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JP2009212284A - 窒化ガリウム基板 - Google Patents

窒化ガリウム基板 Download PDF

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Abstract

【課題】特性の優れたデバイスを再現性よく製造することのできるGaN基板を提供する。
【解決手段】本発明に係る窒化ガリウム基板は、加速電圧が13kV以上の電子が照射された際に得られるカソードルミネッセンスのスペクトルのうち、窒化ガリウムのバンドギャップに対応する波長における第1のピークの第1の強度が、第1のピークより長波長側に観測される第2のピークの第2の強度の2倍以上である。
【選択図】図1

Description

本発明は、窒化ガリウム基板に関する。特に、本発明は、特性の優れたデバイスを再現性よく製造することのできる窒化ガリウム基板に関する。
従来、窒化ガリウム基板上に所定の窒化物半導体を形成して特性の優れた電子デバイスを製造することを目的として、窒化ガリウム基板の表面から浅い部分のダメージを改善する試みがなされている。窒化ガリウム基板の表面のダメージを評価する方法としては、例えば、化合物半導体基板の表面のフォトルミネッセンス(Photoluminescence:PL)測定を実施するダメージ評価方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載のダメージ評価方法においては、フォトルミネッセンス測定によって得られた発光スペクトルにおいて、化合物半導体基板のバンドギャップに対応する波長におけるピークの半値幅を用いて化合物半導体基板の表面から数十nmの深さのダメージを評価している。
特開2006−339605号公報
しかし、特許文献1に記載のダメージ評価方法により良好な評価が示された窒化ガリウム(GaN)基板であっても、その上に成長したエピタキシャル層の特性がデバイスの作成に用いることができないほど劣化する場合がある。
したがって、本発明の目的は、特性の優れたデバイスを再現性よく製造することのできるGaN基板を提供する。
本発明は、上記目的を達成するため、加速電圧が13kV以上の電子が照射された際に得られるカソードルミネッセンスのスペクトルのうち、窒化ガリウムのバンドギャップに対応する波長における第1のピークの第1の強度が、第1のピークより長波長側に観測される第2のピークの第2の強度の2倍以上である窒化ガリウム基板が提供される。
また、本発明は、上記目的を達成するため、加速電圧が13kV以上の電子が照射された際に得られるカソードルミネッセンスのスペクトルのうち、窒化ガリウムのバンドギャップに対応する波長における第1のピークの第1の強度が、第1のピークより長波長側に観測される第2のピークの第2の強度の5倍以上である窒化ガリウム基板が提供される。
本発明の窒化ガリウム基板によれば、特性の優れたデバイスを再現性よく製造することのできるGaN基板を提供することができる。
[実施の形態]
窒化物系の高性能のデバイスを製造する場合、窒化ガリウム(GaN)基板上には、窒化物系半導体層及び/又は電極が形成される。デバイスの特性(例えば、電気的特性)は、GaN基板と窒化物系半導体層との界面、及び/又はGaN基板と電極との界面の影響を強く受ける。したがって、GaN基板の表面の特性、特に、GaN基板表面近傍におけるダメージの程度は重要である。GaN基板を製造する際には複数の製造プロセスを経るので、各プロセスにおいて生じたダメージがGaN基板に含まれる。
例えば、GaN基板の表面が粗い場合、すなわち、表面ラフネスが所定値以上の場合は、GaN基板上に成長した半導体層に欠陥等が引き継がれる。成長した半導体層に欠陥等が引き継がれると、引き継がれた欠陥等を原因としてデバイス特性が劣化するので、GaN基板表面には、研磨処理又はエッチング処理が施される。このとき、GaN基板の表面及び表面近傍には、スクラッチ及び/又は加工歪み等のダメージが生じる。このようなダメージが表面に存在するGaN基板の表面上に、窒化物半導体等のエピタキシャル膜を成長させてデバイスを製造すると、GaN基板とエピタキシャル膜との界面に存在するダメージに起因して、デバイス特性が劣化する。
