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JP2011513635A - 発電所におけるガスタービンの制御方法およびその方法を実施する発電所 - Google Patents

発電所におけるガスタービンの制御方法およびその方法を実施する発電所 Download PDF

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Abstract

発電所におけるガスタービンの運転方法であって、発電所の運転を、効率、稼動期間内消費量、排出物質および送電網への電力準備に関して最適化するために、運転コンセプトの限界となる制限値を、運転中に、発電所のオペレータが適応させる方法。特に、温度制限値およびコンプレッサの案内翼の位置の制限値が、最適化の目標に応じて変更される。この方法と共に、この方法を実施するガスタービン発電所も本発明の対象である。
【選択図】 図2

Description

本発明は、発電所の技術分野に関連し、出力、効率、排出物質および/または稼動期間内消費量に関わる発電所におけるガスタービンの最適化運転方法に関する。この方法を実施する発電所も本発明の範囲内に含まれる。
運転者またはオペレータに対してガスタービン発電所の安全確実な運転を可能にするガスタービンの制御方法は、一般的に、運転コンセプトまたは運用コンセプトと呼称される。本発明は、負荷運転の最適化、すなわち、ガスタービンが送電網に接続され、それに電力を供給している運転を制御する運転コンセプトの部分の最適化に関連する。運転コンセプトにおいては、ガスタービンを安全確実に運転するために、ガスタービンの種々のパラメータをどのように制御しなければならないかが確定される。この運転コンセプトは制御器によって実行される。ガスタービンの出力は、例えば、少なくとも1つのタービン入口温度、コンプレッサ流入流量、あるいはこの両パラメータを変更することによって調整できる。コンプレッサ流入流量を調整するために、例えば、コンプレッサの流入部の幾何学的形状を、調節可能な入口案内翼によって変えることができる。
タービン入口温度の高さは、ガスタービンの稼動期間内消費量または検査間隔の長さを本質的に決定し、さらに、ガスタービンの排気ガス排出物質を本質的に決定する。
ガスタービンの出力は、流入流量が一定の場合は、タービン入口温度の高さによって本質的に決定される。ガスタービン出口温度は、タービン入口温度の高さに比例し、ガスタービンの圧力比に反比例する。
ガスタービン−蒸気タービン複合発電所、いわゆる複合発電所の効率は、ガスタービン出口温度の高さおよびガスタービンの効率に比例する。このことから、複合発電所の全効率および出力はガスタービンの入口温度に比例することが結論づけられる。
ガスタービンの効率は、理論ブレイトンサイクルにおいては、タービン入口温度および構成機器の効率が一定の場合、圧力比に比例する。実際の機械においては、圧力比は、タービン入口温度一定の場合、流量に比例する。しかし、実際には、構成機器の効率は流量および温度の関数として変化する。特に、コンプレッサの効率は、入口案内翼列の位置によって制御される流量に応じて変化する。さらに、例えば、流入および流出の損失あるいはディフューザーの損失が容積流量または流量の関数である。同等のことが、ボイラと、ボイラを通って流れる高温ガスに対するボイラの圧力損失と、後続の水−蒸気サイクルにも当てはまる。構成機器を流量に基づいて設計することは、結果的に、実際のガスタービンおよび実際のガスタービン複合発電所の効率が、圧力または流量に比例して増大するのではなく、最大値を有するという状況をもたらす。流量、ひいては、圧力比をこの最大値を超えて高めると、効率が低下する。発電所の出力を、効率最大点を含む運転点を超えて高めることは、通常、可能である。
現代のガスタービンは、高負荷領域において全負荷(またはベース負荷)から出発して負荷低減する場合、例えば、まず最初に、リミッタで制限されるタービン入口温度(または高温ガス温度)を低下させるように制御される。それに対応して、リミッタも全負荷値から部分負荷値に下げられる。続いて、吸気流量を、コンプレッサの少なくとも1つの調節可能な案内翼列VIGVの傾斜角度を制御することによって低減する。この場合、案内翼列VIGVの傾斜角度は、それ自体制限値によって制限されている。吸気流量を低減する間は、タービン入口温度を、それぞれに適用されるべき制限値未満に制御するために、燃料の流量が低減される。タービン出口温度TATは、タービン入口温度TITが一定の場合、減少する流量と共に低下する圧力比に反比例して上昇するが、このタービン出口温度TATが当該TAT制限値に達するとすぐに、TATをその制限値未満に制御するために燃料流量が低減される。続いて、TITがその制限値未満に降下する。現代のガスタービン用の順次燃焼方式による運転コンセプトの例が特許文献1に開示されている。
