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JP2008270175A - 非水電解質二次電池用正極および非水電解質二次電池 - Google Patents

非水電解質二次電池用正極および非水電解質二次電池 Download PDF

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Abstract

【課題】 非水電解質二次電池において、正極活物質層における導電剤含有量を大きく増加させることなく、充放電の繰返しに伴って正極活物質粒子が導電ネットワークから孤立しないように正極を改良し、電池の高出力化および長寿命化を図る。
【解決手段】 正極1は、活物質層10および集電体11を含み、活物質層10に含有される活物質全量の80重量%以上が一次粒子12aの形態であり、さらに、一次粒子12aの表面には導電性被覆層13が形成されている。この構成により、充放電の繰返しに伴う活物質自体の崩壊およびこれに伴う活物質層10の体積変化が十分に抑制される。その結果、一次粒子12a間で強固に形成された導電ネットワークが保たれるので、出力特性と寿命特性とを高次に両立できる。
【選択図】図1

Description

本発明は、非水電解質二次電池用正極および非水電解質二次電池に関する。より詳しくは、本発明は主に非水電解質二次電池における正極活物質の改良に関する。
近年、電子機器、特に小型民生用途の電子機器のポ−タブル化、コ−ドレス化が急速に進んでおり、これらの駆動用電源として、小型かつ軽量で、高エネルギー密度を有し、寿命の長い二次電池の開発が強く望まれている。また、小型民生用途のみならず、電力貯蔵用や電気自動車といった、高出力特性、長期に亘る耐久性や安全性などが要求される大型の二次電池に対する技術展開も加速してきている。このような観点から、作動電圧およびエネルギー密度が高い非水電解質二次電池、特に、リチウム二次電池が、電子機器用、電力貯蔵用、電気自動車などの電源として期待されている。
非水電解質二次電池は、正極、負極、セパレータおよび非水電解質を含む。正極は正極活物質を含有する。正極活物質には、リチウムに対する電位が高く、安全性に優れ、合成が比較的容易なリチウムコバルト酸化物(LiCoO2)、リチウムニッケル酸化物(LiNiO2)などが用いられる。負極は負極活物質を含有し、負極活物質には黒鉛などの種々の炭素材料が用いられる。正極および負極は、一般には、活物質および結着剤を有機溶媒に溶解または分散させてペーストを調製し、このペーストを金属箔などの集電体表面に塗布して乾燥することにより作製される。このとき、正極活物質は金属酸化物であり導電性に乏しいため、カーボンブラックなどの導電剤が正極活物質と併用される。セパレータは正極と負極との間に配置され、非水電解質が含浸される。セパレータには、主として、ポリオレフィン製の微多孔膜が用いられる。非水電解質には、たとえば、LiBF4、LiPF6などのリチウム塩を非プロトン性有機溶媒に溶解した液状の非水電解質が用いられる。
正極活物質は、粉末状のものを用いるのが一般的である。この粉末は、平均粒径1μm程度の微細な一次粒子が多数凝集して形成される平均粒径10〜20μm程度の二次粒子である。一次粒子の凝集体である正極活物質は、充放電に伴って一次粒子の単位で膨張および収縮を繰り返す。充放電サイクルが繰り返されると、一次粒子の膨張および収縮により、一次粒子間の粒界に応力が加わり、やがて二次粒子は崩壊する。崩壊した二次粒子表面の一次粒子は導電剤との接触によって電気的接続が確保されるので、充放電反応に寄与できる。しかしながら、崩壊した二次粒子の内部に存在する一次粒子は、崩壊によって表面の一次粒子との接触が断たれるとともに、導電剤とも接触していないため、導電ネットワークから孤立し、充放電反応に寄与できない。したがって、充放電サイクルを繰り返すと、崩壊した二次粒子の内部に存在する一次粒子の分だけ、電池の容量が低下する。
電池容量の低下を防止するため、たとえば、基本組成がLiMeO2(式中Meは遷移金属を示す)であるリチウム含有遷移金属複合酸化物であり、該酸化物を構成する粒子がほとんど一次粒子であるリチウム二次電池用正極活物質材料が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1によれば、二次粒子がほとんど存在しないので、充放電に伴って一次粒子が膨張および収縮しても、二次粒子の崩壊(微細化)による容量低下が起こらず、電池の充放電サイクル寿命特性が向上すると記載されている。
しかしながら、特許文献1に提案されているように、単に正極活物質として一次粒子を用いるだけでは、電池の容量低下を防止できず、充放電サイクル寿命特性の向上効果は不十分である。特に、一次粒子化により単位重量当りの表面積が大きくなった活物質に均一に導電性を付与するためには、多量の導電剤が必要になる。しかしながら、多量の導電剤を添加すると、正極活物質層の機械的強度、体積当たりの容量などが低下するおそれがある。
また、表面がアセチレンブラックで被覆された活物質の一次粒子を凝集させて得られる二次粒子を、正極活物質として用いるリチウム二次電池が提案されている(たとえば、特許文献2参照)。特許文献2によれば、充放電に伴う一次粒子の膨張収縮によって二次粒子が一次粒子に崩壊しても、一次粒子の表面にはアセチレンブラックが被覆されているので、二次粒子の中心部分に存在する一次粒子も導電ネットワークから孤立せず、充放電反応に寄与し、電池の寿命特性が向上すると記載されている。
特許文献2には、一次粒子にアセチレンブラックを被覆するに際し、一次粒子とアセチレンブラックの有機溶媒分散液とを混合し、得られる混合物を乾燥して解砕する方法が提案されている。なお、乾燥をスプレードライにより行う場合は、解砕は必要ない。また、有機溶媒に正極活物質の二次粒子およびアセチレンブラックを添加し、二次粒子の一次粒子への粉砕および一次粒子へのアセチレンブラックの被覆を同時に行う方法も提案されている。この方法は、ボールミルにより行うことも記載されている。すなわち、特許文献2では、一次粒子へのアセチレンブラックの被覆は、湿式混合により行われる。
