JP2009533428A - 筋肉内抗ウイルス処置 - Google Patents
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Abstract
本発明は、ウイルス感染を処置するために有用な単位剤形、キット、および方法を提供する。1つの実施形態において、本発明は、有効な抗ウイルス量の式I、II、III、またはIVの化合物、あるいはそれらの薬学的に許容される塩を、筋肉内経路によりヒトに投与するステップを含む、ヒトにおけるウイルス感染(例えば、インフルエンザ感染)を処置するための方法を提供する。本発明は、有効な阻害量の式I、II、III、またはIVの化合物、あるいはそれらの薬学的に許容される塩を筋肉内経路によりヒトに投与するステップを含む、ヒトにおけるノイラニミダーゼを阻害するための方法も提供する。
Description
インフルエンザウイルスノイラニミダーゼ阻害剤ペラミビル(ペラニビル)は、in viroおよび実験的に感染させたマウスにおいてインフルエンザウイルスに対して顕著な活性を有する(非特許文献1;および非特許文献2)。残念なことに、ペラミビルを用いた臨床試験は、数日間にわたる経口投与後にヒトにおけるインフルエンザに対して好ましくない低い阻害効果を示した。現在、インフルエンザ感染のようなウイルス感染を処置するために有用な方法および処方物が必要とされている。
Govorkova et al.,Antimicrobial Agent and Chemotherapy,45(10),2723−2732(2001) Smee et al.,Antimicrobial Agent and Chemotherapy,45(3),743−748(2001)
Govorkova et al.,Antimicrobial Agent and Chemotherapy,45(10),2723−2732(2001) Smee et al.,Antimicrobial Agent and Chemotherapy,45(3),743−748(2001)
マウスへのペラニビルの単一筋肉内投与がインフルエンザを処置するために効果的であることが思いがけず発見された。これらの発見は、この化合物の単一投与の高い有効性によってのみならず、効果的な処置を提供することが見出されたこの化合物の低用量によっても、予期せざるものである。単一投与によって治療上有用な効果が得られることは、とりわけ、多重投与の必要に起因する患者コンプライアンスが低投与量によって最小限にされるので、重要である。加えて、低用量の投与は、それによってコストおよび副作用の可能性が最小限にされるので、重要である。
従って、1つの実施形態において、本発明は、有効な抗ウイルス量の式I、II、III、またはIVの化合物:
本発明は、有効な阻害量の式I、II、III、またはIVの化合物、あるいはそれらの薬学的に許容される塩を筋肉内経路によりヒトに投与するステップを含む、ヒトにおけるノイラニミダーゼを阻害するための方法も提供する。
本発明は、約500mgまで(例えば、約150mg)の式I、II、III、またはIVの化合物、あるいはそれらの薬学的に許容される塩を含む、ヒトへの筋肉内投与に適した単位剤形も提供する。
本発明は、包装材料と、式I、II、III、またはIVの化合物、あるいはそれらの薬学的に許容される塩と、その化合物を筋肉内経路によってヒトに投与するための指示書と、を含むキットも提供する。
本発明は、感染の臨床的症状を呈する哺乳動物、例えば、ヒトの群の各メンバーへのある投与量、例えば、有効な抗ウイルス投与量の薬剤の筋肉内投与により、インフルエンザウイルス源にさらされている群における平均余命を増大させるためおよび/または死亡率を低減させるための筋肉内注射用薬剤の製造における、式I、II、III、またはIVの化合物、あるいはそれらの薬学的に許容される塩の使用も提供する。
本発明は、哺乳動物、例えば、ヒトの群の各メンバーへのある投与量の薬剤の筋肉内投与により、インフルエンザウイルス源にさらされている群における平均余命を増大させるためまたは死亡率を低減させるための筋肉内注射用薬剤の製造における、式I、II、III、またはIVの化合物、あるいはそれらの薬学的に許容される塩の使用も提供する。
インフルエンザウイルスノイラニミダーゼ阻害剤ペラニビルは、in vitroおよび実験的に感染させたマウスにおいてインフルエンザウイルスに対して顕著な活性を有することがかねて示されている(Govorkova et al.,Antimicrobial Agent and Chemotherapy,45(10),2723−2732(2001);およびSmee et al.,Antimicrobial Agent and Chemotherapy,45(3),743−748(2001))。残念なことに、この薬剤を用いた臨床試験は、ヒトにおけるインフルエンザに対して不十分な阻害効果を示した。
