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JP2010132514A - チタン酸ナノシート分散液の製造方法 - Google Patents

チタン酸ナノシート分散液の製造方法 Download PDF

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JP2010132514A JP2008312144A JP2008312144A JP2010132514A JP 2010132514 A JP2010132514 A JP 2010132514A JP 2008312144 A JP2008312144 A JP 2008312144A JP 2008312144 A JP2008312144 A JP 2008312144A JP 2010132514 A JP2010132514 A JP 2010132514A
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Abstract

【課題】アンモニウム化合物、ホスホニウム化合物、及びアミン類の含有量が少なく、透明性の優れたチタン酸ナノシート分散液の製造方法、チタン酸ナノシートの分散液、及びチタン酸ナノシート固体を提供する。
【解決手段】(1)チタン源を、第4級アンモニウム水酸化物等とアミン類の存在下で加水分解してチタン酸ナノシート水分散液を得た後、得られた水分散液の一部又は全部を有機溶媒に置換して、有機溶媒分散液を得、それと分散向上剤とを混合し、得られた分散液とカチオン交換樹脂とを接触させる工程を有するチタン酸ナノシート分散液の製造方法、(2)前記方法により得られる、分散液中の〔[N]/[Ti]〕及び/又は〔[P]/[Ti]〕(式中、[N]、[P]及び[Ti]は、それぞれ、分散液中の窒素原子、リン原子及びチタン原子のモル濃度を示す。)のモル濃度比が0.2未満であるチタン酸ナノシート分散液、及び(3)前記チタン酸ナノシート分散液から分散媒を除去して得られるチタン酸ナノシート固体である。
【選択図】なし

Description

本発明は、チタン酸ナノシート分散液の製造方法、チタン酸ナノシート分散液、及びチタン酸ナノシート固体に関する。
チタン酸化物は、セラミックスや複合酸化物等の原料や光触媒材料等として、工業的に広く用いられている。このチタン酸化物には各種の形態があるが、チタン酸化物の中には、従来のアナターゼ型やルチル型のチタニアではなく、チタン酸又はその塩を含有する厚さがナノスケールのシート、すなわちチタン酸ナノシートを形成するものがある。
このチタン酸ナノシートは、層状チタン化合物をソフト化学的な処理により結晶構造の基本単位である層にまで剥離することにより得られ、分子レベルの厚み(nmレベル)に対して横方向にはその数百倍以上のサイズ(μmレベル)をもち、緻密で平滑性の高い膜を形成することができる。このため、例えば、紫外線遮蔽等のバリア膜、耐食膜、誘電体薄膜、触媒等の各種用途への応用が期待される。
チタン酸ナノシート分散液の製造方法として、チタン含有原料を高温で焼成し、塩酸水溶液と更に第4級アンモニウムイオンを反応させる、レピドクロサイト型と呼ばれるチタン酸ナノシート分散液の製造方法(非特許文献1参照)が報告されている。
この方法は、具体的には、まずCs2CO3:TiO2(モル比)=1:5.2の混合粉末を800℃で20時間焼成して、レピドクロサイト型層状チタン酸であるCs0.7Ti1.8250.1754(□は空孔)を合成し、この粉末を1モル/L程度の塩酸水溶液中で攪拌することで、層状構造を維持したまま、層間のCsイオンを全て水素イオンに入れ換えて、H0.7Ti1.8250.1754・H2Oの組成をもつ水素型物質に誘導する。次いで、これに塩基物質であるテトラブチルアンモニウムヒドロキシドを含む溶液を作用させ、層間に上記塩基物質をインターカレート、更に層剥離させることにより、チタン酸ナノシート分散液を得る方法である。
しかしながら、この方法では、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド等のアミン類を水素イオン濃度と等量以上([N]/[Ti]モル濃度比0.37以上)添加する必要があり、得られるチタン酸ナノシート分散液中には大量のアミン類が共存しており、アミン類の混入が許容できない用途には利用できない。
また、チタンアルコキシドとアミン類との混合液に水を反応させることによりチタン酸ナノシート水分散液を得る方法(非特許文献2参照)が知られている。しかしながら、この方法で得られるチタン酸ナノシート水分散液においても、大量のアミン類(N/Tiモル濃度比0.4以上)が共存する。
さらに、水酸化チタンとアミン類とを接触させて、チタン源/アミン類のモル比が0.1〜2であるチタン酸ノシートを製造する方法(特許文献1参照)、及びチタンアルコキシドとテトラブチルホスホニウムヒドロキシド等の第4級ホスホニウム水酸化物とを反応させて得られた、チタン酸ナノシートの有機溶媒分散液(特許文献2参照)が知られている。
これらの大量のアミン類やホスホニウム類が共存するチタン酸ナノシート分散液は、経時により着色したり、また例えば、ポリエステル系樹脂に配合した場合、樹脂の分解や着色を引き起こす等の問題が生じ、汎用性に乏しい。
佐々木高義,「新しいナノ素材:酸化物ナノシートコロイド」,色材協会誌,2003年,第76巻,第10号,p.391−396 T. Ohya, A. Nakayama, Y. Shibata, T. Ban, Y. Ohya, Y. Takahashi, Journal of Sol-Gel Science and Technology, Vol. 26, p 799-802 (2003) 特開2006−182588 特開2006−206426
