以下、本発明の多面付けTFT基板および液晶表示素子の製造方法について詳細に説明する。
A.多面付けTFT基板
まず、本発明の多面付けTFT基板について説明する。本発明の多面付けTFT基板は、基板上に複数のTFT基板領域が配置され、強誘電性液晶を用いた液晶表示素子に用いられるものであって、ゲート線およびソース線が絶縁されている、あるいは、ゲート線およびソース線が絶縁可能であることを特徴とするものであり、2つの実施態様を有する。
以下、各実施態様に分けて説明する。
1.第1実施態様
本実施態様の多面付けTFT基板は、基板上に複数のTFT基板領域が配置され、強誘電性液晶を用いた液晶表示素子に用いられる多面付けTFT基板であって、上記各TFT基板領域に設けられたゲート線およびソース線と、上記基板の周縁領域に配置され、すべての上記ゲート線に連結されたゲート線用ショートバーと、上記周縁領域に配置され、すべての上記ソース線に連結されたソース線用ショートバーと、上記周縁領域に配置され、上記ゲート線用ショートバーに連結されたゲート線用取り出し端子と、上記周縁領域に配置され、上記ソース線用ショートバーに連結されたソース線用取り出し端子とを有し、上記ゲート線および上記ソース線が絶縁されていることを特徴とするものである。
本実施態様の多面付けTFT基板について、図面を参照しながら説明する。
図1は本実施態様の多面付けTFT基板の一例を示す概略平面図であり、図2はTFT基板領域の拡大図であり、図3は図2のA−A線断面図である。
図1に例示する多面付けTFT基板1には、1枚の基板2上にTFT基板領域3が6(2×3)個配置されている。このTFT基板領域3では、図2に例示するように、基板2上に、ゲート線4xおよびソース線4yが互いに交差するように配置されている。ゲート線4xおよびソース線4yにより囲まれた部分は、液晶表示素子を駆動する最小単位である画素であり、各画素にはTFT素子11および画素電極12が配置されている。この画素が設けられている領域は、表示領域9である。
また、TFT素子11は、図3に例示するように、ゲート電極14a(ゲート線4x)と、ゲート電極14a(ゲート線4x)上に形成されたゲート絶縁層13と、ゲート絶縁層13上に形成された半導体層15と、半導体層15上に一定の間隔を空けて対向するように形成されたソース電極14bおよびドレイン電極14c(ソース線4y)と、これらの上に形成された保護層16とを有している。
図1に例示するように、ゲート線4xは、直接またはゲート線用接続配線10aを介して、基板2の周縁領域に配置されたゲート線用ショートバー5に接続されている。また、ソース線4yは、直接またはソース線用接続配線10bを介して、基板2の周縁領域に配置されたソース線用ショートバー6に接続されている。そして、ゲート線用ショートバー5からはゲート線用取り出し端子7が引き出され、ソース線用ショートバー6からはソース線用取り出し端子8が引き出されている。
このような多面付けTFT基板においては、従来のショートリングとは異なり、ゲート線用ショートバーおよびソース線用ショートバーが連結されておらず、ゲート線およびソース線が絶縁されている。そのため、ゲート線およびソース線に独立して電圧を印加することができる。
本発明の多面付けTFT基板を用いて作製した多面取り用液晶セルの一例を図4に示す。図4に示す多面取り用液晶セルは、上記の多面付けTFT基板1と、基板22上に共通電極23が形成された共通電極基板21とを有しており、多面付けTFT基板の各TFT基板領域では、多面付けTFT基板1および共通電極基板21の対向面上にそれぞれ配向膜17,24が形成され、多面付けTFT基板1および共通電極基板21の間に強誘電性液晶が挟持されて液晶層25が構成されている。
例えば、図4に示す多面取り用液晶セルにおいて、図示しないが、ゲート線4x(ゲート電極14a)からゲート線用ショートバーを介して引き出されたゲート線用取り出し端子と、共通電極23とを接続する。そして、ゲート線用取り出し端子およびソース線用取り出し端子にそれぞれ異なる電圧を印加する。
このとき、例えば、ゲート線用取り出し端子の電圧に対して、ソース線用取り出し端子の電圧が相対的に低くなるように、ゲート線用取り出し端子およびソース線用取り出し端子にそれぞれ異なる電圧を印加する。そうすると、ゲート線用取り出し端子は共通電極23に接続されており、またソース線用取り出し端子はソース線4yに接続され、ソース電極14bから半導体層15およびドレイン電極14cを介して画素電極12に接続されているので、図5に例示するように、共通電極23の電圧に対して、画素電極12の電圧が相対的に低くなる。そのため、印加電圧の極性の影響によって、液晶分子30の自発分極Psの正極(+)は画素電極12側を向くようになる。自発分極の向きがこのような方向になるのは、自発分極の向きが、強誘電性液晶の分極と印加電圧の極性とが電気的につり合う方向になるため、液晶分子が電気的に安定な状態になるからである。
なお、図5において、画素電極および共通電極以外の構成部材は省略されている。
このように、本実施態様の多面付けTFT基板を用いて多面取り用液晶セルを作製し、この多面取り用液晶セルを用いて、ゲート線用取り出し端子と共通電極とを接続して、ゲート線用取り出し端子およびソース線用取り出し端子にそれぞれ異なる電圧を同時に印加することにより、TFT基板領域毎に切断することなく、各TFT基板領域における画素電極および共通電極にそれぞれ異なる電圧を同時に印加することが可能である。したがって、多面付けTFT基板を用いて作製した多面取り用液晶セルをそのまま使用して、電解印加徐冷法により強誘電性液晶を配向させることができ、製造コストを大幅に削減することが可能である。
また例えば、図4に示す多面取り用液晶セルにおいて、図示しないが、ゲート線4x(ゲート電極14a)からゲート線用ショートバーを介して引き出されたゲート線用取り出し端子と、ソース線4y(ソース電極14b)からソース線用ショートバーを介して引き出されたソース線用取り出し端子と、共通電極23から引き出された共通電極用取り出し端子とに、それぞれ異なる電圧を印加する。
TFT素子では、ゲート電極およびソース電極の電位差が所定の値以上であるときに、TFT素子がON状態となる。そのため、ゲート線用取り出し端子の電圧およびソース線用取り出し端子の電圧の電位差が所定の値以上となるように、ゲート線用取り出し端子およびソース線用取り出し端子にそれぞれ異なる電圧を印加する。そうすると、ゲート電極およびソース電極の電位差が所定の値以上となるので、TFT素子11がON状態となり、ソース電極14bから半導体層15およびドレイン電極14cを介して画素電極12に電圧が印加される。またこのとき、例えば、共通電極用取り出し端子の電圧に対して、ソース線用取り出し端子の電圧が相対的に低くなるように、共通電極用取り出し端子およびソース線用取り出し端子にそれぞれ異なる電圧を印加する。そうすると、図5に例示するように、共通電極23の電圧に対して、画素電極12の電圧が相対的に低くなる。そのため、印加電圧の極性の影響によって、液晶分子30の自発分極Psの正極(+)は画素電極12側を向くようになる。自発分極の向きがこのような方向になるのは、自発分極の向きが、強誘電性液晶の分極と印加電圧の極性とが電気的につり合う方向になるため、液晶分子が電気的に安定な状態になるからである。
なお、図5において、画素電極および共通電極以外の構成部材は省略されている。
このように、本実施態様の多面付けTFT基板を用いて多面取り用液晶セルを作製し、この多面取り用液晶セルを用いて、ゲート線用取り出し端子とソース線用取り出し端子と共通電極用取り出し端子とにそれぞれ異なる電圧を同時に印加することにより、TFT基板領域毎に切断することなく、各TFT基板領域における画素電極および共通電極にそれぞれ異なる電圧を同時に印加することが可能である。したがって、上記の場合と同様に、多面付けTFT基板を用いて作製した多面取り用液晶セルをそのまま使用して、電解印加徐冷法により強誘電性液晶を配向させることができ、製造コストを大幅に削減することが可能である。
一方、従来の多面付けTFT基板では、ゲート線およびソース線が電気的に短絡されているので、従来の多面付けTFT基板を用いて得られる多面取り用液晶セルでは、ゲート線・ソース線用取り出し端子に電圧を印加すると、TFT素子にてゲート電極およびソース電極が同電位となる。そのため、TFT素子をON状態とすることができず、ゲート線・ソース線用取り出し端子に電圧を印加しても、画素電極に電圧が印加されない。したがって、従来の多面付けTFT基板を用いて得られる多面取り用液晶セルにて、ゲート線・ソース線用取り出し端子および共通電極用取り出し端子にそれぞれ異なる電圧を印加しても、画素電極および共通電極にそれぞれ異なる電圧を同時に印加することはできないのである。
以下、本実施態様の多面付けTFT基板における各構成について説明する。
(1)ゲート線用ショートバー
本実施態様におけるゲート線用ショートバーは、基板の周縁領域に配置され、すべてのゲート線に連結されたものである。また、ゲート線用ショートバーには、ゲート線用取り出し端子が連結されている。
ゲート線用ショートバーには、すべてのゲート線が連結されていればよく、ゲート線が直接にゲート線用ショートバーに接続されていてもよく、ゲート線がゲート線用接続配線を介してゲート線用ショートバーに接続されていてもよい。
ゲート線用ショートバーの形成位置としては、基板の周縁領域であり、ソース線用ショートバーに接続しない位置であれば特に限定されるものではない。
また、ゲート線用ショートバーのパターンとしては、基板の周縁領域に配置することができ、かつソース線用ショートバーに接続することのないパターンであれば特に限定されるものではなく、例えば、図1に示すようなL字状や、直線状等が挙げられる。
ゲート線用ショートバーは、通常、ゲート線形成プロセスによりゲート線と同時に形成される。
(2)ソース線用ショートバー
本実施態様におけるソース線用ショートバーは、基板の周縁領域に配置され、すべてのソース線に連結されたものである。また、ソース線用ショートバーには、ソース線用取り出し端子が連結されている。
ソース線用ショートバーには、すべてのソース線が連結されていればよく、ソース線が直接にソース線用ショートバーに接続されていてもよく、ソース線がソース線用接続配線を介してソース線用ショートバーに接続されていてもよい。
ソース線用ショートバーの形成位置としては、基板の周縁領域であり、ゲート線用ショートバーに接続しない位置であれば特に限定されるものではない。
また、ソース線用ショートバーのパターンとしては、基板の周縁領域に配置することができ、かつゲート線用ショートバーに接続することのないパターンであれば特に限定されるものではなく、例えば、図1に示すようなL字状や、直線状等が挙げられる。
ソース線用ショートバーは、通常、ソース線形成プロセスによりソース線と同時に形成される。
(3)ゲート線用取り出し端子
本実施態様におけるゲート線用取り出し端子は、基板の周縁領域に配置され、ゲート線用ショートバーに連結されたものである。
ゲート線用取り出し端子は、基板の周縁領域に配置され、ゲート線用ショートバーから引き出されていればよいが、上述したように多面付けTFT基板を用いて多面取り用液晶セルを作製し、電界印加徐冷法により強誘電性液晶を配向させる際に、外部から電圧を印加しやすい位置に配置されていることが好ましい。
ゲート線用取り出し端子の数としては、1個であってもよく複数個であってもよいが、中でも、1個であることが好ましい。ゲート線用取り出し端子の数が多すぎると、上述したように多面付けTFT基板を用いて多面取り用液晶セルを作製し、電界印加徐冷法により強誘電性液晶を配向させる際に、複数のゲート線用取り出し端子に同時に電圧を印加するのが困難となる場合があるからである。
一方、ゲート線用取り出し端子の数が複数個である場合は、上記の理由から、2〜3個程度であることが好ましい。
ゲート線用取り出し端子の形成材料、厚み、大きさ、パターン等としては、一般的なTFT基板における取り出し端子と同様のものとすることができる。
(4)ソース線用取り出し端子
本実施態様におけるソース線用取り出し端子は、基板の周縁領域に配置され、ソース線用ショートバーに連結されたものである。
ソース線用取り出し端子は、基板の周縁領域に配置され、ソース線用ショートバーから引き出されていればよいが、上述したように多面付けTFT基板を用いて多面取り用液晶セルを作製し、電界印加徐冷法により強誘電性液晶を配向させる際に、外部から電圧を印加しやすい位置に配置されていることが好ましい。
ソース線用取り出し端子の数としては、1個であってもよく複数個であってもよいが、中でも、1個であることが好ましい。ソース線用取り出し端子の数が多すぎると、上述したように多面付けTFT基板を用いて多面取り用液晶セルを作製し、電界印加徐冷法により強誘電性液晶を配向させる際に、複数のソース線用取り出し端子に同時に電圧を印加するのが困難となる場合があるからである。
一方、ソース線用取り出し端子の数が複数個である場合は、上記の理由から、2〜3個程度であることが好ましい。
ソース線用取り出し端子の形成材料、厚み、大きさ、パターン等としては、一般的なTFT基板における取り出し端子と同様のものとすることができる。
(5)ゲート線およびソース線
本実施態様におけるゲート線およびソース線は、各TFT基板領域に設けられるものであり、多面付けTFT基板全体にて絶縁されている。
なお、ゲート線およびソース線が絶縁されているとは、ゲート線およびソース線そのものが絶縁されている場合だけでなく、ゲート線に連結されているゲート線用ショートバー、ゲート線用取り出し端子、ゲート線用接続配線等のすべてのものと、ソース線に連結されているソース線用ショートバー、ソース線用取り出し端子、ソース線用接続配線等のすべてのものとが絶縁されていることをいう。
ゲート線およびソース線の形成材料、厚み、大きさ、パターン等としては、一般的なTFT基板におけるゲート線およびソース線と同様のものとすることができる。
(6)TFT基板領域
本実施態様の多面付けTFT基板においては、基板上に複数のTFT基板領域が配置されている。本実施態様の多面付けTFT基板を用いて液晶表示素子を作製する場合には、まず、多面付けTFT基板を用いて多面取り用液晶セルを作製し、次いで、この多面取り用液晶セルを用いて電界印加徐冷法により強誘電性液晶を配向させた後に、TFT基板領域毎に切断することによって、個々の液晶表示素子を得ることができる。
TFT基板領域の数としては、複数であれば特に限定されるものではなく、基板およびTFT基板領域の大きさに応じて適宜調整される。例えばTFT基板領域の大きさが20インチ程度である場合、TFT基板領域の数は、2(1×2)個、4(2×2)個、6(2×3)個、8(2×4)個、12(3×4)個等とすることができる。また例えばTFT基板領域の大きさが2〜3インチ程度である場合、TFT基板領域の数は、8×12個、16×24個等とすることができる。さらに、TFT基板領域の大きさが40〜50インチ程度である場合、TFT基板領域の数は4(2×2)個程度とされる。
(7)基板
本実施態様に用いられる基板は、一般にTFT基板の基板として用いられるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、ガラス板、プラスチック板などが好ましく挙げられる。
(8)用途
本実施態様の多面付けTFT基板は、強誘電性液晶を用いた液晶表示素子に用いられるものである。
なお、強誘電性液晶、および強誘電性液晶を用いた液晶表示素子については、後述の「B.液晶表示素子」に詳しく記載するので、ここでの説明は省略する。
2.第2実施態様
