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JP2008238121A - 透過膜の阻止率向上方法、阻止率向上透過膜、透過膜処理方法および装置 - Google Patents

透過膜の阻止率向上方法、阻止率向上透過膜、透過膜処理方法および装置 Download PDF

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JP2008238121A
JP2008238121A JP2007085735A JP2007085735A JP2008238121A JP 2008238121 A JP2008238121 A JP 2008238121A JP 2007085735 A JP2007085735 A JP 2007085735A JP 2007085735 A JP2007085735 A JP 2007085735A JP 2008238121 A JP2008238121 A JP 2008238121A
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Kunihiro Hayakawa
邦洋 早川
Takahiro Kawakatsu
孝博 川勝
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Abstract

【課題】 阻止率向上剤による透過膜の阻止率の向上効果を高くするとともに高い状態で維持することができ、有機物除去効果が高く、長期間にわたって安定処理が可能な透過膜の阻止率向上方法および装置を得る。
【解決手段】 阻止率向上剤15を透過膜モジュール1の1次側3へ供給し、阻止率向上剤を透過膜2に付着させて透過膜2の阻止率を向上させた後、阻止率向上剤よりも重量平均分子量が大きい高分子を含む第1の固定化剤16を供給し、阻止率向上剤処理を行った透過膜に付着させ、さらに第1の固定化剤とは異なるイオン性の高分子を含む第2の固定化剤17を供給して付着させる固定化剤処理を交互に1回以上行って阻止率向上剤処理効果を持続させる。
【選択図】図1

Description

本発明は、逆浸透膜、ナノ濾過膜等の透過膜の阻止率を向上させる方法、これにより得られる阻止率を向上させた透過膜、およびこれを用いる透過膜処理方法、ならびにこれらに適した透過膜装置に関するものである。
水処理に用いられる透過膜、特にナノろ過膜、逆浸透膜(RO膜)などの選択性透過膜の無機電解質や水溶性有機物等の分離対象物に対する阻止率は、水中に存在する酸化性物質や還元性物質などの影響、その他の原因による素材高分子の劣化によって低下し、必要とされる処理水質が得られなくなる。この変化は、長期間使用しているうちに少しずつ起こることもあり、また事故によって突発的に起こることもある。このような阻止率が低下した透過膜の阻止率を、阻止率向上剤により向上させ、性能を回復する方法が提案されている。
一般に高純度の純水を製造するための超純水製造システムには、逆浸透膜処理装置と、この逆浸透膜処理装置の透過水を高度処理する電気再生式脱イオン装置または他のイオン交換装置とが組み込まれている。一方、近年の半導体回路形成技術の進歩により、線幅65nm以下の回路を作成することが可能となってきている。それに伴い超純水に対する要求水質も高まっており、後段処理の負荷を軽減し、より高いレベルでの純水製造を実現する純水製造装置および純水製造方法の開発が望まれている。有機物成分に対してはデバイスヘの影響が特に懸念されており、これを極力排除した水が要求されている。
このような超純水製造システムにおいても、逆浸透膜を阻止率向上剤で処理することが提案されている(例えば特許文献1)。特許文献1は未公開であるが、重量平均分子量2000〜6000のポリアルキレングルコール、またはそれにアニオン性の官能基を導入したイオン性高分子を含有する阻止率向上剤で逆浸透膜を処理することが示されている。
特許文献2には、水軟化用膜の製造法において、ポリアミド膜の阻止率を向上させるための阻止率向上剤として、加水分解性タンニン酸、スチレン/マレアミド酸コポリマー、C5乃至C7ヒドロキシアルキルメタクリレートポリマー、コポリマーまたはターポリマー、複数個のスルホニウムもしくは第四アンモニウム基を有する第1のポリマーと複数個のカルボキシレート基を有する第2のポリマーから製造したコアセルベート、任意の他の置換基をもつ枝分れしたポリアミドアミン類、酢酸ビニルコポリマー、ヒドロキシエチル・メタクリレートとメタクリル酸またはメタクリルアミド(任意に他の混和性モノマーを含む)とのコポリマー、スチレン/マレアミド酸コポリマーなどが示されている。
また特許文献3には、水処理に用いられる透過膜の阻止率を向上させるための阻止率向上剤として、重量平均分子量10万以上のイオン性高分子を含有する阻止率向上剤が示されている。このようなイオン性高分子としては、ポリビニルアミジンまたはその誘導体、複素環を有するカチオン性高分子等のカチオン性高分子、ならびにポリアクリル酸またはその誘導体、ポリスチレンスルホン酸またはその誘導体等のアニオン性高分子が示されている。
従来の透過膜の阻止率向上処理は、透過膜を取り付ける前の状態で、あるいは透過膜をモジュールに取り付けた状態で、上記の阻止率向上剤を供給して透過膜と接触させることにより、透過膜の表面または内部の構造材料に、阻止率向上剤の全体または一部分を付着、反応等により結合させて修飾処理を行い、透過膜の阻止率を向上させている。
特願2006−218471号明細書 特許2762358号公報 特開2006−110520号公報
前記のような従来の透過膜の阻止率向上処理では、阻止率向上剤の修飾処理を終了し、被処理水を通水したときに、修飾処理した一部のポリマーが脱着し、修飾処理終了時よりも阻止率向上効果が低下し、またその後被処理水の通水を継続すると、阻止率向上効果が徐々に低下し、長期間にわたって阻止率向上効果が維持できないという問題点があった。
本発明の課題は、前記のような従来の問題点を解決するため、阻止率向上剤による透過膜の阻止率向上効果を高くするとともに高い状態で維持することができ、有機物除去効果が高く、長期間にわたって安定処理が可能な透過膜の阻止率向上方法、および阻止率を向上させた透過膜を用いる透過膜処理方法、ならびにこれらに適した透過膜装置を提供することである。
