JP2008121064A - 低ひずみ焼入れ材の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】設備維持コストが少なく、冷媒の廃棄コストが不要であり、さらに、不完全焼入れを生じさせることなく、寸法精度の高い焼入れ材を製造することが可能な低ひずみ焼入れ材の製造方法を提供すること。
【解決手段】以下の工程を備えた低ひずみ焼入れ材の製造方法。(イ)鋼材を800〜1200℃に加熱する加熱工程。(ロ)加熱された前記鋼材を、加圧ガス冷却を用いて、0.1〜50℃/secの冷却速度で100〜500℃の等温保持温度まで急冷し、前記等温保持温度で30sec〜120min等温保持する1次冷却工程。(ハ)前記等温保持が終了した後、前記鋼材を室温まで冷却する2次冷却工程。この場合、前記加熱工程の前に、800〜1200℃の浸炭温度で前記鋼材の表面を浸炭処理し、冷却する浸炭工程をさらに備えていてもよい。
【選択図】図1
【解決手段】以下の工程を備えた低ひずみ焼入れ材の製造方法。(イ)鋼材を800〜1200℃に加熱する加熱工程。(ロ)加熱された前記鋼材を、加圧ガス冷却を用いて、0.1〜50℃/secの冷却速度で100〜500℃の等温保持温度まで急冷し、前記等温保持温度で30sec〜120min等温保持する1次冷却工程。(ハ)前記等温保持が終了した後、前記鋼材を室温まで冷却する2次冷却工程。この場合、前記加熱工程の前に、800〜1200℃の浸炭温度で前記鋼材の表面を浸炭処理し、冷却する浸炭工程をさらに備えていてもよい。
【選択図】図1
Description
本発明は、低ひずみ焼入れ材の製造方法に関し、さらに詳しくは、焼入れ時のひずみが小さく、設備維持が比較的容易な低ひずみ焼入れ材の製造方法に関する。
浸炭とは、鋼を浸炭性雰囲気中で加熱し、表面の炭素濃度を高める処理をいう。浸炭は、一般に低炭素鋼に適用され、浸炭後に焼入れされて使用される。このような浸炭−焼入れ処理された材料は、浸炭鋼あるいは肌焼鋼と呼ばれており、表面が硬く、内部は柔らかいので、軸、軸受け、歯車、ピストンピン、カムなどの機械部品に賞用されている。
浸炭層の厚さは極めて薄いので、浸炭鋼は、通常、焼入れ後に仕上げ加工することなくそのままの状態で使用される。すなわち、焼入後の材料には、一般に、高い寸法精度が要求される。しかしながら、焼入れ時には材料の内部と表面との間に大きな温度差が発生するので、焼入れ後の材料には熱処理ひずみが発生しやすい。
浸炭層の厚さは極めて薄いので、浸炭鋼は、通常、焼入れ後に仕上げ加工することなくそのままの状態で使用される。すなわち、焼入後の材料には、一般に、高い寸法精度が要求される。しかしながら、焼入れ時には材料の内部と表面との間に大きな温度差が発生するので、焼入れ後の材料には熱処理ひずみが発生しやすい。
そこでこの問題を解決するために、従来から種々の提案がなされている。
例えば、特許文献1には、浸炭処理された被処理部材をオーステナイト温度から当該被処理部材の内部非浸炭部のマルテンサイト変態開始温度直上に保持した第1の熱浴(硝酸カリ−硝酸石灰浴)に浸漬した後、さらに記被処理部材の浸炭部表面のマルテンサイト変態開始温度直上に保持した第2の熱浴(硝酸カリ−硝酸石灰浴)に浸漬し、その後冷却する浸炭焼入法が開示されている。
同文献には、2段階の保持を行うことにより、処理部材の内部非浸炭部及び表面浸炭部の変態時における部材各部位の温度差がなくなり、被処理部材表面の浸炭部が同時にマルテンサイト変態するばかりでなく、内部非浸炭部についても均一にベイナイトないしマルテンサイト変態するため、熱処理ひずみの発生が最小限に抑えられる点が記載されている。
例えば、特許文献1には、浸炭処理された被処理部材をオーステナイト温度から当該被処理部材の内部非浸炭部のマルテンサイト変態開始温度直上に保持した第1の熱浴(硝酸カリ−硝酸石灰浴)に浸漬した後、さらに記被処理部材の浸炭部表面のマルテンサイト変態開始温度直上に保持した第2の熱浴(硝酸カリ−硝酸石灰浴)に浸漬し、その後冷却する浸炭焼入法が開示されている。
同文献には、2段階の保持を行うことにより、処理部材の内部非浸炭部及び表面浸炭部の変態時における部材各部位の温度差がなくなり、被処理部材表面の浸炭部が同時にマルテンサイト変態するばかりでなく、内部非浸炭部についても均一にベイナイトないしマルテンサイト変態するため、熱処理ひずみの発生が最小限に抑えられる点が記載されている。
また、特許文献2には、鋼製品を含浸処理し、マルテンサイト変態開始点直上まで200℃/秒以上の速度で急冷し、該温度で所定時間恒温保持した後、焼入れしてマルテンサイト化する浸炭焼入れ方法が開示されている。
同文献には、急冷によって製品内部でのマルテンサイト変態が先行する時間的余裕が少なく、従って製品表面と内部でのマルテンサイト変態開始タイミングを実質的にそろえることができ、製品のマルテンサイト開始点のバラツキに伴う残留応力のバラツキを少なくすることができ、もって製品精度の悪化を少なくすることができる点が記載されている。
