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JP2009226470A - アルミニウム鋳塊またはアルミニウム合金鋳塊の製造方法 - Google Patents

アルミニウム鋳塊またはアルミニウム合金鋳塊の製造方法 Download PDF

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JP2009226470A JP2008077778A JP2008077778A JP2009226470A JP 2009226470 A JP2009226470 A JP 2009226470A JP 2008077778 A JP2008077778 A JP 2008077778A JP 2008077778 A JP2008077778 A JP 2008077778A JP 2009226470 A JP2009226470 A JP 2009226470A
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Kenji Tokuda
健二 徳田
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Abstract

【課題】鋳造初期における間接冷却から直接冷却への移行の際の冷却能力差を緩和する能力が高く、実施が容易で汎用性のあるアルミニウム鋳塊またはアルミニウム合金鋳塊の製造方法を提供する。
【解決手段】アルミニウム鋳塊またはアルミニウム合金鋳塊の製造方法は、鋳型1の下端開口に底台2を配置する底台配置工程と、鋳型1内にアルミニウムまたはアルミニウム合金の溶湯10を注入する溶湯注入工程と、冷却水を用いて鋳型1内で凝固した鋳塊14を冷却しながら底台2を下降させて連続的に鋳塊14を引き出す鋳塊引き出し工程とを有する。鋳塊14の鋳造初期に、冷却水として温度が40〜70℃の冷却水を用いる。
【選択図】図3

Description

本発明は、半連続鋳造法によるアルミニウム鋳塊またはアルミニウム合金鋳塊の製造方法に関する。
アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる鋳塊を、半連続鋳造法により製造する際には、鋳型として、下面開口を備えた枠状の形状を有するものが用いられ、その下面開口に底台が下降自在に配置される。鋳型は中空構造を有しており、その内部に供給された冷却水によって水冷されている。鋳型の内壁下端には、底台及び鋳型内で形成される鋳塊に向けて、鋳型を冷却している冷却水を噴出する噴射口が設けられている。
鋳型の下面開口を底台によって塞いだ状態で、鋳型と底台とで囲まれた容積域へのアルミニウムまたはアルミニウム合金の溶湯の供給が開始されると、この溶湯は、鋳型と底台に接触して冷却されて凝固し、凝固殻が形成される。このとき、鋳型に設けられた噴射口から噴射される冷却水によって底台は冷却されており、これによって凝固殻が成長する。凝固殻が十分な厚さとなった後に底台を所定の速度で下降させると、鋳塊が下方に引き出されながら、鋳型内の溶湯が冷却されて凝固することにより、鋳塊が連続的に鋳造される。
このような半連続鋳造法においては、底台が鋳型から完全に抜けきった時点で、鋳塊は、鋳型及び底台からの間接冷却に替わって、鋳型から噴射される冷却水による直接冷却により、急激に冷却される。このときの冷却能力差があまりにも大き過ぎるために、鋳塊に急激な熱応力が発生する。この鋳造初期における熱応力の発生は、鋳塊底部(底台側)に変形や割れ(亀裂)を生じさせ、また、鋳型からの溶湯漏れの原因となる。
