JP2010201618A - ガスバリア性積層フィルム及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 基材フィルムの一方の面に、無機酸化物の蒸着膜を形成し、該蒸着膜の表面に、酸素ガスを含む混合ガスによるグロー放電プラズマ処理を行うことにより、表面自由エネルギーが70dyne以上のプラズマ処理面を形成し、該プラズマ処理面に、アルコキシドとポリビニルアルコール系水溶性樹脂の混合溶液から得られるガスバリア性組成物を加熱乾燥処理して、ガスバリア性塗膜を形成する。
【選択図】 図1
Description
例えば、高分子樹脂組成物からなる基材上に、無機化合物からなる蒸着膜を第1層とし、水溶性高分子と、(a)1種以上のアルコキシド及び/又はその加水分解物又は(b)塩化すずの少なくともいずれか1つを含む水溶液、或いは水/アルコール混合溶液を主剤とするコーティング剤を塗布し、加熱乾燥してなるガスバリア性被膜を第2層として積層してなることを特徴とするガスバリア性積層フィルムが提案されている(特許文献1)。
さらに、本発明のもう一つの目的は、ガスバリア性、耐水性、防湿性の向上による内容物の保存適性に優れた透明なガスバリア性積層フィルムを使用した包装材料を提供することにある。
特に、本発明に係るガスバリア性積層フィルムの製造方法を用いて、前記蒸着膜の表面に、表面自由エネルギーが70dyne以上の範囲となるプラズマ処理面を形成することにより、水蒸気に対して極めて高いガスバリア性を有するとともに、高温多湿下等の過酷条件においても安定したガスバリア性を維持することができ、耐水性、防湿性が向上した、透明で柔軟なガスバリア性積層フィルムを製造することができた。
図1は、本発明に係るガスバリア性積層フィルムの層構成について、その一例を例示する概略的断面図である。図1に示すように、本発明に係るガスバリア性積層フィルムは、基材フィルム2の一方の面に、無機酸化物の蒸着膜3を設け、更に、該無機酸化物の蒸着膜3の表面に、酸素とアルゴンからなる混合ガスによるプラズマ処理面4を設け、更にまた、該プラズマ処理面4に、アルコキシドまたは/およびその加水分解物とポリビニルアルコール系水溶性樹脂からなるガスバリア性塗膜5を設けた構成からなることを基本構造とするものである。
なお、上記の例は、本発明のガスバリア性積層フィルムの一例であり、本発明はこれに限定されるものではない。
まず、本発明のガスバリア性積層フィルムを構成する基材フィルムとしては、化学的又は物理的強度に優れ、無機酸化物の蒸着膜を形成する条件等に耐え、それら無機酸化物蒸着膜等の特性を損なうことなく良好に保持し得ることができる樹脂のフィルム又はシートを使用することができる。
具体的には、基材フィルムとしては透明な熱可塑性樹脂フィルムが用いられ、その利用される分野の要求性能に従い、適宜選択することができる。熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂;ポリオキシメチレンなどのポリエーテル系樹脂;ナイロン−6、ナイロン−6,6などのポリアミド系樹脂;ポリビニルアルコール、エチレン−酢酸ビニル共重合体鹸化物などのビニル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリイミド;ポリエーテルイミド;ポリエーテルスルフォン;ポリスルフォン;ポリエーテルエーテルケトン;ポリエーテルケトンケトンなどが使用できる。これらの樹脂は単独重合体であっても共重合体であっても、あるいは1種以上の樹脂を溶融混合してフィルム状に成形したものが用いることができる。
本発明においては、上記の樹脂のフィルム又はシートの中でも、特に、ポリエステル系樹脂、ポリオレフイン系樹脂、又は、ポリアミド系樹脂のフィルム又はシートを使用することが好ましい。
延伸方法については、周知のテンター方式、あるいは、チューブラー方式等を利用して1軸又は2軸方向に延伸することができる。