特許文献1に記載されるコンセプトに従ってガスタービンを運転するためには、TITの測定または近似的な測定が必要である。タービン入口温度としては種々の温度を使用できる。非特許文献1に従って、高温ガスとすべての冷却空気流量との理論的な混合温度によって処理することが可能である。しかし、制御においては、例えば、タービンに流入する前の高温ガス温度、または、第1タービン案内翼後の混合温度のいわゆる「着火温度」によっても処理可能である。
TITの測定用の事例が特許文献2に開示されている。広範囲で、おおむね単純な、しかし正確でない接近法が当業者には知られている。
従来の慣例では、ガスタービン入口温度および/またはコンプレッサ入口案内翼の位置を柔軟に適応させるという方式による発電原価の最小化は、その新たな起動時に、特定の最大または最小負荷値に達するための部分負荷および全負荷のために対応する制限値が決定される起動時新たな起動(再起動)にのみ可能である。例えば、燃料費が高騰した際に、稼動期間の短縮、ひいては、保守作業の間隔の短縮を甘受してでも、温度制限値を高めることによって効率を実現したい場合には、そうするために、ガスタービンの起動時新たな起動(再起動)が必要になるであろう。
欧州特許出願公開第0718470号明細書 欧州特許出願公開第1840354号明細書
ISO2314/1989
本発明の課題は、ガスタービンに基づく発電所を制御するための前記方法の運転コンセプトであって、起動時新たな起動(再起動)なしでも、変化する最適化目標への方法の柔軟な適応を可能にする運転コンセプトを創出することにある。
この課題の本発明による解決策は、例えば、タービン入口温度の制限値および/または少なくとも1つのコンプレッサ入口案内翼列の角度の制限値のような、ガスタービンの運転コンセプトを決定する種々の制限値を、発電所のオペレータが、運転中に、必要なものに適応させることができるということによって実現される。
従来の慣例では、タービン入口温度TIT、タービン出口温度TATおよび少なくとも1つのコンプレッサ入口案内翼列VIGVの角度のような主たる制御パラメータは、固定された制限値の範囲内で制御される。それを超過すると急激に発電所の重大な損傷に及ぶ可能性があるような過大な温度または容積流量に対して保護するために、これらのパラメータは、複数回に重複する測定によって保護されている。この場合、制御の制限値に対する所定の安全距離で、ガスタービンの急速な遮断または停止のような保護操作が制御において実行される。
TIT、TATまたはVIGVのような保護に関わる制限値を適応させる場合には、保護操作が発動される閾値を、制限値の変更に対応して一緒に適応させるか、あるいは、その閾値が、制限値の可能な変更の範囲内で確実な保護を保証するように明確に画定されることが確保されねばならない。
本発明による方法は、発電所の経営者に、発電原価を、常に、必要に応じて最小化する可能性を与える。
発電原価は、本質的に、発電所の運転によって生じるコストと販売収益とに依存している。コストはまず第一に発電所が支払うべき燃料コストであるが、コストの高さは、発電所の正味の効率、発電所の保守点検整備コスト、人件費、場合によっては汚染税、並びに資本費、認可コストおよび運転許可料金によっても決定される。発電所は、販売収益を、プロセス蒸気および熱によるいわゆる「コージェネレーション」や電力網の予備のための電力(運転予備力)を販売することによって獲得する。
本発明による柔軟なガスタービン運転コンセプトは、発電原価の最小化に関して運転の最適化を可能にする。この場合、運転中に、出力の発生が一定または変化している時に、発電所の運転コンセプトを決定する種々の制限値によって変更可能である。特に、少なくとも1つのTIT用の全負荷制限値および部分負荷制限値と、少なくとも1つのTAT用の全負荷制限値および部分負荷制限値と、VIGVの位置の制限値とが変更される。制限値のこの変更は、例えば、発電所のオペレータが、発電所またはガスタービンの制御室において種々の運転モードを選択することによって実現できる。操作者に優しい制御においては、オペレータが個々の制限値を適応させる必要はなく、制御室において種々の運転モードを選択できる。そうすると、制御器が、対応する1組の制限値によって自動的に作動する。これは、例えば、効率最適化運転、最大出力運転、NOx排出量低減運転、部分負荷CO排出量低減運転、保守作業間隔延長運転、あるいは、最適化目標の組合せとすることができる。これらの運転モードを実現するための方法を、以下の実施態様の例に基づいて説明する。
