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JP2009179037A - 積層フィルム - Google Patents

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JP2009179037A
JP2009179037A JP2008022458A JP2008022458A JP2009179037A JP 2009179037 A JP2009179037 A JP 2009179037A JP 2008022458 A JP2008022458 A JP 2008022458A JP 2008022458 A JP2008022458 A JP 2008022458A JP 2009179037 A JP2009179037 A JP 2009179037A
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義和 佐藤
Yoshihiko Sakaguchi
善彦 坂口
Osamu Watanabe
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Abstract

【課題】
本発明は、難燃性を改善し、米国UNDERWRITERS LABORATORIES社規格UL−94に規定されたHBF、V−2相当の難燃レベルを有する積層フィルムを提供するものである。
【解決手段】
本発明の熱可塑性樹脂フィルムは、基材熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも片面に、難燃剤とシランカップリング剤を含有する塗布層が1層以上設けられ、該塗布層中のバインダー樹脂とシランカップリング剤が結合している積層フィルムである。
また、本発明のバックライト用ランプリフレクター、バックライトおよびLEDを搭載したバックライトは、それぞれかかる積層フィルムを用いて構成されているものである。
【選択図】図1

Description

本発明は、電子部品等に使用する難燃性を有する積層フィルムに関するものである。さらに詳しくは、液晶ディスプレイ用バックライト等に組み込む積層フィルム、太陽電池モジュールの封止フィルムやバックシート用の積層フィルム、回路材料用の積層フィルムである。
液晶テレビや太陽電池モジュールでは生産性や価格等の観点から多数の熱可塑性樹脂フィルムが使用されている。例えば液晶テレビではバックライトに、太陽電池モジュールでは裏面封止用シートに、それぞれ光源の光や太陽光を反射するための反射フィルムが用いられている。これら反射フィルムとしては、気泡により形成された多孔質の白色熱可塑性樹脂フィルムが一般的に用いられている(特許文献1参照)。
液晶テレビや太陽電池モジュールに用いられる反射フィルムにおいては、反射特性の向上が強く求められる一方、従来以上に難燃性も同時に求められている。この理由として、例えば液晶テレビにおいては、輝度の諸特性や画面の色再現性を改善するために、バックライトに使用する冷陰極管の出力を高めたり、発光ダイオード(LED)が使用されたりしており、発生する熱や漏れ電流によって使用する反射フィルムの発火・引火に対する安全性が必要だからである。例えば、液晶テレビ用バックライトの内部温度は一般的に約70℃〜90℃まで上昇するし、漏れ電流の発生や駆動回路への不意な接触による発火の恐れなどがある。
しかしながら、熱可塑性樹脂フィルム自体は有機物を主成分としているため燃焼しやすかったり、反射フィルムに使用する白色熱可塑性樹脂フィルムではフィルム内部のボイド構造を有するため、一度発火が発生すると燃焼が停止しないばかりか、ボイド内部に存在する空気が燃焼を促進してしまう。これら熱可塑性樹脂フィルムにおいて難燃性を改善するための様々な方法が提案されている。これら熱可塑性樹脂フィルムにおいて、難燃性を改善するための様々な方法が提案されている。例えば、ポリエステル系樹脂発泡体の樹脂内に難燃剤や難燃助剤を直接含有し難燃性を付与した方法が提案されている(特許文献2参照。また、熱可塑性樹脂や合成樹脂発泡シート内に含有する難燃剤粒子の表面を各種カップリング剤処理することにより分散性を向上させる方法が提案されている(特許文献3〜5参照)。さらに、難燃剤を樹脂や溶剤に分散含有させた難燃性塗布剤も提案されており(特許文献6、7参照)、それら難燃性塗布剤を基材熱可塑性樹脂フィルム上に塗布することにより、難燃性を付与することも可能である。
特開平8−262208号公報 特開2006−249158号公報 特開2000−219814号公報 特開2003−25517号公報 特開2006−183520号公報 特開2002−69384号公報 特開2004−39273号公報
しかしながら、特許文献2のように樹脂に耐熱性化合物や難燃性化合物を混練し、成型する方法では、生産性やコストの点から添加物量に実質限界があるため、反射特性や難燃性が向上しない等の問題がある。特許文献3〜5のように耐熱性化合物や難燃性化合物を表面処理することにより分散性を向上させ、添加量をできるだけ多くし難燃効率を向上させるような方法では、表面処理剤が溶出やブリードアウトするなどの経時的な変化を起こし、実質表面処理剤が難燃性の向上に寄与しなかったり、外観を損ねる等の問題が生じる。特許文献7.8のように樹脂や溶剤に難燃剤を分散含有させた難燃性塗布剤を基材熱可塑性樹脂フィルム上に塗布する方法では、難燃性付与のためには難燃剤や添加剤を多量に添加する必要があり、塗布層と基材フィルムの密着性が低く剥離が生じてしまったり、塗布剤の塗工性が悪く外観を損ねる等の問題が生じる。
本発明は、かかる課題を解決するために、次のような手段を採用する。すなわち、本発明は、基材熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも片面に、難燃剤とシランカップリング剤を含有する塗布層が1層以上設けられ、該塗布層中のバインダー樹脂とシランカップリング剤が結合している積層フィルムである。
また、本発明のバックライト用ランプリフレクター、直下型バックライトおよびLEDを搭載した直下型バックライトは、それぞれ本発明の積層フィルムを用いて構成されているものである。
本発明によれば、米国UNDERWRITERS LABORATORIES社規格UL−94(以下、UL−94)に規定されたHBF、V−2相当の難燃レベルを有する積層フィルムを提供できる。本発明の積層フィルムは液晶ディスプレイ用のエッジライト方式バックライトのリフレクター、および直下型方式バックライトの反射板、LEDを搭載したバックライトや、さらに、各種面光源の反射板や、反射特性が要求される太陽電池モジュールの封止フィルムやバックシートとして、好適に使用することができる。
本発明は、UL−94に規定されたHBF、V−2相当の難燃レベルを有する熱可塑性樹脂フィルムについて、鋭意検討し、基材熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも片面に塗布層を1層以上有し、その塗布層を形成するバインダー樹脂とシランカップリング剤とが結合している塗布層を用いてみたところ、前記課題を一挙に解決することを究明したものである。
本発明の積層フィルムは、基材熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも片面に難燃剤とシランカップリング剤を含有する塗布層が1層以上設けられ、該塗布層中のバインダー樹脂とシランカップリング剤が結合しているものである。
かかる塗布層に難燃剤とシランカップリング剤を含有し、かつ、該塗布層中のバインダー樹脂とシランカップリング剤が結合していることで難燃性が向上する理由は明らかではないが、難燃剤は、燃焼した際に炭化を促し酸素を遮断する効果や、窒素、窒素酸化物、水等の不燃性ガスが生成することにより燃焼に必要な相対酸素濃度を減少する効果、前記不燃性ガスが気化することにより燃焼に必要なエネルギーを失活する効果、難燃剤自身が不燃物であることにより燃焼部位の相対可燃物濃度が減少する効果、等により難燃性が向上し、また、シランカップリング剤は構造内にケイ素元素を有するため、そのケイ素元素との結合エネルギーが高いことに起因した塗布層の耐熱性向上による遅燃効果や、後述するようにバインダー樹脂とシランカップリング剤が結合していることにより、燃焼した際にシランカップリング剤を介して難燃剤とバインダーとの間でケイ素元素を結合骨格の一部に組み込んだ複合的な炭化層が形成し酸素を遮断する効果が向上する効果、等により難燃剤との相乗効果により、難燃性が向上すると推定している。