本実施態様の多面付けTFT基板は、基板上に複数のTFT基板領域が配置され、強誘電性液晶を用いた液晶表示素子に用いられる多面付けTFT基板であって、上記各TFT基板領域に設けられたゲート線およびソース線と、上記基板の周縁領域に配置され、すべての上記ゲート線に連結されたゲート線用ショートバーと、上記周縁領域に配置され、すべての上記ソース線に連結されたソース線用ショートバーと、上記周縁領域に配置され、上記ゲート線用ショートバーおよび上記ソース線用ショートバーに連結され、上記ゲート線および上記ソース線が絶縁されるように独立して切断可能な接続部と、上記周縁領域に配置され、上記ゲート線用ショートバーに連結されたゲート線用取り出し端子と、上記周縁領域に配置され、上記ソース線用ショートバーに連結されたソース線用取り出し端子とを有することを特徴とするものである。
本実施態様の多面付けTFT基板について、図面を参照しながら説明する。
図6は本実施態様の多面付けTFT基板の一例を示す概略平面図であり、図2はTFT基板領域の拡大図であり、図3は図2のA−A線断面図である。
図6に例示する多面付けTFT基板1には、1枚の基板2上にTFT基板領域3が6(2×3)個配置されている。このTFT基板領域3では、図2に例示するように、基板2上に、ゲート線4xおよびソース線4yが互いに交差するように配置されている。ゲート線4xおよびソース線4yにより囲まれた部分は、液晶表示素子を駆動する最小単位である画素であり、各画素にはTFT素子11および画素電極12が配置されている。この画素が設けられている領域は、表示領域9である。
また、TFT素子11は、図3に例示するように、ゲート電極14a(ゲート線4x)と、ゲート電極14a(ゲート線4x)上に形成されたゲート絶縁層13と、ゲート絶縁層13上に形成された半導体層15と、半導体層15上に一定の間隔を空けて対向するように形成されたソース電極14bおよびドレイン電極14c(ソース線4y)と、これらの上に形成された保護層16とを有している。
図6に例示するように、ゲート線4xは、直接またはゲート線用接続配線10aを介して、基板2の周縁領域に配置されたゲート線用ショートバー5に接続されている。また、ソース線4yは、直接またはソース線用接続配線10bを介して、基板2の周縁領域に配置されたソース線用ショートバー6に接続されている。そして、ゲート線用ショートバー5からはゲート線用取り出し端子7が引き出され、ソース線用ショートバー6からはソース線用取り出し端子8が引き出されている。また、ゲート線用ショートバー5およびソース線用ショートバー6には、独立して切断可能な接続部31が連結されており、ゲート線用ショートバー5、ソース線用ショートバー6、および接続部31が一体に形成され、ショートリング32が構成されている。
このように、ゲート線用ショートバー5およびソース線用ショートバー6が接続部31を介して連結されていることにより、ゲート線4xおよびソース線4yを電気的に短絡させることができる。したがって、多面付けTFT基板の作製時に生じる静電気の影響による静電破壊を回避することができる。また、本実施態様の多面付けTFT基板を用いて多面取り用液晶セルを作製する際に生じる静電気の影響による静電破壊も回避することができる。
図6において、接続部31は、ゲート線用ショートバー5およびソース線用ショートバー6に連結されているが、ゲート線4xおよびソース線4yが絶縁されるように独立して切断可能であるため、多面付けTFT基板1を切断線33で切断して、接続部31を切断除去することにより、図7に例示するようにゲート線用ショートバー5およびソース線用ショートバー6が連結されていないものとすることができる。これにより、ゲート線4xおよびソース線4yを絶縁することが可能である。したがって、上記第1実施態様と同様に、ゲート線およびソース線に独立して電圧を印加することができる。
図8は本実施態様の多面付けTFT基板の他の例を示す概略平面図であり、図2はTFT基板領域の拡大図であり、図3は図2のA−A線断面図である。また、図9(a)は図8のB−B線断面図、図9(b)は図8のC−C線断面図である。
図8に例示する多面付けTFT基板1には、1枚の基板2上にTFT基板領域3が6(2×3)個配置されている。このTFT基板領域3では、図2に例示するように、基板2上に、ゲート線4xおよびソース線4yが互いに交差するように配置されている。ゲート線4xおよびソース線4yにより囲まれた部分は、液晶表示素子を駆動する最小単位である画素であり、各画素にはTFT素子11および画素電極12が配置されている。この画素が設けられている領域は、表示領域9である。
また、TFT素子11は、図3に例示するように、ゲート電極14a(ゲート線4x)と、ゲート電極14a(ゲート線4x)上に形成されたゲート絶縁層13と、ゲート絶縁層13上に形成された半導体層15と、半導体層15上に一定の間隔を空けて対向するように形成されたソース電極14bおよびドレイン電極14c(ソース線4y)と、これらの上に形成された保護層16とを有している。
図8に例示するように、ゲート線4xは、直接、基板2の周縁領域に配置されたゲート線用ショートバー5に接続されている。また、ソース線4yは、直接またはソース線用接続配線10bを介して、基板2の周縁領域に配置されたソース線用ショートバー6に接続されている。そして、ゲート線用ショートバー5からはゲート線用取り出し端子7が引き出され、ソース線用ショートバー6からはソース線用取り出し端子8が引き出されている。また、ゲート線用ショートバー5およびソース線用ショートバー6には、独立して切断可能な接続部31(31a,31b)が連結されており、ゲート線用ショートバー5および接続部の一部31aが一体に形成され、ソース線用ショートバー6および接続部の一部31bが一体に形成されている。
図9(b)に示すように、ゲート線用ショートバー5およびソース線用ショートバー6の間にはゲート絶縁層13が形成され、ゲート線用ショートバー5およびソース線用ショートバー6は連結されていない。一方、図9(a)に示すように、接続部31a,31bが形成されている領域にはスルーホール35が設けられ、このスルーホール35によって、ゲート線用ショートバーと一体に形成されている接続部の一部31aと、ソース線用ショートバーと一体に形成されている接続部の一部31bとが連結されている。したがって、ゲート線用ショートバーおよびソース線用ショートバーが、接続部を介して、具体的にはスルーホールを介して連結されていることになる。
このように、ゲート線用ショートバーおよびソース線用ショートバーが接続部を介して(スルーホールを介して)連結されていることにより、ゲート線およびソース線を電気的に短絡させることができる。したがって、多面付けTFT基板の作製時に生じる静電気の影響による静電破壊を回避することができる。また、本実施態様の多面付けTFT基板を用いて多面取り用液晶セルを作製する際に生じる静電気の影響による静電破壊も回避することができる。
図8において、接続部31は、ゲート線用ショートバー5およびソース線用ショートバー6に連結されているが、ゲート線およびソース線が絶縁されるように独立して切断可能であるため、多面付けTFT基板1を切断線33で切断して、接続部31を切断除去することにより、ゲート線用ショートバーおよびソース線用ショートバーが連結されていないものとすることができる。これにより、ゲート線およびソース線を絶縁することが可能である。したがって、上記第1実施態様と同様に、ゲート線およびソース線に独立して電圧を印加することができる。
本発明の多面付けTFT基板を用いて作製した多面取り用液晶セルの一例を図4に示す。図4に示す多面取り用液晶セルは、上記の多面付けTFT基板1と、基板22上に共通電極23が形成された共通電極基板21とを有しており、多面付けTFT基板の各TFT基板領域では、多面付けTFT基板1および共通電極基板21の対向面上にそれぞれ配向膜17,24が形成され、多面付けTFT基板1および共通電極基板21の間に強誘電性液晶が挟持されて液晶層25が構成されている。
この多面取り用液晶セルを、図6または図8に示す切断線33で切断して、接続部31を切断除去することにより、ゲート線およびソース線を絶縁する。
例えば、このようにゲート線およびソース線を絶縁が絶縁された多面取り用液晶セルにおいて、図示しないが、ゲート線4x(ゲート電極14a)からゲート線用ショートバーを介して引き出されたゲート線用取り出し端子と、共通電極23とを接続する。そして、ゲート線用取り出し端子およびソース線用取り出し端子にそれぞれ異なる電圧を印加する。
このとき、例えば、ゲート線用取り出し端子の電圧に対して、ソース線用取り出し端子の電圧が相対的に低くなるように、ゲート線用取り出し端子およびソース線用取り出し端子にそれぞれ異なる電圧を印加する。そうすると、ゲート線用取り出し端子は共通電極23に接続されており、またソース線用取り出し端子はソース線4yに接続され、ソース電極14bから半導体層15およびドレイン電極14cを介して画素電極12に接続されているので、図5に例示するように、共通電極23の電圧に対して、画素電極12の電圧が相対的に低くなる。そのため、印加電圧の極性の影響によって、液晶分子30の自発分極Psの正極(+)は画素電極12側を向くようになる。
このように、本実施態様の多面付けTFT基板を用いて多面取り用液晶セルを作製し、得られた多面取り用液晶セルを所定の位置で切断して接続部を切断除去することによってゲート線およびソース線を絶縁した後に、ゲート線用取り出し端子と共通電極とを接続して、ゲート線用取り出し端子およびソース線用取り出し端子にそれぞれ異なる電圧を同時に印加することにより、TFT基板領域毎に切断することなく、各TFT基板領域における画素電極および共通電極にそれぞれ異なる電圧を同時に印加することが可能である。したがって、多面付けTFT基板を用いて作製した多面取り用液晶セルをそのまま使用して、電解印加徐冷法により強誘電性液晶を配向させることができ、製造コストを大幅に削減することが可能である。
また、本実施態様の多面付けTFT基板を用いて多面取り用液晶セルを作製し、得られた多面取り用液晶セルを所定の位置で切断して接続部を切断除去することによってゲート線およびソース線を絶縁した後に、ゲート線用取り出し端子とソース線用取り出し端子と共通電極用取り出し端子とにそれぞれ異なる電圧を同時に印加することにより、TFT基板領域毎に切断することなく、各TFT基板領域における画素電極および共通電極にそれぞれ異なる電圧を同時に印加することも可能である。したがって、上記の場合と同様に、多面付けTFT基板を用いて作製した多面取り用液晶セルをそのまま使用して、電解印加徐冷法により強誘電性液晶を配向させることができ、製造コストを大幅に削減することが可能である。
一方、従来の多面付けTFT基板では、ショートリングの一部や接続配線の一部等を切断したとしても、ゲート線およびソース線が絶縁され、かつ、各TFT基板領域における画素電極および共通電極にそれぞれ異なる電圧を同時に印加することができる多面付けTFT基板を得ることは非常に難しい。
従来の多面付けTFT基板の一例を図10に示す。図10に例示する多面付けTFT基板101には、1枚の基板102上に6個のTFT基板領域103a〜103fが配置されている。このTFT基板領域103a〜103fでは、図示しないが、基板102上に、ゲート線104xおよびソース線104yが互いに交差するように配置されており、ゲート線104xおよびソース線104yにより囲まれた部分は、液晶表示素子を駆動する最小単位である画素であり、各画素にはTFTおよび画素電極が配置されている。この画素が設けられている領域は、表示領域105である。そして、ゲート線104xおよびソース線104yは、直接または接続配線106を介して、基板102の周縁領域に配置されたショートリング107に接続されている。
上記の多面付けTFT基板101において、ショートリング107の108aおよび108bの部分を切断し、接続配線106の108c〜108iの部分を切断することにより、TFT基板領域103a〜103fにてゲート線104xおよびソース線104yを絶縁することは可能である。しかしながら、この場合には、TFT基板領域103d,103eにて、ゲート線104xが切断後のショートリング107に連結されないことになってしまう。また、ショートリング107の108aおよび108bの部分を切断し、接続配線106の108c〜108e,108k〜108nの部分を切断することにより、TFT基板領域103a〜103fにてゲート線104xおよびソース線104yを絶縁することは可能である。しかしながら、この場合には、TFT基板領域103b,103cにて、ソース線104yが切断後のショートリング107に連結されないことになってしまう。さらに、接続配線106の108a〜108nの部分を切断することは非常に困難である。
したがって、従来の多面付けTFT基板を用いて、ショートリングの一部や接続配線の一部等を切断除去したとしても、本実施態様の多面付けTFT基板を所定の位置で切断したときのように、ゲート線およびソース線が絶縁され、かつ、各TFT基板領域における画素電極および共通電極にそれぞれ異なる電圧を同時に印加することができる多面付けTFT基板を得ることは困難を極めるのである。
本実施態様においては、すべてのゲート線がゲート線用ショートバーに連結され、すべてのソース線がソース線用ショートバーに連結されており、ゲート線用ショートバーおよびソース線用ショートバーに連結された接続部がゲート線およびソース線が絶縁されるように独立して切断可能となっている。すなわち、多面付けTFT基板から接続部を切断除去したときに、すべてのゲート線はゲート線用ショートバーに連結され、すべてのソース線はソース線用ショートバーに連結され、ゲート線およびソース線は絶縁されるように、ゲート線、ソース線、ゲート線用ショートバー、ソース線用ショートバー、ゲート線用接続配線、およびソース線用接続配線等が配置されているのである。
なお、ゲート線用ショートバー、ソース線用ショートバー、ゲート線用取り出し端子、ソース線用取り出し端子、ゲート線、ソース線、TFT基板領域、基板および用途については、上記第1実施態様に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
以下、本実施態様の多面付けTFT基板における接続部について説明する。
(1)接続部
本実施態様における接続部は、基板の周縁領域に配置され、ゲート線用ショートバーおよびソース線用ショートバーに連結され、ゲート線およびソース線が絶縁されるように独立して切断可能なものである。
接続部の形成位置としては、基板の周縁領域であり、ゲート線およびソース線が絶縁されるように独立して切断可能な位置であればよいが、上述したように多面付けTFT基板を用いて多面取り用液晶セルを作製し、電界印加徐冷法により強誘電性液晶を配向させる際に、切断しやすい位置に配置されていることが好ましい。
接続部は、ゲート線用ショートバーおよびソース線用ショートバーに連結していればよく、接続部がゲート線用ショートバーおよびソース線用ショートバーと一体に形成されていてもよく、接続部がゲート線用ショートバーおよびソース線用ショートバーと別々に形成されていてもよく、接続部の一部分がゲート線用ショートバーと一体に形成され、接続部の他の部分がソース線用ショートバーと一体に形成されていてもよい。また、接続部とゲート線用ショートバーとソース線用ショートバーとで、図6に例示するようにショートリング32を構成していてもよい。さらに、接続部とゲート線用ショートバーおよびソース線用ショートバーとを連結するために、図9に例示するようにスルーホール35が設けられていてもよい。
接続部の形成材料、厚み等としては、一般的なTFT基板におけるショートリングと同様のものとすることができる。
また、接続部の大きさとしては、特に限定されるものではないが、小さすぎると切断するのが困難になるため、ある程度の大きさ以上であることが好ましい。
