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JP2012097718A - 多気筒内燃機関の気筒間空燃比ばらつき異常検出装置 - Google Patents

多気筒内燃機関の気筒間空燃比ばらつき異常検出装置 Download PDF

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JP2012097718A JP2010248535A JP2010248535A JP2012097718A JP 2012097718 A JP2012097718 A JP 2012097718A JP 2010248535 A JP2010248535 A JP 2010248535A JP 2010248535 A JP2010248535 A JP 2010248535A JP 2012097718 A JP2012097718 A JP 2012097718A
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Abstract

【課題】異常判定値を適切に定めて検出精度を向上し、誤検出を防止する。
【解決手段】気筒間空燃比ばらつき異常検出装置は、多気筒内燃機関の排気通路に設置された空燃比センサと、空燃比センサの出力の変動度合いに基づいて気筒間空燃比ばらつき異常を検出する異常検出手段とを備える。異常検出手段は、空燃比センサ出力の変動度合いに相関するパラメータの値を所定の異常判定値と比較してばらつき異常を検出する。異常判定値は、予め分割された内燃機関の複数の運転領域のそれぞれに対し個別に設定されている。
【選択図】図6

Description

本発明は、多気筒内燃機関の気筒間空燃比のばらつき異常を検出するための装置に係り、特に、多気筒内燃機関において気筒間の空燃比が比較的大きくばらついていることを検出する装置に関する。
一般に、触媒を利用した排気浄化システムを備える内燃機関では、排気中有害成分の触媒による浄化を高効率で行うため、内燃機関で燃焼される混合気の空気と燃料との混合割合、すなわち空燃比のコントロールが欠かせない。こうした空燃比の制御を行うため、内燃機関の排気通路に空燃比センサを設け、これによって検出された空燃比を所定の目標空燃比に一致させるようフィードバック制御を実施している。
一方、多気筒内燃機関においては、通常全気筒に対し同一の制御量を用いて空燃比制御を行うため、空燃比制御を実行したとしても実際の空燃比が気筒間でばらつくことがある。このときばらつきの程度が小さければ、空燃比フィードバック制御で吸収可能であり、また触媒でも排気中有害成分を浄化処理可能なので、排気エミッションに影響を与えず、特に問題とならない。
しかし、例えば一部の気筒の燃料噴射系が故障するなどして、気筒間の空燃比が大きくばらつくと、排気エミッションを悪化させてしまい、問題となる。このような排気エミッションを悪化させる程の大きな空燃比ばらつきは異常として検出するのが望ましい。特に自動車用内燃機関の場合、排気エミッションの悪化した車両の走行を未然に防止するため、気筒間空燃比ばらつき異常を車載状態(オンボード)で検出することが要請されており、最近ではこれを法規制化する動きもある。
例えば特許文献1に記載の装置では、触媒上流側の空燃比センサの出力値が正常値と乖離する異常状態が発生した場合、触媒下流側の空燃比センサの出力値に基づいて算出されるサブフィードバック量の学習値を、適正値近傍の値に修正するようにしている。
特開2010−71259号公報
ところで、空燃比ばらつき異常が発生すると空燃比センサ出力の変動が大きくなる。そこでこの変動度合いをモニタすることで、空燃比ばらつき異常を検出することが可能である。例えば、空燃比センサ出力の変動度合いに相関するパラメータを所定の異常判定値と比較してばらつき異常を検出することが可能である。一般的に、異常判定値は一定値として定められる。
しかしながら、本発明者の研究結果によれば、一定の異常判定値を用いることが必ずしも適切ではないことが判明した。すなわち、一定の異常判定値を用いて空燃比ばらつき異常を検出すると、検出精度が低下し、誤検出の虞もある。
