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JP2011210991A - エッチング性に優れたプリント配線板用銅箔及び積層体 - Google Patents

エッチング性に優れたプリント配線板用銅箔及び積層体 Download PDF

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JP2011210991A JP2010077907A JP2010077907A JP2011210991A JP 2011210991 A JP2011210991 A JP 2011210991A JP 2010077907 A JP2010077907 A JP 2010077907A JP 2010077907 A JP2010077907 A JP 2010077907A JP 2011210991 A JP2011210991 A JP 2011210991A
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秀樹 古澤
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Abstract

【課題】エッチング性に優れたプリント配線板用銅箔及び積層体を提供する。
【解決手段】プリント配線板用銅箔は、銅箔基材と、銅箔基材の表面の少なくとも一部を被覆する被覆層とを備える。被覆層は、互いに平均間隔10nm未満で隣接し、且つ、直径が1〜15nmである貴金属粒子で構成された貴金属層と、貴金属層と銅箔基材との間に形成され、厚みが1nm以上である銅と貴金属との合金層とで構成されている。
【選択図】図3

Description

本発明は、エッチング性に優れたプリント配線板用銅箔及び積層体に関し、特にフレキシブルプリント配線板用の銅箔及び積層体に関する。
プリント配線板はここ半世紀に亘って大きな進展を遂げ、今日ではほぼすべての電子機器に使用されるまでに至っている。近年の電子機器の小型化、高性能化ニーズの増大に伴い搭載部品の高密度実装化や信号の高周波化が進展し、プリント配線板に対して導体パターンの微細化(ファインピッチ化)や高周波対応等が求められている。
プリント配線板は、銅箔に絶縁基板を接着、もしくは絶縁基板上にNi合金等を蒸着させた後に電気めっきで銅層を形成させて積層体とした後に、エッチングにより銅箔または銅層面に導体パターンを形成するという工程を経て製造されるのが一般的である。そのため、プリント配線板用の銅箔または銅層には良好なエッチング性が要求される。
銅箔は、樹脂との非接着面に表面処理を施さないと、エッチング後の銅箔回路の銅部分が、銅箔の表面から下に向かって、すなわち樹脂層に向かって、末広がりにエッチングされる(ダレを発生する)。通常は、回路側面の角度が小さい「ダレ」となり、特に大きな「ダレ」が発生した場合には、樹脂基板近傍で銅回路が短絡し、不良品となる場合もある。ここで、図4に、銅回路形成時に「ダレ」を生じて樹脂基板近傍で銅回路が短絡した例を示す回路表面の拡大写真を示す。
このような「ダレ」は極力小さくすることが必要であるが、このような末広がりのエッチング不良を防止するために、エッチング時間を延長して、エッチングをより多くして、この「ダレ」を減少させることも考えられる。しかし、この場合は、すでに所定の幅寸法に至っている箇所があると、そこがさらにエッチングされることになるので、その銅箔部分の回路幅がそれだけ狭くなり、回路設計上目的とする均一な線幅(回路幅)が得られず、特にその部分(細線化された部分)で発熱し、場合によっては断線するという問題が発生する。電子回路のファインパターン化がさらに進行する中で、現在もなお、このようなエッチング不良による問題がより強く現れ、回路形成上で、大きな問題となっている。