ここで、本発明者は、GaN基板の表面から1μm程度の深さの領域のおけるダメージが、GaN基板上に形成する窒化物系化合物半導体層の特性、すなわち、デバイス特性に大きな影響を与える原因であるとの知見を得た。そして、GaN基板の表面から1μm程度の深さの領域におけるダメージが低減したGaN基板を用いると、再現性よく特性の優れたデバイスを製造することができるとの知見を得た。なお、上述したような本実施の形態に係るGaN基板であるか否かは、カソードルミネッセンス(Cathodoluminescence:CL)測定によって特定できる。
(GaN基板の構造)
本実施の形態に係るGaN基板は、加速電圧が13kV以上の電子が照射された際に得られるCLのスペクトルのうち、GaNのバンドギャップに対応する波長における第1のピークの第1の強度が、第1のピークより長波長側に観測される第2のピークの第2の強度の2倍以上、又は5倍以上を示すものである。
そして、本実施の形態に係るGaN基板は、発光ダイオード、レーザダイオード等の発光素子を含む電子デバイス製造のプロセス工程に用いられる。例えば、本実施の形態に係るGaN基板を下地基板として用い、下地基板としてのGaN基板上に所定の化合物半導体、例えば、所定の窒化物系化合物半導体層をエピタキシャル成長する。これにより、本実施の形態に係るGaN基板上に所定構造のデバイス構造層が形成される。窒化物系化合物半導体層は、例えば、有機金属成長法(MOVPE法)、分子線気相成長法(MBE法)、ハイドライド気相成長法(HVPE法)等の気相成長法を用いてGaN基板上にエピタキシャル成長することにより成長することができる。
(GaN基板の製造方法)
本実施の形態に係るGaN基板が切り出されるGaNインゴットは、例えば、低温バッファ成長法、Epitaxial Lateral Overgrowth(ELO)法、Facet−Initiated Epitaxal Lateral Overgrowth(FIERO)法、又はDislocation Elimination by the Epi−growth with Inverted−Pyramidal Pits(DEEP)法等を用いて成長することができる。
低温バッファ成長法は、サファイア等の異種基板上に低温堆積緩衝層(バッファ層)を形成する工程と、バッファ層上にエピタキシャル成長層を形成する工程とを備える。より具体的に、低温バッファ成長法は、サファイア等の基板上に窒化アルミニウム(AlN)層又はGaN層を500℃付近で堆積する低温バッファ層堆積工程と、低温バッファ層堆積工程に連続して、アモルファス状の膜又は一部に多結晶を含むGaNの連続膜を形成する連続膜形成工程と、形成した連続膜を1,000℃付近に昇温して連続膜の一部を蒸発又は結晶化させて、密度の高い結晶核を形成する結晶核形成工程と、結晶核を成長の核としてGaN膜を成長するGaN膜成長工程を備える。
また、ELO法は、サファイア基板等の下地基板に開口部を有するマスクを形成するマスク形成工程と、マスクの開口部からGaNをラテラル成長させるラテラル成長工程とを備える成長方法である。ELO法においては、サファイア基板上にGaNを形成した後、サファイア基板をエッチング等により除去することによりGaNを形成する。
また、FIELO法は、サファイア基板等の下地基板に酸化シリコンマスクを用いて開口部を有するマスクを形成して選択成長する点でELO法と共通する。ただし、FIELO法は、選択成長の際にマスクの開口部にファセットを形成することにより、結晶成長中に生じる転位の伝播方向を所定の方向に変え、エピタキシャル成長層の上面に至る貫通転位を低減する成長方法である点でELO法と異なる。FIELO法では、例えば、サファイア等の下地基板上に厚膜のGaN層を成長させる。続いて、下地基板を除去する。これにより、結晶欠陥の少ない良質なGaN単結晶を形成する。
