第1の発明は回転子と、3相巻線を有する固定子とからなるブラシレスDCモータを駆動するモータ駆動装置であって、前記3相巻線に電力を供給するインバータと、通電角が120度以上150度以下の波形である第1の波形信号を出力する第1波形発生部と、前記ブラシレスDCモータに流れる少なくとも一相の電流を検出する電流検出手段Aと、前記ブラシレスDCモータに流れる少なくとも一相の過負荷電流を検出し、回転数を抑制する値を出力する電流検出手段Bと、前記電流検出手段Aによって検出された電流値を一定に保つよう前記ブラシレスDCモータの端子電圧進角を補正する進角補正手段と、前記進角補正手段によって補正された進角値と任意に設定し前記電流検知手段Bからの出力の値により回転数を抑制する周波数設定部と、前記周波数設定部のデューティは一定に保ちながら通電角が120度以上180度未満の波形である第2の波形信号を出力する第2波形発生部と、前記第1の波形信号と前記第2の波形信号の出力を運転状態によって切り換える切換判定部と、前記切換判定部から出力された第1または第2の波形信号に基づき、前記インバータが前記3相巻線に供給する電力の供給タイミングを指示するドライブ信号を、前記インバータに出力するドライブ部と有するモータ駆動装置とを有したことにより、モータの位置検出することなく安定した駆動が可能となるため、ブラシレスDCモータの位置検出が困難な高速/高負荷であっても安定した駆動、及び過負荷電流を検知し回転数を抑制することが可能となる。
第2の発明は、特に、第1の発明の前記電流値を一定に保つということを、前記電流検出手段Aによって検出された電流値の平均を目標として電流値を目標に近づけるとしたことにより、モータが最も安定する電流値で駆動することとなり、より安定した駆動が可能となる。
第3の発明は、特に、第1または第2の発明の前記進角補正手段が扱う電流値を、前記電流検出手段Aによって検出された電流値のピーク値としたことにより、電流ピークは電流1周期の最大かどうかを電流を検出するたびに比較するだけでよいため、電流一定に必要な計算負荷が少なくて済むこととなり、安価なマイコンでの実現が可能となる。
第4の発明は、特に、第1または第2の発明の前記進角補正手段が扱う電流値を、前記電流検出手段Aによって検出された電流値の任意の位相範囲の積算結果としたことにより、安定駆動に必要な限られた範囲のみを検出することとなるため、より精度よく安定した駆動が可能となる。
第5の発明は、特に、第1〜4のいずれか1つの発明の前記進角補正手段が、前記電流検出手段Aによって検出された電流値が一定に保とうとする目標の電流よりも大きい場合に前記ブラシレスDCモータの端子電圧進角を減少させ、目標の電流よりも小さい場合に
前記ブラシレスDCモータの端子電圧進角を増加させることによって電流を一定に保つとすることにより、第2波形発生部の転流タイミングのみの非常にシンプルな方法で制御できることとなり、ソフトウェアの保守性の向上や安価マイコンでの実現が可能となる。
第6の発明は、特に、第1の発明の前記ブラシレスDCモータは、回転子の鉄心に永久磁石を埋め込んでなる回転子であり、かつ突極性を有する回転子を有したものである。これによりブラシレスDCモータの駆動において、永久磁石によるマグネットトルクとともに、突極性によるリラクタンストルクも有効に利用できるようになるため、低速時の高効率駆動とともに、高効率の高速駆動性能も更に伸張することが可能となる。
第7の発明は、特に、第1の発明の前記ブラシレスDCモータの駆動負荷として圧縮機を用いたものである。前記圧縮機の駆動制御では工業用サーボモータ制御等の様に、高精度な回転数制御や加速制御などは必要無い。さらに前記圧縮機はイナーシャが比較的大きい負荷であり、短い時間での速度の変動は非常に少ない負荷といえる。従って、電流位相の検出を1相のみとしても速度変動等の制御精度が悪化することは無いため、本発明のモータ駆動装置の非常に有効な用途の1つと言える。また従来のモータ駆動装置よりブラシレスDCモータの駆動領域の拡張により、従来のモータ駆動装置と同じ圧縮機を用いた場合でも、冷凍能力を高めることが出来るので、高能力の冷凍サイクルの小型化と低価格化を実現できる。さらに、従来のモータ駆動装置を用いた冷凍サイクルに、本発明のモータ駆動装置を置き換えれば、より高効率なモータを用いた圧縮機を使用することが出来る様になり、冷凍サイクルのさらなる高効率化が実現できる。
第8の発明は、特に、第7の発明の前記圧縮機はレシプロ圧縮機である。これにより、往復運動を行うレシプロタイプは、構造上回転子には、金属性で重量の大きいクランクシャフトやピストンが接続されているため、イナーシャが非常に大きく、よりイナーシャが大きく、高速でのトルク脈動が小さいため、安定して高速まで動作させることができる。
第9の発明は、特に、第7の発明の前記圧縮機で使用される冷媒がR600aである。これにより、冷凍能力を得るために気筒容積を大きくし、イナーシャが大きくなり、さらに速度や負荷によって変動しにくい安定した駆動が可能となる。
