以下、本発明に係る実施の形態について、図面に示す実施例を基に詳細に説明する。なお、説明の便宜上、矢印UPを上方向、矢印RIを右方向、矢印FRを前方向とし、各図において、上記各矢印が示されている場合には、その矢印で示す方向に従って上下・左右・前後の表現をする。また、以下において、シート状部材である記録媒体の搬送方向上流側及び搬送方向下流側を、単に「上流側」、「下流側」という場合がある。
図1で示すように、本実施形態に係る画像形成装置10は、記録媒体の一例としての記録用紙Pに現像剤像(以下「トナー画像」という)を二次転写して搬送する工程までとされる第1処理部12と、第1処理部12から搬送されて来た記録用紙Pにトナー画像を定着する工程以降の処理を行う第2処理部14と、が一体的に(記録用紙Pを受け渡し可能に)左右横方向(水平方向)に連結されて構成されている。
第1処理部12は、第1筐体11内に組み込まれ、第2処理部14は、第1筐体11と着脱可能とされた第2筐体13内に組み込まれている。そして、第1筐体11に隣接する第2筐体13上には、制御手段の一例としての制御部16が組み込まれた第3筐体15が配設されており、その第3筐体15の横(下流側)の第2筐体13上には、表示装置18が配設されている。
第1処理部12には、記録用紙Pを収容する給紙部20と、記録用紙Pを搬送する搬送部120と、記録用紙Pにトナー画像を転写する転写部100と、転写部100に一次転写させるトナー画像を形成する画像形成部30と、が備えられている。具体的に説明すると、まず、第1筐体11内の下部には、記録用紙Pがそれぞれ収容される2個の給紙カセット22が左右横方向に並んで設けられている。
この給紙カセット22は、第1筐体11内から前方側へ引出可能とされており、給紙カセット22を第1筐体11内から引き出すと、給紙カセット22内に設けられたボトムプレート24が下降し、その上に記録用紙Pを載せることで、記録用紙Pの補充ができるようになっている。なお、給紙カセット22を第1筐体11内に取り付けると、ボトムプレート24は上昇する構成になっている。
各給紙カセット22の上方には搬送部120が配設されており、その搬送部120の上方には転写部100が配設され、その転写部100の上方には画像形成部30が配設されている。なお、画像形成部30、転写部100、搬送部120については後述する。また、第1筐体11の第2筐体13と対向する右壁面11Aには、記録用紙Pを上部から搬出し、下部から搬入させる開口部26が形成されている。
第2処理部14には、転写部100によって記録用紙Pに二次転写されたトナー画像を、その記録用紙Pに定着するための定着装置の一例としての定着部50と、定着部50によってトナー画像が定着された記録用紙Pを冷却するための冷却部60と、両面印刷時に、記録用紙Pを反転させて、再度第1処理部12へ搬送するための反転部80と、が備えられている。
すなわち、第1筐体11の右壁面11Aと対向する第2筐体13の左壁面13Bには、記録用紙Pを上部から搬入し、下部から搬出させる開口部28が、開口部26と対向して形成されており、その上側の開口部28を通って搬送されて来た記録用紙Pに対してトナー画像を定着可能なように定着部50が配設されている。なお、定着部50については、後で詳述する。
また、定着部50の横(下流側)には冷却部60が配設されている。この冷却部60は、記録用紙Pの搬送経路122(後述)を挟んで上側に、記録用紙Pと接触して、その熱を吸収する吸収装置70が設けられ、下側に、搬送される記録用紙Pを吸収装置70に押し付ける押付装置62が設けられて構成されている。
吸収装置70は、駆動力を伝達する駆動ロール72と複数個の張架ロール73に巻き掛けられた無端状の吸収ベルト74を有しており、その吸収ベルト74の内側には、吸収ベルト74と面状に接触して、吸収ベルト74が吸収した熱を放熱させるヒートシンク76を有している。そして、ヒートシンク76から熱を奪い、その熱気を外部へ排出させる吸込ファン78が、第2筐体13の後壁部側(図示の奥側)に2個並んで設けられている。
また、押付装置62は、搬送される記録用紙Pと接触して、吸収装置70へ押し付ける無端状の押付ベルト64を有しており、その押付ベルト64は複数個の張架ロール65に張架されて回転可能に支持されている。このような構成の冷却部60により、定着部50から搬送されて来た記録用紙Pが冷却されるようになっている。
また、冷却部60の横(下流側)には、記録用紙Pのカールを矯正する(記録用紙Pを平坦にする)デカール処理部66が配設されている。そして、そのデカール処理部66の横(下流側)には、記録用紙Pに定着されたトナー画像の濃度欠陥、画像欠陥、画像位置欠陥等を光学的に検出するインラインセンサー部68が配設されている。
