JP2009299506A - 内燃機関の吸気制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】コンプレッササージを回避しつつ十分な過給効果を担保する。
【解決手段】吸気管204にコンプレッサ218及びインパルス弁224を備え、夫々排気による過給及び慣性過給が可能に構成されてなるエンジン200を備えたエンジンシステム10において、ECU100により過給制御が実行される。当該制御においては、夫々コンプレッサ218の前後圧である大気圧P0及び過給圧Pinの比たる前後吸気圧比Rpinと吸入空気量Gaとに基づいて、コンプレッササージが生じているか否かが判別される。吸入空気量Gaがサージ限界吸入空気量Gasg未満である場合、ECU100は、コンプレッササージを回避すべく、コンプレッサバイパス弁227による過給圧低下処理を適宜実行しつつ、過給圧Pinがサージ限界圧Pinsg以下となるように、インパルス弁224の開閉駆動により慣性過給を実行する。
【選択図】図6
【解決手段】吸気管204にコンプレッサ218及びインパルス弁224を備え、夫々排気による過給及び慣性過給が可能に構成されてなるエンジン200を備えたエンジンシステム10において、ECU100により過給制御が実行される。当該制御においては、夫々コンプレッサ218の前後圧である大気圧P0及び過給圧Pinの比たる前後吸気圧比Rpinと吸入空気量Gaとに基づいて、コンプレッササージが生じているか否かが判別される。吸入空気量Gaがサージ限界吸入空気量Gasg未満である場合、ECU100は、コンプレッササージを回避すべく、コンプレッサバイパス弁227による過給圧低下処理を適宜実行しつつ、過給圧Pinがサージ限界圧Pinsg以下となるように、インパルス弁224の開閉駆動により慣性過給を実行する。
【選択図】図6
Description
本発明は、過給器を備えた内燃機関に係り、特にコンプレッササージを回避することが可能な内燃機関の吸気制御装置の技術分野に関する。
この種の技術分野として、可変ディフューザを備えるものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に開示されたターボチャージャの制御装置(以下、「従来の技術」と称する)によれば、サージ限界を超えない範囲内でディフューザベーンの目標開度を設定することにより、サージ領域を回避しつつターボ効率の高い領域を使用することが可能であるとされている。
尚、低回転域でパルス過給効果を増大させるべくVNT(Variable Nozzle Turbo)のノズル開度を絞り、コンプレッサ後過給圧を上昇させる技術も開示されている(例えば、特許文献2参照)。
また、ターボ過給とパルス過給を組み合わせる場合に、低回転域でパルス過給効果を増大させる技術も開示されている(例えば、特許文献3参照)。
更には、ターボ過給とパルス過給を組み合わせる場合に、吸気弁開弁前の吸気制御弁と吸気弁との間の圧力を高く維持し、バルブオーバラップ時に内部EGRを排気出して掃気を行う技術も提案されている(例えば、特許文献4参照)。
従来の技術では、ディフューザベーンの開度を変化させることによりサージラインを可変としている。従って、コンプレッサ前後の吸気圧力比自体は実質的に不変であり、無論サージラインが変更されることにより過給効果が幾らかなり向上し得るとしても、基本的には過給効果がサージ限界に制限されてしまう。即ち、従来の技術には、コンプレッササージにより過給効果が阻害されるという技術的な問題点が何ら解決されない。
本発明は、上述した問題点に鑑みてなされたものであり、コンプレッササージを回避しつつ十分な過給効果を担保し得る内燃機関の吸気制御装置を提供することを課題とする。
上述した課題を解決するため、本発明に係る内燃機関の吸気制御装置は、車両に備わり、複数の気筒、該複数の気筒に連通する吸気通路、該吸気通路にコンプレッサを有する過給器及び該吸気通路において該コンプレッサ下流側に設置され、開閉駆動されることにより吸気の脈動を利用した慣性過給が可能に構成された吸気制御弁を備えてなる内燃機関の吸気制御装置であって、前記慣性過給により前記コンプレッサの上流側と下流側との間の吸気圧の比たる前後吸気圧比が所定のコンプレッササージ領域外となるように前記吸気制御弁の開閉特性を決定する決定手段と、前記決定された開閉特性に基づいて前記吸気制御弁を制御する制御手段とを具備することを特徴とする。
本発明に係る「内燃機関」とは、複数の気筒を有し、当該気筒の各々における燃焼室において、例えばガソリン、軽油、各種アルコール若しくは各種アルコールとガソリンとの混合燃料等各種の燃料が、又は当該各種燃料を含む混合気等が爆発或いは燃焼した際に生じる力を、例えばピストン、コネクティングロッド及びクランク軸等の物理的な又は機械的な伝達経路を経て駆動力として取り出すことが可能に構成された機関を包括する概念である。また、この種の内燃機関に係る「内燃機関の吸気制御装置」とは、気筒内部に対する、吸気(即ち、外界から吸入される空気たる吸入空気を少なくとも概念の一部として含み、当該吸入空気そのもの、或いは例えばEGR装置等の排気再循環装置が備わる場合等には例えばEGRバルブ等の流量調整手段の開閉状態等に応じてEGRガス(即ち、排気の一部)と当該吸入空気の混合体等の各種形態を採り得る)の供給を制御する装置である。
本発明に係る内燃機関の吸気制御装置における「吸気通路」とは、即ち、上述した吸気の通路であって、好適な一形態として、例えばエアクリーナ、エアフローメータ、スロットルバルブ(即ち、吸気絞り弁)、サージタンク及び吸気ポート等を相互に且つ適宜に連結又は連通せしめ得る、例えば単一又は複数の管状部材の形態を採り得る。
本発明に係る内燃機関は、吸気通路に、例えば二値的に、段階的に或いは連続的に制御され得る開閉状態に応じて吸気の量たる吸気量を調整可能な、例えば弁体、或いは当該弁体に加え更に当該弁体を駆動する駆動装置等を適宜に含んでなる動弁機構又は動弁装置等の各種形態を採り得る手段としての吸気制御弁を備える。この吸気制御弁は、内燃機関にスロットルバルブ等の所謂吸気絞り弁が備わる場合には、好適な一形態として、この吸気絞り弁の下流側に設置される。
この際、吸気制御弁の設置態様は、吸気通路の構造等に応じて適宜変化し得る。例えば、吸気通路が、例えばサージタンクと各気筒との間の区間において、例えば連通管等のように各気筒又は気筒群に対応して適宜に分岐する構成を有する場合等には、その分岐位置又はその上流側に複数の気筒に共有される形で単一の吸気制御弁が備わっていてもよいし(この場合、好適な一形態として吸気系は、所謂一弁式のインマニレス吸気系を採り得る)、このような吸気通路の構成においても、各気筒に対応する複数の吸気通路(即ち、分岐位置下流側)に各気筒個別に複数の吸気制御弁が備わっていてもよい(例えば、多弁式のインマニレス吸気系を含む)。或いは吸気通路の一部が、所謂吸気マニホールド等、例えばサージタンク下流側において気筒毎に独立した構成とされる場合等には、無論これら独立した管路の各々に(或いは一部に)吸気制御弁が備わっていてもよい。
本発明に係る内燃機関は、この吸気通路にコンプレッサを備えた、例えばターボチャージャ等の過給器を具備する。この種の過給器では、好適な一形態として排気系に設置されたタービンが排気圧により回転した際にコンプレッサが同軸回転し、過給が行われる。
一方、この種の過給器では、コンプレッサ上流側(尚、「上流」及び「下流」とは、吸気の流れる方向を基準とする方向概念の一であり、この場合、上流側とは即ち外界側であり、下流とは即ち気筒側である)の吸気圧(好適な一形態として、大気圧又はそれに準じる圧力であり、以下、適宜「コンプレッサ上流圧」と称する)とコンプレッサ下流側の吸気圧(好適な一形態として、例えば所謂過給圧であり、以下、適宜「コンプレッサ下流圧」と称する)との比たる前後吸気圧比と吸入空気量との相対関係により、吸入空気が、コンプレッサにおいて一時的又は恒久的に、例えばコンプレッサへの出入りを繰り返すこと等により滞留するコンプレッササージを生じることがある。
ここで、この種のコンプレッササージが生じる領域としてのコンプレッササージ領域は、例えば吸入空気量(或いは前後吸気圧比)に対し一義的に定まる前後吸気圧比(或いは吸入空気量)等により規定され得る(定性的には、例えば吸入空気量(或いは前後吸気圧比)に対し前後吸気圧比(或いは吸入空気量)が高い(或いは低い)領域である)。従って、少なくとも単にコンプレッササージの回避を目的とするのであれば、好適な一形態として、例えば、前後吸気圧比が吸入空気量に対し規定されるサージ限界値(コンプレッサ下流圧に対し規定される一定又は不定のサージ限界圧)を超えないように過給器の過給圧が調整されてもよい。
