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JP2009143044A - 熱収縮性ポリエステル系フィルム、およびその製造方法 - Google Patents

熱収縮性ポリエステル系フィルム、およびその製造方法 Download PDF

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JP2009143044A JP2007320503A JP2007320503A JP2009143044A JP 2009143044 A JP2009143044 A JP 2009143044A JP 2007320503 A JP2007320503 A JP 2007320503A JP 2007320503 A JP2007320503 A JP 2007320503A JP 2009143044 A JP2009143044 A JP 2009143044A
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Yukinobu Mukoyama
幸伸 向山
Takuro Endo
卓郎 遠藤
Masatoshi Hashimoto
正敏 橋本
Katsuhiko Nose
克彦 野瀬
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Abstract

【課題】軽量で美観に優れ、印刷や加工を施さなくとも光線カット性を有し、印刷を施した場合にも優れた美観を有し、主収縮方向である長手方向への収縮性が良好で、主収縮方向と直交する幅方向における機械的強度が高いのみならず、フィルムロールから直接ボトルの周囲に胴巻きした後に熱収縮させた際の収縮仕上がり性が良好で、後加工時の作業性の良好な熱収縮性ポリエステル系フィルムを提供すること。
【解決手段】主収縮方向が長手方向であり、白色度が70以上又は/及び空洞を有し、特定の温湯収縮特性、最大熱収縮応力、破断前ヤング率を有する熱収縮性ポリエステル系フィルム。
【選択図】なし

Description

本発明は、熱収縮性ポリエステル系フィルム、およびその製造方法に関するものであり、詳しくは、光線カット性を有し、ラベル用途に好適な熱収縮性ポリエステル系フィルム、およびその製造方法に関するものである。
近年、包装品の外観向上のための外装、内容物の直接的な衝突を避けるための包装、ガラス瓶またはプラスチックボトルの保護と商品の表示を兼ねたラベル包装等の用途に、各種の樹脂からなる熱収縮プラスチックフィルムが広範に使用されている。それらの熱収縮プラスチックフィルムの内、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂等からなる延伸フィルムは、ポリエチレンテレフタレート(PET)容器、ポリエチレン容器、ガラス容器等の各種の容器において、ラベルやキャップシールあるいは集積包装の目的で使用される。
ところが、ポリ塩化ビニル系フィルムは、収縮特性には優れるものの、耐熱性が低い上に、焼却時に塩化水素ガスを発生したり、ダイオキシンの原因となる等の問題がある。また、ポリ塩化ビニル系樹脂フィルムをPET容器等の収縮ラベルとして用いると、容器をリサイクル利用する際に、ラベルと容器を分離しなければならない、という問題もある。一方、ポリスチレン系フィルムは、収縮後の仕上がり外観性が良好であるものの、耐溶剤性に劣るため、印刷の際に特殊な組成のインキを使用しなければならない、という不具合がある。また、ポリスチレン系フィルムは、高温で焼却する必要がある上に、焼却時に異臭を伴って多量の黒煙が発生するという問題がある。それゆえ、耐熱性が高く、焼却が容易であり、耐溶剤性に優れたポリエステル系フィルムが、収縮ラベルとして広汎に利用されるようになってきており、PET容器の流通量の増大に伴って、使用量が増加している傾向にある。
また、通常の熱収縮性ポリエステル系フィルムとしては、幅方向に大きく収縮させるものが広く利用されている(特許文献1)。そのように幅方向が主収縮方向である熱収縮性ポリエステル系フィルムは、幅方向への収縮特性を発現させるために幅方向に高倍率の延伸が施されているが、主収縮方向と直交する方向(長手方向)に関しては、低倍率の延伸が施されているだけであることが多く、延伸されていないものもある。そのように、主収縮方向と直交する方向に低倍率の延伸を施したのみのフィルムや、主収縮方向のみしか延伸されていないフィルムは、主収縮方向と直交する方向の機械的強度が劣るという欠点がある。
特開平9−239833号公報
また、ボトルのラベルは、環状にしてボトルに装着した後に周方向に熱収縮させなければならないため、幅方向に熱収縮する熱収縮性フィルムをラベルとして装着する際には、フィルムの幅方向が周方向となるように環状体を形成した上で、その環状体を所定の長さ毎に切断してボトルに装着しなければならない。したがって、幅方向に熱収縮する熱収縮性フィルムからなるラベルを高速でボトルに装着するのは困難である。それゆえ、最近では、フィルムロールから直接ボトルの周囲に装着する、所謂、胴巻き(ラップ・ラウンド)が可能な長手方向に熱収縮するフィルムが求められており、今後、需要が飛躍的に増大するものと見込まれる。
それゆえ、出願人らは、主収縮方向が長手方向であり主収縮方向と直交する方向(幅方向)における機械的強度の高い熱収縮性フィルムを得るべく鋭意検討し、その結果、横延伸−中間熱処理−縦延伸という特殊なプロセスによって、主収縮方向が長手方向であり幅方向における機械的強度の高い熱収縮性フィルムが得られることを見い出し、当該熱収縮性フィルムについて、先に提案した(特願2006−165212)。
また、このような熱収縮性ポリエステルフィルムがPETボトルのラベル用として使用され、PETボトルがリサイクルされる場合に、これらラベルと分別する必要がある。ボトルとラベルを分別する方法の一つとして、両者を混合したまま粉砕し、それを水中にて攪拌することにより分別する方法がある。この方法を採用する場合にボトルの主原料であるPETは比重が約1.4なので、ラベル用の樹脂はそれ以下にする必要がある。その方法としてはラベル用のポリエステル樹脂そのものを下げることは困難である。そのためフィルム内部に空洞を多数含有させ見かけ密度を下げる方法が考えられている(特許文献2及び3参照)。しかし、これらのフィルムは以下の問題があった。
イ.空洞を設けることにより表面の荒れが大きくなり、印刷したラベルの外観が不良となり美観が損なわれる。
ロ.白色度が不足、または全光線透過率が高すぎたため、内容物が透けて見えたり、表印刷したラベルの外観が不良となり美観が損なわれる。
ハ.両面の粗さのバランスが悪く、美観と装着性が両立されていない。
ニ.収縮後の見かけ比重が高く、ボトルとの比重差による分別回収が困難である。
ホ.溶剤や膨潤剤による接着ができなかったため、接合部の外観不良や作業性の悪さがある。
特公平7−33063号公報 特開平5−111960号公報
また最近は、容器の内容物の紫外線からの保護を目的として収縮ラベルを使用するケースが増えている。具体的なカット性は内容物によって異なるが、食品・飲料の場合、長波長領域の紫外線である360nm〜400nmの波長で内容物の変質や着色等が起こるため長波長領域、特に380nm及び400nmのカット性が重要である。しかしながら、従来の熱収縮性ポリエステル系フィルムでは上記の長波長領域の紫外線をカットするものはなかった。
また、従来、これらの熱収縮性フィルムを使用する場合は、通常ラベルの内側に図柄印刷した後に白色印刷を施している。印刷インキの厚みは通常3μm程度であり光線遮断をするには充分で無かった。さらに、白色印刷を2回実施する方法で光線遮断を試みているが、品質要因(インキの厚みによる収縮特性の変化等)や納期及びコスト的にも不利であった。
しかしながら、出願人らが先に出願した横延伸−中間熱処理−縦延伸というプロセスによって得られる熱収縮性フィルムは、主収縮方向が長手方向であり幅方向における機械的強度に優れるものの、長手方向の温湯収縮率や熱収縮応力が高すぎるものも存在し、フィルムロールから直接ボトルの周囲に胴巻きした後に熱収縮させた際の収縮仕上がり性が必ずしも良好であるとは言えなかった。また、フィルムロールから直接ボトルの周囲に胴巻きする際には、ある程度ボトルに密着するように巻き付けることができるので、長手方向の温湯収縮率や熱収縮応力をさほど高くする必要はなく、長手方向の温湯収縮率や熱収縮応力が高すぎると、却って、ボトルの周囲に巻き付けて熱収縮させた際にボトルを締め付ける力が強くなりすぎて、ボトルを開栓する際に噴きこぼれが生じる虞れがある。さらに、中央部に“くびれ”を有する形状のペットボトルのラベルとして使用する場合には、長手方向の温湯収縮率や熱収縮応力が高すぎると、熱収縮させた後の仕上がり状態が悪くなってしまう。加えて、上記した横延伸−中間熱処理−縦延伸というプロセスによって得られる熱収縮性フィルムの中には、靱性(粘り強さ)やタフネス性が不十分なものも存在し、そのような靱性やタフネス性が不十分なフィルムに後加工を施すと、強いテンションが加わった場合にフィルムが破断して大規模なトラブルが発生してしまう虞れがあった。
