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JP2008174848A - コアーヤーン縫糸およびその製造方法 - Google Patents

コアーヤーン縫糸およびその製造方法 Download PDF

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JP2008174848A JP2007007066A JP2007007066A JP2008174848A JP 2008174848 A JP2008174848 A JP 2008174848A JP 2007007066 A JP2007007066 A JP 2007007066A JP 2007007066 A JP2007007066 A JP 2007007066A JP 2008174848 A JP2008174848 A JP 2008174848A
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Itsushin Katsube
一新 勝部
Noriyoshi Shintaku
知徳 新宅
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Abstract

【課題】強度と可縫性に優れ、また縫い目の外観などを向上させた品位に優れたコアーヤーン縫糸を提供するものである。
【解決手段】芯糸となる長繊維糸条の周囲に、その長手方向に沿って鞘糸となる短繊維束が全糸重量比30%〜60%の巻き付きで、実質的に無撚りのコアーヤーン複合繊維であって、下撚りをかけた後、数本合わせて下撚り方向と反対方向に上撚りをかけられ撚糸されてなるコアーヤーン縫糸において、平均引っ張り破断強度が4.0cN/dtex以上、曲げかたさが0.005gfcm/本以下、曲げ回復性が0.006gfcm/本以下であることを特徴とするコアーヤーン縫糸。
【選択図】図1

Description

本発明は、工業用縫製や家庭用縫製などの可縫性および縫い目の綺麗さに優れたコアーヤーン縫糸およびその製造方法に関するものである。
近年、ミシン機の高速化や自動化などにより縫製技術が向上したのに伴い、可縫性は従来レベルを維持しながらも、より細く、あるいはより高強力な縫糸が要求されてきている。 従来、合成繊維の縫糸として、フィラメント糸条100%使いのものや、ステープルファイバー100%使いのものや、また芯糸はフィラメント糸条を用い、鞘はステープル短繊維を用いたコアーヤーン縫糸が知られている。
該コアーヤーン縫糸は、フィラメント糸条からなる芯糸繊維と、ドラフトされた短繊維束からなる鞘糸繊維とを、芯・鞘状に引き揃えて精紡機のフロントローラに供給して複合紡績糸となし、次いで、該複合紡績糸を複数本引き揃えて該複合紡績糸の撚り方向と逆方向に上撚りが施されてなるものである。このコアーヤーン縫糸は、紡績糸のみの縫糸と比較して高強力になることから、耐久性が必要とされるジーンズや、美しい縫い目の仕上がりが要求される薄地衣料あるいはスーツなどの縫製に用いられている。
一方、フィラメント糸条の構成比率が100%のフィラメント縫糸に比べると、該コアーヤーン縫糸の鞘糸を構成する短繊維の毛羽が目立つので、フィラメント糸条使いの薄地織物を縫製する場合に縫い目の品位を低下させ、高級衣料用品への展開は困難であった。
これらのコアーヤーン縫糸の根本的な問題を改善する技術として、例えば既に下撚りが施されているフィラメント糸条と、通常のスパン糸とを引き揃えて、合撚機で上撚り合撚してなる合撚構造の複合糸からなる「ポリエステル混撚ミシン糸」が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
このミシン糸は、合理的に製造される混撚ミシン糸ではあるが、合撚構造上フィラメント糸条がスパン糸で完全に被覆されていないので、縫製性が低く、またフィラメント糸条と短繊維糸との染色差や光沢差が目立ちやすくなることから、コアーヤーン縫糸として品位は低いものであった。
また、静電気により電気開繊された芯糸のフィラメント糸条を、鞘糸となる短繊維群の断面内に均一に分布させ、複合精紡によりコアーヤーンを製造し、さらに該コアーヤーンを複数本引き揃えて上撚りが施された高強度、高破断伸度の「複合ミシン糸」が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