発電所のオペレータは、適切なマン−マシンインタフェース、通常、いわゆるオペレータステーションあるいは発電所の制御コンピュータまたは制御器における入力を介して運転する。入力は、発電所の連合体または送電網運用者の連合体の制御室を介しても同様に可能である。最適化の目標は、また、外部条件に応じて決定して、自動的に適応させることが可能である。例えば、最適化の目標を季節に応じて定めることができる。例えば、発電所を、夏季には、ガスタービンの場合に典型的な高い大気温度における出力減退をできる限り補償するために出力最適化して運用し、冬季には、効率最適化して運用することが有利であり得る。オペレータ、また運用者、管理者あるいは指導者という用語は、ここでは、発電所の運転を、直接的または間接的に操作あるいは監視する人物と理解することができる。
言及するすべての利点は、それぞれに提示する組合せにおいて使用可能であるだけでなく、他の組合せにおいても、さらに別のパラメータの制御との組合せにおいても、あるいは単独でも、本発明の範囲から離脱することなく使用可能である。
本方法と共に、本方法を実施するガスタービンも本発明の対象である。選択された方法または方法の組合せに応じて、ガスタービンの設計を、本方法の実施可能性が保証されるように適応させねばならない。
冷却空気圧力比は、ガスタービンの場合、コンプレッサ入口条件および運転状態によって変化する。さらに、それは、VIGVの位置によっても変化する。この場合、コンプレッサ末端部の前でコンプレッサから取り出された冷却空気の冷却空気圧力比は、通常、VIGVの閉操作と共に低下する。安全確実な運転を保証するために、この圧力比は、例えば、次のように調整される。すなわち、その圧力比によって、対応するTITによる全負荷運転に対して、全大気運転領域における十分な冷却が保証されるように調整される。さらに、部分負荷に対して、VIGVの閉操作によって部分負荷の場合には低下する冷却空気圧力比が、部分負荷TITに応じて変化する十分な冷却をももたらすことが保証されねばならない。
通常、ガスタービンは、標準の運転コンセプトに対応する冷却空気圧力比によって設計される。設計においては、仕上げ公差および他の不確実性を補正できるようにするため、例えば、圧力の変動幅が想定される。その場合、起動時の間に、例えば、絞りによって正しい圧力比が調整される。
従来のガスタービンの場合、この設計および調整は、標準の運転コンセプトについて行われる。本発明によるガスタービンは、少なくとも、それぞれの発電所において計画される制限値の変更と、それから生じる運転コンセプトとに対して設計されるということを特徴とする。さらに、圧力比が、起動時において、制限値の計画された変更とそれから生じる運転コンセプトとに対応して、例えば絞りによって調整される。
別の実施形態によれば、発電所のシステムが、運転コンセプトに対応して延長された保守作業間隔を妨げないように構築される。
出力最適化制限値の選択を可能にするために、電気システム、すなわち発電機および変圧器も、特定の制限値の範囲内で到達可能な最大発電所出力を送電網に供給し得るように設計される。これに対応して、燃料システムも、最大可能燃料流量に対して設計しなければならない。
さらに、制御器および/またはそれに付属する記憶ユニットにおいては、制限値の異なるいくつかの組を、制限値間で切り換えることができるように、想定される運転コンセプトに対応して保存する。
複合発電所の場合は、さらに、ボイラを含む水−蒸気サイクルが、TATと、発電所に対して想定されるガスタービンの運転コンセプトの種々の制限値の組合せから生じる排気ガスの流量とのすべての可能な変動に対して設計される。
本発明のさらなる利点、特徴および詳細は、図面に基づく、好ましい実施態様の例に関する以下の説明から明らかになる。
ガスタービンを備えた発電所の簡略化されたブロック回路図を示す。 ガスタービンの種々のVIGV全負荷制限値と、それに対応するタービン入口温度の、上部負荷領域における負荷に対する推移とを示す。 標準設計条件における全負荷効率に関する、正規化された全負荷出力PBLの関数としての全負荷における相対効率ηrelであって、出力PBLがVIGV全負荷制限値の変更によって調整される場合の相対効率ηrelを示す。 標準設計および稼動期間最適化運転コンセプトのためのガスタービンのTIT全負荷およびTIT部分負荷制限値と、それに対応するVIGV位置およびTITの、上部負荷領域における負荷に対する推移とを示す。 稼動期間最適化運転における制限値と比較したCO排出量最適化運転のためのTITおよびTAT部分負荷制限値と、それに対応するVIGV位置およびTITの、上部負荷領域における負荷に対する推移とを示す。
