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JP2008169155A - 爪に対する薬物の浸透促進剤及びそれを含有する外用爪治療剤 - Google Patents

爪に対する薬物の浸透促進剤及びそれを含有する外用爪治療剤 Download PDF

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JP2008169155A
JP2008169155A JP2007004598A JP2007004598A JP2008169155A JP 2008169155 A JP2008169155 A JP 2008169155A JP 2007004598 A JP2007004598 A JP 2007004598A JP 2007004598 A JP2007004598 A JP 2007004598A JP 2008169155 A JP2008169155 A JP 2008169155A
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Masatoshi Kato
雅俊 加藤
Hiroyuki Kusakabe
裕之 草壁
Kazuhiro Futamura
和広 二村
Hiroaki Kimura
博明 木村
Takashi Nagasawa
考 長沢
Akihiro Hashiguchi
彰裕 橋口
Tomosato Hirozawa
知里 廣澤
Tomohiro Tada
知広 多田
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Sato Pharmaceutical Co Ltd
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Abstract

【課題】爪において薬物浸透促進作用を付与する化合物を提供する。
【解決手段】浸透促進剤は、例えば、以下の構造を有する。
【化1】
Figure 2008169155

R1、R2及びR3は、炭素原子の数1〜15を有するアルキル基であり、末端に水酸基を有する。
【選択図】なし

Description

本発明は、爪に対する薬物の浸透促進剤及びそれを含有する外用爪治療剤に関する。
薬物の経皮に対する外用投与は各種薬剤により広く行われているが、吸収性の低い薬物では、十分にその効力を発揮することができない。皮膚は、表皮、真皮及び皮下組織からなり、表皮は、更に上から順に角質層、顆粒層、有棘層及び基底層と四層に分けることができる。このうち、角質層は、ケラチンや、繊維状タンパク質、更にはセラミドや、中性脂質より成っていて、外来からの異物の侵入や、水分の蒸発を防いでいる。
この皮膚本来の持つバリアーが、薬物の経皮吸収を妨げている原因であり、この問題点を改善する方法の一つとして、浸透促進剤を用いることが挙げられる。
かねてより、浸透促進剤として多くの報告例があるが、例えば、ジメチルスルホキシドや、N,N-ジメチルホルムアミド、尿素、また、ラウリン酸やセバシン酸ジエチルをはじめとする脂肪酸及びそのエステル類、Azoneをはじめとするアザシクロアルカン−2−オン誘導体(特許文献1)、ジオキソラン誘導体(特許文献2)、大環状エステル類(特許文献3)などが挙げられる。
しかし、これらの浸透促進剤は、安定性や、皮膚刺激性に問題があり、また、その効果も決して十分ではなく、実用的にみて、有効な浸透促進剤は未だ知られていない。
このような現状は、爪に関して更に顕著である。爪は皮膚の付属器官の一つであり、皮膚同様、ケラチンを豊富に含むが、皮膚の角質のケラチンは軟ケラチンであるのに対し、爪のケラチンは硬ケラチンであり、シスチンを多く含み、ポリペプチド鎖がジスルフィド結合によって架橋された複雑な構造をしている。また、爪は、皮膚角質層よりも約100倍厚く、そのため一般に皮膚よりも薬剤の透過性が著しく低い。このような爪における代表的な疾患として、爪白癬が挙げられる。
爪白癬は、水虫と同様、白癬菌が寄生することによって生じる表在性の真菌症であり、爪を厚くし、不透明に変化させ、時には痛みを伴う。皮膚科領域における爪白癬症の治療法は、現在のところ、グリセオフルビンや、イトラコナゾール等の経口剤による方法か、外科手術による抜爪が主流である。
前者は、長期間における薬物の服用が強いられるため、肝障害等の副作用や、他剤との相互作用が問題となり、後者は激しい痛みが伴うだけでなく、脆くなった爪が患部に残ってしまうなどの問題がある。そのため、局所外用剤による治療が望まれるが、上記のように爪自体が強固なバリアーとして薬物の吸収を妨げているため、長期間塗布してもほとんど効果が見られない。