そこで本発明は、以上の事情に鑑みて創案され、その目的は、異常判定値を適切に定めて検出精度を向上し、誤検出を防止し得る多気筒内燃機関の気筒間空燃比ばらつき異常検出装置を提供することにある。
本発明の一の態様によれば、
多気筒内燃機関の排気通路に設置された空燃比センサと、
前記空燃比センサの出力の変動度合いに基づいて気筒間空燃比ばらつき異常を検出する異常検出手段と、
を備え、
前記異常検出手段は、前記空燃比センサ出力の変動度合いに相関するパラメータの値を所定の異常判定値と比較してばらつき異常を検出し、
前記異常判定値は、予め分割された内燃機関の複数の運転領域のそれぞれに対し個別に設定されている
ことを特徴とする多気筒内燃機関の気筒間空燃比ばらつき異常検出装置が提供される。
好ましくは、前記異常判定値は、予め分割された少なくとも二つの運転領域に対し異なる値が設定されている。
好ましくは、前記異常判定値は、エンジン回転速度が高い運転領域であるほど大きくなる値に設定されている。
好ましくは、前記異常判定値は、吸入空気量が多い運転領域であるほど大きくなる値に設定されている。
好ましくは、前記パラメータは、異なる二つのタイミングにおける前記空燃比センサ出力の差に基づく値である。
好ましくは、前記空燃比センサは、前記排気通路のうち、各気筒の排気ガスが集合する集合部に設置されている。
本発明によれば、異常判定値を適切に定めて検出精度を向上し、誤検出を防止することができるという、優れた効果が発揮される。
本発明の一実施形態に係る内燃機関の概略図である。 触媒前センサおよび触媒後センサの出力特性を示すグラフである。 気筒間空燃比ばらつき度合いに応じた空燃比センサ出力の変動を示すグラフである。 図3のIV部に相当する拡大図である。 エンジン運転領域の複数点について減少時変化率を実測した結果を示すグラフである。 図5の運転領域を分割してなる複数の分割領域と、各分割領域に対し個別に設定された異常判定値とを示すグラフである。 気筒間空燃比ばらつき異常検出のためのルーチンを示すフローチャートである。
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づき説明する。
図1は、本実施形態に係る内燃機関の概略図である。図示されるように、内燃機関(エンジン)1は、シリンダブロック2に形成された燃焼室3の内部で燃料および空気の混合気を燃焼させ、燃焼室3内でピストンを往復移動させることにより動力を発生する。本実施形態の内燃機関1は自動車に搭載された多気筒内燃機関であり、より具体的には並列4気筒の火花点火式内燃機関即ちガソリンエンジンである。但し本発明が適用可能な内燃機関はこのようなものに限られず、多気筒内燃機関であれば気筒数、形式等は特に限定されない。
図示しないが、内燃機関1のシリンダヘッドには吸気ポートを開閉する吸気弁と、排気ポートを開閉する排気弁とが気筒ごとに配設されており、各吸気弁および各排気弁はカムシャフトによって開閉させられる。シリンダヘッドの頂部には、燃焼室3内の混合気を点火するための点火プラグ7が気筒ごとに取り付けられている。
各気筒の吸気ポートは気筒毎の枝管4を介して吸気集合室であるサージタンク8に接続されている。サージタンク8の上流側には吸気管13が接続されており、吸気管13の上流端にはエアクリーナ9が設けられている。そして吸気管13には、上流側から順に、吸入空気量(単位時間当たりの吸入空気の量すなわち吸気流量)を検出するためのエアフローメータ5と、電子制御式のスロットルバルブ10とが組み込まれている。吸気ポート、枝管4、サージタンク8及び吸気管13により吸気通路が形成される。
吸気通路、特に吸気ポート内に燃料を噴射するインジェクタ(燃料噴射弁)12が気筒ごとに配設される。インジェクタ12から噴射された燃料は吸入空気と混合されて混合気をなし、この混合気が吸気弁の開弁時に燃焼室3に吸入され、ピストンで圧縮され、点火プラグ7で点火燃焼させられる。
一方、各気筒の排気ポートは排気マニフォールド14に接続される。排気マニフォールド14は、その上流部をなす気筒毎の枝管14aと、その下流部をなす排気集合部14bとからなる。排気集合部14bの下流側には排気管6が接続されている。排気ポート、排気マニフォールド14及び排気管6により排気通路が形成される。そしてこの排気通路のうち、排気マニフォールド14の排気集合部14bから下流側の部分は、各気筒の排気ガスが集合する集合部を形成する。
