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JP2010205937A - 発光素子形成用複合基板、発光ダイオード素子、その製造方法 - Google Patents

発光素子形成用複合基板、発光ダイオード素子、その製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】上面に良質な窒化物系発光ダイオードを容易に形成することができ、得られた基板付発光ダイオードは白色等の任意色の発光が可能な発光素子として機能する、発光素子形成用複合基板の製造方法を提供する。
【解決手段】蛍光を発する付活剤を少なくとも1種以上含有する(111)面を主面とするY3Al5O12基板1を、H2ガス、N2ガス、NH3ガスの混合ガス雰囲気のもと1000〜1300℃で熱処理を行う第1の工程と、前記光変換材料基板上に少なくともH2ガス、N2ガス、NH3ガスとAlを含む有機金属化合物ガスを供給し、Alを含む窒化物層からなる第1の層2を形成する第2の工程と、前記第1の層上にH2ガス、N2ガス、NH3ガス、Alを含む有機金属化合物ガスの混合ガスを供給し1350〜1480℃でAlNからなる第2の層3を形成する第3の工程を有することを特徴とする発光素子形成用複合基板5の製造方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、発光素子形成用基板に関するものあり、特に、付活剤を含むY3Al5O12基板を用いた発光素子形成用複合基板、発光ダイオード素子、その製造方法に関する。
近年窒化物系化合物半導体を用いた青色発光素子を発光源とする白色発光ダイオードの開発研究が行われており、軽量、水銀フリー、長寿命であることから、今後需要が拡大することが予測される。現在の白色発光ダイオード素子で最も一般的なものは、例えば特許文献1に記載されているように、青色光を発光する発光素子の全面に、青色光の一部を吸収して黄色光を発する蛍光体を含有するコーティング層と、光源の青色光をコーティング層からの黄色光を混色するためのモールド層とを設け、補色関係にある青色と黄色を混色することにより擬似的に白色を得るものである。従来、コーティング層としてはセリウムで付活されたYAG(Y3Al5O12:Ce)粉末と、エポキシ樹脂の混合体粉末が採用されている。しかし、本方法ではコーティング層を塗布する際に、含まれる蛍光体粉末の分布むら、発光ダイオード個体毎の蛍光体粉末の量のばらつき等が生じやすく、それに起因する発光ダイオードの色むらが指摘されている。
そこで、上記課題を回避するために、特許文献2では、Ce、Tb、Euを付活剤として含有するY3Al5O12基板を用いて、その上へInxAlyGa1-x-yN(0≦x≦1、0<y≦1、0<x+y≦1)からなる窒化物半導体層を形成することで、発光層から発光される青色光を直接基板に入射し基板自身から均質な黄色光を発光させることで蛍光体粉末を含むコーティング層を用いずに発光チップのみで色むらのない均質な白色を得る方法を提案している。
特開2000-208815号公報 特開2003-204080号公報
特許文献2に記載の方法では付活剤を含有するY3Al5O12基板上に窒化物半導体層を形成するために、Inを含む窒化物バッファ層(InxAlyGa1-x-yN(0≦x≦1、0<y≦1、0<x+y≦1))を用いている。しかしながら、Y3Al5O12(111)基板とその上に形成されるバッファ層であるInxAlyGa1-x-yNとの格子間隔の差は、現状一般的に用いられている方法における、Al2O3(0001)基板と、例えばGaNバッファ層との格子間隔の差より依然として大きい値である。このため特許文献2の方法における窒化物半導体層中には、基板とInxAlyGa1-x-yNとの格子間隔差によって多くの歪みが生じ、良質な窒化物半導体層を得ることが困難であり、良好な発光ダイオードを得るには限界がある。
