以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
[システム構成]
図1は、本発明が適用されるアクティブマトリクス型表示装置の構成の概略を示すシステム構成図である。ここでは、一例として、デバイスに流れる電流値に応じて発光輝度が変化する電流駆動型の電気光学素子、例えば有機EL素子を画素(画素回路)の発光素子として用いたアクティブマトリクス型有機EL表示装置の場合を例に挙げて説明するものとする。
図1に示すように、本適用例に係る有機EL表示装置10は、発光素子を含む複数の画素20と、当該画素20が行列状に2次元配置された画素アレイ部30と、当該画素アレイ部30の周辺に配置された駆動部とを有する構成となっている。駆動部は、画素アレイ部30の各画素20を駆動する。この駆動部として、例えば、書込み走査回路40、電源供給走査回路50および信号出力回路60が設けられている。
ここで、有機EL表示装置10が白黒表示対応の場合は、白黒画像を形成する単位となる1つの画素が画素20に相当する。一方、有機EL表示装置10がカラー表示対応の場合は、カラー画像を形成する単位となる1つの画素は複数の副画素(サブピクセル)から構成され、この副画素が画素20に相当する。より具体的には、カラー表示用の表示装置では、1つの画素は、赤色光(R)を発光する副画素、緑色光(G)を発光する副画素、青色光(B)を発光する副画素の3つの副画素から構成される。
ただし、1つの画素としては、RGBの3原色の副画素の組み合わせに限られるものではなく、3原色の副画素にさらに1色あるいは複数色の副画素を加えて1つの画素を構成することも可能である。より具体的には、例えば、輝度向上のために白色光(W)や黄色光(Ye)を発光する副画素を加えて1つの画素を構成したり、色再現範囲を拡大するために補色光を発光する少なくとも1つの副画素を加えて1つの画素を構成したりすることも可能である。ここで、画素(副画素)は、1つの表示データ(Rデータ/Gデータ/Bデータ)を表示する表示単位である。
画素アレイ部30には、m行n列の画素20の配列に対して、行方向(画素行の画素の配列方向)に沿って走査線31−1〜31−mと電源供給線32−1〜32−mとが画素行ごとに配線されている。さらに、列方向(画素列の画素の配列方向)に沿って信号線33−1〜33−nが画素列ごとに配線されている。
走査線31−1〜31−mは、書込み走査回路40の対応する行の出力端にそれぞれ接続されている。電源供給線32−1〜32−mは、電源供給走査回路50の対応する行の出力端にそれぞれ接続されている。信号線33−1〜33−nは、信号出力回路60の対応する列の出力端にそれぞれ接続されている。
画素アレイ部30は、通常、ガラス基板などの透明絶縁基板上に形成されている。これにより、有機EL表示装置10は、平面型(フラット型)のパネル構造となっている。画素アレイ部30の各画素20の駆動回路は、アモルファスシリコンTFTまたは低温ポリシリコンTFTを用いて形成することができる。低温ポリシリコンTFTを用いる場合には、書込み走査回路40、電源供給走査回路50および信号出力回路60についても、画素アレイ部30を形成する表示パネル(基板)70上に実装することができる。
書込み走査回路40は、クロックパルスckに同期してスタートパルスspを順にシフト(転送)するシフトレジスタ等によって構成されている。この書込み走査回路40は、画素アレイ部30の各画素20への映像信号の書込みに際して、走査線31−1〜31−mに順次書込み走査信号WS(WS1〜WSm)を供給することによって画素アレイ部30の各画素20を行単位で順番に走査(線順次走査)する。
電源供給走査回路50は、クロックパルスckに同期してスタートパルスspを順にシフトするシフトレジスタ等によって構成されている。この電源供給走査回路50は、書込み走査回路40による線順次走査に同期して、第1電源電位Vccpと当該第1電源電位Vccpよりも低い第2電源電位Viniで切り替わる電源電位DS(DS1〜DSm)を電源供給線32−1〜32−mに供給する。この電源電位DSのVccp/Viniの切替えにより、画素20の発光/非発光の制御が行なわれる。
信号出力回路60は、信号供給源(図示せず)から供給される輝度情報に応じた映像信号の信号電圧(以下、単に「信号電圧」と記述する場合もある)Vsigと基準電位Vofsのいずれか一方を適宜選択して出力する。信号出力回路60から出力される信号電圧Vsig/基準電位Vofsは、信号線33−1〜33−nを介して画素アレイ部30の各画素20に対して行単位で書き込まれる。すなわち、信号出力回路60は、信号電圧Vsigを行(ライン)単位で書き込む線順次書き込みの駆動形態を採っている。
(画素回路)
図2は、画素(画素回路)20の具体的な回路構成を示す回路図である。
図2に示すように、画素20は、デバイスに流れる電流値に応じて発光輝度が変化する電流駆動型の電気光学素子、例えば有機EL素子21と、当該有機EL素子21を駆動する駆動回路とによって構成されている。有機EL素子21は、全ての画素20に対して共通に配線(いわゆる、ベタ配線)された共通電源供給線34にカソード電極が接続されている。
有機EL素子21を駆動する駆動回路は、駆動トランジスタ22、書込みトランジスタ23、保持容量24および補助容量25を有する構成となっている。ここでは、駆動トランジスタ22および書込みトランジスタ23としてNチャネル型のTFTを用いている。ただし、駆動トランジスタ22および書込みトランジスタ23の導電型の組み合わせは一例に過ぎず、これらの組み合わせに限られるものではない。
なお、駆動トランジスタ22および書込みトランジスタ23としてNチャネル型のTFTを用いると、アモルファスシリコン(a−Si)プロセスを用いることができる。a−Siプロセスを用いることで、TFTを作成する基板の低コスト化、ひいては本有機EL表示装置10の低コスト化を図ることが可能になる。また、駆動トランジスタ22および書込みトランジスタ23を同じ導電型の組み合わせにすると、両トランジスタ22,23を同じプロセスで作成することができるため低コスト化に寄与できる。
駆動トランジスタ22は、一方の電極(ソース/ドレイン電極)が有機EL素子21のアノード電極に接続され、他方の電極(ドレイン/ソース電極)が電源供給線32(32−1〜32−m)に接続されている。
書込みトランジスタ23は、一方の電極(ソース/ドレイン電極)が信号線33(33−1〜33−n)に接続され、他方の電極(ドレイン/ソース電極)が駆動トランジスタ22のゲート電極に接続されている。また、書込みトランジスタ23のゲート電極は、走査線31(31−1〜31−m)に接続されている。
駆動トランジスタ22および書込みトランジスタ23において、一方の電極とは、ソース/ドレイン領域に電気的に接続された金属配線を言い、他方の電極とは、ドレイン/ソース領域に電気的に接続された金属配線を言う。また、一方の電極と他方の電極との電位関係によって一方の電極がソース電極ともなればドレイン電極ともなり、他方の電極がドレイン電極ともなればソース電極ともなる。
保持容量24は、一方の電極が駆動トランジスタ22のゲート電極に接続され、他方の電極が駆動トランジスタ22の他方の電極および有機EL素子21のアノード電極に接続されている。
補助容量25は、一方の電極が有機EL素子21のアノード電極に、他方の電極が共通電源供給線34にそれぞれ接続されている。この補助容量25は、有機EL素子21の容量不足分を補い、保持容量24に対する映像信号の書込みゲインを高めるために、必要に応じて設けられるものである。すなわち、補助容量25は必須の構成要素ではなく、有機EL素子21の等価容量が十分に大きい場合は省略可能である。
ここでは、補助容量25の他方の電極を共通電源供給線34に接続するとしたが、他方の電極の接続先としては、共通電源供給線34に限られるものではなく、固定電位のノードであればよい。補助容量25の他方の電極を固定電位に接続することで、有機EL素子21の容量不足分を補い、保持容量24に対する映像信号の書込みゲインを高めるという所期の目的を達成することができる。
上記構成の画素20において、書込みトランジスタ23は、書込み走査回路40から走査線31を通してゲート電極に印加されるHighアクティブの書込み走査信号WSに応答して導通状態となる。これにより、書込みトランジスタ23は、信号線33を通して信号出力回路60から供給される輝度情報に応じた映像信号の信号電圧Vsigまたは基準電位Vofsをサンプリングして画素20内に書き込む。この書き込まれた信号電圧Vsigまたは基準電位Vofsは、駆動トランジスタ22のゲート電極に印加されるとともに保持容量24に保持される。
