JP2011099163A - 時効熱処理用無方向性電磁鋼板の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】質量%で、C:0.02%以下、Si:1.6%以上3%以下、Mn:1%以下、P:0.2%以下、S:0.03%以下、Al:0.1%以上3%以下、Ni:2%以下およびCu:1%超3%以下を含有し、残部が実質的にFeおよび不純物からなる冷間圧延鋼板に、2MPa以上6MPa以下の張力を付加した状態で900℃以上1100℃以下の温度で仕上げ焼鈍を施す仕上げ焼鈍工程を有することを特徴とする時効熱処理用無方向性電磁鋼板の製造方法。
【選択図】図1
Description
また、上記特許文献2に記載された発明では仕上げ焼鈍温度が低いために、鋼板の結晶粒径が非常に小さく、鉄損が非常に劣るという問題がある。
またさらに、上記特許文献3に記載された発明では、仕上げ焼鈍条件を適正化していないために、さらに強度を向上させる余地がある。さらに熱間圧延鋼板に焼鈍を実施しないか、あるいは980℃の高温で焼鈍するため、熱間圧延鋼板内部にCuが微細分散し、熱間圧延鋼板が非常に硬質となる。そのため、その後の冷間圧延が困難となり、生産性に劣る問題があった。
なお、本発明において「炭化物」には、炭窒化物が含まれるものとする。
すなわち、高温で焼鈍中に張力を付加することで、鋼板がわずかに伸びて結晶粒内に転位が導入される。その転位を析出サイトとして、時効熱処理で微細なCuが均質に析出するため、鋼板の強度が高くなると推察される。また、鋼中のNbは時効熱処理によりNb炭化物となって析出する。このNb炭化物も結晶粒内の転位上に析出し微細分散するので、さらなる強度上昇に寄与したものと推察される。
本発明の時効熱処理用無方向性電磁鋼板の製造方法は、質量%で、C:0.02%以下、Si:1.6%以上3%以下、Mn:1%以下、P:0.2%以下、S:0.03%以下、Al:0.1%以上3%以下、Ni:2%以下およびCu:1%超3%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる冷間圧延鋼板に、2MPa以上6MPa以下の張力を付加した状態で900℃以上1100℃以下の温度で仕上げ焼鈍を施す仕上げ焼鈍工程を有することを特徴とするものである。
以下、本発明における鋼組成、および本発明の時効熱処理用無方向性電磁鋼板の製造方法の各工程について説明する。
本発明に用いられるスラブまたは冷間圧延鋼板は、質量%で、C:0.02%以下、Si:1.6%以上3%以下、Mn:1%以下、P:0.2%以下、S:0.03%以下、Al:0.1%以上3%以下、Ni:2%以下およびCu:1%超3%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなるものである。
なお、各元素の含有量を示す「%」は、特に断りのない限り「質量%」を意味するものである。
Cは鋼板の強度を高めるのに有効な元素である。しかしながら、C含有量が0.02%を超えるとセメンタイト、εカーバイドなどの炭化物が析出し、磁気特性劣化が顕著になる場合がある。したがって、C含有量は0.02%以下とする。また、より一層の磁気特性向上、特に鉄損を向上させるにはC含有量の上限を0.005%にするのが好ましい。一方、Ti,Nb,V,Zrなどの炭化物生成元素を0.01%以上含有させて析出強化を図る場合には、C含有量を0.005%〜0.02%に制御することが好ましい。
Siは鋼の比抵抗を高め、鉄損低減に有効である。また、Siは固溶強化により鋼板の強度を高めるのにも有効である。Si含有量は必要な鉄損特性および強度特性に応じて決定すればよい。しかしながら、Si含有量が1.6%未満では必要な強度および鉄損が得られない可能性がある。一方、Si含有量が3%を超えるとCu析出物の分散状態が不均一となり強度向上効果が飽和する傾向を示す。また、冷間圧延において破断しやすくなり製造コストが著しく増大する場合がある。したがって、Si含有量は1.6%以上3%以下とする。さらに、冷間圧延時の破断による歩留まり低下を抑制するためには、Si含有量を1.6%以上2.5%以下にするのが好ましい。
Mnは不可避的不純物であり、添加する必要はない。しかしながら、Mnは鋼の比抵抗を高め、鉄損低減に有効である。その効果を得るには0.1%以上含有させることが好ましい。一方、Mn含有量が1%を超えると原料コストが大きくなる場合がある。したがって、Mn含有量は1%以下に限定する。
Pは不可避的不純物であり、添加する必要はない。しかしながら、Pは固溶強化により鋼板の強度を高めるのに有効な元素であり、その効果を得るには0.05%以上含有させることが好ましい。一方、P含有量が0.2%を超えると鋼の靱性が劣化し、冷間圧延時に破断するおそれがある。したがって、P含有量は0.2%以下に限定する。
