JP2010069685A - 金型製造方法及び金型 - Google Patents
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Abstract
【課題】大面積、且つ、所望の肉厚を有する金属ガラス層で形状転写面を形成し、さらに、金属ガラス層を金型母材に対して良好に固定された金型を製造する金型製造方法、及び、金型を提供する。
【解決手段】金型母材11の多数の微細凹凸形状からなる被嵌合部11aを設けた支持面11f上に金属ガラス層12の材料を設置し、金属ガラス層12の材料の温度が金属ガラス層12のガラス遷移温度以上、且つ、結晶化温度以下、となるように加熱して、金属ガラス層の材料を支持面11fの被嵌合部11aを構成する多数の微細凹凸形状の凹部に金属ガラス層12の材料を充填させ、その後、金属ガラス層12の材料の温度を室温に冷却することで、金属ガラス層12が金型母材11と嵌合した状態を形成して金属ガラス層12を金型母材11に対して一体化するように結合させて金型1を構成する。
【選択図】図1
【解決手段】金型母材11の多数の微細凹凸形状からなる被嵌合部11aを設けた支持面11f上に金属ガラス層12の材料を設置し、金属ガラス層12の材料の温度が金属ガラス層12のガラス遷移温度以上、且つ、結晶化温度以下、となるように加熱して、金属ガラス層の材料を支持面11fの被嵌合部11aを構成する多数の微細凹凸形状の凹部に金属ガラス層12の材料を充填させ、その後、金属ガラス層12の材料の温度を室温に冷却することで、金属ガラス層12が金型母材11と嵌合した状態を形成して金属ガラス層12を金型母材11に対して一体化するように結合させて金型1を構成する。
【選択図】図1
Description
本発明は、樹脂射出成形やガラスプレス等の成形に用いられる金型の製造方法、及び、金型に関するものである。
従来、この種の金型として、球面レンズや非球面レンズなどの光学素子成形用金型は、成形するレンズがプラスチックレンズの場合、マルテンサイト系ステンレス鋼のような高強度の金属合金ブランクを用いたものが有る。このような金型では、まず、金型母材となる金属合金のブランク材を機械加工で所望な形状寸法を作り出した後、加工面に厚みおよそ200[μm]前後のNiP膜を無電解めっきで成膜する。そして、NiP膜に対し、ダイヤモンドバイトを用いた超精密切削仕上げ加工を行い、金型転写面の形状を最終的に形成する。このような金型を加工する工程は通常広く行われている工程である。
一方、成形するレンズがガラスプレスレンズの場合、その金型もプラスチックレンズの場合と略同じ工程で製造されているが、樹脂に比べ高温成形のため金型はより高強度なものが要求される。このため、ガラスプレスレンズを成形する金型にはブランク材には超硬合金やサーメットなどのさらに高強度、高硬度の材料を用いる。また、ガラスプレスレンズを成形する金型としては、上述したNiP膜の変わりに、SiC膜や窒化膜などがブランク材の上に成膜されている。
そして、これらのような金型を用いて、何万ショット、何十万ショットの成形サイクルが経つと、成形対象であるプラスチックやガラスと対向する形状転写面の形状の崩れや形状転写面の酸化、欠け、割れといった磨耗が生じる。このように形状転写面に磨耗が生じた金型の転写面に対して、再度切削、研磨などの工程で形状転写面の形状を修正するといったメンテナンスを行うことで金型の使用寿命を伸ばしていくことが一般的に行われている。
一方、成形するレンズがガラスプレスレンズの場合、その金型もプラスチックレンズの場合と略同じ工程で製造されているが、樹脂に比べ高温成形のため金型はより高強度なものが要求される。このため、ガラスプレスレンズを成形する金型にはブランク材には超硬合金やサーメットなどのさらに高強度、高硬度の材料を用いる。また、ガラスプレスレンズを成形する金型としては、上述したNiP膜の変わりに、SiC膜や窒化膜などがブランク材の上に成膜されている。
そして、これらのような金型を用いて、何万ショット、何十万ショットの成形サイクルが経つと、成形対象であるプラスチックやガラスと対向する形状転写面の形状の崩れや形状転写面の酸化、欠け、割れといった磨耗が生じる。このように形状転写面に磨耗が生じた金型の転写面に対して、再度切削、研磨などの工程で形状転写面の形状を修正するといったメンテナンスを行うことで金型の使用寿命を伸ばしていくことが一般的に行われている。
近年,上述したのNiP膜、SiC、窒化膜の代替材料として、切削性、耐腐食性、耐熱性の優れる金属ガラス(非晶質金属合金)を利用した研究開発が活発に行われている。
金型母材の上に金属ガラス層を形成し、形状転写面を金属ガラス層で構成するものとしては、金型母材の上に、スパッタリング、イオンプレーティング処理、蒸着やCVD処理などの成膜方法を用いて、金属ガラスの膜を金型の転写面に作製するという発明がなされている(例えば、特許文献1)。しかし、これらの成膜方法で得られる非晶質構造を持つ金属ガラス層は極めて薄い層であり、例えば,通常のスパッタリング法ではせいぜい10[μm]が限界と言われている。また、他の成膜方法を用いても通常の場合、数十[nm]、数百[nm]程度の膜厚であり、できる限り膜厚を厚くしようとしても数[μm]が限界である。従って、このように成膜された金属ガラス層に対し、ダイヤモンドバイトを用いた超精密切削工程で除去できる切削しろは極めて少なくなる。言い換えれば、上述した成膜方法のよって金型母材の上に形成された金属ガラス層に直接10[μm]を超える段差形状を形成することは困難である。
また、上述した成膜方法では、金属ガラス層を形成する合金をイオン化または蒸発させて金型母材に吹き付けて付着させて成膜するため、吹き付ける際の各々の粒子の軌跡や堆積する場所をコントロールすることは困難であり、金属ガラス層を構成する膜の膜厚のばらつきが生じ易い。そして、膜厚にばらつきが生じると膜厚が厚ければ厚いほど、結晶化が生じてしまう傾向が顕著となり、非晶質の構造すら得られにくくなる恐れもある。これは以下の理由によるものと考えられる。
すなわち、非晶質構造は結晶構造に比べて不安定な状態であるため、成膜方法によって得られた非晶質構造の金属ガラスは薄膜という状態であることによって、非晶質構造が維持される。このため、膜厚が大きくなって薄膜状態でなくなると、非晶質という非平衡な状態が崩れ、よりエネルギーの低い状態である結晶という状態に進むためである。
金型母材の上に金属ガラス層を形成し、形状転写面を金属ガラス層で構成するものとしては、金型母材の上に、スパッタリング、イオンプレーティング処理、蒸着やCVD処理などの成膜方法を用いて、金属ガラスの膜を金型の転写面に作製するという発明がなされている(例えば、特許文献1)。しかし、これらの成膜方法で得られる非晶質構造を持つ金属ガラス層は極めて薄い層であり、例えば,通常のスパッタリング法ではせいぜい10[μm]が限界と言われている。また、他の成膜方法を用いても通常の場合、数十[nm]、数百[nm]程度の膜厚であり、できる限り膜厚を厚くしようとしても数[μm]が限界である。従って、このように成膜された金属ガラス層に対し、ダイヤモンドバイトを用いた超精密切削工程で除去できる切削しろは極めて少なくなる。言い換えれば、上述した成膜方法のよって金型母材の上に形成された金属ガラス層に直接10[μm]を超える段差形状を形成することは困難である。
また、上述した成膜方法では、金属ガラス層を形成する合金をイオン化または蒸発させて金型母材に吹き付けて付着させて成膜するため、吹き付ける際の各々の粒子の軌跡や堆積する場所をコントロールすることは困難であり、金属ガラス層を構成する膜の膜厚のばらつきが生じ易い。そして、膜厚にばらつきが生じると膜厚が厚ければ厚いほど、結晶化が生じてしまう傾向が顕著となり、非晶質の構造すら得られにくくなる恐れもある。これは以下の理由によるものと考えられる。
すなわち、非晶質構造は結晶構造に比べて不安定な状態であるため、成膜方法によって得られた非晶質構造の金属ガラスは薄膜という状態であることによって、非晶質構造が維持される。このため、膜厚が大きくなって薄膜状態でなくなると、非晶質という非平衡な状態が崩れ、よりエネルギーの低い状態である結晶という状態に進むためである。
このような問題に対して、上述した成膜方法によって得られる薄膜状の金属ガラスとは異なり、金属合金を液体の状態から急冷して結晶化を経ずにそのまま固体にすることによって得られるバルク状の金属ガラスを金型として利用する研究開発も行われている。バルク状の金属ガラスは、液状の金属合金を急冷して固体を得るため、熱を如何に早く奪って冷却するかといことが重要である。そして、物質には熱容量や熱伝導率という特性があり、急冷によって一定時間内で奪える熱量は限界があるため、バルク状の金属ガラスの形状としては急冷が可能な板状か棒状かに限られている。また、板状の金属ガラスの場合は、厚み1〜2[mm]程度が現状の限界であり、棒状の金属ガラスの場合は、直径約10[mm]程度が現状の限界である。
