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JP2011126318A - ハイブリッド電気自動車の発進制御装置 - Google Patents

ハイブリッド電気自動車の発進制御装置 Download PDF

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JP2011126318A JP2009283999A JP2009283999A JP2011126318A JP 2011126318 A JP2011126318 A JP 2011126318A JP 2009283999 A JP2009283999 A JP 2009283999A JP 2009283999 A JP2009283999 A JP 2009283999A JP 2011126318 A JP2011126318 A JP 2011126318A
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達雄 木内
Kunio Sakata
邦夫 坂田
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Abstract

【課題】走行用動力源の電動機を用いたエンジン自動始動後に発進変速段への切換操作に起因する遅れを生じることなく迅速に車両を発進できるハイブリッド電気自動車の発進制御装置を提供する。
【解決手段】停車状態からの車両発進時においてエンジン1が自動停止されているとき、第1歯車機構G1をニュートラル状態にすると共にアウタクラッチ21を接続して電動機2によりエンジン1を始動する一方、第2歯車機構G2を第3速に切り換えてインナクラッチ22を接続し、この第3速を介してエンジン1の駆動力で車両を発進させることにより、第1歯車機構G1をニュートラル状態から発進変速段である第2速に切り換えることによる遅れを防止する。
【選択図】図6

Description

本発明はハイブリッド電気自動車の発進制御装置に係り、詳しくは信号待ちなどの一時的な停車時にエンジンを停止させて自動的に始動する機能を備えたハイブリッド電気自動車の発進制御装置に関する。
近年、エンジン及び電動機の駆動力を任意に駆動輪に伝達可能なパラレル型ハイブリッド電気自動車が実用化されている。この種のハイブリッド電気自動車では、エンジンの出力軸にクラッチ及び電動機を介して変速機の入力軸を接続し、変速機の出力軸に差動装置を介して左右の駆動輪を接続してパワートレインを構成している。例えばエンジン単独の走行時には、クラッチを接続してエンジンを作動させることでその駆動力を駆動輪側に伝達し、また、エンジン及び電動機を併用した走行時には、クラッチを接続してエンジンを作動させると共に電動機を作動させることで双方の駆動力を駆動輪側に伝達し、電動機単独の走行時には、クラッチを切断してエンジン側を切り離した上で電動機を作動させることでその駆動力を駆動輪側に伝達している。
ところで、信号待ちなどでのエンジンのアイドル運転は燃費や排ガス性能にとって好ましくないため、信号待ちに際して車両が停車したときにエンジンを自動停止させると共に、発進のための運転者によるブレーキ解除操作などに基づきエンジンを自動始動する、所謂エンジン自動停止始動装置が実用化されている。
この種のエンジン自動停止始動装置を上記したハイブリッド電気自動車に備えた場合、走行用動力源である電動機を利用してエンジン始動時のクランキングを行う手法が採られることがある。即ち、エンジン自動停止始動装置によるエンジン始動は運転者のキースイッチ操作による通常のエンジン始動操作とは異なるため、始動時の騒音や振動を運転者が敏感に感じ取る傾向があり、エンジンに付設されたセルスタータによる一般的な始動ではギヤ噛合に起因する騒音や振動が運転者に不快感を抱かせる要因になる。そこで、ハイブリッド電気自動車に適用した場合にはクラッチを接続した上で電動機を作動させ、その駆動力を利用してエンジンをクランキングすることにより始動時の騒音や振動低減を図っている。
しかしながら、上記ハイブリッド電気自動車では電動機と変速機とを直結したパワートレイン構成のため、停車中のままエンジン始動のために電動機を作動させるには、変速機をニュートラル状態にして駆動輪側への駆動力の伝達を遮断する必要がある。
必然的に、エンジン始動直後にはニュートラル状態の変速機を予め定められた発進用の変速段(以下、発進変速段と称する)に切り換える操作が必要となり、その操作の所要時間分だけ車両発進が遅延されてしまう。結果としてブレーキ解除の直後に発進すべくアクセルを踏込み操作したにも拘わらず車両が直ちに発進せず、運転者に大きな違和感を抱かせてしまうという問題が生じた。
ところで、ハイブリッド電気自動車には一般的な変速機のみならず、例えば特許文献1に記載されているような所謂デュアルクラッチ式変速機が組み合わされる場合もある。当該特許文献1に記載のデュアルクラッチ式変速機は、第1入力軸と出力軸との間に複数の変速段を構成する第1歯車機構を設けると共に、第2入力軸と出力軸との間に複数の変速段を構成する第2歯車機構を設け、エンジンからの駆動力を第1クラッチを介して第1入力軸に伝達可能とする一方、第2クラッチを介して第2入力軸にも伝達可能としている。
そして、例えば第1歯車機構で何れかの変速段が選択されてエンジンからの駆動力が第1クラッチを介して第1入力軸に伝達されているときには、第2クラッチが切断されることによって、第2入力軸にはエンジンからの駆動力が伝達されないようになっている。このとき第2歯車機構において、次に予測される変速段に予め切り換え(以下、この操作をプリセレクトという)、変速段の切換指示があると第1クラッチを切断していきながら第2クラッチを接続していくことにより、駆動輪への動力伝達を連続的に行いながら変速を完了して運転フィーリングを改善している。
特開2005−186931号公報
しかしながら、上記特許文献1に記載されたデュアルクラッチ式変速機は運転フィーリングの向上には貢献するものの、エンジン自動停止始動装置を備えたハイブリッド電気自動車と組み合わせた場合、エンジン自動始動後の発進応答性の問題は一般的な変速機の場合と同様に発生した。
即ち、上記発進変速段はデュアルクラッチ式変速機の第1歯車機構と第2歯車機構との何れかに含まれることになるが、変速機の機構上の制限などにより発進変速段を何れの歯車機構に含ませるかは自由に設定できず、一方、特許文献1の図1に示されているように、第1入力軸と第2入力軸とが内外2重に配設される機構上、電動機の駆動力はアウタ側の第1入力軸にしか伝達できない。
このような機構上の制限により、発進変速段を含む歯車機構側に電動機が設けられる構成が採られる場合があり、このときの電動機の駆動力は当該発進変速段を含む歯車機構を介して伝達されることになる。結果として停車中のままエンジン始動のために電動機を作動させる際には、発進変速段を含む歯車機構をニュートラル状態にする必要が生じ、その後の発進時に発進変速段への切換操作を実行することにより車両発進が遅延してしまう。従って、従来よりエンジン自動始動後の発進応答性の問題を解消するための抜本的な対策が要望されていた。
