以下に、図を参照しながら本発明を詳細に説明する。
図1は、本発明の空気入りタイヤの好適例の部分断面図である。図1に示すタイヤは、左右一対のビード部1及び一対のサイドウォール部2と、両サイド部2に連なるトレッド部3とを有し、一対のビード部1間にトロイド状に延在して、これら各部1、2、3を補強する一枚以上のカーカスプライ4からなるカーカス層と、サイド部2のカーカスプライ4の内側に配置した一対の断面三日月状サイド補強ゴム層5とを備える。
また、図示例のタイヤにおいては、ビード部1内に夫々埋設したリング状のビードコア6のタイヤ半径方向外側にビードフィラー7が配置されており、更に、カーカスプライ4のトレッド部のタイヤ半径方向外側には二枚のベルト層からなるベルト8が配置されているさらに、このベルト8のタイヤ半径方向外側でベルト8の全体を覆うようにベルト補強層9Aが配置され、更に、該ベルト補強層9Aの両端部のみを覆うように一対のベルト補強層9Bが配置されている。ここで、ベルト層は、通常、タイヤ赤道面に対して傾斜して延びるコードのゴム引き層、好ましくは、スチールコードのゴム引き層からなり、2枚のベルト層は、該ベルト層を構成するコードが互いに赤道面を挟んで交差するように積層されてベルト8を構成する。また、ベルト補強層9A,9Bは、通常、タイヤ周方向に対し実質的に平行に配列したコードのゴム引き層からなる。
なお、図示例のカーカスプライ4は、平行に配列された複数の補強コードをコーティングゴムで被覆してなるカーカスプライ1枚から構成され、また、該カーカスプライ4は、前記ビード部1内に夫々埋設した一対のビードコア6間にトロイド状に延在する本体部と、各ビードコア6の周りでタイヤ幅方向の内側から外側に向けて半径方向外方に巻上げた折り返し部とからなるが、本発明の空気入りタイヤにおいて、カーカスプライ4のプライ数及び構造は、これに限られるものではない。また、更に、図示例のベルト8は、二枚のベルト層からなるが、本発明の空気入りタイヤにおいては、ベルト8を構成するベルト層の枚数はこれに限られるものではない。更に、本発明の空気入りタイヤにおいては、ベルト補強層9A、9Bの配設も必須ではなく、別の構造のベルト補強層を配設することもできる。
本発明の空気入りタイヤは、ゴム成分と、その100質量部に対して、カーボンブラックを55質量部以上含み、かつ加硫ゴム物性において、100%伸張時弾性率(M100)が10MPa以上および正接損失tanδの28〜150℃におけるΣ値が6.0以下であるゴム組成物を用いること、および、前記カーカス層を構成するコードが、下記式(I)および(II)、
σ≧−0.01×E+1.2 (I)
σ≧0.02 (II)
(上記式中、σは177℃における熱収縮応力(cN/dtex)であり、Eは25℃における49N荷重時の弾性率(cN/dtex)である。)で表される関係を満足し、かつ、かつ、高温下で収縮し、室温に戻すと伸張する可逆性を有するポリケトン繊維を少なくとも50質量%含むことが重要である。上記構成とすることで、通常走行時の転がり抵抗と乗り心地を損なうことなくランフラット耐久性を高めることができる。
まず、本発明に係るゴム組成物について説明する。本発明に係るゴム組成物は、ゴム成分と、その100質量部に対して、カーボンブラックを55質量部以上含み、かつ加硫ゴム物性において、100%伸張時弾性率(M100)が10MPa以上および正接損失tanδの28〜150℃におけるΣ値が6.0以下である。本発明に係るゴム組成物を、好ましくは、空気入りタイヤのサイド補強層8および/またはビードフィラー7に用いることにより本発明の所期の効果を良好に得ることができる。
本発明に用いるゴム組成物のゴム成分としては、天然ゴム(NR)およびジエン系合成ゴムが挙げられる。ジエン系合成ゴムとしては、たとえば、スチレン−ブタジエン共重合体(SBR)、ポリブタジエン(BR)、ポリイソプレン(IR)、スチレン−イソプレン共重合体(SIR)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム、エチレン−プロピレン−ジエン3元共重合体(EPDM)およびこれらの混合ゴムが挙げられる。また、ジエン系合成ゴムの一部または全てが多官能型変性剤、たとえば四塩化スズのような変性剤を用いることにより分岐構造を有しているジエン系変性ゴムであることが好ましい。
本発明に係るゴム組成物としては、ゴム成分として、アミン変性ジエンゴムを30質量部以上含むことが好ましい。より好ましくは50質量部以上である。ゴム成分としてアミン変性ジエンゴムを30質量部以上含むことで、得られるゴム組成物は低発熱化し、ランフラット耐久性が向上した空気入りタイヤを得ることができる。
上記アミン変性ジエンゴムとしては、分子内に、変性用官能基として、アミン系官能基であるプロトン性アミノ基および/または脱離可能基で保護されたアミノ基を導入したものが好ましく、さらにケイ素原子を含む官能基を導入したものがより好ましい。前記ケイ素原子を含む官能基としては、ケイ素原子にヒドロカルビルオキシ基および/またはヒドロキシ基が結合してなるシラン基を挙げることができる。このような変性官能基は、共役ジエン系重合体の重合開始末端、側鎖および重合活性末端のいずれかに存在すればよいが、好ましくは重合末端、より好ましくは同一重合活性末端にプロトン性アミノ基および/または脱離可能基で保護されたアミノ基と、ヒドロカルビルオキシ基および/またはヒドロキシ基が結合したケイ素原子、特に好ましくは、1または2個のヒドロカルビルオキシ基および/またはヒドロキシ基が結合したケイ素原子とを有するものである。
前記プロトン性アミノ基としては、1級アミノ基、2級アミノ基およびそれらの塩の中から選ばれる少なくとも1種を挙げることができる。一方、脱離可能基で保護されたアミノ基としては、例えば、N,N−ビス(トリヒドロカルビルシリル)アミノ基およびN−(トリヒドロカルビルシリル)イミノ基を挙げることができ、好ましくは、ヒドロカルビル基が炭素数1〜10のアルキル基であるトリアルキルシリル基を挙げることができ、特に好ましくは、トリメチルシリル基を挙げることができる。脱離可能基で保護された1級アミノ基(保護化1級アミノ基ともいう)の例としては、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノ基を挙げることができ、脱離可能基で保護された2級アミノ基の例としては、N−(トリメチルシリル)イミノ基を挙げることができる。このN−(トリメチルシリル)イミノ基含有基としては、非環状イミン残基、および環状イミン残基のいずれであってもよい。
