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JP2008244703A - 差動信号線路 - Google Patents

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Abstract

【課題】多層プリント基板の複数の信号層にまたがる差動信号線路を接続するビアにおいて、配線に必要な面積を増大することなく、また特別な基板構造を必要とすることなく差動配線の電気長調整をすることができる差動信号線路を提供する。
【解決手段】多層プリント基板の複数の信号層にまたがる差動信号伝送路(1a、1b;3a、3b)を接続するビア対(2a、2b)において、少なくとも1つのビア対の一方の横断面形状は円形で、他方の横断面形状は長円形とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、多層プリント基板上などに形成される高速信号を伝送する差動信号線路に関し、特に個々の信号配線の電気長を調整することができるビア構造に関するものである。
コンピュータに代表される電子情報機器の昨今の高速化に伴い、GHzを越える高い周波数のデジタル信号をLSI間やプリント基板間で伝送する必要が生じている。一方でLSIの高集積化が進んでおり、また電子情報機器そのものの小型化も要求されており、プリント基板内の信号配線は自ずと高密度に配線する必要が生じてきており、その結果、配線層が複数層に多層化されたプリント基板が多用されている。この多層化されたプリント基板内の複数層にまたがって信号配線が作成される場合、各層に作成された信号配線はビアにより接続されている。
また、LSIの低電圧動作要求・高速信号伝送要求に対応する技術として、2本の信号線路を対にして、それぞれに逆位相の信号を伝送させることで外来ノイズの影響を受けにくくした差動信号伝送方式が広く用いられている。
図9は、従来の差動信号線路の層間接続部の構造を示す透視斜視図である。第1の信号層に形成された差動線路対1a、1bと、第2の信号層に形成された差動線路対3a、3bとをビア対2a、2bが接続している。そして、差動線路対1a、1bは第1の接地層4に隣接して第1の接地層4の上層に、また、第2の差動線路対3a、3bは第2の接地層6に隣接して第2の接地層6の下層に形成されており、これらの線路はマイクロストリップ線路を構成している。また、第1の接地層4と第2の接地層6には、差動ビア対2a、2bが貫通できるような開口部5、7が設けてある。
ところで、差動信号伝送では一対の信号線路に逆位相の信号を伝送させるため、2本の信号線路の電気長(遅延時間を基準に表した配線長)が異なると、信号の送信端では位相が逆位相、つまり180度ずれた状態になっていても、受信端では180度ずれた状態にはならず、結果として差動信号伝送を上手く行うことができない。例えば10Gbpsのデータ転送レートを持つ信号の場合、180度の位相差は100psecである。一方プリント基板として広く用いられている多層ガラスエポキシ基板の内層に信号配線を形成した場合、1mmの配線長で7psecほどの遅延が生じる。つまり10Gbps程度の信号伝送を考えた場合、差動信号の配線対に数mmの線路長差があるだけで、配線対間の位相差は180度から大きくずれてしまい、その結果正確な信号伝送ができなくなってしまう。而して、例えば、図9に示した例において、対となった信号線路の配線長を等しく形成することは無理であり、その結果として180度からずれた位相差が生じてしまう。
この点に関連して、スキュー対策などのために、特定の配線の電気長を長くすることについての提案が各種なされている。例えば、特許文献1には、短い信号線路の配線をミアンダ状にすることで電気長を延ばすことが開示されている。また、特許文献2には、配線経路の途中にダミーパッドを設け、このダミーパッドに実装される抵抗によって配線遅延を調整することが開示されている。また、特許文献3には、ビアのランド径を大きくすることにより若しくはビア径を小さくすることにより電気長を長くすることが開示されている。また、特許文献4には、対を成すマイクロストリップ線路のそれぞれの線路を異なる比誘電率の異なる誘電体上に形成することにより、電気長差を少なくすることが開示されている。
特開2006−270026号公報 特開平11−135920号公報 特開2004−31531号公報 特開平8−78940号公報