排気管6の上流側と下流側にはそれぞれ三元触媒からなる触媒、すなわち上流触媒11と下流触媒19が直列に取り付けられている。上流触媒11の上流側及び下流側にそれぞれ排気ガスの空燃比を検出するための第1及び第2の空燃比センサ、即ち触媒前センサ17及び触媒後センサ18が設置されている。これら触媒前センサ17及び触媒後センサ18は、上流触媒11の直前及び直後の位置に設置され、排気中の酸素濃度に基づいて空燃比を検出する。このように排気通路の集合部には単一の触媒前センサ17が設置されている。この触媒前センサ17が本発明にいう「空燃比センサ」に該当する。
上述の点火プラグ7、スロットルバルブ10及びインジェクタ12等は、制御手段としての電子制御ユニット(以下ECUと称す)20に電気的に接続されている。ECU20は、何れも図示されないCPU、ROM、RAM、入出力ポート、および記憶装置等を含むものである。またECU20には、図示されるように、前述のエアフローメータ5、触媒前センサ17、触媒後センサ18のほか、内燃機関1のクランク角を検出するクランク角センサ16、アクセル開度を検出するアクセル開度センサ15、内燃機関1の冷却水の温度を検出する水温センサ22、その他の各種センサが図示されないA/D変換器等を介して電気的に接続されている。ECU20は、各種センサの検出値等に基づいて、所望の出力が得られるように、点火プラグ7、スロットルバルブ10、インジェクタ12等を制御し、点火時期、燃料噴射量、燃料噴射時期、スロットル開度等を制御する。なおスロットル開度は通常アクセル開度に応じた開度に制御される。
触媒前センサ17は所謂広域空燃比センサからなり、比較的広範囲に亘る空燃比を連続的に検出可能である。図2に触媒前センサ17の出力特性を示す。図示するように、触媒前センサ17は、検出した排気空燃比(触媒前空燃比A/Ff)に比例した大きさの電圧信号Vfを出力する。排気空燃比がストイキ(理論空燃比、例えばA/F=14.6)であるときの出力電圧はVreff(例えば約3.3V)である。
他方、触媒後センサ18は所謂O2センサからなり、ストイキを境に出力値が急変する特性を持つ。図2に触媒後センサ18の出力特性を示す。図示するように、排気空燃比(触媒後空燃比A/Fr)がストイキであるときの出力電圧、すなわちストイキ相当値はVrefr(例えば0.45V)である。触媒後センサ18の出力電圧は所定の範囲(例えば0〜1(V))内で変化する。排気空燃比がストイキよりリーンのとき、触媒後センサの出力電圧はストイキ相当値Vrefrより低くなり、排気空燃比がストイキよりリッチのとき、触媒後センサの出力電圧はストイキ相当値Vrefrより高くなる。
上流触媒11及び下流触媒19は、それぞれに流入する排気ガスの空燃比A/Fがストイキ近傍のときに排気中の有害成分であるNOx、HCおよびCOを同時に浄化する。この三者を同時に高効率で浄化できる空燃比の幅(ウィンドウ)は比較的狭い。
上流触媒11に流入する排気ガスの空燃比がストイキ近傍に制御されるように、空燃比制御(ストイキ制御)がECU20により実行される。この空燃比制御は、触媒前センサ17によって検出された排気空燃比を所定の目標空燃比であるストイキに一致させるような主空燃比制御(主空燃比フィードバック制御)と、触媒後センサ18によって検出された排気空燃比をストイキに一致させるような補助空燃比制御(補助空燃比フィードバック制御)とからなる。
さて、例えば全気筒のうちの一部の気筒のインジェクタ12が故障し、気筒間に空燃比のばらつき(インバランス:imbalance)が発生したとする。例えば#1気筒が他の#2、#3及び#4気筒よりも燃料噴射量が多くなり、その空燃比が大きくリッチ側にずれる場合等である。このときでも前述の主空燃比フィードバック制御により比較的大きな補正量を与えれば、触媒前センサ17に供給されるトータルガスの空燃比をストイキに制御できる場合がある。しかし、気筒別に見ると、#1気筒がストイキより大きくリッチ、#2、#3及び#4気筒がストイキよりリーンであり、全体のバランスとしてストイキとなっているに過ぎず、エミッション上好ましくないことは明らかである。そこで本実施形態では、かかる気筒間空燃比ばらつき異常を検出する装置が装備されている。