しかしながら、湿式混合では、一次粒子にアセチレンブラックをほぼ確実に被覆できるものの、被覆後の一次粒子の再凝集が起こり易いので、二次粒子が生成するのを避けられない。この二次粒子を再々粉砕して一次粒子化すると、アセチレンブラックの被覆層が一次粒子表面から剥離するおそれがある。また、そのような再々粉砕は、工業的にも不利である。したがって、特許文献2の技術においても、充放電に伴う二次粒子の崩壊は免れ得ない。二次粒子の崩壊は、正極活物質層の体積変化を引き起こし、それに伴って、電池内部抵抗、電池容量などが変化するので、好ましくない。
特開2003−68300号公報 特開平11−329504号公報
本発明の目的は、導電剤を増量しなくても、充放電の繰返しに伴う活物質粒子の導電ネットワークからの孤立が起こらず、電池の高出力化および長寿命化に寄与できる非水電解質二次電池用正極、およびこの正極を用いる非水電解質二次電池を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた。その結果、活物質の一次粒子表面に導電剤を被覆するとともに、活物質層内で活物質全量の80重量%以上を一次粒子の形態で存在させる構成を想到するに至った。本発明者らは、前記の構成によれば、充放電の繰返しに伴う二次粒子形態の活物質の崩壊が僅かになり、活物質層の体積変化を十分に抑制でき、活物質層内の導電ネットワークが電池の使用初期とほぼ同等の水準で長期間にわたって保持されることを見出し、本発明を完成した。
本発明は、活物質を含有し、活物質全量の80重量%以上が活物質の一次粒子の形態で存在し、かつ活物質の一次粒子がその表面に導電性被覆層を有する活物質層を、集電体の少なくとも片面に設けてなる非水電解質二次電池用正極に係る。
活物質の一次粒子は、その表面に活物質とは異なる金属酸化物を含有する金属酸化物層を有し、さらに金属酸化物層の表面に導電性被覆層を有することが好ましい。
活物質の一次粒子表面への導電性被覆層の形成は、活物質の一次粒子と導電剤とを乾式混合することにより行われることが好ましい。
乾式混合は、メカノケミカル法により行われることが好ましい。
活物質層は、全量の80重量%以上が一次粒子であり、かつ一次粒子がその表面に導電性被覆層を有する活物質とともに導電剤を含有することが好ましい。
また、本発明は、本発明の非水電解質二次電池用正極と、リチウムイオンを吸蔵放出する活物質を含有する負極と、セパレータとからなる電極群、および、非水電解質を含む非水電解質二次電池に係る。
本発明によれば、表面に導電剤を被覆した活物質の一次粒子を、一次粒子の形態のままで活物質層内に存在させることにより、充放電を繰返し行っても、二次粒子形態の活物質の崩壊をおよびそれに伴う活物質層の体積変化を顕著に減少させ得る。その結果、活物質粒子の活物質層内における導電ネットワークからの孤立がほとんど起こらない。したがって、本発明の非水電解質二次電池用正極は、非水電解質二次電池の高出力化および長寿命化に大きく寄与できる。また、本発明の非水電解質二次電池は、本発明の正極を含むことにより、出力が高く、充放電を繰り返しても出力の低下が非常に少なく、従来の非水電解質二次電池よりも長期にわたっての使用が可能である。
[非水電解質二次電池用正極]
本発明の非水電解質二次電池用正極(以下単に「正極」とする)は、活物質層において、活物質全量の80重量%以上が一次粒子の形態で存在し、かつ活物質の一次粒子がその表面に導電性被覆層を有することを特徴とする。
活物質に占める一次粒子の割合は、80重量%以上であれば多いほど良く、活物質の全量が一次粒子であることが特に好ましい。一次粒子形態の活物質の割合が80重量%未満では、二次粒子形態の活物質の割合が相対的に多くなる。その結果、充放電の繰返しにより、二次粒子形態の活物質の崩壊およびそれに伴う活物質層の体積変化が顕著になり、活物質層内の導電ネットワークを十分に維持できなくなるおそれがある。
図1は、本発明の実施形態の1つである正極1の構成を模式的に示す縦断面図である。図2は、図1に示す正極1における活物質層10の表面状態を示す走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。図3は、従来の正極における活物質層の表面状態を示す走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。なお、図3に示す従来の正極は、活物質層内に含有される活物質の全量が、二次粒子形態である。
正極1は、活物質層10および集電体11を含む。なお、図2および図3から次のことが明らかである。正極1における活物質層10は、含有される活物質全量の80重量%以上が一次粒子形態であることにより、非常に平滑な表面を有している。これに対し、従来の正極における活物質層は、活物質全量が二次粒子形態の活物質であることから、表面の凹凸が目立っている。
活物質層10は、集電体11の少なくとも一方の面に設けられ、活物質12を含有し、さらに必要に応じて、導電剤、結着剤などを含有する。
活物質12は、全量の80重量%以上が一次粒子12aであり、残部が二次粒子である。活物質12の一次粒子12aはその表面に導電性被覆層13を有している。導電性被覆層13は、一次粒子12aの全表面を被覆している必要はない。本発明において一次粒子12aとは、粒子同士が凝集・結合して二次粒子を形成せず、単独で存在する粒子である。また、二次粒子は、一次粒子の表面に導電性被覆層を形成した後に二次粒子化したものでもよく、二次粒子の表面に導電性被覆層を形成したものでもよい。
活物質12としては、非水電解質二次電池の分野で常用される正極活物質を使用でき、それらの中でも、リチウム複合金属酸化物が好ましい。リチウム複合酸化物としては、例えば、LixCoO2、LixNiO2、LixMnO2、LixCoyNi1-yz、LixCoy1-yz、LixNi1-yyz、LixMn24、LixMn2-yy4、LiMPO4、Li2MPO4F(式中、MはNa、Mg、Sc、Y、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Al、Cr、Pb、SbおよびBよりなる群から選ばれる少なくとも1つの元素を示す。x=0〜1.2、y=0〜0.9、z=2.0〜2.3。なお、xは活物質作製直後の値であり、充放電により増減する。)などが挙げられる。さらにこれらリチウム複合金属酸化物の一部を異種元素で置換してもよい。活物質12は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