この複合ミシン糸は、縫製性や芯/鞘間の均一染色性の点では優れているが、電気開繊工程を通過させることにより、製造コストが高くなることや、工程中に毛羽が生じやすいので品位は低くなり、高伸度になりやすいため縫い目のバッカリングが生じやすい問題がある。
さらに、その他のコアーヤーン製造装置とその製造方法が提案され(例えば、特許文献3参照)、さらには、二層構造糸およびその製造方法が提案されている(例えば、特許文献4参照)。
これらの装置や方法は、ノズル軸方向に糸通路が形成された中空ガイド軸体と、その先端部に旋回流を作用させる旋回流発生ノズルにより構成される紡績部を備え、ドラフトされた短繊維束が紡績部に供給されたフィラメントの周囲に結束巻きつけられてなるコアーヤーン技術である。
しかし、いずれの従来技術もコアーヤーン紡績の応用技術として、縫糸への展開についてはまったく言及されておらず、また細繊度で高強力特性を満足し、可縫性や品位に優れた縫糸としての製造技術も何ら提案されていない。
さらに、毛羽発生の軽減策として精紡工程でドラフト部分の後にエアーノズルを介し、毛羽伏せする手法が提案されているが(例えば、特許文献5参照)、この精紡機はリング精紡機とは紡出方法が全く異なり、毛羽そのものは確かに伏せられるものの、基本的には繊維の結束によって糸強度を持たせるという実撚が掛かっていない紡績糸になり、リング精紡機並の実撚を有するものとは構造上全く異なるため、リング糸よりも風合いが堅くなるなどの欠点がある。
さらに、結束紡績法による「カバーリングミシン糸」(例えば、特許文献6参照)が提案されているが、鞘糸の巻き付き量が全糸量に比べて極めて少なく、且つ糸長さ方向に断続的に結束巻き付け方向であるため、巻き付きが不均一のことから、芯部が所々露出する致命的な欠点がある。そのため、出来上がったミシン糸には柔らかさが足りなくて、ジグザグなど複雑な縫い目に対応出来ない欠点があった。
すなわち、いずれの従来技術も細繊度で高強力特性を満足し、可縫性や柔らかさなどの品位に優れた縫糸としての製造技術も何ら提案されていない。
以上のように、可縫性や糸外観に優れた性能を有するコアーヤーン縫糸については、いまだ充分なものが得られていないのが実状である。
特開平2−33341号公報 特公昭63−3977号公報 特開2002−69760号公報 特開2002−69774号公報 特開平8−158167号公報 特開平2−160943号公報
本発明の課題は、かかる従来技術の問題点を解決しようとするものであり、強度と糸の柔らかさに優れたコアーヤーン縫糸を提供でき、さらに工業用の本縫いミシン機或いは家庭用自動ミシン機を用いて縫製するに際し、可縫性に優れ、縫糸外観の優れたコアーヤーン縫糸およびその製造方法を提供することにある。
本発明は、上記課題を解決するため、次の構成を有する。
(1)芯糸となるフィラメント糸条の周囲に、鞘糸となる短繊維が全重量比30%〜60%で巻き付いた、実質的に無撚りのコアーヤーン複合繊維に下撚りをかけた後、数本合わせて下撚り方向と反対方向に上撚りをかけられてなるコアーヤーン縫糸であって、平均引っ張り破断強度が4.0cN/dtex以上、曲げ硬さが0.005gfcm/本以下、曲げ回復性が0.006gfcm/本以下であることを特徴とするコアーヤーン縫糸。
(2)前記フィラメント糸条は、平均引っ張り破断強度が6.5〜8.0cN/dtex、10%モジュラスが5.5cN/dtex〜7.0cN/dtex、150℃時の乾熱収縮率が5〜8%であることを特徴とする上記(1)に記載のコアーヤーン縫糸。
(3)前記短繊維束は、平均引っ張り破断強度が6.0〜8.0cN/dtex、単繊維繊度が0.5〜1.2dtex、180℃時の乾熱収縮率が2.0〜6.5%であることを特徴とする上記(1)また(2)に記載のコアーヤーン縫糸。
(4)精紡工程において、旋回気流によってドラフトされた短繊維をフィラメント糸条の周りに絡ませた後、巻き付き方向と同方向の撚り方向で下撚りをかけてコアーヤーン複合繊維を得、さらに該コアーヤーン複合繊維を複数本引き揃えて上撚りをかけることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載のコアーヤーン縫糸の製造方法。
本発明によって鞘糸となる短繊維は毛羽が減少されたものとすることができ、従来技術では得られなかった美しい糸面を有し、かつ細番手、高強力、柔らかいコアーヤーン縫糸を提供することができる。
