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JP2011210439A - 電子放出素子、その製造方法、電子放出素子を用いた面発光素子 - Google Patents

電子放出素子、その製造方法、電子放出素子を用いた面発光素子 Download PDF

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JP2011210439A JP2010075130A JP2010075130A JP2011210439A JP 2011210439 A JP2011210439 A JP 2011210439A JP 2010075130 A JP2010075130 A JP 2010075130A JP 2010075130 A JP2010075130 A JP 2010075130A JP 2011210439 A JP2011210439 A JP 2011210439A
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Shusuke Gamo
秀典 蒲生
Masahito Tsujii
雅人 辻井
Kosuke Takayanagi
浩介 高柳
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Abstract

【課題】電界集中が容易で、電子放出能及びその均一性、安定性に優れ、かつ簡便で制御性が高いプロセスで作製できるナノ炭素材料を用いた電子放出素子、その製造方法、電子放出素子を用いた面発光素子を提供する。
【解決手段】強電界によって電子を放出する電界放射型の電子放出素子において、基板上に形成された複数の突起部よりなる3次元構造パターンを具備し、突起部の高さと隣接する突起部同士との間隙との比を1:2以上1:6以下とする。
【選択図】図4

Description

本発明は、強電界によって電子を放出する電界放射型の電子放出素子(フィールドエミッタ)と、その製造方法、さらにそれを面電子源として利用した面発光素子に関する。より詳しくは、表示装置、非発光ディスプレイ用バックライト光源、あるいは照明ランプ等に利用される電子放出素子とそれを面電子源として用いた面発光素子に関する。
近年、主に動画を表示するテレビ受像器や、静止画を表示するコンピュータ端末用のモニタに使用されていた陰極線管を用いたディスプレイ(CRT)が、液晶ディスプレイ(LCD)やプラズマディスプレイ(PDP)などのフラットパネルディスプレイに急速に置き換わっている。また、従来のCRTと同じカソードルミネッセンスを原理とする、次世代の高輝度フラットパネルディスプレイとして、フィールドエミッンョンディスプレイ(FED)の研究開発が進められている。
一方、一般照明としての発光素子は、20世紀初頭から白熱灯や蛍光灯が長年にわたり用いられてきている。このうち蛍光灯は白熱灯と比べると同じ明るさでも消費電力を低く抑えられるという特徴を有しており、今日でも照明として広く利用されている。
また、前述した非発光素子で光のシャッター機能しかもたないLCDでは、高輝度ディスプレイとして用いるためにバックライトが不可欠である。バックライトには、立体型の蛍光灯と拡散用の反射板を組み合わせ薄型化した、蛍光管が用いられている。
蛍光灯は、フィラメントから放出された電子が、蛍光管内に封入されている気体の水銀と衝突し紫外線を発し、この紫外線が蛍光管の内側に塗布された蛍光体を励起し可視光を発光する。
しかしながら、照明やLCDのバックライトとして用いられる蛍光灯には、水銀が含まれており、今後、環境汚染という点で大きな課題を抱えており、代替えの照明装置が強く求められている。
一方、近年、白色灯や蛍光灯などの既存の照明に代わり、発光ダイオード(LED)を光源とした表示装置や照明が開発され、普及し始めている。最近では、信号機や街頭あるいは店頭用ディスプレイなどの表示装置、LCD用のバックライト、車載照明、電子機器用表示ランプ、懐中電灯などで利用されている。
