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JP2011003750A - 結晶シリコン系太陽電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明の目的は、結晶シリコン基板を用いた結晶シリコン太陽電池において、光電変換効率に優れたヘテロ接合太陽電池を提供することにある。
【解決手段】一導電型単結晶シリコン基板を用い、前記基板の一面にp型シリコン系薄膜層を有し、前記基板と前記p型シリコン系薄膜層の間に実質的に真正なシリコン系薄膜層を備え、前記基板の他面にn型シリコン系薄膜層を有し、前記基板と前記n型シリコン系薄膜層の間に実質的に真正なシリコン系薄膜層を備え、前記n型シリコン系薄膜層と接して酸化亜鉛層を主成分とする導電性酸化物層を備えた結晶シリコン太陽電池であって、前記n型シリコン系薄膜層が、前記実質的に真正なシリコン薄膜層と接してなるn型非晶質シリコン系薄膜層と、該n型非晶質シリコン層及び前記酸化亜鉛層を主成分とする導電性酸化物層と接してなるn型微結晶シリコン系薄膜層を含む、結晶シリコン太陽電池。
【選択図】図1

Description

本発明は、半導体基板表面にヘテロ接合を有する結晶シリコン太陽電池に関するものである。
結晶シリコン基板を用いた結晶シリコン太陽電池は、光電変換効率が高く、既に太陽光発電システムとして広く一般に実用化されている。中でも単結晶シリコンとはバンドギャップの異なる非晶質シリコン系薄膜を単結晶表面へ製膜し、拡散電位を形成した結晶シリコン太陽電池はヘテロ接合太陽電池と呼ばれている。
さらに、中でも拡散電位を形成するための導電型非晶質シリコン系薄膜と結晶シリコン表面の間に薄い真性の非晶質シリコン層を介在させる太陽電池は、変換効率の最も高い結晶シリコン太陽電池の形態の一つとして知られている。結晶シリコン表面と導電型非晶質シリコン系薄膜との間に、薄い真性な非晶質シリコン層を製膜することで、結晶シリコンの表面に存在する欠陥をパッシベートすることができる。また、導電型非晶質シリコン系薄膜を製膜する際の、キャリア導入不純物の結晶シリコン表面への拡散も防止することができる。
一般的に非晶質シリコンを導電型層として用いるヘテロ接合太陽電池において、光の入射面或いは裏面に用いる透明電極層としては、錫を数%前後添加した酸化インジウム(ITO)や酸化亜鉛(ZnO)を用いることが好ましいとされている。さらに、非晶質半導体膜上に製膜される透明電極層について、光入射側と裏面側とで当該層を構成する導電性酸化物への金属ドーパントのドープ量を、特定範囲に設定することで変換効率が向上することが開示されている(例えば、特許文献1参照)。なお、特許文献1中では、非晶質シリコン上に製膜する導電性酸化物として、ITO又は酸化亜鉛を用いることが好ましいことが記載されているが、実施例としてはSnをドープ金属とするITOを用いた場合についてしか開示がなく、酸化亜鉛を用いた実施例については開示されていない。
酸化亜鉛を非晶質シリコン層上に製膜した場合、接触抵抗が極めて高くなり、曲線因子が悪化する傾向があるが、これについて、微結晶シリコン層を酸化亜鉛との界面へ配置することで接触抵抗の悪化が解消されることが、シリコン系薄膜太陽電池の分野で知られている(例えば、特許文献2参照)。
しかしながら、ヘテロ接合太陽電池においては、n型微結晶シリコン層/酸化亜鉛層構造を形成することに対しては、以下のように大きな2つの問題があり、これまで実施されていなかった。
上記問題の一つは、微結晶シリコン層の「結晶分率と膜厚」の問題である。微結晶シリコン層のプラズマCVDによる製膜条件としては、非晶質シリコン層の製膜条件と比較して、高圧、高電力、高水素希釈の条件が要求される。このような条件下では、基板上に堆積したアモルファス成分が原子状水素プラズマによってエッチングされることで、結晶成分が相対的に成長しやすくなる。但し、製膜初期はアモルファス成分が多く、膜成長に伴い結晶分率が増加していく傾向がある。これは下地の結晶成分が結晶核となるためであり、下地の結晶分率が高いほど堆積する膜の結晶成分が成長しやすくなる。これに対し、下地が非晶質層の場合、製膜初期の概ね15nmまでの結晶分率は極めて低くなり、酸化亜鉛と良好な電気的コンタクトが得られない。また、ヘテロ接合太陽電池の光電変換層である単結晶シリコンに近いバンドギャップを有する微結晶シリコン層の膜厚を厚くすると、吸収ロスが増大するので極力薄くすることが望ましい。つまり、ヘテロ接合太陽電池においては、結晶成分のない下地上には、膜厚が薄く(〜15nm)結晶分率も高いn型微結晶シリコン層を製膜すること難しいという問題がある。
