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JP2011007785A - 標的分子相互作用物質固定化担体 - Google Patents

標的分子相互作用物質固定化担体 Download PDF

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JP2011007785A
JP2011007785A JP2010119876A JP2010119876A JP2011007785A JP 2011007785 A JP2011007785 A JP 2011007785A JP 2010119876 A JP2010119876 A JP 2010119876A JP 2010119876 A JP2010119876 A JP 2010119876A JP 2011007785 A JP2011007785 A JP 2011007785A
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water
soluble polymer
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JP2010119876A
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Minako Hanazaki
美奈子 花崎
Hiroyuki Tanaka
裕之 田中
Toshifumi Shiratani
俊史 白谷
Hisao Takeuchi
久雄 竹内
Kazuhiko Ishihara
一彦 石原
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Mitsubishi Chemical Corp
University of Tokyo NUC
Original Assignee
Mitsubishi Chemical Corp
University of Tokyo NUC
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Abstract

【課題】標的分子相互作用物質の結合量が多く、標的分子との相互作用を効果的に行なうことができ、中性条件下でも全体的に均一な構造を有する標的分子相互作用物質固定化担体を提供。
【解決手段】固相担体と、該固相担体に固定化された互いに結合してなる標的分子相互作用物質と水溶性重合体とを含む構造体、とを含む標的分子相互作用物質固定化担体。製造方法としては、(1)ホスホリルコリン類似基を有する所定のエチレン系不飽和重合性モノマーと、標的分子相互作用物質を共有結合するための官能基がスペーサーを介して結合している所定のエチレン系不飽和重合性モノマーとを共重合させて水溶性重合体を合成し、(2)該水溶性重合体と標的分子と相互作用する分子を混合し、(3)該混合物を、前記官能基又は標的分子相互作用物質を共有結合するための官能基を有する固相表面に供給して標的分子相互作用物質固定化担体を製造する。
【選択図】図2

Description

本発明は標的分子相互作用物質が固定化された担体及びその製造方法に関する。具体的には、センサーチップ、標的分子の分離精製用チップなどの標的分子相互作用物質が固定化されたバイオチップに関する。
医療・診断、遺伝子解析、プロテオミクス、マイクロエレクトロニクス、膜分離等の分野においては、標的分子と当該標的分子と特異的に相互作用する物質との相互作用を用いて標的分子を検出することによる診断、検査、分析、精製等が行われている。このような標的分子の検出を適切に行なうために、これと相互作用する物質の固定化担体について、様々な技術が開発されている。
特に、標的分子相互作用物質(以下、これを単に「相互作用物質」と称することがある)の担持量や、相互作用物質を含有した微小空間(即ち、相互作用物質と標的分子との相互作用を効果的に行なうことのできる空間)の作製方法が検討されており、特許文献1には、相互作用物質とポリマーの混合溶液を基板に供給・濃縮して作製する、相互作用物質(タンパク質)とポリマーの凝集体が積層された状態で固定化されているチップが開示されている。このチップは、従来の方法と比べて相互作用物質の固定化量が増加し、その結果、標的分子と相互作用物質との間の相互作用を高感度に検出できるものであった。しかし、上記方法では、相互作用物質とポリマーの混合溶液を基板に供給・濃縮して作製する際に、供給した液滴の周囲の部分には厚い積層体が作製され、逆にスポット内部では積層構造が薄くなるという不均一性の問題が存在した。この現象は特に中性の条件下でチップを作製した際に顕著であった。この問題を解決するために、アルカリ性溶液を用いて該チップを作製する方法が提案されているが、アルカリ性で変性しやすいタンパク質を相互作用物質として用いる場合にはタンパク質の失活等が問題となっていた。
国際公開WO2006/038456号パンフレット
本発明は、相互作用物質の結合量が多く、該相互作用物質を含有した微小空間が、相互作用物質と標的分子との相互作用を効果的に行なうことのできる空間であり、中性条件下でも全体的に均一な構造を有する構造体が固定化された担体を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、固相担体と、該固相担体に固定化された、互いに結合してなる標的分子相互作用物質と水溶性重合体とを含む構造体とを含み、前記水溶性重合体はスペーサーと重合性基を含む化合物の水溶性重合体であり、前記標的分子相互作用物質は該スペーサーを介して前記水溶性重合体に結合している標的分子相互作用物質固定化担体が上記課題を解決できることを見出した。より具体的には、(1)親水性又は両親媒性の官能基を有する所定の不飽和重合性モノマーと、相互作用物質を共有結合するための官能基がスペーサーを介して結合している所定の不飽和重合性モノマーとを共重合させて水溶性重合体を合成し、(2)該水溶性重合体と相互作用物質を混合し、(3)該混合物を、相互作用物質又は水溶性重合体を共有結合するための官能基を有する固相表面に供給することにより、上記課題を解決した標的分子相互作用物質固定化担体が製造できることを見出した。本発明は、これらの知見によるものである。
即ち、本発明は以下のとおりである。
[1]固相担体と、
該固相担体に固定化された互いに結合してなる標的分子相互作用物質と水溶性重合体とを含む構造体、
とを含む標的分子相互作用物質固定化担体であって、
前記水溶性重合体はスペーサーと重合性基を含む化合物の水溶性重合体であり、前記標的分子相互作用物質は該スペーサーを介して前記水溶性重合体に結合している、標的分子を捕捉・検出するための標的分子相互作用物質固定化担体。
[2]前記水溶性重合体は、標的分子相互作用物質を共有結合するための官能基がスペーサーを介して重合性基に結合してなる化合物の水溶性重合体であり、標的分子相互作用物質は前記官能基を介して水溶性重合体に結合している、[1]に記載の標的分子相互作用物質固定化担体。
[3]スペーサーが下記式で表される、[1]または[2]に記載の標的分子相互作用物質固定化担体。
-(Y)q-
ここで、Yは炭素数1〜10のアルキレンオキシ基又はアルキレン基を示し、qは1〜20の整数を示すが、qが2以上20以下の整数である場合、繰り返されるYは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
[4]重合性基がアクリル基またはメタクリル基である、[1]〜[3]のいずれかに記載の標的分子相互作用物質固定化担体。
[5]前記化合物が、下記一般式(II)で表されるエチレン系不飽和重合性モノマーである、[4]に記載の標的分子相互作用物質固定化担体。
Figure 2011007785
(式中R7は水素原子又はメチル基を示し、Wは標的分子相互作用物質を共有結合するための官能基を示す。)
[6]前記水溶性重合体が、スペーサーと重合性基を含む化合物と、親水性又は両親媒性の官能基を有する不飽和重合性モノマーとの共重合体である、[1]〜[5]のいずれかに記載の標的分子相互作用物質固定化担体。
[7]下記(1)〜(3)に示す工程を少なくとも含む方法により製造されることを特徴とする、[6]に記載の標的分子相互作用物質固定化担体;
(1)親水性又は両親媒性の官能基を有する不飽和重合性モノマーと、前記一般式(II)で表されるエチレン系不飽和重合性モノマーとを共重合させて水溶性重合体を合成する工程
(2)(1)の工程で得られた水溶性重合体と、標的分子相互作用物質とを混合する工程、
(3)(2)の工程で得られた混合物を、前記官能基Wを共有結合するための官能基又は標的分子相互作用物質を共有結合するための官能基を有する固相表面に供給する工程。
[8]親水性又は両親媒性の官能基を有する不飽和重合性モノマーが下記式(I)で表わされるホスホリルコリン類似基を有するエチレン系不飽和重合性モノマーである、[6]または[7]に記載の標的分子相互作用物質固定化担体。
Figure 2011007785
(式中、R1は炭素数2〜10の2価の炭化水素基を示し、R2は炭素数1〜4の2価の炭化水素基を示し、R3、R4及びR5はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜6の炭化水素基を示し、R6は水素原子又はメチル基を示す。)
[9]水溶性重合体全体に対する、前記一般式(I)で表わされるホスホリルコリン類似基を有するエチレン系不飽和重合性モノマーに由来する構成単位の割合が、30モル%以上であることを特徴とする、[8]に記載の標的分子相互作用物質固定化担体。
[10]前記水溶性重合体が、さらに疎水性ユニットを有する不飽和重合性モノマーに由来する構成単位を含む、[6]〜[9]のいずれかに記載の標的分子相互作用物質固定化担体。
[11]前記疎水性ユニットを有する不飽和重合性モノマーがn−ブチルメタクリレートである、[10]に記載の標的分子相互作用物質固定化担体。
[12]下記(1)〜(3)に示す工程を少なくとも含む、[6]〜[11]のいずれかに記載の標的分子相互作用物質固定化担体の製造方法;
(1)親水性又は両親媒性の官能基を有する不飽和重合性モノマーと、前記一般式(II)で表わされるエチレン系不飽和重合性モノマーとを共重合させて水溶性重合体を合成する工程、
(2)(1)の工程で得られた水溶性重合体と、標的分子相互作用物質とを混合する工程、
(3)(2)の工程で得られた混合物を、前記官能基Wを共有結合するための官能基又は標的分子相互作用物質を共有結合するための官能基を有する固相表面に供給する工程。
[13] 下記(1)〜(3)に示す工程を少なくとも含む方法により製造されることを特徴とする、標的分子を捕捉・検出するための、標的分子相互作用物質の標的分子相互作用物質固定化担体;
(1)下記一般式(I)で表わされるホスホリルコリン類似基を有するエチレン系不飽和重合性モノマーと、下記一般式(II)で表わされるエチレン系不飽和重合性モノマーとを共重合させて水溶性重合体を合成する工程、
Figure 2011007785
(式中R1は炭素数2〜10の2価の炭化水素基を示し、R2は炭素数1〜4の2価の炭化水素基を示し、R3、R4及びR5はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜6の炭化水素基を示し、R6は水素原子又はメチル基を示す。)
Figure 2011007785
(式中R7は水素原子又はメチル基を示し、Yは炭素数1〜10のアルキレンオキシ基又はアルキレン基を示し、Wは標的分子相互作用物質を共有結合するための官能基を示し、qは1〜20の整数を示す。qが2以上20以下の整数である場合、繰り返されるYは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。)
(2)(1)の工程で得られた水溶性重合体と、標的分子相互作用物質とを混合する工程、
(3)(2)の工程で得られた混合物を、前記官能基Wを共有結合するための官能基又は標的分子相互作用物質を共有結合するための官能基を有する固相表面に供給する工程。
[14] 前記(3)の工程により固相表面に供給された混合物を乾燥させる工程をさらに含む方法により製造される、[13]に記載の標的分子相互作用物質固定化担体。
[15] 前記(1)の工程において、前記一般式(I)で表わされるホスホリルコリン類似基を有するエチレン系不飽和重合性モノマーが、共重合に用いられる全モノマーの30モル%以上であることを特徴とする[13]または[14]に記載の標的分子相互作用物質固定化担体。