しかし、このようなバルク状の金属ガラスを金型母材に固定すれば、上述した成膜方法によって得られる薄膜状の金属ガラス層の厚みと比較すると十分な厚みを備えた金属ガラス層を得ることができる。なお、このようなバルク状の金属ガラスを金属ガラス層に用いる場合には、金型母材と金属ガラス層とを固定する固定手段が必要である。
このようなバルク状の金属ガラスを用いた金型としては、例えば、特許文献2に記載の金型を挙げることができる。特許文献2では、棒状の金属ガラスを形成する際に、ネジ穴を有するインサート部材を、過冷却液体領域の非晶質合金の棒状の長手方向の一端に押込み、冷却することでネジ穴を備えた棒状の金属ガラスを形成する。これにより、ネジでバルク状の金属ガラスを他の部材と一体化することができる。また、棒状の金属ガラスの長手方向の他端の先端面を形状転写面として成形し、ネジ止めで金型母材に固定することによって、形状転写面を金属ガラス層で構成する金型を得ることができる。この金型の金属ガラス層は棒状の長手方向が厚みとなるため、上述した薄膜状の金属ガラスでは不可能であった金属ガラス層に直接10[μm]を超える段差形状を形成することができる。
特開2002−326230号公報
特開2003−104735号公報
しかし、このようなバルク状の金属ガラスを金型母材に固定すれば、上述した成膜方法によって得られる薄膜状の金属ガラス層の厚みと比較すると十分な厚みを備えた金属ガラス層を得ることができる。なお、このようなバルク状の金属ガラスを金属ガラス層に用いる場合には、金型母材と金属ガラス層とを固定する固定手段が必要である。
このようなバルク状の金属ガラスを用いた金型としては、例えば、特許文献2に記載の金型を挙げることができる。特許文献2では、棒状の金属ガラスを形成する際に、ネジ穴を有するインサート部材を、過冷却液体領域の非晶質合金の棒状の長手方向の一端に押込み、冷却することでネジ穴を備えた棒状の金属ガラスを形成する。これにより、ネジでバルク状の金属ガラスを他の部材と一体化することができる。また、棒状の金属ガラスの長手方向の他端の先端面を形状転写面として成形し、ネジ止めで金型母材に固定することによって、形状転写面を金属ガラス層で構成する金型を得ることができる。この金型の金属ガラス層は棒状の長手方向が厚みとなるため、上述した薄膜状の金属ガラスでは不可能であった金属ガラス層に直接10[μm]を超える段差形状を形成することができる。
しかしながら、特許文献2の金型は棒状の金属ガラスの端面を形状転写面としているため、形状転写面は直径10[mm]程度の広さが限界であり、形状転写面上の凹部によって凸レンズを成形する場合であれば、凹部の開口径は5[mm]程度の大きさが限界である。このため、凹部の開口径が例えば20[mm]以上の大面積な金型の製造は不可能に近く、非常に困難である。さらに、棒状の金属ガラスは細いのため、インサート部材のネジの径と数とは限られる。このため、樹脂やガラスを成形するときの応力の負荷がインサート部材を押込んだ箇所に集中し、インサート部材を押し込んだ箇所の周辺から金属ガラスが破壊されるおそれがあり、金属ガラス層を金型母材に良好に固定することができない。
また、特許文献2のように金属ガラスにインサート部材を押込む構成を板状の金属ガラスに用いた場合であっても、形状転写面を金属ガラス層で構成する金型で大面積な金型の製造は困難である。これは以下の理由による。
板状の金属ガラスであれば、厚みとしては冷却のために1〜2[mm]が現状の限界であるが、板状の面としては300[mm]×300[mm]程度の大きさは現状でも可能であるため、板状の金属ガラスの広い面の部分に形状転写面を形成すれば大面積な金型の製造が可能になる。さらに、板状の金属ガラスの厚みの限界である1〜2[mm]の肉厚は、上述した薄膜状の金属ガラスに比べて数桁違うほど十分厚く、レンズ成形のために10[μm]以上の段差形状を形成するには十分な肉厚である。しかし、板状の金属ガラスの厚みとしては1〜2[mm]が現状の限界であるため、形状転写面となる部分に特許文献2に記載の金型のようにネジ穴を有するインサート部材を押込むことは非常に困難である。一方、形状転写面以外の箇所(形状転写面の周辺部)であればインサート部材を押込むことは可能である。しかし、形状転写面となる部分が金型母材に固定されていないため大面積になれば樹脂やガラスを成形するときに様々な応力が発生し、インサート部材を押込んだ箇所に応力の負荷が集中する。このため、周辺部のインサート部材を押し込んだ場合は、周辺部から金属ガラスが破壊されるおそれがあり、金属ガラス層を金型母材に良好に固定することができない。よって、金属ガラスにインサート部材を押込む構成を板状の金属ガラスに用いた場合であっても、大面積な金型の製造は困難である。
また、特許文献2のように金属ガラスにインサート部材を押込む構成を板状の金属ガラスに用いた場合であっても、形状転写面を金属ガラス層で構成する金型で大面積な金型の製造は困難である。これは以下の理由による。
板状の金属ガラスであれば、厚みとしては冷却のために1〜2[mm]が現状の限界であるが、板状の面としては300[mm]×300[mm]程度の大きさは現状でも可能であるため、板状の金属ガラスの広い面の部分に形状転写面を形成すれば大面積な金型の製造が可能になる。さらに、板状の金属ガラスの厚みの限界である1〜2[mm]の肉厚は、上述した薄膜状の金属ガラスに比べて数桁違うほど十分厚く、レンズ成形のために10[μm]以上の段差形状を形成するには十分な肉厚である。しかし、板状の金属ガラスの厚みとしては1〜2[mm]が現状の限界であるため、形状転写面となる部分に特許文献2に記載の金型のようにネジ穴を有するインサート部材を押込むことは非常に困難である。一方、形状転写面以外の箇所(形状転写面の周辺部)であればインサート部材を押込むことは可能である。しかし、形状転写面となる部分が金型母材に固定されていないため大面積になれば樹脂やガラスを成形するときに様々な応力が発生し、インサート部材を押込んだ箇所に応力の負荷が集中する。このため、周辺部のインサート部材を押し込んだ場合は、周辺部から金属ガラスが破壊されるおそれがあり、金属ガラス層を金型母材に良好に固定することができない。よって、金属ガラスにインサート部材を押込む構成を板状の金属ガラスに用いた場合であっても、大面積な金型の製造は困難である。
本発明は以上の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、大面積、且つ、所望の肉厚を有する金属ガラス層で形状転写面を形成し、さらに、金属ガラス層を金型母材に対して良好に固定された金型を製造する金型製造方法、及び、金型を提供することである。
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、成形対象と対向する形状転写面が過冷却液体領域を有する金属ガラス層で構成され、該金属ガラス層を支持し、該金属ガラス層の該過冷却液体領域では過冷却液体とはならない金属からなる金型母材を有する金型を製造する金型製造方法において、上記金型母材の多数の微細凹凸形状を設けた表面上に上記金属ガラス層の材料を設置し、真空または不活性ガス雰囲気の中で、該金属ガラス層の材料の温度が該金属ガラス層のガラス遷移温度以上、且つ、該金属ガラス層の結晶化温度以下、となるように加熱して、該金属ガラス層の材料を上記金型母材に対して押圧する加工を行うことにより該金型母材の表面にある多数の微細凹凸形状の凹部に該金属ガラス層の材料を充填させ、その後、該金属ガラス層の材料の温度を室温に冷却することで、該金属ガラス層が該金型母材と嵌合した状態を形成して該金属ガラス層を該金型母材に対して一体化するように結合させることによって上記金型を製造することを特徴とするものである。
また、請求項2の発明は、請求項1の金型製造方法において、上記該金属ガラス層を上記金型母材に対して一体化するように結合させる一体化工程と、該一体化工程で作成された上記金型を空気中で上記金属ガラス層の温度が結晶化温度以上となるように加熱し、該金属ガラス層を結晶化させることによって、該金属ガラス層を該金型母材から取り外す分離工程とを有することを特徴とするものである。
また、請求項3の発明は、請求項1または2の金型製造方法において、上記金属ガラス層と上記金型母材とを多数の微小凹凸形状同士の噛合いによるアンカー効果によって嵌合させ、一体化するように結合させることを特徴とするものである。
また、請求項4の発明は、請求項1、2または3の金型製造方法において、上記金型母材の上記多数の微小凹凸形状は、上記形状転写面の幾何中心を基準に対称的に分布していることを特徴とするものである。