本発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、走行用動力源の電動機を用いたエンジン自動始動後に発進変速段への切換操作に起因する遅れを生じることなく迅速に車両を発進させることができるハイブリッド電気自動車の発進制御装置を提供することにある。
上記目的を達成するため、請求項1の発明は、第1クラッチの接続時にエンジンからの駆動力を第1入力軸を介して入力し、駆動力を発進変速段を含む複数の変速段の何れかにより変速して出力軸を介して車両の駆動輪に伝達可能であると共に、第1入力軸に電動機のロータが結合されて電動機の駆動力を駆動輪に伝達可能な第1歯車機構と、第2クラッチの接続時にエンジンからの駆動力を第2入力軸を介して入力し、駆動力を複数の変速段の何れかにより変速して出力軸を介して駆動輪に伝達可能な第2歯車機構と、停車状態からの車両発進時において、第1歯車機構を発進変速段に切り換え、第1入力軸を介して入力されるエンジンの駆動力または電動機の駆動力の少なくとも一方を発進変速段により変速して駆動輪に伝達して車両を発進させる発進制御手段と、車両の一時的な停車に際してエンジンが停止されているときに、所定の始動条件が成立するとエンジンを自動始動するエンジン始動制御手段とを備えたハイブリッド電気自動車の発進制御装置において、発進制御手段は、停車状態からの車両発進時においてエンジンが停止されているときには、第1歯車機構を何れの変速段も選択しないニュートラル状態にすると共に第1クラッチを接続し、所定の始動条件が成立した時にエンジン始動制御手段により電動機を作動させて電動機の駆動力を第1クラッチを介してエンジンに伝達することによりエンジンを始動させる一方、第2歯車機構を発進変速段に隣接する変速段に切り換えると共に第2クラッチを接続し、エンジンの駆動力を発進変速段に隣接する変速段を介して駆動輪に伝達して車両を発進させるものである。
従って、車両発進時においてエンジンが停止されているときには、第1歯車機構がニュートラル状態にされると共に第1クラッチが接続され、電動機の駆動力が第1クラッチを介してエンジンに伝達されることにより、車両を停車させたままエンジンがクランクキングされて始動する。これにより、セルスタータによる一般的な始動に比較して騒音や振動の低減が達成される。
そして、このように停車中のままエンジン始動のために電動機を作動させるには第1歯車機構をニュートラル状態とする必要があることから、第1歯車機構に含まれる発進変速段により車両を発進させるには、発進変速段への切換操作により発進が遅延してしまう。ここで、本発明では、第2歯車機構を発進変速段に隣接する変速段に切り換えて第2クラッチを接続し、この発進変速段に隣接する変速段を介してエンジンの駆動力を駆動輪に伝達して車両を発進させている。このため、エンジンの始動を完了する以前でも第2歯車機構を発進変速段に隣接する変速段に切り換えておくことが可能となり、結果として発進変速段への切換操作に起因する遅れを生じることなく迅速な車両の発進が可能となる。
請求項2の発明は、請求項1において、発進制御手段が、エンジンが停止されているときの車両発進時において、車両のセレクトレバーにより走行レンジが選択されているときには、電動機によるエンジン始動を行うと共に第2歯車機構を発進変速段に隣接する変速段に切り換え、変速段を介してエンジンの駆動力により車両を発進させ、一方、セレクトレバーにより非走行レンジが選択されているときには、電動機によるエンジン始動完了後に第1歯車機構をニュートラル状態から発進変速段に切り換え、発進変速段を介してエンジンの駆動力または電動機の駆動力の少なくとも一方により車両を発進させるものである。
従って、非走行レンジであるパーキングレンジまたはニュートラルレンジが選択されているときには、走行レンジであるドライブレンジへの切換操作後に発進のためにアクセルペダルが踏み込み操作されるため、セレクトレバーの操作の間に第1歯車機構をニュートラルから発進変速段に切り換えて発進に備えるだけの時間的に余裕が存在し、運転者が発進に遅れを感じることはほとんどない。このため、非走行レンジであるパーキングレンジやニュートラルレンジの選択時には、通常通り発進変速段による車両発進が可能となると共に、走行用動力源として電動機を任意に使用可能となる。
請求項3の発明は、請求項1または2において、発進制御手段が、電動機の駆動力によりエンジンの始動を完了した後に、第1歯車機構をニュートラル状態から発進変速段に切り換え、発進変速段への切換完了前に運転者によりアクセル踏込み操作が行われたときには、第2歯車機構の発進変速段に隣接する変速段を介してエンジンの駆動力により車両を発進させ、一方、アクセル踏込み操作前に発進変速段への切換が完了したときには、発進変速段を介してエンジンの駆動力または電動機の駆動力の少なくとも一方により車両を発進させるものである。
従って、発進変速段への切換完了前にアクセル踏込み操作が行われると、第2歯車機構の発進変速段に隣接する変速段を介してエンジンの駆動力により車両が発進し、アクセル踏込み操作前に発進変速段への切換が完了したときには、発進変速段を介してエンジンの駆動力または電動機の駆動力の少なくとも一方により車両が発進する。このように、アクセル踏込み操作前に発進変速段への切換が完了すれば、通常通り第1歯車機構の発進変速段が選択されることから、発進のために最適設定された発進変速段により車両を円滑に発進できると共に、ハイブリッド電気自動車の特徴を活かした電動機による発進を行うことができる。
請求項4の発明は、請求項1乃至3において、発進制御手段が、車両の停車に伴うエンジンの停止に先行して、発進変速段に隣接する変速段への第2歯車機構の切換を完了するものである。
従って、例えばエンジン駆動のオイルポンプから供給される作動油を利用して第2歯車機構の変速段を切り換えるように発進制御装置を構成した場合などには、エンジン停止後には第2歯車機構を発進変速段に隣接する変速段に切換不能となってしまう。本発明では、エンジン停止に先行して第2歯車機構の変速段の切換を完了することから、このようなエンジンの運転を前提としたシステムにも適用可能となる。
請求項5の発明は、請求項1乃至4において、発進変速段に隣接する変速段として、発進変速段よりも高速ギヤ側に隣接する変速段が設定されており、車両が停車中の路面勾配及び車両の積載量に基づき、発進変速段に隣接する高速ギヤ側の変速段による車両発進が可能であるか否かを判定する発進可否判定手段を備え、発進制御手段が、発進可否判定手段により発進不能の判定が下されたときに、第1クラッチを切断すると共に上記発進変速段への切換完了後、電動機に代えてエンジンに付設されたセルスタータによりエンジンを始動し、該第1クラッチを接続し、発進変速段を介してエンジンの駆動力または電動機の駆動力の少なくとも一方により車両を発進させるものである。