第10の発明は、特に、第1〜5のいずれか1つの発明のモータ駆動装置を用いた電気機器である。これにより、電気機器として冷蔵庫に用いた場合は、負荷変動は急ではないため、より安定した駆動が可能となる。また、電気機器として空気調和機に用いた場合は、冷房時の最低負荷から暖房時の最大負荷まで幅広い駆動範囲に対応できるとともに、特に定格以下の低負荷での消費電力を低減することができる。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1におけるモータ駆動装置のブロック図である。図1において、交流電源1は一般的な商用電源で、日本においては実効値100Vの50または60Hzの電源である。モータ駆動装置22は、交流電源1に接続され、ブラシレスDCモータ4を駆動する。以下、モータ駆動装置22について説明する。
整流平滑回路2は、交流電源1を入力として交流電力を直流電力に整流平滑するものであり、ブリッジ接続された4個の整流ダイオード2a〜2dと、平滑コンデンサ2e、2fとから構成される。本実施の形態においては、整流平滑回路2は倍電圧整流回路により構成されているが、整流平滑回路2は全波整流回路により構成されても良い。さらに、本実施の形態においては、交流電源1は単相交流電源であるが、交流電源1が3相交流電源である場合は、整流平滑回路2は3相整流平滑回路によって構成される。
インバータ3は、整流平滑回路2からの直流電力を交流電力に変換する。インバータ3は、6個のスイッチング素子3a〜3fを3相ブリッジ接続して構成される。また、6個の還流電流用ダイオード3g〜3lは、各スイッチング素子3a〜3fに、逆方向に接続される。
ブラシレスDCモータ4は、永久磁石を有する回転子4aと、3相巻線を有する固定子4bとから構成される。ブラシレスDCモータ4は、インバータ3により作られた3相交流電流が固定子4bの3相巻線に流れることにより、回転子4aを回転させる。
位置検出部5は、本実施の形態においてはブラシレスDCモータ4の端子電圧を取得する。つまり、ブラシレスDCモータ4の回転子4aの磁極相対位置を検出する。具体的には、位置検出部5は、固定子4bの3相巻線に発生する誘起電圧に基づいて、回転子4aの相対的な回転位置を検出している。なお、別な位置検出方法としては、モータ電流(相電流または母線電流)の検出結果に対してベクトル演算を行って磁極位置の推定を行う方法が挙げられる。
第1波形発生部6は、インバータ3のスイッチング素子3a〜3fを駆動するための第1の波形信号を生成する。第1の波形信号は、通電角が120度以上150度以下の矩形波の信号である。3相巻線を有するブラシレスDCモータ4を滑らかに駆動させるためには、通電角は120度以上が必要である。一方、位置検出部5が、誘起電圧に基づいて位置を検出するためには、スイッチング素子のオン/オフの間隔として30度以上の間隔が必要である。このため、通電角は、180度から30度を減じた150度を上限とする。なお、第1の波形信号は、矩形波以外であっても、矩形波に準じる波形が挙げられる。例えば、波形の立ち上り/立ち下りに傾斜を持たせた台形波である。
第1波形発生部6は、位置検出部5により検出された回転子4aの位置情報を基に、第1の波形信号を生成する。第1波形発生部6はさらに、回転数を一定に保つために、パルス幅変調(PWM)デューティ制御を行っている。これにより、回転位置に基づいた最適なデューティで、効率良く、ブラシレスDCモータ4が駆動される。
速度検出部7は、位置検出部5が検出した位置情報に基づき、ブラシレスDCモータ4の速度(すなわち回転速度)を検出する。例えば、一定周期で発生する位置検出部5からの信号を計測することにより、簡単に検出することができる。
周波数設定部8は、システムで要求される任意の周波数指令出力する、デューティは一定で、周波数のみを変化させて周波数を設定する。
電流検出手段A9はブラシレスDCモータ4に流れる電流のうち所定の1相の電流値を検出する。本実施の形態では、U相の電流を検出することとする。検出した結果を進角補正手段10にへと出力する。
進角補正手段10は、電流検出手段A9で検出した電流値から目標とする電流値を設定し、その目標値と検出した電流値の差に応じてブラシレスDCモータ4の端子電圧進角の補正量を設定する。電流値は1周期のピークや特定範囲の積算電流値などとすることもできる。電流値のピークは、例えば電流周期の10分の1以下の十分に短い間隔で、定期的に電流値をサンプリングし、1周期内の最大値とサンプリング値を比較することで容易に求められ、安価な構成が可能となる。また、積算電流値は、例えば電流周期の10分の1以下の十分に短い間隔で、電流値を定期的にサンプリングし電流が正の区間の和を求めることで算出でき、バラツキを小さく抑え、精度よく求めることができる。本実施の形態では、目標にあわせる電流値を電流ピーク値とする。また、電流目標値は電流1周期に一回
更新し、ローパスフィルタや過去数回の平均を用いる。本実施の形態では電流ピーク値の平均値を目標電流値とする。平均は、例えば電流1周期ごとの電流ピーク値を過去10回分保存しておき、新しい電流ピーク値を最も古い電流ピーク値のデータと置き換えていき、10回分のデータの合計を合計の個数である10で除算することで算出が可能で、容易に算出することができる。