上記したアミン変性共役ジエン系重合体のうち、1級アミノ基で変性された1級アミン変性共役ジエン系重合体としては、共役ジエン系重合体の活性末端に、保護化1級アミン化合物を反応させて得られた、保護化1級アミノ基で変性された1級アミン変性共役ジエン系重合体が好適である。
変性に用いる共役ジエン系共重合体は、共役ジエン化合物単独重合体であってもよく、共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物との共重合体であってもよい。前記共役ジエン化合物としては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3ジメチル−1,3−ブタジエン、2−フェニル−1,3−ブタジエン、1,3−ヘキサジエン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよいが、これらの中で、1,3−ブタジエンが特に好ましい。また、共役ジエン化合物との重合に用いられる芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、a−メチルスチレン、1−ビニルナフタレン、3−ビニルトルエン、エチルビニルベンゼン、ジビニルベンゼン、4−シクロヘキシルスチレン、2,4,6−トリメチルスチレン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよいが、これらの中で、スチレンが特に好ましい。前記共役ジエン系重合体としては、ポリブタジエンまたはスチレン−ブタジエン共重合体が好ましく、ポリブタジエンが特に好ましい。
共役ジエン系重合体の活性末端に、保護化1級アミンを反応させて変性させるには、該共役ジエン系重合体は、少なくとも10%のポリマー鎖がリビング性または擬似リビング性を有するものが好ましい。このようなリビング性を有する重合反応としては、有機アルカリ金属化合物を開始剤とし、有機溶媒中で共役ジエン化合物単独、または共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とをアニオン重合させる反応か、あるいは有機溶媒中でランタン系列希土類元素化合物を含む触媒による共役ジエン化合物単独、または共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とを配位アニオン重合させる反応が挙げられる。前者は、後者に比較して共役ジエン部のビニル結合含有量の高いものを得ることができるので好ましい。ビニル結合量を高くすることによって、耐熱性を向上させることができる。
上述のアニオン重合開始剤として用いられる有機アルカリ金属としては、有機リチウム化合物が好ましい。有機リチウム化合物としては、特に制限はないが、ヒドロカルビルリチウムおよびリチウムアミド化合物が好ましく用いられ、前者のヒドロカルビルリチウムを用いる場合には、重合開始末端にヒドロカルビル基を有し、かつ、他方の末端が重合活性部位である共役ジエン系重合体が得られる。また、リチウムアミド化合物を用いる場合には、重合開始末端に窒素含有基を有し、他方の末端が重合活性部位である共役ジエン系重合体が得られる。
前記ヒドロカルビルリチウムとしては、炭素数2〜20のヒドロカルビル基を有するものが好ましく、例えば、エチルリチウム、n−プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−オクチルリチウム、n−デシルリチウム、フェニルリチウム、2−ナフチルリチウム、2−ブチルフェニルリチウム、4−フェニルブチルリチウム、シクロヘキシルリチウム、シクロベンチルリチウム、ジイソプロペニルベンゼンとブチルリチウムとの反応生成物が挙げられるが、これらの中で、特に、n−ブチルリチウムが好適である。
一方、リチウムアミド化合物としては、例えば、リチウムヘキサメチレンイミド、リチウムピロリジド、リチウムピペリジド、リチウムへプタメチレンイミド、リチウムドデカメチレンイミド、リチウムジメチルアミド、リチウムジエチルアミド、リチウムジブチルアミド、リチウムジプロピルアミド、リチウムジヘプチルアミド、リチウムジヘキシルアミド、リチウムジオクチルアミド、リチウムジ−2−エチルヘキシルアミド、リチウムジデシルアミド、リチウム−N−メチルピペラジド、リチウムエチルプロピルアミド、リチウムエチルブチルアミド、リチウムエチルベンジルアミド、リチウムメチルフェネチルアミド等が挙げられる。これらの中で、カーボンブラックに対する相互作用効果および重合開始能の観点から、リチウムヘキサメチレンイミド、リチウムピロリジド、リチウムピペリジド、リチウムへプタメチレンイミド、リチウムドデカメチレンイミド等の環状リチウムアミドが好ましく、特に、リチウムヘキサメチレンイミドおよびリチウムピロリジドが好適である。
これらのリチウムアミド化合物は、一般に2級アミンとリチウム化合物とから、予め調製したものを重合に使用することができるが、重合系中(in−Situ)で調製することもできる。また、この重合開始剤の使用量は好ましくは単量体100g当たり、0.2〜20ミリモルの範囲で選定される。
前記有機リチウム化合物を重合開始剤として用い、アニオン重合によって共役ジエン系重合体を製造する方法としては、特に制限はなく、従来公知の方法を用いることができる。具体的には、反応に不活性な有機溶剤、例えば、脂肪族、脂環族、芳香族炭化水素化合物等の炭化水素系溶剤中において、共役ジエン化合物または共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物を、前記リチウム化合物を重合開始剤として、所望により、用いられるランダマイザーの存在下にアニオン重合させることにより、目的の活性末端を有する共役ジエン系重合体が得られる。また、有機リチウム化合物を重合開始剤として用いた場合には、前述のランタン系希土類元素化合物を含む触媒を用いた場合に比べ、活性末端を有する共役ジエン系重合体のみならず、活性末端を有する共役ジエンと芳香族ビニル化合物の共重合体も効率よく得ることができる。
