JP2008240031A - 鉄粉を原料とする成形用素材およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】高密度かつ高強度の鉄基焼結部材を、高価な合金成分を添加することなく製造するための成形用素材およびその製造方法を提供する。
【解決手段】鉄粉に黒鉛粉、あるいはさらに潤滑材と、を混合して得られる鉄基混合粉に加圧成形を施した後、予備焼結を施す成形用素材の製造方法において、予備焼結として不活性雰囲気中で1000〜1200℃の温度範囲に60秒以下保持する。
【選択図】図1
【解決手段】鉄粉に黒鉛粉、あるいはさらに潤滑材と、を混合して得られる鉄基混合粉に加圧成形を施した後、予備焼結を施す成形用素材の製造方法において、予備焼結として不活性雰囲気中で1000〜1200℃の温度範囲に60秒以下保持する。
【選択図】図1
Description
本発明は、鉄粉を主体とする混合粉(以下、鉄基混合粉という)から加圧成形と焼結を経て、様々な用途に用いて好適な機械部品(以下、鉄基焼結部材という)を製造するための成形用素材に関し、特に高密度かつ高強度の鉄基焼結部材を製造するための、圧縮成形法に好適な成形用素材およびその製造方法に関するものである。
粉末冶金技術は、複雑な形状の部品を所定の形状に高精度に仕上げることができ、切削コストを大幅に低減できる。そのため、鉄粉を原料として粉末冶金技術で製造した部品が様々な用途(たとえば自動車等)に多量に採用されている。しかも最近では各種機器の小型化,軽量化を図るために、部品の高強度化が求められており、とりわけ鉄基焼結部材に対する高強度化の要求が強い。
鉄基焼結部材を製造する際には、一般に
(1)鉄粉に合金粉末(たとえば黒鉛粉,銅粉等)と潤滑剤(たとえばステアリン酸亜鉛,ステアリン酸リチウム等)とを混合して鉄基混合粉とする、
(2)鉄基混合粉を金型に充填し、さらに加圧成形して成形体とする、
(3)成形体を焼結して焼結体とする
という工程が採用される。得られた焼結体は、必要に応じてサイジングや切削加工が施されて、所定の形状,寸法を有する鉄基焼結部材となる。また、鉄基焼結部材に高強度が必要な場合は、浸炭熱処理や光輝熱処理を施す。
(1)鉄粉に合金粉末(たとえば黒鉛粉,銅粉等)と潤滑剤(たとえばステアリン酸亜鉛,ステアリン酸リチウム等)とを混合して鉄基混合粉とする、
(2)鉄基混合粉を金型に充填し、さらに加圧成形して成形体とする、
(3)成形体を焼結して焼結体とする
という工程が採用される。得られた焼結体は、必要に応じてサイジングや切削加工が施されて、所定の形状,寸法を有する鉄基焼結部材となる。また、鉄基焼結部材に高強度が必要な場合は、浸炭熱処理や光輝熱処理を施す。
上記の(2)で得られた成形体の密度は6.6〜7.1Mg/m3 程度であるから、(3)で得られる焼結体も同程度の密度を有する。
鉄基焼結部材の高強度化を図るためには、鉄基焼結部材の密度を高める必要がある。そこで(1)で得られる鉄基混合粉に高密度化を促進する添加剤や高強度化を促進する合金元素を混合する必要がある。鉄基焼結部材の高密度化を達成すれば鉄基焼結部材中の空孔が減少し、引張強さ,靭性,疲労強さ等の機械的性質が向上する。また、Mo,Mn,Ni,Cr等の合金元素を添加することによって焼入れ性が改善され、鉄基焼結部材の強度が向上する。