図1に示された発電所においては、中心の構成機器であるガスタービン10が表されており、このガスタービン10は、コンプレッサ12と、燃焼室20と、タービン14とを含む。コンプレッサ12およびタービン14は、共通の軸16上に配置されており、この共通軸16が発電機18を駆動する。コンプレッサ12は、空気流入ライン28およびフィルター26を介して周囲環境から空気を吸い込み、それを圧縮して、その圧縮された空気はプレナムを経由して燃焼室20に送り込まれる。空気の流量は、少なくとも1つの調節可能な案内翼列24によって制御できる。圧縮された空気の一部分は、コンプレッサ末端部において、稼動期間の点で重要な高温ガス部分を冷却するための冷却空気として分岐される。この高圧の冷却空気は、燃焼室冷却空気21として、かつ高圧のタービン冷却空気29として用いられる。設計によっては、この高圧冷却空気は、冷却空気冷却器によって冷却空気温度に再冷却される(図示せず)。圧縮空気の第2の部分は、コンプレッサにおいて、稼動期間の点で重要な高温ガス部分を冷却するための冷却空気23として分岐される。良好な冷却を確実にするために、この冷却空気を、冷却空気冷却器25によって冷却空気温度Tcoolに冷却して、再冷却された冷却空気27として、稼動期間の点で重要な高温ガス部分を冷却するために使用できる。残りの空気流量は、燃焼室において、燃料供給ライン22から供給される燃料(液体または気体状)を燃焼するために用いられる。生成された高温ガスは、タービン14内部で出力発生しながら膨張し、続いて、例えば、蒸気タービン用のプロセス蒸気または蒸気を発生する後続の排熱蒸気発生装置において使用できる。冷却空気温度Tcoolの測定および冷却空気冷却器25の制御は、ガスタービン制御器30の中に組み込むことができるが図示されていない。
ガスタービンを制御するために制御器30が設けられる。制御器30は、図においては若干の信号ラインを含む簡単なブロックとして表されている。しかし、実際には、それは非常に複雑であり、種々の装置部分のための多くの入力/出力と共に構成することができる。信号ライン46は、ガスタービン制御器30を、ガスタービン、ボイラ、および水−蒸気サイクルを含む発電所のユニットを制御するユニット制御器と接続する。
制御器30に付属するか、あるいは制御器30に組み込まれるデータ記憶装置の中には、部分負荷および全負荷用のVIGV、TIT、TATおよび冷却空気温度Tcoolを制限する制限値の異なるいくつかの組が保存されている。
ガスタービン10を制御するために、基本的なプロセス量、具体的に特に、コンプレッサ12の少なくとも1つの調節可能な案内翼24の傾斜角度VIGVと、タービン14の入口におけるタービン入口温度TITとを利用する。VIGVを制御するために、少なくとも1つの調節可能な案内翼列24と制御器30の入力部との間に、データライン45が設けられる。このライン45を介して、案内翼の設定位置がVIGVの位置調節機構に送られ、同様に、測定されたVIGVの実際位置が制御器に伝送される。タービン入口温度TITは、理想的には、タービン入口で測定して、データライン42を介して制御器に伝達できる。しかし、実際には、これは、現代のガスタービンではTITが高いので不可能であり、従って、タービン14の圧力比およびTATからTITの近似値を得る。TATは、センサー34によって測定され、データライン44を介して制御器に伝送される。タービンの圧力比を決定するためにタービン14の前後の圧力を測定できる。しかし、実際には、圧力比を決定するために、多くの場合簡略化して、吸い込み圧力31およびコンプレッサ出口圧力33の測定によって近似値が得られる。その吸い込み圧力31およびコンプレッサ出口圧力33の測定値は、データライン41および43を介して制御器30に伝達される。上記の測定値からTITを決定すること、並びに、例えば、空気の相対湿度またはVIGVの位置のような他のパラメータを顧慮して修正することは、当業者には既知である。
図2においては、ガスタービンの種々のVIGV全負荷制限値と、TIT全負荷制限値1および部分負荷制限値5と、それに対応するタービン入口温度TITおよびVIGVの、上部負荷領域における相対負荷Prelに対する推移とを示す。これは、標準設計の運転については実線で、効率最適化運転については点線で、出力最適化運転については一点破線で模式的に表されている。
