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JP2010517536A - 原発不明がんの原発巣を同定するための方法および材料 - Google Patents

原発不明がんの原発巣を同定するための方法および材料 Download PDF

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Abstract

本発明は、原発不明転移の原発巣を同定する方法を提供する。その方法は、転移性細胞を含むサンプルを入手し;少なくとも2つの異なるがんに関連するバイオマーカーを評価し;バイオマーカーから得られたデータを組み合わせて、線形判別分析にして(ここで、線形判別分析は、基準に対してバイオマーカーを標準化する);各々のバイオマーカーの感度と特異度を最適化し、それらのがんに係る罹患率を重み付けし、原発巣組織を選択するようなカットオフを課し;その線形判別分析によって決定された最も高い確率に基づいて原発巣を決定するか、もしくは、そのがんが特定のがん集団に由来しないことを決定し;そして、任意に、1つ以上の追加の異なるがんに特異的なバイオマーカーを評価し、追加のバイオマーカーに対して工程を反復することによる。

Description

開示の内容
〔連邦支援の研究または開発についての宣言〕
本発明を成すために、政府基金は全く用いていない。
〔発明の背景〕
原発不明がん(CUP)は、異種の、生検によって確認される悪性腫瘍の群であり、転移性の疾患が、同定可能な原発腫瘍部位、すなわち原発巣組織(ToO)なしに現れるものである。この問題は、すべてのがんのおよそ3〜5%に該当し、原発不明がんを7番目に一般的な悪性腫瘍にしている。Ghosh他(2005年);および、Mintzer他(2004年)参照。患者の予後および治療方法は、原発腫瘍の原因次第であり、そのため、原発腫瘍部位を同定する必要性が強調されている。Greco他(2004年);Lembersky他(1996年);および、Schlag他(1994年)参照。
さまざまな方法が、現在この問題を解決するために用いられている。以下に述べるいくつかの方法を、図1〜図2に示す。血清腫瘍マーカーは、鑑別診断に用いることができる。そのマーカーは十分な特異度を欠いているが、病理学上および臨床上の情報と組み合わせて用いることができる。Ghosh他(2005年)参照。免疫組織化学的(IHC)方法は、腫瘍系統を同定するために用いることができるが、100%特異的であるIHCマーカーはほとんど存在しない。それゆえに、病理学者はしばしばIHCマーカーパネルを用いている。いくつかの研究は、4〜14個のIHCマーカーを用いて、66〜88%の確度を示してきた。Brown他(1997年);De Young他(2000年);および、Dennis他(2005年a)参照。さらに高額な精密診断には、画像検査法[例えば、胸部X線、コンピュータ断層撮影(CT)スキャン、および、陽電子放射断層撮影(PET)スキャン]が含まれる。これらの方法の各々が、30〜50%の症例で原発腫瘍を同定できる。Ghosh他(2005年);および、Pavlidis他(2003年)参照。これらの高度な技術にもかかわらず、CUP症例を治療できるのは、死亡前に20〜30%のみである。Pavlidis他(2003年);および、Varadhachary他(2004年)参照。
期待できる新しいアプローチは、腫瘍の原発巣を同定するための、ゲノム規模での遺伝子発現プロファイル解析の能力にある。Ma他(2006年);Dennis他(2005年b);Su他(2001年);Ramaswamy他(2001年);Bloom他(2004年);Giordano他(2001年);および、米国特許出願公開第20060094035号参照。これらの研究は、遺伝子発現プロファイルに基づいて原発巣組織を同定することの実現可能性を示した。これらの遺伝子発現プロファイル解析技術が臨床環境条件で役立つためには、2つの主な障害が克服されなければならない。第一に、遺伝子発現プロファイル解析はもっぱら原発組織に対して実施されるため、遺伝子マーカー候補は、それらの組織特異的発現が転移で維持されるということ確かめるために、転移性組織上で確認されなければならない。第二に、遺伝子発現プロファイル解析技術は、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織を利用することができなければならない。これは固定された組織サンプルが、現在の慣例では標準的な材料であるからである。ホルマリン固定では結果的にRNAの分解が起こるため[Lewis他(2001年);およびMasuda他(1999年)参照]、現行のマイクロアレイプロトコルは確実には機能しないであろう。Bibikova他(2004年)参照。加えて、そのプロファイル解析技術は、強固で、再現性があり、そして容易に利用可能でなければならない。
定量RT−PCR法(qRT−PCR)は、FFPE組織から信頼性の高い結果を生ずるということが示されてきた。Abrahamsen他(2003年);Specht他(2001年);Godfrey他(2000年);およびCronin他(2004年)参照。そのため、より実際的なアプローチは、ゲノム規模の方法を発見手段として用い、より強固な技術に基づく診断分析を開発することであろう。Ramaswamy(2004年)参照。しかし、このパラダイムには、より少ない数の遺伝子の群を開発することが必要である。Oienと同僚は、遺伝子発現連続分析(SAGE)法を用いて61個の腫瘍マーカーを同定し、それらのマーカーから、5つの腫瘍の種類について、11個の遺伝子に基づくRT−PCR法を開発した。Dennis他(2002年)参照。SAGE法とqRT−PCR法を組み合わせたその他の研究では、4つの腫瘍の種類について、5つの遺伝子のパネルを開発し、81%の確度を達成した。Buckhaults他(2003年)参照。より最近の研究では、マイクロアレイプロファイル解析をqRT−PCR法と組み合わせたものがあるが、79個のマーカーを用いるものであった。Tothill他(2005年)参照。
〔発明の概要〕
本発明は、原発不明転移の原発巣を同定する方法を提供する。その方法は、転移性細胞を含むサンプルを入手し;少なくとも2つの異なるがんに関連するバイオマーカーを評価し;バイオマーカーから得られたデータを組み合わせて、分類ツリーにし(ここで、分類ツリーは、基準に対して標準化されたバイオマーカーを用いる);各々のバイオマーカーの感度と特異度を最適化し、それらのがんの罹患率を重み付けし、原発巣組織を選択するようなカットオフを課し;その分類ツリーによって決定された最も高い確率に基づいて原発巣を決定するか、もしくは、そのがんが特定のがん群に由来しないことを決定し;そして、任意に、1つ以上の追加の異なるがんに特異的なバイオマーカーを評価し、必要に応じて、追加のバイオマーカーに対して工程を反復することによる。
〔図面の簡単な説明〕
図1〜2は、原発不明転移の原発巣を同定する先行技術方法の図である。
図3は、本発明のCUP分類ツリーの図である。
図4は、組織パネルにおける2つの遺伝子の発現強度を示しているマイクロアレイデータの図である。(A)prostate stem cell antigen(PSCA)、(B)coagulation factor V(F5)である。棒グラフは、Y軸に強度、X軸に組織を表している。Panc Caは、すい臓がん;Panc Nは、正常なすい臓である。
図5は、Agilent Bioanalyzerから得られた電気泳動図である。3時間(A)、もしくは、16時間(B)のタンパク質分解酵素Kの消化により、RNAをFFPE組織から単離した。サンプルC22(赤色)は1年前のブロックであり、サンプルC23(青色)は5年前のブロックである。サイズラダーを緑色で示す。
図6は、異なる3つのqRT−PCR法から得られたCt値の比較の図である。それらのqRT−PCR法とは、cDNAを生成するqPCRが後に続く、逆転写におけるランダムヘキサマープライミング(RH2段階);cDNAを生成するqPCRが後に続く、逆転写における遺伝子特異的(リバースプライマー)プライミング(GSP2段階);または、1段階反応の遺伝子特異的プライミングとqRT−PCR(GSP1段階)である。11個のサンプル由来のRNAを3つの方法に分割し、3つの遺伝子[β-actin(A);HUMSPB(B);および、TTF(C)]に対するRNA量を測定した。各方法で得られたCt値の中央値を実線で示す。
図7は、CUP解析プレートの図である。
図8は、単変量解析ツリーの図解である。
図9は、RNA濃度範囲に渡る解析性能を示した一連のグラフである。
図10は、マーカー候補の指定および確認を示す実験作業の流れの図解である(図10A)。
図11は、FFPE転移性がんおよび前立腺原発性腺がんにおける、選ばれた10個の組織特異的遺伝子マーカー候補の発現の図である。各図表について、X軸は正規化マーカー発現値を表す。
図12は、解析の最適化の図である。(A)および(B)は、Agilent Bioanalyzerから得られた電気泳動図である。3時間(A)、もしくは、16時間(B)のタンパク質分解酵素Kの消化により、RNAをFFPE組織から単離した。サンプルC22(赤色)は1年前のブロックであり、サンプルC23(青色)は5年前のブロックである。サイズラダーを緑色で示す。(C)および(D)は、異なる3つのqRT−PCR法から得られたCt値の比較の図である。それらのqRT−PCR法とは、cDNAを生成するqPCRが後に続く、逆転写におけるランダムヘキサマープライミング(RH2段階);cDNAを生成するqPCRが後に続く、逆転写における遺伝子特異的(リバースプライマー)プライミング(GSP2段階);または、1段階反応の遺伝子特異的プライミングとqRT−PCR(GSP1段階);である。11個のサンプル由来のRNAを3つの方法に分割し、2つの遺伝子[β-actin(C);HUMSPB(D)]に対するRNA量を測定した。各方法で得られたCt値の中央値を実線で示す。
図13は、239個のサンプルに係る10個のマーカーパネルの相対的な発現量を示すヒートマップである。赤色がより高い発現を表す。
〔詳細な説明〕
原発不明の転移性がん(CUP)を有する患者の原発部位を同定することは、特異的な治療方法を適用することを可能にし、延命させるかもしれない。マーカー候補を、特異度を決定するために、他のがんの種類から生じた転移で確認したのと同じく、6つの組織から生じた205個のFFPE転移性がんで、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)によってその後確認した。10個の遺伝子特性が選ばれ、これら6つのがんの種類に対する転移性がんの原発巣組織を予測した。次に、RNA単離法およびqRT−PCR法を、これらの10個のマーカーに対して最適化し、そして、qRT−PCR解析を260個の転移性腫瘍の群に適用し、全体では78%の確度を得た。最終的に、48個の転移性サンプルの独立した群が検査された。重要なことは、この群のうち37個のサンプルが、既知の原発腫瘍を有したか、もしくは最初にCUPとして示されたがその後消散したもののどちらかであり、その解析は78%の確度を示した。
バイオマーカーとは、指示マーカー遺伝子の発現量のあらゆるしるしである。このしるしは、直接的もしくは間接的でありうるし、そして、生理学上のパラメータを考慮し、また、体内における対照、正常組織もしくは他のがんと比較して、遺伝子の過剰発現もしくは発現不足を評価することができる。バイオマーカーには、核酸(過剰発現/発現不足および直接的/間接的の両方)が含まれるが、これに限定されない。核酸をバイオマーカーとして用いることには、本技術分野において既知の任意の方法が含まれうる。その方法には、DNA増幅、RNA、マイクロRNA、ヘテロ接合性消失(LOH)、一塩基多型[SNPs;Brookes(1999年)参照]、マイクロサテライトDNA、DNA低メチル化、もしくは、DNA高メチル化を評価することが含まれるが、これらに限定されない。タンパク質をバイオマーカーとして用いることには、本技術分野において既知の任意の方法が含まれる。その方法には、量、活性、修飾(例えば、グリコシル化、リン酸化、ADP−リボシル化、ユビキチン化等)、もしくは、免疫組織化学的手法(IHC)を評価することが含まれるが、これらに限定されない。他のバイオマーカーには、造影マーカー、細胞計数マーカー、および、アポトーシスマーカーが含まれる。
本明細書において提供する指示遺伝子は、特定の腫瘍もしくは組織の種類と関連している遺伝子である。1つのマーカー遺伝子は多くの種類のがんと関連しうるが、もしその遺伝子の発現が、本明細書に記載された特定の原発巣特異的な分類ツリーを用いて同定される1つの腫瘍もしくは組織の種類と十分に関連するならば、その遺伝子を、特許請求の範囲に記載された発明において、原発不明がん(CUP)の原発巣組織を決定するために用いることができる。本技術分野では、1つ以上のがんと関連する数多くの遺伝子が知られている。本発明は、好ましいマーカー遺伝子、および、さらに好ましいマーカー遺伝子の組み合わせを提供する。このことは本明細書中に詳細に記載されている。
「原発巣組織(tissue of origin)」において言及される「原発巣(origin)」とは、特定の医学的状況に応じて、組織の種類(肺、結腸等)、もしくは、組織型(腺がん、扁平上皮がん等)のいずれかを意味し、このことは当業者に理解されるであろう。
マーカー遺伝子は、配列を含む場合に、配列番号(SEQ ID NO)によって示されたその配列に対応する。遺伝子部分もしくは遺伝子断片は、その遺伝子の配列であることを識別するのに十分な、参照配列もしくはその相補配列の一部分を含む場合に、このような遺伝子の配列に対応する。遺伝子発現産物は、そのRNA、mRNA、もしくは、cDNAがこのような配列を有する組成物(例えば、プローブ)とハイブリダイゼーションする場合に、または、ペプチドもしくはタンパク質の場合にはこのようなmRNAによってコードされている場合に、このような配列に対応する。遺伝子発現産物の部分、もしくは、その断片は、その遺伝子もしくは遺伝子発現産物の配列であることを識別するのに十分な、参照遺伝子発現産物もしくはその補完物の一部分を含む場合に、このような遺伝子もしくは遺伝子発現産物の配列に対応する。
本明細書で説明され主張された、発明に係る方法、組成物、物品、および、キットは、1つ以上のマーカー遺伝子を含む。「マーカー」もしくは「マーカー遺伝子」は、本明細書全体を通じて、過剰発現もしくは発現不足が腫瘍もしくは組織の種類と関連している遺伝子に対応する遺伝子、および、遺伝子発現産物について言及するために用いられる。好ましいマーカー遺伝子は、表1において、より詳細に説明されている。本明細書で議論された全ての配列は、本明細書に記載され、配列表中に提示されている。
Figure 2010517536
本発明は、原発不明転移の原発巣を同定する方法を提供する。その方法は、転移性細胞を含むサンプルにおいて、少なくとも2つの異なるがんに関連するバイオマーカーを評価し;バイオマーカーから得られたデータを組み合わせて、分類ツリーにし(ここで、その分類ツリーは、基準に対して標準化されたバイオマーカーを用いる);各々のバイオマーカーの感度と特異度を最適化し、それらのがんの罹患率を重み付けし、原発巣組織を選択するようなカットオフを課し、;その分類ツリーによって決定された最も高い確率に基づいて原発巣を決定するか、もしくは、そのがんが特定のがん集団に由来しないことを決定し;そして、任意に、1つ以上の追加の異なるがんに特異的なバイオマーカーを評価し、必要に応じて、追加のバイオマーカーに対して工程を反復することによる。
本発明は、原発不明転移の原発巣を同定する方法を提供する。その方法は、転移性細胞を含むサンプルを入手し;少なくとも2つの異なるがんに関連するバイオマーカーを評価し;バイオマーカーから得られたデータを組み合わせて、分類ツリーにし(ここで、その分類ツリーは、(i)基準に対して標準化されたバイオマーカーを用い;(ii)各々のバイオマーカーの感度と特異度とを最適化し、それらのがんの罹患率を重み付けし、原発巣組織を選択するようなカットオフを課す);その分類ツリーによって決定された最も高い確率に基づいて原発巣を決定するか、もしくはそのがんが特定のがん集団に由来しないことを決定し;そして、任意に、1つ以上の追加の異なるがんに特異的なバイオマーカーを評価し、その追加のバイオマーカーに対して、工程(c)および工程(d)を反復することによる。
1つの実施形態において、マーカー遺伝子は、(i)SP−B、TTF、DSG3、KRT6F、p73H、もしくは、SFTPC;(ii)F5、PSCA、ITGB6、KLK10、CLDN18、TR10、もしくは、FKBP10;および/または、(iii)CDH17、CDX1、もしくは、FABP1から選択される。好ましくは、マーカー遺伝子は、SP−B、TTF、DSG3、KRT6F、p73H、および/もしくは、SFTPCである。より好ましくは、マーカー遺伝子は、SP−B、TTF、および/もしくは、DSG3である。それらのマーカー遺伝子はさらに、KRT6F、p73H、および/もしくは、SFTPCを含みうるか、または、KRT6F、p73H、および/もしくは、SFTPCと置き換えてもよい。
1つの実施形態において、マーカー遺伝子は、F5、PSCA、ITGB6、KLK10、CLDN18、TR10、および/もしくは、FKBP10である。より好ましくは、マーカー遺伝子は、F5、および/もしくは、PSCAである。好ましくは、それらのマーカー遺伝子は、ITGB6、KLK10、CLDN18、TR10、および/もしくは、FKBP10を含むことができ、または、ITGB6、KLK10、CLDN18、TR10、および/もしくは、FKBP10と置き換えることができる。
もう1つの実施形態において、マーカー遺伝子は、CDH17、CDX1、および/もしくは、FABP1であり、好ましくは、CDH17である。それらのマーカー遺伝子はさらに、CDX1、および/もしくは、FABP1を含むことができ、または、CDX1、および/もしくは、FABP1と置き換えることができる。