ペラニビルの単一筋肉内注射が、インフルエンザA/H1N1に感染したマウスにおける体重減少および死亡率を大きく減少させることが発見されている。従って、ペラニビルの単一筋肉内注射は、インフルエンザ感染を処置するため、およびインフルエンザの流行時にオセルタミビルの代替選択肢を提供するために用いることができる。
ペラニビルは、マウスインフルエンザモデルにおける単一筋肉内注射として試験され、筋肉内投与された場合に効果があることが見出された。A型インフルエンザウイルスの2つの異なる株(H1N1およびH3N2)を用いた予防モデルの3つの異なる研究において、ペラニビルの単一筋肉内注射の効力が、オセルタミビルかペラニビルの経口処置(毎日×5日間)と比較された。5日間(1日2回)のオセルタミビルが、インフルエンザの処置のために病院において通常用いられるが、1日1回投与5日間も効果的であることが示された。3つの研究すべてにおいて、10または20mg/kgの用量でのペラニビルの単一筋肉内注射の効力は、生存、平均生存日数、および体重減少の点で、同じ用量のオセルタミビルまたはペラニビルの経口処置(毎日×5日間)と同等であった。2mg/kgの用量で、単一筋肉内注射として、ペラニビルは、生存の点で同等な効力を示した。それにもかかわらず、最大体重減少は、単一筋肉内ペラニビル処置された群におけるほうが、経口(毎日×5日間)オセルタミビル処置された群におけるよりも大きかった。処置群についての最大体重減少は、8〜10日目ごろに観察された。ペラニビルの最低用量(1mg/kg)が生存の点で効果的ではなかった一方で、平均生存日数において大きな増大があったことは留意されるべきである。ペラニビルは、処置が感染後48時間になってようやく開始された場合に70%致死率を引き起こしたウイルスチャレンジを有するマウスにおいて非常に効果的であった。
ペラニビルかオセルタミビルの単一筋肉内注射も、H1N1マウスインフルエンザモデルにおいて比較された。生存データは、ペラニビルの単一筋肉内注射が有効であり、完全な致死防御をもたらすことを示した。その反面、オセルタミビルの単一筋肉内注射は、有意な致死防御はもたらさなかった。体重減少データは、生存データと一致しており、オセルタミビル群とは異なり、ペラニビルの単一筋肉内注射が感染マウスにおける体重減少の防止に効果的であることを示している。これらの研究は、ペラニビルが、単一筋肉内注射として与えられた場合に効果的であるのに対し、オセルタミビルは、マウスインフルエンザモデルにおける同じ投与経路によって効果的ではないことを示している。マウスにおけるオセルタミビルカルボキシレートの単一筋肉内注射は、オセルタミビルの単一筋肉内注射と同様な効果を示した。
ペラニビルおよびオセルタミビルカルボキシレートのIC50は、サブナノモルであり、それぞれH1N1に対しては0.11および0.69nM(Bantia et al.,Antimicrob.Agents Chemother.45,1162−1167(2001))、H3N2に対しては0.59および0.55nMである。ノイラニミダーゼ酵素に対する同様な効力にもかかわらず、オセルタミビル(カルボキシレート)の単一筋肉内注射は効果的ではない。しかしながら、単一筋肉内注射としてのペラニビルは、単一筋肉内注射として与えられたオセルタミビル(カルボキシレート)を上回る。ペラニビルの遅いオフレートがN9ノイラニミダーゼによって実証されたが、ペラニビルがN1およびN2ノイラニミダーゼ双方と堅く結合することが予想されるであろう。なぜならば、活性部位におけるアミノ酸残基が、異なるノイラニミダーゼサブタイプ間で高度に保存されているからである。
要約すると、ペラニビルは、ノイラニミダーゼ活性の強力な阻害剤である。予防的および事後の単一筋肉内投与は、マウスインフルエンザモデルにおいて致死率および体重減少の防止に効果的であった。in vivoおよびin vitroデータを考慮して、ペラニビルは、単一筋肉内注射として効果的であり、ヒトインフルエンザウイルス感染の処置において用いられ得る。
従って、1つの実施形態において、本発明は、有効量の式I、II、III、またはIVの化合物、あるいはそれらの薬学的に許容される塩を筋肉内投与によりヒトに投与するステップを含む、ヒトにおけるウイルス感染を処置するための方法を提供する。一般に、有効量は、単一筋肉内投与において投与される。本発明の方法は、それらの方法が有効薬剤の低い用量を伴うので、高い患者コンプライアンスに備える。
本発明の1つの実施形態において、式I、II、III、またはIVの化合物の有効阻害量は、約500mgまで(例えば、約10mg〜約500mg)である。