運転コンセプトに対する制限値の影響を、全負荷から負荷低減する場合について説明する。標準設計の運転(実線)の場合は、VIGVは標準設計の運転用のVIGV全負荷制限値2にあり、TITは標準設計の運転用の全負荷制限値1にあるが、この標準設計の運転について、まず最初に、TITを、燃料の流量を制御することによって、高い部分負荷において標準設計の運転用のTIT部分負荷制限値5に達するまで低下させる。この負荷低減の間、VIGVは、標準設計の運転用のVIGV全負荷制限値2に一定に開いたままである。標準設計の運転用のTIT部分負荷制限値5に達するとすぐに、TITは一定に保持され、負荷はVIGVの位置によって制御される。この場合、TITは、燃料流量によって、標準設計の運転用のTIT部分負荷制限値5に一定に制御される。
最大流量を低減するために、VIGV全負荷制限値を効率最適化運転用の制限値4に下げると、上部負荷領域における運転コンセプト(運転状態)が移動する(点線)。同じTIT全負荷制限値1において全負荷に達するが、流量が減少しているので全負荷出力は小さくなる。図示されていないTATは、流量が低減しているので高くなる。この説明例においては、ガスタービンの構成機器の効率、ひいては、ガスタービンの効率と、後続の水−蒸気サイクルの効率とが共に、流量の低減または排気ガス温度の上昇によって改善され、その結果、発電所の全効率が改善される。標準設計の運転コンセプトによる単純な負荷低減により、この効率の改善は実現され得ないであろう。というのも、全負荷から出発してまず最初に効率の低下を必然的に伴うTITが下げられるからである。
最大流量を増大させるために、VIGV全負荷制限値を出力最適化運転用の制限値3に上昇させると、上部負荷領域における運転コンセプトが移動する(一点破線)。同じTIT全負荷制限値1において全負荷に達するが、より開かれたVIGVにおいて流量が増大しているので全負荷出力は増大する。
図3においては、全負荷における相対効率ηrelが、標準設計条件における全負荷効率に関する、正規化された全負荷出力PBLの関数として表されている。全負荷出力PBLはVIGV全負荷制限値の変更によって調整される。
図示の例において、VIGV全負荷制限値を標準設計の制限値2に比べて低減すると、図2に関して説明したように、個々の構成機器の効率が流量の減少によってまず最初に改善されるので、最初に効率が上昇する。従って、効率最適化運転用のVIGV全負荷制限値4によって、標準設計に比べて改善された効率を実現することが可能である。
VIGV全負荷制限値をさらに低減すると、流量と共に、圧力比、ひいては、理論プロセスの効率が低下する。さらに、主構成機器がその設計点から相かなり離れて運転されるので、その構成機器の効率が上昇するどころではなく、再度降下する。
図示の例においては、VIGV全負荷制限値を標準設計の制限値2に比べて高めると、効率低下を受け入れるという条件の下で出力を高めることができる。VIGV全負荷制限値を増大させればさせるほど、効率が急激に低下するので、VIGV全負荷制限値3を高める可能性は制限される。さらに、VIGVは、コンプレッサのサージ限界またはサージ限界に対して必要な安全距離のために、あるいは他の構成機器の限界のために、任意に開くことはできない。サージ限界に対する安全距離は、仕上げ公差、可能性のあるコンプレッサの汚染を考慮して、かつ、低周波数である送電網の要求を考慮して決定されるべきである。
提案された可変VIGV全負荷制限値によって、ガスタービンを、標準設計の制限値2の回りの領域内で運転することが可能になる。この運転可能領域は、コンプレッサのサージ限界に対する安全距離または他の構成機器の限界と、効率の最適値とによって制限される。
図4においては、稼動期間最適化運転コンセプトの場合の、上部負荷領域におけるTITおよびVIGVの制限値および推移(実線)が表されている。参照用として、さらに、上部負荷領域における標準設計の運転コンセプトの制限値と、対応するTITおよびVIGVの負荷に対する推移とが、点線として表されている。
稼動期間最適化運転コンセプトを実現するために、不変のVIGV全負荷制限値2において、低減されたTIT全負荷制限値6と低減されたTIT部分負荷制限値7とが導入される。TITが低減されるために、等しい全負荷流量において、より低い全負荷出力が実現される。全負荷から出発してTIT部分負荷制限値7に達する角の点は、制限値の低減に対応して、同様に、より低い負荷に移動している。VIGVは、同様に対応して、より低い負荷において閉じ始める。低部分負荷における稼動期間を対応して長くするために、さらに、TAT制限値を低下させることが必要になる可能性がある。