次に、本発明に係るガスバリア性積層フィルムを構成する無機酸化物の蒸着膜としては、透明性に優れ、非結晶性の酸化アルミニウムの蒸着膜が好ましく、具体的には、式AlOX (ただし、式中、Xは、1〜1.5の数を表す。)で表される酸化アルミニウムの蒸着膜を使用することができる。
ここで、本発明において、上記の酸化アルミニウムの蒸着膜の膜厚としては、5〜400nm、好ましくは、10〜100nmの範囲内で任意に選択して形成することが望ましい。5nmより薄くなると、蒸着膜の被膜としての形成が不十分となり、その結果ガスバリア性を十分に満たすことが困難になり、一方、400nmを超えると柔軟性が低下し、その結果、蒸着膜にクラックが発生しやすくなり、ガスバリア性が低下するからである。
本発明の物理気相成長法においては、金属の酸化物を原料とし、これを加熱して樹脂のフィルムないしシートの上に蒸着する真空蒸着法、又は、原料として金属又は金属の酸化物を使用し、酸素を導入して酸化させて樹脂のフィルムないしシートの上に蒸着する酸化反応蒸着法、さらに、酸化反応をプラズマで助成するプラズマ助成式の酸化反応蒸着法等を用いて無機酸化物の蒸着膜を形成することができる。
図2は、本発明に係る酸化アルミニウムの蒸着膜の形成方法についてその一例を例示する巻き取り式真空蒸着装置の概略的構成図である。図2に示すように、まず、巻き取り式真空蒸着装置11の真空チャンバー12の中で、巻き出しロ−ル13から基材フィルム2を引き出し、ガイドロ−ル14、15を介して、冷却したコーティングドラム16に案内する。
そして、蒸着源17として、金属のアルミニウム、あるいは酸化アルミニウム等を使用し、これらをるつぼ18の中に入れ、電子ビーム(EB)加熱によりアルミニウム、あるいは、酸化アルミニウムを蒸発させ、かつ、酸素吹き出し口19より酸素ガス等を噴出させながら、マスク20を介して、コ−ティングドラム16の上に案内された基材フィルム2の外周側の面に、酸化アルミニウムの蒸着膜を成膜し、次いで、該酸化アルミニウムの蒸着膜を形成した基材フィルム2を、ガイドロ−ル14´、15´を介して、巻き取りロ−ル21に巻き取って、本発明に係る酸化アルミニウムの蒸着膜を形成することができるものである。
なお、上記の例示は、その形成法の一例であり、本発明は、この例示により限定されるものではない。
次に、本発明に係る無機酸化物蒸着膜の表面に形成されるプラズマ処理面について説明する。前記プラズマ処理面は、気体をグロー放電により電離させることにより生じるプラズマガスを利用して表面改質を行なうプラズマ表面処理法等を利用して形成することができる。
使用する気体は、本発明においては、酸素ガス、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス等を使用することができる。
本発明においては、プラズマ放電処理の際に、酸素ガスとアルゴンガスとの混合ガスを使用してプラズマ処理を行なうことが好ましく、このようなプラズマ処理により、より低い電圧でプラズマ処理を行なうことが可能であり、これにより、無機酸化物の蒸着薄膜の劣化等を防止して、その表面に、良好にプラズマ処理面を設けることができるものである。
プラズマを発生させる方法としては、例えば、直流グロー放電、高周波放電、マイクロ波放電等を利用して行うことができる。本発明においては、直流グロー放電発生装置を利用する。
なお、本発明におけるインラインとは、基材フィルムに無機酸化物の蒸着膜を形成した後、大気に触れさせること無く、真空内にて、基材フィルムを巻き取る前に、プラズマ処理を行うことを言う。これは、例えば、グロー放電プラズマ発生装置を、真空蒸着装置と共に、真空チャンバー内に設けることにより、実施することができる。