接続部の数としては、1個であってもよく複数個であってもよいが、1〜2個程度であることが好ましい。接続部の数が多すぎると、上述したように多面付けTFT基板を用いて多面取り用液晶セルを作製し、この多面取り用液晶セルにてゲート線およびソース線を絶縁させる際に、多面付けTFT基板から接続部を切断除去するのが困難となる場合があるからである。また、通常、多面付けTFT基板の形状が矩形であるため、接続部の切断位置は多面付けTFT基板の四隅とされ、最多で4箇所になるが、多面付けTFT基板の四隅のすべてを切断してしまうと、その後の多面付けTFT基板の搬送やTFT基板領域毎の切断等のプロセスに支障をきたすおそれがあるので、接続部の数は1〜2個程度であることが好ましいのである。
B.液晶表示素子の製造方法
次に、本発明の液晶表示素子の製造方法について説明する。本発明の液晶表示素子の製造方法は、上述の多面付けTFT基板を用いて液晶表示素子を作製する方法であり、2つの態様を有する。
以下、各態様に分けて説明する。
1.第1態様
本態様の液晶表示素子の製造方法は、上記第1実施態様の多面付けTFT基板を調製する多面付けTFT基板調製工程と、基板上に共通電極が形成された共通電極基板を調製する共通電極基板調製工程と、上記多面付けTFT基板および上記共通電極基板の対向面上にそれぞれ配向膜を形成する配向膜形成工程と、上記多面付けTFT基板の配向膜または上記共通電極基板の配向膜上に、強誘電性液晶を塗布する液晶塗布工程と、上記液晶塗布工程後、上記多面付けTFT基板および上記共通電極基板を、上記各配向膜が対向するように配置して貼り合せる基板貼り合せ工程と、上記強誘電性液晶を当該強誘電性液晶がネマチック相または等方相を示す温度に加温した後、上記多面付けTFT基板のゲート線用取り出し端子およびソース線用取り出し端子にそれぞれ異なる電圧を印加したまま上記強誘電性液晶を徐々に冷却する液晶配向工程と、上記液晶配向工程後、上記多面付けTFT基板のTFT基板領域毎に切断する切断工程とを有することを特徴とするものである。
本態様の液晶表示素子の製造方法について図面を参照しながら説明する。
まず、図1に例示するように、基板2上に、一般的な方法にしたがって、表示領域9を構成するゲート線4x、ソース線4y、TFTおよび画素電極等と、ゲート線用接続配線10aと、ソース線用接続配線10bと、ゲート線用ショートバー5と、ソース線用ショートバー6と、ゲート線用取り出し端子7と、ソース線用取り出し端子8とを形成する。これにより、多面付けTFT基板1を得る。
次に、図11(a)に例示するように、多面付けTFT基板1の対向面上に、配向膜17を形成する。この際、図12に例示するように、多面付けTFT基板1の表示領域9に配向膜17を形成する。また、基板22上に共通電極23が形成された共通電極基板21の対向面上にも、配向膜24を形成する。
そして、図示しないが、多面付けTFT基板のTFT基板領域毎に、多面付けTFT基板のゲート線用取り出し端子と、共通電極基板の共通電極とを接続するための、銀ペーストを点状に塗布する。
次に、図示しないが、強誘電性液晶をこの強誘電性液晶が等方相を示す温度(例えば100℃)まで加温し、インクジェット装置を用いて、多面付けTFT基板1の配向膜17上に強誘電性液晶を等方相の状態で塗布する。この際、多面付けTFT基板の表示領域に強誘電性液晶を塗布する。
このとき、強誘電性液晶は等方相を示す温度(例えば100℃)に加温されているが、多面付けTFT基板は室温に設定されているので、強誘電性液晶の温度よりも多面付けTFT基板の温度の方が低い。そのため、多面付けTFT基板の配向膜上に塗布された強誘電性液晶は冷やされる。強誘電性液晶は、等方相およびネマチック相では粘度が低く、流動性を持っているが、(カイラル)スメクチック相では急激に粘度が高くなり、流動性がほとんどなくなる。よって、多面付けTFT基板の配向膜上に塗布された強誘電性液晶は冷やされて、粘度が高くなり、流動しなくなる。
次いで、図12に例示するように、多面付けTFT基板1の表示領域9の周縁部にシール剤41を塗布する。この際、シール剤を強誘電性液晶が塗布された領域の外周を囲むように塗布する。
次に、図示しないが、強誘電性液晶が塗布された多面付けTFT基板を、強誘電性液晶が等方相を示す温度(例えば110℃)まで加熱する。これにより、多面付けTFT基板の配向膜上に塗布された強誘電性液晶は加温されて、等方相の状態となり、粘度が低くなって配向膜上を流動する。
次いで、図示しないが、強誘電性液晶が塗布された多面付けTFT基板と、共通電極基板とを、それぞれの配向膜の配向処理方向が略平行になるように対向させる。この際、多面付けTFT基板だけでなく、共通電極基板も、強誘電性液晶が等方相を示す温度(例えば110℃)まで加熱する。
次に、図11(b)に示すように、多面付けTFT基板1および共通電極基板21の間を十分減圧し、減圧下で多面付けTFT基板1および共通電極基板21を重ね合わせ、所定の圧力を加えてセルギャップを均一にする。続いて、常圧に戻すことで、多面付けTFT基板1および共通電極基板21の間にさらに圧力を加える。次いで、シール剤を硬化させ、多面付けTFT基板1および共通電極基板21を接着させる。これにより、多面取り用液晶セルを得る。
この多面取り液晶セルでは、上記の銀ペーストにより、多面付けTFT基板のゲート線用取り出し端子と、共通電極基板の共通電極とが接続された状態となっている。そして、ゲート線用取り出し端子およびソース線用取り出し端子にそれぞれ異なる電圧を印加する。
このとき、例えば、ゲート線用取り出し端子の電圧に対して、ソース線用取り出し端子の電圧が相対的に低くなるように、ゲート線用取り出し端子およびソース線用取り出し端子にそれぞれ異なる電圧を印加する。そうすると、ゲート線用取り出し端子は共通電極に接続されており、またソース線用取り出し端子はソース線に接続され、ソース電極から半導体層およびドレイン電極を介して画素電極に接続されているので、共通電極の電圧に対して、画素電極の電圧が相対的に低くなる。そのため、図5に例示するように、印加電圧の極性の影響によって、液晶分子30の自発分極Psの正極(+)は画素電極12側を向くようになる。
続いて、ゲート線用取り出し端子およびソース線用取り出し端子にそれぞれ異なる電圧を印加したまま、強誘電性液晶を徐々に冷却することにより、強誘電性液晶を配向させる。
次に、図示しないが、多面取り用液晶セルを、多面付けTFT基板のTFT基板領域毎に切断することにより、個々の液晶表示素子が得られる。
本態様に用いられる多面付けTFT基板においては、従来のショートリングとは異なり、ゲート線用ショートバーおよびソース線用ショートバーが連結されておらず、ゲート線およびソース線が絶縁されているため、ゲート線およびソース線に独立して電圧を印加することができる。したがって、液晶配向工程にて、例えば、ゲート線用取り出し端子と共通電極とを接続して、ゲート線用取り出し端子およびソース線用取り出し端子にそれぞれ異なる電圧を同時に印加することにより、TFT基板領域毎に切断することなく、各TFT基板領域における画素電極および共通電極にそれぞれ異なる電圧を同時に印加することが可能である。このように本態様によれば、多面付けTFT基板を用いて作製した多面取り用液晶セルをそのまま使用して、TFT基板領域毎に切断することなく、電解印加徐冷法により強誘電性液晶を配向させることができ、製造コストを大幅に削減することが可能である。
また本態様においては、上記のように、ゲート線用取り出し端子と共通電極とを接続して、ゲート線用取り出し端子およびソース線用取り出し端子にそれぞれ異なる電圧を同時に印加するのではなく、ゲート線用取り出し端子とソース線用取り出し端子と共通電極用取り出し端子とにそれぞれ異なる電圧を同時に印加することによっても、TFT基板領域毎に切断することなく、各TFT基板領域における画素電極および共通電極にそれぞれ異なる電圧を同時に印加することが可能である。
まず、図1に例示するように、基板2上に、一般的な方法にしたがって、表示領域9を構成するゲート線4x、ソース線4y、TFTおよび画素電極等と、ゲート線用接続配線10aと、ソース線用接続配線10bと、ゲート線用ショートバー5と、ソース線用ショートバー6と、ゲート線用取り出し端子7と、ソース線用取り出し端子8とを形成する。これにより、多面付けTFT基板1を得る。次に、図11(a)に例示するように、多面付けTFT基板1の対向面上に、配向膜17を形成する。この際、図12に例示するように、多面付けTFT基板1の表示領域9に配向膜17を形成する。
また、図11(a)に例示するように、基板22上に、一般的な方法にしたがって、共通電極23と、この共通電極23から引き出された共通電極用取り出し端子(図示なし)とを形成し、共通電極基板21を得る。次いで、共通電極基板21の対向面上にも配向膜24を形成する。
次に、上記の場合と同様に、多面取り用液晶セルを作製する。
そして、ゲート線用取り出し端子とソース線用取り出し端子と共通電極用取り出し端子とにそれぞれ異なる電圧を印加する。このとき、ゲート線用取り出し端子の電圧およびソース線用取り出し端子の電圧の電位差が所定の値以上となるように、ゲート線用取り出し端子およびソース線用取り出し端子にそれぞれ異なる電圧を印加する。そうすると、ゲート電極およびソース電極の電位差が所定の値以上となるので、TFT素子11がON状態となり、ソース電極14bから半導体層15およびドレイン電極14cを介して画素電極12に電圧が印加される。またこのとき、例えば、共通電極用取り出し端子の電圧に対して、ソース線用取り出し端子の電圧が相対的に低くなるように、共通電極用取り出し端子およびソース線用取り出し端子にそれぞれ異なる電圧を印加する。そうすると、共通電極の電圧に対して、画素電極の電圧が相対的に低くなる。そのため、図5に例示するように、印加電圧の極性の影響によって、液晶分子30の自発分極Psの正極(+)は画素電極12側を向くようになる。
続いて、ゲート線用取り出し端子とソース線用取り出し端子と共通電極用取り出し端子とにそれぞれ異なる電圧を印加したまま、強誘電性液晶を徐々に冷却することにより、強誘電性液晶を配向させる。
次に、図示しないが、多面取り用液晶セルを、多面付けTFT基板のTFT基板領域毎に切断することにより、個々の液晶表示素子が得られる。
本態様に用いられる多面付けTFT基板においては、ゲート線およびソース線が絶縁されているため、ゲート線およびソース線に独立して電圧を印加することができる。したがって、液晶配向工程にて、ゲート線用取り出し端子とソース線用取り出し端子と共通電極用取り出し端子とにそれぞれ異なる電圧を同時に印加することにより、TFT基板領域毎に切断することなく、各TFT基板領域における画素電極および共通電極にそれぞれ異なる電圧を同時に印加することが可能である。このように本態様によれば、上記の場合と同様に、多面付けTFT基板を用いて作製した多面取り用液晶セルをそのまま使用して、TFT基板領域毎に切断することなく、電解印加徐冷法により強誘電性液晶を配向させることができ、製造コストを大幅に削減することが可能である。
以下、本態様の液晶表示素子の製造方法における各工程について説明する。
(1)TFT基板調製工程
本態様における多面付けTFT基板調製工程は、上記第1実施態様の多面付けTFT基板を調製する工程である。
多面付けTFT基板を構成する、ゲート線、ソース線、ゲート線用ショートバー、ソース線用ショートバー、ゲート線用接続配線、ソース線用接続配線、TFT、画素電極等の各部材の形成方法としては、一般的な方法を用いることができる。
また、上記多面付けTFT基板を調製する際に、上記第2実施態様の多面付けTFT基板の接続部を切断除去することにより、上記第1実施態様の多面付けTFT基板を得ることもできる。
なお、多面付けTFT基板については、上記「A.多面付けTFT基板」の第1実施態様に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
(2)共通電極基板調製工程
本態様における共通電極基板調製工程は、基板上に共通電極が形成された共通電極基板を調製する工程である。
共通電極の形成材料、厚み等としては、一般的な共通電極と同様のものとすることができる。
また、共通電極の形成方法としては、一般的な方法を用いることができる。
共通電極基板調製工程おいては、基板上に共通電極を形成する前に、基板上に着色層を形成してもよい。着色層を形成した場合には、着色層によってカラー表示を実現することができるカラーフィルタ方式の液晶表示素子を得ることができる。
着色層の形成方法としては、一般的なカラーフィルタにおける着色層を形成する方法を用いることができ、例えば、顔料分散法(カラーレジスト法、エッチング法)、印刷法、インクジェット法などを用いることができる。
(3)配向膜形成工程
本態様における配向膜形成工程は、多面付けTFT基板および共通電極基板の対向面上にそれぞれ配向膜を形成する工程である。
配向膜形成工程においては、単一層の配向膜を形成してもよく、また反応性液晶層用配向膜を形成し、この反応性液晶層用配向膜上に反応性液晶を固定化してなる反応性液晶層を形成してもよい。以下、これらの2つの態様に分けて説明する。
(i)第1の態様
本態様の配向膜形成工程は、配向膜として単一層の配向膜を形成する工程である。
配向膜の形成方法としては、強誘電性液晶を配向させることが可能な配向膜が得られる方法であれば特に限定されるものではない。例えば、ラビング処理、光配向処理等を施して配向膜を形成することができる。
配向膜が光配向処理されたものである場合には、強誘電性液晶の配向を効果的に制御することができる。また、光配向処理は、非接触配向処理であることから静電気や塵の発生がなく、定量的な配向処理の制御ができる点で有用である。
一方、ラビング処理では、光配向処理に比べて、高いプレチルト角を実現することができるので、ジグザグ欠陥やヘアピン欠陥の発生を効果的に抑制することができる。ここで、一般に、SmA相を経由する相系列を有する強誘電性液晶は、相変化の過程において、スメクチック層の層間隔が縮まり、その体積変化を補償するためにスメクチック層が曲がったシェブロン構造を有し、この曲げの方向によって液晶分子の長軸方向が異なるドメインが形成され、その境界面にジグザグ欠陥やヘアピン欠陥と呼ばれる配向欠陥が発生しやすい。このジグザグ欠陥やヘアピン欠陥の発生を防ぐためには、プレチルト角を大きくすることが有効である。
以下、光配向処理およびラビング処理について説明する。
a.光配向処理
光配向処理を施して配向膜を形成する場合には、膜に偏光を制御した光を照射し、光励起反応(分解、異性化、二量化)を生じさせて膜に異方性を付与することにより、配向膜を形成することができる。
本発明に用いられる光配向性材料としては、光を照射して光励起反応を生じることにより、強誘電性液晶を配向させる効果(光配列性:photoaligning)を有するものであれば特に限定されるものではない。この光配向性材料としては、大きく、光反応を生じることにより配向膜に異方性を付与する光反応型材料と、光異性化反応を生じることにより配向膜に異方性を付与する光異性化型材料とに分けることができる。
以下、光反応型材料および光異性化型材料について説明する。
(光反応型材料)
本発明に用いられる光反応型材料としては、光反応を生じることにより配向膜に異方性を付与するものであれば特に限定されるものではないが、光二量化反応または光分解反応を生じることにより配向膜に異方性を付与するものであることが好ましい。
