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JP2011515068A - 慢性/硬化性同種移植腎症に対する遺伝子発現シグネチャー - Google Patents

慢性/硬化性同種移植腎症に対する遺伝子発現シグネチャー Download PDF

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Abstract

本発明は慢性腎臓移植拒絶反応において同時に調節される遺伝子の分析および同定に関する。この遺伝子の同時調節は慢性腎臓移植拒絶反応を正確に検出する、所望により分類する分子シグネチャーを提供する。

Description

技術分野
本発明は、概して、インビトロ組織サンプルの分析試験、さらに特に慢性同種移植腎症の臨床診断において有用な遺伝子またはタンパク質ベース試験に関する。
発明の背景
腎臓移植の成功は、1年の移植片生存率が90%台に至り、急性移植拒絶反応(“AR”)症状発現を予防および処置するための有効な免疫抑制剤の発達と相関関係である。慢性移植機能障害は移植後何カ月から何年間かかけて徐々に移植片機能の悪化を示す固形臓器移植片における現象であり、結局、移植片生着不全を引き起こし、これが特有の組織学的特徴を伴うものである。臨床的に、腎臓移植片における慢性移植機能障害、例えば、慢性/硬化性同種移植腎症(“CAN”)は遅い移植片喪失の主な原因である(1年あたり約3−5%)。CAN(慢性拒絶反応(CR)としても知られる)は、それ自体、通常、タンパク尿および動脈高血圧と共に、糸球体濾過速度のゆっくりな進行性の低下として現れる。この障害は最終的に進行性腎機能喪失と関連する同種移植の線維症および硬化症を引き起こす、複合免疫学的傷害(例えば、慢性拒絶反応)および非免疫学的損傷(例えば、高血圧性腎硬化またはシクロスポリンAのような免疫抑制剤の腎毒性)の結果を示す。強力な免疫調節剤および生物剤が臨床適用されているにもかかわらず、慢性拒絶反応は一般的な、および重大な移植後の合併症のままである。慢性拒絶反応は容赦ない進行プロセスである。未だ、CANに対する満足のいく治療が存在しない。
早期、とりわけ移植後1月以内の移植片機能不全に対する1つの特に一般的な原因は、同種移植の免疫学的拒絶反応である。拒絶反応の好ましくない影響は:(a)持続免疫抑制と重複される高用量抗拒絶反応療法の使用が主に移植と関連する罹患率および死亡率に関与する、(b)拒絶された移植片から得られる“公の”HLA−特異性に対する免疫化がこの患者母集団を再移植に困難にする、および(c)失敗した移植片を有する免疫化レシピエントの移植を待つ患者集団への回帰が臓器不足の長年の問題を増加させるという事実により大きくされる。
生検組織の組織病理学的評価はCANの診断に対する代表であるが、CANの発症の予測は現在不可能である。CAN診断は、しばしば、非特異的な組織学的変化の観察者−依存解釈に基づき、患者の予後は不明瞭なままである。
移植片機能障害に対する他の病因からの拒絶反応、例えば、CANの診断の区別および有効な治療法の設定は:(a)拒絶反応を診断するために利用可能な最善の現在の手段である移植片の経皮的コア針生検は通常、移植片機能障害および移植片損傷(場合によっては不可逆性)がすでに存在する“事実”後に行われる、(b)移植片の形態学的分析は、与えられる拒絶反応症状発現の逆転の可能性に関するわずかな手がかりおよび再発(“リバウンド”)の可能性に関する最小の手がかりを提供する、および(c)治療戦略の設計のための必要条件である拒絶反応現象の基本メカニズムは、拒絶反応の形態学的特徴を含む現在の診断指数により十分に定義されていないため、複雑なプロセスである。
例えば、腎臓同種移植片拒絶反応の診断は、通常、移植片機能障害の発症(例えば、血清クレアチニン濃度の増加)および単核細胞浸潤も示す移植片領域における移植片損傷の形態学的証拠によりされる。しかしながら、拒絶反応プロセスの指標として異常な腎機能の使用に対して2つの警告がある:第1には、多数の死体の腎臓移植片は摘出およびエキソビボ保存工程の損傷により移植直後に急性(可逆性)腎不全を有するため、腎機能の悪化を拒絶反応を診断するために臨床的手がかりとしていつも利用できない。第2には、直接的に損なわれていない腎機能があるときでさえ、移植片機能障害が非免疫学的原因、例えば、免疫抑制療法、それ自体により発症し得る。
例えば、シクロスポリン(CsA)の血漿/血液濃度に基づいて単独で容易に確認されない合併症であるCsA腎毒性は一般的な合併症である。治療戦略が全く反対であるため(拒絶反応に対して免疫抑制剤の漸増および腎毒性に対してCsA用量の減少)、CsA腎毒性から拒絶反応を区別する臨床的重要性はあまり強調することはできない。
このため、現在のモニタリングおよび診断様式は特に早期ステージのCANの診断に不適当であり、新規戦略が移植片長期生存を改善するために必要である。したがって、より感受性であり、とりわけ早期および/または臨床前ステージの拒絶反応の臨床診断において使用することができる同定遺伝子またはタンパク質ベース試験の必要性が存在する。特に、遺伝子発現プロファイリングのような分子診断は、さらにBANFF97疾患分類の定義を助け得(Racusen, et al., 1999, Kidney Int. 55(2):713-23)、また、予測または早期診断バイオマーカーとして使用され得る。CAN症状発現の結果を正確に予測することおよび診断することは、処置を最適化するため、および、CANおよび腎機能喪失の発症を予防するための方向に重要である。
要約
本発明は、1つには、1個以上の遺伝子および/またはコードされるタンパク質の発現の増加または減少が特定の移植片拒絶反応状態と確実に関連することを見出したことに基づく。したがって、本明細書に記載されているデータの結果として、方法は、同種移植生検材料が穏やかな細胞浸潤のみを示す場合でさえ、急性および慢性拒絶反応の迅速な、かつ信頼できる診断のために、現在利用できる。
初めて本明細書に記載されているものは、同時にアップレギュレーションおよび/またはダウンレギュレーションされ、移植慢性拒絶反応を正確に検出する、および/または等級付けするための“分子シグネチャー”を提供する遺伝子の分析である。同種移植片拒絶反応(例えば、腎臓同種移植片拒絶反応)の早期診断および新規予後マーカーは免疫抑制剤を最小にし、個人化するために重要である。組織病理学的示差的診断に加えて、遺伝子発現プロファイリングはこれらの分子シグネチャーを定義することにより疾患分類を有意に改善する。
したがって、本明細書に存在する試験結果は、同種移植片拒絶反応のクラスを区別するために分子シグネチャー分析を使用する能力を証明する。この試験は、分子シグネチャーがCANの段階的な重症度(I、II、III)にしたがって生検材料を区別することができることを初めて示した。この分析において同定された33プローブセット/遺伝子のリストは、ヒトにおいて90%の精度およびCAVのNHP試験において100%の精度で異なるCANグレードを正確に分類した。視覚的な組織病理学的診断の特有の曖昧さのため、より低い誤分類率を達成することは困難である。CANグレードIとII間の違いはわずかであり、個々の病理医による主観的なウエイトに左右されやすい。この傾向は遺伝子発現により反映される。例えば、グレードIIIサンプルは容易に分離されるが、いくつかのサンプルはグレードIまたはIIのいずれかとして分類される。この点において、グレードIおよびグレードIIサンプルは、しばしばPAMおよびSVMアルゴリズムにより示差的に分類される(データは示していない)。患者の25%が移植1年後にグレードIIのCANを示すことを考慮すると、早期示差的診断は、推定の不可逆性グレードIIIが明らかになる前に、CANを減少させるための介入に重要である。
したがって、対象における移植された臓器の状態をモニタリングするための方法および組成物は本明細書に記載されている。これは対象から得られた移植後のサンプル中の遺伝子発現のレベル(すなわち、規模)を測定し、マーカー遺伝子の相対発現をマーカーのベースラインレベルと比較することにより対象における移植拒絶反応を評価することを含む。サンプル中の多数の選択された遺伝子の遺伝子発現の調節(すなわち、遺伝子発現の増加または減少)は拒絶反応を示す。
表1に記載されている同定された遺伝子マーカーの組合せの発現の変化は移植拒絶反応を示す。1つの態様において、1、2個またはそれ以上の任意の表1の遺伝子、好ましくは少なくとも5、10、15または18個の表1の遺伝子の発現の増加は移植拒絶反応を示す(いくつかの態様において、また、CANのグレードを決定または推定することが可能である)。他の態様において、1、2個またはそれ以上の任意の表1の遺伝子、好ましくは少なくとも5、10または15個の表1の遺伝子の発現の減少は移植拒絶反応を示す(いくつかの態様において、また、CANのグレードを決定または推定することが可能である)。一般的に、種々のマーカーが選択され、いくつかは対照値と比較して発現の増加を示し、いくつかは発現の減少を示す。
したがって、1つの局面において、本発明は、対象における移植された腎臓の慢性拒絶反応の発症を評価するための方法であって:
(a)移植後の対象からのサンプルを得;
(b)移植後のサンプルにおける表1において特定されている遺伝子からなる群から選択される多数の遺伝子の組合せの発現レベルを測定し;
(c)移植後のサンプルにおける該多数の遺伝子の遺伝子発現レベルと対照サンプルにおける同じ遺伝子の遺伝子発現の規模を比較して、示差的発現プロフィールを生成し;そして
(d)示差的発現プロフィールと1つ以上のステージの慢性/硬化性同種移植腎症を示す1つ以上の参照示差的発現プロフィールを比較する、
工程を含み、それにより対象における移植された臓器の拒絶反応の発症を評価する方法を提供する。
関連局面において、本発明は、移植された腎臓の慢性拒絶反応に罹患している対象における慢性/硬化性同種移植腎症のステージを分類する方法であって:
(a)移植後の対象からのサンプルを得;
(b)移植後のサンプルにおける表1において特定されている遺伝子からなる群から選択される多数の遺伝子の組合せの発現レベルを測定し;
(c)移植後のサンプルにおける該多数の遺伝子の遺伝子発現レベルと対照サンプルにおける同じ遺伝子の遺伝子発現の規模を比較して、示差的発現プロフィールを生成し;そして
(d)示差的発現プロフィールと1つ以上のステージの慢性/硬化性同種移植腎症を示す1つ以上の参照示差的発現プロフィールを比較する、
工程を含み、それにより対象における慢性/硬化性同種移植腎症のステージを分類する方法を提供する。
好ましい態様において、選択される多数の遺伝子はステージIIIのCANと早期ステージ、好ましくはステージIおよび/またはステージIIを区別する発現プロフィールを有する。
本発明は対象からの移植後のサンプルを得ることにより対象における移植された臓器の慢性拒絶反応の発症を評価するための方法に関する。表1において示される多数の遺伝子の移植後のサンプルにおける遺伝子発現レベルを決定する。移植後のサンプルにおける少なくとも1個の遺伝子の遺伝子発現レベルを対照サンプルにおける同じ遺伝子の遺伝子発現レベルと比較する。1つの態様において、対照は移植されていない健康な腎臓または拒絶反応の徴候を示さない移植された腎臓からの生検材料を含む。少なくとも1個の遺伝子のアップレギュレーションまたはダウンレギュレーションは対象が移植拒絶反応を経験する可能性のあることを示し、それにより対象における移植された臓器の拒絶反応の発症を評価する。1つの態様において、サンプルは対象から得られた細胞を含む。1つの態様において、サンプルは移植片生検材料;血液;血清;および尿からなる群から選択される。該方法は慢性移植拒絶反応を評価する、および拒絶反応の発症を決定するために使用することができる。表1における多数の遺伝子のアップレギュレーションまたはダウンレギュレーションは、対象が慢性移植拒絶反応、例えば、慢性/硬化性同種移植腎症を経験する可能性のあることを示す分子シグネチャーを提供する。好ましい態様において、移植拒絶反応のステージはグレードI、グレードIIまたはグレードIIIである。サンプルにおける発現レベルは定量的に測定することができる。
対照サンプルの発現レベルと少なくとも約1.5、1.6、1.7、1.8、1.9または約2.0倍異なるサンプルにおける多数の遺伝子の発現レベルは、対象が慢性移植拒絶反応を経験する可能性のあることを示す(発現レベルにおけるこのような変化を示す表1の遺伝子に対する指標のために表4、参照)。発現アップレギュレーションの場合、遺伝子に見られる変化がより大きく、したがって少なくとも3.0以上、好ましくは少なくとも3.5、4、5、6以上の発現レベルの変化が興味あるマーカー遺伝子において観察されることが好ましい(さらなる指標のために表4、参照)。
1つの局面において、本発明は対象における移植された臓器の拒絶反応、例えば、慢性拒絶反応の進行を評価するための方法を提供する。対象からの移植後のサンプルおよび表1において特定されている遺伝子からなる群から選択される多数の遺伝子の組合せの移植後のサンプルにおける遺伝子発現レベルを測定する。移植後のサンプルにおける少なくとも1個の遺伝子の遺伝子発現パターンを対照サンプルにおける同じ遺伝子(複数も可)の遺伝子発現パターンと比較する。対照サンプル発現プロフィールにおける遺伝子(複数も可)の組合せの発現パターンと比較して移植後のサンプルにおける遺伝子(複数も可)の同じ組合せの遺伝子発現パターンの発現パターンが類似である場合は移植拒絶反応のグレードを示し、それにより対象における移植された臓器の拒絶反応の進行を評価する。1つの態様において、サンプルは対象から得られた細胞を含む。他の態様において、サンプルは移植片生検材料;血液;血清;および尿からなる群から選択される。1つの態様において、拒絶反応は慢性/硬化性同種移植腎症である。1つの態様において、移植拒絶反応のステージはグレードI;グレードII;およびグレードIIIからなる群から選択される。
