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JP2009007580A - ポリアミドイミド樹脂及びそれを用いた接着剤組成物 - Google Patents

ポリアミドイミド樹脂及びそれを用いた接着剤組成物 Download PDF

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JP2009007580A
JP2009007580A JP2008208105A JP2008208105A JP2009007580A JP 2009007580 A JP2009007580 A JP 2009007580A JP 2008208105 A JP2008208105 A JP 2008208105A JP 2008208105 A JP2008208105 A JP 2008208105A JP 2009007580 A JP2009007580 A JP 2009007580A
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polyamideimide
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Hiroko Tanaka
裕子 田中
Kazumasa Takeuchi
一雅 竹内
Katsuyuki Masuda
克之 増田
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Hitachi Chemical Co Ltd
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Abstract

【課題】弾性率の値によらず高いガラス転移温度を示すポリアミドイミド樹脂を提供すること。
【解決手段】オルガノシロキサン骨格を有し、該オルガノシロキサン骨格中のSi原子の一部に芳香環が結合しているシロキサンジアミンを必須成分とするジアミン化合物とトリカルボン酸無水物とを反応させて得られるジイミドジカルボン酸に、ジイソシアネート化合物を反応させてなるポリアミドイミドであって、ポリアミドイミド樹脂に含まれる芳香環の質量をA、ポリアミドイミド樹脂のアミド基の質量をBとしたときに、A/Bの値が7.05以上であり、シロキサンジアミンが、下記一般式(15)で表されるシロキサンジアミンであることを特徴とするポリアミドイミド樹脂。
Figure 2009007580

[式中、y及びzは1〜50の整数である。]
【選択図】なし

Description

本発明は、ポリアミドイミド樹脂及びそれを用いた接着剤組成物に関する。
近年、電子機器の発達に伴い電子部品の搭載密度が高くなるにつれ、電子部品の小型化、軽量化、高密度化が求められ、これらの要求を満たすためには配線基板、接着剤、半導体チップといった電子部品材料の軽薄短小化及び実装面積の低減が必要である。
電子部品の小型化や高密度化に伴い配線基板の回路は微細化が進み、粗化形状の小さい金属箔との接着力が強い耐熱性の接着剤が要求されるようになった。これまで接着剤に使用されてきたエポキシ樹脂は耐熱性に乏しく、また、ポリアミック酸、ポリアミック酸とビスマレイミドの混合物及びポリイミド樹脂では耐熱性には優れるものの硬化温度が300℃〜400℃と高く、更に、金属箔との接着力も不十分であった。
被着体の種類や形状によらず安定した高い接着性を示し、かつ高耐熱性を有する接着剤としてポリアミドイミド樹脂が有効である。ポリアミドイミド樹脂は、優れた電気的特性及び耐摩耗性をも有していることから主として電線被膜材料(耐熱性エナメル線)に使用されている。
ポリアミドイミド樹脂の中でも分子中にシロキサン構造を有するシロキサン変性ポリアミドイミド樹脂は、上記の樹脂に比べて一般に接着性及び耐熱性に優れている。シロキサン変性ポリアミドイミド樹脂は従来配線板分野で用いられてきた粗化形状の大きな電解銅箔を始め、電解銅箔の光沢面、圧延銅箔等の粗化形状の小さい金属箔に対しても優れた接着性を示す。電子部品の高密度化が進み配線基板の回路が微細化するにつれ、従来用いられてきた粗化形状の大きな金属箔では回路の微細化への対応が困難である。
一方、電子部品を搭載した基板の放熱を目的として、高い熱伝導率の金属と接着した基板を複数貼り合わせて多層板を作る場合には、アルミニウムや金のような構成部材との接着が必要となるが、様々な被着体に対して高い接着性を示すシロキサン変性ポリアミドイミド樹脂は、このような分野における配線用及びパッケージ材料として大きな可能性を有している(例えば、特許文献1及び特許文献2参照。)。更に、近年、フレキシブル配線板用接着剤や応力緩和材の開発に伴い、高耐熱性及び高接着性に加え、低弾性率を有する樹脂が求められている(例えば、特許文献3参照。)。
特開平11−130831号公報 特開2000−096031号公報 特開2001−152015号公報
上記シロキサン変性ポリアミドイミド樹脂は、該樹脂中のシロキサン変性量により弾性率の調節が可能であるが、シロキサン変性量を増大して低弾性率化を図った場合、弾性率の低減に伴いガラス転移温度の低下を回避できないことが多い。そのため、低弾性率及び高Tgの両立は困難である。更に、シロキサン変性ポリアミドイミド樹脂の大きな特長である高い接着性の発現も高弾性の樹脂に限られることが多く、低弾性の樹脂で高い接着性を発現することは難しい。
また、フレキシブル配線板用接着剤や応力緩和材の開発に低弾性かつ高耐熱、高接着性の樹脂が求められているが、異種材料間の接着において両者の熱膨張係数が異なる場合、接着の過程で応力の発生が避けられず接着面の破壊や老朽化の要因となる。しかも、低弾性率を示す接着剤は一般に耐熱性に劣っており、低弾性、高耐熱性及び高接着性のすべての特性を兼ね備えている接着剤を開発することは難しい。
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであり、弾性率の値によらず高いガラス転移温度を示すポリアミドイミド樹脂を提供することを目的とする。本発明はまた、弾性率の値によらず高いガラス転移温度を示し、且つ接着力及び高耐熱性にも優れた接着剤組成物の提供を課題とする。
上記目的を達成するため、本発明は、オルガノシロキサン骨格を備えたポリアミドイミド樹脂であって、上記ポリアミドイミド樹脂は芳香環を有しており、該芳香環の質量をA、上記ポリアミドイミド樹脂のアミド基の質量をBとしたときに、A/Bの値が7.05以上であることを特徴とするポリアミドイミド樹脂を提供する。