LEDは、半導体を用いたpn接合と呼ばれる構造で作られている。電極から半導体に注入された電子と正孔は異なったエネルギー帯(伝導帯と価電子帯)を流れ、pn接合部付近にて禁制帯を越えて再結合する。再結合の際にほぼ禁制帯幅(バンドギャップ)に相当するエネルギーが光子、すなわち光として放出される。
しかしながら、LEDは上述したように、半導体のキャリアの再結合により発光する原理であるため、材料のバンド構造で決められた固有の波長の単色光であり、かつ点光源であるため、特にバックライトや照明などの大面積に均一に、そして白色などのブロードな波長で利用するアプリケーションには不適である。特に、白色表示にする場合には、紫外線発光素子としてLEDを用い、その紫外線で蛍光体を発光させる構成が必要となっている。
これに対し、FEDと同様の方式で、面電子源から放出される電子で蛍光体を発光させることで、薄型かつ高輝度の面発光素子が容易に得られると考えられる。
電界放射型の電子放出素子すなわちフィールドエミッタは、物質に印加する電界の強度を上げると、その強度に応じて物質表面のエネルギー障壁の幅が次第に狭まり、電界強度が107V/cm以上の強電界となると、物質中の電子がトンネル効果によりそのエネルギー障壁を突破できるようになる。そのため物質から電子が放出されるという現象を利用している。この場合、電場がポアッソンの方程式に従うために、電子を放出する部材(エミッタ)に電界が集中する部分を形成すると、比較的低い引き出し電圧で効率的に冷電子の放出を行うことができる。
このようなフィールドエミッタを利用する面発光素子の構造としては、高真空の平板セル中に、微小な電子放出素子をアレイ状に配し、対向して蛍光体を塗布したアノード基板を設けたもの、即ち、FEDと同じパネル構造が考えられる。
従来のFEDの技術を用いた面発光素子は、図11のように構成することができる。図11に示す面発光素子30には、カソード側基体31上に導電層32を介して複数の先端の尖った円錐形のエミッタ33が形成され、これらエミッタ33を取り巻くように、絶縁層34及びゲート電極35が配置されてフィールドエミッタアレイ(カソード)が構成されている。このフィールドエミッタアレイ(カソード)に対向して、アノード側基体36上にアノード電極37及び蛍光体38から形成されたアノードが、スペーサ39を介して配置され、3極管いわゆるトライオード構造を有する面発光素子が構成される(特許文献1、特許文献2、非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3参照)。
しかしながら、上述した円錐形のエミッタ33の場合、いずれもエミッタ材料である金属、シリコンあるいはそれらの化合物は、表面に酸化物を形成するため、電子放出能が低く、エミッタ部への電界集中が不可欠であった。そのため、それらのエミッタ材料表面から電子を放出させるためには、電子放出部の曲率半径をできるだけ小さくする必要があり、エミッタに極微細加工を施し、放出部の先端形状を円錐形として、その先端の曲率半径を数ナノメータ以下とすることが不可欠であった。
さらに、ディスプレイ用等の面電子源として利用するためには、上記のような極微細加工を施して得られる円錐形のエミッタ33を多数作製しアレイ上に配置する必要がある。しかしながら、超精密加工が必要であるため、構造的欠陥が生じやすく、大面積に均一に作製することは容易ではなく、歩留まりが低下する上、欠陥検査等も不可欠となり製造コストが高くなるという問題があった。
これらに対し、近年、エミッタ材料としてナノ炭素材料が注目されている。 ナノ炭素材料の中で最も代表的なカーボンナノチューブは、炭素原子が規則的に配列したグラフェンシートを丸めた中空の円筒であり、その外径はナノメータオーダで、長さは通常0.5μm〜数10μmの非常にアスペクト比の高い微小な物質である。そのため、先端部分には電界が集中しやすく高い電子放出能が期待される。また、カーボンナノチューブは、化学的、物理的安定性が高いという特徴を有するため、動作真空中の残留ガスの吸着やイオン衝撃等に対して影響を受け難いことが予想される。