従って、発進可否判定手段により発進不能の判定が下されたときにはセルスタータによりエンジンが始動された上で、本来の発進変速段を使用して電動機の駆動力により発進が行われる。このため、登坂路での発進不能が未然に防止されると共に、セルスタータを使用することで第1歯車機構をニュートラル状態にする必要がなくなることから迅速な発進が可能となる。
以上説明したように請求項1の発明のハイブリッド電気自動車の発進制御装置によれば、第1歯車機構をニュートラル状態として第1クラッチを接続することにより走行用動力源である電動機の駆動力を利用してエンジンを始動する一方、車両の発進は、発進変速段に隣接する第2歯車機構の変速段を介してエンジンの駆動力を駆動輪に伝達することにより行うようにしたため、エンジンの始動を完了する以前でも第2歯車機構を隣接する変速段に切り換えておくことが可能となり、結果として発進変速段への切換操作に起因する遅れを生じることなく迅速に車両を発進させることができる。
請求項2の発明のハイブリッド電気自動車の発進制御装置によれば、請求項1に加えて、運転者が発進に遅れを感じることがない非走行レンジであるパーキングレンジやニュートラルレンジが選択されたときには、通常通り第1歯車機構の発進変速段を選択することから、発進のために最適設定された発進変速段により車両を円滑に発進できると共に、ハイブリッド電気自動車の特徴を活かした電動機による発進を行うことができる。
請求項3の発明のハイブリッド電気自動車の発進制御装置によれば、請求項1または2に加えて、アクセル踏込み操作前に発進変速段への切換が完了したときには、通常通り第1歯車機構の発進変速段を選択することから、発進のために最適設定された発進変速段により車両を円滑に発進できると共に、ハイブリッド電気自動車の特徴を活かした電動機による発進を行うことができる。
請求項4の発明のハイブリッド電気自動車の発進制御装置によれば、請求項1乃至3に加えて、エンジン停止に先行して第2歯車機構の変速段の切換を完了することにより、エンジンの運転を前提としたシステムにも適用でき、もってその適用範囲を大幅に拡大することができる。
請求項5の発明のハイブリッド電気自動車の発進制御装置によれば、請求項1乃至4に加えて、車両が登坂路に停車して発進変速段に隣接する高速ギヤ側の変速段では発進不能な場合でも、セルスタータを使用することでエンジンを始動して発進変速段により迅速に発進することができる。
本発明の実施形態に係るハイブリッド電気自動車の発進制御装置を示す概略構成図である。 車両ECUが実行する発進制御ルーチンを示すフローチャートである。 同じく車両ECUが実行する発進制御ルーチンを示すフローチャートである。 エンジン自動始動時の駆動力の伝達状況を示す概念図である。 エンジン自動始動後に第2速で発進するときの駆動力の伝達状況を示す概念図である。 エンジン自動始動後に第3速で発進するときの駆動力の伝達状況を示す概念図である。
以下、図面に基づき本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るハイブリッド電気自動車の発進装置を示す概略構成図である。
全体として駆動装置は、走行用動力源であるエンジン1及び電動機2をクラッチユニット3を介して変速機4に接続して構成され、これらのエンジン1や電動機2からの駆動力をクラッチユニット3及び変速機4を経て左右の駆動輪5(後輪)に伝達することによりハイブリッド電気自動車を走行させるようになっている。以下の説明では、車両の前後に倣って図1の左方を前方とし、図1の右方を後方として表現する。
エンジン1の出力軸1aは後方に突出して、同軸となるようにクラッチユニット3の入力側が連結されている。クラッチユニット3の出力側には変速機4の入力側が連結され、変速機4の出力側には差動装置6を介して左右の駆動輪5が連結されている。クラッチユニット3の周囲には環状をなすように電動機2が設けられ、図示はしないが、電動機2は内外2重に配設されたロータ及びステータにより構成されている。
ロータはクラッチユニット3の外周に固定され、ステータは変速機4のケーシングに固定され、ロータとステータとの間に磁界が発生すると、エンジン1と同方向の駆動トルク或いは逆方向の回生トルクが駆動力として変速機4に入力されるようになっている。
クラッチユニット3及び変速機4の詳細については後述するが、エンジン1及び電動機2からの駆動力がクラッチユニット3及び変速機4を介して駆動輪5側に伝達されることにより、変速機4の変速段に応じた駆動力により駆動輪5が駆動されて車両が走行する。また、駆動輪5側に伝達される駆動力は、クラッチユニット3の接続・切断状態に応じてエンジン1の駆動力のみ、或いは電動機2の駆動力のみ、或いはエンジン1及び電動機2の駆動力に切り換えられ、これにより走行用動力源としてエンジン1単独、電動機2単独、エンジン1及び電動機2を併用した3種の走行を可能としている。
一方、上記エンジン1及び電動機2の運転制御、クラッチユニット3の接続・切断制御、変速機4の変速切換制御などは、車両ECU11により統合制御される。このために車両ECU11には、エンジン1を制御するエンジンECU12や電動機2を制御するインバータECU13などの各種制御装置が接続されている。
エンジンECU12は、車両ECU11からの情報に基づきエンジン1のアイドル運転制御や図示しない排ガス浄化装置の再生制御など、エンジン1自体の運転に必要な各種制御を行うと共に、車両ECU11から指令される運転者の要求トルクを達成すべく、エンジン1の燃料噴射量や噴射時期などを制御する。
インバータECU13は、図示しない走行用バッテリに蓄えられた直流電力をインバータ14により交流電力に変換し、車両ECU11からの上記運転者の要求トルクを達成すべく、変換した交流電力を電動機2に供給することにより電動機2をモータとして作動させて、車両を走行させるための駆動トルクを発生させる。また、車両減速に際して、駆動輪5側からの逆駆動により電動機2が回生トルクを発生させながら発電機として機能しているときには、インバータECU13は電動機2から出力される交流電力をインバータ14により直流電力に変換して走行用バッテリに充電する。
車両ECU11は、これらエンジンECU12及びインバータECU13との間で相互に情報をやりとりしながら、エンジン1及び電動機2を適切に制御するようエンジンECU12及びインバータECU13に指令を出力すると共に、クラッチユニット3及び変速機4の制御を適宜実行する。
具体的には、車両ECU11は、アクセルペダルの踏込量を検出するアクセル開度センサ15や、車両の走行速度を検出する車速センサ16及び電動機2(クラッチユニット3の出力側)の回転速度を検出する回転速度センサ17の検出結果などに基づき、上記運転者の要求トルクを車両加速時や定常走行時には正の値として、減速時には負の値として算出する。そして、車両の運転状態やエンジン1及び電動機2の運転状態、或いは図示しないバッテリECUにより逐次算出される走行用バッテリの充電率(SOC:State Of Charge)などに基づき走行用動力源を選択して制御する。