また、請求項5の発明は、請求項1、2、3または4の金型製造方法において、上記金属ガラス層の熱線膨張係数は、上記金型母材の熱線膨張係数と同程度であることを特徴とするものである。
また、請求項6の発明は、成形対象と対向する形状転写面が過冷却液体領域を有する金属ガラス層で構成され、該金属ガラス層を支持し、該金属ガラス層の該過冷却液体領域では過冷却液体とはならない金属からなる金型母材を有する金型において、上記金型母材の上記金属ガラス層を支持する支持面に多数の微細凹凸形状を備え、上記金属ガラス層は、上記支持面上で該金属ガラス層の材料の温度を上記過冷却液体領域として該金属ガラス層の材料を流動化した後、冷却することによって上記支持面にある多数の微細凹凸形状の凹部に該金属ガラス層の材料を充填させ、その後、冷却されることで上記該金型母材と嵌合した状態を形成し、上記金属ガラス層が上記金型母材と嵌合した状態となることによって該金属ガラス層が該金型母材に対して固定されるものであることを特徴とするものである。
また、請求項7の発明は、請求項6の金型において、上記金型を用いた樹脂射出成形やガラスプレス等の成形工程で上記形状転写面を構成する上記金属ガラス層が磨耗した場合、磨耗した金属ガラス層を上記金型母材から取り外し、新たに別の金属ガラス層を該金型母材に嵌合させることにより、上記形状転写面を構成する上記金属ガラス層を置き換え、金型母材を繰り返し使用できることを特徴とするものである。
また、請求項8の発明は、請求項6または7の金型において、上記金属ガラス層と上記金型母材とを多数の微小凹凸形状同士の噛合いによるアンカー効果によって嵌合し、上記金属ガラス層と上記金型母材とが一体化するように結合していることを特徴とするものである。
また、請求項9の発明は、請求項6、7または8の金型において、上記金型母材の上記多数の微小凹凸形状は、上記形状転写面の幾何中心を基準に対称的に分布していることを特徴とするものである。
また、請求項10の発明は、請求項6、7、8または9の金型において、上記金属ガラス層の熱線膨張係数は、上記金型母材の熱線膨張係数と同程度であることを特徴とするものである。
また、請求項11の発明は、請求項6、7、8、9または10の金型において、上記金属ガラス層を結晶化温度以上に加熱し、該金属ガラス層を結晶化させることによって、該金属ガラスを上記金型母材から取り外すことを特徴とするものである。
また、請求項2の発明は、請求項1の金型製造方法において、上記該金属ガラス層を上記金型母材に対して一体化するように結合させる一体化工程と、該一体化工程で作成された上記金型を空気中で上記金属ガラス層の温度が結晶化温度以上となるように加熱し、該金属ガラス層を結晶化させることによって、該金属ガラス層を該金型母材から取り外す分離工程とを有することを特徴とするものである。
また、請求項3の発明は、請求項1または2の金型製造方法において、上記金属ガラス層と上記金型母材とを多数の微小凹凸形状同士の噛合いによるアンカー効果によって嵌合させ、一体化するように結合させることを特徴とするものである。
また、請求項4の発明は、請求項1、2または3の金型製造方法において、上記金型母材の上記多数の微小凹凸形状は、上記形状転写面の幾何中心を基準に対称的に分布していることを特徴とするものである。
また、請求項5の発明は、請求項1、2、3または4の金型製造方法において、上記金属ガラス層の熱線膨張係数は、上記金型母材の熱線膨張係数と同程度であることを特徴とするものである。
また、請求項6の発明は、成形対象と対向する形状転写面が過冷却液体領域を有する金属ガラス層で構成され、該金属ガラス層を支持し、該金属ガラス層の該過冷却液体領域では過冷却液体とはならない金属からなる金型母材を有する金型において、上記金型母材の上記金属ガラス層を支持する支持面に多数の微細凹凸形状を備え、上記金属ガラス層は、上記支持面上で該金属ガラス層の材料の温度を上記過冷却液体領域として該金属ガラス層の材料を流動化した後、冷却することによって上記支持面にある多数の微細凹凸形状の凹部に該金属ガラス層の材料を充填させ、その後、冷却されることで上記該金型母材と嵌合した状態を形成し、上記金属ガラス層が上記金型母材と嵌合した状態となることによって該金属ガラス層が該金型母材に対して固定されるものであることを特徴とするものである。
また、請求項7の発明は、請求項6の金型において、上記金型を用いた樹脂射出成形やガラスプレス等の成形工程で上記形状転写面を構成する上記金属ガラス層が磨耗した場合、磨耗した金属ガラス層を上記金型母材から取り外し、新たに別の金属ガラス層を該金型母材に嵌合させることにより、上記形状転写面を構成する上記金属ガラス層を置き換え、金型母材を繰り返し使用できることを特徴とするものである。
また、請求項8の発明は、請求項6または7の金型において、上記金属ガラス層と上記金型母材とを多数の微小凹凸形状同士の噛合いによるアンカー効果によって嵌合し、上記金属ガラス層と上記金型母材とが一体化するように結合していることを特徴とするものである。
また、請求項9の発明は、請求項6、7または8の金型において、上記金型母材の上記多数の微小凹凸形状は、上記形状転写面の幾何中心を基準に対称的に分布していることを特徴とするものである。
また、請求項10の発明は、請求項6、7、8または9の金型において、上記金属ガラス層の熱線膨張係数は、上記金型母材の熱線膨張係数と同程度であることを特徴とするものである。
また、請求項11の発明は、請求項6、7、8、9または10の金型において、上記金属ガラス層を結晶化温度以上に加熱し、該金属ガラス層を結晶化させることによって、該金属ガラスを上記金型母材から取り外すことを特徴とするものである。
上記請求項1の金型製造方法で製造された金型であれば、金属ガラス層は、金型母材の支持面上で金属ガラス層の材料の温度を過冷却液体領域として金属ガラス層の材料を流動化した後、冷却することによって支持面に沿った形状に形成されたものであるため、金型母材の支持面上に板状の金属ガラスと同様の面積と厚みとを持った金属ガラス層を形成することができる。また、過冷却液体領域で流動化した状態の金属ガラスの超塑性によって、金属ガラス層は金型母材の多数の微小凹凸形状を設けた表面に沿った形状に形成されるため、金属ガラス層に金型母材の微小凹凸形状に沿うように凹凸形状が形成され、金型母材の微小凹凸形状と金属ガラス層の凹凸形状との嵌合により金属ガラス層を金型母材に良好に固定することができる。
また、上記請求項6の構成を備えた金型であれば、金属ガラス層は、金型母材の支持面上で金属ガラス層の材料の温度を過冷却液体領域として金属ガラス層の材料を流動化した後、冷却することによって支持面に沿った形状に形成されたものであるため、金型母材の支持面上に板状の金属ガラスと同様の面積と厚みとを持った金属ガラス層を形成することができる。また、過冷却液体領域で流動化した状態の金属ガラスの超塑性によって、金属ガラス層は多数の微小凹凸形状を設けた金型母材の支持面に沿った形状に形成されるため、金属ガラス層に金型母材の微小凹凸形状に沿うように凹凸形状が形成され、金型母材の微小凹凸形状と金属ガラス層の凹凸形状との嵌合により金属ガラス層を金型母材に良好に固定することができる。
また、上記請求項6の構成を備えた金型であれば、金属ガラス層は、金型母材の支持面上で金属ガラス層の材料の温度を過冷却液体領域として金属ガラス層の材料を流動化した後、冷却することによって支持面に沿った形状に形成されたものであるため、金型母材の支持面上に板状の金属ガラスと同様の面積と厚みとを持った金属ガラス層を形成することができる。また、過冷却液体領域で流動化した状態の金属ガラスの超塑性によって、金属ガラス層は多数の微小凹凸形状を設けた金型母材の支持面に沿った形状に形成されるため、金属ガラス層に金型母材の微小凹凸形状に沿うように凹凸形状が形成され、金型母材の微小凹凸形状と金属ガラス層の凹凸形状との嵌合により金属ガラス層を金型母材に良好に固定することができる。
本発明によれば、板状の金属ガラスと同様の面積と厚みとを持った金属ガラス層を金型母材に嵌合によって良好に固定することができるため、大面積、且つ、所望の肉厚を有する金属ガラス層で形状転写面を形成し、さらに、金属ガラス層が金型母材に対して良好に固定された金型を得ることができるという優れた効果がある。
以下、本発明を適用した金型の実施形態の一例として、凸面レンズ成形用の金型(以下、金型1とよぶ)について説明する。なお、レンズ面の形状としては、凹面、非球面、自由曲面、平面等あるが、同様の構成を適用可能である。
図1は、本実施形態に係る金型1の概略断面図である。