1つの実施形態において、配列番号11〜58のうちの少なくとも1つの配列を用いて、遺伝子発現を評価する。
本発明はまた、配列番号14、18、22、26、30、34、38、42、46、50、54、および/もしくは、58の単位複製配列のうちの少なくとも1つを生成し、そして、それらを測定することによって、遺伝子発現を評価する方法を含む。
1つの実施形態において、マーカー遺伝子は、以下のマーカーのうち、少なくとも1つのマーカーから選択される性特異的マーカーから選ぶことができる。そのマーカーとは、(i)男性患者の場合、KLK3、KLK2、NGEP、もしくは、NPYであり;あるいは、(ii)女性患者の場合、PDEF、MGB、PIP、B305D、B726、もしくは、GABA−πであり;ならびに/または、WT1、PAX8、STAR、もしくは、EMX2である。好ましくは、マーカー遺伝子は、KLK2、もしくは、KLK3である。この実施形態において、それらのマーカー遺伝子は、NGEP、および/もしくは、NPYを含むことができ、または、NGEP、および/もしくは、NPYと置き換えることができる。1つの実施形態において、マーカー遺伝子は、PDEF、MGB、PIP、B305D、B726、もしくは、GABA−πであり、好ましくは、PDEF、および、MGBである。この実施形態において、それらのマーカー遺伝子は、PIP、B305D、B726、もしくは、GABA−πを含むことができ、または、PIP、B305D、B726、もしくは、GABA−πと置き換えることができる。1つの実施形態において、マーカー遺伝子は、WT1、PAX8、STAR、もしくは、EMX2であり、好ましくは、WT1である。この実施形態において、それらのマーカー遺伝子は、PAX8、STAR、もしくは、EMX2を含むことができ、または、PAX8、STAR、もしくは、EMX2と置き換えることができる。
本発明は、以下の方法を提供する。その方法とは、がんの原発巣を決定するために、転移部位を含む、追加の臨床情報を得る方法であり;既知の原発巣の転移を用いる工程と、その転移のためのバイオマーカーを決定する工程と、そのバイオマーカーを原発不明転移のバイオマーカーと比較する工程とを含む、がんに対する最適なバイオマーカー群を得る方法であり;原発不明転移の原発巣を決定することによって、および、それに対して適切な治療法を同定することによって、治療方針を提供する方法であり;ならびに、原発不明転移の原発巣を決定することによって、および、それに対して対応する予後を同定することによって、予後を提示する方法である。
本発明はさらに、バイオマーカーを発見する方法を提供する。その方法とは、特定の転移におけるマーカー遺伝子の発現レベルを決定することによって;その発現を決定するためにマーカー遺伝子に対するバイオマーカーを評価することによって;本明細書において提供された方法のいずれか、もしくは、本技術分野において知られている方法のいずれかにしたがって、マーカー遺伝子の発現を分析することによって;および、マーカー遺伝子が原発巣腫瘍に対して効果的に特異的であるかどうか決定することによって;バイオマーカーを発見する方法である。
本発明はさらに、配列番号11〜58から選ばれる、少なくとも1つの単離された配列を含む組成物を提供する。本発明はさらに、本明細書において提供された方法にしたがって解析を実施するためのキットであって、バイオマーカー検出試薬をさらに含む、キットを提供する。
本発明はさらに、本明細書に記載された方法を実行するためのマイクロアレイ、もしくは、遺伝子チップを提供する。
本発明はさらに、本明細書に記載された遺伝子の組み合わせの、単離された核酸配列、それらの相補配列、もしくは、それらの部分配列を含む、診断/予後ポートフォリオを提供する。この組み合わせは、異なるがん由来の細胞、もしくは、正常組織由来の細胞と比較して、転移性細胞を有する生物サンプルにおける、遺伝子発現を評価するために、または、その遺伝子発現を特徴付けるのに十分なものである。
本発明において説明された任意の方法は、サンプルにおいて構成的に発現する、少なくとも1つの遺伝子の発現を評価することをさらに含むことができる。
好ましくは、すい臓がんのためのマーカーは、coagulation factor V(F5)、prostate stem cell antigen(PSCA)、integrin β6(ITGB6)、kallikrein 10(KLK10)、claudin 18(CLDN18)、 trio isoform(TR10)、および、hypothetical protein FLJ22041 similar to FK506 binding proteins(FKBP10)である。好ましくは、F5、および、PSCAのバイオマーカーを、同時に評価する。ITGB6、KLK10、CLDN18、TR10、および、FKBP10のバイオマーカーを、F5、および/もしくは、PSCAに加えて、または、F5、および/もしくは、PSCAの代わりに、評価することができる。F5は、例えば、米国特許出願公開第20040076955号;同第20040005563号;および、国際公開番号WO2004031412号に開示されている。PSCAは、例えば、国際公開番号WO1998040403号;米国特許出願公開第20030232350号;および、国際公開番号WO2004063355号に開示されている。ITGB6は、例えば、国際公開番号WO2004018999号;および、米国特許第6339148号に開示されている。KLK10は、例えば、国際公開番号WO2004077060号;および、米国特許出願公開第20030235820号に開示されている。CLDN18は、例えば、国際公開番号WO2004063355号;および、同WO2005005601号に開示されている。TR10は、例えば、米国特許出願公開第20020055627号に開示されている。FKBP10は、例えば、国際公開番号WO2000055320号に開示されている。
好ましくは、結腸がんのためのマーカー遺伝子は、intestinal peptide-associated transporter HPT-1(CDH17)、caudal type homeo box transcription factor 1(CDX1)、および、fatty acid binding protein 1(FABP1)である。好ましくは、CDH17のバイオマーカーを、単独で評価する。CDX1およびFABP1のバイオマーカーを、CDH17のバイオマーカーに加えて、もしくは、CDH17のバイオマーカーの代わりに評価することができる。CDH17は、例えば、Takamura他(2004年);および、国際公開番号WO2004063355号に開示されている。CDX1は、例えば、Pilozzi他(2004年);米国特許出願公開第20050059008号;および、同第20010029020号に開示されている。FABP1は、例えば、Borchers他(1997年);Chan他(1985年);Chen他(1986年);および、Lowe他(1985年)により開示されている。
好ましくは、肺がんのためのマーカー遺伝子は、surfactant protein-B(SP−B)、thyroid transcription factor(TTF)、desmoglein 3(DSG3)、keratin 6 isoform 6F(KRT6F)、p53-related gene(p73H)、および、surfactant protein C(SFTPC)である。好ましくは、SP−B、TTF、および、DSG3のバイオマーカーを、同時に評価する。KRT6F、p73H、および、SFTPCのバイオマーカーを、SP−B、TTF、および/もしくは、DSG3のバイオマーカーのいずれかに加えて、または、SP−B、TTF、および/もしくは、DSG3のバイオマーカーのいずれかの代わりに評価することができる。SP−Bは、例えば、Pilot-Mathias他(1989年);米国特許出願公開第20030219760号;および、同第20030232350号に開示されている。TTFは、例えば、Jones他(2005年);米国特許出願公開第20040219575号;国際公開番号WO1998056953号;同WO2002073204号;米国特許出願公開第20030138793号;および、国際公開番号WO2004063355号に開示されている。DSG3は、例えば、Wan他(2003年);米国特許出願公開第20030232350号;国際公開番号WO2004030615号;および、同WO2002101357号に開示されている。KRT6Fは、例えば、Takahashi他(1995年);米国特許出願公開第20040146862号;および、米国特許出願第20040219572号に開示されている。p73Hは、例えば、Senoo他(1998年);および、米国特許出願公開第20030138793号に開示されている。SFTPCは、例えば、Glasser他(1988年)により開示されている。
マーカー遺伝子をさらに、性特異的マーカーから選択することができる。それらの性特異的マーカーとは、例えば、男性患者の場合、KLK3、KLK2、NGEP、もしくは、NPYであり;あるいは、女性患者の場合、PDEF、MGB、PIP、B305D、B726、もしくは、GABA−π;ならびに/または、WT1、PAX8、STAR、もしくは、EMX2である。
好ましくは、乳がんのためのマーカー遺伝子は、prostate derived epithelial factor(PDEF)、mammaglobin(MG)、prolactin-inducible protein(PIP)、B305D、B726、および、GABA−πである。好ましくは、PDEF、および、MGのバイオマーカーを、同時に評価する。PIP、B305D、B726、および、GABA−πのバイオマーカーを、PDEF、および/もしくは、MGのバイオマーカーに加えて、もしくは、PDEFおよび/もしくは、MGのバイオマーカーの代わりに評価することができる。PDEFは、例えば、国際公開番号WO2004030615号;同WO2000006589号;同WO2001073032号;Wallace他(2005年);Feldman他(2003年);および、Oettgen他(2000年)により開示されている。MGは、例えば、国際公開番号WO2004030615号;米国特許出願公開第20030124128号;Fleming他(2000年);Watson他(1996年、および、1998年);および、米国特許第5668267号に開示されている。PIPは、例えば、Autiero他(2002年);Clark他(1999年);Myal他(1991年);および、Murphy他(1987年)により開示されている。B305D、B726、および、GABA−πは、Reinholz他(2005年)により開示されている。NGEPは、例えば、Bera他(2004年)により開示されている。
好ましくは、卵巣がんのためのマーカーは、Wilm's tumor 1(WT1)、PAX8、steroidogenic acute regulatory protein(STAR)、および、EMX2である。好ましくは、WT1のバイオマーカーを評価する。STAR、および、EMX2のバイオマーカーを、WT1のバイオマーカーに加えて、もしくは、WT1のバイオマーカーの代わりに評価することができる。WT1は、例えば、米国特許第5350840号;同第6232073号;同第6225051号;米国特許出願公開第20040005563号;および、Bentov他(2003年)により開示されている。PAX8は、例えば、米国特許出願公開第20050037010号;Poleev他(1992年);Di Palma他(2003年);Marques他(2002年);Cheung他(2003年);Goldstein他(2002年);Oji他(2003年);Rauscher他(1993年);Zapata-Benavides他(2002年);および、Dwight他(2003年)により開示されている。STARは、例えば、Gradi他(1995年);および、Kim他(2003年)により開示されている。EMX2は、例えば、Noonan他(2001年)により開示されている。
好ましくは、前立腺がんのためのマーカーは、KLK3、KLK2、NGEP、および、NPYである。好ましくは、KLK3のバイオマーカーを評価する。KLK2、NGEP、および、NPYのバイオマーカーを、KLK3に加えて、もしくは、KLK3の代わりに評価することができる。KLK2、および、KLK3は、例えば、Magklara他(2002年)により記載されている。KLK2は、例えば、米国特許出願公開第20030215835号;および、米国特許第5786148号に記載されている。KLK3は、例えば、米国特許第6261766号に記載されている。
本方法はまた、がんの原発巣を決定するために、転移部位を含む追加の臨床情報を得ることを含むことができる。フロー図を図3に示す。
本発明はさらに、既知の原発巣の転移を用いることによって;その転移のためのバイオマーカーを決定することによって;および、そのバイオマーカーを原発不明転移のバイオマーカーと比較することによって;がんに対する最適なバイオマーカー群を得るための方法を提供する。
本発明はさらに、本明細書に記載された方法にしたがって、原発不明転移の原発巣を決定することによって、および、その原発巣に対する適切な治療法を同定することによって、治療方針を提供するための方法を提供する。
本発明はさらに、本明細書に記載された方法にしたがって、原発不明転移の原発巣を決定することによって、および、その原発巣に対して対応する予後を特定することによって、予後を提供するため方法を提供する。
本発明はさらに、特定の転移におけるマーカー遺伝子の発現レベルを決定すること;そのマーカー遺伝子の発現を決定するためにマーカー遺伝子に対するバイオマーカーを評価すること;本明細書に記載された方法にしたがって、マーカー遺伝子の発現を分析すること;および、マーカー遺伝子が原発腫瘍に対して効果的に特異的であるかどうかを決定すること;を含む、バイオマーカーを発見する方法を提供する。
本発明はさらに、配列番号11〜58から選ばれる、少なくとも1つの単離された配列を含む組成物を提供する。
本発明はさらに、本明細書に記載された解析を実施するためのキット、物品、マイクロアレイ、もしくは、遺伝子チップ、診断/予後ポートフォリオ、および、本願方法によって得られた結果を報告するための患者報告を提供する。
特定の核酸配列が、組織サンプルに単に存在するかしないかということだけでは、診断上の、もしくは、予後上の価値を持つことはほとんどわからなかった。一方、さまざまなタンパク質、ペプチド、もしくは、mRNAの発現についての情報は、ますます重要なものとみなされている。ゲノムの中に、タンパク質、ペプチド、もしくは、mRNAを発現する可能性を有する核酸配列(このような配列を「遺伝子」という)が単に存在するということは、それだけでは、タンパク質、ペプチド、もしくは、mRNAが所与の細胞において発現するかどうか、決定的なものではない。タンパク質、ペプチド、もしくは、mRNAを発現することができる所与の遺伝子が発現するかどうかということ、および、たとえそうであっても、どの程度このような発現が起こるかということは、さまざまな複合的要因によって決定される。これらの要因を理解すること、および、判定することの難しさに関わりなく、遺伝子発現を解析することは、重要な事象(例えば、腫瘍形成、転移、アポトーシス、および、臨床上関連のあるその他の現象)の発生についての有用な情報を提供することができる。遺伝子が活性であるか、もしくは、不活性である程度についての相対的な指標は、遺伝子発現プロファイルに見出すことができる。本発明の遺伝子発現プロファイルは、CUPの患者に対して診断を提供するために、および、CUPの患者を治療するために用いられる。
サンプルの準備には、患者サンプルの収集が必要である。本発明の方法で用いられた患者サンプルは、組織の細針吸引(FNA)により小節から採取された細胞のような、異常細胞を含む疑いがあるサンプルである。生検、もしくは、外科的な標本、および、レイザーキャプチャーマイクロダイセクションにより得られた大量組織標本も使用に適している。レイザーキャプチャーマイクロダイセクション(LCM)技術は、研究用の細胞を選ぶ1つの方法であり、細胞の種類の不均一性によって生ずるばらつきを最小限にする。その結果、マーカー遺伝子発現における、正常もしくは良性細胞と悪性腫瘍細胞との間の、中程度の、もしくは、小さな変化が容易に検出できる。サンプルはまた、末梢血から抽出された循環系上皮細胞も含みうる。これらは多くの方法にしたがって手に入れることができるが、最も好ましい方法は、米国特許第6136182号に記載された磁気分離法である。ひとたび目的の細胞を含むサンプルが得られれば、適切なポートフォリオにおける遺伝子のためのバイオマーカーを用いて、遺伝子発現プロファイルが手に入る。
遺伝子発現プロファイルを確立するための好ましい方法は、タンパク質、もしくは、ペプチドをコードしうる遺伝子によって生成されるRNA量を決定することを含む。このことは、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)、競合RT−PCR、リアルタイムRT−PCR、ディファレンシャルディスプレイRT−PCR、ノザンブロット分析、および、その他の関係した検査法によって達成される。個々のPCR反応を用いてこれらの技術を実施することが可能であるが、mRNAから生成される相補的DNA(cDNA)、もしくは、相補的RNA(cRNA)を増幅すること、および、マイクロアレイによって分析することが最善である。多くの異なるアレイ配置、および、それらを作製する方法が当業者に知られており、例えば、米国特許第5445934号;同第5532128号;同第5556752号;同第5242974号;同第5384261号;同第5405783号;同第5412087号;同第5424186号;同第5429807号;同第5436327号;同第5472672号;同第5527681号;同第5529756号;同第5545531号;同第5554501号;同第5561071号;同第5571639号;同第5593839号;同第5599695号;同第5624711号;同第5658734号;および、同第5700637号に記載されている。