本発明の1つの実施形態においては、式I、II、III、またはIVの化合物の有効阻害量は、約150mgまでである。
本発明の1つの実施形態においては、式I、II、III、またはIVの化合物の有効阻害量は、約150mgである。
本発明の方法によれば、式I、II、III、またはIVの化合物は、筋肉注射でヒトに投与される。本発明の1つの実施形態において、式I、II、III、またはIVの化合物は、ヒトに筋肉注射で1回投与される。本発明の別の実施形態において、経口投与されるノイラニミダーゼ阻害剤は、オセルタミビルカルボキシレートである。本発明の1つの実施態様において、経口投与されるノイラニミダーゼ阻害剤は、式I、II、III、またはIVの化合物、あるいはそれらの薬学的に許容される塩である。本発明の1つの実施形態において、経口投与されるノイラニミダーゼ阻害剤は、以下の式Ia、IIa、IIIa、またはIVaの化合物:
本発明の方法によれば、式I、II、III、またはIVの化合物、あるいはそれらの薬学的に許容される塩は、抗ウイルス薬剤(例えば、インフルエンザに対して活性のある薬剤)または抗生物質のような1つ以上の付加的な治療薬剤と併用することもできる。
本発明の筋肉内処方物は、抗ウイルス薬剤(例えば、インフルエンザに対して活性のある薬剤)および抗生物質のような1つ以上の付加的な治療薬剤も含み得る。
本発明において用いられる化合物は、当該技術分野において知られており、利用可能な方法(例えば、米国特許第6,562,861号参照)を用いて当業者により合成され得る。
ラジカル、置換基、および範囲について本明細書中で列記される特定の値は、例示のみのためであり、それらの値は、他の定義された値、またはラジカルおよび置換基について定義された範囲内の他の値を除外するものではない。
式I、II、III、またはIVの特定の化合物は、式Ia、IIa、IIIa、またはIVaの化合物:
式I、II、III、またはIVの特定の化合物は、(1S,2S,3R,4R)−3−(1−アセトアミド−2−エチルブチル)−4−グアニジノ−2−ヒドロキシシクロペンタンカルボン酸、(1S,2S,3R,4R)−3−(1−アセトアミド−2−プロピルブチル)−4−グアニジノ−2−ヒドロキシシクロペンタンカルボン酸、(1R,3R,4R)−3−(1−アセトアミド−2−プロピルペンチル)−4−グアニジノシシクロペンタンカルボン酸、または(1R,3R,4R)−3−(1−アセトアミド−2−エチルブチル)−4−グアニジノシシクロペンタンカルボン酸、あるいはそれらの薬学的に許容される塩である。
特定の式Iの化合物は、式Iaの化合物、またはそれらの薬学的に許容される塩である。
1つ以上のキラル中心を有する化合物が存在し、光学活性のラセミ形に単離され得ることが当業者により理解されるであろう。いくつかの化合物は、多形を呈し得る。本明細書中で記載される有用な特性を有する、式I、II、III、および/またはIVの化合物の任意のラセミ形、光学活性形、多形、または立体異性形、あるいはそれらの混合物の使用を本発明が含むことが理解されるべきであり、光学活性形をどのように調製する(例えば、再結晶法によるラセミ形の分割により、光学活性な開始物質からの合成により、キラル合成により、またはキラル固定相を用いたクロマトグラフ分離により)か、および本明細書中で記載される標準試験を用いて、または同様に当該技術分野においてよく知られている他の同様な試験を用いて抗ウイルス(例えば、抗インフルエンザ)活性をどのように決定するかは、当該技術分野においてよく知られている。
化合物が安定な非毒性の酸性塩または塩基性塩を形成するために十分に塩基性または酸性である場合、塩としての化合物の投与が適切であり得る。薬学的に許容される塩の例は、生理学的に許容される陰イオンを形成する酸で形成される有機酸付加塩、例えば、トシル酸塩、メタンスルホン酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、マロン酸塩、酒石酸塩、コハク酸塩、安息香酸塩、スコルビン酸塩、α−ケトグルタル酸塩、およびα−グリセロリン酸塩である。適切な無機塩も形成することができ、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、炭酸水素塩、および炭酸塩が含まれる。
薬学的に許容される塩は、当該技術分野においてよく知られている標準手順を用いて、例えば、アミンのような十分に塩基性の化合物を、生理学的に許容される陰イオンをもたらす適切な酸と反応させることにより得ることができる。カルボン酸のアルカリ金属(例えば、ナトリウム、カリウムまたはリチウム)塩あるいはアルカリ土類金属(例えば、カルシウム)塩も作られ得る。