本発明の目的は、上記従来の熱収縮性フィルムが有する問題点を解消し、主収縮方向である長手方向への収縮性が良好で、主収縮方向と直交する幅方向における機械的強度が高いのみならず、フィルムロールから直接ボトルの周囲に胴巻きした後に熱収縮させた際の収縮仕上がり性が良好で、後加工時の作業性の良好な熱収縮性ポリエステルフィルムを提供することにある。
また、本発明の目的は、軽量で美観に優れ、印刷や加工を施さなくとも光線カット性を有し、印刷を施した場合にも優れた美観を有する熱収縮性ポリエステル系フィルムを提供することにある。
即ち、本発明は、以下の構成よりなる。
1. エチレンテレフタレートを主たる構成成分とし、フィルムを構成する全ポリエステル成分中に、エチレングリコール以外のグリコール成分、または、テレフタル酸以外のジカルボン酸成分を、少なくとも1種、15モル%以上40モル%以下含有しているとともに、一定幅の長尺状に形成されており、主収縮方向が長手方向である熱収縮性ポリエステル系フィルムであって、下記要件(1)〜(5)を満たすことを特徴とする熱収縮性ポリエステル系フィルム。
(1)90℃の温水中で10秒間に亘って処理した場合における長手方向の温湯熱収縮率が15%以上40%未満であること
(2)90℃の温水中で10秒間に亘って処理した場合における長手方向と直交する幅方向の温湯熱収縮率が−5%以上5%以下であること
(3)90℃で10秒間に亘って処理した場合における長手方向の最大熱収縮応力が2.5MPa以上7.0MPa以下であること
(4)フィルムの長手方向の破断前ヤング率が0.05GPa以上0.15GPa以下であること
(5)白色度が70以上又は/及び空洞を有すること
2. 80℃の温水中で長手方向に3%収縮させた後の単位厚み当たりの幅方向の直角引裂強度が100N/mm以上300N/mm以下であることを特徴とする上記第1に記載の熱収縮性ポリエステル系フィルム。
3. 80℃の温水中で長手方向に3%収縮させた後に長手方向および幅方向のエルメンドルフ引裂荷重を測定した場合におけるエルメンドルフ比が0.15以上1.5以下であることを特徴とする上記第1に記載の熱収縮性ポリエステル系フィルム。
4. エチレンテレフタレートを主たる構成成分としており、共重合成分の主成分が、グリコール成分はネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノールのいずれかであり、ジカルボン酸成分はイソフタル酸であることを特徴とする上記第1に記載の熱収縮性ポリエステル系フィルム。
5. 上記第1〜第4のいずれかに記載の熱収縮性ポリエステル系フィルムを連続的に製造するための製造方法であって、未延伸フィルムを、テンター内で幅方向の両端際をクリップによって把持した状態でTg+5℃以上Tg+40℃以下の温度で幅方向に2.5倍以上6.0倍以下の倍率で延伸した後、積極的な加熱操作を実行しない中間ゾーンを通過させた後に、75℃以上140℃以下の温度で1.0秒以上20.0秒以下の時間に亘って熱処理し、30℃/秒以上70℃/秒以下の冷却速度でフィルムの表面温度が45℃以上75℃以下となるまで急速に冷却し、しかる後、Tg+5℃以上Tg+80℃以下の温度で長手方向に2.0倍以上5.5倍以下の倍率で延伸した後に、テンター内で幅方向の両端際をクリップによって把持した状態で90℃以上140℃以下の温度で加熱しながら幅方向に1%以上30%以下の範囲内で緩和させることを特徴とする熱収縮性ポリエステル系フィルムの製造方法。
6. フィルムを熱処理して急速に冷却した後であって長手方向に延伸する前に、フィルムの幅方向の両端縁のクリップ把持部分を切断除去することを特徴とする上記第5に記載の熱収縮性ポリエステル系フィルムの製造方法。
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、主収縮方向である長手方向への収縮性が良好で、主収縮方向と直交する幅方向における機械的強度も高いのみならず、フィルムロールから直接ボトルの周囲に胴巻きした後に熱収縮させた際の収縮仕上がり性が良好である。また、靱性やタフネス性が高く、後加工時に高いテンションが加わった場合でも破断しにくく、大規模なトラブルの発生を高い精度で防止することができる。したがって、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、ボトル等の容器のラベルとして好適に用いることができ、ボトル等の容器に短時間の内に非常に効率良く綺麗に装着することができる。また、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムの製造方法によれば、長手方向への収縮性が良好で幅方向における機械的強度が高い上、胴巻き後の熱収縮時の収縮仕上がり性が良好で、後加工時の作業性の良好な熱収縮性ポリエステル系フィルムを、安価に効率良く製造することが可能となる。
また、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、軽量で美観に優れ、印刷や加工を施さなくとも光線カット性を有し、印刷を施した場合にも優れた美観を有する熱収縮性ポリエステル系フィルムが得られる。
従って、ラベル用、特に商品価値の高いラベル用の熱収縮性ポリエステル系フィルムとして極めて有用である。
本発明で使用するポリエステルを構成するジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、オルトフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸、および脂環式ジカルボン酸等を挙げることができる。
脂肪族ジカルボン酸(たとえば、アジピン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸等)を含有させる場合、含有率は3モル%未満であることが好ましい。これらの脂肪族ジカルボン酸を3モル%以上含有するポリエステルを使用して得た熱収縮性ポリエステル系フィルムでは、高速装着時のフィルム腰が不十分である。
また、3価以上の多価カルボン酸(たとえば、トリメリット酸、ピロメリット酸およびこれらの無水物等)を含有させないことが好ましい。これらの多価カルボン酸を含有するポリエステルを使用して得た熱収縮性ポリエステル系フィルムでは、必要な高収縮率を達成しにくくなる。
本発明で使用するポリエステルを構成するジオール成分としては、エチレングリコール、1−3プロパンジオール、1−4ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール等の脂肪族ジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂環式ジオール、ビスフェノールA等の芳香族系ジオール等を挙げることができる。
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムに用いるポリエステルは、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の環状ジオールや、炭素数3〜6個を有するジオール(たとえば、1−3プロパンジオール、1−4ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール等)のうちの1種以上を含有させて、ガラス転移点(Tg)を60〜80℃に調整したポリエステルが好ましい。
また、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムに用いるポリエステルは、全ポリステル樹脂中におけるエチレングリコール以外のグリコール成分、もしくはテレフタル酸以外のジカルボン酸成分の含有量が15モル%以上であることが好ましく、17モル%以上であるとより好ましく、20モル%以上であると特に好ましい。ここで、共重合成分としてグリコール成分、もしくはジカルボン酸成分となりうる主成分は、たとえば、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジオールやイソフタル酸を挙げることができ、必要に応じてそれらを混合することも可能である。なお、共重合成分(エチレングリコール以外のグリコール成分、もしくはテレフタル酸以外のジカルボン酸成分)の含有量が、40モル%を超えると、フィルムの耐溶剤性が低下して、印刷工程でインキの溶媒(酢酸エチル等)によってフィルムの白化が起きたり、フィルムの耐破れ性が低下したりするため好ましくない。また、共重合成分の含有量は、37モル%以下であるとより好ましく、35モル%以下であると特に好ましい。
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムに用いるポリエステル中には、炭素数8個以上のジオール(たとえば、オクタンジオール等)、または3価以上の多価アルコール(たとえば、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、グリセリン、ジグリセリン等)を、含有させないことが好ましい。これらのジオール、または多価アルコールを含有するポリエステルを使用して得た熱収縮性ポリエステル系フィルムでは、必要な高収縮率を達成しにくくなる。