図1に示すように金型1は、形状転写面12fを構成する金属ガラス層12と、金属ガラス層12を支持する金型母材11とを備える。また、金属ガラス層12が嵌合部12aを備え、金型母材11が被嵌合部11aを備えることにより、嵌合部12aと被嵌合部11aとの嵌合によって金属ガラス層12が金型母材11に対して固定されている。
図1は、本実施形態に係る金型1の概略断面図である。
図1に示すように金型1は、形状転写面12fを構成する金属ガラス層12と、金属ガラス層12を支持する金型母材11とを備える。また、金属ガラス層12が嵌合部12aを備え、金型母材11が被嵌合部11aを備えることにより、嵌合部12aと被嵌合部11aとの嵌合によって金属ガラス層12が金型母材11に対して固定されている。
ここで、金属ガラス層12を構成する過冷却液体域を有する金属ガラス(非晶質合金)について、簡単に説明する。金属ガラスの内部構造としては、通常の金属と異なり、結晶粒や粒界などの結晶構造が持たず、非晶質(アモルファス)である。また、近年、広い温度範囲における過冷却液体域を有する非晶質合金が発見されている。例えば、Zr基合金(Zr65Al10Ni10Cu15)、Pd基合金(Pd76Cu7Si17)、Cu基合金(Cu60Zr30Ti10)、Ni基合金(Ni60Nb25Ti15)などがある。これらの合金は常温では、非常に高い強度と硬さが有するが、ガラス転移点以上に、結晶化温度以下の範囲で加熱保温すると、通常の金属に見られない流動粘性が現れ、超塑性の性質が現れる。従って、この領域の特性を利用すれば、従来の金属材料では難しいとされる微細形状の転写が押圧加工方法のみで実現可能となった。
また、上述のように、金属ガラスの過冷却液体域はガラス転移点(遷移点)であるTgと結晶化温度Txとの間の温度領域である。この温度領域の範囲が広ければ広いほど、押圧加工プロセスとしては扱いやすい。これは、主に合金の組成成分に左右される。そして、経験則として、この領域内で、保持される温度が高いほど押圧に要する力が小さくなる。また、加熱と保温により、非晶質合金の表面が酸化してしまうケースがある。Cu系、Ni系、Fe系の非晶質合金はガラス転移点以上でも良好な耐酸化性を備えているが、それもあくまでも程度の問題であり、通常、押圧加工プロセスは、真空中あるいは不活性ガス雰囲気中で行われる方が望ましい。
本実施形態の金型1は、このような金属ガラスの特性に着目したものであり、厚肉の金属ガラス層12を金型母材11と一体化に結合できる金型である。また、金型1は、金属ガラス層12の形状転写面12fが、成形対象を成形する工程を繰り返すことによって磨耗したあと、金属ガラス層12を容易に取り替えることができるものである。
なお、現在、金属ガラスの組成元素の組み合わせを変え、Zr基やNi基やCu基やFe基などたくさんの合金系が発見されているが、形状としては急冷が可能な板状か棒状と限られている。そして、板状の場合、面積は300[mm]×300[mm]、厚みは厚くても1〜2[mm]が限界である。一方、板状の場合、直径およそ10[mm]のものが最大とされている。
また、上述のように、金属ガラスの過冷却液体域はガラス転移点(遷移点)であるTgと結晶化温度Txとの間の温度領域である。この温度領域の範囲が広ければ広いほど、押圧加工プロセスとしては扱いやすい。これは、主に合金の組成成分に左右される。そして、経験則として、この領域内で、保持される温度が高いほど押圧に要する力が小さくなる。また、加熱と保温により、非晶質合金の表面が酸化してしまうケースがある。Cu系、Ni系、Fe系の非晶質合金はガラス転移点以上でも良好な耐酸化性を備えているが、それもあくまでも程度の問題であり、通常、押圧加工プロセスは、真空中あるいは不活性ガス雰囲気中で行われる方が望ましい。
本実施形態の金型1は、このような金属ガラスの特性に着目したものであり、厚肉の金属ガラス層12を金型母材11と一体化に結合できる金型である。また、金型1は、金属ガラス層12の形状転写面12fが、成形対象を成形する工程を繰り返すことによって磨耗したあと、金属ガラス層12を容易に取り替えることができるものである。
なお、現在、金属ガラスの組成元素の組み合わせを変え、Zr基やNi基やCu基やFe基などたくさんの合金系が発見されているが、形状としては急冷が可能な板状か棒状と限られている。そして、板状の場合、面積は300[mm]×300[mm]、厚みは厚くても1〜2[mm]が限界である。一方、板状の場合、直径およそ10[mm]のものが最大とされている。
〔実施例1〕
次に、本実施形態の金型1の一つ目の実施例(以下、実施例1と呼ぶ)について説明する。
図2は、実施例1の金型1の製造工程の説明図である。
まず、図2(a)に示すように、一般的な金型材である(株)日立金属製のHPM38金属ブロックを機械加工によって、金型母材11の支持面11fを曲率半径R=50[mm]を有する球面(凹面)を切削加工で削りだす。
図3は、実施例1で使用する切削バイト3の模式図である。図2に示すように、球面(凹面)を切削加工で削り出した後は、図3に示すような先端角度45[°]を有する切削バイト3を用いて、金型母材11の支持面11fに形成された凹面に多数の微小凹凸形状としてV溝加工を行う。V溝2の加工はいくつかの方法があるが、実施例1の金型は軸対称の球面金型であるため旋削加工で行う。
次に、本実施形態の金型1の一つ目の実施例(以下、実施例1と呼ぶ)について説明する。
図2は、実施例1の金型1の製造工程の説明図である。
まず、図2(a)に示すように、一般的な金型材である(株)日立金属製のHPM38金属ブロックを機械加工によって、金型母材11の支持面11fを曲率半径R=50[mm]を有する球面(凹面)を切削加工で削りだす。
図3は、実施例1で使用する切削バイト3の模式図である。図2に示すように、球面(凹面)を切削加工で削り出した後は、図3に示すような先端角度45[°]を有する切削バイト3を用いて、金型母材11の支持面11fに形成された凹面に多数の微小凹凸形状としてV溝加工を行う。V溝2の加工はいくつかの方法があるが、実施例1の金型は軸対称の球面金型であるため旋削加工で行う。
図4は、実施例1の旋削加工の説明図である。
図4に示すように、切削バイト3の角度θ1(切削バイト3の中心通す線C1と金型球面中心を通す法線Nとがなす角度)を45[°]に調整し、深さ10[μm](金型母材11の支持面11fの表面に対する切り込み量)になる輪帯状のV溝2を加工した。図4に示すように、金型球面中心から見てV溝2の外側の側面と金型球面中心を通る法線Nとがなす角度θ2は22.5[°]となる。このV溝2の外側の側面は、アンカー効果をもたらす面である。そして、この加工を繰り返し、3[mm]ピッチ間隔で複数の輪帯状のV溝2を加工して、輪帯状V溝パターンを形成した。図2(b)は輪帯状V溝パターンを形成された金型母材11の断面図、図2(c)は輪帯状V溝パターンを形成された金型母材11の上面図を模式的に示している。
図4に示すように、切削バイト3の角度θ1(切削バイト3の中心通す線C1と金型球面中心を通す法線Nとがなす角度)を45[°]に調整し、深さ10[μm](金型母材11の支持面11fの表面に対する切り込み量)になる輪帯状のV溝2を加工した。図4に示すように、金型球面中心から見てV溝2の外側の側面と金型球面中心を通る法線Nとがなす角度θ2は22.5[°]となる。このV溝2の外側の側面は、アンカー効果をもたらす面である。そして、この加工を繰り返し、3[mm]ピッチ間隔で複数の輪帯状のV溝2を加工して、輪帯状V溝パターンを形成した。図2(b)は輪帯状V溝パターンを形成された金型母材11の断面図、図2(c)は輪帯状V溝パターンを形成された金型母材11の上面図を模式的に示している。
一方、金属ガラス層12に用いる金属ガラスとしては、予め作製した厚み800[μm]のZr55Cu30Al10Ni5金属ガラスからなる板状の金属ガラスを円板状に加工する。これと同じロットで生産されるものを、室温で硬さ試験を実施したところ、ビッカース硬さHv350以上であることが確認された。また,DSCと呼ばれる示差走査熱量分析測定でガラス転移点(遷移点)を測定した結果、ガラス転移点はおよそ398[℃]で,結晶化温度は487[℃]である。従って、過冷却液体域となる温度範囲はおよそ90[℃]であった。
また、TMA測定により、熱線膨張係数を測定したところ、11×10−6[/℃]であった。一方、金型母材であるHPM38の熱線膨張係数は400[℃]においては、12×10−6[/℃]であった。
また、TMA測定により、熱線膨張係数を測定したところ、11×10−6[/℃]であった。一方、金型母材であるHPM38の熱線膨張係数は400[℃]においては、12×10−6[/℃]であった。
図3は、実施例1で用いる加工機4の模式図である。