電流検出手段B23は、ブラシレスDCモータ4に流れる電流のうち所定の1相の電流値を検出する。
本実施の形態では、U相の電流を検出することとする。その電流が所定の電流以上の過負荷電流を検出した結果、過電流ならば、回転数を抑制するため−αを周波数設定部8へ出力する。
周波数設定部8では、電流検知手段B23からの出力された−αを現状回転数から差し引いた値で周波数を設定する。
第2波形発生部11は、周波数設定部8からの周波数と、位置検出部5のからの位置情報を基に、インバータ3のスイッチング素子3a〜3fを駆動するための第2の波形信号を生成する。第2の波形信号は、通電角が120度以上180度未満の矩形波の信号である。第1波形発生部6と同様に、ブラシレスDCモータ4は3相巻線を有するため、滑らかな効率の良い駆動のためには通電角は120度以上が必要である。一方、第2波形発生部11ではスイッチング素子のオン/オフの間隔は必要ないため、上限を180度未満とする。なお、第2の波形信号は、矩形波に準じる波形であれば良い。例えば、正弦波や歪み波であって良い。また本実施の形態では、デューティは最大もしくは最大に近い状態(90〜100%の一定のデューティ)である。
切換判定部12は、第1波形発生部6と第2波形発生部11からの信号を運転状態によって切換え、ドライブ部13へと出力する。具体的には、第1波形発生部6の信号で駆動中に、速度検出部7の速度が周波数設定部8が設定する周波数よりも低く、かつ第1波形発生部6で出力可能な最大のデューティと通電角であった場合に第2波形発生部11の信号へと切り替え、ドライブ部13へと出力する。これらの条件が満たされない場合は、第1波形発生部6の信号の出力を継続する。第2波形発生部11からの信号で駆動中に位置検出部5からの信号が検出可能になれば第1波形発生部6に信号波形を切り換える。位置検出部5からの信号が検出できない間は、第2波形発生部11の信号をドライブ部へ出力する。
ドライブ部13は、切換判定部12から出力された波形信号に基づき、インバータ3がブラシレスDCモータ4の3相巻線に供給する電力の供給タイミングを指示するドライブ信号を出力する。具体的にはドライブ信号は、インバータ3のスイッチング素子3a〜3fをオンまたはオフ(以下、オン/オフと記す)する。これにより、固定子4bに最適な交流電力が印加され、回転子4aが回転し、ブラシレスDCモータ4が駆動される。
次に、本実施の形態におけるモータ駆動装置22を用いた電気機器について説明する。電気機器の一例として、冷蔵庫21について説明する。
冷蔵庫21には圧縮機17が搭載されているが、ブラシレスDCモータ4の回転子4aの回転運動は、クランクシャフト(図示せず)により、往復運動に変換される。クランクシャフトに接続されたピストン(図示せず)は、シリンダ(図示せず)内を往復運動することにより、シリンダ内の冷媒を圧縮する。つまり、ブラシレスDCモータ4と、クランクシャフト、ピストン、シリンダにより、圧縮機17が構成される。
圧縮機17の圧縮方式(機構方式)は、ロータリー型やスクロール型など、任意の方式が用いられる。本実施の形態においては、レシプロ型の場合について説明する。レシプロ型の圧縮機17はイナーシャが大きい。このため、圧縮機17のブラシレスDCモータ4を同期駆動する場合は、圧縮機17の駆動が安定する。
圧縮機17に用いる冷媒は、一般にR134a等であるが、本実施の形態においては、冷媒はR600aを用いる。R600aは、R134aと比較して地球温暖化係数は小さいが、冷凍能力が低い。本実施の形態においては、圧縮機17はレシプロ型圧縮機で構成するとともに、冷凍能力を確保するために、気筒容積を大きくしている。気筒容積の大きい圧縮機17は、イナーシャが大きいため、電源電圧が低下した場合であっても、イナーシャによってブラシレスDCモータ4が回転する。これにより、回転速度の変動が少なくなり、より安定した同期駆動が可能となる。しかしながら、気筒容積の大きい圧縮機17は負荷が大きいため、従来のモータ駆動装置では駆動が困難である。本実施の形態におけるモータ駆動装置22は、特に高負荷での駆動範囲が拡張されるため、R600aを用いた圧縮機17を駆動するのに最適である。
圧縮機17で圧縮された冷媒は、凝縮器18、減圧器19、蒸発器20を順に通って、再び圧縮機17に戻るような冷凍サイクルを構成する。この時、凝縮器18では放熱を、蒸発器20では吸熱を行うので、冷却や加熱を行うことができる。この冷凍サイクルを搭載して冷蔵庫21が構成される。ここで、別な電気機器の例としては、凝縮器18や蒸発器20に送風機を備えたものが空気調和機である。