具体的には、図2に示すように、冷却したコ−ティングドラム16とガイドロ−ル15′との間にプラズマ処理ユニット22を配置し、酸化アルミニウムの蒸着膜を設けた直後の基材フィルム2の該酸化アルミニウムの蒸着膜表面に、上記のプラズマ処理ユニット22を利用して、酸素ガスとアルゴンガスとの混合ガスプラズマを発生させてプラズマ処理を行って、上記の基材フィルム2に積層された酸化アルミニウムの蒸着膜の表面に、プラズマ処理面を形成することができるものである。
本発明において、プラズマ処理と化学反応に影響する要因としては、ガスの種類、ガスの供給量、プラズマ出力、および、処理時間等を挙げることができる。
本発明におけるプラズマ処理としては、具体的には、酸素ガスとアルゴンガス、またはヘリウムガスとの混合ガスを使用することが望ましく、そして、その酸素ガスとアルゴンガスまたはヘリウムガスとの混合ガスのガス圧としては、1〜1×10-5Torr、より好ましくは、1×10-3〜1×10-5Torrが好ましく、また、酸素ガスとアルゴンガスまたはヘリウムガスとの比率としては、ガス分圧比で酸素ガス:アルゴンガスまたはヘリウムガス=1:10〜10:1の範囲が使用でき、より好ましくは、酸素ガスとアルゴンガスのガス分圧比が7:3〜9:1の範囲が好ましい。
なお、表面自由エネルギーの値は、後述する所定の条件において、上記プラズマ処理面における水とジヨードメタンの接触角を測定し、その測定した接触角から算出することができる。
具体的には、X線源として、MgKα1.2、X線出力として15Kv、20mAの測定条件で表面〜10nmのXPS分析を行い、Si、C、O等の元素比を測定して処理状態を確認することができる。
本発明において、前記プラズマ処理面の表面自由エネルギーが70dyne以上であることが、最終的に得られるガスバリア性積層フィルムの水蒸気透過度が0.3g/m2・day未満を達成する高いガスバリア性の観点から好ましく、さらに、75dyne以上であることが望ましい。
次に、本発明に係るガスバリア性積層フィルムを構成するガスバリア性塗膜について説明する。
本発明のガスバリア性塗膜は、アルコキシドと水溶性高分子を含有するものであり、具体的には、一般式R1nM(OR2)m(式中、Mは金属原子、R1、R2が炭素数1〜8の有機基、nは0以上、mは1以上の整数、n+mはMの原子価を表す)で表される少なくとも1種以上のアルコキシドと、ポリビニルアルコール等の水溶性高分子を含有する組成物からなる塗工液を、上記無機酸化物の蒸着膜上に塗布し、加熱乾燥処理して形成したものである。
前記塗工液に含まれるアルコキシドは、加水分解、重縮合、それに続く加熱乾燥の処理で、ゾルを経て、固化体であるゲルとなる、いわゆるゾルゲル法によって、溶液中で加水分解、重縮合反応して鎖状或いは三次元樹枝状のポリマーを形成し、乾燥加熱にともなう溶媒等の蒸発によってさらに重合が進行し、高いガスバリア性を持つことになる。
さらに、アルコキシシランの縮重合物も使用することができ、具体的にはポリテトラメトキシシラン、ポリテトラエメトキシシラン等が挙げられる。
また、アルコキシシランとチタニウムアルコキシドを混合して用いることによって、得られる被膜の熱伝導率が低くなり、基材の耐熱性を著しく向上させることができる。
このようなシランカップリング剤は2種以上を混合して用いてもよい。このようなシランカップリング剤の使用量は、上記アルコキシシラン100重量部に対して0.1〜20重量部の範囲内である。20重量部以上を使用すると形成される複合ポリマーの剛性と脆性とが大きくなり、複合ポリマー層の絶縁性及び加工性が低下する。
本発明においては、ゾルゲル法の触媒として、酸を触媒として用いている。酸はゾルゲル法の触媒、主としてアルコキシドやシランカップリング剤等の加水分解のための触媒として用いられる。酸としては、塩酸、硫酸、硝酸等の鉱酸、ならびに酢酸、酒石酸等の有機酸が用いられる。その使用量は、微量添加することで充分である。