式I、II、III、およびIVの化合物は、薬学的組成物として処方化され、ヒト患者のような、哺乳動物ホストに筋肉内経路によって投与され得る。活性化合物またはその塩の溶液は、非中毒性界面活性剤と任意に混合された水の中で調製され得る。分散液も、グリセリン、液体ポリエチレングリコール、トリアセチン、およびそれらの混合物ならびに油の中で調製され得る。通常の保存および使用条件のもとで、これらの調製物は、微生物の成長を防止するために防腐剤を含む。本発明のいくつかの実施形態において、式I、II、III、および/またはIVの化合物は、緩衝剤、例えばクエン酸塩、例えばクエン酸ナトリウムと共に処方化される。
注射または注入に適した薬学的剤形は、リポソーム中に任意にカプセル化された無菌の注射可能または注入可能な溶液または分散液の即時調製用に適合されている活性成分を含む無菌の水溶液または分散液あるいは無菌の粉体を含み得る。すべての場合に、最終剤形は、無菌、液状であり、製造および保存の条件の下で安定であるべきである。液状のキャリアまたは賦形剤は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセリン、プロピレングリコール、液状ポリエチレングリコール等)、植物油、非毒性グリセリルエステル、およびそれらの適切な混合物を含む溶媒または液体分散媒質であり得る。適切な流動性は、例えば、リポソームの形成により、分散液の場合には必要とされる粒径を維持することによりまたは界面活性剤の使用により、維持され得る。微生物の活動の防止は、種々の抗菌剤および抗カビ剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサール等によりもたらされ得る。多くの場合、等張剤、例えば、糖類、緩衝剤(例えば、クエン酸ナトリウム)または塩化ナトリウムを含めることがより望ましいであろう。注射可能な組成物の長期間の吸収は、吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを組成物中で使用することによりもたらされ得る。
無菌の注射可能溶液は、活性化合物を適切な溶媒中に他の任意の成分、例えば、上記で列挙された成分を混合し、続いて任意にフィルタ滅菌することにより調製され得る。無菌の注射可能溶液の調製のための無菌粉体の場合、好ましい調製方法は、真空乾燥法および凍結乾燥法であり、これらの方法により、活性成分の粉体に加えて、以前に滅菌濾過された溶液の中に存在する任意の付加的な所望の成分が得られる。
本明細書中で用いられるように、用語「処置する(treat)」、「処置すること(teating)」および「処置(treatment)」は、ある疾患の状態/状況の臨床症状の開始の前に、どのような症状の進行も防止するように、化合物を投与すること、ならびに、ある疾患状態/状況の1つ以上の臨床症状の開始後に、その疾患状態/状況のいずれかの症状、外観または特徴を低減または除去するように、化合物を投与することを含む。そのような処置は、有用であるために完全である必要はない。以下で例示されるように、活性化合物は、ウイルスへの暴露の前に投与され得る。薬剤は、ウイルスへの暴露以後に(例えば、1、2、3、4、または5日以内)投与され得る。
本明細書中で用いられるように、用語「単位剤形(unit dosage form)」は、特定量(例えば、約10mg〜約500mg、例えば、約150mg)の薬物を含有しており、その全体が単一用量として投与されることを意図されている筋肉内処方物に関する。これは、ある用量がそこから計量されなければならない不定量の薬剤、例えば、1瓶の薬剤の供給とは区別される。
本発明を以下の非限定的な例により例示する。
実施例1. ペラニビルを用いたインフルエンザの筋肉内処置
マウスインフルエンザモデルにおけるペラニビルの単一筋肉内注射の効力を評価した。要約すれば、ペラニビルは、マウスインフルエンザウイルス感染モデルにおいて筋肉内投与された場合に効果的であることが判明した。ペラニビルは、H1N9ウイルスからのノイラニミダーゼ酵素N9を、in vitroで1.3±0.4nMの50%阻害濃度(IC50)で強力に阻害した。オンサイト解離研究により、ペラニビルがN9ノイラニミダーゼに堅く結合したままである(t1/2>24h)のに対し、ザナミビルおよびオセルタミビルカルボキシレートは、酵素から迅速に解離する(t1/2=1.25h)ことが示された。ペラニビルの単一筋肉内注射(10mg/kg)が、インフルエンザA/H1N1に感染させたマウスにおいて体重減少および死亡率を有意に減少させたのに対し、オセルタミビルは、同じ処置方式によって効力を全く示さなかった。付加的な効力研究により、ペラニビルの単一注射(2〜20mg/kg)が、H3N2およびH1N1インフルエンザモデルにおける致死率の阻止において、経口投与されたオセルタミビル(2〜20mg/kg)の経口毎日×5日間コースに匹敵することが示された。従って、ペラニビルの単一筋肉内注射は、インフルエンザ感染を処置するために用いることができ、インフルエンザの流行時にオセルタミビルの代替選択肢を提供する。