ここで、光二量化反応とは、光照射により偏光方向に配向した反応部位がラジカル重合して分子2個が重合する反応をいい、この反応により偏光方向の配向を安定化し、配向膜に異方性を付与することができるものである。また、光分解反応とは、光照射により偏光方向に配向したポリイミドなどの分子鎖を分解する反応をいい、この反応により偏光方向に垂直な方向に配向した分子鎖を残し、配向膜に異方性を付与することができるものである。中でも、露光感度が高く、材料選択の幅が広いことから、光二量化反応により配向膜に異方性を付与する光二量化型材料を用いることがより好ましい。
光二量化型材料としては、光二量化反応により配向膜に異方性を付与することができるものであれば特に限定されるものではないが、ラジカル重合性の官能基を有し、かつ、偏光方向により吸収を異にする二色性を有する光二量化反応性化合物を含むことが好ましい。偏光方向に配向した反応部位をラジカル重合することにより、光二量化反応性化合物の配向が安定化し、配向膜に容易に異方性を付与することができるからである。
このような特性を有する光二量化反応性化合物としては、側鎖としてケイ皮酸エステル、クマリン、キノリン、カルコン基およびシンナモイル基から選ばれる少なくとも1種の反応部位を有する二量化反応性ポリマーを挙げることができる。
これらの中でも光二量化反応性化合物としては、側鎖としてケイ皮酸エステル、クマリンまたはキノリンのいずれかを含む二量化反応性ポリマーであることが好ましい。偏光方向に配向したα、β不飽和ケトンの二重結合が反応部位となってラジカル重合することにより、配向膜に容易に異方性を付与することができるからである。
上記二量化反応性ポリマーの主鎖としては、ポリマー主鎖として一般に知られているものであれば特に限定されるものではないが、芳香族炭化水素基などの、上記側鎖の反応部位同士の相互作用を妨げるようなπ電子を多く含む置換基を有していないものであることが好ましい。
上記二量化反応性ポリマーの重量平均分子量は、特に限定されるものではないが、5,000〜40,000の範囲内であることが好ましく、10,000〜20,000の範囲内であることがより好ましい。なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)法により測定することができる。上記二量化反応性ポリマーの重量平均分子量が小さすぎると、配向膜に適度な異方性を付与することができない場合がある。逆に、大きすぎると、配向膜形成時の塗工液の粘度が高くなり、均一な塗膜を形成しにくい場合がある。
二量化反応性ポリマーとしては、下記式(1)で表される化合物を例示することができる。
上記式(1)において、M11およびM12は、それぞれ独立して、単重合体または共重合体の単量体単位を表す。例えば、エチレン、アクリレート、メタクリレート、2−クロロアクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、2−クロロアクリルアミド、スチレン誘導体、マレイン酸誘導体、シロキサンなどが挙げられる。M12としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、メタクリレート、メチルメタクリレート、ヒドロキシアルキルアクリレートまたはヒドロキシアルキルメタクリレートであってもよい。xおよびyは、共重合体とした場合の各単量体単位のモル比を表すものであり、それぞれ、0<x≦1、0≦y<1であり、かつ、x+y=1を満たす数である。nは4〜30,000の整数を表す。D1およびD2は、スペーサー単位を表す。
R1は−A1−(Z1−B1)z−Z2−で表される基であり、R2は−A1−(Z1−B1)z−Z3−で表される基である。ここで、A1およびB1は、それぞれ独立して、共有単結合、ピリジン−2,5−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイル、1,4−シクロヘキシレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、または置換基を有していてもよい1,4−フェニレンを表す。また、Z1およびZ2は、それぞれ独立して、共有単結合、−CH2−CH2−、−CH2O−、−OCH2−、−CONR−、−RNCO−、−COO−または−OOC−を表す。Rは、水素原子または低級アルキル基であり、Z3は、水素原子、置換基を有していてもよい、炭素数1〜12のアルキルまたはアルコキシ、シアノ、ニトロ、ハロゲンである。zは、0〜4の整数である。E1は、光二量化反応部位を表し、例えば、ケイ皮酸エステル、クマリン、キノリン、カルコン基、シンナモイル基などが挙げられる。jおよびkは、それぞれ独立して、0または1である。
このような二量化反応性ポリマーとしては、具体的に下記式(2)〜(5)で表される化合物を挙げることができる。
また、上記二量化反応性ポリマーとして、より具体的には下記式(6)〜(9)で表される化合物を挙げることができる。
光二量化反応性化合物としては、上述した化合物の中から、要求特性に応じて光二量化反応部位や置換基を種々選択することができる。また、光二量化反応性化合物は、1種単独でも2種以上を組み合わせて用いることもできる。
また、光二量化型材料は、上記光二量化反応性化合物のほか、配向膜の光配列性を妨げない範囲内で添加剤を含んでいてもよい。上記添加剤としては、重合開始剤、重合禁止剤などが挙げられる。
重合開始剤または重合禁止剤は、一般に公知の化合物の中から、光二量化反応性化合物の種類によって適宜選択して用いればよい。重合開始剤または重合禁止剤の添加量は、光二量化反応性化合物に対し、0.001質量%〜20質量%の範囲内であることが好ましく、0.1質量%〜5質量%の範囲内であることがより好ましい。重合開始剤または重合禁止剤の添加量が小さすぎると重合が開始(禁止)されない場合があり、逆に大きすぎると、反応が阻害される場合があるからである。
一方、光分解反応を利用した光分解型材料としては、例えば日産化学工業(株)製のポリイミド「RN1199」などを挙げることができる。
光反応型材料が光反応を生じる光の波長領域は、紫外光域の範囲内、すなわち10nm〜400nmの範囲内であることが好ましく、250nm〜380nmの範囲内であることがより好ましい。
(光異性化型材料)
本発明に用いられる光異性化型材料としては、光異性化反応を生じることにより配向膜に異方性を付与するものであれば特に限定されるものではないが、光異性化反応を生じることにより配向膜に異方性を付与する光異性化反応性化合物を含むものであることが好ましい。このような光異性化反応性化合物を含むことにより、光照射により、複数の異性体のうち安定な異性体が増加し、それにより配向膜に容易に異方性を付与することができるからである。
光異性化反応性化合物としては、上記のような特性を有する材料であれば特に限定されるものではないが、偏光方向により吸収を異にする二色性を有し、かつ、光照射により光異性化反応を生じるものであることが好ましい。このような特性を有する光異性化反応性化合物の偏光方向に配向した反応部位の異性化を生じさせることにより、配向膜に容易に異方性を付与することができるからである。
また、光異性化反応性化合物が生じる光異性化反応としては、シス−トランス異性化反応であることが好ましい。光照射によりシス体またはトランス体のいずれかの異性体が増加し、それにより配向膜に異方性を付与することができるからである。
このような光異性化反応性化合物としては、単分子化合物、または、光もしくは熱により重合する重合性モノマーを挙げることができる。これらは用いられる強誘電性液晶の種類に応じて適宜選択すればよいが、光照射により配向膜に異方性を付与した後、ポリマー化することにより、その異方性を安定化することができることから、重合性モノマーを用いることが好ましい。このような重合性モノマーの中でも、配向膜に異方性を付与した後、その異方性を良好な状態に維持したまま容易にポリマー化できることから、アクリレートモノマー、メタクリレートモノマーであることが好ましい。
上記重合性モノマーは、単官能のモノマーであっても、多官能のモノマーであってもよいが、ポリマー化による配向膜の異方性がより安定なものとなることから、2官能のモノマーであることが好ましい。
このような光異性化反応性化合物としては、具体的には、アゾベンゼン骨格やスチルベン骨格などのシス−トランス異性化反応性骨格を有する化合物を挙げることができる。
この場合に、分子内に含まれるシス−トランス異性化反応性骨格の数は、1つであっても2つ以上であってもよいが、強誘電性液晶の配向制御が容易となることから、2つであることが好ましい。
上記シス−トランス異性化反応性骨格は、液晶分子との相互作用をより高めるために置換基を有していてもよい。置換基は、液晶分子との相互作用を高めることができ、かつ、シス−トランス異性化反応性骨格の配向を妨げないものであれば特に限定されるものではなく、例えば、カルボキシル基、スルホン酸ナトリウム基、水酸基などが挙げられる。これらの構造は、用いられる強誘電性液晶の種類に応じて、適宜選択することができる。
また、光異性化反応性化合物としては、分子内にシス−トランス異性化反応性骨格以外にも、液晶分子との相互作用をより高められるように、芳香族炭化水素基などのπ電子が多く含まれる基を有していてもよく、シス−トランス異性化反応性骨格と芳香族炭化水素基は、結合基を介して結合していてもよい。結合基は、液晶分子との相互作用を高められるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、−COO−、−OCO−、−O−、−C≡C−、−CH2−CH2−、−CH2O−、−OCH2−などが挙げられる。
なお、光異性化反応性化合物として、重合性モノマーを用いる場合には、上記シス−トランス異性化反応性骨格を、側鎖として有していることが好ましい。上記シス−トランス異性化反応性骨格を側鎖として有していることにより、配向膜に付与される異方性の効果がより大きなものとなり、強誘電性液晶の配向制御に特に適したものとなるからである。この場合に、前述した分子内に含まれる芳香族炭化水素基や結合基は、液晶分子との相互作用が高められるように、シス−トランス異性化反応性骨格と共に、側鎖に含まれていることが好ましい。
また、上記重合性モノマーの側鎖には、シス−トランス異性化反応性骨格が配向しやすくなるように、アルキレン基などの脂肪族炭化水素基をスペーサーとして有していてもよい。
上述したような単分子化合物または重合性モノマーの光異性化反応性化合物の中でも、本発明に用いられる光異性化反応性化合物としては、分子内にアゾベンゼン骨格を有する化合物であることが好ましい。アゾベンゼン骨格は、π電子を多く含むため、液晶分子との相互作用が高く、強誘電性液晶の配向制御に特に適しているからである。
以下、アゾベンゼン骨格が光異性化反応を生じることにより配向膜に異方性を付与できる理由について説明する。まず、アゾベンゼン骨格に、直線偏光紫外光を照射すると、下記式に示されるように、分子長軸が偏光方向に配向しているトランス体のアゾベンゼン骨格が、シス体に変化する。
アゾベンゼン骨格のシス体は、トランス体に比べて化学的に不安定であるため、熱的にまたは可視光を吸収してトランス体に戻るが、このとき、上記式の左のトランス体になるか右のトランス体になるかは同じ確率で起こる。そのため、紫外光を吸収し続けると、右側のトランス体の割合が増加し、アゾベンゼン骨格の平均配向方向は紫外光の偏光方向に対して垂直になる。本発明においては、この現象を利用することにより、アゾベンゼン骨格の配向方向を揃え、配向膜に異方性を付与し、その膜上の液晶分子の配向を制御することができるのである。
このような分子内にアゾベンゼン骨格を有する化合物のうち、単分子化合物としては、例えば、下記式(10)で表される化合物を挙げることができる。
上記式(10)において、R41は各々独立して、ヒドロキシ基を表す。R42は−(A41−B41−A41)m−(D41)n−で表される連結基を表し、R43は(D41)n−(A41−B41−A41)m−で表される連結基を表す。ここで、A41は二価の炭化水素基を表し、B41は−O−、−COO−、−OCO−、−CONH−、−NHCO−、−NHCOO−または−OCONH−を表し、mは0〜3の整数を表す。D41は、mが0のとき二価の炭化水素基を表し、mが1〜3の整数のとき−O−、−COO−、−OCO−、−CONH−、−NHCO−、−NHCOO−または−OCONH−を表し、nは0または1を表す。R44は各々独立して、ハロゲン原子、カルボキシ基、ハロゲン化メチル基、ハロゲン化メトキシ基、シアノ基、ニトロ基、メトキシ基またはメトキシカルボニル基を表す。ただし、カルボキシ基はアルカリ金属と塩を形成していてもよい。R45は各々独立して、カルボキシ基、スルホ基、ニトロ基、アミノ基またはヒドロキシ基を表す。ただし、カルボキシ基またはスルホ基はアルカリ金属と塩を形成していてもよい。
上記式(10)で表される化合物の具体例としては、下記式(11)〜(14)で表される化合物を挙げることができる。
また、上記アゾベンゼン骨格を側鎖として有する重合性モノマーとしては、例えば、下記式(15)で表される化合物を挙げることができる。
上記式(15)において、R51は各々独立して、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリルアミド基、ビニルオキシ基、ビニルオキシカルボニル基、ビニルイミノカルボニル基、ビニルイミノカルボニルオキシ基、ビニル基、イソプロペニルオキシ基、イソプロペニルオキシカルボニル基、イソプロペニルイミノカルボニル基、イソプロペニルイミノカルボニルオキシ基、イソプロペニル基またはエポキシ基を表す。R52は−(A51−B51−A51)m−(D51)n−で表される連結基を表し、R53は(D51)n−(A51−B51−A51)m−で表される連結基を表す。ここで、A51は二価の炭化水素基を表し、B51は−O−、−COO−、−OCO−、−CONH−、−NHCO−、−NHCOO−または−OCONH−を表し、mは0〜3の整数を表す。D51は、mが0のとき二価の炭化水素基を表し、mが1〜3の整数のとき−O−、−COO−、−OCO−、−CONH−、−NHCO−、−NHCOO−または−OCONH−を表し、nは0または1を表す。R54は各々独立して、ハロゲン原子、カルボキシ基、ハロゲン化メチル基、ハロゲン化メトキシ基、シアノ基、ニトロ基、メトキシ基またはメトキシカルボニル基を表す。ただし、カルボキシ基はアルカリ金属と塩を形成していてもよい。R55は各々独立して、カルボキシ基、スルホ基、ニトロ基、アミノ基またはヒドロキシ基を表す。ただし、カルボキシ基またはスルホ基はアルカリ金属と塩を形成していてもよい。
上記式(15)で表される化合物の具体例としては、下記式(16)〜(19)で表される化合物を挙げることができる。
本発明においては、このような光異性化反応性化合物の中から、要求特性に応じて、シス−トランス異性化反応性骨格や置換基を種々選択することができる。なお、これらの光異性化反応性化合物は、1種単独でも2種以上を組み合わせて用いることもできる。
また、光異性化型材料は、上記光異性化反応性化合物のほか、配向膜の光配列性を妨げない範囲内で添加剤を含んでいてもよい。上記光異性化反応性化合物として重合性モノマーを用いる場合には、添加剤としては、重合開始剤、重合禁止剤などが挙げられる。
重合開始剤または重合禁止剤は、一般に公知の化合物の中から、光異性化反応性化合物の種類によって適宜選択して用いればよい。重合開始剤または重合禁止剤の添加量は、光異性化反応性化合物に対し、0.001質量%〜20質量%の範囲内であることが好ましく、0.1質量%〜5質量%の範囲内であることがより好ましい。重合開始剤または重合禁止剤の添加量が小さすぎると重合が開始(禁止)されない場合があり、逆に大きすぎると、反応が阻害される場合があるからである。
光異性化型材料が光異性化反応を生じる光の波長領域は、紫外光域の範囲内、すなわち10nm〜400nmの範囲内であることが好ましく、250nm〜380nmの範囲内であることがより好ましい。