駆動トランジスタ22は、電源供給線32(32−1〜32−m)の電位DSが第1電源電位Vccpにあるときには、一方の電極がドレイン電極、他方の電極がソース電極となって飽和領域で動作する。これにより、駆動トランジスタ22は、電源供給線32から電流の供給を受けて有機EL素子21を電流駆動にて発光駆動する。より具体的には、駆動トランジスタ22は、飽和領域で動作することにより、保持容量24に保持された信号電圧Vsigの電圧値に応じた電流値の駆動電流を有機EL素子21に供給し、当該有機EL素子21を電流駆動することによって発光させる。
駆動トランジスタ22はさらに、電源電位DSが第1電源電位Vccpから第2電源電位Viniに切り替わったときには、一方の電極がソース電極、他方の電極がドレイン電極となってスイッチングトランジスタとして動作する。これにより、駆動トランジスタ22は、有機EL素子21への駆動電流の供給を停止し、有機EL素子21を非発光状態にする。すなわち、駆動トランジスタ22は、有機EL素子21の発光/非発光を制御するトランジスタとしての機能をも併せ持っている。
この駆動トランジスタ22のスイッチング動作により、有機EL素子21が非発光状態となる期間(非発光期間)を設け、有機EL素子21の発光期間と非発光期間の割合(デューティ)を制御する。このデューティ制御により、1フレーム期間に亘って画素が発光することに伴う残像ボケを低減できるために、特に動画の画品位をより優れたものとすることができる。
ここで、信号出力回路60から信号線33を通して選択的に供給される基準電位Vofsは、輝度情報に応じた映像信号の信号電圧Vsigの基準となる電位(例えば、映像信号の黒レベルに相当する電位)である。
電源供給走査回路50から電源供給線32を通して選択的に供給される第1,第2電源電位Vccp,Viniのうち、第1電源電位Vccpは有機EL素子21を発光駆動する駆動電流を駆動トランジスタ22に供給するための電源電位である。また、第2電源電位Viniは、有機EL素子21に対して逆バイアスを掛けるための電源電位である。この第2電源電位Viniは、基準電位Vofsよりも低い電位、例えば、駆動トランジスタ22の閾値電圧をVthとするときVofs−Vthよりも低い電位、好ましくはVofs−Vthよりも十分に低い電位に設定される。
(有機EL表示装置の回路動作)
次に、上記構成の画素20が行列状に2次元配置されてなる有機EL表示装置10の回路動作について、図3のタイミング波形図を基に図4および図5の動作説明図を用いて説明する。なお、図4および図5の動作説明図では、図面の簡略化のために、書込みトランジスタ23をスイッチのシンボルで図示している。
図3のタイミング波形図には、走査線31(31−1〜31−m)の電位(書込み走査信号)WSの変化、電源供給線32(32−1〜32−m)の電位(電源電位)DSの変化、駆動トランジスタ22のゲート電位Vgおよびソース電位Vsの変化を示している。また、ゲート電位Vgの波形を一点鎖線で示し、ソース電位Vsの波形を点線で示すことで、両者を識別できるようにしている。
<前フレームの発光期間>
図3のタイミング波形図において、時刻t1以前は、前のフレーム(フィールド)における有機EL素子21の発光期間となる。この前フレームの発光期間では、電源供給線32の電位DSが第1電源電位(以下、「高電位」と記述する)Vccpにあり、また、書込みトランジスタ23が非導通状態にある。
このとき、駆動トランジスタ22は飽和領域で動作するように設定されている。これにより、図4(A)に示すように、駆動トランジスタ22のゲート−ソース間電圧Vgsに応じた駆動電流(ドレイン−ソース間電流)Idsが、電源供給線32から駆動トランジスタ22を通して有機EL素子21に供給される。よって、有機EL素子21が駆動電流Idsの電流値に応じた輝度で発光する。
<閾値補正準備期間>
時刻t1になると、線順次走査の新しいフレーム(現フレーム)に入る。そして、図4(B)に示すように、電源供給線32の電位DSが高電位Vccpから、信号線33の基準電位Vofsに対してVofs−Vthよりも十分に低い第2電源電位(以下、「低電位」と記述する)Viniに切り替わる。
ここで、有機EL素子21の閾値電圧をVthel、共通電源供給線34の電位(カソード電位)をVcathとする。このとき、低電位ViniをVini<Vthel+Vcathとすると、駆動トランジスタ22のソース電位Vsが低電位Viniにほぼ等しくなるために、有機EL素子21は逆バイアス状態となって消光する。
次に、時刻t2で走査線31の電位WSが低電位側から高電位側に遷移することで、図4(C)に示すように、書込みトランジスタ23が導通状態となる。このとき、信号出力回路60から信号線33に対して基準電位Vofsが供給されているために、駆動トランジスタ22のゲート電位Vgが基準電位Vofsになる。また、駆動トランジスタ22のソース電位Vsは、基準電位Vofsよりも十分に低い電位Viniにある。
このとき、駆動トランジスタ22のゲート−ソース間電圧VgsはVofs−Viniとなる。ここで、Vofs−Viniが駆動トランジスタ22の閾値電圧Vthよりも大きくないと、後述する閾値補正処理を行うことができないために、Vofs−Vini>Vthなる電位関係に設定する必要がある。
このように、駆動トランジスタ22のゲート電位Vgを基準電位Vofsに、ソース電位Vsを低電位Viniにそれぞれ固定して(確定させて)初期化する処理が、後述する閾値補正処理を行う前の準備(閾値補正準備)の処理である。したがって、基準電位Vofsおよび低電位Viniが、駆動トランジスタ22のゲート電位Vgおよびソース電位Vsの各初期化電位となる。
<閾値補正期間>
次に、時刻t3で、図4(D)に示すように、電源供給線32の電位DSが低電位Viniから高電位Vccpに切り替わると、駆動トランジスタ22のゲート電位Vgが保たれた状態で閾値補正処理が開始される。すなわち、ゲート電位Vgから駆動トランジスタ22の閾値電圧Vthを減じた電位に向けて駆動トランジスタ22のソース電位Vsが上昇を開始する。
ここでは、便宜上、駆動トランジスタ22のゲート電極の初期化電位Vofsを基準として、当該初期化電位Vofsから駆動トランジスタ22の閾値電圧Vthを減じた電位に向けてソース電位Vsを変化させる処理を閾値補正処理と呼んでいる。この閾値補正処理が進むと、やがて、駆動トランジスタ22のゲート−ソース間電圧Vgsが駆動トランジスタ22の閾値電圧Vthに収束する。この閾値電圧Vthに相当する電圧は保持容量24に保持される。
なお、閾値補正処理を行う期間(閾値補正期間)において、電流が専ら保持容量24側に流れ、有機EL素子21側には流れないようにするために、有機EL素子21がカットオフ状態となるように共通電源供給線34の電位Vcathを設定しておくこととする。
次に、時刻t4で走査線31の電位WSが低電位側に遷移することで、図5(A)に示すように、書込みトランジスタ23が非導通状態となる。このとき、駆動トランジスタ22のゲート電極が信号線33から電気的に切り離されることによってフローティング状態になる。しかし、ゲート−ソース間電圧Vgsが駆動トランジスタ22の閾値電圧Vthに等しいために、当該駆動トランジスタ22はカットオフ状態にある。したがって、駆動トランジスタ22にドレイン−ソース間電流Idsは流れない。
<信号書込み&移動度補正期間>
次に、時刻t5で、図5(B)に示すように、信号線33の電位が基準電位Vofsから映像信号の信号電圧Vsigに切り替わる。続いて、時刻t6で、走査線31の電位WSが高電位側に遷移することで、図5(C)に示すように、書込みトランジスタ23が導通状態になって映像信号の信号電圧Vsigをサンプリングして画素20内に書き込む。
この書込みトランジスタ23による信号電圧Vsigの書き込みにより、駆動トランジスタ22のゲート電位Vgが信号電圧Vsigとなる。そして、映像信号の信号電圧Vsigによる駆動トランジスタ22の駆動の際に、当該駆動トランジスタ22の閾値電圧Vthが保持容量24に保持された閾値電圧Vthに相当する電圧と相殺される。この閾値キャンセルの原理の詳細については後述する。