また、これまでの紡績糸では毛羽伏せしつつ実撚を掛けることが不可能とされてきたが、本発明の技術を使用することで糸紡出が可能であり、高速可縫性および家庭用機対応性などの可縫性に優れ、縫製工程におけるコスト低減を図ることが出来る高性能なコアーヤーン縫糸が得られる。さらに、縫製後の縫い目表面が綺麗に見え、品位が優れたものとなるなどの効果を有する。
本発明は、前記課題を解決し、さらに縫製中に糸飛び、糸切れが少なく、ミシン機の縫製条件の調整が容易な高性能コアーヤーン縫糸について鋭意検討した結果、実質的に無撚りのコアーヤーン繊維に、下撚りを付与し、さらに複数本引き揃えて上撚を施して縫糸を作ってみたところ、かかる課題を一挙に解決出来ることを究明したものである。
以下、本発明のコアーヤーン縫糸の最良の形態について説明する。
まず、本発明のコアーヤーン縫糸は、上述したように、芯糸となるフィラメント糸条の周囲に、その長手方向に沿って鞘糸となる短繊維束が全重量の30%〜60%の巻き付き量で旋回巻き付きした、実質的に無撚りのコアーヤーン複合繊維が、さらに複数本撚り合わされてなるコアーヤーン縫糸である。このコアヤーン縫糸において、後述する旋回気流の加工方法を用いて、平均引っ張り破断強度が4.0cN/dtex以上、糸の柔らかさにおいてKESの曲げ特性測定法で測った曲げ硬さが0.005gfcm/本以下、曲げ回復性が0.006gfcm/本以下であることを実現できた。
まず、本発明におけるコアーヤーン複合繊維について説明する。
本発明におけるコアーヤーン複合繊維で用いるフィラメント糸条は、通常のあらゆる合成繊維を用いることができることは無論であるが、その中でもポリエステル系やポリアミド系などの繊維糸条が適している。また、高機能性繊維と言われる芳香族ポリアミドやポリエチレン繊維、あるいはポリウレタンなどの弾性系繊維、セルロース系繊維なども好ましく適用することができ、特に限定されないが、中でも6.5cN/dtex以上の高強度を実現できるポリエステル糸条が最も相応しいものである。ポリエステルとしてはポリエチレンテレフタレートが好ましい。
また、上述した平均引っ張り強度が4.0cN/dtexのコアーヤーン縫糸を達成するため、フィラメント糸条の平均引っ張り破断強度は6.5cN/dtex以上が必要となり、7cN/dtex以上がさらに好ましい。しかし、現行技術の制約で8cN/dtex以上の強度を生産することが困難であるため、あえて上限を定めるのであれば8cN/dtexとなる。また、フィラメント糸条の10%伸長時の強度、所謂10%モジュラスも高いことが望ましく、その理由はコアーヤーン縫糸の強力構成に関係する。すなわち、一般にコアーヤーン縫糸は芯糸がフィラメント糸条、鞘糸が短繊維から構成されるため、コアーヤーン縫糸の破断強伸度を求める際には、伸度がおおよそ10%前後のところで先に鞘糸が破断に至り、その後、伸度の高い芯糸が切れる仕組みとなっている。要するに、この鞘糸の破断伸度点(10%モジュラス)における芯糸の強力がコアーヤーン縫糸にしたときの最高強力と関与していて、つまり、芯糸の10%モジュラスの強度が高いと、コアーヤーン縫糸としての破断強度も上がる。その10%モジュラスの適正範囲は5.5〜7.0cN/dtexであり、これより低くすると、当然コアーヤーン縫糸としての強度が要求未達となる。一方、これより高くすると、技術的には可能であるが、工程条件の制約で乾熱収縮率が高くなり、出来上がった縫糸の収縮も上がるから、縫製時に、パッカリングになりやすいため、好ましくない。ここで言及した平均引っ張り破断強度、平均引っ張り破断伸度は後述する測定方法で求める。
また、本発明におけるコアーヤーン複合繊維の芯糸の乾熱収縮率が5〜8%であることが好ましいものである。乾熱収縮率が5%未満であると、芯糸の10%モジュラスが5.5cN/dtex以上に達することが不可能である。また、乾熱収縮率が10%を超えると、前述したパッカリングの問題になり、好ましくない。
また、該フィラメント糸条のトータルフィラメント繊度としては、好ましくは30〜200dtexの範囲が、単糸フィラメント本数は12〜200本の範囲が適している。例えば該フィラメント糸条の繊度が33dtexでは12本〜30本が、44dtexでは15〜28本、56dtexでは18〜48本が、78dtexでは24〜72本の糸構成であることがより好ましい。これは単繊維繊度が太くなるとコアーヤーン縫糸が硬くなり、縫い目が生地から浮き出るからである。一方、細くなると撚糸工程から最後の仕上げ工程までにおいて、毛羽発生したり強力低下を生じるので、適宜選択する必要がある。