前記炭化水素系溶剤としては、炭素数3〜8のものが好ましく、例えば、プロパン、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、プロペン、1−ブテン、イソブテン、トランス−2−ブテン、シス−2−ブテン、1−ペンテン、2−ペンテン、1−ヘキセン、2−ヘキセン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等を挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上混合して用いてもよい。また、溶媒中の単量体濃度は、好ましくは5〜50質量%、より好ましくは10〜30質量%である。なお、共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物を用いて共重合をおこなう場合、仕込み単量体混合物中の芳香族ビニル化合物の含量は55質量%以下の範囲が好ましい。
また、所望により用いられるランダマイザーとは共役ジエン系共重合体のミクロ構造の制御、例えば、ブタジエン−スチレン共重合体におけるブタジエン部分の1,2結合、イソプレンにおける3,4結合の増加等、あるいは、共役ジエン化合物−芳香族ビニル化合物共重合体における単量体単位の組成分布の制御、例えば、ブタジエン−スチレン共重合体におけるブタジエン単位、スチレン単位のランダム化等の作用を有する化合物のことである。このランダマイザーとしては、特に制限はなく、従来ランダマイザーとして一般に使用されている公知の化合物の中から任意のものを適宜選択して用いることができる。具体的には、ジメトキシベンゼン、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、オキソラニルプロパンオリゴマー類(特に2,2−ビス(2−テトラヒドロフリル)−プロパンを含む物等)、トリエチルアミン、ピリジン、N−メチルモルホリン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、1,2−ジピペリジノエタン等のエーテル類および3級アミン等を挙げることができる。また、カリウムtert−アミレート、カリウムtert−ブトキシド等のカリウム塩類、ナトリウムtert−アミレート等のナトリウム塩類も用いることができる。
これらのランダマイザーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、その使用量は、リチウム化合物1モル当たり、好ましくは0.01〜1000モル当量の範囲で選択される。この重合反応における温度は、好ましくは0〜150℃、より好ましくは20〜130℃の範囲で選定される。重合反応は発生圧力下でおこなうことができるが、通常は単量体を実質的に液相に保つに十分な圧力で操作することが好ましい。すなわち、圧力は重合される個々の物質や、用いる重合溶媒および重合温度にもよるが、所望ならばより高い圧力を用いることができ、このような圧力は重合反応に関して不活性なガスで反応器を加圧する等の適当な方法でおこなわれる。
本発明においては、上記のようにして得られた活性末端を有する共役ジエン系重合体の活性末端に変性剤として、保護化1級アミンを反応させることにより1級アミン変性共役ジエン系重合体を製造することができる。上記保護化1級アミン化合物としては、保護化1級アミノ基を有するアルコキシシラン化合物が好適である。当該変性剤として用いられる保護化1級アミノ基を有するアルコキシシラン化合物としては、例えば、N,N,−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、1−トリメチルシリル−2,2−ジメトキシ−1−アザ−2−シラシクロペンタン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルトリエトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノエチルトリメトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノエチルトリエトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノエチルメチルジメトキシシランおよびN,N−ビス(トリメチルシリル)アミノエチルメチルジエトキシシラン等を挙げることができ、好ましくは、N,N,−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N,−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン、または、1−トリメチルシリル−2,2−ジメトキシ−1−アザ−2−シラシクロペンタンである。
また変性剤としては、N−メチル−N−トリメチルシリルアミノプロピル(メチル)ジメトキシシラン、N−メチル−N−トリメチルシリルアミノプロピル(メチル)ジエトキシシラン、N−トリメチルシリル(ヘキサメチレンイミン−2−イル)プロピル(メチル)ジメトキシシラン、N−トリメチルシリル(ヘキサメチレンイミン−2−イル)プロピル(メチル)ジエトキシシラン、N−トリメチルシリル(ピロリジン−2−イル)プロピル(メチル)ジメトキシシラン、N−トリメチルシリル(ピロリジン−2−イル)プロピル(メチル)ジエトキシシラン、N−トリメチルシリル(ピペリジン−2−イル)プロピル(メチル)ジメトキシシラン、N−トリメチルシリル(ピペリジン−2−イル)プロピル(メチル)ジエトキシシラン、N−トリメチルシリル(イミダゾール−2−イル)プロピル(メチル)ジメトキシシラン、N−トリメチルシリル(イミダゾール−2−イル)プロピル(メチル)ジエトキシシラン、N−トリメチルシリル(4,5−ジヒドロイミダゾール−5−イル)プロピル(メチル)ジメトキシシラン、N−トリメチルシリル(4,5−ジヒドロイミダゾール−5−イル)プロピル(メチル)ジエトキシシランなどの保護化2級アミノ基を有するアルコキシシラン化合物;N−(1,3ジメチルブチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(1−メチルエチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−エチリデン−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(1−メチルプロピリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(4−N,N−ジメチルアミノベンジリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(シクロヘキシリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミンなどのイミノ基を有するアルコキシシラン化合物;3−ジメチルアミノプロピル(トリエトキシ)シラン、3−ジメチルアミノプロピル(トリメトキシ)シラン、3−ジエチルアミノプロピル(トリエトキシ)シラン、3−ジエチルアミノプロピル(トリメトキシ)シラン、2−ジメチルアミノエチル(トリエトキシ)シラン、2−ジメチルアミノエチル(トリメトキシ)シラン、3−ジブチルアミノプロピル(ジエトキシ)メチルシラン、3−ジブチルアミノプロピル(トリエトキシ)シランなどのアミノ基を有するアルコキシシラン化合物なども挙げられる。これらの変性剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、この変性剤は部分縮合物であってもよい。ここで、部分縮合物とは、変性剤のSiORの一部(全部ではない)が縮合によりSiOSi結合したものを言う。
前記変性剤による変性反応において、該変性剤の使用量は、好ましくは0.5〜200mmol/kg・共役ジエン系重合体である。同使用量は、さらに好ましくは1〜100mmol/kg・共役ジエン系重合体であり、特に好ましくは、2〜50mmol/kg・共役ジエン系重合体である。ここで、共役ジエン系重合体とは、製造時または製造後、添加される老化防止剤等の添加剤を含まないポリマーのみの質量を意味する。変性剤の使用量を前記範囲にすることによって、充填材、特にカーボンブラックの分散性に優れ、加硫後の耐破壊特性、低発熱性が改良される。なお、前記変性剤の添加方法は、特に制限されず、一括して添加する方法、分割して添加する方法、あるいは連続的に添加する方法等が挙げられるが、一括して添加する方法が好ましい。また、変性剤は、重合開始末端や重合終了末端以外に重合体主鎖や側鎖のいずれに結合させることもできるが、重合体末端からエネルギー消失を抑制して低発熱性を改良しうる点から、重合開始末端あるいは重合終了末端に導入されていることが好ましい。
本発明では、前記した変性剤として用いる保護化1級アミノ基を有するアルコキシシラン化合物が関与する縮合反応を促進するために、縮合促進剤を用いることが好ましい。このような縮合促進剤としては、第3級アミノ基を含有する化合物、または周期律表(長周期型)の3族、4族、5族、12族、13族、14族および15族のうちいずれかの属する元素を1種以上含有する有機化合物を用いることができる。さらに、縮合促進剤として、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ビスマス(Bi)、アルミニウム(Al)およびスズ(Sn)からなる群から選択される少なくとの1種以上の金属を含有するアルコキシド、カルボン酸塩、またはアセチルアセトナート錯塩であることが好ましい。
ここで用いる縮合促進剤は、前記変性反応前に添加することもできるが、変性反応の途中および/または終了後に変性反応系に添加することが好ましい。変性反応前に添加した場合、活性末端との直接反応が起こり、活性末端に保護された第1アミノ基を有するヒドロカルビロキシ基が導入されない場合がある。縮合促進剤の添加時期としては、通常、変性反応開始5分〜5時間後、好ましくは変性反応開始15分〜1時間後である。
縮合促進剤としては、具体的に、テトラメトキシチタニウム、テトラエトキシチタニウム、テトラ−n−プロポキシチタニウム、テトライソプロポキシチタニウム、テトラ−n−ブトキシチタニウム、テトラ−n−ブトキシチタニウムオリゴマー、テトラ−sec−ブトキシチタニウム、テトラ−tert−ブトキシチタニウム、テトラ(2−エチルヘキシル)チタニウム、ビス(オクタンジオレート)ビス(2−エチルヘキシル)チタニウム、テトラ(オクタンジオレート)チタニウム、チタニウムラクテート、チタニウムジプロポキシビス(トリエタノールアミネート)、チタニウムジブトキシビス(トリエタノールアミネート)、チタニウムトリブトキシステアレート、チタニウムトリプロポキシステアレート、チタニウムエチルヘキシルジオレート、チタニウムトリプロポキシアセチルアセトネート、チタニウムジプロポキシビス(アセチルアセトネート)、チタニウムトリプロポキシエチルアセトアセテート、チタニウムプロポキシアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、チタニウムトリブトキシアセチルアセトネート、チタニウムトリブトキシビス(アセチルアセトネート)、チタニウムトリブトキシエチルアセテート、チタニウムブトキシアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、チタニウムテトラキス(アセチルアセトネート)、チタニウムジアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、ビス(2−エチルヘキサノエート)チタニウムオキサイド、ビス(ラウレート)チタニウムオキサイド、ビス(ナフテネート)チタニウムオキサイド、ビス(ステアレート)チタニウムオキサイド、ビス(オレエート)チタニウムオキサイド、ビス(リノレート)チタニウムオキサイド、テトラキス(2−エチルヘキシル)チタニウム、テトラキス(ラウレート)チタニウム、テトラキス(ナフテネート)チタニウム、テトラキス(ステアレート)チタニウム、チタニウム(オレエート)チタニウム、テトラキス(リノレート)チタニウム等のチタニウムを含む化合物を挙げることができる。