ポリビニルアルコール等の水溶性高分子は、上記のアルコキシドやシランカップリング剤等を含む塗工液中で溶解した状態であることが好ましく、そのため上記有機溶媒が適宜選択される。
まず、上記のアルコキシシラン等のアルコキシド、シランカップリング剤、ポリビニルアルコール系水溶性樹脂、ゾルゲル法触媒として塩酸、更に、水、有機溶媒を所定の割合で混合してガスバリア性塗膜形成用組成物の塗工液を調製する。ガスバリア性塗膜形成用組成物の塗工液中では次第に重縮合反応が進行する。
加熱処理によりガスバリア性塗膜内部において、アルコキシド加水分解物と水溶性高分子とが水素結合や化学結合により結合する架橋反応が起こることや、蒸着膜とガスバリア性塗膜とが水素結合や化学結合により強固に密着するなどの変化が塗膜内外で生じると考えられ、ガスバリア性が一層向上する。
さらには、水溶性高分子の膨潤を抑制することができ、水に対する耐性が向上し、結果的に耐水性、防湿性が向上する。
上記のようにして製造した本発明に係るガスバリア性積層フィルムは、例えば、樹脂のフィルム、紙基材、金属素材、合成紙、セロハン、その他の包装材料を構成する包装用基材、ヒートシール性フィルム等と任意に組み合わせて、例えば、通常のラミネート法によりラミネートして種々の積層体を製造し、種々の物品を充填包装するに適した包装袋を製造可能とするものである。
本ガスバリア性積層フィルムを用いた包装材料として、ガスバリア性積層フィルムのガスバリア性塗膜上に、ヒートシール性樹脂層を積層したものについて以下、説明する。
ヒートシール性樹脂層を構成するヒートシール性樹脂としては、熱によって溶融し相互に融着し得るものであればよく、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、メチルペンテンポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフイン系樹脂、又はこれらの樹脂をアクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、フマール酸等の不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフイン系樹脂等の樹脂の一種ないしそれ以上からなる樹脂のフィルム又はシートを使用することができる。
上記樹脂のフィルム又はシートは、単層ないし多層で使用することができ、また、上記樹脂のフィルム又はシートの厚さとしては、5〜300μm、好ましくは、10〜110μmである。
例によって限定されるものではない。
各実施例、および比較例において、蒸着膜のプラズマ処理面の表面状態を判断する指標として、プラズマ処理面における水とジヨードメタンの接触角を測定し、該接触角から表面自由エネルギーを算出した。また、得られたガスバリア性積層フィルムについて、ガスバリア性を評価するために、酸素透過度、水蒸気透過度を測定した。
各算出および測定は、以下の要領で実施した。
表面自由エネルギーの値は、協和界面科学株式会社製全自動接触角計Drop Master700により20℃、50%RHの条件下で水とジヨードメタンの接触角を測定し、その測定した接触角から解析ソフトウェアFAMASを用いて表面自由エネルギーを算出した。
酸素透過度の測定は、得られたガスバリア性積層フィルムを温度23℃、湿度90%RHの条件下で、米国モコン(MOCON)社製の測定機[機種名、オクストラン(OX−TRAN)]を使用し、JIS規格K7126に従い、測定した。
水蒸気透過度の測定は、得られたガスバリア性積層フィルムを温度40℃、湿度90%RHの条件で、米国モコン(MOCON)社製の測定機[機種名、パーマトラン(PERMATRAN)]を使用して、JIS規格K7129に従い、測定した。