以上のように構成されたモータ駆動装置22について、その動作を説明する。まず、ブラシレスDCモータ4の速度が低く第1波形発生部6で駆動している時の(低速時)の動作について説明する。図2は、本実施の形態におけるモータ駆動装置22のタイミング図である。特に図2は、低速時でのインバータ3を駆動させる信号のタイミング図である。インバータ3を駆動させる信号とは、インバータ3のスイッチング素子3a〜3fをオン/オフするために、ドライブ部13から出力されるドライブ信号である。この場合、このドライブ信号は、第1の波形信号に基づいて得られる。第1の波形信号は、位置検出部5の出力に基づき、第1波形発生部6から出力される。
図2において、信号U、V、W、X、Y、Zはそれぞれ、スイッチング素子3a、3c、3e、3b、3d、3fをオン/オフするためのドライブ信号である。波形Iu、Iv、Iwはそれぞれ、固定子4bの巻線のU相、V相、W相の電流の波形である。ここで、低速時の駆動では、位置検出部5の信号に基づいて、120度ごとの区間で順次転流を行う。信号U、V、Wは、PWM制御によるデューティ制御を行っている。また、U相、V相、W相の電流の波形である波形Iu、Iv、Iwは、図2に示す様に、のこぎり波の波形となる。この場合は、位置検出部5の出力に基づいて、最適なタイミングで転流が行なわれている。このため、ブラシレスDCモータ4は最も効率良く駆動される。
次に、最適な通電角について、図3を用いて説明する。図3は、本実施の形態におけるモータ駆動装置22の、最適な通電角を説明する図である。特に図3は、低速時の通電角と効率との関係を示す。図3において、線Aは回路効率、線Bはモータ効率、線Cは総合効率(回路効率Aとモータ効率Bとの積)を示す。図3に示すように、通電角を120度より大きくすると、モータ効率Bは向上する。これは、通電角が広がることにより、モータの相電流の実効値が下がり(すなわち力率が上がり)、モータの銅損減少に伴いモータ効率Bが上がるためである。しかしながら、通電角を120度より大きくすると、スイッチング回数が増加し、スイッチングロスが増加する場合がある。このような場合は、回路効率Aは低下する。この回路効率Aとモータ効率Bとの関係から、総合効率Cが最も良く
なる通電角が存在する。本実施の形態では、130度が、総合効率Cが最も良くなる通電角である。
次に、ブラシレスDCモータ4の速度が高く第2波形発生部11で駆動している場合(高速時)の動作について説明する。図4は本実施の形態におけるモータ駆動装置22のタイミング図である。特に図4は、高速時でのインバータ3を駆動させるドライブ信号のタイミング図である。この場合、このドライブ信号は、第2の波形信号に基づいて得られる。第2の波形信号は、周波数設定部8の出力に基づき、第2波形発生部11から出力される。
図4における信号U、V、W、X、Y、Z、および波形Iu、Iv、Iwは図2と同様である。各信号U、V、W、X、Y、Zは周波数設定部8の出力に基づいて、所定周波数を出力して転流を行う。この場合の導電角は、120度以上180度未満とする。図4では、導電角が150度の場合を示している。導電角を上げることによって、各相の電流の波形Iu、Iv、Iwは擬似的に正弦波に近づく。
デューティを一定にして周波数を上げることにより、従来に比べて大幅に最高回転速度を上昇させることができ、回転速度が上がる。この回転速度が上がった状態では、同期モータとして駆動されており、駆動周波数の上昇に伴い電流も増加する。この場合、導電角を最大の180度未満まで広げることにより、ピーク電流が抑制される。従って、ブラシレスDCモータ4は、さらに高い電流で駆動しても、過負荷電流保護にかからずに動作される。
ここで、第2波形発生部11によって生成される、第2の波形信号について説明する。図5は、ブラシレスDCモータ4を同期駆動した場合の、トルクと位相との関係を示した図である。図5において、横軸はモータのトルク、縦軸は誘起電圧の位相を基準とした位相差を示し、位相が正の場合、誘起電圧の位相に対して進みであることを示す。また、同期駆動での安定状態を示す図5の、線D1はブラシレスDCモータ4の相電流の位相を、線E1はブラシレスDCモータ4の端子電圧の位相を示す。ここで、相電流の位相が端子電圧の位相より進んでいることから、同期駆動でブラシレスDCモータ4を高速で駆動していることが判る。図5に示す相電流の位相と端子電圧の位相との関係から明確なように、負荷トルクに対して相電流の位相の変化は少ない。一方で、端子電圧の位相が直線的に変化していることから、負荷トルクに応じて相電流と端子電圧との位相差はほぼ線形に変化する。
このように、同期駆動においては、ブラシレスDCモータ4の駆動は、駆動速度および負荷に応じた、適切な相電流の位相および端子電圧の位相との関係で安定する。この場合の、端子電圧の位相および相電流の位相との関係を図6に示す。特に図6は、負荷による相電流の位相と端子電圧の位相との関係をd−q平面上に示したベクトル図である。