上記ポリアミドイミド樹脂は、芳香環とアミド基の質量比が所定値以上であり、且つ、オルガノポリシロキサン骨格を有することから、弾性率の値によらず特に低弾性率であっても高いTgを維持することが可能になる。
本発明はまた、シロキサンジアミンを必須成分とするジアミン化合物とトリカルボン酸無水物とを反応させて得られるジイミドジカルボン酸に、ジイソシアネート化合物を反応させてなるポリアミドイミドであって、上記ポリアミドイミド樹脂に含まれる芳香環の質量をA、上記ポリアミドイミド樹脂のアミド基の質量をBとしたときに、A/Bの値が7.05以上であることを特徴とするポリアミドイミド樹脂を提供する。
芳香環とアミド基の質量比が7.05以上のポリアミドイミド樹脂として、ジイミドジカルボン酸にジイソシアネート化合物を反応させてなるポリアミドイミド樹脂を用いることにより、幅広い弾性率範囲でより高いTgを発揮させることが可能となる。
かかる特性の向上を図るため、上記ポリアミドイミド樹脂は、下記一般式(1)で表される繰り返し単位及び下記一般式(2)で表される繰り返し単位を含むポリアミドイミド樹脂であって、上記ポリアミドイミド樹脂に含まれる芳香環の質量をA、上記ポリアミドイミド樹脂のアミド基の質量をBとしたときに、A/Bの値が7.05以上であるポリアミドイミド樹脂であることが好ましい。この場合において、A/Bの値は8以上13以下がより好適である。
Figure 2009007580
Figure 2009007580
[式中、R1は3価の脂肪族炭化水素基、3価の脂環式炭化水素基又は3価の芳香族炭化水素基、R2及びR3はそれぞれ独立に2価の脂肪族炭化水素基、2価の脂環式炭化水素基又は2価の芳香族炭化水素基、R4は1価の脂肪族炭化水素基、1価の脂環式炭化水素基又は1価の芳香族炭化水素基、をそれぞれ示し、nは1〜50の整数を示す。]
本発明はまた、上記ポリアミドイミド樹脂と、熱硬化性樹脂と、を含むことを特徴とする接着剤組成物を提供する。
上記構成の接着剤組成物は、弾性率の高低によらず特に低弾性率の場合でも所定値以上の安定した接着力、高いTg及び高耐熱性を発揮する。このため、この接着剤組成物からなる接着剤層は応力緩和材として機能することが可能となり、応力による接着面の破壊を防止することができるとともに、粗化形状の小さな平滑面でも高い接着性を実現することができる。
熱的特性、機械的特性及び電気的特性をさらに向上させるため、上記熱硬化性樹脂は、ポリアミドイミド樹脂のアミド基の活性水素と反応し得る有機基を有することが好ましい。
以上説明したように、本発明によれば、弾性率の値によらず特に貯蔵弾性率が数十〜数百Mpaの低い値である場合であっても200℃以上の高いTgを示すポリアミドイミド樹脂を提供することが可能となる。本発明はまた、貯蔵弾性率及びTgについて上述の特性を有するとともに、0.5kN/m以上の安定した接着力及び高耐熱性を発揮する接着剤組成物を提供することが可能となる。そして、原材料費の合計が下がりコストメリットがある。
以下、本発明の実施の形態について説明する。
先ず、本発明のポリアミドイミド樹脂について説明する。
本発明のポリアミドイミド樹脂は、分子中にイミド結合とアミド結合を有する重合体であり、さらにオルガノシロキサン骨格を備えているため低弾性率であり、溶剤乾燥性や接着性に優れている。また、アミド基に対して一定の割合以上の芳香環を有することから、高いTg及び高耐熱性を発揮する。なお、ポリアミドイミド樹脂中の芳香環の存在部位に限定はないが、芳香環は少なくともその一部がオルガノシロキサン骨格のSi原子に結合していることが好ましい。
Si原子の一部に芳香環が結合しているオルガノシロキサン骨格は、Si原子にメチル基のみが結合したジメチルシロキサン骨格と比較して高次構造やモルフォジーが異なるので、ポリアミドイミド樹脂の溶剤乾燥性の向上に有利になると推測される。また、オルガノシロキサン骨格のSi原子に結合する芳香環とそれ以外の位置に存在する芳香環との親和性が高まるので、ポリアミドイミド樹脂中の凝集力が大きくなり耐熱性の向上に効果的であると推測される。
ここで、芳香環とは、ヒュッケル則を満たし、かつ、ヘテロ原子を環内に含まない環状炭化水素をいい、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環及びビフェニル環等が挙げられる。芳香環の質量(A)をアミド基の質量(B)で除した値(A/B値)は、例えば、以下のようにして原料化合物の仕込みモル数から算出することができる。
先ず、芳香環の質量は、原料化合物である芳香環を有する化合物の芳香環を形成している炭素原子及びこれに結合している水素原子の原子量の総和に対して、該化合物の仕込みモル数を乗じて算出する。一方、アミド基の質量は、アミド基を構成する窒素原子、水素原子、炭素原子及び酸素原子の原子量の総和に対して、原料化合物であるアミド基形成化合物、例えばトリカルボン酸無水物の仕込みモル数を乗じて算出する。そして、上記芳香環の質量を上記アミド基の質量で除して芳香環とアミド基との質量比A/Bを算出する。
本発明のポリアミドイミド樹脂のA/B値は、7.05以上、好ましくは8以上13以下である。A/B値が7.05未満であると、低弾性率化が困難となる。また、A/B値が13を越えると、接着性の発現が困難となる場合がある。
なお、本発明のポリアミドイミド樹脂全体におけるオルガノシロキサン骨格の占める割合は、その割合が大きすぎるとシリコーン本来の特性である離型性の影響が大きく現れるようになり、接着剤組成物としたときの良好な接着性を得ることが困難となる場合がある。そのため、ポリアミドイミド樹脂全体におけるSi原子の占める割合は、2〜25質量%(wt%)であることが好ましく、2〜15質量%であることがより好ましい。
本発明のポリアミドイミド樹脂は、下記一般式(1)で表される繰り返し単位及び下記一般式(2)で表される繰り返し単位を含んでいることが好ましく、かかる繰り返し単位は、ブロック的に結合していても良く、ランダム的に結合していても良い。
Figure 2009007580
Figure 2009007580
なお、上記繰り返し単位を含んでいれば、下記一般式(3)で表される繰り返し単位及び下記一般式(4)で表される繰り返し単位を含んでいても良い。
Figure 2009007580