本発明は次の透過膜の阻止率向上方法、透過膜、透過膜処理方法および透過膜装置である。
(1) 透過膜に阻止率向上剤を接触させて透過膜の阻止率を向上させる阻止率向上剤処理を行った後、
阻止率向上剤処理を行った透過膜に、阻止率向上剤よりも重量平均分子量が大きい高分子を含む第1の固定化剤と、阻止率向上剤よりも重量平均分子量が大きく、第1の固定化剤とは異なるイオン性の高分子を含む第2の固定化剤とを交互に1回以上接触させて固定化剤処理を行う
ことを特徴とする透過膜の阻止率向上方法。
(2) 阻止率向上剤がカチオン性またはアニオン性である上記(1)記載の方法。
(3) 阻止率向上剤がポリアルキレングリコール鎖を有する化合物である上記(1)または(2)記載の方法。
(4) 阻止率向上剤がカチオン性の場合、第1の固定化剤がアニオン性、第2の固定化剤がカチオン性であり、阻止率向上剤がアニオン性の場合、第1の固定化剤がカチオン性、第2の固定化剤がアニオン性である上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の方法。
(5) 上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の方法により得られる透過膜。
(6) 上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の方法により得られる透過膜に被処理液を透過させて透過膜処理を行う透過膜処理方法。
(7) 上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の方法により得られる透過膜を用い、透過膜に被処理液を透過させて透過膜処理を行う透過膜処理装置。
(8) 1次側に被処理液を通液し、2次側から透過液を取り出す透過膜モジュールと、
モジュールの1次側に有機物を主成分とする阻止率向上剤を通液して、阻止率向上剤処理を行う阻止率向上剤処理装置と、
モジュールの1次側に、阻止率向上剤よりも重量平均分子量が大きい高分子を含む第1の固定化剤と、阻止率向上剤よりも重量平均分子量が大きく、第1の固定化剤とは異なるイオン性の高分子を含む第2の固定化剤とを交互に1回以上通液して固定化剤処理を行う固定化剤処理装置と
を含む透過膜装置。
本発明において阻止率向上処理の対象となる透過膜は、1次側に被処理液を通液して透過させ、2次側から透過液を取り出し膜分離を行う透過膜であるが、特に逆浸透膜、ナノ濾過膜等の無機電解質や水溶性有機物等を水から分離する選択性透過膜が対象として適している。逆浸透膜(RO膜)は膜を介する溶液間の浸透圧差以上の圧力を高濃度側にかけて、溶質を阻止し、溶媒を透過する液体分離膜である。
透過膜、特にRO膜の膜構造としては、複合膜、相分離膜などの高分子膜などを挙げることができる。本発明に適用される透過膜、特にRO膜の素材としては、例えば、芳香族系ポリアミド、脂肪族系ポリアミド、これらの複合材などのポリアミド系素材などを挙げることができる。これらの中で、芳香族系ポリアミド透過膜、特にRO膜に本発明に係る阻止率向上処理を好適に適用することができる。このような阻止率向上処理の対象となる透過膜は、未使用の透過膜でも、使用により性能が低下した透過膜でもよい。
本発明における阻止率向上処理および固定化剤処理は、このような透過膜を、膜分離装置のモジュールに装備された状態で、またはモジュールに装備されない状態の透過膜に対して行われる。RO膜モジュールの形式については特に制限はなく、例えば、管状膜モジュール、平面膜モジュール、スパイラル膜モジュール、中空糸膜モジュールなどを適用することができる。
阻止率向上処理は、未使用の透過膜の場合、あるいは使用により性能が低下した透過膜の場合とも、薬品洗浄を行った透過膜を阻止率向上処理の対象とすることができるが、特に使用により性能が低下した透過膜の場合は薬品洗浄を行ったものが好ましい。薬品洗浄の目的は膜表面の汚染物質を除去することにより、阻止率向上剤が膜自体に吸着しやすくすることである。洗浄薬品としては酸(塩酸、硝酸、シュウ酸、クエン酸など)、アルカリ(水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなど)、界面活性剤(ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼン硫酸ナトリウムなど)、酸化・還元剤(過酸化水素、過炭酸、過酢酸、重亜硫酸ナトリウムなど)が用いられ、これら薬品の水溶液をモジュールに通液したり、透過膜を薬品に浸漬することにより洗浄を行う方法が一般的である。
本発明における阻止率向上処理剤は、有機物を主成分とする阻止率向上剤であり、阻止率向上処理により、透過膜による水溶性有機物や無機電解質等の溶解性物質の阻止率が向上するものであれば特に制限なく使用可能である。このような阻止率向上剤としては、水溶性の高分子化合物であって、イオン性または非イオン性高分子があげられるが、イオン性高分子が好ましい。イオン性高分子の場合、カチオン性高分子、アニオン性高分子、両性高分子等をそれぞれ単独で使用できるが、カチオン性高分子とアニオン性高分子を段階的に、好ましくは交互に供給すると、阻止率向上効果が高まるので好ましい。これらの化合物を阻止率向上剤の主成分として用いることにより、RO膜の阻止率を向上し、電解質をはじめ、従来のRO膜では除去困難であった低分子量の非イオン性有機物や、ホウ素、シリカなども効果的に除去することができる。
使用可能な阻止率向上剤としては、ポリアルキレングリコール鎖を有する化合物、複数のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物を含有するものがあげられる。これらは公知のものが使用でき、前記特許文献1〜3に記載のもの、ならびに他の阻止率向上能を有するものなどが使用できる。使用可能な阻止率向上剤としては、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルアルコール、ポリエチレンイミンなどの水溶性高分子やタンニン酸などのポリフェノール、特許文献3に記載のイオン性高分子(ポリアミジン、ポリスチレンスルホン酸)、特許文献1に記載の重量平均分子量2000〜6000のポリエチレングリコール鎖を有する化合物などがあげられる。ポリアルキレングリコール鎖を有する化合物としては、ポリエチレングリコールまたはポリエチレングリコール誘導体をあげることができる。