また、上述したような基板と半導体層における格子間隔の差から生じる結晶の歪みを改善するためには、Y3Al5O12と格子間隔の差が小さい窒化物バッファ層を選択する必要がある。しかしながら、現状一般的に用いられている窒化物バッファ層には、Y3Al5O12と格子間隔差の小さい窒化物層が無いことから、公知の方法では良好な半導体層を得ることは困難である。
そこで、本発明は上面に良質な窒化物系発光ダイオード(窒化物半導体層)を容易に形成することができ、得られた基板付発光ダイオードは白色等の任意色の発光が可能な発光素子として機能する、発光素子形成用複合基板において、上記の課題を解決するため発光素子形成用複合基板及び該基板を用いた発光ダイオード素子を提供することを目的とする。
本発明者は発光素子形成用複合基板について鋭意研究を重ねた結果、Y3Al5O12基板上に、特定の方法でAlを含む窒化物層を形成し、その上へ特定の方法でAlN層を形成することで、基板との格子定数の差を緩和し、結晶性と表面平滑性の良好な表面を持つ発光素子形成用複合基板を得られることを見出し、この知見に基づき本発明をなすにいたった。
すなわち、本発明は、蛍光を発する付活剤を少なくとも1種以上含有する(111)面を主面とするY3Al5O12基板と、前記基板上に形成されたAlを含む少なくとも2層以上の窒化物層とを有する発光素子形成用複合基板であり、前記窒化物層は、前記基板上に形成されたAlを含む窒化物層からなる第1の層と、前記第1の層上に形成された転位密度1×1011/cm2以下のAlNからなる第2の層を有することを特徴とする発光素子形成用複合基板に関する。
また、上記の発光素子形成用複合基板上に発光層を含む半導体を形成した発光ダイオード素子であり、発光層からの光の少なくとも一部を波長変換した光を前記発光素子形成用複合基板から放射する機能を有する発光ダイオード素子に関する。
また、本発明は上記発光素子形成用複合基板上に青色を発光する発光層を含む半導体層を形成した発光ダイオード素子であり、発光層からの光の一部を波長変換した光を、発光層からの光とともに、前記発光素子形成用複合基板から放射する機能を有する白色発光ダイオード素子に関する。
また、蛍光を発する付活剤を少なくとも1種以上含有する(111)面を主面とするY3Al5O12基板を、H2ガス、N2ガス、NH3ガスの混合ガス雰囲気のもと1000〜1300℃で熱処理を行う第1の工程と、前記光変換材料基板上に少なくともH2ガス、N2ガス、NH3ガスとAlを含む有機金属化合物ガスを供給し、Alを含む窒化物層からなる第1の層を形成する第2の工程と、前記第1の層上にH2ガス、N2ガス、NH3ガス、Alを含む有機金属化合物ガスの混合ガスを供給し1350〜1480℃でAlNからなる第2の層を形成する第3の工程を有することを特徴とする上記の発光素子形成用複合基板の製造方法に関する。
また、本発明における前記付活剤はCeであることを特徴とする。
また、本発明における第3の工程におけるNH3ガス中のNとAlを含む有機金属化合物ガス中のAlのモル比が、前記第2の工程におけるNH3ガス中のNとAlを含む有機金属化合物ガス中のAlのモル比よりも小さいことを特徴とする。
また、本発明におけるAlを含む窒化物層からなる第1の層はAlNであることを特徴とする。
本発明によれば、Y3Al5O12基板上に結晶欠陥の少ないAlN層を形成させた発光素子形成用複合基板を提供することができ、この発光素子形成用複合基板を用いることで容易に任意の発光色を放つ高品質な発光ダイオードを得ることができ、得られた基板付発光ダイオード素子は光変換材料基板の蛍光と混ざり合い、特性の良好な任意の色を発光させることができる。
また、本発明はY3Al5O12基板への付活剤をCeとすることで、黄色発光を示し、Ceを付活剤とした発光素子形成用複合基板上に青色発光ダイオードを形成することで、白色光を発光させることができる。