また、本発明におけるフィラメント糸条の断面形状は、特に限定されるものでなく、丸型、三角型、中空型、バイメタル型等公知のものなどから任意に選択できる。
コアーヤーン複合繊維の鞘糸としては、芯糸と同様に通常のあらゆる合成繊維はもとより、その中でもポリエステル系やポリアミド系などが適しており、天然繊維の木綿、羊毛、絹あるいはセルロース系やアクリル繊維なども好ましく適用することができる。本発明において、鞘糸を構成する短繊維としては、紡績糸用原料や布団綿、詰め綿などの原料とされるものであり、具体的な形態のものとして、ステープルファイバーあるいは単にステープルと呼ばれるもの等が挙げられる。
本発明にて使用する短繊維の平均引っ張り破断強度は6.0〜8.0cN/dtexが好ましい。短繊維の平均引っ張り破断強度が6.0cN/dtex未満であると、十分の強度が得られず、縫製時や縫い目の縫糸切れの原因となるため、好ましくない。逆に短繊維の平均引っ張り破断強度が8.0cN/dtexを超えると、縫い目の摩擦によって生じた毛羽がピリングになった時、短繊維が強すぎてピリングが脱落しにくくなるため、好ましくない。ここで言及した平均引っ張り破断強度は後述する測定方法で求める。
短繊維としては、単繊維繊度は0.5〜1.2dtexの範囲が好ましく、0.7〜1.0dtexの範囲がカードの通過性など紡績性、コアーヤーン複合繊維において鞘糸の被覆性、あるいはコアーヤーン縫糸の柔らかさから高可縫性に繋がるので、より好ましい。単繊維繊度が0.5dtex未満であると、毛羽が出やすく、コアーヤーン縫糸の品位が低くなるため、好ましくない。逆に単繊維繊度が1.2dtexを超えると鞘糸の断面構成本数が少なく、鞘糸の被覆性が悪くなり、スラブなどの糸欠点で出来やすくて、縫製時や縫い目の縫糸切れの原因となるため、好ましくない。
また、本発明にて使用する短繊維の乾熱収縮率は2.0〜6.5%が好ましい。乾熱収縮率は2.0未満であると染色で伸度が殆ど変わらないため、初期伸度が小さく縫い目飛びの原因となるため、好ましくない。逆に乾熱収縮率が6.5%を超えると染色後の初期伸度が大きく成りすぎて、縫製後にパッカリングに成りやすく、好ましくない。ここで言及した乾熱収縮率は後述する測定方法で求める。
また、本発明における短繊維の繊維長は特に限定されるものではなく、通常のもの、特に通常ステープルファイバーとして用いられている繊維長などから任意に選択できる。
また、本発明における短繊維の断面形状は、特に限定されるものでなく、丸型、三角型、Y字型、中空型、バイメタル(サイドバイサイド)型等公知のものなどから任意に選択できる。
本発明のコアーヤーン複合繊維の鞘糸となる短繊維は、芯糸を含むコアーヤーン複合繊維の全重量に対して、30%以上60%以下の範囲とすることが好ましい。30%より少ないと芯糸が露出しやすくなり、また、強力も低くなるので、巻き付き不良や素抜けが生じやすく、コアーヤーン縫糸とした時の形成が不十分となってくる。一方、60%を超えると芯糸の露出はなくなるが、強度低下が大きくなりやすくなる。
上記鞘糸重量の測定方法としては、必要に応じて拡大鏡を用いて、1インチ(2.54cm)長さのコアーヤーン縫糸を分解してコアーヤーン複合繊維とし、次にコアーヤーン複合繊維を芯糸と鞘糸とに分解し、さらに鞘糸の巻き付き短繊維のみを取り出し、その重さ(g)を測定する。その重さをコアーヤーン縫糸全重量に対する重量比率として算出したものである。
ここで、本発明におけるコアーヤーン複合繊維の形態を詳しく説明する。コアーヤーンの芯糸に対する鞘糸の巻き付き方としては、鞘糸の短繊維糸条が芯糸長さ方向に緊密に且つ全面に旋回巻き付きするのが好ましい。この方は芯糸の露出は殆どなく、該鞘糸が一定方向に均一に、且つ全面に緊密に巻き付くので、結束力が強くなり、コアーヤーン縫糸としては好ましい形状を形成することができる。このように、一定方向の全面に緊密に旋回巻き付きしたコアーヤーン複合繊維は、鞘糸が巻き付いてはいるものの、コアーヤーン複合繊維全体としては実質に無撚り、且つトルクも殆どない特徴を有する。
鞘糸の巻き付き方向としては、最終用途が縫糸であることから、一般縫糸の下撚り方向と同様にS方向が好ましい。すなわち、本発明のコアーヤーン縫糸としては、糸巻き付き方向と同方向に下撚りが挿入されたコアーヤーン複合繊維を、複数本引き揃えて上撚りを下撚りと逆方向のZ方向に挿入された構造のコアーヤーン縫糸が好ましい態様である。