このような、カーボンナノチューブなどのナノ炭素材料の合成方法としては、アーク放電法、レーザアブレーシヨン法、プラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法などが知られている。これらのうち、アーク放電法、レーザアブレーンョン法、プラズマ化学気相成長法は非平衡反応であるため、非晶質成分を生成しやすく、一般に生成するカーボンナノチューブの収率が低く、また、生成したカーボンナノチューブの直径や種類が一様でないことが知られている。
一方、特許文献1には、カーボンナノチューブを精製不要で高純度で合成する方法、即ち収率が非常に高い合成方法が開示されている。
特許文献1に記載の方法は、固体基板と有機液体とが急激な温度差を有して接触することから特異な界面分解反応が生じるため、有機液体中の固液界面接触分解法と呼ばれている。
特開2003−12312号公報 特開2008−53171号公報
C.A.Spindt:J.Appl.Phys.,39,3504(1968) K.Betsui:Tech.Dig.IVMC.,(1991)P.26 「光エレクトロニクスの基礎」、(株)日本理工出版会、2002年7月20日再版発行
上述した従来のカーボンナノチューブは、各繊維は非常に細く、高いアスペクトを有する。しかしながら、通常多数が絡まって存在したり、基板に対して配向させたりした場合でも、多数のナノチューブが低密度あるいは高密度で並ぶため、ナノチューブ一本の先端に電界を集中させる構造をとることは困難であった。
本発明は、電界集中が容易で、電子放出能及びその均一性、安定性に優れ、かつ簡便で制御性が高いプロセスで作製できるナノ炭素材料を用いた電子放出素子、その製造方法、電子放出素子を用いた面発光素子を提供することである。
本発明による電子放出素子は、強電界によって電子を放出する電界放射型の電子放出素子において、基板と、前記基板上に形成された複数の突起部よりなる3次元構造パターンと、を具備し、前記突起部の高さと隣接する突起部同士の間隙との比が1:2以上1:6以下であること特徴とする。この構成によれば、炭素材料のもつ高い電子放出能とナノオーダの微細構造をもち、かつ、適度な間隙で形成できるため、シールド効果を回避することにより、低電圧での駆動と高均一の面電子放出を大面積にわたり得ることができる。
前記電子放出素子において、前記突起部が、ナノ炭素材料から成るのが好ましい。ナノ炭素材料を用いることにより、無酸化表面でかつ熱伝導及び電気伝導性が高い炭素材料のもつ高い電子放出能とナノオーダの微細構造をもち、かつ、適度な間隙で形成できるため、低電圧での駆動と高均一の面電子放出を大面積にわたり得ることができる。
また、少なくとも、前記突起部の表面に、ナノ炭素材料が形成されていることが好ましい。ナノ炭素材料を用いることにより、無酸化表面でかつ熱伝導及び電気伝導性が高い炭素材料のもつ高い電子放出能とナノオーダの微細構造をもち、かつ、適度な間隙で形成できるため、低電圧での駆動と高均一の面電子放出を大面積にわたり得ることができる。
前記ナノ炭素材料が、基板あるいは前記突起部の表面に対して垂直配向したカーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、カーボンナノフィラメント、カーボンナノウォール、またはカーボンナノコイルのいずれかであることが好ましい。これらを用いることにより、無酸化表面でかつ熱伝導及び電気伝導性が高い炭素材料のもつ高い電子放出能とナノオーダの微細構造をもち、かつ、適度な間隙で形成できるため、低電圧での駆動と高均一の面電子放出を大面積にわたり得ることができる。
また、前記突起部の形状が、円柱、多角柱、3次元ラインパターンのうちのいずれかの形状であることが好ましい。これらの形状の突起部を形成することにより、適度な間隙が効率よく形成できるため、低電圧での駆動と高均一の面電子放出を大面積にわたり得ることができる。
本発明による電子放出素子の製造方法は、円形、多角形、ライン状パターン形状のうちのいずれかの形状に触媒を担持させた基板を、有機液体中に浸漬して加熱し、固液界面接触分解法により、ナノ炭素材料を成長させる工程を有することを特徴とする。このような構成により、無酸化表面でかつ熱伝導及び電気伝導性が高い炭素材料のもつ高い電子放出能とナノオーダの微細構造をもち、かつ、適度な間隙で形成できるため、低電圧での駆動と高均一の面電子放出を大面積にわたり得ることができる。
