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JP2008244859A - アレイ式超音波プローブおよび超音波診断装置 - Google Patents

アレイ式超音波プローブおよび超音波診断装置 Download PDF

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JP2008244859A
JP2008244859A JP2007082699A JP2007082699A JP2008244859A JP 2008244859 A JP2008244859 A JP 2008244859A JP 2007082699 A JP2007082699 A JP 2007082699A JP 2007082699 A JP2007082699 A JP 2007082699A JP 2008244859 A JP2008244859 A JP 2008244859A
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Yohachi Yamashita
洋八 山下
Yasuharu Hosono
靖晴 細野
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Abstract

【課題】3層以上の音響整合層のうち、圧電素子と接し、低減衰率でダイシング加工性、耐熱性、上下層との接着性、導電性に優れ、かつ適切な音響インピーダンスを有するマグネシウム合金からなる音響整合層を備えたアレイ式超音波プローブを提供する。
【解決手段】バッキングと、バッキング上に配列され、それぞれ圧電素子およびこの圧電素子上に形成される3層以上の音響整合層を有する複数のチャンネルと、音響レンズとを具備し、圧電素子は圧電体とこの圧電体のバッキング側および音響整合層側にそれぞれ形成された電極とから構成され、25℃にて25〜40MRaylsの音響インピーダンスを有し、圧電素子の前記音響整合層側の電極は5μm以下の厚さを有し、3層以上の音響整合層は音響レンズに向けて音響インピーダンスが段階的に小さくなり、かつ電極と接する音響整合層は、25℃にて11〜19MRaylsの音響インピーダンスを有するMg−Sn系またはMg−Cu系のマグネシウム合金から構成される。
【選択図】 図1

Description

本発明は、被検体等に超音波信号を送受信するアレイ式超音波プローブおよびこのアレイ式超音波プローブを有する超音波診断装置に関する。
医療用の超音波診断装置や超音波画像検査装置は、対象物に対し超音波信号を送信し、その対象物内からの反射信号(エコー信号)を受信して対象物内を画像化するものである。この医療用の超音波診断装置や超音波画像検査装置は、超音波信号送受信機能を有する電子操作式のアレイ式超音波プローブが主に用いられている。
アレイ式超音波プローブは、バッキングと、このバッキング上に接着され、所望のスペースをあけてアレイ状に配列された複数のチャンネルと、このチャンネル上に接着された音響レンズとを備えた構造を有する。前記複数のチャンネルは、それぞれ前記バッキング上に形成され、例えばジルコンチタン酸鉛(PZT)系圧電セラミク材料やリラクサ系単結晶材料からなる圧電体の両面に電極を貼り付けた構造の圧電素子と、この圧電素子上に形成される音響整合層とを備える。なお、バッキングには各チャンネルのスペースに対応して溝が形成されている場合もある。
従来、前記音響整合層は1層構造、2層構造または3層以上の多層傾斜構造のものが知られている。特に、最近では広帯域化と高感度化のために3層以上の音響整合層が好適に用いられている(非特許文献1参照)。また、圧電素子を2次元状に配列した2次元アレイ式超音波プローブは3次元の動画像を得ることが可能であるため、圧電素子を1次元状に配列した1次元アレイ式超音波プローブに代わって用いられるようになっている。
一方、超音波プローブの一般的な製造方法ではPZTのような圧電材料からなる圧電体の両面に電極を形成した圧電素子をバッキングであるゴム板に貼り付け、さらに前記圧電素子上に音響整合層を接着して積層体とする。つづいて、前記積層体を音響整合層側からダイサーで幅を50〜300μm程度にアレイ切断して複数のチャンネルを形成する。2次元アレイ式超音波プローブでは、ダイサーでx、y方向にアレイ切断する。音響整合層をアレイ切断することにより、各チャンネル間のクロストークが防止される。このため、音響整合層は高い加工性でダイシングすることが重要である。ひきつづき、記各チャンネル間のダンシング溝に例えば低音響インピーダンス、高減衰性のシリコーンゴムのような比較的に柔らかい樹脂を充填して機械的な強度を保持する。この後、複数のチャンネルの音響整合層上に音響レンズを接着することにより超音波プローブを製造する。
音響整合層は、通常は使用される周波数(λ)の1/4の厚さのものが用いられる。音速が約5000m/sの材料からなる音響整合層は、例えば使用周波数が3MHzの場合、約400μmになる。音響整合層は、圧電素子とほぼ同じ厚さで用いられるため、減衰率が大きい材料を用いると、超音波信号が低下する。要望される減衰率は、20dB/m/MHz以下、さらに望ましくは2dB/m/MHz以下である。
このようなアレイ式超音波プローブは、医療用の超音波診断装置に適用した場合、診断時に音響レンズ側を被検体に当接させて各チャンネルの圧電素子を駆動させることにより、圧電素子前面から超音波信号を被検体内、つまり人体に送信する。この超音波信号は、圧電素子の駆動タイミングによる電子フォーカスおよび音響レンズによるフォーカスにより被検体内の所要位置に集束される。この時、圧電素子の駆動タイミングを制御することにより被検体内の所要範囲に超音波信号を送信することができ、被検体からのエコー信号を受信処理することにより所要範囲の超音波画像(断層像)が得られる。前記超音波プローブの圧電素子の駆動において、その圧電素子の背面側にも超音波信号が放出される。このため、各チャンネルの圧電素子の背面にバッキングを配置し、背面側への超音波信号をこのバッキングで吸収(減衰)して正規の超音波信号が背面側からの超音波信号(反射信号)と共に被検体内に送信される悪影響を回避している。