例えば車両加速時において、走行用バッテリのSOCが所定値以上で余裕が大であり、且つ運転者の要求トルクが所定値未満のときには、電動機2の駆動力のみで要求トルクを達成可能なため走行用動力源として電動機2を単独で用い、SOCが所定値未満で余裕がそれほどないとき、或いは要求トルクが所定値以上のときには、電動機2の駆動力だけでは不足と見なして走行用動力源としてエンジン1及び電動機2を併用し、SOCが極端に低下して正常な電動機2の作動が望めないときには、走行用駆動源としてエンジン1を単独で用いる。
また、車両減速時において、電動機2が発生する回生トルクのみで負側に設定された要求トルクを達成可能なときには、走行用動力源として電動機2を単独で用い、電動機2の回生トルクのみでは負側の要求トルクを達成不能なときには、走行用動力源としてエンジン1及び電動機2を併用する。
そして、このような走行用動力源の切換に際して、車両ECU11は、エンジン1単独や電動機2単独のときには、運転者の要求トルクから変速機4の変速段のギヤ比を考慮してエンジン1や電動機2が出力すべき駆動力を算出し、算出した駆動力をエンジンECU12やインバータECU13に指令する。また、エンジン1及び電動機2の併用時には、要求トルクをエンジン1側と電動機2側とに配分した上で、変速段4のギヤ比を考慮してそれぞれが出力すべき駆動力を算出してエンジンECU12及びインバータECU13に指令する。一方、これと並行して、決定した走行用動力源の駆動力を駆動輪5側に伝達させるべく、クラッチユニット3及び変速機4の制御を実行する。
次に、上記クラッチユニット3及び変速機4の構成を詳述する。
図1に示すように、クラッチユニット3はアウタクラッチ21(第1クラッチ)及びインナクラッチ22(第2クラッチ)からなり、クラッチユニット3の入力側が、アウタクラッチ21及びインナクラッチ22の入力側として共用されている。アウタクラッチ21及びインナクラッチ22は、内蔵した湿式多板クラッチ21a,22aをクラッチアクチュエータ23,24により駆動操作されることにより相互に独立して接続・切断され、それぞれ接続に伴ってエンジン1からの駆動力がクラッチ出力側に伝達されるようになっている。
上記電動機2は、アウタクラッチ21の出力側の外周に配設されている。このため、アウタクラッチ21が電動機2の回転軸を兼用し、アウタクラッチ21と共にロータがステータの内側で回転し、ロータとステータとの間に発生した磁界による駆動トルクや回生トルクがアウタクラッチ21に入力されるようになっている。
アウタクラッチ21の出力側には管状をなすアウタ入力軸25(第1入力軸)が連結され、アウタ入力軸25はベアリング27により回転可能に支持されている。インナクラッチ22の出力側にはインナ入力軸26(第2入力軸)が連結され、このインナ入力軸26はアウタ入力軸25内に回転可能に嵌入されている。
結果としてアウタ入力軸25及びインナ入力軸26は、クラッチユニット3の軸線上で相互に独立して回転し得るようになっている。アウタ入力軸25の後端にはアウタクラッチ側ドライブギヤ28が固定され、インナ入力軸26はアウタ入力軸25内から後方に向けて延設されて、その後端にインナクラッチ側ドライブギヤ29が固定されている。
変速機4内には、アウタ入力軸25及びインナ入力軸26に対して平行となるように管状をなすアウタカウンタ軸31が配設され、アウタカウンタ軸31内にはインナカウンタ軸32が回転可能に嵌入されている。インナカウンタ軸32はアウタカウンタ軸31内から前方及び後方に向けて延設され、その前端及び後端がベアリング33,34により回転可能に支持されている。結果としてアウタカウンタ軸31及びインナカウンタ軸32は、同軸上で相互に独立して回転し得るようになっている。
アウタカウンタ軸31の前端にはインナクラッチ側ドリブンギヤ35が固定され、このインナクラッチ側ドリブンギヤ35はインナ入力軸26のインナクラッチ側ドライブギヤ29と常時噛み合っている。従って、インナクラッチ22の接続によりエンジン1からの駆動力がインナ入力軸26側に伝達されたときには、インナクラッチ側ドライブギヤ29及びインナクラッチ側ドリブンギヤ35を介してアウタカウンタ軸31が回転駆動される。
また、インナカウンタ軸32の前部にはアウタクラッチ側ドリブンギヤ36が固定され、このアウタクラッチ側ドリブンギヤ36はアウタ入力軸25のアウタドライブギヤ28と常時噛み合っている。
従って、アウタクラッチ21の接続によりエンジン1からの駆動力がアウタ入力軸25に伝達されたとき、或いはエンジン1からの駆動力に加えて電動機2の駆動力がアウタ入力軸25に伝達されたり、単独で電動機2からの駆動力がアウタ入力軸25に伝達されたりしたときには、アウタクラッチ側ドライブギヤ28及びアウタクラッチ側ドリブンギヤ36を介してインナカウンタ軸32が回転駆動される。
アウタ入力軸25及びインナ入力軸26の後方には同軸上に出力軸38が配設され、出力軸38の前端はインナ入力軸22の後端に対して相対回転可能に支持され、出力軸38の後端はベアリング39により回転可能に支持されている。出力軸38には第3速ドリブンギヤ40が相対回転可能に配設され、この第3速ドリブンギヤ40に対して常時噛み合うようにアウタカウンタ軸31には第3速ドライブギヤ41が固定されている。
出力軸38上の第3速ドリブンギヤ40の後方には第4速ドリブンギヤ42が固定され、この第4速ドリブンギヤ42に対して常時噛み合うようにインナカウンタ軸32には第4速ドライブギヤ43が相対回転可能に配設されている。
出力軸38上の第4速ドリブンギヤ42の後方にはリバースドリブンギヤ44が相対回転可能に配設され、このリバースドリブンギヤ44と対応するようにインナカウンタ軸32にはリバースドライブギヤ45が固定されている。図では、リバースドリブンギヤ44とリバースドライブギヤ45とが直接的に噛み合うように示されているが、実際には両ギヤ44,45はリバース中間ギヤ46を介して常時噛み合っており、車両後退のために他のドリブンギヤとは逆方向にリバースドリブンギヤ44を回転駆動するようになっている。
出力軸38上のリバースドリブンギヤ44の後方には第1・2速ドリブンギヤ47が相対回転可能に配設され、この第1・2速ドリブンギヤ47に対して常時噛み合うようにインナカウンタ軸32には第1・2速ドライブギヤ48が固定されている。
一方、インナクラッチ側ドライブギヤ29と第3速ドリブンギヤ40との間には、これらのギヤ29,40を出力軸38に結合するために第1同期装置51が設けられている。第1同期装置51は、インナクラッチ側ドライブギヤ29の後面に設けられた第5・6速クラッチギヤ51a、第3速ドリブンギヤ40の前面に設けられた第3速クラッチギヤ51b、及び出力軸38と一体で回転しながら、中立位置から前後に移動して第5・6速クラッチギヤ51aまたは第3速クラッチギヤ51bに選択的に係合し得る第1スリーブ51cから構成されている。