巻き取り式の真空蒸着装置を使用し、厚さ12μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを基材とし、その片面に、アルミニウムを蒸着源に用いて電子ビーム(EB)加熱方式による反応真空蒸着法により、膜厚20nmの酸化アルミニウムの蒸着膜を形成し、次いで、該酸化アルミニウムの蒸着膜形成直後に、該酸化アルミニウムの蒸着膜表面に、インラインでグロー放電プラズマ発生装置を用いて、プラズマ出力1500W、酸素(O2 )とアルゴン(Ar)のガス分圧比がO2:Ar=9:1からなる混合ガスを使用し、混合ガス圧2×10-4Torr、処理速度600mm/minでプラズマ処理を行い、表面自由エネルギーが75dyneのプラズマ処理面を形成した。
得られたガスバリア性積層フィルムを、上記した各測定装置を用いて、酸素透過度、水蒸気透過度を測定した。その評価結果を表2に示す。
酸化アルミニウムの蒸着膜の表面に、酸素とアルゴンからなる混合ガスを用いてプラズマ処理を施す際に、酸素とアルゴンの分圧比をO2:Ar=7:3として、表面自由エネルギーが72dyneのプラズマ処理面を形成したこと以外は実施例1と同様に処理して、ガスバリア性積層フィルムを得た。
得られたガスバリア性積層フィルムを、上記した各測定装置を用いて、酸素透過度、水蒸気透過度を測定した。その評価結果を表2に示す。
酸化アルミニウムの蒸着膜の表面に、酸素とアルゴンからなる混合ガスを用いてプラズマ処理を施す際における酸素とアルゴンの分圧比をO2:Ar=3:7として、表面自由エネルギーが67dyneのプラズマ処理面を形成したこと以外は実施例1と同様に処理して、ガスバリア性積層フィルムを得た。
得られたガスバリア性積層フィルムを、上記した各測定装置を用いて、酸素透過度、水蒸気透過度を測定した。その評価結果を表2に示す。
酸化アルミニウムの蒸着膜の表面に、酸素とアルゴンからなる混合ガスを用いてプラズマ処理を施す際における酸素とアルゴンの分圧比をO2:Ar=1:9として、表面自由エネルギーが62dyneのプラズマ処理面を形成したこと以外は実施例1と同様に処理して、ガスバリア性積層フィルムを得た。
得られたガスバリア性積層フィルムを上記した各測定装置を用いて、酸素透過度、水蒸気透過度を測定した。その評価結果を表2に示す。
このガスバリア性の向上は、上記酸素を含む混合ガスによる所定のプラズマ処理を施すことにより、コーティング層に含まれるアルコキシドの加水分解生成物の水酸基と、蒸着膜表面の活性化した酸素が反応して、蒸着膜とコーティング層との密着性がより強固になることによるバリア性向上によるものと考えられる。
すなわち、表面自由エネルギーが67dyne以下の場合には、水蒸気透過度は0.30g/m2・day以上であるが、表面自由エネルギーが72dyneの場合には、水蒸気透過度は0.15g/m2・dayに向上し、さらに、表面自由エネルギーが75dyneの場合には、水蒸気透過度は0.10g/m2・dayにまで達する。
なお、酸素ガスによるプラズマ処理で蒸着膜表面の自由エネルギーが向上するのは、表面の水酸基量が増加することも要因として挙げられる。
また、本発明に係るガスバリア性積層フィルムの製造方法においては、蒸着膜表面に施す酸素を含む混合ガスによるプラズマ処理で形成されたプラズマ処理面の表面自由エネルギーを指標とすることで、容易に別の製造装置等の制御にも展開でき、ガスバリア性積層フィルムの生産性を向上させることができるものである。
また、優れたガスバリア性と柔軟性とを有するので、包装材料として有用であり、特に
食品包装用フィルム、産業資材用フィルムとして好適に使用される。
2 基材フィルム
3 蒸着膜
4 プラズマ処理面
5 ガスバリア性塗膜
11 巻き取り式真空蒸着装置
12 真空チャンバー
13 巻き出しロ−ル
14、15 ガイドロ−ル
14´、15´ ガイドロ−ル
16 コ−ティングドラム
17 蒸着源
18 るつぼ
19 酸素吹き出し口
20 マスク
21 巻き取りロ−ル
22 プラズマ処理ユニット
Claims (12)
- プラスチックフィルムからなる基材フィルムの一方の面に、
