以下、本発明を、図1乃至図5に示された一実施の形態を参照しながら詳細に説明する。
図2は、中心となる作業機械遠隔稼働管理システム10の概要を示し、この作業機械遠隔稼働管理システム10は、作業機械11の動態管理を無線通信を利用して遠隔地で行なうもので、作業機械11は、無線通信機能を有するとともに、グローバル・ポジショニング・システム用衛星(以下、GPS衛星12という)により位置測位機能を有する動態管理用コントローラ(後で説明する)を備えている。なお、図2で図示された作業機械11は油圧ショベルであるが、作業機械11としては、ブルドーザ、ローダなどでも良い。
作業機械11の動態管理用コントローラは、中継局13および無線キャリアネットワーク14を介して、管理部15と通信可能に構成されている。無線キャリアネットワーク14は、携帯電話通信と衛星通信とを併用して、作業機械11の動態管理用コントローラと管理部15とを結ぶ携帯電話回路網である。
管理部15は、作業機械11を生産するメーカ社内に設置され、この管理部15には、インターネット回線網16を介して端末機器としての顧客端末機器17が通信可能に構成されているとともに、メーカ系列のイントラネット回線網18を介して端末機器としての社内端末機器19が通信可能に構成されている。
管理部15は、作業機械11の動態管理用コントローラから無線通信で送信させた車両情報、動態データ(すなわち稼働データおよび位置情報)を受信して保存するとともに、ウェブサイトに反映させ、顧客およびメーカ社内または販売店のサービスマンに対して、インターネット回線網16またはイントラネット回線網18を通じて、ウェブ(Web)またはメーラにて情報提供を行なう。
顧客端末機器17または社内端末機器19は、顧客またはサービスマンが、インターネット回線網16またはイントラネット回線網18を通じて管理部15にアクセスして、ウェブブラウザまたはメーラにより自分の所有または担当する作業機械11の稼働データを閲覧する主としてパーソナルコンピュータ(以下、単に「パソコン」という)であるが、携帯電話も含む。
稼働データは、稼働情報(稼働時間、燃料残量など)、機械情報(エンジン回転数、油圧機器状態など)、警告情報(未承認キー挿入、異常検出など)、メンテナンス情報(オイル交換時期、フィルタ交換時期など)を含む。
図1は、作業機械遠隔稼働管理システム10を示し、特に、作業機械11の車両情報(車両名称(号機情報)、機種、建機本体シリアル番号など)、稼働データ(稼働情報、機械情報、警告情報、メンテナンス情報)および位置情報(GPS衛星12による地図表示)などを作業機械11から遠隔地の管理部15に無線通信で送信させ、管理部15で受信したこれらの情報をウェブサイト(会員サイト)に反映させて顧客またはサービスマンに提供することで、顧客またはサービスマンがインターネットまたはイントラネットに接続されたパソコンなどを使ってホームページ上で作業機械11を管理する管理部15側のアプリケーションを示し、管理部通信部21と、データ連結処理部22と、データベース23と、メール配信部24と、ネット回線用情報処理部25とを備えている。
管理部通信部21は、無線キャリアネットワーク14を利用できる通信機器、すなわち無線キャリアネットワーク14を介して作業機械11の動態管理用コントローラ26とデータ通信をするためのデータ受信部27、データ送信部28および情報制御部29を備えている。
作業機械11内では、動態管理用コントローラ26と機体制御用コントローラ30とが、車載電子機器ネットワークにより接続されている。これらのコントローラ26,30の説明は、後で詳述する。
また、作業機械遠隔稼働管理システム10のデータ連結処理部22は、XMLデータ形式などの標準化技術を用いて、種々のシステム間で異なる言語のコンピュータシステム同士を対話させたり情報を交換するウェブサービス22wsを備えている。すなわち、データ連結処理部22は、XML(eXtensible Markup Language)などの標準化技術を用いて、例えば作業機械11の動態管理用コントローラ26と、顧客端末機器17(顧客パソコン17pc、顧客携帯電話17ph)またはメンテナンス実行側(メーカ社内および販売店)の社内端末機器19(社内パソコン19pc、社内携帯電話19ph)などとの間で行なわれるデータ授受を制御し、その処理を行なうウェブサーバを備えている。
顧客パソコン17pcおよび顧客携帯電話17phは、いずれもインターネット回線網16を介して管理部15が運営するウェブサイトにアクセスできる環境にあり、顧客携帯電話17phは、電子メールを受信保存できる機能を有する。