また、DEEP法は、ガリウムヒ素(GaAs)基板上に窒化ケイ素等からなるマスクをパターニングするパターニング工程と、パターニング工程後にGaNを成長させる成長工程とを備える。DEEP法においては、まず、マスクを用いてGaNを成長することによりGaN結晶の表面にファセット面で囲まれたピットを意図的に複数形成する。続いてGaNの成長を続けると、ピットの底部に転位が集積する。これにより、DEEP法においては、ピットの底部に比べて転位密度の低い領域を形成することができる。
GaNインゴットを製造した後、GaNインゴットをスライスしてGaN基板(表面処理前)を製造する。続いて、スライスして得たGaN基板の表面に対して、粗研磨を施した後、所定の平均粒径及び硬度を有する所定の研磨剤による研磨処理及び/又は所定のエッチング処理(ドライエッチング処理及び/又はウェットエッチング処理)による表面処理を施すことにより、本実施の形態に係るGaN基板を製造することができる。
表面処理は、一例として、粗研磨及び研磨処理後のGaN基板の表面に対して、ドライエッチング処理を施した後、ウェットエッチング処理を施す工程を含む。表面処理の他の例としては、粗研磨後の表面を所定の粒径の所定の研磨剤を用いて研磨した後、所定のエッチャントにより表面にウェットエッチング処理を施す工程を含む。また、粗研磨後の表面の研磨においては、粗研磨後のGaN基板の表面から所定の深さ(一例として、10μm前後)まで研磨する。更に、表面処理は、一例として、粗研磨及び研磨処理後のGaN基板の表面に対して、イソプロピルアルコール等の有機溶剤による洗浄工程を採用することもできる。
本実施の形態に係るGaN基板であるか否かは、カソードルミネッセンス測定(CL測定)を用いてGaN基板の表面近傍のダメージを測定することにより判断できる。
CL測定においては、測定対象物としてのGaN基板表面からダメージの評価をすることのできる領域の端部までの深さは、照射する電子ビームがGaN基板の表面から進入する深さとしての進入深さに応じて決定される。電子ビームの進入深さは、照射する電子ビームの電子の加速電圧と、測定対象物の原子量及び原子番号並びに密度とに応じて決定される。具体的には、以下の「式1」により、電子の進入深さが決定される(例えば、Jpn. J. Appl. Phys., Vol. 40 (2001), pp. 476-479参照。)。
Figure 2009212284
ここで、Reは、電子の進入深さ(μm)、Aは、測定対象物の原子量、ρは、測定対象物の密度(g/cm)、Zは、測定対象物の原子番号、Ebは、電子の加速電圧(kV)である。
CL測定においては、GaN基板の表面から所定の深さまでのGaN結晶中に存在するダメージを評価する。「式1」において、原子量、密度、及び原子番号は測定対象物に固有の値なので、測定対象物が決定されればこれらの値は一義的に決定される。したがって、GaN基板の表面から電子が侵入する深さは、GaN基板に照射する電子の加速電圧に応じて決定される。そして、所定の加速電圧の電子ビームをGaN基板に照射してCL測定を実施する。例えば、CLのスペクトルから、GaN基板を構成するGaN結晶のバンドギャプに対応する波長のピーク(第1のピーク)の強度と、第1のピークよりも長波長側に観測され、GaNのバンドギャップ間に発生する準位に起因するピーク(第2のピーク)の強度とを測定する。
すなわち、CL測定においては、GaN基板の表面からフォトルミネッセンス(PL)測定では測定することのできない深さにおけるダメージの程度を評価する。例えば、CL測定において測定した第2のピークのピーク強度は、GaN基板が内包する発光を生じさせるようなダメージの程度によって変化するので、第1のピークの強度と第2のピークの強度との強度比を評価することで、GaN基板表面から所定の深さ(例えば、1μm程度の深さ)までの領域のダメージの程度を把握できる。
図1は、CL測定による基板ダメージの評価の方法の概要を示す。