もう一つの問題は、微結晶シリコン層を製膜する際の製膜条件にある。上記のように非晶質シリコン層をエッチングしつつ堆積させる条件であるため、数百nmのi型非晶質シリコン層を有するシリコン系薄膜太陽電池と比較して、i型非晶質シリコン層の膜厚が概ね5〜13nmしかないヘテロ接合太陽電池では、i型非晶質シリコン層及びその下に製膜されている単結晶シリコン基板への影響が相対的に大きくなる。具体的には、n型層のドーパントとして用いているP元素の拡散による不純物欠陥の増加、原子状水素プラズマによる欠陥生成によって、開放電圧と曲線因子が悪化することが挙げられる。
上記の第一の問題である「結晶分率と膜厚」の問題は、製膜条件を、より電極間距離を縮め、水素希釈率を上げ、パワーを上昇させるとシリコンのエッチング比率が高まり、薄い膜厚でも結晶化させることができる。しかしその場合、第二の問題である製膜ダメージはより顕著になる。つまり、この二つの問題を両方とも解決する技術は知られていないのが現状である。
特許第4152197号公報 特開平11−266027号公報
本発明の目的は、結晶シリコン基板を用いた結晶シリコン太陽電池において、光電変換効率に優れたヘテロ接合太陽電池を提供することにある。
本発明者は、n型非晶質シリコン層がn型微結晶シリコン系薄膜層の結晶化を促進する下地層としての効果があることを初めて見出した。より具体的には、本発明ではヘテロ接合太陽電池において、n型単結晶シリコン基板へi型非晶質シリコン層/n型非晶質シリコン層を製膜した状態で、通常結晶化しないような製膜条件と膜厚においても、良質のn型微結晶シリコン層を製膜し、酸化亜鉛層を形成することで、変換効率が向上することを見出した。
本発明は、一導電型単結晶シリコン基板を用い、前記単結晶シリコン基板の一面にp型シリコン系薄膜層を有し、前記単結晶シリコン基板と前記p型シリコン系薄膜層の間に実質的に真正なシリコン系薄膜層を備え、前記単結晶シリコン基板の他面にn型シリコン系薄膜層を有し、前記単結晶シリコン基板と前記n型シリコン系薄膜層の間に実質的に真正なシリコン系薄膜層を備え、前記n型シリコン系薄膜層と接して酸化亜鉛層を主成分とする導電性酸化物層を備えた結晶シリコン太陽電池であって、前記n型シリコン系薄膜層が、前記実質的に真正なシリコン系薄膜層と接してなるn型非晶質シリコン系薄膜層と、該n型非晶質シリコン系薄膜層及び前記酸化亜鉛層を主成分とする導電性酸化物層と接してなるn型微結晶シリコン系薄膜層を含むことを特徴とする結晶シリコン太陽電池に関する。
好ましい実施態様は、前記n型微結晶シリコン系薄膜層が、水素及びリン以外の不純物を実質的に含まないn型微結晶シリコン層であり、その膜厚が1nm以上15nm以下であることを特徴とする前記の結晶シリコン太陽電池に関する。
好ましい実施態様は、前記n型微結晶シリコン系薄膜層が単結晶シリコン基板側からみて、水素、リン以外の不純物を実質的に含まないn型微結晶シリコン層/n型微結晶シリコンオキサイド層の順で配置された積層膜であることを特徴とする前記の結晶シリコン太陽電池に関する。
好ましい実施態様は、前記n型微結晶シリコンオキサイド層の600nmにおける屈折率が1.9以下であることを特徴とする前記の結晶シリコン太陽電池に関する。
好ましい実施態様は、前記酸化亜鉛を主成分とする導電性酸化物層と接して酸化インジウムを主成分とする導電性酸化物層が配置されていることを特徴とする前記の結晶シリコン太陽電池に関する。
本発明の構造を有する結晶シリコン太陽電池によって、n側でのキャリア回収効率が向上することにより開放電圧と曲線因子が向上し、結果として高い光電変換効率を得ることができる。
本発明の実施例1〜3に係る結晶シリコン太陽電池の模式的断面図である。 本発明の実施例4に係る結晶シリコン太陽電池の模式的断面図である。 本発明の実施例5に係る結晶シリコン太陽電池の模式的断面図である。