かかる塗布層を設けないか、もしくは、難燃剤とシランカップリング剤のどちらかを含有しないと、その熱可塑性樹脂フィルムの難燃性が不足したり、また、バインダー樹脂とシランカップリング剤が結合していないと難燃性向上効果が低い場合がある。
尚、本発明におけるバインダー樹脂とシランカップリング剤との結合は、バインダー樹脂やシランカップリング剤の構造に依存し一義的に限定することはできないが、燃焼時にシランカップリング剤が難燃剤と作用するためには、バインダー樹脂の主鎖骨格中に結合しているのではなく、主鎖末端や側鎖に結合していることが好ましく、一部主鎖骨格中に結合していても主鎖末端や側鎖のどちらか一方もしくは両方に結合していれば、特にこれらに限定されるものではない。
本発明において、かかる塗布層を形成するバインダー樹脂成分の例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ナイロン樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、等の樹脂が挙げられ、これらの樹脂は単独で用いても、あるいは2種類以上の共重合体及び/又は混合物としたものを用いても良く、また、用途によって架橋構造を有していても良い。
本発明において、バインダー樹脂とシランカップリング剤との結合を形成する方法は特に限定されるものではなく、バインダー樹脂のモノマーとシランカップリング剤とを反応させて、あらかじめシランカップリング剤との結合を形成した反応性モノマーを重合もしくは他の反応性モノマーと共重合する方法、メタアクリル基のような重合可能な不飽和結合を含有した官能基を有するようなシランカップリング剤を重合もしくは他の反応性モノマーと共重合する方法、さらに、あらかじめ充分重合が進行した、反応性官能基を主鎖末端や側鎖に有するバインダー樹脂に、シランカップリング剤を反応させて結合を形成する方法等が挙げられる。尚、前記の共重合する他の反応性モノマーとしてはアクリル系、スチレン系などのビニル系モノマーが汎用性が高く、経済的にも好ましいが、スチレン系ビニルモノマーは芳香族環を有しているため、後述するように本発明の熱可塑性樹脂フィルム使用する環境によっては、光、特に紫外線によって黄変しやすいため、耐光性という点では、アクリル系ビニルモノマーとの共重合が好ましく使用されるが、特にこれらに限定されるものではない。また、前記バインダー樹脂中の主鎖末端や側鎖の反応性官能基としては、例えば、ヒドロキシル基、カルボキシル基、イソシアネート基、エポキシ基、等が挙げられるが、使用するシランカップリング剤の構造に依存し一義的に限定することはできないため、特にこれらに限定されるものではない。
本発明において、かかる塗布層を形成するバインダー樹脂とシランカップリング剤が結合していることが重要である。
尚、シランカップリング剤とは一般的にXSi(OR)4−n(n=1〜3)で表される構造の化合物で、1分子内に各種合成樹脂などの有機系材料と親和性あるいは反応性のある官能基Xと、無機金属や無機金属化合物などの無機系材料と親和性あるいは反応性のある官能基ORを有するシラン化合物である。官能基Xとしては、例えば、ビニル基、エポキシ基、スチリル基、アクリロキシ基、メタクリロキシ基、アミノ基、メルカプト基、ウレイド基、スルフィド基、イソシアネート基、ケチミノ基、等が挙げられ、官能基ORとしては、例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシなどのアルコキシ基やアセトキシ基、等が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
これらシランカップリング剤としては、具体的には、例えば、官能基ORがメトキシ基のうち、官能基Xがビニル基のKBM−1003(信越化学工業(株)製)、Z−6300、Z−6825(東レ・ダウコーニング(株)製)、官能基Xがエポキシ基のKBM−303、KBM−403(信越化学工業(株)製)、Z−6040、Z−6043、Z−6044(東レ・ダウコーニング(株)製)、官能基Xがスチリル基のKBM−1403(信越化学工業(株)製)、官能基Xがアクリロキシ基のKBM−5103(信越化学工業(株)製)、Z−6530(東レ・ダウコーニング(株)製)、官能基Xがメタクリロキシ基のKBM−502、KBM−503(信越化学工業(株)製)、Z−6030、Z−6033(東レ・ダウコーニング(株)製)、官能基Xがアミノ基のKBM−602、KBM−603、KBM−903、KBM−573、KBM−575、KBM−6123(信越化学工業(株)製)、Z−6020、Z−6023、Z−6094、Z−6610、Z−6883(東レ・ダウコーニング(株)製)、官能基Xがメルカプト基のKBM−802、KBM−803(信越化学工業(株)製)、Z−6062(東レ・ダウコーニング(株)製)が挙げられる。
また、官能基ORがエトキシ基のうち、官能基Xがビニル基のKBE−1003(信越化学工業(株)製)、Z−6513(東レ・ダウコーニング(株)製)、官能基Xがエポキシ基のKBE−303、KBE−403(信越化学工業(株)製)、Z−6041、Z−6042(東レ・ダウコーニング(株)製)、官能基Xがメタクリロキシ基のKBE−502、KBE−503(信越化学工業(株)製)、官能基Xがアミノ基のKBE−603、KBE−903、KBE−9103(信越化学工業(株)製)、Z−6011(東レ・ダウコーニング(株)製)、官能基Xがメルカプト基のZ−6911(東レ・ダウコーニング(株)製)、官能基Xがウレイド基のKBE−585(信越化学工業(株)製)、Z−6675、Z−6676(東レ・ダウコーニング(株)製)、官能基Xがスルフィド基のKBE−846(信越化学工業(株)製)、Z−6920、Z−6940(東レ・ダウコーニング(株)製)、官能基Xがイソシアネート基のKBE−9007(信越化学工業(株)製)、官能基Xがケチミノ基のZ−6860(東レ・ダウコーニング(株)製)が挙げられる。また、官能基ORがアセトキシ基では、官能基Xがビニル基のZ−6075(東レ・ダウコーニング(株)製)が挙げられる。また、官能基ORがメトキシエトキシ基では、官能基Xがビニル基のZ−6172(東レ・ダウコーニング(株)製)が挙げられる。また、官能基ORがイソプロポキシ基では、官能基Xがビニル基のZ−6550(東レ・ダウコーニング(株)製)が挙げられる。
尚、これらシランカップリング剤はバインダー樹脂や用途によって少なくとも1種類を任意に選択して使用すればよく、2種以上を混合してもよく、特にこれらに限定されるものではない。
本発明において、バインダー樹脂とシランカップリング剤との結合の形成を確認する方法は特に限定されるものではないが、例えば、FT−IR(フーリエ変換赤外分光光度計)等の装置を用いた赤外分光法により赤外吸収スペクトルを測定し、バインダー樹脂の反応性官能基及びシランカップリング剤の官能基Xの各吸収に対応した領域のピークから、それら各官能基の残存率を経時的に追跡したりすることによって、反応進行の状況や分子の結合状態を同定し、バインダー樹脂とシランカップリング剤との結合の有無を確認する方法等が挙げられる。
本発明において、かかる塗布層に含有される難燃剤は、無機金属及び/又は無機金属化合物であることが好ましい。塗布層中に無機金属や無機金属化合物の難燃剤を含有することで、難燃剤構造内の無機金属自身が不燃物であることにより燃焼部位の相対可燃物濃度が減少する効果に加えて、燃焼した際に、バインダー樹脂と結合したシランカップリング剤が難燃剤構造内の無機金属と作用し、本発明の積層フィルムの難燃性が向上する。
かかる無機金属とは、無機金属単体のことであり、無機金属化合物とは、後述するような分子構造内に無機金属単体の元素とその他の元素を含む物質のことである。
かかる無機金属としては、例えば、アルミニウム、銀、金、銅、鉄、白金、亜鉛等が挙げられ、コストの点からアルミニウムが好ましいが、特にこれらに限定されるものではない。