ところが、このように、コンプレッサ下流圧がサージ限界圧に達しないように過給器の過給動作を制限すると、過給器による過給はサージ限界圧によって制限された形となる。また、コンプレッサ下流側に吸気バイパス経路を有する構成でもない限り、一旦コンプレッサ下流圧がサージ限界圧を超えてしまえば、例えば、吸入空気量が自然に上昇して過給器の動作点がコンプレッササージ領域から逸脱するのを待つよりない。また、この種の吸気バイパス経路(或いはコンプレッサバイパス経路)を有していたところで、過給された吸気は、少なくとも気筒内への吸入には供されることがない。即ち、いずれにせよ、コンプレッササージを原因とする内燃機関の動力性能の低下は、実践上回避され難い問題となる。
そこで、本発明に係る内燃機関の吸気制御装置によれば、その動作時には、例えばECU(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)等の各種処理ユニット、各種コントローラ或いはマイコン装置等各種コンピュータシステム等として構成され得る決定手段が、慣性過給によりコンプレッサの上流側と下流側との間の吸気圧の比たる前後吸気圧比が所定のコンプレッササージ領域外となるように上述した吸気制御弁の開閉特性を決定すると共に、例えばECU等の各種処理ユニット、各種コントローラ或いはマイコン装置等各種コンピュータシステム等として構成され得る制御手段が、この決定された開閉特性に基づいて吸気制御弁を制御する。
ここで、上述した吸気制御弁は、開閉駆動により、吸気の脈動を利用した慣性過給(パルス過給又はインパルスチャージ等とも称される)が可能に構成されている。慣性過給とは、好適な一形態として、例えば吸気弁の開弁に相前後して吸気制御弁を閉弁し、例えば吸気弁の開弁後然るべき時間経過(クランク角等により角度概念として規定されてもよい)を経て吸気制御弁を開弁させる(即ち、吸気制御弁の下流側が負圧であり、且つ吸気制御弁の上流側が大気圧以上である状態で開弁させる)こと等によって正圧波を生成し、この正圧波を開放端とみなし得る各気筒の燃焼室入り口近傍で負圧波として反射させると共に、この負圧波が、例えば吸気通路に対し直列又は並列に配置された、例えばサージタンクやレゾネータ等の各種容積手段の開口部で再び開放端反射されて生じる、言わば二次的な正圧波等の形態を採り得る吸気の脈動を利用して、自然吸気がなされる場合(好適な一形態として、吸気は吸気制御弁の有無にかかわらず基本的に脈動波として気筒内に取り込まれ得るが、吸気制御弁に施される開閉制御により生じる脈動とは、好適な一形態として、この種の脈動よりも強い脈動である)と比較して多量の吸気を吸気行程で気筒内に取り込む(即ち、過給する)こと等を指す。
このような慣性過給を実現すべく決定される開閉特性とは、例えば吸気制御弁の開閉時期、開弁期間又は開度(即ち、開弁の度合いであり、一義的に開閉状態を規定する)等を包括する概念である。制御手段は、少なくともこの決定された開閉特性に従って吸気制御弁を制御し、慣性過給を実現するが、慣性過給の実現にあたって、この種の吸気制御弁の開閉特性に加え、吸気弁の開閉時期又は開弁期間の制御、或いは更に吸気の充填効率の変化に伴う吸気量の変化に応じた燃料噴射量の補正等が行われてもよく、例えば吸気弁(即ち、好適な一形態として燃焼室と吸気通路との連通状態を制御する弁)の閉弁時期と、吸気の脈動波(正圧波)のピークが吸気弁に到達する時期とを同期させる(必ずしも一致させることのみを表すものではない)旨の制御等が行われてもよい(これら補足的になされる各種制御の実行主体は、本発明に係る制御手段であっても、他の手段であってもよい)。
ここで特に、慣性過給によれば、各気筒に対し吸気の充填効率を向上させることが可能であり、吸気の充填効率向上に伴うコンプレッサ下流域の吸気量の減少により、結果的にコンプレッサ下流圧を少なくとも幾らかなり低減することが可能となる。従って、コンプレッサ前後の吸気圧の比たる前後吸気圧比をコンプレッササージ領域外に逸脱させることによりコンプレッササージを回避しつつ、十分な過給効果が担保されるのである。尚、「コンプレッササージ領域外となるように」とは、必ずしも慣性過給のみによってコンプレッササージ領域からの脱出が図られることのみを指すものではなく、例えば、過給器にウェストゲートバルブ、コンプレッサバイパスバルブ或いはVN等の過給圧調整手段が備わる場合や、過給器自体が所謂MAT(Motor Assist Turbo)等コンプレッサ又はタービンの回転をアシスト可能な構成を有する場合等には、これらの駆動制御により、このような慣性過給によるコンプレッササージの回避の補助を目的として、過給器の過給圧が適宜調整されてもよい趣旨である。このような補助がなされたところで、慣性過給による過給効果を維持したコンプレッササージの回避に係る実践上の利益はいささかも損なわれることがない。
補足すると、本発明は、コンプレッサ下流圧の低減を、気筒内への吸気充填に付随する現象として実現し得る点に着眼してなされたものである。即ち、本発明は、吸気の充填効率とは無関係に単にコンプレッサ下流圧の低減によるコンプレッササージの回避を図る旨の技術思想とは、その本質部分において全く異なっている。本発明によれば、過給器の過給効果がコンプレッササージにより制限される内燃機関の動作領域の少なくとも一部において、吸気制御弁を過給器として利用することにより、言わば過給器毎に動作領域が分担されており、コンプレッササージが生じた以降の時点であれ、コンプレッササージが生じる以前の時点であれ、所望の時点で過給効果を維持しつつ又は向上させつつコンプレッササージの回避が可能である点において、実践上多大な利益を提供するものである。
更に補足すると、本発明によれば、慣性過給により、少なくとも過給効果の維持又は向上とコンプレッサ下流圧の低減によるコンプレッササージの回避が可能であるが、理想的には、コンプレッサ上流における吸入空気量の増大効果を見込むこともできる。吸入空気量が増大すると、コンプレッサ流速が上昇し、コンプレッササージ限界を規定するコンプレッサ下流圧(サージ限界圧)が増大する。即ち、本発明によれば、コンプレッサ下流圧の低減と、吸入空気量の増大という、コンプレッササージを回避する方向へ作用する相異なる二種類の現象を同時に発現させることが可能である。即ち、過給器による過給と慣性過給とが相互に協調的に作用することにより、内燃機関の広い動作範囲で好適な吸気特性を得ることが可能となるのである。
尚、コンプレッササージを考慮して決定手段及び制御手段によりなされるこの種の慣性過給は、本来吸気制御弁においてなされる慣性過給と、少なくともその実施態様としては同種であってもよい。即ち、吸気制御弁により実現される本来の慣性過給が、例えば上述した開閉特性、吸気弁の開閉特性及び燃料噴射量の補正等を適宜に含む慣性過給制御として実行されるならば、本発明に係る制御手段の作用は、「慣性過給制御が実行されるように慣性過給制御の実行主体を制御する(実行主体が制御手段であれば、「慣性過給制御を実行する」と表現されてもよい)」と言い換えられてもよい趣旨である。
ところで、この種の本来的な意味における慣性過給は、好適な一形態として、内燃機関の負荷(負荷に対応する各種の指標値等を含み得る)や機関回転速度等といった車両の運転条件に基づいて適宜判別される慣性過給の要否に従って実行される。この際、当該車両の運転条件と慣性過給制御の実行の要否とは、如何なる対応付けがなされていてもよく、例えば機関回転速度が低く(例えば、機関回転速度が、吸気制御弁の動作速度が追従し得る領域としての、或いは吸気が元々有する脈動と吸気制御弁の開閉制御により生成される脈動との間に有意な効果の差が現れ難い領域としての高回転領域を除く領域としての低回転領域に属する場合)、且つ負荷が、例えば元々過給を必要としない旨の低負荷領域を除いてなる高負荷領域に属する場合等に行われてもよい。従って、本発明に係る制御手段によりなされる慣性過給(過給効果を阻害することなくコンプレッサ下流圧の低減によりコンプレッササージを回避する慣性過給)は、この種の本来的な意味での慣性過給と、その実行条件の一部が重複していてもよい。
本発明に係る内燃機関の吸気制御装置の一の態様では、前記前後吸気圧比が前記コンプレッササージ領域に該当するか否かを判別する判別手段を具備し、前記制御手段は、前記前後吸気圧比が前記コンプレッササージ領域に該当する旨が判別された場合に前記決定された開閉特性に基づいて前記吸気制御弁を制御する。
