すなわち、圧縮機2から吐出された冷媒は、一方で室内凝縮器3、過冷却度制御弁41、比例弁42の第1比例弁、蒸発器7、アキュムレータ8を経由するように第1冷媒循環通路を循環して圧縮機2に戻り、他方で切替弁31、室外熱交換器5、過冷却度制御弁43、蒸発器7、アキュムレータ8を経由するように第3冷媒循環通路を循環して圧縮機2に戻る。
すなわち、圧縮機2から吐出された高温・高圧のガス冷媒は、一方で室内凝縮器3を、他方で室外熱交換器5を経ることで凝縮される。そして、室内凝縮器3を経由した冷媒が過冷却度制御弁41にて断熱膨張され、冷温・低圧の気液二相冷媒となって蒸発器7に導入される。このとき、過冷却度制御弁41は、室内凝縮器3の出口側(c点)の過冷却度が設定値SC1となるように弁部の開度を自律的に調整する。比例弁42の第2比例弁が閉じられているため、過冷却度制御弁41にて膨張された冷媒は、全て比例弁42の第1比例弁を通過して蒸発器7に供給される。
また、室外熱交換器5を経由した冷媒が過冷却度制御弁43にて断熱膨張され、冷温・低圧の気液二相冷媒となって蒸発器7に導入される。このとき、過冷却度制御弁43は、室内凝縮器3の出口側(f点)の過冷却度が設定値SC2となるように弁部の開度を自律的に調整する。なお、本実施形態では、これらの設定値SC1とSC2とが等しく設定されているが(「SC」と表記する)、変形例においては両者を異ならせてもよい。蒸発器7の入口に導入された冷媒は、その蒸発器7を通過する過程で蒸発し、車室内の空気を冷却する。このとき、蒸発器7から導出された冷媒は、アキュムレータ8を経て圧縮機2に導入されるが、そのとき圧縮機2に潤滑オイルを戻すようになる。
一方、図2(B)に示すように、暖房運転時においては、第1制御弁ユニット4において切替弁31の第1弁部が閉弁され、第2弁部が開弁される。一方、第2制御弁ユニット6において比例弁42の第1比例弁および第2比例弁がともに開弁され、両比例弁の開度の比率が調整されることで、蒸発器7および室外熱交換器5に向かう冷媒の流量が振り分けられる。このとき、室外熱交換器5は室外蒸発器として機能する。すなわち、圧縮機2から吐出された冷媒は、一方で室内凝縮器3、過冷却度制御弁41、比例弁42の第1比例弁、蒸発器7、アキュムレータ8を経由するように第1冷媒循環通路を循環して圧縮機2に戻り、他方で室内凝縮器3、過冷却度制御弁41、比例弁42の第2比例弁、室外熱交換器5、過熱度制御弁33、アキュムレータ8を経由するように第2冷媒循環通路を循環して圧縮機2に戻る。
すなわち、圧縮機2から吐出された高温・高圧のガス冷媒は、室内凝縮器3を経て凝縮され。そして、過冷却度制御弁41にて断熱膨張された冷温・低圧の気液二相冷媒が比例弁42により振り分けられ、その振り分けられた一方の冷媒が蒸発器7に供給されて蒸発し、振り分けられた他方の冷媒が室外熱交換器5に供給されて蒸発する。このとき、室外熱交換器5および蒸発器7の両蒸発器にて蒸発される比率が、第1比例弁と第2比例弁の開度の比率により制御される。それにより、蒸発器7での蒸発量を確保でき、除湿機能を確保することができる。また、潤滑オイルを蒸発器7に滞留させることなく圧縮機2へ戻すことができる。なお、過冷却度制御弁43の入口側は過冷却状態にないため、過冷却度制御弁43は閉弁状態を維持する。
この暖房運転においては除湿運転を良好に行うことが必要となるが、その除湿制御の概要については以下のとおりである。すなわち、図2(B)に示すように、過冷却度制御弁41により室内凝縮器3の出口における所定の過冷却度SCが維持されることで(c点)、室内凝縮器3における凝縮能力が適正に維持され、効率の良い熱交換が行われる(d点)。一方、アキュムレータ8によって圧縮機2の入口の冷媒の状態が常に飽和蒸気圧曲線上に保持される(a点)。一方、蒸発器7の出口の冷媒の状態(e点)は、室外熱交換器5の出口の冷媒の状態(g点)とバランスするように変化する。
このとき、室外熱交換器5における外部からの熱吸収量は、この過熱度制御弁33の絞り量により調整される。すなわち、過熱度制御弁33は、室外熱交換器5の出口側の過熱度が設定過熱度SHよりも大きくなると、閉弁方向に動作して室外熱交換器5における蒸発圧力Poを上昇させる。その結果、室外熱交換器5の蒸発圧力Poと蒸発器7の蒸発圧力Peとの差圧Poeが発生する。それにより、室外熱交換器5を通過する冷媒の温度が高くなり外気との熱交換量が少なくなるため、過熱度は小さくなる方向に変化する。