マイクロアレイ技術は、何千個もの遺伝子の定常状態mRNA量を同時に評価することができ、制御されていない細胞の増殖の開始、停止、あるいは、調節といった効果を特定するための強力な手法を提供することができる。2つのマイクロアレイ技術、すなわち、cDNAアレイおよびオリゴヌクレオチドアレイが、現在広く使われている。これらのチップの構造にはちがいがあるけれども、本質的に、すべての下流データの解析、および、それらの出力は同一のものである。これらの解析の成果は、通常、標識プローブから受信されるシグナルの強度の測定値である。標識プローブは、マイクロアレイ上の既知の位置にある核酸配列にハイブリダイゼーションするサンプル由来のcDNA配列を検出するために用いられる。通常、シグナルの強度は、サンプル細胞において発現されたcDNA、および、ひいてはmRNAの量に比例する。大変多くのこのような技術が利用可能であり、有用である。遺伝子発現を決定するための好ましい方法は、米国特許第6271002号;同第6218122号;同第6218114号;および、同第6004755号に見出すことができる。
発現量の分析は、このようなシグナル強度を比較することによって実施される。このことは、対照サンプルの発現強度に対する試験サンプルでの遺伝子の発現強度の比率行列を生成することによって、最もよく行われる。例えば、罹患組織由来の遺伝子発現強度は、同じ種類の良性組織、もしくは、正常組織から生じた発現強度と比べることができる。これらの発現強度の比率は、試験サンプルと対照サンプルとの間で、遺伝子発現において、倍の変化があることを示している。
選択は統計的検定に基づくことができる。この統計的検定は、腫瘍のもともとの原発巣部位に関係する因子間において、各遺伝子が差異のある発現をすることに対する有意性の証拠と関係した順位付けされた一覧を提出する。このような検定の例には、分散分析(ANOVA)、および、クラスカル・ウォリス検定が含まれる。順位付けは、このような、カットオフまでの重みの総計を、他の分類以上に1つの分類の利益になるような証拠の優越として解釈するように設計されたモデルにおいて、重み付けとして用いることができる。文献に記載されたような従来の証拠も、その重み付けを調整するために用いてもよい。
本発明において、6つの腫瘍の種類間で差異のある発現の有意な証拠を示した10個のマーカーが選択された。選択過程には、統計的検定、平均分散最適化、および、専門知識のアドホックな収集が含まれた。他の実施形態では、特徴抽出法は、教師あり学習法を通じて、マーカーの選択および試験をするように自動化することができた。データベースが蓄積されるにつれ、データベースの任意の所与の状態において可能である最も高度な診断確度を生み出すべく、マーカーの選択をくり返すことができる。
好ましい実施形態は、安定した対照群を同定し、この群をすべてのサンプルにわたってゼロ分散に設定することによって、各測定を標準化することである。解析における系統誤差によって作用され、かつ、この誤差から独立して変化することが知られていない、あらゆる単一の内因性転写産物、もしくは、そのようなあらゆる内因性転写産物の集合として、この対照群は定義される。すべてのマーカーは、対照群のあらゆる記述的統計値(例えば、平均値、もしくは、中央値)に対するゼロ分散、または、直接測定に対するゼロ分散を生ずるサンプル特異的な因子によって調整される。あるいは、系統誤差にのみ関係する対照の分散の前提が真ではなく、しかし標準化が行われた場合に、生ずる分類誤差がより小さくなる場合、対照群はなお、前述のとおり用いられるであろう。非内因性のスパイクコントロールもまた役に立ったが、好ましいものではない。
分類ツリーを、Matlab関数「treefit」を用いて構築した。この関数は、Mathworks社から市販されている。関数は、Breiman, L.「Classification and Regression Tree」Chapman & Hall, Boca Raton(1993年)に記載された仕事に基づいている。
以下の工程を以下の順番で、インストールされたStatistical Toolboxとともに、Matlab7.3.0版(http://www.mathworks.com)を用いて、コードが実行する。用語treefitとは、Statistical Toolbox名前空間におけるtreefit関数から生成されたツリーをいう。
(1)10個のマーカー遺伝子、および、2個の対照に対するCT値は、利用可能なすべての訓練群のサンプルについて、ハードドライブに蓄積される。
(2)各サンプルについて、各マーカーから対照サンプル特異的な平均を差し引くことにより、10個のマーカー遺伝子に係る値を標準化する。
(3)訓練データ群は、原発巣部位がわかっている転移から構成され、各サンプルは標的マーカーのうち少なくとも1つを有する。この標的マーカーは、ラベルされた原発巣組織に特異的であり、5未満の四捨五入整数値に概数化された、標準化されたCT値を有している。
(4)Treefitは、(3)における訓練データから、7つのツリーを構築するために用いられる。2以上のクラスを含む各ノードは、分岐するために10個以上の観察を有さなければならない。分岐を選ぶための基準は、Gini多様性指数である。任意の特定のツリーで用いられる各クラスについて、事前確率は等しい。100個の10倍交差検定の平均により決定されるような最小コストより1つ下のレベルまで、各ツリーを剪定する。各剪定レベルについてのコストを、Matlab Statistical Toolbox関数「treetest」により決定する。3つで1組のツリーは、肺のバックグラウンド組織に相当するツリーを有する男性に特異的であり、別のツリーは、結腸のバックグラウンドについて特異的であり、一般ツリーは、結腸、肺、すい臓、または、前立腺ではない、任意の他のバックグラウンド組織について特異的である。4つの女性特異的ツリーがある。それらのツリーは、結腸バックグラウンドツリー、肺バックグラウンドツリー、卵巣バックグラウンドツリー、および、乳房、結腸、肺、すい臓、または、卵巣ではない任意の他のバックグラウンドとともに用いられる一般ツリーである。各男性特異的ツリーには、WT1、MG、および、PDEFを用いないだろう。というのは、男性特異的ツリーは、サンプルを乳房または卵巣として分類するよう試みないからである。同様に、女性特異的ツリーは、KLK3を用いないだろう。女性ツリーにおけるクラスとして、前立腺を用いないからである。結腸バックグラウンド特異的ツリーは、HPT1を用いない。肺バックグラウンド特異的ツリーは、HUMP、TTF1、または、DSG3を用いない。卵巣バックグラウンド特異的ツリーでは、WT1を用いない。
サンプルを試験するために、以下のことを行った。
(1)試験データ群を読み込む。
(2)両方の対照のサンプル特異的平均を生成する。
(3)各サンプルについて、サンプル特異的平均を、各マーカーから差し引くために用いる。
(4)40の生のCT値から生成した任意の標準化CT値を、40で置換する。
(5)試験群における各サンプルについて、以下のことを試験する。
a.両方の対照の平均が34より大きい場合、その後、そのサンプルを、事後確率が0である「CTR_FAILURE」とラベルする。
b.バックグラウンドを、結腸、卵巣、もしくは、肺について調べる。もし一致が見られれば、その後、性に対しても同様に調べる。バックグラウンドおよび性特異的なツリーを、その後サンプルを評価するために用いる。
c.乳房、すい臓、肺SCC、もしくは、前立腺が、バックグラウンドラベルとして見出された場合、そのサンプルに、「FAILURE_ineligible_sample」のラベルを付し、事後確率をすべて0に設定する。
d.男性もしくは女性のどちらかのための一般ツリーを、他のすべてのサンプルに対して用いる。
工程(5)b〜dで決定された分類結果を、特定されたツリーのルートノードから開始し、各エンカウンターノードでのカットオフに基づいた末端リーフへの経路をたどることにより、生成することができる。あるいは、Matlab Statistical Toolbox関数「treeval」と同様の機能性を有するプログラムを、結果を生成し、それら結果をファイルに書き込むために用いることができる。
本発明は、この過程から得られた遺伝子発現ポートフォリオを含む。
遺伝子発現プロファイルは、多くのやり方で表示することができる。最も一般的な方法は、縦に試験サンプルを、横に遺伝子を示した図形的な系統樹中に、未加工の蛍光強度もしくは比率行列を配置することである。データは、類似の発現プロファイルを有する遺伝子が互いに近位にあるように配置される。各遺伝子の発現率は、色として視覚化される。例えば、1未満の発現率(ダウンレギュレーション)は、スペクトルの青色部分に現れ、1を超える発現率(アップレギュレーション)は、スペクトルの赤色部分に現れる。「GeneSpring」(Silicon Genetics, Inc.)、ならびに、「Discovery」および「Infer」(Partek, Inc.)を含む、市販のコンピュータソフトウェアプログラムは、このようなデータを表示するために利用できる。
多数の独自のRNA種の測定値は、原発腫瘍、もしくは、既知の起源の原発腫瘍由来の転移性腫瘍から収集される。関係のあるデータベースを生成するために、臨床記録[患者の年齢、性別、原発腫瘍の原発巣部位、および、(もし適用できるなら)転移部位が含まれるが、これらに限定されない]と共にこれらの示度を用いる。RNA転写物、および、臨床上の因子を選択するために、データベースを用いる。これらのRNA転写物、および、臨床上の因子は、転移性腫瘍の原発巣を予測するためのマーカー変数として用いることができるものである。
遺伝子発現を決定するためにタンパク質量を測定する場合、もしそれが結果的に適切な特異度および感度をもたらすならば、本技術分野において既知の任意の方法が適当である。例えば、タンパク質特異的な抗体、もしくは、抗体断片へ結合することによって、また、抗体結合タンパク質の量を測定することによって、タンパク質量を測定することができる。検出を容易にするために、放射性試薬、蛍光性試薬、もしくは、他の検出可能な試薬で、抗体を標識することができる。検出方法には、酵素結合免疫測定法(ELISA)および免疫ブロット法が含まれるが、これらに限定されない。
本発明の方法で用いられる調節された遺伝子を、実施例中で説明する。差異のある発現をする遺伝子は、特定の原発巣のがんを有する患者では、異なる原発巣由来のがんを有する者と比べて、アップレギュレートされるか、またはダウンレギュレートされる。アップレギュレーション、および、ダウンレギュレーションとは、いくつかの基準と比較して、遺伝子発現量において(その測定に用いられたシステムにおけるノイズが寄与する以上に)検出可能な差異が見られることを意味する相対的な用語である。この場合、基準は分類ツリーに基づいて決定される。異常細胞における目的遺伝子はしたがって、同一の測定方法を用いた基準レベルと比較して、アップレギュレートされるか、もしくは、ダウンレギュレートされるかのどちらかである。本明細書の内容において、異常な(diseased)とは、制御されない細胞増殖とともに起こるような、身体的機能の適切な作動を中断する(すなわち、阻害する)身体の状態変化、もしくは、その適切な作動を阻害する可能性がある身体の状態変化をいう。ある人間の遺伝子型もしくは表現型のいくつかの観点が病気の存在と一致する場合に、その人間は、その病気であると診断される。しかしながら、診断もしくは予後を実施するという行為には、再発の可能性、治療の種類、および、治療観察を決定するといった、病気/状態についての課題の決定を含んでいてもよい。治療観察においては、遺伝子発現プロファイルが正常組織とより矛盾のないパターンに変化したかどうか、もしくは、変化しつつあるかどうかを決定するために、時間をかけて遺伝子発現を比較することによって、所与の一連の治療の効果について、臨床上の判断がなされる。
遺伝子は、グループ化することができる。このため、そのグループの遺伝子群について得られた情報が、診断、予後、もしくは、治療選択のような臨床上関連のある判断を行うためのしっかりした基準を提供する。これらの遺伝子群は、本発明のポートフォリオを作り上げる。大部分の診断マーカーと同様に、正しい医療上の判断を行うのに十分なほどの最も少ない数のマーカーを用いることが、しばしば望ましい。このことは、時間および資源の非生産的な使用を防止すると同時に、更なる分析の間の治療の遅延を防止する。
遺伝子発現ポートフォリオを確立する1つの方法は、株式ポートフォリオを確立するのに広く用いられている、平均分散アルゴリズムのような最適化アルゴリズムを使用することである。この方法は、米国特許出願公開第20030194734号に詳細に記載されている。本質的には、その方法は、収益の変動を最小化すると同時にその収益を使用するために、受け取る収益(例えば、生成されたシグナル)を最適化するであろう入力群(金融応用における株式、本明細書においては、強度によって評価されるような発現)の確立を要求する。多くの市販のソフトウェアプログラムが、このような作業を実行するために利用可能である。本明細書全体を通じて「Wagner Software」といわれる「Wagner Associates Mean-Variance Optimization Application」が、好ましい。このソフトウェアは、有効フロンティアを決定するために、「Wagner Associates Mean-Variance Optimization Library」由来の関数を用い、マーコウィッツの意味における最適ポートフォリオが好ましい。Markowitz(1952年)参照。この種のソフトウェアを用いるには、そのソフトウェアを意図された金融分析の目的で用いる場合に株式収益および危険率評価が用いられるように、マイクロアレイデータを入力として扱うことを可能にするために、そのマイクロアレイデータを変換することが必要である。
ポートフォリオを選択する過程はまた、ヒューリスティクスなルールの適用を含むことができる。好ましくは、このようなルールは、生物学、および、臨床上の結果を生むために用いられた技術への理解に基づいて公式化される。より好ましくは、それらは最適化法からの出力に適用される。例えば、ポートフォリオ選択における平均分散法は、がん患者において差異のある発現をする多くの遺伝子に対するマイクロアレイデータに適用することができる。この方法からの出力は、罹患組織におけるのと同様に、末梢血においても発現された、いくつかの遺伝子を含みうる最適化された遺伝子群であるであろう。もし試験方法において用いられたサンプルが末梢血から得られ、がんの例において差異がある発現をする特定の遺伝子がまた、末梢血においても差異がある発現をすることがあるならば、ヒューリスティクスなルールを適用することができる。そのヒューリスティクスなルールにおいて、ポートフォリオは、末梢血において差異がある発現をするものを除いた有効フロンティアから選択される。もちろん、そのルールは、例えば、データの事前選択の間にそのルールを適用することによって、有効フロンティア形成に先立って適用することができる。
必ずしも問題の生物学と関連がある必要がない他のヒューリスティクスなルールが適用されうる。例えば、所定の割合のポートフォリオのみが、特定の遺伝子もしくは遺伝子群によって示されうる、というルールを適用することができる。Wagner Softwareのような市販のソフトウェアは、容易にこれらのタイプのヒューリスティクスと適合する。このことは、例えば、確度および精度以外の要因(例えば、期待されたライセンス料)が1つ以上の遺伝子を含むことの望ましさに対して影響力がある場合、有用でありうる。
本発明の遺伝子発現プロファイルはまた、がんの診断、予後、もしくは、治療観察において有用な、他の非遺伝子的診断法とともに用いられることが可能である。例えば、いくつかの状況下では、前記の遺伝子発現に基づいた方法の診断力を、血清タンパク質マーカー[例えば、がん抗原27.29(「CA27.29」)]のようなよく用いられるマーカーからのデータと組み合わせることが有用である。このようなマーカーの範囲は、CA27.29のような分析物を含んで存在する。1つのこのような方法において、血液は治療される患者から定期的に採取され、それから前記の血清マーカーのうちの1つに対する酵素免疫測定を受ける。マーカーの濃度が、腫瘍の再発もしくは治療の失敗を示唆する場合、遺伝発現分析を受けることが可能なサンプル源を採取する。疑わしい腫瘤が存在する場合、細針吸引法(FNA)を採り、それから腫瘤から採取した細胞の遺伝子発現プロファイルを前記のように分析する。あるいは、組織サンプルは、以前に腫瘍を除去した組織に近い領域から採取されてもよい。このアプローチは、他の試験があいまいな結果を示すときに特に有用である。
本発明にしたがって作られたキットは、遺伝子発現プロファイルを決定するためにフォーマット化された解析を含む。これらは、バイオマーカーを解析する試薬および指示書、ならびに、媒体のような、解析を実施するのに必要な材料のうちすべて、もしくは、一部を含むことができる。
本発明に係る物品は、病気を治療し、診断し、予示し、判定するために有用な遺伝子発現プロファイルの説明を含む。これらのプロファイルの説明は、コンピュータが読み込み可能な媒体(磁気的、光学的、および、同様の媒体)のような、自動的に機械によって読み込み可能な媒体へ変換される。この物品はまた、このような媒体における遺伝子発現プロファイルを判定するための命令を含むことができる。例えば、この物品は、前記遺伝子に係るポートフォリオの遺伝子発現プロファイルを比較するためのコンピュータ命令を有するCD−ROMを含んでもよい。物品はまた、患者サンプル由来の遺伝子発現データと比較することができるように、電子的に記録された遺伝子発現プロファイルを有してもよい。あるいは、プロファイルを、別の表現フォーマットで記録することができる。図示された記録はそのようなフォーマットの1つである。前述のPartek, Inc.の「DISCOVERY」および「INFER」ソフトウェアに組み込まれたアルゴリズムのようなクラスタリングアルゴリズムは、このようなデータを視覚化することにおいて、最もよい支援になりうる。