上述した輪帯状V溝パターンを形成された金型母材11を加工機4の加圧部41内にセットする。そして、上述した板状の金属ガラスを円板状に開口した板状金属ガラス22を上部金型14と下部金型である金型母材11との間に挿入する。
なお、加工機4は図5で示す全てが不図示のチャンバー内に収めている。不図示のチャンバーの扉を閉め、真空引きを行った後、加熱部40より、昇温加熱し、およそ420[℃]になるように加温して、そのまま保温する。この加熱保温プロセスは、真空ではなく、不活性ガス、たとえばArを充填してもよい。なお、不活性ガスを用いる構成では不図示のチャンバーにはガスの出入り口を設け得る。
上述した輪帯状V溝パターンを形成された金型母材11を加工機4の加圧部41内にセットする。そして、上述した板状の金属ガラスを円板状に開口した板状金属ガラス22を上部金型14と下部金型である金型母材11との間に挿入する。
なお、加工機4は図5で示す全てが不図示のチャンバー内に収めている。不図示のチャンバーの扉を閉め、真空引きを行った後、加熱部40より、昇温加熱し、およそ420[℃]になるように加温して、そのまま保温する。この加熱保温プロセスは、真空ではなく、不活性ガス、たとえばArを充填してもよい。なお、不活性ガスを用いる構成では不図示のチャンバーにはガスの出入り口を設け得る。
加熱して、保温した状態で、図5中の矢印で示すように上部金型14を降下させ、下部金型である金型母材11に板状金属ガラス22を押圧した(押圧圧力は10[MPa])。そのままで1分ほど押圧状態を保った後、上部金型14を上昇させて上部金型14と金型母材11とを開き、空冷で室温まで冷やした後、金型母材11を取り出す。これにより、図1及び図2(d)で示しているように、金属ガラス層12はHPM38からなる金型母材11の表面(支持面11f)にあるV溝2の谷までに充填され、嵌合部12aを形成する。これにより、金型母材11上のV溝2を形成する被嵌合部11aと嵌合部12aとが嵌合した状態となり、金属ガラス層12と金型母材11とが完全に一体化になった金型1を作製することができる。
なお、金型母材11は、図2(d)に示している形状転写面ではない段差A及びA’のところにも不図示ではあるが形状転写面を形成する凹面と同じくV溝加工が実施されている。なお、この段差A及びA’の部分にはV溝を設けず、対称分布になるようにタップ穴を開け、ねじ締めによって、段差A及びA’の部分での金属ガラス層12と金型母材11との固定を行う場合もある。
なお、金型母材11は、図2(d)に示している形状転写面ではない段差A及びA’のところにも不図示ではあるが形状転写面を形成する凹面と同じくV溝加工が実施されている。なお、この段差A及びA’の部分にはV溝を設けず、対称分布になるようにタップ穴を開け、ねじ締めによって、段差A及びA’の部分での金属ガラス層12と金型母材11との固定を行う場合もある。
最後に金属ガラス層12を金型母材11と一体化結合した後、不図示のダイヤモンドバイトを用いた超精密切削加工で金属ガラス層12の形状転写面12fを仕上げることにより、金属ガラス層12と金型母材11とを一体化した金型1の作製ができる。
このように作製した金型1であれば、形状転写面12fの凹部の開口径が20[mm]〜30[mm]にもなる大面積の金型とすることができる。
また、このように作製した金型1は、形状転写面12fが金属ガラス層12で構成されているため、金型の転写面としての強度が維持される。また、金属ガラスは結晶粒界を持たないため、超精密切削などの機械加工より高精度な転写面形状と表面粗さを得ることができる。
さらに、このようにして作製した金型1を不図示の射出成形機にセットし、成形工程に用いた結果、およそ5万ショットを実施したところ、金属ガラス層12が金型母材11から剥離していないことを確認した。
このように作製した金型1であれば、形状転写面12fの凹部の開口径が20[mm]〜30[mm]にもなる大面積の金型とすることができる。
また、このように作製した金型1は、形状転写面12fが金属ガラス層12で構成されているため、金型の転写面としての強度が維持される。また、金属ガラスは結晶粒界を持たないため、超精密切削などの機械加工より高精度な転写面形状と表面粗さを得ることができる。
さらに、このようにして作製した金型1を不図示の射出成形機にセットし、成形工程に用いた結果、およそ5万ショットを実施したところ、金属ガラス層12が金型母材11から剥離していないことを確認した。
一方、金属ガラス層12を金型母材11と一体化結合し、ダイヤモンドバイトを用いた超精密切削加工で金属ガラス層12の形状転写面12fの曲率半径を金型母材11の支持面11fと同じR=50[mm]を有する球面(凹面)に形状修正後、さらにフネンレルような微細な段差形状を創製した金型1の場合(図6)、樹脂の成形工程で、微細段差の角部の磨耗が激しかったことが確認された(図6中のCの部分の角は丸まった。これを、ダレともいう)。
このような磨耗は、通常の研磨、切削、研削などの再加工によるメンテナンス作業はほぼ不可能である。
そこで、図6に示す金型1を空気中で結晶化温度487[℃]を超える500[℃]前後で30分間加熱させて、金属ガラス層12を完全に結晶化させたところ、金属ガラス層12は非常に脆くボロボロの状態となり、HPM38からなる金型母材11から簡単に取り外すことができる。その後、金型母材11をさらに洗浄処理を行った後、上述したプロセスと同様なプロセスで新たな金属ガラス層12を金型母材11に嵌合するように形成することによって、形状転写面12fの再生を行うことができる。
このような磨耗は、通常の研磨、切削、研削などの再加工によるメンテナンス作業はほぼ不可能である。
そこで、図6に示す金型1を空気中で結晶化温度487[℃]を超える500[℃]前後で30分間加熱させて、金属ガラス層12を完全に結晶化させたところ、金属ガラス層12は非常に脆くボロボロの状態となり、HPM38からなる金型母材11から簡単に取り外すことができる。その後、金型母材11をさらに洗浄処理を行った後、上述したプロセスと同様なプロセスで新たな金属ガラス層12を金型母材11に嵌合するように形成することによって、形状転写面12fの再生を行うことができる。
〔実施例2〕
次に、本実施形態の金型1の二つ目の実施例(以下、実施例2と呼ぶ)について説明する。
必要とする形状転写面12fの曲率半径が小さい場合、例えば、平面に近い形状ではなく、弾丸状に近い形状の場合、一度の押圧加工によって金属ガラスを所望の形状に加工することは困難である。特に、金型母材11の支持面11fのV溝2に金属ガラスを完全に充填させることは困難である。そこで、実施例2の金型1は、一度目の押圧加工で板状金属ガラス22の形状を所望の金属ガラス層12の形状に近い形状に加工し、二度目の押圧加工で金型母材11上で所望の形状に加工する。
実施例2の金型1は、実施例1と略同様の構成であるが、図7(a)に示すように板状金属ガラス22を下部金型として金型母材11ではなく、表面に微細パターンを設けていない一次成形下部金型15を用いた加工機4にセットして、上述した過冷却液体領域で図7(a)中の矢印で示すように押圧して一度目の押圧加工を行う。その後、室温に冷却して形状転写面12fが球面形状の金属ガラスのバルクを作製する。そして、次に図7(b)に示すように、この金属ガラスのバルクを下部金型として表面に微細V溝輪帯パターンを有する金型母材11を用いた加工機4にセットして、再び過冷却液体領域に昇温させて図7(b)中の矢印で示すように加工機4の上部金型14を降下させ、再度押圧して二度目の押圧加工を行う。このように、金属ガラス層12の押圧加工を二度に分けて行うことによって、形状転写面12fの曲率半径が小さい金型1であっても金属ガラス層12を金型母材11の支持面11fの形状に沿わせるように形成することができる。これにより、V溝2に沿った嵌合部12aを形成することができ、金属ガラス層12を金型母材11に対して一体的に支持することができる。
また、図7(b)に示しているように、上部金型14の表面に予め微細段差パターンを設けることによって、加工機4の下部金型を構成する金型母材11の形状と金属ガラス層12とをより確実にフィットさせ、隙間をなくし、そしてV溝パターンの谷部に金属ガラス層12を構成する合金を充填させ、より確実に一体化させることができると同時に、金属ガラス層12の形状転写面12fに微細パターンの創製も行うことができた。この方法により、金型1の製作時間を大幅に短縮することができる。
なお、金属ガラス層12の形状転写面12fが磨耗した後、上述した実施例1と同じ方法で金属ガラス層12の取替えを行う。
次に、本実施形態の金型1の二つ目の実施例(以下、実施例2と呼ぶ)について説明する。