社内パソコン19pcおよび社内携帯電話19phは、いずれもメーカ系列のイントラネット回線網18を介して管理部15が運営するウェブサイトにアクセスできる環境にあり、社内携帯電話19phは、電子メールを受信保存できる機能を有している。
データベース23は、車両データベース31と、顧客情報データベース32と、社内データ更新部33とから構成され、車両データベース31には、作業機械11から送信された車両情報(号機情報など)、稼働データ(稼働情報、機械情報など)および位置情報が保存され、顧客情報データベース32には、社内のイントラネット回線網18を介して顧客マスタから供給され社内データ更新部33で逐次更新される顧客に関するデータが保存される。後述するように、各データベース31,32の情報は、ヒモ付けされた態様で顧客またはサービスマンに提供される。
メール配信部24は、電子メールを顧客携帯電話17ph、顧客パソコン17pcおよび社内携帯電話19phに送信するためのメールサーバを備え、作業機械11側から警告情報が送信された場合は、車両情報に対応する顧客に警告情報があった旨の電子メールを送信し、また、後述する部品交換時期が設定範囲内に入った場合は、車両情報に対応する顧客に部品交換時期を知らせる電子メールを送信する。このため、送信すべき顧客携帯電話17ph、顧客パソコン17pcおよび社内携帯電話19phのアドレスがメールサーバのメモリに保存されている。
ネット回線用情報処理部25は、データ連結処理部22に情報制御部34を介して接続され、ウェブサイトを管理する顧客向情報処理部35および社内向情報処理部36を備え、ウェブサイトを通じて顧客パソコン17pcおよび社内パソコン19pcとデータの授受を行う。
ウェブサイトから所定のデータの取得要求を行わせるために、IDとパスワードによるログインを条件としており、このため、アクセスを許容する顧客および社内(販売店も含む)のサービスマンには、それぞれIDとパスワードを付与しておく。
作業機械11の位置情報は、作業機械遠隔稼働管理システム10により顧客パソコン17pcまたは社内パソコン19pcで確認することができるとともに、管理部15の情報制御部34に接続された地図情報検索サイトの地図情報データベース41を通じて、顧客携帯電話17phまたはサービスマンの社内携帯電話19phでも確認できるので、移動しながら、部品交換作業現場などのメンテナンス対象車両の位置を探索するのに役立つ。
また、作業機械遠隔稼働管理システム10のデータ連結処理部22のウェブサービス22wsに、作業機械遠隔稼働管理システム外部のソフト書換えシステム(ET)42が、このソフト書換えシステム42に取付けられた同一データ形式のウェブサービス42wsを介して接続され、作業機械遠隔稼働管理システム外部のデータベースとしての諸情報データベース43が、この諸情報データベース43に取付けられた同一データ形式のウェブサービス43wsを介して接続され、作業機械遠隔稼働管理システム外部の修理業務システム44が、この修理業務システム44に取付けられた同一データ形式のウェブサービス44wsを介して接続され、作業機械遠隔稼働管理システム外部のレンタルシステム45が、このレンタルシステム45に取付けられた同一データ形式のウェブサービス45wsを介して接続され、作業機械遠隔稼働管理システム外部の取説取得用イントラネット回線網46が、この取説取得用イントラネット回線網46に取付けられた同一データ形式のウェブサービス46wsを介して接続されている。
ソフト書換えシステム42は、作業機械11から発生したエラーログ(エラーコード)を読取って作業機械11の状態(エンジン回転数、圧力、温度など)を監視する機能と、作業機械11の制御用ソフトウェアを書換えることによって作業機械11の機体制御プログラムを変更する機能とを備え、作業機械11の動態管理用コントローラ26および機体制御用コントローラ30の各制御用ソフトウェアを書換えるソフト書換え機能を利用して作業機械11の機体制御プログラムを変更することが可能である。例えば、車両で発生したエラーコードをエンジンコントローラ(ECM:エンジン・コントロール・モジュール)などから読取って、不具合発生箇所と不具合内容とを特定することが可能であるとともに、作業機械11の機体制御用コントローラ30を制御する機体制御プログラム中の設定値を書換えることで、作業機械11の不具合発生箇所を遠隔調整し、エンジン回転数、燃料噴射制御(燃料噴射量、燃料噴射タイミング)などを可変調整することが可能である。