本発明は、アンモニウム化合物、ホスホニウム化合物、及びアミン類の含有量が少なく、透明性の優れたチタン酸ナノシート分散液の製造方法、チタン酸ナノシート分散液、及びチタン酸ナノシート固体を提供することを課題とする。
本発明者らは、アミン類等を含有するチタン酸ナノシート水分散液を有機溶媒に置換することにより、また好ましくは、更に分散向上剤を混合し、カチオン交換樹脂と接触させることにより、チタン酸ナノシートからアミン類等を効率的に取り外し、アミン類等の含有量の少ないチタン酸ナノシート分散液を得ることができることを見出した。
すなわち、本発明は次の(1)〜(4)を提供する。
(1)下記工程(I)及び(II)を有するチタン酸ナノシート分散液の製造方法。
工程(I):チタンアルコキシド及び/又はチタン塩を、第4級アンモニウム水酸化物及び/又は第4級ホスホニウム水酸化物とアミン類との存在下で加水分解することにより、第4級アンモニウム水酸化物及び/又は第4級ホスホニウム水酸化物とアミン類とを含有するチタン酸ナノシート水分散液を得る工程
工程(II):工程(I)で得られた水分散液の一部又は全部を有機溶媒に置換することで、アミン類の低減された有機溶媒分散液を得る工程
(2)前記工程(I)及び(II)に続き、更に下記工程(III)及び(IV)を有するチタン酸ナノシート分散液の製造方法。
工程(III):工程(II)で得られた有機溶媒分散液と分散向上剤とを混合する工程
工程(IV):工程(III)で得られた分散液とカチオン交換樹脂とを接触させる工程
(3)前記(1)又は(2)の製造方法により得られる、分散液中の〔[N]/[Ti]〕及び/又は〔[P]/[Ti]〕請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法により得られる、分散液中の〔[N]/[Ti]〕及び/又は〔[P]/[Ti]〕(式中、[N]、[P]及び[Ti]は、それぞれ、分散液中の窒素原子、リン原子及びチタン原子のモル濃度を示す。)のモル濃度比が0.2未満である、チタン酸ナノシート分散液。
(4)前記(3)のチタン酸ナノシート分散液から分散媒を除去して得られる、チタン酸ナノシート固体。
本発明によれば、アンモニウム化合物、ホスホニウム化合物、及びアミン類の含有量が少なく、透明性の優れたチタン酸ナノシート分散液の効率的な製造方法、チタン酸ナノシート分散液、及びチタン酸ナノシート固体を提供することができる。
(チタン酸ナノシート分散液の製造方法)
本発明のチタン酸ナノシート分散液の製造方法は、下記工程(I)及び(II)を有することが特徴である。また、前記工程(I)及び(II)に続き、更に下記工程(III)及び(IV)を有することが特徴である。
工程(I):チタンアルコキシド及び/又はチタン塩を、第4級アンモニウム水酸化物及び/又は第4級ホスホニウム水酸化物とアミン類との存在下で加水分解することにより、第4級アンモニウム水酸化物及び/又は第4級ホスホニウム水酸化物とアミン類とを含有するチタン酸ナノシート水分散液を得る工程
工程(II):工程(I)で得られた水分散液の一部又は全部を有機溶媒に置換することで、アミン類の低減された有機溶媒分散液を得る工程
工程(III):工程(II)で得られた有機溶媒分散液と分散向上剤とを混合する工程
工程(IV):工程(III)で得られた分散液とカチオン交換樹脂とを接触させる工程
本発明における各工程、及びそこで使用する各成分について以下に説明する。
工程(I)
工程(I)は、チタンアルコキシド及び/又はチタン塩(以下、これらを総称して、単に「チタン源」ともいう)を、第4級アンモニウム水酸化物及び/又は第4級ホスホニウム水酸化物とアミン類との存在下で加水分解することにより、第4級アンモニウム水酸化物及び/又は第4級ホスホニウム水酸化物とアミン類とを含有するチタン酸ナノシート水分散液を得る工程である。
(チタン源)
本発明においては、チタン源として、チタンアルコキシド及び/又はチタン塩が用いられる。チタンアルコキシド及び/又はチタン塩としては、加水分解により水酸化チタンを生成するものが好ましい。ここで、水酸化チタンは、Ti(OH)2、Ti(OH)3、Ti(OH)4又はH4TiO4で表される組成式を有するものを包含する。
チタンアルコキシドとしては、炭素数1〜6、好ましくは炭素数2〜4のアルコキシドを有するチタンアルコキシドが好ましく、具体的には、チタンテトラエトキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラブトキシド等が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
これらの中では、特にチタンテトラアルコキシドが好ましく、一般的な入手のし易さ、取り扱い性の観点から、チタンテトライソプロポキシドが好ましい。
チタン塩としては、例えば、四塩化チタン、三塩化チタン、二塩化チタン等の塩化チタン、硫酸チタン、硫酸チタニル、硝酸チタニル等が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。これらの中では、一般的な入手のし易さ、取り扱い性の観点から、四塩化チタン、硫酸チタン及び硫酸チタニルがより好ましい。
チタン塩は、水と混合することにより、又は水との混合後、加熱することにより水酸化チタンを生成するが、その際、更にアルカリを共存させてもよい。水酸化チタンを生成させる際に共存させるアルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ土類水酸化物が挙げられる。更にはアンモニアや上記アミン類もアルカリとして使用することができる。これらの中では、入手のし易さ、取り扱い性の観点から、アルカリ金属水酸化物、アンモニア及びアミン類がより好ましい。アルカリの添加量は、チタン塩水溶液のpHが2以上となる量、より好ましくはpHが4以上となる量が好ましい。