逆に、その過熱度が設定過熱度SHよりも小さくなると、開弁方向に動作して室外熱交換器5における蒸発圧力Poを低下させる。それにより、室外熱交換器5を通過する冷媒の温度が低くなり外気との熱交換量が多くなるため、過熱度は大きくなる方向に変化する。このように、室外熱交換器5の出口側の過熱度が設定過熱度SHとなるよう過熱度制御弁33が自律的に動作するため、室外熱交換器5の出口側の過熱度が過大になるのが防止される。それにより、室外熱交換器5の温度ムラを抑制することができ、室外熱交換器5に潤滑オイルが滞留することを防止または抑制することができる。
制御部100は、室外熱交換器5に潤滑オイルを滞留するとして予め設定された条件が成立した場合、圧縮機2の回転数に応じて第2比例弁の開度を大きくして室外熱交換器5の出口側まで湿り度を有する冷媒を流すようにして潤滑オイルの循環を確保する。その場合、過熱度制御弁33が開弁方向に動作して過熱度を戻そうとするが、その感温部が感知するまでのタイムラグがあるため、その湿り度のある冷媒とともに潤滑オイルを導出することが可能になる。なお、本実施形態では、室外熱交換器5において過熱度が発生させる例を示したが、蒸発器7において過熱度を発生させる仕様とする場合には、蒸発器7の下流側に過熱度制御弁33と同様の制御弁を設けてもよい。
また、図2(C)に示すように、特定暖房運転時においては、第1制御弁ユニット4において切替弁31の第2弁部が開弁され、第1弁部が閉弁される。一方、第2制御弁ユニット6において比例弁42の第1比例弁が閉弁され、第2比例弁が開弁される。このため、冷媒は蒸発器7を通過せず、蒸発器7は実質的に機能しなくなる。つまり、室外熱交換器5のみが蒸発器として機能する。すなわち、圧縮機2から吐出された冷媒は、室内凝縮器3、比例弁42の第2比例弁、室外熱交換器5、過熱度制御弁33、アキュムレータ8を経由するように第2冷媒循環通路を循環して圧縮機2に戻る。なお、過冷却度制御弁43の入口側は過冷却状態にないため、過冷却度制御弁43は閉弁状態を維持する。
すなわち、圧縮機2から吐出された高温・高圧のガス冷媒は、室内凝縮器3を経て凝縮され、過冷却度制御弁41にて断熱膨張されて冷温・低圧の気液二相冷媒となり、室外熱交換器5を通過して蒸発される。室外熱交換器5を通過した冷媒は、過熱度制御弁33およびアキュムレータ8を経て圧縮機2に戻る。すなわち、冷温・低圧の冷媒が蒸発器7にて熱交換されないため、車室内に導入された空気は室内凝縮器3により加熱されるのみとなる。このように、一時的に蒸発器7に低温・低圧の液冷媒が供給されなくなるため、ダクト10を通過する空気により蒸発器7が温められる。制御部100は、外部温度等に応じて外部環境が極低温であると判定すると、暖房運転から特定暖房運転に適宜切り替えることにより、蒸発器7が凍結するのを防止または抑制する。
また、図2(D)に示すように、特殊冷暖房運転時においては、第1制御弁ユニット4において切替弁31の第1弁部が閉弁される。また、第2制御弁ユニット6において比例弁42の第1比例弁が開弁され、第2比例弁が閉弁される。このため、冷媒は室外熱交換器5を通過せず、室外熱交換器5は実質的に機能しなくなる。つまり、蒸発器7のみが蒸発器として機能する内気循環の状態となる。すなわち、圧縮機2から吐出された冷媒は、室内凝縮器3、過冷却度制御弁41、比例弁42の第1比例弁、蒸発器7、アキュムレータ8を経由するように第1冷媒循環通路を循環して圧縮機2に戻る。このとき、室外熱交換器5の蒸発圧力Poが圧縮機2の吸入圧力Psよりも低くなるが、逆止弁44によって過冷却度制御弁43側への冷媒の逆流は防止され、また、逆止弁32によって切替弁31側への冷媒の逆流も防止される。
すなわち、圧縮機2から吐出された高温・高圧のガス冷媒は、室内凝縮器3を経て凝縮され、過冷却度制御弁41にて断熱膨張されて冷温・低圧の気液二相冷媒となり、蒸発器7を通過して蒸発される。蒸発器7を通過した冷媒は、アキュムレータ8を経て圧縮機2に戻る。車室内に導入された空気は、蒸発器7を経由して冷却・除湿され、室内凝縮器3により加熱されることでその温度調整が行われる。このような特殊冷暖房運転は、外部からの吸熱が困難な場合、例えば車両が極寒状況におかれた場合などに有効に機能する。