Figure 2009007580
上記一般式におけるR1としては、低弾性率及び高Tgの両立の観点から3価の芳香族炭化水素基であることが好ましく、下記化学式(5)で表されるトリメリット酸由来の3価の基であることが特に好ましい。
Figure 2009007580
上記一般式におけるR2としては、プロピレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、デカメチレン基、オクタデカメチレン基等の炭素数3〜50のアルキレン基、該アルキレン基の両末端に酸素原子が結合したオキシアルキレン基等の2価の脂肪族炭化水素基又は下記化学式(6a)若しくは(6b)で表される2価の脂環式炭化水素基が挙げられる。
Figure 2009007580
2としては、さらに、下記化学式(7a)〜(7j)で表される2価の芳香族炭化水素基が挙げられる。R2は低弾性率及び高Tgの両立の観点から、下記化学式(7a)〜(7j)で表される2価の芳香族炭化水素基であることが好ましい。
Figure 2009007580
但し、Xは下記化学式(8a)〜(8h)で表される2価の芳香族基である。
Figure 2009007580
上記一般式におけるR3としては、プロピレン基等の2価の脂肪族炭化水素基又はフェニレン基若しくはアルキル基で置換されたフェニレン基等の2価の芳香族炭化水素基であることが好ましい。
上記一般式におけるR4としては、アルキル基等の1価の脂肪族炭化水素基又は置換されていてもよいフェニル基等の1価の芳香族炭化水素基であることが好ましく、メチル基又はフェニル基であることがより好ましく、低弾性率及び高Tgの両立の観点から、R4の少なくとも一部はフェニル基であることが特に好ましい。
また、本発明のポリアミドイミド樹脂は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が30,000〜200,000であることが好ましく、50,000〜120,000であることがより好ましい。
上記構成のポリアミドイミド樹脂は、シロキサンジアミンを必須成分とするジアミン化合物とトリカルボン酸無水物とを反応させて得られるジイミドジカルボン酸に、ジイソシアネート化合物を反応させて得られるものが好ましい。
ジイミドジカルボン酸は、例えば、無水トリメリット酸とシロキサンジアミン及びシロキサン骨格を有しないジアミンを含むジアミン化合物とを反応させて得ることができる。なお、シロキサン骨格を有しないジアミン化合物としては、脂肪族ジアミン、脂環式ジアミン又は芳香族ジアミンが挙げられる。
上記反応によって得られるジイミドジカルボン酸は、下記一般式(9)で表されるオルガノシロキサン骨格を含むジイミドジカルボン酸と、下記一般式(10)で表されるシロキサン骨格を含まないジイミドジカルボン酸との混合物を含むものである。なお、下記一般式(9)中、R3、R4及びnは上記定義と同義であり、下記一般式(10)中、R2は上記定義と同義である。
Figure 2009007580
Figure 2009007580
シロキサンジアミン化合物としては、下記一般式(11)で表される化合物を用いることができる。なお、式中、R3、R4及びnは上記定義と同義である。
Figure 2009007580
このようなシロキサンジアミンとしては、下記一般式(12)〜(15)で表されるシロキサンジアミンが挙げられる。なお、式中、x、y及びzは1〜50の整数である。
Figure 2009007580
Figure 2009007580
Figure 2009007580
Figure 2009007580
シロキサンジアミンは、低弾性率及び高Tgの両立の観点から、上記一般式(11)におけるR3又はR4の少なくとも一部に芳香環を有することが好ましいため、かかる観点から上記一般式(13)〜(15)で表されるシロキサンジアミンが好適である。さらに溶剤乾燥性及び高耐熱性向上の観点から、上記一般式(15)で表されるシロキサンジアミンが特に好ましい。上記一般式(15)で表されるシロキサンジアミンとしては、X−22−9409(アミン当量700)、X−22−1660B−3(アミン当量2200)(以上、信越化学工業株式会社製)等が例示できる。
なお、上記一般式(12)で表されるシロキサンジアミンとしては、X−22−161AS(アミン当量450)、X−22−161A(アミン当量840)、X−22−161B(アミン当量1500)(以上、信越化学工業株式会社製)、BY16−853(アミン当量650)、BY16−853B(アミン当量2200)、(以上、東レダウコーニングシリコーン株式会社製)等が例示できる。
シロキサン骨格を有しないジアミン化合物としては、低弾性率及び高Tgの両立の観点から芳香族ジアミンが好ましく、フェニレンジアミン、ビス(4−アミノフェニル)メタン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、ビス(4−アミノフェニル)カルボニル、ビス(4−アミノフェニル)スルホン、ビス(4−アミノフェニル)エーテル等の芳香環が2個以下の芳香族ジアミンが挙げられる。さらに、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、4,4'−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン等の芳香環を3個以上有する芳香族ジアミンが挙げられる。これらは、単独又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。これらのなかで、芳香環を3個以上有する芳香族ジアミンがより好ましく、BAPPはポリアミドイミド樹脂の特性を向上させ、コスト的にも有利である点で特に好ましい。
ジアミン化合物がシロキサン骨格を有しないジアミン(a)及びシロキサンジアミン(b)の混合物である場合の両者の混合比率(モル比)は、(a)/(b)=99.9/0.1〜0/100であることが好ましく、(a)/(b)=95/5〜30/70であることが更に好ましく、(a)/(b)=90/10〜40/60であることが特に好ましい。シロキサンジアミン(b)の混合比率が多くなるとTg(ガラス転移温度)が低下する傾向にあり、少なくなるとワニスにしてフィルムを形成した場合のフィルム中に残存するワニス溶剤量が多くなる傾向にある。