また、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムに用いるポリエステル中には、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコールをできるだけ含有させないことが好ましい。特に、ジエチレングリコールは、ポリエステル重合時の副生成成分のため、存在し易いが、本発明で使用するポリエステルでは、ジエチレングリコールの含有率が4モル%未満であることが好ましい。
又、フィルムの易滑性を向上させるために、有機滑剤、無機の滑剤等の微粒子を含有せしめることも好ましい。又、必要に応じて安定剤、着色剤、酸化防止剤、消泡剤等の添加剤を含有するものであつても良い。滑り性を付与する微粒子としては、カオリン、クレー、炭酸カルシウム、酸化ケイ素、テレフタル酸カルシウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、リン酸カルシウム、フツ化リチウム等の公知の不活性外部粒子、ポリエステル樹脂の溶融製膜に際して不溶な高融点有機化合物、架橋ポリマー及びポリエステル合成時に使用する金属化合物触媒、たとえばアルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物などによってポリエステル製造時に、ポリマー内部に形成される内部粒子であることができる。
フィルム中に含まれる該微粒子は0.005〜0.9重量%、平均粒径としては0.001〜3.5μmである。本発明のポリエステルの極限粘度は好ましくは0.50以上、更に好ましくは0.60以上、特に好ましくは0.65以上である。ポリエステルの極限粘度が0.50未満であると結晶性が高くなり、十分な収縮率が得られなくなり、好ましくない。
本発明において、適度な白色度を得るためには、例えば、内部に微細な空洞を含有させることが好ましい。例えば発泡材などを混合して押出してもよいが、好ましい方法としてはポリエステル中に非相溶な熱可塑性樹脂を混合し少なくとも1軸方向に延伸することにより、空洞を得ることである。本発明に用いられるポリエステルに非相溶の熱可塑性樹脂は任意であり、ポリエステルに非相溶性のものであれば特に制限されるものではない。具体的には、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスルホン系樹脂、セルロース系樹脂などがあげられる。特に空洞の形成性からポリスチレン系樹脂あるいはポリメチルペンテン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂が好ましい。
ポリスチレン系樹脂とは、ポリスチレン構造を基本構成要素として含む熱可塑性樹脂を指し、アタクティックポリスチレン、シンジオタクティックポリスチレン、アイソタクティックポリスチレン等のホモポリマーの外、その他の成分をグラフトあるいはブロック共重合した改質樹脂、例えば耐衝撃性ポリスチレン樹脂や変性ポリフェニレンエーテル樹脂等、更にはこれらのポリスチレン系樹脂と相溶性を有する熱可塑性樹脂例えばポリフェニレンエーテルとの混合物を含む。
また、ポリメチルペンテン系樹脂とは、80モル%以上、好ましくは90モル%以上が4−メチルペンテン−1から誘導される単位を有するポリマーであり、他の成分としてはエチレン単位、プロピレン単位、ブテン−1単位、3−メチルブテン−1等からの誘導単位が例示される。かかるポリメチルペンテンのメルトフローレートは200g/10分以下であることが好ましく、更に好ましくは30g/10分以下である。これは、メルトフローレートが200g/10分を超える場合には、フィルムの軽量化効果を得にくくなるからである。
また、本発明におけるポリプロピレン系樹脂としては、アイソタクティックポリプロピレン、シンジオタクティックポリプロピレン等のホモポリマーの外、その他の成分をグラフトあるいはブロック共重合した改質樹脂も含まれる。
前記ポリエステルと非相溶な樹脂を混合してなる重合体混合物の調製にあたっては、たとえば、各樹脂のチップを混合し押出機内で溶融混練した後押出してもよいし、予め混練機によって両樹脂を混練したものを更に押出機より溶融押出ししてもよい。また、ポリエステルの重合工程においてポリスチレン系樹脂を添加し、攪拌分散して得たチップを溶融押出してもかまわない。
本発明におけるフィルムは内部に多数の空洞を含有する層Aの少なくとも片面にA層よりも空洞の少ない層Bを設けることが好ましい。この構成にするためには異なる原料をA、Bそれぞれ異なる押出機に投入、溶融し、T−ダイの前またはダイ内にて溶融状態で貼り合わせ、冷却ロールに密着固化させた後、後に述べる方法で延伸することが好ましい。このとき、原料としてB層の非相溶な樹脂はA層よりも少ないことが好ましい。こうすることによりB層の空洞が少なく、また表面の荒れが少なくなり、印刷の美観を損なわないフィルムとなる。また、フィルム中に空洞が多数存在しない部分が存在するため、フィルムの腰が弱くならず装着性に優れるフィルムとなる。
また、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、90℃の温水中で無荷重状態で10秒間に亘って処理したときに、収縮前後の長さから、下式1により算出したフィルムの長手方向の熱収縮率(すなわち、90℃の湯温熱収縮率)が、15%以上40%未満であることが好ましい。
熱収縮率={(収縮前の長さ−収縮後の長さ)/収縮前の長さ}×100(%) ・・式1
90℃における長手方向の湯温熱収縮率が15%未満であると、収縮量が小さいために、ラベルとして胴巻き方式で巻き付けた後の熱収縮時にシワやタルミが生じてしまうので好ましくなく、反対に、90℃における長手方向の湯温熱収縮率が40%以上であると、ラベルとして胴巻き方式で巻き付けた後の熱収縮時に収縮歪みが生じ易くなったり、いわゆる“飛び上がり”が発生してしまうので好ましくない。なお、90℃における長手方向の湯温熱収縮率の下限値は、17%以上であると好ましく、19%以上であるとより好ましく、21%以上であると特に好ましい。また、90℃における長手方向の湯温熱収縮率の上限値は、38%以下であると好ましく、36%以下であるとより好ましく、34%以下であると特に好ましい。
また、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、90℃の温水中で無荷重状態で10秒間に亘って処理したときに、収縮前後の長さから、上式1により算出したフィルムの幅方向の湯温熱収縮率が、−5%以上5%以下であることが好ましい。
90℃における幅方向の湯温熱収縮率が−5%未満であると、ボトルのラベルとして使用する際に良好な収縮外観を得ることができないので好ましくなく、反対に、90℃における幅方向の湯温熱収縮率が5%を上回ると、ラベルとして胴巻き方式で巻き付けた後の熱収縮時に収縮歪みが生じ易くなるので好ましくない。なお、90℃における幅方向の湯温熱収縮率の下限値は、−4%以上であると好ましく、−3%以上であるとより好ましく、−2%以上であると特に好ましい。また、90℃における幅方向の湯温熱収縮率の上限値は、4%以下であると好ましく、3%以下であるとより好ましく、2%以下であると特に好ましい。
また、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、90℃で10秒間に亘って処理したときの長手方向の最大熱収縮応力が、2.5MPa以上7.0MPa以下であることが好ましい。
90℃における長手方向の最大熱収縮応力が2.5MPa未満であると、ボトルのラベルとして使用する際に、胴巻き後の熱収縮時に収縮不足を生じて良好な外観を得ることができなくなるので好ましくなく、反対に、90℃における長手方向の最大熱収縮応力が7.0MPaを上回ると、胴巻き後の熱収縮時に収縮歪みが生じ易くなるので好ましくない。なお、90℃における長手方向の最大熱収縮応力の下限値は、3.0MPa以上であると好ましく、3.5MPa以上であるとより好ましく、4.0MPa以上であると特に好ましい。また、90℃における長手方向の最大熱収縮応力の上限値は、6.5MPa以下であると好ましく、6.0MPa以下であるとより好ましく、5.5MPa以下であると特に好ましい。
また、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、以下の方法で算出される長手方向の破断前ヤング率が破断前ヤング率が0.05GPa以上0.15GPa以下であることが好ましい。
[破断前ヤング率の測定方法]
ASTM−D882にしたがって、所定の大きさ(長さ150mm×幅10mm)に切り出したフィルム試料を、温度25℃、湿度65%RHの雰囲気下で、引張試験機を用いて、試長が100mmとなるように両端(長手方向に沿った両端)を掴んで200mm/分の引張速度にて引っ張った場合の応力−歪み曲線を求める。そして、破断時の伸長倍率の90%の倍率となるように伸長した時点(破断時の伸長倍率から逆算)から破断時点までにおける応力と歪みとの比の平均値を、破断前ヤング率として算出する。