諸情報データベース43は、社内データ更新部33に提供される更新前の顧客基礎情報、作業機械11に関する機械情報、修理履歴、部品注文、販社情報などを格納したデータベースであり、修理履歴などの内部情報を活用して次回部品交換時期を推定し、次回部品交換時期が設定範囲内に入ったか否かを判断する部品交換時期管理システムを有する。前記社内データ更新部33は、この諸情報データベース43の顧客に関するデータを更新して、顧客情報データベース32に入力する。
修理業務システム44は、作業機械遠隔稼働管理システム10から修理業務を遂行する上で必要なデータをもらうためのものである。
レンタルシステム45は、作業機械11のレンタル業務における在庫情報などを管理するとともに請求書を発行するための会計処理をするシステムであり、車両情報(号機情報)とともに、レンタル先顧客情報などが保存されている。
取説取得用イントラネット回線網46は、作業機械11の部品カタログや取扱説明書を取得するためのイントラネット回線網である。
そして、この図1に示された作業機械遠隔稼働管理システム10における管理部15とその周辺では、顧客パソコン17pcおよび社内パソコン19pcからアクセスされ、動態データの取得要求がされるウェブサイトを運営するデータ連結処理部22のウェブサーバと、作業機械11から通信手段を介して取得した動態データおよびこの動態データに関連する関連データを保存する内部のデータベース23と、この内部のデータベース23を管理する管理サーバと、内部のデータベース23に保存されるべき関連データを保存している外部の諸情報データベース43と、この外部の諸情報データベース43を管理する管理サーバとを備え、前記データ連結処理部22のウェブサーバは、前記関連データを、自身に接続された外部の諸情報データベース43から取り出して内部のデータベース23に保存させるとともに、内部のデータベース23に保存される動態データ(稼働データ)を、それと関連する関連データ(顧客情報)とともに、ウェブサイトに反映させるものであって、前記ウェブサーバを介したデータ授受のデータ形式をXMLデータ形式として、少なくとも、前記ウェブサーバをサービスリクエスタに、ウェブサーバに接続される各サーバを、サービスプロバイダにそれぞれ機能させる。
この管理部15の管理システムは、いわゆるXMLウェブサービスを作業機械11の作業機械遠隔稼働管理システム10に利用した技術であり、そのXMLウェブサービスとは、XMLデータ形式のデータ交換によってネットワーク上に散在する各アプリケーションを連携させる技術をいう。XML(eXtensible Markup Language)は、マークアップ言語の一つで、最大の特徴は、各システムのプラットフォームに依存することなくシステム間でデータを送受信でき、またプログラムが解釈できる言語なので、異なるシステム間のサーバ同士でのデータの送受信に使用できる点にある。
そして、XMLデータ形式のオブジェクトをネットワーク経由で利用できる通信プロトコルとしてSOAP(Simple Object Access Protcol)が知られている(下位プロトコルとして汎用されるHTTPなどを利用可能)。したがって、例えばHTTPで接続されたネットワーク環境においてSOAPを使用し、例えば第1サーバからネットワーク上にある第2サーバに前記XMLデータを送信させることで、第2サーバで処理をさせ、その処理後のXMLデータを第1サーバに返すことも可能であり、さらに第1サーバでウェブサイトを運営していれば、取得したデータをこのウェブサイトに反映させることも可能となる。
前記サービスリクエスタおよびサービスプロバイダは、いずれもXMLウェブサービス上の概念であり、サービスリクエスタとはデータ要求をするXMLデータの送信元をいい(例えば第1サーバ)、サービスプロバイダとは、そのデータの送信先であって、そのデータに記述される処理をした後、処理後のデータをサービスリクエスタに返す相手方サーバをいう(例えば第2サーバ)。
管理部15においては、データ連結処理部22のウェブサーバがサービスリクエスタとして機能し、それに接続される内外のデータベース23,43の管理サーバがサービスプロバイダとして機能するので、ウェブサーバからのXMLデータ形式の指令データにより各管理サーバが指令の処理を行い、処理後のデータをウェブサーバに返信することになる。返信されるデータが外部の諸情報データベース43からの関連データであれば、ウェブサーバでは、それをそのまま内部のデータベース23の管理サーバに送信して保存させる。返信されるデータが内部のデータベース23からの動態データ(稼働データ)およびそれにヒモ付けされた関連データ(顧客情報)であれば、ウェブサーバは自身が運営するウェブサイトに反映させる。