図1は本発明の発光素子形成用複合基板の断面形状の概略図である。 図2は実施例1に示す発光素子形成用複合基板の断面TEM写真である。 図3は実施例1に示す発光素子形成用複合基板の回折像である。 図4は比較例1に示すY3Al5O12基板上に形成したInGaNバッファ層、GaN層試料の表面SEM写真である。
本発明の実施形態において、本発明の発光素子形成用複合基板について説明する。
本発明の発光素子形成用複合基板製造に使用する基板としては、蛍光を発する付活剤を含むY3Al5O12からなる基板であるが、(111)面を主面とする付活剤を含むY3Al5O12基板を使用する。これは基板上に形成する青色ダイオード素子としては六方晶系に属するInxAlyGa1-x-yN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1)で表される半導体層が用いられるためであることから、立方晶系に属するY3Al5O12の成長面を(111)面とすることで、Y3Al5O12基板とInxAlyGa1-x-yN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1)との格子定数の差からくる結晶の歪みを最小限に抑えるためである。
Y3Al5O12基板の製造方法としては、窒化物半導体層の成長面である(111)面を主面とする基板が得られれば特に限定されないが、CZ法、FEG法、ヘキム法、キプロス法等の方法で結晶を育成することができる。
また、Y3Al5O12基板に含有する付活剤としてはCe、Tb、Eu、Ba、Sr、Mg、Ca、Zn、Si、Cu、Ag、Au、Fe、Cr、Pr、Nd、Dy、Co、Ni、Tiから選ばれ、特にCeで付活されたY3Al5O12は強い黄色蛍光を発することから白色発光ダイオード素子を形成する場合は好適である。
本発明を構成する第1の層は、Alを含む窒化物層からなるが、この窒化物層は単層であっても複数の層であっても良い。第1の層はAlN、AlGaN、InAlGaN等のInxAlyGa1-x-yN(0≦x≦1、0<y≦1、0<x+y≦1)で表されるAlを含む窒化物層が好ましく、その中でも特に表面の平坦性、結晶性の良好な窒化物層の形成が可能であることから、第1の層はAlNの単一層であることが特に好ましい。
第1の層における膜厚は、0.1μm未満であると、第1の層の表面形態が悪くなり、第2の層の成長に影響し表面平滑性の低下を招くおそれがあり、膜厚が7μm超であると第2の層にクラックが生じる可能性があることから、第1の層の膜厚は0.5〜5μmがより好ましい。
本発明を構成する第2の層は、AlNからなる。第1の相上にAlNからなる第2の層を形成し、その第2の層の成長条件を調整することで、横方向成長したAlNが表面では連続層を成し、表面の貫通転位等の欠陥を低減し、表面平滑性の良好な第2の層を形成することができる。また、このような第2の層上には、良質な半導体層を形成することができ、結果として発光ダイオード素子の特性を向上させることができる。
本発明におけるAlNからなる第2の層の転位密度は1×1011/cm2以下であることができる。また好ましくは1×1010/cm2以下、さらに好ましくは1×109/cm2以下、より好ましくは1×108/cm2以下である。AlNからなる第2の層がこのように低い転位密度を有することで、第2の層上に、良質な半導体層、とりわけ窒化物系化合物の半導体層を形成することが可能となる。
また、本発明の発光素子形成用複合基板のAlNからなる第2の層は、表面粗さ(二乗平均平方根粗さRMS)が5nm以下であることができる。好ましくは3nm以下、さらに好ましくは1nm以下、特に好ましくは0.5nm以下である。AlNからなる第2の層がこのように低い表面平滑性を有することが、第2の層上に良質な半導体層、とりわけ窒化物系化合物の半導体層を形成するために好適である。