他の局面において、本発明は、拒絶反応を発症しないことが知られている移植された対象から得られたサンプルにおける多数の遺伝子の組合せの遺伝子発現レベルをベースライン値として取ることにより、対象における移植拒絶反応、例えば、慢性拒絶反応をモニタリングする方法に関する。多数の遺伝子の組合せに対応する遺伝子発現レベルは移植後の対象から得られたサンプルにおいて検出する。第1の値を第2の値と比較する(ここで、第2の値より低いか、または高い第1の値が移植された対象が拒絶反応を発症する危険性があることを予測する)(多数の遺伝子が表1に定義されている)。
他の局面において、本発明は移植の日にドナー対象から得られたサンプルから多数の遺伝子の組合せに対応する遺伝子発現レベルを検出することにより、対象における移植拒絶反応、例えば、慢性拒絶反応をモニタリングする方法に関する。多数の遺伝子に対応する遺伝子発現レベルを移植後にレシピエント対象から得られたサンプルから検出する。第1のレベルを第2のレベルと比較する(ここで、第2の値より低いか、または高い第1の値がレシピエント対象が拒絶反応を発症する危険性があることを予測する)(多数の遺伝子が表1に定義されている)。
他の局面において、本発明は拒絶反応阻害剤の投与前に移植された対象から投与前のサンプルを得ることにより、対象における移植拒絶反応、例えば、慢性拒絶反応の危険性をモニタリングする方法に関する。多数の遺伝子の遺伝子発現パターンを投与前のサンプルにおいて検出する。1つ以上の投与後のサンプルを移植された対象から得、多数の遺伝子の遺伝子発現パターンを投与後のサンプル(複数も可)において検出する。投与前のサンプルにおける多数の遺伝子の遺伝子発現パターンを投与後のサンプル(複数も可)における遺伝子発現パターンと比較し、それにしたがって薬剤を調節する(ここで、多数の遺伝子は表1に定義されている)。
他の局面において、本発明は、拒絶反応の少なくとも1つの症状が改善するように、表1において特定されている1個以上の遺伝子またはその遺伝子にコードされる遺伝子産物の合成、発現または活性を調節する化合物を対照に投与することを含む、処置を必要とする対象における移植拒絶反応、例えば、慢性拒絶反応を予防、阻害、減少または処置する方法に関する。
他の局面において、本発明は、表1において特定されている1個以上の遺伝子または遺伝子産物の遺伝子発現レベルをモニタリングすることを含む、移植拒絶反応、例えば、慢性拒絶反応の予防、阻害、減少または処置において使用するための薬剤を同定するための方法に関する。
遺伝子発現パターンは、例えば、特異的にタンパク質に結合する試薬により、遺伝子によってコードされるタンパク質の存在を検出することにより評価することができる。タンパク質の存在は特異的にタンパク質に結合する試薬を使用して検出することができる。遺伝子発現パターンはノーザン・ブロット分析、逆転写PCRおよびリアルタイム定量PCRからなる群から選択される技術により検出することができる。
表1に挙げられている多数の遺伝子またはその発現産物の組合せを検出することは、移植拒絶反応に対するバイオマーカーとして使用することができる。表1において特定されている1個以上の遺伝子またはその発現産物の合成、発現または活性を調節する化合物は、また、対象における移植拒絶反応の予防または処置のための薬物の製造のために使用することができる。本発明のすべての方法または使用による移植拒絶反応は慢性/硬化性同種移植腎症であり得、遺伝子は表1において特定されている遺伝子からなる群から選択される。
他の局面において、本発明は、拒絶反応を発症しないことが知られている移植された対象のサンプルにおける多数の遺伝子の組合せに対応する遺伝子発現レベルをベースライン値として取ることにより、対象における移植拒絶反応をモニタリングする方法に関する。多数の遺伝子に対応する遺伝子発現レベルの組合せを移植後に対象から得られたサンプルにおける遺伝子発現の規模と比較することができる。第1の値を第2の値と比較する(ここで、第2の値より低いか、または高い第1の値が移植された対象が拒絶反応を発症する危険性があることを予測する)(多数の遺伝子が表1に定義されている)。
本発明の他の態様において、移植拒絶反応をモニタリングする方法は移植の日にドナー対象から得られたサンプルおよび移植後にレシピエント対象から得られたサンプルから多数の遺伝子の組合せに対応する遺伝子発現パターンを検出することにより実施され得る。2つのサンプルにおいて検出される遺伝子発現パターンを比較することができる。例えば、2つのサンプルにおいて遺伝子発現の規模を比較することができる。遺伝子発現パターン、例えば、遺伝子発現の規模における類似性は、レシピエント対象が拒絶反応を発症する危険性があることを予測する。
さらに他の局面において、本発明は拒絶反応阻害剤の投与前に移植された対象から投与前のサンプルを得;そして、投与前のサンプルにおける多数の遺伝子の遺伝子発現パターン、例えば、遺伝子発現の規模を検出することにより、対象における移植拒絶反応をモニタリングする方法に関する。投与前のサンプルにおける多数の遺伝子の遺伝子発現パターン、例えば、それらの規模を投与後のサンプル(複数も可)における遺伝子発現パターンと比較することができる。
したがって、本明細書に記載されている研究の結果として、方法は、現在、生検組織、尿、末梢血単核細胞および他の体液におけるマーカー遺伝子発現を正確に定量し、これらの遺伝子の発現の規模を同種移植の慢性拒絶反応の拒絶反応と相関させ、そして、いくつかの態様において、拒絶反応の異なるステージを分類するために利用できる。
本発明は、また、慢性/硬化性同種移植腎症に対するバイオマーカーとして、それぞれが特異的に表1における異なる遺伝子にハイブリダイズする多数の核酸プローブの使用を提供する。
好ましくは、多数の核酸プローブはSLC1A3、CD163、RDH12およびFLJ32569遺伝子の発現を検出することができる。
詳細な説明
本発明の理解をさらに容易にするために、多くの用語およびフレーズを以下において定義する:
“ダウンレギュレーション”または“ダウンレギュレーションされた”なる用語は本明細書において互換的に使用され、標的遺伝子または標的タンパク質の量の減少を意味する。“ダウンレギュレーション”または“ダウンレギュレーションされた”なる用語は、また、標的遺伝子または標的タンパク質に関するプロセスまたはシグナル伝達カスケードの減少を意味する。
本明細書において使用される“移植”なる用語は一対象から“移植体”または“移植片”と呼ばれる細胞、組織または臓器を取り出し、それまたはそれらを(通常)異なる対象に置く工程を意味する。移植体を提供する対象は“ドナー”と呼ばれ、移植体を受ける対象は“レシピエント”と呼ばれる。同種の遺伝的に異なる対象間で移植された臓器または移植片は“同種移植片”と呼ばれる。異なる種の対象間で移植された移植片は“異種移植片”と呼ばれる。
本明細書において使用される“移植拒絶反応”なる用語はレシピエントに現れる活性免疫応答による、臓器機能障害の非免疫学的原因と無関係である臓器の機能的および構造的悪化として定義される。
本明細書において使用される“急性拒絶反応”なる用語は移植後最初の5−60日後に発症する移植された臓器の拒絶反応を意味する。それは一般的に細胞介在免疫傷害の現れである。遅延型過敏性および細胞毒性メカニズムの両方が関与していると信じられている。免疫傷害はHLAおよび恐らく尿細管上皮および血管内皮により発現される他の細胞特異的抗原に対して向けられる。
本明細書において使用される“慢性拒絶反応”なる用語は移植後最初の30−120日後に発症する移植された臓器の拒絶反応を意味する。“慢性拒絶反応”なる用語は、また、複合免疫学的傷害(例えば、慢性拒絶反応)および非免疫学的損傷(例えば、高血圧性腎硬化またはシクロスポリンAのような免疫抑制剤の腎毒性)の結果を意味し、移植後数ヶ月間または数年間起こり続け、最終的に進行性腎機能喪失と関連する同種移植の線維症および硬化症を引き起こす。
本明細書において使用される“対象”なる用語は免疫応答を引き起こすすべての生物を意味する。対象なる用語は、ヒト、ヒト以外の霊長類、例えば、チンパンジーおよび他の類人猿およびサル種;家畜、例えば、ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギおよびウマ;家で飼われる哺乳動物、例えば、イヌおよびネコ;齧歯動物、例えば、マウス、ラットおよびモルモットを含む実験動物などを含むが、これらに限定されない。該用語は特定の年齢または性別を示さない。したがって、成体および新生対象、ならびに胎児が、オスまたはメスであろうと包含されることを意図する。
“遺伝子”は転写および翻訳後、特定のポリペプチドまたはタンパク質をコードすることができる少なくとも1個のオープンリーディングフレームを含むポリヌクレオチドを含む。本明細書に記載されているすべてのポリヌクレオチド配列は関連している遺伝子の大きなフラグメントまたは完全長コーディング配列を同定するために使用され得る。大きなフラグメント配列を単離する方法は当業者に既知であり、そのいくつかは本明細書に記載されている。
“遺伝子産物”は遺伝子が転写および翻訳されたときに生成されるアミノ酸(例えば、ペプチドまたはポリペプチド)を含む。
本明細書において使用される“発現の規模”なる用語はマーカー遺伝子転写物レベルを定量し、この量と構成的に発現された遺伝子の転写物の量を比較することを意味する。“レベル”または“発現の規模”なる用語は“遺伝子発現の正規化または標準化された量”を意味する。例えば、細胞における全遺伝子の全発現は変化する(すなわち、一定でない)。増加したmRNA転写物の検出が有意であるかどうかを正確に評価するため、サンプル間の発現レベルを正確に比較して遺伝子発現を“正規化”することが好ましい、すなわち、それが遺伝子発現を比較することに対するベースレベルである。遺伝子転写物の定量化は競合逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)を使用して成し遂げ、遺伝子発現の規模はそれぞれのマーカー遺伝子の遺伝子発現の量の、発現された遺伝子の遺伝子発現の量に対する比を計算することにより決定した。
遺伝子に対して適用されているとき、“示差的に発現された”なる用語は遺伝子から転写されたmRNAまたは遺伝子によってコードされるタンパク質産物の示差的生産を含む。示差的に発現された遺伝子は正常または対照細胞の発現レベルと比較して過剰発現または過少発現であり得る。1つの局面において、それは対照サンプルにおいて検出された発現レベルよりも少なくとも1.1倍、1.2倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍、1.6倍、1.7倍、1.8倍、1.9倍、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9倍または少なくとも10倍高いまたは低い差を含む。好ましい態様において、発現は対照サンプルより高い。“示差的に発現された”なる用語は、また、対照細胞においてサイレントな場所で発現されるか、または対照細胞において発現する場所で発現されない、細胞または組織における核酸配列を含む。
本明細書において使用される“サンプル”なる用語は生検材料から得られた細胞を意味する。“サンプル”なる用語は、また、気管支肺胞洗浄液のサンプル、胆汁のサンプル、胸膜液または腹膜液、または機能が正常または異常な状態である同種移植片により分泌または排泄される何らかの他の流体、または同種移植片を通して、または同種移植片の解剖学的近位での滲出または濾出から生じる他の何らかの流体、または同種移植片との液体連通における何らかの流体を含むが、これらに限定されない液体サンプルから得られた細胞を意味する。流体試験サンプルは、また、血液(末梢血を含む)、リンパ液、汗、腹膜液、胸膜液、気管支肺胞洗浄液、心膜液、胃腸液、胆汁、尿、糞便、組織液または腫脹液、関節液、脳脊髄液、または同種移植片の近位にある解剖学的領域から集められるか、または同種移植片との流体連通における流体管から集められる何らかの他の特定または不特定の流体を含む、本質的にすべての体液から得ることができる。“移植後の液体試験サンプル”は移植が行われた後の対象から得られたサンプルを意味する。
一連のサンプルも対象から得て、本明細書に記載されているとおりに免疫活性化遺伝子マーカーの定量化を実施することができ、そして拒絶反応の経過を一定期間にわたって追跡することができる。この場合、例えば、免疫活性化マーカー遺伝子の遺伝子発現のベースラインレベル(例えば、規模)は移植後得た移植後サンプルにおける遺伝子発現のレベル(例えば、規模)である。例えば、最初のサンプル(複数も)は拒絶反応のない期間内、例えば、移植の1週間以内に取り、これらのサンプルにおけるマーカー遺伝子発現のレベル(例えば、規模)を1週間後に取ったサンプルにおける該遺伝子発現のレベル(例えば、規模)と比較することができる。1つの態様において、サンプルは移植後6、12および24週目に取る。
本明細書において使用される“生検材料”なる用語は診断実験のために生きている患者から組織を取り出すことにより得られる試料を意味する。該用語は吸引生検材料、ブラシ生検材料、絨毛生検材料、内視鏡生検、切除生検材料、針生検材料(皮膚または臓器の外表面を突き通す適当な針またはトロカールを試験される下層組織に通した吸引により取り出されることにより得られる試料)、直視下生検材料、パンチ生検材料(トレフィン)、薄片生検材料、擦過生検材料および楔状生検材料を含む。1つの態様において、細針吸引生検材料を使用する。他の態様において、ミニコア針生検材料を使用する。慣用経皮的コア針生検材料を、また、使用する。
“アップレギュレーション”または“アップレギュレーションされた”なる用語は本明細書において互換的に使用され、標的遺伝子または標的タンパク質の量の増加または上昇を意味する。“アップレギュレーション”または“アップレギュレーションされた”なる用語は、また、標的遺伝子または標的タンパク質に関するプロセスまたはシグナル伝達カスケードの増加または上昇を意味する。
“ダウンレギュレーション”または“ダウンレギュレーションされた”なる用語は本明細書において互換的に使用され、標的遺伝子または標的タンパク質の量の減少または降下を意味する。“ダウンレギュレーション”または“ダウンレギュレーションされた”なる用語は、また、標的遺伝子または標的タンパク質に関するプロセスまたはシグナル伝達カスケードの減少または降下を意味する。
