JP2012045702A - 研磨装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】回転速度偏差算出部230が、目標回転速度から、研磨具11の回転速度を減算した回転速度偏差を算出し、制御補正量算出部240が、回転速度偏差に基づいて、前記移動駆動部15の前記研磨具11に対する加力を積分制御するための制御補正量を算出する。また、総合目標位置算出部320が、目標位置から、制御補正量を減算した総合目標位置を算出し、総合位置偏差算出部330が、総合目標位置から実位置を減算した総合位置偏差を算出する。そして、位置制御部340が、総合位置偏差に基づいて、PID制御による制御指令値を算出して、移動駆動部15に出力する。
【選択図】図1
Description
また、制御の切換を行う研磨装置では、制御切換時にショックが生じるおそれがある。すなわち、位置制御から圧力制御に切り換える際に、制御量が急激に変動し、アクチュエータに負担がかかってしまうおそれがある。
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態における研磨装置1の概略構成を示す構成図である。同図において、研磨装置1は、研磨具11と、回転軸12と、回転駆動部13と、測定部14と、移動駆動部15と、移動軸16と、エアホース17と、台座18と、制御部20とを具備する。制御部20は、目標回転速度記憶部210と、回転速度算出部220と、回転速度偏差算出部230と、制御補正量算出部240と、不感帯処理部250と、リミッタ処理部260と、目標位置記憶部310と、総合目標位置算出部320と、総合位置偏差算出部330と、位置制御部340とを具備する。制御補正量算出部240は、ゲイン乗算部241と、フィルタ部(積分特性フィルタ)242とを具備する。
回転駆動部13は、エアホース17にて供給される空気により、ほぼ一定のトルクを生じさせるエアモータを備え、回転自由に支持する回転軸12をエアモータのトルクで回転させることにより、研磨具11を回転させる。なお、回転駆動部13が、電動モータなどエアモータ以外の動力源を備えてトルクを生じさせるようにしてもよい。
測定部14は、角度センサを備え、回転軸12の回転角度を測定する。本実施形態では、回転軸12の回転角度と研磨具11の回転角度とは一致しており、回転軸12の回転速度と研磨具11の回転速度とは一致している。したがって、回転軸12の回転角度を測定することにより、研磨具11の回転速度を制御し得る。
移動軸16は、回転駆動部13を支持する軸であり、移動駆動部15からの加力により長手方向に進退することで、回転駆動部13と回転軸12と研磨具11とを移動させる。あるいは、研磨具11が研磨対象物に接しているときは、移動駆動部15からの加力により研磨具11を研磨対象物に押し付ける。
エアホース17は、回転駆動部13に接続されるホースであり、エアコンプレッサから供給される空気を回転駆動部13に供給する。台座18は、移動駆動部15を支持する。
回転速度算出部220は、測定部14が測定する回転軸12の回転角度を微分(擬似微分)して、回転軸12の回転速度(角速度)を算出する。
回転速度偏差算出部230は減算器であり、目標回転速度記憶部210の記憶する目標回転速度から、回転速度算出部220の算出する回転軸12の回転速度を減算した回転速度偏差を算出する。
ゲイン乗算部241は乗算器を備え、回転速度偏差算出部230から出力される回転速度偏差に、ゲインを乗算する。ここでのゲインは、例えば予め設定される定数である。
フィルタ部242はディジタルフィルタを備え、ゲインを乗算された回転速度偏差に対してフィルタ処理を行って、前記研磨具11に対する積分制御を行うための制御補正量を算出する。
リミッタ処理部260は、制御指令値の過剰な変化を防止するために、不感帯処理された制御補正量を一定範囲内に丸め込むリミッタ処理を行う。
なお、後述するように、制御部20が、不感帯処理部250およびリミッタ処理部260を具備しなくてもよい。この場合、フィルタ部242は、算出した補正制御量を目標位置記憶部310に出力する。
総合目標位置算出部320は加算器であり、目標位置記憶部310が記憶する目標位置に、リミッタ処理部260がリミッタ処理した制御補正量を加算した総合目標位置を算出する。