このとき、有機EL素子21はカットオフ状態(ハイインピーダンス状態)にある。したがって、映像信号の信号電圧Vsigに応じて電源供給線32から駆動トランジスタ22に流れる電流(ドレイン−ソース間電流Ids)は補助容量25に流れ込む。よって、補助容量25の充電が開始される。
この補助容量25の充電により、駆動トランジスタ22のソース電位Vsが時間の経過と共に上昇していく。このとき既に、駆動トランジスタ22の閾値電圧Vthの画素ごとのばらつきがキャンセルされており、駆動トランジスタ22のドレイン−ソース間電流Idsは当該駆動トランジスタ22の移動度μに依存したものとなる。
ここで、映像信号の信号電圧Vsigに対する保持容量24の保持電圧Vgsの比率、即ち書込みゲインが1(理想値)であると仮定する。すると、駆動トランジスタ22のソース電位VsがVofs−Vth+ΔVの電位まで上昇することで、駆動トランジスタ22のゲート‐ソース間電圧VgsはVsig−Vofs+Vth−ΔVとなる。
すなわち、駆動トランジスタ22のソース電位Vsの上昇分ΔVは、保持容量24に保持された電圧(Vsig−Vofs+Vth)から差し引かれるように、換言すれば、保持容量24の充電電荷を放電するように作用し、負帰還がかけられたことになる。したがって、ソース電位Vsの上昇分ΔVは負帰還の帰還量となる。
このように、駆動トランジスタ22に流れるドレイン−ソース間電流Idsに応じた帰還量ΔVでゲート‐ソース間電圧Vgsに負帰還をかけることで、駆動トランジスタ22のドレイン−ソース間電流Idsの移動度μに対する依存性を打ち消すことができる。この打ち消す処理が、駆動トランジスタ22の移動度μの画素ごとのばらつきを補正する移動度補正処理である。
より具体的には、駆動トランジスタ22のゲート電極に書き込まれる映像信号の信号振幅Vin(=Vsig−Vofs)が高いほどドレイン−ソース間電流Idsが大きくなるために、負帰還の帰還量ΔVの絶対値も大きくなる。したがって、発光輝度レベルに応じた移動度補正処理が行われる。
また、映像信号の信号振幅Vinを一定とした場合、駆動トランジスタ22の移動度μが大きいほど負帰還の帰還量ΔVの絶対値も大きくなるために、画素ごとの移動度μのばらつきを取り除くことができる。したがって、負帰還の帰還量ΔVは移動度補正の補正量とも言える。移動度補正の原理の詳細については後述する。
<発光期間>
次に、時刻t7で走査線31の電位WSが低電位側に遷移することで、図5(D)に示すように、書込みトランジスタ23が非導通状態となる。これにより、駆動トランジスタ22のゲート電極は、信号線33から電気的に切り離されるためにフローティング状態になる。
ここで、駆動トランジスタ22のゲート電極がフローティング状態にあるときは、駆動トランジスタ22のゲート−ソース間に保持容量24が接続されていることにより、駆動トランジスタ22のソース電位Vsの変動に連動してゲート電位Vgも変動する。このように、駆動トランジスタ22のゲート電位Vgがソース電位Vsの変動に連動して変動する動作が、保持容量24によるブートストラップ動作である。
駆動トランジスタ22のゲート電極がフローティング状態になり、それと同時に、駆動トランジスタ22のドレイン−ソース間電流Idsが有機EL素子21に流れ始めることにより、当該電流Idsに応じて有機EL素子21のアノード電位が上昇する。
そして、有機EL素子21のアノード電位がVthel+Vcathを越えると、有機EL素子21に駆動電流が流れ始めるため有機EL素子21が発光を開始する。また、有機EL素子21のアノード電位の上昇は、即ち駆動トランジスタ22のソース電位Vsの上昇に他ならない。駆動トランジスタ22のソース電位Vsが上昇すると、保持容量24のブートストラップ動作により、駆動トランジスタ22のゲート電位Vgも連動して上昇する。
このとき、ブートストラップゲインが1(理想値)であると仮定した場合、ゲート電位Vgの上昇量はソース電位Vsの上昇量に等しくなる。故に、発光期間中駆動トランジスタ22のゲート‐ソース間電圧VgsはVsig−Vofs+Vth−ΔVで一定に保持される。そして、時刻t8で信号線33の電位が映像信号の信号電圧Vsigから基準電位Vofsに切り替わる。
以上説明した一連の回路動作において、閾値補正準備、閾値補正、信号電圧Vsigの書込み(信号書込み)および移動度補正の各処理動作は、1水平走査期間(1H)において実行される。また、信号書込みおよび移動度補正の各処理動作は、時刻t6−t7の期間において並行して実行される。
(閾値キャンセルの原理)
ここで、駆動トランジスタ22の閾値キャンセル(即ち、閾値補正)の原理について説明する。駆動トランジスタ22は、飽和領域で動作するように設計されているために定電流源として動作する。これにより、有機EL素子21には駆動トランジスタ22から、次式(1)で与えられる一定のドレイン−ソース間電流(駆動電流)Idsが供給される。
Ids=(1/2)・μ(W/L)Cox(Vgs−Vth)2 ……(1)
ここで、Wは駆動トランジスタ22のチャネル幅、Lはチャネル長、Coxは単位面積当たりのゲート容量である。
図6に、駆動トランジスタ22のドレイン−ソース間電流Ids対ゲート−ソース間電圧Vgsの特性を示す。
この特性図に示すように、駆動トランジスタ22の閾値電圧Vthの画素ごとのばらつきに対するキャンセル処理を行わないと、閾値電圧VthがVth1のとき、ゲート−ソース間電圧Vgsに対応するドレイン−ソース間電流IdsがIds1になる。
これに対して、閾値電圧VthがVth2(Vth2>Vth1)のとき、同じゲート−ソース間電圧Vgsに対応するドレイン−ソース間電流IdsがIds2(Ids2<Ids)になる。すなわち、駆動トランジスタ22の閾値電圧Vthが変動すると、ゲート−ソース間電圧Vgsが一定であってもドレイン−ソース間電流Idsが変動する。
一方、上記構成の画素(画素回路)20では、先述したように、発光時の駆動トランジスタ22のゲート−ソース間電圧VgsはVsig−Vofs+Vth−ΔVである。したがって、これを式(1)に代入すると、ドレイン−ソース間電流Idsは、次式(2)で表される。
Ids=(1/2)・μ(W/L)Cox(Vsig−Vofs−ΔV)2
……(2)
すなわち、駆動トランジスタ22の閾値電圧Vthの項がキャンセルされており、駆動トランジスタ22から有機EL素子21に供給されるドレイン−ソース間電流Idsは、駆動トランジスタ22の閾値電圧Vthに依存しない。その結果、駆動トランジスタ22の製造プロセスのばらつきや経時変化により、駆動トランジスタ22の閾値電圧Vthが画素ごとに変動したとしても、ドレイン−ソース間電流Idsが変動しないために、有機EL素子21の発光輝度を一定に保つことができる。
(移動度補正の原理)
次に、駆動トランジスタ22の移動度補正の原理について説明する。図7に、駆動トランジスタ22の移動度μが相対的に大きい画素Aと、駆動トランジスタ22の移動度μが相対的に小さい画素Bとを比較した状態で特性カーブを示す。駆動トランジスタ22をポリシリコン薄膜トランジスタなどで構成した場合、画素Aや画素Bのように、画素間で移動度μがばらつくことは避けられない。
画素Aと画素Bで移動度μにばらつきがある状態で、駆動トランジスタ22のゲート電極に例えば両画素A,Bに同レベルの信号振幅Vin(=Vsig−Vofs)を書き込んだ場合を考える。この場合、何ら移動度μの補正を行わないと、移動度μの大きい画素Aに流れるドレイン−ソース間電流Ids1′と移動度μの小さい画素Bに流れるドレイン−ソース間電流Ids2′との間には大きな差が生じてしまう。このように、移動度μの画素ごとのばらつきに起因してドレイン−ソース間電流Idsに画素間で大きな差が生じると、画面のユニフォーミティが損なわれる。
ここで、先述した式(1)のトランジスタ特性式から明らかなように、移動度μが大きいとドレイン−ソース間電流Idsが大きくなる。したがって、負帰還における帰還量ΔVは移動度μが大きくなるほど大きくなる。図7に示すように、移動度μの大きな画素Aの帰還量ΔV1は、移動度の小さな画素Bの帰還量ΔV2に比べて大きい。
そこで、移動度補正処理によって駆動トランジスタ22のドレイン−ソース間電流Idsに応じた帰還量ΔVでゲート−ソース間電圧Vgsに負帰還をかけることにより、移動度μが大きいほど負帰還が大きくかかることになる。その結果、移動度μの画素ごとのばらつきを抑制することができる。