そこで、このような鋳造初期の急激な冷却を緩和する方法として、冷却水に気体を混入することによって冷却速度を下げる方法や、冷却水を間欠的に供給する方法が知られており、また、鋳型の内壁面にセパレータとしての伝熱抑制材(断熱材)を配置する方法が開示されている(例えば、特許文献1〜3参照)。より具体的に、特許文献3には、鋳型の内壁に伝熱抑制材を設け、この伝熱抑制材を鋳型の下面から引き出される鋳塊と共に引き出し、伝熱抑制材を介して冷却水を鋳塊に供給することにより鋳塊を冷却する方法が開示されている。この伝熱抑制材を介した冷却過程が、鋳塊の間接冷却から直接冷却へと移行する際の冷却能力差を緩和させる。
特開昭60−227947号公報(第2頁、左上欄) 特開平11−77261号公報(段落[0014]等) 特開2002−263809号公報(段落[0021]〜[0025]等)
しかしながら、冷却水に気体を混入する方法や冷却水を間欠的に供給する方法は、設備投資が必要であり、冷却水の清浄度の管理も必要となる。また、鋳型内壁面に伝熱抑制材を配置する方法は、簡便に実施することができる方法ではあるが、その効果は限定的である。そのため、鋳塊の間接冷却から直接冷却へと移行する際の冷却能力差をさらに緩和させる汎用性のある製造方法が求められている。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、鋳造初期における間接冷却から直接冷却への移行の際の冷却能力差を緩和する能力が高く、実施が容易で汎用性のあるアルミニウム鋳塊またはアルミニウム合金鋳塊の製造方法を提供することを目的とする。
本発明に係るアルミニウム鋳塊またはアルミニウム合金鋳塊の製造方法は、鋳型の下端開口に底台を配置する底台配置工程と、前記鋳型内にアルミニウムまたはアルミニウム合金の溶湯を注入する溶湯注入工程と、冷却水を用いて前記鋳型内で凝固した鋳塊を冷却しながら前記底台を下降させて連続的に当該鋳塊を引き出す鋳塊引き出し工程と、を有するアルミニウム鋳塊またはアルミニウム合金鋳塊の製造方法であって、前記鋳塊の鋳造初期に、前記冷却水として温度が40〜70℃の冷却水を用いる。
このように鋳造初期の冷却水の温度を制御することによって、鋳造初期において間接冷却から直接冷却への冷却形態の移行の際の冷却能力差が緩和され、鋳塊に発生する熱応力が小さく抑えられる。これにより、鋳塊底部の変形や割れの発生を抑制することができ、また、湯漏れの発生を防止することができる。このような製造方法は、既存の製造設備に容易に適用することができる。
なお、鋳造初期の急冷を緩和し、鋳塊底部の急激な変形や割れを抑制する方法としては、原理的には、鋳造速度を下げる方法や冷却水量を減らす方法も考えられる。しかしながら、鋳造速度を下げ過ぎると、鋳型内壁面での冷却によって形成される凝固層が厚くなって表面欠陥が発生し易くなり、極端な場合は鋳型内で溶湯全体が凝固して鋳造不能になるという問題がある。また、冷却水量を減らしすぎると、鋳型周方向の冷却水量分布が不均一となりやすく、また、冷却水の吐出流速が遅くなり、冷却水の鋳塊への衝突位置が下方となり、湯漏れなどが発生し易くなるという問題がある。本発明には、このような問題を回避することができるという利点がある。
本発明に係る製造方法は、また、前記溶湯注入工程の前に、前記鋳型の内壁面に伝熱抑制材を配置する伝熱抑制材配置工程をさらに有することを特徴とする。
このような製造方法によれば、間接冷却から直接冷却への冷却形態の移行の際の冷却能力差が伝熱抑制材によってさらに緩和されるため、鋳塊底部に発生する熱応力をさらに小さくすることができる。
本発明に係る製造方法は、さらに、前記伝熱抑制材は通水性を有しており、前記鋳塊は、前記冷却水が前記伝熱抑制材を通して前記鋳塊に達することにより当該鋳塊が冷却されることを特徴とする。