なお、インラインセンサー部68の横(下流側)には、片面に画像が形成された記録用紙Pを第2筐体13の右壁面13Aに取り付けられた排出部(排出トレイ)90に排出する排出ロール92が設けられており、片面印刷時には、その排出ロール92によって記録用紙Pが排出部90上へ排出されるようになっている。
また、定着部50、冷却部60、デカール処理部66、インラインセンサー部68の下方には、反転部80が配設されている。すなわち、記録用紙Pの両面に画像を形成する際には、インラインセンサー部68から送出された記録用紙Pを反転部80へ搬送する。詳細には、その記録用紙Pを、図示しない切替部材によって、反転部80に設けられた反転経路82へ導く。
反転経路82は、第2処理部14における搬送経路122(後述)から分岐する分岐パス84と、分岐パス84に沿って搬送される記録用紙Pを第1処理部12側へ向けて搬送する用紙搬送パス86と、用紙搬送パス86に沿って搬送される記録用紙Pを逆方向へ向けて折り返し、スイッチバック搬送して表裏を反転させる反転パス88と、を備えている。
この構成により、反転パス88によってスイッチバック搬送された記録用紙Pは、下側の開口部28及び開口部26を通って第1処理部12内へ向けて搬送され、更に搬送部120における搬送経路122へ送出されて、後述する二次転写ロール110とバックアップロール112との狭持部である転写ポイントTへ再度送り込まれるようになっている。
なお、第1筐体11の左壁面11Bには、その左壁面11Bに隣接して外付けされる大容量の給紙カセット(図示省略)から記録用紙Pを供給できるようにするための供給部94が設けられている。また、制御部16には、図示しないコンピューター等から送られてくる画像データに処理を施す画像信号処理部96と、各部へ電力を供給する電源部98と、が備えられている。
次に、画像形成部30について説明する。本実施形態に係る画像形成装置10には、第1特別色(V)、第2特別色(W)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各トナーを収容するトナーカートリッジ32V、32W、32Y、32M、32C、32Kが左右横方向(水平方向)に並んで交換可能に設けられており、フルカラー画像又は白黒画像を形成可能に構成されている。
なお、第1特別色及び第2特別色には、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック以外の特別色(透明を含む)から適宜選択される。また、以後の説明では、V、W、Y、M、C、Kを区別する場合は、数字の後にV、W、Y、M、C、Kの何れかの英字を付して説明し、V、W、Y、M、C、Kを区別しない場合は、V、W、Y、M、C、Kを省略する。
トナーカートリッジ32の下側には、各色のトナーに対応する6つの画像形成ユニット34が、各トナーカートリッジ32と対応するように左右横方向(水平方向)に並んで設けられている。そして、各トナーカートリッジ32と画像形成ユニット34との間には、露光ユニット40が設けられている。
画像形成ユニット34毎に設けられた露光ユニット40は、上記した画像信号処理部96によって処理を施された画像データを受け取り、色材階調データに応じて各半導体レーザー(図示省略)を変調し、各半導体レーザーから露光光Lを色材階調データに応じて出射するように構成されている。詳細には、後述する感光体36(図2参照)の表面に各色に対応した露光光Lを照射して、その感光体36上に静電潜像を形成するようになっている。
図2で示すように、画像形成ユニット34は、矢印A(図示の時計回り)方向に回転駆動される感光体36を備えている。感光体36の周囲には、感光体36を一様に帯電する帯電装置としてのコロナ放電方式(非接触帯電方式)のスコロトロン帯電器38と、露光ユニット40によって出射された露光光Lにより感光体36上に形成された静電潜像を各色の現像剤(トナー)で現像する現像装置42と、転写後の感光体36の表面をクリーニングするクリーニング装置としてのクリーニングブレード44と、転写後の感光体36の表面に光を照射して除電を行う除電装置としてのイレーズランプ46が設けられている。
なお、スコロトロン帯電器38、現像装置42、クリーニングブレード44、イレーズランプ46は、感光体36の表面と対向して、感光体36の回転方向上流側から下流側へ向けて、この順番で配置されている。