位置制御部340は、総合位置偏差算出部330から出力される総合位置偏差に基づいて、例えばPID制御による制御指令値を算出して移動駆動部15に出力する。
図2は、制御部20が制御指令値を算出する処理手順を示すフローチャートである。制御部20は、研磨装置1が動作する間、同図の処理を随時行って移動駆動部15に制御指令値を出力し続ける。
そして、ゲイン乗算部241は、回転速度偏差算出部230から出力される回転速度偏差に、予め記憶するゲインを乗算する(ステップS103)。ゲイン乗算部241は、乗算結果をフィルタ部242に出力する。
また、フィルタ部242は、ゲイン乗算部241から出力される、ゲインを乗算された回転速度偏差に対してフィルタ処理を行って、前記研磨具11に対する積分制御を行うための制御補正量を算出する(ステップS104)。
図3は、不感帯処理部250が不感帯処理に用いる関数の例を示す図である。不感帯処理部250は、図3に示すように、フィルタ部242からの制御補正量が「0」に近い場合に、出力値を「0」とする。不感帯処理部250は、不感帯処理を行った制御補正量をリミッタ処理部260に出力する。
図4は、リミッタ処理部260がリミッタ処理部に用いる関数の例を示す図である。リミッタ処理部260は、図4に示すように、入力される制御補正量が所定の最大値以上の場合に最大値に丸め込み、所定の最小値未満の場合に最小値に丸め込む。リミッタ処理部260は、リミッタ処理を行った制御補正量を総合目標位置算出部320に出力する。
まず、総合目標位置算出部320は、目標位置記憶部310から目標位置を読み出し、リミッタ処理部260から出力されるリミッタ処理された制御補正量を目標位置に加算して、総合目標位置を算出する(ステップS107)。ここで、目標位置記憶部310の記憶する目標位置は、研磨具11が研磨対象物に接する位置、あるいは、それよりも手前(移動駆動部15側)の位置に設定されている。研磨具11が研磨対象物に接した後、研磨具11の回転速度制御を行う際に、位置制御からの干渉を抑えるためである。総合目標位置算出部320は、算出した総合目標位置を総合位置偏差算出部330に出力する。
そして、位置制御部340は、総合位置偏差算出部330から出力される総合位置偏差に基づいて、PID制御による制御指令値を算出する(ステップS109)。位置制御部340は、算出した制御指令値を移動駆動部15に出力する。
図5は、フィルタ部242が備えるディジタルフィルタの特性を示すボード線図である。同図の線Aは、式(1)で表現されるフィルタ(以下、「式(1)のフィルタ」と称する。式(2)、式(3)についても同様)の特性を示す。
前述したように、目標位置記憶部310の記憶する目標位置は、0以上、かつ、研磨具11が研磨対象物に接するまでに移動する位置以下の値に設定されている。特に、移動駆動部15から研磨対象物までの位置が変化する場合、目標位置は研磨具11が研磨対象物に接するまでに移動する位置よりも小さく設定されている。したがって、仮に、目標位置と実位置とにもとづく位置制御のみを行ったとすると、実位置が目標位置に到達した時点で、研磨具11が研磨対象物に接しないまま、研磨具11は移動しなくなってしまう。
そこで、制御部20はフィルタ部242を備え、研磨具11に対する積分制御を行うことにより、研磨具11が研磨対象物に接するように制御する。なお、ここでいう積分制御とは、偏差のある状態が長時間継続するほど、制御指令値を大きく変化させる制御である。
フィルタ部242に適したフィルタ特性について調べるため、本願発明者は、式(2)、式(3)、式(1)の順にフィルタを設定して用いて実験を行った。
なお、式(2)の分子を3倍の162にしてフィルタを設定すると、2〜3Hzの振動が大きくなった。
そこで、式(3)に近い特性を有しつつ、1[rad/s](0.16Hz)以下での位相遅れを緩和させて、式(1)に設定するに至った。当該フィルタにて、目標回転速度にて研磨具11が研磨する良好な結果が得られた。また、研磨具11が研磨対象物と接しないまま移動しなくなってしまう現象も解消された。なお、式(1)では、一般的な積分特性よりも高域のゲインを20dB(デシベル)程度小さくして、高域の振動を抑制している。また、ゲイン乗算部241のゲインは、0.006としている。