また、縮合促進剤としては、例えば、トリス(2−エチルヘキサノエート)ビスマス、トリス(ラウレート)ビスマス、トリス(ナフテネート)ビスマス、トリス(ステアレート)ビスマス、トリス(オレエート)ビスマス、トリス(リノレート)ビスマス、テトラエトキシジルコニウム、テトラ−n−プロポキシジルコニウム、テトライソプロポキシジルコニウム、テトラ−n−ブトキシジルコニウム、テトラ−sec−ブトキシジルコニウム、テトラ−tert−ブトキシジルコニウム、テトラ(2−エチルヘキシル)ジルコニウム、ジルコニウムトリブトキシステアレート、ジルコニウムトリブトキシアセチルアセトネート、ジルコニウムジブトキシビス(アセチルアセトネート)、ジルコニウムトリブトキシエチルアセトアセテート、ジルコニウムブトキシアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムテトラキス(アセチルアセトネート)、ジルコニウムジアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、ビス(2−エチルヘキサノエート)ジルコニウムオキサイド、ビス(ラウレート)ジルコニウムオキサイド、ビス(ナフテネート)ジルコニウムオキサイド、ビス(ステアレート)ジルコニウムオキサイド、ビス(オレエート)ジルコニウムオキサイド、ビス(リノレート)ジルコニウムオキサイド、テトラキス(2−エチルヘキシル)ジルコニウム、テトラキス(ラウレート)ジルコニウム、テトラキス(ナフテネート)ジルコニウム、テトラキス(ステアレート)ジルコニウム、テトラキス(オレエート)ジルコニウム、テトラキス(リノレート)ジルコニウム等を挙げることができる。
また、トリエトキシアルミニウム、トリ−n−プロポキシアルミニウム、トリイソプロポキシアルミニウム、トリ−n−ブトキシアルミニウム、トリ−sec−ブトキシアルミニウム、トリ−tert−ブトキシアルミニウム、トリ(2−エチルヘキシル)アルミニウム、アルミニウムジブトキシステアレート、アルミニウムジブトキシアセチルアセトネート、アルミニウムブトキシビス(アセチルアセトネート)、アルミニウムジブトキシエチルアセトアセテート、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、トリス(2−エチルヘキサノエート)アルミニウム、トリス(ラウレート)アルミニウム、トリス(ナフテネート)アルミニウム、トリス(ステアレート)アルミニウム、トリス(オレエート)アルミニウム、トリス(リノレート)アルミニウム等を挙げることができる。
上述の重合促進剤のうち、チタン化合物が好ましく、チタン金属のアルコキシド、チタン金属のカルボン酸塩、またはチタン金属のアセチルアセトナート錯塩が特に好ましい。この縮合促進剤の使用量としては、前記化合物のモル数が、反応系内に存在するヒドロカルビロキシ基総量に対するモル比として、0.1〜10となることが好ましく、0.5〜5が特に好ましい。縮合促進剤としての使用量を前記範囲にすることによって、縮合反応が効率よく進行する。
本発明における縮合反応は、上記の縮合促進剤と、水蒸気または水の存在下で進行する。水蒸気の存在下の場合として、スチームストリッピングによる脱溶媒処理が挙げられ、スチームストリッピング中に縮合反応が進行する。また、縮合反応を水溶液中で行ってもよく、縮合反応温度は85〜180℃が好ましい。さらに好ましくは。100〜170℃、特に好ましくは110〜150℃である。縮合反応時の温度を前記範囲にすることで、縮合反応を効率よく進行完結することができ、得られる変性共役ジエン系重合体の経時変化によるポリマーの老化反応等による品質の低下等を抑えることができる。
なお、縮合反応時間は、通常5分〜10分、好ましくは15分〜5時間程度である。縮合反応時間の反応系の圧力は、通常、0.01〜20MPa、好ましくは0.05〜10MPaである。縮合反応を水溶液中で行う場合の形式については特に制限はなく、バッチ式反応器を用いても多段連続式反応器等の装置を用いて連続的に行ってもよい。また、この縮合反応と脱溶媒を同時に行ってもよい。
本発明の変性共役ジエン系重合体の変性剤由来の1級アミノ基は、上述のように脱保護処理を行うことによって生成する。上述したスチームストリッピング等の水蒸気を用いる脱溶媒処理以外の脱保護処理の好適な具体例を以下に詳述する。すなわち、1級アミノ基上の保護基を加水分解することによって遊離した1級アミノ基に変換する。これを脱溶媒処理することにより、1級アミノ基を有する変性共役ジエン系重合体を得ることができる。なお、該縮合処理を含む段階から、脱溶媒して乾燥ポリマーまでのいずれかの段階において必要に応じて変性剤由来の保護された1級アミノ基の脱保護処理を行うことができる。
このようにして得られた、アミン変性ジエンゴムはムーニー粘度(ML1+4,100℃)が、好ましくは10〜150、より好ましくは15〜100である。ムーニー粘度が10未満である場合は耐破壊特性を始めとするゴム物性が十分に得られず、150を超えると作業性が悪く配合剤とともに混練りすることが困難である。また、前記アミン変性ジエンゴムを配合した本発明に係る未加硫ゴム組成物のムーニー粘度(ML1+4,130℃)は、好ましくは10〜150、より好ましくは30〜100である。
本発明に係るゴム組成物に用いられるアミン変性ジエンゴムは、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)、すなわち、分子量分布(Mw/Mn)が1〜3であることが好ましく、1.1〜2.7であることがより好ましい。アミン変性ジエンゴムの分子量分布(Mw/Mn)を前記範囲内とすることで、該アミン変性ジエンゴムをゴム組成物に配合しても、ゴム組成物の作業性を低下させることがなく、混練りが容易で、ゴム組成物の物性を十分に向上させることができる。
また、本発明に係るゴム組成物に用いられるアミン変性ジエンゴムは、数平均分子量(Mn)が100,000〜500,000であることが好ましく、150,000〜300,000であることがさらに好ましい。アミン変性ジエンゴムの数平均分子量を前記範囲とすることで加硫物の弾性率の低下、ヒステリシスロスの上昇を抑えて優れた耐破壊特性を得るとともに、該アミン変性ジエンゴムを含むゴム組成物の優れた混練り作業性が得られる。本発明に係るゴム組成物に用いられるアミン変性ジエンゴムは1種類でもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明に係るゴム組成物においては、カーボンブラックが、ゴム成分100質量部に対して55質量部以上であることを要する。カーボンブラックが55質量部未満であると、十分な補強効果を発揮することができず、得られるゴム組成物の加硫ゴム物性において、後述する100%伸張時弾性率(M100)が10MPa以上にならない場合がある。一方、カーボンブラックの量が多すぎると、得られるゴム組成物の加硫ゴム物性において、後述する正接損失tanδの28〜150℃におけるΣ値が6.0以下にならない場合がある。したがって、カーボンブラックの好ましい量は、55〜70質量部であり、より好ましくは60〜70質量部である。