[16]前記(1)の工程において、さらに疎水性ユニットを有するエチレン系不飽和重合性モノマーを共重合させることにより製造される、[13]〜[15]のいずれかに記載の標的分子相互作用物質固定化担体。
[17]前記疎水性ユニットを有するエチレン系不飽和重合性モノマーがn−ブチルメタクリレートである[16]に記載の標的分子相互作用物質固定化担体。
[18]下記(1)〜(3)に示す工程を少なくとも含む、[13]〜[17]のいずれかに記載の標的分子相互作用物質固定化担体の製造方法;
(1)下記一般式(I)で表わされるホスホリルコリン類似基を有するエチレン系不飽和重合性モノマーと、下記一般式(II)で表わされるエチレン系不飽和重合性モノマーとを共重合させて水溶性重合体を合成する工程、
Figure 2011007785
(式中R1は炭素数2〜10の2価の炭化水素基を示し、R2は炭素数1〜4の2価の炭化水素基を示し、R3、R4及びR5はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜6の炭化水素基を示し、R6は水素原子又はメチル基を示す。)
Figure 2011007785
(式中R7は水素原子又はメチル基を示し、Yは炭素数1〜10のアルキレンオキシ基又はアルキレン基を示し、Wは標的分子相互作用物質を共有結合するための官能基を示し、qは1〜20の整数を示す。qが2以上20以下の整数である場合、繰り返されるYは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。)
(2)(1)の工程で得られた水溶性重合体と、標的分子相互作用物質とを混合する工程、
(3)(2)の工程で得られた混合物を、前記官能基Wを共有結合するための官能基又は標的分子相互作用物質を共有結合するための官能基を有する固相表面に供給する工程。
[19]標的分子が、標的分子相互作用物質を介して結合した、[1]〜[11]および[13]〜[17]のいずれかに記載の標的分子相互作用物質固定化担体。
[20]標的分子が蛋白質、ペプチド、核酸および低分子化合物からなる群より選ばれる、[19]に記載の標的分子相互作用物質固定化担体。
[21][19]または[20]に記載の標的分子相互作用物質固定化担体を含むバイオチップ。
本発明に係る標的分子相互作用物質固定化担体は、従来の製造法で製造されたものと比べて、相互作用物質の担持量が多い。本発明の標的分子相互作用物質固定化担体は、相互作用物質を含有した微小空間が、相互作用物質と標的分子との相互作用を効果的に行なうことのできる空間である。本発明に係る標的分子相互作用物質固定化担体は、中性条件下でも均一な構造の構造体を有しているので、タンパク質などを相互作用物質として用いる場合に、特にその活性を保ったまま担持させることができる。本発明に係る標的分子相互作用物質固定化担体を用いることによりタンパク質等を相互作用物質とした診断、検査、分析、精製において、従来の標的分子相互作用物質固定化担体に比べて格段に標的分子との接触効率が高く、診断・検査・分析においては均一で再現性の高いシグナルを得られるという効果がある。
(a)〜(c)はいずれも、本発明の標的分子相互作用物質固定化担体の一例の表面近傍を拡大して示す模式図である。 ポリマーAとマウスIgGが結合した相互作用物質構造体が固定化されたウェルと、ポリマーBとマウスIgGが結合した相互作用物質構造体が固定化されたウェルと、ポリマーCとマウスIgGが結合した相互作用物質構造体が固定化されたウェルと、マウスIgGのみが固定化されたウェルにおける、プロテインAの捕捉量の比較データを示す図である。 ポリマーAとマウスIgGが結合した相互作用物質構造体をスポットした金基板と、ポリマーBとマウスIgGが結合した相互作用物質構造体をスポットした金基板と、ポリマーCとマウスIgGが結合した相互作用物質構造体をスポットした金基板と、マウスIgGのみをスポットした金基板とにおける、スポットのイメージング像の比較データを示す図である。 ポリマーAとマウスIgGが結合した相互作用物質構造体をスポットした金基板と、ポリマーBとマウスIgGが結合した相互作用物質構造体をスポットした金基板と、ポリマーCとマウスIgGが結合した相互作用物質構造体をスポットした金基板と、マウスIgGのみをスポットした金基板とにおける、相互作用物質構造体又はマウスIgGの固定化量の比較データを示す図である。 ポリマーAとマウスIgGが結合した相互作用物質構造体をスポットした金基板と、ポリマーBとマウスIgGが結合した相互作用物質構造体をスポットした金基板と、ポリマーCとマウスIgGが結合した相互作用物質構造体をスポットした金基板と、マウスIgGのみをスポットした金基板とにおける、プロテインAの捕捉量の比較データを示す図である。 ポリマーBとマウスIgGが結合した相互作用物質構造体をスポットした金基板と、ポリマーCとマウスIgGが結合した相互作用物質構造体をスポットした金基板と、マウスIgGのみをスポットした金基板(2D)とにおける、プロテインAの捕捉量の比較データを示す図である。 ポリマーBとマウスIgGが結合した相互作用物質構造体のスポット、ポリマーCとマウスIgGが結合した相互作用物質構造体のスポット、およびマウスIgGのみのスポットにおいて、結合した標的分子に由来するCy5の蛍光画像を示す図である(写真)。 ポリマーDとマウスIgGが結合した相互作用物質構造体をスポットした金基板と、ポリマーEとマウスIgGが結合した相互作用物質構造体をスポットした金基板とにおける、プロテインAの捕捉量の比較データを示す図と結合した標的分子に由来するCy5の蛍光画像を示す図(写真)である。
[I 本発明の標的分子相互作用物質固定化担体]
本発明の標的分子相互作用物質固定化担体は、固相担体と、該固相担体に固定化された互いに結合してなる標的分子相互作用物質(以下、単に相互作用物質と呼ぶこともある)と水溶性重合体とを含む構造体、とを含む標的分子相互作用物質固定化担体であって、前記水溶性重合体はスペーサーと重合性基を含む化合物の水溶性重合体であり、前記標的分子相互作用物質は該スペーサーを介して前記水溶性重合体に結合している、標的分子を捕捉・検出するための標的分子相互作用物質固定化担体である。
ここで、水溶性重合体が標的分子相互作用物質を共有結合するための官能基がスペーサーを介して重合性基に結合してなる化合物の水溶性重合体であり、標的分子相互作用物質は前記官能基を介して水溶性重合体に結合していることが好ましい。
さらに好ましくは、水溶性重合体は標的分子相互作用物質がスペーサーを介して重合性基に結合してなる化合物と、親水性又は両親媒性の官能基を有する不飽和重合性モノマーとの共重合体である。
本発明の標的分子相互作用物質固定化担体は、好ましくは、親水性または両親媒性の官能基を有する不飽和重合性モノマーと、相互作用物質を共有結合するための官能基がスペーサーを介して結合している所定の不飽和重合性モノマーとを共重合させて水溶性重合体を合成する工程、該水溶性重合体と相互作用物質とを、所定の媒質中に共存させる工程(以下適宜、「混合工程」という)、混合工程で得られた混合物を、相互作用物質を共有結合するための官能基を有する固相表面に供給する工程を少なくとも含む方法により製造される。
本発明の標的分子相互作用物質固定化担体は、より好ましくは、ホスホリルコリン類似基を有する所定のエチレン系不飽和重合性モノマーと、相互作用物質を共有結合するための官能基がスペーサーを介して結合している所定のエチレン系不飽和重合性モノマーとを共重合させて水溶性重合体を合成する工程、該水溶性重合体と相互作用物質とを、所定の媒質中に共存させる工程、混合工程で得られた混合物を、相互作用物質を共有結合するための官能基を有する固相表面に供給する工程を少なくとも含む方法により製造される。
上記混合物が供給された固相表面上には、相互作用物質と、水溶性重合体とからなる鎖から構成される構造体(以下、相互作用物質構造体とよぶことがある)が形成されている。前記鎖は、特開2006−113050号公報の[0089]段落に記載されているもの等で、相互作用物質と水溶性重合体とが互いに結合してなるものである。水溶性重合体に相互作用物質がスペーサーを介して結合し、その構造の繰り返しによって鎖状及び/又は網目状の構造が形成される。
この鎖が、例えば集合したり結合したりすることによって、本発明における相互作用物質構造体のマトリックス構造(マトリックス)が構成されている。即ち、本発明における相互作用物質構造体は、図1(a)〜図1(c)に模式的に示すように、相互作用物質と水溶性重合体とを含む構造体であり、その骨格は相互作用物質と水溶性重合体とが結合して構成された鎖により形成されている。これにより、本発明における相互作用物質構造体は、当該鎖が、鎖状及び/又は網目状に結合した構造を有するマトリックスとして構成されているのである。
なお、図1(a)〜図1(c)は、本発明における相互作用物質構造体のマトリックス構造を説明するため、固相担体に固定化した本発明における相互作用物質構造体の一例の表面近傍を拡大して示す模式図である。また、図1(a)〜図1(c)において、円形部分が相互作用物質を表わし、線状部分が水溶性重合体を表わす。また、線状部分のうち点線部分がスペーサーを表す。
以下、本発明における相互作用物質構造体の鎖及び当該鎖から構成されるマトリックス構造について説明する。
上述したように、本発明における相互作用物質構造体は、相互作用物質及び水溶性重合体からなる鎖を有する構造体である。また、本発明における相互作用物質構造体の鎖は、マトリックス構造の骨格を構成するもので、具体的には相互作用物質と水溶性重合体とが互いに結合してなるものである。詳しくは、水溶性重合体に相互作用物質がスペーサーを介して結合し、その構造の繰り返しによって鎖状及び/又は網目状の構造を形成したものである。
よって、本発明における相互作用物質構造体は、通常、下記式(A)で表わされる部分構造を2以上有する。
1−R2 (A)
{上記式(A)において、R1は相互作用物質を表わし、R2は水溶性重合体を表わす。ただし、相互作用物質構造体が固相担体に結合している場合、R2は固相担体に直接結合していない水溶性重合体を表わす。また、各R1,R2はそれぞれ同じであっても異なっていても良い。}
即ち、本発明における相互作用物質構造体は、上記式(A)のように相互作用物質と水溶性重合体とが結合した部分構造が、直鎖状及び/又は網目状に結合した構造体であることが好ましい。具体的には、上記式(A)のR1はそれぞれ独立に他の1又は2以上のR2に結合し、R2はそれぞれ独立に他の1又は2以上のR1に結合していることが好ましい。ただし、本発明における相互作用物質構造体は、例えば相互作用物質R1同士や水溶性重合体R2同士が結合した部分構造を含んでいてもかまわない。ここで、R1同士やR2同士の結合とは、分子間引力、疎液相互作用、電気的相互作用等の物理的相互作用による結合を示す。
したがって、本発明における相互作用物質構造体は、水溶性重合体同士の間には相互作用物質が存在し、また、相互作用物質同士の間には水溶性重合体が存在する橋架け構造を少なくとも一部に有していることが好ましい。そして、相互作用物質及び水溶性重合体の両方によって、マトリックス構造の鎖が構成されていることが好ましい。
相互作用物質構造体が相互作用物質と水溶性重合体とからなる鎖を有していることは、例えば、以下の方法により確認することができる。
本発明における相互作用物質構造体は、上述したような相互作用物質と水溶性重合体とからなる鎖を有しているため、その構成要素である相互作用物質の結合を分解することにより構造が崩壊する。これを利用し、相互作用物質構造体の相互作用物質のみを分解するようにすれば、相互作用物質と水溶性重合体とからなる鎖を確認することができる。例えば、水溶性重合体を分解しないようにしながら相互作用物質を分解した場合、本発明における相互作用物質構造体では、相互作用物質構造体が大きく崩壊する。さらに崩壊したものを調べることにより、相互作用物質構成要素以外の相互作用物質構造体を構成する化合物を特定することができる。さらに、水溶性重合体を分解しないようにしながら相互作用物質を分解した場合、本発明における相互作用物質構造体では、水溶性重合体のうち、固相担体に対して相互作用物質を介して固定化されていた部分は固相担体から脱離する。