具体的には、移動度μの大きな画素Aで帰還量ΔV1の補正をかけると、ドレイン−ソース間電流IdsはIds1′からIds1まで大きく下降する。一方、移動度μの小さな画素Bの帰還量ΔV2は小さいために、ドレイン−ソース間電流IdsはIds2′からIds2までの下降となり、それ程大きく下降しない。結果的に、画素Aのドレイン−ソース間電流Ids1と画素Bのドレイン−ソース間電流Ids2とはほぼ等しくなるために、移動度μの画素ごとのばらつきが補正される。
以上をまとめると、移動度μの異なる画素Aと画素Bがあった場合、移動度μの大きい画素Aの帰還量ΔV1は移動度μの小さい画素Bの帰還量ΔV2に比べて大きくなる。つまり、移動度μが大きい画素ほど帰還量ΔVが大きく、ドレイン−ソース間電流Idsの減少量が大きくなる。
したがって、駆動トランジスタ22のドレイン−ソース間電流Idsに応じた帰還量ΔVで、ゲート−ソース間電圧Vgsに負帰還をかけることで、移動度μの異なる画素のドレイン−ソース間電流Idsの電流値が均一化される。その結果、移動度μの画素ごとのばらつきを補正することができる。すなわち、駆動トランジスタ22に流れる電流(ドレイン−ソース間電流Ids)に応じた帰還量ΔVで、駆動トランジスタ22のゲート−ソース間電圧Vgsに負帰還をかける処理が移動度補正処理となる。
ここで、図2に示した画素(画素回路)20において、閾値補正、移動度補正の有無による映像信号の信号電圧Vsigと駆動トランジスタ22のドレイン・ソース間電流Idsとの関係について図8を用いて説明する。
図8において、(A)は閾値補正および移動度補正を共に行わない場合、(B)は移動度補正を行わず、閾値補正のみを行った場合、(C)は閾値補正および移動度補正を共に行った場合をそれぞれ示している。図8(A)に示すように、閾値補正および移動度補正を共に行わない場合には、閾値電圧Vthおよび移動度μの画素A,Bごとのばらつきに起因してドレイン−ソース間電流Idsに画素A,B間で大きな差が生じることになる。
これに対し、閾値補正のみを行った場合は、図8(B)に示すように、ドレイン−ソース間電流Idsのばらつきをある程度低減できるものの、移動度μの画素A,Bごとのばらつきに起因する画素A,B間でのドレイン−ソース間電流Idsの差は残る。そして、閾値補正および移動度補正を共に行うことで、図8(C)に示すように、閾値電圧Vthおよび移動度μの画素A,Bごとのばらつきに起因する画素A,B間でのドレイン−ソース間電流Idsの差をほぼ無くすことができる。したがって、どの階調においても有機EL素子21の輝度ばらつきは発生せず、良好な画質の表示画像を得ることができる。
また、図2に示した画素20は、閾値補正および移動度補正の各補正機能に加えて、先述した保持容量24によるブートストラップ動作の機能を備えていることで、次のような作用効果を得ることができる。
すなわち、有機EL素子21のI−V特性の経時変化に伴って駆動トランジスタ22のソース電位Vsが変化したとしても、保持容量24によるブートストラップ動作により、駆動トランジスタ22のゲート−ソース間電位Vgsを一定に維持することができる。したがって、有機EL素子21に流れる電流は変化せず一定となる。その結果、有機EL素子21の発光輝度も一定に保たれるために、有機EL素子21のI−V特性が経時変化したとしても、それに伴う輝度劣化のない画像表示を実現できる。
(画素分割)
以上説明した、本発明の前提となる有機EL表示装置10において、前にも述べたように、有機EL素子21を形成する工程や、駆動トランジスタ22、書込みトランジスタ23、蓄積容量24を形成する基板工程で異物が混入すると、種々の輝度欠陥が発生する。輝度欠陥としては、有機EL素子21の電極間ショートや蓄積容量24の電極間ショートによる滅点、駆動トランジスタ22の電極間ショートによる輝点、書込みトランジスタ23の電極間ショートによる半滅点などが挙げられる(図22参照)。
これら画素単位の輝度欠陥(いわゆる点欠陥)が発生し、その欠陥数が所定数よりも多いと、所望の画品位の表示画像を得ることができないため、欠陥数が所定数よりも多い表示パネル70については廃棄せざるを得ない。その結果、表示パネル70、ひいては有機EL表示装置10の歩留まりが低下する。
そのため、一般的に、1つの画素(副画素)内に有機EL素子を含む画素構成素子を複数組設け、1つの画素の発光領域を複数の有機EL素子によって複数の発光領域に分割することで、個々の発光領域部分を分割画素とする画素分割の技術が用いられている。この画素分割の技術を用いることで、または、レーザリペアなどのリペア技術を適用することで、滅点、半滅点、輝点などの輝度欠陥の発生を防ぐことができるために、当該輝度欠陥に起因する表示パネル70の歩留まりの低下を抑えることができる。
[本実施形態の特徴部分]
以下に、画素分割の回路列および発光領域のレイアウト構造についての本実施形態の具体的な実施例について説明する。
(実施例1)
図9は、実施例1に係る画素回路の回路構成を示す回路図である。実施例1に係る画素回路では、1つの画素20内に有機EL素子21を3個設け、1つの画素の発光領域を3個の有機EL素子21−1,21−2,21−3によって3分割する構成を採っている。
駆動回路側については、3個の有機EL素子21−1,21−2,21−3に対して書込みトランジスタ23が1個共通に設けられ、駆動トランジスタ22および保持容量24については2個ずつ設けられている。
具体的には、駆動トランジスタ22−1のソース電極には有機EL素子21−1が接続され、駆動トランジスタ22−2のソース電極には有機EL素子21−2,21−3が並列に接続されている。すなわち、駆動トランジスタ22−1が有機EL素子21−1の駆動を担い、駆動トランジスタ22−2が有機EL素子21−2,21−3の駆動を担う。
上述したように、実施例1に係る画素回路は、3個の有機EL素子21−1,21−2,21−3を2つの駆動回路(22−1,23,24−1/22−2,23,24−2)で駆動する回路構成となっている。すなわち、複数の有機EL素子21−1,21−2,21−3をそれよりも少ない数の駆動回路で駆動する構成を採っている。これにより、画素分割を採用する際に、駆動回路側の回路規模の縮小化を図ることができる。
この実施例1に係る画素回路において、書込みトランジスタ23によって書き込まれた信号電圧Vsigが保持容量24−1,24−2に蓄積される。そして、信号電圧Vsigに応じて有機EL素子21−1,21−2,21−3の全体に流れる電流値をIとすると、有機EL素子21−1にはI/2の電流値の電流が流れ、有機EL素子21−2,21−3個々にはI/4の電流値の電流が流れる。その結果、有機EL素子21−1,21−2,21−3トータルで電流値Iに応じた発光輝度が得られる。
ここで、3個の有機EL素子21−1,21−2,21−3のうち、有機EL素子21−1が異物による電極間ショート等で欠陥化した場合には、当該欠陥化した有機EL素子21−1を駆動トランジスタ21−1から切り離す。また、有機EL素子21−2,21−3の一方が異物による電極間ショート等で欠陥化した場合には、アノード電極が共通であるとすると、他方もショート状態になることから、両方を駆動トランジスタ21−2から切り離す。
このリペア技術の適用により、正常な有機EL素子21−2,21−3/21−1については発光状態を維持できるため、画素20が完全に滅点になるのを防ぐことができる。また、3個の有機EL素子21−1,21−2,21−3のいずれかが電極間オープン等で欠陥化した場合も、画素20が完全に滅点になるのを防ぐことができる。
駆動トランジスタ22−1,22−2のいずれか一方が異物によるソース・ドレイン電極間ショート等で欠陥化した場合には、当該欠陥化した駆動トランジスタ23−1/23−2のソース配線またはドレイン配線を切断するか、もしくは、有機EL素子21−1/21−2を切り離す。このリペア技術の適用により、他方の駆動トランジスタ22−1/22−2では有機EL素子21−1/21−2,21−3を正常に発光駆動できるために、画素20が輝点になるのを防ぐことができる。
保持容量24−1,24−2のいずれか一方が異物による電極間ショート等で欠陥化した場合には、当該欠陥化した保持容量24−1/24−2の一方の電極と書込みトランジスタ23との間の配線を切断する。これにより、並列接続される2つの保持容量24−1,24−2の正常部の電圧を維持することができる。また、必要に応じて、欠陥化した容量側の駆動トランジスタ22または有機EL素子21をオープン化する。このリペア技術の適用により、正常な保持容量24−1/24−2に保持された信号電圧に応じて有機EL素子21−1/21−2,21−3を発光駆動できるために、画素20が完全に滅点になるのを防ぐことができる。