鉄基焼結部材の高強度化を図るためには、鉄基焼結部材の密度を高める必要がある。そこで(1)で得られる鉄基混合粉に高密度化を促進する添加剤や高強度化を促進する合金元素を混合する必要がある。鉄基焼結部材の高密度化を達成すれば鉄基焼結部材中の空孔が減少し、引張強さ,靭性,疲労強さ等の機械的性質が向上する。また、Mo,Mn,Ni,Cr等の合金元素を添加することによって焼入れ性が改善され、鉄基焼結部材の強度が向上する。
そこで鉄基焼結部材の密度や強度を高める技術が種々検討されている。
たとえば特許文献1,2,3,4には、鉄粉を加熱しつつ成形する技術(いわゆる温間成形)が開示されている。これらの技術は、温間成形の技術を適用することによって、Fe−4Ni−0.5Mo−1.5Cu系の部分合金化鋼粉に0.5質量%の黒鉛粉と0.6質量%の潤滑剤とを配合し、得られた鉄基混合粉を150℃,686MPaで加圧成形して、7.30Mg/m3 程度の密度を有する成形体を製造するものである。
たとえば特許文献1,2,3,4には、鉄粉を加熱しつつ成形する技術(いわゆる温間成形)が開示されている。これらの技術は、温間成形の技術を適用することによって、Fe−4Ni−0.5Mo−1.5Cu系の部分合金化鋼粉に0.5質量%の黒鉛粉と0.6質量%の潤滑剤とを配合し、得られた鉄基混合粉を150℃,686MPaで加圧成形して、7.30Mg/m3 程度の密度を有する成形体を製造するものである。
しかしながら特許文献1〜4に開示された技術は、温間成形技術を適用するために鉄基混合粉を加熱する設備が必要であるから、成形コストが上昇する。しかも成形体の加熱による膨張あるいは冷却による収縮の影響を受けて、成形体の寸法精度が低下する。
また特許文献5には、粉末冶金技術と冷間鍛造技術を組み合わせて、ほぼ真密度に近い鉄基焼結部材を製造する技術が開示されている。この技術は、鉄粉を加圧成形し、得られた成形体を予備焼結しさらに冷間鍛造した後、仕上げ焼結して高密度の鉄基焼結部材を製造するものである。
また特許文献5には、粉末冶金技術と冷間鍛造技術を組み合わせて、ほぼ真密度に近い鉄基焼結部材を製造する技術が開示されている。この技術は、鉄粉を加圧成形し、得られた成形体を予備焼結しさらに冷間鍛造した後、仕上げ焼結して高密度の鉄基焼結部材を製造するものである。
この特許文献5に開示された技術は、成形体の表面に液状潤滑剤を塗布してダイス内で冷間鍛造した後、ダイス内に負圧を作用させて液状潤滑剤を吸引除去し、さらにダイス内で再び冷間鍛造を施して仕上げ焼結を行なう。つまり成形体の空孔に浸入した液状潤滑剤を吸引した後で冷間鍛造を行なうので、空孔が圧潰消滅し、高密度の鉄基焼結部材が得られるとしている。
しかしながら本発明者らの研究によれば、特許文献5に開示されるように粉末冶金技術と冷間鍛造技術を組み合わせても、得られる鉄基焼結部材の密度は7.5Mg/m3 程度であり、密度の大幅な向上は期待できない。
一方で鉄基焼結部材の強度を高めるためには、C濃度を高めることが有効である。具体的には、C源として黒鉛粉を添加した鉄粉を金型内で加圧成形し、得られた成形体に予備焼結を施して成形用素材として、その成形用素材を圧縮成形しさらに仕上げ焼結を行なう。一般に鉄粉に黒鉛粉を混合して鉄基焼結部材を製造する場合には、このような一連の手順が採用されるが、予備焼結にてCが成形用素材の全体に拡散する。その結果、成形用素材の硬度が上昇し、圧縮成形の変形抵抗が増大するので、高密度かつ高強度の鉄基焼結部材を製造するのは困難である。