上記一般式(9)で表されるジイミドジカルボン酸及び上記一般式(10)で表されるジイミドジカルボン酸の混合物を得る場合、上記ジアミン化合物の混合物の総モル数(a+b)の合計1モルに対して無水トリメリット酸を2.05〜2.20モルの割合で反応させることが好ましい。無水トリメリット酸が上記下限未満又は上記上限超である場合には、シロキサン変性ポリアミドイミド樹脂の分子量が大きくならずフィルムの形成性及び可撓性が低下する傾向にある。
上述したジアミン化合物の混合物を無水トリメリット酸と反応させるに当っては、非プロトン性極性溶媒存在下50〜90℃で両者を反応させた後、さらに水と共沸可能な芳香族炭化水素を投入して120〜180℃で反応させることが好ましい。
非プロトン性極性溶媒としては、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、スルホラン、シクロヘキサノン等が挙げられる。イミド化反応には高温を要するため、沸点の高いN−メチル−2−ピロリドン(NMP)が特に好ましい。なお、これらの溶媒は混合して用いてもよい。
これらの溶媒中に水分が含まれると、無水トリメリット酸が水和して生成するトリメリット酸により充分に反応が進行せず、ポリマーの分子量低下の原因になる。このため、水分量は0.2重量%以下で管理されていることが好ましい。
非プロトン性極性溶媒の使用量は特に制限されないが、原料仕込み総質量に対し10〜70質量%であることが好ましい。使用量が10質量%未満では無水トリメリット酸の溶解性が低下し充分な反応が行えない場合があり、70質量%を超えると工業的製造法として不利となる。
水と共沸可能な芳香族炭化水素としては、ベンゼン、キシレン、エチルベンゼン、トルエン等が例示できる。これらのなかで、沸点が比較的低く作業環境上有害性の少ないトルエンが特に好ましい。使用量は、非プロトン性極性溶媒の0.1〜0.5質量比(10〜50質量%)の範囲が好ましい。
上記ジイミドジカルボン酸との反応に用いるジイソシアネート化合物としては、アルキレン基等の2価の脂肪族基を有する脂肪族ジイソシアネート化合物、シクロアルキレン等の2価の脂環式基を有する脂環式ジイソシアネート化合物又は芳香族ジイソシアネート化合物等が挙げられる。これらのなかで、低弾性率及び高Tgの両立の観点から芳香族ジイソシアネート化合物が好ましい。なお、芳香族ジイソシアネート化合物を他のジイソシアネート化合物と混合して用いる場合は、芳香族ジイソシアネート化合物を50モル%以上混合して使用することが好ましい。
芳香族ジイソシアネート化合物としては、下記一般式(16)で表される化合物が挙げられる。但し、式中R6は下記一般式(17a)〜(17e)で表される2価の芳香族炭化水素基である。
Figure 2009007580
Figure 2009007580
このような芳香族ジイソシアネートとしては、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、2,4−トリレンダイマー等が例示できる。これらは、単独又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。特にMDIは分子構造においてイソシアネート基が離れおり、ポリアミドイミド樹脂の分子中におけるアミド基やイミド基の濃度が相対的に低くなるため、溶解性が向上する点で好ましい。
また、脂肪族又は脂環式ジイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチレンビス(シクロヘキシルジイソシアネート)等が挙げられる。
上記一般式(9)で表されるジイミドジカルボン酸及び上記一般式(10)で表されるジイミドジカルボン酸の混合物とジイソシアネート化合物との反応は、上記ジアミン化合物の混合物の総モル数(a+b)の合計1モルに対してジイソシアネート化合物を1.05〜1.50モルの割合で行うことが好ましい。上記下限未満又は上記上限超である場合には、シロキサン変性ポリアミドイミド樹脂の分子量が大きくならず、フィルムの形成性及び可撓性が低下する傾向にある。
上記製造方法においては、ジイミドジカルボン酸を製造した後、その溶液から芳香族炭化水素を除去することが好ましい。ジイミドジカルボン酸とジイソシアネート化合物との反応温度は、低過ぎると反応時間が長くなり、高過ぎるとイソシアネート同士で反応する場合がある。これらを防ぐため、100〜200℃の温度で反応させることが好ましい。
本発明のポリアミドイミド樹脂は、以下の製造方法によって得たものでもよい。
(I)シロキサンジアミン化合物を必須成分とするジアミン化合物とトリカルボン酸クロライドとを反応させるポリアミドイミド樹脂の製造方法。
(II)シロキサンジイソシアネート化合物を必須成分とするジイソシアネート化合物とトリカルボン酸無水物とを反応させるポリアミドイミド樹脂の製造方法。
先ず、上記(I)に記載のポリアミドイミド樹脂の製造方法について説明する。
シロキサンジアミン化合物としては、上記一般式(12)〜(15)で表されるシロキサンジアミンが好ましく、低弾性率及び高Tgの両立の観点から上記一般式(13)〜(15)で表されるシロキサンジアアミンがより好ましく、さらに溶剤乾燥性及び耐熱性向上の観点から上記一般式(15)で表されるシロキサンジアミンが特に好ましい。
本発明において使用するジアミン化合物は、シロキサンジアミン化合物とシロキサン骨格を有しないジアミン化合物との混合物であることが好ましい。シロキサン骨格を有しないジアミン化合物としては芳香族ジアミンが好ましく、芳香環を3個以上有する芳香族ジアミンがより好ましく、BAPPが特に好ましい。
シロキサンジアミン化合物とシロキサン骨格を有しないジアミン化合物との混合割合は、これらの混合物とトリカルボン酸クロライドとを反応させて得られるポリアミドイミド樹脂中のSi原子含有量が2〜25質量%の範囲になるように混合する。なお、トリカルボン酸クロライドとしては、トリメリット酸クロライド等が挙げられる。
ジアミン化合物とトリカルボン酸クロライドとの反応は、従来公知の酸クロライド法に従えばよく、上記ジアミン化合物の混合物の合計1モルに対してトリカルボン酸クロライドを1.0〜1.2モルの割合で反応させることが好ましい。また、上記製造方法と同様に、非プロトン性極性溶媒や芳香族炭化水素の存在下で製造することが好ましい。
次いで、(II)に記載のシロキサンジイソシアネート化合物を必須成分とするジイソシアネート化合物とトリカルボン酸無水物とを反応させるポリアミドイミド樹脂の製造方法について説明する。