本明細書において使用される“プローブセット”は2個以上の遺伝子を検出するために使用され得る核酸のグループを意味する。検出は、例えば、PCRおよびRT−PCRのとき増幅を介して、またはマイクロアレイのときハイブリダイゼーションを介して、または1本または2本鎖核酸の選択的酵素分解に基づくアッセイのとき選択的破壊および保護を介してであり得る。プローブセットにおけるプローブは1個以上の蛍光性、放射性または他の検出可能な部分(酵素を含む)にて標識され得る。プローブが所望の遺伝子を選択的に検出するために十分な大きさである限り、プローブは任意のサイズであり得る。プローブセットは、マルチプレックスPCRに対して典型的であるように、溶液中であってよく、またはプローブセットはアレイまたはマイクロアレイのとき、固体表面に付着させてもよい。化合物、例えば、PNAが、核酸の代わりに遺伝子とハイブリダイズするために使用され得ることが知られている。加えて、プローブは希少または非天然核酸、例えば、イノシンを含み得る。
“ポリヌクレオチド”または“オリゴヌクレオチド”なる用語は互換的に使用され、任意の長さのヌクレオチドのポリマー形態、デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドまたはそれらの類似体を含む。ポリヌクレオチドは三次元構造を有し得、既知または未知の何らかの機能を果たし得る。以下はポリヌクレオチドの非限定的な例である:遺伝子または遺伝子フラグメント、エキソン、イントロン、メッセンジャーRNA(mRNA)、トランスファーRNA、リボソームRNA、リボザイム、cDNA、組換えポリヌクレオチド、分枝状ポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、任意の配列の単離されたDNA、任意の配列の単離されたRNA、核酸プローブおよびプライマー。ポリヌクレオチドは修飾ヌクレオチド、例えば、メチル化ヌクレオチドおよびヌクレオチド類似体を含み得る。存在するとき、ヌクレオチド構造への修飾はポリマー集合の前または後に付与され得る。ヌクレオチドの配列は非ヌクレオチド成分により中断され得る。ポリヌクレオチドはさらに重合後、例えば、標識成分との結合により修飾され得る。該用語は、また、2本および1本鎖分子の両方を含む。特に記載されていない、または必要でない限り、ポリヌクレオチドである本発明のすべての態様は2本鎖形態および2本鎖形態を構成することが既知であるかまたは予測される2つの相補的1本鎖形態のそれぞれを含む。
ポリヌクレオチドは4つのヌクレオチド塩基:アデニン(A);シトシン(C);グアニン(G);チミン(T);およびポリヌクレオチドがRNAであるときグアニンの代わりにウラシル(U)の特定の配列から構成される。この“ポリヌクレオチド配列”なる用語はポリヌクレオチド分子のアルファベット表示である。このアルファベット表示は中央処理ユニットを有するコンピューターにおけるデータベースに入力され、バイオインフォマティクス適用、例えば、機能ゲノム学および相同性検索のために使用され得る。
“cDNA”なる用語は相補的DNA、すなわち酵素、例えば、逆転写酵素にてcDNAに作られる細胞または生物において存在するmRNA分子を含む。“cDNAライブラリー”は逆転写酵素にてcDNA分子に変換され、次に“ベクター”(外来DNAの付加後に複製し続けることができる他のDNA分子)に挿入される、細胞または生物に存在するmRNA分子の収集物を含む。ライブラリーに関する典型的なベクターはバクテリオファージ、細菌に感染するウイルス(例えば、ラムダファージ)を含む。次にライブラリーは興味ある特定のcDNA(したがってmRNAも)に対して探査することができる。
“プライマー”は標的とハイブリダイズすることにより興味あるサンプルに存在する標的または“鋳型”に結合する遊離3’−OH基を一般的に有し、その後、標的に相補的なポリヌクレオチドの重合を促進する短いポリヌクレオチドを含む。“ポリメラーゼ連鎖反応”(“PCR”)は複製コピーが“上流”および“下流”プライマーからなる“プライマー対”または“プライマーセット”および重合の触媒、例えば、DNAポリメラーゼおよび一般的に熱安定性ポリメラーゼ酵素を使用して標的ポリヌクレオチドから作られる反応である。PCR方法は当分野において既知であり、例えば、MacPherson et al., IRL Press at Oxford University Press (1991))に教示されている。ポリヌクレオチドの複製コピーを製造するすべての方法、例えば、PCRまたは遺伝子クローニングは本明細書においてまとめて“複製”と称する。プライマーは、また、ハイブリダイゼーション反応、例えば、サザンまたはノーザン・ブロット分析におけるプローブとして使用することができる(例えば、Sambrook, J., Fritsh, E. F., and Maniatis, T. Molecular Cloning: A Laboratory Manual. 2nd, ed., Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., 1989、参照)。
“ポリペプチド”なる用語は2個以上のサブユニットのアミノ酸、アミノ酸類似体またはペプチド模倣物の化合物を含む。サブユニットはペプチド結合により結合され得る。他の態様において、サブユニットは他の結合、例えば、エステル、エーテルなどにより結合され得る。本明細書において使用される“アミノ酸”なる用語は、グリシンおよびDまたはL光学異性体の両方およびアミノ酸類似体およびペプチド模倣物を含む、天然および/または非天然または合成アミノ酸を含む。3個以上のアミノ酸のペプチドは一般的にオリゴペプチドを意味する。3個以上のアミノ酸のペプチド鎖はポリペプチドまたはタンパク質を意味する。
“ハイブリダイゼーション”なる用語は、1個以上のポリヌクレオチドがヌクレオチド残基の塩基間の水素結合を介して安定化される複合体を形成するために反応する反応を含む。水素結合はワトソン−クリック塩基対合、フーグスティーン結合または他の配列特異的な形により起こり得る。複合体は二重らせん構造を形成する2本鎖、多重鎖複合体を形成する3本以上の鎖、単自己ハイブリダイゼーション鎖、またはこれらの任意の組合せを含み得る。ハイブリダイゼーション反応はより広範な工程における一段階、例えば、PCR反応の開始またはリボザイムによるポリヌクレオチドの酵素的開裂を構成し得る。
ハイブリダイゼーション反応は異なる“ストリンジェンシー”の条件下にて実施することができる。ハイブリダイゼーション反応のストリンジェンシーは任意の2個の核酸分子が互いにハイブリダイズする困難性を含む。ストリンジェント条件下において、互いに少なくとも60%、65%、70%、75%同一である核酸分子は互いにハイブリダイゼーションを維持するが、同一性パーセントが低い分子はハイブリダイゼーションを維持することができない。高ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の好ましい非限定的な例は、約45℃にて6×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)におけるハイブリダイゼーション、次に50℃、好ましくは55℃、さらに好ましくは60℃、さらに好ましくは65℃にて0.2×SSC、0.1%のSDS中における1回以上の洗浄である。
ハイブリダイゼーションが2つの1本鎖ポリヌクレオチド間において逆平行立体配置にて起こるとき、該反応は“アニーリング”と呼ばれ、これらのポリヌクレオチドは“相補的”として記載される。ハイブリダイゼーションが第1のポリヌクレオチドの鎖の一方および第2のポリヌクレオチドの鎖の一方の間で起こり得るとき、2本鎖ポリヌクレオチドはもう1個のポリヌクレオチドと“相補的”または“相同的”であり得る。“相補性”または“相同性”(1個のポリヌクレオチドがもう1個のポリヌクレオチドと相補的である程度)は一般的に認められている塩基対合規則にしたがって、互いに水素結合すると予測される向かい合わせの鎖における塩基の割合に関して定量可能である。
本明細書において使用される“マーカー”なる用語は臓器拒絶反応に関する危険性がある対象において存在するか、または量または活性が高いポリヌクレオチドまたはポリペプチド分子を含む。マーカーの量または活性における相対変化は拒絶反応の発症または発症の危険性と相関関係である。
本明細書において使用される“マーカーのパネル”なる用語はマーカーのグループを含み、これらそれぞれのメンバーの量または活性は臓器拒絶反応の発症または発症の危険性と相関関係である。1つの態様において、マーカーのパネルは臓器拒絶反応に関する危険性がある対象において量または活性が高いマーカーのみを含む。マーカーのパネルは好ましくは少なくとも4個のマーカー、例えば、少なくとも5、6、7、8、9または10個のマーカー、例えば、少なくとも15個のマーカーを含む。好ましい遺伝子は別の段落に記載されている。
本明細書において使用される“示差的発現プロフィール”なる用語は、プロフィールの基準を形成するそれぞれの関連マーカーに対する値を含むプロフィールであって、該値は興味あるそれぞれのマーカーの試験サンプル物質中の発現の規模(RNAまたはタンパク質レベルのいずれかであるが、好ましくはRNAレベル)と、対照サンプルにおける興味ある同じマーカーの発現の規模(またはあらかじめ得られた対照値)を比較し、例えば、倍数変化または百分率変化を計算することにより得られるプロフィールを意味する。示差的発現プロフィールの非限定的な例は表4に挙げられる(それぞれ最後の3つの列)。示差的発現プロフィールは好ましくは少なくとも4個のマーカー、例えば、少なくとも5、6、7、8、9または10個のマーカー、例えば、少なくとも15個のマーカーに対する値を含む。
本明細書において使用される“参照示差的発現プロフィール”なる用語は、CANの1つ以上のステージを代表することが知られており、試験サンプルプロフィールが試験サンプルの分類を可能にする参照プロフィールと十分に同様であるかどうかを決定するために試験サンプルからの示差的発現プロフィールとの比較の根拠として使用することができる示差的発現プロフィールである。参照示差的発現プロフィールはCANのステージが既知であるサンプルの発現分析からの結果を集めることにより導き出され得る(一般的に導き出される)。
慢性拒絶反応のバイオマーカー
本発明はCANの予防および処置のための診断および/または予後ツールとして有用な腎臓線維症および慢性炎症の進行に対するバイオマーカーを提供する。本発明は、一つには、選択遺伝子が慢性移植機能障害、例えば、CANにおいて調節され、この変異の程度が種々のステージ/グレードのCAN間で異なっているという発見に基づく。増大している多量のヒト遺伝子配列情報と組み合わせた高度に平行、自動DNAハイブリダイゼーション技術の進歩は、数千の遺伝子に対する発現レベルを同時に分析することを可能にさせた。遺伝子ごとの定量RT−PCRのような方法は非常に正確であるが、比較的に労働集約的である。定量PCRを使用して数千の遺伝子の発現を分析することが可能であるが、労力および費用は莫大なものである。その代わりに、大規模分析の例として、mRNAの全母集団をcDNAに変換し、約10個から10000個またはそれ以上の遺伝子を示すプローブの規則正しいアレイにハイブリダイズする。これらのプローブのそれぞれにハイブリダイズするcDNAの相対量は対応する遺伝子の発現レベルの尺度である。次にデータを遺伝子発現の情報的パターンを示すため統計的に分析してもよい。事実、腎臓同種移植片拒絶反応の早期診断および新規予後バイオマーカーは免疫抑制剤を最小にし、個人化するために重要である。組織病理学的示差的診断に加えて、遺伝子発現プロファイリングは“分子シグネチャー”を定義することにより疾患分類を有意に改善する。
いくつかのこれまでの試験は異なるクラスの腎臓移植体を分類するために転写学アプローチを首尾よく適用してきた。しかしながら、マイクロアレイプラットフォームおよび種々のデータ分析方法の不均一がCANのロバストシグネチャーの同定を複雑にする。
この問題に取り組むため、データ分析を安定な移植片機能を有する患者および種々のグレードのCANと診断された患者からの腎臓プロトコール生検材料の遺伝子発現プロフィールにおいて実施した。実施例1において示されるとおり、この試験にて異なるマイクロアレイデータセットからの多数の遺伝子発現シグネチャーの共通部分を同定し、CANを有する組織を正確に分類することができるディスクリプター(すなわち、遺伝子マーカー;バイオマーカー)を得た。すなわち、本発明は拒絶反応中、特にCAN進行中に調節される(すなわち、アップレギュレーションされる、またはダウンレギュレーションされる)遺伝子の同定に関する。高度に統計的に有意な相関関係が1個以上のバイオマーカー遺伝子の発現とCAN間において見られ、それにより移植拒絶反応(例えば、CAN)に対する“分子シグネチャー”を提供する。これらのバイオマーカー遺伝子およびそれらの発現産物は、拒絶反応が起こる可能性のある臓器を同定する、および/または疾患(例えば、CAN)進行のグレードを決定するために有用であるため、移植拒絶反応の危険性がある患者の管理、予後および処置において使用することができる。
本明細書に記載されているデータは、実際の臨床状況下および遺伝子発現の分子操作の非存在下において、遺伝子の組合せがCANの指標となることを証明する。1つの態様において、組織移植後に分子シグネチャーを形成するバイオマーカー遺伝子/プローブの組合せは以下の表1に示されているものである。
表1:CAN特異的発現サインの33個のプローブセット/32個の遺伝子
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したがって、1つの局面において、本発明は移植された臓器の移植拒絶反応、特にCAN拒絶反応を示す表1において示される1個以上の遺伝子、好ましくは少なくとも5、10、15、20または25個の表1の遺伝子(示される順位は評価において含むことがより好ましい遺伝子の指標として使用することができる)を含む認識サインを使用することに関する。