好ましい阻止率向上剤としては、ポリアルキレングルコール鎖を有する化合物をあげることができる。ポリアルキレングリコール鎖を有する化合物の重量平均分子量は特に限定されないが、好ましくは1,000〜1 0,000、より好ましくは2,000〜6,000、より好ましくは3,000〜5,000である。
本発明において重量平均分子量は、高分子やポリアルキレングリコール鎖を有する化合物などの化合物の水溶液をゲル浸透クロマトグラフィーにより分析し、得られたクロマトグラムからポリエチレンオキシド標準品の分子量に換算することにより求めることができる。ポリエチレンオキシド標準品が入手し得ない高分子量の領域においては、光散乱法、超遠心法などにより重量平均分子量を求めることができる。
ポリアルキレングリコール鎖は、アルキレンオキシドの開環重合により製造することができる。本発明に用いる化合物が有するポリアルキレングリコール鎖としては、例えばポリエチレングリコール鎖、ポリプロピレングリコール鎖、ポリトリメチレングリコール鎖、ポリテトラメチレングリコール鎖などを挙げることができる。これらのグリコール鎖は、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、オキセタン、テトラヒドロフランなどの開環重合により形成することができる。ポリアルキレングリコール鎖はポリエチレングリコール鎖であることが好ましい。このポリエチレングリコール鎖を有する化合物は、水溶性が大きいので阻止率向上剤として取り扱いやすい。
本発明においては、ポリアルキレングリコール鎖を有する化合物として、ポリアルキレングリコール鎖にイオン性基が導入された化合物を用いるのが好ましい。イオン性基としては、例えば、スルホ基(−SOH)、カルボキシル基(−COOH)、アミノ基(−NH)、第四アンモニウム基(−N)などを挙げることができる。このうちスルホ基、カルボキシル基等を導入することによりアニオン性の水溶性の高分子化合物が得られ、アミノ基、第四アンモニウム基等を導入することによりカチオン性の水溶性の高分子化合物が得られる。
ポリアルキレングリコール鎖にスルホ基を導入する方法としては、例えば、ポリエチレングリコール水溶液にエポキシプロパノールと亜硫酸ナトリウムを添加し、70〜90℃、還流条件下で反応させることにより、式[1]または式[2]で示されるスルホン化ポリエチレングリコールを合成することができるが、式[3]または式[4]で示される化合物も使用可能である。
H(OCHCH)pO(CXH−CYHO)q−SONa・・・[1]
NaSO−(OCXH−CYH)q−(OCHCH)pO(CXH−CYHO)q−SONa・・・[2]
H(OCHCH)p−O−SONa・・・[3]
NaSO−(OCHCH)q−O−SONa・・・[4]
(式[1]〜式[4]において、X、Yはそれぞれ独立にHまたはCHOH、pはそれぞれ独立に50〜150、qはそれぞれ独立に1〜100である。)
これらの阻止率向上剤は、処理対象となる透過膜の材質、形態等に応じて適したものが選ばれ、純水または被処理水等の溶媒に溶解して使用される。阻止率向上剤の濃度はそれぞれの透過膜、モジュールの形式等により変わるが、一般的には0.01〜1000mg/L程度、好ましくは0.1〜100mg/Lの濃度に調製して阻止率を向上処理に供される。阻止率向上剤は、複数のものを組合わせて用いることができ、この場合混合して通液してもよく、また別々に時間をずらせて通液することもできる。
阻止率向上による阻止率向上処理は、処理対象モジュールの透過膜に阻止率向上剤を供給して接触させ、透過膜の阻止率を向上させる。この場合、透過膜を取り付けたモジュールの1次側に阻止率向上剤を供給し、阻止率向上剤を透過膜に付着させ、透過膜の阻止率を向上させる。透過膜への吸着性の高い阻止率向上剤を用いる場合は、阻止率向上剤をモジュールに供給して透過膜と接触させた状態を保ち、あるいは低圧で流動させて吸着させることができるが、一般的には阻止率向上剤を高圧で供給して透過膜を透過させ、2次側から透過液を取り出すことにより、透過膜の内部まで阻止率向上剤を付着させるのが好ましい。
阻止率向上剤を含む水溶液を通水する1回当りの時間は、1〜24時間であることが好ましい。水溶液中の阻止率向上剤濃度を高くすると、通水時間を短縮することができるが、透過流束の低下が大きくなるおそれがある。この阻止率向上剤を含む水溶液の通水時は、モジュールの透通水排出弁を閉じておくことも可能であるが、透過水を取出しながら処理すると、装置を休止することなく効率的に処理することができるとともに、阻止率向上剤を効率よく、かつ均一に透過膜面に吸着させることができる。この場合、モジュールの一次側へ阻止率向上剤を含む水溶液を供給する際の操作圧力を0.3MPa以上とするとともに、透過水量/阻止率向上剤を含む水溶液の供給量の比が0.2以上とすることが好ましい。これにより効果的に阻止率向上剤が透過膜表面に接触するため、阻止率向上剤を効率よく、かつ均一に膜面に吸着させることができる。
本発明においては、透過膜に阻止率向上剤を接触させて透過膜の阻止率を向上させる阻止率向上剤処理を行った後、阻止率向上剤処理を行った透過膜に、阻止率向上剤よりも重量平均分子量が大きい高分子を含む第1の固定化剤と、阻止率向上剤よりも重量平均分子量が大きく、第1の固定化剤とは異なるイオン性の高分子を含む第2の固定化剤とを交互に1回以上接触させて固定化剤処理を行う。
本発明において、第1および第2の固定化剤として用いることのできる固定化剤は、重量平均分子量が10万以上、特に30万以上、さらに100万以上の水溶性高分子であり、イオン性、非イオン性は問わないが、特にイオン性高分子であることが好ましい。重量平均分子量が10万未満であると、阻止率向上剤を透過膜に安定に吸着させ、その状態を長く維持することが困難となる。イオン性高分子としては、カチオン性高分子とアニオン性高分子があげられ、これらからなる第1および第2の固定化剤を交互に1回以上接触させて固定化剤処理を行う。
