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JP2008007753A - ポリアミド樹脂組成物および成形品 - Google Patents

ポリアミド樹脂組成物および成形品 Download PDF

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Teruhisa Kumazawa
輝久 熊澤
Kaoru Morimoto
馨 森本
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Abstract

【課題】機械的強度、薄肉成形性、結晶性、反り性に優れる、携帯電子機器用ポリアミド樹脂組成物を提供する。
【解決手段】ポリアミドMP(A)30〜80重量%、融点245℃以上のポリアミド樹脂(B)20〜70重量%を含有し(両者の合計量は100重量%である)、更に、フィラー(C)として、任意成分としての繊維状フィラー(C1)と必須成分としての板状フィラー(C2)を含有し、含有比率(C1):(C2)が0:10〜9:1であり、フィラー(C)の含有量が上記のポリアミドMP(A)及びポリアミド樹脂(B)の合計100重量部に対して30〜250重量部であり、上記のポリアミドMP(A)が、メタキシリレンジアミンを90〜50モル%と、パラキシリレンジアミンを10〜50モル%とを含む混合ジアミンと、α,ω−直鎖脂肪族二塩基酸及び/又は芳香族二塩基酸との重縮合反応により得られるポリアミド樹脂であるポリアミド樹脂組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、ポリアミド樹脂組成物および成形品に関し、詳しくは、機械的強度、薄肉成形性、結晶性、反り性に優れ、薄肉平板形状の携帯電子機器部品に好適なポリアミド樹脂組成物および成形品に関する。
PDA、携帯ゲーム機、携帯電話などの携帯電子機器は、持ち運びするために落下することが多く、特に筐体のような外装部品には、落下衝撃が重要な特性となる。製品厚みを厚くすることが可能な場合、耐衝撃性に優れた非強化ポリカーボネート樹脂やABS樹脂の他、これらの樹脂と少量の充填材とから成る樹脂組成物が使用される。
携帯電子機器部品には、外部に出ずに内部の構造を支える剛性の必要な平板形状の部品が必要な場合がある。例えば、キーボードの裏側ではキーを支える裏板が必要な設計とすることがある。この部分は、直接回路基盤が使用される場合もあるが、回路基盤に強度剛性を求めると、基盤への要求特性である誘電率、誘電正接などの電気特性と強度剛性とを両立させる材料の選定が難しくなる。また、液晶表示板についても裏板や枠が必要な場合があり、薄肉でも高剛性で低反りである材料が要求される。このような場合の対策としては、マグネシウムチキソモールディングやダイキャスト金属または鉄板加工品が選択肢としてあるものの、軽量化要求、絶縁性要求、電磁波を通す必要がある場合には金属の使用は困難である。
このような金属または鉄板加工品に代わり、量産性に優れた、高剛性、高強度の熱可塑性射出成形用材料が使用されている。このような熱可塑性射出成形用材料として、例えば、α,ω−直鎖脂肪族二塩基酸とキシリレンジアミンとの重縮合で得られるキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂(以下、「ポリアミドMX」と略記する)を主成分とした樹脂組成物が提案されている。しかしながら、ポリアミドMX樹脂は、結晶化速度が遅く、その樹脂組成物を使用して薄肉成形品を成形した場合、結晶化度の低い成形品となる。そのため、金型温度が130℃以上の高温で成形をしたり、成形品にアニール処理を施したりすることにより、結晶化度を上げる必要がある。特に、金型温度を上げて成形した場合は、金型が熱変形して成形品にバリが発生し易くなり、高度な金型製造技術がないと良好な成形品を得ることは困難である。
例えば、ポリアミドMXとポリアミド66の混合ポリアミド樹脂にガラス繊維を配合して成る、成形作業性に優れた成形用ポリアミド樹脂組成物が提案され、ポリアミド66を配合することにより結晶化速度が上がるため、成形サイクルが短縮できることが知られている(特許文献1)。しかしながら、実施例として使用されているポリアミドMXは、メタキシリレンジアミンとアジピン酸とから得られるポリアミド樹脂(以下「ポリアミドMXD6」と略記する)であり、ポリアミドMXD6にポリアミド66を配合した場合は、樹脂組成物の吸水量の増加や機械的強度の低下などの不都合が生じたり、薄肉成形性や薄肉成形品とした時の、反り、収縮などの寸法安定性に問題が残る場合がある。
パラキシリレンジアミンとメタキシリレンジアミンから成る混合キシリレンジアミンとα,ω−直鎖脂肪族二塩基酸とから得られるポリアミド樹脂(以下、「ポリアミドMP」と略記する)に、結晶核剤としてタルクを配合して成る樹脂組成物が提案されている(特許文献2)。しかしながら、斯かる提案においてはポリアミド66を使用しないため、上記の提案された技術で問題となっている樹脂組成物の耐熱性、吸水特性が改善され、ポリアミド66を配合せずして樹脂組成物の結晶化速度を上げ、成形性を向上させることが可能である。しかしながら、斯かる技術においても、成形時に金型温度を130℃に上げる必要があり、更に、薄肉成形品を成形する場合は、結晶化不良が発生してしまう。