本発明にしたがった別の種類の製品は、遺伝子発現プロファイルを明らかにするために用いられる媒体、もしくは、フォーマット化された解析である。これらは、例えば、相補配列もしくはプローブが、目的遺伝子を示す配列が結合したマトリックスに対して貼り付けられたマイクロアレイを含むことができ、それらの存在の読み取り可能な決定要因を生み出す。あるいは、本発明に係る物品は、がんを検出するための目的遺伝子の発現量を示すハイブリダイゼーション、増幅、および、シグナル生成を実施するための試薬キットへと作られることができる。
以下の実施例は、特許請求の範囲に記載された発明について説明するために提供されるものであるが、その発明を限定するものではない。本明細書に引用されたあらゆる参照文献は、参照により本明細書中に組み入れる。
〔実施例1〕
材料と方法
<すい臓がんマーカー遺伝子の発見>
すい臓腫瘍、正常すい臓組織、肺組織、結腸組織、乳房組織、および卵巣組織から、トリゾールを用いて、RNAを単離した。増幅され、標識されたRNAを生成するために、RNAを用い[Lipshutz他(1999年)参照]、その後、標識RNAをAffymetrix U133A array上にハイブリダイゼーションした。その後、データを2つの方法で分析した。
<組織サンプル>
1番目の方法では、データ群全体にわたり、少なくとも2つの存在コールを有する遺伝子のみを保有するように、このデータ群をふるいにかけた。このようなふるいにかけた結果、14,547個の遺伝子が残った。2,736個の遺伝子は、すい臓がんでは、正常すい臓に対して、0.05未満のp値で過剰発現していることがわかった。また、2,736個の遺伝子のうちの45個の遺伝子は、肺および結腸組織で見られた最大強度と比して、少なくとも2倍過剰発現していた。最終的に、6つのプローブ群が見出され、そのプローブ群は、肺組織、結腸組織、乳房組織、および、卵巣組織で観察された最大強度と比べて、少なくとも2倍過剰発現していた。
2番目の方法では、乳房組織、結腸組織、肺組織、および、卵巣組織において、わずか2つの存在コールしか有さない遺伝子のみを保有するように、このデータ群をふるいにかけた。このようなふるいにかけた結果、4,654個の遺伝子が残った。4,654個の遺伝子のうちの160個の遺伝子が、すい臓の(正常な、および、がん)組織において、少なくとも2つの存在コールを有することがわかった。最終的に、8つのプローブ群が選択され、そのプローブ群は、すい臓がん組織とすい臓正常組織との間で、最も差異のある発現を示した。
全体で260個のFFPE転移性組織および原発組織を、さまざまな業者から入手した。試験サンプルには、30個の乳がん転移、30個の結腸直腸がん転移、56個の肺がん転移、49個の卵巣がん転移、43個のすい臓がん転移、18個の前立腺原発腫瘍、および、2個の前立腺がん転移、ならびに、32個のその他の原発巣(6個の胃がん、6個の腎臓がん、3個の喉頭がん、2個の肝臓がん、1個の食道がん、1個の咽頭がん、1個の胆管がん、1個の胸膜がん、3個の膀胱がん、5個のメラノーマ、3個のリンパ腫)が含まれた。
<RNA抽出>
パラフィン組織切片からのRNA単離は、以下の修正を伴うHigh Pure RNA Paraffin Kit manual(Roche)に記載された方法、および、試薬に基づいた。パラフィン包埋組織サンプルを、包埋された転移の大きさにしたがって切断し(大きさが2〜5mmの場合9×10μm、6〜8mmの場合6×10μm、8〜10mm以上の場合3×10μm)、1.5mLエッペンドルフチューブ中のRNA分解酵素/DNA分解酵素の中に静置した。切片は、10〜20秒撹拌した後、室温で2〜5分間、1mLのキシレン中でインキュベーションすることで、脱パラフィン化した。その後、チューブを遠心分離し、上澄みを除去し、そして、脱パラフィン化の工程をくり返した。上澄みを除去した後、1mLのエタノールを加え、サンプルを1分間撹拌し遠心分離し、上澄みを除去した。この過程をもう一度くり返した。残存しているエタノールを除去し、ペレットを55℃のオーブンで5〜10分間乾燥させ、100μLの組織溶解バッファー、16μLの10%SDS、および、80μLのタンパク質分解酵素Kに再懸濁した。サンプルを、400回転/分に設定したサーモミキサー内で、55℃、2時間にわたり撹拌およびインキュベーションした。325μLの結合バッファー、および、325μLのエタノールを各々のサンプルに加え、そのサンプルをかき混ぜ、遠心分離し、そして、上澄みをフィルターカラムに加えた。フィルターカラムを収集チューブとともに、8000回転/分で1分間遠心分離し、流出物(flow through)を廃棄した。一連の洗浄を行った(500μLの洗浄バッファーI→500μLの洗浄バッファーII→300μLの洗浄バッファーII)。洗浄では、各々の溶液をカラムに加え、遠心分離し、そして、流出物を廃棄した。カラムをその後、最大速度で2分間遠心分離し、新しい1.5mLチューブに入れ、そして、90μLの溶出バッファーを加えた。室温で1分間のインキュベーション、および、その後の8000回転/分で1分間の遠心分離を行った後、RNAを得た。サンプルを、10μLのDNA分解酵素インキュベーションバッファー、2μLのDNA分解酵素Iを加えることによって、DNA分解酵素処理し、そして37℃、30分間、インキュベーションした。20μLの組織溶解バッファー、18μLの10%SDSおよび40μLのタンパク質分解酵素Kを加えた後に、DNA分解酵素を不活化した。再び、325μLの結合バッファー、および、325μLのエタノールを各々のサンプルに加え、そのサンプルをかき混ぜ、遠心分離し、そして、上澄みをフィルターカラムに加えた。一連の洗浄、および、RNAの溶出は、RNAを溶出するために50μLの溶出バッファーが用いられたことを除いては、前述のとおり行われた。カラムから持ち越されるガラス繊維による汚染を排除するために、RNAを最大速度で2分間遠心分離し、上澄みを新しい1.5mLエッペンドルフチューブに移した。分光光度計によって得られたOD260/280の示度により、サンプルを定量し、50ng/μLに希釈した。単離されたRNAを、使用するまで、RNA分解酵素の含まれない水中に−80℃で保管した。
<TaqMan(登録商標)プライマーおよびプローブ設計>
TaqMan(登録商標)CUP解析[肺がんマーカー:human surfactant, pulmonary-associated protein B(SP−B)、thyroid transcription factor 1(TTF1)、desmoglein 3(DSG3)、結腸直腸がんマーカー:cadherin 17(CHD17)、乳がんマーカー:mammaglobin(MG)、prostate-derived ets transcription factor(PDEF)、卵巣がんマーカー:Wilm's tumor 1(WT1)、すい臓がんマーカー:prostate stem cell antigen(PSCA)、coagulation factor V(F5)、前立腺マーカー:kallikrein 3(KLK3)]、および、ハウスキーピング解析[beta actin(β-actin)、hydroxymethylbilane synthase(PBGD)]を開発するために、適当なmRNA参照配列アクセッション番号を、Oligo 6.0とともに用いた。各解析のためのプライマー、および、加水分解プローブを、表2に列記する。エキソン−イントロンスプライシング部位周辺に解析を設計することで、ゲノムDNA増幅を除去した。加水分解プローブを、5’末端のヌクレオチドにおいてFAM(レポーター染料)で、3’末端のヌクレオチドにおいてBHQ1−TT(インターナルクエンチング染料)で標識した。
<定量リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応>
ABI Prism 7900HT sequence detection system(Applied Biosystems)の384ウェルプレートにおいて、遺伝子特異的RNAの定量を実行した。各サーモサイクラーの実行のために、キャリブレーターおよび標準曲線を増幅した。各マーカーためのキャリブレーターは、in vitro転写産物中の標的遺伝子から成り、それらはラットの腎臓由来のキャリアRNAに、1×10コピーで希釈したものであった。ハウスキーピングマーカーための標準曲線は、in vitro転写産物中の標的遺伝子から成り、それらはラットの腎臓由来のキャリアRNAに、1×10、1×10、1×10コピーで連続希釈したものであった。標的遺伝子を含まない対照も、環境汚染がないことを確かめるために、各解析の実行に含まれた。すべてのサンプルおよび対照について、繰り返し実行した。qRT−PCRは、10μLの反応物で、一般的な研究室で用いられる試薬により実行された。10μLの反応物には、RT−PCRバッファー(50nMビシン/KOH pH8.2、115nM KAc、8%グリセロール、2.5mM MgCl、3.5mM MnSO、各0.5mM dCTP、dATP、dGTP、および、dTTP)、添加物(2mM Tris−Cl pH8、0.2mMウシアルブミン、150mMトレハロース、0.002% Tween20)、酵素混合液[2U Tth(Roche)、0.4mg/μLAb TP6-25]、プライマーおよびプローブ混合液(0.2μMプローブ、0.5μMプライマー)が含まれた。その後のサイクリングパラメータは、95℃、1分間を1サイクル;55℃、2分間を1サイクル;温度上昇5%;70℃、2分間を1サイクル;95℃、15秒間、58℃、30秒間を40サイクルであった。PCR反応が完了した後、基準および閾値をABI 7900HT Prism softwareで設定し、計算したCt値をMicrosoft Excelに取り込んだ。
<1段階反応対2段階反応>
第一鎖合成を、1反応あたり、100ngのランダムヘキサマー、もしくは、遺伝子特異的プライマーのいずれかを用いて実行した。第1段階目では、11.5μLの混合液1(プライマー、および、1μgの全RNA)を65℃まで5分間加熱し、その後、氷上で冷却した。8.5μLの混合液2[1×バッファー、0.01mMDTT、各0.5mM dNTP(dCTP、dATP、dGTP、dTTPを混合したもの)、0.25U/μL RNasin(登録商標)、10U/μL Superscript III]を混合液1に添加し、50℃、60分間、インキュベーションした後、95℃、5分間、インキュベーションした。cDNAを、使用できる状態になるまで、−20℃で保管した。2段階反応の第2段階目のqRT−PCRを、以下のサイクリングパラメータで、前述のとおり実行した。そのサイクリングパラメータは、95℃、1分間を1サイクル;95℃、15秒間、58℃、30秒間を40サイクルである。1段階反応のためのqRT−PCRを、以前の段落に記載のとおり、正確に実行した。1段階および2段階反応をともに、100ngの鋳型(RNA/cDNA)に対して実行した。PCR反応が完了した後、基準および閾値をABI 7900HT Prism softwareで設定し、計算したCt値をMicrosoft Excelに取り込んだ。
<ヒートマップの生成>
各サンプルのΔCtを、各々のCUPマーカーのCt値の平均値をとり、平均のハウスキーピングマーカーのCt値の平均値を引くことにより計算した[ΔCt=Ct(CUPマーカー)−Ct(平均のハウスキーピングマーカー)]。各々の原発巣組織(肺、乳房、前立腺、結腸、卵巣、およびすい臓)マーカー群の最小のΔCtを、サンプルごとに決定した。全体の最小ΔCtを有する原発巣組織には得点1を与え、他のすべての原発巣組織には得点0を与える。データを病理学上の診断にしたがって分類した。Partek Proには修正された実現可能性データを投入し、強度プロットを生成した。
結果
<新規のすい臓原発巣腫瘍およびがん状況マーカーの発見>
まず、5つのすい臓マーカー候補が解析された。それらのマーカー候補は、prostate stem cell antigen(PSCA)、serine proteinase inhibitor, clade A member 1(SERPINA1)、cytokeratin 7(KRT7)、matrix metalloprotease 11(MMP11)、および、mucin 4(MUC4)[Varadhachary他(2004年);Fukushima他(2004年);Argani他(2001年);Jones他(2004年);Prasad他(2005年);および、Moniaux他(2004年)参照]であり、DNAマイクロアレイ、ならびに、13個のすい臓管腺がん、5個の正常すい臓組織、および、98個のサンプル(乳房腫瘍、結腸直腸腫瘍、肺腫瘍、および、卵巣腫瘍に由来する)に係るパネルを用いて解析された。PSCAのみが、適度な感度(13個中6個、すなわち、すい臓腫瘍のうち46%を検出した)を、高い特異度(98個のサンプル中91個、すなわち、93%が、すい臓が原発巣でないと正確に同定された)で示した(図4A)。これに対して、KRT7、SERPINA1、MMP11、および、MUC4は、それぞれ38%、31%、85%および31%の感度を、それぞれ66%、91%、82%および81%の特異度で示した。これらのデータは、27個のすい臓原発巣の転移、および、39個の非すい臓原発巣の転移で、MMP11を除くすべてのマーカーについて実行したqRT−PCRと十分一致した。MMP11は、qRT−PCRおよび転移に対して、より低い感度とより低い特異度を示した。結論として、急速冷凍した原発組織におけるマイクロアレイデータは、FFPE転移がすい臓原発巣であることをqRT−PCRによって同定することのできるマーカーの能力に対する良い指標として役立つ。しかし、更なるマーカーが最適な効果のために有用であるかもしれない。
すい臓管腺がんは、すべてのすい臓細胞(大部分が腺房状細胞および膵島細胞)のうちのほんのわずかな割合を含む管上皮細胞から発達するため、また、すい臓腺がん組織は隣接する正常組織のうち相当量を含むため[Prasad他(2005年);および、Ishikawa他(2005年)]、器官群からこの器官を識別することもできるすい臓がんマーカー(すなわち、がんにおいてアップレギュレートされたマーカー)を同定することは難しいことであった。CUPパネルにおける使用のために、このような識別は必要なことである。第1のクエリ方法(材料と方法参照)によって、6つのプローブ群が得られた。そのプローブ群は、coagulation factor V(F5)、hypothetical protein FLJ22041 similar to FK506 binding proteins(FKBP10)、β6 integrin(ITGB6)、transglutaminase 2(TGM2)、heterogeneous nuclear ribonucleoprotein A0(HNRPA0)、および、BAX delta(BAX)であった。第2のクエリ方法(材料と方法参照)によって、8つのプローブ群が得られた。そのプローブ群は、F5、TGM2、paired-like homeodomain transcription factor 1(PITX1)、trio isoform mRNA(TRIO)、mRNA for p73H(p73)、an unknown protein for MGC:10264(SCD)、および、claudin 18についての2つのプローブ群であった。F5、および、TGM2はクエリ結果の両方に存在し、この2つのうち、F5が最も有望なもののように思われた(図4B参照)。
<FFPE組織を用いたサンプル準備およびqRT−PCRの最適化>
次に、マーカーパネル性能を検査する前に、固定組織を用いて、RNA単離法、および、qRT−PCR法を最適化した。まず、タンパク質分解酵素Kのインキュベーション時間を16時間から3時間に短縮した効果を分析した。収率にはまったく影響はなかった。しかし、いくつかのサンプルで、より短い時間のタンパク質分解酵素K工程を用いたときに、より長いRNA断片を示すものがあった(図5)。例えば、RNAを1年前の組織ブロック(C22)から単離したとき、電気泳動図にはまったくちがいは見られなかった。しかし、RNAを5年前の組織ブロック(C23)から単離したときには、より短い時間のタンパク質分解酵素K消化を用いた場合に、肩のこぶ(hump in the shoulder)によって解析されると、より高分子量のRNAの区画がより多く観察された。この傾向は一般的に、FFPE転移の原発巣器官にかかわらず、他のサンプルを処理する際にも保持された。結論として、タンパク質分解酵素K消化時間の短縮は、RNA収量を犠牲にしないし、そして、より長く、あまり分解されていないRNAを単離する助けになるかもしれない。
次に、3つの異なる逆転写法を比較した。その3つの方法とは、qPCRが後に続く、ランダムヘキサマーによる逆転写(2段階);qPCRが後に続く、遺伝子特異的プライマーによる逆転写(2段階);遺伝子特異的プライマーを用いた1段階のqRT−PCR;である。RNAは11個の転移から単離され、この3つの方法すべてにわたって、β-actin、human surfactant protein B(HUMSPB)、および、thyroid transcription factor(TTF)(図6)に対するCt値を比較した。すべての比較において、統計的に有意な差(p<0.001)があった。3つの遺伝子すべてについて、qPCRが後に続くランダムヘキサマーによる逆転写(2段階反応)が最も高いCt値を示し、一方、qPCRが後に続く遺伝子特異的プライマーによる逆転写(2段階反応)は、対応する1段階反応よりも、わずかに(しかし統計的には有意な)低いCt値を示した。しかし、遺伝子特異的プライマーを用いた2段階のRT−PCRは、より長い逆転写段階を有した。各サンプルについて、HUMSPBおよびTTFのCt値を、対応するβ-actinの値に対して標準化した場合、3つの方法すべてにわたって、標準化されたCt値には、まったくちがいが見られなかった。結論として、RT−PCR反応条件の最適化により、より低いCt値を生じることができ、これは、より古いパラフィンブロックを分析する手助けになるかもしれない[Cronin他(2004年)参照]。そして、遺伝子特異的プライマーを用いた、1段階のRT−PCR反応は、対応する2段階反応において生ずるCt値に匹敵するCt値を生ずることができる。