本発明に係る結晶シリコン太陽電池は、一導電型単結晶シリコン基板と、当該基板の一面にp型シリコン系薄膜層を有し、該基板とp型シリコン系薄膜層の間に実質的に真正なシリコン系薄膜層を備えており、また該基板の他面にn型シリコン系薄膜層を有し、該基板とn型シリコン系薄膜層の間に実質的に真正なシリコン系薄膜層を備えており、さらに前記n型シリコン系薄膜層と接して酸化亜鉛層を主成分とする導電性酸化物層を備えることにより構成される結晶シリコン太陽電池であって、前記n型シリコン系薄膜層が、前記実質的に真正なシリコン薄膜層と接してなるn型非晶質シリコン系薄膜層と、該n型非晶質シリコン層及び前記酸化亜鉛層を主成分とする導電性酸化物層と接してなるn型微結晶シリコン系薄膜層を含んで構成されることを特徴としている。
まず、本発明の結晶シリコン太陽電池における、一導電型単結晶シリコン基板について説明する。
一般的に単結晶シリコン基板は導電性を持たせるために、シリコンに対して電荷を供給する不純物を含有させる。単結晶シリコン基板はSi原子に対して電子を導入するリン原子を供給したn型と、ホール(正孔ともいう)を導入するボロン原子を供給したp型がある。太陽電池に用いる場合、単結晶シリコン基板へ入射した光が最も多く吸収される入射側のへテロ接合を逆接合として強い電場を設けることで、電子正孔対を効率的に分離回収することができる。よって入射側のヘテロ接合は逆接合とすることが好ましい。一方で、正孔と電子を比較した場合、有効質量及び散乱断面積の小さい電子の方が一般的に移動度は大きくなる。以上の観点から、本発明において使用する単結晶シリコン半導体基板は、n型単結晶シリコン半導体基板であることが好ましい。
n型単結晶シリコン基板を用いた場合の本発明の好適な構成としては、導電性酸化物層/p型非晶質シリコン系薄膜層/i型非晶質シリコン系薄膜層/n型単結晶シリコン基板/i型非晶質シリコン系薄膜層/n型非晶質シリコン系薄膜層/n型微結晶シリコン系薄膜層/酸化亜鉛層となり、この場合は上記理由から裏面をn層とすることが好ましい。また、酸化亜鉛層の上に酸化インジウムといった別種の導電性酸化物層を製膜しても良い。酸化亜鉛を主成分とする導電性酸化物の膜厚は、光閉じ込めの観点から、60〜120nmの範囲であることが好ましく、更には80〜110nmであることがより好ましい。
この裏面をn層とする場合においては、光閉じ込めの観点から、酸化亜鉛を主成分とする導電性酸化物上に反射層を形成すると更に好ましい。反射層とは光を反射する機能を太陽電池に付加する層を意味し、例えばAgやAlといった金属層でも良く、MgOやAl、白色亜鉛といった金属酸化物の微粒子からなる白色高反射材料を用いて形成しても良い。また、屈折率と膜厚の異なる二種類以上の誘電体層を積層して多層膜を製膜し、多層膜内の界面における反射光を干渉させることで、一定範囲の波長の光に対して反射率を有するフォトニック構造を形成しても良い。但し、セラミック系材料や誘電体層を用いる場合は、当該材料は絶縁体であるため、導電性酸化物上に集電極を形成した後に反射層を製膜することが好ましい。反射層を用いない場合、絶縁体材料を反射層として用いる場合は、上記膜厚を有する酸化亜鉛層のみからなる導電性酸化物層では、一般的な集電極の間隔(数mm)に対して十分な導電性を確保することが難しい場合がある。そのような場合には、酸化亜鉛層上に酸化インジウム等の、より「膜厚に対する導電率」が高い材料を製膜することが好ましい。
また、p型単結晶シリコン基板を用いた場合の本発明の好適な構成としては、導電性酸化物層/p型非晶質シリコン系薄膜層/i型非晶質シリコン系薄膜層/p型単結晶シリコン基板/i型非晶質シリコン系薄膜層/n型非晶質シリコン系薄膜層/n型微結晶シリコン系薄膜層/酸化亜鉛層となり、この場合は、逆接合部を光入射側とするキャリアの高効率回収の観点から、入射面をn層とすることが好ましい。その場合、導電率の観点から、酸化亜鉛層の上に酸化インジウムといった別種の導電性酸化物層を製膜することが好ましい。酸化亜鉛層と別種の導電性酸化物層を合わせた導電性酸化物層の膜厚は、光閉じ込めの観点から、80〜120nmであることが好ましい。また、導電性酸化物上に集電極を形成することが好ましい。
単結晶シリコン基板の入射面は(100)面であるように切り出されていることが好ましい。これは、単結晶シリコン基板をエッチングする場合に、(100)面と(111)面のエッチングレートが異なる異方性エッチングによって容易にテクスチャ構造を形成できるためである。一般的にテクスチャサイズはエッチングが進行すればするほど大きくなる。例えば、エッチング時間を長くするとテクスチャサイズは大きくなるが、反応速度が大きくなるようにエッチャント濃度、供給速度の増加や液温の上昇等によってもテクスチャサイズを大きくすることができる。また、エッチングが開始される表面状態によってもエッチング速度が異なるため、一般にラビング等の工程を実施した表面とそうでない表面とではテクスチャサイズが異なる。また、基板表面に形成されたテクスチャの鋭い谷部では、薄膜を製膜する際の圧縮応力によって、欠陥が発生しやすいため、テクスチャ形成エッチング後に形成したテクスチャの谷や山の形状を緩和する工程として、(100)面と(111)面の選択性の低い等方性エッチングを行うことが好ましい。
