以下、本発明の好ましい実施の形態について添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の第1実施の形態における車両用制御装置100が搭載される車両1を模式的に示した模式図である。なお、図1の矢印U−D,L−R,F−Bは、車両1の上下方向、左右方向、前後方向をそれぞれ示している。
まず、車両1の概略構成について説明する。車両1は、図1に示すように、車体フレームBFと、その車体フレームBFを支持する複数(本実施の形態では4輪)の車輪2と、それら複数の車輪2の内の一部(本実施の形態では、左右の前輪2FL,2FR)を回転駆動する車輪駆動装置3と、各車輪2と車体フレームBFとを連結する複数の懸架装置4と、複数の車輪2の内の一部(本実施の形態では、左右の前輪2FL,2FR)を操舵する操舵装置5とを主に備えて構成されている。
次いで、各部の詳細構成について説明する。車輪2は、図1に示すように、車両1の前方側(矢印F方向側)に位置する左右の前輪2FL,2FRと、車両1の後方側(矢印B方向側)に位置する左右の後輪2RL,2RRとを備えている。なお、本実施の形態では、左右の前輪2FL,2FRは、車輪駆動装置3により回転駆動される駆動輪として構成される一方、左右の後輪2RL,2RRは、車両1の走行に伴って従動される従動輪として構成されている。
また、車輪2は、図1に示すように、第1トレッド21及び第2トレッド22の2種類のトレッドを備え、各車輪2において、第1トレッド21が車両1の内側に配置され、第2トレッド22が車両1の外側に配置されている。なお、本実施の形態では、両トレッド21,22の幅(図1左右方向の寸法)が同一の幅に構成されている。
また、第1トレッド21及び第2トレッド22は、第2トレッド22が第1トレッド21よりも硬度の高い材料により構成され、第1トレッド21が第2トレッド22に比してグリップ力の高い特性(高グリップ特性)に構成される一方、第2トレッド22が第1トレッド21に比して転がり抵抗の小さい特性(低転がり特性)に構成されている。
車輪駆動装置3は、上述したように、左右の前輪2FL,2FRを回転駆動するための装置であり、後述するように電動モータ3aにより構成されている(図3参照)。また、電動モータ3aは、図1に示すように、デファレンシャルギヤ(図示せず)及び一対のドライブシャフト31を介して左右の前輪2FL,2FRに接続されている。
運転者がアクセルペダル61を操作した場合には、車輪駆動装置3から左右の前輪2FL,2FRに回転駆動力が付与され、それら左右の前輪2FL,2FRがアクセルペダル61の操作量に応じて回転駆動される。なお、左右の前輪2FL,2FRの回転差は、デファレンシャルギヤにより吸収される。
懸架装置4は、路面から車輪2を介して車体フレームBFに伝わる振動を緩和するための装置、いわゆるサスペンションとして機能するものであり、図1に示すように、各車輪2に対応してそれぞれ設けられている。また、本実施の形態における懸架装置4は、車輪2のキャンバ角を調整するキャンバ角調整機構としての機能を兼ね備えている。
ここで、図2を参照して、懸架装置4の詳細構成について説明する。図2は、懸架装置4の正面図である。なお、ここでは、キャンバ角調整機構として機能する構成のみについて説明し、サスペンションとして機能する構成については周知の構成と同様であるので、その説明を省略する。また、各懸架装置4の構成は、各車輪2においてそれぞれ共通であるので、右の前輪2FRに対応する懸架装置4を代表例として図2に図示する。但し、図2では、理解を容易とするために、ドライブシャフト31等の図示が省略されている。
懸架装置4は、図2に示すように、ストラット41及びロアアーム42を介して車体フレームBFに支持されるナックル43と、駆動力を発生するFRモータ44FRと、そのFRモータ44FRの駆動力を伝達するウォームホイール45及びアーム46と、それらウォームホイール45及びアーム46から伝達されるFRモータ44FRの駆動力によりナックル43に対して揺動駆動される可動プレート47とを主に備えて構成されている。
ナックル43は、車輪2を操舵可能に支持するものであり、図2に示すように、上端(図2上側)がストラット41に連結されると共に、下端(図2下側)がボールジョイントを介してロアアーム42に連結されている。
FRモータ44FRは、可動プレート47に揺動駆動のための駆動力を付与するものであり、DCモータにより構成され、その出力軸44aにはウォーム(図示せず)が形成されている。
ウォームホイール45は、FRモータ44FRの駆動力をアーム46に伝達するものであり、FRモータ44FRの出力軸44aに形成されたウォームに噛み合い、かかるウォームと共に食い違い軸歯車対を構成している。
アーム46は、ウォームホイール45から伝達されるFRモータ44FRの駆動力を可動プレート47に伝達するものであり、図2に示すように、一端(図2右側)が第1連結軸48を介してウォームホイール45の回転軸45aから偏心した位置に連結される一方、他端(図2左側)が第2連結軸49を介して可動プレート47の上端(図2上側)に連結されている。
可動プレート47は、車輪2を回転可能に支持するものであり、上述したように、上端(図2上側)がアーム46に連結される一方、下端(図2下側)がキャンバ軸50を介してナックル43に揺動可能に軸支されている。
上述したように構成される懸架装置4によれば、FRモータ44FRが駆動されると、ウォームホイール45が回転すると共に、ウォームホイール45の回転運動がアーム46の直線運動に変換される。その結果、アーム46が直線運動することで、可動プレート47がキャンバ軸50を揺動軸として揺動駆動され、車輪2のキャンバ角が調整される。
なお、本実施の形態では、各連結軸48,49及びウォームホイール45の回転軸45aが、車体フレームBFから車輪2に向かう方向(矢印R方向)において、第1連結軸48、回転軸45a、第2連結軸49の順に一直線上に並んで位置する第1キャンバ状態と、回転軸45a、第1連結軸48、第2連結軸49の順に一直線上に並んで位置する第2キャンバ状態(図2に示す状態)とのいずれか一方のキャンバ状態となるように車輪2のキャンバ角が調整される。
これにより、車輪2のキャンバ角が調整された状態では、車輪2に外力が加わったとしても、アーム46を回動させる方向の力は発生せず、車輪2のキャンバ角を維持することができる。
また、本実施の形態では、かかる第1キャンバ状態において、車輪2のキャンバ角が第1キャンバ角(本実施の形態では3°)に調整され、車輪2にネガティブキャンバが付与される。これにより、第2トレッド22の接地に対する第1トレッド21の接地比率が大きくなることで、第1トレッド21の高グリップ特性を発揮させると共に、キャンバスラストを発生させて、グリップ性能を確保することができる。
一方、かかる第2キャンバ状態(図2に示す状態)では、車輪2のキャンバ角が第2キャンバ角(本実施の形態では0°)に調整される。ここで、第2トレッド22は、第1トレッド21よりも硬度の高い材料により構成されているので、車輪2のキャンバ角が0°に調整された場合には、第1トレッド21の接地が第2トレッド22によって妨げられる。これにより、第1トレッド21の接地に対する第2トレッド22の接地比率が大きくなることで、第2トレッド22の低転がり特性を発揮させると共に、キャンバスラストの発生を回避して、省燃費化を図ることができる。
図1に戻って説明する。操舵装置5は、運転者によるステアリング63の操作を左右の前輪2FL,2FRに伝えて操舵するための装置であり、いわゆるラック&ピニオン式のステアリングギヤとして構成されている。
この操舵装置5によれば、運転者によるステアリング63の操作(回転)は、まず、ステアリングコラム51を介してユニバーサルジョイント52に伝達され、ユニバーサルジョイント52により角度を変えられつつステアリングボックス53のピニオン53aに回転運動として伝達される。そして、ピニオン53aに伝達された回転運動は、ラック53bの直線運動に変換され、ラック53bが直線運動することで、ラック53bの両端に接続されたタイロッド54が移動する。その結果、タイロッド54がナックル55を押し引きすることで、車輪2に所定の舵角が付与される。
アクセルペダル61及びブレーキペダル62は、運転者により操作される操作部材であり、各ペダル61,62の操作状態(踏み込み量、踏み込み速度など)に応じて、車両1の走行速度や制動力が決定され、車輪駆動装置3が駆動制御される。ステアリング63は、運転者により操作される操舵部材であり、その操作状態(回転角、回転速度など)に応じて、操舵装置5により左右の前輪2FL,2FRが操舵される。
車両用制御装置100は、上述したように構成される車両1の各部を制御するための装置であり、例えば、各ペダル61,62やステアリング63の操作状態に応じてキャンバ角調整装置44(図3参照)を作動制御する。