また、現像装置42は、画像形成ユニット34の横(図示の右側)に配置され、トナーを含んだ現像剤Gが充填された現像剤収容部材48と、現像剤収容部材48に充填されたトナーを感光体36の表面に移動させる現像ロール49と、を含んで構成されている。そして、現像剤収容部材48は、トナーカートリッジ32(図1参照)とトナー供給路(図示省略)を通して接続されており、トナーカートリッジ32からトナーが供給されるようになっている。
次に、転写部100について説明する。図1で示すように、各画像形成ユニット34の下側には、転写部100が設けられている。この転写部100は、各感光体36と接触する無端状の中間転写ベルト102と、中間転写ベルト102の内側に配置され、各感光体36上に形成されたトナー画像を中間転写ベルト102に多重転写させる6つの一次転写部材としての一次転写ロール104と、を含んで構成されている。
更に、この中間転写ベルト102は、図示しないモーターで駆動される駆動ロール106と、中間転写ベルト102の張力を調整する張力付与ロール108と、後述する二次転写ロール110と対向配置されたバックアップロール112と、複数個の張架ロール114との間に、一定の張力で巻き掛けられており、駆動ロール106により、図1の矢印B(図示の反時計回り)方向に循環移動されるようになっている。
詳細には、各一次転写ロール104は、中間転写ベルト102を挟んでそれぞれの各画像形成ユニット34の感光体36と対向配置されている。また、一次転写ロール104は、給電ユニット(図示省略)によって、トナー極性とは逆極性の転写バイアス電圧が印加されるようになっている。この構成により、感光体36上に形成されたトナー画像が中間転写ベルト102に転写されるようになっている。
一方、駆動ロール106の中間転写ベルト102を挟んだ反対側には、先端部が中間転写ベルト102と接触するクリーニングブレード116が設けられおり、このクリーニングブレード116は、循環移動する中間転写ベルト102上の残留トナーや紙粉等を除去するようになっている。
次に、第1処理部12における搬送部120について説明する。給紙カセット22の一端側(図示の右側)の上方には、給紙カセット22から記録用紙Pを搬送経路122へ送出する送出ロール118が設けられており、上昇するボトムプレート24に載せられた最上位の記録用紙Pに送出ロール118が接触するようになっている。
送出ロール118の下流側には、記録用紙Pの重送を防止する一対の分離ロール124が設けられており、分離ロール124の下流側には、記録用紙Pを下流側に搬送する一対の搬送ロール126が複数設けられている。
給紙部20(給紙カセット22)と転写部100(中間転写ベルト102)との間に設けられる搬送部120の搬送経路122は、給紙カセット22から送出された記録用紙Pを第1折返部122Aで図示の左方向へ折り返し、更に第2折返部122Bで図示の右方向へ折り返して二次転写ロール110とバックアップロール112との挟持部である転写ポイントTへ向けて送出するようになっている。
第2折返部122Bと転写ポイントTとの間には、搬送される記録用紙Pの傾き等を矯正するアライナー(図示省略)が設けられており、このアライナーと転写ポイントTとの間には、中間転写ベルト102上のトナー画像の移動タイミングと記録用紙Pの搬送タイミングを合わせるための位置合わせロール128が設けられている。
また、位置合わせロール128の下流側に設けられている二次転写部材としての二次転写ロール110は、給電ユニット(図示省略)によって、トナー極性とは逆極性の転写バイアス電圧が印加されるようになっている。この構成により、中間転写ベルト102上に多重転写された各色のトナー画像が、二次転写ロール110によって、搬送経路122に沿って搬送されて来た記録用紙Pに二次転写される構成となっている。なお、上記した供給部94は、搬送経路122の第2折返部122Bへ合流するようになっている。
また、転写ポイントTの下流側には、トナー画像が転写された記録用紙Pを第2処理部14内へ向けて搬送する複数個のバキューム搬送装置130が設けられている。各バキューム搬送装置130は、回転駆動する駆動ロール132と、回転可能に支持された従動ロール134と、駆動ロール132と従動ロール134に巻き掛けられる複数本のベルト部材136と、を備えている。
ベルト部材136の表面には、複数個の貫通孔(図示省略)が全面に渡って設けられており、その貫通孔から空気をベルト部材136の内側へ吸い込む吸込ファン138が、第1筐体11の後壁部側(図示の奥側)に配置されている。
この構成により、トナー画像が形成されていない記録用紙Pの裏面(非画像面)をベルト部材136に吸い付け、駆動ロール132を回転駆動させてベルト部材136を回転させることで、その記録用紙Pを更に下流側、即ち第2処理部14のバキューム搬送装置130へ搬送するようになっている。