通常はテクスチャ形成後、単結晶シリコン表面にシリコン系薄膜を製膜する。製膜方法としてはプラズマCVD法が好ましい。シリコン系薄膜の形成条件としては、一般に、基板温度100〜300℃、圧力20〜2600Pa、高周波パワー密度0.004〜0.8W/cmの範囲が好ましく用いられる。シリコン系薄膜の形成に使用する原料ガスとしては、SiH、Si等のシリコン含有ガス、またはそれらのガスとHを混合したものが好ましく用いられる。シリコン系薄膜におけるp型またはn型層を形成するためのドーパントガスとしては、BまたはPH等が好ましく用いられる。また、PやBといった不純物の添加量は微量でよいため、予めSiHやHなどで希釈された混合ガスを用いることが好ましい。また、CH、CO、NH、GeH等といった異種元素を含むガスを添加することで、合金化しエネルギーギャップを変更することもできる。
実質的に真正なi型シリコン系薄膜層は、シリコンと水素で構成されるi型水素化非晶質シリコンであることが好ましい。i型水素化非晶質シリコン層のCVD製膜時に単結晶シリコン基板への不純物拡散を抑えつつ、単結晶シリコン表面のパッシベーションを有効に行うことができる。また、膜中の水素量を変化させることで、エネルギーギャップにキャリア回収を行う上で有効なプロファイルを持たせることもできる。
p型シリコン系薄膜層は、p型水素化非晶質シリコン層か、p型酸化非晶質シリコン層であることが好ましい。不純物拡散や直列抵抗の観点から、p型シリコン系薄膜層はp型水素化非晶質シリコン層を用いることが好ましい。一方で、ワイドギャップの低屈折率層として光学的なロスを低減できる観点から、p型酸化非晶質シリコン層を用いることが好ましい。
本発明において、n型シリコン系薄膜層は、実質的に真正なシリコン薄膜層と接してなるn型非晶質シリコン系薄膜層、並びに、該n型非晶質シリコン系薄膜層及び酸化亜鉛層を主成分とする導電性酸化物層と接してなるn型微結晶シリコン系薄膜層とを含んで構成されることに特徴を有する。
n型非晶質シリコン系薄膜層としては、n型水素化非晶質シリコン層、n型非晶質シリコンナイトライド層、n型非晶質シリコンカーバイド層、n型非晶質シリコンオキサイド層から選ばれることが好ましい。さらに、本発明の構成においては、n型微結晶シリコン系薄膜の下地層として、結晶化阻害元素を含まないようなn型非晶質シリコン層を用いることが特に好ましい。
n型非晶質層のドーパントとして供給されているP原子は、シリコン原子と比較して3p電子が一つ多く、イオン半径は僅かにシリコン原子よりも小さい程度である。ダイアモンド構造において、シリコン原子はイオン半径のほぼ同じP原子の周りに4配位し、結果として電子が一つ余ることで、n型ドープとなる。P原子に最近接である4つのシリコン原子はP原子の5つ結合手中4つの結合手と結合すれば良いので、一つのシリコン原子の周りに4配位した場合よりも自由度は高くなり、より長距離の秩序を考慮した場合、最安定な構造を採りやすい。言い換えればP原子の周囲に4配位した第一近接構造は、周囲の構造歪みを吸収しやすい。つまり、P原子の周囲では最も安定な構造であるダイアモンド構造が形成され易く、このため結晶性が高くなる。上記の理由から、特にn型非晶質シリコン系薄膜層を下地とした場合、それ以外のタイプの非晶質シリコン層上では結晶化しないような条件においても、容易に結晶化させることができ、これによってn型微結晶シリコン層を製膜できる。
n型非晶質シリコン系薄膜に基づく上記下地効果によって、製膜条件のパワーを下げた製膜ダメージの低い条件(すなわち結晶が成長し難い条件)で、例えば12nm以下の薄い膜厚においても、良質なn型微結晶シリコン層を製膜でき、酸化亜鉛との良好な電気的コンタクトを得ることができる。
前記n型微結晶シリコン系薄膜層の膜厚は、吸収ロスと製膜ダメージの低減の観点から、1nm以上15nm以下が好ましく、より好ましくは3nm以上10nm以下である。n型微結晶シリコン系薄膜層の膜厚が10nmより厚いと製膜中にi型非晶質シリコン系薄膜やシリコン基板へのダメージが無視できなくなり、16nm以上で特性が悪化する。