また、無機金属化合物とは、無機金属の元素と他の元素を分子構造内に有する物質であり、例えば、他の元素が水素や酸素であれば無機金属水酸化物、無機金属酸化物が挙げられ、他の元素が前記記載のノンハロゲン系難燃剤に含まれるリンや窒素であったり、その他炭素、ホウ素等であればそれらの金属塩やその金属化合物、すなわち、無機金属のリン酸系誘導体の塩、無機金属の窒化物、無機金属のアンモニウム塩、無機金属の炭酸塩、無機金属の硫酸塩、無機金属のケイ酸塩等が挙げられる。これら無機金属化合物としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、カルシウム・アルミネート水和物等の無機金属水酸化物、シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化鉄、酸化コバルト、酸化クロム、タルク等の無機金属酸化物、ホスホン酸アルミニウム、ホスフィン酸アルミニウム、ジホスフィン酸アルミニウム、ホスホン酸マグネシウム、ホスフィン酸マグネシウム、ジホスフィン酸マグネシウム、ホスホン酸カルシウム、ホスフィン酸カルシウム、ジホスフィン酸カルシウム、リン酸カルシウムを主成分としたハイドロキシアパタイト等の無機金属のリン酸系誘導体の塩やその複合体、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛等の無機金属の炭酸塩、硫酸バリウム、硫化亜鉛等の無機金属の硫酸塩、カオリン等の無機金属のケイ酸塩等の等が挙げられ、具体的には、例えば、水酸化アルミニウムとしてはハイジライト(登録商標)H−43H(昭和電工(株)製)等が挙げられ、アルミナとしてはALH(河合石灰工業(株)製)等を使用することができるが、特にこれらに限定されるものではない。
本発明において、かかる塗布層に含有される難燃剤は、無機金属化合物のうちの無機金属のリン酸系誘導体の塩及び/又はその複合体であるがより好ましい。難燃剤構造内の無機金属自身が不燃物であることにより燃焼部位の相対可燃物濃度が減少する効果と、燃焼した際、バインダー樹脂と結合したシランカップリング剤と難燃剤構造内の無機金属との間の作用により難燃性が向上する効果に加えて、難燃剤の構造内にリン原子が含有していると、燃焼した際に炭化を促し酸素を遮断する効果が付与され、難燃剤分子内のリン元素含有率が高いほどその酸素遮断効果が高くなる。無機金属のリン酸系誘導体の塩及び/又はその複合体であると、その無機金属の価数に伴い、リン原子が含有しているリン酸系誘導体部位の数が変化するため、価数の大きい無機金属を選択することにより1分子内にリンが多く含む化合物となり、酸素遮断がより効果的に発現するため、結果的に本発明の熱可塑性樹脂フィルムの難燃性をより向上させることができる。そのような意味で、燃焼した際の炭化を促進するリン原子と燃焼部位の相対可燃物濃度を減少する不燃物である無機金属の両方を分子内に有する、無機金属のリン酸系誘導体の塩及び/又はその複合体の難燃剤がより好適に用いることできる。
本発明において、かかる塗布層に含有される無機金属のリン酸系誘導体の塩及び/又はその複合体の難燃剤として、例えば、ホスホン酸アルミニウム、ホスフィン酸アルミニウム、ジホスフィン酸アルミニウム、ホスホン酸マグネシウム、ホスフィン酸マグネシウム、ジホスフィン酸マグネシウム、ホスホン酸カルシウム、ホスフィン酸カルシウム、ジホスフィン酸カルシウム、リン酸カルシウムを主成分としたハイドロキシアパタイト等の無機金属のリン酸系誘導体の塩やその複合体の難燃剤が特に好ましく使用でき、さらに好ましくは無機金属がイオン化した際の価数が大きく、1分子内のリン含有率を高くすることが出来るホスホン酸アルミニウム、ホスフィン酸アルミニウム、ジホスフィン酸アルミニウムである。最も好ましくは、ホスフィン酸アルミニウムである。これら無機金属のリン酸塩やその複合体としては、具体的には、例えば、Exolit(登録商標)OP930、Exolit(登録商標)OP935、Exolit(登録商標)OP1230、Exolit(登録商標)OP1312(クラリアントジャパン(株)製)、ボロネックス、HAP(丸尾カルシウム(株)製)等を使用することができる。
本発明においては、前記記載の無機金属、無機金属化合物から選ばれた難燃剤のうち、少なくとも1種類を任意に選択して使用すればよく、2種以上を混合してもよく、特にこれらに限定されるものではない。
本発明において、難燃剤の含有率は、塗布層全体に対して30重量%以上であることが好ましい。含有率が30重量%未満であると、難燃性が向上せず、UL−94に規定されたHBF、V−2相当の難燃レベルが得られない場合がある。かかる難燃剤の含有率は、より好ましくは40重量%以上である。また、上限は特に限定されないが55重量%を超えると塗布層と基材熱可塑性樹脂フィルムとの密着性が著しく低下し、剥離が生じたり、成形性、生産性の面からも劣る場合がある。
本発明において、難燃性向上の点から、かかる塗布層に含有する難燃剤の形状は、塗布面に平行な方向から観察した難燃剤の平均投影面積Sと、塗布面に垂直な方向から観察した難燃剤の平均投影面積Lとの比S/Lが1.0未満となるような非真球形状であることが好ましい。ここでいう非真球形状とは、実質は真球形状以外の形状のことであるが、非真球形状とすることで難燃性が向上する理由は明らかではないものの、非真球形状であると、燃焼した際に、バインダー樹脂と結合したシランカップリング剤と難燃剤との間の作用がより複雑に起こり、前述したシランカップリング剤を介した難燃剤とバインダーとの間で形成する、ケイ素元素を結合骨格の一部に組み込んだ複合的な炭化層が、さらに複雑に且つ緻密に形成し酸素を遮断する効果がより向上すると推定している。本発明において難燃性を得るためには、かかる塗布層に含有する難燃剤の形状は、塗布面に平行な方向から観察した難燃剤の平均投影面積Sと、塗布面に垂直な方向から観察した難燃剤の平均投影面積Lとの比S/Lが1.0未満となるような非真球形状であることが必ずしも必須ではなく、難燃剤とシランカップリング剤を含有し、且つバインダー樹脂とシランカップリング剤が結合している塗布層を塗布すれば、難燃性を向上しうるには充分ではある。しかしながら、塗布面に平行な方向から観察した難燃剤の平均投影面積Sと、塗布面に垂直な方向から観察した難燃剤の平均投影面積Lとの比S/Lが1.0未満となるような非真球形状であると、要求する難燃性を得るために、難燃剤の含有率を抑えたり、塗布層をより薄くすることができ、生産性やコストの面から有利である。S/Lは好ましくは0.6以下であり、より好ましくは0.2以下である。S/Lの下限は特に規定するものではないが、実質的に作ることができる難燃剤を考えれば0.01以上が好ましい。このようにS/Lが1.0未満となるような非球形状としては、例えば、星状、葉状や円盤状のような扁平状、菱形状、直方状、針状、金平糖状、不定形状などが挙げられるが、難燃剤の成分や製造方法に依存し一義的に限定することはできないため、特にこれらに限定されるものではない。
ここで、「平均投影面積S」、「平均投影面積L」、「比S/L」は以下のようにして求める。先ず、本発明の熱可塑性樹脂フィルムを、日本ミクロトーム研究所(株)製ロータリー式ミクロトームを使用し、ナイフ傾斜角度3°にて塗布面に垂直な方向に切断する。得られた熱可塑性樹脂フィルムの塗布層断面を、トプコン社製走査型電子顕微鏡ABT−32を用いて観察する。観察倍率は、1視野内に塗布層に含有された難燃剤が最低20個見える倍率とする。この1視野内に存在する難燃剤部分のうち、投影面積が大きいものから5箇所の面積を測定する。同じようにして任意の5視野を観察し、合計25箇所の投影面積の平均値を平均投影面積Sとする。次いで、塗布面に垂直な方向より塗布層面を同様に観察し、合計25箇所の投影面積の平均値を平均投影面積Lとする。求めた平均投影面積Sを平均投影面積Lで除してS/Lとする。
本発明においては、塗布層を、基材熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも片面に形成するにあたり、任意の方法で形成することができる。例えば、難燃剤とシランカップリング剤を含有した塗液をグラビアコート、ロールコート、スピンコート、リバースコート、バーコート、スクリーンコート、ブレードコート、エアーナイフコートよびディッピングなどの各種塗布方法を用いて基材熱可塑性樹脂フィルム製造時に塗布(インラインコーティング)したり、結晶配向完了後の基材熱可塑性樹脂フィルム上に塗布(オフラインコーティング)する方法などが挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