TITおよびTATの制限値は、稼動期間を延長するために任意に低下させることはできない。制限値を低減し過ぎると、燃焼が不安定になり、失火脈動(Loeschpulsationen)および/または排出物質の増大がもたらされる。ガスタービンと共に、ボイラを含む後続の水−蒸気サイクルの制限値も考慮するべきである。TATが設計点から過度に逸脱した結果になると、水−蒸気サイクルの効率が大きく低下し、稼動期間の延長にも拘らず、運転の経済性が反って損なわれる。
稼動期間の延長と同様に、少なくともTIT全負荷制限値1の低減によって、NOx排出量の低減を実現できる。また別に、稼動期間の低下時に制限値を高めることによって、出力の増大を達成できる。
図5には、CO最適化運転コンセプトの場合のTIT、TATおよびVIGVの制限値および推移(実線)が表されている。参照用として、さらに、標準設計の運転コンセプトの制限値と、対応するTITおよびVIGVの負荷に対する推移とが、点線として表されている。
燃焼室および燃焼器の設計によっては、全負荷温度における低NOx排出用として最適化される予混合燃焼の場合に、低減されたTITによる部分負荷運転において、CO排出量が高くなる可能性がある。これは、通常、標準設計の運転コンセプトの場合には問題にならない。しかし、例えば、部分負荷運転における非常に低いCO排出量のような特殊な要求に対しては、部分負荷TITを、標準より高いレベルに保持することが有利であり得る。これは、高い部分負荷の場合に、CO最適化運転用の、標準より高いTIT部分負荷制限値8を用いることによって実現される。
全負荷から負荷低減する場合、CO最適化運転用の高められたTIT部分負荷制限値8に、標準の運転コンセプトの場合よりも高い負荷において到達する。これは、吸気流量がVIGVの閉操作によってすでに高い負荷において低減されるという結果に繋がっている。
VIGVの閉操作によって流量が減少すると共に、一定の部分負荷TITにおいて、排気ガス温度TATは上昇する。この温度TATは、標準の運転コンセプトの場合は、TAT部分負荷制限値9によって制限される。TATが標準設計の運転用のTAT部分負荷制限値9に達するとすぐに、TITでなくTATを、燃料流量を介して制御する。
図示の例においては、TIT部分負荷制限値のみが増大されるのではなく、TAT部分負荷制限値も、標準のTAT部分負荷制限値9からCO最適化運転用のTAT部分負荷制限値11に増大される。この増大がなければ、低い部分負荷領域において標準の運転コンセプトと同じTITで運転され、それに対応して、同等の排出物質を予期しなければならないであろう。設計および要求に応じて、CO最適化運転コンセプト用の2つの制限値のTIT部分負荷またはTAT部分負荷制限値のいずれかのみを増大させることも意味がある。
冷却空気冷却器を備えたガスタービンの場合は、冷却空気温度Tcoolが制限され、少なくとも1つの冷却空気冷却器の冷却性能を、その冷却空気温度Tcoolの制限値を超えることがないように設計する。冷却空気温度Tcoolの変化は、一方では、重要な高温ガス部分の稼動期間に影響を及ぼす可能性があり、他方では、それは、冷却器の全発電所内への組み込みおよび冷却器において除去される熱の利用に応じて、発電所の全効率に影響を及ぼす可能性がある。この場合、発電所は、ほとんどの場合、冷却空気温度Tcoolを標準設計の制限値未満に低下させると効率の損失がもたらされるように最適化される。しかし、効率の損失を受け入れると、例えば、TITを高めることによる稼動期間の不利益を低減することができる。従って、冷却空気温度Tcoolの制限値は、運転コンセプトを柔軟化しかつ最適化するためのさらなる別のパラメータである。
種々の運転コンセプトのTIT、TAT、冷却空気温度Tcool用の制限値または他の制限値は一定値である必要はない。それらは、必要に応じて、負荷、VIGVまたは他のパラメータの関数として調整可能である。さらに、運転コンセプトは、以上に示した例に限定されるわけではない。運転コンセプトは、種々の形に組合せること、または拡大することが可能である。例えば、低減されたTIT全負荷制限値6および低減されたTIT部分負荷制限値7を含む稼動期間最適化運転コンセプトを、出力最適化運転3または効率最適化運転4用の異なるVIGV制限値と組合せることができる。
制御が例えばVIGV制御からTIT制御に切り換えられる図2、図4および図5における角の点は、1つの相対負荷値に固定して結び付けられているわけではない。それは、周囲条件、特にコンプレッサ入口温度および圧力並びにガスタービンの状態に応じて変化することができる。例えば、どの発電所も老化して出力の低下をもたらすが、その結果、それ以外には同じ境界条件においても、角の点が低負荷の方向に動くことがあり得る。