(光配向処理方法)
次に、光配向処理方法について説明する。まず、多面付けTFT基板および共通電極基板の対向面上に、上述の光配向性材料を有機溶剤で希釈した配向膜形成用塗工液を塗布して膜を形成し、乾燥させる。
配向膜形成用塗工液中の光二量化反応性化合物または光異性化反応性化合物の含有量は、0.05質量%〜10質量%の範囲内であることが好ましく、0.2質量%〜2質量%の範囲内であることがより好ましい。含有量が上記範囲より少ないと、配向膜に適度な異方性を付与することが困難となり、逆に含有量が上記範囲より多いと、塗工液の粘度が高くなるので均一な塗膜を形成しにくくなるからである。
配向膜形成用塗工液の塗布方法としては、例えば、スピンコート法、ロールコート法、ロッドバーコート法、スプレーコート法、エアナイフコート法、スロットダイコート法、ワイヤーバーコート法、インクジェット法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法などを用いることができる。
上記配向膜形成用塗工液を塗布して得られる膜の厚みは、1nm〜1000nmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは3nm〜100nmの範囲内である。膜の厚みが上記範囲より薄いと十分な光配列性を得ることができない可能性があり、逆に膜の厚みが上記範囲より厚いとコスト的に不利になる場合があるからである。
得られた膜は、偏光を制御した光を照射することにより、光励起反応を生じさせて異方性を付与することができる。照射する光の波長領域は、用いられる光配向性材料に応じて適宜選択すればよいが、紫外光域の範囲内、すなわち100nm〜400nmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは250nm〜380nmの範囲内である。また、偏光方向は、上記光励起反応を生じさせることができるものであれば特に限定されるものではない。
さらに、光配向性材料として、上記の光異性化反応性化合物の中でも重合性モノマーを用いた場合には、光配向処理を行った後、加熱することにより、ポリマー化し、配向膜に付与された異方性を安定化することができる。
b.ラビング処理
膜にラビング処理を施して配向膜を形成する場合には、多面付けTFT基板および共通電極基板の対向面上に後述の材料を塗布して膜を形成し、この膜をラビング布で一定方向に擦ることにより膜に異方性を付与して、配向膜を形成することができる。
ラビング膜に用いられる材料としては、ラビング処理により膜に異方性を付与することができるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリビニルアルコール、ポリウレタン等を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記材料の塗布方法としては、例えば、ロールコート法、ロッドバーコート法、スロットダイコート法、ワイヤーバーコート法、インクジェット法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法などを用いることができる。
また、ラビング膜の厚みは、1nm〜1000nm程度で設定され、好ましくは50nm〜100nmの範囲内である。
ラビング布としては、例えば、ナイロン樹脂、ビニル樹脂、レーヨン、綿等の繊維で構成されるものを用いることができる。例えば、このようなラビング布を巻き付けたドラムを回転させながら上記の材料を用いた膜の表面に接触させることにより、膜表面に微細な溝が一方向に形成され、膜に異方性が付与される。
(ii)第2の態様
本態様の配向膜形成工程は、まず反応性液晶層用膜を形成し、この反応性液晶層用膜に配向処理を施して反応性液晶層用配向膜を形成して、次いで反応性液晶層用配向膜上に反応性液晶を固定化してなる反応性液晶層を形成する工程である。すなわち、配向膜として、反応性液晶層用配向膜および反応性液晶層を積層形成する。
反応性液晶層用配向膜上に反応性液晶層を形成する際には、反応性液晶層用配向膜によって反応性液晶を配向させ、例えば紫外線を照射して反応性液晶を重合させることにより反応性液晶の配向状態を固定化することができる。そのため、反応性液晶層に反応性液晶層用配向膜の配向規制力を付与することができ、反応性液晶層を強誘電性液晶を配向させるための配向膜として作用させることができる。また、反応性液晶は固定化されているため、温度等の影響を受けないという利点を有する。さらに、反応性液晶は、強誘電性液晶と構造が比較的類似しており、強誘電性液晶との相互作用が強くなるため、単一層の配向膜を用いた場合よりも効果的に強誘電性液晶の配向を制御することができる。
なお、反応性液晶層用配向膜については、上記第1の態様に記載の配向膜と同様であるので、ここでの説明は省略する。
本発明に用いられる反応性液晶としては、ネマチック相を発現するものであることが好ましい。ネマチック相は、液晶相の中でも配向制御が比較的容易であるからである。
また、反応性液晶は、重合性液晶材料を含有することが好ましい。これにより、反応性液晶の配向状態を固定化することができるからである。重合性液晶材料としては、重合性液晶モノマー、重合性液晶オリゴマー、および重合性液晶ポリマーのいずれも用いることができるが、中でも、重合性液晶モノマーが好適に用いられる。重合性液晶モノマーは、他の重合性液晶材料、すなわち重合性液晶オリゴマーや重合性液晶ポリマーと比較して、より低温で配向が可能であり、かつ配向に際しての感度も高く、容易に配向させることができるからである。
重合性液晶モノマーとしては、重合性官能基を有する液晶モノマーであれば特に限定されるものではなく、例えば、モノアクリレートモノマー、ジアクリレートモノマー等が挙げられる。また、これらの重合性液晶モノマーは単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
モノアクリレートモノマーとしては、下記式(20),(21)で表される化合物を例示することができる。
上記式(20),(21)において、A、B、D、EおよびFはベンゼン、シクロヘキサンまたはピリミジンを表し、これらはハロゲン等の置換基を有していてもよい。また、AおよびB、あるいはDおよびEは、アセチレン基、メチレン基、エステル基等の結合基を介して結合していてもよい。M1およびM2は、水素原子、炭素数3〜9のアルキル基、炭素数3〜9のアルコキシカルボニル基、またはシアノ基のいずれであってもよい。さらに、分子鎖末端のアクリロイルオキシ基とAまたはDとは、炭素数3〜6のアルキレン基等のスペーサーを介して結合していてもよい。
また、ジアクリレートモノマーとしては、例えば下記式(22)に示す化合物を挙げることができる。
上記式(22)において、Z31およびZ32は、各々独立して直接結合している−COO−、−OCO−、−O−、−CH2CH2−、−CH=CH−、−C≡C−、−OCH2−、−CH2O−、−CH2CH2COO−、−OCOCH2CH2−を表し、R31、R32およびR33は、各々独立して水素または炭素数1〜5のアルキルを表す。また、kおよびmは0または1を表し、nは2〜8の範囲内の整数を表す。R31、R32およびR33は、k=1の場合、各々独立して炭素数1〜5のアルキルであり、k=0の場合、各々独立して水素または炭素数1〜5のアルキルであることが好ましい。このR31、R32およびR33は、互いに同じであってもよい。
また、上記式(22)で表される化合物の具体例としては、下記式(23)に示す化合物を挙げることができる。
上記式(23)において、Z21およびZ22は、各々独立して直接結合している−COO−、−OCO−、−O−、−CH2CH2−、−CH=CH−、−C≡C−、−OCH2−、−CH2O−、−CH2CH2COO−、−OCOCH2CH2−を表す。また、mは0または1を表し、nは2〜8の範囲内の整数を表す。
また、ジアクリレートモノマーとしては、例えば下記式(24),(25)に示す化合物も挙げることができる。
上記式(24),(25)において、XおよびYは、水素、炭素数1〜20のアルキル、炭素数1〜20のアルケニル、炭素数1〜20のアルキルオキシ、炭素数1〜20のアルキルオキシカルボニル、ホルミル、炭素数1〜20のアルキルカルボニル、炭素数1〜20のアルキルカルボニルオキシ、ハロゲン、シアノまたはニトロを表す。また、mは2〜20の範囲内の整数を表す。さらに、Xは、炭素数1〜20のアルキルオキシカルボニル、メチルまたは塩素であることが好ましく、中でも炭素数1〜20のアルキルオキシカルボニル、特にCH3(CH2)4OCOであることが好ましい。
上記の中でも、上記式(22),(24)で表される化合物が好ましく用いられる。特に、上記式(24)で表される化合物が好適である。具体的には、旭電化工業株式会社製の「アデカキラコール PLC-7183」、「アデカキラコール PLC-7209」、「アデカキラコール PLC-7218」などを挙げることができる。
また、重合性液晶モノマーの中でも、ジアクリレートモノマーが好適である。ジアクリレートモノマーは、配向状態を良好に維持したまま容易に重合させることができるからである。
上述の重合性液晶モノマーは、それ自体がネマチック相を発現するものでなくてもよい。これらの重合性液晶モノマーは、上述したように2種以上を混合して用いてもよいものであり、これらを混合した組成物すなわち反応性液晶が、ネマチック相を発現するものであればよいからである。
さらに、必要に応じて、上記反応性液晶に光重合開始剤や重合禁止剤等を添加してもよい。例えば、電子線照射により重合性液晶材料を重合させる際には、光重合開始剤が不要な場合はあるが、一般的に用いられている例えば紫外線照射による重合の場合においては、通常光重合開始剤が重合促進のために用いられる。光重合開始剤としては、例えば、特開2005−258428号広報に記載されているような光重合開始剤を用いることができる。また、光重合開始剤の他に増感剤を、本発明の目的が損なわれない範囲で添加することも可能である。
また、光重合開始剤の添加量としては、0.01〜20質量%程度、好ましくは0.1〜10質量%、より好ましくは0.5〜5質量%の範囲で上記反応性液晶に添加することができる。
本発明においては、反応性液晶層用配向膜上に、上記反応性液晶を含有する反応性液晶層形成用塗工液を塗布し、配向処理を行い、反応性液晶の配向状態を固定化することにより反応性液晶層を形成することができる。また、ドライフィルム等を予め形成し、これを反応性液晶層用配向膜上に積層することにより反応性液晶層を形成してもよい。中でも、工程が簡便である点で、反応性液晶層形成用塗工液を塗布する方法が好ましい。
反応性液晶層形成用塗工液は、反応性液晶を溶媒に溶解もしくは分散させることにより調製することができる。
反応性液晶層形成用塗工液に用いられる溶媒としては、上記反応性液晶等を溶解もしくは分散させることができ、かつ反応性液晶層用配向膜の配向能を阻害しないものであれば特に限定されるものではない。このような溶媒としては、例えば、特開2005−258428号広報に記載されているような溶媒を用いることができる。溶媒は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、単一種の溶媒を使用しただけでは、上記反応性液晶等の溶解性が不十分であったり、上述したように反応性液晶層用配向膜が侵食されたりする場合がある。この場合には、2種以上の溶媒を混合使用することにより、この不都合を回避することができる。上記の溶媒の中で、単独溶媒として好ましいものは、炭化水素類およびグリコールモノエーテルアセテート系溶媒であり、混合溶媒として好ましいものは、エーテル類またはケトン類と、グリコール系溶媒との混合系である。
反応性液晶層形成用塗工液の固形分濃度は、反応性液晶の溶解性や、反応性液晶層の厚みに依存するため一概には規定できないが、通常は0.1〜40質量%、好ましくは1〜20質量%の範囲で調整される。反応性液晶層形成用塗工液の固形分濃度が上記範囲より低いと、反応性液晶が配向しにくくなる場合があり、逆に反応性液晶層形成用塗工液の固形分濃度が上記範囲より高いと、反応性液晶層形成用塗工液の粘度が高くなるので均一な塗膜を形成しにくくなる場合があるからである。
さらに、上記反応性液晶層形成用塗工液には、本発明の目的を損なわない範囲内で、例えば、特開2005−258428号広報に記載されているような化合物を添加することができる。上記反応性液晶に対するこれら化合物の添加量は、本発明の目的が損なわれない範囲で選択される。これらの化合物の添加により、反応性液晶の硬化性が向上し、得られる反応性液晶層の機械強度が増大し、またその安定性が改善される。
反応性液晶層形成用塗工液の塗布方法としては、例えば、スピンコート法、ロールコート法、プリント法、ディップコート法、ダイコート法、キャスティング法、バーコート法、ブレードコート法、スプレーコート法、グラビアコート法、リバースコート法、押し出しコート法、インクジェット法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法等が挙げられる。
また、上記反応性液晶層形成用塗工液を塗布した後は、溶媒を除去する。溶媒を除去する方法としては、例えば、減圧除去もしくは加熱除去、さらにはこれらを組み合わせる方法等が挙げられる。
反応性液晶層形成用塗工液の塗布後は、塗布された反応性液晶を、反応性液晶層用配向膜により配向させて液晶規則性を有する状態とする。すなわち、反応性液晶にネマチック相を発現させる。これは、通常、ネマチック相から等方相へ転移する温度(N−I転移点)以下で熱処理する方法等の方法により行われる。
上述したように、反応性液晶は重合性液晶材料を含有するものであり、このような重合性液晶材料の配向状態を固定化するには、重合を活性化する活性放射線を照射する方法が用いられる。ここでいう活性放射線とは、重合性液晶材料に対して重合を起こさせる能力がある放射線をいい、必要であれば重合性液晶材料内に光重合開始剤が含まれていてもよい。
このような活性放射線としては、重合性液晶材料を重合させることが可能な放射線であれば特に限定されるものではないが、通常は装置の容易性等の観点から、紫外線または可視光が使用され、波長が150〜500nm、好ましくは250〜450nm、さらに好ましくは300〜400nmの照射光が用いられる。
中でも、光重合開始剤が紫外線でラジカルを発生し、重合性液晶材料がラジカル重合するような重合性液晶材料に対して、紫外線を活性放射線として照射する方法が好ましい。活性放射線として紫外線を用いる方法は、既に確立された技術であることから、用いる光重合開始剤を含めて、本発明への応用が容易であるからである。
この照射光の光源としては、低圧水銀ランプ(殺菌ランプ、蛍光ケミカルランプ、ブラックライト)、高圧放電ランプ(高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ)、ショートアーク放電ランプ(超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、水銀キセノンランプ)などが例示できる。なかでもメタルハライドランプ、キセノンランプ、高圧水銀ランプ等の使用が推奨される。また、照射強度は、反応性液晶の組成や光重合開始剤の多寡によって適宜調整されて照射される。
このような活性照射線の照射は、上記重合性液晶材料が液晶相となる温度条件で行ってもよく、また液晶相となる温度より低い温度で行ってもよい。一旦液晶相となった重合性液晶材料は、その後温度を低下させても、配向状態が急に乱れることはないからである。