次に、第1制御弁ユニット4の具体的構成および動作について説明する。上述のように、第1制御弁ユニット4は、切替弁31、逆止弁32、過熱度制御弁33を含む。本実施例では、切替弁31と逆止弁32とが複合弁35として一体に設けられている。まず、複合弁35の構成および動作について説明する。図3は、複合弁の具体的構成および動作を表す断面図である。なお、以下の説明においては便宜上、図示の状態を基準に各構造の位置関係を表現することがある。
複合弁35は、弁本体101とソレノイド102とを組み付けて構成されている。弁本体101は、有底筒状のボディ103に主弁105(「第1弁」として機能する)、パイロット弁106、副弁107(「第2弁」として機能する)を同軸状に収容して構成される。ボディ103は、金属材を切削加工して得られた第1ボディ108の内方に、樹脂材の射出成形により得られた第2ボディ109を組み付けて構成された二重構造を有する。第1ボディ108の一方の側部には入口ポート110および出入口ポート112が設けられ、他方の側部には出口ポート114が設けられている。入口ポート110は上流側通路(第1通路21)に連通し、出入口ポート112は中間通路(第2通路22)に連通し、出口ポート114は下流側通路(バイパス通路29)に連通する。
第2ボディ109は、ボディ103の内部通路を形成するとともに弁機構を収容する。第2ボディ109の入口ポート110との対向部および出入口ポート112との対向部には、内外を連通する連通孔がそれぞれ設けられ、その第1ボディ108との境界部を跨ぐようにシール部材118,120が嵌着されている。第2ボディ109の軸線方向中央部には、半径方向内向きにフランジ部115が突設され、その内周部によりガイド孔116が形成されている。ガイド孔116の内周面には、シール用のOリング119が嵌着されている。
第2ボディ109の内部はフランジ部115により上方の圧力室120と下方の圧力室122とに区画され、第2ボディ109の下方には圧力室124が形成されている。圧力室120は入口ポート110に連通し、圧力室122は出入口ポート112に連通し、圧力室124は出口ポート114に連通している。そして、第2ボディ109の内部には、これらの圧力室を区画するように弁駆動体126、複合弁体128、可動弁体130が収容されている。
第2ボディ109の外周部には、長手方向に沿って延びる連通溝134が形成されており、ボディ103との間に連通路136を形成している。一方、第1ボディ108の上端開口部を封止するように段付円板状の区画部材138が設けられている。区画部材138は、下方に向けてその外径が段階的に縮径し、下半部が第2ボディ109の上端開口部に嵌合している。区画部材138と第2ボディ109との接合面にはシール用のOリングが介装されている。区画部材138には軸線に沿って貫通孔が設けられ、その貫通孔の下半部によりパイロット弁孔140が形成されている。また、その貫通孔から半径方向外向きに連通路142が延設され、区画部材138の内外を連通させている。この連通路142と連通路136とによりパイロット通路144が形成されている。パイロット通路144は、パイロット弁孔140と圧力室124とを連通させる。
弁駆動体126は段付円筒状をなし、その下半部がガイド孔116に摺動可能に支持されている。弁駆動体126の上端開口部には、半径方向外向きに延出するフランジ部146が設けられ、第2ボディ109の上部内周面に摺動可能に支持されている。フランジ部146の外周面にはシール用のOリングが嵌着されている。また、弁駆動体126の上端開口部を封止するように有底円筒状の区画部材148が嵌着されている。区画部材148と第2ボディ109との接合面にはシール用のOリングが介装されている。この区画部材148とフランジ部146とにより可動の区画部が形成されており、その区画部により圧力室120が高圧室150と背圧室152とに区画される。すなわち、弁駆動体126の区画部と区画部材138とに挟まれる空間により背圧室152が形成される。区画部材138は、弁駆動体126を上方から係止して上死点を規定する係止部としても機能する。弁駆動体126は、その長手方向中央部に縮径部を有し、その内周部により主弁孔154が形成され、その上流側開口端部に主弁座156が形成されている。