これらを改善する方法として、エッチング面側の銅箔に銅よりもエッチング速度が遅い金属又は合金層を形成した表面処理が特許文献1に開示されている。この場合の金属又は合金としては、Ni、Co及びこれらの合金である。回路設計に際しては、レジスト塗布側、すなわち銅箔の表面からエッチング液が浸透するので、レジスト直下にエッチング速度が遅い金属又は合金層があれば、その近傍の銅箔部分のエッチングが抑制され、他の銅箔部分のエッチングが進行するので、「ダレ」が減少し、より均一な幅の回路が形成できるという効果をもたらすという、従来技術と比較して急峻な回路形成が可能となり、大きな進歩があったと言える。
また、特許文献2では、厚さ1000〜10000ÅのCu薄膜を形成し、該Cu薄膜の上に厚さ10〜300Åの銅よりもエッチング速度が遅いNi薄膜を形成している。
特開2002−176242号公報 特開2000−269619号公報
近年、回路の微細化、高密度化がさらに進行し、より急峻に傾斜する側面を有する回路が求められている。しかしながら、特許文献1に記載される技術ではこれらには対応できない。
また、特許文献1に記載される表面処理層はソフトエッチングにより除去する必要があること、さらには樹脂との非接着面表面処理銅箔は、積層体に加工される工程で、樹脂の貼付け等の高温処理が施される。これは表面処理層の酸化を引き起こし、結果として銅箔のエッチング性は劣化する。
前者については、エッチング除去の時間をなるべく短縮し、きれいに除去するためには、表面処理層の厚さを極力薄くすることが必要であること、また後者の場合には、熱を受けるために、下地の銅層が酸化され(変色するので、通称「ヤケ」と言われている。)、レジストの塗布性(均一性、密着性)の不良やエッチング時の界面酸化物の過剰エッチングなどにより、パターンエッチングでのエッチング性、ショート、回路パターンの幅の制御性などの不良が発生するという問題があるので、改良が必要か又は他の材料に置換することが要求されている。
そこで、本発明は、エッチング性に優れたプリント配線板用銅箔及び積層体を提供することを課題とする。
本発明者らは、鋭意検討の結果、銅箔の樹脂との非接着面側に、通常は樹脂との接着面側に接着性を高めたり、絶縁体上に無電解めっきの核を吸着させることを目的として主に使用されるシランカップリング剤等の担持剤を用いて所定量の貴金属粒子を銅箔上に吸着させた場合には、回路側面の傾斜角が80°以上となるような回路を形勢できることを見出した。これにより、近年の回路の微細化、高密度化に十分対応しうる回路を形成できることを見出した。
以上の知見を基礎として完成した本発明は一側面において、銅箔基材と、銅箔基材の表面の少なくとも一部を被覆する被覆層とを備えた銅箔であって、被覆層は、互いに平均間隔10nm未満で隣接し、且つ、直径が1〜15nmである貴金属粒子で構成された貴金属層と、貴金属層と銅箔基材との間に形成され、厚みが1nm以上である銅と貴金属との合金層とで構成されたプリント配線板用銅箔である。
本発明に係るプリント配線板用銅箔の一実施形態においては、合金層の厚みが1〜20nmである。
本発明に係るプリント配線板用銅箔の別の一実施形態においては、合金層の厚みが3〜20nmである。
本発明に係るプリント配線板用銅箔の更に別の一実施形態においては、前記貴金属層の貴金属粒子は、互いに平均間隔5nm未満で隣接し、且つ、直径が5〜15nmである。
本発明に係るプリント配線板用銅箔の更に別の一実施形態においては、貴金属がAu、Pt及びPdの少なくとも1種である。
本発明に係るプリント配線板用銅箔の更に別の一実施形態においては、プリント配線板はフレキシブルプリント配線板である。
本発明は別の一側面において、貴金属粒子を含む担持剤中に、銅箔、又は、銅箔と樹脂基板との積層体を浸漬することにより、銅箔又は積層体表面に貴金属粒子を付着させて、本発明の被覆層を形成する銅箔又は積層体の表面処理方法である。
本発明に係る表面処理方法の一実施形態においては、担持剤がカップリング剤である。
本発明に係る表面処理方法の別の一実施形態においては、カップリング剤がシランカップリング剤である。
本発明は更に別の一側面において、本発明の銅箔を準備する工程と、銅箔の被覆層をエッチング面として銅箔と樹脂基板との積層体を作製する工程と、被覆層上にレジストで回路パターンを形成した後、塩化第二鉄水溶液又は塩化第二銅水溶液を用いてエッチングを行い銅の不必要部分を除去して銅の回路を形成する工程とを含む電子回路の形成方法である。