したがって、具体的には、水溶性重合体が分解されず相互作用物質のみが分解を受ける酵素やその他の薬品により相互作用物質を分解し、この処理により固相担体から脱離した物質を調べること、又は、固相担体表面に残留している物質を調べることにより、相互作用物質構成要素以外の相互作用物質構造体を構成する化合物を特定できる。相互作用物質構造体が相互作用物質と水溶性重合体とからなる鎖を有していれば、脱離した物質または固相担体表面に残留している物質のなかに水溶性重合体が検出される。
上記の方法で用いる、相互作用物質を分解するための酵素や薬品は、用いた相互作用物質や水溶性重合体の種類に応じて任意のものを適当に用いればよい。その具体例を挙げると、相互作用物質が核酸である場合、例えば、リボヌクレアーゼ、デオキシリボヌクレアーゼ等の核酸分解酵素などが挙げられる。
また、相互作用物質が蛋白質である場合、例えば、微生物プロテアーゼ、トリプシン、キモトリプシン、パパイン、レンネット、V8プロテアーゼ等のタンパク質分解酵素、臭化シアン、2−ニトロ−5−チオシアン安息香酸、塩酸、硫酸、水酸化ナトリウム等のタンパク質分解能を有する化学物質などが挙げられる。
さらに、相互作用物質が脂質である場合、例えば、リパーゼ、ホスホリパーゼA2等の脂質分解酵素などが挙げられる。
また、相互作用物質が糖である場合、α−アミラーゼ、β−アミラーゼ、グルコアミラーゼ、プルラナーゼ、セルラーゼ等の糖分解酵素などが挙げられる。
なお、相互作用物質を分解するための酵素や薬品は、1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
ただし、例示物の中でも、相互作用物質だけでなく水溶性重合体も分解する虞があるものは、上記の鎖の確認が正確に行なえなくなる虞があるため、使用は避けるべきである。
また、相互作用物質を分解し、分解後に固相担体上に残留している物質を確認する場合、その具体的な確認方法は任意であるが、例えば、表面プラズモン共鳴(SPR)、水晶振動子マイクロバランス(QCM)、電子顕微鏡、エリプソメトリーなどによる測定によって確認することができる。
さらに、相互作用物質分解後に固相担体から脱離した物質の分析をする場合、その具体的な分析方法は任意であるが、例えば、液体クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー、質量分析(MS)、赤外分光法、核磁気共鳴法(NMR)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、ゲル電気泳動、キャピラリー電気泳動、吸光度測定、蛍光測定、元素分析、アミノ酸定量などが挙げられる。また、分析に際しては、各測定手法を単独で用いても良く、2種以上を任意に組み合わせて行なってもよい。
[I−1 水溶性重合体]
本発明における水溶性重合体とはスペーサーと重合性基を含む化合物の水溶性重合体であり、好ましくは標的分子相互作用物質を共有結合するための官能基がスペーサーを介して重合性基に結合してなる化合物をモノマー(以下、これを「スペーサー付きモノマー」あるいは「第1モノマー」と称することがある)に用いて重合反応を行うことにより得られる水溶性重合体である。ただし、相互作用物質が官能基と反応してスペーサーに結合すると官能基は水溶性重合体の構成要素ではなくなる。
ここで、スペーサーとしては下記式で表される構造が挙げられる。
-(Y)q-
ここで、Yは炭素数1〜10のアルキレンオキシ基又はアルキレン基を示す。qは1〜20の整数を示すが、より好ましい標的分子捕捉効果が得られ、より効率よく水溶性重合体を合成できる範囲は2〜8である。qが2以上20以下の整数である場合、繰り返されるYは、それぞれ同一であっても、又は異なるアルキレンオキシ基の連鎖であってもよい。スペーサーの好ましい構造としてはポリオキシエチレン等が挙げられる。特に、第1モノマー単独で重合させて水溶性重合体を得る場合にはスペーサーはポリアルキレンオキシ基である必要がある。
重合性基としては単独または他の重合性基と反応して重合反応できる基であればよいが、付加重合性基が好ましく、アクリル基、メタクリル基またはこれらを含む基がより好ましい。
標的分子相互作用物質を共有結合するための官能基がスペーサーを介して重合性基に結合してなる化合物として具体的には、下記一般式(II)で表わされるエチレン系不飽和重合性モノマーが挙げられる。
Figure 2011007785
ここで、R7は水素原子又はメチル基を示す。
式(II)における-(Y)q-の定義および好ましい例は上述したとおりであるが、もし、スペーサーが無く(qが0の場合)、主鎖に直接活性エステルが結合しているモノマー(例えば、N- acryloyloxysuccinimide)を用いて水溶性重合体を合成したとしても、中性p
H領域の媒質中において、相互作用物質を効率的に結合することができない。
これは、疎水性であるスクシンイミド基が水溶性重合体内部に埋もれてしまい、相互作用物質と接触、結合することが困難になるためである。特に、後述する第2モノマーとしてホスホリルコリン類似基を用いた水溶性重合体の場合には、ホスホリルコリン類似基が比較的バルキーであるために、さらにこの傾向が強い。
Wは標的分子相互作用物質と共有結合できる官能基を示す。官能基としては、上記の相互作用物質と共有結合可能なものであれば他に制限はなく、任意の官能基を用いることができる。通常は、相互作用物質の種類や本発明における相互作用物質が結合した水溶性重合体(以下、相互作用物質構造体とよぶことがある)の用途などに応じて適当なものを選択することが好ましい。なお、官能基は、1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いても良い。
好ましい官能基としては、活性エステル基が挙げられる。活性エステル基の具体例としては、N-ヒドロキシスクシンイミド活性エステル基、p−ニトロフェニル活性エステル基、コハク酸イミド活性エステル基、フタル酸イミド活性エステル基等が挙げられる。相互作用物質がタンパク質である場合、通常は、タンパク質の表層に存在するアミノ基と、上記活性エステル基とが結合する。また、相互作用物質が核酸である場合も、通常は、核酸の末端に導入されるアミノ基と、上記活性エステル基とが結合する。さらに、相互作用物質が糖である場合も、通常は、糖の側鎖に存在するアミノ基と、上記活性エステル基とが結合する。
本発明における水溶性重合体は、前記第1モノマーと、親水性又は両親媒性の官能基を有する不飽和重合性モノマー(以下、これを「第2モノマー」と称することがある)との共重合により得られる水溶性重合体であることが好ましい。
水溶性重合体を構成する第2モノマーは、親水性の官能基を有する不飽和重合性モノマー又は両親媒性の不飽和重合性モノマーであれば特に限定されない。親水性又は両親媒性の官能基を有する不飽和重合性モノマーの具体例を挙げると、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、p-スチレンスルホン酸ナトリウム、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−ビニルホルムアミド、(メタ)アクリロニトリル、N−(メタ)アクリロイルモルホリン、N−ビニルピロリドン、N−ビニルアセトアミド、N−ビニル−N−アセトアミド、ポリエチレングリコールモノ−(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸グリシジル、N-アクリロイルモルホリン、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン等が挙げられる。
本発明における水溶性重合体の例としては、少なくとも、下記一般式(I)で表わされるホスホリルコリン類似基を有するエチレン系不飽和重合性モノマー及び下記一般式(II)で表わされるエチレン系不飽和重合性モノマーとの共重合体が挙げられる。
Figure 2011007785
Figure 2011007785
式中R1は炭素数2〜10の2価の炭化水素基を示し、R2は炭素数1〜4の2価の炭化水素基を示し、R3、R4及びR5はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜6の炭化水素基を示し、R6は水素原子又はメチル基を示す。ここで、R1として具体的には、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等が挙げられるが、エチレン基であることが好ましい。R2として具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等が挙げられるが、エチレン基であることが好ましい。R3、R4、及びR5として具体的には、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられるが、メチル基であることが好ましい。
上記(I)で表わされる化合物として、具体的には、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、2−メタクリロイルオキシエトキシエチルホスホリルコリン、6−メタクリロイルオキシヘキシルホスホリルコリン、10−メタクリロイルオキシデシルホスホリルコリン、2−メタクロイルオキシアリルホスホリルコリン、2−メタクロイルオキシブテニルホスホリルコリン、2−メタクロイルオキシヘキセニルホスホリルコリン、2−メタクロイルオキシオクテニルホスホリルコリン、2−メタクロイルオキシデセニルホスホリルコリン等が挙げられるが、このうち2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンが好ましく用いられる。
上記式(I)、(II)で表わされる化合物は、市販のものを用いても良いし、当業者に周知の方法で調製したものを用いてもよい。
前記一般式(II)に示すスペーサーを有するエチレン系不飽和重合性モノマーを用いることで、親水性基又は両親媒性基よりも疎水性であるスクシンイミド基が水中に露出し、相互作用物質(タンパク質等)と接触しやすくなるなど、親水性基又は両親媒性基の立体障害を回避することができ、中性でも効率的に相互作用物質を結合することができる。特に、第2モノマーとしてホスホリルコリン類似基を用いる場合には、この傾向が顕著である。
前記水溶性重合体は、さらに疎水性ユニット(以下、これを「第3モノマー」と称することがある)を有することが好ましい。疎水性ユニットとは、疎水性ユニットを有する不飽和重合性モノマーに由来する構成単位を意味するが、具体的には疎水性基を有するメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等の直鎖又は分岐アルキル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等の芳香環(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、スチレン、メチルスチレン、クロロメチルスチレン等のスチレン系単量体、メチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル系単量体、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル系単量体等が挙げられる。これらは単独若しくは2種以上の混合物として用いても良い。このうちn−ブチルメタクリレートが好ましく用いられる。疎水性ユニットは、造膜性を付与することと、疎水性である活性エステル基よりも、さらに疎水性の高いユニットが高分子鎖に導入されるため、活性エステルがより水中に露出しやすくなるため好ましい。
また、モノマー同士が結合しないように、過度の熱を加えることや、強力な紫外線を照射することを防ぐことも好ましい。