チタン源は、水及び/又はチタン源と相溶性の高い溶媒に溶解しておいてもよい。かかる溶媒としては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソペンチルアルコール等のアルコールが挙げられる。
なお、チタンとともに、他の元素、例えば、バナジウム、ニオブ、タンタル、ジルコニウム、アルミニウム、鉄、コバルト、ニッケル、マンガン等を共存させ、複合化することもできる。
(第4級アンモニウム水酸化物及び第4級ホスホニウム水酸化物)
本発明で用いられる第4級アンモニウム水酸化物及び第4級ホスホニウム水酸化物は、下記式(1)で表される化合物が好ましい。
Figure 2010132514
式(1)中、Aは窒素原子又はリン原子であり、R1、R2、R3及びR4は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい、炭素数2〜10の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、ヒドロキシアルキル基又はアルコキシアルキル基、又は炭素数6〜18個のアリール基又はヒドロキシアリール基を示す。
アルキル基及びヒドロキシアルキル基のR1〜R4は、それぞれ独立して、炭素数2〜8の直鎖状又は分岐鎖状ものが好ましく、炭素数2〜6個のものが特に好ましい。
アリール基又はヒドロキシアリール基のR1〜R4は、それぞれ独立して、炭素数6〜12のものが好ましい。
置換基としては、炭素数1〜6のアルキル基、アルコシキ基、アミノ基、ニトロ基等が挙げられる。
第4級アンモニウム水酸化物としては、炭素数2〜6のアルキル基を有するテトラアルキルアンモニウムヒドロキシドが好ましく、具体的には、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムムヒドロキシド、及びテトラペンチルアンモニウムヒドロキシドから選ばれる1種以上が特に好ましい。
また、第4級ホスホニウム水酸化物としては、テトラエチルホスホニウムヒドロキシド、テトラプロピルホスホニウムヒドロキシド、テトラブチルホスホニウムヒドロキシド、テトラペンチルホスホニウムヒドロキシド、及びテトラヘキシルホスホニウムヒドロキシド等の炭素数2〜8のアルキル基を有するテトラアルキルホスホニウムヒドロキシド;テトラフェニルホスホニウムヒドロキシド;エチルトリフェニルホスホニウムヒドロキシド、ブチルトリフェニルホスホニウムヒドロキシド、ペンチルトリフェニルホスホニウムヒドロキシド、2−ジメチルアミノエチルトリフェニルホスホニウムヒドロキシド、メトキシメチルトリフェニルホスホニウムヒドロキシド等のトリフェニルホスホニウムヒドロキシドが挙げられる。
これらの中では、テトラエチルホスホニウムヒドロキシド、テトラプロピルホスホニウムヒドロキシド、テトラブチルホスホニウムヒドロキシド、及びテトラペンチルホスホニウムヒドロキシドから選ばれる1種以上が特に好ましい。
(アミン類)
アミン類としては、第1級アミン、第2級アミン、及び第3級アミンから選ばれる1種以上が好ましく用いられるが、炭素数1〜10のアルキル基又はアルケニル基を有するアミン類がより好ましい。アミン類は、いわゆる界面活性剤ではないことが好ましい。
具体的には、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、ジプロピルアミン、トリプロピルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、トリブチルアミン、ペンチルアミン、ジペンチルアミン、トリペンチルアミン、ヘキシルアミン、ジヘキシルアミン、トリヘキシルアミン、ジメチルヘキシルアミン、ジメチルベンジルアミン、ジメチルオクチルアミン等が好ましく挙げられる。また、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の置換アミン類も用いることができる。これらは、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
これらの中では、アミン類の留去しやすさの観点から、常圧における沸点が200℃以下が好ましく、150℃以下がより好ましく、100℃以下であるものが更に好ましい。また、第2級アルキルアミン及び第3級アルキルアミンが好ましく、炭素数1〜6、特に炭素数2〜4のアルキル基を有する第2級アルキルアミン及び第3級アルキルアミンがより好ましく、ジエチルアミン、トリエチルアミン及びジ−n−プロピルアミンが特に好ましい。
第4級アンモニウム水酸化物、第4級ホスホニウム水酸化物、及びアミン類(以下、これらを総称して、単に「アミン類等」ともいう)は、溶媒中でチタン源からチタン酸ナノシートを調製する上で、チタン酸ナノシートの構造を決定付ける化合物であるが、本発明においては第4級アンモニウム水酸化物とアミン類の組み合わせがより好ましい。
前記の第4級アンモニウム水酸化物、第4級ホスホニウム水酸化物、アミン類の水溶液のpHは、ナノシート生成の観点から、それぞれの化合物の濃度9mmol/Lの水溶液において、それぞれpHが9以上であることが好ましい。
チタン源をアミン類等の存在下で、加水分解する際の水分量は、水酸化チタンを得るために必要な量以上であればよい。通常、チタン源の質量に対して3〜50倍の質量が好ましく、5〜15倍の質量がより好ましい。加水分解の温度及び時間は、用いるチタンアルコキシド及び/又はチタン塩に応じ、適宜選択することができる。
本発明の製造方法においては、アミン類と共に第4級アンモニウム水酸化物及び/又は第4級ホスホニウム水酸化物を併用することに特徴がある。アミン類だけでは本発明の課題を解決することは難しく、アミン類と第4級アンモニウム水酸化物及び/又は第4級ホスホニウム水酸化物を併用することで、本発明の効果を得ることができる。
工程(I)において、加水分解によりアミン類等を含有するチタン酸ナノシート分散液を製造する方法は特に限定されないが、以下に示す第1方法及び第2方法によれば、効率的に製造することができる。