キシリレンジアミンとα,ω−直鎖脂肪族二塩基酸とから得られたポリアミド樹脂に結晶核剤として窒化ホウ素を配合して成る樹脂組成物が提案され、成形時の十分な結晶化速度を得るためには、ポリアミド樹脂の重縮合に使用するパラキシリレンジアミンとメタキシリレンジアミンの比が0〜10/100〜90モル%の場合は、窒化ホウ素の他にポリアミド66を配合する必要があり、パラキシリレンジアミンとメタキシリレンジアミンの比が10〜45/90〜55モル%の場合は、ポリアミド66を配合する必要はないことが教示されている(特許文献3)。
ポリアミド6樹脂及び/又はポリアミド66樹脂20〜90重量%と、芳香族ポリアミド樹脂10〜80重量%とから成る混合ポリアミド樹脂100重量部に対し、無機充填材0〜300重量部、銅化合物及び/又はハロゲン化物0.01〜5重量部を配合して成るポリアミド樹脂組成物が提案され、当該ポリアミド樹脂組成物は、ポリアミドが本来有する優れた性質に加え、特に耐光性に優れているため、自動車および鉄道用外装部品、建材・住設部品に利用できることが教示されている(特許文献4)。実施例としては、ポリアミド6樹脂と芳香族ポリアミド樹脂とから成る混合ポリアミド樹脂に、無機充填材、銅化合物およびハロゲン化物を配合して成る樹脂組成物が挙げられている。しかしながら、厚み1mm程度の薄肉成形品を成形する場合は、特許文献3や4に記載の樹脂組成物を使用しても結晶化速度が十分ではなく、得られる薄肉成形品の結晶化度、反り性、バリ性は十分であるとは言えない。
芳香族ポリアミドと、非晶性ポリアミドと、ポリアミド6を混合した母材に、ガラス繊維、炭素繊維などの繊維状補強材を混合して得られる成形材料を使用して成形されていることを特徴とする、剛性、靭性、寸法安定性に優れた電子機器筐体が提案されている(特許文献5)。しかしながら、斯かる技術を使用しても該筐体の成形には130℃以上の金型温度が必要であり、未だバリや結晶化不良の問題が残る。
特開昭51−63860号公報 特開平7−41669号公報 特開平7−41670号公報 特開2001−106902号公報 特開2004−168849号公報
本発明は、ポリアミドMXとしての機械的強度を保持したままで、樹脂組成物の結晶化速度、薄肉成形性、薄肉成形品の結晶性、反り性、バリ性に優れるポリアミド樹脂組成物およびそれから成る成形品を提供することである。
本発明者らは、上記の目的を達成するため検討を重ねた結果、ポリアミドMXの原料であるキシリレンジアミン中のメタキシリレンジアミンとパラキシリレンジアミンの比率(メタキシリレンジアミン/パラキシリレンジアミン)が90〜50/10〜50モル%であるポリアミドMPに融点245℃以上のポリアミド樹脂を配合して成る樹脂組成物により、上記のような薄肉成形における結晶化の問題を解決し得るとの知見を得た。また、当該樹脂組成物に、更に、板状フィラーを必要に応じて繊維状フィラーと共に特定の比率で配合することにより、特に、薄肉携帯用電子機器に要求される低反り性能を十分満足できるとの知見を得た。
本発明は、上記の知見に基づき完成されたものであり、その第1の要旨は、ポリアミドMP(A)30〜80重量%、融点245℃以上のポリアミド樹脂(B)20〜70重量%を含有し(両者の合計量は100重量%である)、更に、フィラー(C)として、任意成分としての繊維状フィラー(C1)と必須成分としての板状フィラー(C2)を含有し、繊維状フィラー(C1)と板状フィラー(C2)の含有比率(C1):(C2)が0:10〜9:1であり、フィラー(C)の含有量が上記のポリアミドMP(A)及びポリアミド樹脂(B)の合計100重量部に対して30〜250重量部であり、上記のポリアミドMP(A)が、メタキシリレンジアミンを90〜50モル%と、パラキシリレンジアミンを10〜50モル%とを含む混合ジアミンと、α,ω−直鎖脂肪族二塩基酸及び/又は芳香族二塩基酸との重縮合反応により得られるポリアミド樹脂であることを特徴とするポリアミド樹脂組成物に存する。
そして、本発明の第2の要旨は、上記の樹脂組成物を成形して成ることを特徴とする成形品に存し、第3の要旨は、金型温調機温度が90℃未満の条件で成形される工程を含むことを特徴とする、上記の成形品の製造方法に存する。
本発明により、耐衝撃性、強度、剛性などを損ねることなく、樹脂組成物の結晶化速度、薄肉成形性を向上させることにより、130℃以下の低い金型温度でも成形品にバリが発生することなく薄肉成形が可能となり、機械的強度、結晶化性能、反り性に優れるポリアミド樹脂組成物およびそれから成る薄肉成形品を得ることが出来る。本発明のポリアミド樹脂組成物は、特に、携帯電子機器部品に要求される高い剛性と耐衝撃性に加え、優れた低反り性能を有しているため、内部に回路基盤を持つ薄肉の携帯電子機器部品用途、例えば、PDA、携帯ゲーム機、携帯電話、IDカード、自動車用の電子キー等に好適である。
<ポリアミド樹脂組成物>
以下、本発明について詳細に説明する。本発明において使用されるポリアミドMP(A)とは、キシリレンジアミンを主成分とする混合ジアミンとα,ω−直鎖脂肪族二塩基酸及び/又は芳香族二塩基酸の重縮合で得られるポリアミド樹脂であり、具体的には、メタキシリレンジアミン50〜90モル%とパラキシリレンジアミン10〜50モル%、好ましくはメタキシリレンジアミン50〜80モル%とパラキシリレンジアミン20〜50モル%を含む混合ジアミンと、炭素数6〜12のα,ω−直鎖脂肪族二塩基酸及び/又は芳香族二塩基酸との重縮合で得られるポリアミド樹脂である。
上記の混合ジアミン中には、上記のキシリレンジアミン以外のジアミン、例えば、テトラメチレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン、メタフェニレンジアミン、パラフェニレンジアミン等の芳香族ジアミン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、1,4−ビスアミノメチルシクロヘキサン等の脂環族ジアミン等を含んでいてもよく、上記のキシリレンジアミン以外のジアミンの割合(全ジアミン中の割合)は、通常10モル%以下、好ましくは5モル%以下である。
上記のα,ω−直鎖脂肪族二塩基酸及び/又は芳香族二塩基酸としては、例えば、グルタール酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、スベリン酸、ドデカン二酸、イソフタル酸(I)、テレフタル酸(T)等が挙げられ、これらの中では、アジピン酸、セバシン酸、スベリン酸、ドデカン二酸などが好ましく、アジピン酸が更に好ましい。
本発明において使用されるポリアミドMP(A)の相対粘度は、通常2.0〜4.0、好ましくは2.0〜2.7の範囲である。相対粘度が低すぎる場合は(低分子量であることを意味する)樹脂の物性が不足し、一方、高すぎる場合は成形が困難であり、また、相対粘度が4.0を超える場合はポリアミドMPの製造が困難になる。なお、本明細書において、相対粘度は、溶媒として96%硫酸を使用して調製した樹脂濃度1g/100mlの溶液を使用し、温度23℃の条件で測定した粘度を意味する。
ポリアミドMP(A)の含有量は、ポリアミドMP(A)及び融点245℃以上のポリアミド樹脂(B)の合計100重量%に対し、30〜80重量%、好ましくは30〜70重量%である。ポリアミドMP(A)の含有量が30重量%未満の場合は弾性率が低下し、80重量%を超える場合は成形時の結晶化速度が低下する。
本発明においては、結晶化速度および薄肉成形品の結晶性を向上させた樹脂組成物とするため、ポリアミドMP(A)に融点245℃以上のポリアミド樹脂(B)を配合する。
本発明における融点とは、示差走査熱量測定(DSC)法により観測される吸熱ピークのピークトップの温度である。吸熱ピークとは、試料を一度加熱溶融させ熱履歴による影響を出来るだけなくした後、再度昇温した時に観測される吸熱ピークとする。具体的には次の要領で求めることが出来る。30〜300℃まで10℃/minの速度で昇温し、300℃で2分間保持した後、200℃まで20℃/minの速度で降温する。更に、10℃/minの速度で300℃まで昇温し、昇温時に観測される吸熱ピークのピークトップから融点を求める。また、融点245℃以上とは、DSCで測定された融点が、相対粘度2.0〜4.0の範囲において常に245℃以上であることを言う。
融点245℃以上のポリアミド樹脂(B)の具体例としては、ポリアミド66、6T、46、66/6T、6T/6I、66/6T/6Iの他、二塩基酸として、テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、ジアミンとしてヘキサメチレンジアミン、メチルペンタジアミンの配合比を調節して得られる各種の高融点ポリアミド樹脂などが挙げられる。これらの中では、価格が安く入手が容易であること、結晶化速度が速く、流動性も良く、熱安定性も最も良好であることから、ポリアミド66が好ましい。
融点245℃以上のポリアミド樹脂(B)の相対粘度は、通常2.0〜4.0、好ましくは2.0〜2.7の範囲である。相対粘度が低すぎる場合は樹脂の物性が不足し、一方、高すぎる場合は成形性が低下する傾向にある。
融点245℃以上のポリアミド樹脂(B)の含有量は、ポリアミドMP(A)及び融点245℃以上のポリアミド樹脂(B)の合計100重量%に対し、20〜70重量%、好ましくは30〜70重量%である。融点245℃以上のポリアミド樹脂(B)の含有量が20重量%未満の場合は成形時の結晶化速度が低下し、70重量%を超える場合は弾性率が低下する。
本発明の樹脂組成物には、ポリアミドMP(A)と融点245℃以上のポリアミド樹脂(B)以外に、その他のポリアミド樹脂を配合してもよい。その他のポリアミド樹脂としては、例えば、表面外観改良の観点から、ポリアミド6/66、66/6I、6/6T/6I等が挙げられる。また、他の熱可塑性樹脂を配合してポリマーアロイとしてもよい。他の熱可塑性樹脂としては、例えば、主たるポリアミド樹脂の耐薬品性および摺動性改良の観点から、変性ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、PPS樹脂などが挙げられる。また、衝撃性改良の観点から、PPE樹脂、AS樹脂、ABS樹脂、PET樹脂などが挙げられる。
上記のその他のポリアミド樹脂および他の熱可塑性樹脂の含有量は、ポリアミドMP(A)及びポリアミド樹脂(B)の合計中の割合として、通常50重量%以下、好ましくは40重量%以下である。