この態様によれば、例えばECU等の各種処理ユニット、各種コントローラ或いはマイコン装置等各種コンピュータシステム等として構成され得る判別手段により、前後吸気圧比がコンプレッササージ領域に該当する旨が判別された場合に限って、そのような場合に優先的に、或いは少なくともそのような場合に、制御手段が慣性過給によるコンプレッササージの回避を図るため、吸気制御弁の有限な駆動エネルギを効率的に消費することが可能となり実践上有益である。
尚、「コンプレッササージ領域に該当する旨」とは、好適な一形態として無論前後吸気圧比がコンプレッササージ領域に存在する場合を含むが、これに限定されない趣旨であって、例えば、現時点の運転条件や走行条件が所定時間継続した場合等に近未来的に前後吸気圧比がコンプレッササージ領域に到達する旨の判断を下し得る(即ち、前後吸気圧比がコンプレッササージ領域に突入すると予測、推測又は推定される)場合を含む趣旨である。
本発明に係る内燃機関の吸気制御装置の他の態様では、前記コンプレッサの下流側の圧力は、前記コンプレッサの下流側における平均吸気圧である。
この態様によれば、前後吸気圧比を規定するコンプレッサ下流圧がコンプレッサ下流側における平均吸気圧であるから、コンプレッサ下流を可及的に高圧に維持することが可能となり、過給効果を可及的に高く維持可能である。また、慣性過給によれば、コンプレッサ下流の平均吸気圧は少なくとも確実に低下するから、制御上の負荷が明らかに軽減される。
本発明に係る内燃機関の吸気制御装置の他の態様では、前記コンプレッサの下流側の圧力は、前記コンプレッサの下流側において前記コンプレッサに到達する吸気脈動波のピーク圧である。
この態様によれば、前後吸気圧を規定するコンプレッサ下流圧がコンプレッサ過給側においてコンプレッサに到達する吸気脈動波のピーク圧である。慣性過給は、上述したように吸気の脈動により過給を行うものであり、吸気通路内を言わば逆流する形で、コンプレッサに係る脈動波が到達する可能性がある。コンプレッササージは、コンプレッサで生じるものであり、コンプレッサ下流の平均的な吸気圧が、サージ限界圧未満であったとしても、コンプレッサに過渡的に又は瞬時的に到達する脈動波のピーク圧がサージ限界圧を超えると、断続的にコンプレッササージが生じる可能性を否定できない。この態様によれば、瞬時的にせよ前後吸気圧比がコンプレッササージ領域に存在することが防止される。即ち、確実にコンプレッササージを回避することが可能となるため実践上極めて有益である。
尚、この態様では、前記内燃機関は、少なくとも前記吸気脈動波のピーク圧を低減可能な、前記吸気制御弁とは異なるピーク圧低減手段を更に具備してもよい。
この種のピーク圧低減手段が備わる場合には、この種のピーク圧低減手段が、係るピーク圧の低減に際し積極的な制御を必要とするにせよ、単に設置されるのみによりこの種の効果を奏するものであるにせよ、ピーク圧の低減が比較的簡便になされ得るため好適である。
更にこの態様では、前記ピーク圧低減手段は、前記吸気通路における前記コンプレッサの下流に吸入空気を冷却可能に設置される冷却手段、前記吸気通路における前記コンプレッサの下流に設置される吸気絞り弁、前記吸気通路における前記コンプレッサの下流に設置されるサージタンク、前記吸気通路における前記コンプレッサの下流に設置されるレゾネータ、前記過給器の過給圧を調整可能な過給圧調整手段のうち少なくとも一部を含んでもよい。
ピーク圧低減手段の構成は各種態様を採り得るが、先に述べたウェストゲート弁等の過給圧調整手段によれば、過給圧を比較的精細に制御可能であり、この種のピーク圧の低減に効果的である。また、サージタンクやレゾネータ等の各種容積手段(ボリューム)は、好適にはコンプレッサと吸気制御弁との間に介装される。この際、これらが十分な容積を有していれば、慣性過給による吸気の脈動は、支配的にはこれらの下流で生じ、コンプレッサとこれらとの間には、少なくともピーク圧によりコンプレッササージの有無を規定し得る程度に大きな脈動は生じない。即ち、これら容積手段が備わる場合には、積極的な制御を介することなくコンプレッサに到達する脈動波のピーク圧を低減することが可能であり、好適である。また、例えばインタークーラ等の冷却手段によれば、先の容積手段と同等の効果が期待し得る上、脈動波を冷却してその脈動の規模を抑制することも可能であり、好適である。更には、例えばスロットル弁等の吸気絞り弁は、吸気制御弁と比較すれば気筒からの距離が遠く、慣性過給に対しては必ずしも有効に作用しないものの、コンプレッサへの吸気脈動の到達を制限することが可能となるため、好適である。
本発明のこのような作用及び他の利得は次に説明する実施形態から明らかにされる。
<発明の実施形態>
以下、図面を参照して、本発明の好適な各種実施形態について説明する。
<第1実施形態>
<実施形態の構成>
始めに、図1を参照して、本発明の第1実施形態に係るエンジンシステム10の構成について一部その動作を交えて説明する。ここに、図1は、エンジンシステム10の構成を概念的に表してなる概略構成図である。
以下、図面を参照して、本発明の好適な各種実施形態について説明する。
<第1実施形態>
<実施形態の構成>
始めに、図1を参照して、本発明の第1実施形態に係るエンジンシステム10の構成について一部その動作を交えて説明する。ここに、図1は、エンジンシステム10の構成を概念的に表してなる概略構成図である。
図1において、エンジンシステム10は、図示せぬ車両に搭載され、ECU100及びエンジン200を備える。
ECU100は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等を備え、エンジン200の動作全体を制御することが可能に構成された電子制御ユニットであり、本発明に係る「内燃機関の吸気制御装置」の一例である。ECU100は、ROMに格納された制御プログラムに従って、後述するインパルス弁駆動制御及び過給制御を実行することが可能に構成されている。
尚、ECU100は、本発明に係る「決定手段」、「判別手段」及び「制御手段」の一例として機能するように構成された一体の電子制御ユニットであり、これら各手段に係る動作は、全てECU100によって実行されるように構成されている。但し、本発明に係るこれら各手段の物理的、機械的及び電気的な構成はこれに限定されるものではなく、例えばこれら各手段は、複数のECU、各種処理ユニット、各種コントローラ或いはマイコン装置等各種コンピュータシステム等として構成されていてもよい。
エンジン200は、軽油を燃料とする、本発明に係る「内燃機関」の一例たる直列4気筒ディーゼルエンジンである。エンジン200の概略について説明すると、エンジン200は、シリンダブロック201に4本の気筒202が並列して配置された構成を有している。そして、各気筒内における圧縮行程において燃料を含む混合気が圧縮され、自着火した際に生じる力が、夫々不図示のピストン及びコネクティングロッドを介してクランクシャフト(不図示)の回転運動に変換される構成となっている。このクランクシャフトの回転は、エンジンシステム10を搭載する車両の駆動輪に伝達され、当該車両の走行が可能となる。以下に、エンジン200の要部構成を、その動作の一部と共に説明する。尚、個々の気筒202の構成は相互に等しいため、ここでは一の気筒202についてのみ説明することとする。
図1において、外界から導かれる空気たる吸入空気は、不図示のエアクリーナ等を介して吸気管204に導かれる構成となっている。この吸気管204には、吸気管204に導かれる吸入空気の量を調節可能なスロットルバルブ205が配設されている。このスロットルバルブ205は、ECU100と電気的に接続され且つECU100により上位に制御されるスロットルバルブモータ(不図示)から供給される駆動力により回転可能に構成された回転弁であり、スロットルバルブ205を境にした吸気管204の上流部分と下流部分とをほぼ遮断する全閉位置から、ほぼ全面的に連通させる全開位置まで、その回転位置が連続的に制御される構成となっている。このように、エンジン200では、スロットルバルブ205及びスロットルバルブモータにより、一種の電子制御式スロットル装置が構成されている。
吸気管204は、スロットルバルブ205の下流側において連通管206に接続され、その内部において連通管206と連通する構成となっている。連通管206は、各気筒202の吸気ポート(不図示)の各々に連通しており、吸気管204に導かれた吸入空気は、連通管206を介して、各気筒に対応する吸気ポートに導かれる構成となっている。吸気ポートは、一の気筒202について夫々二個ずつ備わっており、夫々が気筒202内部に連通可能に構成されている。尚、吸気管204及び連通管206により、本発明に係る「吸気通路」の一例が構成されている。吸気管204、連通管206及び吸気ポートは、夫々本発明に係る「吸気通路」の一例である。