<CUP qRT−PCR解析の診断能>
次に、12個のqRT−PCR反応(10個のマーカー、および、2個のハウスキーピング遺伝子)を、239個のFFPE転移に対して実行した。その解析に用いられたマーカーを表2に示す。肺がんマーカーは、human surfactant pulmonary-associated protein B(HUMPSPB)、thyroid transcription factor 1(TTF1)、および、desmoglein 3(DSG3)であった。結腸直腸がんマーカーは、cadherin 17(CDH17)であった。乳がんマーカーは、mammaglobin(MG)、およびprostate-derived Ets transcription factor(PDEF)であった。卵巣がんマーカーは、Wilm's tumor 1(WT1)であった。すい臓がんマーカーは、prostate stem cell antigen(PSCA)、および、coagulation factor V(F5)であり、前立腺マーカーは、kallikrein 3(KLK3)であった。遺伝子の説明については、表28参照のこと。
Figure 2010517536
Figure 2010517536
ヒートマップにおける標準化されたCt値の分析は、乳がんマーカー、および、前立腺がんマーカーの高い特異度、結腸がんマーカー、肺がんマーカー、および、卵巣がんマーカーの中程度の特異度、ならびに、すい臓がんマーカーの幾分より低い特異度を明らかにした。標準化されたqRT−PCRデータをコンピュータによる修正と組み合わせることにより、マーカーパネルの性能が改良される。線形判別分析と組み合わされた標準化されたqRT−PCRデータから結果が得られ、qRT−PCR解析の確度が決定された。
議論
本実施例において、転移に用いるための候補マーカーを同定するために、マイクロアレイに基づいた発現プロファイル解析を原発腫瘍に対して用いた。転移に対する原発巣腫瘍マーカーを発見するために原発腫瘍を用いることができるという事実は、最近のいくつかの発見と一致する。例えば、Weigeltと同僚は、原発性乳房腫瘍の遺伝子発現プロファイルは、遠隔転移においても維持されるということを示した。Weigelt他(2003年)参照。Italianoと共同研究者は、IHCによって判定されるEGFRの状態が、80個の原発性結腸直腸がん腫瘍、および、80個の関係する転移においても同様であることを発見した。Italiano他(2005年)参照。その80個のうち5個のみが、EGFRの状態において不一致を示した。Italiano他(2005年)参照。Backusと同僚は、乳房組織およびその他の組織のゲノム規模遺伝子発現解析を用いて、乳がん転移を検出するための推測上のマーカーを同定し、そして、mammaglobinおよびCK19が、90%の感度と94%の特異度で、乳房センチネルリンパ節における臨床上有効な転移を検出したことを明らかにした。Backus他(2005年)参照。
マイクロアレイに基づいた原発組織の研究は、既知のマーカーの特異度および感度を確認した。結果として、F5は例外であるが、用いられたマーカーすべてが、本発明で調べられた組織に対して高い特異度を有する。Argani他(2001年);Backus他(2005年);Cunha他(2005年);Borgono他(2004年);McCarthy他(2003年);Hwang他(2004年);Fleming他(2000年);Nakamura他(2002年);および、Khoor他(1997年)参照。最近の研究は、IHCを用いると、PSCAは前立腺がん転移において過剰発現されることを明らかにした。Lam他(2005年)参照。Dennis他(2002年)はまた、PSCAがすい臓がんおよび前立腺がんに対する原発巣腫瘍マーカーとして用いられることができることを明らかにした。本明細書において示すように、PSCAの強い発現は、いくつかの前立腺組織においても、RNAレベルで見出されるが、その解析にPSAを含むことによって、前立腺がんとすい臓がんとを直ちに分離することができる。本研究で新規に発見されたことは、すい臓原発巣組織の(PSCAに対して)補足的なマーカーとして、F5を用いるということである。原発組織のマイクロアレイデータ群、および、FFPE転移を用いたqRT−PCRデータ群両方において、F5はPSCAを補足することがわかった(図4および表3)。
Figure 2010517536
従来の研究者たちは、IHC、もしくは、マイクロアレイを用いたCUP解析を生み出してきた。Su他(2001年);Ramaswamy他(2001年);および、Bloom他(2004年)参照。さらに最近では、SAGE法が、小規模のqRT−PCRマーカーパネルと組み合わされてきた。Dennis(2002年);および、Buckhaults他(2003年)参照。本研究は、マイクロアレイに基づいた発現プロファイル解析を、qRT−PCR解析の小規模のパネルと組み合わせた最初のものである。原発組織に対するマイクロアレイ研究は、これまでにSAGE法によって同定されたのと同一の原発巣組織マーカーのうちの、すべてではないが、一部を同定した。いくつかの研究は、SAGE法に基づいたプロファイル解析データとDNAマイクロアレイに基づいたプロファイル解析データとが適度に一致することを示してきたし、そして、その相互関係がより高い発現量を伴う遺伝子に対して向上することを示してきた。van Ruissen他(2005年);および、Kim(2003年)参照。例えば、Dennisと同僚は、PSA、MG、PSCA、および、HUMSPBを同定し、一方Buckhaultsと共同研究者[Dennis他(2002年)参照]はPDEFを同定した。qRT−PCRを用いたCUP解析の実施は、それが強固な技術であるために、また、IHC以上の性能優位性を有するかもしれないために、好まれている。Al-Mulla他(2005年);および、Haas他(2005年)参照。本明細書に示したように、qRT−PCRプロトコルは、1段階反応で遺伝子特異的プライマーを用いることにより改良された。これは、FFPE組織での1段階qRT−PCR反応に、遺伝子特異的プライマーを用いた最初の例である。他の研究者は、2段階qRT−PCR(qPCRが後に続く1反応でのcDNA合成)を行ったか、または、ランダムヘキサマーもしくは先端を切った遺伝子特異的プライマーを用いたかのいずれかである。Abrahamsen他(2003年);Specht他(2001年);Godfrey他(2000年);Cronin他(2004年);および、Mikhitarian他(2004年)参照。
〔実施例2〕
CUP FFPE全RNA単離プロトコル
(Highpure kit カタログ番号3270289)
目的:
FFPE組織からの全RNAの単離
手順:
<希釈標準溶液の準備>
(1)キットのタンパク質分解酵素K(PK)
凍結乾燥物を4.5mLの溶出バッファーに溶解する。等分し、−20℃で保管すれば、12ヶ月間安定である。
PK−4×250mg(カタログ番号3115852)
凍結乾燥物を12.5mLの溶出バッファー[1×TEバッファー(pH7.4〜7)]に溶解する。等分し、−20℃で保管する。
(2)洗浄バッファーI
洗浄バッファーIに、60mLの無水エタノールを加え、室温で保管する。
(3)洗浄バッファーII
洗浄バッファーIIに200mLの無水エタノールを加え、室温で保管する。
(4)DNA分解酵素I
凍結乾燥物を400μLの溶出バッファーに溶解する。等分して、−20℃で保管すれば、12ヶ月間安定である。
<パラフィンブロックを12個のブロックに切り出す(12ブロック×2チューブ=24チューブ) 〜30〜45分間>
ブロックから切り取られた切片は、RNA抽出のために即座に処理されなければならない。
(1)ミクロトーム上の清潔で鋭利なかみそり刃を用い、切り出された組織ブロック(3〜4×5〜10mmのサイズ)から6×10ミクロン厚さの切片を切り出す。
注意:新たなブロック‐組織切片が得られるまでワックス切片を廃棄する。使用されたブロック‐最初の3つの組織切片を廃棄する。
(2)切られた組織をすぐさま1.5mLのマイクロ遠心機のチューブに入れ、水分を最小限にするためにかたくふたを閉める。
(3)腫瘍の大きさに基づいて推奨される切片数を表4に示す。
Figure 2010517536
<脱パラフィン化 〜30〜45分間>
(1)1.0mLのキシレンを各サンプルに加え、10〜20秒間激しく撹拌し、室温で2〜5分インキュベーションする。最大速度で2分間遠心分離する。上澄みを注意深く取り除く。
注意:もし組織が浮かんでくるようであれば、さらに2分間遠心分離する。
(2)工程(1)をくり返す。
(3)最大速度で2分間遠心分離する。上澄みを取り除く。
(4)1mLの無水エタノールを加え、1分間激しく撹拌する。最大速度で2分間遠心分離する。上澄みを取り除く。
(5)工程(4)をくり返す。
(6)チューブを一時的にペーパータオルの上にブロットし、残りのエタノールを除去する。
(7)組織ペレットを55℃のオーブンで5〜10分間乾燥させる。
注意:エタノールは完全に取り除き、ペレットを十分に乾燥させることが重要である。残留したエタノールはPKによる消化を阻害する可能性がある。
注意:もしPKが−20℃中にあるならば、室温で20〜30分間あたためる。
<RNA抽出 〜2.5〜3時間>
(1)1つの組織ペレットに、100μLの組織溶解バッファー、16μLの10%SDS、および、80μLのタンパク質分解酵素K希釈標準溶液を加え、適当な間隔で簡単に撹拌し、そして、400回転/分で振り混ぜながら55℃で2時間インキュベーションする。
(2)325μLの結合バッファーと325μLの無水エタノールを加える。ピペッティングで上下させることによりやさしく混和する。
(3)溶解物を最大速度で2分間遠心分離する。
(4)フィルターチューブと収集チューブ(12チューブ分)を組み合わせ、溶解物の上澄みをフィルターにピペットで入れる。
(5)8000回転/分で30秒間遠心分離し、流出物を廃棄する。
注意:もしRNAをさらに2つの組織ペレット準備物から集める必要がある場合、工程(4)〜(5)をくり返すことができる。
(6)8000回転/分で30秒間の遠心分離を繰り返し、フィルターを乾燥させる。
(7)500μLの洗浄バッファーI希釈標準溶液をカラムに加え、8000回転/分で15〜30秒間遠心分離し、流出物は廃棄する。
(8)500μLの洗浄バッファーII希釈標準溶液を加える。8000回転/分で15〜30秒間遠心分離し、流出物は廃棄する。
(9)300μLの洗浄バッファーII希釈標準溶液を加え、8000回転/分で15〜30秒間遠心分離し、流出物は廃棄する。
(10)High Pure filterを最大速度で2分間遠心分離する。
(11)High Pure filterを新しい1.5mLチューブの中に入れ、90μLの溶出バッファーを加える。室温で1〜2分インキュベーションする。8000回転/分で1分間遠心分離する。
<DNA分解酵素I処理 〜1.5時間>
(12)溶出物に10μLの10×DNA分解酵素インキュベーションバッファー、および、1.0μLのDNA分解酵素I希釈標準溶液を加え、混和する。37℃で45分間(2.0μLのDNA分解酵素Iに対しては、30分間)インキュベーションする。
(13)20μLの組織溶解バッファー、18μLの10%SDS、および、40μLのタンパク質分解酵素K希釈標準溶液を加える。軽く撹拌する。55℃で30分間(30〜60分間)インキュベーションする。
(14)325μLの結合バッファー、および、325μLの無水エタノールを加える。混和し、収集チューブと組み合わせた新しいHigh Pure filter tubeにピペットで入れる(12チューブ分)。
(15)8000回転/分で30秒間遠心分離し、流出物を廃棄する。
(16)8000回転/分で30秒間の遠心分離を繰り返し、フィルターを乾燥させる。
(17)カラムに500μLの洗浄バッファーI希釈標準溶液を加える。8000回転/分で15秒間遠心分離し、流出物を廃棄する。
(18)500μLの洗浄バッファーII希釈標準溶液を加える。8000回転/分で15秒間遠心分離し、流出物を廃棄する。
(19)300μLの洗浄バッファーII希釈標準溶液を加える。8000回転/分で15秒間遠心分離し、流出物を廃棄する。
(20)High Pure filterを最大速度で2分間遠心分離する。
(21)High Pure filterチューブを新しい1.5mLチューブ中に入れる。50μLの溶出バッファーを加え;室温で1〜2分間インキュベーションする。8000回転/分で1分間遠心分離し、溶出されたRNAを収集する。
(22)溶出物を最大速度で2分間遠心分離し、底にあるガラス繊維をかき乱すことなしに、上澄みを新しいチューブに移す。
(23)OD260/280の示度を採り、50ng/μLに希釈する。−80℃で保管する。
<CUP ASR分析プロトコル(ABI7900)>
目的:CUPサンプルの原発巣組織を決定するためにqRT−PCRを用いる。
対照設定:
(1)陽性対照(表5、および、図7のプレート設定におけるプレートCを参照。)
Figure 2010517536
ストリップチューブ当たり10μLの分割量(2プレート分);使用できる状態になるまで混合液を−80℃で静置する。
(2)標準曲線(表6、および、図7のプレート設定におけるプレートCを参照。)
工程1:標準曲線を、表6に示すように正確に設定した。
Figure 2010517536
ストリップチューブ当たり10μLに分割し(2プレート分);使用できる状態になるまで混合液を−80℃で静置する。
酵素混合液:
(1)マスター混合液:酵素(Tth)/抗体(TP6-25)。表7参照のこと。
Figure 2010517536
チューブ当たり500μLに分割し、−20℃で凍結する。
CUPマスター混合液:
(1)2.5×CUPマスター混合液(表8〜11):
Figure 2010517536
15分超の間、試薬を十分混和する。
Figure 2010517536
15分超の間、試薬を十分混和し;滅菌容器の中で上記の混合液を組み合わせ、表10にある以下のものを加える。
Figure 2010517536
15分超の間、試薬を十分混和し;チューブ当たり1.8mLに分割し、−20℃で凍結する。
Figure 2010517536
プライマーおよびプローブ混合液:
チューブ当たり250μLに分割し、−20℃で凍結させる。
反応混合液:
(1)CUPマスター混合液(CMM):(表12〜14、および、図7のプレート設定におけるプレートAを参照。)
Figure 2010517536
好ましくは、プレート当たりの各実行数は、356反応のみである。すなわち、12個のマーカーによる12個のサンプル(各々2回で288反応)+2回の10個の標準曲線対照(20反応)+各マーカーの2個の陽性対照および2個の陰性対照(4×12=48反応)である。
最大で4.3μLのサンプルになるように、サンプル容量の水を調整して、よく混和する。
Figure 2010517536
(2)ToOマーカー:よく混和する。
Figure 2010517536
(3)β-actinおよびPBGDマーカー:よく混和する。
サンプル設定:
Figure 2010517536
(1)CUPサンプル:96ウェルプレートに12サンプル:A1〜A12(表16、および、図7のプレート設定におけるプレートBを参照。);50ng/μLを50μLに分割する(2μL/rxn)。
プレートへの充填:
(1)384ウェルプレート設定:(図7のプレート設定におけるプレートDを参照。)
2μLのサンプルおよび8μLのCMMをプレートに充填する(サンプル=50ng/μL)。
4μLのサンプルおよび6μLのCMMをプレートに充填する(サンプル=25ng/μL)。
プレートに封をして、ラベルをはる。2000回転/分で1分間遠心分離する。
ABI 7900 HT設定:ABI 7900の中に置く。プログラム「CUP384」を選び、スタートボタンを押す。
Figure 2010517536
データを分析し、Ct値を抽出し、分類ツリーに挿入する。
〔実施例3〕
分類ツリー
図8に分類ツリーを示す。
〔実施例5〕
CUP解析の限界
図9は、CUP解析の限界を決定するために、実施例1〜3に記載された方法を用いて得られた結果を示している。解析性能は、RNA濃度の範囲にわたって試験され、CUP解析は100〜12.5ngのRNAの範囲で効果的であることがわかった。
〔実施例6〕
qRT−PCR解析
材料と方法
<マイクロアレイ解析のための凍結組織サンプル>
遺伝子発現マイクロアレイプロファイル解析のために、全体で700個のヒト凍結原発組織を用いた。さまざまな学術機関[Washington University(米国ミズーリ州セントルイス)、Erasmus Medical Center(オランダ国ロッテルダム)を含む]および、民間の組織バンク会社[Genomics Collaborative, Inc(米国マサチューセッツ州ケンブリッジ)、Asterand(米国ミシガン州デトロイト)、Oncomatrix(米国カリフォルニア州ラ・ホーヤ)、Clinomics Biosciences(米国マサチューセッツ州ピッツフィールド)を含む]から、サンプルを入手した。各々の標本に対して、患者の人口学上の情報、臨床上の情報、および、病理学上の情報も同様に収集した。診断を確認するために、ならびに、サンプルの保存状態および腫瘍の内容を推定するために、各々のサンプルの組織病理学的特徴を再検査した。
<RNA抽出およびAffymetrix Gene Chipハイブリダイゼーション>
70%を超える腫瘍細胞、良性サンプル、および、正常サンプルを有する凍結がんサンプルを細断し、トリゾール試薬(Invitrogen、米国カリフォルニア州カールズバッド)中で、機械的なホモジェナイザー(UltraTurrex T8、ドイツ国)によって均質化した。凍結組織からRNAを単離するための標準的なトリゾールプロトコルに従って、トリゾール試薬中で組織を均質化した(Invitrogen、米国カリフォルニア州カールズバッド)。遠心分離後、上液相を収集し、−20℃でイソプロピルアルコールによって全RNAを沈降させた。RNAペレットを75%エタノールで洗浄し、水中に溶解して、使用するまで−80℃で保管した。