第3速ドライブギヤ41と第4速ドライブギヤ43との間には、これらのギヤ41,43をインナカウンタ軸32に結合するために第2同期装置52が設けられている。第2同期装置52は、第3速ドライブギヤ41の後面に設けられた第1・6速リバースクラッチギヤ52a、第4速ドライブギヤ43の前面に設けられた第4速クラッチギヤ52b、及びインナカウンタ軸32と一体で回転しながら、中立位置から前後に移動して第1・6速リバースクラッチギヤ52aまたは第4速クラッチギヤ52bに選択的に係合し得る第2スリーブ52cから構成されている。
リバースドリブンギヤ44と第1・2速ドリブンギヤ47との間には、これらのギヤ44,47を出力軸38に結合するために第3同期装置53が設けられている。第3同期装置53は、リバースドリブンギヤ44の後面に設けられたリバースクラッチギヤ53a、第1・2速ドリブンギヤ47の前面に設けられた第1・2速クラッチギヤ53b、及び出力軸38と一体で回転しながら、中立位置から前後に移動してリバースクラッチギヤ53aまたは第1・2速クラッチギヤ53bに選択的に係合し得る第3スリーブ53cから構成されている。
以上の第1〜第3スリーブ51c〜53cには変速アクチュエータ54〜56がそれぞれ連結され、これらの変速アクチュエータ54〜56の駆動操作に応じて各スリーブ51c〜53cが中立位置、前方位置及び後方位置の間で切り換えられるようになっている。第1〜第3スリーブ51c〜53cの変速アクチュエータ54〜56、及び上記したアウタクラッチ21及びインナクラッチ22のクラッチアクチュエータ23,24は車両ECU11に接続され、車両ECU11からの指令に基づき各アクチュエータが駆動制御される。
これらのクラッチユニット3及び変速機4の制御のために、図1に示すように、車両ECU11には運転席に設けられたセレクトレバー58が接続され、このセレクトレバー58により現在選択されているレンジ、例えば走行レンジであるD(ドライブ)レンジや、非走行レンジであるP(パーキング)レンジ、N(ニュートラル)レンジなどの情報が車両ECU11に入力されるようになっている。
ここで、上記したクラッチアクチュエータ23,24や変速アクチュエータ54〜56は油圧式として構成され、これらのアクチュエータ23,24、54〜56、さらには車両のパワーステアリング装置やブレーキ装置に供給される作動油は、エンジン1で駆動される図示しないオイルポンプから供給されるようになっている。
そして、クラッチアクチュエータ23,24については、作動油の供給が中断されるとクラッチ21,22の断接状態を維持できなくなる構造であるが、後述する信号待ちなどに際したエンジン1の自動停止時にはクラッチ21,22の断接状態を維持する必要がある。そこで本実施形態では、内蔵した電動ポンプによりクラッチ21,22に供給された作動油の油圧を保持するクラッチ油圧保持装置57が備えられており、このクラッチ油圧保持装置57によりエンジン停止中であってもクラッチアクチュエータ23,24の油圧を保持することでクラッチ21,22の断接状態を維持するように配慮している。
次に、以上のように構成されたハイブリッド電気自動車の駆動装置の作動状況について説明する。
車両の走行中において、変速機4の変速段は図示しない制御マップに基づき設定される一方、運転者がリバースを選択したときには変速段としてリバースが設定され、設定された変速段を達成すべく、車両ECU11によりクラッチユニット3の接続・切断制御及び変速機4の変速切換制御が実行される。これらのクラッチユニット3及び変速機4の制御は、走行用動力源としてエンジン1を単独で用いているときには表1に従って行われる。
Figure 2011126318
例えば、第2速は、アウタクラッチ21、インナクラッチ22及び、同期装置51〜53の各スリーブ51c〜53cが表1に示した位置に切り換えられることにより達成される。
従って、エンジン1からの駆動力はアウタクラッチ21を介してアウタ入力軸25に伝達され、アウタクラッチ側ドライブギヤ28及びアウタクラッチ側ドリブンギヤ36を介してインナカウンタ軸32に伝達される。その後に駆動力は第1・2速ドライブギヤ48及び第1・2速ドリブンギヤ47を介して第3同期装置53の第1・2速クラッチギヤ53bに伝達され、この第1・2速クラッチギヤ53bから第3スリーブ53cを介して出力軸38に伝達される。
第3速は、アウタクラッチ21、インナクラッチ22及び、同期装置51〜53の各スリーブ51c〜53cが表1に示した位置に切り換えられることにより達成される。
従って、エンジン1からの駆動力は第1速と同じくインナクラッチ22、インナ入力軸26、インナクラッチ側ドライブギヤ29及びインナクラッチ側ドリブンギヤ35を介してアウタカウンタ軸31に伝達される。その後に駆動力はアウタカウンタ軸31上の第3速ドライブギヤ41及び第3速ドリブンギヤ40を介して第1同期装置51の第3速クラッチギヤ51bに伝達され、第3速クラッチギヤ51bから第1スリーブ51cを介して出力軸38に伝達される。
このようにして選択された変速段のギヤ比に応じて、エンジン1からの駆動力は減速、増速或いは逆転された後に駆動輪5側に伝達されて車両が走行する。車両ECU11では、選択された変速段のギヤ比に基づき運転者の要求トルクからエンジン1が出力すべき駆動力を算出し、算出した駆動力をエンジンECU12側に指令することにより要求トルクを達成させる。
ところで、本実施形態のハイブリッド電気自動車は第2速を発進変速段として制御マップが設定されているため、車両の加速時や減速時には第2〜6速間で変速段がシフトアップ側或いはシフトダウン側に切り換えられる。
このときの変速では、インナクラッチ22を接続した奇数変速段(第1速、第3速、第5速)の選択とアウタクラッチ21を接続した偶数変速段(第2速、第4速、第6速)の選択とが交互に繰り返される。以下の説明では、偶数変速段を構成する機構を第1歯車機構G1と称し、奇数変速段を構成する機構を第2歯車機構G2と称するが(後述する図4〜6に詳細を示す)、何れか一方の歯車機構G1,G2で駆動力が伝達されているとき、他方の歯車機構G1,G2において制御マップに基づき予測される変速段(隣接する高速ギヤ側或いは低速ギヤ側の変速段である)のギヤ列及び次変速段を選択するための同期装置は、クラッチ切断により駆動力を伝達していない状態にある。
このため、変速段を切り換えるときには、次変速段を選択するための同期装置のスリーブ51a〜53aの切換を予め完了するプリセレクトを実行し、変速段の切換条件が成立した時点で、接続状態にある一方の歯車機構G1,G2のクラッチ21,22を切断しながら、切断状態にある他方の歯車機構G1,G2のクラッチ21,22を接続することにより、駆動輪5側への動力伝達を連続して行っている。なお、以上のプリセレクトに関する制御は本発明とは直接関係ないため、ここでは詳細な説明は省略する。
一方、本実施形態のハイブリッド電気自動車は燃費や排ガス性能の向上を目的として、信号待ちなどでエンジン1を自動停止及び自動始動するエンジン自動停止始動装置を備えると共に、エンジン自動始動の際には電動機2によりエンジン1をクランキングすることで騒音や振動を低減している。