無機酸化物からなる蒸着膜を形成し、
該蒸着膜の表面に、酸素ガスを含む混合ガスによるグロー放電プラズマ処理を行うことにより、表面自由エネルギーが70dyne以上のプラズマ処理面を形成し、
該プラズマ処理面に、一般式R1nM(OR2)m(式中、R1、R2は炭素数1〜8の有機基であり、Mは金属原子であり、nは0以上の整数であり、mは1以上の整数であり、n+mはMの原子価である)で表される1種又はそれ以上のアルコキシドと、ポリビニルアルコール系水溶性樹脂と、酸触媒とを含有する混合溶液からゾルゲル法によって得られるガスバリア性組成物の塗工液を塗布してコーティング層を形成し、
続いて、該コーティング層を加熱乾燥処理して、ガスバリア性塗膜を形成することを特徴とするガスバリア性積層フィルムの製造方法。 - 前記酸素ガスを含む混合ガスによるグロー放電プラズマ処理を、前記蒸着膜を形成する工程の直後に、インラインで行うことを特徴とする請求項1に記載のガスバリア性積層フィルムの製造方法。
- 前記酸素ガスを含む混合ガスによるグロー放電プラズマ処理が、酸素とアルゴンのガス分圧比が7:3〜9:1からなる混合ガスによるグロー放電プラズマ処理であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のガスバリア性積層フィルムの製造方法。
- 前記混合ガスによるグロー放電プラズマ処理が、プラズマ出力1000〜2000W、混合ガス圧1×10-3〜1×10-5Torr、処理速度500〜700mm/minで処理することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のガスバリア性積層フィルムの製造方法。
- 前記無機酸化物からなる蒸着膜が、アルミニウムを蒸着源に用いて電子ビーム(EB)加熱方式による反応真空蒸着法により形成されることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のガスバリア性積層フィルムの製造方法。
- プラスチックフィルムからなる基材フィルムの一方の面に、
無機酸化物からなり、表面自由エネルギーが70dyne以上のプラズマ処理面を有する蒸着膜と、
一般式R1nM(OR2)m(式中、R1、R2は炭素数1〜8の有機基であり、Mは金属原子であり、nは0以上の整数であり、mは1以上の整数であり、n+mはMの原子価である)で表される1種又はそれ以上のアルコキシドまたは/およびその加水分解物と、ポリビニルアルコール系水溶性樹脂と、酸触媒とを含有し、加熱乾燥してなるガスバリア性塗膜が、
順次積層されていることを特徴とするガスバリア性積層フィルム。 - 前記蒸着膜が、酸化アルミニウムからなる蒸着膜であることを特徴とする請求項6に記載のガスバリア性積層フィルム。
- 前記アルコキシドが、テトラエトキシシランであることを特徴とする請求項6または請求項7に記載のガスバリア性積層フィルム。
- 前記ポリビニルアルコール系水溶性樹脂が、ポリビニルアルコールであることを特徴とする請求項6乃至請求項8のいずれか1項に記載のガスバリア性積層フィルム。
- 前記酸触媒が、塩酸であることを特徴とする請求項6乃至請求項9のいずれか1項に記載のガスバリア性積層フィルム。
- 前記ガスバリア性積層フィルムのガスバリア性が、23℃、90%RHの雰囲気下で、酸素透過度0.1cc/m2・day・atm以下であり、かつ、40℃、90%RHの雰囲気下で、水蒸気透過度0.15g/m2・day以下であることを特徴とする請求項6乃至請求項10のいずれか1項に記載のガスバリア性積層フィルム。
- 請求項6乃至請求項11のいずれか1項に記載のガスバリア性積層フィルムのガスバリア性塗膜上に、ヒートシール性樹脂層を積層したことを特徴とする包装材料。
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