一方で鉄基焼結部材の強度を高めるためには、C濃度を高めることが有効である。具体的には、C源として黒鉛粉を添加した鉄粉を金型内で加圧成形し、得られた成形体に予備焼結を施して成形用素材として、その成形用素材を圧縮成形しさらに仕上げ焼結を行なう。一般に鉄粉に黒鉛粉を混合して鉄基焼結部材を製造する場合には、このような一連の手順が採用されるが、予備焼結にてCが成形用素材の全体に拡散する。その結果、成形用素材の硬度が上昇し、圧縮成形の変形抵抗が増大するので、高密度かつ高強度の鉄基焼結部材を製造するのは困難である。
このような問題に対して特許文献6には、鉄粉,合金粉,黒鉛粉および潤滑剤を混合した混合粉を加圧成形しさらに予備焼結(温度1100℃,保持時間15〜20分)して成形用素材とし、その成形用素材に冷間鍛造を施して少なくとも50%の塑性変形を生じさせた後、仕上げ焼結,焼鈍およびロール加工を行なって鉄基焼結部材を製造する技術が開示されている。つまり、Cの拡散を抑制する条件で予備焼結を行なうので、冷間鍛造にて高い変形能を発現させることができるとしている。
しかしながら本発明者らの研究によれば、特許文献6に開示されるような予備焼結を行なうとCが成形用素材の全体に拡散するので、成形用素材の硬度が上昇し、圧縮成形の変形抵抗が増大する。したがって、高密度かつ高強度の鉄基焼結部材を製造するのは困難である。
また特許文献7には、予備焼結の条件を制御して成形用素材のN含有量を調整することによって、成形用素材の変形能を改善する技術が開示されている。この技術は鉄粉のC含有量を0.5質量%以下に規定しているので、成形用素材の変形抵抗を低減でき、その成形用素材を圧縮成形することによって7.7Mg/m3 以上の密度を有する鉄基焼結部材を製造できる。
また特許文献7には、予備焼結の条件を制御して成形用素材のN含有量を調整することによって、成形用素材の変形能を改善する技術が開示されている。この技術は鉄粉のC含有量を0.5質量%以下に規定しているので、成形用素材の変形抵抗を低減でき、その成形用素材を圧縮成形することによって7.7Mg/m3 以上の密度を有する鉄基焼結部材を製造できる。
しかしながら特許文献7に開示された技術で高硬度(HRC60程度)のHRC60程度を得るためには、Mo等の高価な合金元素を添加し、さらに浸炭焼入れ熱処理を行なわなければならない。
特開平2-156002号公報
特公平7-103404号公報
米国特許5256185号公報
米国特許5368630号公報
特開平1-123005号公報
米国特許4393563号公報
特許第3729764号公報
本発明は、高密度かつ高強度の鉄基焼結部材を、高価な合金成分を添加することなく、圧縮成形法で製造するための成形用素材、およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、鉄粉に黒鉛粉、あるいはさらに潤滑材と、を混合して得られる鉄基混合粉に加圧成形を施した後、予備焼結を施して得られる成形用素材であって、Mnを0.2質量%未満,Cを0.5〜0.8質量%含有し、遊離黒鉛が0.02質量%以下であり、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有する成形用素材である。
また本発明は、鉄粉に黒鉛粉、あるいはさらに潤滑材と、を混合して得られる鉄基混合粉に加圧成形を施した後、予備焼結を施す成形用素材の製造方法において、予備焼結として不活性雰囲気中で1000〜1200℃の温度範囲に60秒以下保持する成形用素材の製造方法である。
また本発明は、鉄粉に黒鉛粉、あるいはさらに潤滑材と、を混合して得られる鉄基混合粉に加圧成形を施した後、予備焼結を施す成形用素材の製造方法において、予備焼結として不活性雰囲気中で1000〜1200℃の温度範囲に60秒以下保持する成形用素材の製造方法である。