このような製造方法によれば、間接冷却から直接冷却への冷却形態の移行の際の冷却能力差をさらに緩和することができるため、鋳塊底部に発生する熱応力をさらに小さくすることができる。
本発明に係る製造方法は、さらに、前記鋳塊の鋳造初期から定常鋳造状態にかけて前記冷却水の温度が徐々に低下するように、前記冷却水の温度を制御することを特徴とする。
このような製造方法によれば、鋳造初期から定常鋳造状態への移行途中において、鋳塊に発生する熱応力を徐々に(傾斜的に)小さくすることができ、しかも、鋳塊を十分に冷却して、湯漏れや鋳塊の表面不良等の発生を防止することができる。
本発明に係る製造方法は、前記定常鋳造状態において、前記冷却水として20〜35℃の冷却水を用いることを特徴とする。
このような製造方法によれば、定常鋳造状態において鋳塊を十分に冷却することができるために、湯漏れや鋳塊の表面不良等の発生を防止することができる。
本発明によれば、鋳造初期における冷却水の温度を制御することによって、鋳塊底部の変形や割れを抑制することができ、また、湯漏れの発生を防止することができる。また、伝熱抑制材を併用することにより、鋳塊底部の変形等をより効果的に抑制し、湯漏れの発生を防止することができ、伝熱抑制材として通水性のあるものを用いることにより、この効果をさらに高めることができる。
鋳造初期から定常鋳造状態にかけて冷却水温度を徐々に下げることにより、鋳造初期から定常鋳造状態にかけて鋳塊に発生する熱応力を徐々に小さくしながら、鋳塊を十分に冷却して、湯漏れの発生を防止することができる。定常鋳造状態においては十分に低い温度の冷却水を用いて鋳塊を冷却することにより、湯漏れや鋳塊の表面不良の発生を防止することができる。本発明は既存の設備に容易に適用することができ、汎用性に優れている。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1(a)にアルミニウム鋳塊またはアルミニウム合金鋳塊(以下「鋳塊」という)の製造に用いられる鋳型の一例を表した斜視図を示し、図1(b)に鋳型の垂直断面(A−A断面)図を示す。
[鋳型]
鋳型1は、図1(a),(b)に示されるように、上面と下面がそれぞれ開口した,平面外形が長方形の中空状の枠体である。鋳型1の下面開口の下側に、この下面開口に嵌合する底台2が昇降自在に配置される。底台2が鋳型1の下面開口を閉塞することによって鋳型1の内周面と底台2の上面とによって形成される容積域に、鋳塊を製造するためのアルミニウムまたはアルミニウム合金の溶湯(以下「溶湯」という)10(図3参照)が、例えば、上面開口中央から供給される。
鋳型1の中空部3へは、冷却水供給機構5から20〜70℃の所定の温度に調節された冷却水が供給される。冷却水供給機構5における冷却水の温度調整方法は、特に限定されるものではない。冷却水供給機構5の構成例としては、40〜70℃の冷却水を貯留する水槽(高温水槽)と、20〜40℃の冷却水を貯留する水槽(低温水槽)とを備えており、鋳塊の製造工程の進行に合わせて、高温水槽と低温水槽のいずれかから選択的に冷却水が鋳型1に供給される構成のものが挙げられる。また、冷却水供給機構5の別の構成例としては、高温水槽(例えば、温度:40〜70℃)の冷却水を通常の冷却水(例えば、温度:25℃)に混入させて、所望の温度の冷却水を調製する構成が挙げられる。冷却水供給機構5のさらに別の構成例としては、通常の冷却水(例えば、温度:25℃)を鋳型1へ供給するための配管の途中に加熱装置(ヒータ)を設け、また、鋳型1に流入する冷却水の温度を測定するセンサを設けて、鋳型1に供給される冷却水の温度を調節するように、冷却水流量と加熱装置とをフィードバック制御する構成が挙げられる。