図3に示すように、触媒前センサ17によって検出される排気空燃比A/Fは、1エンジンサイクル(=720°CA)を1周期として周期的に変動する傾向にある。そして気筒間空燃比ばらつきが発生すると、1エンジンサイクル内での変動が大きくなる。(B)の空燃比線図a,b,cはそれぞればらつき無し、1気筒のみ20%のインバランス割合でリッチずれ、及び1気筒のみ50%のインバランス割合でリッチずれの場合を示す。見られるように、ばらつき度合いが大きくなるほど空燃比変動の振幅が大きくなる。
ここでインバランス割合(%)とは、気筒間空燃比のばらつき度合いを表すパラメータである。即ち、インバランス割合とは、全気筒のうちある1気筒のみが燃料噴射量ズレを起こしている場合に、その燃料噴射量ズレを起こしている気筒(インバランス気筒)の燃料噴射量がどれくらいの割合で、燃料噴射量ズレを起こしていない気筒(バランス気筒)の燃料噴射量即ち基準噴射量からズレているかを示す値である。インバランス割合をIB、インバランス気筒の燃料噴射量をQib、バランス気筒の燃料噴射量即ち基準噴射量をQsとすると、IB=(Qib−Qs)/Qsで表される。インバランス割合IBが大きいほど、インバランス気筒のバランス気筒に対する燃料噴射量ズレが大きく、空燃比ばらつき度合いは大きい。
[気筒間空燃比ばらつき異常検出]
上記の説明から理解されるように、空燃比ばらつき異常が発生すると触媒前センサ出力の変動が大きくなる。そこでこの変動度合いをモニタすることで、空燃比ばらつき異常を検出することが可能である。本実施形態では、触媒前センサ出力の変動度合いに相関するパラメータである変動パラメータを算出すると共に、この変動パラメータを所定の異常判定値と比較してばらつき異常を検出する。
ここで変動パラメータの算出方法について説明する。図4は、図3のIV部に相当する拡大図であり、特に1エンジンサイクル内の触媒前センサ出力の変動を示す。ここで触媒前センサ出力としては、触媒前センサ17の出力電圧Vfを空燃比A/Fに換算した値を用いる。但し触媒前センサ17の出力電圧Vfを直接用いることも可能である。
(B)図に示すように、触媒前センサ出力A/Fは、増加する場合と減少する場合とがある。まず増加する場合について着目する。ECU20は、1エンジンサイクルの開始から、所定のサンプル周期τ(単位時間、例えば4ms)毎に、触媒前センサ出力A/Fの値を取得する。そして今回のタイミング(第2のタイミング)で取得した値A/Fと、前回のタイミング(第1のタイミング)で取得した値A/Fn−1との差ΔA/Fを次式(1)により求める。なお今回のタイミングと前回のタイミングとは時間τだけ隔てられている。この差ΔA/Fは今回のタイミングにおける微分値と言い換えることができる。
Figure 2012097718
さらにECU20は、この差ΔA/Fと、両タイミング間の時間τとの比Rを次式(2)により求める。
Figure 2012097718
この比Rは1サンプル周期τ間での線図の傾きに相当し、単に傾きあるいは時間変化率と言い換えることもできる。
本実施形態では、検出精度向上のため、触媒前センサ出力A/Fの増加時、サンプル周期τ毎に比Rを積算し、この積算を1エンジンサイクルの開始時t1から終了時t2まで行うと共に、当該積算値をサンプル数Nで除して平均値+Rvを求める。なおサンプル数Nはエンジン回転速度に応じて変化する。この平均値+Rvは次式(3)により算出される。
Figure 2012097718
そしてさらに検出精度向上のため、当該平均値+Rvを所定数(例えば100)のエンジンサイクルについて積算し、当該積算値を前記所定数で除して平均値を求める。この最終的に求められた平均値を、異常判定値との比較対象である変動パラメータとする。以下、この平均値を便宜上「増加時変化率」いい、+Rで表す。
次に触媒前センサ出力A/Fが減少する場合について説明する。この減少時も、増加時と大略同様であるが、減少時には空燃比差ΔA/Fおよび比Rが負の値として算出されるので、1エンジンサイクル当たりの比の平均値−Rvは絶対値として算出される。すなわち、平均値−Rvは次式(4)により算出される。
Figure 2012097718