(第1方法)
第1方法は、アミン類等の含水溶液とチタン源とを混合する方法である。
アミン類等の含水溶液には、アミン類等の溶解を容易にするため、有機溶媒が含有されていてもよい。かかる有機溶媒としては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソペンチルアルコール等の炭素数1〜6の一価アルコールが好ましく、炭素数1〜3の一価アルコールがより好ましい。
アミン類等の含水溶液とチタン源とを混合する場合の、チタン源とアミン類等の混合比率は、〔[N]/[Ti]〕及び/又は〔[P]/[Ti]〕のモル濃度比で、0.1〜3であることが好ましく、0.2〜3であることがより好ましく、0.5〜2.5であることが更に好ましい。前記式中、[N]、[P]及び[Ti]は、それぞれ、分散液中の窒素原子、リン原子及びチタン原子のモル濃度を示し、[N]及び[P]は、後述する[Nqu]及び[Pqu]を含む値である。
第4級アンモニウム水酸化物、第4級ホスホニウム水酸化物を併用する場合は、その合計のモル濃度比になる。チタン酸ナノシートを製造する際の、チタン源に対するアミン類等の割合を増加させることで、より低極性の有機溶媒に対しても透明な分散液を得ることができる。
チタン源と、第4級アンモニウム水酸化物及び/又は第4級ホスホニウム水酸化物の配合比率は、分散液中のチタン源由来のチタン原子のモル濃度[Ti]と、分散液中の第4級アンモニウム水酸化物由来の窒素原子のモル濃度[Nqu]、及び第4級ホスホニウム水酸化物由来のリン原子のモル濃度[Pqu]のモル濃度比〔[Nqu]/[Ti]〕又は〔[Pqu]/[Ti]〕、又は併用する場合は〔[Nqu]+[Pqu]/[Ti]〕のモル濃度比が、それぞれ0.2未満であることが好ましく、0.1以下であることがより好ましく、また、分散安定性の観点から、0.01以上が好ましく、0.05以上がより好ましい。残りは第3級以下のアミン類、好ましくは2級アミンで補うことが好ましい。
アミン類等の含水溶液とチタン源の混合に際し、チタン化合物の白濁を生じることがあるが、継続的に攪拌を行うことで無色透明〜薄黄色の液を得ることができる。
チタン源を混合する際の温度は、特に限定されない。2〜200℃でアミン類等を含有するチタン酸のナノシートが生成するが、長鎖アミンの安定性の観点から、10〜150℃がより好ましく、20〜100℃が更に好ましい。反応時間は0.1〜20時間が好ましく、1〜10時間がより好ましい。
また、チタン酸ナノシートの粒子径(横方向の長さ)を発達させるために、アミン類等とチタン源を混合した後に、更に50〜200℃で水熱合成を行ってもよい。
(第2方法)
第2方法は、アミン類等とチタン源を予め混合しておき、その後、水を混合してチタン含有水溶液を製造する方法である。アミン類等には、第1方法と同様の有機溶媒が含有されていてもよい。
アミン類等及びチタン源の混合物に水を加える際、水の量はチタンが分解するのに必要な量であればよい。添加する水の量は、アミン類等及びチタン源の混合物の質量に対して5〜50倍の質量が好ましく、10〜15倍の質量がより好ましい。水を添加する温度は、特に限定はされないが2〜200℃が好ましく、20〜100℃がより好ましい。また、水の滴下時間は、0.01〜5時間が好ましく、0.02〜2時間がより好ましい。更に、水の添加後、0.1〜20時間の熟成を行うことが好ましい。
工程(I)で得られるアミン類等を含有するチタン酸ナノシート分散液中のチタン濃度は、酸化チタン(TiO2)換算で0.01〜15質量%が好ましく、0.05〜10質量%がより好ましく、0.05〜5質量%が更に好ましい。
工程(II)
工程(II)は、 工程(I)で得られた水分散液の一部又は全部を有機溶媒に置換することで、アミン類の低減された有機溶媒分散液を得る工程である。詳しくは、工程(I)で得られた水分散液中の水の一部又は全部を有機溶媒に置換する操作を行うことで、溶媒と共にアミンの少なくとも一部を除去し、アミン類の低減された有機溶媒分散液を得る工程である。
工程(I)で得られた水分散液に有機溶媒を加えて、溶媒を除去し、次いで有機溶媒を再び加えるという操作を繰り返すことで、水分散液の一部又は全部を有機溶媒に置換しながら水を除去(留去)すれば、溶媒と共にアミン類は除去されるので、アミン類の低減した、水分の低い無色透明〜薄黄色のチタン酸ナノシートを含有する有機溶媒分散液を効率的に得ることができる。
有機溶媒置換の条件はアミン類が除去できる条件であればよく、減圧及び加熱条件下による蒸留操作条件とすることができる。高温では分散液の着色が増す可能性があるので、0〜100℃が好ましく、10〜50℃がより好ましい。減圧する場合は、0.0001〜0.1MPaが好ましく、0.001〜0.1MPaがより好ましい。
得られる有機溶媒分散液の水の含有量は、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。
用いる有機溶媒は、工程(I)における第1方法及び第2方法で用いる有機溶媒とは異なるものとすることもできる。そうすれば、工程(I)で得られる有機溶媒分散液とは異なる有機溶媒分散液を得ることができる。
ここで用いることができる有機溶媒は特に限定されないが、水又は極性を有する有機溶媒が好ましい。かかる有機溶媒としては、前記の炭素数1〜6、好ましくは炭素数1〜3の一価アルコール;エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン等の多価アルコール;プロピレンカーボネート等のカーボネート系有機溶媒等が挙げられる。
チタン酸ナノシートの有機溶媒分散液中のチタン濃度は、酸化チタン(TiO2)換算で40質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、10質量%が更に好ましく、5質量%以下が特に好ましい。下限は0.05質量%以上が好ましい。