ここで、連通管206には、連通管206内部の吸気の圧力たる過給圧Pinを検出可能な過給圧センサ228が設置されている。過給圧センサ228は、ECU100と電気的に接続されており、検出された過給圧Pinは、ECU100により、本発明に係る「コンプレッサの下流側の吸気圧」の一例として一定又は不定の周期で参照される構成となっている。また、図示は省略するが、吸気管204におけるコンプレッサ218上流側には、大気圧P0を検出可能な圧力センサが備わっている。この圧力センサはECU100と電気的に接続されており、検出された大気圧P0は、ECU100により、本発明に係る「コンプレッサの上流側の吸気圧」の一例として一定又は不定の周期で参照される構成となっている。
各気筒の燃焼室内部には、高温高圧の気筒202内部に直接燃料を噴射するための、例えばコモンレールシステムやユニットインジェクタ等からなる筒内直噴システムの一部として、インジェクタ203の噴射弁が露出しており、燃焼室内部に燃料たる軽油を噴射可能に構成されている。このインジェクタの駆動系は、ECU100と電気的に接続されており、ECU100により上位に制御される。即ち、インジェクタは、ECU100によりその動作が制御される構成となっている。インジェクタを介して噴射された燃料は、気筒内部において、吸気行程に吸入される吸気(吸入空気と、後述するEGRガスとの混合ガスである)と混合され、上述した混合気となる。この混合気は、吸気行程に引き続く圧縮行程において更に混合が促進され、圧縮TDC付近において自発的に着火する(即ち、爆発する)構成となっている。
尚、本実施形態に係るエンジン200は、圧縮自着火式の燃焼形態を有するディーゼルエンジンであるが、本発明に係る内燃機関としては、ガソリンを燃料とするガソリンエンジンやガソリンとアルコールとが混合されたアルコール混合燃料を使用可能なバイフューエルエンジン等を使用することもできる。内燃機関がこれらの形態を採る場合、燃料噴射用のインジェクタは、吸気ポートに燃料を噴射可能な所謂ポート噴射型インジェクタであってもよい。
吸気ポートと気筒202内部との連通状態は、各吸気ポートに設けられた吸気バルブ207により制御される。吸気バルブ207は、クランクシャフトに連動して回転する吸気カムシャフト208に固定された、吸気カムシャフト208の伸長方向と垂直な断面が楕円形状をなす吸気カム209のカムプロフィール(端的に言えば、形状)に応じてその開閉特性が規定されており、開弁時に吸気ポートと気筒202内部とを連通させることが可能に構成されている。
一方、燃焼した混合気或いは一部未燃の混合気は、吸気バルブ207の開閉に連動して開閉する排気バルブ210の開弁時に、不図示の排気ポートを介して排気として排気マニホールド213に導かれる構成となっている。排気バルブ210は、クランクシャフトに連動して回転する排気カムシャフト211に固定された、排気カムシャフト211の伸長方向と垂直な断面が楕円形状をなす排気カム212のカムプロフィール(端的に言えば、形状)に応じてその開閉特性が規定されており、開弁時に排気ポートと気筒202内部とを連通させることが可能に構成されている。排気マニホールド213に集約された排気は、排気マニホールド213に連通する排気管214に供給される。
排気管214には、タービンハウジング215に収容される形でタービン216が設置されている。タービン216は、排気管214に導かれた排気の圧力(即ち、排気圧)により所定の回転軸を中心として回転可能に構成された、セラミック製の回転翼車である。このタービン216の回転軸は、コンプレッサハウジング217に収容される形で吸気管204に設置されたコンプレッサ218と共有されており、タービン216が排気圧により回転すると、コンプレッサ218も当該回転軸を中心として回転する構成となっている。
コンプレッサ218は、エアクリーナを介して外界から吸気管204に吸入される吸入空気を、その回転に伴う圧力により下流側へ圧送供給することが可能に構成されており、このコンプレッサ218による吸入空気の圧送効果により、所謂過給が実現される構成となっている。即ち、エンジン200では、タービン216とコンプレッサ218とにより、一種のターボチャージャが構成されている。尚、これ以降の説明において、タービン216及びコンプレッサ217を含む包括概念として、適宜「ターボチャージャ」なる言葉を使用することとする。ターボチャージャは、本発明に係る「過給器」の一例である。
また、排気管214には、DPNR(Diesel Particulate NOx Reduction system)219が設置されている。DPNR219は、NOx吸蔵層を設けたウォールフロー型のDPF(Diesel Particulate Filter)の上下流に夫々酸化触媒及びNSR(NOx Storage Reduction:NOx吸蔵還元)触媒に配置した構成を採り、排気中のCO、HC、PM及びNOxを連続的に酸化還元することにより排気を浄化可能な、排気浄化手段である。
気筒202を収容するシリンダブロック201には、水温センサ220が配設されている。シリンダブロック201内部には、気筒202を冷却するための冷却水流路たるウォータジャケットが張り巡らされており、当該ウォータジャケット内部において、冷却水としてのLLCが不図示の循環系の作用により循環供給されている。水温センサ220は、このウォータジャケット内部に検出端子の一部が露出した構成を有しており、冷却水の温度を検出することが可能に構成されている。水温センサ220は、ECU100と電気的に接続されており、検出された冷却水温は、ECU100により一定又は不定の周期で参照される構成となっている。
コンプレッサ218の上流側には、吸入空気の質量流量たる吸入空気量Gaを検出可能なホットワイヤ式のエアフローメータ221が設置されている。エアフローメータ221は、ECU100と電気的に接続されており、検出された吸入空気量Gaは、ECU100により一定又は不定の周期で参照される構成となっている。尚、本実施形態において、検出された吸入空気量は、気筒202に吸入される吸気の量(即ち、吸気量)と一義的な関係を有しており、エンジン200の実負荷を規定する指標値として扱われる。
また、吸気管204において、コンプレッサ218の下流側、且つスロットルバルブ205の上流側には、インタークーラ222が設置されている。インタークーラ222は、その内部に熱交換壁を有しており、過給された吸入空気が(コンプレッサ218が実質的にみて有意に作用しない低回転領域においても同様である)通過する際に、係る熱交換壁を介した熱交換により吸入空気を冷却することが可能に構成されてなる、本発明に係る「冷却手段」の一例である。エンジン200は、このインタークーラ222による冷却によって吸入空気の密度を増大させることが可能となるため、コンプレッサ218を介した過給がより効率的になされ得る構成となっている。
一方、吸気管204には、コンプレッサ218の上流と下流とをコンプレッサ218を介することなく連通することによりコンプレッサハウジング217をバイパスするコンプレッサバイパス通路226が形成されている。このコンプレッサバイパス通路226には、コンプレッサバイパス弁227が設置されている。コンプレッサバイパス弁227は、弁体の開度が、このコンプレッサバイパス通路226におけるコンプレッサバイパス弁227の上下流を全面的に連通する全開開度と、当該上下流の連通を遮断する全閉開度との間で連続的に変化し得るように構成された電磁開閉弁である。コンプレッサバイパス弁227は、ECU100と電気的に接続されており、コンプレッサバイパス弁227の開度は、ECU100により制御される構成となっている。コンプレッサバイパス弁227が幾らかなり開弁した状態では、コンプレッサ218下流側に蓄えられた吸入空気の一部が係る下流側から逃がされるため、ターボチャージャの過給圧が低下する構成となっている。即ち、コンプレッサバイパス弁227は、本発明に「過給圧調整手段」の一例としても機能し得る構成となっている。
ここで、吸気管204における、スロットルバルブ205の下流側には、サージタンク223が設置されている。サージタンク223は、上述したターボチャージャの過給作用を適宜受けつつ供給される吸入空気の不規則な脈動を抑制し、且つ下流側(即ち、気筒202側)に安定して吸入空気を供給すると共に、後述する慣性過給制御の実行時において、負圧波の位相を反転させる(即ち、吸気の脈動を生じさせる)ことが可能に構成された貯留手段であり、上述した連通管206は、このサージタンク223の下流側における分岐位置(符合省略)において吸気管204に接続されている。但し、吸入空気は基本的に大なり小なり脈動しつつ気筒202側へ供給されるため、慣性過給の非実行期間においてサージタンク223を通過する吸入空気もまた、一種の脈動波である。