本発明におけるコアーヤーン複合繊維に挿入されている下撚り数Ts(T/m)の好ましい範囲としては0≦Ts≦12000/D1/2である。下撚り数Tsはなるべく少ない方が糸の柔らかさとして適しているが、逆に少なすぎると、繊維の抱合性が悪くなり、可縫性の低下が起こる。一方、下撚り数Tsが12000/D1/2の関係を超えて挿入されると、可縫性の向上に繋がるが、できた糸が硬直になるので、好ましくない。よって、より好ましい範囲としては、2000/D1/2≦Ts≦10000/D1/2である。なお、Dはコアーヤーン複合繊維の繊度(dtex)である。
そして、本発明のコアーヤーン縫糸は、該コアーヤーン複合繊維に下撚りを付与した後、複数本を合わせてさらに次式の関係を有する上撚りが付与されているコアーヤーン縫糸である。上撚り数Tu(T/m)は、2000/Dt1/2≦Tu≦20000/Dt1/2の範囲が好ましい。上撚り数Tuが20000/D1/2を超えると、強度低下が大きく可縫性が低下し、逆に2000/Dt1/2未満では、繊維同士の空隙が大きくなり、縫製中ミシン針がそこを通過して糸切れを起こす原因となり、好ましくない。さらに好ましい範囲としては、6000/Dt1/2≦Tu≦15000/Dt1/2である。なお、ここで指しているDtは縫糸の繊度である。
コアーヤーン複合繊維の鞘糸が均一かつ緊密に巻き付いているため巻き付きが強いので、従来品に比べて、集束性が高い。また、毛羽個数が従来のリング精紡式コアーヤーン縫糸に比べて極めて少ないので、コアーヤーン縫糸では糸の外観や縫い目は美しく仕上がるという優れた効果が得られる。さらに、空気紡で実現できなかった糸の柔らかさも得ることができ、一気に前記課題を解決したものである。
また、コアーヤーン縫糸の毛羽数としては、1mm以上3mm未満の毛羽が500個/10m以下の範囲であることが好ましい。ここで、毛羽数は後述する測定方法によって測定されたものをいう。500個/10m以下とすると、毛羽などが目立ち過ぎるのを抑え、縫い目の品位を保つことができる。また、下限については少ない方が良いが、少なすぎると縫製時に針熱の散熱がうまくいかないため、高速可縫性に影響をもたらすことから好ましくない。一方、500個/10mを超えると、滑り特性が不安定となり目飛びや糸切れが増加する傾向にあり、さらに毛羽などにより縫糸が目立ち過ぎて、縫い目の品位が悪くなる。さらに、15個/10m以上がより好ましい。
また、3mm以上5mm未満の毛羽は3個/10m以上であることが好ましい。また、80個/10m以下であることが好ましく、さらに好ましくは50個/10m以下である。3mm以上5mm未満の毛羽が3個/10m未満であると、縫製時に針熱を放熱する効果が低く、縫糸切れの原因となるため、好ましくない。一方、3mm以上5mm未満の毛羽が80個/10mより多くなると、強力のバラツキが大きくなり、縫製時に糸切れなどのトラブルに繋がるので、好ましくない。
また、5mm以上の毛羽が50個/10m以下であることが好ましい。5mm以上の毛羽が50個/10mを超えると、強力のバラツキが大きくなり、縫製中や縫い目の糸切れの原因となるため好ましくない。
また、工業用だけでなく、家庭用縫糸にも使用できる幅広い可縫性に対応するため、縫糸の柔らかさも要求される。本発明のコアーヤーン縫糸は、前述した精紡方法で製造することにより、曲げ硬さが0.005gfcm/本以下、曲げ回復性が0.006gfcm/本以下となることを実現できた。また、柔らかすぎると複雑のパターン、たとえば千鳥縫いなどのジクザクステッチを縫製時、上糸が下糸をうまく救えずに糸飛びの現象も起きるため、通常曲げ硬さが0.001gfcm/本以上、曲げ回復性が0.001gfcm/本以上が好ましい。ここで言及した曲げ特性及び曲げ回復性は後述する測定方法で求める。
以下、本発明のコアーヤーン縫糸の製造方法をさらに詳細に説明する。
本発明におけるコアーヤーン複合繊維を作製する紡績方法としては、空気流の作用により、紡績工程の練条工程後のステープルスライバー、つまり短繊維束を用いて結束させて紡績糸を形成する汎用の空気精紡機において、適当なフィードローラと糸道ガイドなどの長繊維用の整備を介して、フィラメントを糸形成部手前で短繊維束の中心部に供給し、S方向の旋回気流によりフィラメントらなる芯糸に該短繊維を絡ませながら、空気精紡加工することにより得る方法を好ましく用いることができる。