Y3Al5O12基板上に形成されたAlを含む窒化物層からなる第1の層を起点として、転位密度が低く表面平滑性の良好な表面を有するAlNからなる第2の層を形成する成長条件としては、第1の層と比べて第2の層において、AlNが基板表面に対して平行方向に成長する速度と、基板表面に対して垂直方向に成長する速度との比がより大きい成長条件が好ましい。さらには、第2の層において、AlNが基板表面に対して平行方向に成長する速度が、基板表面に対して垂直方向に成長する速度よりも速い成長条件がより好ましく、またAlNが基板表面に対して平行方向に成長する速度と、基板表面に対して垂直方向に成長する速度の比がより大きいことがより好ましい。またこのように横方向成長を利用した場合、一般的に転位は窒化物層の成長方向に沿って伝播する傾向があり、横方向の成長が促進されると横方向に伝播し、その伝播した転位は縦方向に伝播しにくいとされている。このようにして形成した第2の層は転位密度が低く、この第2の層上に良質な半導体層、とりわけ窒化物系の半導体層を形成することが可能となる。第1の層と比べて第2の層においてAlNが基板表面に対して垂直方向に成長する速度よりも基板表面に対して平行方向に成長する速度の速い成長を実現する条件としては、例えば、第1の層がAlNからなる場合の成長温度よりも高い温度でAlNを成長すること、また、気相成長法におけるAl原料とN原料のN/Al比(モル比)が第1の層がAlNからなる場合のN/Al比よりも小さくすることを挙げることができるが、これらに限定されない。
第2の層における膜厚は2μm未満であると、第1の層における表面のピットや凹凸の埋め込みが不完全である可能性があり、第2の層の表面の結晶性や平滑性が悪くなりやすい。一方、膜厚が9μm超であると、クラックや異常核が発生しやすくなる。特に、転位密度がより低く(例えば、1×109/cm2以下)で表面平滑性が良好な第2の層を形成するためには、膜厚が5〜7μmとするのが好ましい。
本発明の発光ダイオード素子は上記した発光素子形成用複合基板上に発光層を含む半導体層を形成することで得られる。発光層を含む半導体層は、InxAlyGa1-x-yN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1)で表される窒化物系化合物半導体により構成されることが好ましい。
また、発光層は少なくとも可視光を発する窒化物層からなることが好ましく、可視光が本発明の発光素子形成用複合基板を構成する蛍光を発する不活剤を含むY3Al5O12基板を透過する際に波長変換された蛍光と変換前の可視光が混合されて混合された光の波長に応じて、新たな擬似的な光を得ることができる。さらに、可視光は波長が400〜500nmの紫〜青色を発することが好ましく、発光色が紫〜青色である場合、発光層からの光がY3Al5O12:Ce基板に入射することにより、Y3Al5O12:Ce結晶から黄色蛍光と、吸収されなかった紫〜青色の光により混合され放出されるため、色むらのない均質な白色を得ることができる。
本発明の実施形態において、本発明の発光素子形成用複合基板の製造方法について説明する。
本発明の発光素子形成用複合基板の製造方法における第1の工程から第3の工程は発光ダイオード素子の半導体層までを同一装置内での形成が可能であることから、有機金属化合物CVD法(MOCVD法)によって行われることが好ましい。
MOCVDを用いる場合、第1の工程において、(111)面を主面とするY3Al5O12基板をMOCVD装置内に導入後、基板表面の吸着ガスや埃等を除去するため、H2ガス、N2ガスを流し、温度1000〜1300℃でサーマルクリーニングを行う。サーマルクリーニングの温度としては、特に基板上への窒化物層の形成温度か、それ以上の温度にすることで、窒化物層形成時の温度での脱ガス等による膜質への影響を抑えることができる。