次いで、図3を参照して、車両用制御装置100の詳細構成について説明する。図3は、車両用制御装置100の電気的構成を示したブロック図である。車両用制御装置100は、図3に示すように、CPU71、ROM72及びRAM73を備え、それらがバスライン74を介して入出力ポート75に接続されている。また、入出力ポート75には、車輪駆動装置3等の装置が接続されている。
CPU71は、バスライン74により接続された各部を制御する演算装置であり、ROM72は、CPU71により実行される制御プログラム(例えば、図5に図示されるフローチャートのプログラム)や固定値データ等を格納した書き換え不能な不揮発性のメモリである。また、ROM72には、図3に示すように、ステアリング操舵速度マップ72a及びステアリング操舵量マップ72bが設けられている。
ここで、図4を参照して、ステアリング操舵速度マップ72a及びステアリング操舵量マップ72bについて説明する。図4(a)は、ステアリング操舵速度マップ72aの内容を模式的に示した模式図である。ステアリング操舵速度マップ72aは、車両1の走行速度と車輪2のキャンバ角を第1キャンバ角に調整するためのステアリング63の操舵速度(回転速度)の閾値Kとの関係を規定したマップである。CPU71は、このステアリング操舵速度マップ72aの内容に基づいて、現在の車両1の走行速度において車輪2のキャンバ角を第1キャンバ角に調整するための閾値Kを取得する。
このステアリング操舵速度マップ72aによれば、図4(a)に示すように、車両1の走行速度がVaよりも小さい場合には、閾値Kは規定されていない。即ち、車両1の走行速度がVaよりも小さい場合には、ステアリング63の操舵速度に関係なく、車輪2のキャンバ角の調整は行われない。
また、図4(a)に示すように、閾値Kは、車両1の走行速度がVaの場合に最大値Kmaxに規定され、車両1の走行速度がVaから増加するに従って曲線的に小さくなるように規定されている。そして、車両1の走行速度がVbの場合に最小値Kminに規定されると共に、車両1の走行速度がVbから増加しても最小値Kminで一定に規定されている。
図4(b)は、ステアリング操舵量マップ72bの内容を模式的に示した模式図である。ステアリング操舵量マップ72bは、車両1の走行速度と車輪2のキャンバ角を第1キャンバ角に調整するためのステアリング63の操舵量(回転角)の閾値Lとの関係を規定したマップである。CPU71は、このステアリング操舵量マップ72bの内容に基づいて、現在の車両1の走行速度において車輪2のキャンバ角を第1キャンバ角に調整するための閾値Lを取得する。
このステアリング操舵量マップ72bによれば、図4(b)に示すように、車両1の走行速度がVcよりも小さい場合には、閾値Lは規定されていない。即ち、車両1の走行速度がVcよりも小さい場合には、ステアリング63の操舵量に関係なく、車輪2のキャンバ角の調整は行われない。
また、図4(b)に示すように、閾値Lは、車両1の走行速度がVcの場合に最大値Lmaxに規定され、車両1の走行速度がVcから増加するに従って曲線的に小さくなるように規定されている。そして、車両1の走行速度がVdの場合に最小値Lminに規定されると共に、車両1の走行速度がVdから増加しても最小値Lminで一定に規定されている。
図3に戻って説明する。RAM73は、制御プログラムの実行時に各種のデータを書き換え可能に記憶するためのメモリであり、図3に示すように、キャンバフラグ73aが設けられている。
キャンバフラグ73aは、車輪2のキャンバ角が第1キャンバ角に調整されているのか或いは第2キャンバ角に調整されているのかを示すフラグである。CPU71は、このキャンバフラグ73aがオンの場合に、車輪2のキャンバ角が第1キャンバ角に調整されていると判断し、キャンバフラグ73aがオフの場合に、車輪2のキャンバ角が第2キャンバ角に調整されていると判断する。
車輪駆動装置3は、上述したように、左右の前輪2FL,2FR(図1参照)を回転駆動するための装置であり、それら左右の前輪2FL,2FRに回転駆動力を付与する電動モータ3aと、その電動モータ3aをCPU71からの指示に基づいて駆動制御する駆動制御回路(図示せず)とを主に備えている。但し、車輪駆動装置3は、電動モータ3aに限られず、他の駆動源を採用することは当然可能である。他の駆動源としては、例えば、油圧モータやエンジン等が例示される。
キャンバ角調整装置44は、各車輪2のキャンバ角を調整するための装置であり、上述したように、各懸架装置4の可動プレート47(図2参照)に揺動駆動のための駆動力をそれぞれ付与する合計4個のFL〜RRモータ44FL〜44RRと、それら各モータ44FL〜44RRをCPU71からの指示に基づいて駆動制御する駆動制御回路(図示せず)とを主に備えている。
計時装置80は、時間を計測するための装置であり、CPU71からの指示に基づいて時間を計測する計時回路(図示せず)と、その計時回路により計測された時間を処理してCPU71に出力する出力回路(図示せず)とを主に備えている。
加速度センサ装置81は、車両1の加速度を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、前後方向加速度センサ81a及び左右方向加速度センサ81bと、それら各加速度センサ81a,81bの検出結果を処理してCPU71に出力する出力回路(図示せず)とを主に備えている。
前後方向加速度センサ81aは、車両1(車体フレームBF)の前後方向(図1矢印F−B方向)の加速度を検出するセンサであり、左右方向加速度センサ81bは、車両1(車体フレームBF)の左右方向(図1矢印L−R方向)の加速度を検出するセンサである。なお、本実施の形態では、これら各加速度センサ81a,81bが圧電素子を利用した圧電型センサとして構成されている。
また、CPU71は、加速度センサ装置81から入力された各加速度センサ81a,81bの検出結果(加速度値)を時間積分して、2方向(前後方向および左右方向)の速度をそれぞれ算出すると共に、それら2方向成分を合成することで、車両1の走行速度を取得することができる。
アクセルペダルセンサ装置61aは、アクセルペダル61の操作量を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、アクセルペダル61の踏み込み量を検出する角度センサ(図示せず)と、その角度センサの検出結果を処理してCPU71に出力する出力回路(図示せず)とを主に備えている。
ブレーキペダルセンサ装置62aは、ブレーキペダル62の操作量を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、ブレーキペダル62の踏み込み量を検出する角度センサ(図示せず)と、その角度センサの検出結果を処理してCPU71に出力する出力回路(図示せず)とを主に備えている。
ステアリングセンサ装置63aは、ステアリング63の操舵量を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、ステアリング63の回転角を検出する角度センサ(図示せず)と、その角度センサの検出結果を処理してCPU71に出力する出力回路(図示せず)とを主に備えている。
なお、本実施の形態では、各角度センサが電気抵抗を利用した接触型のポテンショメータとして構成されている。また、CPU71は、各センサ装置61a,62a,63aから入力された各角度センサの検出結果(操作量および操舵量)を時間微分して、各ペダル61,62の踏み込み速度およびステアリング63の回転速度を取得することができる。
ナビゲーション装置82は、GPSを利用して車両1の現在位置を取得すると共に、車両1が走行予定の経路における道路状況を取得するための装置であり、GPS衛星から電波を受信して車両1の現在位置を取得する現在位置取得部(図示せず)と、各種情報(道路状況など)を地図データ等に対応付けて記憶する情報記憶部(図示せず)と、それら現在位置取得部により取得された車両1の現在位置および情報記憶部に記憶されている各種情報を処理してCPU71に出力する出力回路(図示せず)とを主に備えている。CPU71は、ナビゲーション装置82から入力された車両1の現在位置および各種情報に基づいて、車両1が走行予定の経路における道路状況を取得することができる。
なお、本実施の形態におけるナビゲーション装置82は、各種情報を地図データ等に対応付けて記憶する情報記憶部を備えているが、この情報記憶部に代えて、各種情報が地図データ等に対応付けて記憶された記憶媒体から各種情報を読み取る情報読取部を設け、その情報読取部により読み取った各種情報をCPU71に出力するように構成しても良い。
図3に示す他の入出力装置90としては、例えば、雨量を検出する雨量センサや路面の状態を非接触で検出する光学センサなどが例示される。