また、アレイ式超音波プローブの駆動時において、複数のチャンネルの圧電素子から放射された超音波エネルギーは音響整合層および音響レンズに吸収、減衰される。超音波エネルギーの一部は、熱に変換されるため、例えば循環器用超音波プローブではその音響整合層の温度が60℃以上となることもある。さらに、超音波プローブは使用中に相当の圧力が音響レンズを通して音響整合層にも常時、印加される。これらの熱影響による音響レンズと音響整合層の間の熱膨張差および機械的な圧力の要因によって、音響レンズと最上層の音響整合層の間、最上層の音響整合層とその下の音響整合層との間において剥離が生じる場合がある。その結果、超音波プローブ内での感度のばらつきを生じて信頼性を低下させる。甚だしい場合は、超音波プローブの機能が停止する。これらの現象は、特に接続箇所が多い2次元アレイ式超音波プローブでは深刻な問題となる。
特許文献1〜4には、金属などの音響整合層を備えた超音波プローブの特性等が具体的に例示されている。例えば、特許文献1、2には音響整合層として金属アルミニウムを用いる例が記載されている。また、特許文献3には音響整合層として導電性接着剤や酸化錫、金、アルミニウムを用いる例が記載されている。しかしながら、これらの材料は音響整合層として要求される低減衰率で、ダイシング加工性、耐熱性、上下層との接着性などの特性、3〜4層の音響整合層を形成する場合の適切な音響インピーダンスを全て満たすものではない。
また、特許文献4には単結晶シリコンを音響整合層として用いる超音波探触子が開示されている。しかしながら、シリコンの音響インピーダンスは19.5MRaylsであり、通常のPZT系圧電材料の音響インピーダンスである35MRalysに比べて大き過ぎる。このため、実用的である2〜3層の音響整合層を持つ超音波プローブには適さない。また、シリコンは加工性、導電率も充分でない欠点がある。
一方、特許文献5には圧電材料と同じ音響インピーダンスを持つ付加弾性層を持つ圧電広帯域トランスジューサの例が示されている。この特許文献5には、一例として音響インピ−ダンスが12〜10MRaylsのバルク圧電材料と樹脂を複合させた複合圧電振動子を用いた場合において、付加層および整合層として音響インピーダンスが10MRalysの金属マグネシウムおよび合金を使用することが記載されている。しかしながら、音響インピーダンス、減衰率、ダイシング加工性に優れたマグネシウム合金の具体的な組成などの開示はされていない。
前述した音響整合層は、従来、エポキシ樹脂にタングステン粉末などを添加してその密度を調整した材料が用いられることもある。具体的には、エポキシ樹脂に30体積%のタングステンを充填した複合樹脂からなり、12MRalysの音響インピーダンスを有する音響整合層が知られている。しかしながらこの複合樹脂は減衰率が1000dB/m/MHz以上と大きいばかりでなく、ダイシング加工性に劣る。
また,非特許文献1には音響整合層の材料としてガラスを用いる例が示されている。ガラスは、音響インピーダンスは約12MRalysであるが、絶縁性であるためにダイシングにより2次元アレイにチャンネルを配列する場合、圧電素子の上部側の電極を配線で外部に引き回すことが困難になる。
さらに、ほぼ純粋の金属マグネシウム、金属アルミニウム、金属亜鉛のそれぞれの密度、音速、音響インピーダンスはそれぞれ、1.74、5800m/s、10MRayls、2.7、6400m/s、17.4MRayls、7.6、4200m/s、30MRaylsであることが知られている。しかしながら、これらの純金属はダイシングや研磨による加工性が極めて低い。特に、2次元アレイ式超音波プローブの製造においてこれらの純金属を音響整合層に適用した場合、研磨やダイサーなどによって0.2mm2以下の微小な面積に加工することが困難である。
特開昭56−143149号公報 特開昭58−053755号公報 特開昭59−174099号公報 特開2003−125494 公表特許公報2004−518319報(USP6,645,150) T.Inoue et al., IEEE,UFFC, vol.34 No.1,1987,pp.8-15
本発明は、3層以上の音響整合層のうち、圧電素子と接し、低減衰率でダイシング加工性、耐熱性、上下層との接着性、導電性に優れ、かつ適切な音響インピーダンスを有するマグネシウム合金からなる音響整合層を備えたアレイ式超音波プローブを提供することを目的とする。
本発明は、前記アレイ式超音波プローブを備えた超音波診断装置を提供することを目的とする。
本発明によると、バッキング;
前記バッキング上に配列され、圧電素子およびこの圧電素子上に形成される3層以上の音響整合層を有する複数のチャンネル;および
前記各チャンネルの最上層の音響整合層表面を少なくとも覆うように形成された音響レンズ;
を具備し、
前記圧電素子は、圧電体とこの圧電体の前記バッキング側および前記音響整合層側にそれぞれ形成された電極とから構成され、25℃にて25〜40MRaylsの音響インピーダンスを有し、
前記圧電素子の前記音響整合層側の電極は、5μm以下の厚さを有し、
前記3層以上の音響整合層は、前記音響レンズに向けて音響インピーダンスが段階的に小さくなり、かつ
前記電極と接する音響整合層は、25℃にて11〜19MRaylsの音響インピーダンスを有するMg−Sn系またはMg−Cu系のマグネシウム合金から構成されることを特徴とするアレイ式超音波プローブが提供される。
また本発明によると、前述した構成のアレイ式超音波プローブと、前記超音波プローブにケーブルを通して接続された超音波プローブ制御器とを具備したことを特徴とする超音波診断装置が提供される。
本発明によれば、3層以上の音響整合層のうち、圧電素子と接し、低減衰率でダイシング加工性、耐熱性、上下層との接着性、導電性に優れ、かつ適切な音響インピーダンスを有するマグネシウム合金からなる音響整合層を備え、音響整合層側からの配線接続が可能で、高感度かつ超音波の広帯域化が可能な高性能、高信頼性のアレイ式超音波プローブを提供することができる。特に、チャンネルを2次元状に配列した医用超音波診断装置用2次元アレイ超音波プローブを提供できる。
また、本発明によればクロストークが小さく、高性能、高信頼性のアレイ式超音波プローブが組み込まれ、断層像の画質向上および感度向上が達成された超音波診断装置を提供することができる。