本発明にかかる塗布層の厚みは、難燃剤とシランカップリング剤の種類や、難燃剤の含有率や、後述する基材熱可塑性樹脂フィルム中に含有する無機粒子の含有率等に依存し一義的に限定することはできないが、2μm以上であることが好ましい。2μm未満であると難燃性が向上せず、UL−94に規定されたHBF、V−2相当の難燃レベルが得られない場合がある。塗布層の厚みは、より好ましくは6μm以上、特に好ましくは10μm以上である。尚、ここでいう塗布層の厚みとは、難燃剤とシランカップリング剤を含有する塗布層の総厚みのことで、基材熱可塑性樹脂フィルムの両面に塗布層を有する場合や2層以上有する場合は、それら塗布層全体の合計厚みのことである。
本発明の積層は、バックライトや太陽電池モジュールとして使用すると、冷陰極管などのランプや屋外からの光、特に紫外線によって基材熱可塑性樹脂フィルムが劣化する場合があるので(例えば黄変などの光学的劣化、あるいは低分子化する分解劣化など)、基材熱可塑性樹脂フィルムに設ける塗布を形成するバインダー樹脂中や難燃剤中に本発明の効果を阻害しない範囲内で、紫外線吸収剤および/あるいは光安定剤を含有するのが好ましい。
かかる紫外線吸収剤、光安定剤としては、無機系と有機系に大別されるが、含有する形態に関しては特に限定されるものではなく、かかる塗布層を形成するバインダー樹脂と混合する等の方法でも良く、かかる塗布層よりブリードアウトすることを防ぎたい場合は、例えば該塗布層を形成する樹脂と共重合する方法、また難燃剤自体が紫外線を吸収する粒子である等の方法でも良い。
かかる無機系紫外線吸収剤としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化ジルコニウムなどが一般的に知られており、中でも酸化亜鉛、酸化チタンおよび酸化セリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種類がブリードアウトせず、経済性、耐光性、紫外線吸収性、光触媒活性に優れるという点から好ましく用いられる。かかる紫外線吸収剤は、必要に応じて数種類併用する場合もある。中でも酸化亜鉛が経済性、紫外線吸収性、光触媒活性という点で最も好ましい。かかる酸化亜鉛としては、FINEX−25LP、FINEX−50LP(堺化学工業(株)製)などを使用することができる。
また、かかる有機系紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール、ベンゾフェノンなどが挙げられる。特にベンゾトリアゾールは構造内に窒素を含有するため難燃剤としての作用も有するため好適に用いることができるが、特にこれらに限定されるものではない。これらの紫外線吸収剤は、紫外線を吸収するのみであり、紫外線照射により発生する有機ラジカルを捕捉することができないため、このラジカルにより連鎖的に基材熱可塑性樹脂フィルムが劣化することがある。これらのラジカル等を捕捉するために光安定化剤が好適に併用され、かかる光安定化剤としてはヒンダードアミン(HALS)系化合物が好ましく使用される。
ここで、かかる有機系紫外線吸収剤および/または光安定化剤を固定させる共重合モノマーとしては、アクリル系、スチレン系などのビニル系モノマーが汎用性が高く、経済的にも好ましい。かかる共重合モノマーのなかでも、スチレン系ビニルモノマーは芳香族環を有しているため、黄変しやすいため、耐光性という点では、アクリル系ビニルモノマーとの共重合が最も好ましく使用される。
なお、前記ベンゾトリアゾールに反応性ビニルモノマーが置換されたものとして、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール(商品名:RUVA−93);大塚化学(株)製)を使用することができ、また、ヒンダードアミン系化合物に反応性ビニルモノマーが置換されたものとして、4−メタクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン(「アデカスタブLA−82」;(株)ADEKA製)を使用することができる。
本発明においては、かかる有機系紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール、ベンゾフェノンなどの有機紫外線吸収剤を含有する樹脂、あるいはベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系反応性モノマーを共重合した樹脂、さらにはこれらにヒンダードアミン(HALS)系反応性モノマーなどの光安定剤を含有及び/又は共重合した樹脂を、本発明の効果を阻害しない範囲内で使用することができる。
かかるベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系反応性モノマーを共重合した樹脂、さらにはこれらにヒンダードアミン(HALS)系反応性モノマーを共重合した樹脂などを含む有機紫外線吸収樹脂は薄層で紫外線吸収効果が高く、より好ましく、そのうちベンゾトリアゾールは構造内に窒素を含有するため難燃剤としての作用も有するため特に好ましい。
これらの製造方法等については、特開2002−90515の〔0019〕〜〔0039〕に詳細に開示されている。中でもアクリルモノマーと紫外線吸収剤の共重合物を有効成分として含むハルスハイブリッド(登録商標)((株)日本触媒製)などを使用することができる。
本発明にかかる基材熱可塑性樹脂フィルムは、バックライトや太陽電池モジュールの反射フィルムとして使用する場合には可視光線反射率が高ければ高い方が良い。このためには内部に気泡及び/又は非相溶の粒子を含有する白色熱可塑性樹脂フィルムが好ましく使用される。これらの白色熱可塑性樹脂フィルムとしては限定されるものではないが、多孔質の未延伸、あるいは二軸延伸ポリプロピレンフィルム、多孔質の未延伸あるいは延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムなどのポリオレフィン系やポリエステル系が例として好ましく用いられ、特に成形性や生産性の点からポリエステル系が好ましく用いられる。
これらの製造方法等については特開平8−262208の〔0034〕〜〔0057〕、特開2002−90515の〔0007〕〜〔0018〕、特開2002−138150の〔0008〕〜〔0034〕等に詳細に開示されている。中でも特開2002−90515の中に開示されている多孔質白色二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが前述の理由で本発明にかかる基材熱可塑性樹脂フィルムとして好ましい。
更に好ましくは耐熱性や反射率の点からポリエチレンナフタレートとの混合及び/又は共重合した多孔質白色二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムである。最も好ましくは、基材の白色熱可塑性樹脂フィルム自体の難燃性を向上させるために無機粒子を含有する多孔質白色二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムである。
かかる基材熱可塑性樹脂フィルム中に含有する無機粒子の含有率は、基材熱可塑性樹脂フィルムの全重量に対して2重量%以上であることが好ましく、より好ましくは7重量%以上、最も好ましくは30重量%以上である。本発明において難燃性を得るためには、基材熱可塑性樹脂フィルム中に含有する無機粒子の含有率は、基材熱可塑性樹脂フィルムの全重量に対して2重量%以上であることが必ずしも必須ではなく、難燃剤とシランカップリング剤を含有し、且つバインダー樹脂とシランカップリング剤が結合している塗布層を塗布すれば、難燃性を向上しうるには充分ではある。しかしながら、基材熱可塑性樹脂フィルム中に含有する無機粒子の含有率が2重量%以上であると、要求する難燃性を得るために、ケイ素元素を含む難燃剤やケイ素元素を含む化合物の含有率を抑えたり、塗布層をより薄くすることができ、生産性やコストの面から有利である。
本発明にかかる基材熱可塑性樹脂フィルムの構成は、使用する用途や要求する特性により適宜選択すれば良く、特に限定されるものではないが、少なくとも1層以上の構成を有する単層及び/又は2層以上の複合フィルムが好ましく、その少なくとも1層以上に気泡及び/又は無機粒子を含有していることが好ましい。