活物質12の一次粒子12aの平均粒径は、好ましくは0.1〜10μm、より好ましくは0.3〜5μmである。一次粒子12aの平均粒径が0.1μm未満では、活物質層10における活物質12の充填密度を満足できる程度まで高めることができず、得られる非水電解質二次電池の容量密度が不十分になるおそれがある。一方、一次粒子12aの平均粒径が10μmを超えると、活物質12の出力特性が小さくなるおそれがある。なお、本明細書において、一次粒子12aの粒径は、レーザー回折式粒度分布計(商品名:MT−3000、日機装(株)製)を用い、レーザー回折散乱法(マイクロトラック)により測定される体積平均粒子径である。また、活物質全量に対する一次粒子の含有割合(重量%)も、レーザー回折式粒度分布計(商品名:MT−3000)を用いて測定される。
活物質12の一次粒子12aは、たとえば、固相反応法、析出法、溶融塩法、噴霧燃焼法、粉砕法、これらの2種以上を組み合わせた方法などの公知の方法に従って製造できる。たとえば、固相反応法では、原料粉末を混合して焼成することによって一次粒子12aが得られる。また、析出法では溶液中において一次粒子12aを析出させる。また、粉砕法では、通常の方法で合成される二次粒子に機械的応力を付加することによって一次粒子が得られる。機械的応力の付加は、たとえば、乾式または湿式のボ−ルミル、振動ミル、ジェットミルなどを用いて行われる。より具体的には、たとえば、ジルコニアビーズなどの媒体の存在下に活物質の二次粒子を遊星型ボ−ルミルで粉砕することにより、二次粒子が粉砕され、一次粒子12aが得られる。なお、二次粒子の粉砕のみを行う場合には、ジルコニアビーズなどの媒体を用いることにより、生成する一次粒子の再凝集による二次粒子化を防止することができる。
活物質12の一次粒子12a表面に導電性被覆層13を形成する方法は特に限定されないが、好ましくは、活物質12の一次粒子12aと導電剤とを乾式混合するのがよい。これにより、活物質12の一次粒子12a表面に導電剤が被覆されるが、一次粒子12aが再凝集して二次粒子化することがほとんどなく、表面に導電性被覆層が形成された一次粒子のみがほぼ選択的に得られる。乾式混合は、メカノケミカル法により行うのが好ましい。メカノケミカル法は、粉体に圧縮、摩擦、衝撃などの機械的エネルギーを付与し、粉体を改質する方法である。メカノケミカル法を実施できる装置は種々市販されており、たとえば、循環型メカノフュージョンシステム(商品名、ホソカワミクロン(株)製)などが挙げられる。メカノケミカル法によれば、たとえば、活物質12の一次粒子と導電剤との混合物に圧縮、摩擦、衝撃などの機械的エネルギーを付与することにより、活物質12の一次粒子12aの表面に、導電性被覆層13を形成できる。
導電性被覆層13の形成に用いられる導電剤としては、たとえば、黒鉛類、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック類、炭素繊維、金属繊維などの導電性繊維などが挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。導電剤の使用量は特に制限されないが、活物質12の一次粒子100重量部に対して、好ましくは1〜20重量部、さらに好ましくは1〜10重量部である。導電剤の使用量を前記範囲から選択すれば、単に、電池の出力特性および寿命特性をバランス良く向上させ得るだけでなく、活物質12の活物質層10への充填性が向上するので、電池の高容量化をもあわせて達成できる。導電剤の使用量が1重量部未満では、活物質層10における導電ネットワークが不十分になり、一部の一次粒子12aが導電ネットワークから孤立するおそれがある。導電剤の使用量が20重量部を超えると、活物質層10の機械的強度、体積当たりの容量などが低下するおそれがある。
活物質層10中には、活物質12の一次粒子12aを被覆する導電剤とは別に、活物質12と共に導電剤を併存させることができる。
この導電剤を、活物質12の一次粒子12a表面に設けた導電性被覆層13と接触させることにより、活物質層10の導電性がさらに向上する。それと共に、充放電の繰返しに伴って活物質層10の体積変化が起こっても、この導電剤が活物質12内の導電ネットワークを確保する役目を果たす。したがって、導電剤の全使用量が同じである場合は、導電性被覆層13を形成しかつ活物質層10中にも導電剤を存在させると、導電性被覆層13のみに導電剤を含有させるよりも、活物質層10中の導電性がさらに高まる。その結果、電池のさらなる高出力化が可能になる。
活物質層10中に活物質12と共に併存させる導電剤としては、活物質12の一次粒子12aを被覆する導電剤と同様のものを使用できる。この導電剤は、導電性被覆層13に用いられる導電剤との使用合計量が、活物質12の一次粒子100重量部に対して、1〜20重量部になるように使用するのが好ましい。この使用範囲であれば、単に電池の出力および寿命がバランス良く向上するだけでなく、活物質12の充填性が向上し、電池のさらなる高容量化も併せて達成できる。
結着剤としては、非水電解質二次電池の分野で常用されるものを使用でき、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)およびその変性体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体などのフッ素樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィンなどが挙げられる。結着剤の使用量は特に制限されないが、好ましくは、活物質12の100重量部に対して1〜10重量部である。
活物質層10は、たとえば、活物質12および必要に応じて導電剤、結着剤などを分散媒に溶解または分散させて正極合剤スラリーを調製し、この正極合剤スラリーを集電体11の表面に塗布して乾燥させ、圧延することにより形成でき、これにより、正極1が得られる。分散媒としては、たとえば、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルホルムアミド、ヘキサメチルスルホルアミド、テトラメチル尿素などのアミド類、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルアミンなどのアミン類、メチルエチルケトン、アセトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、テトラヒドロフランなどのエーテル類、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類などが挙げられる。圧延は、所定の圧力で1〜5回行う。活物質層10における活物質密度は好ましくは1.8〜3.8g/cm3であり、活物質密度が前記範囲になるように圧延を行うのが好ましい。