鋳型1の内周壁と下面壁とが交わる部分には、鋳型1の下面開口の内側下方に向けて中空部3に供給された冷却水を噴射する噴射口4が設けられている。なお、鋳型1の内側短辺長さをT、内側長辺長さをW、深さをHとして、図1(a)に付記しているが、これは、後述する実施例において用いた鋳型の実際の大きさを表すパラメータである。
[鋳塊の概略製造工程]
図2に鋳塊の製造工程を表したフローチャートを示し、図3に鋳塊の製造工程を模式的に表した図を示す。これら図2,3を参照しながら、鋳型1を用いた鋳塊の製造方法について説明する。
<底台配置工程(S1)>
最初に、鋳型1の下面開口を閉塞するように、底台2が配置される。また、鋳型1の中空部3には冷却水供給機構5から冷却水が供給され、噴射口4から噴射される冷却水が底台2を冷却し、鋳型1と底台2とがほぼ同じ温度に保持される。
図2に示されるように、この底台配置工程S1後に伝熱抑制材配置工程S1a(鋳型1の内壁面に伝熱抑制効果を有する伝熱抑制材を配置する工程)を行うことが好ましいが、ここでは、伝熱抑制材配置工程S1aを行わずに、底台配置工程(S1)後に溶湯注入工程(S2)へ移行するものとする。なお、伝熱抑制材配置工程S1aについては後に詳細に説明する。
<溶湯注入工程(S2)>
鋳造を開始するために、鋳型1と底台2とによって形成される容積域に溶湯10が供給される。すると、溶湯10は鋳型1の内壁と底台2の上面とに接した部分から凝固し、凝固殻13が形成される(図3(a))。凝固殻13を介して溶湯10が冷却されることにより、凝固殻13の厚さは厚くなる。
<鋳塊引き出し工程(S3)>
凝固殻13の厚さが十分に厚くなった後に、底台2を一定速度で下降させる。これにより凝固殻13がさらに成長して鋳塊14(凝固殻13は鋳塊14の一部である)が形成される。底台2が下降するに従って、鋳型1に設けられた噴射口4から噴射される冷却水の吹き付け位置は、底台2の外周面から鋳塊14の外周面へとシフトする(図3(b))。こうして鋳塊14の冷却は、底台2を介した間接冷却から鋳塊14の直接冷却へと移行し、その際に冷却能力差が発生する。
さらに底台2を下降させて鋳造を続けると、直接冷却の状態が継続されるために、鋳造条件は、定常状態(定常鋳造状態)へと移行する(図3(c))。なお、「定常鋳造状態」とは、鋳塊14に発生する熱応力が一定となる状態をいうが、鋳塊14のサイズ等によって定常鋳造状態に至るまでの時間や鋳造長さが異なるため、「定常鋳造状態」を直接冷却への移行時からの時間や鋳塊14の長さ等によって一義的に定義することは困難である。したがって、定常鋳造状態は鋳塊14の実際の製造において経験的に見いだされる。鋳塊14が所望する長さとなるまで底台2の下降と溶湯10の供給が続けられる。
<鋳塊の製造工程における冷却水の制御>
このような鋳塊14の製造方法において、鋳造初期には、温度が40〜70℃の冷却水を用いる。「鋳造初期」とは、鋳塊14のサイズ等によって異なるものであるため、時間や鋳造長さによって一義的に定義することは困難であるが、強いて定義するならば、鋳造開始から定常鋳造状態に至るまでの期間と定めることができる。定常鋳造状態は、前記の通り経験的に見いだされるものであるが、鋳塊14が現実的な大きさ(例えば、鋳型1の開口面積が650mm×2500mm以下)のものであれば、鋳塊14の鋳造長さが100〜800mmの範囲の所定の長さとなったときを定常鋳造状態と定義することができる。したがって、鋳造開始から鋳造長さが100〜800mmの範囲の所定の長さとなるまでの間を鋳造初期とし、その間に40〜70℃の冷却水を用いることによって、底台2を介した間接冷却から鋳塊14の直接冷却へと移行する際の冷却能力差を緩和することができる。
しかし、例えば、鋳造開始から鋳造長さが約100mm未満の所定長さとなるまでの間を鋳造初期として、その所定長さに達した後に冷却水の温度を40℃未満とすると、鋳塊14の変形が完了していない場合があり、40〜70℃の冷却水を用いることによる効果が不十分となる可能性が高い。