このように爪白癬症の治療は難しく、安全かつ有効な治療法が確立されていないのが現状である。
このような中で、より外用療法の効果を上げるために数多くの試みがなされてきた。例えば、抗真菌剤と、脂肪酸(特許文献4)や、尿素(特許文献5)又は塩基性物質(特許文献6)等を組み合わせる方法が挙げられるが、これらは使用感が悪い上に、薬物の爪への付着性が低いため、あまり効果を期待できない。爪への付着性を高めるために被膜形成剤を用いる方法(特許文献7〜9)が開示されているが、これらはいずれも、薬物の爪への付着性の問題はある程度解消できるものの、被膜からの薬物の放出性や、爪への透過性が十分とは言えず、満足な治療効果を発揮できずにいる。そもそも爪の構造は、上から爪甲上層、爪甲中層、爪甲下層の三層から成っており、爪床と呼ばれる爪甲下の組織が爪甲と接している。爪白癬症における白癬菌は、この爪甲下層と爪床での感染率が非常に高いことが知られており、局所外用剤による薬物治療を効果的に行うには、爪甲下層及び爪床へ抗真菌剤を送達させることが重要である。しかし、爪が強固なバリアーとして働いているため、薬物が真菌の感染率の高い部位まで到達できず、これが治療効果を上げられない原因となっている。
更に、抗真菌性化合物に、N−アルキル複素環式化合物を併用することも提案されている(特許文献10)。しかしながら、特許文献10で開示されているN−アルキル複素環式化合物は、アルキル基が、複素環のN原子と直接結合している化合物に関するものであり、しかも、アルキル基の末端に水酸基を有するものに関するものではない。更に、アルキル基が、複素環のN原子と直接結合している化合物であっても、アルキル基の炭素原子数に限定があり、それ以外の炭素数のアルキル基を有する場合ついて全く開示も示唆もしていない。また、浸透促進剤としての効果も検討されていない。
特開昭52−1035号公報 特開平1−135727号公報 米国特許第5023252号明細書 特開昭58-32818号公報 特開昭63−258814号公報 特開2004−83439号公報 特開昭62−155205号公報 特開平2−264708号公報 WO96/11710号公報 特表2000−516928号公報
このように、薬剤の透過性が著しく低い爪において薬物を目的部位まで浸透させるべく、浸透促進剤について数多くの検討がなされてきたが、未だ十分な浸透促進効果とは言えず、また、浸透促進剤自体の安定性や刺激性、使用感等の問題もあり、より汎用性の高い浸透促進剤の開発が望まれている。従って、本発明の目的は、安全性や安定性に優れ、爪に対しより効果の高い浸透促進剤を、更にはこれを含有する外用爪治療剤を提供するものである。
そこで、本発明者らは、このような現状に鑑み、爪における効果的な浸透促進剤の必要性を認識し、これについて鋭意検討を行った結果、含窒素複素環誘導体に優れた薬物浸透促進効果があることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
即ち、本発明は、一般式(I)、
Figure 2008169155
(式中、
Zは、窒素原子(-NH-)、酸素原子(-O-)又は硫黄原子(-S-)を示し、
Yは、三級窒素原子(−N=)又は三級炭素原子(-CH=)を示し、
R1は、C1〜C15の不飽和又は飽和炭化水素基(但し、R1が、CH3CmH2mで表される飽和炭化水素基(mは、5〜14を示す)であり、式中の五員環上の窒素原子と直接結合している場合を除く。)を示し、そして
nは、1〜5を示す。)
で表される化合物又はその薬学的に許容可能な塩からなることを特徴とする浸透促進剤、並びにこれらを含有する外用爪治療剤、若しくは一般式(II)、
Figure 2008169155
(式中、
R2及び R3は、独立に、C1〜C15の飽和又は不飽和炭化水素基又は酸素を解して結合したC1〜C15の飽和又は不飽和炭化水素基を示し、
Yは、三級窒素原子(−N=)又は三級炭素原子(-CH=)を示し、
nは、0〜5を示す。)
で表される化合物又はその薬学的に許容可能な塩からなることを特徴とする浸透促進剤、及びこれらを含有する外用爪治療剤を提供するものである。
本発明の有効成分を規定する式(I)又は(II)において、R1、R2及びR3としての炭化水素基は、飽和か、又は二重結合又は三重結合の不飽和結合を一つあるいは複数有する炭化水素基である。炭化水素基の炭素原子の数は、1〜15、好ましくは、2〜10個、更に好ましくは、3〜8個であるアルキル基又はアルケニル基、特にアルキル基であることが好適である。アルキル基は、直鎖状でも分岐状でも、あるいは環状であってもよい。