次いで、図5を参照して、キャンバ制御処理について説明する。図5は、キャンバ制御処理を示すフローチャートである。この処理は、車両用制御装置100の電源が投入されている間、CPU71によって繰り返し(例えば、0.2秒間隔で)実行される処理であり、ステアリング63の操舵速度(回転速度)及び操舵量(回転角)に基づいて車輪2のキャンバ角を調整する処理である。
CPU71は、キャンバ制御処理に関し、まず、車両1の走行速度を取得し(S1)、その取得した車両1の走行速度が所定の走行速度(例えば10km/h)以下であるか否かを判断する(S2)。
その結果、車両1の走行速度が所定の走行速度を超えていると判断される場合には(S2:No)、次いで、ステアリング63の操舵速度(回転速度)を取得し(S3)、その取得したステアリング63の操舵速度が閾値K以上であるか否かを判断する(S4)。なお、S4の処理では、まず、S1の処理で取得した車両1の走行速度に対応する閾値Kをステアリング操舵速度マップ72aから読み出し、その読み出した閾値KとS3の処理で取得したステリング63の操舵速度とを比較して、現在のステアリング63の操舵速度が閾値K以上であるか否かを判断する。
その結果、ステアリング63の操舵速度が閾値K以上であると判断される場合には(S4:Yes)、次いで、キャンバフラグ73aがオンであるか否かを判断し(S5)、キャンバフラグ73aがオフであると判断される場合には(S5:No)、キャンバ角調整装置44を作動させて車輪2(本実施の形態では、全ての車輪2FL〜2RR)のキャンバ角を第1キャンバ角に調整すると共に(S6)、キャンバフラグ73aをオンして(S7)、このキャンバ制御処理を終了する。
即ち、S4の処理の結果、ステアリング63の操舵速度が閾値K以上であると判断される場合には、運転者によってステアリング63が急操作され、車両1が急旋回するので、車輪2のキャンバ角を第1キャンバ角に調整して、車輪2にネガティブキャンバを付与する。これにより、キャンバスラストを発生させると共に第1トレッド21の高グリップ特性を発揮させて、グリップ性能を確保することができる。
なお、S5の処理の結果、キャンバフラグ73aがオンであると判断される場合には(S5:Yes)、車輪2のキャンバ角は既に第1キャンバ角に調整されているので、S6及びS7の処理をスキップして、このキャンバ制御処理を終了する。
一方、S4の処理の結果、ステアリング63の操舵速度が閾値Kよりも小さいと判断される場合には(S4:No)、次いで、ステアリング63の操舵量(回転角)を取得し(S8)、その取得したステアリング63の操舵量が閾値L以上であるか否かを判断する(S9)。なお、S9の処理では、まず、S1の処理で取得した車両1の走行速度に対応する閾値Lをステアリング操舵量マップ72bから読み出し、その読み出した閾値LとS8の処理で取得したステリング63の操舵量とを比較して、現在のステアリング63の操舵量が閾値L以上であるか否かを判断する。
その結果、ステアリング63の操舵量が閾値L以上であると判断される場合には(S9:Yes)、キャンバフラグ73aがオンであるか否かを判断し(S5)、キャンバフラグ73aがオフであると判断される場合には(S5:No)、キャンバ角調整装置44を作動させて車輪2のキャンバ角を第1キャンバ角に調整すると共に(S6)、キャンバフラグ73aをオンして(S7)、このキャンバ制御処理を終了する。
即ち、S9の処理の結果、ステアリング63の操舵量が閾値L以上であると判断される場合には、急旋回でなくとも、例えば、車両1が急カーブを走行中、又は、右左折中、或いは、Uターン中であるので、車輪2のキャンバ角を第1キャンバ角に調整して、車輪2にネガティブキャンバを付与する。これにより、キャンバスラストを発生させると共に第1トレッド21の高グリップ特性を発揮させて、グリップ性能を確保することができる。
なお、S5の処理の結果、キャンバフラグ73aがオンであると判断される場合には(S5:Yes)、車輪2のキャンバ角は既に第1キャンバ角に調整されているので、S6及びS7の処理をスキップして、このキャンバ制御処理を終了する。
一方、S9の処理の結果、ステアリング63の操舵量が閾値Lよりも小さいと判断される場合には(S9:No)、次いで、キャンバフラグ73aがオンであるか否かを判断し(S10)、キャンバフラグ73aがオンであると判断される場合には(S10:Yes)、計時装置80により計時を開始する(S11)。
次いで、S11の処理で計時を開始してから所定の時間(例えば3秒など)が経過したか否かを判断し(S12)、所定の時間が経過していないと判断される場合には(S12:No)、所定の時間が経過したと判断されるまでS12の処理を繰り返し実行する。
一方、S12の処理の結果、所定の時間が経過したと判断される場合には(S12:Yes)、キャンバ角調整装置44を作動させて車輪2(本実施の形態では、全ての車輪2FL〜2RR)のキャンバ角を第2キャンバ角に調整すると共に(S13)、キャンバフラグ73aをオフして(S14)、このキャンバ制御処理を終了する。
即ち、S4の処理の結果、ステアリング63の操舵速度が閾値Kよりも小さいと判断され且つS9の処理の結果、ステアリング63の操舵量が閾値Lよりも小さいと判断される場合には(S4:No且つS9:No)、例えば、車両1が直進中、又は、緩やかなカーブを走行中であり、グリップ性能の確保は不要であるので、車輪2のキャンバ角を第2キャンバ角に調整して、ネガティブキャンバの付与を中止する。これにより、キャンバスラストを低減すると共に第1トレッド21の高グリップ特性の発揮を抑制して、低燃費化を図ることができる。更に、本実施の形態では、第2キャンバ角として車輪2のキャンバ角を0°に調整するので、キャンバスラストの発生を回避すると共に第2トレッド22の低転がり抵抗を発揮させて、更なる低燃費化を図ることができる。
なお、S10の処理の結果、キャンバフラグ73aがオフであると判断される場合には(S10:No)、車輪2のキャンバ角は既に第2キャンバ角に調整されているので、S11からS14の処理をスキップして、このキャンバ制御処理を終了する。
これに対し、S2の処理の結果、車両1の走行速度が所定の走行速度以下であると判断される場合には(S2:Yes)、次いで、キャンバフラグ73aがオンであるか否かを判断し(S15)、キャンバフラグ73aがオンであると判断される場合には(S15:Yes)、キャンバ角調整装置44を作動させて車輪2のキャンバ角を第2キャンバ角に調整すると共に(S13)、キャンバフラグ73aをオフして(S14)、このキャンバ制御処理を終了する。
即ち、S2の処理の結果、車両1の走行速度が所定の走行速度以下であると判断される場合には(S2:Yes)、車両1が低速走行中であり、グリップ性能の確保は不要であるので、車輪2のキャンバ角を第2キャンバ角に調整して、低燃費化を図ることができる。
なお、S15の処理の結果、キャンバフラグ73aがオフであると判断される場合には(S15:No)、車輪2のキャンバ角は既に第2キャンバ角に調整されているので、S13及びS14の処理をスキップして、このキャンバ制御処理を終了する。
以上説明したように、本実施の形態によれば、ステアリング63の操舵速度が閾値K以上であると判断されるか又はステアリング63の操舵量が閾値L以上であると判断される場合に(S4:Yes又はS9:Yes)、キャンバ角調整装置44を作動させるので、ステアリング63の操舵量が閾値Lに満たなくとも、ステアリング63の操舵速度が閾値K以上となることで、キャンバ角調整装置44を作動させることができる。これにより、ステアリング63の操舵速度が操舵量よりも早く変化する急旋回時において、ステアリング63が操作されてからキャンバ角調整装置44を作動させるまでのタイムラグを抑制することができ、キャンバ角の調整を素早く行うことができる。
また、車輪2のキャンバ角が第1キャンバ角に調整された状態において、ステアリング63の操舵速度が閾値Kよりも小さいと判断され且つステアリング63の操舵量が閾値Lよりも小さいと判断されるまで(S4:No且つS9:No)、車輪2のキャンバ角を第1キャンバ角に維持するので、ステアリング63の操舵量が閾値Lに満たなくなっても、ステアリング63の操舵速度が閾値Kに満たなくなるまでは、キャンバ角を第1キャンバ角に維持することができる。これにより、ステアリング63の操舵量が絶えず変化するスラローム走行時においても、ステアリング63の操舵量が閾値Lに満たなくなるたびにキャンバ角調整装置44を作動させてしまうことがなく、キャンバ角の頻繁な切り替わりを防止することができる。
ここで、図6を参照して、スラローム走行時における車輪2のキャンバ角の調整について説明する。図6は、スラローム走行時におけるステアリング63の操舵速度および操舵量と車輪2のキャンバ角との関係を時系列に示したグラフである。