このように、鋳造初期において冷却水の温度を40〜70℃とすることにより、鋳造初期の急冷が緩和され、鋳造初期に形成される鋳塊14底部の急激な変形や割れを抑制することができる。また、十分に溶湯10を凝固させることができるために、溶湯10の湯漏れを防止することができる。冷却水の温度が40℃未満では、急冷緩和の効果が不十分であり、70℃を超えると冷却能力が小さくなり過ぎて、湯漏れ発生の危険性が高くなる。なお、「鋳造初期の急冷」には、溶湯10が鋳型1と底台2によって冷却されることにより凝固殻13が形成される冷却と、噴射口4から噴射される冷却水による鋳塊14の直接冷却とを含む。
なお、鋳塊14を冷却する能力は、冷却水の温度のみならず、鋳塊の14の大きさ、噴射口4から噴射される冷却水の流量、溶湯10の温度、底台2の下降速度(鋳造速度)等の影響を受ける。例えば、前記したように、鋳型1の開口面積が650mm×2500mm以下であり、溶湯10の温度が670〜750℃の場合において、鋳造初期に用いられる冷却水の温度を40〜70℃とする場合、冷却水流量が0.5〜5.0L/(min・cm)(「L」はリットル、[L/(min・cm)]は鋳塊断面の周長(=2W+2T)における単位長さあたりの冷却水量)、底台2の下降速度が30〜100mm/minとなるように、各パラメータを調整すればよい。溶湯10の供給流量は、底台2の下降速度に合わせて、適宜、設定される。
鋳造初期において40〜70℃の冷却水を用いることによって得られる効果をより顕著に得るためには、鋳造初期に、徐々に冷却水の温度を下げていくことにより、鋳塊14の冷却能力を上げていくことが好ましい。例えば、鋳造を開始してから鋳塊14の鋳造長さ(引き出し長さ)が700mmとなるまでの間に、冷却水の温度を60℃から30℃へ徐々に低下させる。これにより、鋳塊14底部の変形をさらに小さく抑えることができる。
鋳造初期が終了した時点、すなわち定常鋳造状態となった時点において、冷却水の温度が高い場合には、湯漏れや鋳塊14の表面不良が発生するおそれがある。そのため、鋳造初期における鋳塊14の変形が終了した時点、例えば、前記したように、一般的に鋳塊14の鋳造長さが100〜800mmの範囲の所定長さとなった時点で、速やかに冷却水の温度を40℃未満の温度とすることが好ましく、一般には20〜35℃へと低温化させる。これにより、湯漏れの発生を防止し、鋳塊14の表面不良の発生を防止することができる。
なお、鋳造初期において冷却水の温度を徐々に低下させる方法を用いた場合には、定常鋳造状態となった時点で、冷却水の温度を急激に低温下させる必要がないため、鋳塊14に発生する熱応力が小さく抑えられ、鋳塊14の変形等をさらに抑制することができる。
<伝熱抑制材配置工程(S1a)>
図2に示されるように、底台配置工程S1後に鋳型1の内壁面に伝熱抑制効果を有する伝熱抑制効果を有する伝熱抑制材を配置する伝熱抑制材配置工程S1aを行うことが好ましい。
図4に鋳型(図1に示した鋳型と同じ)に伝熱抑制材を配置した一実施形態を表した断面図を示す。また、図5に伝熱抑制材を用いた場合の鋳造初期における鋳塊の形態を模式的に示す。なお、図4は図1(b)と同様の形態で描かれており、図5は図3(b)と同様の形態で描かれている。鋳型1に伝熱抑制材6を配置することにより、鋳造初期に40〜70℃の冷却水を用いることによって得られる前記効果を、より安定的に、かつ、顕著に得ることができる。
伝熱抑制材6は、図4,5に示されるように、グリース等の潤滑油を用いて鋳型1の内周壁面に貼付される。伝熱抑制材6は、熱伝達を抑制する機能を有し、溶湯10に溶解してコンタミネーション成分とならないものであればよい。伝熱抑制材6としては、例えば、アルミニウム箔やガラスクロス繊維,セラミック繊維(例えば、アルミナ繊維,アルミナ・シリカ繊維,ロックウール,ジルコニア繊維,チタン酸カリウム繊維等)を用いることができる。