ここで、本実施形態のハイブリッド電気自動車では、パワーステアリング装置やブレーキ装置、及びクラッチアクチュエータ23,24や変速アクチュエータ54〜56を作動させるための作動油をエンジン駆動のオイルポンプから供給しているため、電動機2単独の走行時を含めて車両走行中は常にエンジン運転を継続している。このため、エンジン1の自動停止及び自動始動は、エンジン1単独、電動機2単独、エンジン1及び電動機2併用の何れの走行時においても実行される。但し、エンジン自動停止及び自動始動の態様はこれに限ることはなく、例えばエンジン1単独とエンジン1及び電動機2併用の走行時のみに実行するようにしてもよい。
そして、信号待ちなどで停車中のまま、自動停止させたエンジン1の始動のために電動機2を作動させるには、アウタ入力軸25側に配設された偶数変速段により構成される第1歯車機構G1をニュートラル状態にして駆動輪5側への駆動力の伝達を遮断する必要がある。ところが、上記のように本実施形態のハイブリッド電気自動車では、発進変速段である第2速が第1歯車機構G1に含まれているため、エンジン始動直後に第1歯車機構G1をニュートラル状態から第2速に切り換えないと車両を発進できない。このため、[発明が解決しようとする課題]でも述べたように、発進変速段である第2速への切換操作の所要時間分だけ車両発進が遅延してしまい運転者に違和感を与える要因となってしまう。
そこで、本実施形態では、エンジン自動始動後の第2速への切換操作に起因する車両発進の遅れを防止するための対策を講じており、以下、当該対策のために車両ECU11が実行する処理について述べる。
車両ECU11は車両の走行中(信号待ちなども含む)に図2,3に示すエンジン自動停止始動ルーチンを所定の制御インターバルで実行している。
まず、ステップS2で車両が停止したか否かを判定し、車両走行中のときにはNo(否定)の判定を下して一旦ルーチンを終了する。また、信号待ちなどでの車両停止によりステップS2の判定がYes(肯定)になると、ステップS4に移行してセレクトレバー58がDレンジに切り換えられているか否かを判定し、判定がNoのときにはステップS6に移行する。
例えば非走行レンジであるNレンジやPレンジが選択されているときには、変速機4の第1歯車機構G1及び第2歯車機構G2は共にニュートラル状態に切り換えられているが、運転者が発進のためにアクセルペダルを踏込み操作するときには、事前にセレクトレバー58を走行レンジであるDレンジに切り換える操作を行う。従って、セレクトレバー58が操作されている間に第1歯車機構G1をニュートラルから第2速に切り換えて発進に備えるだけの時間的な余地が存在し、運転者が車両発進に遅れを感じることはほとんどない。よって、Dレンジ以外が選択されているときには、特許文献1などの従来技術と同様に、ステップS6以降で通常通り発進変速段である第2速への切換を行っている。
まず、ステップS6でクラッチアクチュエータ24を作動させてアウタクラッチ21を接続し、続くステップS8でエンジン自動停止条件が成立したか否かを判定する。例えばエンジン自動停止条件としては、以下の1)〜3)の要件が設定されており、これらの全ての要件が成立したときにエンジン自動停止条件が成立したと見なす。
1)車両停止から所定時間経過
2)ブレーキ踏込み操作中
3)エンジンアイドル運転中
但し、エンジン自動停止条件の要件はこれに限ることはなく、任意に変更可能である。
ステップS8の判定がNoの間は待機し、判定がYes(肯定)になるとステップS10に移行してクラッチ油圧保持装置57を作動させ、ステップS12でエンジン1を自動停止する。エンジン停止によりエンジン駆動の油圧ポンプからクラッチアクチュエータ24への作動油の供給は中断するが、クラッチ油圧保持装置57により油圧が保持されるため、アウタクラッチ21は何ら支障なく接続状態に維持される。
なお、図2,3では示されていないが、クラッチ油圧保持装置57の作動は、エンジン1の始動完了により油圧ポンプが作動を再開してクラッチ油圧を保持する必要がなくなった時点で自動的に中止される。これは、後述する他の処理でクラッチ油圧保持装置57が作動したときでも同様である。
続くステップS14ではエンジン自動始動条件が成立したか否かを判定する。例えばエンジン自動始動条件としては、以下の4),5)の要件が設定されており、何れかの要件が成立したときにエンジン自動始動条件が成立したと見なす。
4)Dレンジへの切換
5)ブレーキ踏込み操作解除
ステップS14の判定がNoの間は待機し、判定がYesになるとステップS16に移行して電動機2によりエンジン自動始動を行う。
図4はエンジン自動始動時の駆動力の伝達状況を示す概念図、図5はエンジン自動始動後に第2速で発進するときの駆動力の伝達状況を示す概念図であり、動力伝達経路及び伝達方向を太線の矢印で示している。なお、図1に基づく説明から明らかなように、偶数変速段を達成するギヤ列と奇数変速段を達成するギヤ列とは一部を兼用しているが、図4,5はエンジン1及び電動機2からの動力伝達経路の理解を容易にするために、双方のギヤ列を独立して表している。この点は後述する図6についても同様である。
図4に示すように、アウタクラッチ21が接続され、且つ第1歯車機構G1がニュートラル状態にあるため、ステップS16の処理により作動した電動機2の駆動力は駆動輪5側に伝達されることなくアウタクラッチ21を介してエンジン1側に伝達される。結果として、電動機2の駆動力を利用してエンジン1がクランキングされ、車両を停車させたままエンジン始動が完了する。
さらに、車両ECU11はステップS18に移行してアウタクラッチ21を切断し、続くステップS20で第1歯車機構G1をニュートラルから第2速に切り換える。図1において第2速への切換を具体的に述べると、第3同期装置53の第3スリーブ53cが中立位置から後方位置に切り換えられることになり、これにより第2速が達成される。
その後、ステップS22で運転者によりアクセルペダルの踏込み操作が行われたか否かを判定し、判定がYesになるとステップS24で車両を発進させた後にルーチンを終了する。即ち、この第2速による発進時には電動機2を使用可能なことから、バッテリのSOCが極端に低下していない限りは、図5に示すようにインナクラッチ21及びアウタクラッチ22を切断したまま電動機2の駆動力により発進が行われる。
発進変速段である第2速は発進のために最適設定された変速段であるため、発進までに時間的な余裕があるPレンジやNレンジでは第2速で発進することにより、通常通り円滑に車両を発進できると共に、ハイブリッド電気自動車の特徴を活かした電動機2による発進を行うことができる。
以上のように本実施形態では、セレクトレバー58がPレンジやNレンジのときに、ステップS16でエンジン1を自動始動し、ステップS20で第1歯車機構G1をニュートラルから第2速に切り換え、ステップS24で電動機2により車両を発進させるときの車両ECU11が発進制御手段として機能する。
一方、Dレンジの選択によりステップS4でYesの判定を下したときにはステップS28に移行し、第1歯車機構G1をニュートラルに切り換えると共に、第2歯車機構G2を第3速に切り換え、アウタクラッチ21を接続する。図1において第1歯車機構G1のニュートラルへの切換を具体的に述べると、第2同期装置52の第2スリーブ52cが中立位置に切り換えられると共に、第3同期装置53の第3スリーブ53cが中立位置に切り換えられることになり、これによりニュートラルが達成される。