本発明による電子放出素子の製造方法は、基板に、複数の突起部を形成する工程と、少なくとも、前記突起部の表面に、触媒を担持させる工程と、少なくとも、前記突起部に、触媒を担持させた基板を、有機液体中に浸漬して加熱し、固液界面接触分解法により、少なくとも、前記突起部の表面に、ナノ炭素材料を成長させる工程とを有することを特徴とする。このような構成により、炭素材料のもつ高い電子放出能とナノオーダの微細構造をもち、かつ、適度な間隙で形成できるため、低電圧での駆動と高均一の面電子放出を大面積にわたり得ることができる。
本発明による面発光素子は、第1の基板と、前記第1の基板上に形成された複数の突起部よりなる3次元構造パターンとを具備し、前記突起部の高さと隣接する突起部同士の間隙との比が1:2以上1:6以下である電子放出素子と、少なくとも前記電子放出素子に対向して配置され、第2の基板上にアノード電極および蛍光体が設けられてなるアノードとを含み、前記電子放出素子と前記アノードとの間が真空に保持されていることを特徴とする。この構成により、低コストで高輝度、高安定、高均一の面発光素子を得ることができ、良好な特性で安価な、表示装置、バックライト、照明等を得ることができる。
本発明によれば、炭素材料のもつ高い電子放出能とナノオーダの微細構造をもち、かつ、適度な間隙で形成できるため、低電圧での駆動と高均一の面電子放出を大面積にわたり得ることができる電子放出素子、その製造方法、電子放出素子を用いた面発光素子を提供することができる。
また、本発明によれば、低コストで高輝度、高安定、高均一の面発光素子を得ることができ、良好な特性で安価な、表示装置、バックライト、照明等を得ることができる電子放出素子、その製造方法、電子放出素子を用いた面発光素子を提供することができる。
本発明の実施形態による電子放出素子を示す断面図である。 本発明の実施形態による別の電子放出素子を示す断面図である。 本発明の実施形態による別の電子放出素子を示す断面図である。 本発明の実施形態による電子放出素子を示す斜視図である。 本発明の実施形態による電子放出素子の製造方法を示す断面図である。 本発明の実施形態による電子放出素子の製造装置の一例を示す構成図である。 本発明の実施形態による別の電子放出素子の製造方法を示す断面図である。 本発明の実施例で製造された電子放出素子の走査型電子顕微鏡像を示す図である。 本発明の実施例で製造された電子放出素子の電界計算結果である。 本発明の実施例で製造された別の電子放出素子の走査型電子顕微鏡像を示す図である。 従来の面発光素子を示す概略断面図である。
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。なお、以下の説明において参照する各図では、他の図と同等部分は同一符号によって示されている。
(電子放出素子)
本発明の実施形態による電子放出素子は、基板と、基板上に形成された複数の突起部よりなる3次元構造パターンとを含む。
図1〜図3に示す断面図を参照して、本発明の電子放出素子の例を説明する。図1に示す電子放出素子100は、基板1の表面に複数の突起部2がアレイ状に形成されている。突起部2の高さhと突起部2の間隙wとの比、すなわちh:wは1:2以上1:6以下である。
図1のように、h:w=1:2の比よりもwが大きい場合、隣接する突起部2が離れているためシールド効果が及ぶことなく、個々の突起部2に電界が集中し、電界放出が容易となる。一方、wが大きすぎると、エミッションサイト数が少なくなる。電界放出はエミッションサイト数、すなわちエミッション確率にも影響することから、h:w=1:6の比よりもwが小さいことが好ましい。
図2(a)に示す電子放出素子200では、図1の突起部2がナノ炭素材料4から成っている。図2(b)に示す電子放出素子200’では、図2(a)に示したナノ炭素材料4’が基板1に対して垂直に配向して形成されている。
図2(a)のように、突起部を、ナノサイズの先端構造をもつナノ炭素材料で構成することにより、またさらに、図2(b)のように、突起部を、基板1に対し高配向で形成することにより、より電界集中を高めることができる。