本発明における水溶性重合体は、上記モノマーを、それ自体既知の通常用いられる方法によって重合させることにより製造することができる。具体的には、例えば、モノマーをラジカル重合させる場合、通常はラジカル重合開始剤を混合することにより重合を開始させる。用いるラジカル重合開始剤は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを用いることができる。使用できるラジカル系重合開始剤の例としては、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2'−アゾビス−(2−メチルプロパンニトリル)、2,2'−アゾビス−(2,4−ジメチルペンタンニトリル)、2,2'−アゾビス−(2−メチルブタンニトリル)、1,1'−アゾビス−(シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2'−アゾビス−(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)、2,2'−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビス−(2−アミジノプロパン)ヒドロクロリド等のアゾ(アゾビスニトリル)タイプの開始剤、過酸化ベンゾイル、クメンヒドロペルオキシド、過酸化水素、過酸化アセチル、過酸化ラウロイル、過硫酸塩(例えば過硫酸アンモニウム)、過酸エステル(例えばt−ブチルペルオクテート、α−クミルペルオキシピバレート及びt−ブチルペルオクテート)等の過酸化物タイプの開始剤などが挙げられる。ラジカル重合開始剤の添加濃度は1〜100mMが好ましい。
さらにレドックス系開始剤を混合することにより重合を開始させてもよい。レドックス系開始剤も、本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを用いることができ、その例としては、アスコルビン酸/硫酸鉄(II)/ペルオキシ二硫酸ナトリウム、第三ブチルヒドロペルオキシド/二亜硫酸ナトリウム、第三ブチルヒドロペルオキシド/Naヒドロキシメタンスルフィン酸が挙げられる。なお、個々の成分、例えば還元成分は、混合物、例えばヒドロキシメタンスルフィン酸のナトリウム塩と二亜硫酸ナトリウムとの混合物であってもよい。
本発明における水溶性重合体としては、上記第1モノマー単独、第1及び2モノマー、あるいは第1〜3モノマーを重合させた重合体のうち、水溶性であるのものをいう。ここで、水溶性とは重合体の少なくとも一部の量が水に溶解していればよく、残りは水に分散していてもよい。標的分子相互作用物質固定化担体の製造時に用いる媒質は任意であるが、通常は、溶媒や分散媒等の媒質として水を用いるためである。
前記重合体を水溶性とするには、具体的には、例えば、上記第2モノマーが、重合させるモノマー全体の30モル%以上、好ましくは40モル%以上、さらに好ましくは50モル%以上に調製して上記共重合を行う方法が用いられる。共重合させる場合の溶媒としては、例えば、エタノール等のアルコール系溶媒が用いられ、反応条件は、用いる重合開始剤あるいはモノマーの種類によって適宜選択することができる。共重合反応に供するモノマーの量比としては、第1モノマーと第2モノマーとを共重合させて水溶性重合体を調製する場合においては、第2モノマーが30〜99モル%、好ましくは40〜99モル%、さらに好ましくは50〜99モル%、最も好ましくは60〜99モル%であり、第1モノマーが1〜70モル%、好ましくは1〜60モル%、さらに好ましくは1〜50モル%、最も好ましくは1〜40モル%(但し第1モノマーと第2モノマーの合計を100モル%とする)である。
さらに第1モノマーと第2モノマーと第3モノマーとを共重合させて水溶性重合体を調製する場合においては、第2モノマーが30〜90モル%、好ましくは40〜90モル%、さらに好ましくは60〜90モル%であり、第1モノマーが1〜60モル%、好ましくは1〜40モル%、さらに好ましくは1〜20モル%であり、第3モノマーが10〜50モル%、好ましくは20〜35モル%(但し第1モノマーと第2モノマーと第3モノマーの合計を100モル%とする)である。具体的には、第2モノマーとして2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(以下、「MPC」と称することがある)を用い、第1モノマーとして、Methacryl−PEG−NHS(以下、「MA−PEG−NHS」と称することがある)を用い、さらに第3モノマーとしてn−ブチルメタクリレート(以下、「BMA」と称することがある)を用いる場合には、例えばMPCを30〜90モル%、好ましくは40〜90モル%、さらに好ましくは60〜90モル%、MA−PEG−NHSを1〜60モル%、好ましくは1〜40モル%、さらに好ましくは1〜20モル%、BMAを10〜50モル%、好ましくは20〜35モル%(但しMPCとMA−PEG−NHSとBMAの合計を100モル%とする)とすることができる。
これらモノマーは、適当な溶媒に懸濁して重合開始剤を添加した後、50〜80℃で、2〜6時間静置することにより共重合反応を行う。溶媒としては、モノマー、開始剤、重合してできた重合体を溶解するものであれば特に制限なく用いることができるが、具体的には、例えば、エタノール等のアルコール系溶媒が好ましく用いられる。溶媒量としては、上記モノマーが十分に共重合できるような量を適宜選択することができるが、具体的にはモノマーの全体量に対して1〜20倍程度を用いることが好ましい。
かくして得られる水溶性重合体は、それ自体既知の通常用いられる方法により精製することが好ましい。具体的には、クロロホルム−エーテル混合溶媒(2:8程度)により再沈殿を行い、沈殿物を回収して減圧乾燥する方法等が用いられる。
また、上記水溶性重合体は、無電荷であることが望ましい。水溶性重合体が相互作用物質と同じ電荷(同符号の電荷)を有していると、静電的反発力により、水溶性重合体と相互作用物質との結合が妨げられる可能性がある。一方、水溶性重合体が相互作用物質と反対の電荷(逆符号の電荷)を有していると、相互作用物質と水溶性重合体内の電荷を有する部分とが静電的引力により結合してしまい、水溶性重合体が有している活性エステル基に相互作用物質が効果的に結合することを妨げる可能性がある。また、水溶性重合体と相互作用物質との静電的引力による結合は、本発明の標的分子相互作用物質固定化担体を分離精製に用いる場合、使用時に用いる溶液のpHや塩などの添加物により、容易に結合が壊れてしまうことがありえるものと予想される。
なお、水溶性重合体が無電荷であるとは、少なくとも構造式上、非イオン性もしくは両性イオン性(正及び負の両方の電荷を有しており、お互いの電荷が実質打ち消しあっているもの)であれば、当該水溶性重合体は無電荷である。ただし、本発明における相互作用物質構造体の製造過程において、活性エステル基の加水分解等により、水溶性重合体が電荷をもったとしても、本発明の効果を損なわない限り、このような水溶性重合体は好適に用いることができる。
水溶性重合体の分子量や構造等は特に制限は無く任意である。したがって、水溶性重合体として例えば低分子量の重合体(オリゴマー)を用いても良いが、その場合、固定化しようとする一つの相互作用物質内のみで架橋してしまい、効率的に鎖を形成できなくなって、本発明における相互作用物質構造体を形成できなくなる可能性がある。また、相互作用物質内で架橋すると、該相互作用物質の活性が保持されない可能性もある。これを防止する観点からは、水溶性重合体の重量平均分子量としては、通常1000以上、好ましくは10000以上、また、通常100万以下、好ましくは50万以下、さらに好ましくは25万以下である。なお、分子量の測定には種種の方法が使える。尚、本明細書における分子量は、実施例に記載の方法で、SEC(サイズ排除クロマトグラフィー)により測定した分子量を意味する。
また、水溶性重合体の一部が媒質中に分散している場合において、水溶性重合体の大きさに制限は無く、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。ただし、効果的に相互作用物質と水溶性重合体とを結合させるためには、溶媒や分散媒などの液体(ここでは、媒質)中に混和した状態において、水溶性重合体の径は、通常1nm以上、好ましくは2nm以上、より好ましくは、3nm以上であることが望ましい。また、上限に特に制限は無いが、通常1μm以下である。
これらの水溶性重合体の大きさの測定には、種種の方法が使用できるが、静的光散乱測定法などにより調べることができる。
さらに、水溶性重合体が有する活性エステル基の量は、特に限定されず、また水溶性重合体の種類によって一概には規定できないが、例えば水溶性重合体として分子量1000以上の高分子を用いた場合、水溶性重合体が相互作用物質と効率よく結合でき、かつ、溶媒や分散媒などに混和できるようにするため、水溶性重合体に対して、モル%で、0.05%、好ましくは0.1%、より好ましくは0.5%以上、さらに好ましくは1%以上、かつ、40%以下、好ましくは35%以下、より好ましくは30%以下である。
[I−2 標的分子相互作用物質]
標的分子相互作用物質(相互作用物質)は、その目的に応じて、本発明の効果を著しく損なわない限り任意の物質を用いることができる。例えば、本発明の標的分子相互作用物質固定化担体を標的分子の精製などの用途で用いる場合には、標的分子と結合する物質が用いられ、該結合作用を利用して、標的分子の分離精製を行なうようにする。
標的分子とは、本発明の標的分子相互作用物質固定化担体により捕捉、検出する目的対象であれば何れのものでもよい。具体的には、蛋白質、ペプチド、核酸、酵素、抗体、低分子化合物等が挙げられる。ここで、「相互作用」とは、特に限定されるものではないが、通常は、共有結合、イオン結合、キレート結合、配位結合、疎水結合、水素結合、ファンデルワールス結合、及び静電力による結合のうち少なくとも1つから生じる物質間に働く力による作用を示す。また静電力による結合とは、静電結合の他、電気的反発も含有する。また、上記作用の結果生じる結合反応、合成反応、分解反応も相互作用に含有される。標的分子は、既知のものでも未知のものでもよい。標的分子が未知の場合としては、例えば、これと相互作用する物質として医薬品化合物や医薬品候補化合物、基質が特定されていない受容体等を担持させ、本発明の標的分子相互作用物質固定化担体を標的分子の特定(スクリーニング)に用いることができる。
標的分子と相互作用物質との組み合わせとしては、酵素と基質、抗体と抗原分子(エピトープ)、レクチンと糖、レセプターとリガンド、プロテインA、プロテインGあるいはプロテインA/GとFc、アビジン及びストレプトアビジン等のビオチン結合タンパク質とビオチン、グルタチオン−S−トランスフェラーゼとグルタチオン、アルブミンとアルブミン結合化合物、マルトース結合タンパク質とマルトース、Gタンパク質とグアニンヌクレオチド、ポリヒスチジンペプチドとニッケルあるいはコバルト等の金属イオン、DNA結合タンパク質とDNA、抗体、カルモジュリンとカルモジュリン結合ペプチド、ATP結合タンパク質とATP、あるいはエストラジオール受容体タンパク質とエストラジオールなどの各種受容体タンパク質とそのリガンド、細胞と細胞結合物質、アポ酵素と補酵素、核酸と該核酸に相補的な配列を有する核酸、等が挙げられる。
相互作用物質としてアルブミンを用いた場合は担体への非特異的吸着を抑制することができる。また、相互作用物質としてアビジンを用いれば、ビオチン化した別の相互作用物質又はその他の化合物を容易に且つ多量に固定化した担体を構成することができる。また、相互作用物質にプロテインAを用いれば、抗体を容易に且つ多量に固定化した担体を構成することができる。
[I−3 混合工程]
混合工程では、所定の媒質中において、相互作用物質と、水溶性重合体とを共存させる。相互作用物質は、通常は、何らかの溶媒に相互作用物質を溶解もしくは分散させた溶液、又は分散液として用意する。この場合に相互作用物質を希釈する溶媒や分散媒は、相互作用物質の活性や構造の安定性等を考慮して調製することが好ましい。混合工程において、相互作用物質と、水溶性重合体とを、所定の媒質中に共存させることで、相互作用物質を水溶性重合体が有する官能基を介して結合させることができ、これにより相互作用物質構造体を得ることができる。なお、水溶性重合体が有する官能基は全て相互作用物質と反応する必要はなく、相互作用物質構造体において一部残存していてもよい。ただし、標的分子を相互作用させる際には残存していないことが望ましいので、一部残存している場合は標的分子を相互作用させる前に官能基を標的分子と反応しない基に変換することが好ましい。本明細書においては、相互作用物質と水溶性重合体とが結合する際の場を形成する物質を「媒質」と広義に呼ぶものとする。
混合工程においては、相互作用物質構造体に効率よく微小空間を形成させるために、さらに非結合物質を共存させてもよい。微小空間を形成させることにより、該微小空間中において、標的分子と相互作用物質の相互作用を効率的に行わせることが可能になる。