本発明は更に別の一側面において、本発明に係る銅箔と樹脂基板との積層体である。
本発明は更に別の一側面において、銅層と樹脂基板との積層体であって、銅層の表面の少なくとも一部を被覆する本発明に係る被覆層を備えた積層体である。
本発明に係る積層体の一実施形態においては、樹脂基板がポリイミド基板である。
本発明は更に別の一側面において、本発明に係る積層体を材料としたプリント配線板である。
本発明によれば、エッチング性に優れたプリント配線板用銅箔及び積層体を提供することができる。
回路パターンの一部の表面写真、当該部分における回路パターンの幅方向の横断面の模式図、及び、該模式図を用いたエッチングファクター(EF)の計算方法の概略である。 実施例3により形成された回路の写真である。 実施例7の表面処理層のTEM写真、該当位置におけるPdとCuとの特性X線のマッピング図、及び、Pd及びCuの深さ方向の濃度プロファイルである。 銅回路形成時に裾引きを生じて樹脂基板近傍で銅回路が短絡した例を示す回路表面の拡大写真である。
(銅箔基材)
本発明に用いることのできる銅箔基材の形態に特に制限はないが、典型的には圧延銅箔や電解銅箔の形態で用いることができる。一般的には、電解銅箔は硫酸銅めっき浴からチタンやステンレスのドラム上に銅を電解析出して製造され、圧延銅箔は圧延ロールによる塑性加工と熱処理を繰り返して製造される。屈曲性が要求される用途には圧延銅箔を適用することが多い。
銅箔基材の材料としてはプリント配線板の導体パターンとして通常使用されるタフピッチ銅や無酸素銅といった高純度の銅の他、例えばSn入り銅、Ag入り銅、Cr、Zr又はMg等を添加した銅合金、Ni及びSi等を添加したコルソン系銅合金のような銅合金も使用可能である。なお、本明細書において用語「銅箔」を単独で用いたときには銅合金箔も含むものとする。
本発明に用いることのできる銅箔基材の厚さについても特に制限はなく、プリント配線板用に適した厚さに適宜調節すればよい。例えば、5〜100μm程度とすることができる。但し、ファインパターン形成を目的とする場合には30μm以下、好ましくは20μm以下であり、典型的には5〜20μm程度である。
本発明に使用する銅箔基材は、特に限定されないが、例えば、粗化処理をしないものを用いても良い。従来は特殊めっきで表面にμmオーダーの凹凸を付けて表面粗化処理を施し、物理的なアンカー効果によって樹脂との接着性を持たせるケースが一般的であるが、一方でファインピッチや高周波電気特性は平滑な箔が良いとされ、粗化箔では不利な方向に働くことがある。また、粗化処理をしないものであると、粗化処理工程が省略されるので、経済性・生産性向上の効果がある。
(被覆層の構成)
銅箔基材の絶縁基板との接着面の反対側(回路形成予定面側)の表面の少なくとも一部には、被覆層が形成されている。被覆層は、貴金属層と、貴金属層と銅箔基材との間に形成された銅及び貴金属の合金層とで構成されている。貴金属粒子が小さいと、銅箔表面と貴金属粒子との界面の面積が小さくなり、効果が十分に得られない。このため、本発明における貴金属粒子の直径は1〜15nmである。また、隣接する貴金属粒子の平均間隔は10nm未満である。粒子間の間隔が広すぎると、銅箔表面と貴金属粒子との界面の面積が小さくなり、効果が十分に得られないためである。
また、貴金属層の貴金属粒子は、互いに平均間隔5nm未満で隣接し、且つ、直径が5〜15nmであるのが好ましい。
貴金属としては、Au、Pt及びPdの少なくとも1種以上であるのが好ましい。
合金層は、厚みが1nm以上である。合金層は、銅及び貴金属粒子で構成されており、厚すぎると貴金属粒子による効果が薄れるためである。また、乾式めっきや電気めっきで成膜した貴金属層を利用して合金層を形成する場合、合金層の厚みの上限としては、特に限定がないが、コストの観点から100nm以下とするのが好ましい。また、銅箔基材をカップリング剤中に浸漬させることによって合金層を形成する場合は、ある一定の浸漬時間を超えると効果が飽和してしまう。この点では、合金層の厚みは20nm以下とするのが好ましい。さらに、合金層の厚みは3〜20nmとするのが好ましい。