図6は、研磨装置1にて配管内部を研磨するための実施例を示す図である。同図において、研磨装置1の台座18は、円盤状の台Bに固定されている。そして、台Bが、配管Pの内部で回転することにより、研磨装置1は、配管Pの内側を周回しながら研磨(全周研磨)を行う。
ここで、台Bの中心と配管Pの中心とは一致しない(偏芯している)ため、台Bが回転するにつれて、移動駆動部15から配管Pの研磨対象物までの位置が変化する。そこで、移動駆動部15は、研磨対象物までの位置に応じて、研磨具11の位置を変化させる必要がある。
また、線Dは、ほぼサインカーブを描いている。これは、台Bの回転に伴って研磨具11の位置が変化し、研磨具11が配管Pの内側に接する状態が維持されていることを示している。このように、研磨具11の位置制御も良好に行われている。
以上により、研磨装置1にて良好に研磨を行えること、および、図5で説明したフィルタの有効性が示された。
また、位置制御と回転速度制御の切換など、制御の切換を必要としないので、切換によるショックが生じない。
これに対して、本実施形態の研磨装置1では、研磨具11がちびると研磨具11の回転速度が大きくなり、移動駆動部15は、制御部20からの指示に従って、研磨具11に対して研磨対象物に押し付けるように加力する。これにより、目標位置の再設定など、ユーザ操作を必要とせずに、研磨具11がちびた場合にも研磨具11の押し付け量および研磨具11の回転速度を一定に保つことができる。
図8は、本発明の第2の実施形態における研磨装置2の概略構成を示す構成図である。同図において、図1の各部に対応し、同様の機能を有する部分には、同一の符号(11〜18、210、220、230、241、242、250〜340)を付して説明を省略する。
図8の研磨装置2は、制御部40の制御補正量算出部440が、ゲイン設定部443を備える点で、図1の研磨装置1と異なる。
ゲイン設定部443は、回転速度偏差に応じて、ゲイン乗算部241が回転速度偏差に乗算するゲインを調節する。
ステップS203において、ゲイン設定部443は、回転速度偏差が閾値未満か否かを判定する。閾値未満であると判定した場合(ステップS203:YES)、ゲイン設定部443は、ゲインを一定値K0に設定し(ステップS211)、ステップS221に進む。
例えば、ゲイン設定部443は、式(4)によりゲインKを算出してゲイン乗算部241に設定する。
ステップS221〜S227は、図2のステップS103〜S109と同様である。
図11は、本発明の第3の実施形態における研磨装置3の概略構成を示す構成図である。同図において、図1の各部に対応し、同様の機能を有する部分には、同一の符号(11〜18、210、220、230、241、250〜340)を付して説明を省略する。
図11の研磨装置3において、制御部60は、フィルタ部242を具備しない点で、図1の制御部20と異なる。また、制御部60は、総合位置偏差算出部330に代えて位置偏差算出部630を具備する。そして、位置偏差算出部630の位置(図1では総合位置偏差算出部330)と位置制御部340の位置とが制御部20と異なる。また、制御部60は、総合目標位置算出部320に代えて制御指令値補正部620を具備する点で、制御部20と異なる。
制御指令値補正部620は、位置制御部340からの制御指令値に制御補正量と加算する補正を行って、補正された制御指令値を移動駆動部15に出力する。
また、研磨装置1と同様、位置制御と回転速度制御の切換など、制御の切換を必要としないので、切換によるショックが生じない。
さらに、研磨装置1と同様、目標位置の再設定など、ユーザ操作を必要とせずに、研磨具11がちびた場合にも研磨具11の押し付け量および研磨具11の回転速度を一定に保つことができる。
図12は、本発明の第4の実施形態における研磨装置4の概略構成を示す構成図である。同図において、図11の各部に対応し、同様の機能を有する部分には、同一の符号(11〜18、210、220、230、241、250〜340、620)を付して説明を省略する。
図12の研磨装置4は、制御部80が、ゲイン設定部443を備える点で図11の研磨装置3と異なる。このゲイン設定部443は、第2の実施形態で説明したゲイン設定部443と同様であり、同一の符号(443)を付して説明を省略する。