Sは不可避的不純物であり、添加する必要はない。S含有量が0.03%を超えると粗大なMn,Cu含有硫化物が形成され、鋼の靭性が劣化し、冷間圧延時に破断するおそれがある。したがって、S含有量は0.03%以下に限定する。また、硫化物分散による細粒化により強化を図るには、S含有量を0.006%以上含有させることが好ましい。
AlはSiと同様に鋼の比抵抗を高め、鉄損低減に有効である。また、脱酸に有効な元素であり、非金属介在物を低減することができる。しかしながら、Al含有量が3%を超えると飽和磁束密度が著しく低下し、鉄心性能が劣化する可能性がある。一方、溶鋼の脱酸を効率的に行うにはAlを0.1%以上含有させることが必要である。したがって、Al含有量は0.1%以上3%以下に限定する。集合組織改善により磁束密度を改善するには、Al含有量を0.6%以上とすることが好ましい。
Niは不可避的不純物であり、添加する必要はない。しかしながら、Niは固溶強化により鋼板の強度を高めるのに有効な元素であり、その効果を得るには0.05%以上含有させることが好ましい。一方、Ni含有量が2%を超えると原料コストが大きくなる。したがって、Ni含有量は2%以下に限定する。
Cuは本発明において必須の元素である。上述したように、Cu析出物が非常に微細である場合には、磁気特性をほとんど劣化させることなく、強度特性を向上させる効果がある。しかしながら、Cu含有量が1%以下ではCu析出による強度上昇が十分得られない可能性がある。一方、Cu含有量が増加するにつれて時効硬化量は大きくなるが3%を超えると仕上げ焼鈍時にCu析出物が不均一に分散して時効熱処理後の強度が低下し、また鋼板の磁束密度も低下する場合がある。したがって、Cu含有量は1%超3%以下に限定する。また、析出強化が最も顕著になるという点から、Cu含有量は1.5%以上2.5%以下であることが好ましい。
Bは任意添加元素であり、本発明において必須の元素ではない。しかしながら、Bを0.0003%以上含有させることで熱延鋼板の靱性が向上し、冷間圧延時に破断しにくくなる。一方、B含有量が0.010%を超えると粗大なB化合物が生成し、かえって冷間圧延時に破断するおそれがある。したがって、B含有量は0.010%以下とすることが好ましい。また、鋼板製造性の観点より、B含有量は0.0003%以上0.0040%以下にすることがさらに好ましい。
Ti,Nb,VおよびZrは炭化物を形成し、磁気特性を劣化させるので、特に添加する必要はない。しかしながら、強度特性を向上させるにはTi,Nb,VおよびZrの合計含有量を0.01%以上とすることが有効である。一方、Ti,Nb,VおよびZrの合計含有量が0.1%を超えると炭化物が粗大分散して磁気特性が著しく劣化する可能性がある。したがって、Ti,Nb,VおよびZrの合計含有量は0.01%以上0.1%以下とすることが好ましい。
製鋼プロセスにおいて鋼中に混入する不純物で0.01%以上混入する可能性のある成分としてCrおよびMo等が存在する。CrおよびMoのいずれも含有量を1%以下に低減しておけば、本発明の効果が損なわれることはない。また、上記成分以外の不純物成分は、いずれも含有量が0.05%以下に低減されていれば本発明の効果に影響はない。
本発明における仕上げ焼鈍工程は、上述した鋼組成を有する冷間圧延鋼板に、2MPa以上6MPa以下の張力を付加した状態で900℃以上1100℃以下の温度で仕上げ焼鈍を施す工程である。
仕上げ焼鈍温度は、900℃以上1100℃以下とする。仕上げ焼鈍温度が上記範囲未満では、再結晶粒成長が不十分となり磁気特性が著しく劣化する可能性がある。一方、仕上げ焼鈍温度が上記範囲を超えると鋼板の粒径が著しく粗大化し、時効熱処理後のCu析出物が不均一に分散し、強度が低下する場合がある。より一層の鉄損低減には仕上げ焼鈍温度が高ければ高いほどよく、950℃以上とすることが好ましい。
また、仕上げ焼鈍中に鋼板に付加する張力は2MPa以上6MPa以下の範囲とする。これは、上述した実験結果からわかるように、時効熱処理後の鋼板強度を高めるためには、仕上げ焼鈍中に鋼板に付加する張力を制御することが有効であるからである。
本発明においては、上述した鋼組成を有するスラブを所定の温度としたのちに、熱間圧延を施す熱間圧延工程を行ってもよい。
熱間圧延としては一般的な方法を用いることができる。スラブ温度、熱間圧延での仕上げ温度、巻取り温度等の条件は、スラブの鋼組成、目的とする鋼板の板厚などにより適宜選択するものとする。
熱間圧延鋼板は、通常、熱間圧延の際に鋼板表面に生成したスケールを酸洗により除去してから冷間圧延に供される。熱間圧延鋼板に後述する熱延板焼鈍を施す場合には、熱延板焼鈍前または熱延板焼鈍後のいずれかにおいて酸洗すればよい。