同文献には、急冷によって製品内部でのマルテンサイト変態が先行する時間的余裕が少なく、従って製品表面と内部でのマルテンサイト変態開始タイミングを実質的にそろえることができ、製品のマルテンサイト開始点のバラツキに伴う残留応力のバラツキを少なくすることができ、もって製品精度の悪化を少なくすることができる点が記載されている。
さらに、特許文献3には、浸炭処理したワークを等温保持可能なガス冷却炉に投入し、前記ワークの表面をマルテンサイト変態点直上温度での等温保持を介して常温以下の温度へガス焼入れを行う浸炭焼入れ方法であって、前記ガス冷却炉の冷却ガスのガス圧、風量、制御目標温度の変更等制御要素の変更を行うことにより前記等温保持の温度までの冷却速度を変化させ、前記ワークの内部と表面のマルテンサイト変態点到達時刻を管理して等温保持の制御目標温度を調節する浸炭ガス焼入れ方法が開示されている。
同文献には、任意の中間温度で等温保持可能のガス冷却炉を用いて、浸炭処理されたワークの等温保持までの冷却を行い、制御目標温度、ガス圧、風量等の制御要素の変更により冷却速度を変更し、塩浴を用いずに任意の冷却パターンを設定することができ、ひずみの少ない高品質の熱処理を簡単に行うことができる点が記載されている。
同文献には、任意の中間温度で等温保持可能のガス冷却炉を用いて、浸炭処理されたワークの等温保持までの冷却を行い、制御目標温度、ガス圧、風量等の制御要素の変更により冷却速度を変更し、塩浴を用いずに任意の冷却パターンを設定することができ、ひずみの少ない高品質の熱処理を簡単に行うことができる点が記載されている。
マルクエンチ法とは、鋼のMs点直上又は直下の温度に保持した塩浴又は鉛浴中に鋼をいったん焼入れ、鋼の断面が一様な温度になるまで保持した後、引き上げて徐冷する方法をいう。マルクエンチ法は、鋼の内外部でマルテンサイト変態が同時に起こるので、焼入れ時のひずみの発生や焼割れの防止に有効な方法である。そのため、マルクエンチ法は、浸炭鋼などの寸法精度が要求される鋼材の焼入れ方法として用いられている。
しかしながら、塩浴・鉛浴を用いた従来のマルクエンチ法は、設備維持コストが高く、かつ使用済みの冷媒(塩、鉛)の廃棄コストがかかるという問題がある。
一方、特許文献3に開示されているように、ガス冷却炉を用いて焼入れ及び恒温保持を行う方法は、塩浴・鉛浴を使用する必要がないので、設備維持コストが少なく、かつ冷媒の廃棄コストが不要であるという利点がある。しかしながら、特許文献3には、不完全焼入れを生じさせることなく、寸法精度の高い浸炭鋼を得るのに適した焼入れ条件については、全く開示されていない。
しかしながら、塩浴・鉛浴を用いた従来のマルクエンチ法は、設備維持コストが高く、かつ使用済みの冷媒(塩、鉛)の廃棄コストがかかるという問題がある。
一方、特許文献3に開示されているように、ガス冷却炉を用いて焼入れ及び恒温保持を行う方法は、塩浴・鉛浴を使用する必要がないので、設備維持コストが少なく、かつ冷媒の廃棄コストが不要であるという利点がある。しかしながら、特許文献3には、不完全焼入れを生じさせることなく、寸法精度の高い浸炭鋼を得るのに適した焼入れ条件については、全く開示されていない。
本発明が解決しようとする課題は、設備維持コストが少なく、冷媒の廃棄コストが不要であり、さらに、不完全焼入れを生じさせることなく、寸法精度の高い焼入れ材を製造することが可能な低ひずみ焼入れ材の製造方法を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明に係る低ひずみ焼入れ材の製造方法の1番目は、以下の工程を備えていることを要旨とする。
(イ) 鋼材を800〜1200℃に加熱する加熱工程。
(ロ) 加熱された前記鋼材を、加圧ガス冷却を用いて、0.1〜50℃/secの冷却速度で100〜500℃の等温保持温度まで急冷し、前記等温保持温度で30sec〜120min等温保持する1次冷却工程。
(ハ) 前記等温保持が終了した後、前記鋼材を室温まで冷却する2次冷却工程。
この場合、前記加熱工程の前に、800〜1200℃の浸炭温度で前記鋼材の表面を浸炭処理し、冷却する浸炭工程をさらに備えていてもよい。
(イ) 鋼材を800〜1200℃に加熱する加熱工程。
(ロ) 加熱された前記鋼材を、加圧ガス冷却を用いて、0.1〜50℃/secの冷却速度で100〜500℃の等温保持温度まで急冷し、前記等温保持温度で30sec〜120min等温保持する1次冷却工程。
(ハ) 前記等温保持が終了した後、前記鋼材を室温まで冷却する2次冷却工程。
この場合、前記加熱工程の前に、800〜1200℃の浸炭温度で前記鋼材の表面を浸炭処理し、冷却する浸炭工程をさらに備えていてもよい。
また、本発明に係る低ひずみ焼入れ材の製造方法の2番目は、以下の工程を備えていることを要旨とする。
(イ) 800〜1200℃の浸炭温度で鋼材の表面を浸炭処理する浸炭工程。