非結合物質は、相互作用物質及び水溶性重合体に結合しないことが好ましく、相互作用物質構造体に300nm以上100μm以下の径を有する微小空間を形成し得る物質を用いることが好ましい。非結合物質は、好ましくは水混和性物質が用いられ、中でも水溶性物質を使用することが好ましく、特に水溶性高分子化合物を用いることが好ましい。また、非結合物質は、無電荷であることが好ましい。なお、非結合物質が無電荷であるとは、少なくとも構造式上、非イオン性もしくは両性イオン性(正及び負の両方の電荷を有しており、お互いの電荷が実質打ち消しあっているもの)であれば、当該非結合物質は無電荷である。非結合物質は、合成高分子化合物でもよく、天然高分子化合物でもよい。非結合物質としては、例えばポリエチレングリコールが挙げられる。非結合物質については、特開2007−279028号公報に詳細に記載されている。
混合工程の後、媒質を除去する濃縮工程や乾燥工程を行うこともできるし、非結合物質を除去する工程などを行なうこともできる。
本発明の標的分子相互作用物質固定化担体の製造工程においては、相互作用物質、水溶性重合体、非結合物質及び媒質、並びに、これらを混合した混合物などに対して、本発明の効果を著しく妨げない限り、任意の添加剤を共存させてもよい。添加剤の例としては、上記の塩の他、酸、塩基、バッファー、グリセリン、ポリエチレングリコール、糖類等の保湿剤、生体物質の安定剤としての亜鉛等の金属イオン、消泡剤、変性剤、アジ化ナトリウム等の防腐剤などを挙げることができる。
媒質としては、本発明の標的分子相互作用物質固定化担体の製造が可能な限り任意のものを用いることができるが、通常は、相互作用物質と水溶性重合体とが混和しうるものを用いることが望ましい。さらに、非結合物質や添加剤が用いられる場合には、非結合物質や添加剤も混和しうるものを用いることが望ましい。この際、相互作用物質、水溶性重合体、非結合物質及び添加剤の混和状態は任意であり、溶解状態であっても分散状態であってもよいが、相互作用物質と水溶性重合体とを安定して結合させるためには、相互作用物質及び水溶性重合体が媒質中において溶解状態で存在していることが好ましい。
媒質としては、通常は液体を用いる。この際、媒質は、相互作用物質と水溶性重合体とが結合する場を形成することになり、相互作用物質や水溶性重合体等の活性や構造の安定性などに影響を与えることがあるため、その影響を考慮して選択することが好ましい。通常は、媒質として水や、各種緩衝液、例えば、炭酸バッファー、リン酸バッファー、酢酸バッファーなどが挙げられる。また、媒質としては水以外の液体を用いても良く、例えば、有機溶媒を用いることができる。さらに、有機溶媒の中でも、両親媒性溶媒、即ち、水に混和しうる有機溶媒が好ましい。水以外の媒質の具体例としては、メタノール、エタノール、1−ブタノールなどのアルコール系溶媒の他に、THF(テトラヒドロフラン)、DMF(N, N−ジメチルホルムアミド)、NMP(N−メチルピロリドン)、DMSO(ジメチルスルホオキシド)、ジオキサン、アセトニトリル、ピリジン、アセトン、グリセリンなどが挙げられる。
また、これらの媒質として液体を用いる際には、この媒質に塩を加えても良い。塩の種類は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、具体例としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、リン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化カルシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸アンモニウムなどが挙げられる。また、用いる塩の量に制限は無く、用途に応じて任意の量の塩を用いることができる。なお、媒質は、1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
混合工程における混合操作は任意で、また、これらを混合する順番も任意である。さらに、後述する固相担体に相互作用物質が結合した水溶性重合体を固定する目的で、固相担体上でこの混合物を調製することも可能である。
混合工程において使用する相互作用物質、水溶性重合体、非結合物質、媒質、添加剤等の混合比率は、本発明の標的分子相互作用物質固定化担体を得ることができる限り任意である。ただし、「(相互作用物質の重量)/{(相互作用物質の重量)+(水溶性重合体の重量)}」で表される混合比率の値は、通常0.1以上、好ましくは0.2以上、より好ましくは0.4以上、更に好ましくは0.5以上、特に好ましくは0.6以上が望ましい。また、上限に特に制限は無いが、通常0.999以下である。
また、媒質中における相互作用物質及び水溶性重合体の割合(濃度)も本発明の標的分子相互作用物質固定化担体を得ることができる限り任意であるが、相互作用物質及び水溶性重合体の合計濃度が、通常0.1g/L以上、好ましくは1g/L以上、より好ましくは10g/L以上とすることが望ましい。
さらに、「(非結合物質の重量)/{(相互作用物質の重量)+(水溶性重合体の重量)+(非結合物質の重量)}」で表される混合比率の値は、通常0.001以上、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.1以上である。また、上限に特に制限は無いが、通常0.95以下、好ましくは0.7以下、より好ましくは0.5以下である。
[I−4 固相担体]
固相担体は、表面に相互作用物質構造体が結合する基体となるものである。本発明で用いる固相担体に制限は無く、相互作用物質構造体が結合できるものであれば、任意の材質、形状、寸法のものを用いることができる。
固相担体の材質の例を挙げると、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリアミド、アクリル系樹脂等の各種樹脂材料、寒天、カラギーナン、ゼラチン、カルボキシメチルセルロース、糊、アルギン酸、ポリビニルアルコール、デキストラン等のゲル状担体、ガラス、アルミナ、炭素、金属等の無機材料などが挙げられる。なお、固相担体の材質は1種を単独で用いたものでもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用したものであっても良い。また、固相担体の形状は、本発明の標的分子相互作用物質固定化担体の用途に応じて適宜選択することができる。
さらに、上記固相担体は、そのまま使用してもよいが、金属や金属酸化物などの被覆材料で表面を被覆してから相互作用物質構造体を結合させても良い。また、固相担体と相互作用物質構造体とを結合させるために、表面処理として、前記一般式(II)の官能基W又は相互作用物質を共有結合するための官能基を有する固相担体を用いる。該官能基として、例えば、ヒドロキシル基、カルボキシル基、チオール基、アルデヒド基、ヒドラジド基、カルボニル基、エポキシ基、ビニル基、アミノ基、スクシンイミド基、p−ニトロフェニル基等の、化学結合により固相担体と相互作用物質構造体とを結合させることができる官能基が挙げられる。
相互作用物質構造体と固相表面との結合は相互作用物質と固相表面の官能基の反応によるものであってもよいし、相互作用物質と未反応である水溶性重合体の官能基と固相表面の官能基の反応によるものであってもよいし、これらの両方であってもよい。
例えば、前記一般式(II)の官能基Wがスクシンイミド基であり、固相表面の官能基がアミノ基である場合には、相互作用物質構造体は、該スクシンイミド基と固相表面のアミノ基との間の共有結合を介して固相表面に結合することができる。また、相互作用物質がアミノ基を有する物質であり、固相表面の官能基がスクシンイミド基である場合には、相互作用物質構造体は、相互作用物質が有するアミノ基と固相表面のスクシンイミド基との間の共有結合を介して固相表面に結合することができる。
相互作用物質構造体を固相担体に供給する方法としては、前記混合工程における混合物を、固相担体に接触した状態にさせることができるものであれば何れの方法を用いてもよい。例えば、あらかじめ相互作用物質構造体の構成成分の混合物を用意して、該混合物を固相担体に接触させてもよいし、各成分を別々に用意し、固相担体上でそれらを混合させて混合物を調製しながら、固相担体に混合物を接触させるようにしてもよい。固相担体と混合物の好ましい接触方法としては、上記構成成分をそれぞれ別々に又は上記構成成分の混合物を固相表面上へ滴下する方法である。滴下量は、本発明の標的分子相互作用物質固定化担体の用途や製造時の条件に応じて適宜選択することができるが、具体的には1pL〜10μL程度が好ましい。
相互作用物質構造体を固相担体に結合させる際の条件は任意であるが、相互作用物質の変性等を避ける観点から、温度条件は、通常0〜3℃以上10〜25℃以下で行なう。さらに、相互作用物質構造体を固相担体に固定するには、混合物の供給後、所定の時間だけ固相担体を静置することが望ましい。静置の時間は任意であるが、通常1分〜1時間以上12〜24時間以下が望ましい。
また、固相担体に供給された相互作用物質構造体は、適宜、濃縮工程又は乾燥工程を行なうようにしてもよい。固相担体への固定後の混合物を乾燥、濃縮する場合、その際の圧力条件も任意であるが、通常は、常圧以下、自然乾燥が望ましい。
さらに、混合工程において非結合物質を添加した場合には、固相担体への混合物の供給後、除去工程を行なうことにより、相互作用物質構造体から非結合物質を除去することもできる。
非結合物質を除去する方法に制限は無く、例えば、非結合物質を含有する相互作用物質構造体を洗浄溶媒で洗浄し、非結合物質を除去しても良い。洗浄溶媒は、相互作用物質構造体を変質させないものが好ましい。洗浄溶媒の具体例を挙げると、水、エタノール、2−プロパノール、DMSO、DMF等の水溶性有機溶媒などが挙げられる。中でも、水が好ましい。また、洗浄溶媒には、緩衝物質や界面活性剤などの物質を含有させてもよい。
かくして製造された相互作用物質構造体が結合した固相担体は、標的分子を検出するために使用することができるが、さらに固相表面上の活性エステル基等の未反応の官能基をブロッキングする目的で、エタノールアミン−HCl水溶液やグリシン等を接触させることが好ましい。接触時間は1分〜5時間が好ましい。その後、さらにエタノールアミン等を除去する目的で脱塩水等を用いてよく洗浄し、室温で乾燥して、本発明の標的分子相互作用物質固定化担体とすることが好ましい。
[II 本発明の標的分子相互作用物質固定化担体の用途]
本発明の標的分子相互作用物質固定化担体は、例えば、標的物質を検出するバイオセンサーとして好適に使用できる。上記のバイオセンサーは、例えば、いわゆるDNAアレイ若しくはDNAチップ、または、プロテインアレイ若しくはプロテインチップ等と呼ばれる、DNAまたは蛋白質等を固定化したセンサーチップ(バイオチップ)を用いて、相互作用を解析するものである。例えば、本発明の標的分子相互作用物質固定化担体は、このセンサーチップに適用することができる。即ち、上述した方法によりセンサーチップ本体を固相にして、その表面に相互作用物質構造体を形成することでセンサーチップを製造することができる。
このようなセンサーチップは、蛍光法、ELISA法、化学発光法、RI法、SPR(表面プラズモン共鳴)法、QCM(水晶発振子マイクロバランス)法、ピエゾ方式カンチレバー法、レーザー方式カンチレバー法、質量分析法、電気化学的方法、電極法、電界効果トランジスタ(FET)法、カーボンナノチューブを利用したFET及び/又は単一電子トランジスタ法に用いることができる。
さらに、本発明の標的分子相互作用物質固定化担体は、抗血栓性、細胞接着性、細胞増殖因子等のタンパク質の徐放性などを付与することができるため、DDS(ドラッグデリバリーシステム)のための薬剤の表面処理、再生医療担体の表面処理、人工臓器の表面処理、カテーテルなどの表面処理等に適用可能である。
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施することができる。
[実施例1]
ポリマーA又はポリマーBとマウスIgGを用いて作製した96ウェルプレート上の標的分子と相互作用する分子構造体
(1)水溶性重合体(ポリマーA)の合成
モノマーである2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(以下、「MPC」と称する)を合成し、これを3.7重量部、n−ブチルメタクリレート(BMA)(和光純薬社製)を0.90重量部、スクシンモノマーである合成したMethacryl−PEG−NHS(MA−PEG−NHS)を0.67重量部、開始剤AIBN(関東化学社製)を0.049重量部、溶媒であるエタノールを全量30mlとなるように添加し、アルゴン置換を行った。その後、60℃で3時間、ラジカル重合によって合成を行った。クロロホルムーエーテル混合溶媒(2:8)を用いて再沈殿を行った。沈殿物を回収し、減圧乾燥することで、ポリマーAを得た。