同期駆動においては、端子電圧ベクトルVtは、負荷が増加した場合、大きさはほぼ一定に保ちながら、位相は進み方向に推移する。図6を用いて説明すると、端子電圧ベクトルVtは矢印Fの方向に回転する。一方、電流ベクトルIは、負荷が増加した場合、ほぼ一定の位相を保ちながら、負荷の増加に伴い大きさが変化する(例えば負荷増加に伴い電流が増える)。この関係を図7に示す。図7において、横軸はモータのトルク、縦軸は電流値を示している。線H1はブラシレスDCモータに流れる所定の一相の1周期ごとの電流ピークの平均を示している。図7に示すようにトルクが増加するほど電流値は増加していく。このように電圧ベクトルおよび電流ベクトルが駆動環境(入力電圧、負荷トルク、駆動速度等)に従い適切な状態で各ベクトルの位相関係が定まる。
ここで、ブラシレスDCモータ4をオープンループで同期駆動した場合の、ある負荷や速度における、位相の時間的変化について、図を用いて説明する。図8(a)、図8(b)は、ブラシレスDCモータ4の位相関係とそのときの電流ピーク値を説明するための図である。両図において、線D2は相電流の位相、線E2は端子電圧の位相、線H2は相電流1周期ごとのピーク値を示す。また、横軸は時間、縦軸は線D2、E2に対しては、誘起電圧の位相を基準とした位相(すなわち誘起電圧との位相差)を示し、線H2に対しては
電流値を示す。そして、図8(a)は低負荷での駆動状態を示し、図8(b)は高負荷での駆動状態を示す。また、誘起電圧の位相との差から、図8(a)、図8(b)共に、端子電圧の位相より相電流の位相が進んでいることから、ブラシレスDCモータ4が、同期駆動により非常に高速での駆動していることが判る。
図8(a)に示すように、駆動速度に対して負荷が小さい場合の同期駆動では、転流に対して負荷に見合った角度分だけ回転子4aが遅れる。すなわち、回転子4aから見ると転流が進み位相となり、電流値が一定の所定の関係が保たれる。つまり、誘起電圧から見ると、端子電圧および相電流の位相が進み位相となり、所定の関係が保たれる。これは弱め磁束制御と同様の状態であるため、高速での駆動が可能となる。
一方、図8(b)に示すように、駆動速度に対して負荷が大きい場合では、転流に対して回転子4aが遅れることで弱め磁束状態になり、相電流が増加し、回転子4aは転流周期に同期するように加速する。その後、回転子4aの加速により、端子電圧の進み位相の減少によって相電流が減少し、回転子4aが減速する。この状態が繰り返され、回転子4aは、この加速と減速を繰り返す。これにより結局、駆動状態(駆動速度)が安定しない。すなわち図8(b)に示す様に、一定周期で行われる転流に対して、ブラシレスDCモータ4の回転が変動する。このため、誘起電圧の位相を基準とした場合、端子電圧の位相が変動する。このような駆動状態では、ブラシレスDCモータ4の回転が変動し、それに伴ってうねり音が発生する。また、電流が脈動するため、過負荷電流と判断されて、ブラシレスDCモータ4が停止される可能性が生じる。
従って、ブラシレスDCモータ4をオープンループで同期駆動する場合、負荷が小さい状態では、ブラシレスDCモータ4は安定して駆動されるが、負荷が大きい状態では、上記の様な不都合が生じる。つまり、ブラシレスDCモータ4をオープンループで同期駆動する場合は、高速/高負荷での駆動はできず、駆動範囲が拡張されない。
そこで、本実施の形態におけるモータ駆動装置22は、相電流の位相と端子電圧の位相とを、図5に示すような負荷に見合った位相関係に保った状態で、ブラシレスDCモータ4を駆動する。このような相電流の位相と端子電圧の位相との位相関係を保つ方法について、以下に述べる。
モータ駆動装置22は、ブラシレスDCモータ4に流れる相電流を安定している電流値を目標に一定に保つよう転流タイミング(一定周期の転流)に対して補正を行い、相電流の位相と端子電圧の位相との位相関係を保った転流タイミングを決定する。具体的には、ブラシレスDCモータ4への負荷が増加し回転子4aが転流に対して遅れはじめ、弱め磁束効果により電流が増加した場合、電流を減少させるために、弱め磁束効果を低減するために端子電圧進角を減少させる。すなわち転流を遅らせる。逆に目標に対して電流が減少した場合は、電流を増加させるために、端子電圧進角を増加させる。すなわち転流を早める。これらの進角の変更は電流1周期に対して1回以上あればよい。また、目標となる電流値は負荷が増加し電流値が増加した場合には増加させ、逆に電流が減少した場合は同様に目標電流も低下させる。ただし、目標は進角の調整の周期よりも十分小さい変化量とする必要がある。本実施の形態では10分の1以下の変化量としている。この目標の変更方
により、負荷に応じた目標電流の設定が可能となる。そして、これらの補正は進角補正手段10で計算され、第2波形発生部11が転流タイミングを決定する。従って、この転流タイミングに基づいて生成された波形、すなわち第2の波形信号は、負荷に応じた電流値で、適切なトルクを出力した波形となる。第2波形発生部11は、生成した第2の波形信号をドライブ部13へ出力する。この進角補正手段10の動作について、図9のフローチャートを用いて説明する。
まず、ステップ100では、ステップ101でブラシレスDCモータに流れる相電流を電流検出手段B23が過負荷電流を検出した場合、ステップ110に進み、検出しなければステップ102へ移行する。
次にブラシレスDCモータに流れる相電流を電流検出手段A9が検出し、ステップ102に進む。