シロキサンジイソシアネート化合物としては、下記一般式(18)で表されるオルガノシロキサン骨格を有するジイソシアネート化合物を使用することができる。なお、式中、R3、R4及びnは上記定義と同義であり、低弾性率及び高Tgの観点からR3又はR4の少なくとも一部は芳香環を有していることが好ましい。
Figure 2009007580
(II)の方法において使用するジイソシアネート化合物は、シロキサンジイソシアネート化合物とシロキサン骨格を有しないジイソシアネート化合物との混合物であることが好ましい。シロキサン骨格を有しないジイソシアネート化合物としては、上述の脂肪族ジイソシアネート化合物、脂環式ジイソシアネート化合物又は芳香族ジイソシアネート化合物等が挙げられる。これらのなかで、低弾性率及び高いTgの両立の観点から芳香族ジイソシアネート化合物が好ましい。
シロキサンジイソシアネート化合物とシロキサン骨格を有しないジイソシアネート化合物との混合割合は、これらの混合物とトリカルボン酸無水物とを反応させて得られるポリアミドイミド樹脂中のSi原子含有量が2〜25質量%の範囲になるように混合する。なお、トリカルボン酸無水物としては、無水トリメリット酸等が挙げられる。
ジイソシアネート化合物とトリカルボン酸無水物の反応は、従来公知の方法に従えばよく、上記ジイソシアネート化合物の混合物の合計1モルに対して無水トリメリット酸を1.0〜1.2モルの割合で反応させることが好ましい。また、上記製造方法と同様に、非プロトン性極性溶媒や芳香族炭化水素の存在下で製造することが好ましい。
なお、上述した各種方法によりポリアミドイミド樹脂を製造するに当っては、ポリアミドイミド樹脂に含まれる芳香環の質量(A)を、該ポリアミドイミド樹脂のアミド基の質量を(B)で除した値(A/B値)が、7.05以上の所望のA/B値になるように各原料の配合割合を決定する必要がある。
次に、上記ポリアミドイミド樹脂と熱硬化性樹脂とを含む本発明の接着剤組成物について説明する。上記ポリアミドイミド樹脂は、シロキサン変性されているため、かかる樹脂を溶剤に溶解させてワニスとした場合の溶剤の揮発速度が速く、熱硬化性樹脂の硬化反応を促進しない150℃以下の低温でも残存溶剤分を5質量%以下にすることが可能である。このため、本発明の接着剤組成物は、金属や有機物との密着性が良好な耐熱性接着フィルムとなる。
熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ビスマレイミド樹脂、トリアジン−ビスマレイミド樹脂、フェノール樹脂等が挙げられる。
本発明の接着剤組成物においては、ポリアミドイミド樹脂100質量部に対して熱硬化性樹脂1〜150質量部を使用することが好ましい。1質量部未満では、耐溶剤性に劣る場合があり、150質量部を超えると未反応の熱硬化性樹脂によりTgが低下し耐熱性が不充分となったり、可撓性が低下する場合がある。そのため、ポリアミドイミド樹脂100質量部に対して熱硬化性樹脂3〜80質量部を使用することがより好ましく、更に5〜50質量部を使用することが好ましい。
上記熱硬化性樹脂は、ポリアミドイミド樹脂中のアミド基と反応する官能基を有するものが好ましく、エポキシ基を有するエポキシ樹脂が熱的特性、機械的特性及び電気的特性を向上させることができる点で特に好ましい。また、1分子中のエポキシ基の数は多いほど好ましく、3個以上有することが特に好ましい。なお、1分子中のエポキシ基の数によりエポキシ樹脂の配合量を調節することができ、エポキシ基が多いほどエポキシ樹脂の配合量が少なくてもよい。
エポキシ樹脂としては、ポリエポキシエーテル、ポリエポキシエステル、アミン、アミド又は複素環式窒素塩基を有する化合物のN−エポキシ誘導体、脂環式エポキシ樹脂等が挙げられる。ポリエポキシエーテルは、ビスフェノールA、ノボラック型フェノール樹脂、オルトクレゾールノボラック型フェノール樹脂等の多価フェノール又は1,4−ブタンジオール等の多価アルコールとエピクロルヒドリンとを反応させて得ることができる。ポリエポキシエステルは、フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸等の多塩基酸とエピクロルヒドリンとを反応させて得ることができる。
二官能エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型又はビスフェノールF型エポキシ樹脂等が例示できる。ビスフェノールA型又はビスフェノールF型液状エポキシ樹脂としては、エピコート807、エピコート827、エピコート828(以上、油化シェルエポキシ株式会社製)、D.E.R.331、D.E.R.337、D.E.R.359(以上、ダウケミカル日本株式会社製)、YD8125、YDF8170(以上、東都化成株式会社製)等が例示できる。
エポキシ基が3個以上の多官能エポキシ樹脂としては、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等が例示できる。フェノールノボラック型エポキシ樹脂としては、EPPN−201(日本化薬株式会社製)等が例示でき、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂としては、ESCN−195、ESCN−220(以上、住友化学工業株式会社製)、EOCN1020、EOCN4400、EOCN102S(以上、日本化薬株式会社製)、YDCN701、YDCN702、YDCN500−2、YDCN500−10(以上、東都化成株式会社製)等が例示できる。
また、骨格中にリン原子を含有するエポキシ樹脂を用いることもできる。リン含有エポキシ樹脂を用いることは組成物に難燃性を付与できる点で好適である。リン含有エポキシ樹脂としては、ZX−1548−1、ZX−1548−2、ZX−1548−3(以上、東都化成株式会社製)等が例示できる。
熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を用いる場合は、エポキシ樹脂と反応する硬化剤や硬化促進剤を更に添加しても良い。硬化剤としては、例えば、アミン類、イミダゾール類、多官能フェノール類、酸無水物類等が使用でき、これらは硬化促進剤としても機能する。
アミン類としては、ジシアンジアミド、ジアミノジフェニルメタン、グアニル尿素等が使用できる。