複合弁体128は、長尺状の作動ロッドの上端部に主弁体160が一体形成され、下端部に副弁体162が螺合接続されて構成されている。複合弁体128は、弁駆動体126の主弁孔154を貫通するように同軸状に配設されている。主弁体160にはリング状の弾性体が嵌着され、その弾性体が主弁座156に上流側から着脱して主弁105を開閉する。同様に、副弁体162にもリング状の弾性体が嵌着されている。主弁体160と副弁体162とは作動ロッドを介して一体化されているため、いずれか一方の動作に他方が連動することになる。
主弁体160と区画部材148との間には、主弁体160を閉弁方向に付勢するスプリング164が介装されている。区画部材148の下面には、図示のように主弁体160が当接した際にも内外を連通させるための連通溝が形成されている。また、区画部材148の中央部には小断面のリーク通路166が形成され、そのリーク通路166を背圧室152側で囲むように円ボス状の弁座形成部168が設けられている。この弁座形成部168は、その上端面においてパイロット弁106のパイロット弁体170に着脱するが、その上端面の所定位置にはごく小さな連通溝172が設けられている。すなわち、連通溝172は、弁座形成部168がパイロット弁体170に当接した際にも少量の冷媒の通過を許容する微少通路を形成するものである。この微少通路の流路断面はリーク通路166の流路断面よりもさらに小さくなるが、その詳細については後述する。
区画部材148と区画部材138との間には、区画部材148を介して主弁体160を閉弁方向に付勢するスプリング174が介装されている。また、区画部材138におけるパイロット弁孔140の開口端縁によりパイロット弁座176が形成されている。パイロット弁体170は、背圧室152に配設されたボール状の弁体であり、パイロット弁座176に着脱してパイロット弁106を開閉する。パイロット弁体170と区画部材148との間には、パイロット弁体170を閉弁方向に付勢するスプリング180が介装されている。パイロット弁体170は、ソレノイド102により開弁方向の力を受けるが、その詳細については後述する。
可動弁体130は、リング状の本体を有し、第2ボディ109の下端部に摺動可能に支持されている。可動弁体130の外周面には、弾性体からなるリング状のシール部材182が嵌着されている。可動弁体130の上流側開口端部に弁座184が設けられている。可動弁体130は、副弁107の弁座として機能するとともに、逆止弁32の弁体としても機能する。すなわち図示のように、副弁体162が圧力室122側から弁座184に着脱することにより副弁107を開閉する。また、可動弁体130が圧力室124側から副弁体162に着脱することにより逆止弁32を開閉する。ボディ103の底部と可動弁体130との間には、可動弁体130を閉弁方向に付勢するスプリング186が介装されている。
このような構成において、主弁105の開弁状態において入口ポート110から導入された上流側圧力P1は、リーク通路166を通過することで背圧室152にて中間圧力Ppとなる。また、上流側圧力P1は、主弁105を経て中間圧力P2となり、出入口ポート112を介して室外熱交換器5側へ導出される。また、副弁107の開弁状態において出入口ポート112から導入された中間圧力P2は、副弁107を経て下流側圧力P3となって出口ポート114からバイパス通路29へ導出される。
一方、ソレノイド102は、ボディ103の上端部を封止するように取り付けられている。ソレノイド102とボディ103との間にはシールリングが介装されている。ソレノイド102は、円筒状のスリーブ188と、スリーブ188の下部に固定された円筒状のコア190と、スリーブ188内でコア190と軸線方向に対向配置された円筒状のプランジャ192とを有する。スリーブ188の外周部にはボビン193が設けられ、そのボビン193に電磁コイル194が巻回されている。そして、電磁コイル194を外部から覆うようにケース196が設けられている。スリーブ188は、ケース196を軸線方向に貫通している。電磁コイル194からは通電用のハーネスが引き出されている。