本発明の固定化剤に用いるカチオン性高分子としては、例えば、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン、ポリアクリルアミド、キトサン、ポリスチレンに第一アミン基を付加したものなどの第一アミン化合物、ポリエチレンイミンなどの第二アミン化合物、ポリ(アクリル酸ジメチルアミノエチル)、ポリ(メタクリル酸ジメチルアミノエチル)などの第三アミン化合物、ポリスチレンに第四アンモニウム基を付加したものなどの第四アンモニウム化合物、ポリビニルアミジン、ポリビニルピリジン、ポリピロール、ポリビニルジアゾールなどの複素環を有する化合物などを挙げることができる。また、これらの構造を有する共重合高分子や、複数種の高分子を混合した組成物も用いることができる。
これらの中で、複素環を有する化合物を好適に用いることができ、ポリビニルアミジンを特に好適に用いることができる。ポリビニルアミジンは、一般式[5]で表される構造単位を有するカチオン性高分子である。ただし、一般式[5]において、R1〜R4は、水素またはメチル基等のアルキル基である。
Figure 2008238121
一般式[5]で表される構造単位を有するカチオン性高分子は、アクリロニトリルまたはメタクリロニトリルと、N−ビニルカルボン酸アミド、N−イソプロペニルカルボン酸アミド、N−ビニルカルボン酸イミドまたはN−イソプロペニルカルボン酸イミドとを共重合し、得られた共重合体高分子を加水分解し、アミジン化することにより製造することができる。このような方法により製造されたポリビニルアミジンは、一般式[5]で表される構造単位の他に、アクリロニトリルなどに由来するシアノ基、シアノ基の加水分解により生成するカルバモイル基、N−ビニルカルボン酸アミド単位などの加水分解により生成するアミノ基などを有する。市販製品として栗田工業(株)製カチオン系高分子凝集剤「クリフィックス(登録商標)CP111」をあげることができる。ポリビニルアミジンは、複素環の窒素原子と第一アミンの窒素原子がカチオン性を有するので、カチオン密度が高く、反応点が多いため、強固に安定化することが可能である。また、水中のカチオン種に対して高い阻止率向上効果が発現される。他の複素環を有する高分子の場合も、第一アミンなどのカチオン性の官能基を付与することによって、カチオン密度を高めることができる。
本発明に用いられるアニオン性固定化剤としては、例えばポリアクリル酸、ポリメタクリル酸などのカルボキシル基を有する水溶性高分子、ポリスチレンスルホン酸、デキストラン硫酸、ポリビニルスルホン酸などのスルホン酸基を有する水溶性高分子などを挙げることができ、これらの構造を複数種有する共重合体も用いることができる。ポリスチレンスルホン酸のスルホン酸基は、アニオン性が強いために、透過膜の膜表面に安定に吸着して、透過流束を大きく低下させることなく、強固に安定化することができる。
本発明の固定化剤として用いられるイオン性高分子は、カチオン性固定化剤およびアニオン性固定化剤のいずれの場合も、対イオンを有する塩としても用いることができる。対イオンを有する塩としては、例えばポリビニルアミジン塩酸塩、ポリアクリル酸ナトリウム塩、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム塩などを挙げることができる。
これらの固定化剤は、処理対象となる透過膜の材質、形態や、使用した阻止率向上剤等に応じて適したものが選ばれ、純水または被処理水等の溶媒に溶解して処理液として使用される。本発明で用いる固定化剤を含む処理液は、上記水溶性高分子の水溶液として用いられるが、この処理液中の水溶性高分子の濃度は、0.01〜50mg/L程度とされる。固定化剤を含む水溶液のより好ましい化合物濃度は、用いる化合物の種類によって異なるが、例えば重量平均分子量10万以上のカチオン性高分子、アニオン性高分子の場合は0.1〜10mg/Lが好ましい。濃度がこれより低いと固定化剤処理に長時間を要するおそれがある。濃度が50mg/Lを超えると、水溶液の粘度が高くなり、RO膜ヘの通水抵抗が大きくなるおそれがある。また濃度が50mg/Lを超えると、不必要に厚いコーティング層(吸着層)が形成されて、濃度分極により、かえって阻止率向上効果が弱くなるおそれがある。
本発明の阻止率向上方法では、阻止率向上処理を行った透過膜を、さらに固定化剤を含む処理液と接触させて行う。阻止率向上処理に引き続いて行うことができ、阻止率向上剤の通液停止後、そのまままたは阻止率向上剤を排出した後、固定化剤を通液して固定化剤処理を行うことができる。この場合、好ましくはモジュールの一次側に固定化剤を含む処理液を通水することにより実施される。
固定化剤処理は、阻止率向上剤処理を行った透過膜に、阻止率向上剤よりも重量平均分子量が大きい高分子を含む第1の固定化剤を接触させる第1の固定化処理と、第1の固定化剤とは異なるイオン性の高分子を含む第2の固定化剤を接触させる第2の固定化処理とを交互に1回以上行う。第1の固定化剤は阻止率向上剤とは異なるイオン性のものが好ましい。例えば阻止率向上剤がカチオン性の場合は、第1の固定化剤をアニオン性、第2の固定化剤をカチオン性とし、また阻止率向上剤がアニオン性の場合は、第1の固定化剤をカチオン性、第2の固定化剤をアニオン性として交互に逆のイオン性の高分子で処理するのが好ましい。
固定化剤処理において、阻止率向上剤として例えばイオン性のポリアルキレングリコール鎖を有する化合物からなる阻止率向上剤で阻止率向上処理を行う場合について説明すると、阻止率向上処理を行った後に、カチオン性高分子からなる第1の固定化剤、アニオン性高分子からなる第2の固定化剤の二剤を交互に使用することが好ましい。すなわち処理の順序としては、阻止率向上剤がカチオン性であれば、固定化剤はアニオン性固定化剤から使用し、阻止率向上剤がアニオン性であれば、カチオン性固定化剤から使用することが望ましい。これにより阻止率向上剤と固定化剤はイオンコンプレックスを形成することができ、阻止率向上剤は強固に透過膜表面に保持され、長期間にわたり性能を維持することが可能になる。
例えば阻止率向上剤としてポリアルキレングリコール鎖を有する化合物として上述したスルホ基を導入したポリアルキレングリコール鎖を有する化合物で処理し、その後第1の固定化剤としてカチオン性固定化剤で処理することにより、阻止率向止剤と固定化剤とがイオンコンプレックスを形成し、阻止率向上剤を強固にRO膜表面に保持することが可能となる。その後にさらに第2の固定化剤としてアニオン性固定化剤で処理することにより、さらに安定性が向上する。その後も交互にカチオン性固定化剤とアニオン性固定化剤で処理することにより、安定性を向上させることができる。