水酸基を有するフェノール樹脂及び多官能フェノール類としては、ヒドロキノン、レゾルシノール、ビスフェノールA及びこれらのハロゲン化合物、さらにホルムアルデヒドとの縮合物であるノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂等が使用できる。フェノール樹脂としては、例えば、フェノライトLF2882、フェノライトLF2822、フェノライトTD−2090、フェノライトTD−2149、フェノライトVH4150、フェノライトVH4170、プライオーフェンKA−1160、プライオーフェンKA−1163(以上、大日本インキ化学工業株式会社製)等が例示できる。
酸無水物類としては、無水フタル酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、メチルハイミック酸等が使用できる。
硬化促進剤としてのイミダゾール類としては、アルキル基置換イミダゾール、ベンゾイミダゾール等が使用できる。具体的には、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール等が挙げられ、それぞれ2MZ、2PZ、2E4MZ、2PZ−CN、2P4MHZ(以上、四国化成工業株式会社製)等が例示できる。
硬化剤又は硬化促進剤の使用量は、先ずアミン類の場合には、アミンの活性水素の当量とエポキシ樹脂のエポキシ当量とがほぼ等量となる量が好ましい。硬化促進剤がイミダゾールである場合には、単純に活性水素と等量とならず、エポキシ樹脂100質量部に対して0.001〜10質量部が必要となる。多官能フェノール類や酸無水物類の場合には、エポキシ樹脂1当量に対して0.2〜2.0当量が必要である。これらの硬化剤及び硬化促進剤の使用量は、少なければ未硬化のエポキシ樹脂が残りTgが低くなる場合があり、多すぎると未反応の硬化剤及び硬化促進剤が残り絶縁性が低下する場合がある。
エポキシ樹脂のエポキシ当量は、該樹脂のエポキシ基がポリアミドイミド樹脂のアミド基と反応する点を考慮に入れることが好ましい。硬化剤としての多官能フェノール類や酸無水物類は、アミド基と反応せずに残ったエポキシ基残基と架橋形成することを目的に添加するため、少量で硬化反応性を向上させることができる。
本発明の接着剤組成物を有機溶媒中で混合、溶解、分散して得られるワニス(以下、「接着剤組成物ワニス」という。)を基材に塗工、乾燥して接着剤及び接着剤フィルムとして用いることができる。このような有機溶媒としては、溶解性が得られるものであれば制限するものでなく、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、スルホラン、シクロヘキサノン等が挙げられる。ワニスの塗工は、ブレードコータ、ロッドコータ、ナイフコータ、スクイズコータ、リバースロールコータ、トランスファーロールコータ等により行うことができる。
接着剤組成物ワニスは、被着体に直接塗布しても、予めフィルム化した後、被着体に積層してもよい。接着剤の厚みが5〜100μmの範囲であると安定した接着性を発現することができる。接着剤が厚すぎるときは残存溶剤分が大きくなり接着力や耐熱性の低下を招きやすい。
接着剤組成物ワニスを予めフィルム化する場合、キャリアフィルム上に塗布、加熱し溶剤を除去することにより、接着剤層をキャリアフィルム上に形成して得られる。キャリアフィルムとしては、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、離型処理したポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリイミドフィルムなどのプラスチックフィルムやアルミニウム箔に離型処理を施したセパニウム等が使用できる。キャリアフィルムは、使用時に剥離して接着剤フィルムのみを使用することもできるし、キャリアフィルムとともに使用し、後で除去することもできる。
以下、本発明の好適な実施例について更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(ポリアミドイミド樹脂の合成)
(実施例1)
還流冷却器を連結したコック付き25mlの水分定量受器、温度計、撹拌器を備えた1リットルのセパラブルフラスコに芳香環を3個以上有するジアミンとしてBAPP(2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン)36.9g(0.09mol)、ジフェニルジメチルシロキサンジアミンとして反応性シリコーンオイルX−22−1660B-3(アミン当量2200、信越化学工業株式会社製)44.0g(0.01mol)、TMA(無水トリメリット酸)40.4g(0.21mol)、非プロトン性極性溶媒としてNMP(N−メチル−2−ピロリドン)350gを仕込み、80℃で30分間撹拌した。
次いで、水と共沸可能な芳香族炭化水素としてトルエン100mlを投入してから温度を上げ約160℃で2時間還流させた。水分定量受器に水が約3.6ml以上たまっていること、水の留出が見られなくなっていることを確認し、水分定量受器にたまっている留出液を除去しながら、約190℃まで温度を上げて、トルエンを除去した。
その後、溶液を室温に戻し、芳香族ジイソシアネートとしてMDI(4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート)30.0g(0.12mol)を投入し、190℃で2時間反応させた。反応終了後、Si原子含有量8.7wt%のオルガノシロキサン骨格を有するポリアミドイミド樹脂のNMP溶液を得た。得られたポリアミドイミド樹脂のA/B値は8.50であり、重量平均分子量(Mw)は75,000(GPC:ポリスチレン換算)であった。
(実施例2)
BAPPの使用量を32.8g(0.08mol)、X−22−1660B-3の使用量を26.2g(0.02mol)、NMPの使用量を315gとした以外は、実施例1と同様の条件で反応を行った。反応終了後、Si原子含有量13.4wt%のオルガノシロキサン骨格を有するポリアミドイミド樹脂のNMP溶液を得た。得られたポリアミドイミド樹脂のA/B値は9.87であり、重量平均分子量(Mw)は70,000(GPC:ポリスチレン換算)であった。
(実施例3)
BAPPの使用量を28.7g(0.07mol)、X−22−1660B−3の使用量を132.0g(0.03mol)、NMPの使用量を540gとした以外は、実施例1と同様の条件で反応を行った。反応終了後、Si原子含有量16.3%のオルガノシロキサン骨格を有するポリアミドイミド樹脂のNMP溶液を得た。得られたポリアミドイミド樹脂のA/B値は11.24であり、重量平均分子量(Mw)は60,000(GPC:ポリスチレン換算)であった。