R2における炭化水素基は、炭素原子数が、1〜15、好ましくは、2〜10個、更に好ましくは、3〜8個であることが好適である。
R3における炭化水素基は、1〜15個、好ましくは、2〜10個、更に好ましくは、3〜8個である炭化水素基、特にアルキル基が好適である。また、R3は、アルコキシ基であってもよい。その場合のアルキル基の範囲は、R2におけるアルキル基の場合と同様である。更に、R3は、アルコキシ基の末端に水酸基を有していてもよく、更に、その水酸基を介して、エチレングリコールや、プロピレングリコールなどの2価のアルキレングリコールがエーテル結合したものでもよい。アルキレングリコールが付加結合している場合には、その付加モル数は、例えば、1〜5個、好ましくは、1〜3個程度であることが適当である。
アルキル基は、置換基を一つあるいは複数有していてもよく、複数有する場合は、それぞれの置換基が同一、もしくは異なっていてもよい。
置換基としては、例えば、ハロゲン原子(F、Cl、Br、I)や、ヒドロキシル基又は水酸基(-OH)、アミノ基、アルコキシ基、カルボニル基、ホルミル基、カルボキシル基、カルボキシエステル基、カルボキシアミド基、ウレイド基、フェニル基、芳香族複素環基などが好適に挙げることができる。特に、末端の炭素原子に、水酸基、アルコキシ基、カルボキシル基、カルボキシエステル基など、特に、水酸基を有するものが好適である。更に、炭化水素基は、窒素原子を含む五員環の場合には、その窒素原子に直接結合していても、いなくてもよい。但し、置換基として、水酸基を有する炭化水素基である場合には、窒素原子に結合しているものが特に好適である。
ここで、アルコキシ基は、酸素原子とアルキル基とからなる基である。アルキル基の範囲は、上記の通りである。好ましくは、アルキル基としては、炭素原子の数は、1〜8、特に、1〜5であることが好適である。
アミノ基は、−NR45で示される基であり、R4及びR5は、水素原子又は前記アルキル基と同一の範囲である。
カルボキシエステル基は、-COOR6で示される基であり、R6は、上記アルキル基として規定される範囲である。
カルボキシアミド基とは、-CONR7R8で示される基である。ここで、NR7R8におけるR7及びR8は、水素原子又は前記アルキル基と同一の範囲内である。
ウレイド基は、-NR9CONR10R11で示される基であり、R9及びNR10R11とは、前記で定義したアルキル基及びアミノ基の場合と同様である。
フェニル基は、置換基を有していてもよく、その置換基は、前記で定義したものと同様である。
芳香族複素環基としては、例えば、イミダゾリルや、トリアゾリル、ピリジル、ピロリル、フリル、チオフェニル等が好適に挙げられ、それぞれ置換基を有していてもよく、その置換基の範囲は、前記で定義したものと同様である。
なお、五員環及び六員環において、R1、R2及びR3として、炭化水素基を有する場合に、その数が、五員環の場合には、4以下である場合、一方、六員環では、5以下である場合には、残りの置換位置には、他の置換基が置換されていてもよい。そのような置換基としては、例えば、ハロゲン原子や、アミノ基、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシル基、アルコキシ基などの置換基を好適に挙げることができる。ハロゲン原子、アミノ基、アルコキシ基の範囲は、上記で置換基として説明したものと同様である。
本発明の浸透促進剤としては、次式で示される化合物が好適である。
Figure 2008169155
Figure 2008169155
Figure 2008169155






Figure 2008169155
上記式I−1〜I−4において、nは、3〜10、好ましくは、5〜7の整数であることが好適である。この水酸基は、上記の範囲内のアルキル基と結合して、アルコキシ基となっていてもよい。
六員環に関する式IIで示される化合物としては、ヘテロ窒素原子が、R2の置換位置に対して、2位、3位又は4位にあり、特に、4位にあるものが好適である。R2は、炭化水素基が直接結合していてもよく、又は酸素原子を介して炭化水素基が結合していてもよい。なお、上記化合物の置換基の位置を表す数字は、便宜上のものであり、IUPAC命名法によりその位置を制限されるものではない。
このような六員環の化合物としては、例えば、以下の式で示される化合物が好適である。
Figure 2008169155
Figure 2008169155
Figure 2008169155
式中、R2は、炭素原子数3〜10、好ましくは、5〜7の整数であることが好適である。特に、アルキル基又はアルコキシ基であり、末端に、水酸基を有するものが好適である。