本発明においては、成形品の反り性能、機械的強度および剛性を向上させるため、フィラー(C)を配合する。すなわち、板状フィラー(C2)を単独で、または、繊維状フィラー(C1)と板状フィラー(C2)併用し、好ましくは後述する通り両者を特定の比率で配合する。すなわち、繊維状フィラー(C1)は好ましい任意成分であり、板状フィラー(C2)は必須成分である。
繊維状フィラー(C1)とは、外観が繊維状を呈するフィラーであり、その具体例としては、ガラス繊維、炭素繊維、セラミック繊維などの無機系繊維類、ステンレススチール繊維、黄銅繊維などの金属繊維類、液晶性ケブラー等の有機繊維類が挙げられる。
また、上記の他に、アスペクト比が5以上の外見が粉体状のフィラーも好ましく使用される。その具体例としては、チタン酸カリウム、ホウ酸アルミニウム、酸化チタン、炭酸カルシウム等の無機化合物ウィスカー類、ウォラストナイトのような鉱物でアスペクト比が5以上のもの等が挙げられる。なお、アスペクト比はコンパウンド工程で変化するため、ここで言う「アスペクト比」は「原料でのアスペクト比」とする。これらの繊維状フィラーは2種以上を併用してもよい。
繊維状フィラー(C1)がガラス繊維の場合、ガラス繊維の組成は任意であるが、溶融ガラスよりもガラス繊維化が可能な組成が良い。好ましい組成としては、Eガラス組成、Cガラス組成、Sガラス組成、耐アルカリガラス等が挙げられる。ガラス繊維の引張り強度は、任意であるが、290kg/mm以上が好ましい。通常、入手が容易である点でEガラスが好ましい。
ガラス繊維は、例えば、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン等のシランカップリング剤などで表面処理されていることが好ましい。表面処理剤の付着量は、通常ガラス繊維重量の0.01重量%以上である。
更に、必要に応じ、脂肪酸アミド化合物、シリコーンオイル等の潤滑剤、第4級アンモニウム塩などの帯電防止剤、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂などの被膜形成能を有する樹脂混合物、被膜形成能を有する樹脂と熱安定剤、難燃剤などを併用したもの等によって表面処理されたガラス繊維を使用することも出来る。
板状フィラー(C2)としては、例えば、ガラスフレーク、マイカ、タルク、クレー、黒鉛、セリサイト、モンモリロナイト、板状炭酸カルシウム、板状アルミナ等が挙げられる。これらは2種以上を併用してもよい。これらの中では、曲げ特性、耐衝撃性、寸法安定性、流動性、製品外観のバランスの観点から、ガラスフレーク、マイカ、タルクが好ましい。携帯電子機器部品には、特に高い耐衝撃性が求められる場合が多いため、耐衝撃性が最も優れるガラスフレークの使用が最も好ましい。
板状フィラー(C2)として好適なガラスフレークは、一般市販品として、Eガラス組成、Cガラス組成のものが入手可能である。平均粒子径は、各社グレードによって異なるが、平板構造のガラスであって、数十μm〜1mm程度のものが好ましく、50〜800μm程度のものが更に好ましい。また、平均粒子径の異なるガラスフレーク2種以上を併用してもよい。更に、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン等のシランカップリング剤などで表面処理されていることが好ましく、表面処理剤の付着量は、通常ガラスフレーク重量の0.01重量%以上である。
板状フィラー(C2)として好適なマイカは、天然マイカでも合成マイカでもよい。マイカ(雲母)は、白雲母と金雲母に大きく分けられ、本発明においては、どちらも使用可能である。天然マイカとしては、平均粒子径として、大きいものでは1000μmから小さいものでは5μm程度のものが市販されている。合成マイカであれば数μm程度のものも入手可能である。本発明ではどの様な大きさのものでも使用可能である。表面外観、寸法安定性の観点から、大きさは通常5〜100μmである。平均粒子径の異なるマイカ2種以上を併用してもよい。また、表面処理されたもの、嵩密度を減らすため収束されたものも使用可能である。
板状フィラー(C2)として好適なタルクとは、珪酸マグネシウムを主成分とする鉱物結晶である。平均粒子径に制限はなく、任意のものが使用可能である。樹脂組成物の補強効果を目的として配合する場合は、平均粒子径3〜100μmのものが好ましい。また、平均粒子径の異なるタルク2種以上を併用してもよい。更に、表面処理されたもの、嵩密度を減らすため収束されたものも使用可能である。タルクは、補強効果以外に核剤としての効果も発揮し、樹脂組成物の結晶化速度を上げて成形性を向上させることが出来る。このような場合、成分(C2)の一部(例えば、成分(C2)中の0.3〜5重量%程度)を、平均粒子径の小さいタルク(例えば、平均粒子径1〜10μm程度のもの)に代えて使用することが好ましい。
フィラー(C)の含有量は、強化材として使用する場合は、ポリアミドMP(A)及び融点245℃以上のポリアミド樹脂(B)の合計100重量部に対し、30〜250重量部、好ましくは60〜200重量部、更に好ましくは70〜160重量部である。含有量が30重量部未満の場合は、剛性などの機械的特性や反り性の改良効果が不十分であり、含有量が250重量部を超える場合は、樹脂組成物の製造が困難となる。
