JP2009095859A - 捻回特性に優れた鋼線材及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】縦割れの起こりにくい鋼線材を製造し、品質の安定したスチールコードを提供する。
【解決手段】乾式伸線された鋼線材3をパテンティング処理し、めっき処理し、さらに温度25〜50℃の潤滑液2を用いた湿式伸線により伸線する。また、下記(1)式及び(2)式を満たす捻回特性に優れた鋼線材を形成する。 TN≧−0.025×A+52・・・(1) 但し、400≦A≦2080 A=(TS−TS0)/exp(ε/4)・・・(2) 但し、TN:捻回値[回]、A:加工硬化係数、ε:湿式伸線による真歪み、TS:湿式伸線後の引張強さ[MPa]、TS0:湿式伸線前の引張強さ[MPa]である。
【選択図】図2
【解決手段】乾式伸線された鋼線材3をパテンティング処理し、めっき処理し、さらに温度25〜50℃の潤滑液2を用いた湿式伸線により伸線する。また、下記(1)式及び(2)式を満たす捻回特性に優れた鋼線材を形成する。 TN≧−0.025×A+52・・・(1) 但し、400≦A≦2080 A=(TS−TS0)/exp(ε/4)・・・(2) 但し、TN:捻回値[回]、A:加工硬化係数、ε:湿式伸線による真歪み、TS:湿式伸線後の引張強さ[MPa]、TS0:湿式伸線前の引張強さ[MPa]である。
【選択図】図2
Description
本発明は、捻回特性に優れた鋼線材及びその製造方法に関するものであり、より詳細には、スチールコードに用いられる鋼線材に関するものである。
複数の鋼線材を撚り合わせて構成されるスチールコードは、ゴム製品の補強材として用いられるものであり、自動車タイヤやコンベアベルトなど、さまざまな工業分野に広く用いられている。スチールコードの素線として用いられている鋼線材は、次のようにして製造されている。まず、熱間圧延によって製造された高炭素鋼線材を線径0.95mm〜3.00mmまで乾式伸線し、その後、乾式伸線で発生した歪みを除去するために、鉛パテンティング処理を行なうことによって鋼線材にパーライト組織を析出させる。次に、伸線性を向上させるため、鋼線材にめっき処理を施す。最後に、湿式伸線によって所望の線径(0.150mm〜0.410mm)の極細鋼線材を得る。
上記のようにして製造された極細鋼線材は、特許文献1に記載されているように、バンチャー或いはチューブラー式の撚り線機で極細鋼線材同士が撚り合わされ、タイヤ加硫されることによりスチールコードが製造される。
特開2006−249635号公報
しかし、鋼線材を撚り合わせる際には、鋼線材に捻り方向の応力が加えられるため、鋼線材にデラミネーション(縦割れ)が発生しやすいという問題がある。
斯かる問題を解決する為の方法として、特開2002−28716号公報には、鋼線材を連続伸線する際に、5℃以下(又は0℃以下)の温度で湿式潤滑剤を用いて伸線加工する方法(特開2002−28716号公報の請求項1等)が記載されており、潤滑液の温度を低くすることにより、スチールコードに用いるワイヤの縦割れを防止できることが記載されている(特開2002−28716号公報の図1)。
この特許公報に記載されているように、潤滑液を低温にすることによりスチールコードに用いるワイヤの縦割れを防止できることも踏まえ、本発明者は、鋼線材の縦割れを防止することを課題として多数の試験と研究を積み重ねてきた。その結果、潤滑剤の温度を低くした場合には捻回特性はむしろ悪化し、潤滑液の温度を高くすれば捻回特性が高くなることを突き止めた。さらには、捻回特性が湿式伸線による加工硬化係数(後述)とも特定の関係を有することを見出し、本発明を完成した。
上記課題を解決できた鋼線材の製造方法は、乾式伸線された鋼線材をパテンティング処理し、めっき処理し、さらに温度25〜50℃の潤滑液を用いた湿式伸線により伸線するものである。
また、上記課題を解決できた鋼線材は、上記の製造方法により得られ、下記(1)式及び(2)式を満たすものである。
TN≧−0.025×A+52・・・(1)
但し、400≦A≦2080
A=(TS−TS0)/exp(ε/4)・・・(2)
但し、TN[回]:捻回値、A:加工硬化係数、ε:湿式伸線による真歪み、TS[MPa]:湿式伸線後の引張強さ、TS0[MPa]:湿式伸線前の引張強さである。
TN≧−0.025×A+52・・・(1)