なお、第2処理部14のバキューム搬送装置130も、第1処理部12のバキューム搬送装置130と同様の構成であり、第2処理部14における搬送経路122は、第1処理部12の搬送部120における搬送経路122と連続している。
次に、画像形成工程(作用)について説明する。画像信号処理部96で画像処理が施された画像データは、各色の色材階調データに変換され、各露光ユニット40に順次出力される。各露光ユニット40では、各色の色材階調データに応じて各露光光Lを出射し、スコロトロン帯電器38によって帯電された各感光体36上に走査露光を行い、静電潜像を形成する。
感光体36上に形成された静電潜像は、現像装置42によって、それぞれ第1特別色(V)、第2特別色(W)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のトナー画像(現像剤像)として顕在化される(現像される)。
各画像形成ユニット34V、34W、34Y、34M、34C、34Kの各感光体36上に形成された各色のトナー画像は、6つの一次転写ロール104V、104W、104Y、104M、104C、104Kによって中間転写ベルト102上に順次多重転写される。
中間転写ベルト102上に多重転写された各色のトナー画像は、二次転写ロール110によって、給紙部20(給紙カセット22)から搬送されて来た記録用紙P上に二次転写される。トナー画像が転写された記録用紙Pは、バキューム搬送装置130によって定着部50へ搬送される。
定着部50に搬送された記録用紙Pは、その定着部50において加熱・加圧されることにより、その記録用紙P上に転写された各色のトナー画像が定着される。そして、各色のトナー画像が定着された記録用紙Pは、冷却部60を通過して冷却された後、デカール処理部66に送り込まれ、記録用紙Pに生じたカールが矯正される。カールが矯正された記録用紙Pは、インラインセンサー部68によって画像欠陥等が検出された後、排出ロール92によって排出部90に排出される。
なお、記録用紙Pの画像が形成されていない裏面に画像を形成する場合(両面印刷の場合)には、その記録用紙Pは、インラインセンサー部68を通過後に、反転部80へ送出される。反転部80へ送出された記録用紙Pは、反転経路82を通過して反転され、再度第1処理部12へ送り込まれて、上記した手順で、その裏面にトナー画像が形成される。
以上のような構成の画像形成装置10において、次に定着部50(定着装置)の構成について詳細に説明する。図3で示すように、この定着部50は、定着ベルト56を備えた加熱部材の一例としての定着ベルトモジュール51と、定着ベルトモジュール51に対して圧接(接触)・離隔可能に配置される加圧部材の一例としての加圧ロール58と、を含んで構成されている。
そして、定着ベルト56(定着ベルトモジュール51)と加圧ロール58とが圧接する領域がニップ部Nとされ、そのニップ部Nにおいて記録用紙Pが加圧及び加熱されることで、その記録用紙Pにトナー画像が定着されるようになっている。なお、図6〜図12においては、定着ベルト56を省略している。
図3で示すように、定着ベルトモジュール51は、無端状の定着ベルト56と、加圧ロール58側で定着ベルト56を張架しながら、駆動源の一例としての駆動モーター150(図6参照)からギア列152及びギア154を介して伝達される回転駆動力によって回転する加熱ロール52と、加熱ロール52と異なる位置(上方位置)で内側から定着ベルト56を張架する支持ロール54と、定着ベルト56の外側に配置されて、その周回経路を規定する支持ロール55と、定着ベルト56の内側に配置されて、その姿勢を矯正する姿勢矯正ロール53と、を備えている。
そして、定着ベルトモジュール51と加圧ロール58とが圧接する領域であるニップ部N内の下流側領域で、かつ定着ベルト56の内側には、加熱ロール52の近傍位置に配置されて、加熱ロール52の外周面から定着ベルト56を剥離する剥離パッド57と、ニップ部Nの下流側において、定着ベルト56を張架する支持ロール59と、が設けられている。
ここで、この加熱ロール52は、アルミニウムからなる円筒状の芯金の表面に、金属磨耗を防止する保護層が形成されたハードロールとされており、その保護層は、例えば厚さ200μmのフッ素樹脂皮膜とされている。なお、加熱ロール52の内部には、熱源の一例としてのハロゲンヒーター142が設けられている。