ステップ102では、進角補正手段10がブラシレスDCモータ4の相電流1周期の最大電流より、電流検出手段A9で今回検出された電流値が大きいかどうかを判定する。ここで電流値が最大電流よりも大きい場合(ステップ102のYes)はステップ103へ進み、最大電流以下の場合(ステップ102のNo)はステップ104へと進む。
ステップ103では、最大電流よりも今回検出した電流値が大きいため、最大電流を更新する。これによって、最大電流は常に最大の電流が代入されることとなり、ブラシレスDCモータ4の電流のピークを検出することができる。次にステップ104へとすすむ。
ステップ104にはブラシレスDCモータ4に流れる特定の相電流が必ずピークならないタイミングの転流かどうかを判定する。本実施の形態では特性の相はU相とし、U相の電流が必ずピークとはならない転流タイミングとしてW相上のスイッチがオンするタイミングとする。つまりスイッチング素子3eがオンするタイミングの場合(ステップ104のYes)は次にステップ105へと進み、そうで無い場合(ステップ104のNo)は再びステップ101に戻り処理を繰り返す。
ステップ105では、電流を一定にするための目標となる電流ピーク値の平均値である電流平均値より、今回の電流周期の電流ピーク値である最大電流が大きいかどうかを判定する。大きい場合(ステップ105のYes)はステップ106へと進む。
ステップ106では、目標値より電流ピークが大きいため、電流値を減らす必要があり、進角を減らす(つまり転流タイミングをおくらせる)ことで、弱め磁束効果を低減するよう補正量を決定する。この補正量は目標値である電流平均値と電流ピーク値である最大電流の差に応じて決定する。差が大きければ補正量を大きくし、小さければ補正量を小さくする。これによってモータの弱め磁束の強さの変動を吸収した駆動が可能となる。次にステップ107に進む。
ステップ107では、電流平均値を更新する。安定させる電流の目標が常に一定では負荷に応じた電流を出力できないため、電流平均を更新する必要がある。平均は過去10回分の最大電流から求めており、新しい電流平均値は最も古い電流平均値を除き、今回検出された最大電流を含めて計算する。これにより、負荷が重くなれば目標となる電流平均値は大きくなり、負荷が小さくなれば目標となる電流平均値は小さくなるため、負荷に応じた目標値を設定することができる。また、補正量に対して変更量が10分の1となり不安定になることはない。次にステップ108に進む。
ステップ108では、最大電流を0にクリアする。これは1周期に一回実行されること
となるため、最大電流は電流1周期のピーク値を持つこととなる。
一方、ステップ105において、今回の電流周期の電流ピーク値である最大電流が大きいかどうかを判定し、小さい場合(ステップ105ではNo)はステップ109に進む。ステップ109では、目標値より電流ピークが小さいため、電流値を増やす必要があり、進角を増やす(つまり転流タイミングを早める)よう補正量を決定する。この補正量は目標値である電流平均値と電流ピーク値である最大電流の差に応じて決定する。差が大きければ補正量を大きくし、小さければ補正量を小さくする。これによってモータの弱め磁束の弱まりの変動を吸収した駆動が可能となる。次にステップ107に進む。
これら一連の処理を少なくとも電流1周期に1回実施することで、ブラシレスDCモータ4の負荷の状態に応じた必要な電流を出力し、安定した駆動を可能にする第2波形発生部が出力する転流タイミングの補正量の決定が可能となる
次にステップ110では、過負荷電流が検出されたため、周波数設定部に回転数抑制するため−αを出力する。
次に、切換判定部12による切り換え動作について説明する。
図10は、本実施の形態におけるブラシレスDCモータ4の、回転数とデューティとの関係を示す図である。
図10において、ブラシレスDCモータ4の回転数、つまり回転子4aの回転数が50r/s以下の場合は、第1波形発生部6による第1の波形信号に基づいて、ブラシレスDCモータ4が駆動される。デューティは、フィードバック制御により、回転数に応じて、最も効率が良い値に調整される。
回転数が50r/sでデューティが100%となり、第1波形発生部6に基づく駆動では、それ以上回転させることができない。すなわち限界に到達する。この状態において、周波数設定部8での設定が50r/sを超える回転数(ここでは75r/s)を指令している場合は、回転数指令まで、デューティは一定で、周波数(すなわち転流周期)のみを上げて、ブラシレスDCモータ4が駆動される。
一方で、75r/sで駆動中に50r/s以下の指令(ここでは45r/s)が周波数設定部8から発生した場合、第2波形発生部11は駆動信号の周波数を徐々に下げていく。50r/sに到達したところで、位置検出部5でブラシレスDCモータ4の位置検出信号が検出可能となるため、切換判定部12に入力される。ここで、切換判定部12では位置検出信号が入力されたため、ドライブ信号を第2波形発生部11から第1波形発生部6のドライブ信号へと切り換える。これによって、高速/高負荷での運転が可能な第2波形発生部11と低速や低負荷での安定性の高い第1波形発生部6を切り換えて運転することができる。なお、上限周波数はシステムによってあらかじめ設定しておくことで、上限周波数が駆動可能な最適なモータを選定することができ、信頼性を確保できる。