なお、重合性液晶材料の配向状態を固定化する方法としては、上記の活性放射線を照射する方法以外にも、加熱して重合性液晶材料を重合させる方法も用いることができる。この場合に用いられる反応性液晶としては、反応性液晶のN−I転移点以下で、反応性液晶に含有される重合性液晶モノマーが熱重合するものであることが好ましい。
また、反応性液晶層の厚みは、目的とする異方性に応じて適宜調整されるものであり、例えば1nm〜1000nmの範囲内で設定することができ、好ましくは3nm〜100nmの範囲内である。反応性液晶層の厚みが厚すぎると必要以上の異方性が生じてしまい、また反応性液晶層の厚みが薄すぎると所定の異方性が得られない場合があるからである。
(4)液晶塗布工程
本態様における液晶塗布工程は、多面付けTFT基板の配向膜または共通電極基板の配向膜上に、強誘電性液晶を塗布する工程である。
以下、本発明に用いられる強誘電性液晶および強誘電性液晶の塗布方法について説明する。
(i)強誘電性液晶
本発明に用いられる強誘電性液晶は、カイラルスメクチックC相(SmC*)を発現するものであれば特に限定されるものではない。例えば、相系列が、降温過程において、ネマチック相(N)−コレステリック相(Ch)−カイラルスメクチックC相(SmC*)と相変化するもの、ネマチック相(N)−カイラルスメクチックC相(SmC*)と相変化するもの、ネマチック相(N)−スメクチックA相(SmA)−カイラルスメクチックC相(SmC*)と相変化するもの、ネマチック相(N)−コレステリック相(Ch)−スメクチックA相(SmA)−カイラルスメクチックC相(SmC*)と相変化するもの、などを挙げることができる。
本発明の液晶表示素子をフィールドシーケンシャルカラー方式により駆動させる場合には、単安定性を示す液晶材料を用いることが好ましい。単安定性を示す液晶材料を用いることにより、薄膜トランジスタ(TFT)を用いたアクティブマトリックス方式による駆動が可能になり、また、電圧変調により階調制御が可能になり、高精細で高品位の表示を実現することができるからである。
強誘電性液晶は、図13に例示するように、液晶分子30が層法線zから傾いており、層法線zに垂直な底面を有する円錐(コーン)の稜線に沿って回転する。このような円錐(コーン)において、液晶分子30の層法線zに対する傾き角をチルト角θという。
なお、「単安定性を示す」とは、電圧無印加時の強誘電性液晶の状態がひとつの状態で安定化している状態をいう。具体的に説明すると、図13に示すように、液晶分子30は層法線zに対しチルト角±θだけ傾く二つの状態間をコーン上に動作することができるが、電圧無印加時に液晶分子30が上記コーン上のいずれかひとつの状態で安定化している状態をいう。
単安定性を示す液晶材料の中でも、例えば図14左下に示すような、正負いずれかの電圧を印加したときにのみ液晶分子が動作する、half−V shaped switching(以下、HV字型スイッチングと称する。)特性を示すものが特に好ましい。このようなHV字型スイッチング特性を示す強誘電性液晶を用いると、白黒シャッターとしての開口時間を十分に長くとることができ、これにより時間的に切り替えられる各色をより明るく表示することができ、明るいカラー表示の液晶表示素子を実現することができるからである。
なお、「HV字型スイッチング特性」とは、印加電圧に対する光透過率が非対称な電気光学特性をいう。
このような強誘電性液晶としては、一般に知られる液晶材料の中から要求特性に応じて種々選択することができる。
特に、Ch相からSmA相を経由しないでSmC*相を発現する液晶材料は、HV字型スイッチング特性を示すものとして好適である。具体的には、AZエレクトロニックマテリアルズ社製「R2301」が挙げられる。
また、SmA相を経由する液晶材料としては、材料選択の幅が広いことから、Ch相からSmA相を経由してSmC*相を発現するものが好ましい。この場合、SmC*相を示す単一の液晶材料を用いることもできるが、低粘度でSmC相を示しやすいノンカイラルな液晶(以下、ホスト液晶とする場合がある。)に、それ自身ではSmC相を示さないが大きな自発分極と適当な螺旋ピッチを誘起する光学活性物質を少量添加することにより、上記のような相系列を示す液晶材料が、低粘度であり、より速い応答性を実現できることから好ましい。
上記ホスト液晶としては、広い温度範囲でSmC相を示す材料であることが好ましく、一般に強誘電性液晶のホスト液晶として知られているものであれば特に限定されることなく使用することができる。例えば、下記一般式:
Ra−Q1−X1−(Q2−Y1)m−Q3−Rb
(式中、RaおよびRbはそれぞれ、直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルカノイルオキシ基またはアルコキシカルボニルオキシ基であり、Q1、Q2およびQ3はそれぞれ、1,4−フェニレン基、1,4−シクロヘキシレン基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピラジン−2,5−ジイル基、ピリダジン−3,6−ジイル基、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル基であり、これらの基はハロゲン原子、水酸基、シアノ基等の置換基を有していてもよく、X1およびY1はそれぞれ、−COO−、−OCO−、−CH2O−、−OCH2−、−CH2CH2−、−C≡C−または単結合であり、mは0または1である。)で表される化合物を使用することができる。ホスト液晶としては、上記化合物を1種単独でも2種以上を組み合わせて用いることもできる。
上記ホスト液晶に添加する光学活性物質としては、自発分極が大きく、適当な螺旋ピッチを誘起する能力を持った材料であれば特に限定されるものではなく、一般にSmC相を示す液晶組成物に添加する材料として知られるものを使用することができる。特に少量の添加量で大きな自発分極を誘起できる材料であることが好ましい。このような光学活性物質としては、例えば、下記一般式:
Rc−Q1−Za−Q2−Zb−Q3−Zc−Rd
(式中、Q1、Q2、Q3は上記一般式と同じ意味を表し、Za、ZbおよびZcは−COO−、−OCO−、−CH2O−、−OCH2−、−CH2CH2−、−C≡C−、−CH=N−、−N=N−、−N(→O)=N−、−C(=O)S−または単結合であり、Rcは不斉炭素原子を有していてもよい直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルカノイルオキシ基またはアルコキシカルボニルオキシ基であり、Rdは不斉炭素原子を有する直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルカノイルオキシ基またはアルコキシカルボニルオキシ基であり、RcおよびRdはハロゲン原子、シアノ基、水酸基で置換されていてもよい。)で表される化合物を使用することができる。光学活性物質としては、上記化合物を1種単独でも2種以上を組み合わせて用いることもできる。
SmA相を経由する強誘電性液晶として、具体的には、AZエレクトロニックマテリアルズ社製「FELIXM4851−100」などが挙げられる。
強誘電性液晶には、液晶表示素子に求められる機能に応じて任意の機能を備える化合物を添加することができる。この化合物としては、重合性モノマーを挙げることができる。強誘電性液晶に重合性モノマーを添加し、液晶配向工程後に、この重合性モノマーを重合させることにより、強誘電性液晶の配列がいわゆる「高分子安定化」され、優れた配向安定性が得られるからである。
重合性モノマーとしては、重合反応により重合物を生じる化合物であれば特に限定されるものではなく、加熱処理により重合反応を生じる熱硬化性樹脂モノマー、および活性放射線の照射により重合反応を生じる活性放射線硬化性樹脂モノマーを挙げることができる。中でも、活性放射線硬化性樹脂モノマーを用いることが好ましい。熱硬化性樹脂モノマーを用いる場合は、重合反応を生じさせるために加温処理をすることが必要であるので、このような加温処理により強誘電性液晶の規則的な配列が損なわれたり、相転移が誘起されてしまったりするおそれがある。一方、活性放射線硬化性樹脂モノマーを用いる場合は、このようなおそれがなく、重合反応が生じることによって強誘電性液晶の配列が害されることが少ないからである。
活性放射線硬化性樹脂モノマーとしては、電子線の照射により重合反応を生じる電子線硬化性樹脂モノマー、および光照射により重合反応を生じる光硬化性樹脂モノマーを挙げることができる。中でも、光硬化性樹脂モノマーを用いることが好ましい。光硬化性樹脂モノマーを用いることにより、製造工程を簡略化できるからである。
光硬化性樹脂モノマーとしては、波長が150nm〜500nmの範囲内の光を照射することにより、重合反応を生じるものであれば特に限定されるものではない。中でも波長が250nm〜450nmの範囲内、特に300nm〜400nmの範囲内の光を照射することにより重合反応を生じる紫外線硬化性樹脂モノマーを用いることが好ましい。照射装置の容易性等の面において利点を有するからである。
紫外線硬化性樹脂モノマーが有する重合性官能基は、上記波長領域の紫外線照射により、重合反応を生じるものであれば特に限定されるものではない。特に、アクリレート基を有する紫外線硬化型樹脂モノマーを用いることが好ましい。
また、紫外線硬化性樹脂モノマーは、一分子中に一つの重合性官能基を有する単官能性モノマーであってもよく、また、一分子中に二つ以上の重合性官能基を有する多官能性モノマーであってもよい。中でも、多官能性モノマーを用いることが好ましい。多官能性モノマーを用いることにより、より強いポリマーネットワークを形成することができるため、分子間力および配向膜界面におけるポリマーネットワークを強化することができる。これにより、温度変化による強誘電性液晶の配列の乱れを抑制することができる。
多官能性モノマーの中でも、分子の両末端に重合性官能基を有する2官能性モノマーが好ましく用いられる。分子の両端に重合性官能基を有することにより、ポリマー同士の間隔が広いポリマーネットワークを形成することができ、重合性モノマーの重合物を含むことによる強誘電性液晶の駆動電圧の低下を防止できるからである。
また、紫外線硬化性樹脂モノマーの中でも、液晶性を発現する紫外線硬化性液晶モノマーを用いることが好ましい。このような紫外線硬化性液晶モノマーが好ましい理由は次の通りである。すなわち、紫外線硬化性液晶モノマーは液晶性を示すことから、配向膜の配向規制力により規則的に配列することができる。このため、紫外線硬化性液晶モノマーを、規則的に配列した後に重合反応を生じさせることにより、規則的な配列状態を維持したまま固定化することができる。このような規則的な配列状態を有する重合物が存在することにより、強誘電性液晶の配向安定性を向上させることができ、優れた耐熱性および耐衝撃性を得ることができる。
紫外線硬化性液晶モノマーが示す液晶相としては、特に限定されるものではなく、例えば、N相、SmA相、SmC相を挙げることができる。
本発明に用いられる紫外線硬化性液晶モノマーとしては、例えば、下記式(20),(21),(25)に示す化合物を挙げることができる。
上記式(20),(21)において、A、B、D、EおよびFはベンゼン、シクロヘキサンまたはピリミジンを表し、これらはハロゲン等の置換基を有していてもよい。また、AおよびB、あるいはDおよびEは、アセチレン基、メチレン基、エステル基等の結合基を介して結合していてもよい。M1およびM2は、水素原子、炭素数3〜9のアルキル基、炭素数3〜9のアルコキシカルボニル基、またはシアノ基のいずれであってもよい。さらに、分子鎖末端のアクリロイルオキシ基とAまたはDとは、炭素数3〜6のアルキレン基等の結合基を介して結合していてもよい。
また、上記式(25)おいて、Yは、水素、炭素数1〜20のアルキル、炭素数1〜20のアルケニル、炭素数1〜20のアルキルオキシ、炭素数1〜20のアルキルオキシカルボニル、ホルミル、炭素数1〜20のアルキルカルボニル、炭素数1〜20のアルキルカルボニルオキシ、ハロゲン、シアノまたはニトロを表す。
上記の中でも、好適に用いられるものとして、下記式の化合物を例示することができる。
また、上記重合性モノマーは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。2種以上の異なる重合性モノマーを用いる場合には、例えば、上記式で示される紫外線硬化性液晶モノマーと他の紫外線硬化性樹脂モノマーとを用いることができる。
重合性モノマーとして紫外線硬化性液晶モノマーを用いた場合、重合性モノマーを重合させることにより得られる重合物としては、主鎖に液晶性を示す原子団を有することにより主鎖が液晶性を示す主鎖液晶型重合物であってもよく、側鎖に液晶性を示す原子団を有することにより側鎖が液晶性を示す側鎖液晶型重合物であってもよい。中でも、重合性モノマーの重合物が側鎖液晶型重合物であることが好ましい。液晶性を示す原子団が側鎖に存在することにより、この原子団の自由度が高くなるため、液晶性を示す原子団が配向しやすくなるからである。また、その結果として強誘電性液晶の配向安定性を向上させることができるからである。
重合性モノマーの添加量としては、強誘電性液晶の配向安定性を所望の程度にできる範囲内であれば特に限定されるものではないが、強誘電性液晶および重合性モノマーの全質量に対して、0.5質量%〜30質量%の範囲内が好ましく、より好ましくは1質量%〜20質量%の範囲内、さらに好ましくは1質量%〜10質量%の範囲内である。重合性モノマーの添加量が上記範囲よりも多いと、強誘電性液晶の駆動電圧が増加したり、応答速度が低下したりする場合があるからである。また、重合性モノマーの添加量が上記範囲よりも少ないと、強誘電性液晶の配向安定性が不十分となり、耐熱性や耐衝撃性が低下する可能性があるからである。
(ii)強誘電性液晶の塗布方法
本態様においては、多面付けTFT基板の配向膜または共通電極基板の配向膜上に、強誘電性液晶を塗布する。
強誘電性液晶は、多面付けTFT基板の配向膜上に塗布してもよく、共通電極基板の配向膜上に塗布してもよい。
多面付けTFT基板の配向膜または共通電極基板の配向膜上に強誘電性液晶を塗布する際には、強誘電性液晶を加温してもよく加温しなくてもよい。この強誘電性液晶の温度は、後述の強誘電性液晶の塗布方法によって適宜選択される。
例えば、強誘電性液晶の塗布方法として吐出法を用いる場合には、強誘電性液晶をこの強誘電性液晶が等方相またはネマチック相を示す温度まで加温することが好ましく、特に強誘電性液晶が等方相を示す温度まで加温することが好ましい。強誘電性液晶を加温しないと、強誘電性液晶の粘度が高すぎて吐出ノズルがつまってしまい、強誘電性液晶を安定して吐出するのが非常に困難になるからである。
上記の場合、強誘電性液晶の温度としては、強誘電性液晶が等方相またはネマチック相を示す温度に設定する。具体的な温度としては、強誘電性液晶の種類によって異なり、適宜選択される。なお、強誘電性液晶の温度の上限は、強誘電性液晶が劣化するおそれのない温度とされる。強誘電性液晶の温度は、例えば、ネマチック相−等方相転移温度付近、あるいは、ネマチック相−等方相転移温度よりも0℃〜10℃高めに設定することができる。
一方、強誘電性液晶の塗布方法としてコーティング法や印刷法を用いる場合には、強誘電性液晶を加温しないことが好ましい。コーティング法や印刷法を用いる場合には、塗工性を向上させるために強誘電性液晶を溶剤で希釈した強誘電性液晶溶液を用いることが好ましい。そのため、強誘電性液晶溶液を加温すると、強誘電性液晶溶液中の溶剤が揮発してしまい、強誘電性液晶を塗布するのが非常に困難になるからである。
また、多面付けTFT基板の配向膜または共通電極基板の配向膜上に強誘電性液晶を塗布する際、強誘電性液晶が塗布される基板を加熱してもよく加熱しなくてもよい。強誘電性液晶が塗布される基板の温度は、強誘電性液晶の塗布方法によって適宜選択される。