伝熱抑制材6を用いる場合であっても、鋳塊の製造方法は、図3を参照しながら前記した製造方法に準ずる。鋳型1の内周壁面に伝熱抑制材6が貼付されている場合には、図5に示されるように、伝熱抑制材6は、鋳型1の内周壁面から剥離して鋳塊14に固着し、鋳塊14と共に鋳型1から引き出される。そのため、鋳型1の噴射口4から噴射される冷却水は、鋳造開始時は底台2の外周面に吹き付けられるが、底台2が下降するにしたがって、伝熱抑制材6に吹き付けられるようになり、その後、鋳塊14の外周面に噴射されて、鋳塊14を直接冷却することとなる。
このように伝熱抑制材6を用いることにより、鋳塊14はその製造過程で、底台2を介した間接冷却を受けた後に伝熱抑制材6を介した間接冷却(但し、伝熱抑制材6が多孔質である場合には、間接冷却と直接冷却による複合的な冷却となる場合がある)を受け、その後に直接冷却を受けることとなる。前記した鋳造初期での冷却水の温度制御に、伝熱抑制材6を用いた段階的な冷却作用の強化を組み合わせることによって、鋳塊14において鋳造初期に形成された部分に発生する熱応力を極めて小さく抑えることができるため、変形や割れの発生を抑制する効果をさらに安定かつ顕著に得ることができる。
なお、伝熱抑制材6が、通気性(ここでは、水蒸気を通す性質)と通水性とを有する多孔質材である場合には、伝熱抑制材6に供給される冷却水は、伝熱抑制材6が有する熱によって水蒸気となり、発生した水蒸気層が伝熱抑制材6の通気孔である開口穴の内部を満たす。そして、鋳塊14は、この水蒸気層によって間接冷却されると共に、水蒸気層の一部を破壊して鋳塊14表面に達する冷却水により直接冷却されるという複合的な冷却を受ける。
次に、本発明を実施例により詳細に説明する。本発明は下記の実施例に限定されるものでないことはいうまでもない。
[鋳塊試料の製造]
図1(a)に示す内側短辺長さTが400mm、内側長辺長さWが1200mm、深さHが150mmの鋳型1を用いて、JIS3004合金よりなる鋳造長さが1000mmの鋳塊試料を、鋳造初期の鋳造条件を種々に変更して製造した。表1に、鋳造条件のうち、製造した鋳塊試料ごとに変更したパラメータを示す。共通の鋳造条件として、鋳造速度(底台の下降速度)を60mm/min、鋳造温度(溶湯温度)を約700℃、冷却水量を0.4m/min(=1.25[L/(min・cm)])、定常鋳造状態における冷却水の温度を25℃とした。
Figure 2009226470
例えば、番号1の鋳塊試料の製造では、表1に示される「冷却水−温度」の50℃にて「温度を変更した鋳造長さ」である400mmまで鋳造が行われ、400mmから1000mmまでの鋳造には25℃の冷却水が使用されている。番号2〜8,10,11の鋳塊試料はそれぞれ、表1に記された条件に従って、番号1の鋳塊と同様にして製造されている。番号9の鋳塊試料の製造では、冷却水の温度を鋳造開始時には60℃とし、「温度を変更した鋳造長さ」である400mmの時点で冷却水の温度が40℃となるように冷却水の温度は鋳造時間に対して一次関数的に下げられ、鋳造長さが400mmとなった時点で25℃の冷却水に切り替えられている。製造された鋳塊試料における「温度を変更した鋳造長さ」までの部分が、初期鋳造に係る部分となる。
番号6〜8,10の鋳塊試料の製造では、開口面積が約30%のガラス繊維布からなり、通気性と通水性とを有する伝熱抑制材6を鋳型1の内壁面に貼付して鋳造を行った(適宜、図4,5参照)。鋳型1の下端から20mmの高さに底台2の上面(ここでは、図1(b)に示す底台2の外周凸部ではなく、上面の殆どの面積を専有する平坦面を指す)が位置するように底台2が鋳型1に嵌入された状態において、底台2の上端部から高さ80mmの範囲に伝熱抑制材6を貼付した。