なお、銅箔基材の絶縁基板との接着面側には、絶縁基板との接着性向上のために、例えば、銅箔基材表面から順に積層した中間層及び表層で構成された別の被覆層を形成してもよい。この場合、中間層は、例えば、Ni、Mo、Ti、Zn、Co、V、Sn、Mn、Nb、Ta及びCrの少なくともいずれか1種を含むのが好ましい。中間層は、金属の単体で構成されていてもよく、例えば、Ni、Mo、Ti、Zn、Co、Nb及びTaのいずれか1種で構成されるのが好ましい。中間層は、合金で構成されていてもよく、例えば、Ni、Zn、V、Sn、Mn、Cr及びCuの少なくともいずれか2種の合金で構成されるのが好ましい。
(銅箔の製造方法)
本発明に係るプリント配線板用銅箔は、貴金属を含む特殊溶液に銅箔を浸漬させることで得ることができる。すなわち、貴金属を含む特殊溶液に銅箔を浸漬させることによって銅箔基材の表面の少なくとも一部を、貴金属層により被覆する。具体的には、貴金属を含む担持剤への浸漬によって、銅箔のエッチング面側に銅よりもエッチングレートの低い貴金属粒子を付着させる。貴金属層は、銅箔の担持剤への浸漬に限らず、例えば、電気めっき、乾式めっきで形成してもよい。ここで、上述の担持剤としては、貴金属粒子を担持されることのできるカップリング剤が好ましい。また、そのようなカップリング剤としては、特に限定されず、チタネート系、アルミネート系、ジルコニウム系、又は、シラン系のカップリング剤を用いることができ、特にシランカップリング剤が好ましい。
貴金属層を形成した銅箔には、続いて熱処理が施され、これにより銅が表面の貴金属層へ拡散し、貴金属と銅との合金層を、銅箔表面と貴金属層との間に形成する。これにより、合金層及び貴金属層で構成された被覆層が形成される。このときの熱処理は、後述するプリント配線板の製造工程で行うものであってもよい。熱処理として、具体的には、CCL製造工程におけるポリイミドの硬化相当の熱処理(約350℃にて30分〜数時間程度)等が挙げられる。
このように、本発明に係る銅箔は、被覆層が貴金属層に加えて合金層を備えていることにより、発明の効果をさらに高めていると推定される。
また、担持剤に浸漬するものは、上述のように銅箔単独に限られず、銅箔と樹脂基板との積層体を浸漬させて、当該銅箔に上記被覆層を形成してもよい。
(プリント配線板の製造方法)
本発明に係る銅箔を用いてプリント配線板(PWB)を常法に従って製造することができる。以下に、プリント配線板の製造方法の例を示す。
まず、銅箔と絶縁基板とを貼り合わせて積層体を製造する。銅箔が積層される絶縁基板はプリント配線板に適用可能な特性を有するものであれば特に制限を受けないが、例えば、リジッドPWB用に紙基材フェノール樹脂、紙基材エポキシ樹脂、合成繊維布基材エポキシ樹脂、ガラス布・紙複合基材エポキシ樹脂、ガラス布・ガラス不織布複合基材エポキシ樹脂及びガラス布基材エポキシ樹脂等を使用し、FPC用にポリエステルフィルムやポリイミドフィルム等を使用する事ができる。
貼り合わせの方法は、リジッドPWB用の場合、ガラス布などの基材に樹脂を含浸させ、樹脂を半硬化状態まで硬化させたプリプレグを用意する。銅箔を被覆層の反対側の面からプリプレグに重ねて加熱加圧させることにより行うことができる。
フレキシブルプリント配線板(FPC)用の場合、ポリイミドフィルム又はポリエステルフィルムと銅箔とをエポキシ系やアクリル系の接着剤を使って接着することができる(3層構造)。また、接着剤を使用しない方法(2層構造)としては、ポリイミドの前駆体であるポリイミドワニス(ポリアミック酸ワニス)を銅箔に塗布し、加熱することでイミド化するキャスティング法や、ポリイミドフィルム上に熱可塑性のポリイミドを塗布し、その上に銅箔を重ね合わせ、加熱加圧するラミネート法が挙げられる。キャスティング法においては、ポリイミドワニスを塗布する前に熱可塑性ポリイミド等のアンカーコート材を予め塗布しておくことも有効である。