例えば、強誘電性液晶の塗布方法として吐出法を用いる場合には、強誘電性液晶が塗布される基板を加熱してもよく加熱しなくてもよい。
強誘電性液晶が塗布される基板を加熱する場合には、この基板の温度としては、強誘電性液晶が等方相またはネマチック相を示す温度に設定することが好ましく、特に強誘電性液晶が等方相を示す温度に設定することが好ましい。具体的な温度としては、強誘電性液晶の種類によって異なり、適宜選択される。なお、多面付けTFT基板の温度の上限は、強誘電性液晶が劣化するおそれのない温度とされる。多面付けTFT基板の温度は、例えば、ネマチック相−等方相転移温度付近、あるいは、ネマチック相−等方相転移温度よりも5℃〜10℃高めに設定することができる。
一方、強誘電性液晶の塗布方法としてコーティング法や印刷法を用いる場合には、強誘電性液晶が塗布される基板を加熱しないことが好ましい。強誘電性液晶が塗布される基板を加熱すると、塗布された強誘電性液晶溶液中の溶剤が揮発してしまい、強誘電性液晶の配向が乱れるおそれがあるからである。
強誘電性液晶溶液に用いられる溶剤としては、上記強誘電性液晶等を溶解もしくは分散させることができるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、メチレンクロライド、クロロホルム、トルエン、キシレン、テトラヒドロフラン、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル等を用いることができる。これらの溶剤は、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
また、強誘電性液晶溶液における強誘電性液晶の濃度としては、塗布方法、所望する膜厚等に応じて適宜選択される。
強誘電性液晶の塗布方法としては、封入可能な所定量を塗布することができる方法であれば特に限定されるものではない。このような塗布方法としては、例えば、インクジェット法やディスペンサー法等の吐出法、バーコート法やスロットダイコート法等のコーティング法、フレキソ印刷法、グラビア印刷法、オフセット印刷法、スクリーン印刷法等の印刷法などが挙げられる。
また、強誘電性液晶を塗布する位置としては、強誘電性液晶が封入可能な所定量で塗布されていれば特に限定されるものではない。
(5)基板貼り合せ工程
本態様における基板貼り合せ工程は、液晶塗布工程後、多面付けTFT基板および共通電極基板を、各配向膜が対向するように配置して貼り合せる工程である。
多面付けTFT基板および共通電極基板を貼り合せる前には、多面付けTFT基板または共通電極基板の少なくともいずれか一方であって、各TFT基板領域における表示領域の周縁部に相当する部分にシール剤を塗布する。図12に例示するように、通常、シール剤41は、強誘電性液晶が塗布された領域の外周を囲むように枠状に塗布される。また、後述するように、多面付けTFT基板または共通電極基板の対向面上に枠状の隔壁を形成する場合には、枠状の隔壁の外周を囲むようにシール剤を塗布する。
また、シール剤を多面付けTFT基板に塗布する場合には、シール剤を基板上に塗布してもよく、配向膜上に塗布してもよい。基板上にシール剤を塗布した場合には、多面付けTFT基板および共通電極基板の密着性を高めることができる。シール剤を基板上に塗布する場合には、各TFT基板領域における表示領域の周縁部に配向膜が形成されないように、配向膜をパターン状に形成する。一方、シール剤を共通電極基板に塗布する場合においても、シール剤を基板上に塗布してもよく、配向膜上に塗布してもよい。
シール剤は、後述する柱状スペーサや隔壁との関係において、柱状スペーサや隔壁が形成された基板に塗布してもよく、柱状スペーサや隔壁が形成されていない基板に塗布してもよく、両方の基板に塗布してもよい。また、シール剤は、強誘電性液晶との関係において、強誘電性液晶が塗布された基板に塗布してもよく、強誘電性液晶が塗布されていない基板に塗布してもよく、両方の基板に塗布してもよい。いずれの場合においても、多面付けTFT基板および共通電極基板を重ね合わせたときに、強誘電性液晶が塗布された領域の外周がシール剤で囲まれるように、シール剤を塗布する。
また、シール剤を強誘電性液晶が塗布された基板に塗布する場合、基板に強誘電性液晶を塗布する前にシール剤を塗布してもよく、基板に強誘電性液晶を塗布した後にシール剤を塗布してもよい。
シール剤としては、一般に液晶表示素子に用いられるシール剤を使用することができ、例えば熱硬化性樹脂および紫外線硬化性樹脂が挙げられる。
シール剤の塗布方法としては、所定の位置にシール剤を塗布することができる方法であれば特に限定されるものではなく、例えば、ディスペンサー法、スクリーン印刷法等が挙げられる。
このようにシール剤を塗布した後は、多面付けTFT基板および共通電極基板を重ね合わせる。多面付けTFT基板および共通電極基板を重ね合わせる際には、各配向膜の配向処理方向が略平行になるように、多面付けTFT基板および共通電極基板を対向させる。
また、多面付けTFT基板および共通電極基板を重ね合わせる際には、多面付けTFT基板および共通電極基板を加熱する。多面付けTFT基板および共通電極基板の温度としては、強誘電性液晶が等方相またはネマチック相を示す温度に設定することが好ましく、中でも、強誘電性液晶が等方相を示す温度に設定することが好ましい。具体的な温度としては、強誘電性液晶の種類によって異なり、適宜選択される。なお、多面付けTFT基板および共通電極基板の温度の上限は、強誘電性液晶が劣化するおそれのない温度とされる。多面付けTFT基板および共通電極基板の温度は、例えば、ネマチック相−等方相転移温度付近、あるいは、ネマチック相−等方相転移温度よりも5℃〜10℃高めに設定することができる。
配向膜上に、強誘電性液晶を溶剤で希釈した強誘電性液晶溶液を印刷法により塗布した場合には、上記の基板の加熱時に、溶剤を除去することができる。
さらに、多面付けTFT基板および共通電極基板を重ね合わせる際には、チャンバー内を排気して、多面付けTFT基板および共通電極基板間を十分に減圧することが好ましい。これにより、液晶セル内に空隙が残るのを防ぐことができる。
このように多面付けTFT基板および共通電極基板を対向させた後は、減圧下で多面付けTFT基板および共通電極基板を重ね合わせ、セルギャップが均一になるように一定の圧力を加える。そして、チャンバー内を常圧に戻すことにより、多面付けTFT基板および共通電極基板間にさらに圧力を加える。これにより、セルギャップをより均一にすることができる。このようにして多面付けTFT基板および共通電極基板がシール剤を介して圧着される。
多面付けTFT基板および共通電極基板を重ね合わせた後は、シール剤を硬化させて、多面付けTFT基板および共通電極基板を貼り合せる。
シール剤の硬化方法としては、用いるシール剤の種類によって異なるものであり、例えば紫外線を照射する方法、加熱する方法などが挙げられる。この際、通常は、多面付けTFT基板および共通電極基板を重ね合わせたときの圧力を保持したままシール剤を硬化させる。
(6)液晶配向工程
本態様における液晶配向工程は、強誘電性液晶をこの強誘電性液晶がネマチック相または等方相を示す温度に加温した後、多面付けTFT基板のゲート線用取り出し端子およびソース線用取り出し端子にそれぞれ異なる電圧を印加したまま強誘電性液晶を徐々に冷却する工程である。
多面付けTFT基板および共通電極基板を貼り合せた後は、多面付けTFT基板および共通電極基板間に封入された強誘電性液晶を配向させる。具体的には、強誘電性液晶をSmC*相の状態とする。
上述したように、多面付けTFT基板および共通電極基板を所定の温度に加熱することにより、強誘電性液晶が加温されて例えばネマチック相または等方相の状態になっているので、各TFT基板領域における画素電極および共通電極に同時に直流電圧を印加しながら、強誘電性液晶を冷却することにより、SmC*相の状態にすることができる。
画素電極および共通電極に電圧を印加する前には、多面付けTFT基板および共通電極基板間に封入された強誘電性液晶を加温した状態とする。強誘電性液晶の温度としては、強誘電性液晶が等方相またはネマチック相を示す温度に設定することが好ましく、中でも、強誘電性液晶が等方相を示す温度に設定することが好ましい。具体的な温度としては、強誘電性液晶の種類によって異なり、適宜選択される。なお、強誘電性液晶の温度の上限は、強誘電性液晶が劣化するおそれのない温度とされる。強誘電性液晶の温度は、例えば、ネマチック相−等方相転移温度付近、あるいは、ネマチック相−等方相転移温度よりも5℃〜10℃高めに設定することができる。
多面付けTFT基板および共通電極基板間に封入された強誘電性液晶を加温した後は、多面付けTFT基板のゲート線用取り出し端子およびソース線用取り出し端子にそれぞれ異なる電圧を印加する。このとき、画素電極および共通電極にそれぞれ異なる電圧を印加するために、多面付け薄膜トランジスタ基板のゲート線用取り出し端子および共通電極基板の共通電極を接続して、多面付けTFT基板のゲート線用取り出し端子およびソース線用取り出し端子にそれぞれ異なる電圧を印加してもよく、また多面付けTFT基板のゲート線用取り出し端子と多面付けTFT基板のソース線用取り出し端子と共通電極基板の共通電極用取り出し端子とにそれぞれ異なる電圧を印加してもよい。
多面付け薄膜トランジスタ基板のゲート線用取り出し端子および共通電極基板の共通電極を接続して、多面付けTFT基板のゲート線用取り出し端子およびソース線用取り出し端子にそれぞれ異なる電圧を印加する場合には、ゲート線用取り出し端子が共通電極に接続されており、またソース線用取り出し端子がソース線に接続され、ソース電極から半導体層およびドレイン電極を介して画素電極に接続されているので、ゲート線用取り出し端子およびソース線用取り出し端子にそれぞれ異なる電圧を同時に印加することにより、各TFT基板領域における画素電極および共通電極にそれぞれ異なる電圧を同時に印加することが可能である。
一方、多面付けTFT基板のゲート線用取り出し端子と多面付けTFT基板のソース線用取り出し端子と共通電極基板の共通電極用取り出し端子とにそれぞれ異なる電圧を印加する場合には、ゲート線用取り出し端子とソース線用取り出し端子と共通電極用取り出し端子とにそれぞれ異なる電圧を同時に印加することにより、各TFT基板領域における画素電極および共通電極にそれぞれ異なる電圧を同時に印加することが可能である。
通常、強誘電性液晶を配向させるのに必要な電圧、すなわち強誘電性液晶を配向させるのに必要な画素電極および共通電極の電位差は5V程度である。一方、TFT素子をON状態にするためには、ソース電極およびゲート電極の電位差は10V以上であることが好ましい。例えば、ソース電極の電圧を0V、ゲート電極の電圧を10Vとすれば、TFT素子をON状態とすることができる。すなわち、TFT素子のゲート電極の電位(Vg)、TFTのソース電極の電位(Vs)、および共通電極の電位(Vc)の関係は、Vc−Vs=5V、Vg−Vs>10V、あるいは、Vs−Vc=5V、Vg−Vs>10Vとなるように設定することが好ましい。
ゲート線用取り出し端子とソース線用取り出し端子と共通電極用取り出し端子とにそれぞれ異なる電圧を印加する場合には、ゲート電極、ソース電極および共通電極の電位を自由に設定することができるので、画素電極および共有電極の電位差、ならびにソース電極およびゲート電極の電位差を上述の好ましい範囲とすることができる。また、この場合には、ソース線用取り出し端子の電圧に対して、共通電極用取り出し端子の電圧を相対的に高くなるようにまたは低くなるように設定することにより、強誘電性液晶の自発分極の向きを制御することができる。
一方、ゲート線用取り出し端子および共通電極を接続して、ゲート線用取り出し端子およびソース線用取り出し端子にそれぞれ異なる電圧を印加する場合には、ゲート電極および共通電極の電位は同じになるので、例えば、上述したようにソース電極の電圧を0V、ゲート電極の電圧を10Vとすると、画素電極および共通電極の電位差も10V程度となり、強誘電性液晶にかかる電圧が大きくなり過ぎてしまう。したがってこの場合には、ソース電極およびゲート電極の電位差が5V程度となるように、ソース電極およびゲート電極の電位差を比較的小さめに設定し、強誘電性液晶に電圧を印加する時間を比較的長めに設定することが好ましい。
上記の2つの場合のうち、中でも、ゲート線用取り出し端子および共通電極を接続して、ゲート線用取り出し端子およびソース線用取り出し端子にそれぞれ異なる電圧を印加することが好ましい。画素電極用取り出し端子を別個設ける必要がないので、製造工程を簡略化することができるからである。
ゲート線用取り出し端子および共通電極を接続して、ゲート線用取り出し端子およびソース線用取り出し端子にそれぞれ異なる電圧を印加した後は、それらの電圧を印加したまま、強誘電性液晶を徐々に冷却することにより、強誘電性液晶を配向させることができる。また、ゲート線用取り出し端子とソース線用取り出し端子と共通電極用取り出し端子とにそれぞれ異なる電圧を印加した後も、それらの電圧を印加したまま、強誘電性液晶を徐々に冷却することにより、強誘電性液晶を配向させることができる。加温された強誘電性液晶を冷却する際には、通常、室温になるまで強誘電性液晶を徐冷する。
強誘電性液晶に重合性モノマーが添加されている場合には、強誘電性液晶を配向させた後、重合性モノマーを重合させる。重合性モノマーの重合方法としては、重合性モノマーの種類に応じて適宜選択され、例えば、重合性モノマーとして紫外線硬化性樹脂モノマーを用いた場合は、紫外線照射により重合性モノマーを重合させることができる。
強誘電性液晶で構成される液晶層の厚みとしては、1.2μm〜3.0μmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは1.3μm〜2.5μm、さらに好ましくは1.4μm〜2.0μmの範囲内である。液晶層の厚みが薄すぎるとコントラストが低下するおそれがあり、逆に液晶層の厚みが厚すぎると強誘電性液晶が配向しにくくなる可能性があるからである。上記液晶層の厚みは、ビーズスペーサ、柱状スペーサ、隔壁等により調整することができる。
(7)切断工程
本態様における切断工程は、液晶配向工程後、多面付けTFT基板のTFT基板領域毎に切断する工程である。
液晶配向工程までで得られた多面取り用液晶セルを、TFT基板領域毎に切断することにより、多面取り用液晶セルから、ゲート線用ショートバー、ソース線用ショートバー、ゲート線用接続配線、ソース線用接続配線、ゲート線用取り出し端子、およびソース線用取り出し端子等が切断除去される。これにより、個々の液晶表示素子が得られる。
TFT基板領域毎に切断する方法としては、一般的なパネルの切断方法を用いることができる。
(8)その他の工程
(i)柱状スペーサ形成工程
本態様においては、配向膜形成工程前に、多面付けTFT基板または共通電極基板の対向面上に柱状スペーサを形成する柱状スペーサ形成工程を行ってもよい。この場合、多面付けTFT基板の対向面上に柱状スペーサを形成してもよく、共通電極基板の対向面上に柱状スペーサを形成してもよい。
柱状スペーサの形成材料としては、一般に液晶表示素子の柱状スペーサに用いられる材料を使用することができる。具体的には、柱状スペーサの形成材料としては、樹脂を挙げることができ、中でも感光性樹脂が好ましく用いられる。感光性樹脂はパターニングが容易であるからである。
柱状スペーサの形成方法としては、所定の位置に柱状スペーサを形成することが可能な方法であれば特に限定されるものではなく、一般的なパターニング方法を適用することができ、例えば、フォトリソグラフィー法、インクジェット法、スクリーン印刷法等が挙げられる。