RNAの品質を、Agilent 2100 Bioanalyzer RNA 6000 Nano Assay(Agilent Technologies、米国カリフォルニア州パロアルト)によって検査した。標識されたcRNAを準備し、全体で22,000個のプローブ群を含む高密度オリゴヌクレオチドアレイHu133A Gene Chip(Affymetrix、米国カリフォルニア州サンタクララ)により、メーカー標準プロトコルにしたがって、ハイブリダイゼーションさせた。Affymetrixプロトコルおよびスキャナーを用いて、アレイをスキャンした。その後の解析のため、各プローブ群は、別々の遺伝子であると考えられた。Affymetrix Gene Chip analysis software MAS 5.0を用いて、各遺伝子の発現量を計算した。すべてのチップは、以下の3つの品質管理基準を満たしていた。すなわち、アレイに対する「存在」コールの割合が35%を超えており;広範囲の標的強度を600としたときにスケール係数は12未満であり;平均のバックグラウンドレベルは150未満であった。
<マーカー候補の選択>
肺組織、結腸組織、乳房組織、卵巣組織、および、前立腺組織に対する原発巣組織(ToO)マーカー候補を選択するために、全体で682個の、乳房、結腸、肺、卵巣、前立腺由来の正常組織、良性組織、および、がん性組織に及ぶRNAサンプルにおいて、プローブ群の発現量を測定した。組織特異的マーカー候補を、統計的クエリの数に基づいて選択した。
すい臓がんマーカー候補を生み出すために、13個の原発性すい臓管腺がん、5個の正常すい臓組織、ならびに、98個の肺がん標本、結腸がん標本、乳がん標本、および、卵巣がん標本における遺伝子発現プロファイルを用い、すい臓腺がんマーカーが選択された。2つのクエリを実行した。第1のクエリでは、すい臓サンプルにおいて、少なくとも2つの「存在」コールを有する14,547個の遺伝子を含むデータ群を作り上げた。すい臓がんにおいて、正常組織と比較して過剰発現していることがT検定(p<0.05)によって特定された、全体で2736遺伝子を同定した。11パーセンタイルのすい臓がんにおいて、最小の発現が、結腸がん、および、肺がんにおける最大値よりも、少なくとも2倍高い遺伝子を選択し、45個のプローブ群を作った。最終工程として、結腸がん、肺がん、乳がん、および、卵巣がんにおける最大発現よりも、少なくとも2倍高い最大発現をする6つの遺伝子が選ばれた。第2のクエリでは、すべての乳房標本、結腸標本、肺標本、および、卵巣標本において、多くとも2つの「存在」コールを有する4,654個のプローブ群のデータ群が作り出された。すい臓正常サンプル、および、すい臓がんサンプルにおいて、少なくとも2つの「存在」コールを有する、全体で160個の遺伝子が選択された。160個の遺伝子のうち10個の遺伝子が、すい臓がん組織と正常組織との間での発現量を比較した後に選択された。2つのすい臓に対するクエリ両方の結果を結合した。
遺伝子発現プロファイル解析に加えて、いくつかのマーカーを文献から選択した。各々の組織の種類に対するToOマーカー候補の簡単な一覧を作成するために、すべてのクエリの結果を組み合わせた。各マーカーの感度および特異度を推定した。マーカーの重複およびその相補性に基づいたRT−PCR試験のために、組織をその原発巣によって識別する最も高い能力を示したマーカーを指定した。
<原発巣のわかっているFFPE転移性がん、およびCUP組織>
さまざまな業者[Proteogenex(米国カリフォルニア州ロサンゼルス)、Genomic Collaborative, Inc.(米国マサチューセッツ州ケンブリッジ)、Asterand(米国ミシガン州デトロイト)、Ardais(米国マサチューセッツ州レキシントン)、および、Oncomatrix(米国カリフォルニア州ラ・ホーヤ)を含む]から、全体で386個の既知の原発巣のFFPE転移性がん(ステージIII〜IV)、および、24個のFFPE原発性前立腺腺がんを入手した。48個の既知の原発腫瘍の転移性がん、および、CUP組織の独立した群については、Albany Medical College(米国ニューヨーク州オールバニー)から手に入れた。各々の標本に対して、患者の人口学上の情報、臨床上の情報、および病理学上の情報も収集した。診断を確認するために、ならびに、サンプルの保存状態および腫瘍の内容を推定するために、各々のサンプルの組織病理学的特徴を再検査した。転移サンプルについて、患者の病歴、および、転移性がんを対応する原発腫瘍と比較することによる組織学的な評価に基づいて、転移性がんおよび原発巣組織の診断を明確に確立した。
<FFPEサンプルからのRNA単離>
以下の修正を伴うHigh Pure RNA Paraffin Kit manual(Roche)に記載されたとおり、パラフィン組織切片からRNA単離した。パラフィン包埋組織サンプルは、包埋された転移の大きさにしたがって切断された(大きさが2〜5mmの場合9×10μm、6〜8mmの場合6×10μm、8〜10mm以上の場合3×10μm)。キットマニュアルに記載のとおり、切片を脱パラフィン化し、組織ペレットを55℃のオーブンで5〜10分間乾燥させ、100μLの組織溶解バッファー、16μLの10%SDS、および、80μLのタンパク質分解酵素K中に再懸濁した。55℃、400回転/分、2時間に設定したサーモミキサー内で、サンプルを撹拌およびインキュベーションした。その後のサンプル処理を、High Pure RNA Paraffin Kit manualにしたがって実行した。分光光度計によって得られたOD260/280示度により、サンプルを定量し、50ng/μLに希釈した。単離されたRNAを、使用するまでRNA分解酵素の含まれない水中に−80℃で保管した。
<マーカー候補のプレスクリーニングのためのqRT−PCR>
業者(Invitrogen、米国カリフォルニア州カールズバッド)の取扱説明書にしたがって、各サンプル由来の1μgの全RNAを、Superscript II逆転写酵素を用いて、ランダムヘキサマーで逆転写した。試験される遺伝子マーカー候補および対照遺伝子ACTBのための、プライマーおよびMGB−プローブは、Primer Express software(Applied Biosystems、米国カリフォルニア州フォスターシティ)を用いて設計し、ABI Assay-on-Demand(Applied Biosystems、米国カリフォルニア州フォスターシティ)も用いた。社内で設計されたプライマー、および、プローブはいずれも、90%を超える最適な増幅効率で試験された。RT−PCR増幅は、20mLの反応混合液[200ngの鋳型cDNA、2×TaqMan(登録商標)universal PCR master mix(10mL)(Applied Biosystems、米国カリフォルニア州フォスターシティ)、500nMフォワードプライマー、および、リバースプライマー、ならびに、250nMプローブを含む]中で実行された。ABI PRISM 7900HT Sequence Detection System(Applied Biosystems、米国カリフォルニア州フォスターシティ)上で、反応を行った。サイクリング条件は、50℃、2分間のAmpErase UNGの活性化;95℃、10分のポリメラーゼの活性化;ならびに95℃、15秒間、および、アニーリング温度(60℃)、60秒間を50サイクルである。各々の解析において、「鋳型を含まない」対照が、鋳型cDNAとともに、目的の遺伝子と対照遺伝子両方に対して、2つずつ含まれた。各標的遺伝子の相対的な発現は、標的遺伝子のCt値から対照遺伝子(ACTB)のCt値を差し引いた値に等しいΔCtとして表された。
<最適化された1段階qRT−PCR>
TaqMan(登録商標)CUP解析[肺がんマーカー:human surfactant, pulmonary-associated protein B(SP−B)、thyroid transcription factor 1(TTF1)、desmoglein 3(DSG3)、結腸直腸がんマーカー:cadherin 17(CHD17)、乳がんマーカー:mammaglobin(MG)、prostate-derived ets transcription factor(PDEF)、卵巣がんマーカー:Wilm's tumor 1(WT1)、すい臓がんマーカー:prostate stem cell antigen(PSCA)、coagulation factor V(F5)、前立腺マーカー:kallikrein 3(KLK3)]、および、ハウスキーピング解析[beta actin(β-Actin)、hydroxymethylbilane synthase(PBGD)]を開発するために、適当なmRNA参照配列アクセッション番号を、Oligo 6.0とともに用いた。最適化された1段階qRT−PCR解析のための、遺伝子特異的プライマー、および、加水分解酵素プローブを、表2(配列番号11〜58)に列記する。エキソン−イントロンスプライシング部位周辺に解析を設計することで、ゲノムDNA増幅を除外した。加水分解プローブを、5’末端のヌクレオチドにおいてFAM(レポーター染料)で、3’末端のヌクレオチドにおいてBHQ1−TT(インターナルクエンチング染料)で標識した。
ABI Prism 7900HT sequence detection system(Applied Biosystems)の384ウェルプレートにおいて、遺伝子特異的RNAの定量を実行した。各サーモサイクラーの実行のために、キャリブレーターおよび標準曲線を増幅した。各マーカーためのキャリブレーターは、in vitro転写産物中の標的遺伝子から成り、それらはラットの腎臓由来のキャリアRNAに、1×10コピーで希釈したものであった。ハウスキーピングマーカーための標準曲線は、in vitro転写産物中の標的遺伝子から成り、それらはラットの腎臓由来のキャリアRNAに、1×10、1×10、1×10コピーで連続希釈したものであった。標的遺伝子を含まない対照も、環境汚染がないことを確かめるために、各解析の実行に含まれた。すべてのサンプルおよび対照について、繰り返し実行した。qRT−PCRは、10μLの反応物中で、一般的な研究室で用いられる試薬により実行された。その10μLの反応物には、RT−PCRバッファー(50nMビシン/KOH pH8.2、115nM KAc、8%グリセロール、2.5mM MgCl、3.5mM MnSO、各0.5mMのdCTP、dATP、dGTP、dTTP)、添加物(2mM Tris−Cl pH8、0.2mMウシアルブミン、150mMトレハロース、0.002% Tween20)、酵素混合液[2U Tth(Roche)、0.4mg/μL Ab TP6-25]、プライマーおよびプローブ混合液(0.2μMプローブ、0.5μMプライマー)を含んだ。その後のサイクリングパラメータは、95℃、1分間を1サイクル;55℃、2分間を1サイクル;温度上昇5%;70℃、2分間を1サイクル;95℃、15秒間、58℃、30秒間を40サイクル;であった。PCR反応が完了した後、基準および閾値をABI 7900HT Prism softwareで設定し、計算したCt値をMicrosoft Excelに取り込んだ。
<1段階反応対2段階反応>
2段階反応を1段階反応のRT−PCRと比較するために、2段階反応の第一鎖合成は、1反応あたり、100ngのランダムヘキサマー、もしくは、遺伝子特異的プライマーのいずれかを用いて実行した。第1段階目では、11.5μLの混合液1(プライマー、および、1μgの全RNA)を65℃まで5分間加熱し、その後、氷上で冷却した。8.5μLの混合液2[1×バッファー、0.01mM DTT、各0.5mM dNTP、0.25U/μL RNasin(登録商標)、10U/μL Superscript III]を混合液1に添加し、50℃で、60分間インキュベーションした後、95℃で、5分間インキュベーションした。cDNAを、使用できる状態になるまで、−20℃で保管した。2段階反応の第2段階目のqRT−PCRを、以下のサイクリングパラメータを用いて、前述のとおり実行した:95℃、1分間を1サイクル;95℃、15秒間、58℃、30秒間を40サイクル。1段階反応のためのqRT−PCRを、以前の段落に記載のとおり、正確に実行した。1段階および2段階反応をともに、100ngの鋳型(RNA/cDNA)に対して実行した。PCR反応が完了した後、基準および閾値をABI 7900HT Prism softwareで設定し、計算したCt値をMicrosoft Excelに取り込んだ。
結果
本発明の最終目的は、転移性がん原発巣組織を予測するためのqRT−PCR解析を開発することであった。実験的な作業は2つの主要な部分から成った。1番目の部分には、組織特異的なマーカー候補の指定、FFPE転移性がん組織上でのそれら候補の確認、および、解析のための10個のマーカーの選択が含まれた(図10A)。2番目の部分には、qRT−PCR解析の最適化の後に、FFPE転移性がんの他の群に対する解析の実行、分類ツリーの構築、および、独立したサンプル群に対する確認が含まれた(図10B)。
<サンプルの特徴>
遺伝子発現プロファイル解析、および、組織の種類特異的な遺伝子の同定に、全体で700個の凍結原発組織サンプル由来のRNAを用いた。サンプルには、545個の原発がん(29個の肺がん、13個のすい臓がん、315個の乳がん、128個の結腸直腸がん、38個の前立腺がん、22個の卵巣がん)、37個の良性病変(1個の肺病変、4個の結腸直腸病変、6個の乳房病変、26個の前立腺病変)、および、118個の正常組織(36個の肺組織、5個のすい臓組織、36個の結腸直腸組織、14個の乳房組織、3個の前立腺組織、24個の卵巣組織)が含まれた。
本研究において、全体で375個の既知の原発巣の転移性がん(ステージIII〜IV)、および、26個の前立腺原発性腺がんのサンプルを用いた。転移性がんは、肺がん、すい臓がん、結腸直腸がん、卵巣がん、前立腺がんから生じ、同様に、他のがんからも生じた。「その他」のサンプルカテゴリーは、肺、すい臓、結腸、乳房、卵巣および前立腺以外の組織由来の転移から成った。患者の特徴は表17にまとめられている。
Figure 2010517536
サンプルを2つの群に分けた。それらは、マーカー候補の組織特異的な差異のある発現を確認するために用いられた確認群(205個の標本)、および、最適化された1段階qRT−PCR手法を試験し、分類ツリーを訓練するために用いられた訓練群(260個の標本)である。205個のサンプルからなる1番目の群には、25個の肺がん、41個のすい臓がん、31個の結腸直腸がん、33個の乳がん、33個の卵巣がん、1個の前立腺がん、23個のその他のがんの転移、および、18個の前立腺原発性がんが含まれた。260個のサンプルから成る2番目の群には、56個の肺がん、43個のすい臓がん、30個の結腸直腸がん、30個の乳がん、49個の卵巣がん、32個のその他のがんの転移、および、20個の前立腺原発性がんが含まれた。16個の肺がん、21個のすい臓がん、15個のその他の転移性がん、および、12個の前立腺原発性がんを含む64の標本が、両方の群において同一の患者由来であった。
Albany Medical Collegeから入手した独立のサンプル群は、33個のCUP標本(うち22個が原発腫瘍が示唆された)、および、15個の既知の原発巣の転移性がんから構成された。示唆された原発腫瘍を有するCUPに対して、形態学上の特徴、および/もしくは、IHCマーカーパネルで試験された結果に基づいて診断がなされた。患者の人口学上の特徴、臨床上の特徴、および、病理学上の特徴を、表17に示す。
<マーカー候補の選択>
5つの原発組織の種類(肺、結腸、乳房、卵巣、前立腺)の遺伝子発現プロファイルの分析の結果、qRT−PCR試験のための13個の組織特異的マーカー候補が指定された。上位の候補はin situの従来のがん研究において同定されてきたものであった。Argani他(2001年);Backus他(2005年);Cunha他(2005年);Borgono他(2004年);McCarthy他(2003年);Hwang他(2004年);Fleming他(2000年);Nakamura他(2002年);および、Khoor他(1997年)参照。マイクロアレイデータの分析に加えて、2つのマーカーを文献から選択した。それらには、補足的な肺扁平上皮がんマーカーDSG3、および、乳がんマーカーPDEFが含まれる。Backus他(2005年)参照。マイクロアレイデータにより、これらのマーカーの高い感度、および、特異度が確認された。
すい臓特異的なマーカーを同定するために、特別なアプローチを用いた。まず、5つのすい臓マーカー候補を解析した。それらのマーカー候補は、prostate stem cell antigen(PSCA)、serine proteinase inhibitor, clade A member 1(SERPINA1)、cytokeratin 7(KRT7)、matrix meralloprotease 11(MMP11)、および、mucin 4(MUC4)[Varadhachary他(2004年);Argani他(2001年);Jones他(2004年);Prasad他(2005年);および、Moniaux他(2004年)参照]であり、DNAマイクロアレイ、ならびに、13個のすい臓管腺がん、5個の正常すい臓組織、および、98個のサンプル(乳房腫瘍、結腸直腸腫瘍、肺腫瘍、および、卵巣腫瘍に由来する)に係るパネルを用いて解析された。PSCAのみが、適度な感度(13個中6個、すなわち、すい臓腫瘍のうち46%を検出した)を、高い特異度(98個のサンプル中91個、すなわち、93%が、すい臓が原発巣でないと正確に同定された)で示した。これに対して、KRT7、SERPINA1、MMP11、および、MUC4は、それぞれ38%、31%、85%および31%の感度を、それぞれ66%、91%、82%および81%の特異度で示した。これらのデータは、27個のすい臓原発巣の転移、および、39個の非すい臓原発巣の転移で、MMP11を除くすべてのマーカーについて実行したqRT−PCRと、十分一致した。MMP11は、qRT−PCRおよび転移に対して、より低い感度とより低い特異度を示した。結論として、急速冷凍した原発組織におけるマイクロアレイデータは、FFPE転移がすい臓原発であることをqRT−PCRによって同定することのできるマーカーの能力に対する良い指標として役立つ。しかし、更なるマーカーが最適な効果のために有用であるかもしれない。