ここで、上記MA−PEG−NHSの合成は以下の方法で行った。
脱水アセトン300mLにN,N'−Disuccinimidyl carbonate(DSC)8.0121g入れ攪拌した。そこへ脱水アセトン100mLにPolyethylene glycol−monomethacrylate(ブレンマーPE−90:日油製)4.4062g、トリエチルアミン(TEA)6.3411gを溶解後滴下し、室温で24時間反応させた。反応後エバポレートで溶媒を除去した。その後クロロホルム300mLに溶解し、希塩酸(pH4)300mLを加え洗浄した。クロロホルム層を回収し、硫酸マグネシウムを加え一昼夜脱水した。フィルターろ過後エバポレートで完全に溶媒を除去し、粘ちょうな液体を得た。収率は74.7%(6.1442g)であった。
得られたポリマーAについて、SEC(Size Exclusion Chromatography)測定を行なった結果、ポリマーAのピークトップ分子量(Mp)が約74470、重量平均分子量(Mw)が約63989と見積もられた。
ここで、SECの測定は、Shodex OH pak SB−804HQ(昭和電工製)を用い、メタノール:水=7:3(10mMのLiBrを含む)を展開溶媒として行なった。また、分子量校正の標準試料としてはPEGを用いた。
また、得られたポリマーAに含まれるMA−PEG−NHSとBMAとMPCとのモル比(MA−PEG−NHS/BMA/MPC)は、1H−NMR測定からMA−PEG−NHS/BMA/MPC=3.3/33/63と見積もられた。
(2)水溶性重合体(ポリマーB)の合成
モノマーであるMPC(日油(株)社製)を3.7重量部、合成したMA−PEG−NHSを2.7重量部、開始剤AIBN(関東化学社製)を0.049重量部、溶媒であるエタノールを全量30mlになるように添加し、アルゴン置換を行った。その後、60℃で3時間、ラジカル重合によって合成を行った。クロロホルムーエーテル混合溶媒(2:8)を用いて再沈殿を行った。沈殿物を回収し、減圧乾燥することで、ポリマーBを得た。
得られたポリマーBについて、標準ポリエチレングリコールで校正されたSEC(Size Exclusion Chromatography)測定を行なった結果、ポリマーBのピークトップ分子量(Mp)が約63508、重量平均分子量(Mw)が約283167と見積もられた。
また、得られたポリマーBに含まれるMA−PEG−NHSとMPCとのモル比(MA−PEG−NHS/MPC)は、1H−NMR測定からMA−PEG−NAS/MPC=11/89と見積もられた。
(3)96ウェルプレート表面への標的分子と相互作用する分子構造体の形成
(3−1)96ウェルプレートの表面処理
0.1MのN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS、和光純薬工業社製)水溶液1mLと0.4Mの1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド塩酸塩(EDC、同仁化学研究所製)水溶液1mLとを混合し、さらに脱塩水18gで希釈した溶液を、カルボキシル基が導入された96ウェルプレート(スミロン(登録商標)ELISA製品・カルボタイプ、住友ベークライト社製)に100μL/well添加し、15分間反応させた。これは、ウェル内の表面に、ウェルと標的分子と相互作用する分子構造体とを結合させることができるスクシンイミド基を導入するためである。
(3−2)相互作用物質と水溶性重合体の混合物の調製及び滴下と乾燥処理
次に、相互作用物質として用いる10mg/mLのマウスIgG(LAMPIRE BIOLOGICAL LABORATORIES製)のバッファーを10mMりん酸バッファー(pH7.4,pH8.0)又は10mM炭酸バッファー(pH9.4)に交換したものを用意した。この10mg/mLのマウスIgGを含むバッファーとポリマーA又はポリマーBの水溶液(10mg/mL)を重量混合比10:1(標的分子と相互作用する分子:水溶性重合体)で混合した混合物を、96ウェルプレートのウェル内に1μLスポッティングした。これを室温にて乾燥した後、未反応の活性エステル基をブロッキングする目的で、1ウェル内に1Mのエタノールアミン−HCl水溶液(pH8.5)300μLを室温して30分浸漬した。これにより、プレートのウェル表面にマウスIgG及びポリマーAもしくはポリマーBを、それぞれ標的分子相互作用物質及び水溶性重合体とする、標的分子と相互作用する分子構造体が形成された。
その後、ウェル内を、エタノールアミンを除去する目的で脱塩水を用いてよく洗浄し、室温で乾燥して、表面に標的分子相互作用物質を担持したウェルを得た。
[比較例1]
ポリマーCとマウスIgGを用いて作製した96ウェルプレート上の標的分子相互作用物質固定化担体の製造
(1)水溶性重合体(ポリマーC)の合成
モノマーであるN−アクリロイルモルホリン(NAM、KOHJIN社製)2.82重量部、及びN−アクリロイルオキシスクシンイミド(NAS、ACROS ORGANICS社製)0.84重量部と、溶媒である脱水ジオキサン(和光純薬工業株式会社製)20.87重量部とをよく混合し、50mLの四つ口フラスコにそそぎ入れ、室温で30分間窒素にて脱気を行ない、モノマー溶液を調製した。
このモノマー溶液をオイルバスにて70℃に昇温し、重合開始剤アゾビスイソブチロニトリル(AIBN、キシダ化学株式会社製)0.0124重量部を脱水ジオキサン0.50重量部に溶かした溶液を入れることにより、重合を開始した。重合は窒素雰囲気下、8時間行なった。
重合後、ポリマーが生成した溶液は、0.5Lのエタノール(純正化学株式会社製)に供給することにより再沈殿させた後、溶媒を除去することにより粉末化し、水溶性重合体ポリマーCを得た。
得られたポリマーCについて、標準ポリスチレンで校正されたSEC(Size Exclusion Chromatography)測定を行なった結果、ポリマーCの重量平均分子量(Mw)が約59500と見積もられた。
ここで、SECの測定は、下記の条件で行った。
溶媒 :DMF(50mMLiBr入)
流速 : 0.5ml/min
温度 : 80℃
尚、今回は、以下の装置、検出器及びカラムを使って測定した。
装置 :Tosoh HLC−8120GPC
検出器:RI(装置内臓)
カラム :TOSOH TSKgel SuperHM−M(15cm×2)
また、得られたポリマーCに含まれるNASとNAMとのモル比(NAS/NAM)は、1H−NMR測定からNAS/NAM=23/77と見積もられた。
(2)96ウェルプレート表面への相互作用物質構造体の形成
実施例1の「(3−1)96ウェルプレートの表面処理」と同様にして、96ウェルプレートのウェル内の表面にスクシンイミド基を導入した。
次に、ポリマーA水溶液またはポリマーB水溶液の代わりにポリマーC水溶液(10mg/mL)を用いた以外は実施例1の「(3−2)相互作用物質と水溶性重合体の混合物の調製及び滴下と乾燥処理」と同様の操作を行うことにより、プレートのウェル表面にマウスIgG及びポリマーCをそれぞれ標的分子相互作用物質及び水溶性重合体とする相互作用物質構造体が形成された。
また、基板へのマウスIgGの直接固定(2D)は、ポリマーを用いない点を除いては、上記方法と同様の方法にて行った。その後、ウェル内を、エタノールアミンを除去する目的で脱塩水を用いてよく洗浄し、室温で乾燥して、表面に相互作用物質構造体、もしくはマウスIgGのみを担持したプレートを得た。
<実施例1および比較例1で得られた標的分子相互作用物質固定化担体の蛍光強度法による評価>
上記実施例1および比較例1で得られたサンプルの性能を蛍光強度法で分析した。上記の実施例1および比較例1で得られた相互作用物質構造体プレートを5重量%BSAを含むPBS(−)200μl/ウェルにて室温で1時間ブロッキングした。溶液を除去した後に水洗し、アナライトとして50μg/mLのFITC Conjugated ProteinA(EY LABORATORIES,INC.製)を含むPBS(−)を100μlずつウェルに添加し、室温で1時間インキュベートした。溶液を除去した後、反応に関与しなかった余分なアナライトを除去することを目的として0.05%Tween20を含むPBS(−)を用いて充分に洗浄を行なった。さらに水洗した後に、1ウェルあたりに100μLのPBSを添加し、MOLECULAR IMAGER(BIO−RAD製)を用いて励起波長488nm及び蛍光波長530nmにて相互作用物質構造体全体部分のFITCの蛍光強度測定を行なった。
結果を図2に示す。図2において、本実施例は、比較例1と比較して中性領域(Buffer pH8.0及びpH7.4)で、より高い蛍光強度(Intensity)を示した。このことから、ポリマーA、もしくはポリマーBを用いることでより多くのアナライトを捕捉可能であることが示された。
[実施例2]マウスIgGを用いた金チップ上の相互作用物質構造体
(1)金チップの表面処理
金で被覆されたチップを、10mMの16−メルカプトヘキサデカン酸(16−MELCAPTOHEXADEANOIC ACID:ALDRICH社製)エタノール溶液に浸漬させ、室温で12時間反応させ、表面処理を行なった。反応終了後、金チップをエタノールで洗浄した。この表面処理は、金−硫黄結合を介して金チップの表面にカルボキシル基を導入するための処理である。
次に、0.1MのN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS、和光純薬工業社製)水溶液1mLと0.4Mの1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド塩酸塩(EDC、同仁化学研究所製)水溶液1mLとを混合し、さらに脱塩水18gで希釈した溶液に、上記のカルボキシル基を導入した基板(金チップ)を浸漬させ、15分間反応させた。これは、基板表面に、基板と相互作用物質構造体とを結合させることができるスクシンイミド基を導入するためである。
(2)相互作用物質構造体の形成
次に10mg/mLのマウスIgGを含む水溶液(りん酸バッファー10mM、pH7.4)とポリマーAもしくはポリマーBの水溶液(10mg/mL)とを重量混合比10: 1(相互作用物質:水溶性重合体)で混合した混合物を、金チップの表面に1μL×4点スポッティングした。これを室温にて乾燥した後、未反応の活性エステル基をブロッキングする目的で、1Mのエタノールアミン水溶液(pH8.5)3mLに15分間浸漬した。これにより、金チップの表面にマウスIgGと、ポリマーAもしくはポリマーBとを、それぞれ相互作用物質及び水溶性重合体とする相互作用物質構造体が形成された。
その後、脱塩水を用いてよく洗浄し、室温で乾燥して、表面に相互作用物質構造体を担持した相互作用物質構造体金チップを得た。
[比較例2]マウスIgGを用いた金チップ上の相互作用物質構造体
(1)金チップの表面処理
金チップへのスクシンイミド基の導入は、実施例2の「(1)金チップの表面処理」と同様にした。
(2)相互作用物質構造体の形成
次に、ポリマーA水溶液またはポリマーB水溶液の代わりにポリマーC水溶液(10mg/mL)を用いた以外は実施例2の「(2)相互作用物質構造体の形成」と同様の操作を行うことにより、金チップの表面にマウスIgGとポリマーCとをそれぞれ標的分子相互作用物質及び水溶性重合体とする相互作用物質構造体が形成された。また、基板へのマウスIgGの直接固定(2D)は、ポリマーを用いない点を除いては、上記方法と同様の方法にて行った。
<実施例2および比較例2で得られたマウスIgGを用いた金チップ上の相互作用物質構造体のSPR測定による評価>
実施例2および比較例2で得られた相互作用物質構造体金チップの測定をイメージングSPR装置にて行った。
ポリマーAとIgG又はポリマーBとIgGからなる相互作用物質構造体が固定化された金チップをイメージングSPR装置FLEX CHIP TM Kinetic Analysis System (HTS Biosystems Inc)にセットし、バッファーを送液した後、スポットのイメージング像を観察した。また、比較例としては、比較例2で示したポリマーCを用いて作製した相互作用物質構造体と、金基板に直接マウスIgGを固定化したスポット(2D)を用いた。