しかしながら、この特許文献1〜特許文献3に開示された配線構造では、配線をミアンダ状に形成しなければならない、ダミーパッドを設けそこに抵抗を搭載する必要がある、ビアのランド径を大きくしなければない等の理由により、配線に必要な面積が増大するという問題がある。基板面積の縮小化、低コスト化などのために高密度実装が要求される昨今では、配線に必要な面積が大きくなる技術は好ましくない。もっとも、特許文献3には、配線に必要な面積を増大させない、ビア径の小さなビアを形成することに関しての開示もある。しかし、ドリルやレーザなどでビアホールを開口し、その後メッキするという一般的なビア形成プロセスを考えた場合、製造可能なビア径の最小値には限界がある。現在のプリント基板では、前述の面積縮小や低コストの要求からすでに下限に近いビア径で製造されており、これ以上のビア径の小口径化は現実的でない。
また、特許文献4に記載された、比誘電率の異なる誘電体の領域を作り分ける技術手段では、特許文献1〜特許文献3の手法とは異なり配線に必要な面積の増大はないが、基板製造プロセスが複雑となり、結果として製造コストが高くなってしまう。
本発明の課題は、上述した従来技術の問題点を解決することであって、その目的は、配線に必要な面積を増大することなく、また特別な基板構造を必要とすることなく、つまり低コストにて差動配線の電気長を調整することができる差動信号配線を提供できるようにすることである。
上記の目的を達成するため、本発明によれば、多層配線プリント基板上に形成される複数の信号層にまたがる差動信号線路において、異層に形成された差動信号線路対を接続するビア対を具備し、少なくとも一つのビア対の一方のビアの横断面形状が、前記差動信号線路の伸張方向の長さがこれと直交する方向の長さより長い形状であることを特徴とする差動信号線路、が提供される。
そして、好ましくは、前記少なくとも一つのビア対の他方のビアの横断面形状は円形になされる。
[作用]
従来、多層プリント基板に形成される複数の信号層にまたがる差動信号線路を接続するビアの横断面(基板面に平行な断面)形状は、図9に示したように、円形でかつその径が同じであったので、線路対の電気長にも差異は現れず、結果としてビア対において差動信号は位相ずれを起こすことなく伝送される。
一方、差動信号線路のビア対を片側は従来と同様の円形ビア、もう片方を非円形、例えば長円形の断面形状を持つビアとすることにより、線路対の電気長を非等長とすることができる。これはビアの横断面形状を円形から長円形にすることでビアの持つインダクタンスが小さくなり、その結果長円形ビア部での電気長が短くなるためである。この際、長円形の短軸方向の幅を従来技術の円形ビアの幅と同じかそれ以下にすることで、差動信号配線の配線に必要な面積の増大を招くことがなく、電気長を短くすることができる。
第1の効果は、差動信号線路対の片側のビアの断面形状を円形のビア、もう一方を長円形の断面形状のビアとすることで差動信号線路対の電気長を非等長とし、その結果配線に必要な面積を増大することなく線路対の電気長を調整することができる差動信号線路を提供することができる。
第2の効果は、複雑なプリント基板構造を必要とせず、また配線に必要な面積の増大も必要としないために、コスト増加を招くことなく差動線路対の電気長を調整することができる。
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
〔第1の実施の形態〕
図1は、本発明の第1の実施の形態である差動信号線路の透視斜視図である。多層プリント基板に形成されるため本来は基板内部を見ることはできないが、ここでは説明のために透視図としてある。図1に示されるように、多層プリント基板に差動信号伝送線路が形成されており、第1の信号層に形成された差動線路対1a、1bと、第2の信号層に形成された差動線路対3a、3bと、少なくとも第1の信号層と第2の信号層を接続するように形成された差動ビア対2a、2bとが形成されている。また、第1の差動線路対と第2の差動線路対がマイクロストリップ線路となるように、第1の接地層4が第1の差動線路対に隣接して第1の差動線路対の下層に形成され、第2の接地層6が第2の差動線路対に隣接して第2の差動線路対の上層に形成されている。また、第1の接地層4と第2の接地層6には、差動ビア対2a、2bが貫通できるような開口部5a、5b;7a、7bが設けてある。ここで、第1の接地層4、第2の接地層6は接地層としてあるが、電源層も高周波領域では接地層と見なしうるので、接地層は電源層となってもよい。
多層プリント基板は種々の材料を使用して実現されているが、例えば信号層、接地層は銅や金などの金属導体が好適である。また図示していないが、信号層、接地層間には誘電体層が形成される。この誘電体層はガラスエポキシやポリテトラフルオロエチレン、ポリイミド、セラミックなどの材料が好適である。もちろん、前述した導体、誘電体に限らず、他の材料を使用してもよいことは言うまでもない。
また、図1では伝送線路として第1の差動線路対1a、1bと第1の接地層4とがマイクロストリップ線路構造を形成しており、第2の差動線路対3a、3bと第2の接地層6とがマイクロストリップ線路構造を形成しているが、伝送線路はマイクロストリップ線路に限ることなく、ストリップ線路やコプレナ線路などその他の線路構造でも、同様に本発明の効果を享受することができる。