以下、本発明の実施形態に係るアレイ式超音波プローブおよび超音波診断装置を図面を参照して詳細に説明する。
実施形態に係るアレイ式超音波プローブは、バッキングを備える。複数のチャンネルは、バッキング上に配列されている。これらのチャンネルは、バッキング上に配置される圧電素子と、この圧電素子上に形成される3層以上の音響整合層とを備える。音響レンズは、各チャンネルの最上層の音響整合層表面を少なくとも覆うように形成されている。
圧電素子は、圧電体とこの圧電体の前記バッキング側および前記音響整合層側にそれぞれ形成された電極とから構成され、25℃にて25〜40MRaylsの音響インピーダンスを有する。圧電素子の音響整合層側の電極は、5μm以下の厚さを有する。3層以上の音響整合層は、音響レンズに向けて音響インピーダンスが段階的に小さくなっている。圧電素子と接する前記音響整合層は、25℃にて11〜19MRaylsの音響インピーダンスを有するMg−Sn系またはMg−Cu系のマグネシウム合金から構成される。
このようなアレイ式超音波プローブは、チャンネルを1次元方向に配列した構造およびチャンネルを2次元方向に配列した構造のものが挙げられる。以下、3層の音響整合層を有する2次元アレイ式超音波プローブを図1〜図3を参照して詳細に説明する。図1は、実施形態に係る2次元アレイ式超音波プローブを示す斜視図、図2は図1の2次元アレイ式超音波プローブの要部断面図、図3は図1の2次元アレイ式超音波プローブの要部斜視図である。
2次元アレイ式超音波プローブ1は、バッキング2を備えている。圧電素子3はバッキング2上に例えばエポキシ樹脂系接着剤層(図示せず)で固定されている。圧電素子3は、図2および図3に示すように例えばジルコンチタン酸鉛(PZT)系圧電セラミック材料やリラクサ系単結晶、およびチタン酸バリウム系のセラミック、単結晶からなる圧電体4と、この圧電体4の両面に形成された第1、第2の電極51,52とから構成されている。圧電体4は、前記圧電材料と有機樹脂からなる複合体を用いることもできる。25℃にて11〜19MRaylsの音響インピーダンスを有するMg−Sn系またはMg−Cu系のマグネシウム合金からなる第1音響整合層6は、圧電素子3の第2電極52上に例えばエポキシ樹脂系接着剤層(図示せず)で固定されている。25℃にて2.7〜8MRaylsの音響インピーダンスを有するカーボンのような導電性材料からなる第2音響整合層7は、第1音響整合層6上に例えばエポキシ樹脂系接着剤層(図示せず)で固定されている。第1、第2の音響整合層6,7は、図2、図3に示すように例えばダイシングにより形成されるスペース8をあけて2次元的に配列されている。圧電素子3は、各スペース8に対応してその圧電体4に達する溝9がそれぞれ形成され、第2電極52も2次元的に分離されている。これらのスペースおよび溝には、例えば低音響インピーダンス、高減衰性のシリコーンゴムのような比較的に柔らかい樹脂を充填することを許容する。フレキシブル印刷配線板21は、複数の第2音響整合層7にその配線板21のパッド22を介してそれぞれ接続され、信号電極を構成している。すなわち、第2音響整合層7はカーボンのような導電材料から作られ、第1音響整合層6は特定のマグネシウム合金から作られるため、フレキシブル印刷配線板21のパッド22は2次元的に配列された導電性の第2、第1の音響整合層7,6を通して2次元的に分離された第2電極52と接続される。なお、フレキシブル印刷配線板21は例えば第2音響整合層24の音響インピーダンスに近似した例えばポリイミド、シリコーンエポキシ樹脂のフィルム23と、このフィルム23上に各第2音響整合層7に対応して形成された複数のパッド22と、フィルム23上に一端が各パッド22に接続され、他端がフィルム23周縁に延出された複数の配線(図示せず)と、各配線を含むフィルム23上に各パッド22が露出するように形成されたソルダーレジスト膜(図示せず)とから構成されている。25℃にて1.8〜2.5MRaylsの音響インピーダンスを有する材料(例えばシリコーンエポキシ樹脂)からなる第3音響整合層10は、フレキシブル印刷配線板21上に例えばエポキシ樹脂系接着剤層(図示せず)で固定されている。
このような圧電素子3と、2次元的に配列された複数の第1、第2の音響整合層6,7と、第3音響整合層10とにより複数のチャンネル11が構成される。これらのチャンネル11は、25℃にて25〜40MRaylsの音響インピーダンスを有する圧電素子3上に音響インピーダンスが段階的に小さくなる第1〜第3の音響整合層6,7,10、すなわち25℃にて11〜19MRaylsの音響インピーダンスを有するMg−Sn系またはMg−Cu系のマグネシウム合金からなる第1音響整合層6、25℃にて2.7〜8MRaylsの音響インピーダンスを有するカーボンのような導電性材料からなる第2音響整合層7および1.8〜2.5MRaylsの音響インピーダンスを有する材料(例えばシリコーンエポキシ樹脂)からなる第3音響整合層10を積層して構成されている。
前記各チャンネル11において、圧電素子3が縦波振動であるため、第1電極51を共通電極(アース電極)とし、信号電極であるフレキシブル印刷配線板21から個々のチャンネル11の導電性の第2、第1の音響整合層7,6を通して2次元的に分離された第2電極52に電圧を印加することにより、各チャンネル11の圧電素子3をその電圧に応じた周波数で振動させることが可能になる。
音響レンズ12は、前記各チャンネル11の第3音響整合層10上に例えばゴム系接着剤層(図示せず)により固定されている。このゴム系接着剤は、25℃において1.3〜1.8MRaylsの音響インピーダンスを有する変性シリコーン系接着剤であることが好ましい。
バッキング2、複数のチャンネル11および音響レンズ12は、上端に開口部を有するケース(筐体)13内にバッキング2が支持台14に載置されるように収納されている。ケース13内には、各チャンネル11の圧電素子3の駆動タイミングを制御する制御回路および圧電素子3に受信された受信信号を増幅するためのアンプ回路を含む信号処理回路(図示せず)が内蔵されている。前記信号電極であるフレキシブル印刷配線板21の他端は制御回路に接続されている。アース側印刷配線板(図示せず)は、一端が圧電素子3の第1電極51に接続され、他端が信号処理回路に接続されている。ケーブル15は、音響レンズ12と反対側のケース13部分から挿入され、その先端が信号処理回路および制御回路(いずれも図示せず)と接続されている。