単層構成(=1層)の例としては、たとえば単層のA層のみの基材熱可塑性樹脂フィルムであり、前記A層に無機粒子及び/又は気泡を含有させた構成のものが挙げられる。その無機粒子の含有率は基材熱可塑性樹脂フィルムの全重量に対して2重量%以上であることが好ましく、より好ましくは7重量%以上、最も好ましくは10重量%以上であるが、難燃剤とケイ素元素を含む化合物を含有する塗布層を前記条件(i)(ii)(iii)を満たした上で充分量塗布すれば、特にこれらに限定されるものではない。また、2層構成の例としては、前記A層にB層を積層した、A層/B層の2層構成の基材熱可塑性樹脂フィルムであり、これらA、B層少なくともどちらか1層中に、無機粒子及び/又は気泡を含有させた構成のものが挙げられる。その無機粒子の含有率は基材熱可塑性樹脂フィルムの全重量、つまり2層の全重量に対して2重量%以上であることが好ましく、より好ましくは7重量%以上、最も好ましくは30重量%以上であるが、難燃剤とケイ素元素を含む化合物を含有する塗布層を前記条件(i)(ii)(iii)を満たした上で充分量塗布すれば、特にこれらに限定されるものではない。さらに、3層構成の例としては、前記同様に、A層/B層/A層やA層/B層/C層の3層を積層してなる3層積層構造の基材熱可塑性樹脂フィルムであり、各層の内少なくとも1層中に、無機粒子及び/又は気泡を含有させた構成のものが挙げられる。その無機粒子の含有率は、前記同様に、基材熱可塑性樹脂フィルムの全重量に対して2重量%以上であることが好ましく、より好ましくは7重量%以上、更に好ましくは30重量%以上であるが、難燃剤とケイ素元素を含む化合物を含有する塗布層を前記条件(i)(ii)(iii)を満たした上で充分量塗布すれば、特にこれらに限定されるものではない。3層構成の場合、生産性の観点からB層が気泡を含有する層であることが最も好ましい。
かかる基材熱可塑性樹脂フィルムに含有する無機微粒子の数平均粒子径は、0.3〜2.0μmであるのが好ましい。また、かかる無機粒子としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化マグネシウム、硫酸バリウム、硫化亜鉛、リン酸カルシウム、シリカ、アルミナ、マイカ、雲母チタン、タルク、クレー、カオリン、フッ化リチウム、フッ化カルシウム等を用いることができる。
本発明の場合、かかる無機粒子のうち、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタンを使用した時が最も好ましく難燃性と反射率を得ることができるので好ましく使用される。かかる無機粒子は数平均粒子径0.3〜2.0μm、比表面積が15〜75m/g、吸油量が15〜40ml/100gであるものが、効果的に最も好ましく使用される。
次に前記基材熱可塑性樹脂フィルムのうち3層構成白色熱可塑性樹脂フィルムの製造方法について説明するが、この例に限定されるものではない。
まず、非相溶ポリマーとしてポリメチルペンテンを、低比重化剤としてポリエチレングリコール、ポリブチレンテレフタレートとポリテトラメチレングリコール共重合物を、ポリエチレンテレフタレートに入れる。それを充分混合・乾燥させて270〜300℃の温度に加熱された押出機Bに供給する。BaSO、CaCO、TiOなどの無機物および/または有機物添加剤を含んだポリエチレンテレフタレートを常法により押出機Aに供給する。そして、Tダイ3層口金内で押出機Bのポリマーが内層(B層)に、押出機Aのポリマーが両表層(A層)に配置されるようにして、A層/B層/A層なる構成の3層に積層する。
この溶融積層シートを、ドラム表面温度10〜60℃に冷却されたドラム上で静電気力にて密着冷却固化し、未延伸フィルムを得る。該未延伸フィルムを80〜120℃に加熱したロール群に導き、長手方向に2.0〜5.0倍縦延伸し、20〜50℃のロール群で冷却する。続いて、この縦延伸したフィルムの両端をクリップで把持しながらテンターに導き90〜140℃に加熱された雰囲気中で長手に垂直な方向に横延伸する。この場合、延伸倍率は、縦、横それぞれ2.5〜4.5倍に延伸するが、その面積倍率(縦延伸倍率×横延伸倍率)は9〜16倍であることが好ましい。すなわち、面積倍率が9倍未満であると得られるフィルムの白さが不良となる。また、面積倍率が16倍を越えると、延伸時に破れを生じやすくなり、製膜性が不良となる傾向がある。こうして二軸延伸されたフィルムに平面性、寸法安定性を付与するために、テンター内で150〜230℃の熱固定を行い、均一に徐冷し、さらに、室温まで冷却した後、巻取機で巻き取り、本発明に係る基材熱可塑性樹脂フィルムを得る。
かかる基材熱可塑性樹脂フィルムの例としては、まず、単層構成の白色フィルムとしては、ルミラー(登録商標)E20(東レ(株)製)、SY64(SKC製)などが挙げられ、2層構成の白色フィルムとしては、テトロン(登録商標)フィルムUXZ1(帝人デュポンフィルム(株)製)などが挙げられ、3層構成の白色フィルムとしては、ルミラー(登録商標)E6SL、E6SR、E6SQ、E6Z(東レ(株)製)、テトロン(登録商標)フィルムUX(帝人デュポンフィルム(株)製)などが挙げられる。
かかる基材熱可塑性樹脂フィルムおよび塗布層には、本発明の効果を阻害しない範囲内で、各種の添加剤を添加することができる。かかる添加剤としては、例えば、有機および/または無機の微粒子、蛍光増白剤、架橋剤、耐熱安定剤、耐酸化安定剤、有機の滑剤、帯電防止剤、核剤、染料、充填剤、分散剤およびシランカップリング剤以外のカップリング剤などを添加・配合して用いることができる。
本発明の積層フィルムは、塗布層を設けた面から測定した波長400nm以上500nm以下の平均反射率と波長400nm以上700nm以下の平均反射率との差の絶対値が5.0%以下であることが好ましい。平均反射率の差の絶対値が5.0%より大きいと、液晶ディスプレイ用のバックライトに用いた際に、バックライトによっては発光色調の変化が顕著になったり、LEDを搭載したバックライトに用いた際は、発光効率がそれほど高くないとされる青色領域のLEDからの光の反射光量が減少し、LED特有の色再現性を損ねたり、ディスプレイの輝度が不足したりする場合がある。また、それを補うために青色領域のLEDの出力を高める等の対策を講じた結果、より熱が発生したり、消費電力が向上してしまったりする場合がある。平均反射率の差の絶対値はより好ましくは3.0%以下、さらに好ましく1.0%以下である。平均反射率の差の絶対値を5.0%以下にする方法として、例えば、波長400nm以上500nm以下もしくは波長400nm以上700nm以下のどちらか一方の波長領域において、特定の波長領域の光を過剰に吸収、もしくは反射するような物質の、塗布層中の絶対量をできる限り少なくする方法がある。特に、前述した紫外線吸収剤は、物質によっては短波長の可視光領域から紫外領域の光を吸収するため、塗布層中の絶対量が極端に多い場合は、平均反射率の差が5.0%より大きくなる場合もあるため、そのような際は、難燃性や基材熱可塑性樹脂フィルムの劣化を防げる範囲で適宜調整する必要がある。
本発明の積層フィルムは、塗布層を設けた面から測定した波長400〜700nmの波長における平均反射率が85%以上であることが好ましく、より好ましくは87%以上、さらに好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上である。平均反射率が85%未満の場合には、適用する液晶ディスプレイによっては輝度が不足する場合がある。なお、両面に塗布層を設けている場合には、いずれかの塗布層から測定した平均反射率が85%以上であればよい。波長400〜700nmの波長における平均反射率を85%以上にする方法としては、例えば、基材熱可塑性樹脂フィルム内もしくは塗布面の、光を反射する界面の絶対量を増やす方法がある。特に、前述した基材白色フィルム内のボイド構造をより多く形成したり、ボイド構造を有する部分の厚みをより厚くする等の方法が挙げられる。
本発明の積層フィルムは、加熱温度90℃加熱時間30分で測定した際の加熱収縮率が、基材熱可塑性樹脂フィルム長手方向および幅方向でいずれも−0.1%以上0.2%以下であることが好ましい。より好ましくは−0.05%以上0.15%以下である。かかる加熱収縮率が−0.1%以上0.2%以下の範囲を外れると、高温に達した際に、フィルムが撓んだ状態となりやすくなる。特に、LEDを搭載したバックライト用の反射フィルムでは、高温下での使用が多いばかりか、LEDを設置する位置に合わせフィルムの打ち抜き加工を行うことが多いため、フィルムの撓みは位置ズレやバックライトに搭載後のLEDへの接触等を招きやすくなり、ひいてはバックライトの特性や安全性を損なう恐れがある。