また、支持ロール54は、アルミニウムで形成された円筒状のロールであり、その内部には、熱源の一例としてのハロゲンヒーター144が配設されており、定着ベルト56を内周面側から加熱するようになっている。なお、支持ロール54の両端部には、巻き掛けられた定着ベルト56を外側へ押圧するバネ部材(図示省略)が配設されている。
また、支持ロール55は、アルミニウムで形成された円筒状のロールであり、支持ロール55の表面には、例えば厚さ20μmのフッ素樹脂からなる離型層が形成されている。この離型層は、定着ベルト56の外周面からの僅かなオフセットトナーや紙粉が支持ロール55に堆積するのを防止するために形成されている。
また、この支持ロール55の内部には、熱源の一例としてのハロゲンヒーター146が配設されており、定着ベルト56を外周面側から加熱するようになっている。つまり、本実施形態に係る定着部50では、加熱ロール52、支持ロール54、支持ロール55によって、定着ベルト56が加熱される構成となっている。
姿勢矯正ロール53は、アルミニウムで形成された円柱状のロールであり、姿勢矯正ロール53の近傍には、定着ベルト56の端部位置を測定する端部位置測定機構(図示省略)が配置されている。そして、姿勢矯正ロール53には、端部位置測定機構の測定結果に応じて定着ベルト56の移動方向と直交する幅方向(軸方向)における接触位置を変位させる軸変位機構(図示省略)が配設され、定着ベルト56の蛇行を制御するように構成されている。
また、剥離パッド57は、加熱ロール52の軸方向の長さと対応する長さを有するブロック状の部材であり、例えば鉄系の金属や樹脂等の剛体で形成されている。剥離パッド57の断面形状は、加熱ロール52に面する湾曲した内側面57Aと、定着ベルト56を加圧ロール58に向けて押圧する押圧面57Bと、押圧面57Bに対して予め決められた角度を有して定着ベルト56を屈曲させる外側面57Cと、を備えた略三日月形状とされている。
また、この剥離パッド57の押圧面57Bと外側面57Cとで角部Uが構成されるようになっており、その角部Uは、加圧ロール58によって押し付けられた定着ベルト56を屈曲させるようになっている。このように、定着ベルト56が屈曲されていると、記録用紙Pの先端が、角部Uを通過した際に、定着ベルト56から剥離され易くなる。
一方、加圧ロール58は、アルミニウムからなる円柱状のロール58Aを基体として、その基体(ロール58A)側から順に、シリコーンゴムからなる弾性層58Bと、膜厚100μmのフッ素系樹脂からなる剥離層(以下「表面部」という場合がある)58Cと、が積層されて構成されている。
また、加圧ロール58は、回転自在に支持されるとともに、後述する接離手段160により、加熱ロール52に巻回されている定着ベルト56に対して圧接・離隔されるように構成されている。そして、この加圧ロール58は、接離手段160によって定着ベルト56に圧接されることにより、その定着ベルト56の矢印C方向への循環移動に従動して矢印E方向へ回転するようになっている。
図6〜図8で示すように、加圧ロール58の接離手段160は、その加圧ロール58を、定着ベルトモジュール51(定着ベルト56)に対して圧接させる圧接位置(図8(B)参照)と、定着ベルトモジュール51(定着ベルト56)に対して離隔させる離隔位置(図8(A)参照)と、に昇降移動させるようになっている。
すなわち、加圧ロール58の回転軸158の軸方向両端部は、それぞれ支持プレート140の長手方向略中央部に形成された矩形状の切欠部140Aに入り込んで下方から支持されており、各支持プレート140の下方には、支持プレート140を収容可能に上方側が開放された断面略「コ」字状の支持部材148がそれぞれ設けられている。
各支持プレート140の一端部側は、それぞれ支持部材148の一端部側に回転可能に支持されており、各支持部材148の一端部側は、図示しないフレーム等に回転可能に支持されている。また、各支持プレート140の他端部側と各支持部材148の他端部側との間には、圧縮コイルスプリング等の弾性部材147が設けられており、定着ベルトモジュール51(定着ベルト56)に対する加圧ロール58の圧接荷重が設定されるようになっている。
また、各支持部材148の開放側(上方側)縁端部の長手方向略中央部には、各支持プレート140の切欠部140Aに支持されている回転軸158の両端部の変位を許容する矩形状の切欠部148Aが形成されている。そして、各支持部材148の切欠部148Aよりも他端部側には、支持ロール149が回転自在にそれぞれ設けられている。
各支持ロール149の下方には、加圧ロール58の回転軸158と同じ軸方向に設けられた回転軸162に固定されたカム板164がそれぞれ配置されており、各カム板164のカム面が各支持ロール149の周面に接触して、各支持ロール149を下方から支持するようになっている。そして、カム板164の回転軸162は、駆動モーター168からギア列166を介して伝達される回転駆動力によって、一方向(図8で示す矢印D方向)及び他方向(矢印D方向とは逆方向)へ回転するように構成されている。