あとは増加時と同様に、当該平均値−Rvを所定数のエンジンサイクルについて積算し、当該積算値を前記所定数で除して平均値を求める。この最終的に求められた平均値を、異常判定値との比較対象である変動パラメータとする。以下、この平均値を便宜上「減少時変化率」いい、−Rで表す。
これら増加時変化率+Rおよび減少時変化率−Rは、触媒前センサ出力の変動度合いが大きくなるほど大きくなる。従って触媒前センサ出力の変動度合いに相関する値である。
なお、変動パラメータは上記の増加時変動率+Rおよび減少時変動率−Rに限定されず、他の値とすることもできる。例えば、1エンジンサイクルの比の平均値+Rv、−Rvを変動パラメータとしてもよいし、1エンジンサイクル中の任意の1タイミングにおける比Rを変動パラメータとしてもよい。また任意の1タイミングにおける出力差ΔA/F、または複数タイミングにおける出力差ΔA/Fの平均値を変動パラメータとしてもよい。すなわち上記の比Rを出力差ΔA/Fに置き換えることができる。さらに、触媒前センサ出力の変動を増加時と減少時とで区別せず、出力差ΔA/Fの絶対値に基づいて変動パラメータを算出してもよい。
また、触媒前センサ出力の変動度合いに相関する如何なる値をも変動パラメータとすることができる。例えば、1エンジンサイクル内の触媒前センサ出力の最大値と最小値の差(所謂ピークトゥピーク; peak to peak)に基づいて、変動パラメータを算出することもできる。触媒前センサ出力の変動度合いが大きいほど当該差も大きくなるからである。
ところで、本発明者の研究結果によれば、変動パラメータとの比較対象となる異常判定値は、必ずしも一定値とすることが適切ではないことが判明した。従って、常に一定の異常判定値を用いて空燃比ばらつき異常を検出すると、検出精度が低下し、誤検出が発生する虞もある。
これを図示したのが図5である。図5は、エンジン回転数Ne(rpm)と吸入空気量Ga(g/s)により規定されるエンジン運転領域の複数点について、クライテリア(正常と異常の境目)相当のリッチずれが発生したときの減少時変化率−Rを実測した結果を示す。なおエンジン回転数Neはエンジン回転速度と同義である。
ここで、図4に示すように、1気筒のみがリッチずれを起こしている場合、この1気筒から排出された排気ガスの空燃比が著しくリッチであるので、この排気ガスを受けた触媒前センサの出力は急峻にリッチ側に変化し、すなわち急減する。そこでここでは減少時変化率−Rのみを用いてリッチずれ異常を検出するようにしている。
図5を参照して、エンジン回転数Neについては等間隔で離れた各回転数N1〜N11が存在し、吸入空気量Gaについても等間隔で離れた各吸入空気量G1〜G7が存在する。本実施形態では、N1からN11までの回転範囲内、かつG1からG7までの吸入空気量範囲内でのみ、ばらつき異常検出を行う。例えばN1=2200(rpm)、N11=2500(rpm)、G1=16(g/s)、G7=22(g/s)である。このように、エンジンの全運転領域のうち一部の運転領域のみにおいてばらつき異常検出を行う。このばらつき異常検出が行われる運転領域を検出領域という。
図5から分かるように、エンジン回転数Ne(rpm)および吸入空気量Ga(g/s)の少なくとも一方が異なると、実測値は異なる傾向にある。ここで実測値はα1〜α9であり、α1<α2<・・・・<α8<α9である。例えば、Ne=N1且つGa=G1のときの実測値はα3であるが、Ne=N3且つGa=G3のときの実測値はα4である。概して、エンジン回転数Neが高いほど、また吸入空気量Gaが多いほど、実測値は大きくなる傾向にある。最大の実測値は、検出領域内で最高のエンジン回転数N11且つ最大の吸入空気量G7のときのα9である(星印で表示)。
例えば、仮にα3を一定の異常判定値として定め、Ne=N11且つGa=G7というエンジン運転条件下でα8という実測値が得られたとする。するとこの場合α3<α8なので、ばらつき異常ありと判定してしまう。しかしながら、本来はα8<α9なのでばらつき異常なし、すなわち正常と判定すべきである。よってこの場合は誤検出が発生することになる。
また逆に、例えば最大のα9を一定の異常判定値として定め、Ne=N1且つGa=G1というエンジン運転条件下でα5という実測値が得られたとする。するとこの場合α5<α9なので正常と判定してしまう。しかしながら、本来はα3<α5なのでばらつき異常ありと判定すべきである。よってこの場合も誤検出が発生することになる。特に、大きめ且つ一定の異常判定値を定めると、ばらつき異常ありという判定をしづらくなる。