本発明によれば、成形用素材中のCが結晶粒界に偏析するので、結晶粒内はC含有量が減少して成形用素材の硬度が低下する。したがって変形能の高い成形用素材が得られ、その成形用素材に圧縮成形を施すことによって緻密化され、高密度かつ高強度の鉄基焼結部材を製造できる。しかも成形用素材の変形抵抗が小さいので、複雑な形状の鉄基焼結部材を製造できる。
さらに成形用素材に圧縮成形を施した後で、仕上げ焼結を行なうことによってCが均一に拡散する。したがって仕上げ焼結の後、さらに高周波焼入れを施して、高価な合金元素を添加することなく、強度を一層高めた鉄基焼結部材を製造できる。
図1は、本発明を適用して製造した成形用素材を用いて、鉄基焼結部材を製造する際の手順を示すフロー図である。
本発明では、図1に示すように、鉄粉に黒鉛粉を混合して鉄基混合粉とする。必要に応じて、鉄粉に潤滑剤を添加しても良い。得られた鉄基混合粉を金型に充填し、さらに加圧成形を行なって予備成形体とする。加圧成形で付加する押圧力は、予備成形体の密度が7.1Mg/m3 以上となるように調整する。密度を7.1Mg/m3 以上とすることによって鉄粉の粒子間の接合面積が増大し、予備成形体の変形能が向上するからである。ただし加圧成形の際に過剰な押圧力を付加すると、金型の耐用性が低下する。したがって、加圧成形で付加する押圧力は7.1〜7.5Mg/m3 の範囲内が好ましい。より好ましくは7.3〜7.5Mg/m3 の範囲内である。
本発明では、図1に示すように、鉄粉に黒鉛粉を混合して鉄基混合粉とする。必要に応じて、鉄粉に潤滑剤を添加しても良い。得られた鉄基混合粉を金型に充填し、さらに加圧成形を行なって予備成形体とする。加圧成形で付加する押圧力は、予備成形体の密度が7.1Mg/m3 以上となるように調整する。密度を7.1Mg/m3 以上とすることによって鉄粉の粒子間の接合面積が増大し、予備成形体の変形能が向上するからである。ただし加圧成形の際に過剰な押圧力を付加すると、金型の耐用性が低下する。したがって、加圧成形で付加する押圧力は7.1〜7.5Mg/m3 の範囲内が好ましい。より好ましくは7.3〜7.5Mg/m3 の範囲内である。
なお上記の(2)では鉄基混合粉を金型に充填しさらに加圧成形したものを成形体と記したが、ここでは後述する仕上げ成形体と区別するために予備成形体と記す。
こうして得られた予備成形体に予備焼結を施して焼結体とする。この焼結体は、鉄基焼結部材を製造するための圧縮成形の素材となるので、成形用素材と記す。
この成形用素材に圧縮成形を施して、所定の形状を有する仕上げ成形体とする。次いで仕上げ成形体に仕上げ焼結を施して、高密度かつ高強度の鉄基焼結部材を製造する。さらに必要に応じて焼入れ(たとえば高周波焼入れ,光輝焼入れ等)を行なうことによって、強度を一層高めた鉄基焼結部材(以下、高強度鉄基焼結部材という)を製造できる。
こうして得られた予備成形体に予備焼結を施して焼結体とする。この焼結体は、鉄基焼結部材を製造するための圧縮成形の素材となるので、成形用素材と記す。
この成形用素材に圧縮成形を施して、所定の形状を有する仕上げ成形体とする。次いで仕上げ成形体に仕上げ焼結を施して、高密度かつ高強度の鉄基焼結部材を製造する。さらに必要に応じて焼入れ(たとえば高周波焼入れ,光輝焼入れ等)を行なうことによって、強度を一層高めた鉄基焼結部材(以下、高強度鉄基焼結部材という)を製造できる。