したがって、駆動モーター168からギア列166を介して伝達された回転駆動力により、回転軸162が一方向(矢印D方向)に回転し、その回転軸162に固定されている各カム板164が回転しつつ各支持ロール149を押し上げると、図8(B)で示すように、各支持部材148及び各支持プレート140が上昇し、各切欠部140Aに支持されている加圧ロール58の回転軸158の両端部が押し上げられて、加圧ロール58の表面部58Cが定着ベルトモジュール51(定着ベルト56)に圧接される。
一方、駆動モーター168からギア列166を介して伝達された回転駆動力により、回転軸162が他方向(矢印D方向とは逆方向)に回転すると、各支持ロール149に対する各カム板164の押し上げが解除されるので、加圧ロール58の回転軸158を支持しつつ各支持部材148及び各支持プレート140が自重によって下降し、図8(A)で示すように、加圧ロール58の表面部58Cが定着ベルトモジュール51(定着ベルト56)から離隔される。
なお、この接離手段160における回転軸162の一方向及び他方向への回転動作は、制御部16によって制御される。つまり、加圧ロール58(表面部58C)の定着ベルトモジュール51(定着ベルト56)に対する圧接・離隔動作は、制御部16によって制御されるようになっている。また、この接離手段160は、後述する赤外線放射温度センサー198の測定結果に基づいて、制御部16により制御されるようにもなっている。
また、この加圧ロール58は、定着ベルトモジュール51(定着ベルト56)から離隔した離隔位置において、回転(空転)するように構成されている。すなわち、図6、図9〜図12で示すように、加圧ロール58の軸方向における一方の外側(後方側)から下方側にかけて、定着ベルトモジュール51(定着ベルト56)から離隔した加圧ロール58を回転させる駆動手段170が設けられている。
この駆動手段170は、接離手段160により、加圧ロール58が定着ベルト56から離隔したときには、その加圧ロール58に対して、定着ベルト56(加熱ロール52)から回転駆動力を伝達し、加圧ロール58が定着ベルト56に圧接したときには、その加圧ロール58に対して、定着ベルト56(加熱ロール52)からの回転駆動力を遮断するように構成されている。
具体的に説明すると、この駆動手段170は、下端部(一端部)が支点172Aとされて回転可能に支持されたブラケット172を有しており、そのブラケット172の上端部(他端部)には、加熱ロール52と共に回転する駆動ギア156と噛合される伝達ギア174が回転可能に支持されている。なお、この伝達ギア174が噛合する駆動ギア156は、加熱ロール52の軸方向一端部側(後方側)にギア154と共に同心円状に取り付けられている(図6参照)。
また、図10で示すように、その伝達ギア174に噛合する中間ギア175と、その中間ギア175に噛合する中間ギア176が、それぞれブラケット172に回転可能に支持され、その中間ギア176に噛合する、軸方向に長いロールギア178が、ブラケット172の下端部に回転可能に支持されている。つまり、このブラケット172は、ロールギア178が回転可能に支持されている部位を支点172Aとして回転可能となっている。
また、ロールギア178には、ブラケット172に固定されたブラケット180に回転可能に支持された大ギア182が噛合しており、その大ギア182には、ブラケット180に固定されたブラケット183に回転可能に支持された小ギア184が噛合している。そして、その小ギア184には、後述する収容部材190に回転可能に支持された回転軸186の一端部が固定されており、その回転軸186の他端部側には、加圧ロール58が離隔位置にて摩擦を有して接触する回転部材の一例としてのゴムロール188が固定されている。
したがって、駆動ギア156に噛合された伝達ギア174から、中間ギア175、中間ギア176、ロールギア178、大ギア182、小ギア184、回転軸186を介して、ゴムロール188が回転する構成であり、中間ギア175、中間ギア176、ロールギア178、大ギア182、小ギア184、回転軸186が伝達機構の一例を構成している。
また、このゴムロール188は、収容部材190に回転可能に収容されている。すなわち、収容部材190の前後方向(回転軸186の軸方向)両端部には、付勢手段の一例としてのコイルスプリング194によって下方から弾性的に支持された一対のリング状部材192が上下方向に移動可能に配置されており、ゴムロール188の回転軸186は、そのリング状部材192に挿通されて回転可能に支持されている。