この実施例1に係る画素回路によれば、いずれの画素構成素子に異物に起因する欠陥が発生した場合でも、欠陥化した素子を分離できるため、画素20が完全に輝度欠陥になるのを防ぐことができる。ただし、書込みトランジスタ23の電極間ショート等による欠陥化に対しては画素分割による作用効果を得ることができない。その反面、3個の有機EL素子21−1,21−2,21−3に対して書込みトランジスタ23が1個で済むため、駆動回路の回路規模のより縮小化を図ることができる利点がある。
続いて、3個の有機EL素子21−1,21−2,21−3によって3分割された分割領域のレイアウト構造について説明する。
画素20の形状が例えば縦長の場合において、1つの画素20の発光領域を縦に3分割する際は、一般的には、3分割された発光領域が均等な形状にてレイアウトされる。このレイアウト構造を参考例として図10に示す。図10には、隣り合うR,G,Bの3画素20R,20G,20Bを示している。
ここでは、Bの画素20Bの場合を例に挙げて説明するが、R,Gの画素20R,20GについてもBの画素20Bの場合と同じである。3分割された3つの発光領域211−1,211−2,211−3は、各々の幅W0および長さL0が同じサイズに設定されている。また、発光領域211−1,211−2,211−3の相互間のスリット212−1,212−2の幅dも同じサイズに設定されている。
このように、3つの発光領域211−1,211−2,211−3が均等な形状で形成され(面積が同じ)、かつ等ピッチでレイアウトされている1つの画素20Bにおいて、外側の1つの分割画素が欠陥化すると、画素20Bの発光領域が空間的に狭まる。
具体的には、3つの分割画素のうち、特に外側の1つの分割画素が欠陥化すると、外側の発光領域211−1/211−3が非発光状態となり、画素全体の発光領域が欠けるために当該発光領域が空間的に狭まる。すると、1つの分割画素が非発光状態にあることが目立ってしまう。
図11は、実施例1に係る画素回路のレイアウト構造を示す平面図である。図11には、隣り合うR,G,Bの3画素20R,20G,20Bを示している。ここでは、Bの画素20Bの場合を例に挙げて説明するが、R,Gの画素20R,20GについてもBの画素20Bの場合と同様のことが言える。
縦長の画素20の発光領域は、3個の有機EL素子21−1,21−2,21−3によって3つの発光領域221−1,221−2,221−3に縦に(1次元で)3分割されている。この3つの発光領域221−1,221−2,221−3のうち、画素20Bの重心に近い発光領域221−2、即ち真ん中の発光領域221−2は、駆動トランジスタ22−1によって駆動される有機EL素子21−1の発光領域となっている。
一方、画素20Bの重心から遠い発光領域221−1,221−3、即ち外側(両側)の発光領域221−1,221−3は、駆動トランジスタ22−2によって駆動される有機EL素子21−2,21−3の各発光領域となっている。
図11において、発光領域221−2側のノードaが図9のノードa、即ち有機EL素子21−1のアノード電極に対応している。発光領域221−1,221−3側のノードb,cが図9のノードb,c、即ち有機EL素子21−2,21−3の各アノード電極に対応している。
すなわち、実施例1に係る画素回路のレイアウト構造では、並列接続された有機EL素子21−2,21−3の各発光領域221−1,221−3が、同一画素の他の有機EL素子21−1の発光領域221−2によって平面視で空間的に分離された構成となっている。
また、3分割された3つの発光領域221−1,221−2,221−3のうち、画素20Bの重心に近い発光領域221−2の面積S2が、当該重心から遠い発光領域221−1,221−3の面積S1よりも大きく設定されている。
具体的には、画素20Bの重心から遠い外側の2の発光領域221−1,221−3の各長さL1は、参考例の場合の発光領域211−1,211−2,211−3の長さL0よりも短く設定されている(L1<L0)。また、画素20Bの重心に近い真ん中の発光領域221−2の長さL2は、参考例の場合の発光領域211−1,211−2,211−3の長さL0よりも長く設定されている(L2>L0)。
なお、本例の場合には、3つの発光領域221−1,221−2,221−3の各幅W0については、参考例の場合の発光領域211−1,211−2,211−3の幅W0と同じに設定されている。また、発光領域221−1,221−2,221−3の相互間のスリット222−1,222−2の幅dについても、参考例の場合のスリット212−1,212−2の幅dと同じに設定されている。
上述した縦3分割のレイアウト構造の1つの画素20Bにおいて、図9の有機EL素子21−2/21−3、駆動トランジスタ22−2または保持容量24−2の画素構成素子が異物による電極間ショート等で欠陥化した場合について考える。この欠陥化に対してリペア技術を適用した場合、外側の2つの発光領域221−1,221−3が消灯する。
ここで、画素20Bの重心に近い発光領域221−2の面積S2が当該重心から遠い発光領域221−1,221−3の面積S1よりも大きいということは、換言すれば、外側の発光面積S1が真ん中の発光面積S2よりも小さいということである。これにより、外側の発光領域221−1,221−3が消灯することによって欠ける発光領域の面積は、3つの発光領域221−1,221−2,221−3の面積が等しい場合に比べて小さくて済む。
しかも、真ん中の発光領域221−2の面積S2が、その両側の発光領域221−1,221−3の面積S1よりも大きい。したがって、画素構成素子の欠陥化によって発光領域が空間的に狭まったとしても、面積S2の発光領域221−2の発光によって画素20Bの発光領域を大きく見せることができるために、外側の発光領域221−1,221−3が消灯していることが目立なくなる。
特に、並列接続された有機EL素子21−2,21−3またはそれに関連する画素構成素子が欠陥化したときに、外側の2つの発光領域221−1,221−3が消灯することで、その消灯によって発光領域が欠けたことを目立たなくすることができる。これは、外側の2つの発光領域221−1,221−3が消灯することで、非発光状態にある領域が分散するためである。
因みに、消灯する2つの発光領域221−1,221−3が隣接していた場合には、1つの画素20Bの発光領域が半分程度欠けることになるために、2つの発光領域221−1,221−3の消灯によって発光領域が欠けたことが目だってしまう。
一方、図9の有機EL素子21−1、駆動トランジスタ22−1または保持容量24−1の画素構成素子が異物による電極間ショート等で欠陥化した場合には、真ん中の発光領域221−2が消灯する。
このように、画素20Bの発光領域の重心部分が非発光状態となって欠けたとしても、その欠けた部分を両側の発光領域221−1,221−3の各発光輝度が補う。これにより、画素20Bの発光領域の重心部分が非発光状態にあっても、マクロに見た場合画素20Bの発光領域のほぼ全体が発光しているように見えるために、真ん中の発光領域221−2が消灯していることが目立なくなる。
また、実施例1では、一般的な縦長形状の画素において、当該画素の長手方向(発光領域の長手方向)に対して直交する方向に複数の発光領域221−1,221−2,221−3間を分離する分割ライン(スリット222−1,222−2)が形成されている。すなわち、分割ラインの長さが1つの画素の発光領域内で最短となっている。一般的に言って、複数の発光領域間の間隔dが一定であれば、複数の発光領域間の分割ラインの距離を最短にすることによって1画素内での発光領域の面積を最大化できる。
ここに、「分割ラインの距離を最短にする」ということは、例えば、画素列の画素の配列方向(列方向/縦方向)に縦長の画素において、分割ラインを画素行の画素の配列方向(行方向/横方向)に形成するということである。行方向/横方向は、画素の長手方向、即ち画素内の複数の発光領域の配列方向に直交する方向でもある。
(実施例2)
図12は、実施例2に係る画素回路の回路構成を示す回路図である。実施例2に係る画素回路では、1つの画素20内に有機EL素子21を4個設け、1つの画素の発光領域を4個の有機EL素子21−1,21−2,21−3,21−4によって4分割する構成を採っている。