n型微結晶シリコン系薄膜層に関しては、例えば、n型微結晶シリコン層、n型微結晶シリコンカーバイド層、n型微結晶シリコンオキサイド層等が挙げられる。中でも、欠陥の生成を抑制する観点からはドーパント以外の不純物を積極的に添加しないn型微結晶シリコン系薄膜層が好ましく、より具体的には水素およびリン以外の不純物を実質的に含まないn型微結晶シリコン系薄膜層であることがより好ましい。
一方で、n型微結晶シリコン系薄膜層の不純物として酸素や炭素を添加することで実効的な光学ギャップを広げることができ、屈折率も低下するので、光学的なメリットが得られる場合がある。上記観点から、結晶化を妨げない流量比範囲、例えばCO/SiH<10、CH/SiH<3にて添加することが好ましい。
例えば、n型微結晶シリコンオキサイド層は、膜中の酸素濃度が高いほど、屈折率が低く、抵抗が高い。光閉じ込めの観点からは屈折率が低いほど望ましいが、直列抵抗の増大は曲線因子の悪化につながるので、波長600nmにおける屈折率が1.9〜1.7の範囲にあることが望ましい。
前記n型微結晶シリコン系薄膜層は、単結晶シリコン基板側からみて、水素、リン以外の不純物を実質的に含まないn型微結晶シリコン層/n型微結晶シリコンオキサイド層の順で配置された積層膜であることが好ましい。これは酸素が結晶化阻害元素として働くため、n型非晶質シリコン層上に直接製膜するよりも、n型微結晶シリコン層上に製膜した方が結晶化させやすく、ダメージレスな製膜条件においても結晶化が容易であるためである。
次に、導電性酸化物層について説明する。一般的に、導電性酸化物の600nmにおける屈折率は1.9〜2.0程度であり、その膜厚は光学的な観点から80〜120nm程度が好ましい。これは導電性酸化物の両界面での反射光の干渉によって波長500〜600nmの光を太陽電池内へよく閉じ込めることができるためである。導電性酸化物層に酸化亜鉛を主成分として用いる場合、酸化インジウム(ITO)よりも膜厚に対する電気抵抗率が高いので、光学特性を優先して設計した場合、太陽電池の直列抵抗成分が上昇してしまう。解決する方法としては、酸化亜鉛を主成分とする導電性酸化物層と接して、集電極だけでなくAgからなる反射層を電極層として製膜する、酸化インジウムを主成分とする導電性酸化物層を製膜する等があげられる。特に金属からなる反射層を用いない場合、これはn側を入射面とする場合や、絶縁性材料を反射層として用いる場合であるが、透明で且つ導電性の高い薄膜を製膜する必要がある。一般的に酸化インジウム層は膜厚に対する導電率が酸化亜鉛よりも高く、湿熱耐久性にも優れている。酸化亜鉛層と酸化インジウム層を積層させて、導電性酸化物層を構成する場合、酸化亜鉛の膜厚は5nm以上20nm以下とし、残りの膜厚を酸化インジウム層で形成することが好ましい。酸化亜鉛層が5nm未満では被覆率の観点で問題が生じる場合がある。一方で酸化亜鉛の膜厚が厚すぎると、抵抗率を低減する効果が薄れてしまう傾向がある。
酸化亜鉛と酸化インジウムを比較すると一般的に酸化亜鉛の方が非晶質になり難く、還元され難い。還元されやすい酸化インジウムをシリコン上に製膜した場合、酸化インジウム/シリコン界面で酸素の拡散が起こり、界面近傍のシリコンが酸化されうる。この薄い酸化シリコン層は電気的コンタクトに悪影響を与えるため、曲線因子が若干低下する。また、シリコンがドープ層であった場合は、この酸素拡散によって有効なドーパントが減少し、Vocの低下を招く場合がある。これらのことから、微結晶シリコンと酸化亜鉛の組み合わせの方が微結晶シリコンと酸化インジウムの組み合わせよりも優れている。
本発明ではn型微結晶シリコン系薄膜層上に酸化亜鉛を主成分とする導電性酸化物層を製膜する。製膜方法としては、例えば、スパッタ蒸着や熱CVD等が挙げられる。スパッタ蒸着を用いる場合、酸化亜鉛のドーパントはAlやGa、In、Siといったものが挙げられるが、Alをドーパントとして1〜5原子%程度添加したものが好ましく用いられる。製膜時のスパッタガスは、例えばArであることが好ましい。