また、研磨装置2と同様、研磨装置4では、ゲイン設定部443は、研磨具11が研磨対象物に押し付けられて、回転速度偏差が小さくなった場合には、ゲインを小さくする。これにより、研磨具11の研磨対象物への押し付け量を安定させ、研磨具11の回転速度を安定させることができる。
図13は、本発明の第5の実施形態における研磨装置5の概略構成を示す構成図である。同図において、図1の各部に対応し、同様の機能を有する部分には、同一の符号(11〜18、210〜340)を付して説明を省略する。
図13の研磨装置5は、制御部91が、制御補正量調整部911を備える点で、図1の研磨装置1と異なる。
なお、以下では、研磨具11を研磨対象物に対して後退させる方向を「引き方向」と称し、研磨具11を研磨対象物に対して前進させる方向を「押し方向」と称する。
図14は、制御補正量と調整後制御補正量との関係を示す図である。同図の横軸は、制御補正量算出部240が制御補正量調整部911に出力する制御補正量^Y(「^Y」はYハットを示す。以下同様)を示し、縦軸は、制御補正量調整部911が不感帯処理部250に出力する調整後制御補正量Yを示す。また、cは0≦c<1の定数である。
図15は、シミュレーションによって得られた、研磨装置の回転速度が振動する動作例を示す図である。同図の線L111は、移動駆動部15による研磨具11の駆動量(研磨対象物に対する進退方向への移動量ないし研磨対象物への押し付け量。以下「RC軸変位」と称する)を示し、線L121は、研磨具11の回転速度を示す。
なお、線L121の示す回転速度は、目標回転速度を1とし、無負荷時回転速度を1.2として正規化した値にて示されている。また、線L111の示すRC軸変位は、所定の点を基準にして、押し方向を正方向(図の上方向)として正規化した値にて示されている。また、同図における時刻は、シミュレーション開始時刻からの経過時間にて示されている。以下の図のRC軸変位の表示および研磨具11の回転速度の表示においても同様である。
そこで、本願発明者は、この研磨具11の回転速度が振動する場合の研磨装置1の動作をシミュレーションにて再現して、図15に示す結果を得た。なお、シミュレーションにおいても、研磨装置1が、不感帯制御部250と、リミッタ処理部260とを備えない構成とした。また、式(5)に示す離散化された計算式によって、上述の式(3)のフィルタの特性を表現してフィルタ部242とした。
なお、機械的な時間遅れの影響に関して、機械的な時間遅れを模擬する上述の無駄時間を短くしてシミュレーションを行ったところ、研磨具11の回転速度が目標回転速度に収束することが確認された。
図15で説明したシミュレーションにおいて、式(5)で説明した計算式を式(6)に示す計算式に置き換えてフィルタ部242と制御補正量調整部911とすることにより、研磨装置5の構成(研磨装置1の動作試験およびシミュレーションと同様、研磨装置5は、不感帯処理部250とリミッタ処理部260とを備えない)としたところ、図16に示す動作例が得られた。
以上により、研磨具11の回転速度の振動が解消され、目標回転速度に収束することが示された。
これによって、研磨具11が引き方向にオーバーシュートする量を減らし、研磨具11の回転速度が目標回転速度に収束する可能性を高めることができる。
これらの場合においても、項βiX[k-i](iは、非負の整数)の項数は、4項以上あるいは2項以下であってもよく、また、項αjX[k-j](jは、非負の整数)の項数は、3項以上あるいは1項であってもよい。
なお、制御補正量調整部911が出力する調整後制御補正量は、上述したものに限らない。本発明の第6の実施形態では、制御補正量調整部911が上記以外の調整後制御補正量を出力する例について説明する。
本実施形態における研磨装置の構成は、第5の実施形態における研磨装置5の構成と同様であり、制御補正量調整部911以外の各部の動作および機能は、図13の各部の動作および機能と同様である。そこで、本実施形態の構成図として図13を用い、制御補正量調整部911以外の各部の説明を省略する。第6の実施形態における研磨装置5では、制御補正量調整部911の出力する調整後制御補正量が、第5の実施形態で説明したものと異なる。