さらに、本実施の形態では、導体層が4層の多層プリント基板として図示してあるが、4層以外の多層構造においても本発明が適用可能であることも言うまでもない。
ここで、差動ビア対2a、2bについて、2aは基板面に平行な面で切った断面形状が円形なビアであり、2bは基板面に平行な面で切った断面形状が長円形(本願明細書において、長円形とは長方形の二つの短辺に該短辺の長さを直径とする円を半分ずつ接続した形状を意味し、楕円形のことではない)なビアである。このように差動ビア対2a、2bを異なる横断面形状のビアで構成することでビア部の電気長に差が生じ、その結果1a−2a−3aと連なる横断面形状が円形のビアを含む信号線路と、1b−2b−3bと連なる横断面形状が長円形のビアを含む信号線路では総電気長に差が生じる。ここでビア2bの長円形断面の長軸を伝送線路に対し平行にし、また短軸の幅をビア2aと同一あるいは同一以下にすることで、配線に必要な面積の増大を引き起こすことなく、差動配線の電気長調整を実現することができる。
図2は、図1に示した本発明の実施の形態における信号伝送特性を、電磁界解析にて求めた結果を示すグラフである。2本の曲線はそれぞれ1a−2a−3aと連なる横断面形状が円形のビアを含む信号線路と、1b−2b−3bと連なる横断面形状が長円形のビアを含む信号線路を電気信号が伝送する際の遅延量を示している。なお遅延量と光速の積が電気長であるので、電気長を調整することは遅延量を調整することに他ならない。
ここで図2を見ると、例えば5GHzでの遅延量が円形ビア配線と長円形ビア配線とで1.4ピコ秒程度違う、つまり1.4ピコ秒の遅延量を調整する効果があることが分かる。この遅延量の差がビア部の形状の違いに由来する差であり、本実施の形態のように断面形状の異なるビアを組み合わせることで、差動線路の遅延量を調整することができる。
電気長が1mm違う場合の遅延量が3.3ピコ秒であるので、1.4ピコ秒は約0.42mmの電気長の違いとなる。例えば線路幅0.152mm、線路間隔が0.152mmで併走する差動信号線路が円弧を描いて90度曲がった場合、差動線路間の線路長差は約0.48mmとなる。パソコンなどで広く使われているガラスエポキシ基板上に形成するマイクロストリップ線路の場合、その実効誘電率は3.4程度であり、この場合約0.48mmの物理長は約0.88mmの電気長に相当する。前記の通り、本実施の形態のビア構造の電気長差は約0.42mmであるので、このビア構造を2回繰り返すことで約0.84mmの電気長を調整することができる。これはつまり配線に必要な面積の増大を引き起こすことなく約0.88mmの電気長をほぼ補正することができるということであり、本発明が差動信号線路の電気長補正に極めて有効な手段であると言うことができる。
ところで、本実施の形態の構造は、ビアの基板面に平行な面での断面形状が円形と長円形であるということ以外は一般的なプリント基板に用いられている配線構造と同様である。長円形のビアは円形のビアを複数個繋ぐ、あるいはルータを使用することで容易に実現できるので、一般的なプリント基板の製造工程を適用して製造することができる。従って、本実施の形態の差動信号線路は高コストとなる特別な工程を使用することなく実現することができる。
〔第2の実施の形態〕
図3は、本発明の第2の実施の形態である差動信号線路の透視斜視図である。本実施の形態の差動信号線路では、第1の接地層の開口部5と第2の接地層の開口部7の中を差動ビア対2a、2bが貫通する構造である。この場合でも断面形状が長円形のビア2bのインダクタンスは断面形状が円形のビア2aと比較して小さくなることは第1の実施の形態の場合と同様であり、よって差動線路間の遅延調整が可能である。
〔第3の実施の形態〕
図4は、本発明の第3の実施の形態である差動信号線路の透視斜視図である。本実施の形態の差動信号線路では、差動ビア対2a、2bを伝送線路の進行方向に前後にずらした構造となっている。このような構造であっても、一方のビアの横断面形状が長円形であることでビアのインダクタンスを小さくすることができるため、第1の実施の形態と同様に異なる電気長を持つ差動線路対を実現することができる。図5は、第3の実施の形態の信号伝送特性を電磁界解析にて求めた結果を示すグラフである。図5から5GHzでの遅延差は1.1ピコ秒と読みとることができ、このことから本発明の第3の実施の形態での有効性も明らかである。このように本発明の効果は差動線路対のビアの位置関係に依存せずに有効に作用するので、配線レイアウトの制約で差動信号線路のビアを並べて配置できない時にも有効な発明であることが分かる。
〔第4の実施の形態〕