(ロ) 前記浸炭工程終了後、直ちに前記浸炭温度に加熱された前記鋼材を、加圧ガス冷却を用いて、0.1〜50℃/secの冷却速度で100〜500℃の等温保持温度まで急冷し、前記等温保持温度で30sec〜120min等温保持する1次冷却工程。
(ハ) 前記等温保持が終了した後、前記鋼材を室温まで冷却する2次冷却工程。
(イ) 800〜1200℃の浸炭温度で鋼材の表面を浸炭処理する浸炭工程。
(ロ) 前記浸炭工程終了後、直ちに前記浸炭温度に加熱された前記鋼材を、加圧ガス冷却を用いて、0.1〜50℃/secの冷却速度で100〜500℃の等温保持温度まで急冷し、前記等温保持温度で30sec〜120min等温保持する1次冷却工程。
(ハ) 前記等温保持が終了した後、前記鋼材を室温まで冷却する2次冷却工程。
マルクエンチ法を用いて浸炭鋼などの焼入れ材の焼入れを行う場合において、加圧ガス冷却を用いると、設備維持コストが少なく、冷媒の廃棄コストも不要となる。また、加圧ガス冷却を用いて鋼材を急冷する場合において、1次冷却時の冷却速度をある特定の範囲とすると、鋼材の形状や大きさによらず、不完全焼入れを生じさせることなく、変態に伴う熱処理ひずみを最小限に抑えることができる。
以下に、本発明の一実施の形態について詳細に説明する。
本発明の第1の実施の形態に係る低ひずみ焼入れ材の製造方法は、浸炭工程と、加熱工程と、1次冷却工程と、2次冷却工程とを備えている。
浸炭工程は、800〜1200℃の浸炭温度で鋼材の表面を浸炭処理し、冷却する工程である。
本実施の形態が適用される鋼材は、浸炭−焼入れして使用されるあらゆる鋼材が対象となる。このような鋼材としては、具体的には、
(1) ニッケルクロム鋼(例えば、SNC415、SNC815(JIS G 4102))、
(2) ニッケルクロムモリブデン鋼(例えば、SNCM220、SNCM415、SNCM420、SNCM616、SNCM625、SNCM815(JIS G 4103))、
(3) クロム鋼(例えば、SCr415、SCr420(JIS G 4104))、
(4) クロムモリブデン鋼(例えば、SCM415、SCM418、SCM420、SCM421、SCM822(JIS G 4105))、
(5) 機械構造用マンガン鋼(例えば、SMn420(JIS G 4106))、
などがある。
本発明の第1の実施の形態に係る低ひずみ焼入れ材の製造方法は、浸炭工程と、加熱工程と、1次冷却工程と、2次冷却工程とを備えている。
浸炭工程は、800〜1200℃の浸炭温度で鋼材の表面を浸炭処理し、冷却する工程である。
本実施の形態が適用される鋼材は、浸炭−焼入れして使用されるあらゆる鋼材が対象となる。このような鋼材としては、具体的には、
(1) ニッケルクロム鋼(例えば、SNC415、SNC815(JIS G 4102))、
(2) ニッケルクロムモリブデン鋼(例えば、SNCM220、SNCM415、SNCM420、SNCM616、SNCM625、SNCM815(JIS G 4103))、
(3) クロム鋼(例えば、SCr415、SCr420(JIS G 4104))、
(4) クロムモリブデン鋼(例えば、SCM415、SCM418、SCM420、SCM421、SCM822(JIS G 4105))、
(5) 機械構造用マンガン鋼(例えば、SMn420(JIS G 4106))、
などがある。
浸炭温度は、目的に応じて最適な温度を選択する。一般に、浸炭温度が高くなるほど、炭素の拡散速度が増大するので、短時間で表面の炭素濃度を高めることができる。浸炭温度は、具体的には、800℃以上が好ましい。
一方、浸炭温度が高くなりすぎると、クリープ変形が生じ、ひずみが大きくなる。従って、浸炭温度は、1200℃以下が好ましい。
浸炭処理が終了した後、鋼材は、ひずみの発生量を最小限に抑えるために、炉冷又は空冷される。
一方、浸炭温度が高くなりすぎると、クリープ変形が生じ、ひずみが大きくなる。従って、浸炭温度は、1200℃以下が好ましい。
浸炭処理が終了した後、鋼材は、ひずみの発生量を最小限に抑えるために、炉冷又は空冷される。
浸炭方法は、特に限定されるものではなく、種々の方法を用いることができる。特に、ガス浸炭及び真空浸炭は、取り扱いが容易で、処理時間も短いので、浸炭方法として好適である。特定の浸炭方法を採用した場合において、浸炭条件を最適化すると、表面の炭素濃度を目的とする範囲に収めることができる。
例えば、ガス浸炭は、浸炭性ガス雰囲気中で鋼材を加熱することにより浸炭を行う。この場合、浸炭量は、浸炭雰囲気のカーボンポテンシャルにより制御することができる。カーボンポテンシャルとは、雰囲気と平衡する純鉄の表面平衡炭素濃度であり、雰囲気中のCO/CO2比やH2O量に依存する。一般に、カーボンポテンシャルが高くなるほど、及び/又は、浸炭温度が高くなるほど、短時間で表面の炭素濃度を高めることができる。
また、例えば、真空浸炭は、鋼材を挿入した炉内を1.3Pa程度に減圧した後、浸炭温度に加熱し、メタン、プロパンなどの炭化水素ガスを炉内に導入することにより浸炭を行う。この場合、浸炭量は、炭化水素ガスの導入時間により制御することができる。なお、真空浸炭を行うと、表面近傍の炭素濃度が高くなりすぎる場合があるので、このような場合には、浸炭後に炭化水素ガスの供給を止め、その状態で保持する拡散処理を行うのが一般的である。