図3(a)に示す電子放出素子300では、図1の突起部2の上面にナノ炭素材料4が形成されている。図3(b)に示す電子放出素子300’では、図3(a)に示したナノ炭素材料4’が突起部2の上面に対して垂直に配向して形成されている。
図3(a)のように、ナノサイズの先端構造をもつナノ炭素材料で構成することにより、またさらに、図3(b)のように、基板に対し高配向で形成することにより、より電界集中を高めることができる。
基板1としては、金属、単結晶シリコン、ゲルマニウム、ガリウム砒素、ガリウム砒素リン、窒化ガリウム、炭化珪素などの半導体基板や、ガラス、セラミックス、石英などを用いることができる。基板1の厚さは特に限定されないが、100〜1500μmが好ましい。
ナノ炭素材料4,4’は、例えば、ナノサイズの径を持つ結晶性のカーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、カーボンナノフィラメント、カーボンナノウォール、またはカーボンナノコイルである。
(突起部の形状の例)
図4(a)から(c)に示すように、突起部2は種々の形状に形成することができる。図4(a)に示す突起部2の形状は円柱である、同図(b)に示す突起部2の形状は四角柱である。同図(c)に示す突起部2の形状は3次元ラインパターンである。
図4(a)から(c)に示すように、突起部の形状を円柱または多角柱または3次元ラインパターンという定形にすれば、突起部をより効率的に形成することができ、かつ電子放出素子特性の制御が容易になる。
本発明の電子放出素子は、基板に突起部が形成され、突起部がナノ炭素材料で形成され、もしくは基板の突起部の表面にナノ炭素材料が形成されているため、容易に電界集中が起こるので、電子放出が容易になされ、低電圧駆動が可能になる。
(電子放出素子の製造方法)
次に、本実施形態による電子放出素子の製造方法を説明する。本例の方法は、複数の円形または多角形またはラインパターン形状に触媒を担持させた基板を、有機液体中に浸漬して加熱し、固液界面接触分解法により、ナノ炭素材料を成長させる工程を有することを特徴とする。
図5(a)、(b)を参照して、本発明の製造方法の例を説明する。
まず、図5(a)に示すように、基板1を洗浄した後、マスクスパッタあるいはレジストリフトオフ等の手法を用いて、基板1上に、円形、多角形あるいはラインパターン形状に触媒3を担持する。触媒3としてはコバルト、鉄、ニッケル、パラジウムまたはそれらの化合物などを用いることができる。基板1表面へのこれらの触媒3の堆積方法として、たとえばスパッタリング法を用いることができる。また、所定量の金属塩水溶液を塗布し、過剰の水を蒸発させて乾燥した後、400〜500℃の空気気流中で焼成し、金属塩の分解と酸化を起こして金属塩を酸化物に転換してもよい。堆積させる触媒3の厚さは特に限定されないが、2〜10nmの範囲が好ましい。
次に、図5(b)に示すように、所定のパターンに触媒を担持させた基板1を、有機液体中に浸漬して加熱し、固液界面接触分解法により、突起部2の表面にナノ炭素材料4’を成長させる。以上により、電子放出素子200’を製造することができる。
(固液界面接触分解法を利用した製造装置)
図6は、固液界面接触分解法を実施するための製造装置の一例を示す。
液体槽11には有機液体12が収容される。液体槽11の周囲には水冷手段(図示せず)が設けられる。液体槽11の上部は蓋13で密閉される。蓋13には、有機液体12に浸潰されるように1対の電極14が取り付けられている。1対の電極14の下部に基板1を保持して有機液体12に浸漬させ、この状態で基板1に電流を流して加熱する。蓋13の上部には、液体槽11から蒸発する有機液体蒸気を冷却凝縮して液体槽11に戻す、水冷パイプ15を備えた凝縮器16が設けられている。凝縮器16の上部にはフィルター17が設けられている。また、蓋13には、液体槽11および凝縮器16の空気を除去するために不活性ガスを導入するバルブ18が設けられている。