長手方向の破断前ヤング率が0.05GPaを下回ると、フィルムの靭性やタフネス性が不十分となり、後加工時に強いテンションが加わった場合にフィルムが破断し易くなるので好ましくなく、反対に、長手方向の破断前ヤング率が0.15GPaを上回ると、フィルムの靭性やタフネス性が高すぎてフィルムを切断する際のカット性が悪くなるので好ましくない。なお、長手方向の破断前ヤング率の下限値は、0.06GPa 以上であると好ましく、0.07GPa以上であるとより好ましく、0.08GPa以上であると特に好ましい。また、長手方向の破断前ヤング率の上限値は、0.14GPa以下であると好ましく、0.13GPa以下であるとより好ましく、0.12GPa以下であると特に好ましい。
また、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、80℃の温水中で長手方向に3%収縮させた後に、以下の方法で単位厚み当たりの幅方向の直角引裂強度を求めたときに、その幅方向の直角引裂強度が100N/mm以上300N/mm以下であることが好ましい。
[直角引裂強度の測定方法]
80℃に調整された湯温中にてフィルムを長手方向に3%収縮させた後に、JIS−K−7128に準じて所定の大きさの試験片としてサンプリングする。しかる後に、万能引張試験機で試験片の両端を掴み、引張速度200mm/分の条件にて、フィルムの幅方向における引張破壊時の強度の測定を行う。そして、下式2を用いて単位厚み当たりの直角引裂強度を算出する。
直角引裂強度=引張破壊時の強度÷厚み ・・式2
80℃の温水中で長手方向に3%収縮させた後の直角引裂強度が100N/mm未満であると、ラベルとして使用した場合に運搬中の落下等の衝撃によって簡単に破れてしまう事態が生ずる可能性があるので好ましくなく、反対に、直角引裂強度が300N/mmを上回ると、ラベルを引き裂く際の初期段階におけるカット性(引き裂き易さ)が不良となるため好ましくない。なお、直角引裂強度の下限値は、125N/mm以上であると好ましく、150N/mm以上であるとより好ましく、175N/mm以上であると特に好ましい。また、直角引裂強度の上限値は、275N/mm以下であると好ましく、250N/mm以下であるとより好ましく、225N/mm以下であると特に好ましい。
また、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、80℃の温水中で長手方向に3%収縮させた後に、以下の方法で長手方向および幅方向のエルメンドルフ引裂荷重を求めたときに、それらのエルメンドルフ引裂荷重の比であるエルメンドルフ比が0.15以上1.5以下であることが好ましい。
[エルメンドルフ比の測定方法]
所定の長さを有する矩形状の枠にフィルムを予め弛ませた状態で装着する(すなわち、フィルムの両端を枠によって把持させる)。そして、弛んだフィルムが枠内で緊張状態となるまで(弛みがなくなるまで)、約5秒間に亘って80℃の温水に浸漬させることによって、フィルムを長手方向に10%収縮させる。しかる後に、JIS−K−7128に準じて、フィルムの長手方向および幅方向のエルメンドルフ引裂荷重の測定を行い、下式3を用いてエルメンドルフ比を算出する。
エルメンドルフ比=長手方向のエルメンドルフ引裂荷重÷幅方向のエルメンドルフ引裂荷重 ・・式3
エルメンドルフ比が0.15未満であると、ラベルとして使用した場合にミシン目に沿って真っ直ぐに引き裂きにくいので好ましくない。反対にエルメンドルフ比が1.5を上回ると、ミシン目とずれた位置で裂け易くなるので好ましくない。なお、エルメンドルフ比の下限値は、0.20以上であると好ましく、0.25以上であるとより好ましく、0.3以上であると特に好ましい。また、エルメンドルフ比の上限値は、1.4以下であると好ましく、1.3以下であるとより好ましく、1.2以下であると特に好ましい。
加えて、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、長手方向の厚み斑が20%以下であることが好ましい。長手方向の厚み斑が20%を超える値であると、ラベル作成の際の印刷時に印刷斑が発生し易くなったり、熱収縮後に収縮斑が発生し易くなったりするので好ましくない。なお、長手方向の厚み斑は、15%以下であるとより好ましく、10%以下であるとより好ましい。
上記の熱収縮フィルムの長手方向、幅方向の熱収縮率、破断前ヤング率、最大熱収縮応力、直角引裂強度、エルメンドルフ比、厚み斑は、前述の好ましいフィルム組成を用いて、後述の好ましい製造方法と組み合わせることにより達成することが可能となる。
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムの厚みは、特に限定するものではないが、ラベル用熱収縮性フィルムとして10〜200μmが好ましく、20〜100μmがより好ましい。
本発明のフィルムは、一方の面の中心線平均表面粗さ0.5μm以下、より好ましくは0.2μm以下、さらに好ましくは0.1μm以下である。0.5μmを超えると、印刷をした場合の美観が不良になる。
また一方の面の反対面の中心線平均表面粗さは一方の面のそれより、好ましくは0.05μm以上、より好ましくは0.1μm以上、さらに好ましくは0.2μm大きいことが好ましい。一方の面と反対面の中心線平均表面粗さの差が0.05未満では、印刷を施す反対面の滑りが不良になるため収縮時にボトルとフィルムの滑りが不良になり、ラベルを装着したときの美観が不良となる。
以上の特性を満足するために本発明のフィルムは単一の層からなるものでもよいが、好ましくは層構成はA/B、B/A/B、あるいはB/A/Cである。A層とB層の厚み比は好ましくはA/B=2/1以上、より好ましくは4/1以上、さらに好ましくは6/1以上である。1/1未満では、印刷性の美観と比重を下げることの両立が困難である。B/A/Bは収縮処理後の好ましくないカーリングを抑制する上で好ましい。
C層を設ける場合は、空洞の含有量は任意であるが、収縮時のボトルとフィルムの滑りを制御するための粒子を添加することが可能である。
本発明のフィルムはクッション率が10%以上、好ましくは20%以上である。クッション率が低いと、瓶やボトルの破損防止効果が低下する。
本発明においては、全光線透過率は30%以下、好ましくは25%以下、より好ましくは20%以下、さらに好ましくは15%以下である。30%以上では内容物が透けて見えたり、印刷物が見えにくかったりと外観に劣る。本発明においては、白色度は60以上、好ましくは70以上、より好ましくは75以上、更に好ましくは80以上である。60未満では内容物が透けて見えたり、印刷物が見えにくかったりで外観に劣る。上限は特に定めないが95以下であって構わない。フィルム厚みは100μm以下が好ましい。これ以上では、収縮ムラがおきやすくなる。
本発明で得られたフィルムは、チューブ状にしてフィルム端部の接合によって製造する。それに当たっては、1.3ジオキソランまた又は1.3ジオキソランと相溶する有機溶剤との混合液または溶解度パラメータが8.0〜13.8の範囲内にある溶剤または膨潤剤を塗布し、乾燥する前に70℃以下の温度で接合してチューブ状体を得ることをで接着することが好ましい。溶解度パラメータは例えば溶剤ハンドブック(日本接着協会編、日刊工業新聞社刊)などに記されているものがあげられる。チューブにおける接合部は可能な限り細い接合幅のものから50mm以上に及ぶ広幅のものであってもよく、勿論容器類の大きさに応じて適宜定められるものであるが、通常の種類では1〜5mm幅が標準である。又接合部は一本の線状に接合されたものでもよいが、2本以上に渡って複数の線状接合が形成されたものでも良い。これらの接合部はフィルム基材にほとんど損傷を与えないものであるから、ポリエステル系重合体の特性をそのまま保持しており、耐衝撃性や耐破瓶性等の保護特性を有するに止まらず熱収縮による配向度の低下、又その後の熱処理による白化現象や脆化現象を見ることもなく良好である。
このチューブを使用した装着物としては、容器、瓶(プラスチックボトルを含む)、缶棒状物(パイプ、棒、木材、各種棒状体)があるが、好ましくはポリエチレンテレフタレートを主体とするボトルに装着することにより、回収が容易となり、ポリエチレンテレフタレートボトルの再利用の際にボトル原料に微量混合されてしまっても、着色しにくいので有効である。
また、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、上記したポリエステル原料を押出機により溶融押し出しして未延伸フィルムを形成し、その未延伸フィルムを以下に示す方法により、二軸延伸して熱処理することによって得ることができる。
原料樹脂を溶融押し出しする際には、ポリエステル原料をホッパードライヤー、パドルドライヤー等の乾燥機、または真空乾燥機を用いて乾燥するのが好ましい。そのようにポリエステル原料を乾燥させた後に、押出機を利用して、200〜300℃の温度で溶融しフィルム状に押し出す。かかる押し出しに際しては、Tダイ法、チューブラー法等、既存の任意の方法を採用することができる。
そして、押し出し後のシート状の溶融樹脂を急冷することによって未延伸フィルムを得ることができる。なお、溶融樹脂を急冷する方法としては、溶融樹脂を口金より回転ドラム上にキャストして急冷固化することにより実質的に未配向の樹脂シートを得る方法を好適に採用することができる。