それゆえ、この装置において、顧客またはサービスマンが例えば自己の所有または担当する作業機械11の動態データを知りたいとき、自己の端末から管理部15のウェブサイトにアクセスし、データ取得要求の指示を出すことができる。
管理部15のウェブサーバでは、この指示を受けて、内部のデータベース23の管理サーバに対してXMLデータ形式の指令データを送信するので、管理サーバは、内部のデータベース23から所望の作業機械のXMLデータ形式の動態データを取り出すとともに、関連データも取り出して、ウェブサーバに返信する。ウェブサーバでは、動態データと関連データをヒモ付けさせてウェブサイトに反映させる。これにより、顧客またはサービスマンは動態データを関連データとともに取得できる。顧客またはサービスマンが自己の端末との間に自身のデータベースを接続させている場合は、前記ウェブサイトから取得する動態データはXMLデータ形式なので、直接そのデータベースに取り込むことも可能となる。
作業機械11と管理部15との間のデータ授受もXMLデータ形式とし、作業機械側データ取得手段をサービスプロバイダとして機能させる。データ連結処理部22のウェブサーバとXMLデータ形式でデータ授受を行なうソフト書換えシステム42、修理業務システム44、レンタルシステム45および取説取得用イントラネット回線網46の各サーバも、諸情報データベース43と同様にサービスプロバイダとして機能させる。
以上説明したように、この作業機械遠隔稼働管理システム10における管理部15側のアプリケーションは、データ連結処理部22のウェブサーバとデータ授受のデータ形式をXMLデータ形式とし、少なくとも前記ウェブサーバをサービスリクエスタに、このウェブサーバに接続される各サーバを、サービスプロバイダにそれぞれ機能させているため、サービスプロバイダから返信される動態データや関連データもXMLデータ形式となっており、それらデータを管理部15内にそのまま取り込むことも、さらに、そのデータを例えば顧客側や外部システムがウェブサーバを介してそのまま取り込むことも容易となっている。
すなわち、建設業界の標準形式であるXMLデータ形式に対応できるとともに、このXMLデータ形式は全世界に通ずる全世界共通データ形式でもあるので、外部からデータ提供の依頼があったときでも、そのままデータを渡すことができる。さらに、態様によっては、外部のシステムと接続させ、データ連結処理部22のウェブサーバをサービスリクエスタとして機能させて、ウェブサーバが取得した動態データを、直接その外部のシステムに取り込むようにすることも可能である。
また、管理部15のウェブサイトに接続されるサービスプロバイダとしてのサーバを増やすことも容易となり、その場合、管理システム自体の処理を増加させることも可能になる。一方、データ連結処理部22のウェブサーバはサービスリクエスタとして機能すれば足りるので、管理部自体の負担は増えず、機構が簡単なまま、しかも低コストで装置がグレードアップする効果が得られる。
すなわち、システム構築につき、従来のように他のシステムとの連携を含めたシステム構成を1つ1つ作成する必要がなく、連携コネクタすなわちデータ連結処理部22のウェブサービスを1つ作るだけで、ソフト書換えシステム42、諸情報データベース43、修理業務システム44、レンタルシステム45、取説取得用イントラネット回線網46などの各業務における様々な他のシステムと、それらのウェブサービス42ws,43ws,44ws,45ws,46wsを介して簡単に連携できるので、それぞれの独自インターフェイスとの繋ぎ合わせが容易にでき、低コストで作成できる。
さらに、作業機械遠隔稼働管理システム10の完成後における別システムの追加、改変が容易であり、例えば、ソフト書換えシステム42、諸情報データベース43、修理業務システム44、レンタルシステム45、取説取得用イントラネット回線網46のような別システムを連携させることになっても、これらの別システムを作業機械遠隔稼働管理システム10内に入れるためのシステム開発は不要であり、これらの別システムにウェブサービス42ws,43ws,44ws,45ws,46wsを取付けるだけで、別システムの追加が可能となる。
次に、図3は、作業機械11の内外へのデータ授受を制御する動態データ管理装置である動態管理用コントローラ26と、作業機械11の種々の機器を制御する機体制御用コントローラ30とを示す。動態管理用コントローラ26と、機体制御用コントローラ30は、通信線などの車載電子機器ネットワーク51によって接続されている。