図6に示すように、車両1のスラローム走行時には、まず、ステアリング63が一方向へ操作され、ステアリング63の操舵速度が閾値K以上となるか又はステアリング63の操舵量が閾値L以上となることで、車輪2のキャンバ角が第1キャンバ角に調整される。なお、図6では、ステアリング63の操舵速度が閾値K以上となることで、車輪2のキャンバ角が第1キャンバ角に調整される場合が図示されている。
次いで、ステアリング63の切り返し操作に伴いステアリング63が他方向へ操作され始めると、ステアリング63の操舵速度が閾値Kに満たなくなる。しかしながら、ステアリング63の操舵量は操舵速度に対し遅れて変化するため、この時点では、ステアリング63の操舵量が閾値L以上となり、車輪2のキャンバ角は第1キャンバ角に維持される。
その後、ステアリング63の操舵量が閾値Lに満たなくなるが、この時点では、ステアリング63の操舵速度が閾値K以上となることで、車輪2のキャンバ角は第1キャンバ角に維持される。
このように、ステアリング63が繰り返し操作されるスラローム走行時には、ステアリング63の操舵量と異なる周期で操舵速度も絶えず変化する。よって、ステアリング63の操舵量およびその操舵量と異なる周期で絶えず変化する操舵速度に基づいてキャンバ角調整装置44を作動させることで、ステアリング63の操舵量が変化しても、キャンバ角調整装置44を作動させた状態を維持することができる。従って、ステアリング63の操舵量が絶えず変化するスラローム走行時においても、ステアリング63の操舵量が変化するたびにキャンバ角調整装置44を作動させてしまうことがなく、キャンバ角の頻繁な切り替わりを防止することができる。
また、本実施の形態によれば、車輪2のキャンバ角を第1キャンバ角に調整するためのステアリング63の操舵速度の閾値K及びステアリング63の操舵量の閾値Lは、車両1の走行速度に応じて設定されるので、効率的かつ確実にキャンバ角の頻繁な切り替わりを防止することができる。
即ち、ステアリング63の操舵速度または操舵量が同等であったとしても、高速走行時には、低速走行時と比較して、車両1の安全性を確保するべくキャンバ角を調整する必要性が高い。よって、この場合には、閾値K又は閾値Lを低く設定して、ステアリング63の操舵速度または操舵量の変化に対しキャンバ角調整装置44を敏感に作動させることが望ましい。しかしながら、閾値K又は閾値Lを低く設定すると、逆に、低速走行時には、キャンバ角を不必要に調整してしまう。これに対し、閾値K及び閾値Lを車両1の走行速度に応じて設定することで、キャンバ角を不必要に調整してしまうことがなく、効率的にキャンバ角の頻繁な切り替わりを防止することができる。
一方、ステアリング63の操舵速度または操舵量が同等であったとしても、低速走行時には、高速走行時と比較して、キャンバ角調整装置44を作動させてキャンバ角を調整する必要性は低い。よって、この場合には、閾値K又は閾値Lを高く設定して、ステアリング63の操舵速度または操舵量の変化に対しキャンバ角調整装置44を鈍感に作動させることが望ましい。しかしながら、閾値K又は閾値Lを高く設定すると、逆に、高速走行時には、キャンバ角の調整が遅れたりキャンバ角を必要に応じて調整できなくなってしまう。これに対し、閾値K及び閾値Lを車両1の走行速度に応じて設定することで、キャンバ角の調整が遅れたりキャンバ角を必要に応じて調整できなくなってしまうことがなく、確実にキャンバ角の頻繁な切り替わりを防止することができる。
更に、本実施の形態によれば、車輪2のキャンバ角が第1キャンバ角に調整された状態において、ステアリング63の操舵速度が閾値Kよりも小さいと判断され且つステアリング63の操舵量が閾値Lよりも小さいと判断される場合に(S4:No且つS9:No)、所定の時間が経過してからキャンバ角調整装置44を作動させて車輪2のキャンバ角を第2キャンバ角に調整するので、所定の時間が経過するまでは、キャンバ角を第1キャンバ角に維持することができる。これにより、山道などのステアリング63が頻繁に操作される道路状況において、ステアリング63が操作されるたびにキャンバ角調整装置44を作動させてしまうことがなく、キャンバ角の頻繁な切り替わりを防止することができる。
なお、図5に示すフローチャート(キャンバ制御処理)において、請求項1記載の操舵速度取得手段としてはS3の処理が、操舵量取得手段としてはS8の処理が、キャンバ制御手段としてはS6及びS13の処理が、請求項2記載の操舵速度判断手段としてはS4の処理が、操舵量判断手段としてはS9の処理が、第1キャンバ角調整手段としてはS6の処理が、第1キャンバ角維持手段としてはS5の処理(S5:Yes)が、請求項3記載の車速取得手段としてはS1の処理が、請求項4記載の第2キャンバ角調整手段としてはS13の処理が、それぞれ該当する。
次いで、図7から図11を参照して、第2実施の形態について説明する。なお、第1実施の形態と同一の部分については同一の符号を付して、その説明を省略する。また、第2実施の形態では、第1実施の形態における車両1を車両用制御装置200によって制御するものとする。
図7は、第2実施の形態における車両用制御装置200の電気的構成を示したブロック図である。車両用制御装置200は、図7に示すように、CPU71、ROM272及びRAM73を備え、それらがバスライン74を介して入出力ポート75に接続されている。また、入出力ポート75には、車輪駆動装置3等の装置が接続されている。
ROM272は、CPU71により実行される制御プログラム(例えば、図10に図示されるフローチャートのプログラム)や固定値データ等を格納した書き換え不能な不揮発性のメモリであり、図7に示すように、アクセル操作速度マップ272a及びアクセル操作量マップ272bが設けられている。
ここで、図8を参照して、アクセル操作速度マップ272a及びアクセル操作量マップ272bについて説明する。図8(a)は、アクセル操作速度マップ272aの内容を模式的に示した模式図である。アクセル操作速度マップ272aは、車両1の走行速度と車輪2のキャンバ角を第1キャンバ角に調整するためのアクセルペダル61の操作速度(踏み込み速度)の閾値Mとの関係を規定したマップである。CPU71は、このアクセル操作速度マップ272aの内容に基づいて、現在の車両1の走行速度において車輪2のキャンバ角を第1キャンバ角に調整するための閾値Mを取得する。
このアクセル操作速度マップ272aによれば、図8(a)に示すように、閾値Mは、車両1の走行速度が0の場合に最小値Mminに規定され、車両1の走行速度が増加するに従って曲線的に大きくなるように規定されている。そして、車両1の走行速度がVmax(走行速度の最大値)の場合に最大値Mmaxに規定されている。
図8(b)は、アクセル操作量マップ272bの内容を模式的に示した模式図である。アクセル操作量マップ272bは、車両1の走行速度と車輪2のキャンバ角を第1キャンバ角に調整するためのアクセルペダル61の操作量(踏み込み量)の閾値Nとの関係を規定したマップである。CPU71は、このアクセル操作量マップ272bの内容に基づいて、現在の車両1の走行速度において車輪2のキャンバ角を第1キャンバ角に調整するための閾値Nを取得する。
このアクセル操作量マップ272bによれば、図8(b)に示すように、閾値Nは、車両1の走行速度が0の場合に最小値Nminに規定され、車両1の走行速度が増加するに従って曲線的に大きくなるように規定されている。そして、車両1の走行速度がVmax(走行速度の最大値)の場合に最大値Nmaxに規定されている。
次いで、図9を参照して、第2実施の形態におけるキャンバ制御処理について説明する。図9は、第2実施の形態におけるキャンバ制御処理を示すフローチャートである。この処理は、車両用制御装置200の電源が投入されている間、CPU71によって繰り返し(例えば、0.2秒間隔で)実行される処理であり、各ペダル61,62の操作速度(踏み込み速度)及び操作量(踏み込み量)に基づいて車輪2のキャンバ角を調整する処理である。
CPU71は、第2実施の形態におけるキャンバ制御処理に関し、まず、車両1の走行速度を取得すると共に(S1)、アクセルペダル61の操作速度(踏み込み速度)を取得し(S23)、その取得したアクセルペダル61の操作速度が閾値M以上であるか否かを判断する(S24)。なお、S24の処理では、まず、S1の処理で取得した車両1の走行速度に対応する閾値Mをアクセル操作速度マップ272aから読み出し、その読み出した閾値MとS23の処理で取得したアクセルペダル61の操作速度とを比較して、現在のアクセルペダル61の操作速度が閾値M以上であるか否かを判断する。
その結果、アクセルペダル61の操作速度が閾値M以上であると判断される場合には(S24:Yes)、次いで、キャンバフラグ73aがオンであるか否かを判断し(S5)、キャンバフラグ73aがオフであると判断される場合には(S5:No)、キャンバ角調整装置44を作動させて車輪2のキャンバ角を第1キャンバ角に調整すると共に(S6)、キャンバフラグ73aをオンして(S7)、このキャンバ制御処理を終了する。