33個のプローブセットは、また、表4に挙げられており、これらは対照と比較して発現において倍数変化をCANI、IIおよびIIIに対して示す。該表はCANIIIに対する結果において分類される。発現プロフィールを本発明の方法において分析する好ましい遺伝子は(遺伝子名を得ることができる表1において示されるAffymetrixプローブセットにより同定される):203645_s_at、215049_x_at、229554_at、235964_x_at、202800(アップレギュレーションされる)ならびに242998_at、219840_s_at、239929_at、223582_atおよび205278_at(ダウンレギュレーションされる)である。特に好ましいものはプローブセット202800_at、215049_x_atおよび203645_s_atに対応する遺伝子(すなわちSLC1A3およびCD163)ならびにプローブセット219840_s_atおよび239929_atに対応する遺伝子(すなわちRDH12およびFLJ32569)である。これらの好ましい遺伝子/プローブセットはCANIIIの検出ならびに/またはCANI/CANIIおよび/もしくはARからCANIIIの分類のために特に有用である。
CANの臨床的特徴
慢性移植機能障害は移植後何カ月ないし何年間かかけて徐々に移植片機能の悪化を示す固形臓器移植片における現象であり、結局、移植片生着不全を引き起こし、これが特有の組織学的特徴を伴うものである。臨床的に、腎臓移植片における慢性同種移植腎症(すなわちCAN)は、それ自体、通常、タンパク尿および動脈高血圧と共に、糸球体濾過速度のゆっくりに進行性の低下として現れる。
全ての実質同種移植片におけるCANの基本的な組織病理学的特徴は線維増殖性動脈内膜炎である。血管病変が動脈の全長にわたってつぎはぎパターンで影響を与える。同心円状に筋内膜が増殖し、線維性肥厚化および小動脈における内膜の特有の‘タマネギの皮’の外観となる。他の所見は内皮腫脹、泡沫細胞蓄積、内弾性板の破壊、ヒアリン症および内側肥厚化ならびに内皮下層Tリンパ球およびマクロファージの存在を含む。加えて、永続性限局性脈管周囲炎症がしばしば見られる。
血管の変化に加えて、CANを有する腎臓は、また、線維症、尿細管萎縮および糸球体症を示す。慢性移植糸球体症−毛細管壁の折れ重なりおよび糸球体間質増加はCANの腎臓の非常に特異的な特徴として確認されている。あまり特異的でない病変は糸球体虚血性虚脱、尿細管萎縮および間隙性線維症である。さらに、尿細管周囲の毛細管基部分裂および層状化は後期の移植片機能低下と関連している。腎臓同種移植片におけるCANの組織学的診断に関する基準は腎臓同種移植病理学に関するBanff 97スキームで国際的に標準化されている。表2は慢性/硬化性同種移植腎症(CAN)に関するBanff 97基準を要約している(Racusen et al., 1999, Kidney Int. 55(2):713-23)。
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Banff 97に対して、“適当な”試料は10個以上の糸球体および少なくとも2個の動脈を有する生検材料として定義される。2つの作業仮説がCANのプロセスを理解するために提案されている。第1の、恐らく最も重要なセットの危険因子は“アロ抗原依存的”、免疫学的または拒絶反応関連因子の名称の下でひとまとめにされている。これらの中、急性拒絶反応症状発現の後期発症および数の増加;レシピエント年齢の若さ;男性対女性の性別ミスマッチ;自己免疫性肝炎または胆道疾患の一次診断;ベースライン免疫抑制および非白色人種のレシピエントはすべて慢性拒絶反応の発症の危険性の増加と関連している。さらに具体的には、(a)組織不適合性:長期移植片生存はドナーとレシピエント間の組織適合性の相性度と強い相関関係であるように見える;(b)急性拒絶反応:急性拒絶反応症状発現の発症、頻度および重症度はCANの独立した危険因子である。急性拒絶反応はCANの発症に対してもっとも一貫して認められている危険因子である;(c)あまりに少ない維持量のシクロスポリンまたは非コンプライアンスによる最適状態には及ばない免疫抑制;および(d)抗ドナー特異的抗体:多数の試験にて移植後、大多数の患者が抗体を産生することを示されている。第2の危険因子のセットは“非アロ抗原依存的”または“非免疫学的”危険因子として称され、これは慢性拒絶反応の発症も関連しており、ドナーの高齢化、ドナー臓器における既存のアテローム性動脈硬化および長い冷虚血時間を含む。疾患および損傷、例えば、虚血に対する非アロ免疫応答はCANを引き起こすか、または悪化させ得る。さらに具体的には、(a)もとの疾患、例えば、糸球体腎炎の再発;(b)移植手術創傷の結果;(c)虚血の期間:内膜過形成は虚血の期間と相関関係である;(d)死体からの腎臓移植片対生存する血縁および非血縁ドナーからのもの;(e)ウイルス感染:CMV感染は直接、細胞間接着分子、例えば、ICAM−1に影響する;(f)脂質異常症;(g)高血圧;(h)年齢;(i)性別:移植動脈硬化の発症は女性より男性の方が早かった;(j)人種;および(k)機能性組織の量−ネフロンの数の減少および過剰濾過。
CAN診断に関する現在の臨床アプローチに対する限界
移植片機能障害に対する他の病因からの拒絶反応、例えば、CANの診断の区別および有効な治療法の設定は:(a)拒絶反応を診断するために利用可能な最善の現在の手段である移植片の経皮的コア針生検は通常、移植片機能障害および移植片損傷(場合によっては不可逆性)がすでに存在する“事実”後に行われる、(b)移植片の形態学的分析は、与えられる拒絶反応症状発現の逆転の可能性に対するわずかな手がかりおよび再発(“リバウンド”)の可能性に関する最小の手がかりを提供する、および(c)治療戦略の設計のための必要条件である拒絶反応現象の基本メカニズムは、拒絶反応の形態学的特徴を含む現在の診断指数により十分に定義されていないため、複雑なプロセスである。
例えば、腎臓同種移植片拒絶反応の診断は、通常、移植片機能障害の発症(例えば、血清クレアチニン濃度の増加)および単核細胞浸潤も示す移植片領域における移植片損傷の形態学的証拠によりなされる。しかしながら、拒絶反応プロセスの指標として異常な腎機能の使用に対して2つの警告がある:第1には、多数の死体の腎臓移植片は摘出およびエキソビボ保存工程の損傷により移植直後に急性(可逆性)腎不全を有するため、腎機能の悪化を拒絶反応を診断するために臨床的手がかりとしていつも利用できない。第2には、直接的に損なわれていない腎機能があるときでさえ、移植片機能障害が非免疫学的原因、例えば、免疫抑制療法、それ自体により発症し得る
例えば、単にシクロスポリン(CsA)の血漿/血液濃度に基づいて容易に確認されない合併症であるCsA腎毒性は一般的な合併症である。治療戦略が全く反対であるため、CsA腎毒性から拒絶反応を区別する臨床的重要性はあまり強調することはできない:拒絶反応に対して免疫抑制剤の漸増および腎毒性に対してCsA用量の減少。
本発明は、一部において、1個以上の遺伝子および/またはコードするタンパク質の発現の増加または減少が確実に特定の移植片拒絶反応状態と関連することを見出したことに基づく。したがって、今回、本明細書に記載されているデータの結果として、方法は、同種移植生検材料が穏やかな細胞浸潤のみ示す場合でさえ、急性および慢性拒絶反応の迅速な、かつ信頼できる診断のために、利用できる。本明細書に記載されているものは、同時に調節され(例えば、アップレギュレーションまたはダウンレギュレーションされる)、移植拒絶反応を正確に検出する、および/または、移植拒絶反応の重症度または進行を等級付けするための分子シグネチャーを提供する遺伝子の分析である。
本発明はさらに適当なバイオマーカー遺伝子の発現を測定するための典型的な分子法および大規模法を提供する。本明細書に記載されている方法は慢性移植拒絶反応および好ましくは早期慢性移植拒絶反応を検出するために特に有用である。1つの態様において、慢性移植拒絶反応はCANの結果である。より一般的に、対象(すなわち、移植体のレシピエント)は哺乳動物、例えば、ヒトである。移植された臓器は移植できるすべての臓器または組織、例えば、腎臓、心臓、肺、肝臓、膵臓、骨、骨髄、腸、神経、幹細胞(または幹細胞由来細胞)、組織成分および組織混合物を含むことができる。好ましい態様において、移植体は腎臓移植体である。
本明細書に記載されている方法は抗拒絶反応療法の効力を評価するために有用である。このような方法は、バイオマーカー遺伝子の転写産物の投与前のレベル(例えば、規模)と同じ遺伝子の転写産物の投与後のレベル(例えば、規模)を比較し、該遺伝子の転写産物の投与後のレベル(例えば、規模)が同じ遺伝子の転写産物の投与前のレベル(例えば、規模)より小さいとき抗拒絶反応療法の効力を示すものとすることを含む。移植拒絶反応を予防および/または処置するための候補(例えば、薬剤、抗体または拒絶反応もしくは予防の他の形態)を候補への暴露の前後のバイオマーカー発現のレベル(例えば、規模)の比較によりスクリーニングすることができる。加えて、重要な情報はこの方法において集められ、評価を生物学的材料で実施されている対象の将来の臨床管理の決定における助けとすることができる。評価は、バイオマーカー遺伝子の遺伝子発現のレベル(例えば、規模)を測定するために本明細書に記載されている方法を使用して、対象からのサンプルを使用して実施することができる。分析はさらに感染因子の検出を含むことができる。
本発明は、CANバイオマーカーの発現のレベル(例えば、規模)を測定し、これらの測定から本発明の選択した方法において有用であるCANバイオマーカーの発現のパターンを得ることができる方法を提供することが理解される。
遺伝子発現の検出
本発明の1つの局面において、発現のレベル(例えば、規模)を対象から得られたサンプルにおいて1個以上のバイオマーカー遺伝子に対して測定する。サンプルは対象、例えば、移植片生検材料から得られた細胞を含むことができる。他のサンプルは液体サンプル、例えば、血液、血漿、血清、リンパ液、CSF、嚢胞液、腹水、尿、糞尿および胆汁を含むが、これらに限定されない。サンプルは、また、気管支肺胞洗浄液、胸膜液または腹膜液、または正常または異常に機能している同種移植により分泌または排泄される他の何らかの流体、または同種移植片を介してまたは同種移植片の解剖学的近位での滲出または濾出から生じる他の何らかの流体、または同種移植との流体連結における流体から得ることができる。
腎臓移植体を有している個体は、一般的に、移植された臓器の拒絶反応の発症を示し得る1つ以上の症状の経験の結果として試験に参加する。これは移植が行われた後にあらゆるステージにて起こり得る。
多数の異なる方法が遺伝子発現の測定に関して当分野において既知である。典型的な方法は定量RT−PCR、ノーザンブロットおよびリボヌクレアーゼ保護アッセイを含む。本明細書に記載されている特定の例は、マーカー遺伝子の発現のレベル(例えば、規模)を測定するために、競合的逆転写(RT)−PCRを使用する。このような方法は対象遺伝子ならびに遺伝子クラスター全体の発現を試験するために使用され得る。しかしながら、試験すべき遺伝子の数が増加すると、時間および費用が重荷となり得る。
大規模検出方法は同時に多数の遺伝子の発現レベルの速い安価な分析を可能にする。このような方法は一般的に固体基質に付着したプローブの規則正しいアレイを含む。それぞれのプローブは異なるセットの核酸にハイブリダイズすることができる。1つの方法において、プローブは、興味ある種々の遺伝子のコーディング領域の実質的部分を増幅または合成することにより生成される。次に、これらの遺伝子を固体支持体上にスポットする。次に、mRNAサンプルを得、cDNAに変換し、増幅および標識(通常、蛍光標識にて)する。次に、標識cDNAをアレイに適用し、cDNAは濃度に直線的に関連する形にてそれぞれのプローブにハイブリダイズする。標識の検出はアレイに付着したそれぞれのcDNAの量の測定を可能にする。
このようなDNAアレイ実験を実施するための多数の方法は当分野において既知である。典型的な方法は、限定する意図はないが、以下に記載されている。マイクロアレイは当分野において既知であり、遺伝子産物(例えば、cDNA、mRNA、オリゴヌクレオチド)に順に対応するプローブを既知の位置にて結合する表面からなる。1つの態様において、マイクロアレイは、それぞれの位置が遺伝子によってコードされる産物(例えば、タンパク質またはRNA)に対して別々の結合部位を示し、そして結合部位が生物のゲノムにおける大部分またはほとんどすべての遺伝子産物に対して存在するアレイ(すなわち、マトリックス)である。好ましい態様において、“結合部位”(以下、“部位”)は特定の同族cDNAが特異的にハイブリダイズすることができる核酸または核酸誘導体である。結合部位の核酸または誘導体は、例えば、合成オリゴマー、完全長cDNA、不完全長cDNAまたは遺伝子フラグメントであり得る。
通常、マイクロアレイは少なくとも100個の遺伝子、さらに好ましくは、500、1000、4000個またはそれ以上の遺伝子に対応する結合部位を有する。1つの態様において、最も好ましいアレイは示された特定の生物の約98−100%の遺伝子を有する。他の態様において、より少ない特異的に選択された遺伝子に対応する結合部位を有するカスタマイズされたマイクロアレイを使用することができる。1つの態様において、カスタマイズされたマイクロアレイは4000個未満、1000個未満、200個未満または50個未満の遺伝子に対する結合部位を有し、表1のいずれかのバイオマーカーの少なくとも2個、好ましくは少なくとも3、4、5個またはそれ以上の遺伝子に対する結合部位を有する。好ましくは、マイクロアレイは興味ある生物学的ネットワークモデルを試験および確認するために関連する遺伝子に対する結合部位を有する。