集電体11としては、この分野で常用されるものを使用でき、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、チタンなどからなる導電性基板が挙げられる。導電性基板の形態としては、たとえば、箔、フィルム、シート、織布、不織布などが挙げられる。また、導電性基板は多孔性でもよく、無孔であってもよい。集電体11の厚さは特に制限されないが、好ましくは1〜50μm、さらに好ましくは5〜30μmである。
図4は、本発明の別の実施形態である正極2の構成を模式的に示す縦断面図である。正極2は正極1に類似し、対応する部分については同一の参照符号を付して説明を省略する。正極2は、活物質層10aにおいて、活物質12に代えて活物質15を含有することを特徴としている。
活物質15は、その全重量の80重量%以上が一次粒子12aであり、残部が二次粒子である点は活物質12と同様であるが、一次粒子12aの表面に金属酸化物層16および導電性被覆層13が順次形成されている点で、活物質12とは異なっている。
活物質15の一次粒子12aの表面に金属酸化物層16を設けることにより、活物質15表面での非水電解質の分解反応が抑制され、電池のさらなる長寿命化を図ることができる。金属酸化物層16に含有される金属酸化物は、活物質15とは異なるものを使用する。金属酸化物としては、電池内で不活性であり、かつ化学的に安定な化合物が好ましい。電池内で不活性とは、非水電解質との接触下、酸化還元電位下などにおいて、電池特性に悪影響を及ぼす副反応などを起こさず、電池に不具合を発生させないことである。金属酸化物の具体例としては、例えば、アルミナ、ゼオライト、窒化珪素、炭化珪素、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、二酸化ケイ素などが挙げられる。なお、金属酸化物は、高純度であることがさらに好ましい。金属酸化物は1種を単独でまたは2種以上を併用できる。
金属酸化物層16は、活物質15の一次粒子12aの全表面を覆っている必要はなく、一部を覆っていてもよい。金属酸化物層16の形成は、活物質15の一次粒子12aにおける導電性被覆層13の形成と同様に行うことができる。金属酸化物の使用量は、活物質15の一次粒子12aの100重量部に対して、好ましくは1〜20重量部、さらに好ましくは1〜10重量部である。金属酸化物の使用量を前記範囲から選択すれば、単に、電池の出力特性および寿命特性をバランス良く向上させ得るだけでなく、活物質15の活物質層10aへの充填性が向上するので、電池の高容量化をもあわせて達成できる。
金属酸化物層16を形成した後、導電性被覆層13を形成することにより、活物質15の一次粒子12aの表面に金属酸化物層16および導電性被覆層13が形成される。
上記のような構成を有する本発明の正極1、2は、出力特性と寿命特性の両方に優れているので、パフォーマンスが高い非水電解質二次電池を提供することが可能となる。
[非水電解質二次電池]
本発明の非水電解質二次電池は、本発明の正極を用いることを特徴とし、それ以外は、従来の非水電解質二次電池と同様の構成を採ることができる。本発明の非水電解質二次電池としては、たとえば、図5に示すものが挙げられる。
図5は、本発明の他の実施形態である非水電解質二次電池20の構成を模式的に示す部分縦断面図である。非水電解質二次電池20は、正極25、負極26、セパレータ27、電池ケース28、封口板29および図示しない非水電解質を含む、円筒型電池である。正極25および負極26はセパレータ27を介して重ね合わされ、さらに円筒状に捲回され、捲回型電極群24が構成される。
正極25は、セパレータ27を介して、負極26に対向するように設けられる。正極25には、本発明の正極を使用できる。
負極26は、図示しない負極集電体と、負極活物質層とを含む。
負極集電体としては、例えば、ステンレス鋼、ニッケル、銅、銅合金などからなる導電性基板を使用できる。導電性基板の形態としては、例えば、箔、フィルム、シート、織布、不織布などが挙げられる。また、導電性基板は多孔性でもよく、無孔であってもよい。負極集電体の厚さは特に制限されないが、好ましくは1〜50μm、さらに好ましくは5〜20μmである。負極集電体の厚さを前記範囲から選択すれば、負極26の強度を保持しつつ、軽量化できる。
負極活物質層は、負極集電体の一方または両方の表面に設けられ、リチウムイオンを吸蔵および放出する負極活物質を含有し、さらに必要に応じて結着剤、増粘剤などを含有する。負極活物質としては、非水電解質二次電池の分野で常用されるものを使用でき、例えば、金属材料、炭素材料、酸化物、窒化物、錫化合物、珪化物これらの2種以上を複合化した材料などが挙げられる。金属材料の具体例としては、たとえば、リチウム、リチウム合金などが挙げられる。金属材料の形態としては、例えば、粒子状、板状、繊維状などが挙げられる。炭素材料としては、例えば、各種天然黒鉛、コークス、炭素繊維、球状炭素、各種人造黒鉛、非晶質炭素などが挙げられる。負極活物質は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
結着剤として、非水電解質二次電池の分野で常用されるものを使用でき、例えば、PVDFおよびその変性体、FEP、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体などのフッ素樹脂、スチレンブタジエンゴムなどのゴム粒子、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィンなどが挙げられる。結着剤の使用量は特に制限されないが、好ましくは負極活物質100重量部に対して、0.5〜10重量部である。