また、図1において第2歯車機構G2の第3速への切換を具体的に述べると、第1同期装置51の第1スリーブ51cが後方位置に切り換えられることになり、これにより第3速が達成される。結果として、図4に示す電動機2によるエンジン自動始動時の駆動力の伝達状況となり、且つ、この場合には第2歯車機構G2において第3速が選択されていることになる。
以下に述べるように、この直後にエンジン停止条件の成立に基づきエンジン1は停止され、オイルポンプからの作動油の供給中止により第1歯車機構G1や第2歯車機構G2は変速段を切換不能となってしまう。しかし、本実施形態では、このようにエンジン停止に先行して各歯車機構G1,G2を所定の変速段に切り換えるため、以下に述べる発進制御を何ら問題なく実行することができる。
以上のように本実施形態では、まず、ステップS27では第3速での発進の可否を判定する。具体的な判定は、現在車両が停車している路面の勾配及び車両の積載量に基づき行われる。例えば路面勾配は、車両に設けた加速度センサの検出に基づき算出し、積載量は、車両走行中にエンジン制御により消費される燃料量と車両の加速状態との比較結果に基づき算出され、ステップS27では、算出した路面勾配及び積載量を前提として第3速で車両を発進可能か否かが判定される。
以上のように本実施形態では、ステップS27で第3速での発進の可否を判定するときの車両ECU11が発進可否判定手段として機能する。
第3速での発進が可能であるとしてステップS27でYesの判定を下したときにはステップS28に移行する。続いて、ステップS28でエンジン停止前に第2歯車機構G2を第3速に切り換えるときの車両ECU11が発進制御手段として機能する。
その後、車両ECU11はステップS30でエンジン自動停止条件が成立したか否かを判定する。このときの判定は、上記ステップS8と同じく1)〜3)の要件に基づき実行されるが、何れかの要件を変更したり新たな要件と追加したりして、ステップS8とは判定内容を相違させてもよい。
ステップS30の判定がNoの間は待機し、判定がYesになるとステップS32に移行してクラッチ油圧保持装置57を作動させ、ステップS34でエンジン1を自動停止する。このときにも、アウタクラッチ21の接続状態はクラッチ油圧保持装置57により維持される。
ステップS38ではエンジン自動始動条件が成立したか否かを判定する。このときのエンジン自動始動条件としては、例えば上記5)のブレーキ踏込み操作解除に関する要件が設定されている。
ステップS38の判定がNoの間は待機し、判定がYesになるとステップS40に移行して電動機2の作動によりエンジン自動始動を行う。従って、上記ステップS16と同じく、図4に示すように電動機2の駆動力を利用してエンジン1がクランキングされ、車両を停車させたままエンジン始動が完了する。以上のように本実施形態では、ステップS16,40でエンジン1を自動始動するときの車両ECU11がエンジン始動制御手段として機能する。
その後、ステップS42に移行してアウタクラッチ21を切断し、続くステップS44で運転者によりアクセルペダルの踏込み操作が行われたか否かを判定する。ステップS44の判定がYesのときにはステップS46に移行してインナクラッチ22を接続し、ステップS48で車両を発進させる。即ち、この第3速による発進時には電動機2を使用不能なことから、図6に示すようにインナクラッチ22を接続してエンジン1の駆動力により発進が行われる。
そして、このように停車中のままエンジン始動のために電動機2を作動させるには第1歯車機構G1をニュートラル状態とする必要があることから、第1歯車機構G1に含まれる発進変速段である第2速により車両を発進させるには、第2速への切換操作により発進が遅延してしまう。本実施形態では、第2歯車機構G2を発進変速段に隣接する第3速に切り換えてインナクラッチ22を接続し、この第3速を介してエンジン1の駆動力を駆動輪5に伝達して車両を発進させている。
このため、エンジン1の始動を完了する以前(本実施形態ではエンジン停止前)でも第2歯車機構G2を第3速に切り換えておくことが可能となり、結果として発進変速段である第2速への切換操作に起因する遅れを生じることなく迅速に車両を発進させることができる。
以上のように本実施形態では、セレクトレバー58がDレンジのときに、ステップS28で第1歯車機構G1をニュートラルに切り換えると共に、第2歯車機構G2を第3速に切り換えてアウタクラッチ21を接続し、ステップS40でエンジン1を自動始動し、ステップS46でインナクラッチ22を接続してエンジン1により車両を発進させるときの車両ECU11が発進制御手段として機能する。
また、ステップS44の判定がNoでアクセルペダルの踏込み操作が未だ行われていないときには、ステップS50に移行して第1歯車機構G1をニュートラルから第2速に切り換える。続くステップS52では第2速への切換が完了したか否かを判定し、判定がNoのときにはステップS44に戻る。ステップS44の判定がYesになる以前に第2速への切換完了によりステップS52の判定がYesになると、上記ステップS22に移行する。
従って、第2歯車機構G2の第3速への切換後に直ちに車両が発進せず、その間に第1歯車機構G1において第2速への切り換えが完了したときには、本来の第2速を使用して電動機2の駆動力により発進が行われる。即ち、PレンジやNレンジの場合でも述べたように、第2速を使用することにより通常通り円滑に車両を発進できると共に、ハイブリッド電気自動車の特徴を活かした電動機2による発進を行うことができる。
以上のように本実施形態では、ステップS44,52の判定に応じてステップS24の電動機2による発進とステップS48のエンジン1による発進とを切り換えるときの車両ECU11が発進制御手段として機能する。
一方、上記ステップS27の判定がNoで第3速での発進が不能なときには、ステップS56に移行する。ステップS56では、アウタクラッチ21及びインナクラッチ22を切断状態とし、第1歯車機構G1をニュートラルから第2速、第2歯車機構G2を第3速に切り換える。続いて、ステップS58では、車両ECU11によりエンジン自動停止条件が成立したか否かを判定する。このときの判定は、上記ステップS8と同じく1)〜3)の要件に基づき実行されるが、何れかの要件を変更したり新たな要件と追加したりして、ステップS8とは判定内容を相違させてもよい。
ステップS58の判定がNoの間は待機し、判定がYesになるとステップS60に移行してエンジン1を自動停止する。続くステップS62でエンジン自動始動条件が成立したか否かを判定する。ステップS62の判定がYesになるとステップS64に移行し、エンジン1に付設されたセルスタータを作動させてエンジン自動始動を行う。その後、ステップS66でアウタクラッチ21を接続後、上記ステップS22に移行する。