このような構成の2次元アレイ式超音波プローブ1において、各チャンネル11における圧電素子3の第1、第2の電極51,52間に電圧を印加して、圧電体4を共振させることにより超音波を各チャンネル11の第1〜第3の音響整合層6,7,10および音響レンズ12を通して放射(送信)する。受信時には、音響レンズ12および各チャンネル11の第1〜第3の音響整合層6,7,10を通して受信された超音波によって各チャンネル11の圧電素子3の圧電体4を振動させ、この振動を電気的に変換して信号とし、画像を得る。
圧電素子3は、25℃にて25〜40MRaylsの音響インピーダンスを有し、かつ第1音響整合層6側の電極(第2電極52)は5μm以下の厚さを有する。電極(第2電極52)の厚さが5μmを越えると、圧電素子の共振周波数に変化が生じるばかりでなく、電極(第2電極52)を境にした圧電素子3と第1音響整合層6の間の音響インピーダンスの差による超音波の反射が無視できなくなる虞がある。より好ましい電極(第2電極52)の厚さは、2μm以下である。
第1音響整合層6は、Mg−Sn系またはMg−Cu系のマグネシウム合金から構成され、音響インピーダンスが25℃にて11〜19MRaylsである。
前記マグネシウム合金は、下記一般式(I)にて表され、3点曲げ強度が150MPa以上、破断伸びが2%以下であることが好ましい。
MgxM1yM2z …(I)
ただし、式中のM1はSnまたはCu、M2はAl,Zn,Sn,Cu,Ni,Mn,Si,Ti,Sb,Zr,Ca、Li,Yおよび希土類元素の群から選ばれる少なくとも1つの金属、x、y、zはx=40〜80重量%、y=20〜60重量%、z=0〜5重量%である。前記マグネシウム合金は、MgxSnyz(XはCa,Y,Zr,Al、x、y、zはx=40〜80重量%、y=20〜60重量%、z=0〜5重量%である。)の三元系であることが最も好ましい。
前記一般式(I)のマグネシウム合金中のMg量を40重量%未満にすると、脆くて加工し難くなるばかりか、圧電素子の音響インピーダンスと3層の音響整合層を有するチャンネル構成において第1音強整合層の最適の音響インピーダンスである11〜19MRaylsにすることが困難になる。一方、マグネシウム合金中のMg量が80重量%を超えると、減衰率が大きくなるのみならず、ダイシング時に切削粉の急激な酸化が生じて発火の虞があり、さらに表面が酸化し易く、耐食性も劣る虞がある。より好ましいマグネシウム合金中のMg量は、45〜65重量%である。このような範囲のMgを含むマグネシウム合金は、第1音響整合層に要求される減衰率が一層小さくなるのみならず、優れた耐食性、ダイシング特性および長期安定性を有する。
前記一般式(I)のマグネシウム合金中のM2成分の量が5重量%を超えると、減衰率が増加するか加工性が低下し、さらに耐食性が低下する虞がある。より好ましいM2成分の量は、2重量%以下である。
前記一般式(I)のマグネシウム合金の3点曲げ強度を150MPa未満にすると、2次元アレイ超音波プローブのような微細のチャンネル(例えば50μm角〜200μm角)を作製する場合、マグネシウム合金からなる第1音響整合層の折れによる不良が頻発する虞がある。より好ましい3点曲げ強度は、200MPa以上である。
前記一般式(I)のマグネシウム合金の破断伸びが2%を超えると、ダイヤモンドブレードのダイシング時の直線性が損なわれ、チャンネル毎に面積が異なる不良が頻発するばかりか、ダイシング途中での損傷が頻発する虞がある。より好ましい破断伸びは0.5%以下である。
前記一般式(I)のマグネシウム合金は、さらに減衰率が5MHzでの測定において0.3dB/m/MHz以下、縦波音速が25℃にて4000〜6000m/s、密度が2.0〜3.5g/cm3であること好ましい。
前記一般式(I)のマグネシウム合金は、平均結晶粒径が200μm以下であることがダイシング性を向上する上で好ましい。マグネシウム合金の平均結晶粒径が200μmを超えると、ダイシング時にこのマグネシウム合金からなる第1音響整合層の折れが頻発する虞がある。より好ましいマグネシウム合金の平均結晶粒径は、100μm以下である。
第1音響整合層は、上下面にその音響整合層の厚さの1/100以下の厚さを持つNi,AuおよびSnから選ばれる金属層を有することを許容する。
前記第1〜第3の音響整合層は、圧電素子の振動による周波数のλ/5〜λ/2の厚さを有することが好ましい。
なお、実施形態に係る2次元アレイ式超音波プローブにおいて、電極の取り出しは前述した図1〜図3に示す構造に限定されない。例えば、第1、第2の電極を有する圧電素子をその上の第1、第2の音響整合層とともに2次元方向のスペースで分離して配列し、さらにそのスペースに対応してバッキングに達する溝を形成して圧電素子を2次元的に分離し、さらにバッキングの下面からバッキング上面に接する第1電極に達するスルーホールを形成し、各スルーホールにフレキシブル印刷配線板を接続してもよい。このような構成によれば、2次元的に分離された第2電極に導電性の第1、第2の音響整合層を通して接続するフレキシブル印刷配線板での電圧制御のみならず、2次元的に分離された第1電極にスルーホールを通して接続される別のフレキシブル印刷配線板での電圧制御が可能になる。すなわち、圧電素子および第1〜第3の音響整合層を有する各チャンネルを独立して電圧制御することが可能になる。
次に、前述した実施形態に係る2次元アレイ式超音波プローブの製造方法を説明する。
まず、バッキング上に前述した圧電素子、第1音響整合層、第2音響整合層をこの順序でかつ例えばこれらの部材間に低粘性のエポキシ樹脂系接着剤をそれぞれ介在させて、積層させる。つづいて、この積層物を例えば120℃で1時間程度加熱し、前記各エポキシ樹脂系接着剤を硬化させることによりバッキングと圧電素子、圧電素子と第1音響整合層、第1音響整合層と第2音響整合層をそれぞれ接着、固定させる。