本発明でいう、加熱温度90℃加熱時間30分で測定した基材熱可塑性樹脂フィルムの長手方向加熱収縮率とは、一定の大きさの積層フィルムのサンプルを準備し、室温で基材熱可塑性樹脂フィルム長手方向(基材熱可塑性樹脂フィルム製造時の押出方向)に一定の長さ(L)を測定し、そのサンプルを90℃に保持した恒温槽中に30分間放置後、同じ室温まで徐冷した後に、該Lに相当する部分の長さを測定し、その長さ(L)と初期の長さ(L)から次式(1)にて算出した数値である。
・加熱収縮率(%)={(L−L)/L}×100 (1)
なお、負の数値は高分子フィルムが伸びたことをあらわす。
また、加熱温度90℃加熱時間30分で測定した積層フィルムの基材熱可塑性樹脂フィルム幅方向加熱収縮率とは、基材熱可塑性樹脂フィルム幅方向(基材熱可塑性樹脂フィルム製造時の押出方向に対して直角方向)に基材熱可塑性樹脂フィルム長手方向と同様にして測定した値をいう。
積層フィルムの加熱収縮率を−0.1%以上0.2%以下とする方法として、例えば、基材熱可塑性樹脂フィルムの製膜時や塗布層の乾燥時に熱処理を行う方法等が挙げられる。
このようにして得られる本発明の積層フィルムは、UL−94に規定されたHBF、V−2相当の難燃レベルを有することができる。さらに好ましい態様によれば、長時間使用しても反射率の低下とフィルムの撓みが少ない。したがって、本発明の積層フィルムは液晶ディスプレイ用のエッジライト方式バックライトのリフレクター、直下型方式バックライト、およびLEDを搭載したバックライトの反射板に好適に使用することができる。その他にも、各種面光源の反射板や、反射特性が要求される太陽電池モジュールの封止フィルムやバックシートとしても好適に使用することができる。
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は、これら実施例により限定されるものではない。
測定法および評価法を以下に示す。
(1)フィルムの難燃性
UL−94に基づいて評価した。評価結果がHBFであれば合格であり、V−2であれば優れている。
(2)バインダー樹脂とシランカップリング剤の結合の有無
塗布層が既に形成されている場合はそのサンプルから塗布層を有機溶剤に浸漬して、塗布層を剥離採取後に濾過した濾液を、バインダー樹脂とシランカップリング剤の反応を追跡しているような場合はその反応混合物を、それぞれ適宜濃縮及び希釈を行い、日本分光(株)製FT/IR−6300を用いて赤外吸収スペクトルを測定し、バインダー樹脂の反応性官能基及びシランカップリング剤の官能基Xの各吸収領域に対応するピークより求められる、それら各官能基の残存率を同定し、バインダー樹脂とシランカップリング剤との結合の有無を判断した。
(3)塗布層中の難燃剤の含有率
先ず、サンプルを10cm四方に切断し重量を測定する。次いで、塗布層を有機溶剤に浸漬して、塗布層を剥離採取した後のサンプルの重量を測定し、塗布層全体の重量を算出する。さらに塗布層を浸漬した後の有機溶剤を濾過し、難燃剤と濾液とを分離した後に難燃剤の重量を測定する。同様の方法にて5箇所の測定を行い、各箇所において難燃剤の重量を塗布層全体の重量で除した値を算出し、5箇所の平均値を「難燃剤の含有率」とした。
(4)塗布層内の難燃剤の平均透影面積S、平均投影面積L、比S/L
先ず、サンプルを、日本ミクロトーム研究所(株)製ロータリー式ミクロトームを使用し、ナイフ傾斜角度3°にて塗布面に垂直な方向に切断する。得られた熱可塑性樹脂フィルムの光塗布層断面を、トプコン社製走査型電子顕微鏡ABT−32を用いて観察する。観察倍率は、1視野内に塗布層に含有された難燃剤が最低20個見える倍率とする。この1視野内に存在する難燃剤部分のうち、投影面積が大きいものから5箇所の面積を測定する。同じようにして任意の5視野を観察し、合計25箇所の投影面積の平均値を平均投影面積Sとする。次いで、塗布面に垂直な方向より塗布層面を同様に観察し、合計25箇所の投影面積の平均値を平均投影面積Lとする。求めた平均投影面積Sを平均投影面積Lで除してS/Lとする。
(5)基材熱可塑性樹脂フィルム内の無機粒子の含有率
先ず、サンプルを10cm四方に切断し(2)の方法にて塗布層を剥離し重量を測定し、基材熱可塑性樹脂フィルム全体の重量を算出する。次いで、900℃以上の高温にて樹脂を溶融・蒸発させた後に、残留した無機粒子の重量を測定する。同様の方法にて5箇所の測定を行い、各箇所において無機粒子の重量をフィルム全体の重量で除した値を算出し、5箇所の平均値を「無機粒子の含有率」とした。
(6)塗布層の厚み
サンプルを、日本ミクロトーム研究所(株)製ロータリー式ミクロトームを使用し、ナイフ傾斜角度3°にてフィルム平面に垂直な方向に切断する。得られたフィルム断面をトプコン社製走査型電子顕微鏡ABT−32を用いて観察し、基材熱可塑性樹脂フィルム上に積層している塗布層の総厚みを各片面5箇所、両面計10箇所測定しその平均値を「塗布層の厚み」とする。
(7)耐光性(黄色味変化)
紫外線劣化促進試験機アイスーパーUVテスターSUV−W131(岩崎電気(株)製)を用い、下記条件で強制紫外線照射試験を行った後、b値を求めた。3サンプルについて促進試験を実施し、それぞれ試験前後のb値を測定し、その差の平均値を耐光性(黄色味変化量)とした。
「紫外線照射条件」
照度:100mW/cm、温度:60℃、相対湿度:50%RH、照射時間:48時間
耐光性評価結果を下記により判定し、A、B級であれば合格であり、A級が最も好ましい。
A級:黄色味変化量が5未満
B級:黄色味変化量が5以上15未満
C級:黄色味変化量が15以上。
(8)反射率
分光光度計U−3410((株)日立製作所)にφ60積分球130−0632((株)日立製作所)および10℃傾斜スペーサーを取りつけた状態で400−700nmでの10nm間隔の反射率の平均値を算出した。標準白色板には(株)日立計測器サービス製の部品番号210−0740を用いた。5サンプルについて平均値を算出し、これを平均反射率とした。
(9)加熱収縮率
サンプルを基材熱可塑性樹脂フィルム の長手方向、幅方向各々を10mm幅×230mm長に切り出し、該長尺方向に200mm間隔のマークを入れ、金尺で正確にマーク間距離を読みとる(αmm)。該サンプルを90℃の熱風オーブンに30分間エージングした後に該サンプルのマーク間距離を上記の方法で読みとる(βmm)。上記のマーク間距離から次式で加熱収縮率を算出し%で表した。
・加熱収縮率 (%)=(α−β)/α×100。
各実施例に使用したバインダー樹脂、シランカップリング剤、難燃剤を以下に示す。
(1)バインダー樹脂A : ベンゾトリアゾール及びヒドロキシル基含有のアクリル系共重合体((株)日本触媒製、ハルスハイブリッド(登録商標)UV−G720T、濃度40%溶液)
(2)シランカップリング剤 : 3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(官能基X=イソシアネート基 官能基OR=エトキシ基、信越化学工業(株)製 KBE−9007)
(3)難燃剤A : ホスフィン酸アルミニウム(不定形状、クラリアントジャパン(株)製 Exolit(登録商標)OP935)
(4)難燃剤B : 水酸化アルミニウム(不定形状、昭和電工(株)製 ハイジライト(登録商標)H−43H)
(5)難燃剤C : カオリン(扁平状、(株)イメリスミネラルズジャパン製 Porarite102A)
(6)難燃剤D : 酸化チタン(星状、住友大阪セメント(株)製 星型酸化チタン微粉末)
(7)難燃剤E : カルサイト結晶型炭酸カルシウム(菱形状(直方状含む)、丸尾カルシウム(株)製 CUBE−18BHS)
(8)難燃剤F : アラゴナイト結晶型炭酸カルシウム(金平糖状、丸尾カルシウム(株)製)
(9)難燃剤G : アラゴナイト結晶型炭酸カルシウム(針状(ウィスカー状)、丸尾カルシウム(株)製 ウィスカルA)
(10)難燃剤H : アルミナ(真球状、昭和電工(株)製 アルミナビーズ(登録商標)CB−A05S)。
各実施例に使用したシランカップリング剤との結合を有するバインダー樹脂の製造方法を以下に示す。
バインダー樹脂A:50.0g
シランカップリング剤:5.0g