マウスインフルエンザモデルにおけるペラニビルの単一筋肉内注射の効力を評価した。要約すれば、ペラニビルは、マウスインフルエンザウイルス感染モデルにおいて筋肉内投与された場合に効果的であることが判明した。ペラニビルは、H1N9ウイルスからのノイラニミダーゼ酵素N9を、in vitroで1.3±0.4nMの50%阻害濃度(IC50)で強力に阻害した。オンサイト解離研究により、ペラニビルがN9ノイラニミダーゼに堅く結合したままである(t1/2>24h)のに対し、ザナミビルおよびオセルタミビルカルボキシレートは、酵素から迅速に解離する(t1/2=1.25h)ことが示された。ペラニビルの単一筋肉内注射(10mg/kg)が、インフルエンザA/H1N1に感染させたマウスにおいて体重減少および死亡率を有意に減少させたのに対し、オセルタミビルは、同じ処置方式によって効力を全く示さなかった。付加的な効力研究により、ペラニビルの単一注射(2〜20mg/kg)が、H3N2およびH1N1インフルエンザモデルにおける致死率の阻止において、経口投与されたオセルタミビル(2〜20mg/kg)の経口毎日×5日間コースに匹敵することが示された。従って、ペラニビルの単一筋肉内注射は、インフルエンザ感染を処置するために用いることができ、インフルエンザの流行時にオセルタミビルの代替選択肢を提供する。
結果
H1N9ウイルスからのN9のノイラニミダーゼ活性を阻害するペラニビルの能力を試験し、ザナミビルおよびオセルタミビルカルボキシレートと比較した。N9酵素に対するペラニビル(1.3+/−0.4nM)、オセルタミビルカルボキシレート(2.1+/−0.4nM)、およびザナミビル(1.6+/−0.3nM)についてのIC50は、有意に異ならなかった。IC50値は、ペラニビルについては5.0+/−1.1nM、オセルタミビルカルボキシレートについては10.4+/−0.7nM、ザナミビル10.0については+/−1.2nMであった。
H1N9ウイルスからのN9のノイラニミダーゼ活性を阻害するペラニビルの能力を試験し、ザナミビルおよびオセルタミビルカルボキシレートと比較した。N9酵素に対するペラニビル(1.3+/−0.4nM)、オセルタミビルカルボキシレート(2.1+/−0.4nM)、およびザナミビル(1.6+/−0.3nM)についてのIC50は、有意に異ならなかった。IC50値は、ペラニビルについては5.0+/−1.1nM、オセルタミビルカルボキシレートについては10.4+/−0.7nM、ザナミビル10.0については+/−1.2nMであった。
マウスインフルエンザモデルにおいて、ウイルス感染は、体重減少および高い死亡率を招き、この体重減少は、肺ウイルス滴定および肺傷害スコアと相関関係にある。従って、経口投与および筋肉内投与されたペラニビル、オセルタミビルおよびザナミビルの効力は、体重減少、平均生存日数および生存率に基づいて評価され、未処置の感染済動物(対照)を基準として処置された感染済動物について、感染後16または21日間測定された。
予防モデルにおいて、H1N1ウイルスによるウイルスチャレンジの4時間前に与えられたペラニビルの単一筋肉内注射を、1および10mg/kg/日の用量で5日間のペラニビルの毎日1回の経口処置と比較した。双方の処置方式により10mg/kgで処置したマウスにおいて、完全な致死防御が観察された。しかしながら、1mg/kg用量では、経口処置群において60%のマウスが生存したのに対し、筋肉内処置群においては40%生存であった。ペラニビルの単一筋肉内注射(10mg/kg)で処置されたマウスは体重減少を全く示さなかったのに対し、同じ用量で5日間ペラニビルを経口投与されたマウスは、0.22g減少した。
ペラニビルはまた、H1N1ウイルスによるウイルス感染の4時間前に単一筋肉内注射として2、10、および20mg/kgでも投与された。完全な致死防御が全ての用量において観察された。しかしながら、5匹の食塩水処置された対照マウスのうちで生存したものは皆無であった。比較により、完全な致死防御が、2および10mg/kg(毎日×5日間)双方でオセルタミビルにより経口処置されたマウスにおいても観察された。ペラニビルが最高用量(20mg/kg)で筋肉内投与された場合に、薬物関連毒性の徴候は全く観察されなかった。
ペラニビルおよびオセルタミビルは、感染マウスの経時的な体重減少をたどった場合に、用量反応相関を示した。8日目に、2、10、および20mg/kgペラニビル処置群における最大平均体重減少は、それぞれ3.3、0.98、および0gであった。加えて、オセルタミビルは同様な効果をもたらし、2および10mg/kg群について8日目にそれぞれ1.34および0gの最大平均体重減少が生じた。5日目の体重減少は、同様な傾向を示す。一般に、より高い用量と比較した場合、より低い用量は、より大きい体重減少という結果になった。