次いで、例えばダイヤモンドブレードを用いて第2音響整合層から圧電素子の圧電体に達する深さで、例えば50〜200μm角にダイシング処理して2次元アレイ状に複数分割する。複数分割された第2音響整合層にフレキシブル印刷配線板を位置合わせし、その複数のパッドを各第2音響整合層に接続する。必要に応じてスペースおよび溝に例えば低音響インピーダンス、高減衰性のシリコーンゴムのような比較的に柔らかい樹脂を充填してもよい。つづいて、フレキシブル印刷配線板に第3音響整合層をエポキシ樹脂系接着剤で接着固定することにより圧電素子、複数の第1、第2の音響整合層および第3音響整合層を有する複数のチャンネルを形成する。その後、第3音響整合層に音響レンズをシリコーンゴム系接着層で接着固定し、バッキング、複数のチャンネルおよび音響レンズをケース内に収納して2次元アレイ式超音波プローブを製造する。
実施形態に係るアレイ式超音波プローブは、3層以上の音響整合層を有し、前述した3層の音響整合層を有する他に、例えば4層の音響整合層を積層構造でもよい。4層の音響整合層の場合には、圧電素子と接する1層目の音響整合層は25℃にて12〜19MRaylsの音響インピーダンスを有するMg−Sn系またはMg−Cu系のマグネシウム合金、2層目の音響整合層は25℃にて7〜12MRaylsの音響インピーダンスを有するマグネシウム合金、3層目の音響整合層は25℃にて3〜5MRaylsの音響インピーダンスを有する導電性材料、前記音響レンズと接する4層目の音響整合層は25℃にて1.8〜2.5MRaylsの音響インピーダンスを有する樹脂を含む材料、からそれぞれ構成されることが好ましい。このような超音波プローブにおいて、各音響整合層は圧電素子の振動による周波数のλ/5〜λ/2の厚さを有することが好ましい。
実施形態に係る超音波プローブを備えた超音波診断装置を図4を参照して説明する。
対象物に対し超音波信号を送信し、その対象物からの反射信号(エコー信号)を受信して対象物を画像化する医療用の超音波診断装置(または超音波画像検査装置)は、超音波信号送受信機能を有するアレイ式超音波プローブを備えている。この超音波プローブは、例えば前述した図1〜図3に示す2次元アレイ構造を有する。この超音波プローブ1は、ケーブル15を通して超音波診断装置本体31に接続されている。超音波診断装置本体31内には超音波プローブの超音波信号の送信、受信処理等を行う図示しない超音波プローブ制御器、およびディスプレイ32等が設けられている。
以上説明した実施形態に係るアレイ式超音波プローブは、バッキングと、このバッキング上に配列され、それぞれ圧電素子およびこの圧電素子上に形成される3層以上の音響整合層を有する複数のチャンネルと、各チャンネルの最上層の音響整合層表面を少なくとも覆うように形成された音響レンズとを具備する。前記圧電素子は、圧電体とこの圧電体の前記バッキング側および前記音響整合層側にそれぞれ形成された電極とから構成され、25℃にて25〜40MRaylsの音響インピーダンスを有し、かつ前記圧電素子の前記音響整合層側の電極は、5μm以下の厚さを有する。3層以上の音響整合層は、音響レンズに向けて音響インピーダンスが段階的に小さくなり、かつ圧電素子と接する前記音響整合層は25℃にて11〜19MRaylsの音響インピーダンスを有するMg−Sn系またはMg−Cu系のマグネシウム合金から作られる。このような構成にすることによって、以下のような効果を奏する。
(1)圧電素子は、25℃にて25〜40MRaylsの音響インピーダンスを有し、音響整合層と接する電極の厚さが5μmにあるため、圧電素子を安定した共振周波数で振動させることが可能になる。また、3層以上の音響整合層は音響レンズに向けて音響インピーダンスが段階的に小さくなり、かつ電極と接する音響整合層は低減衰率でかつ圧電素子と適切に整合した11〜19MRaylsの音響インピーダンスを有する。その結果、各チャンネルにおいて圧電素子を振動させた発生した超音波を第1音響整合層を含む3層以上の音響整合層を通して音響レンズから送信する間、および音響レンズから3層以上の音響整合層を通して圧電素子で受信する間、超音波のエネルギーロスを低減して、超音波の通過性能の向上と広帯域化が図れるため、効率的な送受信が可能な高性能のアレイ式超音波プローブを提供できる。
特に、3層の積層構造の音響整合層を有する超音波プローブにおいて、圧電素子と接する1層目の音響整合層を25℃にて11〜15MRaylsの音響インピーダンスを有するマグネシウム合金、2層目の音響整合層を25℃にて2.7〜8MRaylsの音響インピーダンスを有する導電性材料、前記音響レンズと接する3層目の音響整合層を25℃にて1.8〜2.5MRaylsの音響インピーダンスを有する材料、からそれぞれ構成し、かつそれぞれの音響整合層の厚さを圧電素子の振動による周波数のλ/5〜λ/2の厚さにすることによって、送受信時の超音波のエネルギーロスをより効果的に低減して、超音波の通過性能のより一層の向上と広帯域化を図ることが可能になる。
また、4層の積層構造の音響整合層を有する超音波プローブにおいて、圧電素子と接する1層目の音響整合層を25℃にて12〜19MRaylsの音響インピーダンスを有するMg−Sn系またはMg−Cu系のマグネシウム合金、2層目の音響整合層を25℃にて7〜12MRaylsの音響インピーダンスを有するマグネシウム合金、3層目の音響整合層を25℃にて3〜5MRaylsの音響インピーダンスを有する導電性材料、前記音響レンズと接する4層目の音響整合層を25℃にて1.8〜2.5MRaylsの音響インピーダンスを有する樹脂を含む材料、からそれぞれ構成し、かつそれぞれの音響整合層の厚さを圧電素子の振動による周波数のλ/5〜λ/2の厚さにすることによって、送受信時の超音波のエネルギーロスをより効果的に低減して、超音波の通過性能のより一層の向上と広帯域化を図ることが可能になる。
さらに、前述した3層または4層の音響整合層を積層した構造において、第1、第2の音響整合層は導電材料からなるため、第1、第2の音響整合層を例えばダイシングにより2次元的に分離して配列し、さらにその下の圧電素子の圧電体に達する溝を形成して第1音響整合層と接する電極も2次元的に分離した場合、第2音響整合層を圧電素子の上部側の電極として機能させることが可能になる。その結果、2次元的に配列された第2音響整合層に信号電極であるフレキシブル印刷配線板を容易に接続して外部に引き回すことが可能な2次元アレイ式超音波プローブを容易に実現できる。