本発明に係る積層体は各種のプリント配線板(PWB)に使用可能であり、特に制限されるものではないが、例えば、導体パターンの層数の観点からは片面PWB、両面PWB、多層PWB(3層以上)に適用可能であり、絶縁基板材料の種類の観点からはリジッドPWB、フレキシブルPWB(FPC)、リジッド・フレックスPWBに適用可能である。また、本発明に係る積層体は、銅箔を樹脂に貼り付けてなる上述のような銅張積層板に限定されず、樹脂上にスパッタリング、めっきで銅層を形成したメタライジング材であってもよい。
上述のように作製した積層体の銅箔上に形成された被覆層表面にレジストを塗布し、マスクによりパターンを露光し、現像することによりレジストパターンを形成したものをエッチング液に浸漬する。このとき、Pt、Pd、及び、Auのいずれか1種以上を含む被覆層は、銅箔上のレジスト部分に近い位置にあり、レジスト側の銅箔のエッチングは、この被覆層近傍がエッチングされていく速度よりも速い速度で、被覆層から離れた部位の銅のエッチングが進行することにより、銅の回路パターンのエッチングがほぼ垂直に進行する。これにより銅の不必要部分を除去されて、次いでエッチングレジストを剥離・除去して回路パターンを露出することができる。
積層体に回路パターンを形成するために用いるエッチング液に対しては、被覆層のエッチング速度が銅よりも十分に小さいため、エッチングファクターを改善する効果を有する。エッチング液は、塩化第二銅水溶液、又は、塩化第二鉄水溶液等を用いることができるが、特に塩化第二鉄水溶液が有効である。微細回路はエッチングに時間が掛かるが、塩化第二鉄水溶液の方が塩化第二銅水溶液よりもエッチング速度が早いためである。また、被覆層を形成する前に、あらかじめ銅箔基材表面に耐熱層を形成しておいてもよい。
また、被覆層に含まれる担持剤が、例えば銅箔用のシランカップリング剤であれば、防錆効果がある。従って、貴金属層を貴金属粒子を含有するシランカップリング剤で形成した場合には、裾引きが小さい回路ともに、変色性に優れた銅箔が得られる。
(プリント配線板の銅箔表面の回路のラインパターン形状)
上述のように被覆層側からエッチングされて形成されたプリント配線板の銅箔表面の回路の各ラインパターンは、その長尺状の2つの側面が絶縁基板上に垂直に形成されるのではなく、通常、銅箔の表面から下に向かって、すなわち樹脂層に向かって、末広がりに形成される。これにより、長尺状の2つの側面はそれぞれ絶縁基板表面に対して傾斜角θを有している。現在要求されている回路パターンの微細化(ファインピッチ化)のためには、ラインパターンのピッチをなるべく狭くすることが重要であるが、この傾斜角θが小さいと、それだけ裾引きが大きくなり、ラインパターンのピッチが広くなってしまう。また、傾斜角θは、通常、各ラインパターン及びラインパターン内で完全に一定ではない。このような傾斜角θのばらつきが大きいと、回路の品質に悪影響を及ぼすおそれがある。従って、被覆層側からエッチングされて形成されたプリント配線板の銅箔表面の回路の各ラインパターンは、長尺状の2つの側面がそれぞれ絶縁基板表面に対して65〜90°の傾斜角θを有し、且つ、同一回路内のtanθの標準偏差が1.0以下であるのが望ましい。
以下、本発明の実施例を示すが、これらは本発明をより良く理解するために提供するものであり、本発明が限定されることを意図するものではない。
(例1:実施例1〜7)
(銅箔への被覆層の形成)
実施例1〜7の銅箔基材として、厚さ12μmの圧延銅箔(日鉱金属製C1100)を用意した。圧延銅箔の表面粗さ(Rz)は0.5μmであった。
まず、銅箔の表面に付着している薄い酸化膜を逆スパッタにより取り除き、Ni及びCr単層のターゲットをスパッタリングすることにより、Ni層及びCr層を順に成膜した。スパッタリングに使用した各種金属の単体は純度が3Nのものを用いた。この面を絶縁基材との接着面とした。
・装置:バッチ式スパッタリング装置(アルバック社、型式MNS−6000)
・到達真空度:1.0×10-5Pa
・スパッタリング圧:0.2Pa
・逆スパッタ電力:100W
・スパッタリング電力:50W
・成膜速度:各ターゲットについて一定時間約0.2μm成膜し、3次元測定器で厚さを測定し、単位時間当たりのスパッタレートを算出した。