即ち、S24の処理の結果、アクセルペダル61の操作速度が閾値M以上であると判断される場合には、運転者によってアクセルペダル61が急操作され、車両1が急加速するので、車輪2のキャンバ角を第1キャンバ角に調整して、車輪2にネガティブキャンバを付与する。これにより、キャンバスラストを発生させると共に第1トレッド21の高グリップ特性を発揮させて、グリップ性能を確保することができる。
なお、S5の処理の結果、キャンバフラグ73aがオンであると判断される場合には(S5:Yes)、車輪2のキャンバ角は既に第1キャンバ角に調整されているので、S6及びS7の処理をスキップして、このキャンバ制御処理を終了する。
一方、S24の処理の結果、アクセルペダル61の操作速度が閾値Mよりも小さいと判断される場合には(S24:No)、次いで、アクセルペダル61の操作量(踏み込み量)を取得し(S28)、その取得したアクセルペダル61の操作量が閾値N以上であるか否かを判断する(S29)。なお、S29の処理では、まず、S1の処理で取得した車両1の走行速度に対応する閾値Nをアクセル操作量マップ272bから読み出し、その読み出した閾値NとS28の処理で取得したアクセルペダル61の操作量とを比較して、現在のアクセルペダル61の操作量が閾値N以上であるか否かを判断する。
その結果、アクセルペダル61の操作量が閾値N以上であると判断される場合には(S29:Yes)、キャンバフラグ73aがオンであるか否かを判断し(S5)、キャンバフラグ73aがオフであると判断される場合には(S5:No)、キャンバ角調整装置44を作動させて車輪2のキャンバ角を第1キャンバ角に調整すると共に(S6)、キャンバフラグ73aをオンして(S7)、このキャンバ制御処理を終了する。
即ち、S29の処理の結果、アクセルペダル61の操作量が閾値N以上であると判断される場合には、急加速でなくとも、車両1が加速中であるので、車輪2のキャンバ角を第1キャンバ角に調整して、車輪2にネガティブキャンバを付与する。これにより、キャンバスラストを発生させると共に第1トレッド21の高グリップ特性を発揮させて、グリップ性能を確保することができる。
なお、S5の処理の結果、キャンバフラグ73aがオンであると判断される場合には(S5:Yes)、車輪2のキャンバ角は既に第1キャンバ角に調整されているので、S6及びS7の処理をスキップして、このキャンバ制御処理を終了する。
一方、S29の処理の結果、アクセルペダル61の操作量が閾値Nよりも小さいと判断される場合には(S29:No)、次いで、ブレーキペダル62の操作速度(踏み込み速度)を取得し(S30)、その取得したブレーキペダル62の操作速度が所定値以上であるか否かを判断する(S31)。なお、S31の処理では、S30の処理で取得したブレーキペダル62の操作速度と、ROM272に予め記憶されている閾値とを比較して、現在のブレーキペダル62の操作速度が所定値以上であるか否かを判断する。
その結果、ブレーキペダル62の操作速度が所定値以上であると判断される場合には(S31:Yes)、次いで、キャンバフラグ73aがオンであるか否かを判断し(S5)、キャンバフラグ73aがオフであると判断される場合には(S5:No)、キャンバ角調整装置44を作動させて車輪2のキャンバ角を第1キャンバ角に調整すると共に(S6)、キャンバフラグ73aをオンして(S7)、このキャンバ制御処理を終了する。
即ち、S31の処理の結果、ブレーキペダル62の操作速度が所定値以上であると判断される場合には、運転者によってブレーキペダル62が操作され、車両1が制動中であるので、車輪2のキャンバ角を第1キャンバ角に調整して、車輪2にネガティブキャンバを付与する。これにより、キャンバスラストを発生させると共に第1トレッド21の高グリップ特性を発揮させて、グリップ性能を確保することができる。
なお、S5の処理の結果、キャンバフラグ73aがオンであると判断される場合には(S5:Yes)、車輪2のキャンバ角は既に第1キャンバ角に調整されているので、S6及びS7の処理をスキップして、このキャンバ制御処理を終了する。
一方、S31の処理の結果、ブレーキペダル62の操作速度が所定値よりも小さいと判断される場合には(S31:No)、次いで、ブレーキペダル62の操作量(踏み込み量)を取得し(S32)、その取得したブレーキペダル62の操作量が所定値以上であるか否かを判断する(S33)。なお、S33の処理では、S32の処理で取得したブレーキペダル62の操作量と、ROM272に予め記憶されている閾値とを比較して、現在のブレーキペダル62の操作量が所定値以上であるか否かを判断する。
その結果、ブレーキペダル62の操作量が所定値以上であると判断される場合には(S33:Yes)、キャンバフラグ73aがオンであるか否かを判断し(S5)、キャンバフラグ73aがオフであると判断される場合には(S5:No)、キャンバ角調整装置44を作動させて車輪2のキャンバ角を第1キャンバ角に調整すると共に(S6)、キャンバフラグ73aをオンして(S7)、このキャンバ制御処理を終了する。
即ち、S33の処理の結果、ブレーキペダル62の操作量が所定値以上であると判断される場合には、運転者によってブレーキペダル62が操作され、車両1が制動中であるので、車輪2のキャンバ角を第1キャンバ角に調整して、車輪2にネガティブキャンバを付与する。これにより、キャンバスラストを発生させると共に第1トレッド21の高グリップ特性を発揮させて、グリップ性能を確保することができる。
なお、S5の処理の結果、キャンバフラグ73aがオンであると判断される場合には(S5:Yes)、車輪2のキャンバ角は既に第1キャンバ角に調整されているので、S6及びS7の処理をスキップして、このキャンバ制御処理を終了する。
一方、S33の処理の結果、ブレーキペダル62の操作量が所定値よりも小さいと判断される場合には(S33:No)、次いで、キャンバフラグ73aがオンであるか否かを判断し(S10)、キャンバフラグ73aがオンであると判断される場合には(S10:Yes)、計時装置80により計時を開始する(S11)。
次いで、S11の処理で計時を開始してから所定の時間(例えば3秒など)が経過したか否かを判断し(S12)、所定の時間が経過していないと判断される場合には(S12:No)、所定の時間が経過したと判断されるまでS12の処理を繰り返し実行する。
一方、S12の処理の結果、所定の時間が経過したと判断される場合には(S12:Yes)、車輪2のキャンバ角を第2キャンバ角に調整すると共に(S13)、キャンバフラグ73aをオフして(S14)、このキャンバ制御処理を終了する。
即ち、S24の処理の結果、アクセルペダル61の操作速度が閾値Mよりも小さいと判断され且つS29の処理の結果、アクセルペダル61の操作量が閾値Nよりも小さいと判断される場合(S24:No且つS29:No)、S31の処理の結果、ブレーキペダル62の操作速度が所定値よりも小さいと判断され且つS33の処理の結果、ブレーキペダル62の操作量が所定値よりも小さいと判断される場合には(S31:No且つS33:No)、車両1が一定の走行速度で走行中であり、グリップ性能の確保は不要であるので、車輪2のキャンバ角を第2キャンバ角に調整して、ネガティブキャンバの付与を中止する。これにより、キャンバスラストを低減すると共に第1トレッド21の高グリップ特性の発揮を抑制して、低燃費化を図ることができる。更に、本実施の形態では、第2キャンバ角として車輪2のキャンバ角を0°に調整するので、キャンバスラストの発生を回避すると共に第2トレッド22の低転がり抵抗を発揮させて、更なる低燃費化を図ることができる。
なお、S10の処理の結果、キャンバフラグ73aがオフであると判断される場合には(S10:No)、車輪2のキャンバ角は既に第2キャンバ角に調整されているので、S11からS14の処理をスキップして、このキャンバ制御処理を終了する。
以上説明したように、本実施の形態によれば、アクセルペダル61の操作速度が閾値M以上であると判断されるか又はアクセルペダル61の操作量が閾値N以上であると判断される場合に(S24:Yes又はS29:Yes)、キャンバ角調整装置44を作動させるので、アクセルペダル61の操作量が閾値Nに満たなくとも、アクセルペダル61の操作速度が閾値M以上となることで、キャンバ角調整装置44を作動させることができる。これにより、アクセルペダル61の操作速度が操作量よりも早く変化する急加速時において、アクセルペダル61が操作されてからキャンバ角調整装置44を作動させるまでのタイムラグを抑制することができ、キャンバ角の調整を素早く行うことができる。