増粘剤としては、この分野で常用されるものを使用でき、エチレン−ビニルアルコール共重合体、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロースなどが挙げられる。
負極活物質層は、たとえば、負極活物質および必要に応じて結着剤、増粘剤などを分散媒に分散または溶解させて負極合剤スラリーを調製し、このスラリーを負極集電体の少なくとも一方の表面に塗布して乾燥させ、さらに圧延することにより形成され、負極26が得られる。分散媒としては、正極合剤スラリーの調製に使用される分散媒と同様のものを使用でき、さらに水も使用できる。
セパレータ27は、正極25と負極26との間に介在するように設けられる。
セパレータ27には、大きなイオン透過度を持ち、所定の機械的強度と絶縁性とを兼ね備えた微多孔薄膜、織布、不織布などが用いられる。セパレータ27の材質としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィンが、耐久性に優れかつシャットダウン機能を有している観点から好ましい。セパレータ27の厚さは、一般的には10〜300μmであるが、通常は40μm以下、好ましくは5〜30μm、さらに好ましくは10〜25μmである。さらにセパレータ27は1種の材料からなる単層膜であってもよく、2種以上の材料からなる複合膜または多層膜であってもよい。セパレータ27の空孔率の範囲は30〜70%が好ましく、35〜60%がより好ましい。ここで空孔率とは、セパレータ27の体積に占める孔部の体積比を示す。
非水電解質としては、液状、ゲル状または固体(高分子固体電解質)状の電解質を使用することができる。
液状非水電解質(非水電解液)は、非水溶媒に支持塩(溶質)を溶解させることにより得られる。非水溶媒としては、この分野で常用されるものを使用でき、例えば、環状炭酸エステル、鎖状炭酸エステル、環状カルボン酸エステルなどが挙げられる。環状炭酸エステルとしては、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)などが挙げられる。鎖状炭酸エステルとしては、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジメチルカーボネート(DMC)などが挙げられる。環状カルボン酸エステルとしては、γ−ブチロラクトン(GBL)、γ−バレロラクトン(GVL)などが挙げられる。非水溶媒は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
支持塩としては、例えば、LiClO4、LiBF4、LiPF6、LiAlCl4、LiSbF6、LiSCN、LiCF3SO3、LiCF3CO2、Li(CF3SO22、LiAsF6、LiB10Cl10、低級脂肪族カルボン酸リチウム、LiCl、LiBr、LiI、クロロボランリチウム、ホウ酸塩類、イミド塩類などが挙げられる。ホウ酸塩類としては、ビス(1,2−ベンゼンジオレート(2−)−O,O’)ホウ酸リチウム、ビス(2,3−ナフタレンジオレート(2−)−O,O’)ホウ酸リチウム、ビス(2,2’−ビフェニルジオレート(2−)−O,O’)ホウ酸リチウム、ビス(5−フルオロ−2−オレート−1−ベンゼンスルホン酸−O,O’)ホウ酸リチウムなどが挙げられる。イミド塩類としては、ビストリフルオロメタンスルホン酸イミドリチウム((CF3SO22NLi)、トリフルオロメタンスルホン酸ノナフルオロブタンスルホン酸イミドリチウム(LiN(CF3SO2)(C49SO2))、ビスペンタフルオロエタンスルホン酸イミドリチウム((C25SO22NLi)などが挙げられる。溶質は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。支持塩の非水溶媒に対する溶解量は、好ましくは0.5〜2モル/Lである。
また、非水電解液には、炭素−炭素不飽和結合を少なくとも一つ有する環状炭酸エステルを含有させることが好ましい。このような環状炭酸エステルは、負極26上で分解してリチウムイオン伝導性の高い被膜を形成する。これにより、充放電効率が向上する。炭素−炭素不飽和結合を少なくとも1つ有する環状炭酸エステルとしては、例えば、ビニレンカーボネート(VC)、3−メチルビニレンカーボネート、3,4−ジメチルビニレンカーボネート、3−エチルビニレンカーボネート、3,4−ジエチルビニレンカーボネート、3−プロピルビニレンカーボネート、3,4−ジプロピルビニレンカーボネート、3−フェニルビニレンカーボネート、3,4−ジフェニルビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート(VEC)、ジビニルエチレンカーボネートなどが挙げられる。これらの中でも、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、ジビニルエチレンカーボネートなどが好ましい。前記環状炭酸エステルは単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。なお、上記環状炭酸エステルは、その水素原子の一部がフッ素原子で置換されていてもよい。
さらに、非水電解液には、過充電時に分解して電極上に被膜を形成し、電池を不活性化するベンゼン誘導体を含有させてもよい。ベンゼン誘導体としてはその分子内にベンゼン環を有するものであれば特に制限されないが、フェニル基および前記フェニル基に隣接する環状化合物基を有するものが好ましい。前記環状化合物基としては、フェニル基、環状エーテル基、環状エステル基、シクロアルキル基、フェノキシ基などが好ましい。ベンゼン誘導体の具体例としては、シクロヘキシルベンゼン、ビフェニル、ジフェニルエーテルなどが挙げられる。ベンゼン誘導体は単独または2種以上を組み合わせて使用できる。ただし、ベンゼン誘導体の含有量は、非水溶媒全体の10体積%以下であることが好ましい。
ゲル状非水電解質は、非水電解液と、この非水電解液を保持できる高分子材料とを含む。このような高分子材料としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリエチレンオキサイド、ポリ塩化ビニル、ポリアクリレート、ポリビニリデンフルオライドヘキサフルオロプロピレンなどが好適に使用される。