このように、異常検出時のエンジン運転条件を考慮しないで一律に異常判定値を定めてしまうと、検出精度が低下し、誤検出が発生する虞がある。
そこで本実施形態では、異常判定値を、予め分割されたエンジンの複数の運転領域のそれぞれに対し個別に設定することとしている。これにより異常判定値を適切に定め、検出精度を向上し、誤検出を防止することができる。
図6には、検出領域を4分割してなる第1〜第4領域と、各領域に対し個別に設定された異常判定値とを示す。N1≦Ne≦N6且つG1≦Ga≦G4となる第1領域では、異常判定値がα4に設定されている。N6<Ne≦N11且つG1≦Ga≦G4となる第2領域では、異常判定値がα5に設定されている。N1≦Ne≦N6且つG4<Ga≦G7となる第3領域では、異常判定値がα6に設定されている。N6<Ne≦N11且つG4<Ga≦G7となる第4領域では、異常判定値がα9に設定されている。これら異常判定値は、図5の実測データに従って設定されたものである。このように異常判定値は、少なくとも二つの運転領域に対し異なる値を設定するのが好ましい。
こうして、各領域毎に適切な異なる異常判定値が設定されているので、検出精度を向上し、誤検出を防止することができる。
また、仮に異常判定値を一定とした場合、この異常判定値に合うように検出領域を狭くすることも考えられるが、こうすると検出頻度が低下してしまう。本実施形態によれば各分割領域毎に個別に異常判定値を設定するので、検出領域を拡大し、検出頻度を十分確保することが可能である。
[気筒間空燃比ばらつき異常検出ルーチン]
次に、図7を用いて、気筒間空燃比ばらつき異常検出ルーチンについて説明する。このルーチンは例えばECU20により前記サンプル周期τ毎に繰り返し実行される。
まずステップS101では、異常検出を行うのに適した所定の前提条件が成立しているか否かが判断される。この前提条件は、次の各条件が成立したときに成立する。
(1)エンジンの暖機が終了している。例えば水温センサ22で検出された水温が所定値以上であるとき暖機終了とされる。
(2)少なくとも触媒前センサ17が活性化している。
(3)エンジンが定常運転中である。
(4)ストイキ制御中である。
(5)エンジンが検出領域内で運転している。
(6)触媒前センサ17の出力A/Fが減少中である。
前提条件が成立していない場合にはルーチンが終了される。他方、前提条件が成立している場合には、ステップS102において、今回のタイミングにおけるエンジン回転数Neと吸入空気量Gaが取得される。
次に、ステップS103において、今回のタイミングにおける触媒前センサ17(空燃比センサ)の出力A/Fが取得され、ステップS104において、今回のタイミングにおける出力差ΔA/Fが前式(1)より算出される。
次に、ステップS105において、今回のタイミングにおける比Rが前式(2)より算出され、ステップS106において比Rが積算される。今回のタイミングにおける比の積算値すなわち積算比ΣRは次式(5)により求められる。
Figure 2012097718
次に、ステップS107において、1エンジンサイクルが終了したか否かが判断される。終了してなければルーチンが終了され、終了した場合にはステップS108に進む。
ステップS108では、積算比ΣRが前式(4)に従いサンプル数Nで除して平均化される。そしてステップS109において平均積算比−Rvが積算される。当該積算値Σ−Rvは次式(6)により求められる。
Figure 2012097718
こうして、1エンジンサイクルの終了毎に、平均積算比−Rvの算出および積算が実行される。
次に、ステップS110において、M回のエンジンサイクルが終了したか否かが判断される。終了してなければルーチンが終了され、終了した場合にはステップS111に進む。
ステップS111では、最終的な積算値Σ−RvがMで除して平均化され、減少時変化率−Rが算出される。