動態管理用コントローラ26は、作業機械11のバッテリ(図示せず)に直接接続される主電源回路に対し、エンジン始動回路(図示せず)とパラレルに接続されている。したがって、エンジン始動回路のエンジンキースイッチをオフにしても、主電源スイッチをオフにしない限り、動態管理用コントローラ26は主電源の供給を受けて稼働状態を維持できる。これに対し、機体制御用コントローラ30は、前記動態管理用コントローラ26と異なり、エンジンキースイッチ回路に接続され、エンジンキースイッチのオン/オフと連動する。
機体制御用コントローラ30は、演算処理部52および記憶部53を備え、演算処理部52は、有線通信部54を介して車載電子機器ネットワーク51に接続されるとともに、入出力信号処理部55を介して、ディーゼルエンジンのエンジンコントローラ(ECM)、油圧回路のポンプコントローラ(レギュレータなど)およびセンサ類などの各種機器56に接続されている。
そして、記憶部53には、車両情報(号機情報など)および設定データが保存され、この記憶部53内の設定データに基づきエンジンコントローラ、ポンプコントローラなどに制御信号を出力する。さらに、この機体制御用コントローラ30に取込まれた稼働データは、有線通信部54から車載電子機器ネットワーク51を介して、動態管理用コントローラ26に取込まれる。
動態管理用コントローラ26は、演算処理部61と、この演算処理部61に接続された記憶部62と、有線通信部63と、無線通信部64と、位置測定部65と、日付管理部66と、入出力信号処理部67と、電源制御部68とからなる。
演算処理部61は、動態管理用コントローラ26内のデータの授受等に関して各構成部62〜67に対して指令を出力する。
記憶部62は、演算処理部61より書き込まれた作業機械の稼働データ(稼働情報、機械情報、メンテナンス情報および警告情報)および演算処理部の指令基準となる条件が記述された設定データを保存する。この記憶部62は、保存されるデータに応じて、記憶領域が稼働データ記憶部71、自発送信データ記憶部72、設定データ記憶部73の3つに分割されている。
有線通信部63は、作業機械内の他のコントローラ(機体制御用コントローラ30)と車載電子機器ネットワーク51を介してデータ通信をする。
無線通信部64は、無線キャリアネットワーク14を利用できる無線通信機器とメモリを備え、その無線キャリアネットワーク14を介して管理部通信部21とデータ通信をする。そのメモリには管理部通信部21の電話番号(連絡先データ)が保存されるほか、この管理部通信部21からの呼出用電子メールを保存する領域が設定されている。
位置測定部65は、GPS受信機を備え、GPS衛星12からの電波を受信して現在位置を測位する。
日付管理部66は、時計手段と充電池を備え、主電源オフ時にも日時を保持して日時データを管理できるように独自の充電池を備え、また予め演算処理部61より設定された日付、時刻になると演算処理部61に出力をする。
入出力信号処理部67は、エンジンコントローラ、ポンプコントローラおよびセンサ類などの各種機器56に接続され、センサ類から得られた稼働データを機械情報として動態管理用コントローラ26に取込むとともに、各種機器56のリレーなどに対して出力をするもので、機種によっては機体制御用コントローラ30が設置されない場合にも対応できる。
電源制御部68は、演算処理部61、無線通信部64および日付管理部66に接続され、これらの内部電源のオン/オフを制御する。
そして、前記記憶部62への各データの保存は、前記演算処理部61の指令により処理され、そのうち作業機械11の各種機器56に設けられた稼働時間積算計、燃料残量センサ、エンジン回転数センサ、温度センサ、圧力センサなどのセンサ類から得られた所定の稼働データ(稼働情報(稼働時間情報、燃料残量情報)、機械情報、メンテナンス情報および警告情報)は、入出力信号処理部67および演算処理部61を経て記憶部62の稼働データ記憶部71に保存される。
これらの稼働データのうち、警告を発する条件に合致する異常データがあった場合、それは警告情報として、自発送信データ記憶部72にも保存される。この自発送信データ記憶部72に警告情報が保存されている場合、後述するように、管理部15からの呼出用電子メールの有無に関わらず、演算処理部61は管理部15側に警告情報を送信するよう指令を出力する。
演算処理部61の制御指令は、記憶部62の設定データ記憶部73に保存される設定データに基づいているが、更新すべき設定データは、管理部15側から送信され、それが前記設定データ記憶部73に保存される。