上記式I又はIIで示される化合物は、外用爪治療剤において、例えば、0.5〜80質量%、好ましくは、3〜20質量%の量で使用される。
式Iで示される化合物(I)は、公知の出発原料から、当業者であれば、容易に製造することができる。例えば、次に示す公知の方法により製造することができる。
工程A(例えば、以下の表1の化合物No.1〜19に対して)
Figure 2008169155
(式中、R1、Y及びZについては、前記式(I)中で定義した通りである。Xは、ハロゲン原子を示す)
また、上記化合物(I)は、例えば、次に示す文献(Sycheva, T. P. et al., Chem. Heterocycl. Compd. (Engl. Transl.), CODEN: CHCCAL, 8, <1972> 5-7) と同様の手法により製造することができる(工程B)(例えば、以下の表1の化合物No.20〜24について)。
更に、本発明の化合物(I)は、例えば、γ―ジケトンを使用して、Paal-Knorrの合成を行うなどの公知の方法により製造することができる(工程C)(例えば、以下の表1の化合物No.25について)。
具体的には、化合物(I)は、工程Aにおいて、化合物Aと化合物Bとを不活性溶媒中で塩基の存在下で反応させることにより製造する。化合物Aの例としては、8-ブロモ-1-オクタノール、7-ブロモ-1-ヘプタノール、6-ブロモ-1-ヘキサノール、5-ブロモ-1-ペンタノール、ブロモシクロヘプタン等が挙げられ、化合物Bの例としてはイミダゾールや、2-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、ピロール、ピラゾール、1H-1,2,3-トリアゾール、1H-1,2,4-トリアゾール等が挙げられ、塩基としては、例えば、水素化ナトリウム、炭酸カリウム等が挙げられ、反応溶液としては、脱水ジメチルホルムアミドや、脱水テトラヒドロフラン等が挙げられる。反応条件は、例えば、60〜150℃で3〜48時間加熱すれば化合物(I)が得られ、これをシリカゲルカラムにより精製する。また、化合物(I)は、必要に応じて更に蒸留により精製を行う。
式IIで示される化合物は、公知の出発原料から、当業者であれば、容易に製造することができる。例えば、化合物(II)(例えば、以下の表4の化合物No.26〜28について)は、Wittig反応後に、水素添加を行うなどの公知の方法により製造することができる。
また、化合物(II)(例えば、以下の表4の化合物No.29〜37について)は、Williamsonのエーテル合成などの公知の方法により製造することができる。
本発明において適用される薬効成分は、例えば、抗真菌剤や、抗生物質、抗炎症剤、局所麻酔剤、抗アレルギー剤、抗ヒスタミン剤、ビタミン類等が好適に挙げられる。それぞれの薬剤の具体例としては、抗真菌剤としては、例えば、ナイスタチンや、ナフチフィン、テルビナフィン、ブテナフィン、アモロルフィン、クロトリマゾール、ミコナゾール、エコナゾール、チオコナゾール、ケトコナゾール、ラノコナゾール、ネチコナゾール、フルコナゾール、イトラコナゾール、シクロピロクス、シクロピロクスオラミン、リロピロクス、トルナフテート、グリセオフルビン、フルシトシン、アムフォテリシンB、5-FU等が挙げられる。抗生物質としては、例えば、ペニシリンや、メチシリン、アンピシリン、セファロスポリン、セファレキシン、ストレプトマイシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、テトラサイクリン、ミノサイクリン、エリスロマイシン、リンコマイシン、クリンダマイシン、ミカマイシン、
バンコマイシン、クロラムフェニコール等が挙げられる。抗炎症剤としては、ステロイド系あるいは非ステロイド系に限定されず、例えば、ステロイド系としては、酢酸デキサメタゾンや、吉草酸ベタメタゾン、酪酸ヒドロコルチゾン、プレドニゾロン、フルオシノロアセトニド等が好適に挙げられ、非ステロイド系としては、例えば、アスピリンや、サリチル酸、アセトアミノフェン、イブプロフェン、インドメタシン、ジクロフェナク、スリンダック、コルヒチン、メフェナム酸、フェルビナク、フェンブフェンなどが挙げられる。局所麻酔剤としては、例えば、リドカインや、ジブカイン、プロカイン等が好適に挙げられる。抗アレルギー剤では、イブジラスト、トラニラスト、クロモグリク酸ナトリウム等が挙げられる。抗ヒスタミン剤としては、例えば、ジフェンヒドラミンや、ジフェニルピラリン、フマル酸クレマスチン、マレイン酸クロルフェニラミン、メキタジン等が好適に挙げられる。ビタミン類としては、例えば、ビタミンAや、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、葉酸、リポ酸、ユビキノン、イノシトール等が好適に挙げられる。また,これら以外の例として、モルヒネや、ニコチン、コンドロイチン硫酸、ニトログリセリン等が好適に挙げられる。