工程(III)
工程(III)は、工程(II)で得られた有機溶媒分散液と分散向上剤とを混合する工程である。
(分散向上剤)
本発明において、分散向上剤とは、溶液中のチタン酸ナノシートの分散性を向上させる化合物であり、チタン酸ナノシートの凝集、沈殿、ゲル化等を抑制する作用を示す。分散向上剤は、チタン酸ナノシートの有機溶媒分散液からカチオン交換樹脂で処理することによりアミン類等を徹底的に除去する上で重要な化合物である。
例えば、アミン類等としてジエチルアミンを含有するチタン酸ナノシート有機溶媒分散液(例えば、TiO2換算濃度:質量1%、[アミン類等]/[Ti]のモル濃度比0.5)をカチオン交換樹脂で処理しても、分散向上剤共存下では沈殿が生じることはない。その結果、アミン類等の含有量の少ない([アミン類等]/[Ti]のモル濃度比0.1以下)チタン酸ナノシートの透明で均一な分散液を得ることができる。
一方、分散向上剤の非存在下では、同じチタン酸ナノシート分散液を、同様にカチオン交換樹脂で処理すると、約1質量%のTiO2換算濃度でも沈殿が生じ、これを更に乾燥させて粉末状態にしてもアミン類等を完全に除去することはできない。
分散向上剤の作用機構については定かではないが、分散向上剤のシラノール基、ヒドロキシル基、カルボキシル基の等の官能基がチタン酸ナノシートの表面Ti原子に相互作用(結合)することにより、チタン酸ナノシートの構造を安定化(凝集抑制)させることにより、カチオン交換樹脂で処理してアミン類等の含有量を少なくしても安定なチタン酸ナノシート分散液が得られたと推察される。
チタン酸ナノシート有機溶媒分散液と分散向上剤の混合温度は、製造容易性及び分散性の観点から、通常0〜100℃が好ましく、10〜70℃がより好ましく、20〜40℃が更に好ましい。また、その混合時間は、0〜24時間が好ましく、1〜12時間がより好ましい。
本発明の分散液の生産性及び分散安定性の観点から、工程(III)終了後の分散液(中間分散液)の濃度はTiO2重量換算濃度で0.1〜40%が好ましく、1〜20%がより好ましい。
分散向上剤は、有機化合物でも無機化合物でもよいが、得られるチタン酸ナノシート分散液の分散性向上の観点から、分散溶媒に可溶な化合物が好ましく、チタン酸ナノシート表面に相互作用(結合、配位、静電的相互作用等)する化合物が好ましい。具体的には、(a)アルコキシシラン、(b)ポリオール、(c)ヒドロキシカルボン酸、クロロシラン、ポリカルボン酸、ジケトンからなる群から選ばれる1種以上が好ましく、(a)ヒドロキシカルボン酸、(b)アルコキシシラン、(c)ポリオールからなる群から選ばれる1種以上がより好ましい。
(a)アルコキシシランのSi原子1個当たりのアルコキシ基の数は2〜3が好ましく、アルコキシ基としては、炭素数1〜6、特に炭素数1〜4のものが好ましく、特にメトキシ基、エトキシ基が好ましい。
アルコキシシランの置換基は、本分散液の保存安定性の観点から、アルキル基、エポキシ基、フェニル基、メルカプト基、ビニル基、及びメタクリル基からなる群から選ばれる1種以上が好ましく、本分散液の保存安定性、コスト等の観点から、アルキル基、エポキシ基、及びフェニル基からなる群から選ばれる1種以上がより好ましい。
アルコキシシランの具体例としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリメトキシシシラン、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−ベンジルアミノプロピルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシシラン、ジメトキシメチル−3−(3−フェノキシプロピルチオプロピル)シラン等のシランカップリング剤が挙げられる。
その好適例としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、及びジフェニルジメトキシシシランからなる群から選ばれる1種以上が挙げられる。
これらは、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
アルコキシシランの分子量は特に限定されないが、保存安定性及びコストの観点から、100〜10,000が好ましく、120〜1000がより好ましく、150〜500が更に好ましい。
チタン酸ナノシート有機溶媒分散液とアルコキシシランの混合は、チタン酸ナノシート有機溶媒分散液中のチタン源由来のTi原子に対する、アルコキシシラン中のSi原子の割合、すなわち[Si]/[Ti](式中、[Si]及び[Ti]は、それぞれ、分散液中の珪素原子及びチタン原子のモル濃度を示す。)がモル濃度比で、0.001〜50、好ましくは0.005〜10、より好ましくは0.01〜1、最も好ましくは0.05〜0.5の割合になるように行うことが好ましく、これが最終的な分散液中の[Si]/[Ti]の比率に反映される。
なおアルコキシシランは、加水分解により生成するSi−O基がチタン酸ナノシートの表面Ti原子に結合することが推察される一方で、その一部は、重合してポリシロキサン等のケイ素化合物を形成する可能性が考えられる。従って、本分散液には、アルコキシシランは、ポリシロキサンやシラノール化合物として含有する可能性もある。このため、本分散液のSi量はこれら全ての化合物を合計したSi量である。
(c)ポリオールは、保存安定性の観点から、1分子当たりのアルコール官能基数が2〜20であるものが好ましく、アルコール官能基数に対する炭素数の比が1〜20であるものが好ましく、1,2−ポリオール、1,3−ポリオールが好ましい。
ポリオールの分子量は特に限定されないが、本分散液の保存安定性及びコストの観点から、60〜10,000が好ましく、60〜1,500がより好ましく、炭素数は2〜50が好ましい。