10mg/kg用量でのペラニビルまたはオセルタミビルの単一筋肉内注射は、H1N1ウイルスによる接種の4時間に投与された場合に評価された。オセルタミビルは、30%の防御しかもたらさず、これは、90%のマウスが死んだ対照群と有意な差はない。ペラニビル処置群において、完全な致死防御が観察された。ペラニビル群は、どのような実質的な体重減少も示さなかった(初期重量の約1.7%)。他方、オセルタミビル群は、かなりの重量、約4g(初期重量の25%)を失い、10匹のマウスのうち3匹しか生存しなかった。同じモデルにおいて、ペラニビルまたはオセルタミビルのいずれか一方の10mg/kg用量の単一経口処置の比較が評価された。ペラニビルは、経口でより良好な防御をもたらし、50%の生存率であったのに対し、オセルタミビル群においては10%のマウスしか生存しなかった。
異なるウイルスを用いて同様の保護効果が観察されるかどうかを決定するため、H3N2ウイルスに感染させたマウスにおいてペラニビルの単一筋肉内注射の効力をオセルタミビルの経口処置(毎日×5日間)と比較した。この研究において、薬剤は、ウイルス接種の1時間前に投与された。20mg/kg用量でのペラニビルの単一筋肉内処置は、ほぼ完全な致死防御(9/10が生存)をもたらした。オセルタミビルも、同様の防御効果を示した(9/10が生存)。8日目までにペラニビル群における25%の体重損失(4.5g)を比較してオセルタミビル処置マウスが体重の28%(約5.1g)を失ったという点で、平均体重損失は、両方の処置群において同一であった。遅延処置モデルにおいて、感染24時間後または48時間後の10mg/kgのペラニビルの単一筋肉内投与は、完全な致死防御をもたらしたのに対し、食塩水群においては、70%致死率が観察された。両方とも経口的(毎日×5日間)および単一筋肉内注射により投与された24時間および48時間ペラニビル処置群において有意な体重減少が皆無であったのに対し、食塩水群は、2.1g減少した。
材料および方法
この研究において用いられたインフルエンザAウイルスは、American Type Culture Collection,Manassas,VA,USA(A/NWS/33;H1N1)およびRobert Sidwell博士から入手し、マウス適合させた。A/H1N9(NWS/G70)鳥ウイルスからの精製N9結晶は、Graeme Laver博士,Australian National University,Canberra,Australiaから入手した。
この研究において用いられたインフルエンザAウイルスは、American Type Culture Collection,Manassas,VA,USA(A/NWS/33;H1N1)およびRobert Sidwell博士から入手し、マウス適合させた。A/H1N9(NWS/G70)鳥ウイルスからの精製N9結晶は、Graeme Laver博士,Australian National University,Canberra,Australiaから入手した。
特定の病原体が存在しない雌BALB/cマウス(10〜19g)をCharles Rivers Laboratories(Raleigh,NC,USA)から入手した。それらのマウスを、感染の24時間前に隔離し、Harlan Teckladの齧歯類用飼料および水道水で維持した。
ペラニビル、オセルタミビル、オセルタミビルカルボキシレートおよびザナミビルは、BioCrysta Pharamaceuticals,Inc.(Birmingham,AL,USA)によって合成された。各化合物は、in vivo実験用に無菌0.9%塩化ナトリウム中で調製された。5%イソフルラン/95%酸素混合物を麻酔として投与した。
インフルエンザウイルスノイラニミダーゼ活性を測定するために標準蛍光測定アッセイを用いた(Potier et al.,Anal.Biochem.,94,287−296(1979))。基質(2’−(4−メチルウンベリフェリル)−α−D−アセチルノイラミン酸,MuNANA)をノイラニミダーゼによって切断し、定量化できる蛍光生成物を得た。アッセイ混合物は、種々の濃度の阻害剤およびノイラミニダーゼ酵素をpH6.5の32.5mM MES(2−(N−モルホリノ)−エタンスルホン酸)緩衝剤、4mM塩化カルシウム中に含有しており、10〜30分間インキュベートした。反応は、基質の添加により開始された。30〜120分間のインキュベーション後、蛍光が記録され(励起:360nmおよび放出:450nm)、基質ブランクを試料読取りから減じた。IC50は、ノイラニミダーゼ活性の阻害%を阻害剤濃度に対してプロットすることにより計算した。結果は、3つの実験の平均として報告される。