また、繊維状フィラー(C1)と板状フィラー(C2)の含有比率は、(C1):(C2)の重量比として、0:10〜9:1であり、要求される低反りのレベルと強度のバランスにも依るが、好ましくは1:9〜8:2、更に好ましくは3:7〜7:3の範囲である。成分(C1)及び成分(C2)の含有比率を上記範囲内とすることにより、成形品の機械的特性と反り性の両方を効果的に改善できるので好ましい。
本発明の樹脂組成物には、結晶化速度を上げて成形性を向上させるため、核剤を添加することが好ましい。核剤としては、特に制限はなく、公知の無機核剤や有機核剤が使用可能である。無機核剤の平均粒子径は、通常0.01〜20μm、好ましくは0.1〜7μmである。核剤の含有量は、成分(A)及び成分(B)の合計100重量部に対し、通常0.001〜8重量部、好ましくは0.01〜4重量部である。核剤の含有量が0.001重量部より少ない場合は期待される効果が得られない場合があり、8重量部より多い場合は、異物としての効果が発現されて強度や衝撃値が低下する場合がある。
また、本発明の樹脂組成物には、成形時の離型性を向上させるため、離型剤を添加することが好ましい。離型剤の具体例としては、ステアリン酸、パルミチン酸などの炭素数14以上の長鎖脂肪族カルボン酸およびその誘導体(例えば、エステル、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アミド等)、ステアリルアルコール等の炭素数14以上の高級脂肪族アルコール及びその誘導体、ステアリルアミン等の炭素数14以上のアミン及びその誘導体、低分子量ポリエチレンワックス、パラフィン系ワックス等のワックス類、シリコーンオイル、シリコンガム等が挙げられる。離型剤の含有量は、成分(A)及び成分(B)の合計100重量部に対し、通常0.03〜1.5重量部、好ましくは0.03〜0.5重量部である。含有量を上記範囲内とすることにより、離型性改良効果を十分に発揮することができ、成形時のガスの発生や成形品表面の外観の低下を防ぐことが出来る。
以上の他、必要に応じ、ポリアミド樹脂組成物に一般に使用されている各種添加剤、例えば、難燃剤、安定剤、顔料、染料、耐候性改良剤などを適宜添加することが出来る。
例えば、難燃剤としては、公知のリン系、ハロゲン系、シリコン系の難燃剤が挙げられる。安定剤としては、ポリアミド樹脂に共通のハロゲン化銅系(例えば、沃化銅、塩化銅、臭化銅)及び/又はハロゲン化アルカリ金属(例えば、沃化カリウム、臭化カリウム等)の安定剤混合物、有機系安定剤(例えば、ヒンダードフェノール系、フォスファイト系など)が挙げられる。
また、物性の低下を生じさせるような、ポリアミドMP(A)と融点245℃以上のポリアミド樹脂(B)間の、好ましくないアミド交換反応を抑制する目的で、例えば、特開2003−105095の段落番号[0014]に記載されているような、元素周期律表第1族または第2族金属の無機酸塩やその水酸化物などのアミド交換抑制安定剤の使用も有効である。
上記の安定剤の含有量は、成分(A)及び成分(B)の合計100重量部に対し、通常、0.01〜5重量部、好ましくは0.1〜2重量部である。含有量が0.01重量部未満の場合は、熱変色改善、耐候性/耐光性改善効果が不十分となる場合があり、含有量が5重量部を超える場合は、機械的物性が低下することがある。また、これらの安定剤は2種以上を併用してもよい。
また、本発明の樹脂組成物には、衝撃強度をより向上させるため、エラストマーを添加することも可能である。エラストマーとしては、例えば、ポリオレフィン系エラストマー、ジエン系エラストマー、ポリスチレン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、フッ素系エラストマー、シリコン系エラストマー等が挙げられる。これらの中では、ポリオレフィン系エラストマー又はポリスチレン系エラストマーが好ましい。これらのエラストマーは、ポリアミドとの相溶化のための変性を行って使用するとその効果が一層高まる。酸(好ましくはマレイン酸または無水マレイン酸)による変性、エポキシ変性などは、本発明の樹脂組成物には適した変性である。エラストマーの含有量は、成分(A)及び成分(B)の合計100重量部に対し、通常0.5〜20重量部、好ましくは0.5〜10重量部である。
本発明の樹脂組成物の製造方法は、特に限定されるものではなく、通常、上記の成分(A)、(B)及び(C2)と、更に、必要に応じて添加される成分(C1)及びその他の添加剤を所定量配合し、溶融混練することにより製造される。溶融混練の方法は、公知の如何なる方法であってもよい。例えば、単軸や2軸の押出機、バンバリーミキサー又はこれに類似した装置を使用し、一括で押出機の根元から全ての材料を投入し溶融混練してペレットを製造することが出来る。また、成分(A)と成分(B)及び必要に応じて添加されるその他の成分を投入して溶融しながら、成分(C2)及び必要な場合は成分(C1)をサイドフィードして混練する方法、成分(A)、(B)、(C2)及び必要に応じて添加されるその他の成分を投入して溶融しながら、必要な場合は成分(C1)をサイドフィードして混練する方法なども採用し得る。また、添加剤や組成が異なる2種以上のコンパウンド物をペレットブレンドし、本発明で規定する組成範囲内の樹脂組成物ペレットブレンド物を製造する方法、または、一部の粉末成分や液体成分を別途ブレンドする方法も採用し得る。