CL測定において、測定対象物のバンドギャップに対応する波長λ1における第1のピーク50の強度I1と、波長λ1よりも長波長側の波長λ2における第2のピーク52の強度I2とを検出する。続いて、検出した強度I1と強度I2との強度比(I1/I2)を算出して、算出した強度比により結晶性を評価する。例えば、第1のピークの強度と第2のピークの強度との強度比は、GaN基板表面から所定の深さまでの領域のダメージの程度が大きいほど、小さくなる傾向がある。
CL測定において、加速電圧が13kV以上の電子が照射された際に得られるCLのスペクトルのうち、GaNのバンドギャップに対応する波長における第1のピーク50の強度が、第1のピーク50より長波長側に観測される第2のピーク52の強度の2倍以上、又は5倍以上を示す場合、本実施の形態に係るGaN基板であると特定できる。
図2は、GaN基板に対する電子の進入深さと電子の加速電圧との関係を示す。
測定対象物としてのGaN基板においては、上記説明における「式1」から、GaN基板に対する電子の進入深さと加速電圧との関係を求めることができる。図2を参照すると、電子の加速電圧が13kV以上の場合、GaN基板に対する電子の進入深さが1μm以上となる。そのため、CL測定において、照射する電子の加速電圧を13kV以上にすると、GaN基板表面からの深さが1μm以上の領域のダメージを評価でき、本実施の形態に係るGaN基板であるか否かを特定できる。
なお、この場合、GaNのバンドギャップに対応する波長365nm付近のピークが図1において説明した第1のピーク50となると共に、波長500nmから700nm付近のピークが図1において説明した第2のピーク52となる。
本実施の形態に係るGaN基板は、照射する電子の加速電圧を13kV以上に設定した際のGaN基板の表面のCL測定によって得られる発光スペクトルにおいて、第1のピーク50の強度I1が、第2のピーク52の強度I2の2倍以上、より好ましくは5倍以上となるものである。このような本実施の形態に係るGaN基板は、基板表面からの深さが1μm程度における結晶に対するダメージが少なく、特性の良いデバイスを再現性よく作成できるGaN基板として用いることができる。
(実施の形態の効果)
本発明の実施の形態に係るGaN基板は、基板表面から1μm程度の深さにおけるダメージが少ないので、基板表面から1μm程度の深さのダメージに起因する欠陥が、基板上に成長されるエピタキシャル層中に生じる(又は伝搬する)ことを低減できる。これにより、再現性よく高品質のデバイスを製造することのできるGaN基板を提供することができる。
[実施例及び比較例]
以下に述べる実施例及び比較例においては、所定の方法により得られたGaN単結晶のインゴットをスライスして得られたGaN単結晶基板(直径:2インチ)にそれぞれ異なる表面処理を施した。そして、表面処理後の各GaN単結晶基板のそれぞれについて、CL測定及び基板ダメージ評価を実施した。更に、実施例及び比較例に係る各GaN単結晶基板上に所定のGaN薄膜を形成した後、表面粗さの測定も実施した。なお、一部の実施例及び一部の比較例については、フォトルミネッセンスによる評価も実施した。以下、詳述する。
まず、GaN単結晶のインゴットをスライスして得られたGaN単結晶基板の表面を粗研磨した。次に、粒径0.1μmのダイアモンド砥粒を用いて、粗研磨した表面を10μm研磨した。更に、反応性イオンエッチング法(Reactive Ion Etching法:RIE法)を用いて、研磨済みの表面をドライエッチングした。なお、RIEの実施条件は、エッチングガス:Clガス、供給エッチングガス流量:50sccm、供給電力:200W、チャンバー内圧力:10Pa、エッチング時間:60分間、である。
RIE後、エッチングした表面のダメージの除去を目的として、GaN単結晶基板を80℃の5%NHOH溶液に60分間浸漬させてウェットエッチングした。これにより、実施例1に係るGaN単結晶基板を得た。
実施例2に係るGaN単結晶基板は以下のようにして得た。まず、GaN単結晶のインゴットをスライスして得られたGaN単結晶基板の表面を粗研磨した。次に、粒径1μmのダイアモンド砥粒を用いて表面を10μm研磨した。更に、イソプロピルアルコールを用いて表面を洗浄した。続いて、GaN単結晶基板を、80℃の5%NHOH溶液に900分間浸漬させることにより、ウェットエッチングした。このようにして、実施例2に係るGaN単結晶基板を得た。