また、車輪2のキャンバ角が第1キャンバ角に調整された状態において、アクセルペダル61の操作速度が閾値Mよりも小さいと判断され且つアクセルペダル61の操作量が閾値Nよりも小さいと判断されるまで(S24:No且つS29:No)、車輪2のキャンバ角を第1キャンバ角に維持するので、アクセルペダル61の操作速度が閾値Mに満たなくなっても、アクセルペダル61の操作量が閾値Nに満たなくなるまでは、キャンバ角を第1キャンバ角に維持することができる。これにより、加速時において、目標の走行速度となるまで車輪2のキャンバ角を維持することができ、キャンバ角の切り替わりを防止することができる。
同様に、ブレーキペダル62の操作速度が所定値以上であると判断されるか又はブレーキペダル62の操作量が所定値以上であると判断される場合に(S31:Yes又はS33:Yes)、キャンバ角調整装置44を作動させるので、ブレーキペダル62の操作量が所定値に満たなくとも、ブレーキペダル62の操作速度が所定値以上となることで、キャンバ角調整装置44を作動させることができる。これにより、ブレーキペダル62の操作速度が操作量よりも早く変化する急制動時において、ブレーキペダル62が操作されてからキャンバ角調整装置44を作動させるまでのタイムラグを抑制することができ、キャンバ角の調整を素早く行うことができる。
また、車輪2のキャンバ角が第1キャンバ角に調整された状態において、ブレーキペダル62の操作速度が所定値よりも小さいと判断され且つブレーキペダル62の操作量が所定値よりも小さいと判断されるまで(S31:No且つS33:No)、車輪2のキャンバ角を第1キャンバ角に維持するので、ブレーキペダル62の操作速度が所定値に満たなくなっても、ブレーキペダル62の操作量が所定値に満たなくなるまでは、キャンバ角を第1キャンバ角に維持することができる。これにより、制動時において、目標の走行速度となるまで車輪2のキャンバ角を維持することができ、キャンバ角の切り替わりを防止することができる。
ここで、図10を参照して、加速時および制動時における車輪2のキャンバ角の調整について説明する。図10は、アクセルペダル61の操作速度および操作量と車輪2のキャンバ角との関係およびブレーキペダル62の操作速度および操作量と車輪2のキャンバ角との関係を時系列に示したグラフである。
図10に示すように、車両1の加速時には、まず、アクセルペダル61が操作され、アクセルペダル61の操作速度が閾値M以上となるか又はアクセルペダル61の操作量が閾値N以上となることで、車輪2のキャンバ角が第1キャンバ角に調整される。なお、図10では、アクセルペダル61の操作速度が閾値M以上となることで、車輪2のキャンバ角が第1キャンバ角に調整される場合が図示されている。
次いで、アクセルペダル61の操作が緩められると、アクセルペダル61の操作速度が閾値Mに満たなくなる。しかしながら、アクセルペダル61の操作が緩められても、アクセルペダル61の操作量が閾値N以上であれば、車輪2のキャンバ角は第1キャンバ角に維持される。
また、図10に示すように、車両1の制動時には、まず、ブレーキペダル62が操作され、ブレーキペダル62の操作速度が所定値以上となるか又はブレーキペダル62の操作量が所定値以上となることで、車輪2のキャンバ角が第1キャンバ角に調整される。なお、図10では、ブレーキペダル62の操作速度が所定値以上となることで、車輪2のキャンバ角が第1キャンバ角に調整される場合が図示されている。
次いで、ブレーキペダル62の操作が緩められると、ブレーキペダル62の操作速度が所定値に満たなくなる。しかしながら、ブレーキペダル62の操作が緩められても、ブレーキペダル62の操作量が所定値以上であれば、車輪2のキャンバ角は第1キャンバ角に維持される。
ここで、例えば、各ペダル61,62の操作量のみに基づいてキャンバ角調整装置44を作動させる場合には、各ペダル61,62の僅かな操作に伴ってキャンバ角調整装置44を不必要に作動させてしまうことを防止するべく、一般に(本実施の形態の場合と同様に)、各ペダル61,62の操作量に対しキャンバ角調整装置44を作動させるための閾値が設けられている。
しかしながら、キャンバ角調整装置44を作動させるための閾値を設けると、各ペダル61,62が操作されてからキャンバ角調整装置44が作動するまでにタイムラグが生じ、急加速時や急制動時においてキャンバ角の調整に遅れが生じるという問題点があった。
これに対し、本実施の形態によれば、各ペダル61,62の操作速度および操作量に基づいてキャンバ角調整装置44を作動させることで、各ペダル61,62の操作速度が操作量よりも早く変化する急加速時や急制動時において、各ペダル61,62が操作されてからキャンバ角調整装置44を作動させるまでのタイムラグを抑制することができる。従って、急加速時や急制動時におけるキャンバ角の調整を素早く行うことができる。
また、例えば、各ペダル61,62の操作速度のみに基づいてキャンバ角調整装置44を作動させる場合には、各ペダル61,62の操作速度が閾値に満たなくなると、加速時や制動時であっても、キャンバ角調整装置44が作動してしまい、目標の走行速度となる前にキャンバ角が切り替わってしまうという問題点があった。
これに対し、本実施の形態によれば、各ペダル61,62の操作速度および操作量に基づいてキャンバ角調整装置44を作動させることで、加速時や制動時において、目標の走行速度となるまで車輪2のキャンバ角を維持することができる。従って、加速時や制動時におけるキャンバ角の切り替わりを防止することができる。
また、本実施の形態によれば、車輪2のキャンバ角を第1キャンバ角に調整するためのアクセルペダル61の操作速度の閾値M及びアクセルペダル61の操作量の閾値Nは、車両1の走行速度に応じて設定されるので、効率的かつ確実に加速時におけるキャンバ角の切り替わりを防止することができる。
即ち、アクセルペダル61の操作速度または操作量が同等であったとしても、低速走行時には、高速走行時と比較して、車両1の加速する割合が高いので、車両1の安全性を確保するべくキャンバ角を調整する必要性が高い。よって、この場合には、閾値M又は閾値Nを低く設定して、アクセルペダル61の操作速度または操作量の変化に対しキャンバ角調整装置44を敏感に作動させることが望ましい。しかしながら、閾値M又は閾値Nを低く設定すると、逆に、高速走行時には、車両1の加速する割合が低いにも関わらず、キャンバ角を不必要に調整してしまう。これに対し、閾値M及び閾値Nを車両1の走行速度に応じて設定することで、キャンバ角を不必要に調整してしまうことがなく、効率的にキャンバ角の切り替わりを防止することができる。
一方、アクセルペダル61の操作速度または操作量が同等であったとしても、高速走行時には、低速走行時と比較して、車両1の加速する割合が低いので、キャンバ角調整装置44を作動させてキャンバ角を調整する必要性は低い。よって、この場合には、閾値M又は閾値Nを高く設定して、アクセルペダル61の操作速度または操作量の変化に対しキャンバ角調整装置44を鈍感に作動させることが望ましい。しかしながら、閾値M又は閾値Nを高く設定すると、逆に、低速走行時には、キャンバ角の調整が遅れたりキャンバ角を必要に応じて調整できなくなってしまう。これに対し、閾値M及び閾値Nを車両1の走行速度に応じて設定することで、キャンバ角の調整が遅れたりキャンバ角を必要に応じて調整できなくなってしまうことがなく、確実にキャンバ角の切り替わりを防止することができる。
更に、本実施の形態によれば、車輪2のキャンバ角が第1キャンバ角に調整された状態において、アクセルペダル61の操作速度が閾値Mよりも小さいと判断され且つアクセルペダル61の操作量が閾値Nよりも小さいと判断される場合に(S24:No且つS29:No)、所定の時間が経過してからキャンバ角調整装置44を作動させて車輪2のキャンバ角を第2キャンバ角に調整するので、所定の時間が経過するまでは、キャンバ角を第1キャンバ角に維持することができる。これにより、上り坂などのアクセルペダル61が頻繁に操作される道路状況において、アクセルペダル61が操作されるたびにキャンバ角調整装置44を作動させてしまうことがなく、キャンバ角の頻繁な切り替わりを防止することができる。
同様に、車輪2のキャンバ角が第1キャンバ角に調整された状態において、ブレーキペダル62の操作速度が所定値よりも小さいと判断され且つブレーキペダル62の操作量が所定値よりも小さいと判断される場合に(S31:No且つS33:No)、所定の時間が経過してからキャンバ角調整装置44を作動させて車輪2のキャンバ角を第2キャンバ角に調整するので、下り坂などのブレーキペダル62が頻繁に操作される道路状況において、ブレーキペダル62が操作されるたびにキャンバ角調整装置44を作動させてしまうことがなく、キャンバ角の頻繁な切り替わりを防止することができる。
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