例えば、ガス浸炭は、浸炭性ガス雰囲気中で鋼材を加熱することにより浸炭を行う。この場合、浸炭量は、浸炭雰囲気のカーボンポテンシャルにより制御することができる。カーボンポテンシャルとは、雰囲気と平衡する純鉄の表面平衡炭素濃度であり、雰囲気中のCO/CO2比やH2O量に依存する。一般に、カーボンポテンシャルが高くなるほど、及び/又は、浸炭温度が高くなるほど、短時間で表面の炭素濃度を高めることができる。
また、例えば、真空浸炭は、鋼材を挿入した炉内を1.3Pa程度に減圧した後、浸炭温度に加熱し、メタン、プロパンなどの炭化水素ガスを炉内に導入することにより浸炭を行う。この場合、浸炭量は、炭化水素ガスの導入時間により制御することができる。なお、真空浸炭を行うと、表面近傍の炭素濃度が高くなりすぎる場合があるので、このような場合には、浸炭後に炭化水素ガスの供給を止め、その状態で保持する拡散処理を行うのが一般的である。
加熱工程は、浸炭処理され、かつ、一旦室温まで冷却された鋼材を800〜1200℃に加熱する工程である。
加熱温度は、浸炭温度と同一であっても良く、あるいは、異なっていても良い。加熱温度が低すぎると、加熱時に鋼材がオーステナイト単相とならないので、焼入れ後の組織は、マルテンサイト+フェライトの2相組織となる。フェライトは、浸炭鋼の強度を低下させる原因となる。焼入れ後にマルテンサイト単相の組織を得るためには、加熱温度は、800℃以上が好ましい。
一方、加熱温度が高くなりすぎると、加熱時にクリープ変形が生じ、ひずみが大きくなる。従って、加熱温度は、1200℃以下が好ましい。
加熱温度における保持時間は、均熱が得られる時間であればよい。保持時間は、加熱温度にもよるが、通常、15〜60分程度である。
加熱温度は、浸炭温度と同一であっても良く、あるいは、異なっていても良い。加熱温度が低すぎると、加熱時に鋼材がオーステナイト単相とならないので、焼入れ後の組織は、マルテンサイト+フェライトの2相組織となる。フェライトは、浸炭鋼の強度を低下させる原因となる。焼入れ後にマルテンサイト単相の組織を得るためには、加熱温度は、800℃以上が好ましい。
一方、加熱温度が高くなりすぎると、加熱時にクリープ変形が生じ、ひずみが大きくなる。従って、加熱温度は、1200℃以下が好ましい。
加熱温度における保持時間は、均熱が得られる時間であればよい。保持時間は、加熱温度にもよるが、通常、15〜60分程度である。
1次冷却工程は、加熱された鋼材を、加圧ガス冷却を用いて、0.1〜50℃/secの冷却速度で100〜500℃の等温保持温度まで急冷し、等温保持温度で30sec〜120min等温保持する工程である。
本発明において、鋼材の急冷は、加圧ガス冷却を用いて行われる。加圧ガス冷却は、塩浴・鉛浴を用いた急冷方法に比べて、冷却速度及び等温保持温度の選択の自由度が大きいという特徴がある。
本発明において、鋼材の急冷は、加圧ガス冷却を用いて行われる。加圧ガス冷却は、塩浴・鉛浴を用いた急冷方法に比べて、冷却速度及び等温保持温度の選択の自由度が大きいという特徴がある。
一般に、冷却速度が遅くなると、冷却時にフェライト、パーライトが析出し、不完全組織となる。不完全組織は、強度低下の原因となる。従って、冷却速度は、0.1℃/sec以上が好ましい。
一方、冷却速度が速くなりすぎると、内外温度差が大きくなるために、熱ひずみが増大する。従って、冷却速度は、50℃/sec以下が好ましい。冷却速度は、さらに好ましくは、15℃/sec以下である。
一方、冷却速度が速くなりすぎると、内外温度差が大きくなるために、熱ひずみが増大する。従って、冷却速度は、50℃/sec以下が好ましい。冷却速度は、さらに好ましくは、15℃/sec以下である。
一般的な浸炭部品の浸炭層のMs点は、150℃くらいである。そのため、急冷後の等温保持温度がMs点を大きく下回ると、マルテンサイト変態に伴う変態ひずみが生じ、ひずみ量が大きくなる。従って、等温保持温度は、100℃以上が好ましい。
一方、等温保持温度が高くなりすぎると、保持中にパーライト変態が生じ、強度が低下する。従って、等温保持温度は、500℃以下が好ましい。
一方、等温保持温度が高くなりすぎると、保持中にパーライト変態が生じ、強度が低下する。従って、等温保持温度は、500℃以下が好ましい。
等温保持温度での等温保持時間が短すぎると、均熱が不十分となるので、熱処理ひずみが増大する。従って、等温保持時間は、30sec以上が好ましい。
一方、不必要な保持は、実益がないだけでなく、熱処理時間が長くなり、コストを増大させる。従って、等温保持時間は、120min以下が好ましい。
また、等温保持時間は、鋼材の厚さに応じて最適な時間を選択するのが好ましい。一般に、鋼材が厚くなるほど、均熱に時間がかかるので、長時間の等温保持を行うのが好ましい。等温保持時間tは、具体的には、次の(1)式を満たす時間が好ましい。