コア190は、その下部がケース196の貫通孔に圧入されるようにして固定されている。また、長尺状の作動ロッド195が、コア190をその軸線にそって貫通し、その上端部がプランジャ192の中央部に圧入されるようにして固定されている。作動ロッド195は、その下端部がパイロット弁体170と作動連結可能となっており、ソレノイド102がオンされたときにパイロット弁体170に開弁方向の力を伝達する。
プランジャ192とコア190との間にはスプリング197(「付勢部材」に該当する)が介装されている。また、プランジャ192とスリーブ188との間にはスプリング198(「付勢部材」に該当する)が介装されている。スプリング197は、プランジャ192を介してパイロット弁体170を開弁方向に付勢する。スプリング198は、スプリング197の荷重調整用のスプリングである。
以上のように構成された複合弁35は、ソレノイド102への通電有無に応じて主弁および副弁の開閉状態を切り替えるパイロット作動式の制御弁として機能する。以下、その動作について詳細に説明する。図4〜図9および既に説明した図3は、複合弁35の動作を表す説明図である。図3はソレノイド102がオフ(非通電状態)にされた定常状態を示し、図2(A)に対応する。図6はソレノイド102がオン(通電状態)にされた定常状態を示し、図2(B)および(C)に対応する。図4および図5はソレノイド102がオフからオンに切り替えられたときの途中過程を順次示し、図7および図8はソレノイド102がオンからオフに切り替えられたときの途中過程を順次示している。図9は、ソレノイド102がオンにされた状態において下流側圧力P3が中間圧力P2よりも高くなった逆圧状態を示し、図2(D)に対応する。
すなわち、冷房運転時にはソレノイド102がオフにされるため、図3に示すように、スプリング197の付勢力により作動ロッド195がパイロット弁体170から離間する。このため、スプリング180の付勢力によりパイロット弁体170がパイロット弁座176に着座してパイロット弁106が閉弁状態となる。その結果、背圧室152の中間圧力Ppが上流側圧力P1となり、差圧(Pp−P2)が大きくなるため、弁駆動体126が下方に駆動される。その結果、主弁座156が主弁体160から離間し、主弁105は開弁状態を維持する。一方、弁駆動体126の駆動により複合弁体128が押し下げられるため、副弁体162が弁座184に着座して副弁107は閉弁状態を維持する。このため、入口ポート110から導入された冷媒が主弁105を通過し、出入口ポート112から室外熱交換器5へ向けて導出される。
暖房運転時および特定暖房運転時にはソレノイド102がオンにされるため、コア190とプランジャ192との間に吸引力が作用し、作動ロッド195がパイロット弁106の開弁方向に駆動される。すなわち、ソレノイド102がオンにされると、作動ロッド195によってパイロット弁体170が開弁方向に付勢されるため、図4に示すように、パイロット弁106が開弁する。その結果、背圧室152の冷媒がパイロット弁孔140およびパイロット通路144を介して導出される。
このため、図5に示すように、差圧(P1−Pp)が大きくなって弁駆動体126が上方に駆動される。その結果、主弁体160が主弁座156に着座して主弁105が閉弁するとともに、副弁体162が弁座184から離間して副弁107が開弁する。このため、入口ポート110から導入される冷媒の通過が遮断され、出入口ポート112から導入される冷媒が副弁107を通過して、出口ポート114からバイパス通路29に導出される。このとき、パイロット弁体170が弁座形成部168に着座するため、リーク通路166で絞られた冷媒が連通溝172によるリーク通路にてさらに絞られるようにして背圧室152に導入され、パイロット弁孔140を介して導出される。そして、図6に示すように、パイロット弁106が微少開度を保つ状態となる。