これらの薬効成分は、その目的に応じて、適当な量において使用される。例えば、抗真菌剤として、例えば、テルビナフィン、ブテナフィン、アモロルフィンなどを使用する場合には、外用爪治療剤の質量に基づいて、例えば、0.1〜30%、好ましくは、0.5〜15%で好適に配合される。
本発明の浸透促進剤は、爪に対する外用剤に適用されるものであり、形態としては、ネイルラッカー剤や、マニキュア剤、液剤、軟膏剤、硬膏剤、ゲル剤、クリーム剤、貼付剤、パップ剤、エアゾール剤等が挙げられる。これらの製剤の製造方法は、当業者が通常行っている公知の方法により製造することができるが、例えば、第十五改正日本薬局方解説書(廣川書店、2006年6月発行)、皮膚外用剤 その作り方と応用(高野正彦、宮崎順一著、南山堂、昭和37年9月20日発行)に記載されている方法により製造することができる。また、これらの製剤の製造に用いられる基剤や、溶媒、溶解補助剤、被膜形成剤、香料、着色料、容器等については、当業者が通常用いている公知のものを使用することができるが、例えば、医薬品添加物事典2005(日本医薬品添加剤協会編集、薬事日報社、2005年7月12日発行)に記載されているものが挙げられる。
基剤としては、代表的な製剤の具体例として、ネイルラッカー剤や、マニキュア剤などの場合、通常使用されるものであれば、特に限定されず各種の基剤を使用することができる。このような基剤としては、例えば、メタクリル酸エステル・メタクリル酸共重合体(例えば、EUDRAGIT L100、デグサ社製)や、メタクリル酸エステル類の共重合体、セルロース誘導体、アクリル酸・スチレン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、アルキッド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリビニルアルコール、可溶性ナイロン等が挙げられ、これらは単独もしくは2種類以上の組み合わせで配合される。また、有機溶媒としては、低級アルコールが好ましく、例えば、エタノールや、イソプロパノールなどが好適に挙げられる。
更に、溶解補助剤や、揮発遅延剤、可塑剤として、例えば、酢酸エチルや、酢酸プロピル、酢酸ブチル、アセトン、トルエン、トリアセチン、メントール等が好適に挙げられる。
軟膏剤の基剤としては、通常使用されるものであれば、特に限定されず、例えば、高級脂肪酸、例えば、ミリスチン酸や、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、アジピン酸等、更に、それらのエステル類等や、ロウ類、例えば、ミツロウや、鯨ロウ等、高級アルコール、例えば、セタノールや、ステアリルアルコール等、各種のシリコーン油等、炭化水素類、例えば、親水ワセリンや、白色ワセリン、精製ラノリン、流動パラフィン等が好適に挙げられ、また添加物として、例えば、各種の界面活性剤や、保湿剤、かぶれ防止剤等が好適に挙げられる。
クリーム剤の基剤としては、通常使用されるものであれば、特に限定されず、例えば、高級脂肪酸エステル類として、ミリスチン酸エステルや、パルミチン酸エステル等、低級アルコールとして、エタノールや、イソプロパノール等、多価アルコールとして、プロピレングリコール等、高級アルコールとして、セタノール等、炭水化物として、スクワランや、流動パラフィン等が好適に挙げられる。
また、添加物として、各種の乳化剤や、防腐剤、かぶれ防止剤等を好適に配合することができる。
以下、本発明について、実施例を参照しながら、更に詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
本発明で具体的に合成した式Iで示される化合物(I)の構造を以下の表1に示す。なお、表1に示した五員環を構成する原子に付与した数字(1位〜5位)は、位置を示すための便宜上のものであり、IUPAC命名法によりその位置を制限されるものではない。
Figure 2008169155
(式中、R1、Y及びZについては、前記一般式(I)中で定義した通りである。)















Figure 2008169155
上記化合物の1H NMRスペクトルを以下の表2に示す。











Figure 2008169155




Figure 2008169155