t≧8×D ・・・(1)
但し、t:時間(sec)、D:前記鋼材の厚さ(mm)。
なお、(1)式にいう「鋼材の厚さ」とは、対向する表面間に内接する球の直径の最小値をいう。また、軸方向長さが相対的に長い歯車の場合、(1)式にいう「鋼材の厚さ」とは、歯車の内周面と歯車の根本に接する滑らかな面に内接する球の直径をいう。
一方、不必要な保持は、実益がないだけでなく、熱処理時間が長くなり、コストを増大させる。従って、等温保持時間は、120min以下が好ましい。
また、等温保持時間は、鋼材の厚さに応じて最適な時間を選択するのが好ましい。一般に、鋼材が厚くなるほど、均熱に時間がかかるので、長時間の等温保持を行うのが好ましい。等温保持時間tは、具体的には、次の(1)式を満たす時間が好ましい。
t≧8×D ・・・(1)
但し、t:時間(sec)、D:前記鋼材の厚さ(mm)。
なお、(1)式にいう「鋼材の厚さ」とは、対向する表面間に内接する球の直径の最小値をいう。また、軸方向長さが相対的に長い歯車の場合、(1)式にいう「鋼材の厚さ」とは、歯車の内周面と歯車の根本に接する滑らかな面に内接する球の直径をいう。
2次冷却工程は、等温保持が終了した後、鋼材を室温まで冷却する工程である。
この時点では、パーライト変態が生ずるおそれがないので、冷却速度は、遅くてもよい。鋼材を冷却することによって、鋼材の表面及び内部のマルテンサイト変態が完了する。
得られた焼入れ材は、通常、そのまま使用されるが、特に高い寸法精度が要求される場合には、仕上げ加工を施してもよい。
この時点では、パーライト変態が生ずるおそれがないので、冷却速度は、遅くてもよい。鋼材を冷却することによって、鋼材の表面及び内部のマルテンサイト変態が完了する。
得られた焼入れ材は、通常、そのまま使用されるが、特に高い寸法精度が要求される場合には、仕上げ加工を施してもよい。
次に、本発明の第2の実施の形態に係る低ひずみ焼入れ材の製造方法について説明する。本実施の形態に係る製造方法は、加熱工程と、1次冷却工程と、2次冷却工程とを備えている。すなわち、浸炭工程が省略されている。この点が第1の実施の形態と異なる。
加圧ガス冷却を用いた焼入れ方法は、特に、浸炭鋼に対して適用すると高い効果が得られるが、浸炭鋼以外の鋼材(すなわち、浸炭処理することなく、焼入れのみを行って使用される鋼材)に対しても適用することができる。
このような鋼材としては、具体的には、
(1) ニッケルクロム鋼(例えば、SNC236(JIS G 4102))、
(2) ニッケルクロムモリブデン鋼(例えば、SNCM240(JIS G 4102))、
(3) クロム鋼(例えば、SCr440、SCr445(JIS G 4103))、
(4) クロムモリブデン鋼(例えば、SCM435、SCM440、SCM445(JIS G 4105))、
(5) 合金工具鋼(例えば、SKS、SKD(JIS G 4404))、
(6) 中炭素鋼(例えば、SKC(JIS G 4410))
などがある。
その他の点については、第1の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
加圧ガス冷却を用いた焼入れ方法は、特に、浸炭鋼に対して適用すると高い効果が得られるが、浸炭鋼以外の鋼材(すなわち、浸炭処理することなく、焼入れのみを行って使用される鋼材)に対しても適用することができる。
このような鋼材としては、具体的には、
(1) ニッケルクロム鋼(例えば、SNC236(JIS G 4102))、
(2) ニッケルクロムモリブデン鋼(例えば、SNCM240(JIS G 4102))、
(3) クロム鋼(例えば、SCr440、SCr445(JIS G 4103))、
(4) クロムモリブデン鋼(例えば、SCM435、SCM440、SCM445(JIS G 4105))、
(5) 合金工具鋼(例えば、SKS、SKD(JIS G 4404))、
(6) 中炭素鋼(例えば、SKC(JIS G 4410))
などがある。
その他の点については、第1の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
次に、本発明の第3の実施の形態に係る低ひずみ焼入れ材の製造方法について説明する。本実施の形態に係る製造方法は、浸炭工程と、1次冷却工程と、2次冷却工程とを備えている。
浸炭工程は、800〜1200℃の浸炭温度で鋼材の表面を浸炭処理する工程である。浸炭工程の詳細については、第1の実施の形態と同様であるので説明を省略する。
1次冷却工程は、浸炭工程終了後、直ちに浸炭温度に加熱された鋼材を、加圧ガス冷却を用いて、0.1〜50℃/secの冷却速度で100〜500℃の等温保持温度まで急冷し、等温保持温度で30sec〜120min等温保持する工程である。
1次冷却工程は、浸炭工程終了後、冷却することなく直ちに鋼材の急冷を行う。この点が、第1の実施の形態と異なる。その他の点については、第1の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