マイクロアレイと接触させる核酸は種々の方法にて製造され得る。全およびポリ(A)+RNAを製造するための方法は既知であり、上記Sambrook et al.,において概して記載されている。標識cDNAはオリゴdT−プライマーまたはランダム−プライマー逆転写によりmRNAから製造され、これら両方は当分野において知られている(例えば、Klug and Berger, 1987, Methods Enzymol. 152: 316-325、参照)。逆転写は検出可能な標識に結合させたdNTP、より好ましくは蛍光標識dNTPの存在下において実行され得る。あるいは、単離されたmRNAは標識dNTPの存在下において2本鎖cDNAのインビトロ転写により合成される標識アンチセンスRNAに変換することができる(Lockhart et al., 1996, Nature Biotech. 14: 1675)。cDNAまたはRNAは検出可能な標識の非存在下において合成することができ、次に、例えば、ビオチニル化dNTPまたはrNTPを導入またはいくつかの同様の方法(例えば、ビオチンのプソラレン誘導体をRNAに光架橋する)、次に標識ストレプトアビジン(例えば、フィコエリトリン結合ストレプトアビジン)またはその等価物の添加により標識され得る。
蛍光標識を使用するとき、多数の適当なフルオロフォアは既知であり、フルオレセイン、リサミン、フィコエリトリン、ローダミン(Perkin Elmer Cetus)、Cy2、Cy3、Cy3.5、Cy5、Cy5.5、Cy7、FluorX(Amersham)および他のもの(例えば、Kricka, 1992, Academic Press San Diego, Calif.、参照)を含む。
他の態様において、蛍光標識以外の標識を使用する。例えば、放射性標識または異なる放射スペクトルを有する一対の放射性標識を使用することができる。しかしながら、放射性同位体の使用はあまり好ましくない態様である。
核酸ハイブリダイゼーションおよび洗浄条件は、標識核酸の母集団がマトリックスに固定された適当な相補的核酸に特異的にハイブリダイズするように選択される。本明細書において使用されるとき、ポリヌクレオチドの短い方が25塩基以下であるとき、標準塩基対合規則を使用してミスマッチがない、または、ポリヌクレオチドの短い方が25塩基より長いとき、最大5%のミスマッチであるとき、一方のポリヌクレオチド配列がもう一方に相補的であると考慮する。
最適ハイブリダイゼーション条件は標識核酸および固定化ポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドの長さ(例えば、オリゴマー対200塩基以上のポリヌクレオチド)およびタイプ(例えば、RNA、DNA、PNA)に依存する。核酸に対する特定の(すなわち、ストリンジェント)ハイブリダイゼーション条件のための一般的パラメーターは上記Sambrook et al.,およびAusubel et al., 1987, Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing and Wiley-Interscience, New York(これらをすべての目的のためにその全体を包含させる)に記載されている。アレイへの標識核酸の非特異的結合は大量の非特異的DNA−いわゆる“ブロッキング”工程にてアレイを処理することにより減少させることができる。
蛍光標識プローブを使用するとき、転写産物アレイのそれぞれの部位における蛍光放射は、好ましくは、走査型共焦点レーザー顕微鏡検査により検出することができる。2つのフルオロフォアを使用するとき、適当な励起線を使用する別々のスキャンを、使用するそれぞれの2つのフルオロフォアに対して行う。あるいは、2つのフルオロフォアに特異的な波長にて同時試料照明を可能にするレーザーを使用し、2つのフルオロフォアからの放射を同時に分析することができる(Shalon et al., 1996, Genome Research 6:639-645、参照)。好ましい態様において、アレイをコンピューター制御X−Yステージおよび顕微鏡対物レンズを備えたレーザー蛍光スキャナーでスキャンする。2つのフルオロフォアの一連の励起はマルチライン混合ガスレーザーにて達成され、放射光を波長により分け、2つの光電子増倍管にて検出する。蛍光レーザー走査装置はSchena et al., 1996, Genome Res. 6:639-645およびそこに引用された他の参考文献に記載されている。あるいは、Ferguson et al., 1996, Nature Biotech. 14:1681-1684により記載されている光ファイバー束は多数の部位で同時にmRNA存在レベルをモニタリングするために使用され得る。蛍光マイクロアレイスキャナーはAffymetrix、Packard BioChip Technologies、BioRoboticsおよび他の供給社から市販されている。
シグナルを、種々のコンピューターソフトウェアを使用して、記録、定量および分析する。1つの態様において、スキャン画像をグラフィクスプログラム(例えば、Hijaak Graphics Suite)を使用してスペックル除去し、次にそれぞれの部位におけるそれぞれの波長での平均ハイブリダイゼーションのスプレッドシートを作成する画像グリッドプログラムを使用して分析する。必要なとき、2つの蛍光体に対するチャネル間の“クロストーク”(またはオーバーラップ)の実験的に決定された補正を行い得る。転写産物アレイ上の特定のハイブリダイゼーション部位において、好ましくは2つのフルオロフォアの放射の比を計算する。該比は同族遺伝子の絶対発現レベルと独立するが、発現が薬剤投与、遺伝子欠失または他の何らかの試験事象により有意に調節される遺伝子に対して有用である。
1つの態様において、興味ある細胞の転写状態を反映する転写産物アレイは、cDNAの2つの異なる標識セットの混合物をマイクロアレイにハイブリダイズすることにより作られる。一方の細胞は興味ある細胞であるが、もう一方は標準対照として使用する。次に、それぞれの細胞のcDNAのマイクロアレイへの相対ハイブリダイゼーションは2つの細胞におけるそれぞれの遺伝子の相対発現を反映する。
興味ある細胞において同じ時間に対照細胞における発現のレベルを測定することがいつも必要ではない。測定は対照の標準セットに対して比較することができる。一般的に、興味あるサンプルに対する結果がアッセイ条件、バックグラウンドレベルなどの違いを考慮するために、対照のものに合わせることができるように、標準対照はハウスキーピング遺伝子、例えば、アクチンの発現レベルを含む。
最終結果は、一般的に、対照と比較した興味あるサンプル中のマーカー遺伝子の相対発現の値のセットである(例えば、アップまたはダウンおよび、例えば、百分率または倍数において示される変化の規模)。相対値のこのセットは“示差的発現プロフィール”と呼ばれ、一般的に後の診断/分類に対する基準として使用される。次に示差的発現プロフィールは一般的にCANの1つ以上のステージ/グレードを特徴付ける参照示差的発現プロフィールと比較する。例えば、CANのあらゆるステージを示す1つの参照示差的発現プロフィールを使用し得る。あるいは、または加えて、参照示差的発現プロフィールは、CANの1つ以上のステージに対して特異的であるが、すべてのステージではない、例えば、ステージIIIに対するプロフィールおよびステージIおよびIIに対する異なるプロフィールである。いくつかの変化が期待されるため、統計分析は、興味あるプロフィールが統計的に有意な存在する一致において参照プロフィールに十分に近いかどうかを決定するために使用することができる。
いくつかの態様において、異なるサンプルおよび条件におけるバイオマーカーの発現レベルは種々の統計学的方法を使用して比較され得る。種々の統計学的方法は異なる遺伝子の発現パターンにおける関連の程度を評価するために利用できる。統計学的方法は2つの関連部分に分けられ得る:1つ以上の遺伝子の発現パターンの関連を決定するための測定基準方法、および適当な測定基準方法に基づく発現データを組織化および分類するためのクラスタリング方法(Sherlock, 2000, Curr. Opin. Immunol. 12:201-205; Butte et al., 2000, Pacific Symposium on Biocomputing, Hawaii, World Scientific, p.418-29)。
1つの態様において、ピアソンの相関関係は測定基準方法として使用され得る。簡潔には、ある遺伝子において、遺伝子発現レベルのそれぞれのデータ点は、全条件にわたる遺伝子に対する遺伝子発現レベルの全体平均からの遺伝子発現の偏差を表すベクトルを定義する。次にそれぞれの遺伝子の発現パターンは一連のプラスおよびマイナスのベクトルとして考察することができる。次にピアソン相関係数はそれぞれの遺伝子のベクトルを互いに比較することにより計算することができる。このような方法の例はEisen et al.(1998、上記)に記載されている。ピアソン相関係数はベクトルの向きの説明となるが、規模の説明とならない。
他の態様において、ユークリッド距離測定は測定基準方法として使用され得る。これらの方法において、ベクトルをそれぞれの条件におけるそれぞれの遺伝子に対して計算し、遺伝子に対するベクトルにより記載される点間の多次元空間における絶対距離に基づいて比較する。他の態様において、ユークリッド距離および相関係数の両方はクラスタリングにおいて使用した。
さらなる態様において、遺伝子発現パターンの関連はエントロピー計算により決定され得る(Butte et al. 2000、上記)。エントロピーはそれぞれの遺伝子の発現パターンに対して計算する。次に2つの遺伝子に対する計算されたエントロピーを比較し、相互情報を決定する。相互情報をそれぞれの遺伝子に対して個々に計算されたエントロピーから結合遺伝子発現パターンのエントロピーを減じることにより計算する。より異なる2つの遺伝子発現パターンとは、より高い結合エントロピーおよびより低い計算された相互情報であることである。したがって、高い相互情報は2つの発現パターン間の非ランダムな関連を示す。
他の態様において、凝集型クラスタリング方法は遺伝子クラスターを同定するために使用され得る。1つの態様において、ピアソン相関係数またはユークリッド測定基準をそれぞれの遺伝子に対して決定し、次に樹状図を形成するための基準として使用する。1つの例において、遺伝子を極めて密接な相関係数を有する対の遺伝子に対してスキャンした。次にこれらの遺伝子を、相関度に比例して枝の奥行の間で、節点により連結した樹状図の2本の枝に配置する。徐々に枝を樹に加えて、この工程を続ける。最終的に、短い枝により連結された遺伝子がクラスターを示すが、長い枝により連結された遺伝子が一緒にクラスターではない遺伝子を示す、樹を形成する。ユークリッド測定基準方法による多次元空間における点は、また、樹状図を生成するために使用され得る。
さらに他の態様において、分割型クラスタリング方法が使用され得る。例えば、ベクトルをそれぞれの遺伝子の発現パターンに割り当て、2つのランダムベクトルを生成する。次にそれぞれの遺伝子を、ベクトルとマッチングする確率に基づいて、2つのランダムベクトルの1つに割り当てる。ランダムベクトルを繰り返し再計算し、遺伝子を2つのグループに分ける2つの重心を生成する。分けることにより樹状図の底部に主な枝を形成する。次にそれぞれのグループをさらに同じ方法において分け、最終的に完全に分岐した樹状図を得る。
さらなる態様において、自己組織化マップ(SOM)はクラスターを生成するために使用され得る。一般的に、遺伝子発現パターンは測定基準方法、例えば、上記ユークリッド測定基準方法を使用してn次元空間においてプロットする。次に重心格子をn次元空間に配置し、重心を点のクラスターに向かって移動させ、遺伝子発現のクラスターを示す。最後に重心は遺伝子クラスターの一種の平均的なものである遺伝子発現パターンを表す。1つの態様において、SOMを使用して重心を生成し、それぞれの重心にてクラスターを形成する遺伝子はさらに樹状図により示され得る。典型的な方法はTamayo et al., 1999, PNAS 96:2907-12に記載されている。重心を形成すると、相関関係は上記方法の1つにより評価され得る。
他の態様において、PLSDA、OPLSおよびOSC多変量解析は分類手段として使用され得る。
他の局面において、本発明はプローブセットを提供する。好ましいプローブセットは1つ以上の遺伝子の発現を検出するように設計され、移植片の状態についての情報を提供する。本発明の好ましいプローブセットは表1のバイオマーカー遺伝子のいずれかに属する少なくとも2つの遺伝子の検出に対して有用なプローブを含む。本発明のプローブセットは最大10,000個の遺伝子転写産物の検出に対して有用であるプローブを含み、好ましいプローブセットは4000個未満、1000個未満、200個未満、100個未満、90個未満、80個未満、70個未満、60個未満、50個未満、40個未満、30個未満、20個未満、10個未満の遺伝子転写産物の検出に対して有用であるプローブを含む。本発明のプローブセットは移植体の状態について情報を与える遺伝子転写産物の検出向けである。本発明のプローブセットは、また、移植体の状態について情報を与えない遺伝子転写産物を検出する多数または少数のプローブを含み得る。好ましい態様において、本発明のプローブセットは固体基質に固定し、プローブのアレイを形成する。プローブセットが、また、マルチプレックスPCRに対して有用であり得ることが予期される。プローブセットのプローブは核酸(例えば、DNA、RNA、DNAおよびRNAの化学的修飾形態)、またはPNA、または所望の核酸配列と特異的に相互作用することができる何らかの他のポリマー化合物であり得る。
本発明のバイオマーカー(複数も可)を含むコンピューターで読み取り可能な媒体も提供される。本明細書において使用される“コンピューターで読み取り可能な媒体”はコンピューターにより直接読み取り、アクセスできる媒体を含む。このような媒体は、磁気記憶媒体、例えば、フロッピーディスク、ハードディスク記憶媒体および磁気テープ;光記憶媒体、例えば、CD−ROM;電気記憶媒体、例えば、RAMおよびROM;およびこれらのカテゴリーのハイブリッド、例えば、磁気/光記憶媒体を含むが、これらに限定されない。当業者は、現在既知のいずれかのコンピューターで読み取り可能な媒体を使用して、本発明のバイオマーカーを記録させたコンピューターで読み取り可能な媒体を含む製品の作製方法を容易に理解することができる。