吸気管204に設置されたサージタンク223の下流側における、連通管206への分岐位置近傍には、各気筒で共有且つ共用される単一のインパルス弁224が設けられている。インパルス弁224は、弁体の位置により規定される開度が、吸気管204と連通管206との連通を遮断する全閉開度と、吸気管204と連通管206とをほぼ全面的に連通させる全開開度との間で連続的に変化し得るように構成された、本発明に係る「吸気制御弁」の一例たる回転弁である。
インパルス弁224は、アクチュエータ225から供給される駆動力によりその開度が制御される構成となっている。このアクチュエータ225は、ECU100と電気的に接続されており、ECU100によりその駆動状態が制御される構成となっている。即ち、インパルス弁224の開度は、ECU100により制御される構成となっている。
尚、エンジン200では、連通管206が、個々の気筒202(より具体的には吸気ポート)に対応する部分の上流側において集約され、且つインパルス弁224が共有される、所謂一弁式のインマニレス吸気系が実現されているが、吸気系の構成はこれに限定されるものではなく、連通管206における個々の吸気ポートに対応する箇所に各気筒個別にインパルス弁224が備わる多弁式のインマニレス吸気系であってもよいし、例えばサージタンク223から個々の気筒202に対し吸気マニホールドが分岐する構成を有していてもよい。この場合、個々の吸気マニホールドに、インパルス弁224が夫々独立して制御可能に設置されていてもよい。
エンジン200の要求負荷は、不図示のアクセルペダルの操作量(即ち、ドライバによる操作量)たるアクセル開度Taに応じて決定される。アクセル開度Taは、アクセル開度センサ11により検出され、アクセル開度センサ11と電気的に接続されたECU100により一定又は不定の周期で把握される構成となっている。総体的には、アクセル開度が小さい程要求負荷は小さく、アクセル開度が大きい程要求負荷は大きくなる。要求負荷の大小とは、要求出力の大小と相関するから、エンジンシステム10において、エンジン要求出力は、アクセル開度Taに応じて変化する。
尚、図示は省略されるが、エンジン200には、排気マニホールド213から吸気管204へ排気の一部をEGRガスとして還流させるEGR(Exhaust Gas Recirculation)装置が設置されている。EGR装置は、排気マニホールド213と吸気管204とを連通させるEGR通路、当該EGR通路上に設けられ、EGRガスの流量を調整可能なEGR弁、及びEGRガスを冷却可能なEGRクーラ等を備えるが、EGR装置は、本発明の趣旨とは相関が薄いため、紙面の煩雑化を防ぐ目的から図示が省略されている。
<実施形態の動作>
次に、図2を参照し、本実施形態の動作として、ECU100により実行されるインパルス弁駆動制御の詳細について説明する。ここに、図2は、インパルス弁駆動制御のフローチャートである。
次に、図2を参照し、本実施形態の動作として、ECU100により実行されるインパルス弁駆動制御の詳細について説明する。ここに、図2は、インパルス弁駆動制御のフローチャートである。
図2において、ECU100は、車両の運転条件を取得する(ステップS101)。尚、本実施形態では、係る運転条件として機関回転速度Ne及びアクセル開度Taが取得される。機関回転速度Ne及びアクセル開度Taが取得されると、取得された運転条件が慣性過給領域に該当するか否かが判別される(ステップS102)。
ここで、図3を参照し、慣性過給領域について説明する。ここに、図3は、慣性過給領域の模式図である。
図3において、慣性過給領域は、縦軸及び横軸に夫々アクセル開度Ta及び機関回転速度Neを配してなる二次元座標系において、図示ハッチング領域に相当する領域である。より具体的には、エンジン200の採り得る機関回転速度の範囲を、最低回転速度NeL(自立回転可能な最低回転速度である)以上、且つ最高回転速度NeH(所謂レブリミットである)以下であるとし、アクセル開度Taが0%(即ち、全閉)から100%(即ち、全開)まで変化するとした場合、慣性過給領域は、NeL≦Ne≦Neth(Neth<NeH)、且つTath≦Ta≦100となる領域であり、定性的に言えば低回転高負荷領域となる。
尚、最低回転速度NeLは、例えば800rpm程度の値であり、Nethは判断基準値であり概ね2000rpm程度の値である。また、Tathはアクセル開度の基準値であり、要求負荷の点から慣性過給が必要である旨の判断を下し得る値である。別言すれば、基準値Tath未満の低負荷領域においては、元より吸気の充填量を増大させる必要がないため、過給効果の観点から言えば慣性過給制御の実行が必要とされないのである。
図2に戻り、取得した運転条件が慣性過給領域に該当しない場合(ステップS102:NO)、ECU100は、非慣性過給制御を実行する(ステップS104)。ここで、非慣性過給制御とは、インパルス弁224の開度をデフォルト値たる全開開度に固定する制御を指す。尚、インパルス弁224を全開開度に固定するに際してのインパルス弁224の駆動態様は特に限定されず、例えば、アクチュエータ225の非通電時におけるインパルス弁224の開度が、インパルス弁224の全開開度に対応している場合には、単にアクチュエータ225への通電を停止することによりインパルス弁224を全開開度に固定してもよいし、アクチュエータ225の非通電時におけるインパルス弁224の開度が全開開度と異なる場合には、インパルス弁224が全開開度で維持固定されるようにアクチュエータ225に対し然るべき通電を行ってもよい。
一方、運転条件が慣性過給領域に該当する場合(ステップS102:YES)、ECU100は、慣性過給制御を実行する(ステップS103)。
ここで、慣性過給制御とは、インパルス弁224を開閉させることにより吸気の脈動を生成し、慣性過給により吸気の充填効率を向上させる一連の制御を指し、その概要は概ね以下のようになる。
即ち、一の気筒202(例えば、第1気筒)について、吸気行程の開始前に(即ち、好適には他気筒(例えば、第2気筒)の吸気行程終期において)、或いは吸気行程初期においてインパルス弁224を閉弁すると、インパルス弁224が閉弁しているため、当該気筒202のピストンの下降に従って、連通管206の管内圧は負圧となり、大気圧又は過給により大気圧以上に維持される吸気管204の管内圧との圧力差が拡大する。このように十分に連通管206内部に負圧が形成された状態においてインパルス弁224を開弁する(即ち、吸気バルブ207の開弁タイミング以降の開弁期間において開弁する)と、吸気管204と該当する気筒202(即ち、ここでは、第1気筒)の内部とが連通し、インパルス弁224を介して吸入空気が吸気として一気に気筒202内部の燃焼室に流入することとなる。
一方、燃焼室との連通部位において連通管206は所謂開放端となっており、燃焼室への吸入空気の流入に惹起された正圧波は、燃焼室で反射することによって、位相が反転した負圧波となる。この負圧波は、連通管206及びインパルス弁224を順次介してサージタンク223に到達し、開放端となる連通孔において開放端反射して位相が反転した正圧波として再び燃焼室に到達する。この正圧波のピークが燃焼室に(或いは吸気バルブ207に)到達した時点で(必ずしも、当該時点のみに限定されるものではなく、吸気の充填効率を幾らかなり向上させ得る限りにおいて当該時点を含む一定又は不定の期間であってよい)吸気バルブ207を閉弁することにより、或いは、吸気バルブ207が閉弁するタイミングで、この正圧波が燃焼室に到達するようにインパルス弁224の開弁時期を制御することにより、燃焼室内の圧力は上昇し、吸気の充填効率が向上する。インパルス弁224を利用した慣性過給は、このように実行される。
ステップS107に係る慣性過給制御の実行に際しては、ECU100は、予め実験的に、経験的に、理論的に又はシミュレーション等に基づいて車両の運転条件毎に吸気の充填効率を可及的に向上させ得るように定められた開閉特性でインパルス弁224が開閉するように、アクチュエータ225を制御する。また、この際、気筒202内部に取り込まれる吸気の量が変化するため、空燃比を所定値に維持すべく燃料噴射量が補正される。燃料噴射量の補正に際しては、予め上述した車両の運転条件とインパルス弁224の開閉時期とに対応付けられてマップ化された燃料噴射量の補正量(慣性過給による吸気の充填効率向上に係る効果が生じることが前提である)が参照され、基準となる燃料噴射量が適宜に増量補正される。このため、慣性過給制御の実行に際し、エミッションの悪化は生じない。