結果を図3−1に示す。ポリマーAを用いて作製した相互作用物質構造体はスポット全体が均一であった。ポリマーBを用いて作製した相互作用物質構造体は、ところどころに斑点が見えるがスポット内部に相互作用物質構造体が形成されていることが確認された。しかし、ポリマーCを用いて作製した相互作用物質構造体(比較例2)はスポット内部には相互作用物質構造体が形成されておらず、リング状にスポットの周囲にのみ相互作用物質構造体が形成されていた。さらに、金基板に直接マウスIgGを固定化したもの(2D)においては、固定化量が少なく、スポットを確認することが難しかった。
図3−2に、イメージング像(図3−1)のスポット内部の○で囲った部分に固定化された相互作用物質構造体もしくはマウスIgGの固定化量をSPR(Surface Plasmon Resonance)で測定した結果を示した。
尚、SPR現象は、金属薄膜近傍の屈折率に依存するので、金属薄膜表面にタンパク質などが結合した場合には共鳴角が変化する。この結合量は共鳴角の変化量と一致するため、共鳴角の変化量を測定することで、タンパク質の固定化量、タンパク質−タンパク質間の相互作用量などを調べることができる。
固定化量は、ポリマーAを用いた相互作用物質構造体、ポリマーBを用いた相互作用物質構造体、ポリマーCを用いた相互作用物質構造体、2Dの順に減少し、イメージング像と一致した。
次に、アナライト(検体)として1μg/mLのproteinA(SIGMA社)を用い、SPR測定により相互作用物質構造体とproteinAとの相互作用を検出した。それぞれの相互作用物質構造体と相互作用したアナライト量を図3−3に示す。相互作用したアナライトは、固定化量と同様に、ポリマーAを用いた相互作用物質構造体、ポリマーBを用いた相互作用物質構造体、ポリマーCを用いた相互作用物質構造体、2Dの順に減少した。
[実施例3]ポリマーBとマウスIgGを用いて作製した、標的分子相互作用物質固定化担体
(1)水溶性重合体(ポリマーB)の合成
水溶性重合体であるポリマーBの合成は、実施例1の「(2)水溶性重合体(ポリマーB)の合成」と同様にした。
(2)金チップの表面処理
固相として金で被覆されたチップ(金チップ)を用いた。これらを、10mMの2−アミノタンチオール塩酸塩(和光純薬工業社製)水溶液に浸漬させ、室温で12時間反応させ、表面処理を行なった。反応終了後、金チップを脱塩水で洗浄した。この表面処理は、金−硫黄結合を介して金チップの表面にアミノ基を導入するための処理である。
このようにして、水溶性重合体ポリマーBに含まれるスクシンイミド基を共有結合するための官能基であるアミノ基を有する固相表面を得た。
(3)アミノ基を有する固相表面上への相互作用物質構造体の形成
次に、10mg/mLマウスIgG溶液(LAMPIRE BIOLOGICAL LABORATORIES製)のバッファーを10mMりん酸バッファー(pH7.4)に交換したものを用意した。この10mg/mLのマウスIgGを含む水溶液(りん酸バッファー10mM、pH7.4)とポリマーBの水溶液(10mg/mL)とを重量混合比10: 1(相互作用物質:水溶性重合体)で混合した混合物を、上述のようにして作製したアミノ基を有する金チップの表面に1μL供給した。これを室温にて乾燥させた後、未反応のスクシンイミド基をブロッキングする目的で、1Mのエタノールアミン水溶液(pH8.5)3mLを前記金チップ表面全体を覆うように滴下し、30分間放置した。これにより、金チップの表面にマウスIgGと、ポリマーBとを、それぞれ相互作用物質及び水溶性重合体とする相互作用物質構造体が作製された。
その後、脱塩水を用いてよく洗浄し、室温で乾燥して、金チップ表面に相互作用物質構造体を得た。
[比較例3]ポリマーCとマウスIgGを用いて作製した金チップ上の相互作用物質構造体
(1)水溶性重合体(ポリマーC)の合成
比較例1の「(1)水溶性重合体(ポリマーC)の合成」と同様にした。
(2)金チップの表面処理
金チップへのアミノ基の導入は、実施例3の「(2)金チップの表面処理」と同様にした。
(3)相互作用物質構造体の形成
水溶性重合体としてポリマーCを用いたこと以外は、実施例3の「(3)アミノ基を有する固相表面上への相互作用物質構造体の形成」と同様にした。これにより、金チップの表面にマウスIgG及びポリマーCとを、それぞれ相互作用物質及び水溶性重合体とする、相互作用物質構造体を得た。
また、アミノ基を有する金チップ上へのマウスIgGの直接固定(2D)は、ポリマーを用いない点を除いては、実施例3の「(3)アミノ基を有する固相表面上への相互作用物質構造体の形成」と同様にした。
<実施例3および比較例3で得られた相互作用物質構造体による標的分子の捕捉と検出>
実施例3および比較例3で得られた相互作用物質構造体を表面に有する金チップの性能を蛍光強度法で分析した。上記の相互作用物質構造体を表面に有する金チップ上に3重量%BSAを含むPBS(−)2mlを滴下し、完全に金チップ表面を覆う状態で室温にて1時間ブロッキングした。溶液を除去した後に水洗し、標的分子として50μg/mLのCy5標識ProteinAを含むPBS(−)1mlを相互作用物質構造体が形成された金チップ上に添加し、室温で1時間インキュベートした。溶液を除去した後、反応に関与しなかった余分な標的分子を除去することを目的として0.05%Tween20を含むPBS(−)を用いて充分に洗浄を行なった。さらに水洗した後に、圧空にて乾燥し、InnoScan700 Microarray Scanner(INNOPSYS製)を用いて励起波長635nmにて相互作用物質構造体の中心付近のCy5の蛍光強度測定を行なった。尚、解析ソフトウェアとしてMAPIX(INNOPSYS社製)を用いた。
ここで、上記Cy5標識ProteinAの作製は以下の方法で行った。Protein水溶液(RepliGen社製)のバッファーを100mM炭酸バッファー(pH9.4)に交換し、ProteinA濃度が1mg/mlとなるように調製した。この1mg/mlProteinA溶液1mlをCy5 Mono-Reactive Dye Pack(GE Healthcare製)1本に添加し、混合した。この混合溶液を室温にて30分インキュベーションした。その後、PD−10 Columns(GE Healthcare製)を用い、PBS(−)を展開溶媒として使用し、前記混合液から未反応のCy5を取り除き、Cy5標識ProteinAを得た。
結果を図4に示す。図4において、本実施例は、ポリマーCを用いて作製した相互作用物質構造体(比較例3)と比較して中性領域(Buffer pH7.4)で、より高い蛍光強度(Intensity)を示した。このことから、ポリマーBを用いることでより多くの標的分子を捕捉可能であることが示された。
また、相互作用物質構造体に捕捉された標的分子に由来するCy5の蛍光画像を図5に示す。ポリマーBを用いて作製した相互作用物質構造体は、スポット(以下、相互作用物質と水溶性重合体の混合物を供給した領域のことを指す)内部にもCy5の蛍光が確認され、相互作用物質構造体が均一に形成されたことがわかる。しかし、ポリマーCを用いて作製した相互作用物質構造体(比較例3)はスポット内部には相互作用物質構造体が形成されておらず、リング状にスポットの周囲にのみCy5の蛍光が確認され、相互作用物質構造体が不均一に形成されたことがわかる。
[実施例4]ポリマーDとマウスIgGを用いて作製した金チップ上の相互作用物質構造体
(1)水溶性重合体(ポリマーD)の合成
モノマーであるN−アクリロイルモルホリン(NAM、KOHJIN社製)0.894重量部、及びMA−PEG−NHSを0.106重量部と、溶媒である脱水ジオキサン(和光純薬工業株式会社製)4.17重量部とをよく混合し、30mLの四つ口フラスコにそそぎ入れ、室温で30分間窒素にて脱気を行ない、モノマー溶液を調製した。
このモノマー溶液をオイルバスにて80℃に昇温し、重合開始剤アゾビスイソブチロニトリル(AIBN、キシダ化学株式会社製)0.003重量部を脱水ジオキサン1.5重量部に溶かした溶液を入れることにより、重合を開始した。重合は窒素雰囲気下、6時間行なった。
重合後、ポリマーが生成した溶液は、150mLのクロロホルム−ジエチルエーテル混合溶媒[クロロホルム/ジエチルエーテル=30/120 (v/v)]に供給することにより再沈殿させた後、溶媒を除去することにより粉末化し、水溶性重合体ポリマーDを得た。
得られたポリマーDについて、標準ポリスチレンで校正されたSEC(Size Exclusion Chromatography)測定を行なった結果、ポリマーDの重量平均分子量(Mw)が238954と見積もられた。
ここで、SECの測定は、下記の条件で行った。
溶媒 :DMF(50mMLiBr入)
流速 : 1.0ml/min
温度 : 50℃
尚、今回は、以下の装置、検出器及びカラムを使って測定した。
装置 :日本ウォーターズ(株)製 Waters 2695
検出器:日本ウォーターズ(株)製 Waters 2410
カラム :昭和電工株式会社製 Shodex AD-80M/S
また、得られたポリマーDに含まれるMA−PEG−NHSとNAMとのモル比(M−PEG−NAS/NAM)は、1H−NMR測定からMA−PEG−NHS/NAM=7/93と見積もられた。
(2)金チップの表面処理
固相として金で被覆されたチップを用いた。これを、5mMの16−メルカプトヘキサデカン酸(16−MELCAPTOHEXZDECANOIC ACID:ALDRICH社製)エタノール溶液に浸漬させ、室温で12時間反応させ、表面処理を行なった。反応終了後、金チップをエタノールで洗浄した。この表面処理は、金−硫黄結合を介して金チップの表面にスクシンイミド基を導入するための処理である。
このようにして、相互作用物質であるマウスIgG中のアミノ基を共有結合するための官能基であるスクシンイミド基を有する固相表面を得た。
(3)スクシンイミド基を有する固相表面上での相互作用物質構造体の形成
次に、10mg/mLマウスIgG溶液(LAMPIRE BIOLOGICAL LABORATORIES製)のバッファーを10mMりん酸バッファー(pH7.4)に交換したものを用意した。この10mg/mLのマウスIgGを含む水溶液(りん酸バッファー10mM、pH7.4)とポリマーDの水溶液(10mg/mL)とを重量混合比10: 2(相互作用物質:水溶性重合体)で混合した混合物を、上述のように作製したスクシンイミド基導入金チップの表面に1μL供給した。これを室温にて乾燥させた後、未反応のスクシンイミド基をブロッキングする目的で、1Mのエタノールアミン水溶液(pH8.5)3mLを金チップ表面全体を覆うように滴下し、30分間放置した。これにより、金チップの表面にマウスIgG及びポリマーDを、それぞれ相互作用物質及び水溶性重合体とする、相互作用物質構造体が形成された。
その後、脱塩水を用いてよく洗浄し、室温で乾燥して、金チップ表面に相互作用物質構造体を得た。
[比較例4]ポリマーEとマウスIgGを用いて作製した金チップ上の相互作用物質構造体
(1)水溶性重合体(ポリマーE)の合成
モノマーであるN−アクリロイルモルホリン(NAM、KOHJIN社製)を5.64重量部、及びN−アクリロイルオキシスクシンイミド(NAS、ACROS ORGANICS社製)を0.36重量部と、溶媒である脱水ジオキサン(和光純薬株式会社製)30重量部とをよく混合し、50mlの四つ口フラスコに注ぎ入れ、室温で30分間窒素にて脱気を行い、モノマー溶液を調製した。
このモノマー溶液をオイルバスにて80℃に昇温し、重合開始剤アゾビスイソブチロニトリル(AIBN、キシダ化学株式会社製)0.018重量部を脱水ジオキサン4重量部に溶かした溶液を入れることにより、重合を開始した。重合は窒素雰囲気下、6時間行った。
重合後、ポリマーが生成した溶液は、150mlのクロロホルム−ジエチルエーテル混合溶媒[クロロホルム/ジエチルエーテル=30/120 (v/v)]に供給することにより再沈殿させた後、溶媒を除去することにより粉末化し、水溶性重合体ポリマーDを得た。
ポリマーEを得た。
得られたポリマーEについて、標準ポリスチレンで校正されたSEC(Size Exclusion Chromatography)測定を行なった結果、ポリマーの重量平均分子量(Mw)が170320と見積もられた。
ここで、SECの測定は、実施例4の「(1)水溶性重合体(ポリマーD)の合成」に記載の方法と同様にした。
また、得られたポリマーEに含まれるNASとNAMとのモル比(NAS/NAM)は、1H−NMR測定からNAS/NAM=8.4/91.6と見積もられた。
(2)金チップの表面処理