以上に説明した通り、本発明は、鉄基焼結部材を製造するための圧縮成形の素材となる成形用素材を製造するものである。
成形用素材のC含有量が0.5質量%未満では、仕上げ焼結あるいは高周波焼入れを施しても十分な強度が得られない。一方、0.8質量%を超えると、仕上げ焼結あるいは高周波焼入れにて鉄基焼結部材や高強度鉄基焼結部材に割れが生じる惧れがある。したがって、成形用素材のC含有量は0.5〜0.8質量%の範囲内とする。
成形用素材のC含有量が0.5質量%未満では、仕上げ焼結あるいは高周波焼入れを施しても十分な強度が得られない。一方、0.8質量%を超えると、仕上げ焼結あるいは高周波焼入れにて鉄基焼結部材や高強度鉄基焼結部材に割れが生じる惧れがある。したがって、成形用素材のC含有量は0.5〜0.8質量%の範囲内とする。
Mnは、成形用素材の焼入れ性を向上させる元素であるが、0.2質量%以上含有すると、成形用素材の変形抵抗が増すので、0.2質量%未満に制限する。
成形用素材の遊離黒鉛が0.02質量%を超えると、圧縮成形の際に素材の流れに沿って黒鉛の伸展層が形成され、仕上げ焼結によってCが黒鉛から基地へ拡散する。その結果、黒鉛の伸展層が空孔となって残留するので、成形用素材の密度の低下および強度の低下を招く。したがって、成形用素材の遊離黒鉛は0.02質量%以下とする。
成形用素材の遊離黒鉛が0.02質量%を超えると、圧縮成形の際に素材の流れに沿って黒鉛の伸展層が形成され、仕上げ焼結によってCが黒鉛から基地へ拡散する。その結果、黒鉛の伸展層が空孔となって残留するので、成形用素材の密度の低下および強度の低下を招く。したがって、成形用素材の遊離黒鉛は0.02質量%以下とする。
残部はFeおよび不可避的不純物である。不可避的不純物としては、主としてN,Oが挙げられる。
成形用素材のN含有量を0.005質量%以下とすることによって、成形用素材の変形抵抗を減少できる。そのため、N含有量は可能な限り低減することが好ましい。しかし成形用素材の0.0005質量%未満まで低減するためには、雰囲気中のN濃度を低レベルに抑制しなければならず、生産性の低下や製造コストの上昇を招く。したがって、成形用素材のN含有量は0.005質量%以下が好ましく、より好ましくは0.0005〜0.005質量%の範囲内である。
成形用素材のN含有量を0.005質量%以下とすることによって、成形用素材の変形抵抗を減少できる。そのため、N含有量は可能な限り低減することが好ましい。しかし成形用素材の0.0005質量%未満まで低減するためには、雰囲気中のN濃度を低レベルに抑制しなければならず、生産性の低下や製造コストの上昇を招く。したがって、成形用素材のN含有量は0.005質量%以下が好ましく、より好ましくは0.0005〜0.005質量%の範囲内である。
成形用素材のO含有量を0.3質量%以下とすることによって、成形用素材の変形抵抗を減少できる。そのため、O含有量は可能な限り低減することが好ましい。しかし成形用素材の0.02質量%未満まで低減するためには、同程度のO含有量を有する鉄粉を使用しなければならない。そのようにO含有量を低減した鉄基金属粉は、製造コストが上昇するのは避けられない。したがって、成形用素材のO含有量は0.3質量%以下が好ましく、より好ましくは0.02〜0.3質量%の範囲内である。
本発明で使用する鉄粉の粒径は、特に限定する必要はないが、工業的に安価に製造できるサイズ(すなわち平均粒径30〜120μmの範囲内)の鉄粉を使用することが好ましい。なお平均粒径は、重量積算粒度分布の中点(D50)の値とする。