(比較例1)
還流冷却器を連結したコック付き25mlの水分定量受器、温度計、撹拌器を備えた1リットルのセパラブルフラスコにジメチルシロキサンジアミンとして反応性シリコーンオイルX−22−161AS(アミン当量444、信越化学工業株式会社製)88.8g(0.10mol)、TMA(無水トリメリット酸)40.4g(0.21mol)、非プロトン性極性溶媒としてNMP(N−メチル−2−ピロリドン)250gを仕込み、実施例1と同様の条件で反応させた。
その後、溶液を室温に戻し、芳香族ジイソシアネートとしてMDI(4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート)30.0g(0.12mol)と塩基性触媒としてトリエチルアミン1.5g(0.015モル)を投入し、110℃で4時間反応させた。反応終了後、Si原子含有量13.3wt%のオルガノシロキサン骨格を有するポリアミドイミド樹脂のNMP溶液を得た。得られたポリアミドイミド樹脂のA/B値は3.76であり、重量平均分子量(Mw)は98,000(GPC:ポリスチレン換算)であった。
(比較例2)
BAPPの使用量を36.9g(0.09mol)、NMPの使用量を323gとし、X−22−1660B−3の代わりにジメチルシロキサンジアミンX−22−161B(アミン当量1560、信越化学工業株式会社製)を31.2g(0.01mol)用いた以外は、実施例1と同様の条件で反応を行った。反応終了後、Si原子含有量9.6wt%のオルガノシロキサン骨格を有するポリアミドイミド樹脂のNMP溶液を得た。得られたポリアミドイミド樹脂のA/B値は6.79であり、重量平均分子量(Mw)は75,000(GPC:ポリスチレン換算)であった。
(比較例3)
還流冷却器を連結したコック付き25mlの水分定量受器、温度計、撹拌器を備えた1リットルのセパラブルフラスコに芳香族環を3個以上有するジアミンとしてBAPP(2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン)41.0g(0.10mol)、TMA(無水トリメリット酸)38.4g(0.20mol)、非プロトン性極性溶媒としてNMP(N−メチル−2−ピロリドン)244gを仕込み、80℃で30分間撹拌した。
次いで、水と共沸可能な芳香族炭化水素としてトルエン100mlを投入してから温度を上げ約160℃で2時間還流させた。水分定量受器に水が約7.2ml以上たまっていること、水の留出が見られなくなっていることを確認し、水分定量受器にたまっている留出液を除去しながら、約190℃まで温度を上げて、トルエンを除去した。
その後、溶液を室温に戻し、芳香族ジイソシアネートとしてMDI(4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート)25.0g(0.10mol)を投入し、190℃で2時間反応させた。反応終了後、ポリアミドイミド樹脂のNMP溶液を得た。得られたポリアミドイミド樹脂のA/B値は7.05であり、重量平均分子量(Mw)は85,000(GPC:ポリスチレン換算)であった。
(フィルム状ポリアミドイミド樹脂の作製)
離型処理したポリエチレンテレフタレートフィルム(ピューレックスS−31、厚さ75μm、帝人株式会社)に実施例1のポリアミドイミド樹脂のNMP溶液を、乾燥後の膜厚が30μmとなるように塗布し、130℃の乾燥炉を通して乾燥させた。乾燥後に得られたポリアミドイミド樹脂の被膜をポリエチレンテレフタレートフィルムから剥離し、フィルム状ポリアミドイミド樹脂を得た。
同様にして、実施例2〜3、比較例1〜3のポリアミドイミド樹脂を用いてフィルム状ポリアミドイミド樹脂を作製した。
得られたポリアミドイミド樹脂の残存溶媒量、Tg(ガラス転移温度)及び貯蔵弾性率の評価結果を表1に示す。なお、残存溶媒量は膜厚30μmのフィルム状ポリアミドイミド樹脂を用いて測定した。Tg(ガラス転移温度)と貯蔵弾性率の測定にはフィルム状ポリアミドイミド樹脂を2枚のSUS枠の間に挟み、260℃の乾燥器の中で1時間加熱したものを用いた。Tgと貯蔵弾性率はUBM製粘弾性測定装置Rheogel−E4000(商品名)により、引張りモード、周波数10Hz、昇温速度5℃/分の条件で測定した。
Figure 2009007580
(接着剤組成物ワニスの調製)
(実施例4)
実施例1のポリアミドイミド樹脂のNMP溶液300g(樹脂固形分30重量%)、熱硬化性樹脂としてYD―8125(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、東都化成株式会社製)のジメチルアセトアミド溶液20g(樹脂固形分50重量%)、2−エチル−4−メチルイミダゾールのジメチルアセトアミド溶液2.0g(固形分5重量%)を配合し、樹脂が均一になるまで約1時間撹拌した後、脱泡のため24時間、室温で静置して接着剤組成物ワニスを調製した。
(実施例5)
実施例3のポリアミドイミド樹脂のNMP溶液260g(樹脂固形分35重量%)を使用した以外は、実施例4と同様にして接着剤組成物ワニスを調製した。
(実施例6)
実施例3のポリアミドイミド樹脂のNMP溶液135g(樹脂固形分30重量%)、熱硬化性樹脂としてYD―8125(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、東都化成株式会社製)のジメチルアセトアミド溶液100g(樹脂固形分50重量%)、KA−1160(クレゾールノボラック型フェノール樹脂、大日本インキ化学工業株式会社製)のジメチルアセトアミド溶液20g(樹脂固形分50重量%)、2−エチル−4−メチルイミダゾールのジメチルアセトアミド溶液10g(固形分5重量%)を配合し、樹脂が均一になるまで約1時間撹拌した後、脱泡のため24時間、室温で静置して接着剤組成物ワニスを調製した。
(実施例7)
実施例2のポリアミドイミド樹脂のNMP溶液115g(樹脂固形分30重量%)、比較例1のポリアミドイミド樹脂のNMP溶液100g(樹脂固形分35重量%)、熱硬化性樹脂としてZX−1548−2(リン含有クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、東都化成株式会社製)のジメチルアセトアミド溶液60g(樹脂固形分50重量%)、2−エチル−4−メチルイミダゾールのジメチルアセトアミド溶液6g(固形分5重量%)を配合し、樹脂が均一になるまで約1時間撹拌した後、脱泡のため24時間、室温で静置して接着剤組成物ワニスを調製した。