まず、上述したように、基板1上に所定のパターンに触媒3を担持させる。この基板1を1対の電極14の下部に取り付け、液体槽11内に有機液体12を入れる。有機液体12としては、メタノール、エタノール、オクタノールなどのアルコール類、またはベンゼンなどの炭化水素を用いることができる。バルブ18を介して液体槽11内に不活性ガスを導入して液体槽11内の残留空気と置換することが好ましい。このようにすれば、空気と有機ガスとの混合による爆発、炎上の危険がない。
この状態において、1対の電極14に電流を流して基板1を加熱する。基板1の加熱温度は550〜1000℃の範囲に設定することが好ましい。基板1の表面に有機液体12の気泡が発生し、気泡によって基板1の表面が覆われる。このとき、有機液体12の温度を沸点以下に保つために、液体槽11の周囲の水冷手段を用いて冷却する。気相となった有機液体を凝縮器16により凝縮して液体槽11に戻す。このため、有機液体を無駄にすることがない。基板1の温度と加熱時間とを制御することにより所望の形態を有するナノ炭素織維を得ることができる。
上述した固液界面接触分解法を用いると、原料が有機液体であるため、突起部2の細部に原料が浸透し、均一な化学合成反応が起こる。このため、突起部2を有する基板1の表面に、高純度で高結晶性のナノ炭素材料を均一に形成することができる。また、本発明者らは、パターンのエッジ部分、すなわち、触媒の担持領域と非担持領域の境界部分においても、本固液界面接触分解法を用いることで、他の合成法では容易ではなかった、垂直に配向できることを見いだした。
基板1の材料としてシリコンを用いれば、触媒であるコバルトと安定な酸化状態を形成するため、ナノ炭素材料の形態をより安定に制御することができる。触媒としてコバルトまたはその酸化物を用い、有機液体としてメタノールを用いると、突起部2の上面および側面を含む基板1の表面に対して垂直配向したナノ炭素材料を容易に成長させることができる。
(他の製造方法)
次に、本実施形態による電子放出素子の別の製造方法について説明する。本例の方法は、基板に複数の突起部を形成する工程と、少なくとも前記突起部の表面に触媒を担持させる工程と、少なくとも前記突起部に触媒を担持させた基板を、有機液体中に浸漬して加熱し、固液界面接触分解法により、少なくとも前記突起部の表面にナノ炭素材料を成長させる工程とを有する。
図7(a)から(c)を参照して、本例の製造方法について説明する。
図7(a)に示すように、基板1を洗浄した後、基板1の表面に触媒3を堆積して担持させる。触媒3としてはコバルト、鉄、ニッケル、パラジウムまたはそれらの化合物などを用いることができる。基板1の表面へのこれらの触媒3の堆積方法は、前述した通りである。
次に、図7(b)に示すように、基板1を加工して、基板1に突起部2を形成する。
基板1に突起部2を形成するには、リソグラフィーおよびドライまたはウェットエッチングを用いてもよいし、切削刃を用いた機械加工を用いてもよい。
光または電子線リソグラフィーを用いれば微細かつ任意のパターン形状を得ることができ、ドライまたはウェットエッチングにより1μm以上のいわゆるミクロンオーダーの突起部2を加工することができる。また、半導体レベルの微細加工が可能で、トレンチエッチングなどの手法を適用することにより、極微細なパターンまたはピッチでアスペクト比の高い形状の突起部2を加工することができる。
切削刃を用いた機械加工を用いると、ミリメートルオーダーに達するアスペクト比の高い突起部2や鋭い頂点を持つ突起部2を加工することができる。
さらに、図7(c)に示すように、突起部2に触媒を担持させた基板1を、有機液体中に浸漬して加熱し、固液界面接触分解法により、突起部2の表面にナノ炭素材料4’を成長させて、電子放出素子300’を製造する。ナノ炭素材料4’の合成法である固液界面接触分解法は、上述の通りである。また、本発明者らは、パターンのエッジ部分、すなわち、触媒の担持領域と非担持領域との境界部分においても、本固液界面接触分解法を用いることで、他の合成法では容易ではなかった、垂直に配向できることを見いだした。