例えば、熱CVD法によって製膜された酸化亜鉛は、結晶粒が大きく、表面に微細なテクスチャを有する。このテクスチャは反射防止及び光散乱構造として機能するため、光学的な観点から好ましい。また、熱CVD法はスパッタ蒸着法と比較して、シリコン基板及びシリコン系薄膜層へのイオン衝撃によるダメージが無いという点において好ましい。熱CVD法によって酸化亜鉛を製膜する場合、ドーパントとしては、例えばBが挙げられる。熱CVD法による酸化亜鉛層を用いる場合、n型シリコン層へのB原子の拡散を抑えるために、B添加量を製膜初期には無くすか、減らしておく、または製膜を通じて一切添加しないことが好ましい。また、熱CVD法による製膜前に結晶性の低い、InやSiといったドーパントを含む酸化亜鉛層を拡散抑制層として製膜しておいても良い。
電極層上には集電極が形成されうる。集電極は、インクジェット、スクリーン印刷、導線接着、スプレー等の公知技術によって作製できるが、生産性の観点からスクリーン印刷がより好ましい。スクリーン印刷は、金属粒子と樹脂バインダーからなる導電ペーストをスクリーン印刷によって印刷し、集電極を形成する工程が好ましく用いられる。
集電極に用いられる導電ペーストの固化も兼ねてセルのアニールが行われうる。アニールによって、透明導電膜(TCO)の透過率/抵抗率比の向上、接触抵抗や界面準位の低減といった各界面特性の向上なども得られる。アニール温度としては非晶質シリコン系薄膜の製膜温度から100℃前後の高温度領域に留めることが好ましい。アニール温度が高すぎると、導電型非晶質シリコン系薄膜層から真性非晶質シリコン系薄膜層へのドーパントの拡散、TCOからシリコン領域への異種元素の拡散による不純物準位の形成、非晶質シリコン中での欠陥準位の形成などによって、特性が悪化してしまう場合がある。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
図1は、本発明に係る実施例1の結晶シリコン太陽電池を示す模式的断面図である。本実施例の結晶シリコン太陽電池はヘテロ接合太陽電池であり、n型単結晶シリコン基板1の両面にそれぞれテクスチャを備えている。n型単結晶シリコン基板1の入射面にはi型非晶質シリコン層2/p型非晶質シリコン層3/酸化インジウム層8が製膜されている。酸化インジウム層8の上には集電極10が形成されている。一方、基板1の裏面にはi型非晶質シリコン層4/n型非晶質シリコン層5/n型微結晶シリコン層6/酸化亜鉛層7/Ag層11が製膜されている。Ag層11の上には集電極10が形成されている。
図1に示す実施例1の結晶シリコン太陽電池を以下のようにして製造した。
入射面の面方位が(100)で、厚みが150μmのn型単結晶シリコン基板をアセトン中で洗浄した後、2重量%のHF水溶液に3分間浸漬し、表面の酸化シリコン膜を除去し、超純粋によるリンスを2回行った。次に70℃に保持した5/15重量%のKOH/イソプロピルアルコール水溶液に15分間浸漬し、基板表面をエッチングすることでテクスチャを形成した。その後に超純水によるリンスを2回行った。AFM(Pacific Nanotechnology社のNano−Rシステム)による単結晶シリコン基板1の表面観察を行ったところ、基板表面はエッチングが最も進行しており(111)面が露出したピラミッド型のテクスチャが形成されていた。
エッチングが終了した単結晶シリコン基板1をCVD装置へ導入し、入射面にi型非晶質シリコン層2を3nm製膜した。本件において製膜した薄膜の膜厚は、ガラス基板上に同条件にて製膜した場合の膜厚を分光エリプソメトリー(ジェー・エー・ウーラム・ジャパン(株)のVASE)にて測定し、製膜速度を求め、同じ製膜速度にて製膜されていると仮定して算出したものである。i型非晶質シリコン層2の製膜条件は、基板温度が170℃、圧力120Pa、SiH/H流量比が3/10、投入パワー密度が0.011W/cm−2であった。i型非晶質シリコン層2の上にp型非晶質シリコン層3を4nm製膜した。p型非晶質シリコン層3の製膜条件は基板温度が170℃、圧力60Pa、SiH/B流量比が1/3、投入パワー密度が0.01W/cm−2であった。なお、上記でいうBガスは、B濃度を5000ppmまでHで希釈したガスを用いた。
次に裏面側にi型非晶質シリコン層4を6nm製膜した。i型非晶質シリコン層4の製膜条件は、基板温度が170℃、圧力120Pa、SiH/H流量比が3/10、投入パワー密度が0.011W/cm−2であった。i型非晶質シリコン層4上にn型非晶質シリコン層5を4nm製膜した。n型非晶質シリコン層5の製膜条件は、基板温度が170℃、圧力60Pa、SiH/PH流量比が1/2、投入パワー密度が0.01W/cm−2であった。なお、上記でいうPHガスは、PH濃度を5000ppmまでHで希釈したガスを用いた。n型非晶質シリコン層5上にn型微結晶シリコン層6を10nm製膜した。n型微結晶シリコン層6の製膜条件は、基板温度が170℃、圧力800Pa、SiH/PH/H流量比が1/4/180、投入パワー密度が0.04W/cm−2であった。