例えば、上記各実施の形態で挙げた数値は一例であり、他の数値を採用することは当然可能である。また、上記各実施の形態における構成の一部または全部を他の実施の形態における構成の一部または全部と組み合わせることは当然可能である。
上記各実施の形態では、全ての車輪2のキャンバ角を第1キャンバ角および第2キャンバ角に調整する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、前輪2FL,2FR又は後輪2RL,2RRのいずれか一方のみを第1キャンバ角および第2キャンバ角に調整しても良い。
上記各実施の形態では、車輪2のキャンバ角が第1キャンバ角に調整された状態において、所定の時間が経過してからキャンバ角を第2キャンバ角に調整する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、所定の時間の経過を待たずして、キャンバ角を第2キャンバ角に調整する構成としても良い。この場合には、キャンバ制御処理の簡素化を図ることができる。
上記各実施の形態では説明を省略したが、車輪2のキャンバ角が第1キャンバ角に調整された状態において、車両1が走行予定の経路における道路の情報をナビゲーション装置82により取得する手段と、その取得した道路の情報が所定の条件を満たすかを判断する手段と、その判断結果が所定の条件を満たすと判断される場合に、車輪2のキャンバ角を第1キャンバ角に維持する手段とを備える構成としても良い。これにより、走行予定の経路が所定の条件を満たす場合には、キャンバ角を第1キャンバ角に維持することができるので、キャンバ角の頻繁な切り替わりを防止することができる。なお、所定の条件としては、例えば、走行予定の経路が所定半径以下のカーブとなっている場合、走行予定の経路が右折や左折である場合、走行予定の経路が上り坂や下り坂である場合、走行予定の経路に一旦停止や信号機がある場合などが例示される。
上記各実施の形態では、ステアリング63の操舵速度の閾値K及び操舵量の閾値L、アクセルペダル61の操作速度の閾値M及び操作量の閾値Nが車両1の走行速度の変化に対して曲線的に変化する場合を説明したが、かかる構成は一例であり、他の構成とすることは当然可能である。例えば、かかる変化を直線的に変化させることは当然可能である。また、ステアリング63の操舵速度の閾値K及び操舵量の閾値Lを車両1の走行速度が0の場合から規定しても良い。
上記各実施の形態では、1のステアリング操舵速度マップ72a及びステアリング操舵量マップ72b、1のアクセル操作速度マップ272a及びアクセル操作量マップ272bを備える場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、複数のステアリング操舵速度マップ72a及びステアリング操舵量マップ72b、アクセル操作速度マップ272a及びアクセル操作量マップ272bを備えることは当然可能である。
例えば、道路状況に対応してそれぞれ異なる内容で構成された複数のマップ(例えば、乾燥舗装路用マップ、雨天舗装路用マップ、未舗装路用マップなど)を準備すると共に、車両1が走行予定の経路における道路の情報をナビゲーション装置82により取得し、その取得した道路の情報に対応するマップを用いて、ステアリング63の操舵速度の閾値K及び操舵量の閾値L、アクセルペダル61の操作速度の閾値M及び操作量の閾値Nを取得するように構成しても良い。
上記各実施の形態では、第1トレッド21が車両1の内側に、第2トレッド22が車両1の外側に、それぞれ配設される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、第1トレッド21が車両1の外側に、第2トレッド22が車両1の内側に、それぞれ配設されていても良い。この場合には、上述した第1キャンバ状態において、車輪2のキャンバ角が第2キャンバ角に調整されると共に、第2キャンバ状態において、車輪2のキャンバ角が第1キャンバ角に調整され、車輪2にポジティブキャンバが付与されるように構成することで、上記各実施の形態の場合と同様に、グリップ性能を確保することができると共に省燃費化を図ることができる。
上記第1実施の形態では、車両1の走行速度が所定の走行速度以下である場合には、車輪2のキャンバ角を第2キャンバ角に調整する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、車両1の走行速度が所定の走行速度以下であっても、ステアリング63の操舵速度の閾値K及び操舵量の閾値Lに応じてキャンバ角を第1キャンバ角に調整する構成としても良い。
上記第2実施の形態では、車両1の走行速度がVmax(走行速度の最大値)の場合に、アクセルペダル61の操作速度の閾値Mが最大値Mmaxに、操作量の閾値Nが最大値Nmaxに、それぞれ規定される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、車両1の走行速度がVmaxよりも小さい走行速度において、アクセルペダル61の操作速度の閾値Mを最大値Mmaxに、操作量の閾値Nを最大値Nmaxに、それぞれ規定しても良い。これにより、例え車両1の加速する割合が低い高速走行時にあっても、車両1の走行速度が所定の走行速度以上の場合には、車輪2のキャンバ角を第1キャンバ角に調整するための閾値を低く設定することで、車両1の安全性を確保することができる。
以下に、本発明の車両用制御装置に加えて、上記第2実施の形態に含まれる発明の概念を示す。
回転駆動可能に構成される車輪と、その車輪を回転駆動するために操作される操作部材と、前記車輪のキャンバ角を調整するキャンバ角調整装置とを備えた車両に用いられる車両用制御装置であって、前記操作部材の操作速度を取得する操作速度取得手段と、前記操作部材の操作量を取得する操作量取得手段と、前記操作速度取得手段により取得された前記操作部材の操作速度および前記操作量取得手段により取得された前記操作部材の操作量に基づいて、前記キャンバ角調整装置を作動させるキャンバ制御手段と、を備えている車両用制御装置A1。
車両用制御装置A1によれば、キャンバ制御手段は、操作速度取得手段により取得された操作部材の操作速度および操作量取得手段により取得された操作部材の操作量に基づいて、キャンバ角調整装置を作動させる。
よって、操作部材の操作量および操作部材の操作速度に基づいてキャンバ角調整装置を作動させることで、操作部材の操作速度が操作量よりも早く変化する急加速時において、操作部材が操作されてからキャンバ角調整装置を作動させるまでのタイムラグを抑制することができる。従って、急加速時におけるキャンバ角の調整を素早く行うことができる。
また、操作部材の操作量および操作部材の操作速度に基づいてキャンバ角調整装置を作動させることで、加速時において、操作部材の操作速度が緩められても、目標の走行速度となるまで車輪のキャンバ角を維持することができる。従って、加速時におけるキャンバ角の切り替わりを防止することができる。
回転駆動可能に構成される車輪と、その車輪の回転駆動を制動するために操作される操作部材と、前記車輪のキャンバ角を調整するキャンバ角調整装置とを備えた車両に用いられる車両用制御装置であって、前記操作部材の操作速度を取得する操作速度取得手段と、前記操作部材の操作量を取得する操作量取得手段と、前記操作速度取得手段により取得された前記操作部材の操作速度および前記操作量取得手段により取得された前記操作部材の操作量に基づいて、前記キャンバ角調整装置を作動させるキャンバ制御手段と、を備えている車両用制御装置A2。
車両用制御装置A2によれば、キャンバ制御手段は、操作速度取得手段により取得された操作部材の操作速度および操作量取得手段により取得された操作部材の操作量に基づいて、キャンバ角調整装置を作動させる。
よって、操作部材の操作量および操作部材の操作速度に基づいてキャンバ角調整装置を作動させることで、操作部材の操作速度が操作量よりも早く変化する急制動時において、操作部材が操作されてからキャンバ角調整装置を作動させるまでのタイムラグを抑制することができる。従って、急制動時におけるキャンバ角の調整を素早く行うことができる。
また、操作部材の操作量および操作部材の操作速度に基づいてキャンバ角調整装置を作動させることで、制動時において、操作部材の操作速度が緩められても、目標の走行速度となるまで車輪のキャンバ角を維持することができる。従って、制動時におけるキャンバ角の切り替わりを防止することができる。