必要とする形状転写面12fの曲率半径が小さい場合、例えば、平面に近い形状ではなく、弾丸状に近い形状の場合、一度の押圧加工によって金属ガラスを所望の形状に加工することは困難である。特に、金型母材11の支持面11fのV溝2に金属ガラスを完全に充填させることは困難である。そこで、実施例2の金型1は、一度目の押圧加工で板状金属ガラス22の形状を所望の金属ガラス層12の形状に近い形状に加工し、二度目の押圧加工で金型母材11上で所望の形状に加工する。
実施例2の金型1は、実施例1と略同様の構成であるが、図7(a)に示すように板状金属ガラス22を下部金型として金型母材11ではなく、表面に微細パターンを設けていない一次成形下部金型15を用いた加工機4にセットして、上述した過冷却液体領域で図7(a)中の矢印で示すように押圧して一度目の押圧加工を行う。その後、室温に冷却して形状転写面12fが球面形状の金属ガラスのバルクを作製する。そして、次に図7(b)に示すように、この金属ガラスのバルクを下部金型として表面に微細V溝輪帯パターンを有する金型母材11を用いた加工機4にセットして、再び過冷却液体領域に昇温させて図7(b)中の矢印で示すように加工機4の上部金型14を降下させ、再度押圧して二度目の押圧加工を行う。このように、金属ガラス層12の押圧加工を二度に分けて行うことによって、形状転写面12fの曲率半径が小さい金型1であっても金属ガラス層12を金型母材11の支持面11fの形状に沿わせるように形成することができる。これにより、V溝2に沿った嵌合部12aを形成することができ、金属ガラス層12を金型母材11に対して一体的に支持することができる。
また、図7(b)に示しているように、上部金型14の表面に予め微細段差パターンを設けることによって、加工機4の下部金型を構成する金型母材11の形状と金属ガラス層12とをより確実にフィットさせ、隙間をなくし、そしてV溝パターンの谷部に金属ガラス層12を構成する合金を充填させ、より確実に一体化させることができると同時に、金属ガラス層12の形状転写面12fに微細パターンの創製も行うことができた。この方法により、金型1の製作時間を大幅に短縮することができる。
なお、金属ガラス層12の形状転写面12fが磨耗した後、上述した実施例1と同じ方法で金属ガラス層12の取替えを行う。
〔実施例3〕
次に、本実施形態の金型1の三つ目の実施例(以下、実施例3と呼ぶ)について説明する。
実施例3の金型1は、実施例1とほぼ同様の構成である。図8に示すように、樹脂成形品を金型から取り出すために、形状転写面12fではない段差A及びA’部のイッジェックターピン5により、突き出されるのは通常である。成形品を金型から取り出すときに、この段差A及びA’部の近辺は、もっとも応力集中しているのは広く知られている。上述した実施例1のように、段差A及びA’部の部分にもV溝を設けたり、ネジ止めしたりした場合、金属ガラス層12のひび割れ、あるいは、金型母材11に対する剥離は殆どこの段差A及びA’部の部分から始まることが分かった。
また、積重ねた実験結果から、加工機4の上部金型と下部金型との押圧で金属ガラス層12の変形は図8中の矢印で示しているように、金型1の中心から外周部に逃げていく傾向がわかった。すなわち、V溝2の開口方向は金属ガラス層12の変形方向と逆になっている。よって、この結果より、金属ガラス層12と金型母材11との結合をより強固なものにするために、最も望ましい構成は金型1の中心から外周方向に向かって、V溝の深さを徐々変化させた構造であることが判明した。本実施例3の場合、一番中心側のV溝2の深さが5[μm]に対し、一番外側のV溝2は60[μm]にした。作製した金型を切断して断面を観察したところ、一番外側のV溝2の谷でも金属ガラス層12はほぼ全部充填されていることが確認された。このように、金属ガラス層12の変形傾向を利用して、外周部のアンカー効果がより強くなるようにした結果、金属ガラス層12と金型母材11との結合はより強固することができた。実施例3の金型1を不図示の用いた射出成形機にセットし、成形工程の実験を行った結果、およそ7万ショットを経ても、金属ガラス層12が金型母材11からの剥離が認められなかった。
次に、本実施形態の金型1の三つ目の実施例(以下、実施例3と呼ぶ)について説明する。
実施例3の金型1は、実施例1とほぼ同様の構成である。図8に示すように、樹脂成形品を金型から取り出すために、形状転写面12fではない段差A及びA’部のイッジェックターピン5により、突き出されるのは通常である。成形品を金型から取り出すときに、この段差A及びA’部の近辺は、もっとも応力集中しているのは広く知られている。上述した実施例1のように、段差A及びA’部の部分にもV溝を設けたり、ネジ止めしたりした場合、金属ガラス層12のひび割れ、あるいは、金型母材11に対する剥離は殆どこの段差A及びA’部の部分から始まることが分かった。
また、積重ねた実験結果から、加工機4の上部金型と下部金型との押圧で金属ガラス層12の変形は図8中の矢印で示しているように、金型1の中心から外周部に逃げていく傾向がわかった。すなわち、V溝2の開口方向は金属ガラス層12の変形方向と逆になっている。よって、この結果より、金属ガラス層12と金型母材11との結合をより強固なものにするために、最も望ましい構成は金型1の中心から外周方向に向かって、V溝の深さを徐々変化させた構造であることが判明した。本実施例3の場合、一番中心側のV溝2の深さが5[μm]に対し、一番外側のV溝2は60[μm]にした。作製した金型を切断して断面を観察したところ、一番外側のV溝2の谷でも金属ガラス層12はほぼ全部充填されていることが確認された。このように、金属ガラス層12の変形傾向を利用して、外周部のアンカー効果がより強くなるようにした結果、金属ガラス層12と金型母材11との結合はより強固することができた。実施例3の金型1を不図示の用いた射出成形機にセットし、成形工程の実験を行った結果、およそ7万ショットを経ても、金属ガラス層12が金型母材11からの剥離が認められなかった。
さらに、鋭意研究を重ねたところ、このような機械的な結合を特徴とする構成の場合、図9で示すように、金型球面中心から見た場合にV溝2の外側の側面BB’と金型球面中心を通す法線Nとをなす角度θ2はもっとも重要なファクターである。それが小さい程、上記側面によるアンカー効果が少なくなる。一方、その角度が大きすぎると、今度逆に、加工工具はその加工面と干渉し、最悪の場合、加工できなくなる場合がある。積重ねた研究結果から、この角度θ2は10[°]から45[°]範囲では最もアンカー効果が安定し、確実にアンカー降下が得られる範囲であることが判明した。
なお、金型母材11に形成する微小凹凸形状としては、実施例1で説明したの輪帯状V溝パターンに限るものではない。図10は、他の例のV溝パターンが支持面11fに形成された金型母材11の上面図を模式的に示したものである。実施例1で説明したの輪帯状V溝パターン以外にも、図10(a)及び図10(b)で示すような、対称的な不連続パターンも本実施例と同じ効果を得ることができる。また、図示していないが、V溝の代わりに、金型母材11の表面に円柱や円錐や角錐などの形状の孔部を支持面11fに形成した場合であってもV溝と同様のアンカー効果を有することも確認できた。
また、金属ガラス層12の材料となる金属ガラスに関しては、Zr基のみならず、Pd基やNi基やFe基やTi基やCu基などを用いても同じ効果が確認されている。
また、金属ガラス層12の材料となる金属ガラスに関しては、Zr基のみならず、Pd基やNi基やFe基やTi基やCu基などを用いても同じ効果が確認されている。
〔比較例〕
図11は、比較例の説明図であり、上記実施例1と略同じ構成であるが、金型母材11のV溝2の向きを図11(a)に示すように実施例1とは逆向きとした構成である。このようにV溝2の向きを逆にした場合、アンカー効果をもたらすV溝2の側面は金型母材11の中心から見てV溝2の内側となる。比較例の構成の場合、およそ二万ショット未満の成形でも金属ガラスが剥離してしまうケースがあった。比較例の金型の断面を観察したところ、図11(b)の模式図のように、金属ガラス層12を構成する金属ガラスはV溝2の谷部に殆ど充填されていなく、谷部に空隙が残ったままの状態であることがわかった。V溝2の開口部の向きが金属ガラスの変形の方向と同じなった場合、いくら金属ガラスが過冷却液体領域で、超塑性の特性があっても、谷部への充填は難しくなる。従って、V溝2の内側に作用する金属ガラスの量が少なくなりアンカー効果が激減する状態となった。