従って、第3速での発進が不能なときには、電動機2によるクランキングは断念して通常のセルスタータによりエンジン1を始動した上で、本来の発進変速段である第2速を使用して電動機2の駆動力により発進が行われる。このため、登坂路での発進不能を未然に防止できると共に、セルスタータを使用することで第1歯車機構G1をニュートラル状態にする必要がなくなることから迅速に発進することができる。
以上のように本実施形態では、第3速での発進が不能なときに、ステップS60でセルスタータによりエンジン1を始動し、ステップS62で第1歯車機構G1を第2速に切り換え、ステップS22で電動機2により車両を発進させるときの車両ECU11が発進制御手段として機能する。
以上で実施形態の説明を終えるが、本発明の態様はこの実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、前進6段の変速機として具体化したが、変速段の数はこれに限るものではなく、任意に変更可能である。
また、第1歯車機構C1や第2歯車機構G2に振り分けられる変速段や、各変速段の配列、並びに各変速段における変速段の切換機構など、変速機4の構成についても、上記実施形態のものに限定されるものではなく、ハイブリッド電気自動車に求められる運転性能や商品性などに応じて変更することが可能である。
また、上記実施形態では、クラッチユニット3の外周に電動機2を配設して、その駆動力をアウタクラッチ21を介してアウタ入力軸25に伝達したが、この構成に限るものではなく、例えば電動機2の出力軸をアウタ入力軸25に対してギヤ結合することにより、電動機2の駆動力を直接的にアウタ入力軸25に伝達するようにしてもよい。
また、上記実施形態では、発進変速段に隣接する変速段として高速ギヤ側の第3速を用いたが、これに限ることはなく、例えば第3速に代えて第1速を用いてもよい。
また、上記実施形態では、エンジン自動停止条件の成立に基づきエンジン1を自動停止させたが、これに限ることはなく、例えば運転者の操作に基づき手動でエンジン1を停止させ、その後にエンジン自動始動条件が成立したときにエンジン1を自動始動するようにしてもよい。
1 エンジン
2 電動機
5 駆動輪
11 車両ECU(発進制御手段、エンジン始動制御手段、発進可否判定手段)
21 アウタクラッチ(第1クラッチ)
22 インナクラッチ(第2クラッチ)
25 アウタ入力軸(第1入力軸)
26 インナ入力軸(第2入力軸)
38 出力軸
G1 第1歯車機構
G2 第2歯車機構

Claims (5)

  1. 第1クラッチの接続時にエンジンからの駆動力を第1入力軸を介して入力し、該駆動力を発進変速段を含む複数の変速段の何れかにより変速して出力軸を介して車両の駆動輪に伝達可能であると共に、上記第1入力軸に電動機のロータが結合されて該電動機の駆動力を上記駆動輪に伝達可能な第1歯車機構と、
    第2クラッチの接続時に上記エンジンからの駆動力を第2入力軸を介して入力し、該駆動力を複数の変速段の何れかにより変速して上記出力軸を介して駆動輪に伝達可能な第2歯車機構と、
    停車状態からの車両発進時において、上記第1歯車機構を上記発進変速段に切り換え、上記第1入力軸を介して入力される上記エンジンの駆動力または電動機の駆動力の少なくとも一方を上記発進変速段により変速して上記駆動輪に伝達して車両を発進させる発進制御手段と、
    上記車両の一時的な停車に際して上記エンジンが停止されているときに、所定の始動条件が成立すると上記エンジンを自動始動するエンジン始動制御手段と
    を備えたハイブリッド電気自動車の発進制御装置において、
    上記発進制御手段は、上記停車状態からの車両発進時において上記エンジンが停止されているときには、上記第1歯車機構を何れの変速段も選択しないニュートラル状態にすると共に上記第1クラッチを接続し、上記所定の始動条件が成立した時に上記エンジン始動制御手段により上記電動機を作動させて該電動機の駆動力を上記第1クラッチを介して上記エンジンに伝達することにより該エンジンを始動させる一方、上記第2歯車機構を上記発進変速段に隣接する変速段に切り換えると共に上記第2クラッチを接続し、上記エンジンの駆動力を該発進変速段に隣接する変速段を介して上記駆動輪に伝達して車両を発進させることを特徴とするハイブリッド電気自動車の発進制御装置。
  2. 上記発進制御手段は、上記エンジンが停止されているときの車両発進時において、上記車両のセレクトレバーにより走行レンジが選択されているときには、上記電動機によるエンジン始動を行うと共に上記第2歯車機構を上記発進変速段に隣接する変速段に切り換え、該変速段を介して上記エンジンの駆動力により車両を発進させ、一方、上記セレクトレバーにより非走行レンジが選択されているときには、上記電動機によるエンジン始動完了後に上記第1歯車機構をニュートラル状態から発進変速段に切り換え、該発進変速段を介して上記エンジンの駆動力または電動機の駆動力の少なくとも一方により車両を発進させることを特徴とする請求項1記載のハイブリッド電気自動車の発進制御装置。
  3. 上記発進制御手段は、上記電動機の駆動力により上記エンジンの始動を完了した後に、上記第1歯車機構をニュートラル状態から発進変速段に切り換え、該発進変速段への切換完了前に運転者によりアクセル踏込み操作が行われたときには、上記第2歯車機構の上記発進変速段に隣接する変速段を介して上記エンジンの駆動力により車両を発進させ、一方、上記アクセル踏込み操作前に上記発進変速段への切換が完了したときには、該発進変速段を介して上記エンジンの駆動力または電動機の駆動力の少なくとも一方により車両を発進させることを特徴とする請求項1または2記載のハイブリッド電気自動車の発進制御装置。
  4. 上記発進制御手段は、上記車両の停車に伴う上記エンジンの停止に先行して、上記発進変速段に隣接する変速段への上記第2歯車機構の切換を完了することを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のハイブリッド電気自動車の発進制御装置。
  5. 上記発進変速段に隣接する変速段として、該発進変速段よりも高速ギヤ側に隣接する変速段が設定されており、
    上記車両が停車中の路面勾配及び該車両の積載量に基づき、上記発進変速段に隣接する高速ギヤ側の変速段による車両発進が可能であるか否かを判定する発進可否判定手段を備え、
    上記発進制御手段は、上記発進可否判定手段により発進不能の判定が下されたときに、第1クラッチを切断すると共に上記発進変速段への切換完了後、上記電動機に代えて上記エンジンに付設されたセルスタータにより該エンジンを始動し、該第1クラッチを接続し、該発進変速段を介して上記エンジンの駆動力または電動機の駆動力の少なくとも一方により車両を発進させることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載のハイブリッド電気自動車の発進制御装置。
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