実施例3に係るGaN単結晶基板は以下のようにして得た。まず、GaN単結晶のインゴットをスライスして得られたGaN単結晶基板の表面を粗研磨した。次に、粒径1μmのダイアモンド砥粒を用いて表面を10μm研磨した。更に、イソプロピルアルコールを用いて表面を洗浄した。続いて、GaN単結晶基板を、80℃の5%NHOH溶液に780分間浸漬させることにより、ウェットエッチングした。このようにして、実施例3に係るGaN単結晶基板を得た。
実施例4に係るGaN単結晶基板は以下のようにして得た。まず、GaN単結晶のインゴットをスライスして得られたGaN単結晶基板の表面を粗研磨した。次に、粒径1μmのダイアモンド砥粒を用いて表面を10μm研磨した。更に、イソプロピルアルコールを用いて表面を洗浄した。続いて、GaN単結晶基板を、80℃の5%NHOH溶液に660分間浸漬させることにより、ウェットエッチングした。このようにして、実施例4に係るGaN単結晶基板を得た。
実施例5に係るGaN単結晶基板は以下のようにして得た。まず、GaN単結晶のインゴットをスライスして得られたGaN単結晶基板の表面を粗研磨した。次に、粒径1μmのダイアモンド砥粒を用いて表面を10μm研磨した。更に、イソプロピルアルコールを用いて表面を洗浄した。続いて、GaN単結晶基板を、80℃の5%NHOH溶液に540分間浸漬させることにより、ウェットエッチングした。このようにして、実施例5に係るGaN単結晶基板を得た。
実施例6に係るGaN単結晶基板は以下のようにして得た。まず、GaN単結晶のインゴットをスライスして得られたGaN単結晶基板の表面を粗研磨した。次に、粒径1μmのダイアモンド砥粒を用いて、粗研磨した表面を10μm研磨した。更に、イソプロピルアルコールを用いて表面を洗浄した。続いて、GaN単結晶基板を、80℃の5%NHOH溶液に480分間浸漬させることにより、ウェットエッチングした。このようにして、実施例6に係るGaN単結晶基板を得た。
(比較例1)
比較例1に係るGaN単結晶基板は以下のようにして得た。まず、GaN単結晶のインゴットをスライスして得られたGaN単結晶基板の表面を粗研磨した。次に、粒径0.8μmのダイアモンド砥粒を用いて、粗研磨した表面を10μm研磨した。続いて、イソプロピルアルコールを用いて表面を洗浄した。これにより、比較例1に係るGaN単結晶基板を得た。
(比較例2)
粒径0.8μmのダイアモンド砥粒に代えて、粒径1μmのダイアモンド砥粒を用いたこと以外は比較例1と同様にして、比較例2に係るGaN単結晶基板を得た。
(比較例3)
粒径0.8μmのダイアモンド砥粒に代えて、粒径3μmのダイアモンド砥粒を用いたこと以外は比較例1と同様にして、比較例3に係るGaN単結晶基板を得た。
(比較例4)
まず、GaN単結晶のインゴットをスライスして得られたGaN単結晶基板の表面を粗研磨した。次に、粒径3μmのダイアモンド砥粒を用いて、粗研磨した表面を10μm研磨した。続いて、イソプロピルアルコールを用いて表面を洗浄した。次に、この基板にアニール処理を施すことにより、比較例4に係るGaN単結晶基板を得た。アニール処理の条件は、常圧、基板温度1,100℃、Nガス9L/min、NHガス1L/min、アニール時間は50時間である。
(カソードルミネッセンス測定)
図3は、本発明の実施例に係るGaN単結晶基板のカソードルミネッセンス発光スペクトルの一例を示す。
本実施例に係るGaN単結晶基板のカソードルミネッセンス測定には、走査型電子顕微鏡に、カソードルミネッセンスによって得られた発光スペクトルを検出、分光する機器を設置した装置を用いた。具体的には、走査型電子顕微鏡として、日立ハイテクノロジーズ製のS−3000Nを用い、発光スペクトルを検出・分光する機器としてのスペクトル検出装置には、堀場製作所製のMP−32Mを用いた。走査型電子顕微鏡の電子線(電子ビーム)の加速電圧を13kVとして、実施例及び比較例に係る各GaN単結晶基板のそれぞれの発光スペクトルを得た。