また、大ギア182の回転軸182Aとブラケット172との間には、弾性部材の一例としてのコイルスプリング196が架設されている。そして、そのブラケット172は、図示しない付勢手段の一例としてのコイルスプリングにより、伝達ギア174を駆動ギア156から離隔させる方向(図11で示す矢印F方向)へ支点172Aを中心に回転するように常時付勢されている。
したがって、接離手段160により、加圧ロール58が離隔位置へ下降し、その表面部58Cがゴムロール188に接触すると、図12で示すように、コイルスプリング194の付勢力に抗しつつ、ゴムロール188が加圧ロール58の重さによって下降し、回転軸186、小ギア184、大ギア182を下降させる。
すると、大ギア182の回転軸182Aとブラケット172との間には、コイルスプリング196が架設されているので、ブラケット172は、そのコイルスプリング196によって引っ張られ、支点172Aを中心に、図11で示す矢印F方向とは逆方向に回転し、伝達ギア174を駆動ギア156に噛合させる。これにより、駆動ギア156からの回転駆動力がゴムロール188へ伝達され、ゴムロール188によって加圧ロール58が回転される。
一方、接離手段160により、加圧ロール58が圧接位置へ上昇し、その表面部58Cがゴムロール188から離隔すると、図11で示すように、回転軸186、小ギア184、大ギア182は、コイルスプリング194の付勢力によって上昇し、ブラケット172は、図示しないコイルスプリングの付勢力により、図11で示す矢印F方向へ支点172Aを中心に回転する。これにより、駆動ギア156に対する伝達ギア174の噛合が解除され、ゴムロール188に対して回転駆動力が伝達されなくなる(遮断される)。
また、この加圧ロール58の表面部58Cには、図3〜図5で示すように、送風手段の一例としてのファン(シロッコファン)200によって冷却風が送風されるようになっている。すなわち、定着部50に搬送される記録用紙Pの挙動を乱さない位置、例えば加圧ロール58の上流側下部近傍には、その軸方向にファン200が3個配置されている。詳細には、このファン200は、加圧ロール58の回転軸158(表面部58C)の軸方向中央部と軸方向両端部に1個ずつ配置されている。
また、加圧ロール58の下方には、ファン200からの冷却風を、表面部58Cに沿って流れるように案内する板状の案内部材202が配置されている。この案内部材202は、ゴムロール188を挿通させる孔部又は切欠部(図示省略)を有するとともに、加圧ロール58の表面部58Cに沿って湾曲されており、その上面(表面部58Cに対向する面)には、整流板としてのリブ204が加圧ロール58の周方向及び軸方向に複数個並んで一体に形成されている。このリブ204により、ファン200からの冷却風が、加圧ロール58の下部側の表面部58Cに効率よく送風されるようになっている。
なお、加圧ロール58が、接離手段160によって下降してゴムロール188に接触しても、案内部材202(リブ204)には接触しないように、加圧ロール58の上下方向の移動範囲(案内部材202の位置)は決められている。また、この加圧ロール58の下流側上部近傍には、加圧ロール58に記録用紙Pが貼り付かないようにするための剥離爪206が配置されている。
また、ファン200から送風される冷却風による影響が出ない位置、例えば加圧ロール58を挟んでファン200が配置された位置とは略180度反対側で、かつ剥離爪206よりも下方側の位置には、加圧ロール58の表面部58Cの温度(表面温度)を非接触で測定する測定手段の一例としての赤外線放射温度センサー(以下「赤外線センサー」という)198が、加圧ロール58の軸方向に2個、その表面部58Cに対向して配置されている。詳細には、この赤外線センサー198は、加圧ロール58の回転軸158(表面部58C)の軸方向中央部と軸方向一端部に1個ずつ配置されている(図5参照)。
そして、この赤外線センサー198によって測定された加圧ロール58の表面部58Cの温度データは、制御部(制御手段)16に送られ、その制御部16によって、各ファン200の駆動が独立して制御されるようになっている。つまり、赤外線センサー198による測定結果に基づいて、加圧ロール58の表面部58Cの温度が、予め決められた制御範囲内に保たれ、かつ加圧ロール58を構成する構成部材(弾性層58B、剥離層58C)の材料特性から決まる許容温度を超えないように設定された上限温度以下になるように制御されている。