但し、400≦A≦2080
A=(TS−TS0)/exp(ε/4)・・・(2)
但し、TN[回]:捻回値、A:加工硬化係数、ε:湿式伸線による真歪み、TS[MPa]:湿式伸線後の引張強さ、TS0[MPa]:湿式伸線前の引張強さである。
また、上記鋼線材は、上記湿式伸線の際に用いた潤滑液が、60質量%以上、90質量%以下の範囲の水を含む態様とすることができる。
上記鋼線材は、上記湿式伸線が没式(浸漬式)により行われる態様が好ましく用いられる。
上記鋼線材は、上記湿式伸線が複数のダイスにより行われ、最初に通るダイスによる減面率が2番目に通るダイスによる減面率よりも小さくしたものであることが好ましい。
上記鋼線材は、上記湿式伸線が複数のダイスにより行われ、最後に通るダイスがダブルダイスであり、かつ、最終ダイスを通過した後、ローラー又はブレードによる矯正を行なうものであることが好ましい。
上記いずれかの鋼線材同士を撚り合わせることによりスチールコードを製造することができる。
本発明によれば、温度25〜50℃の潤滑液を用いて鋼線材を湿式伸線により伸線することにより、撚り線による縦割れが起こりにくい鋼線材を製造することができ、品質の安定したスチールコードを提供することができる。
以下、本発明の実施の形態にかかる鋼線材の製造方法について説明する。図1は、本発明の実施の形態における伸線工程のフローチャートである。
(スチールコードの製造工程例の概略)
図1において、伸線前処理を施した線径5.5mmの鋼線材を乾式伸線法により伸線することにより線径0.95〜2.10mmの鋼線を得る。次に、鋼線材をパテンティング処理し、ブラスめっき処理する。続いて、鋼線材を潤滑液に浸して伸線する湿式伸線によって線径0.150mm〜0.410mmの鋼線材を得る。最後に、バンチャー或いはチューブラー式の撚り線機で鋼線材同士が撚り合わされ、タイヤ加硫され、スチールコードが製造される。
図1において、伸線前処理を施した線径5.5mmの鋼線材を乾式伸線法により伸線することにより線径0.95〜2.10mmの鋼線を得る。次に、鋼線材をパテンティング処理し、ブラスめっき処理する。続いて、鋼線材を潤滑液に浸して伸線する湿式伸線によって線径0.150mm〜0.410mmの鋼線材を得る。最後に、バンチャー或いはチューブラー式の撚り線機で鋼線材同士が撚り合わされ、タイヤ加硫され、スチールコードが製造される。
(各工程の詳細)
伸線前処理までの工程は、鋼片を約1150℃に加熱し、熱間圧延して直径5.5mmの鋼線材を作製する。その後、ステルモアコンベア上にて鋼線材を制御(調整)冷却し、鋼線材をフェライト・パーライト組織とする。さらに、鋼線材表面に付着したスケールを除去してから鋼線材に皮膜処理を施す。
伸線前処理までの工程は、鋼片を約1150℃に加熱し、熱間圧延して直径5.5mmの鋼線材を作製する。その後、ステルモアコンベア上にて鋼線材を制御(調整)冷却し、鋼線材をフェライト・パーライト組織とする。さらに、鋼線材表面に付着したスケールを除去してから鋼線材に皮膜処理を施す。
従来、伸線前処理は、鋼線材を酸洗した後にリン酸亜鉛(ボンデ)被膜を行うことが通常であったが、環境問題から酸を用いずにメカニカルデスケーラーによりスケール除去を行ない、伸線工程中で(インラインで)、後述するボラックス皮膜処理を施すことが一般的になりつつある。
乾式伸線工程においては、ロットから供給される線径5.5mmの鋼線材を乾式伸線法により伸線することにより、例えば線径0.95〜2.10mmの鋼線を得る。乾式伸線装置には、複数のダイス(図示せず)が直列に配置されており、1つのダイスを通過するたびに鋼線材は順次細く減面されていく。目標とする線径やそのときの線速に応じて乾式伸線装置に通す回数は1回であってもよいし、複数回に分けてもよい。
乾式伸線装置には、被膜液付着装置であるボラックス装置が設けられている。ボラックス装置内には、ボラックス液(Na2B4O7・10H2Oで表される10水塩の化合物)が貯留されている。ボラックス液は、40〜95℃、好ましくは80〜90℃に加熱されている。鋼線材がこのボラックス液中を走行することにより、鋼線材の表面にボラックスが付着する。ボラックス装置の後には、200℃の温風を供給する乾燥路が設けられており、ボラックスの乾燥が行われる。一般的には、2〜3水塩程度にまで乾燥させると、鋼線材に乾式伸線のための固形潤滑剤を付着させ易くなる。