1H NMRスペクトルにおいて、シグナルの形状を、s(一重線)、d(二重線)、t(三重線)、q(四重線)、quint(五重線)、m(多重線)、br(ブロード)などのように示した。)
実施例1
以下の式で示される、7-イミダゾール-1-イル-ヘプタン-1-オール(化合物No.1)の合成
Figure 2008169155
7-ブロモ-1-ヘプタノール(2.0 g, 10.3 mmol)に反応溶媒として脱水ジメチルホルムアミド30 mLを加え、更にイミダゾール(837 mg, 12.3 mmol)を加えた。これに水素化ナトリウム(50〜72%, 451 mg)を加え、室温で30分間攪拌した後、125℃で7時間加熱攪拌した。加熱攪拌後、これに精製水100 mLを加え、クロロホルム100 mLによる抽出を2回行なった。抽出液を合わせ、これに硫酸ナトリウムを加え、乾燥させた後、濾過し、溶媒留去した。溶媒留去後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル及び酢酸エチル:メタノール=5:1で溶出)により精製し、表題の化合物(1.76 g, 94.2%)を淡黄色、透明の液体として得た。
1H-NMR (400MHz:CDCl3) δ:1.29-1.37(6H, m) , 1.52-1.57(2H, m), 1.74-1.81(2H, m), 3.63(2H, t, J=6.6Hz), 3.92(2H, t, J=7.1 Hz), 6.90(1H,s), 7.04(1H,s), 7.46(1H,s)。
本発明で合成した化合物(II)の構造を以下の表3に示す。なお、表3に示した六員環を構成する原子に付与した数字(1位〜6位)は位置を示すための便宜上のものであり、IUPAC命名法によりその位置を制限されるものではない。
Figure 2008169155
Figure 2008169155
上記化合物の1H NMRスペクトルを以下の表4に示す。













Figure 2008169155
1H NMRスペクトルにおいて、シグナルの形状を、s(一重線)、d(二重線)、t(三重線)、q(四重線)、quint(五重線)、m(多重線)、br(ブロード)などのように示した。)
浸透促進剤を用いた製剤の作成、及び製剤の浸透促進効果の評価
以下に、製剤例及び製剤の浸透促進効果について詳述するが、本発明の範囲はこれらの製剤例に何等限定されるものではない。
実施例2
(試作製剤A)
7-イミダゾール-1-イル-ヘプタン-1-オール(化合物No.1)を使用し、爪白癬の治療を目的としたネイルラッカー型の外用治療剤を調製した。薬効成分としては、塩酸ブテナフィンを使用した。
製剤の組成を以下に示す。製剤はブテナフィンとして5%(w/v)の塩酸ブテナフィンを含む。
化合物No. 1 0.500 g
塩酸ブテナフィン 0.279 g
EUDRAGIT L100 0.625 g
酢酸ブチル 0.250 g
酢酸エチル 0.750 g
無水エタノール 全量を5 mLにする
実施例3
(試作製剤B)
5-(ピリジン-4-イルオキシ)-ペンタン-1-オール(化合物No. 33)を使用し、爪白癬の治療を目的としたネイルラッカー型の外用治療剤を作製した。主薬には塩酸ブテナフィンを使用した。
製剤の組成を以下に示す。製剤は,ブテナフィンとして5%(w/v)の塩酸ブテナフィンを含む。
化合物No. 33 0.500 g
塩酸ブテナフィン 0.279 g
EUDRAGIT L100 0.625 g
酢酸ブチル 0.250 g
酢酸エチル 0.750 g
無水エタノール 全量を5 mLにする
実施例4
(試作製剤C)
4-ヘプチルオキシ-ピリジン(化合物No. 29)を使用し、爪白癬の治療を目的としたネイルラッカー型の外用治療剤を作製した。主薬には塩酸ブテナフィンを使用した。
製剤の組成を以下に示す。製剤はブテナフィンとして5%(w/v)の塩酸ブテナフィンを含む。
化合物No. 29 0.500 g
塩酸ブテナフィン 0.279 g
EUDRAGIT L100 0.625 g
酢酸ブチル 0.250 g
酢酸エチル 0.750 g
無水エタノール 全量を5 mLにする
実施例5
(試作製剤D)
3-ヘプチルオキシ-ピリジン(化合物No. 30)を使用し、爪白癬の治療を目的としたネイルラッカー型の外用治療剤を作製した。主薬には塩酸ブテナフィンを使用した。製剤の組成を以下に示す。製剤はブテナフィンとして5%(w/v)の塩酸ブテナフィンを含む。
化合物No. 30 0.500 g
塩酸ブテナフィン 0.279 g
EUDRAGIT L100 0.625 g
酢酸ブチル 0.250 g