本明細書において使用される“記録”はコンピューターで読み取り可能な媒体における情報を保存するための方法を含む。当業者は容易に、コンピューターで読み取り可能な媒体に情報を記録するための現在既知のいずれかの方法を採用し、本発明のバイオマーカーを含む製品を生成することができる。
種々のデータ処理のプログラムおよびフォーマットがコンピューターで読み取り可能な媒体に本発明のバイオマーカー情報を保存するために使用することができる。例えば、バイオマーカーに対応する核酸配列は、市販のソフトウェア、例えば、WordPerfectおよびMicroSoft Wordにおいてフォーマットされるワードプロセッシングテキストファイルで示すか、またはデータベースアプリケーション、例えば、DB2、Sybase、Oracleなどにおいて保存されるASCIIファイルの形態で示すことができる。いくつかのデータ処理構造化フォーマット(例えば、テキストファイルまたはデータベース)を、本発明のバイオマーカーを記録させたコンピューターで読み取り可能な媒体を得るために、適合させ得る。
コンピューターで読み取り可能な形態における本発明のバイオマーカーを提供することにより、通常、種々の目的のためにバイオマーカー配列情報にアクセスすることができる。例えば、当業者は、標的配列または標的構造モチーフとデータ記憶装置内に保存された配列情報を比較するために、コンピューターで読み取り可能な形態における本発明のヌクレオチドまたはアミノ酸配列を使用することができる。検索手段を、特定の標的配列または標的モチーフとマッチする本発明の配列のフラグメントまたは領域を同定するために使用する。
本発明は、また、本発明のバイオマーカー(複数も可)を含むアレイを含む。アレイはアレイにおける1つ以上の遺伝子の発現をアッセイするために使用することができる。1つの態様において、アレイは、組織における遺伝子発現をアッセイするために使用し、アレイにおける遺伝子の組織特異性を確認することができる。この方法において、約8600個までの遺伝子が発現に関して同時にアッセイすることができる。これは1つ以上の組織において特異的に発現される一群の遺伝子を示すプロフィールに発展させることができる。
このような定性的測定に加えて、本発明は遺伝子発現の定量化を可能にする。したがって、組織特異性だけでなく、組織における一群の遺伝子の発現レベルもまた確認することができる。したがって、遺伝子はそれらの組織発現それ自体および組織間または組織中のレベルに基づいてグループ化することができる。これは、例えば、組織間または組織中の遺伝子発現の関係を確認することにおいて有用である。したがって、1つの組織を混乱させ、第2の組織における遺伝子発現の効果を測定することができる。この文脈において、生物学的刺激に対する応答における一つの細胞型に対する他の細胞型の効果を測定することができる。このような測定は、例えば、遺伝子発現レベルにおける細胞−細胞相互作用の効果を知るために有用である。薬剤がある細胞型を処置するために治療的に投与されるが、他の細胞型には望ましくない効果を有するとき、本発明は望ましくない効果の分子的機序を決定するためのアッセイを提供し、したがって中和作用薬剤を共投与するか、または別の方法で望ましくない効果を処置する機会を提供する。同様に、単細胞型内でさえ、望ましくない生物学的効果を分子レベルにおいて測定することができる。したがって、標的遺伝子以外の発現に対する薬剤の効果を確認および中和することができる。
他の態様において、アレイはアレイにおける1つ以上の遺伝子の発現の時間的経過をモニタリングするために使用することができる。これは本明細書に記載されている種々の生物学的状況、例えば、発生および分化、疾患の進行、インビトロ過程、例えば、細胞の形質転換および老化、自律神経および神経学的過程、例えば、疼痛および本能的欲望、および認知機能、例えば、学習または記憶において起こり得る。
アレイは、また、一つの遺伝子の発現の、同じ細胞または異なる細胞における他の遺伝子の発現に対する効果を確認するために有用である。これは、例えば、最終または下流標的を調節することができないとき、治療的介入のための代替的分子標的の選択のために提供する。
アレイは、また、正常および異常細胞における1つ以上の遺伝子の示差的発現パターンを確認するために有用である。これは、診断または治療的介入のための分子標的として働くことができる一群の遺伝子を提供する。
タンパク質
さらに、特定のタンパク質のレベルの増加は、また、移植体についての診断情報を提供し得ることが予期される。1つの態様において、表1の遺伝子によってコードされる1個以上のタンパク質が検出され得、タンパク質レベルの上昇または減少が移植拒絶反応を診断するために使用され得る。好ましい態様において、タンパク質レベルは移植後の液体サンプルにおいて検出され、特に好ましい態様において、液体サンプルは末梢血または尿である。他の好ましい態様において、タンパク質レベルは移植片生検材料において検出される。
本明細書を考慮して、タンパク質を検出するための方法は当分野において既知である。このような方法の例はウエスタン・ブロッティング、酵素免疫吸着測定法(ELISA)、一および二次元電気泳動、質量分析および酵素活性の検出を含む。適当な抗体はポリクローナル、モノクローナル、フラグメント(例えば、Fabフラグメント)、一本鎖抗体および特定の結合分子の他の形態を含み得る。
予測医学
本発明は、診断的アッセイ、予後アッセイ、薬理遺伝学およびモニタリング臨床試験を予後(予測)目的のために使用し、それにより対象を予防的に診断または処置する予測医学の分野に関する。したがって、本発明の1つの局面は、サンプル(例えば、血液、血清、細胞、組織)からバイオマーカータンパク質および/または核酸発現を測定し、それにより対象が移植拒絶反応を起こす可能性があるかどうかを決定するための診断的アッセイに関する。
本発明の他の局面は以下のセクションにおいてさらに詳細に記載されている臨床試験におけるバイオマーカーの発現または活性に対する薬剤(例えば、薬物、化合物)の影響のモニタリングに関する。
サンプルにおける本発明のバイオマーカータンパク質または遺伝子の存在または非存在を検出するための典型的な方法は、試験対象からサンプルを得、サンプルをタンパク質またはバイオマーカータンパク質もしくは核酸の存在がサンプルにおいて検出できるようなバイオマーカータンパク質をコードする核酸(例えば、mRNA、ゲノムDNA)を検出することができる化合物または薬物と接触させることを含む。本発明のバイオマーカー遺伝子またはタンパク質に対応するmRNAまたはゲノムDNAを検出するための好ましい薬物は、本発明のmRNAまたはゲノムDNAにハイブリダイズすることができる標識核酸プローブである。本発明の診断アッセイにおいて使用するための適当なプローブは本明細書に記載されている。
バイオマーカータンパク質を検出するための好ましい薬物はバイオマーカータンパク質に結合することができる抗体、好ましくは検出可能な標識を有する抗体である。抗体はポリクローナルまたはさらに好ましくは、モノクローナルであり得る。無傷の抗体またはそのフラグメント(例えば、FabまたはF(ab’)2)を使用することができる。プローブまたは抗体に関する“標識”なる用語は、検出可能な物質をプローブまたは抗体にカップリング(すなわち、物理的結合)することによるプローブまたは抗体の直接標識、ならびに直接標識する別の試薬との反応性によるプローブまたは抗体の間接標識を含むことを意図する。間接標識の例は、蛍光標識二次抗体および蛍光標識ストレプトアビジンで検出することができるようにビオチンでDNAプローブを末端標識を使用して一次抗体の検出することを含む。“サンプル”なる用語は対象から単離された組織、細胞および生物学的流体、ならびに対象内に存在する組織、細胞および流体を含むことを意図する。すなわち、本発明の検出方法はインビトロならびにインビボでサンプルにおけるバイオマーカーmRNA、タンパク質またはゲノムDNAを検出するために使用することができる。例えば、バイオマーカーmRNAの検出のためのインビトロ技術はノーザン・ハイブリダイゼーションおよびインサイチュハイブリダイゼーションを含む。バイオマーカータンパク質の検出のためのインビトロ技術は酵素免疫吸着測定法(ELISA)、ウエスタン・ブロット、免疫沈降および免疫蛍光を含む。バイオマーカーゲノムDNAの検出のためのインビトロ技術はサザン・ハイブリダイゼーションを含む。さらに、バイオマーカータンパク質の検出のためのインビボ技術は対象へ標識抗バイオマーカー抗体を導入することを含む。例えば、抗体は対象における存在および位置を標準イメージング技術により検出することができる放射性バイオマーカーで標識され得る。
1つの態様において、サンプルは試験対象からのタンパク質分子を含む。あるいは、サンプルは試験対象からのmRNA分子または試験対象からのゲノムDNA分子を含むことができる。好ましいサンプルは対象から慣用の方法により単離された血清サンプルである。
本方法は、さらに、対照対象から対照サンプル(例えば、移植されていない健康な腎臓または拒絶反応の徴候を示さない移植された健康な腎臓からの生検材料)を得、バイオマーカータンパク質、mRNAまたはゲノムDNAの存在をサンプル中にて検出できるように、対照サンプルをバイオマーカータンパク質、mRNAまたはゲノムDNAを検出することができる化合物または薬剤と接触させ、そして、対照サンプル中のバイオマーカータンパク質、mRNAまたはゲノムDNAの存在と試験サンプル中のバイオマーカータンパク質、mRNAまたはゲノムDNAの存在を比較することを含む。
本発明は、また、サンプル中のバイオマーカーの存在を検出するためのキットを含む。例えば、キットはサンプル中のバイオマーカータンパク質またはmRNAを検出することができる標識化合物または薬剤;サンプル中のバイオマーカーの量を測定するための手段;およびサンプル中のバイオマーカーの量を標準と比較するための手段を含むことができる。化合物または薬剤は適当な容器にパッケージすることができる。キットはさらにバイオマーカータンパク質または核酸を検出するためにキットを使用するための指示書を含むことができる。
さらに、本明細書に記載されている診断方法は異常バイオマーカー発現または活性と関連する疾患または障害を有するかまたは発症の危険性がある対象を確認するために使用することができる。本明細書において使用される“異常”なる用語は野生型バイオマーカー発現または活性から逸脱するバイオマーカー発現または活性を含む。異常発現または活性は増加または減少した発現または活性、ならびに発現の野生型発生パターンまたは発現の細胞内パターンに従わない発現または活性を含む。例えば、異常バイオマーカー発現または活性はバイオマーカー遺伝子における変異がバイオマーカー遺伝子を過少発現または過剰発現にさせる場合、およびこのような変異が非機能性バイオマーカータンパク質または野生型の機能をしないタンパク質、例えば、バイオマーカーリガンドと相互作用しないタンパク質または非バイオマーカータンパク質リガンドと相互作用するものをもたらす状況を含むことを意図する。
さらに、本明細書に記載されている予後アッセイは、対象に拒絶反応の危険性を減少するための薬剤(例えば、アゴニスト、アンタゴニスト、ペプチド模倣物、タンパク質、ペプチド、核酸、小分子または他の薬物候補)、例えば、シクロスポリンを投与することができるかどうかを決定するために使用することができる。したがって、本発明は、対象を表1における遺伝子の組合せの遺伝子発現または活性の増加と関連する障害のための薬剤で有効に処置することができるかどうかを決定するための方法を提供する。
遺伝子の発現または活性に対する薬剤(例えば、薬物)の影響のモニタリングは基本的薬物スクリーニングだけでなく、臨床試験においてもまた適用することができる。例えば、遺伝子発現、タンパク質レベルの増加または活性のアップレギュレーションに対する本明細書に記載されているスクリーニングアッセイにより決定される薬剤の有効性は、対象の臨床試験において薬剤での処置中に分子シグネチャーおよび分子シグネチャーの何らかの変化を試験することによりモニタリングすることができる。
例えば、限定はしないが、遺伝子活性を調節する薬剤(例えば、化合物、薬物または小分子)での処置により細胞において調節される遺伝子およびそれらにコードされるタンパク質を同定することができる。臨床試験において、細胞を単離し、RNAを製造し、拒絶反応と関連する関連遺伝子の発現レベルに対して分析することができる。遺伝子発現レベル(例えば、遺伝子発現パターン)は本明細書に記載されているノーザン・ブロット分析またはRT−PCR、あるいは産生されたタンパク質の量を測定すること、本明細書に記載されている方法の1つにより定量することができる。このように、遺伝子発現パターンは薬剤に対する細胞の生理学的応答を示す分子シグネチャーとして働くことができる。したがって、この応答状態は薬剤での対象の処置前および処置中の種々の時点にて測定され得る。
好ましい態様において、本発明は(i)薬剤の投与前に対象から投与前のサンプルを得;(ii)投与前のサンプルにおいて遺伝子または遺伝子の組合せ、遺伝子によってコードされるタンパク質、mRNAまたはゲノムDNAの発現レベルを検出し;(iii)対象から1つ以上の投与後のサンプルを得;(iv)投与後のサンプルにおけるバイオマーカータンパク質、mRNAまたはゲノムDNAの発現または活性レベルを検出し;(v)投与前のサンプルにおけるバイオマーカータンパク質、mRNAまたはゲノムDNAの発現または活性レベルと投与後のサンプル(複数も可)における遺伝子または遺伝子の組合せ、遺伝子によってコードされるタンパク質、mRNAまたはゲノムDNAを比較し;そして(vi)それによって対象への薬剤の投与を変える工程を含む、薬剤(例えば、アゴニスト、アンタゴニスト、ペプチド模倣物、タンパク質、ペプチド、核酸、小分子、または本明細書に記載されているスクリーニングアッセイにより同定される他の薬物候補)での対象の処置の有効性をモニタリングするための方法を提供する。例えば、薬剤の投与の増加が遺伝子の発現または活性をより低いレベルに減少させる、すなわち、移植拒絶反応から保護するための薬剤の有効性を増加させるために望ましいかもしれない。あるいは、薬剤の投与の減少がバイオマーカーの発現または活性を検出されるレベルよりもより低いレベルに減少させる、すなわち、薬剤の有効性を増加させる、例えば、毒性を避けるために望ましいかもしれない。このような態様にしたがって、遺伝子発現または活性は、観察できる表現型応答の非存在下でさえ、薬剤の有効性の指標として使用され得る。