2次冷却工程は、1次冷却工程における等温保持が終了した後、鋼材を室温まで冷却する工程である。2次冷却工程の詳細については、第1の実施の形態と同様であるので説明を省略する。
1次冷却工程は、浸炭工程終了後、直ちに浸炭温度に加熱された鋼材を、加圧ガス冷却を用いて、0.1〜50℃/secの冷却速度で100〜500℃の等温保持温度まで急冷し、等温保持温度で30sec〜120min等温保持する工程である。
1次冷却工程は、浸炭工程終了後、冷却することなく直ちに鋼材の急冷を行う。この点が、第1の実施の形態と異なる。その他の点については、第1の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
2次冷却工程は、1次冷却工程における等温保持が終了した後、鋼材を室温まで冷却する工程である。2次冷却工程の詳細については、第1の実施の形態と同様であるので説明を省略する。
次に、本発明に係る低ひずみ焼入れ材の製造方法の作用について説明する。
マルクエンチ法を用いて浸炭鋼などの焼入れ材の焼入れを行う場合において、加圧ガス冷却を用いると、設備維持コストが少なく、冷媒の廃棄コストも不要となる。また、加圧ガス冷却を用いて鋼材を急冷する場合において、1次冷却時の冷却速度をある特定の範囲とすると、鋼材の形状や大きさによらず、不完全焼入れを生じさせることなく、変態に伴う熱処理ひずみを最小限に抑えることができる。
さらに、加圧ガス冷却法は、塩浴・鉛浴を用いた従来の焼入れ方法に比べて、焼入れ時の冷却速度と等温保持温度の選択の自由度が大きい。そのため、鋼材の組成によらず、不完全焼入れを生じさせることなく、変態に伴う熱処理ひずみを最小限に抑えることができる。
マルクエンチ法を用いて浸炭鋼などの焼入れ材の焼入れを行う場合において、加圧ガス冷却を用いると、設備維持コストが少なく、冷媒の廃棄コストも不要となる。また、加圧ガス冷却を用いて鋼材を急冷する場合において、1次冷却時の冷却速度をある特定の範囲とすると、鋼材の形状や大きさによらず、不完全焼入れを生じさせることなく、変態に伴う熱処理ひずみを最小限に抑えることができる。
さらに、加圧ガス冷却法は、塩浴・鉛浴を用いた従来の焼入れ方法に比べて、焼入れ時の冷却速度と等温保持温度の選択の自由度が大きい。そのため、鋼材の組成によらず、不完全焼入れを生じさせることなく、変態に伴う熱処理ひずみを最小限に抑えることができる。
(実施例1)
[1. 歯車の作製]
SCr420又はSCM420鋼からなるヘリカル歯車を作製した。歯車形状は、以下の通りである。
歯形 :標準
モジュール :2
圧力角 :20°
歯数 :80
ねじれ角 :26°
基準ピッチ円直径:160mm
歯車の厚さ:40mm(No.1〜18)、20mm(No.19)、60mm(No.20)
[1. 歯車の作製]
SCr420又はSCM420鋼からなるヘリカル歯車を作製した。歯車形状は、以下の通りである。
歯形 :標準
モジュール :2
圧力角 :20°
歯数 :80
ねじれ角 :26°
基準ピッチ円直径:160mm
歯車の厚さ:40mm(No.1〜18)、20mm(No.19)、60mm(No.20)
[2. 熱処理条件(1)]
図1に示す熱処理パターンに従い、歯車の熱処理を行った。なお、図1の右図に示す数値は、推奨値である。
まず、加工された歯車を850℃、1100℃又は1300℃に加熱し、その温度で浸炭を行った。浸炭は、ガス浸炭又は真空浸炭を用い、表層炭素濃度0.8%、浸炭深さ0.65mmとなるような条件下で行った。ここで、「浸炭深さ」とは、表層から0.35%C位置までの距離をいう。
ガス浸炭を行う場合、図1の右上図に示すように、まず、所定の温度(℃)でカーボンポテンシャル(Cp1)1.1%の条件下でt1(min)の浸炭1を行い、次いで、同一温度でカーボンポテンシャル(Cp2)0.85%の条件下でt2(min)の浸炭2を行った。
また、真空浸炭を行う場合、図1の右下図に示すように、アセチレンガスを用いて、所定の温度(℃)でt1(min)の浸炭を行い、次いで、アセチレンガスの供給を止めて同一温度でt2(min)の拡散を行った。
次の表1に、ガス浸炭及び真空浸炭の条件を示す。
図1に示す熱処理パターンに従い、歯車の熱処理を行った。なお、図1の右図に示す数値は、推奨値である。
まず、加工された歯車を850℃、1100℃又は1300℃に加熱し、その温度で浸炭を行った。浸炭は、ガス浸炭又は真空浸炭を用い、表層炭素濃度0.8%、浸炭深さ0.65mmとなるような条件下で行った。ここで、「浸炭深さ」とは、表層から0.35%C位置までの距離をいう。
ガス浸炭を行う場合、図1の右上図に示すように、まず、所定の温度(℃)でカーボンポテンシャル(Cp1)1.1%の条件下でt1(min)の浸炭1を行い、次いで、同一温度でカーボンポテンシャル(Cp2)0.85%の条件下でt2(min)の浸炭2を行った。