酢酸エチル 0.750 g
無水エタノール 全量を5 mLにする
実施例6
(試作製剤E)
2-ヘプチルオキシ-ピリジン(化合物No. 31)を使用し、爪白癬の治療を目的としたネイルラッカー型の外用治療剤を作製した。主薬には塩酸ブテナフィンを使用した。製剤の組成を以下に示す。製剤はブテナフィンとして5%(w/v)の塩酸ブテナフィンを含む。
化合物No. 31 0.500 g
塩酸ブテナフィン 0.279 g
EUDRAGIT L100 0.625 g
酢酸ブチル 0.250 g
酢酸エチル 0.750 g
無水エタノール 全量を5 mLにする
実施例7
(試作製剤F)
7-ピロール-1-イル-ヘプテン-1-オール (化合物No. 11)を使用し、爪白癬の治療を目的としたネイルラッカー型の外用治療剤を作製した。薬効成分としては、塩酸ブテナフィンを使用した。
製剤の組成を以下に示す。製剤は、ブテナフィンとして、5%(w/v)の塩酸ブテナフィンを含む。
化合物No. 11 0.500 g
塩酸ブテナフィン 0.279 g
EUDRAGIT L100 0.625 g
酢酸ブチル 0.250 g
酢酸エチル 0.750 g
無水エタノール 全量を5 mLにする
実施例8
(試作製剤G)
7-イミダゾール-1-イル-ヘプタン-1-オール(化合物No.1)を使用し、爪白癬の治療を目的としたネイルラッカー型の外用治療剤を作製した。薬効成分としては、塩酸ブテナフィンを使用した。製剤の組成を以下に示す。製剤はブテナフィンとして15%(w/v)の塩酸ブテナフィンを含む。
化合物No. 1 0.500 g
塩酸ブテナフィン 0.836 g
EUDRAGIT L100 0.625 g
酢酸ブチル 0.250 g
酢酸エチル 0.750 g
無水エタノール 全量を5 mLにする
実施例9
(試作製剤H)
7-イミダゾール-1-イル-ヘプタン-1-オール(化合物No.1)を使用し、爪白癬の治療を目的としたネイルラッカー型の外用治療剤を作製した。薬効成分としては、塩酸テルビナフィンを使用した。製剤の組成を以下に示す。製剤はテルビナフィンとして15%(w/v)の塩酸テルビナフィンを含む。
化合物No. 1 0.500 g
塩酸テルビナフィン 0.844 g
EUDRAGIT L100 0.625 g
酢酸ブチル 0.250 g
酢酸エチル 0.750 g
無水エタノール 全量を5 mLにする
実施例10
(試作製剤I)
7-イミダゾール-1-イル-ヘプタン-1-オール(化合物No.1)を使用し、爪白癬の治療を目的としたネイルラッカー型の外用治療剤を作製した。薬効成分としては、塩酸アモロルフィンを使用した。
製剤の組成を以下に示す。製剤はアモロルフィンとして15%(w/v)の塩酸アモロルフィンを含む。
化合物No. 1 0.500 g
塩酸アモロルフィン 0.836 g
EUDRAGIT L100 0.625 g
酢酸ブチル 0.250 g
酢酸エチル 0.750 g
無水エタノール 全量を5mLにする
実施例11
浸透促進剤を用いた製剤による浸透促進効果の評価
以下に、製剤の浸透促進効果の例を挙げて具体的に詳述するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
評価試験法
薬剤爪透過量試験方法
まず、70%プロピレングリコール添加精製水に1%Bacto Agar(ベクトン・ディッキンソン)を加え、アガロース寒天を調製し、これをスクリューキャップ付きバイアル瓶(内径24×高さ55 mm)に1mLずつ分注し、平面になるように固化させた。次に、ヒト爪を、4×4mmに正確に切り、爪上部の中央に、外径2.5mmのシリコーン製Оリングをシリコーン系合成接着剤で接着し、Оリング内に、上記で調製した製剤を5μL塗布した。この爪検体をОリングが上になり、かつ爪上部及びОリングがアガロース寒天に接触しないように静かに設置した。爪検体を設置後37℃で5日間放置した後、爪を取り出し、アガロース寒天に1N水酸化ナトリウム水溶液を加えて塩基性とし、酢酸エチルによって寒天内に透過した抗菌剤を2回抽出した後に、薬効成分である抗菌剤の薬剤量をHPLCにて測定した。
上記試験法により測定した、爪に対する塩酸ブテナフィン、塩酸テルビナフィン及び塩酸アモロルフィンの透過量を、以下の表5、6、7、及び8に示す。
ブテナフィンとして5%(w/v)の塩酸ブテナフィンを含む製剤における塩酸ブテナフィンの爪透過量
(化合物(浸透促進剤)の濃度は10% w/v)
Figure 2008169155
※1 試作製剤Aより、浸透促進剤のみを除いた組成の製剤
※2 ブテナフィンの塩酸塩としての定量値