図3は、具体的に、実施例4に係るGaN単結晶基板から得た発光スペクトルを示す。縦軸はカソードルミネッセンス(CL)強度を示しており、横軸は波長(単位:nm)を示している。なお、図3におけるCL強度は、365nm付近の第1のピーク50の強度I1を1とした相対値である。また、365nmよりも長波長側の500nmから700nm付近にブロードな第2のピーク52が観察された。ここで、第2のピーク52の強度をI2とする。
表1は、本発明の実施例及び比較例に係るGaN単結晶基板から得られたCLの発光スペクトルにおける第1のピーク50と第2のピーク52との強度比I1/I2を、電子線の加速電圧ごとに示す。なお、加速電圧は、13kV、21kV、及び30kVに設定して、それぞれCL測定を実施した。
Figure 2009212284
(フォトルミネッセンス測定)
表2は、本発明の一部の実施例及び一部の比較例に係るGaN単結晶基板から得られたフォトルミネッセンスの発光スペクトルにおける第1のピークと第2のピークとのピーク強度比を示す。
Figure 2009212284
フォトルミネッセンス測定には、ナノメトリクス製のRPM2000を用いた。He−Cdのレーザ光源を用いて、実施例6及び比較例4のGaN単結晶基板それぞれのPL発光スペクトルを得た。GaN基板のバンドギャップに対応する波長365nm付近の第1のピークのピーク強度をI3、GaN基板のバンドギャップに対応する波長365nmのピークよりも長波長側に位置する第2のピークのピーク強度をI4とする。表2は、実施例6及び比較例4のGaN単結晶基板から得られる発光スペクトルにおけるピークの強度比I3/I4を求めた結果である。
(表面粗さ測定)
表3は、本発明の実施例及び比較例に係るGaN単結晶基板上にGaN薄膜を形成した後の基板表面の粗さを測定した結果を示す。
Figure 2009212284
まず、実施例1から6及び比較例1から4のGaN単結晶基板の表面上に、Halide Vapor Phase Epitaxy(HVPE)法を用いて膜厚1μmのGaN薄膜を形成した。HVPE法の成長に用いた原料はNHとGaClで、キャリアガスとして5%のHと95%のNとの混合ガスを用いた。成長条件は、常圧、基板温度1050℃であった。供給ガス中のNHの分圧は5×10−3atmとし、供給ガス中のGaClの分圧を1×10−3atmとした。そして、GaN薄膜を形成した後、原子間力顕微鏡(AFM)によりGaN薄膜の表面粗さ(RMS:二乗平均粗さ)を測定した。
表1及び表3を参照すると分かるように、電子線の加速電圧が13kV、21kV、及び30kVのいずれの場合においても、強度比I1/I2が5以上である実施例1から4に係るGaN単結晶基板によれば、その上に成長したGaN薄膜の表面の二乗平均粗さは、0.5nm以下であった。
また、電子線の加速電圧が13kV、21kV、及び30kVのいずれの場合においても、強度比I1/I2が2以上である実施例1から6に係るGaN単結晶基板によれば、その上に成長したGaN薄膜の表面の二乗平均粗さは、1nm以下であった。
以上から、実施例1から6に係るGaN単結晶基板は、その表面にGaN薄膜が形成された場合でも、GaN薄膜の表面の粗さが少ないことが分かる。すなわち、実施例1から6の係るGaN単結晶基板は、電子デバイス等の下地基板として実用上、十分に用いることができることが示された。
一方、比較例1から4に係るGaN単結晶基板においては、表1及び表3に示されているように、電子線の加速電圧が13kV、21kV、及び30kVのいずれの場合においても、強度比I1/I2が2未満である比較例1から4に係るGaN単結晶基板によれば、その上に形成したGaN薄膜の表面の二乗平均粗さは1nm以上であり、デバイス等の下地基板としては、実用上、用いることが困難であることが示された。これは、比較例1から4に係るGaN単結晶基板の表面から1μm程度の深さの領域のダメージの程度が大きいためと考えられる。