駆動回路側については、4個の有機EL素子21−1,21−2,21−3,21−4に対して書込みトランジスタ23が1個共通に設けられ、駆動トランジスタ22および保持容量24については2個ずつ設けられている。
具体的には、駆動トランジスタ22−1のソース電極には有機EL素子21−1,21−2が並列に接続され、駆動トランジスタ22−2のソース電極には有機EL素子21−3,21−4が並列に接続されている。すなわち、駆動トランジスタ22−1が有機EL素子21−1,21−2の駆動を担い、駆動トランジスタ22−2が有機EL素子21−3,21−4の駆動を担う。
上述したように、実施例2に係る画素回路は、4個の有機EL素子21−1,21−2,21−3,21−4を2つの駆動回路(22−1,23,24−1/22−2,23,24−2)で駆動する回路構成となっている。すなわち、4個の有機EL素子21−1,21−2,21−3,21−4をそれよりも少ない数(本例では、半分)の駆動回路で駆動する構成を採っている。これにより、画素分割を採用する際に、駆動回路側の回路規模の縮小化を図ることができる。
この実施例2に係る画素回路において、書込みトランジスタ23によって書き込まれた信号電圧Vsigが保持容量24−1,24−2に蓄積される。そして、信号電圧Vsigに応じて有機EL素子21−1,21−2,21−3,21−4の全体に流れる電流値をIとすると、有機EL素子21−1,21−2個々にはI/4の電流値の電流が流れ、有機EL素子21−3,21−4個々にはI/4の電流値の電流が流れる。その結果、有機EL素子21−1,21−2,21−3,21−4トータルで電流値Iに応じた発光輝度が得られる。
ここで、有機EL素子21−1,21−2の一方が異物による電極間ショート等で欠陥化した場合には、アノード電極が共通であるとすると、他方もショート状態になることから、両方を駆動トランジスタ21−1から切り離す。また、有機EL素子21−3,21−4の一方が異物による電極間ショート等で欠陥化した場合には、アノード電極が共通であるとすると、他方もショート状態になることから、両方を駆動トランジスタ21−2から切り離す。このリペア技術の適用により、正常な組の有機EL素子21−1,21−2/21−3,21−4については発光状態を維持できるために、画素20が完全に滅点になるのを防ぐことができる。
駆動トランジスタ22−1,22−2のいずれか一方が異物による電極間ショート等で欠陥化した場合には、当該欠陥化した駆動トランジスタ23−1/23−2のゲート配線を切断する。このリペア技術の適用により、他方の駆動トランジスタ22−1/22−2では有機EL素子21−1,21−2/21−3,21−4を正常に発光駆動できるために、画素20が輝点になるのを防ぐことができる。
保持容量24−1,24−2のいずれか一方が異物による電極間ショート等で欠陥化した場合は、当該欠陥化した保持容量24−1/24−2の一方の電極と書込みトランジスタ23との間の配線を切断する。このリペア技術の適用により、正常な保持容量24−1/24−2に保持された信号電圧に応じて有機EL素子21−1,21−2/21−3,21−4を発光駆動できるために、画素20が完全に滅点になるのを防ぐことができる。
この実施例2に係る画素回路によれば、いずれの画素構成素子に異物に起因する欠陥が発生した場合でも、欠陥化した素子を分離できるため、画素20が完全に輝度欠陥になるのを防ぐことができる。ただし、書込みトランジスタ23の電極間ショート等による欠陥化に対しては画素分割による作用効果を得ることができない。その反面、4個の有機EL素子21−1,21−2,21−3,21−4に対して書込みトランジスタ23が1個で済むため、駆動回路の回路規模のより縮小化を図ることができる利点がある。
図13は、実施例2に係る画素回路のレイアウト構造を示す平面図である。図13には、隣り合うR,G,Bの3画素20R,20G,20Bを示している。ここでは、Bの画素20Bの場合を例に挙げて説明するが、R,Gの画素20R,20GについてもBの画素20Bの場合と同様のことが言える。
縦長の画素20Bの発光領域は、4個の有機EL素子21−1,21−2,21−3,21−4によって4つの発光領域231−1,231−2,231−3,231−4に縦に(1次元で)4分割されている。これら4つの発光領域231−1,231−2,231−3,231−4は、例えば同じ面積で形成され、等ピッチで配置されている。
4つの発光領域231−1,231−2,231−3,231−4のうち、上から1番目、3番目の発光領域231−1,231−3は、駆動トランジスタ22−1によって駆動される有機EL素子21−1,21−2の各発光領域となっている。また、上から2番目、4番目の発光領域231−2,231−4は、駆動トランジスタ22−2によって駆動される有機EL素子21−3,21−4の各発光領域となっている。
図13において、発光領域231−1,231−3側のノードa,bが図12のノードa,b、即ち有機EL素子21−1,21−2の各アノード電極に対応している。また、発光領域231−2,231−4側のノードc,dが図12のノードc,d、即ち有機EL素子21−3,21−4の各アノード電極に対応している。
すなわち、実施例2に係る画素回路のレイアウト構造では、並列接続された有機EL素子21−1,21−2の各発光領域231−1,231−3が、同一画素の他の有機EL素子21−3の発光領域231−2によって平面視で空間的に分離されている。また、並列接続された有機EL素子21−3,21−4の各発光領域231−2,231−4が、同一画素の他の有機EL素子21−2の発光領域231−3によって平面視で空間的に分離されている。
上述した縦4分割のレイアウト構造の1つの画素20Bにおいて、図12の有機EL素子21−1/21−2、駆動トランジスタ22−1または保持容量24−1の画素構成素子が異物による電極間ショート等で欠陥化した場合について考える。この欠陥化に対してリペア技術を適用した場合、4つの発光領域231−1,231−2,231−3,231−4のうち、上から1番目、3番目の発光領域231−1,231−3が消灯する。
このように、画素20Bの発光領域内において、上から3番目の発光領域231−3の部分が消灯して欠けたとしても、その欠けた部分を両側の発光領域221−2,221−4の各発光輝度が補う。これにより、画素20Bの発光領域の半分程度が非発光状態にあっても、マクロに見た場合画素20Bの発光領域のほぼ全体が発光しているように見えるために、特に上から3番目の発光領域231−3が消灯していることが目立なくなる。
図12の有機EL素子21−3/21−4、駆動トランジスタ22−2または保持容量24−2の画素構成素子が欠陥化した場合にも同様のことが言える。この場合、4つの発光領域231−1,231−2,231−3,231−4のうち、上から2番目、4番目の発光領域231−2,231−4が消灯する。
このように、画素20Bの発光領域内において、上から2番目の発光領域231−2の部分が消灯して欠けたとしても、その欠けた部分を両側の発光領域221−1,221−3の各発光輝度が補う。これにより、画素20Bの発光領域の半分程度が非発光状態にあっても、マクロに見た場合画素20Bの発光領域のほぼ全体が発光しているように見えるために、特に上から2番目の発光領域231−2が消灯していることが目立なくなる。
(実施例3)
図14は、実施例3に係る画素回路の回路構成を示す回路図である。実施例3に係る画素回路では、1つの画素20内に有機EL素子21を6個設け、1つの画素の発光領域を6個の有機EL素子21−1,21−2,21−3,21−4,21−5,21−6によって6分割する構成を採っている。
駆動回路側については、6個の有機EL素子21−1,21−2,21−3,21−4,21−5,21−6に対して書込みトランジスタ23が1個共通に設けられ、駆動トランジスタ22および保持容量24については2個ずつ設けられている。
具体的には、駆動トランジスタ22−1のソース電極には有機EL素子21−1,21−2,21−3が並列に接続され、駆動トランジスタ22−2のソース電極には有機EL素子21−4,21−5,21−6が並列に接続されている。すなわち、駆動トランジスタ22−1が有機EL素子21−1,21−2,21−3の駆動を担い、駆動トランジスタ22−2が有機EL素子21−4,21−5,21−6の駆動を担う。