このような被膜液付着装置で用いる被膜液としては、ボラックスの他にも、例えば、硫酸ナトリウム(Na2SO4)、亜硫酸ナトリウム(Na2SO3)、メタケイ酸ナトリウム(Na2SiO3)、オルトケイ酸ナトリウム(Na2SiO4)等のナトリウム塩を主成分とする水溶液や、硫酸カリウム(K2SO4)、テトラホウ酸カリウム(K2B4O7)、ペンタホウ酸カリウム(KB5O8)、メタホウ酸カリウム(KB5O2)、メタケイ酸カリウム(K2SiO3)、テトラケイ酸カリウム(K2Si4O9)、ケイ酸水素カリウム(KHSi2O5)等のカリウム塩を主成分とする水溶液、又は、ナトリウム塩とカリウム塩との混合水溶液、または、石灰液等を選択することもできる。これらの被膜液は、予め40〜95℃に加熱されていることが好ましい。
乾式伸線が終了した後は、加工歪みを除去するとともに、微細パーライトを得るため、パテンティング処理(オーステナイト化後、ソルト浴や鉛浴等により急冷する)を施す。上記したように乾式伸線を複数回に分けて行なう場合には、1回の乾式伸線が終了する度に中間のパテンティング処理を行ってもよい。
次に、湿式伸線における伸線性の向上と、タイヤゴムとの密着性の向上を目的として、Cu及びZnからなるブラスを鋼線材の表面にめっきする。めっきは均一に行なうことが好ましく、めっき厚は、1〜6μm(好ましくは2〜5μm)とすることが望ましい。
続いて、鋼線材を潤滑液に浸して伸線する湿式伸線によって、線径が例えば0.150mm〜0.410mmの鋼線材を得る。図2は、本発明の実施の形態における湿式伸線機を示す図である。図2に示すように、湿式伸線機1内には潤滑液2が貯留されている。この潤滑液2中には、鋼線材3を減面するためのダイス群(最初に通るダイス4S、最後に通るダブルダイス4E、これらの間に位置するダイス4M(図面の複雑化を避けるために符号は図示していない)を含む)、及び鋼線材3がこれらのダイスを通るように案内する一対のキャプスタン5及び6が設けられている。キャプスタン5及び6は伸線機モーターの回転により駆動され、鋼線材3がダイス4S〜4Eにより順次減面されていく。
潤滑液2には、水60〜90質量%(好ましくは70〜80質量%)を含み、脂肪酸、アミン塩、界面活性剤(例えば、ステアリン酸ナトリウム等)を混合させた溶液を用いた。
また、潤滑液2中にはヒーター7が設けられており、潤滑液2の温度は、25〜50℃の範囲に設定されている。潤滑液2の温度をこの範囲に制御することにより、後述の実験でも示すように、鋼線材3の捻回特性が向上する。なお、潤滑液2の温度が20℃未満になると、潤滑液乳化(エマルジョン化)しにくくなり、脂肪酸が鋼線材3に吸着しにくくなる。本発明は、潤滑液2の温度を25℃以上とすることにより鋼線材3の捻回特性を向上させることに要旨を有するため、温度上限は特に制限されるものではないが、潤滑液2の温度が50℃を超えると潤滑液2の長期の使用により脂肪酸が劣化し、焼付き及び断線の頻度が高くなり、また、捻回値も低下することから、潤滑液2の上限温度を上記の通りとした。潤滑液2の温度のより好ましい範囲は、30〜45℃である。
以上のように製造された鋼線材は、捻回特性に優れている。すなわち、伸線された鋼線材の捻回値をTN[回]、加工硬化係数をA、湿式伸線による真歪みをε、湿式伸線後の引張強さをTS[MPa]、湿式伸線前の引張強さをTS0[MPa]と定義すれば、下記(1)式が満たされ易い。
TN≧−0.025×A+52・・・(1)
但し、400≦A≦2080
A=(TS−TS0)/exp(ε/4)・・・(2)
TN≧−0.025×A+52・・・(1)
但し、400≦A≦2080
A=(TS−TS0)/exp(ε/4)・・・(2)
上記(1)式において400≦Aとするのは、加工硬化係数が400未満であれば、通常は縦割れの問題は起こらないためであり、A≦2080とするのは、Aが2080を超えると、捻回値TNが0を下回り、これは物理的にあり得ないためである。
本発明の実施の形態における湿式伸線は、必ずしも全没式(浸漬式)により行う必要はなく、噴射式により行ってもよいが、全没式によって行えば、潤滑液に浸漬させたヒーターを使うことにより、潤滑液を万遍なく温度制御することができ、捻回特性を向上させるという本発明の効果をより確実に得ることができる。