<成形品およびその製造方法>
本発明の樹脂組成物は、熱可塑性樹脂組成物について一般に使用される成形法、すなわち、射出成形法、中空成形法、押出成形法などによって、各種成形品にすることが出来る。流動性および機械的特性に優れていることから、特に、射出成形法による薄肉成形品として有用である。得られた薄肉成形品は、高い耐衝撃特性と剛性を併せ持つ上、異方性が小さく、反りが小さいという特長を有しているため、電子手帳、PAD等の携帯用コンピューター、ポケットベル、携帯電話、PHS等の携帯電子機器に使用される内部構造物や筐体などの部品であって、特に、板形状の部品に適している。
なお、本発明でいう板形状とは、全体として薄い板形状であるものを指し、断面が少しカーブしたり、湾曲していてもよい。また、機能性やデザインのために、凹凸、窓、穴などを施したものであってもよい。特に、上記のような携帯用電子機器の製品形状は薄型であり、内部構造物や筐体などの部品も、リブ部分やヒンジ部分を除けば略板形状と言えるものが多い。例えば、折りたたみ式携帯電話筐体の場合は、リブ部分とヒンジ部を除けば全体の形状は略板状である。この部品には更に多数の穴やボス等が存在する場合もあるが、本発明では、そのような部分が全体の面積の50%未満であれば板形状であるとする。中でも、リブ、ボス、ヒンジ部を除く部分の平均肉厚が1.2mm以下の平板形状である部品は、低反り性が望まれるため、本発明の樹脂組成物が好適である。中でも、携帯電子機器内部に組み込まれる内部構造部品を支える平板(基盤)には、本発明の樹脂組成物が特に適している。
また、本発明の樹脂組成物は、結晶化性能に優れているため、例えば、本発明の樹脂組成物を使用し、射出成形によって携帯電子機器部品を製造する場合、通常は十分な結晶性を得難い金型温調機温度、具体的には130℃未満、更には110℃未満、更には90℃未満の低い金型温調機温度条件で成形した場合でも、結晶性が十分高い、具体的には、結晶化度28%以上の部品を製造することが可能である。特に、部品の肉厚が薄い場合、具体的には肉厚が1.2mm以下の場合、この傾向は顕著である。
本発明の携帯電子機器部品にEMIシールド性が求められる場合には、繊維状フィラー(C1)として、カーボン繊維、金属繊維、または、金属メッキされたガラス繊維、カーボン繊維、若しくは、有機繊維を使用することが好ましい。また、本発明の携帯電子機器部品に、導電塗装、金属メッキ又は金属蒸着を施すことによってEMIシールド性を付与することも出来る。
以下に本発明を実施例および比較例により更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、これらの例により何ら限定されるものではない。以下の例で使用した材料は以下の通りである。
(A−1)ポリアミドMP:以下の製造例に従って製造した。
撹拌装置、温度計、還流冷却器、原料滴下装置、加熱装置などを装備した容量が3リットルのフラスコに、アジピン酸730gを仕込み、窒素雰囲気下、フラスコ内温を160℃に昇温してアジピン酸を溶融させた。フラスコ内に、パラキシリレンジアミンを30モル%、メタキシリレンジアミンを70モル%含有する混合キシリレンジアミン680gを、約2.5時間かけて逐次滴下した。この間、撹拌下、内温を生成物の融点を常に上回る温度に維持して反応を継続し、反応の終期には270℃に昇温した。反応によって発生する水は、分縮器によって反応系外に排出させた。滴下終了後、275℃の温度で攪拌し反応を続け、1時間後反応を終了した。生成物をフラスコより取り出し、水冷しペレット化した。得られたポリアミド樹脂は、融点258℃、結晶化温度が216℃、相対粘度(96%硫酸溶液中、濃度1g/100ml、23℃で測定)が2.08であった。
(A−2)ポリアミドMXD6:三菱瓦斯化学(株)製品、商品名「ポリアミドMXD6#6000」、メタキシリレンジアミンとアジピン酸から製造されたポリアミド樹脂、融点243℃、結晶化温度206℃、相対粘度2.14
(B−1)ポリアミド66:デュポン社製品、商品名「ザイテル101」、融点264℃、相対粘度3.0
(B−2)ポリアミド6:三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製品、商品名「ノバミッド(登録商標)1007J」、融点225℃、相対粘度2.14
(B−3)ポリアミド46:DSM社製、商品名「Stanyl」、融点295℃
(C1)ガラス繊維:チョップドストランド、旭ファイバーグラス社製、商品名「CS03JAFT2」、平均繊維径10μm、平均繊維長3mm(メーカー公称値)
(C2−1)ガラスフレーク:日本板硝子社製、商品名「フレカREFG−301」、平均粒子径約600μm(メーカー公称値)。
(C2−2)マイカ(金雲母):林化成社製、商品名「マイカB82」、平均粒子径82μm(メーカー公称値)
(C2−3)タルクA:林化成社製、商品名「ミクロンホワイト5000A」、平均粒子径4.1μm(メーカー公称値)
(C2−4)タルクB:林化成社製、商品名「ミセルトン」、平均粒子径1.4μm(メーカー公称値)
離型剤:モンタン酸エステルワックス、クラリアントジャパン社製、商品名「Licowax E」
実施例1〜9及び比較例1〜16:
(1)樹脂組成物ペレットの作成:
後記の表1〜3に示す組成となるように、繊維状フィラー(C1)を除く各成分を秤量し、タンブラーにてブレンド後、東芝機械社製二軸押出機「TEM35B(バレル10ブロック構成)」の根元から投入し、溶融した。その後、ホッパー側から数えて7番目のブロックから成分(C1)をサイドフィードして樹脂組成物ペレットを作成した。押出機の温度設定は一律280℃とした。
(2)曲げ強度、曲げ弾性率、シャルピー衝撃強度の評価:
<ISO試験片の成形>
上記の方法で得られた各樹脂組成物のペレットを80℃で48時間乾燥した後、ファナック社製射出成形機「100T」を使用し、シリンダー温度280℃、金型温調機温度130℃、射出時間20秒、冷却時間15秒の条件で、約95%樹脂充填時にVP切替とし、保圧はバリの出ない範囲で高めの620kgf/cm×25秒とし、ISO試験片を成形した。得られたISO試験片は、曲げ試験、シャルピー衝撃試験に供するため、ISOに記載の方法に準拠し、両端切断とノッチカットを行った。
<評価>
上記で得られた評価用試験片を使用し、ISO178規格に準じて曲げ強度と曲げ弾性率を、ISO179規格に準じてノッチ付きシャルピー衝撃強度を測定した。結果を表1〜3に示した。曲げ強度が150MPa以上、曲げ弾性率が10GPa以上、ノッチ付きシャルピー衝撃強度が2MPa以上であることが、本発明の成形品において所望の性能である。
(3)反り性の評価:
<評価用成形品の成形>
上記の方法で得られた各樹脂組成物ペレットを80℃で48時間乾燥した後、ファナック社製射出成形機「100T」を使用し、シリンダー温度280℃、保圧620kgf/cm×25秒、射出時間15秒、冷却時間30秒の条件で、金型温調機温度を80℃、100℃、130℃に変化させ、計量値およびVP切替位置を調節しながら、100×100mmで厚みの1mmの金型のキャビティに、一辺100mm、厚み0.8mmのファンゲートから樹脂を充填し、以下の評価用成形品を成形した。
<反り性の評価>
上記の評価用成形品を冷却後、ゲート部分をカットしないまま金型から外した成形品を、25℃、湿度65%の条件で一昼夜放置した。その後、当該成形品を水平な面に置き、ファンゲート側を基準とし、これと反対側の端面の高さを浮き上がりの高さとし、以下の基準により評価した。評価結果を表1〜3に示した。
○:浮き上がりの高さ≦0.5mm
△:0.5mm<浮き上がりの高さ≦2.0mm
×:2.0mm<浮き上がりの高さ
(但し、表中の符号「−」は、次の離型性の評価において「×」又は「△」であったため、反り性の評価を行わなかったことを意味する。)
(4)離型性の評価:
上記の(3)における評価用成形品の成形条件と同一条件で成形を行った際の、エジェクト時の離型について以下の基準により評価した。評価結果を表1〜3に示した。
○:特に問題のない場合
△:変形しながらも離型可能な場合
×:成形品のエジェクタ接触部がエジェクタにより突き破られるか又は大変形し、型に 貼り付いたため人手で引き剥がさなければならなかった場合
(4)結晶性の評価:
結晶性はDSCにより得られる結晶化度で評価した。DSCでは、昇温により材料を溶融させたり、気化させる際に、当該材料の熱量の発生または吸収を観察することにより、融点、熱量、結晶化の状態を調べることが出来る。以下の方法により、評価した。
上記の(3)における評価用成形品の成形条件と同一条件を採用し、金型温調機温度を80℃、100℃、130℃に変化させて得られた成形品の中央部から約10mgの成形品を切り出し、得られた成形品をDSCで30℃から300℃まで昇温し、昇温時の発熱ピークと吸熱ピークの熱量を求め、以下の式(1)により結晶化度を求めた。
結晶化度(%)=(吸熱ピークの熱量(J/g)−発熱ピークの熱量(J/g))/(各樹脂組成における理論融解熱量(J/g))×100・・・(1)
なお、本発明における理論融解熱量の測定法は次の通りである。すなわち、様々な結晶化度を有するポリアミド樹脂の融点における吸熱ピーク熱量を、それぞれ、DSCにより測定し、得られた吸熱ピーク熱量と結晶化度を2軸にプロットして検量線を作成し、検量線の結晶化度100%外挿点における熱量を理論融解熱量とした。なお、DSC測定に使用したポリアミド樹脂の結晶化度は、一般に使用されている密度勾配管法を採用し、JIS K7112規格に準拠して測定した。
結晶化度が28%以上の場合は、成形品の結晶化が十分進んでいると判断される。結晶化度が25%以上28%未満の場合は、成形品の結晶化がやや不足するが、実成形品としては問題ないと判断される。結晶化度が15%以上25%未満の場合は、成形品の結晶化が不十分であり、実成形品としては問題ありと判断される。結晶化度が15%未満の場合は、成形品は殆ど結晶化しておらず、実成形品として使用できないと判断される。
結果を表1〜3に示した。
<バリ性の評価>
上記の(3)における評価用成形品の成形条件と同一条件を採用し、金型温調機温度を80℃、100℃、130℃に変化させて得られた成形品のバリの有無を目視観察した。バリが存在する場合は、ファンゲート側から樹脂流動方向へ10mmの領域内に存在するバリの最大長をノギスで測定し、下記基準により評価した。結果を表1〜3に示した。
◎:バリなし
○:主にファンゲート近傍にバリが存在し、バリの長さ≦100μm