また、第2波形発生部から第1波形発生部6のドライブ信号へと切り換える際に、位置検出信号が切換判定部12へと入力されてからさらに2Hz落とした周波数で切り換えるようにするなどヒステリシスを設けることで、より確実に第1波形発生部6で安定した駆動が可能となる。
また、電流検出手段B23からの−αの指示が周波数設定部8にあった場合は、周波数設定部8は、デューティと回転数の特性に応じ、現在の回転数に−αを加えた回転数の抑制する指示を第1波形発生部6と第2波形発生部11に出力する。
次に、本実施の形態のブラシレスDCモータ4の構造について説明する。図11は、本実施の形態におけるブラシレスDCモータ4の回転子の、回転軸に対して垂直断面を示した断面図である。
回転子4aは、鉄心4gと4枚のマグネット4c〜4fとから構成される。鉄心4gは、0.35〜0.5mm程度の薄い珪素鋼板を打ち抜いたものを積み重ねて構成される。マグネット4c〜4fは、円弧形状のフェライト系永久磁石がよく用いられ、図示したように、円弧形状の凹部が外方を向くように、中心対称に配置される。一方、マグネット4c〜4fとして、ネオジウムなどの希土類の永久磁石を用いる場合は、平板形状の場合もある。
このような構造の回転子4aにおいて、回転子4aの中心から、1つのマグネット(例えば4f)の中央に向かう軸をd軸とし、回転子4aの中心から、1つのマグネット(例えば4f)とこれに隣接するマグネット(例えば4c)との間に向かう軸をq軸とする。d軸方向のインダクタンスLdとq軸方向のインダクタンスLqは逆突極性を有し、異なるものとなる。つまりこれは、モータとしては、マグネットの磁束によるトルク(マグネットトルク)以外に、逆突極性を利用したトルク(リラクタンストルク)を有効に使える。したがって、モータとして、よりトルクが有効的に利用できる。この結果、本実施の形態としては、高効率なモータが得られる。
また、本実施の形態の制御において、周波数設定部8と第2波形発生部11による駆動を行うと、相電流は進み位相でとなる。そのため、このリラクタンストルクが大きく利用されるので、逆突極性がないモータに比べて、より高回転で駆動することができる。
また、本実施の形態のブラシレスDCモータ4は、鉄心4gに永久磁石4c〜4fを埋め込んでなる回転子4aを有し、かつ突極性を有する。また、永久磁石のマグネットトルクの他に、突極性によるリラクタンストルクを用いている。このことにより、低速時の効率向上はもちろん、高速駆動性能をさらに上げることになる。また、永久磁石にネオジウムなどの希土類磁石を採用してマグネットトルクの割合を多くしたり、インダクタンスLd、Lqの差を大きくしてリラクタンストルクの割合を多くしたりすると、最適な通電角を変えることにより効率を上げることができる。
次に、本実施の形態のモータ駆動装置22を冷蔵庫21や空気調和機に用いて、圧縮機17を駆動した場合について説明する。従来のモータ駆動装置であれば、高速/高負荷での駆動に対応するために、巻線の巻き込み数を少なくすることにより必要トルクを確保したブラシレスDCモータを利用する必要があった。このようなブラシレスDCモータは、モータの騒音等が大きかった。本実施の形態のモータ駆動装置22を用いれば、巻線の巻込み量を増やしてトルクダウンしたブラシレスDCモータ4を利用しても、高速/高負荷で駆動できる。これにより、回転数が低い場合のデューティが、従来のモータ駆動装置を用いた場合より大きくできる。そのため、モータの騒音、特にキャリア音(PWM制御での周波数に相当する。例えば3kHz)が低減できる。
また、圧縮機17をレシプロ圧縮機とすることで、よりイナーシャが大きく、高速でのトルク脈動が小さいため、安定して高速まで動作させることができる。また、圧縮機17を冷蔵庫21に搭載した場合、冷蔵庫21は負荷の変動が急ではないため、相電流の位相と端子電圧の位相の位相差の変化は小さく、より安定した駆動が可能となる。
なお、本実施の形態のモータ駆動装置22を用いて空気調和機の圧縮機17を駆動する場合では、さらに、冷房時の最低負荷から暖房時の最大負荷まで幅広い駆動範囲に対応で
きるとともに、特に定格以下の低負荷での消費電力を低減することができる。