固体状電解質は、溶質(支持塩)と高分子材料とを含む。溶質は前記で例示したものと同様のものを使用できる。高分子材料としては、たとえば、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとの共重合体などが挙げられる。
電池ケース28は、長手方向の一端が開口している有底円筒状容器である。電池ケース28は、例えば鉄製であり、その外面および/または内面には、光沢ニッケルめっき、半光沢ニッケルめっき、ニッケルめっきなどのめっきが施されていてもよい。封口板29は、電池ケース28の開口を封口するとともに、正極端子32を備えている。
非水電解質二次電池20は、たとえば、次のようにして製造される。まず、正極25の図示しない正極集電体に正極リード30の一端が接続される。正極リード30の材質は、例えば、アルミニウムである。また、負極26の図示しない負極集電体に負極リード31の一端が接続される。負極リード31の材質は、例えば、ニッケルである。次に、正極25および負極26を、セパレータ27を介して捲回し、捲回型電極群24を作製する。この捲回型電極群24を、電池ケース28内部に収容する。
正極リード30の他端を封口板29に接続し、負極リード31の他端を電池ケース28の底部に接続する。電池ケース28の底部は負極端子になる。この電池ケース28を、図示しない電池外装ケースに挿入した後、電池ケース28内に減圧下に非水電解液を注液する。封口板29を、ガスケット33を介して電池ケース28の開口に装着し、電池ケース20の開口端部を封口板29に向けてかしめて付けて電池ケース28を密閉する。これにより、非水電解質二次電池20が得られる。
なお、捲回型電極群24と封口板29との間には、必要に応じて、図示しない樹脂製の上部絶縁板が配置される。また、捲回型電極群24と電池ケース28の底部との間には、必要に応じて、図示しない樹脂製の下部絶縁板が配置される。
本発明の非水電解質二次電池は、円筒型に限定されず、たとえば、角型、コイン型、ボタン型、ラミネート型などの種々の形態に作製できる。
以下に、実施例および比較例を挙げ、本発明を具体的に説明する。
(実施例1)
(1)正極活物質の作製
NiSO4水溶液に、モル比としてNi:Co:Al=7:2:1になるようにCoおよびAlの硫酸塩を加えて飽和水溶液を作製し、撹拌下に、この飽和水溶液に水酸化ナトリウム溶液を徐々に滴下して中和することにより、Ni0.7Co0.2Al0.1(OH)2で示される三元系の沈殿物を共沈法により生成させた。この沈殿物を濾過により分取して水洗し、80℃で乾燥し、複合水酸化物を得た。得られた複合水酸化物の体積平均粒径を粒度分布計(商品名:MT3000、日機装(株)製/商品名)にて測定した結果、体積平均粒径12μmであった。
この複合水酸化物を大気中900℃で10時間の熱処理を行い、Ni0.7Co0.2Al0.1Oで示される三元系の複合酸化物を得た。得られた複合酸化物の構造を粉末X線回折にて評価した結果、単一相の酸化ニッケルと同じであることを確認した。ここでNi、Co、Alの原子数の和とLiの原子数とが等量になるように水酸化リチウム1水和物を加え、空気中800℃で10時間の熱処理を行うことにより、LiNi0.7Co0.2Al0.12で示されるリチウムニッケル複合酸化物を得た。
このリチウムニッケル複合酸化物の構造を粉末X線回折にて評価した結果、単一相の六方晶層状構造であると共に、CoおよびAlが固溶していることを確認した。このリチウムニッケル複合酸化物を粉砕して分級することにより、平均粒径が12.4μm、BET法による比表面積が0.45m2/gである正極活物質の二次粒子を得た。この二次粒子を走査電子顕微鏡(SEM)により観察した結果、二次粒子を構成する一次粒子は約1μmの大きさであった。
この正極複合酸化物とN−メチル−2−ピロリドン(NMP)溶媒を100:200重量部で混合し、直径2mmのジルコニアビーズを用いて遊星型ボールミルにて2時間粉砕処理を行った。粒度分布を測定した結果、平均粒径0.85μmであり、SEM観察の結果、一次粒子まで粉砕されていることを確認した。
上記で得られた正極活物質の一次粒子100重量部と、アセチレンブラック3重量部とを、循環型メカノフュージョンシステム(商品名、ホソカワミクロン(株)製)により、ステータークリアランスを5mm、負荷20kWで30分間乾式混合した。得られた混合物を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、正極活物質の一次粒子の表面にはアセチレンブラックからなる導電性被覆層が形成された複合一次粒子が得られ、該複合一次粒子の凝集物(二次粒子)は認められなかった。
(2)正極の作製
上記で得られた複合一次粒子3kgおよびポリフッ化ビニリデン溶液(商品名:KF1320、呉羽化学工業(株)製)1000gを適量のNMPとともにプラネタリーミキサーにて混練し、正極合剤スラリーを作製した。この正極合剤スラリーを厚み15μmのアルミ箔上に塗工、乾燥した。そして総厚が100μmとなるように圧延した後、極板幅52mmになるようにスリットし、極板中央部分に幅5mmのアルミ製正極リードの一端を接合し、正極を作製した。
(3)負極の作製
人造黒鉛(負極活物質)3kg、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム粒子結着剤(商品名:BM−400B、固形分重量40重量%、日本ゼオン(株)製)75g、カルボキシメチルセルロース(増粘剤)30gおよび適量の水をプラネタリーミキサーにて混練し、負極合剤スラリーを作製した。この負極合剤スラリーを厚み10μmの銅箔上に塗工、乾燥した。そして総厚が110μmとなるようにプレスした後、極板幅55mmになるようにスリットし、極板両端部分にそれぞれ幅5mmのニッケル製負極リードの一端を接合し、負極を作製した。
(4)電極群の作製
上記で得られた正極および負極を、ポリエチレンセパレータ(品番0540、旭化成ケミカルズ(株)製)を介して両端に正極集電体および負極集電体が露出する形で円筒状に捲回し、捲回型電極群(直径17mm、長さ60mm)を作製した。
(5)非水電解液の調整
エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとの体積比1:3の混合溶媒に、1重量%のビニレンカーボネートを添加し、さらにLiPF6を1.0mol/Lの濃度で溶解し、非水電解液を調製した。