すい臓管腺がんは、正常なすい臓において、すべてのすい臓細胞(大部分が腺房状細胞および膵島細胞)のうちのほんのわずかな割合を含む管上皮細胞から発生する。さらに、すい臓腺がん組織は、隣接する正常組織を相当量含む[Prasad他(2005年);および、Ishikawa他(2005年)]。このため、すい臓腺がんにおいて、正常なすい臓細胞と比較して遺伝子が増加しているため、候補すい臓がんマーカーは濃縮されていた。第1のクエリ方法によって、6つのプローブ群が得られた。そのプローブ群は、coagulation factor V(F5)、hypothetical protein FLJ22041 similar to FK506 binding proteins(FKBP10)、β6 integrin(ITGB6)、transglutaminase 2(TGM2)、heterogeneous nuclear ribonucleoprotein A0(HNRPA0)、および、BAX delta(BAX)であった。第2のクエリ方法(詳しくは、材料と方法の節を参照)によって、8つのプローブ群が得られた。そのプローブ群は、F5、TGM2、paired-like homeodomain transcription factor 1(PITX1)、trio isoform mRNA(TRI0)、mRNA for p73H(p73)、unknown protein for MGC:10264(SCD)、および、claudin 18についての2つのプローブ群であった。
転移性がんFFPE組織上の更なるRT−PCR確認のために、全体で23個の組織特異的なマーカー候補がqRT−PCRによって選ばれた。肺、すい臓、結腸、乳房、卵巣、前立腺、および、前立腺原発性がん由来の205個のFFPE転移性がんに対して、マーカー候補を試験した。表18は、RT−PCR確認のために選ばれた組織特異的マーカーの遺伝子記号を提供し、そしてまた、これらのマーカーで実行された試験結果をまとめている。
Figure 2010517536
23個の試験マーカーのうちの13個が、それらの交差反応性、対応する転移性組織における低い発現量、もしくは、重複に基づいて棄却された。10個のマーカーが最終的な解析のために選ばれた。肺がんマーカーは、human surfactant pulmonary-associated protein B(HUMPSPB)、thyroid transcription factor 1(TTF1)、および、desmoglein 3(DSG3)であった。すい臓がんマーカーは、prostate stem cell antigen(PSCA)、および、coagulation factor V(F5)、そして、前立腺がんマーカーは、kallikrein 3(KLK3)であった。結腸直腸がんマーカーは、cadherin 17(CDH17)であった。乳がんマーカーは、mammaglobin(MG)、および、prostate-derived Ets transcription factor(PDEF)であった。卵巣がんマーカーは、Wilm's tumor 1(WT1)であった。異なる転移性組織において選択されたマーカーの相対的な発現値を標準化した平均値を、図11に示している。
<FFPE組織を用いたサンプル準備およびqRT−PCRの最適化>
次に、マーカーパネルの性能を検査する前に、固定組織を用いて、RNA単離法、および、qRT−PCR法を最適化した。まず、タンパク質分解酵素Kのインキュベーション時間を16時間から3時間に短縮した効果を分析した。収率にはまったく変化はなかった。しかし、いくつかのサンプルで、より短い時間のタンパク質分解酵素K工程を用いたときに、より長いRNA断片を示すものがあった(図12A、図12B)。例えば、RNAを1年前の組織ブロック(C22)から単離したとき、電気泳動図にはまったくちがいは見られなかった。しかし、RNAを5年前の組織ブロック(C23)から単離したときには、より短い時間のタンパク質分解酵素K消化を用いた場合に、肩のこぶによって解析されると、より高分子量のRNAの区画がより多く観察された。この傾向は一般的に、FFPE転移の原発巣器官にかかわらず、他のサンプルを処理する際にも保持された。結論として、タンパク質分解酵素K消化時間の短縮は、RNA収量を犠牲にしないし、そして、より長く、あまり分解されていないRNAを単離する助けになるかもしれない。
次に、3つの異なる逆転写法を比較した。その3つの方法とは、qPCRが後に続く、ランダムヘキサマーによる逆転写(2段階);qPCRが後に続く、遺伝子特異的プライマーによる逆転写(2段階);遺伝子特異的プライマーを用いた1段階のqRT−PCR;である。RNAは11個の転移から単離され、この3つの方法すべてにわたって、β-actin、HUMSPB(図12C、図12D)、および、TTFに対するCt値を比較した。その結果は、すべての比較において、統計的に有意な差(p<0.001)を示した。両方の遺伝子について、qPCRが後に続くランダムヘキサマーによる逆転写(2段階反応)が最も高いCt値を示し、一方、qPCRが後に続く遺伝子特異的プライマーによる逆転写(2段階反応)は、対応する1段階反応よりも、わずかに(しかし統計的には有意な)低いCt値を示した。しかし、遺伝子特異的プライマーを用いた2段階のRT−PCRは、より長い逆転写段階を有した。各サンプルについて、HUMSPBのCt値を、対応するβ-actinの値に対して標準化した場合、3つの方法すべてにわたって、標準化されたCt値には、まったくちがいが見られなかった。結論として、RT−PCR反応条件の最適化により、より低いCt値を生じることができ、これは、より古いパラフィン組織ブロックを分析する助けになる[Cronin他(2004年)参照]。そして、遺伝子特異的プライマーを用いた、1段階のRT−PCR反応は、対応する2段階反応において生ずるCt値に匹敵するCt値を生ずることができる。
<最適化されたqRT−PCR解析の診断能>
260個のFFPE転移の新たな群に対して、12個のqRT−PCR反応(10個のマーカー、および、2個のハウスキーピング遺伝子)を実行した。21個のサンプルがハウスキーピング遺伝子に対して高いCt値を示したため、239個のサンプルのみを、ヒートマップ分析に用いた。ヒートマップにおける標準化されたCt値の分析は、乳がんマーカー、および、前立腺がんマーカーの高い特異度、結腸がんマーカー、肺がんマーカー、および、卵巣がんマーカーの中程度の特異度、ならびに、すい臓がんマーカーの幾分より低い特異度を明らかにした(図13)。標準化されたqRT−PCRデータを、コンピュータによる修正と組み合わせることにより、マーカーパネルの性能が改良される。
2個のハウスキーピング遺伝子の発現の平均に対して標準化された発現値を用いて、転移性原発巣組織を予測するための線形判別分析が、標準化されたqRT−PCRデータを分類ツリーと組み合わせることによって開発され、qRT−PCR解析の確度が74%であることを決定した。
Figure 2010517536
議論
本研究において、転移に用いるための候補マーカーを同定するために、原発腫瘍におけるマイクロアレイに基づいた発現プロファイル解析を用いた。転移に対する原発巣腫瘍マーカーを発見するために原発腫瘍を用いることができるという事実は、最近のいくつかの発見と一致する。例えば、Weigeltと同僚は、原発性乳房腫瘍の遺伝子発現プロファイルは、遠隔転移においても維持されるということを示した。Weigelt他(2003年)参照。Backusと同僚は、乳房組織およびその他の組織のゲノム規模遺伝子発現解析を用いて、乳がん転移を検出するための推測上のマーカーを同定し、そして、mammaglobinおよびCK19が、90%の感度と94%の特異度で、乳房センチネルリンパ節における臨床上有効な転移を検出したことを明らかにした。Backus他(2005年)参照。
本解析の開発中、CUPの中で最も一般的な肺がん、すい臓がん、および、結腸がん[Ghosh他(2005年);および、Pavlidis他(2005年)]、ならびに、治療が患者にとって最も有益である可能性がある乳がん、卵巣がん、および、前立腺がんを含む、6つのがんの種類に対して、選択の焦点を当ててきた。Ghosh他(2005年)参照。しかし、解析の全体の確度に欠陥が生じない限り、また、もし適用可能ならば、RT−PCR反応のロジスティクスが妨げられない限り、更なる組織の種類、および、マーカーをパネルに追加することができる。
マイクロアレイに基づいた原発組織の研究は、既知のマーカーの特異度および感度を確認した。結果として、組織特異的マーカーの大部分が、本発明で調べられた組織に対して高い特異度を有する。最近の研究では、IHCを用いると、PSCAが前立腺がん転移において過剰発現されることがわかった。Lam他(2005年)参照。Dennis他(2002年)はまた、PSCAがすい臓がんおよび前立腺がんに対する原発腫瘍マーカーとして用いることができることを明らかにした。PSCAの強い発現は、一部の前立腺組織において、RNAレベルで見出されるが、その解析にPSAを含むために、前立腺がんとすい臓がんとを直ちに分離することができる。本研究で新規に発見されたことは、すい臓原発巣組織の(PSCAに対して)補足的なマーカーとして、F5を用いるということであった。原発組織のマイクロアレイデータ群、および、FFPE転移のqRT−PCRデータ群両方において、F5はPSCAを補足することが見出された。
従来の研究者たちは、IHC[Brown他(1997年);De Young他(2000年);および、Dennis他(2005年a)参照]、もしくは、マイクロアレイ[Su他(2001年);Ramswamy他(2001年);および、Bloom他(2004年)参照]を用いたCUP解析を生み出してきた。さらに最近では、SAGE法が、小規模のqRT−PCRマーカーパネルと組み合わされてきた。Dennis他(2002年);および、Buckhaults他(2003年)参照。本研究は、マイクロアレイに基づいた発現プロファイル解析を、qRT−PCR解析の小規模のパネルと組み合わせた最初のものである。原発組織に対するマイクロアレイ研究は、これまでにSAGE法によって同定されたのと同一の原発巣組織マーカーのうちのすべてではないが、一部を同定した。SAGE法に基づいたプロファイル解析データとDNAマイクロアレイに基づいたプロファイル解析データとが適度に一致すること、また、その相互関係が、より高い発現量を伴う遺伝子に対して向上することを示してきた研究を考慮すれば、この発見は驚くほどのことではない。van Ruissen他(2005年);および、Kim他(2003年)参照。例えば、Dennisと同僚は、PSA、MG、PSCA、および、HUMSPBを同定し、一方、Buckhaultsと共同研究者[Buckhaults他(2002年)参照]はPDEFを同定した。CUP解析の実施はqRT−PCRによるものであるのが好ましい。というのは、それが強固な技術であり、IHC以上の性能優位性を有するかもしれないからである。Al-Mulla他(2005年);および、Haas他(2005年)参照。さらに、本明細書に示したように、qRT−PCRプロトコルは、1段階反応において遺伝子特異的プライマーを用いることにより改良されてきた。このことは、FFPE組織での1段階qRT−PCR反応に、遺伝子特異的プライマーを用いた最初の証明である。他の研究者は、2段階qRT−PCR(qPCRが後に続く1反応でのcDNA合成)を行ったか、または、ランダムヘキサマーもしくは先端を切った遺伝子特異的プライマーを用いたかのいずれかである。Abrahamsen他(2003年);Specht他(2001年);Godfrey他(2000年);Cronin他(2004年);および、Mikhitarian他(2004年)参照。
要約すると、6つの組織の種類に対する78%の総体的解析確度は、他の研究と比較して優れている。Brown他(1997年);De Young他(2000年);Dennis他(2005年a);Su他(2001年);Ramaswamy他(2001年);および、Bloom他(2004年)参照。
〔実施例7〕
本研究において、遺伝子マーカーポートフォリオを用いる分類器が、MVOから選ぶことによって、また、原発巣組織、および、乳がん、結腸がん、肺がん、卵巣がん、前立腺がんを含む5つの主要ながんの種類に対するがんの状態を予測するためにこの分類器を用いることによって構築された。378個の原発がん、23個の良性増殖上皮病変、および、103個の急速冷凍された正常なヒト組織標本を、Affymetrix human U133A GeneChipを用いて分析した。白血球サンプルもまた、白血球バックグラウンド細胞における共発現によって、潜在的に隠される遺伝子発現を差し引くために分析した。新規のMVOに基づくバイオインフォマティクスの手法を、原発巣組織およびがんの状態に対する遺伝子マーカーポートフォリオを選択するために開発した。そのデータによって、26個の遺伝子のパネルを、5つのがんの種類間の原発巣組織、および、がんの状態を正確に予測するための分類器として用いることができるということがわかった。このように、さまざまながんの分類法を、かなり少ない数の遺伝子マーカーの遺伝子発現プロファイルを決定することによって得ることができる。
表19は、指定された原発巣組織について同定されたマーカーを示している。遺伝子の説明については表28を参照のこと。
Figure 2010517536
サンプル群には、全体で299個の転移性結腸がん、転移性乳がん、転移性すい臓がん、転移性卵巣がん、転移性前立腺がん、転移性肺がん、および、その他のがん、ならびに、原発性前立腺がんのサンプルが含まれた。組織学的な評価、対照遺伝子β-actinのRNA収量、および、その発現に基づく性質確認(QC)が行われた。他のサンプルカテゴリーには、胃がん(5個)、腎臓がん(6個)、胆管/胆のうがん(4個)、肝臓がん(2個)、頭頸部がん(4個)、回腸がん(1個)から生じた転移、および、1個の中皮種が含まれた。結果を表20にまとめる。
Figure 2010517536
上記サンプルを試験することによって、結果的に表21のマーカー群にまで削減された。その結果を表22に示す。
Figure 2010517536
Figure 2010517536
その結果は、表23のように、205個のパラフィン包埋転移性腫瘍のうち;166個のサンプル(81%)が最終的な分析結果を有したことを示した。
Figure 2010517536
表24のように、偽陽性結果のうちの多くの誤りが、組織学的および発生学的に類似の組織に由来した。
Figure 2010517536
以下のパラメータが、モデル開発のために検討された。
女性群、および、男性群におけるマーカーを分離し、男性患者、および、女性患者についてのCUP確率を別々に計算する。男性群には、SP_B、TTF1、DSG3、PSCA、F5、PSA、HPT1が含まれ;女性群には、SP_B、TTF1、DSG3、PSCA、F5、HPT1、MGB、PDEF、WT1が含まれた。バックグラウンドの発現(すなわち、肺:SP_B、TTF1、DSG3;卵巣:WT1、および、結腸:HPT1)は、解析結果から除外した。
CUPモデルは、そのCUPの罹患率(%)(すなわち、肺がん23%、すい臓がん16%、結腸直腸がん9%、乳がん3%、卵巣がん4%、前立腺がん2%、その他のがん43%)に調整された。乳がんおよび卵巣がんに対する罹患率は、男性患者については0%に調整され、そして、前立腺がんの罹患率は、女性患者については0%に調整された。
以下の工程が採用された。
マーカーを同様のスケール上に置く。
最小値を各組織特異的な群から選択することにより、変数の数を12個から8個に減らす。
1個のサンプルを除く。残りのサンプルからモデルを構築する。除いたサンプルをテストする。100%のサンプルが試験されるまで繰り返す。
サンプルのうち〜50%(組織当たり〜50%)をランダムに除く。残りのサンプルからモデルを構築する。サンプルのうち〜50%のサンプルについて試験する。3つの異なるランダムな分割群について反復する。
分類確度は、がんの種類の罹患率に調整された。
結果を表25にまとめ、生データを表26に示す。
Figure 2010517536
Figure 2010517536
〔実施例8〕
原発巣組織を予測するための原発部位不明転移性がんCUPの予想される遺伝子特徴についての研究
本研究の具体的なねらいは、10個の遺伝子特徴の能力、すなわち、原発不明がん(CUP)を有する患者における転移性がんの原発巣組織を予測する能力を決定することであった。
第1の目標:CUPを有する継続患者のコア生検サンプルに由来する遺伝子解析の実現可能性を確認する。
第2の目標:10個の遺伝子特徴のRT−PCR解析の結果と、M. D. Anderson Cancer Center(MDACC)においてなされた診断上の精密検査とを相関させる。
第3の目標:解析により予測された6つのがんの種類の罹患率と、文献およびMDACC実験に由来する罹患率とを相関させる。
700個の凍結原発がん、良性標本、および正常標本のマイクロアレイ遺伝子発現解析を実行するために、本明細書に記載された方法を用い、そして、肺がん、すい臓がん、結腸がん、乳がん、前立腺がん、および、卵巣がんに特異的な遺伝子マーカー候補を同定した。肺、すい臓、結腸、乳房、卵巣、および前立腺から生じた転移性がん(ステージIII〜IV)ならびに特異度対照のための他のがんの種類から生じた転移のホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)205個の標本のRT−PCRによって、遺伝子マーカー候補を試験した。他の転移性がんの種類には、胃がん、腎臓細胞がん、肝細胞性がん、胆管/胆のうがん、および、頭頸部がんが含まれた。結果により、転移性がんの原発巣組織を予測し、全体で76%の確度を示した10個の遺伝子特徴を選ぶことができた。RT−PCR実験でくり返された測定の平均のCV値は、4つの複製時点に基づいて計算した結果、1.5%であった。β-actin(ACTB)をハウスキーピング遺伝子として用い、その中位の発現は異なる原発巣を有する転移性サンプルと同様であった(CV=5.6%)。