カチオン性固定化剤とアニオン性固定化剤で交互に処理するその回数に制限はなく、必要に応じて交互に処理を繰り返すことができる。阻止率向上剤がカチオン性の場合、例えばポリアルキレングリコール鎖を有する化合物が第四アンモニウム基を有する場合は、第1の固定化剤としてアニオン性固定化剤を用い、第2の固定化剤としてカチオン性固定化剤を用い、交互に処理することで同様に安定性を得ることができる。
本発明において、透過膜を阻止率向上剤および固定化剤で処理する場合、それぞれの処理液に荷電中和性物質として電解質を添加することにより処理後の阻止率向上効果を向上させることができる。イオン性を有する阻止率向上剤はそのイオン性により相互に反発してしまい、緻密に修飾することができず、阻止率向上効果には限界がある。電解質を添加し、阻止率向上剤の荷電を中和して反発を抑えることにより、無添加の状態よりも緻密に修飾することが可能となる。電解質としては塩化ナトリウム、塩化カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウムなどの塩を使用することができるが、この限りではない。添加する電解質濃度は100〜5000mg/Lが好適である。電解質濃度が低いと阻止率向上効果が見られず、電解質濃度が高いとポリマーが凝集し、緻密に修飾することが出来ない。電解質を添加する場合、阻止率向上剤で処理する場合のみ添加しても良いし、その後の高分子処理も継続して添加しても良い。
本発明で用いる阻止率向上剤および固定化剤は、それぞれ無機電解質、水溶性有機化合物等の阻止率確認トレーサー物質を含有させることができる。阻止率向上剤または固定化剤の主成分とする化合物とともに、トレーサー物質を含有する水をナノろ過膜、逆浸透膜等の透過膜に通水することにより、透過膜の阻止率を経時的に確認して、処理の継続または停止を判断することができる。通水処理時間は、通常は1〜50時間であることが好ましく、2〜24時間であることがより好ましいが、透通水のトレーサー濃度が所定の値に達したとき、透過膜の阻止率は所定の値になったと判断し、阻止率向上剤処理または固定化剤処理を終了することができる。
この方法によれば、阻止率向上剤または固定化剤の水溶液と透過膜との接触時間を必要十分な最小限の長さに制御することができ、透過膜の通常運転を直ちに開始することができる。また異なる阻止率向上剤または固定化剤を用いて複数回の阻止率向上剤処理または固定化剤処理を行う場合も、切り替えのタイミングを逸することなく、複数回の処理を効率的に行うことができる。
トレーサー物質として用いる水溶性有機化合物としては、例えばイソプロピルアルコール、グルコース、尿素などを挙げることができるが、取扱い性の容易さからイソプロピルアルコールを好適である。また、トレーサー物質として用いる無機電解質としては、例えば塩化ナトリウムや硝酸ナトリウム、そして弱電解質のホウ酸などを挙げることができる。しかしながら電解質を添加し阻止率向上効果を増大させる場合は、伝導度で簡易に処理の終了を判断することはできないため、トレーサー物質としては、水溶性有機化合物が好適に使用される。
トレーサー物質の濃度は、塩化ナトリウムなどの無機強電解質の場合は、1〜500mg/Lであることが好ましく、10〜100mg/Lであることがより好ましい。その他のホウ酸などの無微弱電解質や、イソプロピルアルコールなどの水溶性有機物の場合は、1〜5000mg/Lであることが好ましく、5〜1000mg/Lであることがより好ましい。
上記の阻止率向上方法により得られる透過膜は、阻止率向上剤による透過膜の阻止率の向上効果が高く、かつその高い状態を長く維持することができる。
本発明の透過膜は、上記の阻止率向上方法により得られる透過膜であり、阻止率向上剤による透過膜の阻止率の向上効果が高く、かつその高い状態を長く維持することができる。
本発明の透過膜処理方法は、上記の阻止率向上方法により得られる透過膜に被処理液を透過させて透過膜処理を行う透過膜処理方法であり、阻止率向上剤による透過膜の阻止率の向上効果が高く、かつその高い状態を長く維持することができ、有機物除去効果が高く、長期間にわたって安定処理が可能である。
本発明の透過膜処理装置は、上記の阻止率向上方法により得られる透過膜を用い、透過膜に被処理液を透過させて透過膜処理を行う透過膜処理装置であり、透過膜に被処理液を透過させて透過膜処理を行うことにより、阻止率向上剤による透過膜の阻止率の向上効果が高く、かつその高い状態を長く維持することができ、有機物除去効果が高く、長期間にわたって安定処理が可能である。
本発明の好ましい透過膜処理装置は、1次側に被処理液を通液し、2次側から透過液を取り出す透過膜モジュールと、モジュールの1次側に有機物を主成分とする阻止率向上剤を通液して、阻止率向上剤処理を行う阻止率向上剤処理装置と、モジュールの1次側に、阻止率向上剤よりも重量平均分子量が大きい高分子を含む第1の固定化剤と、阻止率向上剤よりも重量平均分子量が大きく、第1の固定化剤とは異なるイオン性の高分子を含む第2の固定化剤とを交互に1回以上通液して固定化剤処理を行う固定化剤処理装置とを含む透過膜装置である。
上記の透過膜処理装置では、透過膜モジュールの1次側に被処理液を通液し、2次側から透過液を取り出して透過膜処理を行い、阻止率向上剤処理装置によりモジュールの1次側に有機物を主成分とする阻止率向上剤を通液して阻止率向上剤処理を行い、固定化剤処理装置によりモジュールの1次側に、第1の固定化剤と第2の固定化剤とを交互に1回以上通液して固定化剤処理を行うことにより、透過膜の阻止率を向上させることができる。
本発明によれば、阻止率向上剤による透過膜の阻止率の向上効果を高くするとともに高い状態で維持することができ、有機物除去効果が高く、長期間にわたって安定処理が可能である。
以下、本発明の実施の形態を図面により説明する。図1および図2は本発明の実施形態による透過膜処理方法および装置を示すフロー図である。