(2)圧電素子と接する音響整合層は、Mg−Sn系またはMg−Cu系のマグネシウム合金で作られ、ダイシング加工性に優れているため、例えばダイヤモンドソーによるダイシング処理によって目的とする幅を持つチャンネルを精密に形成することが可能になる。その結果、チャンネル間のクロストークを低減できるため、高解像度のアレイ式超音波プローブを実現できる。
(3)圧電素子と接する音響整合層(第1音響整合層)は、耐熱性に優れ、かつ上下層(圧電素子および第2音響整合層)との間に介在されるエポキシ系接着剤層に対して高い接着性を有するため、超音波エネルギーの吸収、減衰に伴う音響整合層の加熱および機械的な圧力が加わっても、上下の層からの剥離を防止できる。その結果、チャンネル間での感度が均一な高い長期信頼性を有するアレイ式超音波プローブを提供できる。
特に、前記一般式MgxM1yM2zで表され、3点曲げ強度が150MPa以上、破断伸びが2%以下であるMg−Sn系またはMg−Cu系のマグネシウム合金からなる音響整合層は、より安定したダイシング加工性を有するため、例えばダイヤモンドソーによるダイシング処理によって0.03mm2以下の微細な面積を持つチャンネルの形成が可能で、より一層小型のアレイ式超音波プローブを提供できる。
また、MgxSnyz(XはCa,Y,Zr,Al、x、y、zはx=40〜80重量%、y=20〜60重量%、z=0〜5重量%である。)の三元系のMg−Sn系またはMg−Cu系のマグネシウム合金からなる音響整合層は、ダイシングにより50μm角以下での精密な加工性が可能で、さらに優れたメッキ特性、耐食性を有する。またマグネシウム合金からなる音響整合層は音速が5500m/s以下と低く、厚さを薄くすることが可能であるため、軽量のアレイ式超音波プローブを実現できる。
実施形態に係る超音波診断装置は、クロストークが小さく、高性能、高信頼性のアレイ式超音波プローブを備えるため、断層像の画質向上および感度向上を達成できる。
以下,本発明の実施例をさらに詳細に説明する。
(実施例1)
マグネシウムおよび錫をその構成比がMg=78.25wt%、Sn=21.75wt%,となるように秤量した。これを真空溶解炉に入れ、600〜800℃にて六フッ化いおう(SF6)ガスの雰囲気下で混合攪拌溶解した後、溶湯を60mm×60mm角のインゴットに成型し、冷却した。得られたインゴットから通常の放電加工機を用いて幅30mm、長さ30mm、厚さ1.0mmの試験片を加工し、第1音響整合層用素材を作製した。
(実施例2)
マグネシウムおよび錫をその構成比がMg=43.33Wt%、Sn=56.67wt%となるように秤量した。これを真空溶解炉に入れ、600〜800℃にて六フッ化いおう(SF6)ガスの雰囲気下で混合攪拌溶解し、溶融湯を60mm×60mm角のインゴットに成型し、冷却した。得られたインゴットから通常の放電加工機を用いて幅30mm、長さ30mm、厚さ1.0mmの試験片を加工し、第1音響整合層用素材を作製した。
(実施例3−11)
マグネシウム、錫、銅、カルシウム、アルミニウム、イットリウム、ジルコニウム、マンガンおよび亜鉛を下記表1に示すように秤量した。これらを真空溶解炉に入れ、600〜1000℃にて六フッ化いおう(SF6)ガスの雰囲気下で混合攪拌溶解し、溶湯を60mm×60mm角の9種のインゴットに成型し、冷却した。得られた各インゴットから通常の放電加工機を用いて幅30mm、長さ30mm、厚さ1.0mmの試験片を加工し、第1音響整合層用素材を作製した。
(比較例1〜5)
アルミニウム、マグネシウムおよび亜鉛を下記表1に示すように秤量した。これらを真空溶解炉に入れ、600〜1000℃にて六フッ化いおう(SF6)ガスの雰囲気下で混合攪拌溶解し、溶湯を60mm×60mm角の5種のインゴットに成型し、冷却した。得られた各インゴットから通常の放電加工機を用いて幅30mm、長さ30mm、厚さ1.0mmの試験片を加工し、第1音響整合層用素材を作製した。
得られた実施例1〜11、比較例1〜5の第1音響整合層用素材、タングステンを30体積%含有する複合エポコシ樹脂からなる第1音響整合層用素材(比較例6)および珪酸ガラスからなる第1音響整合層用素材(比較例7)について、密度、音速、音響インピーダンス(z)、減衰率、加工性を以下の方法に評価した。
1)密度
密度は、前記第1音響整合層用素材を研磨加工して得られた幅30mm、長さ30mm、厚さ1.0mmの特性評価用サンプルを用いて求めた。密度の測定は、25℃のサンプルの空中および水中の重量を測定し、アルキメデス法にて行った。
2)音速および減衰率
前記第1音響整合層用素材を研磨加工して得られた幅30mm、長さ30mm、厚さ1.0mmおよび50mm角、長さ80mmをサンプルとして用いた。
音響特性は、25℃で5MHzの測定用プローブを用いて行った。音速の測定は幅30mm、長さ30mm、厚さ1.0mmのサンプルを用い、水中においてサンプルの有無による反射エコーの時間差とサンプル厚さから音速を求めた。音速(C)の算出は各温度における水の音速を基準として、水とサンプルの透過波形の時間差を利用し、以下の式を用いて算出した。
C=C0/[L−C0(Δt/d)]
ここで、C0は水の音速、dはサンプル厚さ、Δtは水とサンプルの透過波形の最初のピークを越した後のゼロクロス点の時間差を示す。
減衰率は、JIS Z 2354−2005「超音波パルス半斜方による固体の超音波減衰率測定方法」に従い25℃にて5MHzのプローブを用いて、空気中で測定した。サンプルは50mm角、長さ80mmを用いた。両端を表面粗度25Sに研磨し、その上面に少量のグリセリン水溶液を塗布して5MHzのプローブを配置し、密着させ底面からの反射を測定して反射エコーの強度差とサンプル厚さから所定の方法で減衰率を求めた。
3)音響インピーダンス(z)
zは、室温25℃にて測定した密度と音速の積として求めた。
4) 破断伸び
破断伸びは、JIS Z2241に従い、測定した。サンプルの大きさは、長さ50mm、幅10mm、厚さ2.0mmの規定の寸法を用い、インストロン装置を用いて測定した。
5)3点曲げ強度
前記第1音響整合層用素材を研磨加工して得られた3mm角、長さ30mmの角棒をサンプルをとし、インストロン試験機を用いてn=5で曲げ試験を行い、JIS-R1601に定められた所定の方法で抗折強度を求めた。
6)加工性