柱状スペーサは複数形成されるものであり、複数の柱状スペーサを所定の位置に規則的に形成することが好ましく、特に等間隔で形成することが好ましい。複数の柱状スペーサの形成位置が無秩序であると、強誘電性液晶の塗布量を正確に制御することが困難となる場合があるからである。
柱状スペーサのピッチは、100μm〜3mm程度とすることができ、好ましくは200μm〜1.5mmの範囲内、より好ましくは300μm〜1.0mmの範囲内である。柱状スペーサのピッチが上記範囲より狭いと、柱状スペーサ付近での強誘電性液晶の配向不良によって表示品位が低下する可能性があるからである。逆に、柱状スペーサのピッチが上記範囲より広いと、液晶表示素子の大きさによって異なるが、所望の耐衝撃性が得られなかったり、セルギャップを一定に保つことが困難になったりする場合があるからである。なお、柱状スペーサのピッチとは、隣接する柱状スペーサの中心部から中心部までの距離をいう。
また、柱状スペーサの大きさとしては、例えば柱状スペーサが円柱形状である場合、底面の直径が1μm〜100μm程度とされ、好ましくは2μm〜50μmの範囲内、より好ましくは5μm〜20μmの範囲内である。柱状スペーサの大きさが上記範囲より大きいと、柱状スペーサが画素領域にも設けられることになり、有効画素面積が狭くなって良好な画像表示が得られない場合があり、また柱状スペーサの大きさが上記範囲より小さいと、柱状スペーサの形成が困難となる場合があるからである。
さらに、柱状スペーサの高さは、通常、セルギャップと同程度とされる。
なお、上記柱状スペーサのピッチ、大きさおよび高さは、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて隔壁の断面を観察することによって測定することができる。
柱状スペーサの形状としては、例えば、円柱形状、角柱形状、截頭錐体形状等を挙げることができる。
また、柱状スペーサの形成位置としては、特に限定されるものではないが、非画素領域に柱状スペーサを形成することが好ましい。柱状スペーサ付近では強誘電性液晶の配向不良が生じやすいので、画像表示に影響のない非画素領域に柱状スペーサを形成することが好ましいからである。例えば多面付けTFT基板の対向面上に柱状スペーサを形成する場合には、ゲート線、ソース線およびTFT等の上に、柱状スペーサを配置することができる。
柱状スペーサの数としては、複数であれば特に限定されるものではなく、液晶表示素子の大きさによって適宜選択される。
(ii)隔壁形成工程
本態様においては、配向膜形成工程前に、多面付けTFT基板または共通電極基板の対向面上に隔壁を形成する隔壁形成工程を行ってもよい。この場合、多面付けTFT基板の対向面上に隔壁を形成してもよく、共通電極基板の対向面上に隔壁を形成してもよい。隔壁を形成することにより、耐衝撃性を向上させることができる。SmC*相は外部衝撃に非常に弱いため、耐衝撃性が高いことは強誘電性液晶を用いた液晶表示素子において有用である。
隔壁の形成材料としては、一般に液晶表示素子の隔壁に用いられる材料を使用することができる。具体的には、隔壁の形成材料としては、樹脂を挙げることができ、中でも感光性樹脂が好ましく用いられる。感光性樹脂はパターニングが容易であるからである。
隔壁の形成方法としては、所定の位置に隔壁を形成することが可能な方法であれば特に限定されるものではなく、一般的なパターニング方法を適用することができ、例えば、フォトリソグラフィー法、インクジェット法、スクリーン印刷法等が挙げられる。
隔壁は複数形成されるものであり、複数の隔壁を所定の位置に規則的に形成することが好ましく、特に略平行に等間隔で形成することが好ましい。複数の隔壁の形成位置が無秩序であると、強誘電性液晶の塗布量を正確に制御することが困難となる場合があるからである。
また、隔壁の形成位置としては、特に限定されるものではないが、非画素領域に隔壁を形成することが好ましい。隔壁付近では強誘電性液晶の配向不良が生じやすいので、画像表示に影響のない非画素領域に隔壁が形成されていることが好ましいからである。例えば多面付けTFT基板の対向面上に隔壁を形成する場合には、ゲート線、ソース線およびTFT等の上に、隔壁を配置することができる。
隔壁のピッチは、1mm〜10mm程度とされ、好ましくは1.0mm〜5.0mmの範囲内、より好ましくは2.0mm〜3.0mmの範囲内である。隔壁のピッチが上記範囲より狭いと、隔壁付近での強誘電性液晶の配向不良によって表示品位が低下する可能性があるからである。逆に、隔壁のピッチが上記範囲より広いと、液晶表示素子の大きさによって異なるが、所望の耐衝撃性が得られなかったり、セルギャップを一定に保つことが困難になったりする場合があるからである。なお、隔壁のピッチとは、隣接する隔壁の中心部から中心部までの距離をいう。
また、隔壁の幅は、1μm〜50μm程度とされ、好ましくは2μm〜30μmの範囲内、より好ましくは5μm〜20μmの範囲内である。隔壁の幅が上記範囲より広いと、隔壁が画素領域にも設けられることになり、有効画素面積が狭くなって良好な画像表示が得られない場合があり、また、隔壁の幅が上記範囲より狭いと、隔壁の形成が困難となる場合があるからである。
さらに、隔壁の高さは、通常、セルギャップと同程度とされる。
なお、上記隔壁のピッチ、幅および高さは、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて隔壁の断面を観察することによって測定することができる。
隔壁の数としては、複数であれば特に限定されるものではなく、液晶表示素子の大きさによって適宜選択される。
また、隔壁として、枠状の隔壁を形成してもよい。各TFT基板領域の周縁部に枠状の隔壁を形成することにより、枠状の隔壁の外周にシール剤を塗布する場合には、強誘電性液晶と未硬化状態のシール剤とが接触するのを防ぎ、シール剤中の不純物等の混入によって強誘電性液晶の特性が劣化するのを回避することができるからである。
枠状の隔壁の幅は、強誘電性液晶と未硬化状態のシール剤との接触を防ぐことが可能な幅であればよく、具体的には10μm〜3mm程度とされ、好ましくは10μm〜1mmの範囲内、より好ましくは10μm〜500μmの範囲内である。枠状の隔壁の幅が上記範囲より広いと、枠状の隔壁が画素領域にも設けられることになり、有効画素面積が狭くなって良好な画像表示が得られない場合があり、また、枠状の隔壁の幅が上記範囲より狭いと、枠状の隔壁の形成が困難となる場合があるからである。
また、枠状の隔壁の高さは、通常、セルギャップと同程度とされる。
なお、上記枠状の隔壁の幅および高さは、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて枠状の隔壁の断面を観察することによって測定することができる。
2.第2態様
本態様の液晶表示素子の製造方法は、上述の第2実施態様の多面付けTFT基板を調製する多面付けTFT基板調製工程と、基板上に共通電極が形成された共通電極基板を調製する共通電極基板調製工程と、上記多面付けTFT基板および上記共通電極基板の対向面上にそれぞれ配向膜を形成する配向膜形成工程と、上記多面付けTFT基板の配向膜または上記共通電極基板の配向膜上に、強誘電性液晶を塗布する液晶塗布工程と、上記液晶塗布工程後、上記多面付けTFT基板および上記共通電極基板を、上記各配向膜が対向するように配置して貼り合せる基板貼り合せ工程と、上記多面付けTFT基板の接続部を切断除去して、ゲート線およびソース線を絶縁する絶縁工程と、上記絶縁工程後であって、上記強誘電性液晶を当該強誘電性液晶がネマチック相または等方相を示す温度に加温した後、上記多面付けTFT基板のゲート線用取り出し端子およびソース線用取り出し端子にそれぞれ異なる電圧を印加したまま上記強誘電性液晶を徐々に冷却する液晶配向工程と、上記液晶配向工程後、上記多面付けTFT基板のTFT基板領域毎に切断する切断工程とを有することを特徴とするものである。
本態様の液晶表示素子の製造方法について図面を参照しながら説明する。
まず、図6に例示するように、基板2上に、一般的な方法にしたがって、表示領域9を構成するゲート線4x、ソース線4y、TFTおよび画素電極等と、ゲート線用接続配線10aと、ソース線用接続配線10bと、ゲート線用ショートバー5と、ソース線用ショートバー6と、接続部31と、ゲート線用取り出し端子7と、ソース線用取り出し端子8とを形成する。これにより、多面付けTFT基板1を得る。
そして、図示しないが、多面付けTFT基板のTFT基板領域毎に、多面付けTFT基板のゲート線用取り出し端子と、共通電極基板の共通電極とを接続するための、銀ペーストを点状に塗布する。
次に、図11(a)に例示するように、多面付けTFT基板1の対向面上に、配向膜17を形成する。この際、図15に例示するように、多面付けTFT基板1の表示領域9に配向膜17を形成する。また、基板22上に共通電極23が形成された共通電極基板21の対向面上にも、配向膜24を形成する。
次に、図示しないが、強誘電性液晶をこの強誘電性液晶が等方相を示す温度(例えば100℃)まで加温し、インクジェット装置を用いて、多面付けTFT基板1の配向膜17上に強誘電性液晶を等方相の状態で塗布する。この際、多面付けTFT基板の表示領域に強誘電性液晶を塗布する。
このとき、強誘電性液晶は等方相を示す温度(例えば100℃)に加温されているが、多面付けTFT基板は室温に設定されているので、強誘電性液晶の温度よりも多面付けTFT基板の温度の方が低い。そのため、多面付けTFT基板の配向膜上に塗布された強誘電性液晶は冷やされる。一般に、液晶は温度が低くなるにつれて粘度が高くなる。よって、多面付けTFT基板の配向膜上に塗布された強誘電性液晶は冷やされて、粘度が高くなり、流動しなくなる。
次いで、図15に例示するように、多面付けTFT基板1の表示領域9の周縁部にシール剤41を塗布する。この際、シール剤を強誘電性液晶が塗布された領域の外周を囲むように塗布する。
次に、図示しないが、強誘電性液晶が塗布された多面付けTFT基板を、強誘電性液晶が等方相を示す温度(例えば110℃)まで加熱する。これにより、多面付けTFT基板の配向膜上に塗布された強誘電性液晶は加温されて、等方相の状態となり、粘度が低くなって配向膜上を流動する。
次いで、図示しないが、強誘電性液晶が塗布された多面付けTFT基板と、共通電極基板とを、それぞれの配向膜の配向処理方向が略平行になるように対向させる。この際、多面付けTFT基板だけでなく、共通電極基板も、強誘電性液晶が等方相を示す温度(例えば110℃)まで加熱する。
次に、図11(b)に示すように、多面付けTFT基板1および共通電極基板21の間を十分減圧し、減圧下で多面付けTFT基板1および共通電極基板21を重ね合わせ、所定の圧力を加えてセルギャップを均一にする。続いて、常圧に戻すことで、多面付けTFT基板1および共通電極基板21の間にさらに圧力を加える。次いで、シール剤を硬化させ、多面付けTFT基板1および共通電極基板21を接着させる。これにより、多面取り用液晶セルを得る。
次に、得られた多面取り用液晶セルを、図15に示すような多面付けTFT基板1の切断線33で切断し、図16に例示するように、多面取り用液晶セルから接続部31を切断除去する。図15において、接続部31は、ゲート線用ショートバー5およびソース線用ショートバー6に連結されているが、ゲート線4xおよびソース線4yが絶縁されるように独立して切断可能であるため、図16に示すように、多面取り用液晶セルから接続部31を切断除去することにより、ゲート線用ショートバー5およびソース線用ショートバー6が連結されていないものとすることができる。これにより、ゲート線4xおよびソース線4yを絶縁することが可能である。
なお、図16において、共通電極基板21の一部は省略されている。
この多面取り液晶セルでは、上記の銀ペーストにより、多面付けTFT基板のゲート線用取り出し端子と、共通電極基板の共通電極とが接続された状態となっている。そして、ゲート線用取り出し端子およびソース線用取り出し端子にそれぞれ異なる電圧を印加する。
このとき、例えば、ゲート線用取り出し端子の電圧に対して、ソース線用取り出し端子の電圧が相対的に低くなるように、ゲート線用取り出し端子およびソース線用取り出し端子にそれぞれ異なる電圧を印加する。そうすると、ゲート線用取り出し端子は共通電極に接続されており、またソース線用取り出し端子はソース線に接続され、ソース電極から半導体層およびドレイン電極を介して画素電極に接続されているので、共通電極の電圧に対して、画素電極の電圧が相対的に低くなる。そのため、図5に例示するように、印加電圧の極性の影響によって、液晶分子30の自発分極Psの正極(+)は画素電極12側を向くようになる。
続いて、ゲート線用取り出し端子およびソース線用取り出し端子にそれぞれ異なる電圧を印加したまま、強誘電性液晶を徐々に冷却することにより、強誘電性液晶を配向させる。
次に、図示しないが、多面取り用液晶セルを、多面付けTFT基板のTFT基板領域毎に切断することにより、個々の液晶表示素子が得られる。
本態様においては、基板貼り合せ工程後、液晶配向工程前に、多面取りTFT基板の接続部を切断除去して、ゲート線およびソース線を絶縁するので、液晶配向工程では、ゲート線およびソース線に独立して電圧を印加することができる。したがって、例えば、ゲート線用取り出し端子と共通電極とを接続して、ゲート線用取り出し端子およびソース線用取り出し端子にそれぞれ異なる電圧を同時に印加することにより、TFT基板領域毎に切断することなく、各TFT基板領域における画素電極および共通電極にそれぞれ異なる電圧を同時に印加することが可能である。このように、多面付けTFT基板を用いて作製した多面取り用液晶セルをそのまま使用して、TFT基板領域毎に切断することなく、電解印加徐冷法により強誘電性液晶を配向させることができ、製造コストを大幅に削減することが可能である。
また本態様においては、基板貼り合せ工程までは、ゲート線用ショートバーおよびソース線用ショートバーが接続部を介して連結され、ショートリングが構成されていることにより、ゲート線およびソース線を電気的に短絡させることができる。したがって、例えば、多面付けTFT基板を作製する際、多面付けTFT基板を搬送する際、多面付けTFT基板および共通電極基板の位置決めを行う際、および、配向膜を形成する際(特にラビング処理を行う際)などに発生する静電気等の影響によって、静電破壊が起こるのを回避することができる。
なお、共通電極基板調製工程、配向膜形成工程、液晶塗布工程、基板貼り合せ工程、液晶配向工程および切断工程については、上記第1態様と同様であるので、ここでの説明は省略する。以下、本態様の液晶表示素子の製造方法における多面付けTFT基板調製工程および絶縁工程について説明する。
(1)多面付けTFT基板調製工程
本態様における多面付けTFT基板調製工程は、上記「A.多面付けTFT基板」の第2実施態様の多面付けTFT基板を調製する工程である。
多面付けTFT基板を構成する、ゲート線、ソース線、ゲート線用ショートバー、ソース線用ショートバー、接続部、ゲート線用接続配線、ソース線用接続配線、TFT、画素電極等の各部材の形成方法としては、一般的な方法を用いることができる。
なお、多面付けTFT基板については、上記「A.多面付けTFT基板」の第2実施態様に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
(2)絶縁工程
本態様における絶縁工程は、多面付けTFT基板の接続部を切断除去して、ゲート線およびソース線を絶縁する工程である。
基板貼り合せ工程までで得られた多面取り用液晶セルから、多面付けTFT基板の接続部を切断除去することにより、ゲート線およびソース線を絶縁する。
多面付けTFT基板の接続部を切断除去する方法としては、一般的なパネルの切断方法を用いることができる。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。