ECU100は、上述したインパルス弁224の制御と並列して、ターボチャージャによる過給を制御する過給制御を実行する。ここで、図4を参照し、過給制御の詳細について説明する。ここに、図4は、過給制御のフローチャートである。尚、同図において、図2と重複する箇所には同一の符合を付してその説明を適宜省略することとする。
図4において、ECU100は、車両の運転条件として、吸入空気量Ga、過給圧Pin及び大気圧P0を取得する(ステップS201)。続いてECU100は、サージ限界吸入空気量Gasgを取得し(ステップS202)、ステップS201において取得された吸入空気量Gaがサージ限界吸入空気量Gasg未満であるか否かを判別する(ステップS203)。
ここで、図5を参照し、サージ限界吸入空気量Gasgについて説明する。ここに、図5は、サージ限界吸入空気量Gasgを規定するサージ限界線Sg1の模式図である。
図5において、縦軸及び横軸に夫々前後吸気圧比Rpin及び吸入空気量Gaが表されている。ここで、前後吸気圧Rpinとは、大気圧P0に対する過給圧Pinの比(即ち、Rpin=Pin/P0)であり、本発明に係る「コンプレッサの上流側と下流側との間の吸気圧の比たる前後吸気圧比」の一例である。コンプレッサ218は、この前後吸気圧比Rpinが、図示サージ領域SG1(即ち、本発明に係る「コンプレッササージ領域」の一例であり、図示ハッチング領域)内にある場合に、コンプレッササージにより十分な過給が困難となる。
ここで、サージ限界線Sg1とは、サージ領域SG1とそれ以外の領域との境界を規定する線であり、同一の吸入空気量Gaで較べればサージ限界線Sg1よりも上側(Rpinが高い側)が、また同一の前後吸気圧比Rpinで較べればサージ限界線Sg1よりも左側(軽負荷側)が、サージ領域SG1となる。いずれにせよ、サージ限界線Sg1により、サージ限界に相当する値が規定されることとなる。ECU100は、予めROMに、図5に示すサージ限界線Sg1を数値化してなる参照可能なサージ限界マップを保持している。
図4に戻り、ECU100は、サージ限界マップから、サージ限界ラインSg1上で、ステップS201において取得された過給圧Pin及び大気圧P0から算出される前後吸気圧比Rpinに相当する一の吸入空気量Gaの値を選択し、サージ限界吸入空気量Gasgとして取得する。尚、サージ限界線Sg1は、サージ領域SG1とそれ以外の領域との境界線であるから、ステップS202においては、サージ限界吸入空気量Gasgの代わりに、ステップS201において取得された吸入空気量Gaに対応するサージ限界前後吸気圧比Rpinsgを取得することも可能である。
吸入空気量Gaがサージ限界吸入空気量Gasg以上である場合(ステップS203:NO)、前後吸気圧比Rpinはサージ領域SG1内に存在しないため、ECU100は、処理をステップS201に戻す。この際、通常の過給制御が実行される。通常の過給制御では、エンジン200の実負荷をアクセル開度Ta等により表される要求負荷に追従させるための目標過給圧が設定され、過給圧Pinが当該目標過給圧となるように、適宜コンプレッサパイパス弁227が制御される。尚、エンジン200が、コンプレッサバイパス弁227に替えて又は加えて、ウェストゲートバルブやVN等を備える場合には、これらとの協調制御により過給圧が目標過給圧に収束せしめられてもよい。或いは、ターボチャージャが、モータアシスト等によりコンプレッサ回転速度を制御可能な一種のMATの如き構成を採る場合には、より精細に過給圧の制御が実行されてもよい。
一方、吸入空気量Gaがサージ限界吸入空気量Gasg未満である場合(ステップS203:YES)、ECU100は、平均過給圧Pinaveを算出する(ステップS204)。ここで、平均過給圧Pinaveとは、上述した慣性過給制御を実行することによって少なくとも低下する連通管206の圧力の平均値であり、本発明に係る「コンプレッサの下流側における平均吸気圧」の一例である。慣性過給制御では、上述したように、吸気の脈動を生じさせ、且つ脈動波を吸気弁の閉弁時期に同期させること等により、吸気の充填効率を向上させることができる。このため、連通管206及びそれに連通する吸気管204における吸気の総量が減少して、吸気圧Pinが低下するのである。
ECU100は、予め機関回転速度Ne及び過給圧Pinと平均過給圧Pinaveとを対応付けてなる平均過給圧マップを保持しており、ステップS204においては、係る平均過給圧マップから現時点の過給圧Pin及び機関回転速度Neに対応する一の値を選択することにより、平均過給圧Pinaveを算出する(尚、「算出」とは、このようにマップから選択的に取得する態様を含むものとする)。但し、この種のマップが与えられておらずとも、然るべきアルゴリズムや演算式が与えられている場合には、適宜なされる数値演算処理の結果として、係る平均過給圧Pinaveが算出されてもよい。
平均過給圧Pinaveが算出されると、ECU100は、平均過給圧Pinaveと、吸入空気量Ga及び大気圧P0に対応するサージ限界過給圧Pinsg(即ち、上述したサージ限界ラインSg1から導出可能である)とを比較し、平均過給圧Pinaveの方が大きい場合には、その偏差に相当する分だけ過給圧が減少するように、コンプレッサバイパス弁227を制御し、過給圧Pinを低下させる(ステップS205)。また、ステップS204において、平均過給圧Pinaveが、サージ限界過給圧Pinsg以下である場合には、慣性過給のみにより前後吸気圧比Rpinをサージ領域SG1の領域外に逃がし得るため、ステップS205はスキップされる。
過給圧Pinの調整が終了すると、ECU100は、上述した慣性過給制御を実行する(ステップS103)。慣性過給制御が実行されると、処理はステップS201に戻され、一連の処理が繰り返される。過給制御はこのようにして実行される。
尚、この場合、ステップS103に係る制御は、「吸気制御弁の開閉特性を決定する」旨の動作の一例であるが、本実施形態では、コンプレッサバイパス弁227による過給圧調整が可能であり、この過給圧調整によって、慣性過給後の過給圧Pinをサージ限界圧Pinsg近傍に維持することが可能となっているため、コンプレッササージの回避に特化したインパルス弁224の開閉駆動はなされない構成となっている。無論、この種のコンプレッササージの回避に特化したインパルス弁224の開閉特性が設定されてもよい(即ち、慣性過給が、過給圧Pinの減少及び吸気の充填効率の向上といった相異なる効果を、その効果の大小は問わず併有する限りにおいて、本発明に係る効果は担保されるのであり、コンプレッササージの回避に主眼を置くのであれば、過給圧の減少効果が吸気の充填効率向上効果に優先されるように(図2に例示したインパルス弁駆動制御では、慣性過給が主目的であるため、逆である)開閉特性が別途規定され得る)。
ここで、図6を参照し、過給制御の効果について説明する。ここに、図6は、過給制御の実行過程における吸入吸気量Gaと前後吸気圧比Rpinとの関係を説明する模式図である。尚、同図において、図5と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を適宜省略することとする。
図6において、ある時刻のコンプレッサ218の動作点(尚、ここで言う動作点とは、吸入空気量Gaと前後吸気圧比Rpinとによって規定される座標平面上の一座標点であるとする)が、図示動作点m1(即ち、吸入空気量Ga1、且つ前後吸気圧比Rpin1である)であるとする。この場合、動作点m1は、サージ領域SG1の領域内である。このため、ECU100は、適宜過給圧Pinの低減を行いつつ(上述したように、必ずしも必要でない場合もある)、慣性過給制御を実行する。
慣性過給制御の実行により、少なくとも吸気管204及び連通管206における吸気量が減少し、過給圧Pinが減少する。その結果、前後吸気圧比Rpinは、従前のRpin1からRpin2(Rpin2<Rpin1)まで減少して、サージ領域SG1の領域外に到達する。一方、係る吸気量の減少により、吸入空気量Gaが増加して、従前の吸入空気量Ga1から吸入空気量Ga2(Ga1<Ga2)まで増加する。その結果、コンプレッサ218の動作点は、図示動作点m2(前後吸気圧比Rpin2、吸入空気量Ga2)に変化する。