このように、ソレノイド102がオンにされて定常状態となるまでに、弁駆動体126が上昇するとともに背圧室152へのリーク通路がさらに絞られつつ、パイロット弁106の開度が絞られるように動作する。すなわち、ソレノイド102がオンにされた際に、入口ポート110から背圧室152に導入される冷媒は、そのままパイロット弁孔140から導出されるだけで無駄な流量となるところ、本実施形態では背圧室152へのリーク通路が絞られることで、その無駄を抑制することができる。
一方、ソレノイド102がオンからオフにされると、コア190とプランジャ192との間に吸引力が作用しなくなるため、図7に示すように、作動ロッド195がパイロット弁体170から離間する。このため、スプリング180の付勢力によりパイロット弁体170がパイロット弁座176に着座してパイロット弁106が閉弁状態となる。その結果、背圧室152の中間圧力Ppが上流側圧力P1となり、差圧(Pp−P2)が大きくなるため、図8に示すように、弁駆動体126が下方に駆動される。このとき、上流側圧力P1が中間圧力P2よりも高く、中間圧力P2が下流側圧力P3よりも高くなっているため、弁駆動体126の駆動とともに複合弁体128も閉弁方向に動作し、主弁105は閉弁状態を保ち、副弁107は閉弁方向に動作する。そして、図8に示すように副弁107が閉弁状態となると、それ以降、弁駆動体126が下方へ駆動されても複合弁体128は係止されたまま動けない状態となる。このため、図3に示したように、主弁105が開弁されるようになる。
このように、ソレノイド102がオフにされて定常状態となるまでに、背圧室152の中間圧力Ppの上昇により弁駆動体126が駆動されることになるが、上述のように、連通溝172によりリーク通路が確保されたことで、中間圧力Ppを速やかに上昇させることができ、弁駆動体126を速やかに駆動することができる。
特殊冷暖房運転時にはソレノイド102がオンにされるため、主弁105は閉弁状態を維持する。一方、図2(D)にも示したように第2冷媒循環通路が遮断され、室外熱交換器5が極低温下に置かれることにより室外熱交換器5における圧力も相当低くなる。つまり、下流側圧力P3が中間圧力P2よりも高くなる。このため、図9に示すように、可動弁体130に逆圧がかかり、逆止弁32が閉弁状態となる。その結果、冷媒の逆流は防止される。
次に、過熱度制御弁33の構成および動作について説明する。図10は、過熱度制御弁33の具体的構成および動作を表す断面図である。
過熱度制御弁33は、ボディ203に主弁205とパイロット弁206とを同軸状に収容して構成される。ボディ203の一方の側部には入口ポート210が設けられ、他方の側部には出口ポート212が設けられている。ボディ203の内方には、さらに円筒状の内部ボディ204が同軸状に設けられている。
内部ボディ204の上端部には、有底円筒状の区画部材220が圧入され、その上端開口部を封止するようにパワーエレメント222が設けられている。また、内部ボディ204の下端部の入口ポート210との対向位置には、内外を連通させる連通孔213が設けられ、下端開口部には主弁孔214が設けられている。区画部材220の側部には、内外を連通させる連通路221が設けられ、底部中央には内外を連通させるパイロット弁孔223が設けられている。
パワーエレメント222は、入口ポート210から導入される冷媒の温度と圧力を感知してパイロット弁206ひいては主弁205を開閉駆動するものである。パワーエレメント222は、中空のハウジング224と、ハウジング224内を密閉空間S1と開放空間S2とに仕切るように配設されたダイアフラム226とを含んで構成されている。密閉空間S1は感温室を構成し、基準ガスとして、冷凍サイクルを循環する冷媒ガス(HFC−134a)と窒素ガスとの混合ガスが封入されている。なお、変形例においては、基準ガスとして、冷凍サイクルを循環する冷媒ガスと同種類のガスを用いてもよい。
そして、ダイアフラム226の下面に当接するようにパイロット弁体228が配設されている。パイロット弁体228は、パイロット弁孔223に着脱してパイロット弁206を開閉する。パイロット弁体228と区画部材220との間には、パイロット弁体228を開弁方向に付勢するスプリング230が介装されている。