次に裏面のn型微結晶シリコン層6上に、スパッタリング法により酸化亜鉛層7を100nm製膜した。スパッタリングターゲットはAlをZnOへ2%添加したものを用いた。次にp型非晶質シリコン層3上に酸化インジウム層8をスパッタリング法によって100nm製膜した。スパッタリングターゲットはInへSnを10%添加したものを用いた。次に裏面の酸化亜鉛層7上にAgからなる反射層11を電子線蒸着によって200nm製膜した。最後に、Agからなる反射層11及び入射側ITO層8上に、銀ペーストをスクリーン印刷し、櫛形電極を形成し、集電極10とした。
(実施例2)
実施例2においては、n型微結晶シリコン層6を膜厚8nmで製膜した点においてのみ実施例1と異なっていた。
(実施例3)
実施例3においては、n型微結晶シリコン層6を膜厚15nmで製膜した点においてのみ実施例1と異なっていた。
(実施例4)
実施例4においては、図2に示すようにn型微結晶シリコン層6を膜厚10nmで製膜し、n型微結晶シリコン層6上に酸化亜鉛層7を10nm製膜し、その上に酸化インジウム層を90nm製膜し、裏面反射材としてMgO微粒子からなる白板を太陽電池の裏面側に配置した点においてのみ実施例1と異なっていた。
(実施例5)
実施例5においては、図3に示すようにn型微結晶シリコン層6を膜厚8nmで製膜し、n型微結晶シリコン層6上にn型微結晶シリコンオキサイド層を60nm製膜し、その上に酸化亜鉛層を20nm製膜し、酸化亜鉛層上にAgからなる反射層を200nm製膜した点においてのみ実施例1と異なっていた。
(比較例1)
比較例1においては、実施例1において製膜したn型非晶質シリコン層/n形微結晶シリコン層の代わりにn型非晶質シリコン層のみを10nm製膜し、酸化亜鉛層7の替わりに酸化インジウム層を100nm製膜し、Agを製膜せずに酸化インジウム層上に集電極を形成し、裏面反射材としてMgO微粒子からなる白板を太陽電池の裏面側に配置した点においてのみ実施例1と異なっていた。
(比較例2)
比較例2においては、実施例1において製膜したn型非晶質シリコン層/n形微結晶シリコン層の代わりにn型非晶質シリコン層のみを10nm製膜し、酸化亜鉛層7の替わりに酸化インジウム層を100nm製膜し、Agからなる反射層を200nm製膜し、Ag反射層上に集電極を形成した点においてのみ実施例1と異なっていた。
(比較例3)
比較例3においては、実施例1において製膜したn型非晶質シリコン層/n形微結晶シリコン層の代わりに、n型非晶質シリコン層のみを10nm製膜した点においてのみ実施例1と異なっていた。
(比較例4)
比較例4においては、裏面のn型非晶質シリコン層/n型微結晶シリコン層の代わりにn型微結晶シリコン層のみを15nm製膜した点においてのみ実施例1と異なっていた。
(比較例5)
比較例5においては、裏面の酸化亜鉛層の代わりに酸化インジウム層を100nm製膜し、裏面反射材としてMgO微粒子からなる白板を太陽電池の裏面側に配置した点においてのみ実施例1と異なっていた。
上記実施例及び比較例の太陽電池セルの光電変換特性を、ソーラーシミュレータを用いて評価した。比較例1と実施例1の光電変換特性を表1に示す。また、比較例1の太陽電池セルの短絡電流、開放電圧、曲線因子、出力を1として、それぞれを相対評価したものを表2に示す。
Figure 2011003750
Figure 2011003750
比較例1は一般的な構造であり、特許文献1の実施例においても実施されている内容である。比較例1の太陽電池モジュールの短絡電流(Isc)、開放電圧(Voc)、曲線因子(FF)、変換効率を1として、本発明において行った実施例及び比較例を相対評価した。
実施例1〜5ではいずれも比較例1よりも高い変換効率が得られ、比較例2〜5では比較例1と同等か低い変換効率が得られた。各実施例、比較例について特性を比較する。
実施例1では比較例1よりもVocとFFが向上している。これはn型微結晶シリコン層/酸化亜鉛層のコンタクトが、n型非晶質シリコン層/酸化インジウム層よりも良いためと考えられる。また、n型非晶質シリコン層よりもn型微結晶シリコン層の方が有効電荷密度が高く、拡散電位を高くできる効果もある。