さらに、得られた未延伸フィルムを、後述するように、所定の条件で幅方向に延伸した後に、一旦、熱処理し、しかる後に所定の条件で長手方向に延伸し、その縦延伸後のフィルムを急冷することによって、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムを得ることが可能となる。以下、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムを得るための好ましい二軸延伸・熱処理方法について、従来の熱収縮性ポリエステル系フィルムの二軸延伸・熱処理方法との差異を考慮しつつ詳細に説明する。
[熱収縮性ポリエステル系フィルムの好ましい延伸・熱処理方法]
通常の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、収縮させたい方向に未延伸フィルムを延伸することによって製造される。従来から長手方向に収縮する熱収縮性ポリエステル系フィルムについての要求は高かったものの、未延伸フィルムを単純に長手方向に延伸するだけでは、幅の広いフィルムが製造できないため生産性が悪い上、厚み斑の良好なフィルムを製造することができない。また、予め幅方向に延伸した後に長手方向に延伸する方法を採用すると、長手方向への収縮量が不十分となったり、幅方向に不必要に収縮するものとなってしまう。また、特開平8−244114号公報には、長手方向の機械的特性を向上させるために未延伸フィルムを所定の条件下で縦−横−縦の順に延伸する方法が示されているが、発明者らのパイロット機での追試によれば、かかる方法では、主収縮方向である長手方向への収縮性の十分なフィルムを得ることができない上、製造されたフィルムロールに幅方向のシワが発生し易くなることが判明した。加えて、長手方向への収縮性を上げるべく縦方向の延伸倍率(1段目の縦延伸倍率あるいは2段目の縦延伸倍率)を増加させると、最終的に長手方向に延伸する際にフィルムの破断が多発して連続的に安定した製造を行うことが困難であることも判明した。また、上記追試によって得られたフィルムは製造されたフィルムロールに長手方向のシワが発生した。
本発明者らは、最終的に長手方向の収縮量を大きくするためには、特開平8−244114号のように長手方向および幅方向に二軸延伸した後に長手方向に延伸する方法は不利であり、単純に幅方向に延伸した後に長手方向に延伸する方が有利ではないかと考えた。そして、そのような幅方向の延伸後に長手方向に延伸する方法(以下、単に、横−縦延伸法という)において、各延伸工程における条件によりフィルムの長手方向の湯温収縮率がどのように変化するかについて鋭意検討した。その結果、横−縦延伸法によるフィルム製造の際に、後述する(a)の手段(幅方向への延伸後に中間熱処理を施すことによる収縮応力の制御)を施すことにより、長手方向の温湯収縮率や熱収縮応力を高くすることができ、連続的に安定して製造することが可能となることを突き止めた。
ところが、そのような(a)の手段を施した熱収縮性フィルム(すなわち、「横延伸−中間熱処理−縦延伸」という特殊なプロセスによって得られる熱収縮性フィルム)は、主収縮方向が長手方向であり幅方向における機械的強度に優れるものの、長手方向の温湯収縮率や熱収縮応力が高すぎるものも存在し、フィルムロールから直接ボトルの周囲に胴巻きした後に熱収縮させた際の収縮仕上がり性が必ずしも良好であるとは言えないことが判明した。加えて、単純に「横延伸−中間熱処理−縦延伸」というプロセスを採用しただけでは、フィルムの靱性、粘性やタフネス性が必ずしも良好であるとは言えないことも判明した。
それゆえ、本発明者らは、横延伸−中間熱処理−縦延伸を施した後のフィルムを処理することによって、胴巻き後の熱収縮時の収縮仕上がり性を改善できないか否かについて鋭意検討した。その結果、横延伸−中間熱処理−縦延伸というプロセス後のフィルムに、後述する(b)の手段(縦延伸後における最終的な熱セットおよび幅方向への緩和処理の実施)を講じることにより、胴巻き後の熱収縮時の収縮仕上がり性が飛躍的に改善できることを見出し、本発明を案出するに至った。以下、上記(a),(b)の各手段について順次説明する。
(a)幅方向への延伸後の中間熱処理による収縮応力の制御
本発明の横−縦延伸法によるフィルムの製造においては、未延伸フィルムを幅方向に延伸した後に、75℃以上140℃以下の温度で1.0秒以上20.0秒以下の時間に亘って熱処理(以下、中間熱処理という)することが好ましい。かかる中間熱処理を行うことによって、ラベルとした場合に収縮斑が生じないフィルムを得ることが可能となる。そのように横延伸後に特定の中間熱処理を施すことにより収縮斑が生じないフィルムを得ることが可能となる理由は明らかではないが、特定の中間熱処理を施すことによって、幅方向への分子配向をある程度残存させつつ、幅方向の収縮応力を低減させることが可能となるためではないかと考えている。なお、熱処理の温度の下限は、85℃以上であると好ましく、90℃以上であるとより好ましい。また、熱処理の温度の上限は、135℃以下であると好ましく、130℃以下であるとより好ましい。一方、熱処理の時間は、1.0秒以上20.0秒以下の範囲内で原料組成に応じて適宜調整する必要がある。
(b)縦延伸後の最終セットおよび幅方向の緩和処理
本発明の横−縦延伸法によるフィルムの製造においては、上記の如く、横延伸後に中間熱処理を施してから長手方向に延伸した後に、テンター内で幅方向の両端際をクリップによって把持した状態で90℃以上140℃以下の温度で加熱しながら幅方向に1%以上30%以下の範囲内で緩和させることが好ましい。すなわち、本発明の熱収縮性フィルムのように、長手方向の温湯熱収縮率(90℃)が15%以上40%未満の適度な温湯熱収縮率を有する熱収縮性フィルムを得るためには、単純に縦方向への延伸倍率を調整することによって、長手方向の温湯熱収縮率を調整するのでは、所望する温湯熱収縮率をフィルムの長尺方向に亘って精度良く発現させるのは困難であり、一旦、所望とする温湯熱収縮率を発現し得る延伸倍率よりも高い倍率で縦方向へ延伸した後に、フィルムに最終的な熱セット(最終セット)を加えると同時に幅方向への緩和処理を施すことにより、温湯熱収縮率を低減させて、所望する温湯熱収縮率となるように調整するのが好ましい。そのようにフィルムを高い倍率で縦方向に延伸した後に最終的な熱セットを加えながら幅方向に適度な量だけ緩和させて、最終的なフィルムの縦方向および幅方向の温湯熱収縮率を微調整することによって、ラベルとして胴巻き方式で巻き付けて熱収縮させた際の収縮仕上がり性を良好なものとすることが可能となる。緩和温度が90℃を下回ったり140℃を上回ったりすると、幅方向の温湯熱収縮率の微調整が困難となるので好ましくない。また、緩和量が1%を下回ると、幅方向の温湯熱収縮率の微調整が困難となるので好ましくなく、反対に、緩和量が30%を上回ると、長手方向の温湯熱収縮率の微調整が困難となるので好ましくない。
上記した(a),(b)の手段を講じることによって、胴巻き後の熱収縮時の収縮仕上がり性がきわめて良好な上、靭性、粘性やタフネス性の良好な熱収縮性ポリエステル系フィルムを得ることが可能となる。また、上記した(a),(b)の手段の内の特定の何れかのみが、フィルムの長手方向における熱収縮性、安定した製膜性、および、胴巻き後の収縮時の収縮仕上がり性、靭性やタフネス性に有効に寄与するものではなく、(a),(b)の手段を組み合わせて用いることにより、非常に効率的に、長手方向における熱収縮性、安定した製膜性、および、良好な収縮仕上がり性、靭性、タフネス性等を同時に発現させることが可能となるものと考えられる。
なお、上記した本発明の横−縦延伸法によるフィルムの製造においては、未延伸フィルムの幅方向への延伸は、テンター内で幅方向の両端際をクリップによって把持した状態で、Tg+5℃以上Tg+40℃以下の温度で2.5倍以上6.0倍以下の倍率となるように行うのが好ましい。延伸温度がTg+5℃を下回ると、延伸時に破断を起こし易くなるので好ましくなく、反対にTg+40℃を上回ると、幅方向の厚み斑が悪くなるので好ましくない。なお、横延伸の温度の下限は、Tg+10℃以上であると好ましく、Tg+15℃以上であるとより好ましい。また、横延伸の温度の上限は、Tg+35℃以下であると好ましく、Tg+30℃以下であるとより好ましい。一方、幅方向の延伸倍率が2.5倍を下回ると、生産性が悪いばかりでなく幅方向の厚み斑が悪くなるので好ましくなく、反対に6.0倍を上回ると、延伸時に破断を起こし易くなる上、緩和させるのに多大なエネルギーと大掛かりな装置が必要となり、生産性が悪くなるので好ましくない。なお、横延伸の倍率の下限は、3.0倍以上であると好ましく、3.5倍以上であるとより好ましい。また、横延伸の倍率の上限は、5.5倍以下であると好ましく、5.0倍以下であるとより好ましい。