(6)円筒型非水電解質二次電池の作製
捲回型電極群を直径18mm、高さ65mmの有底円筒形の電池ケースに挿入した。それと共に、正極リードの他端を封口板に接続し、負極リードの多端を電池ケースの底に接続した。この電池ケースを円筒状のプラスチック製外装体に挿入した後、電池ケース内に非水電解液5.2mlを注液し、電池ケースの開口端部をかしめて封口板を固定し、電池ケースを密閉して本発明の非水電解質二次電池(設計容量1200mAh)を作製した。
(実施例2)
実施例1と同様にして、正極活物質の一次粒子を作製した。この正極活物質の一次粒子100重量部と、アルミナ(Al23、金属酸化物)3重量部とを、循環型メカノフュージョンシステムで30分間混合した。得られた混合物に、アセチレンブラック3重量部を加え、循環型メカノフュージョンシステムで30分間混合し、複合一次粒子を作製した。循環型メカノフュージョンシステムの運転条件は、いずれの場合も、実施例1と同様にした。得られた複合一次粒子を走査型電子顕微鏡で観察したところ、該複合一次粒子の凝集物(二次粒子)は認められなかった。
実施例1の複合一次粒子に代えてこの複合一次粒子を用いる以外は、実施例1と同様にして、本発明の非水電解質二次電池を作製した。
(実施例3)
実施例1と同様にして、複合一次粒子を作製した。この複合一次粒子3.09kg、ポリフッ化ビニリデン溶液(KF1320)1000g、アセチレンブラック60gおよび適量のNMPをプラネタリーミキサーにて混練して正極合剤スラリーを作製した。なお、正極活物質表面に被覆した導電剤および正極合剤スラリー中に含有させた導電剤の量を合計すると、正極活物質100重量部に対して、導電剤5重量部を使用したことになる。
実施例1の正極合剤スラリーに代えてこの正極合剤スラリーを用いる以外は、実施例1と同様にして、本発明の非水電解質二次電池を作製した。
(実施例4)
実施例1と同様にして、正極活物質の一次粒子を作製した。この正極活物質の一次粒子100重量部と、アセチレンブラック5重量部とを、実施例1と同様にして、循環型メカノフュージョンシステムにより60分間乾式混合した。得られた混合物を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、正極活物質の一次粒子の表面にはアセチレンブラックからなる導電性被覆層が形成された複合一次粒子が得られ、該複合一次粒子の凝集物(二次粒子)は認められなかった。
実施例1の複合一次粒子に代えてこの複合一次粒子を用いる以外は、実施例1と同様にして、本発明の非水電解質二次電池を作製した。
(実施例5)
実施例1と同様にして、正極活物質の一次粒子および二次粒子を作製した。正極活物質の一次粒子80重量部、正極活物質の二次粒子20重量部およびアセチレンブラック3重量部を、実施例1と同様にして、循環型メカノフュージョンシステムにより30分間乾式混合し、複合一次粒子と、複合二次粒子との80:20(重量比)の混合物である正極活物質を作製した。
実施例1の複合一次粒子に代えてこの正極活物質を用いる以外は、実施例1と同様にして、本発明の非水電解質二次電池を作製した。
(比較例1)
実施例1と同様にして、正極活物質の二次粒子を作製した。この正極活物質の二次粒子100重量部と、アセチレンブラック3重量部とを、実施例1と同様にして、循環型メカノフュージョンシステムで30分間混合し、複合二次粒子を作製した。
実施例1の複合一次粒子に代えてこの複合一次粒子を用いる以外は、実施例1と同様にして、非水電解質二次電池を作製した。
(比較例2)
実施例1と同様にして、正極活物質の一次粒子を作製した。この一次粒子に対して循環型メカノフュージョンシステムによるアセチレンブラックの被覆を行わず、そのまま正極合剤スラリーの作製に用いた。すなわち、この一次粒子3kg、ポリフッ化ビニリデン溶液(KF1320)1000g、アセチレンブラック(導電剤)150gおよび適量のNMPをプラネタリーミキサーにて混練して正極合剤スラリーを作製した。なお、アセチレンブラックは、正極活物質の一次粒子100重量部に対して5重量部を使用したことになる。
実施例1の正極合剤スラリーに代えてこの正極合剤スラリーを用いる以外は、実施例1と同様にして、非水電解質二次電池を作製した。
(比較例3)
正極活物質の一次粒子と正極活物質の二次粒子との使用割合を80重量部:20重量部から70重量部:30重量部に変更する以外は、実施例5と同様にして、非水電解質二次電池を作製した。
実施例1〜5および比較例1〜3で得られた非水電解質二次電池について、以下の評価を行った。
(容量)
実施例1〜5および比較例1〜3の電池に関し、25℃環境下、240mA定電流、充電上限電圧4.2V、放電下限電圧2.5Vの条件下で充放電を行い、電池容量を求めた。その結果、各電池の初期電池容量はいずれもほぼ1200mAhであった。
(出力特性)
実施例1〜5および比較例1〜3の電池に関し、25℃環境下で充電深さが60%になるように240mA定電流で充電し、25℃環境下で1時間放置した。その後、図6に示すパターンで、定電流でのパルス充電およびパルス放電(ともに10秒間)を、1分間の休止を挟んで交互に行った。図6は、定電流下でのパルス充電およびパルス放電のパターンを示すグラフである。本実施例では図6のイメージとして示すように、電流値を1〜50Aの範囲で段階的に増加させ、各パルス印加後の10秒目の電池電圧を測定した。この試験により、放電側のパルスを印加したときの電流値と、パルス印加後10秒目の電池電圧の関係を求めた。その結果を図7に示す。図7は、放電側の電流と電圧との関係を示すグラフ(電流−電圧特性図)である。図7から電池電圧2.5V時点の電流値を算出し、これらの電圧値と電流値との積から出力値を算出した。結果を表1に示す。
(サイクル特性)
実施例1〜5および比較例1〜3の電池に関し、初期の電池容量および出力特性を確認した後、40℃環境下で2.4A定電流にて4.2Vまで充電し、2.4A定電流にて2.5Vまで放電する充放電サイクルを繰り返した。初期の放電容量および出力特性に対し、100サイクルごとの放電容量および出力特性を測定して容量維持率および出力低下率をプロットし、サイクル特性として示した。図8は、実施例1〜5および比較例1〜3の電池のサイクル特性を示すグラフである。