特に好ましいのは、“ムラタ・ボルテックス・スピナー”(村田機械社製:以下、MVSと記す)を用いる方法である。空気流の作用を利用する紡績方法は、各種のものが、提案、開発、利用されているが、本発明で用いるコアーヤーン複合繊維を得るにはカバー率が良いことが重要であり、MVSを用いた紡績方法はこれを最も達成しうる紡績方法の一つである。
次に得られた該コアーヤーン複合繊維を旋回方向と同じ方向に一旦下撚りを施し、得られた該コアーヤーン複合繊維を複数本引き揃え、下撚り方向と逆方向の上撚りを施すことにより、本発明のコアーヤーン縫糸を製造することができる。この際、好ましい下撚り数Ts(T/m)及び上撚り数Tu(T/m)は前記の通り、
0≦Ts≦12000/D1/2
2000/Dt1/2≦Tu≦20000/Dt1/2
(ここで、Dはコアーヤーン縫糸の繊度(dtex)、Dtはコアーヤーン複合繊維の繊度(dtex))
である。
ここで、下撚り数Tsが12000/D1/2を超えて挿入されると、糸が硬直となり、糸の曲げ特性が高くなる傾向である。縫製する際に、下糸の弛みが小さくなり、形成したループも小さくなるため、カマ剣先が下糸をすくえない現象が起こり、目飛びが起きやすくて複雑の縫いパターンに対応できない場合がある。
また、上撚り数の好ましい範囲について、2000/Dt1/2未満では、集束性が低下し、強力低下も大きく可縫性が低下するので、好ましくない。一方、20000/Dt1/2を超えて挿入されると、糸が硬直となるため、可縫性の低下に繋がるので、好ましくない。
ここで上撚りを施す際に、コアーヤーン複合繊維を2〜3本合わせて上撚りをかけて撚糸とすることが好ましい。本数が2本未満であると、縫糸としての強度が得られず、縫製中の糸切れの原因となるため、好ましくない。逆に本数が4本以上であると上撚りを施すのが難しく、また糸の均一性が損なわれ可縫性が低下する傾向があるため、3本以下がよい。
本発明の製造方法における下撚り、上撚り付与の方法は、特に限定されるものではなく、ダブルツイスター、ダウンツイスターなどの通常の方法から任意に選択できる。
本発明の製造方法において、コアーヤーン縫糸を得た後、チーズ染色することが好ましい。チーズ染色の方法は、とくに限定されるものではなく、分散染料による染色やカチオン染色などの方法から任意に選択できる。
また、本発明の製造方法において、チーズ染色後に仕上げ油剤を付与することが好ましい。仕上げ油剤の付与方法はとくに限定されるものではないが、毛羽の発生が少なく余計な油剤を吸い上げる心配がないオイリングローラによる油剤の付与方法がより好ましい。
また、本発明の製造方法における仕上げ油剤種はとくに限定されるものではなく、公知の仕上げ油剤から任意に選択できるが、平滑性の良さや低コストの面からシリコンを主体とした仕上げ油剤を用いることがより好ましい。
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明する。
なお、測定方法は以下のとおりとした。
(1)見掛け繊度(dtex)
JIS L1013(1999)に準拠して1水準につき、20回測定し、その平均値を算出した。
(2)平均引っ張り破断強力(cN)、平均引っ張り破断強度(cN/dtex)、平均引っ張り破断伸度(%)
計測器工業(株)製STATIMAT MEによりつかみ長200mm、引張速度100%/min、1水準につき20回の測定を行い、平均引っ張り破断強力、平均引っ張り破断伸度を求めた。また、見掛け繊度より平均引っ張り破断強度を算出した。
(3)10%モジュラス(cN/dtex)
上記測定で求めた応力(縦軸)−ひずみ(横軸)のカーブから、10%モジュラスを求めることができる。方法は、ひずみを表示する横軸において10%ひずみへの垂直線を引いて、応力−ひずみのカーブに当たる応力を求めて、さらに見掛け繊度より強度を算出し、その時の強度は10%のモジュラス(cN/dtex)とする。
(4)乾熱収縮率(%)、沸収率(%)
乾熱収縮率(%)は、JIS L1013(1999)に準拠して180℃での収縮を測定した。
また、沸収率(%)は、JIS L1013(1999)に準拠して98℃での収縮を測定した。
(5)毛羽数(個/10m)
速度30m/minで解舒しながら静電式コンデンサを使用して、各々の糸の直径に対して1mm以上、3mm以上、5mm以上はみ出ている表面毛羽本数を数えたものである。表中のデータは長さ10m当たりの毛羽数(個/10m)であり、各毛羽長さについてそれぞれ10回測定した平均値である。