また、表2を参照すると、比較例4に係るGaN単結晶基板においては、フォトルミネッセンス測定でのI3/I4の強度比が5以上であるが、実施例6に係るGaN単結晶基板においては、フォトルミネッセンス測定でのI3/I4の強度比が2以下であった。そして、比較例4に係るGaN単結晶基板上に形成したGaN薄膜の表面の二乗平均粗さは、表3を参照すると2.34nm、すなわち、1nm以上である。これは、比較例4に係るGaN単結晶基板の表面から1μm程度の深さの領域のダメージの程度が大きいためと考えられる。
ここで、PL測定で評価できるGaN基板の表面からの深さは、測定するGaN基板に対して照射する光の進入深さで決定される。この進入深さは、一般的に、照射する光源の波長と、評価対象の基板の吸収係数で決まる。ここで、PL測定において通常用いられる光源として、He−Cdレーザ(波長325nm)やYAGレーザ(波長266nm)があり、波長325nmのHe−Cdレーザと波長266nmのYAGレーザのGaNの吸収係数は、12.5×10cm−1(He−Cdレーザ)、18.5×10cm−1(YAGレーザ)である。
そして、吸収係数の逆数が進入深さとなるので、GaN基板に対するHe−Cdレーザの進入深さは1/12.5/10×10=80nmとなり、GaN基板に対するYAGレーザの進入深さは1/18.5/10×10=54nmとなる。その結果、進入深さが共に0.1μm以下で、PL測定で評価しているGaN基板表面からの深さも0.1μm以下と非常に浅い。したがって、GaN基板のPL測定においては、表面から非常に浅い領域のダメージが評価される。
したがって、非常に浅い領域のみ評価しているPL測定で最表面のダメージの程度が小さいと判断されるGaN基板であっても、表面から1μm程度の深さまでに存在するダメージは把握できない。PL測定による評価がよいGaN基板を用いた場合であっても良好なデバイス特性が再現性よく得られない場合があるのは、表面だけではなく、表面から1μm程度の深さの領域のダメージも、GaN基板上に形成するエピタキシャル層に欠陥等のダメージを伝搬させるからである。
(実施例の効果)
照射する電子の加速電圧を13kV以上にして実施するCL測定によって得られる発光スペクトルにおいて、GaNのバンドギャップに対応する波長におけるピークの強度が、バンドギャップに対応する波長よりも長波長側に位置するピークの強度の2倍以上、より好ましくは5倍以上である本発明の実施例に係るGaN基板は、デバイスに用いる基板として十分な性能を有する。このような実施例に係るGaN基板を電子デバイスの製造に用いることにより、性能のよいデバイスを再現性よく得ることができる。
以上、本発明の実施の形態及び実施例を説明したが、上記に記載した実施の形態及び実施例は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態及び実施例の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
基板ダメージの評価の方法の概要図である。 GaN基板に対する電子の進入深さと電子の加速電圧との関係を示す図である。 実施例に係るGaN単結晶基板のカソードルミネッセンス発光スペクトルの一例を示す図である。
符号の説明
50 第1のピーク
52 第2のピーク

Claims (2)

  1. 加速電圧が13kV以上の電子が照射された際に得られるカソードルミネッセンスのスペクトルのうち、窒化ガリウムのバンドギャップに対応する波長における第1のピークの第1の強度が、前記第1のピークより長波長側に観測される第2のピークの第2の強度の2倍以上である窒化ガリウム基板。
  2. 加速電圧が13kV以上の電子が照射された際に得られるカソードルミネッセンスのスペクトルのうち、窒化ガリウムのバンドギャップに対応する波長における第1のピークの第1の強度が、前記第1のピークより長波長側に観測される第2のピークの第2の強度の5倍以上である窒化ガリウム基板。
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