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JP2008007457A - β−ヒドロキシカルボニル化合物の後処理方法 - Google Patents

β−ヒドロキシカルボニル化合物の後処理方法 Download PDF

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JP2008007457A JP2006179613A JP2006179613A JP2008007457A JP 2008007457 A JP2008007457 A JP 2008007457A JP 2006179613 A JP2006179613 A JP 2006179613A JP 2006179613 A JP2006179613 A JP 2006179613A JP 2008007457 A JP2008007457 A JP 2008007457A
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Yujiro Hayashi
雄二郎 林
Mitsuru Shoji
満 庄司
Tatsunori Sumiya
龍展 角谷
Seishi Aratake
誠士 荒武
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Tokyo University of Science
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Tokyo University of Science
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Abstract

【課題】抽出、分液操作などを行う必要がなく、有機溶媒の使用量を少なくすることができ、環境に優しく、実用的な後処理方法を提供すること。
【解決手段】ケトンとアルデヒドとを、またはアルデヒドとアルデヒドとを、触媒の存在下、水溶媒あるいは有機溶媒を用いて、または溶媒を用いないで反応させて、β-ヒドロキシカルボニル化合物を製造した後、水を加え有機層を洗浄した後、前記水を除去し、蒸留、または再結晶により、前記β-ヒドロキシカルボニル化合物を取り出すβ-ヒドロキシカルボニル化合物の後処理方法である。
【選択図】なし