本発明は、移植拒絶反応を阻止するための予防および治療の両方の方法を提供する。予防および治療方法の両方の処置に関して、このような処置は、薬理ゲノム学の分野から得られる知識に基づいて、特異的に調整または修正され得る。本明細書において使用される“薬理ゲノム学”は臨床開発中および市場中の薬剤に対するゲノム技術、例えば、遺伝子配列決定、統計遺伝学および遺伝子発現分析の適用を含む。さらに特に、該用語は対象の遺伝子が薬物に対する応答(例えば、対象の“薬物応答表現型”または“薬物応答遺伝子型”)を決定するかどうかの試験を意味する。したがって、本発明の他の局面は対象の薬物応答遺伝子型にしたがって本発明のバイオマーカー分子またはバイオマーカーモジュレーターのいずれかで対象の予防および治療処置を調整するための方法を提供する。薬理ゲノム学は、臨床医または医師が処置が非常に有益となるであろう対象を予防または治療処置の標的とすること、および毒性薬剤関連副作用を経験するであろう対象の処置を避けることを可能にする。
1つの局面において、本発明はバイオマーカー発現を調節する化合物または薬剤を対象に投与することにより、バイオマーカー発現または活性の増加と関連する対象における移植拒絶反応を予防するための方法を提供する。このような化合物または薬剤の例は、例えば、免疫抑制性特性を有する化合物または薬剤、例えば、移植において使用されるもの(例えば、カルシニューリン阻害剤、シクロスポリンAまたはFK506);mTOR阻害剤(例えば、ラパマイシン、40−O−(2−ヒドロキシエチル)−ラパマイシン、CCI779、ABT578、AP23573、バイオリムス−7またはバイオリムス−9);免疫抑制特性を有するアスコマイシン(例えば、ABT−281、ASM981など);コルチコステロイド;シクロホスファミド;アザチオプレン;メトトレキサート;レフルノミド;ミゾルビン;ミコフェノール酸または塩;ミコフェノール酸モフェチル;15−デオキシスペルグアリンまたはその免疫抑制性相同物、類似体または誘導体;PKC阻害剤(例えば、WO02/38561またはWO03/82859に記載されているもの、実施例56または70の化合物);JAK3キナーゼ阻害剤(例えば、遊離形または薬学的に許容される塩形のN−ベンジル−3,4−ジヒドロキシ−ベンジリデン−シアノアセトアミド a−シアノ−(3,4−ジヒドロキシ)−]N−ベンジルシンナムアミド(チルホスチンAG490)、プロジギオシン25−C(PNU156804)、[4−(4’−ヒドロキシフェニル)−アミノ−6,7−ジメトキシキナゾリン](WHI−P131)、[4−(3’−ブロモ−4’−ヒドロキシルフェニル)−アミノ−6,7−ジメトキシキナゾリン](WHI−P154)、[4−(3’,5’−ジブロモ−4’−ヒドロキシルフェニル)−アミノ−6,7−ジメトキシキナゾリン]WHI−P97、KRX−211、3−{(3R,4R)−4−メチル−3−[メチル−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−アミノ]−ピペリジン−1−イル}−3−オキソ−プロピオニトリル、例えば、モノ−クエン酸塩(CP−690,550とも呼ばれる)、またはWO04/052359またはWO05/066156)に記載されている化合物;S1P受容体アゴニストまたはモジュレーター(例えば、所望によりリン酸化されたFTY720またはその類似体、例えば、所望によりリン酸化された2−アミノ−2−[4−(3−ベンジルオキシフェニルチオ)−2−クロロフェニル]エチル−1,3−プロパンジオールまたは1−{4−[1−(4−シクロヘキシル−3−トリフルオロメチル−ベンジルオキシイミノ)−エチル]−2−エチル−ベンジル}−アゼチジン−3−カルボン酸またはその薬学的に許容される塩);免疫抑制性モノクローナル抗体(例えば、白血球受容体に対するモノクローナル抗体、例えば、MHC、CD2、CD3、CD4、CD7、CD8、CD25、CD28、CD40、CD45、CD52、CD58、CD80、CD86またはそれらのリガンド);他の免疫モジュレーター化合物(例えば、CTLA4またはその変異体の細胞外ドメインの少なくとも一部分、例えば、非CTLA4タンパク質配列に結合したCTLA4またはその変異体、例えば、CTLA4Ig(例えば、ATCC68629と称する)またはその変異体、例えば、LEA29Yの少なくとも細胞外部分を有する組換え結合分子);接着分子阻害剤(例えば、LFA−1アンタゴニスト、ICAM−1または−3アンタゴニスト、VCAM−4アンタゴニストまたはVLA−4アンタゴニスト)である。これらの化合物または薬剤は、また、組合せにおいて使用され得る。
本発明の他の局面は治療目的のためにバイオマーカータンパク質の発現または活性を調節する方法に関する。したがって、典型的な態様において、本発明の調節方法はバイオマーカータンパク質または細胞と関連するバイオマーカータンパク質の活性の1つ以上の活性を調節する薬剤と細胞を接触させることを含む。バイオマーカータンパク質の活性を調節する薬剤は、本明細書に記載されている薬剤、例えば、核酸またはタンパク質、バイオマーカータンパク質の天然標的分子(例えば、バイオマーカータンパク質基質)、バイオマーカータンパク質抗体、バイオマーカータンパク質アゴニストまたはアンタゴニスト、バイオマーカータンパク質アゴニストまたはアンタゴニストのペプチド模倣物、または他の小分子であり得る。1つの態様において、薬剤は1つ以上のバイオマーカータンパク質活性を刺激する。このような刺激剤の例は活性バイオマーカータンパク質および細胞に導入されたバイオマーカータンパク質をコードする核酸分子を含む。他の態様において、薬剤は1つ以上のバイオマーカータンパク質活性を阻害する。このような阻害剤の例はアンチセンスバイオマーカータンパク質核酸分子、抗バイオマーカータンパク質抗体およびバイオマーカータンパク質阻害剤を含む。これらの調節方法はインビトロにて(例えば、細胞を薬剤と培養することにより)または、あるいは、インビボにて(例えば、薬剤を対象に投与することにより)実施することができる。本発明は、それ自体、バイオマーカータンパク質または核酸分子の異常発現または活性により特徴付けられる疾患または障害に罹患している対象を処置する方法を提供する。1つの態様において、該方法は薬剤(例えば、本明細書に記載されているスクリーニングアッセイにより同定される薬剤)またはバイオマーカータンパク質の発現または活性を調節する(例えば、アップレギュレーションまたはダウンレギュレーションする)薬剤の組合せを投与することを含む。他の態様において、該方法は減少したまたは異常なバイオマーカータンパク質の発現または活性を補うための治療としてバイオマーカータンパク質または核酸分子を投与することを含む。
バイオマーカータンパク質の活性の刺激はバイオマーカータンパク質が異常にダウンレギュレーションされている、および/またはバイオマーカータンパク質の活性の増加が有利な効果を有する可能性のある状況において望ましい。例えば、バイオマーカータンパク質の活性の刺激はバイオマーカーがダウンレギュレーションされている、および/またはバイオマーカータンパク質の活性の増加が有利な効果を有する可能性のある状況において望ましい。同様に、バイオマーカータンパク質の活性の阻害はバイオマーカータンパク質が異常にアップレギュレーションされている、および/またはバイオマーカータンパク質の活性の減少が有利な効果を有する可能性のある状況において望ましい。
本発明のバイオマーカータンパク質および核酸分子、ならびに本明細書に記載されているスクリーニングアッセイにより同定されるバイオマーカータンパク質の活性(例えば、バイオマーカー遺伝子発現)に対する刺激または阻害効果を有する薬剤またはモジュレーターは、異常なバイオマーカータンパク質の活性と関連するバイオマーカー関連障害(例えば、前立腺癌)を処置(予防的または治療的に)するために対象に投与され得る。このような処置と共に、薬理ゲノム学(すなわち、対象の遺伝子型と外来化合物または薬剤に対する対象の応答の関係の研究)が考慮され得る。治療の代謝における差は、薬理学的に活性な薬剤の用量と血中濃度の関係を変えることにより深刻な毒性または治療の失敗を引き起こし得る。したがって、医師または臨床医は、バイオマーカー分子またはバイオマーカーモジュレーターを投与するかどうかの決定ならびにバイオマーカー分子またはバイオマーカーモジュレーターによる処置の用量および/または治療レジメンの調整において、関連する薬理ゲノム学試験において得られた知識を適用することを考慮してもよい。
“ゲノムワイド関連”として既知の薬物応答を予測する遺伝子を同定するための1個の薬理ゲノム学アプローチは、主としてすでに既知の遺伝子関連バイオマーカーからなるヒトゲノムの高解像度地図マップ(例えば、ヒトゲノムの60,000−100,000の多型または可変部位からなる“2対立”遺伝子バイオマーカーマップ、これらそれぞれは2つの変異型を有する)に頼る。このような高解像度遺伝子マップはフェーズII/III薬剤試験に参加している統計的に有意な数の対象のそれぞれのゲノムのマップと比較して、特定の観察される薬物応答または副作用と関連するバイオマーカーを同定することができる。あるいは、このような高解像度マップはヒトゲノムにおける約1000万の既知の一塩基変異多型(SNP)の組合せから生成することができる。本明細書において使用される“SNP”はDNAの範囲において単一ヌクレオチド塩基において起こる一般的な変化である。例えば、SNPはDNAの1000塩基ごとに1回起こり得る。SNPは疾患プロセスに関与し得るが、しかしながら、大多数は疾患関連ではない。このようなSNPの発生に基づく遺伝子地図を考慮すると、対象は対象ゲノムにおけるSNPの特定のパターンに依存して遺伝的カテゴリーに分類することができる。このような方法において、処置レジメンは、このような遺伝的に同様の対象中において共通であり得る特性を考慮すると、遺伝的に同様の対象のグループごとに調整することができる。
あるいは、“候補遺伝子アプローチ”と呼ばれる方法が薬物応答を予測する遺伝子を同定するために利用することができる。この方法によって、薬剤標的をコードする遺伝子が既知であるとき(例えば、本発明のバイオマーカータンパク質)、すべての遺伝子の一般的な変異体は母集団においてかなり容易に同定することができ、ある遺伝子型に対して別の遺伝子型を有することが特定薬剤応答と関連しているかを同定することができる。
本発明は、部分的に、多数の異なる遺伝子および/またはコードされるタンパク質の発現の増加または減少が特定の移植片拒絶反応状態と関連している観察に基づく。本明細書に記載されているデータの結果として、方法は、現在、同種移植生検材料が穏やかな細胞浸潤のみを示す場合でさえ、急性および慢性拒絶反応の迅速な、かつ信頼できる診断のために利用できる。初めて本明細書に記載されていることは、同時にアップレギュレーションされる、および/またはダウンレギュレーションされる、ならびに移植拒絶反応を正確に検出するための分子シグネチャーを提供する遺伝子の分析である。
加えて、本発明は、遺伝子が遺伝子クラスター−遺伝子のグループとして発現し、しばしば機能的に関連しており、特定の状況下にて実質的に関連した発現プロフィールを有する観察に部分的に基づく。したがって、本発明は発現が移植片拒絶反応と相関関係である遺伝子クラスターを提供する。本発明はさらに適当なマーカー遺伝子の発現を測定するための典型的な分子法および大規模方法を提供する。
本明細書に記載されている方法は慢性移植拒絶反応を検出するために特に有用である。より一般的に、対象(すなわち、移植体のレシピエント)は哺乳動物、例えば、ヒトである。移植された臓器は移植できるすべての臓器または組織、例えば、腎臓、心臓、肺、肝臓、膵臓、骨、骨髄、腸、神経、幹細胞(または幹細胞由来細胞)、組織成分および組織混合物を含むことができる。好ましい態様において、移植体は腎臓移植体である。
1つ以上の上記薬理ゲノム学アプローチから生成される情報は、対象における予防的または治療的処置のための適当な用量および処置レジメンを決定するために使用することができる。用量または薬剤選択に適用するとき、この知識は、副作用または治療の失敗を避けることができ、したがってマーカー分子またはマーカーモジュレーター、例えば、本明細書に記載されている典型的なスクリーニングアッセイの1つにより同定されるモジュレーターにて対象を処置するとき、治療的または予防的効率を高める。
本発明はさらに限定として解釈されるべきでない以下の実施例により説明される。本出願中で引用したすべての引用文献、特許および公開特許出願の内容は出典明示により本明細書に包含させる。
実施例:慢性拒絶反応に対する分子シグネチャー分析(MSA)
ここ数年で、高密度オリゴヌクレオチドまたはcDNAマイクロアレイデータが同種移植片拒絶反応および処置結果を分類および予測するために使用されてきた(Weintraub and Sarwal, 2006, Transplant International 19:775-881)。今回、新規データ分析方法は、経路レベルおよび臨床パラメーターとの密接な相関関係における生物学的情報を引き出し、したがってトランスクリプトーム変化による疾患病状を再定義することを可能にする。この試験において、我々は異なるタイプおよびグレードのARおよびCRを示す49人の患者のコホートからの腎臓診断生検材料における示差的に発現された遺伝子を同定するためのゲノミクスを開発した。マイクロアレイ(PAM)アルゴリズム(Tibshirani et al., 2002, PNAS 99: 6567-72)およびサポートベクターマシン(SVM)アルゴリズムの予測分析がBanff 97分子シグネチャーを同定するために選択された。