図11は、比較例の説明図であり、上記実施例1と略同じ構成であるが、金型母材11のV溝2の向きを図11(a)に示すように実施例1とは逆向きとした構成である。このようにV溝2の向きを逆にした場合、アンカー効果をもたらすV溝2の側面は金型母材11の中心から見てV溝2の内側となる。比較例の構成の場合、およそ二万ショット未満の成形でも金属ガラスが剥離してしまうケースがあった。比較例の金型の断面を観察したところ、図11(b)の模式図のように、金属ガラス層12を構成する金属ガラスはV溝2の谷部に殆ど充填されていなく、谷部に空隙が残ったままの状態であることがわかった。V溝2の開口部の向きが金属ガラスの変形の方向と同じなった場合、いくら金属ガラスが過冷却液体領域で、超塑性の特性があっても、谷部への充填は難しくなる。従って、V溝2の内側に作用する金属ガラスの量が少なくなりアンカー効果が激減する状態となった。
なお、本実施形態では、形状転写面12fの凹部の開口径が20[mm]以上となるような大面積の金型1について説明した。しかし、本発明の特徴部である、金型母材11の支持面11f上で金属ガラスの温度を過冷却液体領域として金属ガラスを流動化した後、冷却することによって支持面11fに沿った形状に金属ガラス層12を形成し、支持面11fに形成された被嵌合部11aと、この被嵌合部11aに沿って形成された嵌合部12aとの嵌合によって金属ガラス層12が金型母材11に対して固定される構成は、従来の金型と同程度の面積の金型であっても適用可能である。このような金型であれば、大面積でなくても従来の金型に比べて金型母材に対して金属ガラス層をより良好に固定することができるという効果を奏する。
以上、本実施形態の金型1は、樹脂やガラス等のレンズに成形する対象と対向する形状転写面12fが過冷却液体領域を有する金属ガラス層12で構成され、金属ガラス層12を支持し、金属ガラス層12の過冷却液体領域では過冷却液体とはならない金属であるHPM38金属ブロックからなる金型母材11を有する金型である。形状転写面12fが非晶質合金である金属ガラス層12から構成されるため、金型1の形状転写面12fとしての強度が維持される。さらに、金属ガラスは結晶粒界を持たないため、超精密切削などの機械加工より高精度な転写面形状と表面粗さを得ることができる。
また、金型母材11の金属ガラス層12を支持する支持面11fには金属ガラス層12側の微小凹凸形状である嵌合部12aと嵌合する微小凹凸形状である被嵌合部11aを備え、嵌合部12aと被嵌合部11aとの嵌合によって金属ガラス層12が金型母材11に対して固定されるものである。そして、金属ガラス層12は、支持面11f上で金属ガラス層12の材料である板状金属ガラス22の温度を過冷却液体領域として板状金属ガラス22を流動化した後、冷却することによって支持面11fに沿った形状に形成されたものである。よって、本実施形態の金型1であれば、金型母材11の支持面11f上で板状金属ガラス22の温度を過冷却液体領域として板状金属ガラス22を流動化した後、冷却することによって支持面11fに沿った形状に形成されたものであるため、金型母材11の支持面11f上に板状の金属ガラスと同様の面積と厚みとを持った金属ガラス層12を形成することができる。また、過冷却液体領域で流動化した状態の金属ガラスの超塑性によって、金属ガラス層12は被嵌合部11aを備えた支持面11fに沿った形状に形成されるため、被嵌合部11aに沿うように嵌合部12aが形成され、この嵌合部12aと被嵌合部11aとの嵌合により金属ガラス層12が金型母材11に対して良好に固定される。このように、板状の金属ガラスと同様の面積と厚みとを持った金属ガラス層12を金型母材11に嵌合によって良好に固定することができるため、大面積、且つ、所望の肉厚を有する金属ガラス層12で形状転写面12fを形成し、さらに、金属ガラス層12が金型母材11に対して良好に固定された金型1を得ることができる。このように、本実施形態の金型1であれば、成膜方法では得られにくい厚肉の金属ガラス層12を形成することが可能となるとともに、バルク状の金属ガラスでは困難であった大面積の形状転写面を備えた金属ガラス層12を形成することが可能となる。
また、金型母材11の金属ガラス層12を支持する支持面11fには金属ガラス層12側の微小凹凸形状である嵌合部12aと嵌合する微小凹凸形状である被嵌合部11aを備え、嵌合部12aと被嵌合部11aとの嵌合によって金属ガラス層12が金型母材11に対して固定されるものである。そして、金属ガラス層12は、支持面11f上で金属ガラス層12の材料である板状金属ガラス22の温度を過冷却液体領域として板状金属ガラス22を流動化した後、冷却することによって支持面11fに沿った形状に形成されたものである。よって、本実施形態の金型1であれば、金型母材11の支持面11f上で板状金属ガラス22の温度を過冷却液体領域として板状金属ガラス22を流動化した後、冷却することによって支持面11fに沿った形状に形成されたものであるため、金型母材11の支持面11f上に板状の金属ガラスと同様の面積と厚みとを持った金属ガラス層12を形成することができる。また、過冷却液体領域で流動化した状態の金属ガラスの超塑性によって、金属ガラス層12は被嵌合部11aを備えた支持面11fに沿った形状に形成されるため、被嵌合部11aに沿うように嵌合部12aが形成され、この嵌合部12aと被嵌合部11aとの嵌合により金属ガラス層12が金型母材11に対して良好に固定される。このように、板状の金属ガラスと同様の面積と厚みとを持った金属ガラス層12を金型母材11に嵌合によって良好に固定することができるため、大面積、且つ、所望の肉厚を有する金属ガラス層12で形状転写面12fを形成し、さらに、金属ガラス層12が金型母材11に対して良好に固定された金型1を得ることができる。このように、本実施形態の金型1であれば、成膜方法では得られにくい厚肉の金属ガラス層12を形成することが可能となるとともに、バルク状の金属ガラスでは困難であった大面積の形状転写面を備えた金属ガラス層12を形成することが可能となる。
また、金型1は、樹脂射出成形やガラスプレス等の成形工程で形状転写面12fを構成する金属ガラス層12が磨耗した場合、磨耗した金属ガラス層12を金型母材11から取り外し、新たに別の金属ガラス層12を金型母材11に嵌合させることにより、形状転写面12fを構成する金属ガラス層12を置き換え、金型母材11を繰り返し使用できる。このため、金属ガラス層12の結晶化温度を超える温度で加熱することにより、金属ガラス層12は結晶化して脆い状態となるため、金属ガラス層12を容易に金型母材11から取り除くことができる。形状転写面12fが磨耗した後、この形状転写面12fを簡単に取り替えることことができる。形状転写面12fを構成する金属ガラス層12を簡単に取り替えることができることによって、金型母材11はそのまま再利用できるため、金型1の製造コストを削減することができる。
また、金型1の嵌合部12aと被嵌合部11aとは、多数の微小凹凸形状同士の噛合いによるアンカー効果によって嵌合し、金属ガラス層12と金型母材11とが一体化するように結合している。金属ガラスをガラス転移点以上に加熱した後、過冷却液体領域で、被嵌合部11aとして支持面11fに多数の凹凸形状を有する金型母材11に押圧することで、金属ガラスの超塑性(流動性)により、金属ガラスは金型母材11の凹凸形状の凹部に入り込み、一体化された状態で嵌合する。この構成によって、より確実に金属ガラス層12を金型母材11と一体化結合させることができる。
また、金型1は、金属ガラス層12及び金型母材11の嵌合部12a及び被嵌合部11aを構成する微小凹凸形状は、形状転写面12fの幾何中心を基準に対称的に分布しているため、金属ガラス層12と金型母材11との結合をより均一にすることができ、応力集中を抑制することができる。従って、この構成により、形状転写面12fを担う大面積な金属ガラス層12を確実にかつ強固に金型母材11と一体化させることができる。
また、レンズ成形時の熱サイクルによる熱応力の影響が大きい。金属ガラス層12の熱線膨張係数が、金型母材11の熱線膨張係数と同程度であることにより、金属ガラス層12と金型母材11との嵌め合いを構成する微細凹凸部分における熱応力の影響を抑制することができる。
また、金属ガラス層12を結晶化温度Tx以上に加熱し、該金属ガラス層を結晶化させることによって、金属ガラス層12を金型母材11から取り外す工程によって、結晶化した金属ガラスは脆くなるため、金属ガラス層12と金型母材11との嵌め合いが解消され、金属ガラス層12を除去することが容易となる。従って、金属ガラス層12の取替えが可能となる。