また鉄基混合粉には、加圧成形における押圧力を有効に作用させて予備成形体の密度を高め、かつ金型から取り出す際の抜出し力を軽減するために、潤滑剤を添加しても良い。潤滑剤としては、ステアリン酸亜鉛,ステアリン酸リチウム,エチレンビスステアロアミド,ポリエチレン,ポリプロピレン,熱可塑性樹脂,ポリアミド,ステアリン酸アミド,オレイン酸,ステアリン酸カルシウム等が使用できる。潤滑剤を添加する場合は、鉄基混合粉(すなわち鉄粉と黒鉛粉の合計量)100質量部に対して、潤滑剤0.1〜0.6質量部を添加することが好ましい。さらに、黒鉛粉が鉄粉の表面に付着し易くなるように、鉄基混合粉にワックスやスピンドル油を添加しても良い。
また鉄基混合粉には、加圧成形における押圧力を有効に作用させて予備成形体の密度を高め、かつ金型から取り出す際の抜出し力を軽減するために、潤滑剤を添加しても良い。潤滑剤としては、ステアリン酸亜鉛,ステアリン酸リチウム,エチレンビスステアロアミド,ポリエチレン,ポリプロピレン,熱可塑性樹脂,ポリアミド,ステアリン酸アミド,オレイン酸,ステアリン酸カルシウム等が使用できる。潤滑剤を添加する場合は、鉄基混合粉(すなわち鉄粉と黒鉛粉の合計量)100質量部に対して、潤滑剤0.1〜0.6質量部を添加することが好ましい。さらに、黒鉛粉が鉄粉の表面に付着し易くなるように、鉄基混合粉にワックスやスピンドル油を添加しても良い。
鉄粉と黒鉛粉と(あるいは必要に応じてさらに潤滑剤)を混合するための混合装置は、従来から知られているヘンシェルミキサー,コーン型ミキサー,V型ミキサー等の混合装置が使用できる。
このようにして得られた鉄基混合粉を金型に充填して加圧成形を行ない予備成形体を得る際には、従来から知られている金型潤滑法,分割金型による多段成形法,CNCプレス法,静水圧プレス法,温間成形法,ロールフォーミング法等が使用できる。ただし、温間成形法は上記したような問題があるので、予備成形体の成形コスト削減と寸法精度向上の観点から、温間成形法以外の技術を採用することが好ましい。
このようにして得られた鉄基混合粉を金型に充填して加圧成形を行ない予備成形体を得る際には、従来から知られている金型潤滑法,分割金型による多段成形法,CNCプレス法,静水圧プレス法,温間成形法,ロールフォーミング法等が使用できる。ただし、温間成形法は上記したような問題があるので、予備成形体の成形コスト削減と寸法精度向上の観点から、温間成形法以外の技術を採用することが好ましい。
この予備成形体に予備焼結を施す際に、温度が1000℃未満では、Cが黒鉛粉から基地へ拡散せず、多量の遊離黒鉛が生成される。一方、1200℃を超えると、Cが過剰に拡散して予備成形体の硬度が上昇するので、予備成形体の変形抵抗が増大する。したがって、予備焼結の温度は1000〜1200℃の範囲内とする。好ましくは1000〜1100℃である。
予備焼結の保持時間が60秒を超えると、Cが黒鉛から基地へ過剰に拡散して予備成形体の硬度が上昇するので、予備成形体の変形抵抗が増大する。したがって、予備焼結の保持時間は60秒以下とする。一方、10秒未満では、Cが十分に拡散せず、多量の遊離黒鉛が生成される。そのため、保持時間を10〜60秒の範囲内とすることが好ましい。より好ましくは10〜30秒である。そのような短時間で予備焼結を行なうためには、プラズマ加熱や高周波加熱を採用することが好ましい。