材料および方法
患者
診断腎臓同種移植生検材料(2003年2月から2004年9月)を受け、同意するHopital Tenon、Parisにおける全ての患者を試験に含んだ。加えて、Hopital Bicetre、ParisおよびHopital Pellegrin、Bordeauxから数名の患者を補充した。全体で、75個の診断腎臓核生検材料をRNAlater(Ambion, Austin, TX)において回収した。それぞれの生検材料の部分を組織学的染色および分析のために別々にサンプリングし、処理した。さらに、限局性悪性腫瘍から最大距離の罹患していない腎皮質を使用して、19個の対照サンプルを固形腎臓癌に罹患している患者の腎摘出術試料から得た。
患者の臨床記述および生検材料の組織病理学的評価(Banff 97分類)を回収した。CANにおいて、異なる疾患重症度スコアをcg、糸球体症、ci、間質性線維症、ct、尿細管萎縮、cv、血管萎縮/内膜肥厚およびah、動脈硝子性肥厚に関して測定した。表3はもっとも重要な臨床パラメーターならびに抽出されたRNAのストリンジェント品質管理およびマイクロアレイハイブリダイゼーション後にこの分析に最終的に含まれた全ての患者に対する全部のBanff 97分類を示す。
表3:組織学的分析による臨床適応に関してParis生検材料の5つのグループの人口統計および臨床特性
Figure 2011515068
略語:CAN=慢性同種移植腎症、AR=急性拒絶反応、NR=拒絶反応なし(安定ではないが)
*5人の患者は2つの一連の生検材料を有した;
#いくつかの値は未知
全ての患者を標準CNIトリプルレジメンに付した:68%シクロスポリンおよび32%タクロリムスをベースとし、主にミコフェノール酸およびコルチコステロイドと組み合わされた
人種:60%白人、18%黒人、22%他の種
特性発生のために使用された全てのサンプルが含まれる(個々のデータに関して補助的データ表S1、参照)
RNAの製造
全RNAを製造業者のプロトコール(Qiagen, Hilden, Germany)にしたがってRNeasyにより抽出した。RNAをNanoDrop ND−1000分光光度計(NanDrop Technologies, Wilmington, DE)により定量し、2100 Bioanalyzer(Agilent Technologies, Santa Clara, CA)により品質管理した。良質全RNAとなる生検材料のみをさらに分析した。50ngの全RNAを、Affymetrix 2サイクルcDNA増幅、蛍光標識および>47,000個の異なるヒト転写産物に関する〜54,625個のプローブセットを含むHuman Genome U133 Plus 2.0 アレイへのハイブリダイゼーションに付した(Affymetrix, Santa Clara, CA)。
マイクロアレイ分析
信頼できる転写産物検出を示すp値と共にそれぞれの遺伝子に対する単一の加重平均発現レベルを、Microarray Suite 5.0 ソフトウェア(MAS5, Affymetrix)を使用して得た。データをそれぞれのアレイから計った(標的強度150)。さらなる分析のために、細胞強度(CEL)ファイルをロバストマルチチップ分析(RMA)標準化に付した。他のチップと有意に異なる有意な人工物、バックグラウンドおよびノイズ測定のためのスキャン画像の見直し、存在および非存在の細胞の平均を用いて、それぞれのアレイにおけるいくつかの品質管理測定を評価した。さらに、以下の3つの品質管理測定の中から2つに該当しないアレイを試験から除外した:グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼに対する3’と5’比の強度(考慮される適当な比<4)、細胞の平均(>40%の存在する細胞が許容された)、倍率(>2または<0.5)を分析から除外した。
4つのサンプル(3つは腎摘出術を行ったもの、および1つはAR)を上記の品質管理フィルターに基づいて除外した。加えて、3つの腎摘出術を行ったサンプルを生物学的分離物としてこれらの広範囲の遺伝子発現プロフィールに基づいて考慮した。全体で、63個のデータセットを品質管理基準にマッチングするものとして得た(表1)。
生のGenechip(登録商標)データの分析をソフトウェアGenepring GX7.3(Agilent Technologies)を使用して実施した。異なるサンプルクラス中において示差的に発現された遺伝子(例えば、対照対AR)を、一元配置ANOVA(p<0.05)を用い、5%以下の偽検出率(FDR, Benjamini and Hochberg)の有無および2倍変化発現に基づくさらなるカットオフを使用して同定した。
クラス予測アルゴリズムに関して広いコンセンサスの非存在下において、我々は、我々の手中にある一貫したロバスト結果を示す(BioConductorまたはwww-stat.stanford.edu/~tibs/ PAM/ Rdist/から利用できるPAMバージョン1.28)マイクロアレイの予測分析(PAM)(Wieczorek et al., 2006, American Journal of Transplant 6:1285-96)からの結果を示すように決定した。10倍クロス確認を実施し、全誤分類率を記録した。異なる有意なレベルのカットオフを、最小の遺伝子数で最も小さいクロス確認誤分類率を見つけるために選択した。サポートベクターマシン(SVM)アルゴリズム(Genepring GX 7.3)を、また、クラス予測のために使用し、たいていの場合、PAMと比較して非常に類似の結果を示した。
慢性拒絶反応に対する分子シグネチャー分析
我々の目的は異なるグレードのCRおよび対照サンプル間を区別することができる分子シグネチャー/分類物を定義することであった。分子シグネチャーを生成するために、我々は全35個の生検材料、対照の腎摘出術を行った患者からの13個の生検材料、4個のCANグレードI、10個のCANグレードIIおよび8個のCANグレードIIIサンプルを分析した。PAMアルゴリズムは、33個の遺伝子セットを最小クロス確認エラー率0.12にて異なるグループを区別することができる、すなわち、CRの異なるグレードを88%の精度にて分類することを同定した。これらの33個の遺伝子の発現プロフィールに基づく、2つの教師なしクラスタリング方法を使用して、我々は患者を組織学的グレードに対応するグループに分類することができた。この遺伝子セット中、15個はグレードIからIIIに徐々にアップレギュレーションされるが、残りの18個の遺伝子はダウンレギュレーションされた(表1)。グレードIおよびIIIは互いにはっきりと分類されるが、グレードIIサンプルは中間的な不均一ステージを示し、これは進行した活動性の疾患状態に対応し得る。
分子分類物の能力を評価するために、我々は2つの独立したサンプルセットにおいてそれを試験した。第1に、我々は慢性拒絶反応の施設内非ヒト霊長類(NHP)モデルからの遺伝子発現データを分析する機会を得た。興味深いことに、ヒトCANにおいて定義された33個の遺伝子におけるPCA分析は、慢性拒絶の腎臓と正常サルの移植された腎臓をはっきりと区別する。PAM分析は2グループの生検材料を100%の精度にて予測した。第2の工程において、我々は第2のサンプリングからの3個の新規CANグレードIサンプルおよび最初の分析において含まれなかった7個のCANサンプル(急性拒絶反応のレベルも示す3個のグレードIIおよび4個のグレードIIIサンプル(AR+CRサンプル))を試験した。これら10個の新規サンプルを検証セットとして使用したが、最初のセットの35個の生検材料をトレーニングセットとして使用した。33個の遺伝子シグネチャーにおけるクラス予測SVMアルゴリズムは、グレードIとして分類された1つのグレードIIを除く全ての新規サンプルを正確に予測することができ、89%の全体の精度を示した。この2つの独立した結果は、この試験に含まれた生検材料が少ない数であるにかかわらず、CANに対して同定された分子シグネチャーの関連およびロバスト性を証明する。
この試験は、同種移植片拒絶反応のクラスを区別するために分子シグネチャー分析を使用する可能性を証明する。この試験は、分子シグネチャーがCANの段階的な重症度(I、II、III)にしたがって生検材料を区別することができることを初めて示した。この分析において同定された33プローブセット/遺伝子のリストは、ヒトにおいて90%の精度およびCAVのNHP試験において100%の精度で異なるCANグレードを正確に分類した。視覚的な組織病理学的診断の特有の曖昧さのため、より低い誤分類率を達成することは困難である。CANグレードIとII間の違いはわずかであり、個々の病理医による主観的なウエイトに左右されやすい。この傾向は遺伝子発現により反映される。例えば、グレードIIIサンプルは容易に分離されるが、いくつかのサンプルはグレードIまたはIIのいずれかとして分類される。この点において、グレードIおよびグレードIIサンプルは、しばしばPAMおよびSVMアルゴリズムにより示差的に分類される(データは示していない)。グローバルな遺伝子発現は、グレードII生検材料サンプルが、この患者群を不均一なものとしているCANの非常に活動的で進行性のステージにあることを示唆する。確かに、グレードIIサンプルがグレードIまたはIIIサンプルより遙かにではあるがARと同様のレベルにて免疫機能および炎症と関連する遺伝子の有意な豊富さを示すことに驚いている。しかしながら、CAN IIIはこれら2つの状態に対して低下している転写活性を有する後期の組織硬化症を示し得る。患者の25%が移植1年後にグレードIIのCANを示すことを考慮すると、早期示差的診断は、推定の不可逆性グレードIIIが明らかになる前に、CANを減少させるための介入に重要である。
CANの経路分析は、早期CANにおける生物学的プロセスが後期グレードとわずかに異なって機能するが、疾患進行と共に減少するエネルギーおよび代謝経路遺伝子においては有意な増加であることを示した。この現象は糖尿病性腎症において知られている代償性腎肥大により説明され得る。ここで、腎臓の損傷は尿細管機能の増強となるメサンギウムおよび実質細胞の肥大および増殖により早期に補う。早期CAN中、この代償性メカニズムが起こり、転写レベルにおいて反映されるという仮説を立てさせる。ARとグレードIICANを比較すると、大多数の同定された遺伝子が進行したヒトCAN IIIにおいて有意に変化した。ここで、それらは慢性炎症性状態下の筋線維芽細胞の間質性線維症進行および発症/活性化を示す、TGFおよびWntシグナル伝達経路と関連する。
当業者が、せいぜい通常の実験を使用して、本明細書に記載されている本発明の特定の態様に対する多数の均等物を認識するか、または確かめることができる。このような均等物は添付の特許請求の範囲により包含されることを意図する。
上記個々のセクションにおいて言及されている本発明の種々の特徴および態様は、適当なとき、変更すべきところは変更して他のセクションに適用する。結果として、1つのセクションに記載されている特徴は、適当なとき、他のセクションに記載されている特徴と組み合わされ得る。
明細書に記載されている全ての引用文献は出典明示により本明細書に包含される。この明細書において記載および請求されている全ての方法は、本記載を考慮すると過度の実験なしに作成および実行することができる。本発明の方法は好ましい態様に関して記載されているが、本発明の概念、精神および範囲から逸脱することなく、変化が本明細書に記載されている方法および方法の工程または方法の工程の順序に適用され得ることは当業者に明らかである。
表4−発現分析
Figure 2011515068

Claims (6)

  1. 対象における移植された腎臓の慢性拒絶反応の発症を評価するための方法であって:
    (a)移植後の対象からのサンプルにおける表1において特定されている遺伝子からなる群から選択される多数の遺伝子の組合せの発現レベルを測定し;
    (b)移植後のサンプルにおける該多数の遺伝子の遺伝子発現レベルと対照サンプルにおける同じ遺伝子の遺伝子発現の規模を比較して、示差的発現プロフィールを生成し;そして
    (c)示差的発現プロフィールと1つ以上の慢性/硬化性同種移植腎症のステージを示す1つ以上の参照示差的発現プロフィールを比較する、
    工程を含み、それにより対象における移植された臓器の拒絶反応の発症を評価する方法。
  2. 移植された腎臓の慢性拒絶反応に罹患している対象における慢性/硬化性同種移植腎症のステージを分類する方法であって:
    (a)移植後の対象からのサンプルにおける表1において特定されている遺伝子からなる群から選択される多数の遺伝子の組合せの発現レベルを測定し;
    (c)移植後のサンプルにおける該多数の遺伝子の遺伝子発現レベルと対照サンプルにおける同じ遺伝子の遺伝子発現の規模を比較して、示差的発現プロフィールを生成し;そして
    (d)示差的発現プロフィールと1つ以上の慢性/硬化性同種移植腎症のステージを示す1つ以上の参照示差的発現プロフィールを比較する、
    工程を含み、それにより対象における慢性/硬化性同種移植腎症のステージを分類する方法。
  3. 選択される多数の遺伝子がステージIIIのCANと早期ステージを区別する発現プロフィールを有する、請求項2に記載の方法。
  4. 該多数の遺伝子がSLC1A3、CD163、RDH12およびFLJ32569を含む、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
  5. 慢性/硬化性同種移植腎症に対するバイオマーカーとして表1における異なる遺伝子に特異的にハイブリダイズする多数の核酸プローブの使用。
  6. 多数の核酸プローブがSLC1A3、CD163、RDH12およびFLJ32569遺伝子の発現を検出することができる、請求項5に記載の使用。
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