線L321が示すように、シミュレーション開始時付近において研磨具11の回転速度が無負荷回転速度1.2となったのみで、それ以後は、目標回転速度1程度あるいはそれ以下の回転速度となっている。すなわち、シミュレーション開始時付近以外は、研磨具11が研磨対象物に接触した状態が維持されている。これによって、研磨具11の回転速度が目標回転速度1に、ほぼ収束している。RC軸変位を見ても、線L311が示すように、時間経過とともにRC軸変位の変動幅が小さくなり、約0.1に、ほぼ収束している。
以上により、研磨具11の回転速度の振動が解消され、目標回転速度に収束することが示された。
なお、図17および式(7)で示した調整後制御補正量の上限値「1」は、試行錯誤的に決定された値である。この上限値は、研磨対象物の種類など研磨装置5の動作環境や、フィルタ242の特性などに応じて設定される。実機運用時にこの調整後制御補正量の上限値を決定する方法としては、例えば、0以上の様々な上限値を設定して研磨装置5の動作を調整し、その際の研磨装置5の動作環境および動作結果をログに記録しておいて、以後の調整の際、ログに基づいて上限値を決定する方法が考えられる。
これによって、研磨具11が引き方向にオーバーシュートする量を減らし、研磨具11の回転速度が目標回転速度に収束する可能性を高めることができる。
なお、研磨具11が引き方向にオーバーシュートする量を減らす方法は、上述した方法に限らない。本発明の第7の実施形態では、研磨装置が、研磨具11の引き方向の制御において積分要素の影響を除外することによってオーバーシュートする量を減少させる例について説明する。
本実施形態における研磨装置の構成は、第1の実施形態における研磨装置1の構成と同様であり、フィルタ部242以外の各部の動作および機能は、図1の各部の動作および機能と同様である。そこで、本実施形態の構成図として図1を用い、フィルタ部242以外の各部の説明を省略する。第7の実施形態における研磨装置1では、フィルタ部242の出力する制御補正量が、第1の実施形態で説明したものと異なる。
本実施形態におけるフィルタ部242は、式(8)に従って制御補正量Y[k]を算出する。
また、変数Y[i](i=k−2、k−1、k)は、i番目のサンプリングタイミングにおいて、総合目標位置算出部320に出力されるデータ(ここでは、フィルタ部242出力する制御補正量)を示し、変数^Y[k]は、変数Y[k]に等しい。
同図に示されるように、関数g(Y[m])は、上限値を0に設定されている。
すなわち、制御補正量算出部240(フィルタ部242)は、所定時間前(サンプリングタイミングk−1またはk−2)に算出された制御補正量Y[k-1]またはY[k-2]が、研磨具11を研磨対象物に対して後退させる制御を示すときに、積分要素の影響を小さくした制御補正量として、この所定時間前に算出された制御補正量Y[k-1]またはY[k-2]に基づく値を示す積分要素(項−α1g(Y[k-1])または項−α2g(Y[k-2]))を除外した(積分要素の項の値を「0」とした)制御補正量Y[k]を算出する。
図20は、図15で説明した、研磨装置1の回転速度が振動する動作例のシミュレーションにおける、式(5)の各項目の値を示す図である。図20において、線L411、L421、L431、L441、L451は、それぞれ項β2X[k-2]、β1X[k-1]、β0X[k]、α1g(Y[k-1])、α2g(Y[k-2])の値を示す。
そこで、項α1g(Y[k-1])またはα2g(Y[k-2])の値が引き方向の積分制御を示す場合に、その項の値を0として引き方向の積分制御を抑制することによって、研磨具11の引き方向への制御量が抑制される。なお、式(8)の全体として引き方向へのオーバーシュートが抑制されればよく、必ずしも項α1g(Y[k-1])およびα2g(Y[k-2])の両方で引き方向へのオーバーシュートを抑制する必要はない。例えば、係数α1の値が負、係数α2の値が正となっていてもよい。
線L521の示すように、研磨具11の回転速度は、シミュレーション開始時付近で無負荷回転速度1.2となったのみで、それ以後は、目標回転速度1程度あるいはそれ以下の回転速度となり、目標回転速度1に収束している。RC軸変位を見ても、時間経過とともに変動幅が小さくなり、RC軸変位が約0.1に収束している。
以上により、研磨具11の回転速度の振動が解消され、目標回転速度に収束することが示された。
図22は、図21で説明したシミュレーションにおいて、目標回転速度を変化させた際の研磨装置1の動作例を示す図である。同図において、線L621は研磨具11の目標回転速度を示し、線L622は、研磨具11の回転速度を示す。また、線L611は、RC軸変位を示す。