を撹拌しながら添加した。この混合物を窒素雰囲気下にて撹拌し、50℃、5時間かけて反応を行った。反応の進行は赤外吸収スペクトルから、メチレン結合の吸光度を基準としてイソシアネート基の吸光度比で残存率を経時的に追跡すると共に、バインダー樹脂A中のヒドロキシル基とイソシアネート基との反応により生成するウレタン結合の吸光度を併せて追跡し、そのウレタン結合をバインダー樹脂とシランカップリング剤との結合として、その有無から結合の形成を確認し、この反応物をシランカップリング剤との結合を有するバインダー樹脂Bとした。
(実施例1)
バインダー樹脂B:10.0g
トルエン:26.0g
難燃剤A:4.0g
を攪拌しながら添加して塗液を作った。
基材熱可塑性樹脂フィルムとして多孔質の二軸延伸ポリエチレンテレフタレートで構成された3層構成の熱可塑性樹脂フィルム(東レ(株)製 ルミラー(登録商標)E6SQ、厚み300μm)を準備した。前記塗布液を、この基材熱可塑性樹脂フィルムの両面に、メタバー#35を使用して塗布し、120℃、1分間で加熱乾燥して、乾燥後の厚みが各片面10.5μm、両面総厚み21μmの塗布層を設けて、本発明の積層フィルムを得た。
(実施例2)
塗液の組成が以下であること以外は、実施例1と同様にして本発明の積層フィルムを得た。
バインダー樹脂B:10.0g
トルエン:26.0g
難燃剤A:3.6g
難燃剤B:0.4g。
(実施例3)
塗液の組成が以下であること以外は、実施例1と同様にして本発明の積層フィルムを得た。
バインダー樹脂B:10.0g
トルエン:26.0g
難燃剤A:3.6g
難燃剤C:0.4g。
(実施例4)
塗液の組成が以下であること以外は、実施例1と同様にして本発明の積層フィルムを得た。
バインダー樹脂B:10.0g
トルエン:26.0g
難燃剤A:3.6g
難燃剤D:0.4g。
(実施例5)
塗液の組成が以下であること以外は、実施例1と同様にして本発明の積層フィルムを得た。
バインダー樹脂B:10.0g
トルエン:26.0g
難燃剤A:3.6g
難燃剤E:0.4g。
(実施例6)
塗液の組成が以下であること以外は、実施例1と同様にして本発明の積層フィルムを得た。
バインダー樹脂B:10.0g
トルエン:26.0g
難燃剤A:3.6g
難燃剤F:0.4g。
(実施例7)
塗液の組成が以下であること以外は、実施例1と同様にして本発明の積層フィルムを得た。
バインダー樹脂B:10.0g
トルエン:26.0g
難燃剤A:3.6g
難燃剤G:0.4g。
(実施例8)
バインダー樹脂B:10.0g
トルエン:28.8g
難燃剤A:4.7g
を攪拌しながら添加して塗液を作った。
基材熱可塑性樹脂フィルムとして多孔質の二軸延伸ポリエチレンテレフタレートで構成された3層構成の熱可塑性樹脂フィルム(東レ(株)製 ルミラー(登録商標)E6SR、厚み225μm)を準備した。前記塗布液を、この基材熱可塑性樹脂フィルムの両面に、メタバー#15を使用して塗布し、120℃、1分間で加熱乾燥して、乾燥後の厚みが各片面4.5μm、両面総厚み9μmの塗布層を設けて、本発明の積層フィルムを得た。
(実施例9)
「基材熱可塑性樹脂フィルムの製造方法」
ポリエステルA層の原料ポリマーを、以下に示す配合比で混合し、押出し温度が290℃の押出機Aに供給した。
・ポリエチレンテレフタレートチップ(東レ(株)製 F20S、以降PETと省略):47重量%
・ポリエチレンテレフタレートを主成分としたイソフタル酸共重合物のチップ(東レ(株)製 F51M、以降PET/Iと省略):20重量%
・数平均粒径0.7μmの硫酸バリウム:35重量%
一方、ポリエステルB層の原料ポリマーを、以下に示す配合比で混合し、押出し温度が290℃の押出機Bに供給した。
・PET:65重量%
・メチレングリコールの共重合物(東レ・デュポン(株)製“ハイトレル”、以降PBT/PTMGと省略):5重量%
・ポリエチレンテレフタレートにイソフタル酸を10mol%とポリエチレングリコールを5mol%共重合した共重合物(東レ(株)製 T794M、以降PET/I/PEGと省略):10重量%
・ポリメチルペンテン(MFRが230g/10minである三井化学(株)製ポリメチルペンテン樹脂、以降PMPと省略):20重量%
A層/B層/A層の厚み比率が4:92:4となるように積層装置を通してTダイよりシート状に成形した。
さらにこのフィルムを表面温度25℃の冷却ドラムで冷却固化した未延伸フィルムを85〜98℃に加熱したロール群に導き、長手方向に3.4倍縦延伸し、25℃のロール群で冷却した。続いて、縦延伸したフィルムの両端をクリップで把持しながらテンターに導き130℃に加熱された雰囲気中で長手に垂直な方向に3.6倍横延伸した。
その後テンター内で230℃の熱固定を行い、均一に徐冷後、室温まで冷却して巻き取り多孔質の二軸延伸ポリエチレンテレフタレートでできた3層構成の基材熱可塑性樹脂フィルムa(厚み225μm)を得た。
得られた基材熱可塑性樹脂フィルムa中の基材熱可塑性樹脂フィルム全重量に対する無機粒子の含有率は、表1のとおりであった。
「積層フィルムの製造方法」
バインダー樹脂B:10.0g
トルエン:23.2g
難燃剤A:3.3g
を攪拌しながら添加して塗液を作った。
この塗液を、前記基材熱可塑性樹脂フィルムaの両面に、メタバー#30を使用して塗布し、120℃、1分間で加熱乾燥して、乾燥後の厚みが各片面9μm、両面総厚み18μmの塗布層を設けて、本発明の積層フィルムを得た。
(実施例10)
バインダー樹脂B:10.0g
トルエン:21.6g
難燃剤A:2.9g
を攪拌しながら添加して塗液を作った。
基材熱可塑性樹脂フィルムとして多孔質の二軸延伸ポリエチレンテレフタレートで構成された3層構成の熱可塑性樹脂フィルム(帝人デュポンフィルム(株)製 テトロン(登録商標)フィルムUX、厚み225μm)を準備した。前記塗布液を、この基材熱可塑性樹脂フィルムの両面に、メタバー#20を使用して塗布し、120℃、1分間で加熱乾燥して、乾燥後の厚みが各片面6μm、両面総厚み12μmの塗布層を設けて、本発明の積層フィルムを得た。
(実施例11)
「基材熱可塑性樹脂フィルムの製造方法」
ポリエステルA層の原料ポリマーを、以下に示す配合比で混合し、押出し温度が290℃の押出機Aに供給した。
・ポリエチレンテレフタレートチップ(東レ(株)製 F20S、以降PETと省略):47重量%
・ポリエチレンテレフタレートを主成分としたイソフタル酸共重合物のチップ(東レ(株)製 F51M、以降PET/Iと省略):20重量%
・数平均粒径0.7μmの硫酸バリウム:35重量%。
一方、ポリエステルB層の原料ポリマーを、以下に示す配合比で混合し、押出し温度が290℃の押出機Bに供給した。
・PET:65重量%
・メチレングリコールの共重合物(東レ・デュポン(株)製“ハイトレル”、以降PBT/PTMGと省略):5重量%
・ポリエチレンテレフタレートにイソフタル酸を10mol%とポリエチレングリコールを5mol%共重合した共重合物(東レ(株)製 T794M、以降PET/I/PEGと省略):10重量%
・ポリメチルペンテン(MFRが230g/10minである三井化学(株)製ポリメチルペンテン樹脂、以降PMPと省略):20重量%
A層/B層の厚み比率が8:92となるように積層装置を通してTダイよりシート状に成形した。
さらにこのフィルムを表面温度25℃の冷却ドラムで冷却固化した未延伸フィルムを85〜98℃に加熱したロール群に導き、長手方向に3.4倍縦延伸し、25℃のロール群で冷却した。続いて、縦延伸したフィルムの両端をクリップで把持しながらテンターに導き130℃に加熱された雰囲気中で長手に垂直な方向に3.6倍横延伸した。
その後テンター内で230℃の熱固定を行い、均一に徐冷後、室温まで冷却して巻き取り厚み225μmの多孔質の二軸延伸ポリエチレンテレフタレートでできた2層構成の基材熱可塑性樹脂フィルムbを得た。得られた基材熱可塑性樹脂フィルムb中の基材熱可塑性樹脂フィルム全重量に対する無機粒子の含有率は、表1のとおりであった。
「積層フィルムの製造方法」
基材熱可塑性樹脂フィルムが、前記基材熱可塑性樹脂フィルムbであること以外は、実施例9と同様にして本発明の積層フィルムを得た。
(実施例12)
バインダー樹脂B:10.0g
トルエン:18.0g
難燃剤A:2.0g
を攪拌しながら添加して塗液を作った。
基材熱可塑性樹脂フィルムとして多孔質の二軸延伸ポリエチレンテレフタレートで構成された2層構成の熱可塑性樹脂フィルム(帝人デュポンフィルム(株)製 テトロン(登録商標)フィルムUXZ1、厚み225μm)を準備した。前記塗布液を、この基材熱可塑性樹脂フィルムの両面に、メタバー#7を使用して塗布し、120℃、1分間で加熱乾燥して、乾燥後の厚みが各片面2μm、両面総厚み4μmの塗布層を設けて、本発明の積層フィルムを得た。