ポリオールの具体例としては、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,3−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,3−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、カテコール、3−ブテン−1,2−ジオール、グリセリン、グリセリルエーテル、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の水溶性ポリオールが挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
これらの中では、保存安定性等の観点から、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,3−ペンタンジオールの他、分子量300〜1,200のポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の水溶性ジオールがより好ましい。また、特に、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、分子量300〜1,000のポリエチレングリコールが更に好ましい。
ポリオールの配合量は特に限定されないが、保存安定性及び製造容易性等の観点から、ポリオール/Tiモル濃度比で0.1〜10が好ましく、0.3〜3がより好ましく、0.4〜2.5が更に好ましい。
(c)ヒドロキシカルボン酸とは、水酸基を有するカルボン酸である。水酸基を1個有するヒドロキシカルボン酸としては、グリコール酸(一塩基酸)、乳酸(一塩基酸)、マンデル酸(一塩基酸)、リンゴ酸(二塩基酸)、及びクエン酸(三塩基酸)等が挙げられる。水酸基を2個有するヒドロキシカルボン酸としては、グリセリン酸(一塩基酸)、酒石酸(二塩基酸)等が挙げられる。本分散液の分散性の観点から、水溶性のヒドロキシカルボン酸が好ましく、グリコール酸、乳酸、マンデル酸、リンゴ酸、クエン酸、グリセリン酸及び酒石酸からなる群から選ばれる1種以上が好ましく、クエン酸が特に好ましい。
チタン酸ナノシート分散原液とヒドロキシカルボン酸の混合は、チタン酸ナノシート分散原液中のチタン源由来のTi原子に対する、ヒドロキシカルボン酸の割合、すなわち[ヒドロキシカルボン酸]/[Ti](式中、[ヒドロキシカルボン酸]及び[Ti]は、それぞれ、分散液中のヒドロキシカルボン酸及びチタン原子のモル濃度を示す。)がモル濃度比で、0.01〜10、好ましくは0.05〜1、より好ましくは0.1〜0.5の割合になるように行うことが好ましく、これが最終的な本分散液中の[ヒドロキシカルボン酸]/[Ti]の比率に反映される。
工程(IV)
工程(IV)は、工程(III)で得られた分散液とカチオン交換樹脂とを接触させる工程である。
アミン類等を含有するチタン酸ナノシート有機溶媒分散液に分散向上剤を添加してチタン酸ナノシートの分散性を高めた上で、カチオン交換樹脂を接触させることによって、透明性に優れ、アミン類等を従来にない非常に低いレベルまで下げることができる。かかる分散液は、分散液中の〔[N]/[Ti]〕及び/又は〔[P]/[Ti]〕(式中、[N]、[P]及び[Ti]は、前記のとおりである)のモル濃度比が0.2未満であり、好ましくは0.1以下であるチタン酸ナノシート分散液である。第4級アンモニウム水酸化物、第4級ホスホニウム水酸化物を併用する場合は、その合計のモル濃度比になる。製造工程でアミン類又はホスホニウム類の何れかを配合しない場合は、配合しない化合物由来のモル濃度比率は当然ながら0になる。本発明では実際に、〔[N]/[Ti]〕及び/又は〔[P]/[Ti]〕のモル濃度比が0.04程度でかつ安定な分散液を得ることができている。その下限は特に制限はないが、生産性の観点から、製造工程で該化合物を配合した場合は、0.005以上である。
以上の方法で得られるチタン酸ナノシート分散液は、25℃で中性ないし酸性であり、特にTiO2重量換算濃度1%の分散液の25℃におけるpHは、好ましくは1〜7.5、より好ましくは2〜7、更に好ましくは2.5〜6.5である。中性ないし酸性のチタン酸ナノシート分散液は、耐アルカリ性に劣る基材との複合化が可能となり、汎用性の点で優れている。
また、チタン酸ナノシート分散液を、ポリエステル系樹脂等に添加して無機−有機ナノ複合材料を製造する場合、アルカリ性のチタン酸ナノシート分散液を配合すると、配合組成物の保存安定性や得られる複合材料成形体の物性が低下するおそれがあるが、中性ないし酸性のチタン酸ナノシート分散液を添加すればそのような不都合が生じる可能性が低い。
本発明のカチオン交換樹脂を用いる方法は、分散液を酸性にすることに適しており、アミン量を低減でき、また、従来の酸剤(塩酸、硫酸等)添加による酸性化においては分散液の透明度が下がる傾向にあるのに対して、本発明方法は透明性を維持する上で有利である。従って、本発明のチタン酸ナノシート分散液は、分散向上剤(ヒドロキシカルボン酸等)以外の酸を実質的に添加しなくても、中性ないし酸性で、かつ透明度が高く安定な分散剤とすることができる。
ここで「透明性に優れる」とは、TiO2重量換算濃度1%の分散液の濁度が30%以下のことをいう。濁度はJIS K−0101規定の方法により求めることができる。
また、pHの測定は実施例記載の方法により行う。本分散液中のTi量は、高周波誘導プラズマ発光分析法(ICP)や蛍光X線分析法等の常法により、アミン量は、滴定法、NMR法、ガスクロマトグラフ法、液体クロマトグラフ法等の常法により求めることができる。
本発明においては、工程(IV)の後に、加熱等により分散媒を除去して濃縮する操作と、濃縮された分散媒に再び分散媒を追加する希釈する操作を繰り返すことによって、アミン類を除去する工程を加えてもよい。分散向上剤を添加した後、溶媒を完全に除去させて固体にしたものを、改めて溶媒に分散させてもよい。これら操作を行うことで、アミン類を低減させることができる。カチオン交換樹脂はその前後で用いることができる。溶媒は前記の分散媒に挙げられたものを用いることができ、使用用途によって、メタノール等の有機溶剤に置換してもよく、水溶液であってもよい。