本発明に用いるカーボンブラックとしては、得られるゴム組成物の加硫ゴム物性が、上記の加硫ゴム物性を満たすためには、FEF級グレード、FF級グレード、HAF級グレード、ISAF級グレードおよびSAF級グレードの中から選ばれる少なくとも一種を用いることが好ましく、特に、FEF級グレードが好適である。
本発明に係るゴム組成物は、加硫ゴム物性として、100%伸張時弾性率(M100)が10MPa以上であることを要する。この弾性率(M100)が10MPa未満では、ランフラット走行時のタイヤの撓み保持が不十分となり、タイヤのランフラット耐久性が低下する。好ましいM100は10.5MPa以上であり、その上限は特に制限されないが、通常は13MPa程度である。
また、正接損失tanδの28〜150℃におけるΣ値が6.0以下であることを要する。このtanδ(28〜150℃)のΣ値が6.0を超えると、ランフラット走行時のタイヤ発熱が大きく、タイヤのランフラット走行耐久性が低下する。tanδ(28〜150℃)のΣ値の下限には特に制限はないが、通常5程度である。なお、上記100%伸張時弾性率(M100)、tanδ(28〜150℃)のΣ値は以下の方法で測定した値である。
(100%伸張時弾性率(M100)の測定方法)
ゴム組成物を160℃、12分間の条件で加硫処理して得られた厚さ2mmのスラブシートについて、JIS K 6251に基づき、100%伸張時弾性率を測定する。
(tanδ(28〜150℃)の測定方法)
ゴム組成物を160℃、12分間の条件で加硫処理して得られた厚さ2mmのスラブシートから、幅5mm、長さ40mmのシートを切り出し、試料とした。この試料について、上島製作所社製スペクトロメーターを用い、チャック間隔10mm、初期歪200μm動的歪1%、周波数52Hz、測定開始温度25〜200℃の測定条件にて正接損失tanδを測定し、図2に示すように、温度とtanδとの関係をグラフ化し、斜線部分の面積を求め、その値をtanδ(28〜150℃)のΣ値とする。
なお、本発明に係るゴム組成物には、本発明の効果が損なわれない範囲で、所望により通常ゴム業界で用いられる各種薬品、例えば加硫剤、加硫促進剤、プロセス油、老化防止剤、スコーチ防止剤、亜鉛華、ステアリン酸などを含有させることができる。上記加硫剤としては、硫黄等が挙げられ、その使用量は、ゴム成分100質量部に対して、硫黄分として0.1〜10.0質量部が好ましく、さらに好ましくは1.0〜5.0質量部である。0.1質量部未満では加硫ゴムの破壊強度、耐磨耗性、低発熱性が低下するおそれがある。一方、10.0質量部を超えるとゴム弾性が失われる原因となる。
本発明で使用できる加硫促進剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、M(2−メルカプトベンゾチアゾール)、DM(ジベンゾチアジルジスルフィド)、CZ(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド)等のチアゾール系、DPC(ジフェニルグアニジン)等のグアニジン系、あるいは、TOT(テトラキス(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィド)等のチウラム系の加硫促進剤等を挙げることができ、その使用量は、ゴム成分100質量部に対して、硫黄分として0.1〜5.0質量部が好ましく、さらに好ましくは0.2〜3.0質量部である。
また、本発明に係るゴム組成物で使用できる軟化剤として用いるプロセス油としては、例えば、パラフィン系、ナフテン系、アロマチック系等を挙げることができる。引張強度、耐磨耗性を重視する用途にはアロマチック系が、ヒステリシスロス、低温特性を重視する用途にはナフテン系またはパラフィン系が用いられる。その使用量は、ゴム成分100質量部に対して、0〜100質量部が好ましく、100質量部以下であれば加硫ゴムの引張強度、低発熱性(低燃費性)が悪化するのを抑制することができる。
さらに、本発明に係るゴム組成物で使用できる老化防止剤としては、例えば、3C(N−イソプロピル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン)、6C(N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン)、AW(6−エトキシ−2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン)、ジフェニルアミンとアセトンの高温縮合物等を挙げることができる。その使用量は、ゴム成分100質量部に対して、0.1〜5.0質量部が好ましく、さらに好ましくは0.3〜3.0質量部である。
本発明に係るゴム組成物は、前記配合により、バンバリーミキサー、ロール、インターナルミキサー等の混練り機を用いて混練りすることにより得られ、成型加工後、加硫を行い、図1における空気入りタイヤのサイド補強部8および/またはビードフィラー7に好適に用いられる。
続いて、本発明の空気入りタイヤのカーカス層を構成する繊維コードについて説明する。
本発明に係る繊維コードは、下記式(I)および(II)、
σ≧−0.01×E+1.2 (I)
σ≧0.02 (II)
(上記式中、σは177℃における熱収縮応力(cN/dtex)であり、Eは25℃における49N荷重時の弾性率(cN/dtex)である。)で表される関係を満足し、かつ、高温下で収縮し、室温に戻すと伸張する可逆性を有するポリケトン繊維を少なくとも50質量%含むことが重要である。該ポリケトン繊維コードは、従来のカーカスに用いられていたレーヨン等のセルロース系の繊維コードと重量が同等で、タイヤ重量を増加させることも無いため、タイヤの乗り心地の悪化を抑制することができる。
上記繊維コードは、高温における熱収縮応力が大きいため、タイヤが高温になるランフラット走行時において、初期の比較的タイヤの歪が小さい時から高い剛性を発揮し、タイヤのサイドウォール部の径方向の曲げ剛性を上昇させて、タイヤの撓みを抑制し、その結果として、タイヤのランフラット耐久性を向上させることができる。一方、上記繊維コードは、通常走行時のコード伸張方向のタイヤの歪が小さい時には、低剛性であるため、通常走行時のタイヤの縦バネを上昇させることが無い。