前記第1音響整合層用素材を研磨加工して得られた幅30mm、長さ30mm、厚さ1.0mmの加工性評価用サンプルを厚さ50μmのダイヤモンドブレードを用いて切断幅が250μm,200μm、150μm、100μmのピッチで、深さが400μmになるように各5本切り込みを入れ、さらに90度回転させ、再び同様の250μm,200μm、150μm、100μmのピッチで、深さが400μmになるように切り込みを入れた。この加工は、クロスダイシングテストと呼ばれている。
前記試験による切り込み後の残存部分(200μm×200μm角から50μm×50μm角)を顕微鏡で観察した。この観察において、加工性評価用サンプル(第1音響整合層)の倒れ、直線性から確認される加工性を評価した。加工性に劣るサンプルは一方向への切断を5回行い、その残存部を評価した。
加工性の判定は、
・残存した50μm角の加工に全く問題がない場合:10、
・残存した100μm角の加工に全く問題がない場合:9、
・残存した150μm角の加工に全く問題がない場合:8、
・残存した200μm角の加工に全く問題がない場合:7、
・残存した50μm×30mmの短冊の加工に全く問題がない場合:6、
・残存した100μm×30mmの短冊の加工に全く問題がない場合:5、
・残存した150μm×30mmの短冊の加工に全く問題がない場合:4、
・残存した200μm×30mmの短冊の加工に全く問題がない場合:3、
・残存した500μm×30mmへの溝入れ加工ができる場合:2
・残存した500μm×30mmへの溝入れ加工ができない場合:1
の10段階とした。
これらの結果を下記表2に示す。
Figure 2008244859
Figure 2008244859
前記表1および表2から明らかなよう特定の組成のマグネシウム合金からなる実施例1〜13の第1音響整合層(圧電素子の電極と接する音響整合層)は、音響インピーダンス(z)が圧電素子との関係で適切な11〜19MRaylsを有するにも拘らず、低減衰率で、かつ加工性に優れていることがわかる。
これに対し、比較例1〜7の第1音響整合層は、減衰率が大きいか、または加工性のいずれかが劣るか、導電性がないなどこれらの特性を全て満足するものではないことがわかる。
このような実施例1〜11の第1音響整合層を有するアレイ式超音波プローブは、超音波のエネルギーを効果的に送受信でき、チャンネル間での感度が均一で、かつチャンネル間のクロストークを低減でき、高解像度性、長期信頼性を有する。
(実施例12)
PZT圧電体およびこの両面にNi電極を形成した厚さ0.4mmの圧電素子と、厚さ0.4mmの実施例3のMg合金板(第1音響整合層)と、厚さ0.2mmのカーボン板(第2音響整合層)とからなる3枚の積層振動子を幅0.15mm、高さ1.0mm、長さ10mmで切断した短冊振動子を作製した。
得られた短冊振動子の周波数に対するインピーダンスおよび位相の特性を調べた。その結果を図5に示す。図5から明らかなように矢印AおよびBに示す個所に第1音響整合層、第2音響整合層によるピークがそれぞれ明瞭に観察され、このMg合金からなる第1音響整合層が良好な音響特性を持つことがわかる。
(実施例13)
音響インピーダンス(z)が4MRaylsのクロロプレンゴムにフェライトを添加したバッキング上に厚さ400μmの圧電素子、厚さ420μm、zが13.9MRaylsの実施例3のMg−Sn−Ca合金からなる第1音響整合層、厚さ200μm、zが5.2MRaylsのカーボン板(第2音響整合層)、zが2.1MRaylsで厚さが180μmのシリコーンエポキシ樹脂層(第3音響整合層)をこの順序で、かつそれらの間にエポキシ樹脂系接着剤を介在し重ねた後、120℃で1時間程度、加圧しながら加熱硬化させて相互に接着した。なお、前記圧電素子は両面にNi/Au(厚さ0.1μm/0.2μm)からなる第1、第2の電極を有する。また、第1〜第3の音響整合層はそれぞれの両面にNi/Au(厚さ0.1μm/0.2μm)からなる金属層を形成したものを用いた。アース電極及び信号電極は圧電素子の周囲に良く知られた回し込み電極を取り付け、その下部にフレキシブル印刷配線板を取り付けて構成した。
次いで、前記第3音響整合層からバッキングに向かって幅50μmのダイヤモンドブレードにより幅200μm、バッキングへの切り込み深さ200μmになるようにダイシング処理した。このダイシングにより200μmを1チャンネルとし、合計64チャンネルを形成した。ひきつづき、各チャンネル間のスペースに液状シリコーンゴムを充填し、125℃にて1時間で硬化させた。各チャンネル上にシリコーンゴムからなるzが1.5MRaylsの音響レンズを変性シリコーンゴム系接着剤で固定した。最後に、バッキング、複数のチャンネルおよび音響レンズをケース(筐体)内に収納し、このケース内に前記各チャンネルの圧電素子の駆動タイミングを制御する制御回路および圧電素子に受信された受信信号を増幅するためのアンプ回路を含む信号処理回路を内蔵することにより3.5MHzの1次元アレイ式超音波プローブを組み立てた。
(実施例14)
音響インピーダンス(z)が4MRaylsのクロロプレンゴムにフェライトを添加したバッキング上に厚さ500μmの圧電素子、厚さ420μm、zが13.9MRaylsの実施例3に示されたMg−Sn−Ca合金からなる第1音響整合層、厚さ200μm、zが5.2MRaylsのカーボン板(第2音響整合層)をこの順序で、かつそれらの間にエポキシ樹脂系接着剤を介在し重ねた後、120℃で1時間程度、加圧しながら加熱硬化させて相互に接着した。なお、前記圧電素子は両面にNi/Au(厚さ0.1μm/0.2μm)からなる第1、第2の電極を有する。また、第1,第2の音響整合層はそれぞれの両面にNi/Au(厚さ0.1μm/0.2μm)からなる金属層を形成したものを用いた。アース電極は、圧電素子の下部電極(第1電極)にフレキシブル印刷配線板を接続して構成した。