このように、本実施形態に係る過給制御によれば、コンプレッサ218の動作点が、サージ領域に到達した場合に、インパルス弁224の開閉を伴う慣性過給制御により、また適宜過給圧の減少制御を伴うことにより、コンプレッササージを迅速に回避することが可能となる。この際、慣性過給により気筒内部に吸気を押し込むことにより過給圧Pinを低下させるため、コンプレッササージの回避を過給効果を犠牲にすることなく、或いは過給効果を向上させた上で実現することができる。この際、過給圧Pinの低下が吸入空気量Gaの増加を伴う場合には(図示動作点m2参照、但し、吸入空気量Gaの増加を伴わずとも、コンプレッササージの回避は十分に可能である)、前後吸気圧比Rpinの減少及び吸入空気量Gaの増加が共にコンプレッササージが回避される側への変化となるため、よりコンプレッサ218の動作領域を安全側へ誘うことが可能となり好適である。
<第2実施形態>
次に、図7を参照し、本発明の第2実施形態に係る過給制御について説明する。ここに、図7は、第2実施形態に係る過給制御のフローチャートである。尚、同図において、図4と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を適宜省略することとする。
<第2実施形態>
次に、図7を参照し、本発明の第2実施形態に係る過給制御について説明する。ここに、図7は、第2実施形態に係る過給制御のフローチャートである。尚、同図において、図4と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を適宜省略することとする。
図7において、吸入空気量Gaがサージ限界吸入空気量Gasg未満である場合(ステップS203:YES)、ECU100は、最大過給圧Pinmaxを算出する(ステップS301)。
ここで、最大過給圧Pinmaxとは、上述した慣性過給制御を実行することによって少なくとも低下する連通管206の圧力の最大値であり、本発明に係る「コンプレッサの下流側においてコンプレッサに到達する吸気脈動波のピーク圧」の一例である。慣性過給制御では、上述したように、吸気の脈動を生じさせ、且つ脈動波を吸気弁の閉弁時期に同期させること等により、吸気の充填効率を向上させることができる。このため、連通管206及びそれに連通する吸気管204における吸気の総量が減少して、吸気圧Pinが低下する。この際、吸気は脈動波であるから、吸気圧Pinもまた最大値と最小値とが存在するのである。
ECU100は、予め機関回転速度Ne及び過給圧Pinと最大過給圧Pinmaxとを対応付けてなる最大過給圧マップを保持しており、ステップS204においては、係る最大過給圧マップから現時点の過給圧Pin及び機関回転速度Neに対応する一の値を選択することにより、最大過給圧Pinmaxを算出する。但し、この種のマップが与えられておらずとも、然るべきアルゴリズムや演算式が与えられている場合には、適宜なされる数値演算処理の結果として、係る最大過給圧Pinmaxが算出されてもよい。
最大過給圧Pinmaxが算出されると、ECU100は、最大過給圧Pinmaxと、吸入空気量Ga及び大気圧P0に対応するサージ限界過給圧Pinsg(即ち、上述したサージ限界ラインSg1から導出可能である)とを比較し、最大過給圧Pinmaxの方が大きい場合には、その偏差に相当する分だけ過給圧が減少するように、コンプレッサバイパス弁227を制御し、過給圧Pinを低下させる(ステップS205)。また、ステップS204において、最大過給圧Pinmaxが、サージ限界過給圧Pinsg以下である場合には、慣性過給のみにより前後吸気圧比Rpinをサージ領域SG1の領域外に逃がし得るため、ステップS205はスキップされる。
このように、第2実施形態によれば、慣性過給によりコンプレッササージを回避する際に特有の問題となる、過給圧Pinの変動(即ち、脈動)を考慮し、慣性過給により過給圧Pinを低下させた際に、その脈動のピーク圧たる最大過給圧Pinmaxがサージ限界圧Pinsgを超えないように、過給圧Pinが調整される。このため、瞬時的にしろ過給圧Pinがサージ限界圧Pinmaxを超えることがなくなり、コンプレッササージを確実に回避することが可能となるのである。
尚、エンジン200には、サージタンク223及びインタークーラ222が備わっている。これらは、吸気管204と較べて十分な容積を保持しており、特にサージタンク223に至っては、慣性過給の際に位相反転手段として機能し得るように相対的に大きなボリュームが与えられている。このため、単にこれらが備わるのみによっても、これらは本発明に係る「ピーク圧低減手段」の一例として機能し得、顕著には連通管206で生じる吸気の脈動波が、コンプレッサ218まで到達する事態は生じ難い。
従って、サージタンク223及びインタークーラ222等の物理形状や容積等を、予めこれらがこの種のピーク圧低減手段として機能し得るように決定される場合には、好適には、第1実施形態に例示した如き平均過給圧に基づいた過給制御により、コンプレッササージを確実に防止することも可能である。
<第3実施形態>
次に、図8を参照し、本発明の第3実施形態に係る過給制御について説明する。ここに、図8は、第3実施形態に係る過給制御のフローチャートである。尚、同図において、図4と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を適宜省略することとする。
<第3実施形態>
次に、図8を参照し、本発明の第3実施形態に係る過給制御について説明する。ここに、図8は、第3実施形態に係る過給制御のフローチャートである。尚、同図において、図4と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を適宜省略することとする。
図8において、ECU100は、車両の運転条件として機関回転速度Ne及び目標トルクTetagを取得する(ステップS401)。ここで、目標トルクTetagは、機関回転速度Ne及びアクセル開度Taに基づいて、マップより選択的に取得される。目標トルクTetagが取得されると、ECU100は、サージ限界トルクTesgを取得し(ステップS402)、ステップS401において取得された目標トルクTetagが係るサージ限界トルクTesgよりも大きいか否かを判別する(ステップS403)。
ここで、図9を参照し、サージ限界トルクTesgについて説明する。ここに、図9は、サージ限界トルクTesgを規定するサージ限界線Sg2の模式図である。尚、同図において、図5と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を適宜省略することとする。
図9において、縦軸及び横軸に夫々エンジントルクTe及び機関回転速度Neが表されている。ここで、コンプレッサ218は、エンジントルクTeが、図示サージ領域SG2(即ち、本発明に係る「コンプレッササージ領域」の一例)内にある場合に、コンプレッササージにより十分な過給が困難となる。
ここで、サージ限界線Sg2とは、サージ領域SG2とそれ以外の領域との境界を規定する線であり、同一の機関回転速度Neで較べればサージ限界線Sg2よりも上側(高トルク側)が、また同一のエンジントルクで較べればサージ限界線Sg2よりも左側(低回転側)が、サージ領域SG2となる。いずれにせよ、サージ限界線Sg2により、サージ限界に相当する値が規定されることとなる。ECU100は、予めROMに、図9に示すサージ限界線Sg2を数値化してなる参照可能なサージ限界マップを保持している。
図8に戻り、ECU100は、このサージ限界マップから、サージ限界ラインSg2上で、ステップS401において取得された機関回転速度Neに相当する一のエンジントルクTeの値を選択し、サージ限界トルクTesgとして取得する。尚、サージ限界線Sg2は、サージ領域SG2とそれ以外の領域との境界線であるから、ステップS402においては、サージ限界トルクTesgの代わりに、ステップS401において取得された目標トルクTetagに対応するサージ限界機関回転速度Nesgを取得することも可能である。
ECU100は、目標トルクTetagがサージ限界トルクTesgよりも大きい場合(ステップS403:YES)、第1実施形態と同様に慣性過給制御による、過給効果を伴ったコンプレッササージの回避を実行する(即ち、ステップS204、S205及びS103)。目標トルクTetagがサージ限界トルクTesg以下である場合(ステップS403:NO)、処理はステップS401に戻される。
即ち、本実施形態では、吸入空気量Gaと前後吸気圧比Rpinとの関係に替えて、エンジントルクTeと機関回転速度Neとの関係に基づいてコンプレッササージが生じるか否かの判別が行われる。この場合も、エンジン200の物理特性が変化する訳ではないから、本発明に係る「前後吸気圧比が所定のコンプレッササージ領域外となるように」インパルス弁224の開閉特性が決定される点に変わりは無い。