車載電子機器ネットワーク51には、サービスツール76を介してノートパソコン77が接続可能となっている。このノートパソコン77は、車載電子機器ネットワーク51を介して動態管理用コントローラ26および機体制御用コントローラ30と通信を行ない、ノートパソコン77上に機械情報などをリアルタイムで表示させる。
次に、前記動態管理用コントローラ26内における通信処理を説明する。
演算処理部61では、主電源スイッチがオンになっている限り、管理部15からの呼出用電子メールが受信されて無線通信部64のメモリ内に保存されているか否かを常時チェックしている。
管理部15から呼出用電子メールが送信された場合、無線通信部64で受信し、即座に無線通信部64のメモリに保存する。チェックしている演算処理部61がその保存を確認すると、無線通信部64に無線通信部64のメモリから管理部15の電話番号を取り出させ、管理部15側に架電させる。
無線通信部64が管理部15と通じると、管理部15から設定データがあればそれが送信され、それとともに所望の作業機械11の送信要求が送信される。演算処理部61では、まず設定データを受信したかどうか確認し、受信があれば、それを記憶部62の設定データ記憶部73に保存して更新し、更新完了した結果をデータとして管理部15側に返す。設定データは、上述したように、演算処理部61の制御指令であり、更新以後は更新後の設定に基づき制御が行われる。
次に演算処理部61は、稼働データ要求を確認すると、所望の作業機械11の稼働データを稼働データ記憶部71から取り出して、無線通信部64から管理部15へ送信させる。なお、稼働データを受信した管理部15側では、その稼働データをウェブサイトに反映させ、顧客またはサービスマンに情報提供する。
次に演算処理部61は、記憶部62の自発送信データ記憶部72内に警告情報の有無を確認し、警告情報があれば、そのデータを取り出し、無線通信部64から管理部15へ送信させる。
警告情報を受信した管理部15側では、そのデータをウェブサイトに反映させるとともに、管理部15側に登録されている顧客またはサービスマンの携帯電話17ph,19phに、警告情報を受信した旨の電子メールを送信する。
演算処理部61は、各データ送信後、設定された所定時間が経過すると、強制的に回線を切断させる。なお、管理部15からの呼出用電子メールがない場合、演算処理部61は、記憶部62の自発送信データ記憶部72内に警告情報があるか否かを常時チェックし、データがあれば、無線通信部64から管理部15に架電させて、警告情報を送信させる。
次に、このような作業機械遠隔稼働管理システム10の顧客およびサービスマンを含めた実際のデータの流れについて説明する。
顧客および社内(販売店も含む)のサービスマンが現在の自己の所有または担当する作業機械11の稼働状況について知りたいときは、それぞれ各自の顧客端末機器17または社内端末機器19からインターネット回線網16またはイントラネット回線網18を介して、管理部15が運営するウェブサイトにアクセスし、IDとパスワードでログインした後、所望の作業機械11の稼働データの取得を要求する。
管理部15側では、要求された所望の作業機械11へのアクセスデータを自身のデータベース23から取得し、そのデータに基づき、所望の作業機械11に無線キャリアネットワーク14を介して呼出用電子メールを送信する。
一方、作業機械11側では、動態管理用コントローラ26の無線通信部64により前記呼出用電子メールを受けておく。動態管理用コントローラ26の演算処理部61が呼出用電子メールの保存を確認すると、無線通信部64に対して架電指令を出力し、携帯電話通信網を含む無線キャリアネットワーク14を介して管理部15側に架電させる。
電話を受けた管理部15側では稼働データの要求信号を出力し、これを受けて前記作業機械11側は、前記動態管理用コントローラ26内において、演算処理部61が記憶部62から所望の稼働データを取得し、これを無線通信部64から出力させる。このデータを受けた管理部15側は、いったん自身のデータベース23に保存し、所定の出力形式で自身のウェブサイトに反映させる。これにより、顧客端末機器17または社内端末機器19において、その時点における所望の稼働データが表示されることになる。
このデータの流れにおいて、作業機械11の動態管理用コントローラ26は、エンジンキースイッチがオフのときでも作業機械11のバッテリから直接電源を得て、主電源スイッチが切られない限り稼働しており、作業機械11が作動していないときでも、管理部15側からの呼出用電子メールを常に監視して応答する体勢をとっているので、主電源スイッチをオフにしない限り、顧客または社内(販売店も含む)のサービスマンは、いつでも、管理部15が運営するウェブサイトを通じて、所望の作業機械11についてのリアルタイムの稼働データを要求し、また取得することができる。