以上説明したように本発明は、回転子と、3相巻線を有する固定子とからなるブラシレスDCモータを駆動するモータ駆動装置であって、前記3相巻線に電力を供給するインバータと、通電角が120度以上150度以下の波形である第1の波形信号を出力する第1波形発生部と、前記ブラシレスDCモータに流れる少なくとも一相の電流を検出する電流検出手段Aと、前記ブラシレスDCモータに流れる少なくとも一相の過負荷電流を検出し、回転数の抑制する値を出力する電流検出手段Bと、前記電流検出手段Aによって検出された電流値を一定に保つよう前記ブラシレスDCモータの端子電圧進角を補正する進角補正手段と、前記進角補正手段によって補正された進角値と任意に設定し、前記電流検知手段Bからの出力の値により回転数を抑制する周波数設定部と、前記周波数設定部のデューティは一定に保ちながら通電角が120度以上180度未満の波形である第2の波形信号を出力する第2波形発生部と、前記第1の波形信号と前記第2の波形信号の出力を運転状態によって切り換える切換判定部と、前記切換判定部から出力された第1または第2の波形信号に基づき、前記インバータが前記3相巻線に供給する電力の供給タイミングを指示するドライブ信号を、前記インバータに出力するドライブ部とを有するモータ駆動装置とを有したことにより、モータの位置検出することなく安定した駆動が可能となるため、ブラシレスDCモータの位置検出が困難な高速/高負荷であっても安定した駆動、及び過負荷電流を検知し回転数を抑制することが可能となる。
また本発明は、電流値を一定に保つということを、電流検出手段A9によって検出された電流値の平均を目標として電流値を目標に近づけるとしたことにより、モータが最も安定する電流値で駆動することとなり、より安定した駆動が可能となる。
また本発明は、進角補正手段10が扱う電流値を電流検出手段Aによって検出された電流値のピーク値にするとしたことにより、電流一定に必要な計算負荷が少なくて済むこととなり、安価なマイコンでの実現が可能となる。
また、進角補正手段10が扱う電流値を、電流検出手段A9によって検出された電流値の任意の位相範囲の積算結果を一定にするとしたことにより、安定駆動に必要な限られた範囲のみを検出することとなるため、より精度よく安定した駆動が可能となる。
また本発明は、進角補正手段10が、電流検出手段A9によって検出された電流値が一定に保とうとする目標の電流よりも大きかった場合にブラシレスDCモータ4の端子電圧進角を減少させ、目標の電流よりも小さい場合にブラシレスDCモータ4の端子電圧進角を増加させることによって電流を一定に保つとすることにより、第2波形発生部11の転流タイミングだけで制御できることとなり、ソフトウェアの保守性の向上や安価マイコンでの実現が可能となる。
また本発明は、ブラシレスDCモータ4は、回転子4aの鉄心に永久磁石を埋め込んでなる回転子であり、かつ突極性を有する回転子を有したものである。これによりブラシレスDCモータの駆動において、永久磁石によるマグネットトルクとともに、突極性によるリラクタンストルクも有効に利用できるようになるため、低速時の高効率駆動とともに、高効率の高速駆動性能も更に伸張することが可能となる。
また本発明は、ブラシレスDCモータ4の駆動負荷として圧縮機17を用いたものである。圧縮機17の駆動制御では工業用サーボモータ制御等の様に、高精度な回転数制御や加速制御などは必要無い。さらに圧縮機17はイナーシャが比較的大きい負荷であり、短い時間での速度の変動は非常に少ない負荷といえる。従って、電流位相の検出を1相のみとしても速度変動等の制御精度が悪化することは無いため、本発明のモータ駆動装置の非
常に有効な用途の1つと言える。また従来のモータ駆動装置よりブラシレスDCモータの駆動領域の拡張により、従来のモータ駆動装置と同じ圧縮機を用いた場合でも、冷凍能力を高めることが出来るので、高能力の冷凍サイクルの小型化と低価格化を実現できる。さらに、従来のモータ駆動装置を用いた冷凍サイクルに、本発明のモータ駆動装置を置き換えれば、より高効率なモータを用いた圧縮機を使用することが出来る様になり、冷凍サイクルのさらなる高効率化が実現できる。さらに、従来の駆動方法よりも高いトルクを出力できるので、巻線の巻込み量を増やしてトルクダウンしたブラシレスDCモータを利用し、モータの騒音、特にキャリア音が低減できる。
また本発明は、圧縮機17はレシプロ圧縮機である。これにより、往復運動を行うレシプロタイプは、構造上回転子には、金属性で重量の大きいクランクシャフトやピストンが接続されているため、イナーシャが非常に大きく、よりイナーシャが大きく、高速でのトルク脈動が小さいため、安定して高速まで動作させることができる。
また本発明は、圧縮機17で使用される冷媒がR600aである。これにより、冷凍能力を得るために気筒容積を大きくし、イナーシャが大きくなり、さらに速度や負荷によって変動しにくい安定した駆動が可能となる。
また本発明は、モータ駆動装置22を用いた電気機器である。これにより、電気機器として冷蔵庫21に用いた場合は、負荷変動は急ではないため、より安定した駆動が可能となる。また、電気機器として空気調和機に用いた場合は、冷房時の最低負荷から暖房時の最大負荷まで幅広い駆動範囲に対応できるとともに、特に定格以下の低負荷での消費電力を低減することができる。
また本発明は、上記構成のモータ駆動装置を用いた電気機器である。これにより、電気機器として冷蔵庫に用いた場合は、負荷変動は急ではないため、より安定した駆動が可能となる。また、電気機器として空気調和機に用いた場合は、冷房時の最低負荷から暖房時の最大負荷まで幅広い駆動範囲に対応できるとともに、特に定格以下の低負荷での消費電力を低減することができる。