本発明においては、上記熱間圧延工程により得られる熱間圧延鋼板に、600℃以上900℃以下の温度で2時間以上保持する熱延板焼鈍を施す熱延板焼鈍工程を行ってもよい。この熱間圧延鋼板は、上記冷間圧延鋼板の素材となるものである。熱延板焼鈍工程は必ずしも必須の工程ではないが、続いて行われる冷間圧延の能率を高めることを可能とするのに有用な工程である。
また、上記焼鈍温度での保持時間は2時間以上であることが好ましい。保持時間が2時間未満の場合、Cu析出物が微細化し、鋼板の強度が高くなり、冷間圧延が困難となる場合がある。保持時間は8時間以上がより好ましい。一方、保持時間の上限は特に限定されないが、経済性の観点から48時間以下にすることが望ましい。
本発明においては、上記熱間圧延工程により得られる熱間圧延鋼板、あるいは、上記熱延板焼鈍工程にて熱延板焼鈍が施された熱間圧延鋼板に、冷間圧延を施す冷間圧延工程を行ってもよい。
中間焼鈍での焼鈍温度等の条件は、熱延板焼鈍と同様にすることが好ましい。
本発明においては、上記冷間圧延工程後に、一般的な方法にしたがって、有機成分のみ、無機成分のみ、あるいは有機無機複合体からなる絶縁皮膜を鋼板表面に塗布するコーティング工程を行ってもよい。また、コーティング工程は、加熱・加圧することにより接着能を発揮する絶縁コーティングを施す工程であってもよい。接着能を発揮するコーティング材料としては、アクリル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂またはメラミン樹脂などを用いることができる。
時効熱処理での温度、時間、雰囲気等の条件は、鋼組成、目的とする強度などにより適宜選択するものとする。
[実施例1]
転炉で脱炭脱硫した溶鋼230tonを取鍋内に出鋼し、取鍋をRH式真空脱ガス装置に移動した。RH式真空脱ガス装置で減圧脱炭を行い、鋼中のC含有量を0.015%以下とした後に、Si,Mn,P,S,Al,Cu,B,Ni,Ti,Nb,VおよびZrの含有量を調整し、連続鋳造機にてスラブとした。
上記スラブを加熱炉で1150℃まで加熱し、仕上げ温度800〜850℃、巻き取り温度500℃で熱間圧延し、厚さ2.0mmの熱間圧延鋼板を得た。次いで、酸洗脱スケールして、750℃で10h焼鈍後、厚さ0.35mmまで冷間圧延し、張力を2MPa〜7MPaとして900〜1050℃で仕上げ焼鈍し、鋼板表面に絶縁皮膜を塗布した。
下記の表1に製品の成分分析値、表2に仕上げ焼鈍条件をそれぞれ示す。
実施例1にて製造した鋼マークA5およびA9の冷間圧延鋼板を用いて、温度を850℃〜1150℃、張力を3MPa〜7MPaと変化させた仕上げ焼鈍を行い、鋼板表面に絶縁皮膜を塗布した。下記の表3に仕上げ焼鈍条件を示す。
実施例1にて製造した鋼マークA9の厚さ2.0mmの熱間圧延鋼板を用いて、種々の熱延板焼鈍を施した後、レバース式の冷間圧延機にて厚さ0.35mmまでの冷間圧延パス数によりその操業性を評価した。結果を下記の表4に示す。
Claims (4)
- 質量%で、C:0.02%以下、Si:1.6%以上3%以下、Mn:1%以下、P:0.2%以下、S:0.03%以下、Al:0.1%以上3%以下、Ni:2%以下およびCu:1%超3%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる冷間圧延鋼板に、2MPa以上6MPa以下の張力を付加した状態で900℃以上1100℃以下の温度で仕上げ焼鈍を施す仕上げ焼鈍工程を有することを特徴とする時効熱処理用無方向性電磁鋼板の製造方法。
- Si含有量が2.5質量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の時効熱処理用無方向性電磁鋼板の製造方法。
- 前記冷間圧延鋼板が、前記Feの一部に代えて、質量%で、B:0.010%以下を含有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の時効熱処理用無方向性電磁鋼板の製造方法。
- 前記冷間圧延鋼板が、前記Feの一部に代えて、質量%で、Ti、Nb、VおよびZrからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計で0.01%以上0.1%以下の範囲内で含有することを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかに記載の時効熱処理用無方向性電磁鋼板の製造方法。
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