本発明の実施の形態における湿式伸線において、スリップ型伸線機を用い、最初に通るダイス4Sの減面率を2番目に通るダイス4Mによる減面率よりも小さくすることが望ましい。言い換えれば、1パス目は軽めに減面することが望ましい。例えば、2番目に通るダイス4Mによる減面率を15%以上、16%以下とした場合、最初に通るダイス4Sによる減面率を10%以上、15%未満とすることが好ましい。10%未満、或いは15%以上となれば、スリップ率に対応できず、断線が生じる可能性があるからである。
なお、スリップ型伸線機とは、ダイスの孔径や摩耗を見込んで、キャプスタンの周速度を線速よりもやや早めとする湿式伸線機である。スリップ率とは、キャプスタンの周速度に対するキャプスタン周上を通る鋼線材の遅れを表すものであり、なるべく小さい値で一定であることが望ましい。
上記の製造方法において、湿式伸線が複数のダイスにより行われ、最後に通るダイスがダブルダイス4Eであり、かつ、このダブルダイス4Eを通過した後、ローラー又はブレードによる矯正を行なうことが好ましい。これにより、鋼線材の捻回特性の向上がより確実なものとなる。
ダブルダイスは、既に示した図2、或いは、ダブルダイスの拡大図である図3に示すように、2枚のダイスを連続して配置されているものであり、2つめのダイスでは軽めに減面(例えば、減面率2〜7%)される構成を有している。また、ローラーによる矯正の状態を図4に示す。図4において示したのは、複数のベンディングローラーで鋼線材を挟み込み、鋼線材のクセを矯正する工程である。
本実施の形態において用いる線材の化学成分や組織は特に制限されないが、線材の耐縦割れ性を更に向上するためには、鋼の化学成分を、C:0.6〜1.2質量%(好ましくは0.8〜1.1質量%)、Si:0.05〜1.2質量%(好ましくは0.1〜0.8質量%)、Mn:0.2〜1.0質量%(好ましくは0.3〜0.8質量%)、P:0.02質量%以下(0質量%を含まない)、S:0.03質量%以下(0質量%を含まない)、Cr:0.01〜1.0質量%(好ましくは0.02〜0.5質量%)、残部:鉄および不可避的不純物とすることが望ましい。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
連続鋳造機により、表1に示す化学成分を有するブルーム鋳片を製造し、これを3時間加熱した後、分塊圧延によって断面形状が155mm×155mmのビレットを作製することができる。これを1150℃に加熱した後、熱間圧延を行なって線径:5.5mmの線材を得る。巻き取った鋼線材をステルモア冷却装置にかけ、ステルモアコンベア上で鋼線材を制御冷却し、フェライト・パーライト組織を得た。
得られた鋼線材をメカニカルデスケーラーによって表面のスケールを除去した後、ボラックス被膜を塗布し、ステアリン酸ナトリウムを主成分とした固形潤滑剤を付着させながら線径0.95mm〜2.10mmまで乾式伸線を行った。得られた鋼線材を微細パーライト組織に制御するため、最終のパテンティング(加熱温度960℃、恒温保持温度560℃)を行った。得られた鋼線材にCu及びZnからなるブラスをめっきして供試鋼線材とした。なお、めっき厚は、3.7μmとした。
得られた供試鋼線材をスリップ型連続湿式伸線機にかけて最終線径が0.170〜0.410mmとなるまで伸線を行った。湿式伸線の条件は、以下の通りである。
湿式伸線機:株式会社サイカワ社製のFM26型連続伸線機
潤滑液 :ADEKAケミカルサプライ社製のエフコリューベ30質量%に、
水70質量%を加えたものを調製した。
潤滑液温度:7℃、20℃、40℃
ダイスの減面率:15%
最初(1パス目)のダイスの減面率:表2〜4記載の通り
最終ダイス(ダブルダイス)の減面率:前段・・・12.3%、後段・・・3.0%
湿式伸線機:株式会社サイカワ社製のFM26型連続伸線機
潤滑液 :ADEKAケミカルサプライ社製のエフコリューベ30質量%に、
水70質量%を加えたものを調製した。
潤滑液温度:7℃、20℃、40℃
ダイスの減面率:15%
最初(1パス目)のダイスの減面率:表2〜4記載の通り
最終ダイス(ダブルダイス)の減面率:前段・・・12.3%、後段・・・3.0%
ダブルダイスを通した鋼線材については、併せて、図4に示す矯正処理も行った。