また、警告情報については、それが自発送信データ記憶部72に保存されれば、主電源スイッチがオンである限り、作業機械11側から直ちに管理部15側に送信され、電子メールによって顧客端末機器17または社内端末機器19に出力されるので、作業機械11に異常のあることをリアルタイムで知ることができる。
特に、動態管理用コントローラ26の位置測定部65を経て取得したGPS位置情報を利用して、日付管理部66で管理される日時との関係で作業機械11の稼働位置が設定された想定領域の外に作業機械11が移動したときに、その位置情報を警告情報として保存させるようにすれば、顧客またはサービスマンは遠隔地において盗難か否かの判断が即座にできる。なお、明らかに盗難の可能性が高いと想定できる位置情報の場合は、動態管理用コントローラ26からの警告信号に基づき機体制御用コントローラ30が自身でエンジン始動回路を遮断するなどの始動制限機能を備えることで、盗難防止を図れる。
また、顧客端末機器17または社内端末機器19からの稼働データの要求は、すべて管理部15を通じるルートとなっていて、これにより作業機械11が稼働データを送信する先は管理部15だけとなっており、そのデータ送信の始動も、管理部15側からの呼出用電子メールの有無に限っているので、データを渡す顧客の認証機構が作業機械11にはまったく不要となり、しかもアクセスのあった時にデータを渡すのではなく、呼出は呼出で終了させた後、接続先が設定されている管理部15だけに作業機械11側から架電のうえデータを送信するので、作業機械11および管理部15ともに簡易なシステム構成となるとともに、データ漏洩のおそれがない。
すなわち、この作業機械遠隔稼働管理システム10では、作業機械11側からの動態データの送信先は、予め連絡先が設定された管理部15のみであり、その管理部15からウェブサイトを通じて顧客端末機器17または社内端末機器19にデータが提供されるので、作業機械11側では動態データを管理部15だけに提供すれば、複数の顧客またはサービスマンにデータを提供できることになる。
このことは、作業機械11が複数の顧客端末機器17または社内端末機器19から直接アクセスを受け、それにデータを提供するシステムと比較して、個々の認証機構が不要となる分、システムが簡素化できるとともに、通信ランコストも低廉に抑えることが可能となる。しかも、作業機械11とのデータの授受は、予め連絡先が決定されている管理部15のみに限られ、限られた回線でデータを流すので、情報が漏洩するおそれも格段に減少し、セキュリティに要する構築費用もきわめて低廉で済むものとなっている。
また、管理部15側が作業機械11とのデータの授受を一括して行い、受信したデータをウェブサイトに反映させて顧客またはサービスマンに提供するので、例えば作業機械11からは数値だけの生データのみを受け取るものとしても、ウェブサイトに反映させる段階で、数値だけの生データを顧客またはサービスマンが所望する様式に加工して表示させることができ、顧客またはサービスマンの便宜に適うシステムとなっている。
すなわち、管理部15側がデータ授受を一括して行うことで、作業機械11の稼働データのうち保守管理に必要なものと、顧客に必要なものとを、管理部15にて選別することができ、顧客とサービスマンのそれぞれにとって必要なデータだけを提供することができる。さらに、管理部15側で、決まった時間に一括してすべての作業機械の稼働データを取得し、そのデータをウェブサイトに反映させることも可能であるが、そのような場合は、通信コストを低廉にできる。
次に、図4に示されたフローチャートを参照して、遠隔地から作業機械11の不具合発生箇所または故障箇所をトラブルシューティングするとともにトラブル解消作業するフローを説明する。
(ステップS1)
作業機械11の各種機器56のセンサ類で検出された警告情報すなわちエラーログ(エラーコード)は、管理部15に送信されるか、または管理部15から定期的に作業機械11へエラーログを取りに行き、諸情報データベース43に蓄積される。
(ステップS2)
顧客またはサービスマンは、顧客端末機器17または社内端末機器19から会員サイトにて諸情報データベース43にアクセスして、作業機械11の現状および警告履歴を確認する。
(ステップS3)