(チタン酸ナノシート固体)
本発明のチタン酸ナノシート固体は、前記で得られたチタン酸ナノシート分散液から分散媒を除去することにより得ることができる。
ところで、カチオン交換樹脂による接触処理を行わない分散液、すなわちチタン酸ナノシート有機溶媒分散液から分散媒を除去することにより得られるチタン酸ナノシート分散液は、チタン酸ナノシートと静電的相互作用していると推察されるアミン類等が、チタン酸ナノシート間にインターカレートされた層状構造を形成すると考えられる。従って、チタン酸ナノシート有機溶媒分散液とから単に分散媒を除去するだけでは、得られたチタン酸ナノシート固体は、層状構造を有するが、該固体中に大量のアミン類等を残した状態になる。しかしながら、本発明におけるカチオン交換樹脂による接触処理を行うと、アミン類等が大幅に低減されたチタン酸ナノシート固体を得ることができる。
分散媒の除去方法としては、加熱又は減圧により蒸発する方法等の常法が採用される。加熱乾燥温度は200℃以下が好ましく、150℃以下がより好ましい。
乾燥時間は、所望の乾燥度により適宜設定すればよいが、通常1〜72時間が好ましく、5〜24時間がより好ましい。
本発明のチタン酸ナノシート固体は、粉末状、顆粒状、ガラス状、ゲル状等各種の形態とすることができるが、使いやすさ、製造容易性の観点から、粉末状が好ましい。
前記ナノシート固体中のチタン酸ナノシートの含有量は、チタン酸ナノシートの性能発現の観点から、TiO2換算濃度で30〜99質量%が好ましく、50〜95質量%がより好ましく、60〜90質量%が更に好ましい。
前記固体に含まれるアミン類等の含有量は、汎用性の観点から、〔[N]/[Ti]〕のモル濃度比、及び/又は〔[P]/[Ti]〕のモル濃度比(式中、[N]、[P]及び[Ti]は、前記のとおりである)が0.2未満であり、0.1以下が好ましく、0.08以下がより好ましく、0.05以下が特に好ましく、その下限は特に制限はないが、生産性の観点から、いずれかが0.005以上である。また前記ナノシート固体には、性能を損なわない範囲内で、チタン酸ナノシート以外の元素、化合物を共存させることができる。分散向上剤を用いた場合は、チタン酸ナノシート固体は、分散向上剤を含有する。
なお、前記ナノシート固体中の各成分の定性分析、定量分析は、粉末X線回折法(XRD)、ラマンスペクトル法、IRスペクトル法、NMRスペクトル法、紫外−可視吸収スペクトル法、蛍光X線分析法(XRF)、燃焼法等の組成分析、滴定法等の常法により行うことができる。
以下の実施例及び比較例において、ラマン分光法によるチタン酸ナノシート構造の確認、粉末X線回折法(XRD)によるチタン化合物の層状構造の確認、チタン等の定量分析、及びpH測定は、以下の方法によって行った。なお、「%」は質量基準である。
<ラマン分光法によるチタン酸シート構造の確認>
ラマン分光測定装置(東京インスツルメント株式会社製、Nanofinder30)を用いて、アルゴンイオンレーザー(波長633nm)を光源とし、グレーティング600grp/mm、積算時間400秒の条件で室温にて測定した。
<粉末X線回折法(XRD)によるチタン化合物の層状構造の確認>
粉末X線回折装置(理学電機株式会社製、RINT2500VPC、光源:Cu−Kα、管電圧:40kV、管電流:120mA)を用い、2θ=4〜60°の範囲を走査間隔0.01°、走査速度10°/min、発散縦制限スリット10mm、発散スリット1°、受光スリット0.3mm、散乱スリット自動の条件で室温にて測定した。また、2θ=2〜10°の範囲を走査間隔0.01°、走査速度1°/min、発散縦制限スリット10mm、発散スリット1/2°、受光スリット0.15mm、散乱スリット自動の条件で室温にて測定した。
<定量分析>
チタン酸ナノシート固体のTi、Si定量分析は、蛍光X線分析(XRF)装置(理学電機株式会社製、ZSX100E)を用いて行い、C、H、N、P定量分析は、全自動元素分析計(パーキンエルマー社製、2400II、カラム分離方式、TCD検出)を用いて行った。また、チタン酸ナノシート分散液中のTi定量分析は、分散液の乾燥固体を前記の蛍光X線装置を用いて分析することにより、行った。チタン酸ナノシート分散液中のアミン類等の定量分析は、過塩素酸滴定法により、行った。
<pH測定>
pHメータ(株式会社堀場製作所製、「D−13」、pH電極「6367」)を用いて、pH電極内部液として飽和塩化カリウム水溶液(3.33mol/L)、温度25℃の条件下でpHを測定した。なお、本分散液の分散溶媒が有機溶媒である場合、水で2倍希釈した分散液のpHを測定した。
実施例1
(1)チタン酸ナノシート水分散液の調製
チタンテトライソプロポキサイド〔Ti(OiPr)4〕(和光純薬工業株式会社製)0.4モル(113.7g)を秤量した。
次にジエチルアミン(和光純薬工業株式会社製)0.16モル(11.7g)と10%テトラブチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(和光純薬工業株式会社製)103.8g(テトラブチルアンモニウムヒドロキシド:0.04モル)とを蒸留水546.6gに溶解したアミン水溶液を撹拌し、これに、室温下、上記のアルコキシド溶液を滴下した。滴下に伴い溶液は白濁するが、撹拌を続行することでTiO2換算濃度4%、[N]/[Ti]モル濃度比0.5、pH12の透明な、第4級アンモニウム水酸化物とアミン類を含有するチタン酸ナノシート水分散液を得た。
(2)分散液の有機溶媒への置換