線L621およびL622の示すように、研磨具11の回転速度は、目標回転速度の変化に追随して変化し、目標回転速度に対する研磨具11の回転速度の差の絶対値は、0.2程度以内に収まっている。これにより、目標回転速度の変化に対する研磨具11の回転速度の追随性が良好であることが示されている。特に、引き方向の制御における積分制御の要素を限定したことによる研磨具11の動作制御への悪影響は見受けられなかった。
なお、フィルタ部242が出力する制御補正量は、上述したものに限らない。本発明の第8の実施形態では、フィルタ部242が上記以外の制御補正量を出力する例について説明する。
本実施形態における研磨装置の構成は、第1の実施形態における研磨装置1の構成と同様であり、フィルタ部242以外の各部の動作および機能は、図1の各部の動作および機能と同様である。そこで、本実施形態の構成図として図1を用い、フィルタ部242以外の各部の説明を省略する。第8の実施形態における研磨装置1では、フィルタ部242の出力する制御補正量が、第1の実施形態で説明したものや、第7の実施形態で説明したものと異なる。
本実施形態におけるフィルタ部242は、式(9)に従って制御補正量Y[k]を算出する。
また、変数λは式(10)に示される値を取る。
これら式(9)および式(10)に示される関数g(Y[m])の特性および変数σの値は、図23および図24に示されるようになる。
図23は、変数Y[m]の値と関数g(Y[m])の値との関係を示す図である。また、図24は、変数Δωの値と変数σの値との関係を示す図である。
同図に示されるように、関数g(Y[m])は、上限値をλに設定されている。これにより、制御補正量に含まれる、積分制御を示す項−αig(Y[i])は、下限値を−αiλに設定されている。
そして、式(10)や図24に示されるように、目標回転速度と研磨具11の回転速度との偏差Δωの値が大きいときは、λの値を大きく設定して制御量の制限を緩やかにし、偏差Δωの値が小さいときは、λの値を小さくすることにより積分制御の要素を限定する。積分制御の要素を限定することにより、研磨具11の引き方向への制御量が抑制されるとともに、研磨具11の回転速度が目標回転速度に到達した際の応答性が向上し、研磨具11の回転速度が目標回転速度に収束し易くなる。
そこで、まずは、式(8)の特性を示すフィルタ部242を用いて第7の実施形態における研磨装置1を実現することが考えられる。そして、この第7の実施形態における研磨装置1にて応答性を確認し、押し方向と引き方向とで応答性が異なる場合に、フィルタ部242の特性を式(9)および式(10)に示す特性に変更して第8の実施形態における研磨装置1を実現できる。これにより、第7の実施形態における研磨装置1では押し方向と引き方向とで応答性が異なる場合にのみ定数σの値を決定すればよくなるので、この定数σを決定する手間を省き得る。
また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。
11 研磨具
12 回転軸
13 回転駆動部
14 測定部
15 移動駆動部
16 移動軸
17 エアホース
18 台座
20、40、60、80 制御部
210 目標回転速度記憶部
220 回転速度算出部
230 回転速度偏差算出部
240、440 制御補正量算出部
241 ゲイン乗算部
242 フィルタ部
250 不感帯処理部
260 リミッタ処理部
310 目標位置記憶部
320 総合目標位置算出部
443 ゲイン設定部
620 制御指令値補正部
330 総合位置偏差算出部
630 位置偏差算出部
340 位置制御部
911 制御補正量調整部
Claims (14)
- 研磨対象物を研磨可能な研磨具と、
該研磨具を回転させる回転駆動部と、
前記研磨具を研磨対象物に対して進退させる移動駆動部と、
前記研磨具の回転速度に応じて、前記研磨具が前記研磨対象物に対して進出又は後退するように、前記移動駆動部を制御する制御部と、
を備えることを特徴とする研磨装置。 - 前記制御部は、
前記研磨具の回転速度が目標回転速度よりも大きい場合には、前記研磨具が前記研磨対象物に対して進出するように前記移動駆動部を制御し、