また、本実施形態の金型1は、金型母材11の多数の微細凹凸形状を設けた支持面11f上に金属ガラス層12の材料である板状金属ガラス22を設置し、真空または不活性ガス雰囲気の中で板状ガラス22の温度が板状金属ガラス22のガラス遷移温度Tg以上、且つ、金属ガラス層の結晶化温度Tx以下、となるように加熱する。その後、板状金属ガラス22を金型母材11に対して押圧する加工を行うことにより金型母材11の支持面11fにある多数の微細凹凸形状の凹部に過冷却液体となった板状金属ガラス22を充填させ、その後、過冷却液体状態の板状金属ガラス22の温度を室温に冷却することで、金属ガラス層12が金型母材11と嵌合した状態を形成する。このように、金属ガラス層12を金型母材11に対して一体化するように結合させることによって金型1を製造する。このように製造された金型1では、金属ガラス層12は、金型母材11の支持面11f上で板状金属ガラス22の温度を過冷却液体領域として板状金属ガラス22を流動化した後、冷却することによって支持面11fに沿った形状に形成されたものであるため、金型母材11の支持面11f上に板状の金属ガラスと同様の面積と厚みとを持った金属ガラス層12を形成することができる。また、過冷却液体領域で流動化した状態の金属ガラスの超塑性によって、金属ガラス層12は微小凹凸形状を設けた支持面11fに沿った形状に形成されるため、微小凹凸形状に沿うように凹凸形状が形成され、金型母材11の微小凹凸形状と金属ガラス層12の凹凸形状との嵌合により金属ガラス層12が金型母材11に固定されるため、別途固定手段を設ける必要がない。このように、別途固定手段を設けることなく、板状の金属ガラスと同様の面積と厚みとを持った金属ガラス層12を金型母材11に固定することができるため、形状転写面12fを金属ガラス層12で構成する金型1で、大面積、且つ、厚肉な金属ガラス層12を有する金型1を得ることができる。
また、金型1の製造工程としては、金属ガラス層12を金型母材11に対して一体化するように結合させる一体化工程と、この一体化工程で作成された金型1を空気中で金属ガラス層の温度が結晶化温度以上となるように加熱し、金属ガラス層12を結晶化させることによって、金属ガラス層12を金型母材11から取り外す分離工程とを有する。これにより、形状転写面12fを構成する金属ガラス層12を置き換え、金型母材11を繰り返し使用できる。このため、金属ガラス層12の結晶化温度を超える温度で加熱することにより、金属ガラス層12は結晶化して脆い状態となるため、金属ガラス層12を容易に金型母材11から取り除くことができる。形状転写面12fが磨耗した後、この形状転写面12fを簡単に取り替えることことができる。
また、空気中に金属ガラス層12に対し加熱することにより、金属ガラスの酸化が容易に生じるため、結晶化した後の材料はより一層脆くなるため、金型母材11からの取り外しをより確実に施すことができる。
また、空気中に金属ガラス層12に対し加熱することにより、金属ガラスの酸化が容易に生じるため、結晶化した後の材料はより一層脆くなるため、金型母材11からの取り外しをより確実に施すことができる。
1 金型
2 V溝
3 切削バイト
4 加工機
5 イッジェックターピン
11 金型母材
11a 被嵌合部
11f 支持面
12 金属ガラス層
12a 嵌合部
12f 形状転写面
14 上部金型
15 一次成形下部金型
40 加熱部
41 加圧部
2 V溝
3 切削バイト
4 加工機
5 イッジェックターピン
11 金型母材
11a 被嵌合部
11f 支持面
12 金属ガラス層
12a 嵌合部
12f 形状転写面
14 上部金型
15 一次成形下部金型
40 加熱部
41 加圧部
Claims (11)
- 成形対象と対向する形状転写面が過冷却液体領域を有する金属ガラス層で構成され、該金属ガラス層を支持し、該金属ガラス層の該過冷却液体領域では過冷却液体とはならない金属からなる金型母材を有する金型を製造する金型製造方法において、
上記金型母材の多数の微細凹凸形状を設けた表面上に上記金属ガラス層の材料を設置し、
真空または不活性ガス雰囲気の中で、該金属ガラス層の材料の温度が該金属ガラス層のガラス遷移温度以上、且つ、該金属ガラス層の結晶化温度以下、となるように加熱して、該金属ガラス層の材料を上記金型母材に対して押圧する加工を行うことにより該金型母材の表面にある多数の微細凹凸形状の凹部に該金属ガラス層の材料を充填させ、その後、該金属ガラス層の材料の温度を室温に冷却することで、該金属ガラス層が該金型母材と嵌合した状態を形成して該金属ガラス層を該金型母材に対して一体化するように結合させることによって上記金型を製造することを特徴とする金型製造方法。 - 請求項1の金型製造方法において、
上記該金属ガラス層を上記金型母材に対して一体化するように結合させる一体化工程と、
該一体化工程で作成された上記金型を空気中で上記金属ガラス層の温度が結晶化温度以上となるように加熱し、該金属ガラス層を結晶化させることによって、該金属ガラス層を該金型母材から取り外す分離工程とを有することを特徴とする金型製造方法。 - 請求項1または2の金型製造方法において、
上記金属ガラス層と上記金型母材とを多数の微小凹凸形状同士の噛合いによるアンカー効果によって嵌合させ、一体化するように結合させることを特徴とする金型製造方法。 - 請求項1、2または3の金型製造方法において、
上記金型母材の上記多数の微小凹凸形状は、上記形状転写面の幾何中心を基準に対称的に分布していることを特徴とする金型製造方法。 - 請求項1、2、3または4の金型製造方法において、
上記金属ガラス層の熱線膨張係数は、上記金型母材の熱線膨張係数と同程度であることを特徴とする金型製造方法。 - 成形対象と対向する形状転写面が過冷却液体領域を有する金属ガラス層で構成され、
該金属ガラス層を支持し、該金属ガラス層の該過冷却液体領域では過冷却液体とはならない金属からなる金型母材を有する金型において、
上記金型母材の上記金属ガラス層を支持する支持面に多数の微細凹凸形状を備え、
上記金属ガラス層は、上記支持面上で該金属ガラス層の材料の温度を上記過冷却液体領域として該金属ガラス層の材料を流動化した後、冷却することによって上記支持面にある多数の微細凹凸形状の凹部に該金属ガラス層の材料を充填させ、その後、冷却されることで上記該金型母材と嵌合した状態を形成し、
上記金属ガラス層が上記金型母材と嵌合した状態となることによって該金属ガラス層が該金型母材に対して固定されるものであることを特徴とする金型。 - 請求項6の金型において、
上記金型を用いた樹脂射出成形やガラスプレス等の成形工程で上記形状転写面を構成する上記金属ガラス層が磨耗した場合、磨耗した金属ガラス層を上記金型母材から取り外し、新たに別の金属ガラス層を該金型母材に嵌合させることにより、上記形状転写面を構成する上記金属ガラス層を置き換え、金型母材を繰り返し使用できることを特徴とする金型。 - 請求項6または7の金型において、
上記金属ガラス層と上記金型母材とを多数の微小凹凸形状同士の噛合いによるアンカー効果によって嵌合し、上記金属ガラス層と上記金型母材とが一体化するように結合していることを特徴とする金型。 - 請求項6、7または8の金型において、
上記金型母材の上記多数の微小凹凸形状は、上記形状転写面の幾何中心を基準に対称的に分布していることを特徴とする金型。 - 請求項6、7、8または9の金型において、
上記金属ガラス層の熱線膨張係数は、上記金型母材の熱線膨張係数と同程度であることを特徴とする金型。 - 請求項6、7、8、9または10の金型において、
上記金属ガラス層を結晶化温度以上に加熱し、該金属ガラス層を結晶化させることによって、該金属ガラスを上記金型母材から取り外すことを特徴とする金型。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2008238442A JP2010069685A (ja) | 2008-09-17 | 2008-09-17 | 金型製造方法及び金型 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP2008238442A JP2010069685A (ja) | 2008-09-17 | 2008-09-17 | 金型製造方法及び金型 |
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JP2010069685A true JP2010069685A (ja) | 2010-04-02 |
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JP2008238442A Withdrawn JP2010069685A (ja) | 2008-09-17 | 2008-09-17 | 金型製造方法及び金型 |
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2008
- 2008-09-17 JP JP2008238442A patent/JP2010069685A/ja not_active Withdrawn
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