使用するコードが式(I)を満足しない場合は、熱収縮応力σが大きいものの弾性率Eが低いコードを使用すると、ランフラット走行時のタイヤの撓みを十分に抑制することができず、タイヤのランフラット耐久性が低下し、一方、弾性率Eが高いものの熱収縮応力σが小さいコードを使用すると、通常走行時のタイヤの縦バネが大きくなり、通常走行時のタイヤの乗り心地が悪化する。また、使用するコードの177℃における熱収縮応力σが0.02cN/dtex未満では、ランフラット走行時のたわみ量が大きくなってしまい、ランフラット耐久距離が短くなってしまう。
ここで、上記繊維コードは、177℃における熱収縮応力σが1.5cN/dtex以下であることが好ましい。繊維コードの177℃における熱収縮応力σが1.5cN/dtexを超えると、加硫時の収縮力が大きくなり過ぎ、結果的に、タイヤ内部のコード乱れやゴムの配置乱れを引き起こし、耐久性の悪化やユニフォミティーの悪化を招いてしまう。また、上記繊維コードは、ランフラット走行時のタイヤの変形を十分に抑制する観点から、177℃における熱収縮応力σが0.20cN/dtex以上であることが好ましく、ランフラット走行時のタイヤの変形を確実に抑制する観点から、177℃における熱収縮応力σが0.30cN/dtex以上であることが更に好ましく、0.4cN/dtex超であることがより一層好ましい。なお、熱収縮応力σが高い程、ランフラット走行時のタイヤの変形を抑制する効果が高い。更に、上記繊維コードは、ランフラット走行時のタイヤの変形を十分に抑制する観点から、25℃における49N荷重時の弾性率Eが30cN/dtex以上であることが好ましく、ランフラット走行時のタイヤの変形を確実に抑制する観点から、49N荷重時の弾性率Eが80cN/dtex以上であることが更に好ましい。また更に、上記繊維コードは、耐疲労性を十分に確保する観点から、25℃における49N荷重時の弾性率Eが170cN/dtex以下であることが好ましく、耐疲労性を良好にする観点から、49N荷重時の弾性率Eが150cN/dtex以下であることが更に好ましい。
また、上記繊維コードは、高温下で収縮し、室温に戻すと伸張する可逆性を有するポリケトン繊維を少なくとも50質量%含むことを要する。この場合、高温下、即ち、ランフラット走行時時にカーカスプライ中のポリケトン繊維コードが収縮しようとして剛性が高まり、タイヤのサイドウォール部の撓みを抑制することができる上、低温下、即ち、通常走行時にカーカスプライ中のポリケトン繊維コードが伸張しようとして剛性が低下し、タイヤの縦バネが低下して、タイヤの通常走行時の乗り心地の悪化を抑制することができる。また、20℃と177℃での熱収縮応力の差が0.20cN/dtex以上、好ましくは0.25cN/dtex以上の可逆的なポリケトン繊維コードを用いることで、通常走行時とランフラット走行時での効果を両立することができる。
本発明においては、カーカスを構成するコードが、下記式(III)、(IV)、
N=n×(0.125×D/ρ)1/2×10−3 (III)
0.34≦N (IV)
(上記式中、nは上撚り回数(回/10cm)であり、Dはコードの総デシテックスであり、ρは上記少なくともポリケトン繊維を50質量%含む繊維の比重(g/cm3)である)で表される関係を満足することが好ましい。Nが0.34未満であると、疲労性が著しく低下し、耐久性が不足する。より好ましくは、下記式(V)、
0.6≦N≦0.9 (V)
で表される関係を満足する。
本発明の空気入りタイヤのカーカスプライにおいては、上記ポリケトン繊維コードの打ち込み数が30〜60(本/50mm)の範囲であることが好ましい。カーカスプライにおけるポリケトン繊維コードの打ち込み数が30(本/50mm)未満では、カーカス強度が不足して、耐久性が不足する。なお、打ち込み数が60(本/50mm)を超えても、打ち込み可能であれば、特に制限されない。
また、上記カーカスプライに用いるポリケトン繊維コードは、繊度が500〜2000dtexのポリケトンからなることが好ましく、より好ましくは、このポリケトンからなるフィラメント束を2本又は3本撚り合わせてなる。例えば、上記ポリケトンからなるフィラメント束に下撚りをかけ、次いでこれを複数本合わせて、逆方向に上撚りをかけることで、双撚り構造の撚糸コードとして得ることができる。ポリケトン繊維コードに用いるフィラメント束の繊度が500dtex未満では、弾性率・熱収縮応力共に不十分であり、2000dtexを超えると、コード径が太くなり、打ち込みを密にできない。なお、ポリケトンからなるフィラメント束の本数が1本であっても、4本以上であっても、上記式(III)及び式(IV)の関係を満足できれば、特に制限されない。
また、前記繊維コードに含まれるポリケトン繊維原糸の引張強度が10cN/dtex以上で、弾性率が200cN/dtex以上で、かつ、接着剤処理(Dip処理)後の150℃×30分間乾熱処理時の熱収縮率が1〜5%の範囲であることが好ましい。ポリケトン繊維原糸の引張強度は、より好ましくは15cN/dtex以上である。この引張強度が高いほど、強度の要求される分野での使用が可能となり、また、使用する繊維の重量を低く抑えることができるようになる。また、その引張弾性率は、より好ましくは300cN/dtex以上である。この引張弾性率が高いほど同一荷重下での寸法変化が小さく、形態安定性に優れた効果を奏することとなる。さらに、ディップ処理済みコードとして、150℃×30分乾熱処理時熱収縮率が1%未満の場合には、タイヤ製造時の加熱による引き揃え効率が著しく低下し、タイヤとしての強度が不十分となる。一方、150℃×30分乾熱処理時熱収縮率が5%を超えると、タイヤ製造時の加熱によりコードが著しく収縮するため、出来上がりのタイヤ形状が悪化する懸念がある。
前記繊維コードを構成するポリケトンは、下記式(VI)、
で表される繰り返し単位から実質的になるポリケトンが好ましい。また、該ポリケトンの中でも、繰り返し単位の97モル%以上が1−オキソトリメチレン[−CH
2−CH
2−CO−]であるポリケトンが好ましく、99モル%以上が1−オキソトリメチレンであるポリケトンが更に好ましく、100モル%が1−オキソトリメチレンであるポリケトンが最も好ましい。
上記ポリケトン繊維コードの原料のポリケトンは、部分的にケトン基同士、不飽和化合物由来の部分同士が結合していてもよいが、不飽和化合物由来の部分とケトン基が交互に配列している部分の割合が90質量%以上であることが好ましく、97質量%以上であることが更に好ましく、100質量%であることが最も好ましい。