また、真空浸炭を行う場合、図1の右下図に示すように、アセチレンガスを用いて、所定の温度(℃)でt1(min)の浸炭を行い、次いで、アセチレンガスの供給を止めて同一温度でt2(min)の拡散を行った。
次の表1に、ガス浸炭及び真空浸炭の条件を示す。
浸炭終了後、加圧ガス冷却を用いて0.1〜60℃/secの冷却速度で50〜450℃の等温保持温度まで急冷し、その温度で0.33min(20sec)〜120minの等温保持を行った。加圧ガス冷却のガス圧は、10barとした。等温保持終了後、室温まで徐冷した。
[3. 評価]
図2に示すように、熱処理後の歯車のOBDを4箇所測定し、最大値と最小値の差(ΔD)を求め、これをひずみ量の指標とした。また、同一条件下で5回試験を行い、ΔDの標準偏差を求め、これをバラツキの指標とした。表2に、各試料のΔD及び標準偏差を示す。なお、表2には、熱処理条件も併せて示した。
図2に示すように、熱処理後の歯車のOBDを4箇所測定し、最大値と最小値の差(ΔD)を求め、これをひずみ量の指標とした。また、同一条件下で5回試験を行い、ΔDの標準偏差を求め、これをバラツキの指標とした。表2に、各試料のΔD及び標準偏差を示す。なお、表2には、熱処理条件も併せて示した。
試料No.3のΔD及び標準偏差が大きいのは、加熱温度(=浸炭温度)が1300℃であるために、加熱中に歯車がクリープ変形したためである。
試料No.9のΔD及び標準偏差が大きいのは、冷却速度が60℃/minであるために、熱応力に起因するひずみが発生したためである。
試料No.10のΔD及び標準偏差が大きいのは、等温保持温度が50℃であるために、マルテンサイト変態に伴う変態ひずみが生じたためである。
試料No.15のΔD及び標準偏差が大きいのは、等温保持時間が0.33min(20sec)であるために、均熱が不十分となったためである。
さらに、試料No.20のΔD及び標準偏差が大きいのは、歯車の厚さが厚いにもかかわらず、等温保持時間が相対的に短いために、均熱が不十分となったためである。
これに対し、その他の試料は、いずれも図1の右図に示す推奨値の範囲内で熱処理が行われているので、ΔD及び標準偏差は、いずれも小さい値となった。
試料No.9のΔD及び標準偏差が大きいのは、冷却速度が60℃/minであるために、熱応力に起因するひずみが発生したためである。
試料No.10のΔD及び標準偏差が大きいのは、等温保持温度が50℃であるために、マルテンサイト変態に伴う変態ひずみが生じたためである。
試料No.15のΔD及び標準偏差が大きいのは、等温保持時間が0.33min(20sec)であるために、均熱が不十分となったためである。
さらに、試料No.20のΔD及び標準偏差が大きいのは、歯車の厚さが厚いにもかかわらず、等温保持時間が相対的に短いために、均熱が不十分となったためである。
これに対し、その他の試料は、いずれも図1の右図に示す推奨値の範囲内で熱処理が行われているので、ΔD及び標準偏差は、いずれも小さい値となった。
(実施例2)
[1. 試料の作製]
実施例1と同様の歯車を作製した。但し、歯車の厚さは、40mm(No.21〜No.38)、20mm(No.39)、又は、60mm(No.40)とした。
[1. 試料の作製]
実施例1と同様の歯車を作製した。但し、歯車の厚さは、40mm(No.21〜No.38)、20mm(No.39)、又は、60mm(No.40)とした。
[2. 熱処理条件(2)]
図3に示す熱処理パターンに従い、歯車の熱処理を行った。なお、図3の左図に示す数値は、推奨値である。
まず、加工された歯車を850℃、1100℃又は1300℃に加熱し、その温度で浸炭を行った。浸炭は、ガス浸炭又は真空浸炭を用い、表層炭素濃度0.8%、浸炭深さ0.65mmとなるような条件下で行った。
真空浸炭を行う場合、図3の左上図に示すように、アセチレンガスを用いて、所定の温度でt1(min)の浸炭を行い、次いで、アセチレンガスの供給を止めて同一温度でt2(min)の拡散を行った。
また、ガス浸炭を行う場合、図3の左下図に示すように、まず、所定の温度でカーボンポテンシャル(Cp1)1.1%の条件下でt1(min)の浸炭1を行い、次いで、同一温度でカーボンポテンシャル(Cp2)0.85%の条件下でt2(min)の浸炭2を行った。
浸炭終了後、歯車を一旦、室温まで徐冷した。次の表3に、ガス浸炭及び真空浸炭の条件を示す。
図3に示す熱処理パターンに従い、歯車の熱処理を行った。なお、図3の左図に示す数値は、推奨値である。
まず、加工された歯車を850℃、1100℃又は1300℃に加熱し、その温度で浸炭を行った。浸炭は、ガス浸炭又は真空浸炭を用い、表層炭素濃度0.8%、浸炭深さ0.65mmとなるような条件下で行った。
真空浸炭を行う場合、図3の左上図に示すように、アセチレンガスを用いて、所定の温度でt1(min)の浸炭を行い、次いで、アセチレンガスの供給を止めて同一温度でt2(min)の拡散を行った。
また、ガス浸炭を行う場合、図3の左下図に示すように、まず、所定の温度でカーボンポテンシャル(Cp1)1.1%の条件下でt1(min)の浸炭1を行い、次いで、同一温度でカーボンポテンシャル(Cp2)0.85%の条件下でt2(min)の浸炭2を行った。