固相として金チップを用いた。金チップのスクシンイミド基の導入は、実施例4の「(2)金チップの表面処理」と同様にした。
(3)ポリマーEを用いた相互作用物質構造体の形成
水溶性重合体としてポリマーEを用いたこと以外は、実施例4の「(3)スクシンイミド基を有する固相表面上での相互作用物質構造体の形成」と同様にした。これにより、金チップの表面にマウスIgG及びポリマーEとをそれぞれ相互作用物質及び水溶性重合体とする、相互作用物質構造体を得た。
<実施例4および比較例4で得られた相互作用物質構造体による標的分子の捕捉と検出>
上記のように実施例4および比較例4で作製した相互作用物質構造体を表面に有する金チップの性能を蛍光強度法で分析した。上記の相互作用物質構造体金チップに3重量%BSAを含むPBS(−)2mlを表面を覆うように滴下し、室温にて1時間ブロッキングした。溶液を除去した後に水洗し、標的分子として50μg/mLのCy5標識ProteinAを含むPBS(−)を1mlを相互作用物質構造体が形成された金チップ上に表面を覆うように添加し、室温で1時間インキュベートした。溶液を除去した後、反応に関与しなかった余分な標的分子を除去することを目的として0.05%Tween20を含むPBS(−)を用いて充分に洗浄を行なった。さらに水洗した後に、圧空にて乾燥し、InnoScan700 Microarray Scanner(INNOPSYS社製)を用いて励起波長635nmにて相互作用物質構造体の中心付近のCy5の蛍光強度測定を行なった。尚、解析ソフトウェアとしてMAPIX(INNOPSYS社製)を用いた。
ここで、上記Cy5標識ProteinAの作製は以下の方法で行った。Protein水溶液(RepliGen社製)のバッファーを100mM炭酸バッファー(pH9.4)に交換し、ProteinA濃度が1mg/mlとなるように調製した。この1mg/mlProteinA溶液1mlをCy5 Mono-Reactive Dye Pack(GE Healthcare製)1本に添加し、混合した。この混合溶液を室温にて30分インキュベーションした。その後、PD−10 Columns(GE Healthcare製)を用い、PBS(−)を展開溶媒として使用し、前記混合液から未反応のCy5を取り除き、Cy5標識ProteinAを得た。
結果を図6に示す。図6において、本実施例は、比較例4と比較して中性領域(Buffer pH7.4)で、より高い蛍光強度(Intensity)を示した。このことから、ポリマーDを用いることでより多くの標的分子を捕捉可能であることが示された。
また、標的分子相互作用物質固定化担体に捕捉された標的分子に由来するCy5の蛍光画像を図6に示す。ポリマーDを用いて作製した相互作用物質構造体は、スポット(以下、相互作用物質と水溶性重合体の混合物を供給した領域のことをいう)内部にもCy5の蛍光が確認され、相互作用物質構造体が均一に形成されたことがわかる。しかし、ポリマーEを用いて作製した相互作用物質構造体(比較例4)はスポット内部では蛍光強度が極めて低く、リング状にスポットの周囲にのみCy5の蛍光が強く確認され、相互作用物質構造体が不均一に形成されたことがわかる。
本発明の標的分子相互作用物質固定化担体は、医療・診断、遺伝子解析、プロテオミクス、マイクロエレクトロニクス、膜分離等の分野において好適に使用できる。

Claims (21)

  1. 固相担体と、
    該固相担体に固定化された互いに結合してなる標的分子相互作用物質と水溶性重合体とを含む構造体、
    とを含む標的分子相互作用物質固定化担体であって、
    前記水溶性重合体はスペーサーと重合性基を含む化合物の水溶性重合体であり、前記標的分子相互作用物質は該スペーサーを介して前記水溶性重合体に結合している、標的分子を捕捉・検出するための標的分子相互作用物質固定化担体。
  2. 前記水溶性重合体は、標的分子相互作用物質を共有結合するための官能基がスペーサーを介して重合性基に結合してなる化合物の水溶性重合体であり、標的分子相互作用物質は前記官能基を介して水溶性重合体に結合している、請求項1に記載の標的分子相互作用物質固定化担体。
  3. スペーサーが下記式で表される、請求項1または2に記載の標的分子相互作用物質固定化担体。
    -(Y)q-
    ここで、Yは炭素数1〜10のアルキレンオキシ基又はアルキレン基を示し、qは1〜20の整数を示すが、qが2以上20以下の整数である場合、繰り返されるYは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
  4. 重合性基がアクリル基またはメタクリル基である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の標的分子相互作用物質固定化担体。
  5. 前記化合物が、下記一般式(II)で表されるエチレン系不飽和重合性モノマーである、請求項4に記載の標的分子相互作用物質固定化担体。
    Figure 2011007785
    (式中R7は水素原子又はメチル基を示し、Wは標的分子相互作用物質を共有結合するための官能基を示す。)
  6. 前記水溶性重合体が、スペーサーと重合性基を含む化合物と、親水性又は両親媒性の官能基を有する不飽和重合性モノマーとの共重合体である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の標的分子相互作用物質固定化担体。
  7. 下記(1)〜(3)に示す工程を少なくとも含む方法により製造されることを特徴とする、請求項6に記載の標的分子相互作用物質固定化担体;
    (1)親水性又は両親媒性の官能基を有する不飽和重合性モノマーと、前記一般式(II)で表されるエチレン系不飽和重合性モノマーとを共重合させて水溶性重合体を合成する工程
    (2)(1)の工程で得られた水溶性重合体と、標的分子相互作用物質とを混合する工程

    (3)(2)の工程で得られた混合物を、前記官能基Wを共有結合するための官能基又は標的分子相互作用物質を共有結合するための官能基を有する固相表面に供給する工程。
  8. 親水性又は両親媒性の官能基を有する不飽和重合性モノマーが下記式(I)で表わされるホスホリルコリン類似基を有するエチレン系不飽和重合性モノマーである、請求項6または7に記載の標的分子相互作用物質固定化担体。
    Figure 2011007785
    (式中、R1は炭素数2〜10の2価の炭化水素基を示し、R2は炭素数1〜4の2価の炭化水素基を示し、R3、R4及びR5はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜6の炭化水素基を示し、R6は水素原子又はメチル基を示す。)
  9. 水溶性重合体全体に対する、前記一般式(I)で表わされるホスホリルコリン類似基を有するエチレン系不飽和重合性モノマーに由来する構成単位の割合が、30モル%以上であることを特徴とする、請求項8に記載の標的分子相互作用物質固定化担体。
  10. 前記水溶性重合体が、さらに疎水性ユニットを有する不飽和重合性モノマーに由来する構成単位を含む、請求項6〜9のいずれか一項に記載の標的分子相互作用物質固定化担体。
  11. 前記疎水性ユニットを有する不飽和重合性モノマーがn−ブチルメタクリレートである、請求項10に記載の標的分子相互作用物質固定化担体。
  12. 下記(1)〜(3)に示す工程を少なくとも含む、請求項6〜11のいずれか一項に記載の標的分子相互作用物質固定化担体の製造方法;
    (1)親水性又は両親媒性の官能基を有する不飽和重合性モノマーと、前記一般式(II)で表わされるエチレン系不飽和重合性モノマーとを共重合させて水溶性重合体を合成する工程、
    (2)(1)の工程で得られた水溶性重合体と、標的分子相互作用物質とを混合する工程、
    (3)(2)の工程で得られた混合物を、前記官能基Wを共有結合するための官能基又は標的分子相互作用物質を共有結合するための官能基を有する固相表面に供給する工程。
  13. 下記(1)〜(3)に示す工程を少なくとも含む方法により製造されることを特徴とする、標的分子を捕捉・検出するための、標的分子相互作用物質固定化担体;
    (1)下記一般式(I)で表わされるホスホリルコリン類似基を有するエチレン系不飽和重合性モノマーと、下記一般式(II)で表わされるエチレン系不飽和重合性モノマーとを共重合させて水溶性重合体を合成する工程、
    Figure 2011007785
    (式中R1は炭素数2〜10の2価の炭化水素基を示し、R2は炭素数1〜4の2価の炭化水素基を示し、R3、R4及びR5はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜6の炭化水素基を示し、R6は水素原子又はメチル基を示す。)
    Figure 2011007785
    (式中R7は水素原子又はメチル基を示し、Yは炭素数1〜10のアルキレンオキシ基又はアルキレン基を示し、Wは標的分子相互作用物質を共有結合するための官能基を示し、qは1〜20の整数を示す。qが2以上20以下の整数である場合、繰り返されるYは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。)
    (2)(1)の工程で得られた水溶性重合体と、標的分子相互作用物質とを混合する工程、
    (3)(2)の工程で得られた混合物を、前記官能基Wを共有結合するための官能基又は標的分子相互作用物質を共有結合するための官能基を有する固相表面に供給する工程。
  14. 前記(3)の工程により固相表面に供給された混合物を乾燥させる工程をさらに含む方法により製造される、請求項13に記載の標的分子相互作用物質固定化担体。
  15. 前記(1)の工程において、前記一般式(I)で表わされるホスホリルコリン類似基を有するエチレン系不飽和重合性モノマーが、共重合に用いられる全モノマーの30モル%以上であることを特徴とする請求項13または14に記載の標的分子相互作用物質固定化担体。
  16. 前記(1)の工程において、さらに疎水性ユニットを有するエチレン系不飽和重合性モノマーを共重合させることにより製造される、請求項13〜15のいずれか一項に記載の標的分子相互作用物質固定化担体。
  17. 前記疎水性ユニットを有するエチレン系不飽和重合性モノマーがn−ブチルメタクリレートである請求項16に記載の標的分子相互作用物質固定化担体。
  18. 下記(1)〜(3)に示す工程を少なくとも含む、請求項13〜17のいずれか一項に
    記載の標的分子相互作用物質固定化担体の製造方法;
    (1)下記一般式(I)で表わされるホスホリルコリン類似基を有するエチレン系不飽和重合性モノマーと、下記一般式(II)で表わされるエチレン系不飽和重合性モノマーとを共重合させて水溶性重合体を合成する工程、
    Figure 2011007785
    (式中R1は炭素数2〜10の2価の炭化水素基を示し、R2は炭素数1〜4の2価の炭化水素基を示し、R3、R4及びR5はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜6の炭化水素基を示し、R6は水素原子又はメチル基を示す。)
    Figure 2011007785
    (式中R7は水素原子又はメチル基を示し、Yは炭素数1〜10のアルキレンオキシ基又はアルキレン基を示し、Wは標的分子相互作用物質を共有結合するための官能基を示し、qは1〜20の整数を示す。qが2以上20以下の整数である場合、繰り返されるYは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。)
    (2)(1)の工程で得られた水溶性重合体と、標的分子相互作用物質とを混合する工程、
    (3)(2)の工程で得られた混合物を、前記官能基Wを共有結合するための官能基又は標的分子相互作用物質を共有結合するための官能基を有する固相表面に供給する工程。
  19. 標的分子が、標的分子相互作用物質を介して結合した、請求項1〜11および13〜17のいずれか一項に記載の標的分子相互作用物質固定化担体。
  20. 標的分子が蛋白質、ペプチド、核酸および低分子化合物からなる群より選ばれる、請求項19に記載の標的分子相互作用物質固定化担体。
  21. 請求項19または20に記載の標的分子相互作用物質固定化担体を含むバイオチップ。
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