次に、上記表面処理銅箔の接着面と反対側の表面処理面を塩化ビニルで覆い、これを硫酸(100g/L)に30秒浸漬させて、表面の酸化層を除去した。その後、60℃に温めたシランカップリング剤CB−A(日鉱金属製)に浸漬させた後、軽く水洗することにより、貴金属層を形成した。ここで、浸漬時間を変えることでSiとPdとの付着量を変化させた
貴金属層を形成した銅箔に対して、貴金属層と反対側の表面に以下の手順により、ポリイミドフィルムを接着した。
(1)7cm×7cmの銅箔に対しアプリケーターを用い、宇部興産製Uワニス−A(ポリイミドワニス)を乾燥体で25μmになるよう塗布。
(2)(1)で得られた樹脂付き銅箔を空気下乾燥機で130℃30分で乾燥。
(3)窒素流量を10L/minに設定した高温加熱炉において、350℃60分でイミド化。
上記(3)の熱処理により、銅箔の銅が貴金属層に拡散し、銅箔と貴金属層との間に銅と貴金属との合金層が形成される。
<STEMによる評価>
貴金属層と合金層とで構成された被覆層をSTEMによって観察したときのTEMの測定条件を以下に示す。後述の表中に示したPdの粒径、平均粒子間隔は、観察視野中に写っている被覆粒子の粒径、粒子間隔を50nm間で測定して、それぞれ平均値を算出した。
・装置:STEM(日立製作所社、型式HD−2000STEM)
・加速電圧:200kV
・倍率:300000倍
・観察視野:60nm×60nm
なお、STEMによる濃度検出は、検出元素からカーボンを除外し、各元素の濃度(質量%)を分析した。STEM分析で厚み方向に1nmの距離とは、STEM分析によるチャート(図4)の横軸の距離である。本発明では、TEM像と照らし合わせて、銅箔内部においてPdの濃度が0.2%以上の領域を銅との合金層とした。
(エッチングによる回路形状)
銅箔の被覆層が形成された面に感光性レジスト塗布及び露光工程により10本の回路を印刷し、さらに銅箔の不要部分を除去するエッチング処理を以下の条件で実施した。
<エッチング条件>
・塩化第二鉄水溶液:(37wt%、ボーメ度:40°)
・液温:50°C
・スプレー圧:0.25MPa
(50μmピッチ回路形成)
・レジストL/S=33μm/17μm
・仕上がり回路ボトム(底部)幅:25μm
・エッチング時間:10〜130秒
(30μmピッチ回路形成)
・レジストL/S=25μm/5μm
・仕上がり回路ボトム(底部)幅:15μm
・エッチング時間:30〜70秒
・エッチング終点の確認:時間を変えてエッチングを数水準行い、光学顕微鏡で回路間に銅が残存しなくなるのを確認し、これをエッチング時間とした。
エッチング後、45℃のNaOH水溶液(100g/L)に1分間浸漬させてレジストを剥離した。
<エッチングファクターの測定条件>
エッチングファクターは、末広がりにエッチングされた場合(ダレが発生した場合)、回路が垂直にエッチングされたと仮定した場合の、銅箔上面からの垂線と樹脂基板との交点からのダレの長さの距離をaとした場合において、このaと銅箔の厚さbとの比:b/aを示すものであり、この数値が大きいほど、傾斜角は大きくなり、エッチング残渣が残らず、ダレが小さくなることを意味する。図1に、回路パターンの一部の表面写真と、当該部分における回路パターンの幅方向の横断面の模式図と、該模式図を用いたエッチングファクターの計算方法の概略とを示す。このaは回路上方からのSEM観察により測定し、エッチングファクター(EF=b/a)を算出した。このエッチングファクターを用いることにより、エッチング性の良否を簡単に判定できる。さらに、傾斜角θは上記手順で測定したa及び銅箔の厚さbを用いてアークタンジェントを計算することにより算出した。これらの測定範囲は回路長600μmで、12点のエッチングファクター、その標準偏差及び傾斜角θの平均値を結果として採用した。
(例2:比較例1:ブランク材)
12μm厚の圧延銅箔を準備し、例1と同じ手順でポリイミドフィルムを接着した。次に反対面に感光性レジスト塗布及び露光工程により10本の回路を印刷し、さらに銅箔の不要部分を除去するエッチング処理を例1の条件で実施した。