また、上記した本発明の横−縦延伸法によるフィルムの製造においては、中間熱処理を施したフィルムを長手方向に延伸する前に、フィルム端縁際の十分に横延伸されていない肉厚部分(主として横延伸時のクリップ把持部分)をトリミングしても良い(特に、原料として結晶性の高い樹脂を使用する場合には、トリミングするのが好ましい)。より具体的には、フィルムの左右の端縁際に位置した中央部分の厚みの約1.1〜1.3倍の厚みの部分において、カッター等の工具を用いてフィルム端縁際の肉厚部分を切断し、肉厚部分を除去しつつ、残りの部分のみを長手方向に延伸する方法を採用することができる。また、上記の如くフィルム端部をトリミングする際には、トリミングする前のフィルムの表面温度が50℃以下となるように冷却しておくことが好ましい。そのようにフィルムを冷却することにより、切断面を乱すことなくトリミングすることが可能となる。加えて、フィルム端部のトリミングは、通常のカッター等を用いて行うことができるが、周状の刃先を有する丸刃を用いると、局部的に刃先が鈍くなる事態が起こらず、フィルム端部を長期間に亘ってシャープに切断し続けることができ、長手方向への延伸時における破断を誘発する事態が生じないので好ましい。原料として結晶性の高い樹脂を使用する場合には、上記の如く、長手方向への延伸前にフィルムの端部をトリミングすることによって、一旦熱固定したフィルムを均一に長手方向へ延伸することが可能となり、破断のない安定したフィルムの連続製造が可能となる。さらに、フィルムを均一に長手方向へ延伸することが可能となるため、長手方向の厚み斑の小さなフィルムを得ることができる。その上、フィルムの端部をトリミングすることによって、長手方向への延伸時におけるボーイングが回避され、左右の物性差の小さなフィルムを得ることが可能となる。
以下、実施例によって本発明をより詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例の態様に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更することが可能である。実施例、比較例で使用した原料の性状、組成、実施例、比較例におけるフィルムの製造条件(延伸・熱処理条件等)を、それぞれ表1〜表3に示す。
Figure 2009143044
Figure 2009143044
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フィルムの評価方法は下記の通りである。
[Tg(ガラス転移点)]
セイコー電子工業株式会社製の示差走査熱量計(型式:DSC220)を用いて、未延伸フィルム5mgを、−40℃から120℃まで、昇温速度10℃/分で昇温し、得られた吸熱曲線より求めた。吸熱曲線の変曲点の前後に接線を引き、その交点をTg(ガラス転移点)とした。
[Tm(融点)]
セイコー電子工業株式会社製の示差走査熱量計(型式:DSC220)を用いて、未延伸フィルム5mgを採取し、室温より昇温速度10℃/分で昇温したときの吸熱曲線のピークの温度より求めた。
[熱収縮率(湯温熱収縮率)]
フィルムを10cm×10cmの正方形に裁断し、所定温度±0.5℃の温水中において、無荷重状態で10秒間処理して熱収縮させた後、フィルムの縦および横方向の寸法を測定し、上式1にしたがって、それぞれ熱収縮率を求めた。当該熱収縮率の大きい方向を主収縮方向とした。
[最大熱収縮応力値]
延伸したフィルムを、主収縮方向×主収縮方向と直交する方向=200mm×15mmのサイズにカットした。しかる後、(株)ボールドウィン社製 万能引張試験機 STM−50を温度90℃に調整した上で、カットしたフィルムをセットし、10秒間保持したときの応力値を測定した。
[破断前ヤング率の測定方法]
ASTM−D882にしたがって、長さ150mm×幅10mmに切り出したフィルム試料を、温度25℃、湿度65%RHの雰囲気下で、(株)島津製作所社製オートグラフを用いて、試長が100mmとなるように両端(長手方向に沿った両端)を掴んで200mm/分の引張速度にて引っ張った場合の応力−歪み曲線を求めた。そして、破断時の伸長倍率の90%の倍率となるように伸長した時点(破断時の伸長倍率から逆算)から破断時点までにおける応力と歪みとの比の平均値を、破断前ヤング率として算出した。
[直角引裂強度]
80℃に調整された湯温中にてフィルムを主収縮方向に3%収縮させた後に、JIS−K−7128に準じて、図1に示す形状にサンプリングすることによって試験片を作製した(なお、サンプリングにおいては、試験片の長手方向をフィルムの主収縮方向とした)。しかる後に、万能引張試験機((株)島津製作所製 オートグラフ)で試験片の両端を掴み、引張速度200mm/分の条件にて、フィルムの幅方向における引張破壊時の強度の測定を行い、上式2を用いて単位厚み当たりの直角引裂強度を算出した。
[エルメンドルフ比]
得られたフィルムを矩形状の枠に予め弛ませた状態で装着し(フィルムの両端を枠によって把持させ)、弛んだフィルムが枠内で緊張状態となるまで(弛みがなくなるまで)、約5秒間に亘って80℃の温水に浸漬させることによって、フィルムを主収縮方向に3%収縮させた(以下、予備収縮という)。しかる後に、JIS−K−7128に準じて、主収縮方向×直交方向=75mm×63mmのサイズに切り取り、長尺な端縁(主収縮方向に沿った端縁)の中央から当該端縁に直交するように20mmのスリット(切り込み)を入れることによって試験片を作製した。そして、作製された試験片を用いて直交方向のエルメンドルフ引裂荷重の測定を行った。また、上記方法と同様な方法でフィルムを主収縮方向に予備収縮させた後に、フィルムの主収縮方向と直交方向とを入れ替えて試験片を作製し、主収縮方向のエルメンドルフ引裂荷重の測定を行った。そして、得られた主収縮方向および主収縮方向と直交する方向のエルメンドルフ引裂荷重から上式3を用いてエルメンドルフ比を算出した。
[胴巻き(ラップ・ラウンド)後の収縮時の収縮仕上がり性]
熱収縮性フィルムに東洋インキ製造(株)の草・金・白色のインキで3色印刷を施し、当該印刷後の熱収縮性フィルムを、長手方向が縦になるように、縦230mm×横100mmのサイズで切り出した。そして、265mlアルミニウムボトル缶(胴直径68mm、ネック部の最小直径25mmで、胴の中央の直径が60mmとなるように“くびれ”が設けてあるもの)を立てた状態で、切り出したフィルムの長辺の一方が感の底部に沿うようにフィルムを巻き付けながら、フィルムの短辺のボトル缶当接面側の端縁際の上下および中央の3箇所に、下記の方法により製造された活性エネルギー線(UV)硬化型接着剤を散点状に塗布して、フィルムをボトル缶に固定した。次いで、巻き付けたフィルムの他端縁際にも、同様な活性エネルギー線硬化型接着剤を塗布し、その他端縁を、先にボトル缶に固定した端縁際に5mmの幅で重ね合わせて、当該他端縁に塗布された接着剤層を挟み込んだ。しかる後、直ちに、その接着部分(フィルムの端縁際同士が重なり合った部分)に3kW(120W/cm)×1灯空冷式水銀灯で紫外線を100mJ/cm となるように照射して、フィルムの両端を硬化接着させて、熱収縮性ラベル付きボトル缶を製造した。続いて、熱収縮性ラベル付きボトル缶を、ラベル装着後、直ちに、長さ3mで92℃に保温された水蒸気炉シュリンクトンネルに送入し、10秒かけて通過させることにより、ラベルを収縮させてボトル缶の外周に密着させた。なお、かかるフィルムの装着の際には、ネック部においては、直径40mmの部分がラベルの一方の端になるように調整した。しかる後に、収縮後の仕上がり性を目視により下記の四段階で評価した。
◎:シワ,飛び上り、収縮不足の何れも未発生で、かつ色の斑も見られない
○:シワ,飛び上り、または収縮不足は確認できないが、若干、色の斑が見られる
△:飛び上り、収縮不足の何れも未発生だが、ネック部の斑が見られる
×:シワ、飛び上り、収縮不足が発生
[白色度]
白色度JIS−L1015−1981−B法により、日本電色工業(株)Z−1001DPを用いて行った
[全光線透過率]
日本電色工業(株)製 NDH−1001DPにて全光線透過率を求めた。
<活性エネルギー線(UV)硬化型接着剤の製造方法>
温度計、攪拌機、蒸留塔、コンデンサー、減圧装置を具備した反応容器の中に、ジメチルテレフタレート440部、ジメチルイソフタレート440部、エチレングリコール412部、ヘキサンジオール393部、及びテトラブトキシチタネート0.5部を仕込み、150〜230℃で120分間加熱してエステル交換反応をさせた。ついで、反応系を10mmHgに減圧し、30分間で250℃まで昇温して反応を行い、共重合ポリエスエルポリオールを得た。ポリエステルポリオールの分子量は1600であった。次に、温度計、攪拌機、還流冷却器を具備した反応容器中に共重合ポリエステルポリオール100部、フェノキシエチルアクリレート120部を仕込み、溶解後、イソホロンジイソシアネート15部およびジブチル錫ジラウレート0.05部を仕込み、70〜80℃で2時間反応させた後、さらに、2−ヒドロキシエチルアクリレート5部を加えて70〜80℃で反応を行うことにより、ウレタンアクリレート樹脂のフェノキシエチルアクリレート溶液を得た。そして、この溶液100部に対し、使用直前に、光重合開始剤として2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(ダロキュアー(登録商標)1173:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)3質量部を添加し、活性エネルギー線(UV)硬化型接着剤を得た。ウレタンアクリレートの分子量は2000であった。なお、上記中の分子量は数平均分子量であり、テトラヒドロフランを溶離役としてGPC150c(ウォーターズ社製)を用いて測定した結果(ポリスチレン換算)である。測定の際に、カラム温度は35℃、流量1ml/分とした。