マウスをイソフルランで麻酔し、点鼻により100μLのウイルスに暴露した。予防モデルにおいては、薬剤をウイルス感染の1時間または4時間前に投与し、処置モデルにおいては、薬剤をウイルス感染後の指示された時点で与えた。各感染させられた、薬剤および食塩水処置された群は、5〜10匹のマウスを含んでいた。すべてのマウスは、体重変化およびあらゆる死について毎日観察された。抗ウイルス活性の評価のためのパラメータとしては、体重減少、死亡率の減少および/または16日間もしくは21日間を通して決定される平均生存日数の増加が含まれる。
マウスは、約70〜90%致死量のA/NWS/33(H1N1)またはA/ビクトリア/3/75(H3N2)インフルエンザウイルスで感染させた。ペラニビルまたはオセルタミビル(注射グレード食塩水中で調製される)による経口処置は、ウイルス暴露の1時間または4時間前に開始し(予防モデル)、指示されない限り毎日1回5日間継続した。単一筋肉内処置は、ウイルス暴露の1時間または4時間前、または指示された時(処置モデル)に投与した。正常な食塩水処置された対照マウスは、同じ処置スケジュールに含めた。研究されたパラメータは、死亡率の減少および/または平均生存日数の増加であった。
データは、Sigma Plot(Windows(登録商標) Version 4.01,SPSS,Chicago.IL.USA)およびSigma Stat(Windows(登録商標) Version 2.0,Jandel Corporation,San Raphael,CA.USA)で解析した。平均生存日数の差を評価するためにt検定を用いた。体重減少における差を評価するために、多重比較のためのHolm−Sidak検定を用いて一元配置分散分析(ANOVA)を実行した。Kplan−Meier生存分析(ログランクまたはGehan−Broslow検定)を生存数の差に適用した。
方法、結果、および議論を含むこれらの知見は、Bantia et al.,Antivirus Research,69,39−45(2006)において提供される。
本明細書中で引用された全ての刊行物、特許および特許出願は、参照により本明細書中に組み込まれる。上記の詳細な説明の中で本発明はその特定の実施形態に関して説明されており、多くの詳細が例示の目的で提示されている一方で、本発明は付加的な実施形態の余地があること、および本明細書中で説明された詳細のいくつかが、本発明の基本原理から逸脱することなく大幅に変更され得ることが当業者には明らかであろう。
本発明を説明する文脈においての用語「1つの(a)」、「1つの(an)」、「その(the)」および同様の指示物は、本明細書中で特に指示されない限りまたは文脈により明確に否定されない限り、単数および複数双方をカバーすると解釈されるべきである。用語「含む(comprising」、「有する(having)」、「含む(including)」、および「含有する(containing)」は、特に指摘されない限り、制限のない用語として解釈されるべきである(すなわち、「〜を含むが、それに限定されない」を意味する)。本明細書中での値の範囲の列挙は、本明細書中で特に指示されない限り、その範囲に入る各個別の値を個々に参照する速記法としての役割を果たすことを単に意図しているにすぎず、各個別の値は、それが本明細書中で個々に列挙されるかのように明細書中に組み込まれる。本明細書中で説明されたすべての方法は、本明細書中で特に指示されない限りまたは文脈により明確に否定されない限り、どのような適切な順序においても実行され得る。本明細書中で提示された全ての実施例、または代表的な言い回し(例えば、「のような(such as)」)の使用は、本発明をよりうまく例示することを単に意図しているにすぎず、特に特許請求されない限り、本発明の範囲を限定するものではない。
Claims (61)
- 前記ウイルス感染が、インフルエンザ感染である、請求項1または2に記載の方法。
- 前記ウイルス感染が、インフルエンザA型またはB型感染である、請求項3に記載の方法。
- 前記インフルエンザが、H3N2、H1N1、H5N1、鳥、または季節性インフルエンザである、請求項3に記載の方法。
- 前記有効な抗ウイルス量が、約500mgまでである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
- 前記有効な抗ウイルス量が、約150mgまでである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
- 前記有効な抗ウイルス量が、約150mgである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