(実施例13)
基材熱可塑性樹脂フィルムとして多孔質の二軸延伸ポリエチレンテレフタレートでできた2層構成のフィルム(帝人デュポンフィルム(株)製 テトロン(登録商標)フィルムUXZ1、厚み225μm)を準備した。実施例9と同組成の塗液を、この基材熱可塑性樹脂フィルムの両面に、メタバー#27を使用して塗布し、120℃、1分間で加熱乾燥して、乾燥後の厚みが各片面8μm、両面総厚み16μmの塗布層を設けて、本発明の積層フィルムを得た。
(実施例14)
基材熱可塑性樹脂フィルムが、酸化チタン含有の二軸延伸ポリエチレンテレフタレートでできた1層構成の熱可塑性樹脂フィルム(東レ(株)製 ルミラー(登録商標)E20、厚み250μm)であること以外は、実施例9と同様にして本発明の積層フィルムを得た。
(実施例15)
バインダー樹脂B:10.0g
トルエン:28.8g
難燃剤A:4.7g
を攪拌しながら添加して塗液を作った。
基材熱可塑性樹脂フィルムとして酸化チタン含有で多孔質のポリエチレンテレフタレートでできた1層構成の熱可塑性樹脂フィルム(SKC製 SY64、厚み225μm)を準備した。前記塗液を、この基材熱可塑性樹脂フィルムの片面に、メタバー#40を使用して塗布し、120℃、1分間で加熱乾燥して、乾燥後の厚みが12μmの塗布層を設けて、本発明の積層フィルムを得た。
(実施例16)
バインダー樹脂B:10.0g
トルエン:28.8g
難燃剤H:4.7g
を攪拌しながら添加して塗液を作った。
基材熱可塑性樹脂フィルムとして多孔質の二軸延伸ポリエチレンテレフタレートで構成された3層構成の熱可塑性樹脂フィルム(東レ(株)製 ルミラー(登録商標)E6SQ、厚み300μm)を準備した。前記塗布液を、この基材熱可塑性樹脂フィルムの両面に、メタバー#40を使用して塗布し、120℃、1分間で加熱乾燥して、乾燥後の厚みが各片面12μm、両面総厚み24μmの塗布層を設けて、本発明の積層フィルムを得た。
(比較例1)
基材熱可塑性樹脂フィルムとして多孔質の二軸延伸ポリエチレンテレフタレートで構成された3層構成の熱可塑性樹脂フィルム(東レ株式会社製 ルミラー(登録商標)E6SQ、厚み300μm)を準備した。この基材熱可塑性樹脂フィルムには塗布層を設けなかった。
(比較例2)
基材熱可塑性樹脂フィルムとして多孔質の二軸延伸ポリエチレンテレフタレートで構成された3層構成の熱可塑性樹脂フィルム(帝人デュポンフィルム(株)製 テトロン(登録商標)フィルムUX、厚み225μm)を準備した。この基材熱可塑性樹脂フィルムには塗布層を設けなかった。
(比較例3)
バインダー樹脂A:10.0g
トルエン:10.0g
を攪拌しながら添加して、難燃剤及びシランカップリング剤を有さない塗液を作った。
基材熱可塑性樹脂フィルムとして酸化チタン含有の二軸延伸ポリエチレンテレフタレートでできた1層構成の熱可塑性樹脂フィルム(東レ(株)製 ルミラー(登録商標)E20、厚み250μm)を準備した。前記塗液を、この基材熱可塑性樹脂フィルムの両面に、メタバー#80を使用して塗布し、120℃、1分間で加熱乾燥して、乾燥後の厚みが各片面24μm、両面総厚み48μmの塗布層を設けて積層フィルムを得た。
(比較例4)
バインダー樹脂A:10.0g
トルエン:48.0g
難燃剤A:4.5g
シランカップリング剤:5.0g
を攪拌しながら添加して塗液を作った。
基材熱可塑性樹脂フィルムとして多孔質の二軸延伸ポリエチレンテレフタレートで構成された3層構成の熱可塑性樹脂フィルム(東レ(株)製 ルミラー(登録商標)E6SQ、厚み300μm)を準備した。前記塗布液を、この基材熱可塑性樹脂フィルムの両面に、メタバー#15を使用して塗布し、50℃、1分間で加熱乾燥して、乾燥後の厚みが各片面4.5μm、両面総厚み9μmの塗布層を設けて、本発明の積層フィルムを得た。
この塗布層を剥離採取後、前記と同様の方法にてバインダー樹脂とシランカップリング剤との結合の有無を確認したところ、結合は形成していなかった。
Figure 2009179037
Figure 2009179037
実施例1〜15の本発明の積層フィルムはいずれも、難燃性が合格であった。塗布層の厚みが十分であり、かつ基材熱可塑性樹脂フィルム中の無機粒子の含有率が高いものは難燃性が特に良好であった(実施例10、13)。難燃剤の種類や形状が異なっても、難燃性を付与できた(実施例1〜7)。難燃剤の含有率を高くすれば、塗布層の厚みを薄くすることができ、さらに反射特性を改善することができた(実施例8)。基材熱可塑性樹脂フィルム中の無機粒子の含有率が高ければ、その基材熱可塑性樹脂フィルムの層構成がいずれであっても、また、塗布層を設ける面が片面のみであっても、難燃剤の含有率を低くしたり、難燃塗布層の厚みを薄くしたりすることができた(実施例9、11、12、14、15)。難燃剤の形状が真球形状のみである場合は、難燃剤の含有率を高くし、また、難燃層厚みが厚ければ、難燃性を付与できた(実施例16)。
塗布層を設けないものは難燃性、耐光性が不合格であった(比較例1)。塗布層を設けない代わりに基材熱可塑性樹脂フィルム中の無機粒子の含有量を多くしたものは難燃性は合格であったが、加熱収縮率が悪い(比較例2)。塗布層を設けても、難燃剤及びシランカップリング剤を含有せず、代わりに塗布層の厚みを極端に厚くしたものは、難燃性は合格であったが、平均反射率の差が顕著に大きくなった(比較例3)。塗布層を設けても、バインダー樹脂とシランカップリング剤との結合がない状態で共に含有した場合、難燃剤の含有率や塗布層厚みが充分であっても、難燃性が不合格となった(比較例4)。
本発明の積層フィルムの断面模式図の一例である。 本発明にかかる基材熱可塑性樹脂フィルムの断面模式図の一例である。
符号の説明
1:積層フィルム
2:3層構成の基材熱可塑性樹脂フィルム
3:難燃剤及びシランカップリング剤を含有した塗布層
4:無機粒子及び/又は気泡を含有した層

Claims (13)

  1. 基材熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも片面に、難燃剤とシランカップリング剤を含有する塗布層が1層以上設けられ、該塗布層中のバインダー樹脂とシランカップリング剤が結合している積層フィルム。
  2. 前記難燃剤が、無機金属及び/又は無機金属化合物である請求項1に記載の積層フィルム。
  3. 前記難燃剤が無機金属化合物であり、無機金属化合物が、無機金属のリン酸系誘導体の塩及び/又はその複合体である請求項1又は2に記載の積層フィルム。
  4. 前記難燃剤の形状が、塗布面に平行な方向から観察した難燃剤の平均投影面積Sと、塗布面に垂直な方向から観察した難燃剤の平均投影面積Lとの比S/Lが1.0未満となるような非真球形状である請求項1〜3のいずれかに記載の積層フィルム。
  5. 前記塗布層を形成する樹脂中に紫外線吸収剤および/または光安定化剤を含有する請求項1〜4に記載の積層フィルム。
  6. 前記基材熱可塑性樹脂フィルムが、基材熱可塑性樹脂フィルムの全重量に対して2重量%以上の無機粒子を含有するものである請求項1〜5のいずれかに記載の積層フィルム。
  7. 前記塗布層を設けた面から測定した波長400nm以上500nm以下の平均反射率と波長400nm以上700nm以下の平均反射率との差の絶対値が5.0%以下である請求項1〜6のいずれかに記載の積層フィルム。
  8. 加熱温度90℃加熱時間30分における積層フィルムの加熱収縮率が、基材熱可塑性樹脂フィルム長手方向および幅方向でいずれも−0.1%以上0.2%以下である請求項1〜7のいずれかに記載の積層フィルム。
  9. 前記基材熱可塑性樹脂フィルムがポリエステルフィルムである請求項1〜8のいずれかに記載の積層フィルム。
  10. 前記基材熱可塑性樹脂フィルムが白色フィルムである請求項1〜9のいずれかに記載の積層フィルム。
  11. 請求項1〜10のいずれかに記載の熱可塑性樹脂フィルムを用いて構成されているバックライト用ランプリフレクター。
  12. 請求項1〜10のいずれかに記載の熱可塑性樹脂フィルムを用いて構成されているバックライト。
  13. 光源が発光ダイオードである請求項12に記載のバックライト。
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