前記研磨具の回転速度が目標回転速度よりも小さい場合には、前記研磨具が前記研磨対象物に対して後退するように、前記移動駆動部を制御することを特徴とする請求項1に記載の研磨装置。 - 前記制御部は、
前記研磨対象物に対する前記研磨具の押圧力に応じて変化する該研磨具の回転速度が予め定めた目標回転速度に近づくように、前記移動駆動部を制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の研磨装置。 - 前記制御部は、
検出した前記研磨具の回転速度と前記目標回転速度との差分である回転速度偏差を算出する回転速度偏差算出部と、
前記回転速度偏差に基づいて制御補正量を算出する制御補正量算出部と、
予め定めた前記移動駆動部の目標位置と検出した前記移動駆動部の現在位置との差分である位置偏差を算出する位置偏差算出部と、
前記位置偏差に基づいて、前記移動駆動部に対する制御指令値を算出する位置制御部とを備え、
前記位置偏差又は前記制御指令値のいずれか一方に前記制御補正量が加算されていることを特徴とする請求項2又は3に記載の研磨装置。 - 前記制御補正量算出部は、
前記回転速度偏差に予め定めたゲインを乗算したゲイン乗算後回転速度偏差を算出するゲイン乗算部を有し、
前記ゲイン乗算後回転速度偏差を前記制御補正量としていることを特徴とする請求項4に記載の研磨装置。 - 前記制御補正量算出部は、
前記ゲイン乗算後回転速度偏差が入力される積分特性フィルタをさらに備え、
前記ゲイン乗算後回転速度偏差に代えて、前記積分特性フィルタの出力を前記制御補正量としていることを特徴とする請求項5に記載の研磨装置。 - 前記制御補正量算出部は、
前記回転速度偏差が所定の閾値以上の場合に、前記ゲインを予め定めた値よりも大きく設定するゲイン設定部を備えることを特徴とする請求項5又は6に記載の研磨装置。 - 前記制御部は、
前記制御補正量算出部の算出する制御補正量が、前記研磨具を前記研磨対象物に対して後退させる制御を示すときに、前記研磨具の後退量を前記制御補正量の示す後退量よりも減少させた調整後制御補正量を出力する制御補正量調整部を備え、
前記制御補正量に代えて、前記調整後制御補正量が、前記位置偏差又は前記制御指令値のいずれか一方に加算されていることを特徴とする請求項4から7のいずれか一項に記載の研磨装置。 - 前記制御補正量調整部は、
前記制御補正量が、前記研磨具を前記研磨対象物に対して後退させる制御を示すときに、前記研磨具の後退量を減少させる係数を前記制御補正量に対して乗算して前記調整後制御補正量を算出することを特徴とする請求項8に記載の研磨装置。 - 前記制御補正量調整部は、
前記制御補正量が、前記研磨具を前記研磨対象物に対して所定の上限量以上後退させる制御を示すときに、前記研磨具を前記上限量後退させる制御を示す前記調整後制御補正量を算出することを特徴とする請求項8または請求項9に記載の研磨装置。 - 前記制御補正量算出部は、
該制御補正量算出部への入力値に比例した値を示す比例要素と、過去に算出された制御補正量に基づく値を示す積分要素とを含む前記制御補正量を算出し、前記過去に算出された制御補正量が、前記研磨具を前記研磨対象物に対して後退させる制御を示すときに、前記積分要素の影響を小さくした前記制御補正量を算出することを特徴とする請求項4から10のいずれか一項に記載の研磨装置。 - 前記制御補正量算出部は、
所定時間前に算出された制御補正量が、前記研磨具を前記研磨対象物に対して後退させる制御を示すときに、該所定時間前に算出された制御補正量に基づく値を示す積分要素を除外した前記制御補正量を算出することを特徴とする請求項11に記載の研磨装置。 - 前記制御補正量算出部は、
所定時間前に算出された制御補正量が、前記研磨具を前記研磨対象物に対して所定量以上後退させる制御を示すときに、前記所定時間前に算出された制御補正量を、前記研磨具を前記研磨対象物に対して前記所定量後退させる制御を示す制御補正量としたときの、前記制御補正量を算出することを特徴とする請求項11に記載の研磨装置。 - 前記制御補正量算出部は、
前記研磨具の回転速度と目標回転速度と偏差に基づいて、前記偏差が大きいほど前記所定量を大きくすることを特徴とする請求項13に記載の研磨装置。
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