その後、クリーニング後のY3Al5O12基板にNH3ガスを供給し窒化処理を行うことで、基板上へ窒化膜層を形成する。この窒化膜層は基板直上にAlを含む窒化物層からなる第1の層を形成する際の起点となる層であり、表面形態の良好な第1の層を形成することが可能となる。また窒化膜層を形成することにより、AlNからなる第2の層をエピタキシャル成長させるための、バッファ層としての役割を持つ良好な第1の層を形成することが可能となる。この時の窒化処理条件としては、MOCVD装置構成に依存するので、一概ではないが、一般的には、圧力50〜100Torr(6.7×103〜1.3×104Pa)、温度1000〜1300℃、H2ガス流量10〜14slm、N2ガス流量0.5〜3slm、NH3ガス20〜100sccm、であることが好ましい。また、Alを含む窒化物層からなる第1の層がAlNのみで構成されている場合、窒化処理時間を10〜90分とすることが好ましく、この範囲で窒化処理を行うことにより、表面形態の良好な第1の層を形成することが可能となる。
Y3Al5O12基板のサーマルクリーニング及び窒化処理後、第2の工程としてAlを含む窒化物層からなる第1の層の形成を行う。この第1の層はAlNからなる第2の層を形成する際のバッファ層的な役割を持ち、第1の層を形成することで(111)面を主面とするY3Al5O12基板とAlNからなる第2の層の格子定数差からくる結晶の歪みを緩和させるバッファ層の役割を持ち、結晶性と表面平滑性の良好な第2の層の形成を可能にする。
その際の基板直上に形成する窒化物層はInxAlyGa1-x-yN(0≦x≦1、0<y≦1、0<x+y≦1)が用いられ、第1の層の形成温度は400〜1300℃の範囲で形成できる。特に、基板上により平滑性の高い窒化物層を形成させるためには、形成温度は1000〜1300℃が好ましい。また、第1の層は例えば、400〜600℃の温度で形成したAlNバッファ層上に、所望の温度で形成したAlGaN層や、400〜600℃の温度で形成したAlNバッファ層上に、バッファ層の形成温度より高い温度で形成したAlN層等からなる多層膜であっても良い。特に表面平滑性が良好で転位密度の低いAlNからなる第2の層を得るためにはAlNの単一層が好ましく、この時のAlN層の形成条件としては、MOCVD装置構成に依存するので、一概ではないが、一般的には、圧力50〜100Torr(6.7×103〜1.3×104Pa)、温度1000〜1300℃、H2ガス流量10〜14slm、N2ガス流量0.5〜3slm、NH3ガス20〜100sccm、TMA(トリメチルアルミニウム)ガスなどのアルミニウム原料ガス20〜100sccmであることが好ましい。アルミニウム原料ガスはTMA(トリメチルアルミニウム)ガスのほかTEA(トリエチルアルミニウム)ガスなどでもよい。特に、圧力76Torr、温度1270℃、H2ガス流量12slm、N2ガス流量3slm、NH3ガス50sccm、TMA(トリメチルアルミニウム)ガス50sccmであることが好ましい。
また、第1の層の膜厚は0.1μm未満であると、第1の層の表面形態が悪くなり、第2の層の成長に影響し表面平滑性の低下を招くおそれがあり、膜厚が7μm超であると第2の層にクラックが生じる可能性があることから、第1の層の膜厚は0.5〜5μmであることが好ましく、膜厚が0.5〜5μmの範囲となるよう成長時間を調整することが好ましい。
Alを含む窒化物層からなる第1の層を形成後、第3の工程として第1の層上にAlNからなる第2の層を形成する。このAlNからなる第2の層は、表面平滑性の優れ、低転位密度の窒化物層であることから、その上に良好な半導体層を容易に形成させることが可能となる。
第1の層は、Y3Al5O12基板上に第2の層を形成するためのバッファ層の役割をもつ窒化物層を形成することを目的としており、その目的に適した成長条件で形成されるため、第1の層は表面に多くのピットや凹凸、結晶欠陥が存在している。しかし、このAlNからなる第2の層は、第1の層をバッファ層としてその上へ成長することで、第1の層における表面のピットや凹凸、結晶欠陥を低減させることができる。