次いで、ステップS112では、図6に示した形態で予めECU20に記憶されたマップから、異常判定値αが読み出される。この際、ステップS102において以前取得されたエンジン回転数Neと吸入空気量Gaの全ての値(それぞれN×M個ある)が平均化され、各々の平均値に対応した異常判定値αがマップから読み出される。例えば、エンジン回転数Neの平均値がN4、吸入空気量Gaの平均値がG3であった場合、第1領域の0.040という異常判定値αが読み出される。
次に、ステップS113において、減少時変化率−Rが異常判定値αと比較される。
減少時変化率−Rが異常判定値αより小さい場合、ステップS114に進んで、ばらつき異常無しすなわち正常と判定され、ルーチンが終了される。
他方、減少時変化率−Rが異常判定値α以上であるときは、ステップS115に進んで、ばらつき異常有りすなわち異常と判定され、ルーチンが終了される。なお異常判定と同時に、異常の事実をユーザに知らせるべくチェックランプ等の警告装置を起動するのが好ましい。
以上、本発明の好適な実施形態を詳細に述べたが、本発明の実施形態は他にも様々なものが考えられる。例えば、前記実施形態では減少時(リッチ側への変化時)のみの空燃比センサ出力を利用してリッチずれ異常を検出した。しかしながら、増大時(リーン側への変化時)のみの空燃比センサ出力を利用する態様や、減少時および増大時の両者の空燃比センサ出力を利用する態様も可能である。またリッチずれ異常のみならず、リーンずれ異常をも検出することが可能であるし、これらリッチずれ及びリーンずれを区別せず、広く空燃比ばらつき異常を検出するようにしてもよい。
また、前記実施形態では内燃機関の全運転領域のうち、一部を検出領域としてこれを複数に分割した。しかしながら、分割方法はこれに限らない。例えば全運転領域を複数に分割してもよい。
本発明の実施形態は前述の実施形態のみに限らず、特許請求の範囲によって規定される本発明の思想に包含されるあらゆる変形例や応用例、均等物が本発明に含まれる。従って本発明は、限定的に解釈されるべきではなく、本発明の思想の範囲内に帰属する他の任意の技術にも適用することが可能である。
1 内燃機関
3 燃焼室
5 エアフローメータ
6 排気管
11 触媒
12 インジェクタ
14 排気マニフォールド
17 触媒前センサ
18 触媒後センサ
20 電子制御ユニット(ECU)

Claims (6)

  1. 多気筒内燃機関の排気通路に設置された空燃比センサと、
    前記空燃比センサの出力の変動度合いに基づいて気筒間空燃比ばらつき異常を検出する異常検出手段と、
    を備え、
    前記異常検出手段は、前記空燃比センサ出力の変動度合いに相関するパラメータの値を所定の異常判定値と比較してばらつき異常を検出し、
    前記異常判定値は、予め分割された内燃機関の複数の運転領域のそれぞれに対し個別に設定されている
    ことを特徴とする多気筒内燃機関の気筒間空燃比ばらつき異常検出装置。
  2. 前記異常判定値は、予め分割された少なくとも二つの運転領域に対し異なる値が設定されている
    ことを特徴とする請求項記載の多気筒内燃機関の気筒間空燃比ばらつき異常検出装置。
  3. 前記異常判定値は、エンジン回転速度が高い運転領域であるほど大きくなる値に設定されている
    ことを特徴とする請求項1または2に記載の多気筒内燃機関の気筒間空燃比ばらつき異常検出装置。
  4. 前記異常判定値は、吸入空気量が多い運転領域であるほど大きくなる値に設定されている
    ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の多気筒内燃機関の気筒間空燃比ばらつき異常検出装置。
  5. 前記パラメータは、異なる二つのタイミングにおける前記空燃比センサ出力の差に基づく値である
    ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の多気筒内燃機関の気筒間空燃比ばらつき異常検出装置。
  6. 前記空燃比センサは、前記排気通路のうち、各気筒の排気ガスが集合する集合部に設置されている
    ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の多気筒内燃機関の気筒間空燃比ばらつき異常検出装置。
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