△:主にファンゲート近傍にバリが存在し、100μm<バリの長さ≦500μm
×:主にファンゲート近傍にバリが存在し、500μm<バリの長さ
××:成形品全面にバリが存在
Figure 2008007753
Figure 2008007753
Figure 2008007753
結果より、以下のことが分かる。
(1)ポリアミドMP、ポリアミド66、フィラーの含有量が本発明で規定する範囲内である実施例1〜9は、剛性、耐衝撃性、離型性、成形品の結晶性、低反り性能に優れており、バリの発生も殆どない。
(2)実施例1〜8のポリアミドMPの代わりにポリアミドMXD6を使用し、ポリアミドMXD6とポリアミド66の含有量が本発明で規定する範囲内である比較例1〜8は、実施例1〜8よりも薄肉成形品の結晶性が劣り、バリも発生し易い傾向にある。結晶性の低下は、特に、低い金型温度で成形した場合に大きい。
(3)ポリアミドMPとポリアミド66の含有比率が本発明で規定する範囲内であるが、繊維状フィラーと板状フィラーの含有比率が本発明で規定する範囲外である比較例9は、ポリアミドMPとポリアミド66の組成比が等しく、フィラー含有量も同程度であり、繊維状フィラーと板状フィラーの含有比率が本発明で規定する範囲内である実施例1〜3に比べ、成形品の反り性が低下する。
(4)ポリアミドMPの代わりにポリアミドMXD6を使用し、ポリアミドMXD6とポリアミド66の含有量が本発明で規定する範囲外である比較例10〜12は、離型性、薄肉成形品の反り性、結晶性が劣り、バリが発生し易い。特に金型温度が低い場合は成形品の結晶性が低い。
(5)また、実施例1と比較例13及び14を比較すると、ポリアミド樹脂としてポリアミドMPとポリアミド66を併用することにより、成形品の結晶性が向上し、バリの発生も低減することが分かる。結晶性の向上は、特に、低い金型温度で成形した場合に顕著である。
(6)ポリアミド66の代わりに融点225℃であるポリアミド6を配合した比較例15及び16は、実施例1及び3に比べ、成形品の結晶性、反り性およびバリ性が劣る。
以上のように、ポリアミドMPとポリアミド66の含有比率が本発明で規定する範囲内で、かつ、板状のフィラー使用した場合、好ましくは、繊維状と板状のフィラーを特定の比率で併用した場合に、本発明の目的を達成できることが分かる。
本発明により、樹脂組成物の結晶化速度、薄肉成形性を向上させることが出来、130℃に至らない低い金型温度での薄肉成形が可能であり、且つ、バリの発生が少なくバリ取り工程が省略でき、低コストでの生産が可能となる。本発明の樹脂組成物は、携帯電子機器部品に要求される高い剛性と耐衝撃性に加え、優れた低反り性能を有しているため、内部に回路基盤を持つ携帯電子機器部品用途、例えば、PDA、携帯ゲーム機、携帯電話、IDカード、自動車用の電子キー等に好適である。

Claims (11)

  1. ポリアミドMP(A)30〜80重量%、融点245℃以上のポリアミド樹脂(B)20〜70重量%を含有し(両者の合計量は100重量%である)、更に、フィラー(C)として、任意成分としての繊維状フィラー(C1)と必須成分としての板状フィラー(C2)を含有し、繊維状フィラー(C1)と板状フィラー(C2)の含有比率(C1):(C2)が0:10〜9:1であり、フィラー(C)の含有量が上記のポリアミドMP(A)及びポリアミド樹脂(B)の合計100重量部に対して30〜250重量部であり、上記のポリアミドMP(A)が、メタキシリレンジアミンを90〜50モル%と、パラキシリレンジアミンを10〜50モル%とを含む混合ジアミンと、α,ω−直鎖脂肪族二塩基酸及び/又は芳香族二塩基酸との重縮合反応により得られるポリアミド樹脂であることを特徴とするポリアミド樹脂組成物。
  2. 繊維状フィラー(C1)と板状フィラー(C2)の含有比率(C1):(C2)が0:10〜9:2である、請求項1に記載のポリアミド樹脂組成物。
  3. 融点245℃以上であるポリアミド樹脂(B)がポリアミド66である、請求項1又は2に記載のポリアミド樹脂組成物。
  4. 繊維状フィラー(C1)が、ガラス繊維、炭素繊維、無機化合物ウィスカーの群から選ばれた少なくとも1種である、請求項1〜3の何れかに記載のポリアミド樹脂組成物。
  5. 板状フィラー(C2)が、ガラスフレーク、マイカ、タルクの群から選ばれた少なくとも1種である、請求項1〜4の何れかに記載のポリアミド樹脂組成物。
  6. 繊維状フィラー(C1)がガラス繊維、板状フィラー(C2)がガラスフレークである、請求項1〜3の何れかに記載のポリアミド樹脂組成物。
  7. 携帯電子機器用途である、請求項1〜6の何れかに記載のポリアミド樹脂組成物。
  8. 請求項1〜7の何れかに記載のポリアミド樹脂組成物を成形して成ることを特徴とする成形品。
  9. 成形品が平板形状であり、リブ、ボス、ヒンジ部を除く部分の平均肉厚が1.2mm以下である、請求項8に記載の成形品。
  10. 結晶化度が28%以上である、請求項8又は9に記載の成形品。
  11. 金型温調機温度が90℃未満の条件で成形される工程を含むことを特徴とする、請求項8〜10の何れかに記載の成形品の製造方法。
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