浸炭終了後、歯車を一旦、室温まで徐冷した。次の表3に、ガス浸炭及び真空浸炭の条件を示す。
次に、歯車を浸炭温度と同一の加熱温度に再加熱し、30分間保持した。保持終了後、加圧ガス冷却を用いて0.1〜60℃/secの冷却速度で50〜450℃の等温保持温度まで急冷し、その温度で0.33min(20sec)〜120minの等温保持を行った。加圧ガス冷却のガス圧は、10barとした。等温保持終了後、室温まで徐冷した。
[3. 評価]
実施例1と同一の手順に従い、ΔD及び標準偏差を求めた。表4に、各試料のΔD及び標準偏差を示す。なお、表4には、熱処理条件も併せて示した。
実施例1と同一の手順に従い、ΔD及び標準偏差を求めた。表4に、各試料のΔD及び標準偏差を示す。なお、表4には、熱処理条件も併せて示した。
試料No.23のΔD及び標準偏差が大きいのは、浸炭温度及び加熱温度が1300℃であるために、加熱中に歯車がクリープ変形したためである。
試料No.29のΔD及び標準偏差が大きいのは、冷却速度が60℃/minであるために、熱応力に起因するひずみが発生したためである。
試料No.30のΔD及び標準偏差が大きいのは、等温保持温度が50℃であるために、マルテンサイト変態に伴う変態ひずみが生じたためである。
試料No.35のΔD及び標準偏差が大きいのは、等温保持時間が0.33min(20sec)であるために、均熱が不十分となったためである。
さらに、試料No.40のΔD及び標準偏差が大きいのは、歯車の厚さが厚いにもかかわらず、等温保持時間が相対的に短いために、均熱が不十分となったためである。
これに対し、その他の試料は、いずれも図3の左図に示す推奨値の範囲内で熱処理が行われているので、ΔD及び標準偏差は、いずれも小さい値となった。
試料No.29のΔD及び標準偏差が大きいのは、冷却速度が60℃/minであるために、熱応力に起因するひずみが発生したためである。
試料No.30のΔD及び標準偏差が大きいのは、等温保持温度が50℃であるために、マルテンサイト変態に伴う変態ひずみが生じたためである。
試料No.35のΔD及び標準偏差が大きいのは、等温保持時間が0.33min(20sec)であるために、均熱が不十分となったためである。
さらに、試料No.40のΔD及び標準偏差が大きいのは、歯車の厚さが厚いにもかかわらず、等温保持時間が相対的に短いために、均熱が不十分となったためである。
これに対し、その他の試料は、いずれも図3の左図に示す推奨値の範囲内で熱処理が行われているので、ΔD及び標準偏差は、いずれも小さい値となった。
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。
本発明に係る低ひずみ焼入れ材の製造方法は、軸、軸受け、歯車ピストンピン、カムなどの機械部品の製造方法として使用することができる。
Claims (5)
- 以下の工程を備えた低ひずみ焼入れ材の製造方法。
(イ) 鋼材を800〜1200℃に加熱する加熱工程。
(ロ) 加熱された前記鋼材を、加圧ガス冷却を用いて、0.1〜50℃/secの冷却速度で100〜500℃の等温保持温度まで急冷し、前記等温保持温度で30sec〜120min等温保持する1次冷却工程。
(ハ) 前記等温保持が終了した後、前記鋼材を室温まで冷却する2次冷却工程。 - 前記加熱工程の前に、800〜1200℃の浸炭温度で前記鋼材の表面を浸炭処理し、冷却する浸炭工程をさらに備えた請求項1に記載の低ひずみ焼入れ材の製造方法。
- 以下の工程を備えた低ひずみ焼入れ材の製造方法。
(イ) 800〜1200℃の浸炭温度で鋼材の表面を浸炭処理する浸炭工程。
(ロ) 前記浸炭工程終了後、直ちに前記浸炭温度に加熱された前記鋼材を、加圧ガス冷却を用いて、0.1〜50℃/secの冷却速度で100〜500℃の等温保持温度まで急冷し、前記等温保持温度で30sec〜120min等温保持する1次冷却工程。
(ハ) 前記等温保持が終了した後、前記鋼材を室温まで冷却する2次冷却工程。 - 前記1次冷却工程の冷却速度は、0.1〜15℃/secである請求項1から3までのいずれかに記載の低ひずみ焼入れ材の製造方法。
- 前記1次冷却工程の等温保持時間tは、次の(1)式を満たす請求項1から4までのいずれかに記載の低ひずみ焼入れ材の製造方法。
t≧8×D ・・・(1)
但し、t:時間(sec)、D:前記鋼材の厚さ(mm)。
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
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-
2006
- 2006-11-10 JP JP2006306060A patent/JP2008121064A/ja active Pending
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