ブテナフィンとして15%(w/v)の塩酸ブテナフィンを含む製剤における塩酸ブテナフィンの爪透過量
(化合物(浸透促進剤)の濃度は10% w/v)
Figure 2008169155
※3 試作製剤Gより、浸透促進剤のみを除いた組成の製剤
※4 ブテナフィンの塩酸塩としての定量値
テルビナフィンとして15%(w/v)の塩酸テルビナフィンを含む製剤における塩酸テルビナフィンの爪透過量
(化合物(浸透促進剤)の濃度は10% w/v)
Figure 2008169155
※5 試作製剤Hより、浸透促進剤のみを除いた組成の製剤
※6 テルビナフィンの塩酸塩としての定量値
アモロルフィンとして15%(w/v)の塩酸アモロルフィンを含む製剤における塩酸アモロルフィンの爪透過量
(化合物(浸透促進剤)の濃度は10% w/v)
Figure 2008169155
※7 試作製剤Iより、浸透促進剤のみを除いた組成の製剤
※8 アモロルフィンの塩酸塩としての定量値
以上の測定結果から、本発明の浸透促進剤を配合した各種抗菌製剤は、ヒト爪検体を使用した抗菌剤の透過量試験において明らかな浸透促進作用を示した。例えば、ブテナフィンとして5%(w/v)の塩酸ブテナフィンを含む製剤系の透過量試験(表5)において、浸透促進剤として化合物No. 1を10%含有する試作製剤Aを使用した場合は、化合物No. 1を含まないプラセボaを使用した場合に対して約7.9倍の塩酸ブテナフィンの浸透促進作用が観測された。同様に、浸透促進剤として化合物No. 33を10%含有する試作製剤Bを使用した場合は、プラセボaを使用した場合に対して約6.6倍の浸透促進作用が観測された。
化合物No. 1の浸透促進作用は、特に抗菌剤の濃度が高濃度の場合に顕著であり、ブテナフィンとして15%(w/v)の塩酸ブテナフィンを含む製剤系の透過量試験(表6)において、化合物No. 1を10%含有する試作製剤Gを使用した場合は、化合物No. 1を含まないプラセボgを使用した場合に対して約33倍の塩酸ブテナフィンの浸透促進作用が観測された。 同様に、テルビナフィンとして15%(w/v)の塩酸テルビナフィンを含む試作製剤Hの透過量試験(表7)では、約15倍の浸透促進作用が観測され、アモロルフィンとして15%(w/v)の塩酸アモロルフィンを含む試作製剤Iの透過量試験(表8)においては、約25倍の高い浸透促進作用が観測された。このように、本発明の化合物は浸透促進作用を有し、これにより爪の疾病の予防及び治療において高い有用性が期待できる。
本発明は、爪に対する治療薬の強力な浸透促進効果を有することにより、白癬等を含む感染症、炎症、アレルギー等の病態の予防及び治療等に有用である新規化合物を提供した。これまで、外用薬による爪の疾病の治療は非常に困難であったが、本発明により外用薬による治療の有効性は格段に向上すると予想され、その利用価値は高いと考えられる。

Claims (6)

  1. 式(I)、
    Figure 2008169155
    (式中、
    Zは、二級窒素原子(-NH-)、酸素原子(-O-)又は硫黄原子(-S-)を示し、
    Yは、三級窒素原子(−N=)又は三級炭素原子(-CH=)を示し、
    R1は、C1〜C15の不飽和又は飽和炭化水素基(但し、R1が、CH3CmH2mで表される飽和炭化水素基(mは、5〜14を示す)であり、式中の五員環上の窒素原子と直接結合している場合を除く。)を示し、そして
    nは、1〜5を示す。)
    で表される化合物又はその薬学的に許容可能な塩からなることを特徴とする浸透促進剤。
  2. 式(II)、
    Figure 2008169155
    (式中、
    R2及び R3は、独立に、C1〜C15の飽和又は不飽和炭化水素基又は六員環に酸素を介して結合したC1〜C15の飽和又は不飽和炭化水素基を示し、
    Yは、三級窒素原子(−N=)又は三級炭素原子(-CH=)を示し、そして
    nは、0〜5を示す。)
    で表される化合物又はその薬学的に許容可能な塩からなることを特徴とする浸透促進剤。
  3. 請求項1の浸透促進剤と、薬効成分とを含有することを特徴とする外用爪治療剤。
  4. 請求項2の浸透促進剤と、薬効成分とを含有することを特徴とする外用爪治療剤。
  5. 前記薬効成分が、ブテナフィン、テルビナフィン及びアモロルフィンからなる群から選択される薬効成分である請求項3に記載の外用爪治療剤。
  6. 前記薬効成分が、ブテナフィン、テルビナフィン及びアモロルフィンからなる群から選択される薬効成分である請求項4に記載の外用爪治療剤。
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