上述したように、実施例3に係る画素回路は、6個の有機EL素子21−1,21−2,21−3,21−4,21−5,21−6を2つの駆動回路(22−1,23,24−1/22−2,23,24−2)で駆動する回路構成となっている。すなわち、6個の有機EL素子21−1,21−2,21−3,21−4,21−5,21−6をそれよりも少ない数(本例では、1/3)の駆動回路で駆動する構成を採っている。これにより、画素分割を採用する際に、駆動回路側の回路規模の縮小化を図ることができる。
この実施例3に係る画素回路において、書込みトランジスタ23によって書き込まれた信号電圧Vsigが保持容量24−1,24−2に蓄積される。そして、信号電圧Vsigに応じて有機EL素子21−1〜21−6の全体に流れる電流値をIとすると、有機EL素子21−1,21−2,21−3個々にはI/6の電流値の電流が流れ、有機EL素子21−4,21−5,21−6個々にはI/6の電流値の電流が流れる。その結果、有機EL素子21−1〜21−6トータルで電流値Iに応じた発光輝度が得られる。
ここで、有機EL素子21−1,21−2,21−3のいずれか1つが異物による電極間ショート等で欠陥化した場合には、アノード電極が共通であるとすると、他もショート状態になることから、何れも駆動トランジスタ21−1から切り離す。また、有機EL素子21−4,21−5,21−6のいずれか1つが異物による電極間ショート等で欠陥化した場合には、アノード電極が共通であるとすると、他もショート状態になることから、何れも駆動トランジスタ21−2から切り離す。このリペア技術の適用により、正常な組の有機EL素子21−1,21−2,21−3/21−4,21−5,21−6については発光状態を維持できるために、画素20が完全に滅点になるのを防ぐことができる。
駆動トランジスタ22−1,22−2のいずれか一方が異物による電極間ショート等で欠陥化した場合には、当該欠陥化した駆動トランジスタ23−1/23−2のゲート配線を切断する。このリペア技術の適用により、他方の駆動トランジスタ22−1/22−2では有機EL素子21−1,21−2/21−3,21−4を正常に発光駆動できるために、画素20が輝点になるのを防ぐことができる。
保持容量24−1,24−2のいずれか一方が異物による電極間ショート等で欠陥化した場合は、当該欠陥化した保持容量24−1/24−2の一方の電極と書込みトランジスタ23との間の配線を切断する。このリペア技術の適用により、正常な保持容量24−1/24−2に保持された信号電圧に応じて有機EL素子21−1,21−2/21−3,21−4を発光駆動できるために、画素20が完全に滅点になるのを防ぐことができる。
この実施例3に係る画素回路によれば、いずれの画素構成素子に異物に起因する欠陥が発生した場合でも、欠陥化した素子を分離できるため、画素20が完全に輝度欠陥になるのを防ぐことができる。ただし、書込みトランジスタ23の電極間ショート等による欠陥化に対しては画素分割による作用効果を得ることができない。その反面、6個の有機EL素子21−1,21−2,21−3,21−4,21−5,21−6に対して書込みトランジスタ23が1個で済むため、駆動回路の回路規模のより縮小化を図ることができる利点がある。
図15は、実施例3に係る画素回路のレイアウト構造を示す平面図である。図15には、隣り合うR,G,Bの3画素20R,20G,20Bを示している。ここでは、Bの画素20Bの場合を例に挙げて説明するが、R,Gの画素20R,20GについてもBの画素20Bの場合と同様のことが言える。
縦長の画素20Bの発光領域は、6個の有機EL素子21−1,21−2,21−3,21−4,21−5,21−6によって6つの発光領域241−1,241−2,241−3,241−4,241−5,241−6に2次元で分割されている。具体的には、縦3分割、横2分割の計6つの発光領域241−1,241−2,241−3,241−4,241−5,241−6に分割されている。これら6つの発光領域241−1〜241−6は、同じ形状にて例えば同じ面積で形成されている。
6つの発光領域241−1〜241−6のうち、上段左、中段右、下段左の発光領域241−1,241−4,241−5は、駆動トランジスタ22−1によって駆動される有機EL素子21−1,21−2,21−3の各発光領域となっている。また、上段右、中段左、下段右の発光領域241−2,241−3,241−6は、駆動トランジスタ22−2によって駆動される有機EL素子21−4,21−5,21−6の各発光領域となっている。
図15において、発光領域241−1,241−4,241−5側のノードa,b,cが図14のノードa,b,c、即ち有機EL素子21−1,21−2,21−3の各アノード電極に対応している。また、発光領域241−2,241−3,241−6側のノードd,e,fが図14のノードd,e,f、即ち有機EL素子21−4,21−5,21−6の各アノード電極に対応している。
すなわち、実施例3に係る画素回路のレイアウト構造では、並列接続された有機EL素子21−1,21−3の各発光領域241−1,241−5が、同一画素の他の有機EL素子21−5の発光領域241−3によって平面視で空間的に分離されている。また、並列接続された有機EL素子21−4,21−6の各発光領域241−2,241−6が、同一画素の他の有機EL素子21−2の発光領域231−4によって平面視で空間的に分離されている。
上述した2次元分割のレイアウト構造の1つの画素20Bにおいて、図14の有機EL素子21−1/21−2/21−3、駆動トランジスタ22−1または保持容量24−1の画素構成素子が異物による電極間ショート等で欠陥化した場合について考える。この欠陥化に対してリペア技術を適用した場合、6つの発光領域241−1〜241−6のうち、上段左、中段右、下段左の発光領域241−1,241−4,241−5が消灯する。
このように、画素20Bの発光領域内において、中段右の発光領域241−4の部分が消灯して欠けたとしても、その欠けた部分をその上下の発光領域241−2,241−6の各発光輝度が補う。上段左の欠けた部分についてはその右および下の発光領域241−2,241−3の各発光輝度が補い、下段左の欠けた部分についてはその右および上の発光領域241−6,241−3の各発光輝度が補う。これにより、画素20Bの発光領域の半分程度が非発光状態にあっても、マクロに見た場合画素20Bの発光領域のほぼ全体が発光しているように見えるために、非発光状態にある発光領域、特に中段右の発光領域241−4が消灯していることが目立なくなる。
図14の有機EL素子21−4/21−5/21−6、駆動トランジスタ22−2または保持容量24−2の画素構成素子が欠陥化した場合にも同様のことが言える。この場合は、6つの発光領域241−1〜241−6のうち、上段右、中段左、下段右の発光領域241−2,241−3,241−6が消灯する。
このように、画素20Bの発光領域内において、中段左の発光領域241−3の部分が消灯して欠けたとしても、その欠けた部分をその上下の発光領域241−1,241−5の各発光輝度が補う。上段右の欠けた部分についてはその左および下の発光領域241−1,241−4の各発光輝度が、下段右の欠けた部分についてはその左および上の発光領域241−5,241−4の各発光輝度がそれぞれ補う。これにより、画素20Bの発光領域の半分程度が非発光状態にあっても、マクロに見た場合画素20Bの発光領域のほぼ全体が発光しているように見えるために、非発光状態にある発光領域、特に中段左の発光領域241−3が消灯していることが目立なくなる。
なお、本実施例3では、縦長の画素20Bの発光領域を2次元で6分割するとしたが、1次元で6分割する構成を採ることも可能である。また、画素分割の分割数は6分割に限られるものではなく、5分割または7分割以上とすることも可能である。
また、図16に示すように、縦長の画素20Bの発光領域を4個の有機EL素子21−1,21−2,21−3,21−4によって4つの発光領域251−1,251−2,251−3,251−4に2次元分割する構成を採ることも可能である。この場合の画素構成は、図12に示す実施例2に係る画素構成となる。
4つの発光領域251−1,251−2,251−3,251−4のうち、上段左側と下段右側の発光領域251−1,251−4は、駆動トランジスタ22−1によって駆動される有機EL素子21−1,21−2の各発光領域となっている。また、上段右側と下段左側の発光領域231−2,231−3は、駆動トランジスタ22−2によって駆動される有機EL素子21−3,21−4の各発光領域となっている。