また、実施例および比較例に用いたポリエステルは以下の通りである。
ポリエステル1:エチレングリコール70モル%,ネオペンチルグリコール30モル%とテレフタル酸とからなるポリエステル(IV 0.72dl/g)
ポリエステル2:ポリエチレンテレフタレート(IV 0.75dl/g)
[実施例1]
上記したポリエステル1とポリエステル2とを重量比70:30で混合し、B層の原料とした。A層の原料は前記同様ポリエステル1とポリエステル2とを重量比70:30で混合するに際し更に結晶性ポリポリスチレン樹脂(G797N 日本ポリスチレン製)10重量%及び二酸化チタン(TA−300富士チタン製)10重量%を加えて混合した。A層及びB層の原料をそれぞれ別々の2軸スクリュー押出機に投入、混合、溶融したものをフィードブロックで接合したものをT−ダイスより280℃で溶融押出しし、表面温度30℃に冷却された回転する金属ロールに巻き付けて急冷することにより、厚さ200μmでB/A/Bの積層構造を持つ未延伸フィルムを得た(B/A/B=10μm/1800μm/10μm)。このときの未延伸フィルムの引取速度(金属ロールの回転速度)は、約20m/min.であった。また、未延伸フィルムのTgは67℃であった。しかる後、その未延伸フィルムを、横延伸ゾーン、中間ゾーン、中間熱処理ゾーンを連続的に設けたテンター(第1テンター)に導いた。なお、当該テンターにおいては、横延伸ゾーンと中間熱処理ゾーンとの中間に位置した中間ゾーンの長さが、約40cmに設定されている。また、中間ゾーンにおいては、フィルムを通過させていない状態で短冊状の紙片を垂らしたときに、その紙片がほぼ完全に鉛直方向に垂れ下がるように、延伸ゾーンからの熱風および熱処理ゾーンからの熱風が遮断されている。
そして、テンターに導かれた未延伸フィルムを、フィルム温度が90℃になるまで予備加熱した後、横延伸ゾーンで横方向に85℃で3.7倍に延伸し、中間ゾーンを通過させた後に(通過時間=約1.2秒)、中間熱処理ゾーンへ導き、幅方向に10%緩和させながら、105℃の温度で6.0秒間に亘って熱処理することによって厚み60μmの横一軸延伸フィルムを得た。しかる後、テンターの後方に設けられた左右一対のトリミング装置(周状の刃先を有する丸刃によって構成されたもの)を利用して、横一軸延伸フィルムの端縁際(中央のフィルム厚みの約1.2倍の厚みの部分)を切断し、切断部位の外側に位置したフィルムの端部を連続的に除去した。
さらに、そのように端部をトリミングしたフィルムを、複数のロール群を連続的に配置した縦延伸機へ導き、予熱ロール上でフィルム温度が70℃になるまで予備加熱した後に、表面温度95℃に設定された延伸ロール間で2.2倍に延伸した。しかる後、縦延伸したフィルムを、表面温度25℃に設定された冷却ロールによって強制的に冷却した。なお、冷却前のフィルムの表面温度は約75℃であり、冷却後のフィルムの表面温度は約25℃であった。また、70℃から25℃に冷却するまでに要した時間は約1.0秒であり、フィルムの冷却速度は、45℃/秒であった。
そして、冷却後のフィルムをテンター(第2テンター)へ導き、当該第2テンター内で115℃の雰囲気下で幅方向に15%緩和させながら5.0秒間に亘って熱処理(最終セット)した後に冷却し、両縁部を裁断除去することによって、約30μmの二軸延伸フィルム(熱収縮性フィルム)を所定の長さに亘って巻き取ってなるフィルムロールを得た。そして、得られたフィルムの特性を上記した方法によって評価した。評価結果を表4に示す。
[実施例2]
実施例1においてA層の原料に添加した結晶性ポリスチレン樹脂10重量%に代えて結晶性ポリプロピレン樹脂(FO−50F グランドポリマー性)10重量%に変更した以外は実施例1と同様の方法によって熱収縮性フィルムを連続的に製造した。そして、得られたフィルムの特性を実施例1と同様の方法によって評価した。評価結果を表4に示す。
[実施例3]
原料であるポリエステル1とポリエステル2との混合比(重量比)を90:10に変更するとともに、縦延伸倍率を2.4倍に変更し、縦延伸後のフィルムを第2テンター内で幅方向に熱緩和させる際の温度を120℃に変更し、当該幅方向の緩和時における緩和量を20%に変更した以外は、実施例1と同様の方法によって熱収縮性フィルムを連続的に製造した。A層には、実施例1と同様に結晶性ポリスチレン樹脂と二酸化チタンが添加されている。そして、得られたフィルムの特性を実施例1と同様の方法によって評価した。評価結果を表4に示す。
[実施例4]
実施例1と同様にして得られた厚さ240μm(B/A/B=12μm/216μm/12μm)の未延伸フィルムについて、第1テンターにおける横延伸倍率を4.0倍に変更するとともに、縦延伸倍率を2.4倍に変更し、縦延伸後のフィルムを第2テンター内で幅方向に緩和させる際の温度を120℃に変更した以外は、実施例1と同様の方法によって熱収縮性フィルムを連続的に製造した。そして、得られたフィルムの特性を実施例1と同様の方法によって評価した。評価結果を表4に示す。
[実施例5]
実施例1におけるA層の原料のみを用いて単一層の厚さ200μmの未延伸フィルムを得て約30μmの二軸延伸フィルムを得た以外は実施例1と同様の方法で二軸延伸熱収縮性ポリエステル系フィルムを得た。そして、得られたフィルムの特性を実施例1と同様の方法によって評価した。評価結果を表4に示す。
[比較例1]
未延伸フィルムに横延伸を行わず、複数のロール群を連続的に配置した縦延伸機へ導き、予熱ロール上でフィルム温度が70℃になるまで予備加熱した後に、予熱ロール上でフィルム温度が70℃になるまで予備加熱した後に、表面温度92℃に設定された延伸ロール間で1.5倍に縦延伸し強制的に冷却した以外は実施例1と同様にして縦一軸延伸フィルムを得た。フィルム冷却速度は25℃/秒であった。そして、得られたフィルムの特性を実施例1と同様の方法によって評価した。評価結果を表4に示す。
表4から明らかなように、実施例1〜5で得られたフィルムは、いずれも、長手方向(主収縮方向)の温湯収縮率、幅方向の温湯収縮率、破断前ヤング率がいずれも本発明の範囲に入っており、胴巻き後の熱収縮時の収縮仕上がり性、靭性、タフネス性が良好であった。さらに、実施例1〜5の熱収縮性ポリエステル系フィルムは製造されたフィルムロールにシワが発生することがなかった。また、十分な光線カット性を有する優れたものであった。すなわち、実施例で得られた熱収縮性ポリエステル系フィルムは、ラベルとしての品質が高く、きわめて実用性の高いものであった。
それに対して比較例1で得られたフィルムは、光線カット性については優れているものの、破断前ヤング率が小さく、フィルムの靭性やタフネス性の点で好ましいものではなかった。
[参考例1〜3及び比較参考例1、2]
以下の参考例及び比較参考例はフィルム内部に空洞がなく、白色度が70に達しない透明性のフィルムである点で本発明の実施例ではないが、フィルム製造条件と収縮特性との関係等を更に明確に説明するために記載する。
[参考例1]
上記したポリエステル1とポリエステル2とを重量比70:30で混合して押出機に投入した。しかる後、その混合樹脂を280℃で溶融させてTダイから押出し、表面温度30℃に冷却された回転する金属ロールに巻き付けて急冷することにより、厚さが200μmの未延伸フィルムを得た。このときの未延伸フィルムの引取速度(金属ロールの回転速度)は、約20m/min.であった。また、未延伸フィルムのTgは67℃であった。しかる後、その未延伸フィルムを、横延伸ゾーン、中間ゾーン、中間熱処理ゾーンを連続的に設けたテンター(第1テンター)に導いた。なお、当該テンターにおいては、横延伸ゾーンと中間熱処理ゾーンとの中間に位置した中間ゾーンの長さが、約40cmに設定されている。また、中間ゾーンにおいては、フィルムを通過させていない状態で短冊状の紙片を垂らしたときに、その紙片がほぼ完全に鉛直方向に垂れ下がるように、延伸ゾーンからの熱風および熱処理ゾーンからの熱風が遮断されている。
そして、テンターに導かれた未延伸フィルムを、フィルム温度が90℃になるまで予備加熱した後、横延伸ゾーンで横方向に85℃で3.7倍に延伸し、中間ゾーンを通過させた後に(通過時間=約1.2秒)、中間熱処理ゾーンへ導き、幅方向に10%緩和させながら、105℃の温度で6.0秒間に亘って熱処理することによって厚み60μmの横一軸延伸フィルムを得た。しかる後、テンターの後方に設けられた左右一対のトリミング装置(周状の刃先を有する丸刃によって構成されたもの)を利用して、横一軸延伸フィルムの端縁際(中央のフィルム厚みの約1.2倍の厚みの部分)を切断し、切断部位の外側に位置したフィルムの端部を連続的に除去した。
さらに、そのように端部をトリミングしたフィルムを、複数のロール群を連続的に配置した縦延伸機へ導き、予熱ロール上でフィルム温度が70℃になるまで予備加熱した後に、表面温度95℃に設定された延伸ロール間で2.2倍に延伸した。しかる後、縦延伸したフィルムを、表面温度25℃に設定された冷却ロールによって強制的に冷却した。なお、冷却前のフィルムの表面温度は約75℃であり、冷却後のフィルムの表面温度は約25℃であった。また、70℃から25℃に冷却するまでに要した時間は約1.0秒であり、フィルムの冷却速度は、45℃/秒であった。