なお、JIS L1095(1999)(一般紡績糸試験法)9.22 B法に準じ、測定装置は敷島テクノ(株)製 F−INDEX TESTERを用いて測定した。
(6)U%
計測機工業(株)製 EVENNESS TESTER 80を用いて測定した。
(7)鞘糸の巻き付き量(重量%)
拡大鏡を用いて1インチ(2.54cm)長さのコアヤーン縫糸からコアーヤーン複合繊維に分解し、次に該コアーヤーン複合繊維を芯糸と鞘糸を分解し、さらに鞘糸の巻き付き短繊維のみを取り出し、その重さ(g)を測定する。その重さをコアーヤーン縫糸全重量に対する重量比率として算出したものである。
(8)被覆性評価
評価は得られた長短複合紡績糸の側面を25倍の顕微鏡で観察し、糸長1m当たりに芯
部のフィラメントが表層部から確認できる箇所の数により判断した。
判定基準は、×:10カ所以上またはヌードヤーンの発生、△:5〜9カ所、○:1〜4カ所、○○:0カ所、とする4段階評価で行った。
(9)曲げ特性(曲げ硬さ、回復性)
カトーテック(株)製KES−FBを用いて測定した。1回の測定に60本の糸を使用し、1本当たりの曲げ硬さ、回復性をわり算で算出する。
(10)縫製性評価方法
A.高速可縫性(前進縫い):T/Cブロード生地を10枚重ねて2m縫製可能なミシン機で、糸切れがなく縫製できる最高回転数(針/分)を測定した。測定は、1000〜5000(針/分)の範囲でテストした。
B.バック可縫性(バック縫い):T/Cブロード生地を4枚重ね、ミシン機で1500(針/分)で1m縫製したときにおける糸切れ回数(平均回数/10回)を測定した。評価基準は下記の通りとした。
× :縫製不可もしくは6回以上
△ :3〜5回
○ :1〜2回
○○:0回。
C.ジグザグステッチ縫い(家庭用途):T/Cブロード生地を2枚重ね、ミシン機でジグザグステッチ(縫いピッチ1.4mm、ジグザグ幅:4mm)で0.5m縫製したときにおける、縫い目欠点(目飛び、縫い目不良個数)の発生回数を測定した。針回転数は300spm(ステッチ/min)とした。評価基準は下記の通りとした。
× :6回以上
△ :3〜5回
○ :1〜2回
○○:0回。
D.縫い目品位:A項の高速可縫性(前進縫い)評価において、1000(針/分)の回転数で縫製したサンプルを目視評価した。
△ :毛羽が多い。
○ :毛羽を発見できる。
○○:殆ど毛羽が目立たない。
実施例1、2及び3
平均引っ張り破断強度が6.4cN/dtex、単繊維繊度0.8dtex、繊維長38mm、乾熱収縮率6%のポリエチレンテレフタレート系ポリエステルステープルを使用して通常の紡績方式を経て、15ゲレン/ヤードのスライバーを製造した。
また、固有粘度(IV)が0.67±0.02のホモPETを溶融し、紡糸温度300℃で36孔の口金で吐出し、紡糸速度1000m/minで引き取り、336T−36fの未延伸糸UYを得た。さらに、ホットロール3段式の延伸機を用いて、ホットロール温度が75℃、トータル延伸倍率6倍で延伸し、次いで一旦引き取ることなく、連続して7%でリラックスして巻き取り、56デシテックス、36フィラメントの延伸糸を得た。紡糸、延伸とも製糸性は良好であり、糸切れは発生しなかった。
得られたフィラメント糸条の特性は、平均引っ張り破断強度7.2cN/dtex、10%モジュラスが6.4cN/dtex、150℃時の乾熱収縮率が7%であった。
次に、得られたスライバーをMVS精紡機に仕掛け、フィラメント用のフィードローラ装置と糸道ガイドを介して、前述したフィラメントをフロントトップローラ〜セカンドトップローラ間から短繊維束の幅方向中心位置に供給し、紡速200m/min、トータルドラフト184倍にて、綿番手60′Sのコアーヤーン複合繊維を得た。このコアーヤーン複合繊維は図1に示すとおりの外観を有し、被覆性に優れ、糸切れの発生も少なく、紡績性は良好であった。
そして、該コアーヤーン複合繊維を3本撚ってコアーヤーン縫糸を製造するため、該コアーヤーン複合繊維に下撚り数を200T/m(実施例1)、600T/m(実施例2)、1000T/m(実施例3)付与し、次に3本引き揃えて上撚り数をいずれもZ方向に700T/m施し、3子撚りのコアーヤーン縫糸を製造した。