[鋳塊の評価]
図6に番号10に係る鋳塊試料の概略形状を示す。図6(a)は鋳塊試料の全体斜視図であり、図6(b)は鋳塊試料を図6(a)に示す矢印A方向からの正面図である。鋳塊試料における底部の反り量(バットカール)と、短辺部のくびれ量とを測定し、目視により亀裂の発生の有無を確認し、底部の反り量が20mm以下、かつ、短辺部のくびれ量が5mm以下であり、また亀裂の発生が認められないものを本発明に属する実施例とし、これらの条件のうち1つでも満たさないものは本発明に属さない比較例と判断した。
[試験結果]
表1に鋳塊試料の評価結果を併記する。番号1〜9の鋳塊では、底部の反り量が10〜18mmであり、短辺部のくびれ量が2〜4mmであり、また亀裂の発生も認められない実施例と判断された。これに対して、番号10の鋳塊では、底部の反り量が26mmと大きく、これに由来すると思われる亀裂の発生が確認された。また、短辺部のくびれ量も6mmと大きかった。番号11の鋳塊では、湯漏れの発生により、評価することができる鋳塊を得ることができなかった。
(a)はアルミニウム鋳塊またはアルミニウム合金鋳塊の製造に用いられる鋳型の一例を示す斜視図であり、(b)は鋳型の垂直断面図である。 鋳塊の製造工程を示すフローチャートである。 鋳塊の製造工程を模式的に示す図である。 鋳型に伝熱抑制材を配置した一実施形態を示す断面図である。 伝熱抑制材を用いた場合の鋳造初期における鋳塊の形態を模式的に示す図である。 (a)は鋳塊試料(比較例)の概略形状を示す全体斜視図であり、(b)は(a)に示す矢印A方向からの鋳塊試料の正面図である。
符号の説明
1 鋳型
2 底台
3 中空部
4 噴射口
5 冷却水供給機構
6 伝熱抑制材
10 溶湯
13 凝固殻
14 鋳塊

Claims (5)

  1. 鋳型の下端開口に底台を配置する底台配置工程と、
    前記鋳型内にアルミニウムまたはアルミニウム合金の溶湯を注入する溶湯注入工程と、
    冷却水を用いて前記鋳型内で凝固した鋳塊を冷却しながら前記底台を下降させて連続的に当該鋳塊を引き出す鋳塊引き出し工程と、を有するアルミニウム鋳塊またはアルミニウム合金鋳塊の製造方法であって、
    前記鋳塊の鋳造初期に、前記冷却水として温度が40〜70℃の冷却水を用いることを特徴とするアルミニウム鋳塊またはアルミニウム合金鋳塊の製造方法。
  2. 前記溶湯注入工程の前に、前記鋳型の内壁面に伝熱抑制材を配置する伝熱抑制材配置工程をさらに有し、
    前記伝熱抑制材は、前記鋳塊引き出し工程において前記鋳塊に密着して当該鋳塊と共に引き出されることを特徴とする請求項1に記載のアルミニウム鋳塊またはアルミニウム合金鋳塊の製造方法。
  3. 前記伝熱抑制材は通水性を有しており、
    前記鋳塊は、前記冷却水が前記伝熱抑制材を通して前記鋳塊に達することにより当該鋳塊が冷却されることを特徴とする請求項2に記載のアルミニウム鋳塊またはアルミニウム合金鋳塊の製造方法。
  4. 前記鋳塊の鋳造初期から定常鋳造状態にかけて前記冷却水の温度が徐々に低下するように、前記冷却水の温度を制御することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のアルミニウム鋳塊またはアルミニウム合金鋳塊の製造方法。
  5. 前記定常鋳造状態において、前記冷却水として20〜35℃の冷却水を用いることを特徴とする請求項4に記載のアルミニウム鋳塊またはアルミニウム合金鋳塊の製造方法。
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