上記のように、固液界面接触分解法では基板を550〜1000℃に加熱するので、当業者であれば表面に微細な凹凸を有する基板を適用することは避けようとするであろう。これは、表面に微細な凹凸を有する基板を高温加熱した場合、基板に割れが発生することを懸念されるためである。ところが、本発明者らの研究によれば、表面に微細な凹凸を有する基板を固液界面接触分解法に適用しても、基板に割れが発生することはなく、突起部を有する基板上に、高純度で高結晶性のナノ炭素材料を、均一かつ形状を制御して容易に低コストで形成することができることを見出した。
(面発光素子)
以上のようにして得られた電子放出素子をエミッタとして用い、蛍光体が塗布されたアノードと対向させることで面発光素子を構成する。用いるアノードは、例えば、図11を参照して説明した、基板上にアノード電極が形成され、さらにその上に蛍光体が塗布されたものを用いる。なお、エミッタとアノードとの間は真空に保持する。
以下、本発明の実施例について説明する。
低抵抗のn型単結晶シリコン(100)基板の表面に、触媒としてコバルトを6nmの厚みでスパッタ成膜を行った後、空気中で900℃、10分の熱処理を施した。次にこの基板上に、機械的な切削加工または反応性イオンエッチングを施し、四角柱の突起部を形成した。
続いて、この基板を、メタノール中に浸漬して電極を通して通電し、初期に600℃、3分、続いて900℃、6分の条件で基板を加熱し、基板近傍で固液界面接触分解反応を起こし、メタノール中の炭素原子を原料としてカーボンナノチューブを生成させた。この結果、基板1上の突起部2の上面の表面にのみカーボンナノチューブが垂直配向して成長した。成長したカーボンナノチューブの長さは約3〜5μmであった。
図8(a)から(d)に、基板の突起部の表面に成長したカーボンナノチューブを含む基板表面の走査型電子顕微鏡像を示す。図8(a)は突起部が四角柱の例(h=100μm、w=250μm)を示す写真、同図(b)はその突起部の拡大写真である。また、図8(c)は突起部が3次元ラインパターンの例(h=100μm、w=250μm)を示す写真、同図(d)はその突起部の拡大写真である。いずれの例でも、突起部の表面に垂直に配向してカーボンナノチューブが高密度で成長していることがわかる。
得られた基板を電界放射型の電子放出素子のエミッタとして用い、これに1mmの間隙を設けアノードを対向させ、真空中で電界電子放出特性を測定した結果、低い電界強度で電子放出が得られることが確認された。
図9に四角柱の突起部の高さhと間隙wとをパラメータとしたときの、チップ先端の電界強度E[V/m]の計算結果の一例を示す。同図において、「*」は間隙wが100μmの場合、「◆」は間隙wが250μmの場合である。間隙wが100μmの場合、高さhが50μmの付近から電界が一定になっている。間隙wが250μmの場合、高さhが200μmの付近から電界が一定になっている。いずれの場合においても、高さhと間隙wとの比すなわちh:w=1:2以上であれば電界が一定となり強い電界強度Eが得られていることがわかる。一方、電界放出はエミッションサイト数、すなわちエミッション確率にも影響することから、h:w=1:6の比よりもwが小さいことが好ましい。
以下、本発明の他の実施例について説明する。
低抵抗のn型単結晶シリコン(100)基板の表面に、フォトリソグラフィーあるいは電子線リソグラフィーあるいは印刷で、有機レジストをラインパターン状に形成した。
次に、基板表面に、触媒としてコバルトを6nmの厚みでスパッタ成膜を行った後、レジストをリフトオフし除去した後、空気中で900℃、10分の熱処理を施した。
この基板を、メタノール中に浸漬して電極を通して通電し、初期に600℃、3分、続いて900℃、6分の条件で基板を加熱し、基板近傍で固液界面接触分解反応を起こし、メタノール中の炭素原子を原料としてカーボンナノチューブを生成させた。この結果、突起部2の上面および側面を含む基板1の表面にカーボンナノチューブが垂直配向して成長した。成長したカーボンナノチューブの長さは約2〜3μmであった。