なお、加圧ロール58の軸方向中央部に対向配置された赤外線センサー198で測定した結果を基に、加圧ロール58の軸方向中央部に対向配置されたファン200の駆動が制御され、加圧ロール58の軸方向一端部に対向配置された赤外線センサー198で測定した結果を基に、加圧ロール58の軸方向両端部に対向配置されたファン200の駆動が制御されるようになっていることは言うまでもない。
以上のような構成とされた定着部50(定着装置)において、次にその加圧ロール58の表面部58Cの温度調整方法(作用)について説明する。本実施形態に係る定着部50では、制御部16により、赤外線センサー198の測定結果を基に、ファン200の駆動や接離手段160の作動が制御される。
つまり、この制御部16は、赤外線センサー198の測定結果により、加圧ロール58の表面部58Cの温度が予め決められた制御範囲よりも高いと判断された場合には、ファン200を駆動させて、その表面部58Cに冷却風を送風し、赤外線センサー198で、その表面部58Cの温度を測定しながら、その表面部58Cの温度が予め決められた制御範囲内の温度に達するように冷却する。
なお、このとき、ファン200は、搬送されて来る記録用紙Pの挙動を乱さない位置に配置されているので、印刷実行中に(少なくとも画像形成から定着までであって、加圧ロール58が定着ベルト56に圧接されている状態で)、加圧ロール58の表面部58Cに冷却風を送風していても問題はない。また、このとき、加圧ロール58は、定着ベルト56の循環移動に伴って従動回転しているので、その表面部58Cは、全周に亘って効率よく冷却される。
一方、この制御部16は、赤外線センサー198の測定結果により、加圧ロール58の表面部58Cの温度が予め決められた制御範囲よりも低いと判断された場合には、ファン200を駆動させずに、加圧ロール58を定着ベルトモジュール51(定着ベルト56)に接触させた状態とする。つまり、ファン200を駆動させることなく、印刷を実行させられる状態とする。
これにより、加圧ロール58の表面部58Cは、定着ベルトモジュール51(定着ベルト56)の熱によって加熱されるので、赤外線センサー198で、その表面部58Cの温度を測定しながら、その表面部58Cの温度が予め決められた制御範囲内の温度に達するように温められる。
なお、このとき、定着ベルト56は、制御部16によって加熱ロール52の駆動モーター150が駆動されることにより循環移動しているので、加圧ロール58は、その定着ベルト56の循環移動に伴って従動回転されている。したがって、加圧ロール58の表面部58Cは、全周に亘って効率よく温められる。
また、この制御部16は、赤外線センサー198の測定結果により、加圧ロール58の表面部58Cの温度が、加圧ロール58を構成する構成部材の許容温度を超えないように設定された上限温度よりも高いと判断された場合には、印刷動作を中止するとともに、接離手段160を作動させて、加圧ロール58の表面部58Cを定着ベルトモジュール51(定着ベルト56)から離隔させ、かつファン200を駆動させて、その表面部58Cに冷却風を送風し、赤外線センサー198で、その表面部58Cの温度を測定しながら、その表面部58Cの温度が予め決められた制御範囲内の温度に達するように冷却する。
ここで、この加圧ロール58は、接離手段160によって、定着ベルトモジュール51(定着ベルト56)から離隔させると、駆動手段170のゴムロール188に接触する。つまり、この加圧ロール58は、離隔位置においては、駆動手段170のゴムロール188により回転させられる。したがって、加圧ロール58の表面部58Cは、ファン200から送風される冷却風により、全周に亘って効率よく冷却される。
以上の制御により、この加圧ロール58の表面部58Cの温度は、常に適切な温度(予め決められた制御範囲内の温度)に調整される。よって、記録用紙Pに定着されたトナー画像に濃度欠陥、画像欠陥等が生じるのが抑制される。また、加圧ロール58の表面部58Cの温度が常に適切な温度に調整されることから、加圧ロール58の表面部58Cに対して剥離爪206が臨んでいても、その剥離爪206によって表面部58Cが傷付くおそれがない。
以上、本実施形態に係る定着部50(定着装置)及び画像形成装置10について説明したが、本実施形態に係る定着部50(定着装置)及び画像形成装置10は、図示の実施例に限定されるものではない。例えば、加圧ロール58に対向配置される赤外線センサー198は、加圧ロール58の軸方向両端部は同じ温度となるので、上記実施例のように、その軸方向一端部にだけ設けられていれば充分であるが、その軸方向他端部にも設けるようにしてもよい。