図1および図2において、1はRO膜モジュールで、透過膜としてRO膜2により1次側3と2次側4に区画されている。11は被処理水タンク、12は処理水タンク、13はアルカリ性洗浄液タンク、14は酸性洗浄液タンク、15は阻止率向上剤水溶液タンク、16は第1固定化剤水溶液タンク、17は第2固定化剤水溶液タンク、18は電解質溶液タンク、P1は高圧ポンプ、P2は洗浄液用ポンプ、P3は阻止率向上剤水溶液用ポンプ、P4は第1固定化剤水溶液用ポンプ、P5は第2固定化剤水溶液用ポンプ、P6は電解質溶液用ポンプである。V1〜V35はバルブである。なお、図1および2においては主要な配管およびバルブを示してあり、その他のバルブ、ゲージ、配管類は図示を省略してある。
図1、2において、被処理水をRO処理する場合には、バルブV1〜V5、およびV9を開、その他のバルブを閉とし、高圧ポンプP1を作動させて、被処理水タンク11内の被処理水をRO膜モジュール1の1次側3に供給してRO膜2により膜分離し、透過水を2次側から系外へ取り出す。濃縮水は1次側3から被処理水タンク11へ戻すとともに、一部をRO給水の濃縮を防止するために、バルブV3を通して系外へ排出する。またバルブV6、V7を開として、透過水を処理水タンク12に貯留する。場合によっては、バルブV11〜V15を開として、透過水をアルカリ性洗浄液タンク13、酸性洗浄液タンク14、阻止率向上剤水溶液タンク15、第1固定化剤水溶液タンク16、第2固定化剤水溶液タンク17に送給して、洗浄液や高分子水溶液の希釈、調整等に用いることができる。
上記のようにしてRO処理を行うことにより、RO膜2の透過流束が低下した場合において、薬品洗浄を行う場合には、高圧ポンプP1を停止し、バルブV2、V4、V21、V31を開、その他のバルブを閉として、洗浄液用ポンプP2を作動させ、アルカリ性洗浄液タンク13内のアルカリ性洗浄液をRO膜モジュール1の1次側3に導入した後、再びアルカリ性洗浄液タンク13内に戻すように循環させる。このときバルブV5を開として、洗浄液の一部を膜透過させて系外へ排出してもよい。或いはバルブV6、V11を開として、膜透過させた洗浄液をアルカリ性洗浄液タンク13に戻しても良い。所定の時間アルカリ性洗浄液を循環させた後に、場合によっては洗浄液用ポンプP2を停止して一定時間薬液を静置保持してから、アルカリ性洗浄液をアルカリ性洗浄液タンク13に設けたドレイン管(図示せず)から系外へ排出する。
次いでバルブV2、V4、V22、V32を開、その他のバルブを閉として酸洗浄液タンク14内の酸性洗浄液をRO膜モジュール1の1次側3に導入した後、再び酸性洗浄液タンク14に戻すように循環させる。このときバルブV5を開として、洗浄液の一部を膜透過させて系外へ排出しても良い。或いはバルブV6、V12を開として、膜透過させた洗浄液を酸性洗浄液タンク14に戻しても良い。所定の時間酸性洗浄液を循環させた後に、場合によっては洗浄液用ポンプP2を停止して一定時間薬液を静置保持してから、酸性洗浄液を酸性洗浄液タンク14に設けたドレイン管(図示せず)から系外へ排出する。
次いで、バルブV2、V3、V8を開、その他のバルブを閉として、処理水タンク12内の処理水でRO膜モジュール1の1次側3を洗浄し、洗浄排液をバルブV3を通して系外へ排出する。この場合、バルブV3を閉とし、バルブV21またはV22とバルブV4を開として、洗浄排液は洗浄液タンク13、14に設けたドレイン管(図示せず)から排出してもよい。この処理水による洗浄(リンス)は、アルカリ性洗浄液による洗浄と、酸性洗浄液による洗浄との間に行うこともできる。またアルカリ性洗浄液による洗浄と、酸性洗浄液による洗浄とはどちらを先に行っても良く、交互に繰り返して2回以上行っても良い。
図1において、阻止率向上剤および2種類の固定化剤を用いて阻止率向上処理する場合、阻止率向上剤水溶液タンク15に阻止率向上剤としてポリエチレングリコール鎖を有する化合物(以下「PEG」と記す)水溶液、第1固定化剤水溶液タンク16に第1固定化剤としてカチオン性高分子ポリビニルアミジン水溶液、第2固定化剤水溶液タンク17にアニオン性高分子ポリスチレンスルホン酸水溶液をそれぞれ満たし、まずバルブV2、V4、V23、V33を開、その他のバルブを閉として、洗浄用ポンプP2を作動させ、阻止率向上剤水溶液タンク15内のPEG水溶液をRO膜モジュール1の1次側3に導入した後、再びタンク15内に戻すように、循環させる。このとき、バルブV5を開として、PEG水溶液の一部を膜透過させて系外へ排出しても良いが、バルブV6、V13を開として、膜透過させたPEG水溶液をタンク15内に戻すことが好ましい。所定の時間PEG水溶液を循環させた後に、阻止率向上剤水溶液タンク15に設けたドレイン管(図示せず)より、PEG水溶液を系外へ排出する。
次いで、バルブV2、V4、V24、V34を開、その他のバルブを閉として、第1固定化剤水溶液タンク16内のカチオン性高分子ポリビニルアミジン水溶液をRO膜モジュール1の1次側3に導入した後、再び第1固定化剤水溶液タンク16内に戻すように循環させる。このときバルブV5を開として、水溶液の一部を膜透過させて系外へ排出しても良いが、バルブV6、V14を開として、膜透過させた高分子水溶液をタンク16内に戻すことが好ましい。所定の時間カチオン性高分子水溶液を循環させた後に、第1固定化剤水溶液タンク16に設けたドレイン管(図示せず)より、カチオン性高分子水溶液を系外へ排出する。
次いで、バルブV2、V4、V25、V35を開、その他のバルブを閉として、第2固定化剤水溶液タンク17内のアニオン性高分子ポリスチレンスルホン酸水溶液をRO膜モジュール1の1次側3に導入した後、再び第2固定化剤水溶液タンク17内に戻すように、循環させる。このときバルブV5を開として、水溶液の一部を膜透過させて系外へ排出しても良いが、バルブV6、V15を開として、膜透過させた高分子水溶液をタンク17内に戻すことが好ましい。所定の時間、アニオン性高分子水溶液を循環させた後に、第2固定化剤水溶液タンク17に設けたドレイン管(図示せず)より、アニオン性高分子水溶液を系外へ排出する。
次いでバルブV2、V3、V6、V8を開、さらにバルブV13、V14、V15の少なくともいずれかを開とし、その他のバルブを閉として、処理水タンク12内の処理水でRO膜モジュール1の1次側3を洗浄し、洗浄排液の一部をバルブV3を介して系外へ、残部をタンク15、16、17のいずれかを経由して系外へ排出する。