また、上記式(VI)において、Aを形成する不飽和化合物としては、エチレンが最も好ましいが、プロピレン,ブテン,ペンテン,シクロペンテン,ヘキセン,シクロヘキセン,ヘプテン,オクテン,ノネン,デセン,ドデセン,スチレン,アセチレン,アレン等のエチレン以外の不飽和炭化水素や、メチルアクリレート,メチルメタクリレート,ビニルアセテート,アクリルアミド,ヒドロキシエチルメタクリレート,ウンデセン酸,ウンデセノール,6−クロロヘキセン,N−ビニルピロリドン,スルニルホスホン酸のジエチルエステル,スチレンスルホン酸ナトリウム,アリルスルホン酸ナトリウム,ビニルピロリドンおよび塩化ビニル等の不飽和結合を含む化合物等であってもよい。
更に、上記ポリケトンの重合度としては、下記式(VII)、
(式中、t及びTは、純度98%以上のヘキサフルオロイソプロパノール及び該ヘキサフルオロイソプロパノールに溶解したポリケトンの希釈溶液の25℃での粘度管の流過時間であり;Cは、上記希釈溶液100mL中の溶質の質量(g)である)で定義される極限粘度[η]が1〜20dL/gの範囲にあることが好ましく、2〜10dL/gの範囲にあることが更に好ましく、3〜8の範囲にあることがより一層好ましい。極限粘度が1dL/g未満では、分子量が小さ過ぎて、高強度のポリケトン繊維コードを得ることが難しくなる上、紡糸時、乾燥時及び延伸時に毛羽や糸切れ等の工程上のトラブルが多発することがあり、一方、極限粘度が20dL/gを超えると、ポリマーの合成に時間及びコストがかかる上、ポリマーを均一に溶解させることが難しくなり、紡糸性及び物性に悪影響が出ることがある。
上記ポリケトンの繊維化方法としては、(1)未延伸糸の紡糸を行った後、多段熱延伸を行い、該多段熱延伸の最終延伸工程で特定の温度及び倍率で延伸する方法や、(2)未延伸糸の紡糸を行った後、熱延伸を行い、該熱延伸終了後の繊維に高い張力をかけたまま急冷却する方法が好ましい。上記(1)又は(2)の方法でポリケトンの繊維化を行うことで、上記ポリケトン繊維コードの作製に好適な所望のフィラメントを得ることができる。
ここで、上記ポリケトンの未延伸糸の紡糸方法としては、特に制限はなく、従来公知の方法を採用することができ、具体的には、特開平2−112413号、特開平4−228613号、特表平4−505344号に記載のようなヘキサフルオロイソプロパノールやm−クレゾール等の有機溶剤を用いる湿式紡糸法、国際公開第99/18143号、国際公開第00/09611号、特開2001−164422号、特開2004−218189号、特開2004−285221号に記載のような亜鉛塩、カルシウム塩、チオシアン酸塩、鉄塩等の水溶液を用いる湿式紡糸法が挙げられ、これらの中でも、上記塩の水溶液を用いる湿式紡糸法が好ましい。
例えば、有機溶剤を用いる湿式紡糸法では、ポリケトンポリマーをヘキサフルオロイソプロパノールやm−クレゾール等に0.25〜20質量%の濃度で溶解させ、紡糸ノズルより押し出して繊維化し、次いでトルエン,エタノール,イソプロパノール,n−ヘキサン,イソオクタン,アセトン,メチルエチルケトン等の非溶剤浴中で溶剤を除去、洗浄してポリケトンの未延伸糸を得ることができる。
一方、水溶液を用いる湿式紡糸法では、例えば、亜鉛塩、カルシウム塩、チオシアン酸塩、鉄塩等の水溶液に、ポリケトンポリマーを2〜30質量%の濃度で溶解させ、50〜130℃で紡糸ノズルから凝固浴に押し出してゲル紡糸を行い、更に脱塩、乾燥等してポリケトンの未延伸糸を得ることができる。ここで、ポリケトンポリマーを溶解させる水溶液には、ハロゲン化亜鉛と、ハロゲン化アルカリ金属塩又はハロゲン化アルカリ土類金属塩とを混合して用いることが好ましく、凝固浴には、水、金属塩の水溶液、アセトン、メタノール等の有機溶媒等を用いることができる。
また、得られた未延伸糸の延伸法としては、未延伸糸を該未延伸糸のガラス転移温度よりも高い温度に加熱して引き伸ばす熱延伸法が好ましく、更に、該未延伸糸の延伸は、上記(2)の方法では一段で行ってもよいが、多段で行うことが好ましい。該熱延伸の方法としては、特に制限はなく、例えば、加熱ロール上や加熱プレート上に糸を走行させる方法等を採用することができる。ここで、熱延伸温度は、110℃〜(ポリケトンの融点)の範囲が好ましく、総延伸倍率は、10倍以上であることが好ましい。
上記(1)の方法でポリケトンの繊維化を行う場合、上記多段熱延伸の最終延伸工程における温度は、110℃〜(最終延伸工程の一段前の延伸工程の延伸温度−3℃)の範囲が好ましく、また、多段熱延伸の最終延伸工程における延伸倍率は、1.01〜1.5倍の範囲が好ましい。一方、上記(2)の方法でポリケトンの繊維化を行う場合、熱延伸終了後の繊維にかける張力は、0.5〜4cN/dtexの範囲が好ましく、また、急冷却における冷却速度は、30℃/秒以上であることが好ましく、更に、急冷却における冷却終了温度は、50℃以下であることが好ましい。ここで、熱延伸されたポリケトン繊維の急冷却方法としては、特に制限はなく、従来公知の方法を採用することができ、具体的には、ロールを用いた冷却方法が好ましい。なお、こうして得られるポリケトン繊維は、弾性歪みの残留が大きいため、通常、緩和熱処理を施し、熱延伸後の繊維長よりも繊維長を短くすることが好ましい。ここで、緩和熱処理の温度は、50〜100℃の範囲が好ましく、また、緩和倍率は、0.980〜0.999倍の範囲が好ましい。
上記のようにして得られたポリケトン繊維コードをコーティングゴムで被覆することで、上記カーカスプライに用いるコード/ゴム複合体を得ることができる。ここで、ポリケトン繊維コードのコーティングゴムとしては、特に制限は無く、従来のカーカスプライに用いていたコーティングゴムを用いることができる。なお、ポリケトン繊維コードのコーティングゴムによる被覆に先立って、ポリケトン繊維コードに接着剤処理を施し、コーティングゴムとの接着性を向上させてもよい。
本発明の空気入りタイヤは、カーカス4のカーカスプライに上述のポリケトン繊維コードをコーティングゴムで被覆してなるコード/ゴム複合体を適用し、常法により製造することができる。なお、本発明の空気入りタイヤにおいて、タイヤ内に充填する気体としては、通常の或いは酸素分圧を変えた空気、又は窒素等の不活性ガスを用いることができる。