次いで、前記第2音響整合層から圧電素子に向かって幅30μmのダイヤモンドブレードにより幅200μm、圧電素子への切り込み深さを300μmになるようにダイシング処理した。さらに90度回転し、同様にこのダイシングにより64×64=3900チャンネルの2次元アレイを形成した。つづいて、各チャンネル間のスペースに液状シリコーンゴムを充填し、125℃にて1時間で硬化させた。ひきつづき、音響インピーダンスが2.0MRayls、厚さが180μmであるシリコーンエポキシ樹脂フィルムに複数の配線およびこれらの配線にそれぞれ接続されたパッドを形成したフレキシブル印刷配線板を用意し、フレキシブル印刷配線板を2次元的に複数分離された各第2音響整合層上に各音響整合層に各パッドが接続するように位置合せして取り付けることにより信号電極を形成した。フレキシブル印刷配線板上にzが2.1MRaylsで厚さが180μmのシリコーンエポキシ樹脂層(第3音響整合層)をエポキシ樹脂系接着剤を介在して重ねた後、120℃で1時間程度、加圧しながら加熱硬化させて相互に接着した。第3音響整合層上にzが1.55MRaylsの樹脂性音響レンズを変性シリコーンゴム系接着剤で固定した。最後に、バッキング、複数のチャンネルおよび音響レンズをケース(筐体)内に収納し、このケース内に前記各チャンネルの圧電素子の駆動タイミングを制御する制御回路および圧電素子に受信された受信信号を増幅するためのアンプ回路を含む信号処理回路を内蔵することにより3MHzの2次元アレイ式超音波プローブを組み立てた。
得られた実施例13,14のアレイ式超音波プローブを画像診断装置に接続してその特性を評価したところ、従来品と比べて良好な画像が得られた。
さらに実施例13,14のアレイ式超音波プローブを−10℃と85℃のヒートサイクル試験機に入れ、100サイクル試験前後に画像を確認したがチャンネル不良や画質低下の減少は見られなかった。
実施形態に係る2次元アレイ式超音波プローブを示す斜視図。 図1の2次元アレイ式超音波プローブの要部断面図。 図1の2次元アレイ式超音波プローブの要部斜視図。 実施形態に係る超音波診断装置を示す概略図。 実施例12の短冊振動子の周波数に対するインピーダンスおよび位相の特性を示す図。
符号の説明
1…次元アレイ式超音波プローブ、2…バッキング、3…圧電素子、51,52…電極、6…第1音響整合層、7…第2音響整合層、10…第3音響整合層、11…チャンネル、12…音響レンズ、13…ケース(筐体)、15…ケーブル、21…フレキシブル印刷配線板、31…超音波診断装置本体。

Claims (10)

  1. バッキング;
    前記バッキング上に配列され、圧電素子およびこの圧電素子上に形成される3層以上の音響整合層を有する複数のチャンネル;および
    前記各チャンネルの最上層の音響整合層表面を少なくとも覆うように形成された音響レンズ;
    を具備し、
    前記圧電素子は、圧電体とこの圧電体の前記バッキング側および前記音響整合層側にそれぞれ形成された電極とから構成され、25℃にて25〜40MRaylsの音響インピーダンスを有し、
    前記圧電素子の前記音響整合層側の電極は、5μm以下の厚さを有し、
    前記3層以上の音響整合層は、前記音響レンズに向けて音響インピーダンスが段階的に小さくなり、かつ
    前記電極と接する音響整合層は、25℃にて11〜19MRaylsの音響インピーダンスを有するMg−Sn系またはMg−Cu系のマグネシウム合金から構成されることを特徴とするアレイ式超音波プローブ。
  2. 前記マグネシウム合金は、下記一般式(I)にて表され、3点曲げ強度が150MPa以上、破断伸びが2%以下であることを特徴とする請求項1に記載のアレイ式超音波プローブ。
    MgxM1yM2z …(I)
    ただし、式中のM1はSnまたはCu、M2はAl,Zn,Sn,Cu,Ni,Mn,Si,Ti,Sb,Zr,Ca、Li,Yおよび希土類元素の群から選ばれる少なくとも1つの金属、x、y、zはx=40〜80重量%、y=20〜60重量%、z=0〜5重量%である。
  3. 前記マグネシウム合金は、平均結晶粒径が200μm以下であることを特徴とする請求項1記載のアレイ式超音波プローブ。
  4. 前記マグネシウム合金からなる音響整合層は、縦波音速が25℃にて4000〜6000m/s、密度が2.0〜3.5であることを特徴とする請求項1記載のアレイ式超音波プローブ。
  5. 前記マグネシウム合金からなる音響整合層は、上下面にその音響整合層の厚さの1/100以下の厚さを持つNi,AuおよびSnから選ばれる金属層を有することを特徴とする請求項1記載のアレイ式超音波プローブ。
  6. 前記音響整合層は、3層の積層構造を有し、前記圧電素子と接する1層目の音響整合層は25℃にて11〜15MRaylsの音響インピーダンスを有するMg−Sn系またはMg−Cu系のマグネシウム合金、2層目の音響整合層は25℃にて2.7〜8MRaylsの音響インピーダンスを有する導電性材料、前記音響レンズと接する3層目の音響整合層は25℃にて1.8〜2.5MRaylsの音響インピーダンスを有する材料、からそれぞれ構成され、かつそれぞれの音響整合層は前記圧電素子の振動による周波数のλ/5〜λ/2の厚さを有することを特徴とする請求項1記載のアレイ式超音波プローブ。
  7. 前記音響整合層は、4層の積層構造を有し、前記圧電素子と接する1層目の音響整合層は25℃にて12〜19MRaylsの音響インピーダンスを有するMg−Sn系またはMg−Cu系のマグネシウム合金、2層目の音響整合層は25℃にて7〜12MRaylsの音響インピーダンスを有するマグネシウム合金、3層目の音響整合層は25℃にて3〜5MRaylsの音響インピーダンスを有する導電性材料、前記音響レンズと接する4層目の音響整合層は25℃にて1.8〜2.5MRaylsの音響インピーダンスを有する樹脂を含む材料、からそれぞれ構成され、かつそれぞれの音響整合層は前記圧電素子の振動による周波数のλ/5〜λ/2の厚さを有することを特徴とする請求項1記載のアレイ式超音波プローブ。
  8. 前記チャンネルは、2次元状に配列されていることを特徴とする請求項1記載のアレイ式超音波プローブ。
  9. 前記圧電素子の圧電体は、ジルコンチタン酸鉛系セラミクス材料、リラクサ系単結晶およびチタン酸バリウム系のセラミック、単結晶の群から選ばれる少なくとも1つの材料から構成されることを特徴とする請求項1記載のアレイ式超音波プローブ。
  10. 請求項1〜9いずれか記載のアレイ式超音波プローブと、前記超音波プローブにケーブルを通して接続された超音波プローブ制御器とを具備したことを特徴とする超音波診断装置。
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