稼動期間を延長するためのTITおよび/またはTAT制限値の低減と並んで、稼動期間内消費量を受け入れた上で出力増大を実現するように、制限値を高める可能性を追求することもしばしば有用である。
本発明の1つの実施態様においては、種々の稼動期間の因子に属する制限値のいくつかの組を選択できる。これは、運転者またはオペレータが、発電所を、例えば、標準の稼動期間で運転すること、30%、50%または100%だけ延長した稼動期間で運転すること、あるいは、逆に30%または50%だけ短縮した稼動期間で運転することを可能にする。
本発明のさらに別の実施態様においては、運転者またはオペレータが、所望の範囲内において所望の稼動期間を定め、TITおよび/またはTAT制限値を、この目標稼動期間に応じて適応させることができる。
柔軟な運転方式は、効率および稼動期間について最適化された運転と、相応に重要な電力容量の準備とを可能にする。発電所が電力を供給する送電網に応じて、発電所は、正規運転において、例えば、その全負荷出力の約90%においてのみ運転される。これは、発電所が、通常、設計に比べて低い効率を伴う部分負荷において運転される結果をもたらす。本発明による運転コンセプトの柔軟な適応方式は、このような発電所が、部分負荷運転による効率の損失を回避するだけでなく、効率最適化運転コンセプトによって、効率の改善をも実現することを可能にする。必要な電力容量は、理想的には、TITおよびVIGVの制限値を適応させることによって示すことができる。
さらに、電力供給システムに応じて、いわゆる「運転予備力」を販売できる。「運転予備力」と呼称されるのは、通常、10分間以内に送電網に追加的に供給でき、かつ、少なくとも2時間連続的に供給し得る容量である。このような送電網においては、発電所を、効率最適化運転コンセプトまたは稼動期間最適化運転コンセプトによって運転し、制限値を適応させることによって実現し得る可能追加出力を「運転予備力」として販売することが考慮の対象になる。
本発明は、以上説明した運転コンセプトおよびその組合せに限定されるものではない。本発明は、同様に、他の運転コンセプト、例えば、順次燃焼方式を備えたガスタービン用の運転コンセプト、あるいは、TITの部分負荷低減のない運転コンセプト、あるいは、種々の制限値の付加的な段階化を想定するコンセプトに転用可能である。
1 標準設計運転用のTIT全負荷制限値
2 標準設計運転用のVIGV全負荷制限値
3 出力最適化運転用のVIGV全負荷制限値
4 効率最適化運転用のVIGV全負荷制限値
5 標準設計運転用のTIT部分負荷制限値
6 稼動期間最適化運転用のTIT全負荷制限値
7 稼動期間最適化運転用のTIT部分負荷制限値
8 CO最適化運転用のTIT部分負荷制限値
9 標準設計運転用のTAT部分負荷制限値
10 ガスタービン
11 CO最適化運転用のTAT部分負荷制限値
12 コンプレッサ
14 タービン
16 軸
18 発電機
20 燃焼室
21 燃焼室冷却空気
22 燃料供給ライン
23 冷却空気
24 調節可能な案内翼列
25 冷却空気冷却器
26 フィルター
27 再冷却された冷却空気
28 空気流入ライン
29 高圧のタービン冷却空気
30 制御器
31 センサー(コンプレッサ入口条件:温度、圧力および空気湿度)
32 センサー(タービン入口温度TIT)
33 センサー(コンプレッサ出口圧力)
34 センサー(タービン出口温度TAT)
41 信号ライン(コンプレッサ入口条件)
42 信号ライン(タービン入口温度TIT)
43 信号ライン(コンプレッサ末端部圧力)
44 信号ライン(タービン出口温度TAT)
45 信号ライン(VIGV設定値および実際値)
46 信号ライン/ユニット制御器に対する信号交換
TIT タービン入口温度
TAT タービン出口温度
cool 冷却空気温度
VIGV 調節可能な案内翼列の傾斜角度
rel 標準の場合の全負荷に関する相対負荷
BL 正規化された全負荷出力
ηrel 全負荷における相対効率
BL 全負荷
PL 部分負荷

Claims (16)

  1. 少なくとも1つの調節可能な案内翼列(24)を備えた少なくとも1つのコンプレッサ(12)と、少なくとも1つの燃焼室(20)と、少なくとも1つのタービン(14)とを備える発電所のガスタービン(10)の制御方法において、
    運転コンセプトの少なくとも1つの制限値を、運転中に、出力、効率、排出物質および/または稼動期間内消費量に関する発電所の最適化目標に適応するように発電所のオペレータによって変更されることを特徴とする方法。