図10(a)から(d)に、基板の突起部の表面に成長したカーボンナノチューブを含む基板の走査型電子顕微鏡像を示す。図10(a)は突起部が3次元ラインパターンで線幅10μm、間隙10μmの例を示す写真、同図(b)はその突起部の拡大写真である。また、図10(c)は突起部が3次元ラインパターンで線幅1μm、間隙10μmの例を示す写真、同図(d)はその突起部の拡大写真である。いずれの例でも、突起部の表面に垂直に配向してカーボンナノチューブが高密度で成長していることがわかる。また、パターンエッジ部においても垂直配向していることがわかる。
得られた基板を電界放射型の電子放出素子のエミッタとして用い、これに1mmの間隙を設けアノードを対向させ、真空中で電界電子放出特性を測定した結果、いずれも低電界で電子放出が得られることがわかった。
本発明のナノ炭素材料複合基板は、たとえば強電界によって電子を放出する電界放射型の電子放出素子(フィールドエミッタ)として利用することができる。より詳しくは、光プリンタ、電子顕微鏡、電子ビーム露光装置などの電子発生源や電子銃として、照明ランプの超小型照明源として、または平面ディスプレイを構成するアレイ状のフィールドエミッタアレイの面電子源などとして有用な電子放出素子として利用することができる。ただし、これらの用途に限定されるものではないことはいうまでもない。
1 基板
2 突起部
3 触媒
4,4’ ナノ炭素材料
11 液体槽
12 有機液体
13 蓋
14 電極
15 水冷パイプ
16 凝縮器
17 フィルター
18 バルブ
30 面発光素子
31 カソード側基体
32 導電層
33 エミッタ
34 絶縁層
35 ゲート電極
36 アノード側基体
37 アノード電極
38 蛍光体
39 スペーサ
100、200、200’、300、300’ 電子放出素子

Claims (8)

  1. 強電界によって電子を放出する電界放射型の電子放出素子において、
    基板と、前記基板上に形成された複数の突起部よりなる3次元構造パターンと、を具備し、前記突起部の高さと隣接する突起部同士の間隙との比が1:2以上1:6以下であること特徴とする電子放出素子。
  2. 前記突起部が、ナノ炭素材料から成ることを特徴とする請求項1に記載の電子放出素子。
  3. 少なくとも、前記突起部の表面に、ナノ炭素材料が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の電子放出素子。
  4. 前記ナノ炭素材料が、基板あるいは前記突起部の表面に対して垂直配向したカーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、カーボンナノフィラメント、カーボンナノウォール、またはカーボンナノコイルのいずれかであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電子放出素子。
  5. 前記突起部の形状が、円柱、多角柱、3次元ラインパターンのうちのいずれかの形状であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の電子放出素子。
  6. 円形、多角形、ライン状パターン形状のうちのいずれかの形状に触媒を担持させた基板を、有機液体中に浸漬して加熱し、固液界面接触分解法により、ナノ炭素材料を成長させる工程を有することを特徴とする電子放出素子の製造方法。
  7. 基板に、複数の突起部を形成する工程と、
    少なくとも、前記突起部の表面に、触媒を担持させる工程と、
    少なくとも、前記突起部に、触媒を担持させた基板を、有機液体中に浸漬して加熱し、固液界面接触分解法により、少なくとも、前記突起部の表面に、ナノ炭素材料を成長させる工程と
    を有することを特徴とする電子放出素子の製造方法。
  8. 第1の基板と、前記第1の基板上に形成された複数の突起部よりなる3次元構造パターンとを具備し、前記突起部の高さと隣接する突起部同士の間隙との比が1:2以上1:6以下である電子放出素子と、
    少なくとも前記電子放出素子に対向して配置され、第2の基板上にアノード電極および蛍光体が設けられてなるアノードとを含み、
    前記電子放出素子と前記アノードとの間が真空に保持されていることを特徴とする面発光素子。
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