車両用制御装置A1又はA2において、前記操作速度取得手段により取得された前記操作部材の操作速度が所定の操作速度以上であるかを判断する操作速度判断手段と、前記操作量取得手段により取得された前記操作部材の操作量が所定の操作量以上であるかを判断する操作量判断手段と、を備え、前記キャンバ制御手段は、前記操作速度判断手段により前記操作部材の操作速度が所定の操作速度以上であると判断されるか又は前記操作量判断手段により前記操作部材の操作量が所定の操作量以上であると判断される場合に、前記キャンバ角調整装置を作動させて前記車輪のキャンバ角を第1キャンバ角に調整する第1キャンバ角調整手段と、その第1キャンバ角調整手段により前記車輪のキャンバ角が第1キャンバ角に調整された状態において、前記操作速度判断手段により前記操作部材の操作速度が所定の操作速度よりも小さいと判断され且つ前記操作量判断手段により前記操作部材の操作量が所定の操作量よりも小さいと判断されるまで、前記車輪のキャンバ角を第1キャンバ角に維持する第1キャンバ角維持手段と、を備えている車両用制御装置A3。
車両用制御装置A3によれば、キャンバ制御手段は、操作速度判断手段により操作部材の操作速度が所定の操作速度以上であると判断されるか又は操作量判断手段により操作部材の操作量が所定の操作量以上であると判断される場合に、キャンバ角調整装置を作動させる第1キャンバ角調整手段を備えているので、操作部材の操作量が所定の操作量に満たなくとも、操作部材の操作速度が所定の操作速度以上となることで、キャンバ角調整装置を作動させることができる。これにより、操作部材の操作速度が操作量よりも早く変化する急加速時または急制動時において、操作部材が操作されてからキャンバ角調整装置を作動させるまでのタイムラグを抑制することができ、キャンバ角の調整を素早く行うことができる。
更に、第1キャンバ角調整手段は、車輪のキャンバ角を第1キャンバ角に調整するので、例えば、第1キャンバ角を、キャンバスラストが発生するキャンバ角としたり車輪の高グリップ特性が発揮されるキャンバ角とすることで、グリップ性能を確保することができる。
また、キャンバ制御手段は、第1キャンバ角調整手段により車輪のキャンバ角が第1キャンバ角に調整された状態において、操作速度判断手段により操作部材の操作速度が所定の操作速度よりも小さいと判断され且つ操作量判断手段により操作部材の操作量が所定の操作量よりも小さいと判断されるまで、車輪のキャンバ角を第1キャンバ角に維持する第1キャンバ角維持手段を備えているので、操作部材の操作量が所定の操作量に満たなくなっても、操作部材の操作速度が所定の操作速度に満たなくなるまでは、キャンバ角を第1キャンバ角に維持することができる。これにより、加速時または制動時において、操作部材の操作速度が緩められても、キャンバ角調整装置を作動させてしまうことがなく、キャンバ角の切り替わりを防止することができる。
車両用制御装置A1に従属する車両用制御装置A3において、前記車両の走行速度を取得する車速取得手段を備え、前記操作速度判断手段の判断基準となる前記所定の操作速度および前記操作量判断手段の判断基準となる前記所定の操作量の少なくとも一方は、前記車速取得手段により取得された前記車両の走行速度に応じて設定される車両用制御装置A4。
車両用制御装置A4によれば、操作速度判断手段の判断基準となる操作速度および操作量判断手段の判断基準となる操作量の少なくとも一方は、車速取得手段により取得された車両の走行速度に応じて設定されるので、効率的かつ確実にキャンバ角の切り替わりを防止することができるという効果がある。
即ち、操作部材の操作量または操作速度が同等であったとしても、低速走行時には、高速走行時と比較して、車両の加速する割合が高いので、車両の安全性を確保するべくキャンバ角を調整する必要性が高い。よって、この場合には、操作速度判断手段の判断基準となる操作速度または操作量判断手段の判断基準となる操作量を低く設定して、操作部材の操作速度または操作量の変化に対しキャンバ角調整装置を敏感に作動させることが望ましい。しかしながら、操作速度判断手段の判断基準となる操作速度または操作量判断手段の判断基準となる操作量を低く設定すると、逆に、高速走行時には、車両の加速する割合が低いにも関わらず、キャンバ角を不必要に調整してしまう。これに対し、車両用制御装置A4によれば、操作速度判断手段の判断基準となる操作速度および操作量判断手段の判断基準となる操作量の少なくとも一方を車両の走行速度に応じて設定することで、キャンバ角を不必要に調整してしまうことがなく、効率的にキャンバ角の切り替わりを防止することができる。
一方、操作部材の操作速度または操作量が同等であったとしても、高速走行時には、低速走行時と比較して、車両の加速する割合が低いので、キャンバ角調整装置を作動させてキャンバ角を調整する必要性は低い。よって、この場合には、操作速度判断手段の判断基準となる操作速度または操作量判断手段の判断基準となる操作量を高く設定して、操作部材の操作速度または操作量の変化に対しキャンバ角調整装置を鈍感に作動させることが望ましい。しかしながら、操作速度判断手段の判断基準となる操作速度または操作量判断手段の判断基準となる操作量を高く設定すると、逆に、低速走行時には、キャンバ角の調整が遅れたりキャンバ角を必要に応じて調整できなくなってしまう。これに対し、車両用制御装置A4によれば、操作速度判断手段の判断基準となる操作速度および操作量判断手段の判断基準となる操作量の少なくとも一方を車両の走行速度に応じて設定することで、キャンバ角の調整が遅れたりキャンバ角を必要に応じて調整できなくなってしまうことがなく、確実にキャンバ角の切り替わりを防止することができる。
車両用制御装置A3又はA4において、前記車輪は、第1トレッドと、その第1トレッドに対して前記車両の内側または外側に配置される第2トレッドと、を備え、前記第1トレッドが前記第2トレッドに比してグリップ力の高い特性に構成されると共に、前記第2トレッドが前記第1トレッドに比して転がり抵抗の小さい特性に構成され、前記キャンバ制御手段は、前記操作速度判断手段により前記操作部材の操作速度が所定の操作速度よりも小さいと判断され且つ前記操作量判断手段により前記操作部材の操作量が所定の操作量よりも小さいと判断される場合に、前記キャンバ角調整装置を作動させて前記車輪のキャンバ角を第2キャンバ角に調整する第2キャンバ角調整手段を備え、前記第1キャンバ角調整手段により前記車輪のキャンバ角が第1キャンバ角に調整された状態では、前記第2キャンバ角調整手段により前記車輪のキャンバ角が第2キャンバ角に調整された状態よりも、前記第2トレッドの接地に対する前記第1トレッドの接地比率が大きくなる一方、前記第2キャンバ角調整手段により前記車輪のキャンバ角が第2キャンバ角に調整された状態では、前記第1キャンバ角調整手段により前記車輪のキャンバ角が第1キャンバ角に調整された状態よりも、前記第1トレッドの接地に対する前記第2トレッドの接地比率が大きくなる車両用制御装置A5。
車両用制御装置A5によれば、キャンバ制御手段は、操作速度判断手段により操作部材の操作速度が所定の操作速度よりも小さいと判断され且つ操作量判断手段により操作部材の操作量が所定の操作量よりも小さいと判断される場合に、キャンバ角調整装置を作動制御して車輪のキャンバ角を第2キャンバ角に調整する第2キャンバ角調整手段を備え、第1キャンバ角調整手段により車輪のキャンバ角が第1キャンバ角に調整された状態では、第2キャンバ角調整手段により車輪のキャンバ角が第2キャンバ角に調整された状態よりも、第2トレッドの接地に対する第1トレッドの接地比率が大きくなるので、車輪のキャンバ角が第1キャンバ角に調整された状態では、第1トレッドのグリップ力の高い特性を発揮させて、グリップ性能を確保することができる。
一方、第2キャンバ角調整手段により車輪のキャンバ角が第2キャンバ角に調整された状態では、第1キャンバ角調整手段により車輪のキャンバ角が第1キャンバ角に調整された状態よりも、第1トレッドの接地に対する第2トレッドの接地比率が大きくなるので、車輪のキャンバ角が第2キャンバ角に調整された状態では、第2トレッドの転がり抵抗の小さい特性を発揮させて、低燃費化を図ることができる。
また、第2キャンバ角調整手段は、車輪のキャンバ角を第2キャンバ角に調整するので、例えば、第2キャンバ角を、キャンバスラストが低減されるキャンバ角とすることで、低燃費化を図ることができる。
なお、図9に示すフローチャート(キャンバ制御処理)において、車両用制御装置A1記載の操作速度取得手段としてはS23の処理が、操作量取得手段としてはS28の処理が、キャンバ制御手段としてはS6及びS13の処理が、車両用制御装置A2記載の操作速度取得手段としてはS30の処理が、操作量取得手段としてはS32の処理が、キャンバ制御手段としてはS6及びS13の処理が、車両用制御装置A3記載の操作速度判断手段としてはS24及びS31の処理が、操作量判断手段としてはS29及びS33の処理が、第1キャンバ角調整手段としてはS6の処理が、第1キャンバ角維持手段としてはS5の処理(S5:Yes)が、車両用制御装置A4記載の車速取得手段としてはS1の処理が、車両用制御装置A5記載の第2キャンバ角調整手段としてはS13の処理が、それぞれ該当する。