電解質を添加しながら阻止率向上処理、あるいは固定化処理を行う場合は、電解質溶液用ポンプP6を作動させ、バルブV16を開いて電解質溶液タンク18から電解質溶液を、所定の濃度になるように阻止率向上剤、第1固定化剤または第2固定化剤に添加しながら洗浄を実施する。処理水あるいは電解質添加処理水による洗浄(リンス)は阻止率向上剤による処理と、カチオン性固定化剤水溶液による処理、およびアニオン性固定化剤水溶液による処理の間に、それぞれ行うことが好ましい。
図2は被処理水を通水してRO処理を行いながら、被処理水に阻止率向上剤、第1固定化剤または第2固定化剤を添加して、これらの処理剤による処理を行う例を示す。図2において、PEGおよびカチオン性高分子、アニオン性高分子を用いて阻止率向上処理および固定化処理を実施する場合には、例えば阻止率向上剤水溶液タンク15、第1固定化剤水溶液タンク16、第2固定化剤水溶液タンク17にそれぞれPEG水溶液、カチオン性高分子水溶液、アニオン性高分子溶液を満たす。
阻止率向上剤処理を行うには、まずバルブV33を開として、ポンプP3を作動させ、阻止率向上剤水溶液タンク15内のPEG水溶液を被処理水タンク11に導入し、その後高圧ポンプP1を作動させ、バルブV1、V2、V4、V9を開、その他のバルブを閉として、被処理水タンク11内のPEG水溶液をRO膜モジュール1の1次側3に導入した後、再びタンク11に戻すように循環させる。このときバルブV3、V5を開として、PEG水溶液の一部を膜透過させて処理水を得るとともに、PEG水溶液の一部を系外へ排出させることが好ましい。このようにすることで、RO処理装置の運転を停止する時間を短縮することができる。所定の時間PEG水溶液を循環させた後に、バルブV33を閉じるとともにポンプP3を停止し、PEG水溶液の導入を停止する。
次いでバルブV34を開としてポンプP4を作動させ、第1固定化剤水溶液タンク16内のカチオン性高分子水溶液を被処理水タンク11に導入し、その後高圧ポンプP1を作動させ、バルブV1、V2、V4、V9を開、その他のバルブを閉として、被処理水タンク11内のカチオン性高分子水溶液をRO膜モジュール1の1次側3に導入した後、再びタンク11内に戻すように循環させる。このときバルブV3、V5を開として、高分子水溶液の一部を膜透過させて処理水を得るとともに、高分子水溶液の一部を系外へ排出させることが好ましい。このようにすることでRO処理装置の運転を停止する時間を短縮することができる。所定の時間カチオン性高分子水溶液を循環させた後に、バルブV34を閉じるとともにポンプP4を停止し、カチオン性高分子水溶液の導入を停止する。
次いでバルブV35を開として、ポンプP5を作動させ、第2固定化剤水溶液タンク17内のアニオン性高分子水溶液を被処理水タンク11に導入し、その後高圧ポンプP1を作動させ、バルブV1、V2、V4、V9を開、その他のバルブを閉として、被処埋水タンク11内のアニオン性高分子水溶液をRO膜モジュール1の1次側3に導入した後、再びタンク11内に戻すように循環させる。このときバルブV3、V5を開として、高分子水溶液の一部を膜透過させて処理水を得るとともに、高分子水溶液の一部を系外へ排出させることが好ましい。このようにすることで、RO処理装置の運転を停止する時間を短縮することができる。所定の時間アニオン性高分子水溶液を循環させた後に、バルブ35を閉じるとともに、ポンプP5を停止し、アニオン性高分子水溶液の導入を停止する。
上記各処理工程の間には、処理水あるいは電解質添加処理水による洗浄工程を実施することが望ましい。すなわち、バルブV2、V3、V8を開、その他のバルブを閉として、高圧ポンプP1を停止するとともに、ポンプP2を稼動して処理水タンク12内の処理水でRO膜モジュール1の1次側3を洗浄するとともに、水溶液をバルブV3を通して系外へ排出する。電解質を添加しながら阻止率向上剤処理、固定化剤処理または洗浄を実施する場合は、電解質溶液用ポンプP6を作動させ、バルブV16を開いて電解質溶液タンク18から電解質溶液を、所定の濃度になるように処理水に添加しながら阻止率向上剤処理、固定化剤処理または洗浄を実施する。
また阻止率向上剤水溶液の導入を停止した後、被処理水のRO処理を所定時間(被処理水タンク11の滞留時間の3倍程度)実施することによりリンスを省略したり、リンス工程の時間を短縮したり、リンス水量を低減することができる。PEG水溶液による処理後に実施するカチオン性高分子水溶液、アニオン性高分子水溶液による処理は交互に繰り返して2回以上行っても良いが、最後にアニオン性高分子水溶液による処理となることが好ましい。
なお、上記実施の形態は、本発明のRO膜処理方法の処理手順の一例を示すものであって、本発明は何ら本実施の形態に限定されるものではなく、図1,2の各処理タンクは共用したり省略することもできる。また、RO膜処理工程、薬品洗浄工程、阻止率向上処理工程はそれぞれ別の場所で行ってもよい。すなわちRO膜モジュールまたはエレメントだけをベッセルから抜き取って、RO処理工程を行っている場所から別の場所(例えばRO膜再生工場など)に移動し、移動先において別途容易したベッセルに収容して薬品洗浄処理工程、阻止率向上処理工程等を実施してもよい。
また図2の場合には、阻止率時向上剤水溶液は、被処理水タンク11に供給されるが、被処埋水タンク11とRO膜モジュール1とを連結する配管に、これら阻止率向上剤水溶液を直接ライン注入するようにしてもよい。さらに薬品洗浄工程において、酸洗浄とアルカリ洗浄のどちらか一方のみを行っても良く、また逆に酸洗浄の後にアルカリ洗浄を行っても良い。
酸洗浄に使用する酸剤としては、塩酸、硫酸、硝酸などの鉱酸、またはクエン酸、シュウ酸などの有機酸を使用することができる。アルカリ洗浄に使用するアルカリ剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウムなどを使用することができる。さらにこれらの洗浄剤に過酸化水素などの酸化剤、重亜硫酸ナトリウムなどの還元剤、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどの界面活性剤などを添加することもできる。
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。本実施例では阻止率は以下式によって算出した。
阻止率(%)=〔1−(溶質の透過液濃度×2)/(溶質の供給液濃度+溶質の濃縮液濃度)〕×100