得られた鋼線材について行った捻回試験の結果を表2〜4に記載する。捻回試験は、鋼線材から長さ200mmの試験片を採取して、標点間距離:50mm、捻り速度:1rpmの条件で試験を行い、破断するまでの捻れ回数(回)と破断トルク(N・m)を測定し、標点間距離が[直径(D)×100]の場合の捻れ回数(100D換算の捻回値)を下記(3)式に基づいて算出した。
捻回値(100D換算)=捻れ回数×(直径/標点間距離)×100・・・(3)
得られた鋼線材について行った捻回試験の結果を表2〜4に記載する。捻回試験は、鋼線材から長さ200mmの試験片を採取して、標点間距離:50mm、捻り速度:1rpmの条件で試験を行い、破断するまでの捻れ回数(回)と破断トルク(N・m)を測定し、標点間距離が[直径(D)×100]の場合の捻れ回数(100D換算の捻回値)を下記(3)式に基づいて算出した。
捻回値(100D換算)=捻れ回数×(直径/標点間距離)×100・・・(3)
表2〜4において、計算値である(1)式の右辺よりも、実験値から導いた(3)式の値が大きい場合、すなわち、(1)式の不等式が成立する場合、鋼線材の縦割れは発生していない。
図5は、表2〜4の実験結果を、横軸に加工硬化係数A、縦軸に捻回値TNをとってプロットしたものである。図5において、(□)は、潤滑液の温度が40℃の場合を示すもの、(◇)は、潤滑液の温度が20℃の場合を示すもの、(△)は、潤滑液の温度が7℃の場合を示すものであり、各記号の内部が塗りつぶされたもの(例えば、(◆)、(▲))は、縦割れが発生した試験例をそれぞれ示す。
図5から明らかなように、捻回特性が向上すると従来考えられていた低温(7℃)の潤滑液の場合では、殆どの場合で捻回値(▲)が低い。そして、潤滑液の温度が40℃の場合を示す(□)は、潤滑液の温度が20℃の場合を示す(◇)よりも捻回値が全体的に高い位置にあり、捻回特性が向上していることがわかる。
また、表3に示すように、ダブルダイスを通さず、矯正処理もしていない鋼線材44では縦割れが発生しているが、ダブルダイスを通し、かつ、矯正処理も行った鋼線材41(伸線条件は鋼線材44と同じ)では、縦割れが発生しておらず、同様に、鋼線材45では縦割れが発生しているが、鋼線材43(伸線条件は鋼線材45と同じ)では、縦割れが発生していない。これらはいずれも潤滑液の温度が20℃の場合の例ではあるが、鋼線材にダブルダイス及び矯正処理を施すことが縦割れ防止に有効であることが理解される。
1 湿式伸線機
2 潤滑液
3 鋼線材
4S ダイス
4M ダイス
4E ダブルダイス
5 キャプスタン
6 キャプスタン
7 ヒーター
2 潤滑液
3 鋼線材
4S ダイス
4M ダイス
4E ダブルダイス
5 キャプスタン
6 キャプスタン
7 ヒーター
Claims (7)
- 乾式伸線された鋼線材をパテンティング処理し、めっき処理し、さらに温度25〜50℃の潤滑液を用いた湿式伸線により伸線することを特徴とする捻回特性に優れた鋼線材の製造方法。
- 請求項1に記載の製造方法により得られ、下記(1)式及び(2)式を満たす捻回特性に優れた鋼線材。
TN≧−0.025×A+52・・・(1)
但し、400≦A≦2080
A=(TS−TS0)/exp(ε/4)・・・(2)
但し、TN[回]:捻回値、A:加工硬化係数、ε:湿式伸線による真歪み、TS[MPa]:湿式伸線後の引張強さ、TS0[MPa]:湿式伸線前の引張強さである。 - 前記湿式伸線に用いた潤滑液が、60質量%以上、90質量%以下の範囲の水を含有したものであることを特徴とする請求項2に記載の鋼線材。
- 前記湿式伸線が没式により行われることを特徴とする請求項2または3に記載の鋼線材。
- 前記湿式伸線が複数のダイスにより行われ、最初に通るダイスによる減面率が2番目に通るダイスによる減面率よりも小さいことを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の鋼線材。
- 前記湿式伸線が複数のダイスにより行われ、最後に通るダイスがダブルダイスであり、かつ、最終ダイスを通過した後、ローラー又はブレードによる矯正を行なうことを特徴とする請求項2〜5のいずれかに記載の鋼線材。
- 請求項2〜6のいずれかに記載の鋼線材同士を撚り合わせることにより得られるスチールコード。
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Legal Events
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