次に、3子撚りのコアーヤーンをチーズに巻き上げ、撚り止め処理として、95℃で30分間スチームセットを施し、続いてソフトチーズに巻き上げ、60℃で10分精練を行い、リラックス処理後、130℃で40分間のチーズ染色を行い、黒色に仕上げ、次いで高松油脂(株)製仕上げ油剤GS−100SHをオイリングにて3.0%o.w.f付与してコアーヤーン縫糸を製造した。得られたコアーヤーン縫糸の特性および可縫性評価結果を後述する表1に示した。
比較例1
芯糸となる長繊維糸条の平均引っ張り破断強度が6.2cN/dtexのポリエステルマルチフィラメント(44dtex−18フィラメント)と、鞘糸となる短繊維束のポリエステル原綿の単繊維繊度が1.3dtex、繊維長が38mmを使用した以外は、実施例1と同様の方法でコアーヤーン縫糸を仕上げた。得られたコアーヤーン縫糸の特性および可縫性評価結果を後述する表1に示した。
比較例2
鞘糸となる短繊維束のポリエステル原綿の単繊維繊度が1.3dtex、繊維長が38mmを使用した以外は、実施例1と同様の方法でコアーヤーン縫糸を仕上げた。得られたコアーヤーン縫糸の特性および可縫性評価結果を後述する表1に示した。
比較例3
次に、実施例1と同様のフィラメント糸条、短繊維束を用いて、実施例と同一の撚り数にて通常のリング紡績で綿番手60Sのコアーヤーン複合繊維を得て、さらに実施例1と同様の方法でコアーヤーン縫糸を仕上げた。得られたコアーヤーン縫糸の特性および可縫性評価結果を後述する表1に示した。
Figure 2008174848
表1に示すとおり、実施例1〜3では、高速可縫性、自動機対応などのあらゆる工業用途において優れた性能をもっている。さらに家庭用などで使われている複雑なジグザグステッチにも対応可能であった。また、、縫い目の仕上がりは美しいであった。
比較例1では、芯糸に使用されている原糸の平均引っ張り破断強度が6.2cN/dtexと比較的に低いため、コアーヤーン縫糸に仕上げた際に、縫糸としての強度が低くなり、高速可縫性がやや低い水準となった。比較例2では、鞘糸に使用されている原綿の単繊維繊度は1.3dtexであるため、実施例1〜3と同様に縫糸を作るのに、鞘糸の断面構成本数が少なくなり、鞘糸の被覆性評価ではヌードヤーンが一部見られたため、悪い結果となった。そのため、縫製中、その被覆悪い処で、糸切れが起こしてしまい、作業が中断してしまった。比較例3では通常の精紡方式を用いるため、縫い目表面には毛羽先が目立ち、フィラメント糸使いの生地縫製では極めて目立ち、欠点となった。
工業用における高速可縫性、自動機対応縫製性、バック縫製、ならびに家庭用における、ジグザグステッチなど複雑のパターンにも対応できる縫い目の綺麗さなどを要求される一般衣料用として、例えば長短複合糸として表面が滑らかで、ピリングの発生が極めて少なく、ハリ・腰風合いに優れた特徴を活かした高級婦人衣料や、紳士パンツなどにも適用可能である。
実施例で作製したコアーヤーン複合繊維の外観模式図である。
符号の説明
1:芯糸部のフィラメント糸条(長繊維糸条)
2:鞘部の短繊維糸条
3:毛羽
4:ループ

Claims (4)

  1. 芯糸となるフィラメント糸条の周囲に、鞘糸となる短繊維が全重量比30%〜60%で巻き付いた、実質的に無撚りのコアーヤーン複合繊維に下撚りをかけた後、複数本合わせて下撚り方向と反対方向に上撚りをかけられてなるコアーヤーン縫糸であって、平均引っ張り破断強度が4.0cN/dtex以上、曲げ硬さが0.005gfcm/本以下、曲げ回復性が0.006gfcm/本以下であることを特徴とするコアーヤーン縫糸。
  2. 前記フィラメント糸条は、平均引っ張り破断強度が6.5〜8.0cN/dtex、10%モジュラスが5.5〜7.0cN/dtex、150℃時の乾熱収縮率が5〜8%であることを特徴とする請求項1に記載のコアーヤーン縫糸。
  3. 前記短繊維は、平均引っ張り破断強度が6.0〜8.0cN/dtex、単繊維繊度が0.5〜1.2dtex、180℃時の乾熱収縮率が2.0〜6.5%であることを特徴とする請求項1または2に記載のコアーヤーン縫糸。
  4. 精紡工程において、旋回気流によってドラフトされた短繊維をフィラメント糸条の周りに絡ませた後、巻き付き方向と同方向の撚り方向で下撚りをかけてコアーヤーン複合繊維を得、さらに該コアーヤーン複合繊維を複数本引き揃えて上撚りをかけることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のコアーヤーン縫糸の製造方法。
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