[実施例1]:
重量平均分子量4,000のポリエチレングリコール1mmol/L、2,3−エポキシ−1−プロパノール100mmol/Lおよび亜硫酸ナトリウム100mmol/Lの水溶液を、温度80℃で20分間還流することにより合成したスルホン化ポリエチレングリコール0.1mg/L水溶液を、日東電工(株)製超低圧芳香族ポリアミド型RO膜「ES−20」の新品膜モジュールに圧力0.75MPaで、濃縮水および透過水をともに給水タンクに戻す全循環処理で20時間通水し、ついで重量平均分子量300万のポリビニルアミジン0.1mg/L水溶液を20時間、重量平均分子量100万のポリスチレンスルホン酸0.1mg/L水溶液を20時間ずつ通水した。ポリビニルアミジン水溶液、ポリスチレンスルホン酸水溶液の通水処理は交互に3回繰り返した。また各工程の間には超純水によるリンスを0.5時間行った。
処理を終了したRO膜をRO膜装置にセットし、圧力0.75MPa、ブライン水量を1m/hとして、1000mg/LのIPA(イソプロピルアルコール)水溶液を通水し、定期的に透過水流量、供給水、濃縮水、透過水のTOC濃度を測定し、フラックスとIPAの阻止率を算出した。
[実施例2]:
カチオン性固定化剤、アニオン性固定化剤の処理回数を1回ずつのみ実施した以外は実施例1と同様の処理を行ったRO膜をRO膜装置にセットし、圧力0.75MPa、ブライン水量を1m/hとして、1000mg/LのIPA水溶液を通水し、定期的に透過水流量、供給水、濃縮水、透通水のTOC濃度を測定し、フラックスとIPAの阻止率を算出した。
[実施例3]:
阻止率向上剤、カチオン性固定化剤、アニオン性固定化剤のそれぞれの水溶液に、NaCl濃度が2000ppmになるようにNaClを添加した水溶液を用いて処理した以外は実施例1と同様の処理を行ったRO膜をRO膜装置にセットし、圧力0.75MPa、ブライン水量を1m/hとして、1000mg/LのIPA水溶液を通水し、定期的に透過水流量、供給水、濃縮水、透過水のTOC濃度を測定し、フラックスとIPAの阻止率を算出した。
[比較例1]:
重量平均分子量4,000のポリエチレングリコール1mmol/L、2,3−エポキシ−1−プロパノール100mmol/Lおよび亜硫酸ナトリウム100mmol/Lの水溶液を、温度80℃で20分間還流することにより合成したスルホン化ポリエチレングリコール0.1mg/L水溶液を、日東電工(株)製超低圧芳香族ポリアミド型RO膜「ES−20」の新品膜モジュールに、圧力0.75MPa、濃縮水、透過水ともに給水タンクに戻す全循環処理で20時間通水した。処理を終了したRO膜をRO膜装置にセットし、圧力0.75MPa、ブライン水量を1m/hとして、1000mg/LのIPA水溶液を通水し、定期的に透過水流量、供給水、濃縮水、透通水のTOC濃度を測定し、フラックスとIPAの阻止率を算出した。
[比較例2]:
RO装置に充填する膜を日東電工(株)製超低圧芳香族ポリアミド型RO膜「ES−20」の新品膜モジュールを使用し、この膜に阻止率向上固定化処理を行わないこと以外は実施例1と同条件で前述のIPA溶液を通水し、RO装置のフラックスとIPA阻止率を算出した。
実施例1〜3と比較例1、2の通水開始後100時間経過後および5000時間経過後に測定したIPA阻止率とフラックスを表1に示す。また、阻止率の経過を図3に示す。これらの結果より、実施例1〜3の阻止率向上効果は、比較例1、2よりも高く、長時間にわたって持続することが分かる。
Figure 2008238121
本発明は、逆浸透膜、ナノ濾過膜等の透過膜の阻止率を向上させる方法、阻止率を向上させた透過膜、これを用いる透過膜処理方法、およびこれらに適した透過膜装置に利用可能である。
本発明の一実施形態による透過膜処理方法および装置を示すフロー図である。 本発明の別の実施形態による透過膜処理方法および装置を示すフロー図である。 本発明の実施例の結果を示すグラフである。
符号の説明
1 RO膜モジュール
2 RO膜
3 1次側
4 2次側
11 被処理水タンク
12 処理水タンク
13 アルカリ性洗浄液タンク
14 酸性洗浄液タンク
15 阻止率向上剤水溶液タンク
16 第1固定化剤水溶液タンク
17 第2固定化剤水溶液タンク
18 電解質溶液タンク

Claims (8)

  1. 透過膜に阻止率向上剤を接触させて透過膜の阻止率を向上させる阻止率向上剤処理を行った後、
    阻止率向上剤処理を行った透過膜に、阻止率向上剤よりも重量平均分子量が大きい高分子を含む第1の固定化剤と、阻止率向上剤よりも重量平均分子量が大きく、第1の固定化剤とは異なるイオン性の高分子を含む第2の固定化剤とを交互に1回以上接触させて固定化剤処理を行う
    ことを特徴とする透過膜の阻止率向上方法。
  2. 阻止率向上剤がカチオン性またはアニオン性である請求項1記載の方法。
  3. 阻止率向上剤がポリアルキレングリコール鎖を有する化合物である請求項1または2記載の方法。
  4. 阻止率向上剤がカチオン性の場合、第1の固定化剤がアニオン性、第2の固定化剤がカチオン性であり、阻止率向上剤がアニオン性の場合、第1の固定化剤がカチオン性、第2の固定化剤がアニオン性である請求項1ないし3のいずれかに記載の方法。
  5. 請求項1ないし4のいずれかに記載の方法により得られる透過膜。
  6. 請求項1ないし4のいずれかに記載の方法により得られる透過膜に被処理液を透過させて透過膜処理を行う透過膜処理方法。
  7. 請求項1ないし4のいずれかに記載の方法により得られる透過膜を用い、透過膜に被処理液を透過させて透過膜処理を行う透過膜処理装置。
  8. 1次側に被処理液を通液し、2次側から透過液を取り出す透過膜モジュールと、
    モジュールの1次側に有機物を主成分とする阻止率向上剤を通液して、阻止率向上剤処理を行う阻止率向上剤処理装置と、
    モジュールの1次側に、阻止率向上剤よりも重量平均分子量が大きい高分子を含む第1の固定化剤と、阻止率向上剤よりも重量平均分子量が大きく、第1の固定化剤とは異なるイオン性の高分子を含む第2の固定化剤とを交互に1回以上通液して固定化剤処理を行う固定化剤処理装置と
    を含む透過膜装置。
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