予備焼結の保持時間が60秒を超えると、Cが黒鉛から基地へ過剰に拡散して予備成形体の硬度が上昇するので、予備成形体の変形抵抗が増大する。したがって、予備焼結の保持時間は60秒以下とする。一方、10秒未満では、Cが十分に拡散せず、多量の遊離黒鉛が生成される。そのため、保持時間を10〜60秒の範囲内とすることが好ましい。より好ましくは10〜30秒である。そのような短時間で予備焼結を行なうためには、プラズマ加熱や高周波加熱を採用することが好ましい。
予備焼結の雰囲気ガスは、従来から知られている窒素ガス,水素ガス,窒素と水素の混合ガス,アルゴンガス,アンモニア分解ガス,RXガス等が使用できる。
以下では、この成形用素材から鉄基焼結部材あるいは高強度鉄基焼結部材を製造する方法を説明する。
成形用素材は、圧縮成形によって所定の寸法,形状を有する仕上げ成形体となる。圧縮成形は、従来から知られている冷間鍛造,ロールフォーミング等が使用できる。ただし本発明の成形用素材は優れた変形能を有するので、寸法精度の高い仕上げ成形体を安価に製造できる冷間鍛造が好ましい。
以下では、この成形用素材から鉄基焼結部材あるいは高強度鉄基焼結部材を製造する方法を説明する。
成形用素材は、圧縮成形によって所定の寸法,形状を有する仕上げ成形体となる。圧縮成形は、従来から知られている冷間鍛造,ロールフォーミング等が使用できる。ただし本発明の成形用素材は優れた変形能を有するので、寸法精度の高い仕上げ成形体を安価に製造できる冷間鍛造が好ましい。
この仕上げ成形体に仕上げ焼結を施す際に、温度が1050℃未満では、Cが黒鉛粉から基地へ拡散せず、十分な強度の鉄基焼結部材が得られない。一方、1300℃を超えると、結晶粒が粗大化して、十分な強度の鉄基焼結部材が得られない。したがって、仕上げ焼結の温度は1050〜1300℃の範囲内が好ましい。
仕上げ焼結の保持時間が600秒未満では、Cが黒鉛粉から基地へ拡散せず、十分な強度の鉄基焼結部材が得られない。一方、3600秒を超えても、黒鉛拡散の効果はそれほど向上せず、経済的でない。したがって、仕上げ焼結の保持時間は600〜3600秒の範囲内が好ましい。
仕上げ焼結の保持時間が600秒未満では、Cが黒鉛粉から基地へ拡散せず、十分な強度の鉄基焼結部材が得られない。一方、3600秒を超えても、黒鉛拡散の効果はそれほど向上せず、経済的でない。したがって、仕上げ焼結の保持時間は600〜3600秒の範囲内が好ましい。
仕上げ焼結の雰囲気は、鉄基焼結部材の酸化を防止するために不活性雰囲気,還元性雰囲気または真空とすることが好ましい。
このようにして高密度かつ高強度の鉄基焼結部材を製造できる。
強度を一層高めた高強度鉄基焼結部材を製造するためには、焼入れ(たとえば高周波焼入れ,光輝焼入れ等)を行なう。焼入れを行なう際の加熱温度は800〜950℃の範囲内が好ましく、冷却媒体は水を使用(いわゆる水焼入れ)しても良いが、割れの発生を防止するために油を使用(いわゆる油焼入れ)することが好ましい。
このようにして高密度かつ高強度の鉄基焼結部材を製造できる。
強度を一層高めた高強度鉄基焼結部材を製造するためには、焼入れ(たとえば高周波焼入れ,光輝焼入れ等)を行なう。焼入れを行なう際の加熱温度は800〜950℃の範囲内が好ましく、冷却媒体は水を使用(いわゆる水焼入れ)しても良いが、割れの発生を防止するために油を使用(いわゆる油焼入れ)することが好ましい。
鉄粉に黒鉛粉と潤滑剤を添加し、V型ミキサーで混合して鉄基混合粉とした。鉄粉は、C:0.007質量%,Mn:0.12質量%,O:0.15質量%,N:0.001質量%を含有する鉄粉(JFEスチール製JIP301A)を使用した。潤滑剤はステアリン酸亜鉛を使用し、その添加量は鉄基金属粉と黒鉛粉の合計量を100質量部として0.3質量部とした。黒鉛粉の添加量は表1に示す通りである。