- 前記有効な用量全体が、1回の筋肉内投与で投与される、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
- 式Iaの化合物またはその薬学的に許容される塩が投与される、請求項2〜9のいずれか1項に記載の方法。
- 前記有効な阻害量が、約500mgまでである、請求項11または12に記載の方法。
- 前記有効な阻害量が、約150mgまでである、請求項11または12に記載の方法。
- 前記有効な阻害量が、約150mgである、請求項11または12に記載の方法。
- 前記有効な阻害量全体が、1回の筋肉内投与で投与される、請求項11〜15のいずれか1項に記載の方法。
- 式Iaの化合物、またはその薬学的に許容される塩が投与される、請求項11〜16のいずれか1項に記載の方法。
- ノイラニミダーゼ阻害剤を前記ヒトに経口投与するステップをさらに含む、請求項1〜17のいずれか1項に記載の方法。
- 経口投与される前記ノイラニミダーゼ阻害剤が、オセルタミビルカルボキシレートである、請求項18に記載の方法。
- 経口投与される前記ノイラニミダーゼ阻害剤が、式Iaの化合物またはその薬学的に許容される塩である、請求項21に記載の方法。
- 経口投与される前記ノイラニミダーゼ阻害剤が、20日間まで投与される、請求項18〜22のいずれか1項に記載の方法。
- 経口投与される前記ノイラニミダーゼ阻害剤が、10日間まで投与される、請求項18〜22のいずれか1項に記載の方法。
- 経口投与される前記ノイラニミダーゼ阻害剤が、5日間まで投与される、請求項18〜22のいずれか1項に記載の方法。
- 約500mgまでの前記化合物または塩を含む、請求項26または27に記載の単位剤形。
- 約150mgの前記化合物または塩を含む、請求項26または27に記載の単位剤形。
- 前記化合物が、筋肉内投与に適した処方物で提供される、請求項30に記載のキット。
- 約500mgまでの前記化合物または塩を含む、請求項30または31に記載のキット。
- 約150mgまでの前記化合物または塩を含む、請求項30または31に記載のキット。
- 約150mgの前記化合物または塩を含む、請求項30または31に記載のキット。
- 包装材料と、請求項26〜34のいずれか1項に記載の単位剤形と、前記化合物を筋肉内経路によってヒトに投与するため指示書と、を含む、キット。
- 前記インフルエンザウイルスが、鳥インフルエンザウイルスである、請求項36または37に記載の使用。
- 前記鳥インフルエンザウイルスが、H5N1、またはその突然変異株である、請求項38に記載の使用。
- 前記感染の症状を呈する群の各メンバーが、薬剤のただ1回の筋肉内投与量を受ける、請求項36〜39のいずれか1項に記載の使用。
- 哺乳動物の群における平均余命を増大させるためまたは死亡率を低減させるための請求項36〜40のいずれか1項に記載の使用であって、前記感染の臨床的症状を呈する群のメンバーが、ノイラミニダーゼ阻害剤で経口処置される、使用。
- 前記ノイラニミダーゼ阻害剤が、オセルタミビルカルボキシレートである、請求項41に記載の使用。
- 前記ノイラニミダーゼ阻害剤が、式Iaの化合物、またはその薬学的に許容される塩である、請求項41に記載の使用。
- 前記ウイルス源が、感染した鳥である、請求項36〜45のいずれか1項に記載の使用。
- ウイルス源が、感染の症状を呈する哺乳動物である、請求項36〜45のいずれか1項に記載の使用。
- 死亡率を低減するためである、請求項36〜47のいずれか1項に記載の使用。
- 前記インフルエンザウイルスが、鳥インフルエンザウイルスである、請求項49または50に記載の使用。
- 前記鳥インフルエンザウイルスが、H5N1、またはその突然変異株である、請求項51に記載の使用。
- 前記群の各メンバーが、薬剤のただ1回の筋肉内投与量を受ける、請求項49〜52のいずれか1項に記載の使用。
- 哺乳動物の群における平均余命を増大させるためまたは死亡率を低減させるための、請求項49〜53のいずれか1項に記載の使用であって、該群のメンバーが、ノイラミニダーゼ阻害剤で経口処置される、使用。
- 前記ノイラニミダーゼ阻害剤が、オセルタミビルカルボキシレートである、請求項54に記載の使用。
- 前記ノイラニミダーゼ阻害剤が、式Iaの化合物、またはその薬学的に許容される塩である、請求項54に記載の使用。
- 前記ウイルス源が、感染した鳥である、請求項49〜58のいずれか1項に記載の使用。
- 前記ウイルス源が、感染の症状を呈する哺乳動物である、請求項49〜58のいずれか1項に記載の使用。
- 死亡率を低減するためである、請求項49〜60のいずれか1項に記載の使用。
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