ここで特に、本実施形態によれば、コンプレッササージが生じるか否かの判断に際し、目標トルクTetagが使用される。目標トルクTetagは、あくまで目標値であって、近未来的なエンジントルクの値である。従って、ステップS403の判断が「YES」側に分岐した時点では、コンプレッササージは未だ生じていない可能性が高い。即ち、本実施形態によれば、コンプレッササージが近未来的に発生するか否かを予見することにより、実際にはコンプレッサ218にコンプレッササージを生じさせることなくコンプレッササージを未然に回避し得る点において顕著に効果的である。
<第4実施形態>
次に、図10を参照し、本発明の第4実施形態に係る過給制御について説明する。ここに、図10は、第4実施形態に係る過給制御のフローチャートである。尚、同図において、図4と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を適宜省略することとする。
<第4実施形態>
次に、図10を参照し、本発明の第4実施形態に係る過給制御について説明する。ここに、図10は、第4実施形態に係る過給制御のフローチャートである。尚、同図において、図4と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を適宜省略することとする。
図10において、ECU100は、車両の運転条件として、先に述べた平均過給圧Pinave及びサイクル内過給圧偏差ΔPinを取得する(ステップS501)。ここで、サイクル内過給圧偏差ΔPinとは、吸気行程における過給圧Pinの最大値と最小値との偏差である。
続いて、ECU100は、圧力変動値DPを算出する(ステップS502)。圧力変動値DPは、ステップS501において取得されたサイクル内過給圧偏差ΔPinを平均過給圧Pinaveにより除したものである。圧力変動値DPを算出すると、ECU100は、この算出された圧力変動値DPが基準値DPthよりも大きいか否かを判別する(ステップS503)。
圧力変動値DPが基準値DPthよりも大きい場合(ステップS503:YES)、ECU100は、コンプレッササージが生じている旨の判断の下に、コンプレッササージの回避制御を実行する。圧力変動値DPが基準値DPth以下である場合(ステップS503:NO)、ECU100は、処理をステップS501に戻す。
コンプレッササージが生じている場合、コンプレッササージに特有の圧力変動(慣性過給の圧力変動とは性質が異なる)が生じるため、このように圧力変動値DPに基づいてコンプレッササージが生じているか否かの判別を行うことが可能である。
<第5実施形態>
次に、図11を参照し、本発明の第5実施形態に係る過給制御について説明する。ここに、図11は、第5実施形態に係る過給制御のフローチャートである。尚、同図において、図8と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を適宜省略することとする。
<第5実施形態>
次に、図11を参照し、本発明の第5実施形態に係る過給制御について説明する。ここに、図11は、第5実施形態に係る過給制御のフローチャートである。尚、同図において、図8と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を適宜省略することとする。
図11において、ECU100は、目標トルクTetagがサージ限界トルクTesgよりも大きい場合(ステップS403:YES)に、ステップS401で取得された機関回転速度Neの値に基づいて、機関回転速度Neの単位時間当たりの変化量を表す回転変化速度ΔNeを算出し、係る回転変化速度ΔNeが基準値ΔNeth未満であるか否かを判別する(ステップS601)。この際、回転変化速度ΔNeが基準値Neth未満である場合(ステップS601:YES)、コンプレッササージの回避制御が実行される。また、回転変化速度ΔNeが基準値Neth以上である場合(ステップS601:NO)、処理はステップS401に戻される。
即ち、本実施形態によれば、機関回転速度Neの変化速度が高い場合(例えば、低速側のギア段で加速している場合等)には、コンプレッサ218の動作点が早期にサージ領域から逸脱する旨の判断を行って、敢えてコンプレッササージの回避制御を行わない。このため、コンプレッササージによる車両の動力性能の低下が無視し得ない程度に顕在化するような場合に限って過給効果を伴うコンプレッササージ回避が実行され、インパルス弁224を駆動するための、有限の駆動エネルギ(ここではバッテリから供給される電力資源である)を効率良く使用することが可能となり、実践上有益である。
尚、上記各種実施形態では、過給圧Pin及び大気圧P0が、夫々本発明に係る「コンプレッサの下流側の吸気圧」及び「コンプレッサの上流側の吸気圧」の一例として検出される構成となっているが、これらに替えて又は加えて、よりコンプレッサ218に近接したコンプレッサ218の前後圧が検出されてもよい。コンプレッササージは、コンプレッサ218において生じる現象であるから、このようにコンプレッサ218の前後圧に基づいて各種制御を実行することにより、コンプレッササージを確実に回避することが可能である。
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う内燃機関の吸気制御装置もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
10…エンジンシステム、100…ECU、200…エンジン、202…気筒、204…吸気管、205…スロットルバルブ、206…連通管、207…吸気バルブ、216…タービン、218…コンプレッサ、222…インタークーラ、223…サージタンク、224…インパルス弁、225…アクチュエータ、226…コンプレッサバイパス通路、227…コンプレッサバイパス弁、228…過給圧センサ。
Claims (6)
- 車両に備わり、複数の気筒、該複数の気筒に連通する吸気通路、該吸気通路にコンプレッサを有する過給器及び該吸気通路において該コンプレッサ下流側に設置され、開閉駆動されることにより吸気の脈動を利用した慣性過給が可能に構成された吸気制御弁を備えてなる内燃機関の吸気制御装置であって、
前記慣性過給により前記コンプレッサの上流側と下流側との間の吸気圧の比たる前後吸気圧比が所定のコンプレッササージ領域外となるように前記吸気制御弁の開閉特性を決定する決定手段と、
前記決定された開閉特性に基づいて前記吸気制御弁を制御する制御手段と
を具備することを特徴とする内燃機関の吸気制御装置。 - 前記前後吸気圧比が前記コンプレッササージ領域に該当するか否かを判別する判別手段を具備し、
前記制御手段は、前記前後吸気圧比が前記コンプレッササージ領域に該当する旨が判別された場合に前記決定された開閉特性に基づいて前記吸気制御弁を制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の吸気制御装置。 - 前記コンプレッサの下流側の圧力は、前記コンプレッサの下流側における平均吸気圧である
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の内燃機関の吸気制御装置。 - 前記コンプレッサの下流側の圧力は、前記コンプレッサの下流側において前記コンプレッサに到達する吸気脈動波のピーク圧である
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の内燃機関の吸気制御装置。 - 前記内燃機関は、少なくとも前記吸気脈動波のピーク圧を低減可能な、前記吸気制御弁とは異なるピーク圧低減手段を更に具備する
ことを特徴とする請求項4に記載の内燃機関の吸気制御装置。 - 前記ピーク圧低減手段は、前記吸気通路における前記コンプレッサの下流に吸入空気を冷却可能に設置される冷却手段、前記吸気通路における前記コンプレッサの下流に設置される吸気絞り弁、前記吸気通路における前記コンプレッサの下流に設置されるサージタンク、前記吸気通路における前記コンプレッサの下流に設置されるレゾネータ、前記過給器の過給圧を調整可能な過給圧調整手段のうち少なくとも一部を含む
ことを特徴とする請求項5に記載の内燃機関の吸気制御装置。
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-
2008
- 2008-06-10 JP JP2008152063A patent/JP2009299506A/ja active Pending
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