表1から、次のことが明らかである。実施例1〜5の電池は、比較例1〜3の電池に比べて、出力が大きくなっている。比較例1の電池との比較から、正極活物質の一次粒子化により、正極活物質の表面積が増加し、正極全体での電荷移動反応抵抗が低下したものと推測される。また、比較例2の電池との比較から、正極活物質の表面に導電性被覆層を形成することにより、個々の正極活物質に対して導電ネットワークが形成され、正極活物質表面での電荷移動反応が良化したと推測される。
実施例3の電池と実施例4の電池との比較から、導電剤の使用量が同じである場合には、正極活物質の一次粒子表面に単に導電性被覆層のみを形成するよりも、導電性被覆層を形成しかつ正極活物質層中に導電性被覆層とは別に導電剤を存在させる方が、さらに出力が向上することが明らかである。これは、正極活物質層中に導電性被覆層とは別に導電剤を存在させることで、充放電による正極の体積変化に追従して正極活物質層の電子伝導性が保たれ、出力がさらに向上したと推測される。
また、図8から、実施例1〜5の電池は、比較例1〜3の電池に比べて、実施例5の電池、実施例1および4の電池、実施例3の電池、実施例2の電池の順で、充放電サイクル(充放電の繰返し)に伴う容量維持率が向上していることが明らかである。
ここで、充放電サイクルに伴う容量および出力の劣化には、例えば、2つの要因が考えられる。第1の要因は、充放電における正極活物質の膨張収縮の応力によって、正極活物質である二次粒子が細分化され、二次粒子の内部に存在する一次粒子が正極活物質層内の導電ネットワークから孤立することである。第2の要因は、活物質の表面で非水電解液が分解して被膜を形成し、反応抵抗を増加させることである。
比較例の電池における劣化要因としては、比較例1の電池は二次粒子形態の正極活物質を用いているので、第1の要因が支配的であると考えられる。また、比較例2の電池は、一次粒子形態の正極活物質を、表面に導電性被覆層を形成してないで使用し、一次粒子化により正極活物質の表面積が単に増加しているだけなので、要因2が支配的であると考えられる。また、比較例3の電池は、一次粒子:二次粒子の正極活物質が70重量部:30重量部であり、二次粒子形態の正極活物質の量が多いことから、第1の要因により劣化が起こっているものと推測される。
これに対し、実施例1および4の電池は、一次粒子形態の正極活物質を使用する上に、一次粒子の表面に導電性被覆層を形成している。すなわち、一次粒子形態の正極活物質の使用により第1の要因が解消されるだけでなく、導電性被覆層の形成により正極活物質表面での非水電解液の分解が抑制されるので、第2の要因も若干解消されるものと推測される。また、実施例2の電池は、正極活物質の一次粒子表面に、まず、アルミナ(金属酸化物)層を形成し、さらに導電性被覆層を形成している。アルミナ層の形成により、正極活物質層表面での非水電解液の分解がさらに解消され、第2の要因が顕著に解消されたものと推測される。
また、実施例3の電池では、第1の要因および第2の要因が解消された効果に加え、正極活物質層中に導電性被覆層とは別に導電剤を含有させることで、充放電による正極の体積変化に追従して正極活物質層の電子伝導性が保持され、寿命特性が一層向上したものと推測される。また、実施例5の電池は、正極活物質の二次粒子が、正極活物質全量の20重量%含まれているが、正極活物質の一次粒子のみで構成されている実施例1の電池とほぼ同等のサイクル特性を有している。これは、第1の要因による劣化がまだ小さいためと推測される。
以上の結果より、本発明の非水電解質二次電池用正極を用いることで、良好な出力特性およびサイクル特性を有する非水電解質二次電池が得られることがわかる。
本発明の非水電解質二次電池は、従来の非水電解質二次電池と同様の用途に使用できるが、良好な出力特性およびサイクル特性を有するので、高出力と長寿命を要求される電気自動車用の電源として利用可能性が高い。
本発明の実施形態の1つである正極の構成を模式的に示す縦断面図である。 図1に示す正極における活物質層の表面状態を示す走査型電子顕微鏡写真である 従来の正極における活物質層の表面状態を示す走査型電子顕微鏡写真である。 本発明の別の実施形態である正極の構成を模式的に示す縦断面図である。 本発明の他の実施形態である非水電解質二次電池の構成を模式的に示す縦断面図である。 出力特性試験における定電流下でのパルス充電およびパルス放電のパターンを示すグラフである。 電池における放電側の電流と電圧との関係を示すグラフである。 実施例1〜5および比較例1〜3の電池のサイクル特性を示すグラフである。
符号の説明
1,2 正極
10,10a 活物質層
11 集電体
12,15 活物質
12a 活物質の一次粒子
13 導電性被覆層
16 金属酸化物層
20 非水電解質二次電池
24 捲回型電極群
25 正極
26 負極
27 セパレータ
28 電池ケース
29 封口板
30 正極リード
31 負極リード
32 正極端子
33 ガスケット

Claims (6)

  1. 活物質を含有し、活物質全量の80重量%以上が活物質の一次粒子の形態で存在し、かつ活物質の一次粒子がその表面に導電性被覆層を有する活物質層を、集電体の少なくとも片面に設けてなる非水電解質二次電池用正極。
  2. 活物質の一次粒子が、その表面に活物質とは異なる金属酸化物を含有する金属酸化物層を有し、さらに金属酸化物層の表面に導電性被覆層を有する請求項1に記載の非水電解質二次電池用正極。
  3. 活物質の一次粒子表面への導電性被覆層の形成が、活物質の一次粒子と導電剤とを乾式混合することにより行われる請求項1または2に記載の非水電解質二次電池用正極。
  4. 乾式混合が、メカノケミカル法により行われる請求項3記載の非水電解質二次電池用正極。
  5. 活物質層が、全量の80重量%以上が一次粒子でありかつ一次粒子がその表面に導電性被覆層を有する活物質とともに導電剤を含有する請求項1〜4のいずれか1つに記載の非水電解質二次電池用正極。
  6. 請求項1〜5のいずれか1つに記載の非水電解質二次電池用正極と、リチウムイオンを吸蔵放出する活物質を含有する負極と、セパレータとからなる電極群、および、非水電解質を含む非水電解質二次電池。
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