n型微結晶シリコン層の膜厚を変えた場合として、実施例1、2、3を比較する。実施例2では膜厚を実施例1に対して薄くしており、Vocが低下している。これは拡散電位が僅かに減少したためである。実施例3のように厚くするとFFが減少している。これは、製膜時間が長くなり、i型非晶質シリコン層へ欠陥が導入され始めたためと考えられる。
実施例4では酸化亜鉛を10nm製膜し、酸化インジウム層を90nm製膜している。実施例1と比較して、Iscが向上している。これは、本実施例にて作成した太陽電池において、裏面に到達する長波長光に対する反射率が酸化亜鉛/Agよりも、ITO/MgOの方が高いためである。光は単結晶シリコン基板の膜厚を薄くすると、裏面に到達する光は短波長光の強度が高くなるので、酸化亜鉛/Ag構造の方が適している場合も考えられる。同様に比較例2でも、比較例1と比較してIscが僅かに減少している。
比較例3ではn型微結晶シリコン層が無い状態でn型非晶質シリコン層上に直接酸化亜鉛が製膜されている。電気的コンタクトが取れておらず、直列抵抗が高いためFFが極端に悪化している。
比較例4ではn型非晶質シリコン層が無い状態で、n型微結晶シリコン層をi型非晶質シリコン層上に直接製膜している。VocとFFが両方とも悪化しており、これはi型非晶質シリコン層及びn型単結晶シリコン基板に欠陥が導入されているためである。
実施例4と比較例5の違いはn型微結晶シリコン層との界面に酸化亜鉛が有るか無いかである。実施例4の方がVoc、FFが高く、これは上記したように酸化亜鉛層が酸化インジウムと比較して還元され難く、シリコンへの酸素拡散が少ないためである。
実施例5ではn型微結晶シリコン層8nm上に、n型微結晶シリコンオキサイド層を60nm製膜し、酸化亜鉛層を20nm製膜している。FFが若干悪化するもののIscが3%向上し、変換効率は比較例1と比較して3%向上している。Iscの増加はn型微結晶シリコンオキサイド層の屈折率が酸化亜鉛よりも低いため、裏面における反射光の強度が増大しているためである。
1.n型単結晶シリコン基板
2.i型非晶質シリコン層
3.p型非晶質シリコン層
4.i型非晶質シリコン層
5.n型非晶質シリコン層
6.n型微結晶シリコン層
7.酸化亜鉛層
8.ITO層
9.ITO層
10.集電極
11.Ag層
12.n型微結晶シリコンオキサイド層
13.白板(MgO微粒子)

Claims (5)

  1. 一導電型単結晶シリコン基板を用い、前記単結晶シリコン基板の一面にp型シリコン系薄膜層を有し、前記単結晶シリコン基板と前記p型シリコン系薄膜層の間に実質的に真正なシリコン系薄膜層を備え、前記単結晶シリコン基板の他面にn型シリコン系薄膜層を有し、前記単結晶シリコン基板と前記n型シリコン系薄膜層の間に実質的に真正なシリコン系薄膜層を備え、前記n型シリコン系薄膜層と接して酸化亜鉛層を主成分とする導電性酸化物層を備えた結晶シリコン太陽電池であって、
    前記n型シリコン系薄膜層が、前記実質的に真正なシリコン系薄膜層と接してなるn型非晶質シリコン系薄膜層と、該n型非晶質シリコン系薄膜層及び前記酸化亜鉛層を主成分とする導電性酸化物層と接してなるn型微結晶シリコン系薄膜層を含むことを特徴とする結晶シリコン太陽電池。
  2. 前記n型微結晶シリコン系薄膜層が、水素及びリン以外の不純物を実質的に含まないn型微結晶シリコン層であり、その膜厚が1nm以上15nm以下であることを特徴とする請求項1に記載の結晶シリコン太陽電池。
  3. 前記n型微結晶シリコン系薄膜層が単結晶シリコン基板側からみて、水素、リン以外の不純物を実質的に含まないn型微結晶シリコン層/n型微結晶シリコンオキサイド層の順で配置された積層膜であることを特徴とする請求項1に記載の結晶シリコン太陽電池。
  4. 前記n型微結晶シリコンオキサイド層の600nmにおける屈折率が1.9以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の結晶シリコン太陽電池。
  5. 前記酸化亜鉛を主成分とする導電性酸化物層と接して酸化インジウムを主成分とする導電性酸化物層が配置されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の結晶シリコン太陽電池。
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