第1の層における表面のピットや凹凸、結晶欠陥を低減したAlNからなる第2の層を形成する条件としては、第1の層と比べて第2の層において、AlNが基板表面に対して平行方向に成長する速度と基板表面に対して垂直方向に成長する速度との比がより大きい成長条件が好ましい。さらには、第2の層において、AlNが基板表面に対して平行方向に成長する速度が基板表面に対して垂直方向に成長する速度よりも速い成長条件がより好ましく、またAlNが基板表面に対して平行方向に成長する速度と基板表面に対して垂直方向に成長する速度と比がより大きいことがより好ましい。
また、第2の層の形成条件は、第1層の形成条件と比べて、第1には、成長温度がより高温であることを特徴とする。さらには、アルミニウム原料ガスの供給量に対するN原料ガス(NH3ガス)の供給量の比が小さいことが好ましい。すなわち、第2の層であるAlNを形成する際に、成長温度がより高温であるのみならず、原料中の窒素原子とアルミニウム原子のモル比が第1の層のモル比よりも低くなるように、NH3ガスとTMAガスを設定することが好ましい(このときN2ガスは不活性であり、AlNの原料ではないので、その量は考慮しない)。これは、第2の層のAlN形成のための上記モル比を低くすることにより、形成されるAlNの成長が基板表面に対して平行方向に成長する速度と基板表面に対して垂直方向に成長する速度の比が、第1の層のそれより大きい成長モードとなり、さらには形成されるAlNの成長が基板表面に対して平行方向に成長する速度が基板表面に対して垂直方向に成長する速度より大きい成長条件となることを促成するからである。これにより、より好適に、第1の層における表面の凹凸やピット、転位密度を低減させることが可能となり、特に転位密度については1.0×1010/cm2以下、特に1.0×109/cm2以下、さらには1.0×108/cm2以下にすることが可能となることから、第2の層上に、良質な半導体層、とりわけ窒化物系化合物の半導体層を形成することが可能になる。
なお、本発明の方法では、第2の層を形成する際のNH3ガス中のNとAlを含む有機金属化合物ガス中のAlのモル比が、第1の層を形成する際のNH3ガス中のNとAlを含む有機金属化合物ガス中のAlのモル比よりも小さいことが重要であるから、限定されるわけではないが、第1の層であるAlNを形成する際のアルミニウム原料ガスの供給量に対するN原料ガス(NH3ガス)の供給量の比(Alに対するNのモル比)は、一般的には80〜110が好ましく、90〜100であることがより好ましく、第2の層であるAlNを形成する際のアルミニウム原料ガスの供給量に対するN原料ガス(NH3ガス)の供給量の比(Alに対するNのモル比)は、57以下が好ましく、19以下であることがより好ましい。
このようなAlNの形成条件としては、形成温度1350〜1480℃であることが好ましい。また、特に第1の層がAlNの単一層の場合、良質な第2の層を得るためにはAlN層の形成条件としては、MOCVD装置構成に依存するので、一概ではないが、一般的には、圧力50〜100Torr(6.7×103〜1.3×104Pa)、温度1350〜1480℃、H2ガス流量4〜14slm、N2ガス流量0.5〜3slm、NH3ガス5〜20sccm、TMA(トリメチルアルミニウム)ガスなどのアルミニウム原料ガス20〜100sccmであることが好ましい。アルミニウム原料ガスはTMA(トリメチルアルミニウム)ガスのほかTEM(トリエチルアルミニウム)などでもよい。特に、圧力76Torr、温度1410℃、H2ガス流量12slm、N2ガス流量3slm、NH3ガス10sccm、TMAガスなどのアルミニウム原料ガス50sccmであることが好ましい。
第2の層における膜厚は2μm未満であると、第1の層における表面のピットや凹凸の埋め込みが不完全である可能性があり、第2の層の表面の結晶性や平滑性が悪くなりやすい。一方、膜厚が9μm超であると、クラックや異常核が発生しやすくなる。特に、転位密度がより低く(例えば、1×109/cm2以下)で表面平滑性が良好な第2の層を形成するためには、膜厚が5〜7μmであることが好ましく、膜厚が5〜7μmの範囲となるよう第2の層の成長時間を調整することが好ましい。