サービスマンは、社内パソコン19pcよりウェブサイトにてソフト書換えシステム42にアクセスし、このソフト書換えシステム42により作業機械11から発生したエラーログ(エラーコード)を読取って作業機械11の状態を遠隔地で監視する機能を用いて、作業機械11の不具合発生箇所および不具合内容を見つけるトラブルシューティングを行なう。
(ステップS4)
ソフト書換えシステム42による遠隔調整機能で不具合状態を解消できるか否かを判断する。言い換えると、ソフト書換えシステム42による設定値の変更が不可能か否かを判断する。すなわち、サービスマンが現地に赴いて作業機械11を修理する必要があるか否かを判断する。
(ステップS5)
ソフト書換えシステム42により作業機械11の機体制御プログラムを変更する機能で不具合状態を解消できる場合は、社内パソコン19pcを操作して管理部15、無線キャリアネットワーク14を経て作業機械11の機体制御プログラム中の設定値を変更することで、作業機械11の不具合発生箇所の設定値を遠隔地の管理部15を通じて遠隔調整する。例えばエンジンコントローラ(ECM)の設定値を変更してエンジン回転数、燃料噴射制御を可変調整したり、ポンプ斜板の角度を制御するレギュレータの設定値を変更してポンプ容量を可変調整したり、他の制御系のゲインまたは時定数などを可変調整する。なお、作業機械11の動態管理用コントローラ26および機体制御用コントローラ30の各ソフトウェアをバージョンアップすることも、この調整に含まれる。
(ステップS6)
不具合の程度が、現場での部品交換などの修理を必要とする場合は、サービスマンは、不具合部品が分かるので、予め必要な部品を用意して、社内パソコン19pcにより、また移動中は地図情報データベース41を介し社内携帯電話19phにより、修理対象車両の位置を把握しながら移動する。
(ステップS7)
サービスマンは、現地で作業機械11の消耗部品、破損部品の交換、ステップS5では調整不能な部品の調整などの修理をする。
(ステップS8)
サービスマンが社内パソコン19pcから請求書作成事項を入力すると、レンタルシステム45での会計処理を経て顧客に電子請求書が発行される。
(ステップS9)
顧客は、インターネットバンクなどを通じて支払いをする。
次に、図5は、前記ステップS3のトラブルシューティングの詳細を示すフローチャートである。
(ステップS3-1)
ソフト書換えシステム42は、車両で発生したエラーログ(エラーコード)をECMなどから読取って不具合発生箇所および不具合内容を特定する。
(ステップS3-2)
管理部15では不具合発生箇所のデータ(エンジン回転数、圧力、温度など)を取得して、それらの基準値と比較する。
(ステップS3-3)
不具合発生箇所のデータと基準値との誤差が許容値の範囲内か否かを判断する。誤差が許容値の範囲内であれば、ステップS3-1に戻って、別の不具合をチェックする。
上記誤差が許容値の範囲内でない場合は、ステップS4に進んで、ソフト書換えシステム42による設定値の変更が不可能か否かを判断する。
ソフト書換えシステム42で設定値の変更が可能な場合は、ステップS5に進んで、ソフト書換えシステム42により作業機械11の機体制御プログラム中の設定値を変更することで、作業機械11の不具合発生箇所の設定値を遠隔調整する。
次に、このシステムの効果を説明する。
作業機械11の稼働データを遠隔地の管理部15で受信しウェブサイトを通じて社内端末機器19に提供する作業機械遠隔稼働管理システム10を用いて、この作業機械遠隔稼働管理システム10に接続されて作業機械11から発生したエラーログを読取って作業機械11の状態を監視する機能を備えたソフト書換えシステム42により、作業機械11の不具合発生箇所および不具合内容を見つけるトラブルシューティングを行なえるとともに、このソフト書換えシステム42が備えた作業機械11の制御用ソフトウェアを書換えることによって作業機械11の機体制御プログラムを変更する機能により、不具合発生箇所を遠隔調整でき、作業者が現場に赴いて修理作業する手間を省くことができる。
ソフト書換えシステム42により作業機械11の機体制御プログラム中の設定値を変更することで、作業機械11の不具合発生箇所の設定値を遠隔地の管理部15を通じて社内パソコン19pcにより容易に変更調整できる。
そして、これらのトラブルシューティングや遠隔調整により、故障に至る前の作業機械11のメンテナンスを適時実施でき、作業機械11に対する信頼性の向上、故障による休車時間の低減、これによる生産性の向上などを図れる。
本発明は、作業機械11を遠隔地で稼働管理する作業機械遠隔稼働管理システムを搭載した油圧ショベル、ブルドーザまたはローダなどに適用できる。