(比較例4)
YD―8125(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、東都化成株式会社製)50g、KA−1160(クレゾールノボラック型フェノール樹脂、大日本インキ化学工業株式会社製)のジメチルアセトアミド溶液20g(樹脂固形分50重量%)、2−エチル−4−メチルイミダゾールのジメチルアセトアミド溶液10g(固形分5重量%)を配合し、樹脂が均一になるまで約1時間撹拌した後、脱泡のため24時間、室温で静置して接着剤組成物ワニスを調製した。
(比較例5)
比較例1のポリアミドイミド樹脂のNMP溶液200g(樹脂固形分35重量%)、熱硬化性樹脂としてZX−1548−2(リン含有クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、東都化成株式会社製)のジメチルアセトアミド溶液60g(樹脂固形分50重量%)、2−エチル−4−メチルイミダゾールのジメチルアセトアミド溶液6g(固形分5重量%)を配合し、樹脂が均一になるまで約1時間撹拌した後、脱泡のため24時間、室温で静置して接着剤組成物ワニスを調製した。
(銅箔積層品の作製)
基材として銅箔(GTS−18、厚さ18μm、日本電解株式会社製)の粗化面に実施例4の接着剤組成物ワニスを、乾燥後の膜厚が30μmとなるように塗布し、130℃の乾燥炉を通して乾燥させ、接着剤付き銅箔を作製した。接着剤付きの接着剤層と銅箔(GTS−18、厚み18μm、日本電解株式会社製)の粗化面を重ね、温度265℃、製品圧力20kg/cm2で1時間プレスし、銅箔積層品を作製した。
同様の条件で実施例5〜7及び比較例4〜5の接着剤組成物ワニスを用いて銅箔積層品を作製した。
接着剤組成物の銅箔に対する接着強度(引き剥がし強さ)とTg(ガラス転移温度)及び貯蔵弾性率の評価結果を表2に示す。なお、接着強度は、幅10mmの銅箔を90°の角度で50mm/分の速度で引き剥がすことにより測定した。Tgと貯蔵弾性率は上記条件で測定した。
Figure 2009007580
実施例1〜3は、オルガノシロキサン骨格と7.05以上のA/B値とを有するポリアミドイミド樹脂である。表1の結果から明らかなように実施例1、2、3の順にSi原子含有量が高くなるに従って貯蔵弾性率が低下しても、Tg値はいずれも250℃以上の高い値を示した。
比較例1のポリアミドイミド樹脂は、オルガノシロキサン骨格を備えるので弾性率が低くなるが、A/B値が7.05未満であるのでTg値は123℃と低くなる。また、貯蔵弾性率は、実施例2のA/B値が7.05以上であるポリアミドイミド樹脂と比較して2倍の値を示すが、Tg値は半分以下であり不充分であった。
比較例2のポリアミドイミド樹脂は高いTg値を示したが、実施例1〜3のA/B値が7.05以上であるポリアミドイミド樹脂と比較して、残存溶媒量が高く不充分であった。
比較例3のポリアミドイミド樹脂は、A/B値が7.05以上であるにもかかわらずオルガノシロキサン骨格を備えていないので、オルガノシロキサン骨格と7.05以上のA/B値とを有する実施例1〜3のポリアミドイミド樹脂と比較して残存溶媒量が極めて大きく不充分であった。
実施例4〜5は、A/B値が7.05以上であるポリアミドイミド樹脂と熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂とイミダゾールとを配合後、接着剤組成物として用いた例である。
実施例4では接着強度が1.0kN/m以上であり、250℃以上の高いTg値を示した。また、実施例5では貯蔵弾性率が160MPaという低い値にもかかわらず、接着強度が0.8kN/mであり、279℃という高いTg値を示した。
実施例6は、比較例4の組成にA/B値が7.05以上である実施例3のポリアミドイミド樹脂を配合した例である。両者を配合した結果、比較例4のポリアミドイミド樹脂と比較してTg値が高くなるという効果が見られた。
実施例7は、比較例5の組成にA/B値が7.05以上である実施例2のポリアミドイミド樹脂を配合した例である。両者を配合した結果、比較例5のポリアミドイミド樹脂と比較して接着力が向上し、Tgも高い値を示した。
このように、本実施例のポリアミドイミド樹脂は弾性率の高低によらず250℃以上の高いTg値を示しており、このポリアミドイミド樹脂からなる接着剤組成物も250℃以上のTg値を示し耐熱性に優れるとともに、貯蔵弾性率が低い反面0.5kN/m以上の高い接着強度を示しており、低弾性、高耐熱性及び高接着性のすべての特性を兼ね備えていた。

Claims (5)

  1. オルガノシロキサン骨格を有し、該オルガノシロキサン骨格中のSi原子の一部に芳香環が結合しているシロキサンジアミンを必須成分とするジアミン化合物とトリカルボン酸無水物とを反応させて得られるジイミドジカルボン酸に、ジイソシアネート化合物を反応させてなるポリアミドイミドであって、
    前記ポリアミドイミド樹脂に含まれる芳香環の質量をA、前記ポリアミドイミド樹脂のアミド基の質量をBとしたときに、A/Bの値が7.05以上であり、
    前記シロキサンジアミンが、下記一般式(15)で表されるシロキサンジアミンであることを特徴とするポリアミドイミド樹脂。
    Figure 2009007580
    [式中、y及びzは1〜50である。]
  2. 前記yが7〜11であり、前記zが32〜36であることを特徴とする請求項1に記載のポリアミドイミド樹脂。
  3. 前記A/Bの値が、8以上13以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリアミドイミド樹脂。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリアミドイミド樹脂と、熱硬化性樹脂と、を含むことを特徴とする接着剤組成物。
  5. 前記熱硬化性樹脂は、前記ポリアミドイミド樹脂のアミド基と反応する官能基を有することを特徴とする請求項4に記載の接着剤組成物。
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