図16において、発光領域251−1,251−4側のノードa,bが図12のノードa,b、即ち有機EL素子21−1,21−2の各アノード電極に対応している。また、発光領域251−2,251−3側のノードc,dが図12のノードc,d、即ち有機EL素子21−3,21−4の各アノード電極に対応している。
図16から明らかなように、4つの発光領域251−1,251−2,251−3,251−4の対の関係は、画素20Bの発光領域の重心に関して点対称の関係、即ち対角線上に位置する2つの発光領域が対となるレイアウト構造となっている。この2次元4分割の場合は、並列接続された有機EL素子の各発光領域を、同一画素の他の有機EL素子の発光領域によって平面視で空間的に分離するというレイアウト構造とはなっていない。しかし、このレイアウト構造の場合にも、画素構成素子の欠陥化によって発光領域が空間的に狭まったとしても、画素20Bの発光領域を大きく見せることができる。
ここで、2次元4分割された4つの発光領域251−1,251−2,251−3,251−4を、左右または上下で隣接する2つの発光領域を対とした場合を考える。先ず、左右で隣接する発光領域251−1,251−2を対とし、発光領域251−3,251−4を対とした場合において、欠陥化によって一方の対が消灯したときは、画素20Bの発光領域の上半分または下半分が完全に非発光状態になる。
また、上下で隣接する発光領域251−1,251−3を対とし、発光領域251−2,251−4を対とした場合において、欠陥化によって一方の対が消灯したときは、画素20Bの発光領域の右半分または左半分が完全に非発光状態になる。いずれの場合にも、たとえ、一方側の消灯状態を他方側の発光輝度が補ったとしても、発光領域を大きく見せるのに限界がある。
これに対して、図16に示すように、画素20Bの発光領域の重心に関して点対称の関係にある発光領域251−1,251−4を対とし、発光領域251−2,251−3を対とした場合を考える。欠陥化によって発光領域251−1,251−4が消灯した場合には、左上の欠けた部分についてはその右および下の発光領域251−2,251−3が補い、右下の欠けた部分についてはその左および上の発光領域251−3,251−2が補う。
また、欠陥化によって発光領域251−2,251−3が消灯した場合には、右上の欠けた部分についてはその左および下の発光領域251−1,251−4が補い、左下の欠けた部分についてはその右および上の発光領域251−4,251−1が補う。これにより、画素構成素子の欠陥化によって発光領域が空間的に狭まったとしても、画素20Bの発光領域を大きく見せることができる。
以上説明したように、実施例1,2,3に係る画素回路のレイアウト構造によれば、複数の分割画素のうちの1つが欠陥化した場合であっても、当該分割画素に関連する発光領域が消灯状態にあることを目立たないようにすることができる。これにより、画素分割の技術によって表示パネル70の高歩留化を図った上で、複数の分割画素のうちの1つの欠陥化に起因する画質の低下を抑えることができる。
また、実施例1,2,3を比較したとき、実施例3>実施例2>実施例1の順で、1つの分割画素が欠陥化した場合に該当する発光領域が非発光状態になったことが視認されにくくなる。ただし、非発光部分の視認性は有機EL素子の開口率の減少(有機EL素子の劣化)とトレードオフの関係にあるため、両者の関係からレイアウト構造を適切に選択するようにすればよい。
なお、実施例1,2,3では、駆動トランジスタ22および保持容量24を2つずつ有する画素回路の場合を例に挙げて説明したが、これら画素構成素子の数は2つに限られるものではなく、3つ以上であっても良いことは勿論である。
[変形例]
上記実施形態では、有機EL素子21の駆動回路が、基本的に、駆動トランジスタ22および書込みトランジスタ23の2つのトランジスタからなる画素構成の場合を例に挙げて説明したが、本発明はこの画素構成への適用に限られるものではない。例えば、駆動トランジスタ22のゲート電極に基準電位Vofsを選択的に書き込むスイッチングトランジスタを有する画素構成など、種々の画素構成のものが考えられる。
また、上記実施形態においては、有機EL素子21の駆動回路が、閾値補正機能や移動度補正機能を持つとしたが、閾値補正機能や移動度補正機能を持たない画素回路に対しても同様に適用可能である。また、画素回路について、画素内の複数の駆動トランジスタで、ゲートノードや、保持容量、書込みトランジスタを共用するとしたが、これらが独立に存在してもよい。
さらに、上記実施形態では、画素の電気光学素子として、有機EL素子を用いた有機EL表示装置に適用した場合を例に挙げて説明したが、本発明はこの適用例に限られるものではない。具体的には、本発明は、無機EL素子、LED素子、半導体レーザ素子等、デバイスに流れる電流値に応じて発光輝度が変化する電流駆動型の電気光学素子(発光素子)を用いた表示装置全般に対して適用可能である。
[適用例]
以上説明した本発明による表示装置は、電子機器に入力された映像信号、若しくは、電子機器内で生成した映像信号を、画像若しくは映像として表示するあらゆる分野の電子機器の表示装置に適用することが可能である。一例として、図17〜図21に示す様々な電子機器、例えば、デジタルカメラ、ノート型パーソナルコンピュータ、携帯電話等の携帯端末装置、ビデオカメラなどの表示装置に適用することが可能である。
本発明による表示装置は、封止された構成のモジュール形状のものをも含む。例えば、画素アレイ部30に透明なガラス等の対向部が貼り付けられて形成された表示モジュールが該当する。この透明な対向部には、カラーフィルタ、保護膜等、更には、上記した遮光膜が設けられてもよい。なお、表示モジュールには、外部から画素アレイ部への信号等を入出力するための回路部やFPC(フレキシブルプリントサーキット)等が設けられていてもよい。
以下に、本発明が適用される電子機器の具体例について説明する。
図17は、本発明が適用されるテレビジョンセットの外観を示す斜視図である。本適用例に係るテレビジョンセットは、フロントパネル102やフィルターガラス103等から構成される映像表示画面部101を含み、その映像表示画面部101として本発明による表示装置を用いることにより作製される。
図18は、本発明が適用されるデジタルカメラの外観を示す斜視図であり、(A)は表側から見た斜視図、(B)は裏側から見た斜視図である。本適用例に係るデジタルカメラは、フラッシュ用の発光部111、表示部112、メニュースイッチ113、シャッターボタン114等を含み、その表示部112として本発明による表示装置を用いることにより作製される。
図19は、本発明が適用されるノート型パーソナルコンピュータの外観を示す斜視図である。本適用例に係るノート型パーソナルコンピュータは、本体121に、文字等を入力するとき操作されるキーボード122、画像を表示する表示部123等を含み、その表示部123として本発明による表示装置を用いることにより作製される。
図20は、本発明が適用されるビデオカメラの外観を示す斜視図である。本適用例に係るビデオカメラは、本体部131、前方を向いた側面に被写体撮影用のレンズ132、撮影時のスタート/ストップスイッチ133、表示部134等を含み、その表示部134として本発明による表示装置を用いることにより作製される。
図21は、本発明が適用される携帯端末装置、例えば携帯電話機を示す外観図であり、(A)は開いた状態での正面図、(B)はその側面図、(C)は閉じた状態での正面図、(D)は左側面図、(E)は右側面図、(F)は上面図、(G)は下面図である。本適用例に係る携帯電話機は、上側筐体141、下側筐体142、連結部(ここではヒンジ部)143、ディスプレイ144、サブディスプレイ145、ピクチャーライト146、カメラ147等を含んでいる。そして、ディスプレイ144やサブディスプレイ145として本発明による表示装置を用いることにより本適用例に係る携帯電話機が作製される。
10…有機EL表示装置、20…画素、20R,20G,20B…副画素、21,21−1〜21−6…有機EL素子、22,22−1,22−2…駆動トランジスタ、23…書込みトランジスタ、24,24−1,24−2…保持容量、30…画素アレイ部、31(31−1〜31−m)…走査線、32(32−1〜32−m)…電源供給線、33(33−1〜33−n)…信号線、34…共通電源供給線、40…書込み走査回路、50…電源供給走査回路、60…信号出力回路、70…表示パネル