この予備成形体に予備焼結を施して焼結体(すなわち成形用素材)とした。予備焼結は、90体積%水素−10体積%窒素の混合ガスを雰囲気ガスとして使用し、大気圧と同等の雰囲気圧で行なった。予備焼結の温度と保持時間は表1に示す通りである。得られた成形用素材から試験片を採取し、C含有量,O含有量,N含有量を測定した。その結果を表1に示す。なお、C含有量は燃焼赤外線吸収法で測定し、O含有量は不活性ガス融解赤外線吸収法で測定し、N含有量は不活性ガス融解熱伝導度法で測定した。
遊離黒鉛量は、C含有量の測定の際に、酸に溶解しない残渣中のC量を試験片の質量で除して求めた。測定された遊離黒鉛は、比較例8で0.02質量%を超え、他は0.02質量%未満であった。
次に、これらの成形用素材を用いて断面減少率60%の圧縮成形(すなわち後方押出し法による冷間鍛造)を行ない、カップ状の仕上げ成形体とした。冷間鍛造の荷重は表2に示す通りである。得られた仕上げ成形体の外観を目視で観察して亀裂の有無を調査し、さらにアルキメデス法で密度を測定した。その結果は表2に示す通りである。
次に、これらの成形用素材を用いて断面減少率60%の圧縮成形(すなわち後方押出し法による冷間鍛造)を行ない、カップ状の仕上げ成形体とした。冷間鍛造の荷重は表2に示す通りである。得られた仕上げ成形体の外観を目視で観察して亀裂の有無を調査し、さらにアルキメデス法で密度を測定した。その結果は表2に示す通りである。
さらに仕上げ成形体に仕上げ焼結と高周波焼入れを施して、鉄基焼結部材とした。仕上げ焼結は、20体積%水素−80体積%窒素の混合ガスを雰囲気ガスとして使用し、1140℃で1800秒保持して行なった。高周波焼入れは、表1に示す温度に加熱した後、水焼入れを行なった。得られた鉄基焼結部材の外観を目視で観察してクラックの有無を調査し、さらにJIS規格Z2245に準拠して硬度(HRC)を測定した。その結果は表2に示す通りである。
一方、比較例(No.1)の成形用素材はC含有量が低いので、鉄基焼結部材の硬度も低かった。また、比較例(No.5)の成形用素材はC含有量が高いので、変形抵抗が増大して所定の形状まで圧縮成形できなかった。比較例(No.7)の成形用素材は予備焼結の保持時間が長いので、Cが黒鉛から基地へ過剰に拡散して変形抵抗が増大し、所定の形状まで圧縮成形できなかった。比較例(No.8)の成形用素材は遊離黒鉛が多いので、黒鉛の伸展層に起因する欠陥が発生する惧れがあり、試験を取止めた。比較例(No.11)の成形用素材の密度が最も低かったので、仕上げ成形体の密度も低かった。
Claims (2)
- 鉄粉に黒鉛粉、あるいはさらに潤滑材と、を混合して得られる鉄基混合粉に加圧成形を施した後、予備焼結を施して得られる成形用素材であって、Mnを0.2質量%未満、Cを0.5〜0.8質量%含有し、遊離黒鉛が0.02質量%以下であり、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有することを特徴とする成形用素材。
- 鉄粉に黒鉛粉、あるいはさらに潤滑材と、を混合して得られる鉄基混合粉に加圧成形を施した後、予備焼結を施す成形用素材の製造方法において、前記予備焼結として不活性雰囲気中で1000〜1200℃の温度範囲に60秒以下保持することを特徴とする成形用素材の製造方法。
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