また、本発明の発光素子形成用複合基板を用いて発光ダイオードを製造するには、本発明の発光素子形成用複合基板上に所望の半導体層を公知の方法で結晶成長させればよい。本発明の発光素子形成用複合基板は、最表面を第2の層として、その上に発光ダイオードを形成するための所望の半導体層を直接形成しても、それらの間に別の層(中間層)を介在させても良い。
発光ダイオードを形成するための半導体や中間層の結晶成長方法としては、液相法、気相法等のいずれでもよく、特に、本発明の発光素子形成用複合基板の窒化物層をMOCVD法で形成する場合、発光ダイオードの半導体層もMOCVD法で形成することが好ましい。
また、本発明の発光素子形成用複合基板を構成する窒化物層は、表面の結晶性や表面平滑性等が良好であることから、発光ダイオードを形成するためのInxAlyGa1-x-yN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1)で表される半導体層をエピタキシャル成長させることが可能である。したがって、本発明の製造方法で得られた発光素子形成用複合基板にInxAlyGa1-x-yN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1)で表される半導体層を形成して発光ダイオードを形成することにより、形成された発光ダイオードから可視光が本発明の発光素子形成用複合基板を構成するY3Al5O12基板を透過する際に波長変換された蛍光とそのまま透過された可視光が混合されて、混合された光の波長に応じて、新たな擬似的な光を得ることができる。
具体的には可視光は波長が400〜500nmの紫〜青色である場合、発光層からの光がY3Al5O12:Ce基板に入射することにより、Y3Al5O12:Ce結晶から黄色蛍光と、吸収されなかった紫〜青色の光により混合され放出されるため、色むらのない均質な白色を得ることができる。
図1に本発明の製造方法で製造される発光素子形成用複合基板の1例を断面図で示す。図1において、発光素子形成用複合基板5は、Y3Al5O12基板1、第1の層2、第2の層3からなり、その第2の層3の上に半導体層4が形成されて発光ダイオードを形成している。
実施例1
Ceを付活剤に用いた(111)面を主面とするY3Al5O12基板をMOCVD装置チャンバー内に導入し、H2ガス流量12slmとN2ガス流量3slmの混合ガス雰囲気中で圧力を76Torrとし、Y3Al5O12基板を1270℃まで昇温し、5分間サーマルクリーニングを行った後、NH3ガス流量50sccmで90分流し基板表面の窒化を行った。次に、サーマルクリーニング及び窒化後のY3Al5O12基板上にH2ガス流量12slm、N2ガス流量3slm、NH3ガス流量50sccm、TMAガス流量50sccmで、同一の圧力で成長温度を1270℃として60分間反応させ、AlNからなる第1の層を形成した。次に、AlN層からなる第1の層上にH2ガス流量12slm、N2ガス流量3slm、NH3ガス流量10sccm、TMAガス流量50sccmで同一の圧力で成長温度を1410℃として90分間反応させAlNからなる第2の層を形成した。第1の層の膜厚は5μm、第2の層の膜厚は7μmとした。
以上の方法により得られた発光素子形成用複合基板の断面TEM(透過型電子顕微鏡)の写真を図2に、基板とAlNからなる第2の層の回折像を図3に示す。図2より上記方法でY3Al5O12基板上に第1の層、第2の層を形成することで、第2の層の表面が平坦化され、転位や結晶粒界等を表す基板と垂直方向に伸びるラインも第2の層表面では減少しており、転位密度を評価した結果1.1×109/cm2以下であることがわかった。また、図3より、基板であるY3Al5O12と第2の層であるAlNはエピタキシャル関係であることがわかった。この結果より、上記方法を用いることでY3Al5O12基板上に高品質な窒化物層を形成することができることがわかった。
比較例1