本研究に係る具体的なねらいは、10個の遺伝子特徴の能力、すなわち、CUP患者における転移性がん原発巣組織を予測する能力を、総合的な診断上の精密検査と比較して確認することであった。
<患者適格>
ECOG一般状態0〜2を有する少なくとも18歳の患者でなければならない。腺がん、もしくは、若干分化したがんを有すると診断された患者を採用した。腺がん患者のグループには、高分化の腫瘍、中分化の腫瘍、および、低分化の腫瘍が含まれる。
患者はCUPの基準を満たしていた。すなわち、完全な評価後にまったく原発腫瘍が検出されなかった。この評価とは、完全な病歴および身体的な検査、詳細な臨床検査、造影研究、ならびに、侵襲的研究を導く兆候もしくはサインとして定義される。本研究では、治療が行われていない患者のみを採用した。
患者が化学療法、もしくは、放射線で治療されている場合、本研究への参加は、10年以内に採取されたブロックとして(治療)以前の組織が手に入るのであれば、認められた。
本研究への参加のために、患者から書面による承諾/許可が提出された。
<研究設計>
本研究では、CUPと診断された患者を採用した。これらの患者は最も利用可能な転移性病変のコアニードル生検、もしくは切除生検を経験してきた者たちである。FNA生検が行われた患者のみが適切ではなかった。試験対象患者基準に合致し、かつ、研究に同意した最初の60名の継続患者が登録された。MDACCにおいて治療のための診断の目的で、再度の生検が必要である場合、患者から同意が得られれば、更なる組織を本発明のために入手した。すべての参加者を、institutional Protocol Data Management System(PDMS)におけるプロトコルに登録した。
登録された患者すべてに対して、MDACC基準にしたがって、臨床上および病理学上の判定を含む完全な診断上の精密検査を実行した。診断上の精密検査における病理学的な一部には、CK−7、CK−20、TTF−1、および病理学者によって指示されたと考えられる他のものを含むマーカーによる、免疫組織化学的(IHC)解析が含まれてもよかった。これは、CUPが存在するすべての患者の日常的な精密検査の一部である。
<組織サンプル収集>
本研究には、CUP患者から収集したホルマリン固定パラフィン包埋転移性がん標本が含まれた。
RNA単離のために、6個の10μm切片を用いたが、より小さな組織標本については、9個の10μmの切片が必要であろう。ヘマトキシリンおよびエオジン(HE)で染色された追加の切片上で、RNA単離のために用いられたサンプルごとに、組織病理学的診断、および、腫瘍内容物を確認した。腫瘍サンプルは、HE切片において30%を超える腫瘍内容物を有するべきであった。
臨床データは匿名でVeridexへ提供された。そのデータには、患者の年齢、性別、光学顕微鏡による腫瘍組織構造、腫瘍段階(分化)、転移部位、標本収集日、個々の患者に対して行われた診断上の精密検査の説明が含まれる。
<組織処理およびRT−PCR実験>
前述のプロトコルを用いて、各組織サンプルから全RNAを抽出した。標準量の組織から1μgを超える全RNAを生ずるサンプルのみを、その後のRT−PCR試験のために用いた。RNA収量のあまりないサンプルは劣化していると考えられ、その後の実験からは除外した。標準のVeridexの方法にしたがって、劣化したRNAを有するサンプルを除外するために、ハウスキーピング発現に基づくRNAの完全性対照を行った。
RNAサンプルの解析のために、10個の遺伝子、および、1〜2個の対照遺伝子のパネルを含むRT−PCR解析を用いた。前述のプロトコルを用いて、逆転写解析およびPCR解析を達成した。
ΔCtとして表される各々の試験された遺伝子の相対的な発現値を計算し、原発巣組織の予測のために用いた。ΔCtとは、標的遺伝子のCtから対照遺伝子のCtを差し引いた値と等しい。
<サンプルサイズおよびデータ解釈>
予備的研究の診査の本質のために、60人の患者の限定されたサンプルサイズを研究した。これまでに、22人の患者を試験した。ある患者サンプルは、RT−PCR試験のための十分なRNAを生成することができず、また、3個のサンプルが、対照遺伝子によるRT−PCRによって判定されたQC対照を通過できなかった。全体で18人の患者が、患者の転移性病変の確率を決定するために用いられた。
統計モデルは、以下の7つのカテゴリーの転移性がん原発巣組織の確率を決定するために用いられた。そのカテゴリーとは、肺がん、すい臓がん、結腸がん、乳がん、前立腺がん、卵巣がん、および、非試験(その他)であった。それぞれのサンプルに対する各カテゴリーの確率は、線形的な分類モデルから計算される。解析結果を表27にまとめる。
患者(既知の原発巣を有する)の転移性病変が、これらの6つの部位(結腸、すい臓、肺、前立腺、卵巣、乳房)の1つに由来する確率は、約76%である。この数は、さまざまながんの発症率、および、転移する可能性について記載された文献、および、M. D. Andersonにおける腫瘍登録から生じた未発表のデータから導き出される。試験されたサンプルについては、6つの部位の罹患率は67%(18個の試験されたサンプルのうち12個)であり、従来の観察結果と非常によく一致した。
Figure 2010517536
本発明は、理解を明確にする目的で、図および実施例の形である程度詳細に説明したが、その説明および実施例を、発明の範囲を限定するものとして解釈するべきではない。
Figure 2010517536
〔参照文献〕
Figure 2010517536

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Figure 2010517536
原発不明転移の原発巣を同定する先行技術方法の図である。 原発不明転移の原発巣を同定する先行技術方法の図である。 本発明のCUP分類ツリーの図である。 組織パネルにおけるprostate stem cell antigen(PSCA)の発現強度を示しているマイクロアレイデータの図である。 組織パネルにおけるcoagulation factor V(F5)の発現強度を示しているマイクロアレイデータの図である。 Agilent Bioanalyzerから得られた電気泳動図である。3時間のタンパク質分解酵素Kの消化により、RNAをFFPE組織から単離した。 は、Agilent Bioanalyzerから得られた電気泳動図である。16時間のタンパク質分解酵素Kの消化により、RNAをFFPE組織から単離した。 異なる3つのqRT−PCR法から得られたCt値の比較の図である。β-actinに対するRNA量を測定した。 異なる3つのqRT−PCR法から得られたCt値の比較の図である。HUMSPBに対するRNA量を測定した。 異なる3つのqRT−PCR法から得られたCt値の比較の図である。TTFに対するRNA量を測定した。 CUP解析プレートの図である。 単変量解析ツリーの図解である。 単変量解析ツリーの図解である。 RNA濃度範囲に渡る解析性能を示したグラフである。 RNA濃度範囲に渡る解析性能を示したグラフである。 RNA濃度範囲に渡る解析性能を示したグラフである。 マーカー候補の指定および確認を示す実験作業の流れの図解である。 マーカー候補の指定および確認を示す実験作業の流れの図解である。 FFPE転移性がんおよび前立腺原発性腺がんにおける組織特異的遺伝子マーカー候補の発現の図である。 FFPE転移性がんおよび前立腺原発性腺がんにおける組織特異的遺伝子マーカー候補の発現の図である。 FFPE転移性がんおよび前立腺原発性腺がんにおける組織特異的遺伝子マーカー候補の発現の図である。 FFPE転移性がんおよび前立腺原発性腺がんにおける組織特異的遺伝子マーカー候補の発現の図である。 FFPE転移性がんおよび前立腺原発性腺がんにおける組織特異的遺伝子マーカー候補の発現の図である。 FFPE転移性がんおよび前立腺原発性腺がんにおける組織特異的遺伝子マーカー候補の発現の図である。 FFPE転移性がんおよび前立腺原発性腺がんにおける組織特異的遺伝子マーカー候補の発現の図である。 FFPE転移性がんおよび前立腺原発性腺がんにおける組織特異的遺伝子マーカー候補の発現の図である。 FFPE転移性がんおよび前立腺原発性腺がんにおける組織特異的遺伝子マーカー候補の発現の図である。 FFPE転移性がんおよび前立腺原発性腺がんにおける組織特異的遺伝子マーカー候補の発現の図である。 解析の最適化の図であり、Agilent Bioanalyzerから得られた電気泳動図である。3時間のタンパク質分解酵素Kの消化により、RNAをFFPE組織から単離した。 解析の最適化の図であり、Agilent Bioanalyzerから得られた電気泳動図である。16時間のタンパク質分解酵素Kの消化により、RNAをFFPE組織から単離した。 解析の最適化の図であり、異なる3つのqRT−PCR法から得られたCt値の比較の図である。β-actinに対するRNA量を測定した。 解析の最適化の図であり、異なる3つのqRT−PCR法から得られたCt値の比較の図である。HUMSPBに対するRNA量を測定した。 239個のサンプルに係る10個のマーカーパネルの相対的な発現量を示すヒートマップである。

Claims (33)

  1. 原発不明転移の原発巣を同定する方法において、
    (a)転移性細胞を含むサンプルを入手する工程と、
    (b)少なくとも2つの異なるがんに関連するバイオマーカーを評価する工程と、
    (c)前記バイオマーカーから得られたデータを組み合わせて、線形判別分析にする工程であって、前記線形判別分析は、
    (i)前記バイオマーカーを基準に対して標準化し、
    (ii)各々のバイオマーカーの感度および特異度を最適化し、前記がんの罹患率を重み付けし、原発巣組織を選択するようなカットオフを課す、
    工程と、
    (d)前記線形判別分析によって決定された最も高い確率に基づいて原発巣を決定するか、もしくは、前記がんが特定のがん群に由来しないことを決定する工程と、
    (e)任意に、1つ以上の追加の異なるがんに特異的なバイオマーカーを評価し、前記追加のバイオマーカーに対して、工程(c)および工程(d)を反復する工程と、
    を含む、方法。
  2. 請求項1に記載の方法において、
    前記マーカー遺伝子は、
    (i)SP−B、TTF、DSG3、KRT6F、p73H、もしくは、SFTPC;
    (ii)F5、PSCA、ITGB6、KLK10、CLDN18、TR10、もしくは、FKBP10;または、
    (iii)CDH17、CDX1、もしくは、FABP1;
    に対応する群のうちの少なくとも1つから選ばれる、方法。
  3. 請求項2に記載の方法において、
    前記マーカー遺伝子は、SP−B、TTF、DSG3、KRT6F、p73H、もしくは、SFTPCである、方法。
  4. 請求項3に記載の方法において、
    前記マーカー遺伝子は、SP−B、TTF、および、DSG3である、方法。
  5. 請求項4に記載の方法において、
    前記マーカー遺伝子は、KRT6F、p73H、および/もしくは、SFTPCをさらに含むか、または、KRT6F、p73H、および/もしくは、SFTPCによって置き換えられる、方法。
  6. 請求項2に記載の方法において、
    前記マーカー遺伝子は、F5、PSCA、ITGB6、KLK10、CLDN18、TR10、もしくは、FKBP10である、方法。
  7. 請求項6に記載の方法において、
    前記マーカー遺伝子は、F5、および、PSCAである、方法。
  8. 請求項7に記載の方法において、
    前記マーカー遺伝子は、ITGB6、KLK10、CLDN18、TR10、および/もしくは、FKBP10をさらに含むか、または、ITGB6、KLK10、CLDN18、TR10、および/もしくは、FKBP10によって置き換えられる、方法。
  9. 請求項1に記載の方法において、
    前記マーカー遺伝子は、CDH17、CDX1、もしくは、FABP1である、方法。
  10. 請求項9に記載の方法において、
    前記マーカー遺伝子は、CDH17である、方法。
  11. 請求項10に記載の方法において、
    前記マーカー遺伝子は、CDX1、および/もしくは、FABP1をさらに含むか、または、CDX1、および/もしくは、FABP1によって置き換えられる、方法。
  12. 請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法において、
    遺伝子発現は、配列番号11〜58のうちの少なくとも1つを用いて、評価される、方法。
  13. 請求項2に記載の方法において、
    前記マーカー遺伝子は、性特異的マーカーからさらに選ばれ、
    前記性特異的マーカーは、
    (i)男性患者の場合、KLK3、KLK2、NGEP、もしくは、NPY;あるいは、
    (ii)女性患者の場合、PDEF、MGB、PIP、B305D、B726、もしくは、GABA−π;および/または、WT1、PAX8、STAR、もしくは、EMX2;
    のうちの少なくとも1つから選ばれる、方法。
  14. 請求項13に記載の方法において、
    前記マーカー遺伝子は、KLK2である、方法。
  15. 請求項14に記載の方法において、
    前記マーカー遺伝子は、KLK3である、方法。
  16. 請求項15に記載の方法において、
    前記マーカー遺伝子は、NGEP、および/もしくは、NPYをさらに含むか、または、NGEP、および/もしくは、NPYによって置き換えられる、方法。
  17. 請求項13に記載の方法において、
    前記マーカー遺伝子は、PDEF、MGB、PIP、B305D、B726、もしくは、GABA−πである、方法。
  18. 請求項17に記載の方法において、
    前記マーカー遺伝子は、PDEF、および、MGBである、方法。
  19. 請求項18に記載の方法において、
    前記マーカー遺伝子は、PIP、B305D、B726、もしくは、GABA−πをさらに含むか、または、PIP、B305D、B726、もしくは、GABA−πによって置き換えられる、方法。
  20. 請求項13に記載の方法において、
    前記マーカー遺伝子は、WT1、PAX8、STAR、もしくは、EMX2である、方法。
  21. 請求項20に記載の方法において、
    前記マーカー遺伝子は、WT1である、方法。
  22. 請求項21に記載の方法において、
    前記マーカー遺伝子は、PAX8、STAR、もしくは、EMX2をさらに含むか、または、PAX8、STAR、もしくは、EMX2によって置き換えられる、方法。
  23. 請求項13〜22のいずれか1項に記載の方法において、
    遺伝子発現は、配列番号11〜58のうちの少なくとも1つの配列を用いて、評価される、方法。
  24. 請求項1もしくは2に記載の方法において、
    がんの原発巣を決定するために、転移部位を含む、追加の臨床情報をさらに得る工程、
    を含む、方法。
  25. がんに対する最適なバイオマーカー群を得る方法において、
    既知の原発巣の転移を用いる工程と、
    前記転移に対するバイオマーカーを決定する工程と、
    前記バイオマーカーを、原発不明転移のバイオマーカーと比較する工程と、
    を含む、方法。
  26. 治療方針を提供する方法において、
    請求項1〜3のいずれか1項にしたがって、原発不明転移の原発巣を決定し、前記原発巣に対して適切な治療法を同定することによる、方法。
  27. 予後を提供する方法において、
    請求項1〜3のいずれか1項にしたがって、原発不明転移の原発巣を決定し、前記原発巣に対して対応する予後を同定することによる、方法。
  28. バイオマーカーを発見する方法において、
    特定の転移におけるマーカー遺伝子の発現レベルを決定することと、
    前記マーカー遺伝子の発現を決定するために前記マーカー遺伝子に対するバイオマーカーを評価することと、
    請求項1にしたがって、前記マーカー遺伝子の前記発現を分析することと、
    前記マーカー遺伝子が原発腫瘍に対して効果的に特異的であるかどうかを決定することと、
    を含む、方法。
  29. 組成物において、
    配列番号11〜58から選ばれる、少なくとも1つの単離された配列、
    を含む、組成物。
  30. 請求項1〜3のいずれか1項にしたがって、解析を実施するためのキットにおいて、
    バイオマーカー検出試薬、
    を含む、キット。
  31. マイクロアレイ、もしくは、遺伝子チップにおいて、
    請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法を実行するための、マイクロアレイ、もしくは、遺伝子チップ。
  32. 診断/予後ポートフォリオにおいて、
    請求項2〜11もしくは13〜22のいずれか1項に記載の遺伝子の組み合わせの、単離された核酸配列、それらの相補配列、もしくは、それらの部分配列、
    を含み、
    前記組み合わせは、異なるがん由来の細胞、もしくは、正常組織由来の細胞と比較して、転移性細胞を有する生物学的サンプルにおける遺伝子発現を評価するのに十分であるか、もしくは、前記遺伝子発現を特徴付けるのに十分である、診断/予後ポートフォリオ。
  33. 請求項2〜11もしくは13〜22のいずれか1項に記載の方法において、
    前記サンプルで構成的に発現する、少なくとも1つの遺伝子の発現を評価すること、
    をさらに含む、方法。
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