そして、冷却後のフィルムをテンター(第2テンター)へ導き、当該第2テンター内で115℃の雰囲気下で幅方向に15%緩和させながら6.0秒間に亘って熱処理(最終セット)した後に冷却し、両縁部を裁断除去することによって、約30μmの二軸延伸フィルム(熱収縮性フィルム)を所定の長さに亘って巻き取ってなるフィルムロールを得た。そして、得られたフィルムの特性を上記した方法によって評価した。評価結果を表4に示す。
[参考例2]
原料であるポリエステル1とポリエステル2との混合比(重量比)を90:10に変更するとともに、縦延伸倍率を2.4倍に変更し、縦延伸後のフィルムを第2テンター内で幅方向に熱緩和させる際の温度を120℃に変更し、当該幅方向の緩和時における緩和量を20%に変更した以外は、参考例1と同様の方法によって熱収縮性フィルムを連続的に製造した。そして、得られたフィルムの特性を参考例1と同様の方法によって評価した。評価結果を表4に示す。
[参考例3]
参考例1と同様にして得られた厚さ240μmの未延伸フィルムについて、第1テンターにおける横延伸倍率を4.0倍に変更するとともに、縦延伸倍率を2.4倍に変更し、縦延伸後のフィルムを第2テンター内で幅方向に緩和させる際の温度を120℃に変更した以外は、参考例1と同様の方法によって熱収縮性フィルムを連続的に製造した。そして、得られたフィルムの特性を参考例1と同様の方法によって評価した。評価結果を表4に示す。
[比較参考例1]
参考例1と同様に得られた厚さ300μmの未延伸フィルムを、第1テンターに導き、フィルム温度が90℃になるまで予備加熱した後、横延伸ゾーンで横方向に75℃で4.0倍に延伸し、中間ゾーンを通過させた後に(通過時間=約1.2秒)、中間熱処理ゾーンへ導き、幅方向に10%緩和させながら、130℃の温度で6.0秒間に亘って熱処理することによって厚み80μmの横一軸延伸フィルムを得た。しかる後、参考例1と同様に、横一軸延伸フィルムの端縁際(中央のフィルム厚みの約1.2倍の厚みの部分)を切断し、切断部位の外側に位置したフィルムの端部を連続的に除去し、端部トリミング後のフィルムを、縦延伸機へ導き、予熱ロール上でフィルム温度が70℃になるまで予備加熱した後に、表面温度95℃に設定された延伸ロール間で3.0倍に延伸した。しかる後、縦延伸後のフィルムを、参考例1と同様に、冷却ロールによって強制的に冷却した後、第2テンターへ導き、当該第2テンター内で87℃の雰囲気下で幅方向に10%緩和させながら5.0秒間に亘って熱処理した後に冷却し、両縁部を裁断除去することによって、約30μmの二軸延伸フィルム(熱収縮性フィルム)を所定の長さに亘って巻き取ってなるフィルムロールを得た。そして、得られたフィルムの特性を上記した方法によって評価した。評価結果を表4に示す。
[比較参考例2]
参考例1と同様に得られた厚さ180μmの未延伸フィルムを、横延伸ゾーン、中間熱処理ゾーンを連続的に設けたテンター(第1テンター)に導いた。そして、テンターに導かれた未延伸フィルムを、フィルム温度が90℃になるまで予備加熱した後、横延伸ゾーンで横方向に75℃で4.0倍に延伸した後、中間熱処理ゾーンへ導き、110℃の温度で6.0秒間に亘って熱処理することによって厚み45μmの横一軸延伸フィルムを得た。しかる後、その横一軸延伸フィルムを、複数のロール群を連続的に配置した縦延伸機へ導き、予熱ロール上でフィルム温度が70℃になるまで予備加熱した後に、表面温度90℃に設定された延伸ロール間で1.5倍に延伸した。しかる後、縦延伸したフィルムを、表面温度25℃に設定された冷却ロールによって強制的に冷却した。そして、冷却後のフィルムをテンター(第2テンター)へ導き、当該第2テンター内で110℃の雰囲気下で5.0秒間に亘って熱処理し、両縁部を裁断除去することによって、約30μmの二軸延伸フィルム(熱収縮性フィルム)を所定の長さに亘って巻き取ってなるフィルムロールを得た。そして、得られたフィルムの特性を上記した方法によって評価した。評価結果を表4に示す。
Figure 2009143044
表4から明らかなように、参考例1〜3で得られたフィルムは、いずれも、長手方向(主収縮方向)の温湯収縮率、幅方向の温湯収縮率、破断前ヤング率がいずれも本発明の範囲に入っており、胴巻き後の熱収縮時の収縮仕上がり性、靭性、タフネス性が良好であった。さらに、参考例1〜3の熱収縮性ポリエステル系フィルムは製造されたフィルムロールにシワが発生することがなかった。すなわち、実施例で得られた熱収縮性ポリエステル系フィルムは、いずれもフィルム内部に空洞がなく、白色度において本発明を満足するものではないが、ラベルとしての品質が高く、きわめて実用性の高いものであった。
それに対して、比較参考例1で得られた熱収縮性フィルムは、長手方向(主収縮方向)の温湯収縮率、幅方向の温湯収縮率とも本発明の範囲に入っておらず、胴巻き後の熱収縮時の収縮仕上がり性が不良であった。また、比較参考例2で得られた熱収縮性フィルムは、直交方向の温湯収縮率、破断前ヤング率とも本発明の範囲に入っておらず、胴巻き後の熱収縮時の収縮仕上がり性が不十分で、靭性、タフネス性が不良であった。すなわち、比較参考例1,2で得られた熱収縮性ポリエステル系フィルムは、ラベルとしての品質に劣り、実用性の低いものであった。
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、上記の如く優れた加工特性を有しているので、ボトルのラベル用途に好適に用いることができる。
直角引裂強度の測定における試験片の形状を示す説明図である(なお、図中における試験片の各部分の長さの単位はmmである)。
F・・フィルム。

Claims (6)

  1. エチレンテレフタレートを主たる構成成分とし、フィルムを構成する全ポリエステル成分中に、エチレングリコール以外のグリコール成分、または、テレフタル酸以外のジカルボン酸成分を、少なくとも1種、15モル%以上40モル%以下含有しているとともに、一定幅の長尺状に形成されており、主収縮方向が長手方向である熱収縮性ポリエステル系フィルムであって、下記要件(1)〜(5)を満たすことを特徴とする熱収縮性ポリエステル系フィルム。
    (1)90℃の温水中で10秒間に亘って処理した場合における長手方向の温湯熱収縮率が15%以上40%未満であること
    (2)90℃の温水中で10秒間に亘って処理した場合における長手方向と直交する幅方向の温湯熱収縮率が−5%以上5%以下であること
    (3)90℃で10秒間に亘って処理した場合における長手方向の最大熱収縮応力が2.5MPa以上7.0MPa以下であること
    (4)フィルムの長手方向の破断前ヤング率が0.05GPa以上0.15GPa以下であること
    (5)白色度が70以上又は/及び空洞を有すること
  2. 80℃の温水中で長手方向に3%収縮させた後の単位厚み当たりの幅方向の直角引裂強度が100N/mm以上300N/mm以下であることを特徴とする請求項1に記載の熱収縮性ポリエステル系フィルム。
  3. 80℃の温水中で長手方向に3%収縮させた後に長手方向および幅方向のエルメンドルフ引裂荷重を測定した場合におけるエルメンドルフ比が0.15以上1.5以下であることを特徴とする請求項1に記載の熱収縮性ポリエステル系フィルム。
  4. エチレンテレフタレートを主たる構成成分としており、共重合成分の主成分が、グリコール成分はネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノールのいずれかであり、ジカルボン酸成分はイソフタル酸であることを特徴とする請求項1に記載の熱収縮性ポリエステル系フィルム。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の熱収縮性ポリエステル系フィルムを連続的に製造するための製造方法であって、
    未延伸フィルムを、テンター内で幅方向の両端際をクリップによって把持した状態でTg+5℃以上Tg+40℃以下の温度で幅方向に2.5倍以上6.0倍以下の倍率で延伸した後、積極的な加熱操作を実行しない中間ゾーンを通過させた後に、75℃以上140℃以下の温度で1.0秒以上20.0秒以下の時間に亘って熱処理し、30℃/秒以上70℃/秒以下の冷却速度でフィルムの表面温度が45℃以上75℃以下となるまで急速に冷却し、しかる後、Tg+5℃以上Tg+80℃以下の温度で長手方向に2.0倍以上5.5倍以下の倍率で延伸した後に、テンター内で幅方向の両端際をクリップによって把持した状態で90℃以上140℃以下の温度で加熱しながら幅方向に1%以上30%以下の範囲内で緩和させることを特徴とする熱収縮性ポリエステル系フィルムの製造方法。
  6. フィルムを熱処理して急速に冷却した後であって長手方向に延伸する前に、フィルムの幅方向の両端縁のクリップ把持部分を切断除去することを特徴とする請求項5に記載の熱収縮性ポリエステル系フィルムの製造方法。
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