内部ボディ204の下半部には、段付円筒状の弁駆動体232が配設されている。弁駆動体232は、その上端部が内部ボディ204に摺動可能に支持されている。また、弁駆動体232は、主弁孔214を貫通して下方に延び、その下端部に主弁体215が設けられている。主弁体215は、下流側から主弁孔214に接離して主弁205を開閉する。主弁体215とボディ203との間には、主弁体215を閉弁方向に付勢するスプリング217が介装されている。
弁駆動体232の上端部と区画部材220との間に背圧室234が形成される。また、弁駆動体232を軸線方向に貫通するようにパイロット通路236が設けられ、その上端部が縮径されて小断面のリーク通路238となっている。一方、パイロット通路236の下端開口部を開閉可能な小弁体240が配設されている。小弁体240と弁駆動体232との間には、小弁体240を閉弁方向に付勢するスプリング242が介装されている。小弁体240は、過熱度制御弁33に逆圧がかかったときにパイロット通路236を閉じる逆止弁として機能する。
このような構成において、入口ポート210を介して導入された上流側圧力Pinの冷媒は、一方で主弁205を経て減圧膨張されて下流側圧力Poutとなり、他方でパイロット弁206を経て背圧室234にて中間圧力Pp2となり、リーク通路238を経て下流側圧力Poutとなる。中間圧力Pp2は、パイロット弁206の開閉状態によって変化する。
ここで、パワーエレメント222は、入口ポート210から導入される冷媒の温度と圧力を感知し、その冷媒の過熱度が設定過熱度SH(例えば5deg)に近づくように動作し、パイロット弁206の開度を調整する。すなわち、パワーエレメント222は、暖房運転時において過熱度制御弁33の入口側(つまり、室外熱交換器5の出口側)の過熱度が設定過熱度SHとなるように動作し、パイロット弁206ひいては主弁205の開度を調整する。
すなわち、過熱度の制御状態において、上流側の過熱度が設定過熱度SHよりも大きくなると、パワーエレメント222が高温を感知してパイロット弁206の閉弁方向に動作する。その結果、パイロット弁206の弁開度が小さくなるため中間圧力Pp2が低下し、弁駆動体232が閉弁方向に動作する。その結果、上流側圧力Pinが上昇するため、その上流側での熱交換量が少なくなり、過熱度が小さくなる方向に変化する。逆に、過熱度が設定過熱度SHよりも小さくなると、パワーエレメント222が低温を感知してパイロット弁206の開弁方向に動作する。その結果、パイロット弁206の弁開度が大きくなるため中間圧力Pp2が上昇し、弁駆動体232が開弁方向に動作する。その結果、上流側圧力Pinが低下するため、その上流側での熱交換量が増加し、過熱度が大きくなる方向に変化する。このようにして過熱度が設定過熱度SHに保たれるようになる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はその特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内で種々の変形が可能であることはいうまでもない。
上記実施形態では、本発明の車両用冷暖房装置を電気自動車に適用した例を示したが、内燃機関を搭載した自動車や、内燃機関と電動機を同載したハイブリッド式の自動車に提供することが可能であることは言うまでもない。上記実施形態では、圧縮機2として電動圧縮機を採用した例を示したが、エンジンの回転を利用して容量可変を行う可変容量圧縮機を採用することもできる。
上記実施形態では、第2通路22のバイパス通路29との分岐点に切替弁31を配置し、その切替弁31を三方電磁弁にて構成する例を示した。変形例においては、第2通路22におけるバイパス通路29との分岐点よりも圧縮機2側に切替弁を設け、その切替弁を二方電磁弁にて構成してもよい。そして、その切替弁を切替弁31と同様にパイロット作動式の制御弁としてもよい。具体的には、図3に示した切替弁31において、副弁107をなくし、出入口ポート112を出口ポートとして構成してもよい。そして、パイロット通路144をその出口ポートに接続してもよい。このような構成においても、背圧室へ流体を導入する導入通路の開度を絞るとともに、背圧室から流体を導出する導出通路の開度を絞る機構を備えるため、上記実施形態と同様の作用効果を得ることが可能となる。