上記で得られたチタン酸ナノシート水分散液300gをエバポレーターを用いて約100gまで濃縮した。次にこの濃縮液にメタノールを500g添加し、同様にエバポレーターにて液量が90〜100g程度になるまで濃縮した。この操作を12回繰り返してチタン酸ナノシートのメタノール分散液を得た。
最終的に得られたチタン酸ナノシートのメタノール分散液は透明均一であった。得られた無色透明水分散液をテフロン(登録商標)製バットに入れ、電気乾燥機を用いて100℃、8時間乾燥を行うことにより、淡黄色粉末を得た。
得られた乾燥粉末の定量分析の結果、TiO2換算濃度4%、水分0.29%、[N]/[Ti]モル濃度比は0.26、[H2O]/[Ti]モル濃度比は0.32であった。TiO2換算濃度1%のメタノール−水混合分散液の25℃におけるpHは9.0であった。
また、XRDパターンにおいて、アナターゼ型やルチル型等の結晶性化合物のピークは見られず、面間隔1.9nmの層状構造に由来するピークのみが認められたことから、チタン酸ナノシート固体が層状構造であることが確認できた。またラマンスペクトルによりチタン酸骨格構造であることが確認された。
得られたメタノール分散液を、メタノールで希釈し、TiO2換算濃度2%の中間分散液を調整した。
(3)フェニルトリメトキシシランによる表面改質
上記チタン酸ナノシートのメタノール分散液600g(TiO2換算濃度2%)にフェニルトリメトキシシラン(信越化学株式会社製)3.0g(0.015モル)を添加後、60℃にて3日間反応を行い、フェニルトリメトキシシランで表面改質されたチタン酸ナノシートを得た。
(4)カチオン交換樹脂による残留アミン除去
上記で得られたフェニルトリメトキシシランで表面改質されたチタン酸ナノシートのメタノール分散液をメタノールにてTiO2換算濃度1%に希釈して攪拌し、室温下、強酸性カチオン交換樹脂(オルガノ株式会社製、アンバーライト120B(H+型)、総交換容量4.4mg当量/g乾燥樹脂)8.9g(分散液中の残留アミン量に対して1当量)を添加、1時間撹拌後、デカンテーションによりカチオン交換樹脂を除去することにより、チタン酸ナノシートのメタノール分散液を得た。ラマンスペクトルによりチタン酸骨格構造であることが確認された。
最終的に得られたチタン酸ナノシートのメタノール分散液は透明均一であり、その定量分析の結果、TiO2換算濃度1%、[N]/[Ti]モル濃度比は0.03、TiO2換算濃度0.5%のメタノール−水混合分散液の25℃におけるpHは6.04であった。
このチタン酸ナノシート分散液をテフロン(登録商標)製バットに入れ、電気乾燥機を用いて110℃、8時間乾燥を行うことにより、白色粉末を得た。得られた乾燥粉末の定量分析の結果、TiO2換算濃度72%、[N]/[Ti]モル濃度比は0.029であった。また、XRDパターンにおいて、アナターゼ型やルチル型等の結晶性化合物のピークは見られず、面間隔1.9nmの層状構造に由来するピークのみが認められたことから、チタン酸ナノシート固体が層状構造であることが確認できた。またラマンスペクトルによりチタン酸骨格構造であることが確認された。
比較例1
実施例1において、チタン酸ナノシート水分散液を合成する際に、10%テトラブチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を添加せず、全量ジエチルアミン(和光純薬工業株式会社製)0.2モル(14.6g)とした以外は、実施例1と同様の操作を行った。その結果、メタノールへの置換工程で液は凝集・ゲル状を呈し、均一な透明分散液を得ることは出来なかった。尚、この際の[N]/[Ti]モル濃度比は、0.29であった。
本発明のチタン酸ナノシート分散液及びその固体は、アミン類等の含有量が少ないことから、機能性膜(紫外線遮蔽等のバリア膜、耐食膜等)のコート剤、誘電体薄膜材料、触媒等のみならず、アミン類等の混入が許容できない樹脂(例えば、ポリエステル系樹脂)等の添加剤としても利用することもできる。

Claims (7)

  1. 下記工程(I)及び(II)を有するチタン酸ナノシート分散液の製造方法。
    工程(I):チタンアルコキシド及び/又はチタン塩を、第4級アンモニウム水酸化物及び/又は第4級ホスホニウム水酸化物とアミン類との存在下で加水分解することにより、第4級アンモニウム水酸化物及び/又は第4級ホスホニウム水酸化物とアミン類とを含有するチタン酸ナノシート水分散液を得る工程
    工程(II):工程(I)で得られた水分散液の一部又は全部を有機溶媒に置換することで、アミン類の低減された有機溶媒分散液を得る工程
  2. 前記工程(I)及び(II)に続き、更に下記工程(III)及び(IV)を有するチタン酸ナノシート分散液の製造方法。
    工程(III):工程(II)で得られた有機溶媒分散液と分散向上剤とを混合する工程
    工程(IV):工程(III)で得られた分散液とカチオン交換樹脂とを接触させる工程
  3. アミン類が、第1級アミン、第2級アミン、及び第3級アミンから選ばれる1種以上である、請求項1又は2に記載のチタン酸ナノシート分散液の製造方法。
  4. 有機溶媒がアルコールである、請求項1〜3のいずれかに記載のチタン酸ナノシート分散液の製造方法。
  5. 分散向上剤が、アルコキシシラン、ポリオール、及びヒドロキシカルボン酸から選ばれる1種以上である、請求項2〜4のいずれかに記載のチタン酸ナノシート分散液の製造方法。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法により得られる、分散液中の〔[N]/[Ti]〕及び/又は〔[P]/[Ti]〕(式中、[N]、[P]及び[Ti]は、それぞれ、分散液中の窒素原子、リン原子及びチタン原子のモル濃度を示す。)のモル濃度比が0.2未満である、チタン酸ナノシート分散液。
  7. 分散液が中性ないし酸性である、請求項6に記載のチタン酸ナノシート分散液。
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