  2. 運転中に変更される前記少なくとも1つの制限値が、ガスタービンの保護に関わる制限値であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
  3. コンプレッサ(12)の少なくとも1つの調節可能な案内翼列(24)の傾斜角度(VIGV)の少なくとも1つの全負荷制限値が変更されることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
  4. コンプレッサ(12)の少なくとも1つの調節可能な案内翼列(24)の傾斜角度(VIGV)の前記全負荷制限値が、安全距離だけ低減されたサージ限界によって画定される最大制限値と、最大全負荷効率が実現される最小制限値との間において変更されることを特徴とする請求項3に記載の方法。
  5. 少なくとも1つのタービン入口温度(TIT)の全負荷制限値、および/または、少なくとも1つのタービン入口温度(TIT)の部分負荷制限値が変更されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
  6. 少なくとも1つのタービン出口温度(TAT)の部分負荷制限値が変更されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
  7. 稼動期間を延長するために、少なくとも1つのタービン入口温度(TIT)の全負荷制限値、および/または、タービン入口温度(TIT)の部分負荷制限値、および/または、少なくとも1つのタービン出口温度(TAT)の部分負荷制限値が、標準設計の制限値に対して低減されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
  8. CO排出量を低減するために、少なくとも1つのタービン入口温度(TIT)の部分負荷制限値、および/または、少なくとも1つのタービン出口温度(TAT)の部分負荷制限値が、標準設計の制限値に対して上昇されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
  9. 再冷却された冷却空気の流量(27)の少なくとも1つの冷却空気温度制限値が変更されることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
  10. 送電網に対して電力容量を準備するために少なくとも1つの制限値が変更されることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
  11. 少なくとも1つの調節可能な案内翼列(24)を備えた少なくとも1つのコンプレッサ(12)と、少なくとも1つの燃焼室(20)と、少なくとも1つのタービン(14)と、制御器(30)とを備える少なくとも1つのガスタービン(10)を有する、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法を実施する発電所において、
    さまざまに調節可能な制限値の範囲内で運転するように設計され、かつ、最適化目標を選択するためのマン−マシンインタフェースを備えることを特徴とする発電所。
  12. コンプレッサ(12)の少なくとも1つの調節可能な案内翼列(24)の傾斜角度(VIGV)の全運転領域に対して、タービン入口温度(TIT)に依存する最低の冷却空気供給圧力比が選択されることを特徴とする請求項11に記載の発電所。
  13. 前記少なくとも1つのガスタービン(10)に少なくとも1つのボイラが後接続されること、および、この少なくとも1つのボイラは、前記運転制限値の変更によって生じ得るすべての排気ガス流量および排気ガス温度(TAT)のために設計されることを特徴とする請求項11または12に記載の発電所。
  14. 前記ガスタービン(10)の運転制限値が変更される場合に、少なくとも1つのボイラによって生成される蒸気流量をエネルギーに最大限に変換するために少なくとも1つの上記タービンが備えられていることを特徴とする請求項13に記載の発電所。
  15. 電気システムが、前記ガスタービン(10)の運転制限値が変更される場合に生成される最大出力のために設計されることを特徴とする請求項11〜14のいずれか一項に記載の発電所。
  16. 燃料システムが、前記ガスタービン(10)の運転制限値が変更される場合に必要な最大燃料流量のために設計されることを特徴とする請求項11〜15のいずれか一項に記載の発電所。
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