図6は、本発明の第4の実施の形態である差動信号線路の透視斜視図である。本実施の形態の差動信号線路では、長円形のビア2bの、信号線路の伸張方向の中心線が信号線路の中心線と重なるように、長円形のビア2bが形成されている。これに対し、円形のビア2aの、信号線路の伸張方向の中心線が信号線路の中心線と離れるように、円形のビア2aが形成されている。このように構成することにより、ビア形状の差異による電気長の調整に加え、現実の配線長にも差をつけることができるので、第1の実施の形態の場合よりも大きく差動線路間の遅延調整を行うことができる。
本実施の形態は第1の実施の形態に変更を加えたものであるが、本実施の形態を第2あるいは第3の実施の形態と組み合わせるようにしてもよい。
〔実施の形態の変更例〕
以上の実施の形態では、ビア対の一方の横断面形状を長円形、他方の横断面形状を円形とするものであったが、本発明の電気長差はビアの断面形状の違いに由来するものであるため、ビア対の横断面形状は必ずしも長円形と円形の組み合せでなくてもよい。図7、図8は、ビア対形状の変更例を示す平面図であって、ここに示すように楕円形や長方形でも本発明の効果を享受することができる。実際にドリルや金型などを用いてビアホールを開口する場合、厳密に長方形の四隅を直角に形成することは困難である。図8には四隅が直角な図を示しているが、ここの形状が厳密に直角でなくてもよいことは、本発明が異なる横断面形状のビアの組合せで電気長を調整するものであることから、明らかである。
また、楕円形や長方形のビア形状の場合も、ビアの幅を従来の円形のビアの直径と比較して同等、あるいは同等以下にすることで、配線に必要な面積の増大を招くことはない。もちろんここに示した以外の形状の組み合せも可能である。
本発明の第1の実施の形態の差動信号線路を示す透視斜視図。 本発明の第1の実施の形態についての電磁界解析結果を示すグラフ。 本発明の第2の実施の形態の差動信号線路を示す透視斜視図。 本発明の第3の実施の形態の差動信号線路を示す透視斜視図。 本発明の第3の実施の形態についての電磁界解析結果を示すグラフ。 本発明の第4の実施の形態の差動信号線路を示す透視斜視図。 本発明の実施の形態でのビア対の変更例を示す平面図。 本発明の実施の形態でのビア対の変更例を示す平面図。 従来の差動信号線路を示す斜視図。
符号の説明
1a、1b 第1の信号層に形成された伝送線路
2a、2b 第1の信号層と第2の信号層とを接続するビア
3a、3b 第2の信号層に形成された伝送線路
4 第1の接地層
5、5a、5b 第1の接地層の開口部
6 第2の接地層
7、7a、7b 第2の接地層の開口部

Claims (8)

  1. 多層配線プリント基板上に形成される複数の信号層にまたがる差動信号線路において、異層に形成された差動信号線路対を接続するビア対を具備し、少なくとも一つのビア対の一方のビアの横断面形状が、前記差動信号線路の伸張方向の長さがこれと直交する方向の長さより長い形状であることを特徴とする差動信号線路。
  2. 前記少なくとも一つのビア対のビア同士の電気長が互いに異なっていることを特徴とする請求項1に記載の差動信号線路。
  3. 前記少なくとも一つのビア対の他方のビアの横断面形状が円形であることを特徴とする請求項1または2に記載の差動信号線路。
  4. 前記少なくとも一つのビア対の一方のビアの、前記差動信号線路の伸張方向と直交する方向の長さが、前記他方のビアの径と概略等しいことを特徴とする請求項3に記載の差動信号線路。
  5. 前記少なくとも一つのビア対の前記一方のビアの横断面形状が、楕円形、長方形、または、長方形の二つの短辺に該短辺の長さを直径とする円を半分ずつ接続した形状のいずれかであることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の差動信号線路。
  6. 前記差動信号線路が、マイクロストリップ線路を構成していることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の差動信号線路。
  7. 前記少なくとも一つのビア対の前記一方のビアの基板面垂直方向の中心線を通る、そのビアのランド上に引いた前記差動信号線路の伸張方向の直線と、前記少なくとも一つのビア対の他方のビアの基板面垂直方向の中心線を通る、そのビアのランド上に引いた前記差動信号線路の伸張方向の直線との距離が、前記差動信号線路対間の距離より大きいことを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の差動信号線路。
  8. 前記一方のビアの基板面垂直方向の中心線を通る、そのビアのランド上に引いた前記差動信号線路の伸張方向の直線が、当該ランドに接続された差動信号線路の中心を通っていることを特徴とする請求項7に記載の差動信号線路。
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