(例3:比較例2及び3)
12μm厚の圧延銅箔を準備し、例1と同じ手順でCB−Aに2分浸漬させた後、ポリイミドフィルムを接着した。このとき、比較例3のみに例1と同様に熱処理を行い、合金層を形成した。次に、例1と同様にエッチングで回路を形成した。
例1〜3の各測定結果を表1〜4に示す。
(評価)
(実施例1〜7)
実施例1〜7ではいずれもエッチングファクターが大きく且つバラツキもなく、矩形方に近い断面の回路を形成することができた。浸漬時間が20分以上になると、Pd粒子の粒径、平均粒子間間隔は飽和した。また、浸漬時間が同じ場合(実施例4〜6)、ポリイミド硬化を想定した熱処理時間が長いと合金層が厚くなった。熱処理温度が350℃の場合、5時間の熱処理で合金層の厚みは飽和した。合金層が厚いほど、裾引きが小さい回路が得られた。
図2に、実施例3により形成された回路の写真を示す。
図3に、実施例7の表面処理層のTEM写真、該当位置におけるPdとCuとの特性X線のマッピング図、及び、Pd及びCuの深さ方向の濃度プロファイルを示す。
(比較例1〜3)
比較例1は、銅箔表面が未処理であるブランク材であり、矩形方の断面の回路を形成することができなかった。
比較例2及び3では、浸漬時間が十分ではなかったため十分な粒径のPd粒子を付着させることができず、ブランク材と同様に矩形方の断面の回路を形成することができなかった。この比較例2と同様の貴金属層が形成された銅箔を熱処理した比較例3ではPd粒子の数が少なく、平均粒子間隔も大きかったため、長時間の熱処理を施しても合金層の厚みが薄く、回路の裾引きを小さくすることができなかった。

Claims (14)

  1. 銅箔基材と、該銅箔基材の表面の少なくとも一部を被覆する被覆層とを備えた銅箔であって、
    前記被覆層は、
    互いに平均間隔10nm未満で隣接し、且つ、直径が1〜15nmである貴金属粒子で構成された貴金属層と、
    前記貴金属層と銅箔基材との間に形成され、厚みが1nm以上である銅と貴金属との合金層と、
    で構成されたプリント配線板用銅箔。
  2. 前記合金層の厚みが1〜20nmである請求項1に記載のプリント配線板用銅箔。
  3. 前記合金層の厚みが3〜20nmである請求項2に記載のプリント配線板用銅箔。
  4. 前記貴金属層の貴金属粒子は、互いに平均間隔5nm未満で隣接し、且つ、直径が5〜15nmである請求項1〜3のいずれかに記載のプリント配線板用銅箔。
  5. 前記貴金属がAu、Pt及びPdの少なくとも1種である請求項1〜4のいずれかに記載のプリント配線板用銅箔。
  6. プリント配線板はフレキシブルプリント配線板である請求項1〜5のいずれかに記載のプリント配線板用銅箔。
  7. 貴金属粒子を含む担持剤中に、銅箔、又は、該銅箔と樹脂基板との積層体を浸漬することにより、該銅箔又は該積層体表面に該貴金属粒子を付着させて、請求項1〜5のいずれかに記載の被覆層を形成する銅箔又は積層体の表面処理方法。
  8. 前記担持剤がカップリング剤である請求項7に記載の表面処理方法。
  9. 前記カップリング剤がシランカップリング剤である請求項8に記載の表面処理方法。
  10. 請求項1〜6のいずれかに記載の銅箔を準備する工程と、
    前記銅箔の被覆層をエッチング面として該銅箔と樹脂基板との積層体を作製する工程と、
    前記被覆層上にレジストで回路パターンを形成した後、塩化第二鉄水溶液又は塩化第二銅水溶液を用いてエッチングを行い銅の不必要部分を除去して銅の回路を形成する工程と、
    を含む電子回路の形成方法。
  11. 請求項1〜6のいずれかに記載の銅箔と樹脂基板との積層体。
  12. 銅層と樹脂基板との積層体であって、
    前記銅層の表面の少なくとも一部を被覆する請求項1〜6のいずれかに記載の被覆層を備えた積層体。
  13. 前記樹脂基板がポリイミド基板である請求項11又は12に記載の積層体。
  14. 請求項11〜13のいずれかに記載の積層体を材料としたプリント配線板。
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