Ceを不活剤に用いた(111)面を主面とするY3Al5O12基板上に、TMG(トリメチルガリウム)ガス、TMI(トリメチルインジウム)ガス、NH3ガス及びキャリアガスとしてH2ガスを流し、公知の方法を用いてInGaNバッファ層と、その上にGaN層を形成した。以上により得られた試料の表面SEM(走査型電子顕微鏡)の写真を図4に示す。図4より上記方法でGaN層を形成した結果、表面の凹凸が激しく表面の平坦性が悪いことが確認された。
実施例2
MOCVD法を用いて実施例1により得られた発光素子形成用複合基板上に、TMG(トリメチルガリウム)ガス、TMAガス、TMIガス、ドーパントガスとしてSiH4(モノシラン)とCp2Mg(ビスシクロペンタディエニルマグネシウム)をキャリアガスと共に流し、GaN系発光ダイオード素子を形成した。具体的には、発光素子形成用複合基板上にn-GaN(コンタクト層)、InGaN 2QWs(発光層)、p-AlGaN(電子ブロック層)、p-GaN(コンタクト層)の順で形成した。またp側電極にNi/Au合金を、n側電極にInを用いた。以上により得られた発光ダイオード素子は特性の良好な発光が得られた。
本発明の発光素子形成用複合基板の製造方法によれば、製造された発光素子形成用複合基板の上に所望の窒化物系半導体層を直接形成して、優れた発光ダイオード素子を平易に製造することを可能にするものであり、その産業上の利用可能性は明らかである。
1 Y3Al5O12基板
2 第1の層
3 第2の層
4 半導体層
5 発光素子形成用複合基板
6 第2の層におけるTEM回折像
7 Y3Al5O12基板におけるTEM回折像

Claims (7)

  1. 蛍光を発する付活剤を少なくとも1種以上含有する(111)面を主面とするY3Al5O12基板と、前記基板上に形成されたAlを含む少なくとも2層以上の窒化物層とを有する発光素子形成用複合基板であり、前記窒化物層は、前記基板上に形成されたAlを含む窒化物層からなる第1の層と、前記第1の層上に形成された転位密度1×1011/cm2以下のAlNからなる第2の層を有することを特徴とする発光素子形成用複合基板。
  2. 請求項1に記載の発光素子形成用複合基板上に発光層を含む半導体層を形成した発光ダイオード素子であり、発光層からの光の少なくとも一部を波長変換した光を前記発光素子形成用複合基板から放射する機能を有する発光ダイオード素子。
  3. 請求項2に記載の発光素子形成用複合基板上に青色を発する発光層を含む半導体層を形成した発光ダイオード素子であり、発光層からの光の少なくとも一部を波長変換した光を、発光層からの光とともに、前記発光素子形成用複合基板から放射する機能を有する白色発光ダイオード素子。
  4. 蛍光を発する付活剤を少なくとも1種以上含有する(111)面を主面とするY3Al5O12基板を、H2ガス、N2ガス、NH3ガスの混合ガス雰囲気のもと1000〜1300℃で熱処理を行う第1の工程と、前記光変換材料基板上に少なくともH2ガス、N2ガス、NH3ガスとAlを含む有機金属化合物ガスを供給し、Alを含む窒化物層からなる第1の層を形成する第2の工程と、前記第1の層上にH2ガス、N2ガス、NH3ガス、Alを含む有機金属化合物ガスの混合ガスを供給し1350〜1480℃でAlNからなる第2の層を形成する第3の工程を有することを特徴とする請求項1記載の発光素子形成用複合基板の製造方法。
  5. 前記付活剤はCeであることを特徴とする請求項4に記載の発光素子形成用複合基板の製造方法。
  6. 前記第3の工程におけるNH3ガス中のNとAlを含む有機金属化合物ガス中のAlのモル比が、前記第2の工程におけるNH3ガス中のNとAlを含む有機金属化合物ガス中のAlのモル比よりも小さいことを特徴とする請求項4又は5に記載の発光素子形成用複合基板の製造方法。
  7. 前記第1の層はAlNからなることを特徴とする請求項4〜6のいずれか1項に記載の発光素子形成用複合基板の製造方法。
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