Description

本発明は、アルドール反応により製造されたβ−ヒドロキシカルボニル化合物の後処理方法に関し、特に、溶媒に水、あるいは極少量の溶媒を用いて反応させてなる、または溶媒を用いずに反応させてなるアルドール反応により製造されたβ−ヒドロキシカルボニル化合物の後処理方法に関する。
アルドール反応はβ−ヒドロキシカルボニル化合物を製造する優れた反応である。β−ヒドロキシカルボニル化合物は、多くの有用な生物活性化合物、医薬品、農薬などの基本骨格に見られる重要な光学活性合成中間体である。
光学活性アルドール体の優れた製造方法として、不斉触媒アルドール反応がある。これまでの方法として、下記の非特許文献1、2には、ケトンあるいはエステルを一旦シリルエノールエーテル、あるいは、ケテンシリルアセタールに導き、光学活性なルイス酸触媒を作用させる方法が開示されている。
下記の非特許文献3にはプロリンのカルボン酸部位をスルホンアミドで置換した誘導体がアセトンとニトロベンズアルデヒドのアルドール反応において98%eeと非常に高い不斉収率を得ることできることが開示されている。また、アミド部位を改変した触媒について、Wu等は、ジフェニルアミノエタノール部位を有するプロリンアミドを用いたときに非常に高い不斉収率を与えることが、下記の非特許文献4に開示されている。
非特許文献5には、水と有機溶媒の混合系で行う反応として、シリルエノールエーテルを用い、光学活性なルイス酸触媒を活性化剤にする反応において、高い光学収率で付加体が得られることが開示されている。
Modern Aldol Reactions Vols 1,2;Mahrwald, R. Ed,; Wiley-VCH: Weinheim, 2004. Comprehensive Asymmetric Catalysis I-III; Jacobsen, E. N.; Pfaltz, A.;Yamamoto, H. Eds.; Springer: Berlin, 1999. A. Berkessel, B. Koch, . Lex, Adv. Synth. Catal., 346, 1141 (2004) Z. Tang, F. Jiang, X. Cui, L. Gong, A. Mi, Y. Jiang, Y. Wu, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 101, 5755 (2004) Hamada, T.; Manabe, K.; Ishikawa, S.; Nagayama, S.; Shiro, M.; Kobayashi, S. J. Am. Chem. Soc. 2003, 125, 2989
しかし、非特許文献1から5の反応において、用いることのできる反応溶媒は、DMSO(ジメチルスルホキシド)、DMF(ジメチルホルムアミド)、NMP(1−メチル−2−ピロリドン)、CHCN(アセトニトリル)などの極性溶媒に限られていた。また、これらの極性有機溶媒を用いると反応終了後に、抽出、分液操作をしなくてはならなかった。また、水層に溶媒が混入するため、水層の処理の問題も生じていた。
本発明は以上のような課題に鑑みてなされたものであり、抽出、分液操作などを行う必要がなく、有機溶媒の使用量を少なくすることができる。さらに、有機溶媒の使用量を抑えるため、環境に優しく、実用的な後処理方法を提供することを目的としている。
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、溶媒に水を用いる、あるいは、水を用いないアルドール反応において、触媒および溶剤を、シリカゲルあるいはカラムクロマトグラフィーにより、あるいは有機層を水で洗浄することにより除去することで、β−ヒドロキシカルボニル化合物を、抽出、分液操作をすることなく、取り出すことができることを見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には、本発明は以下のものを提供する。
(1) ケトンとアルデヒドとを、またはアルデヒドとアルデヒドとを、触媒の存在下、水溶媒あるいは有機溶媒を用いて、または溶媒を用いないで反応させて、β−ヒドロキシカルボニル化合物を製造した後、水を加え有機層を洗浄した後、前記水を除去し、蒸留、または再結晶により、前記β−ヒドロキシカルボニル化合物を取り出すβ−ヒドロキシカルボニル化合物の後処理方法。
本発明の後処理方法によれば、反応終了後に、水を加え、水で有機層を洗浄することで、触媒を洗浄液である水層に含ませることができる。そのため、その後、水層をピペットまたは分液操作により、有機層と水層を分離することで、容易に、β−ヒドロキシカルボニル化合物が溶解した有機層とを分離することができる。したがって、抽出操作を行わなくても、目的の化合物を取り出すことができ、有機溶媒の使用量を抑えることができる。
また、抽出操作を行わないため、抽出液に乾燥剤を添加し、濾過する工程を省略することができるため、操作の簡略化を図ることができる。
(2) 前記有機溶媒が、ケトンまたはアルデヒドに対して、5当量以下である(1)記載のβ−ヒドロキシカルボニル化合物の後処理方法。
この態様によれば、有機溶媒の量が、反応生成物より若干多い程度あるいはそれ以下であるため、水を除去した後、容易に、蒸留または再結晶により取り出すことができる。有機溶媒の量としては、ケトンまたはアルデヒドに対して、5当量以下であることが好ましく、より好ましくは、3当量以下である。
(3) ケトンとアルデヒドとを、またはアルデヒドとアルデヒドとを、触媒の存在下、水溶媒中または溶媒を用いないで反応させてβ−ヒドロキシカルボニル化合物を製造した後、シリカゲルを加え、前記水および前記触媒をシリカゲルに吸着させた後、シリカゲルを除去し、蒸留、または再結晶により、前記β−ヒドロキシカルボニル化合物を取り出すβ−ヒドロキシカルボニル化合物の後処理方法。
本発明の後処理方法によれば、触媒と水溶媒を、シリカゲルを用いて除去することができるため、濾過、有機溶剤で洗浄することにより生成物の溶液を製造することができる。したがって、蒸留、あるいは、再結晶により濾過に用いた有機溶剤を除去することで、抽出操作、分液操作などを行う必要がなく、容易に目的物を得ることができる。
(4) ケトンとアルデヒドとを、またはアルデヒドとアルデヒドとを、触媒の存在下、水溶媒中または溶媒を用いないで反応させてβ−ヒドロキシカルボニル化合物を製造した後、カラムクロマトグラフィーにより前記β−ヒドロキシカルボニル化合物を取り出すβ−ヒドロキシカルボニル化合物の後処理方法。
本発明の後処理方法によれば、反応後、カラムクロマトグラフィーにより触媒を除去することができる。したがって、生成物のみを容易に得ることができる。
(5) 前記触媒が、下記一般式(9−1)から(9−10)で表される化合物である(1)から(4)いずれか記載のβ−ヒドロキシカルボニル化合物の後処理方法。
Figure 2008007457
(式中Rは、アルキル基、またはアリール基を示す。なお、それぞれのRは同一または異なっていてもよい。Rは、アルキル基、アリール基、アシル基、トリアルキルシリル基、ジアルキルアリールシリル基、またはアルキルジアリールシリル基を示す。Rは、アルキル基、またはアリール基を示す。Rは、官能基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、または置換基を有してもよいヘテロアリール基を示す。nは1から15の整数を示す。)
この態様によれば、上記触媒を用いることにより、溶媒に水、あるいは極少量の溶媒を用いて反応させてなる、または溶媒を用いずに反応させてなるアルドール反応を収率よく、さらに、高いエナンチオ選択性、ジアステレオ選択性を得ることができるため、本発明の後処理方法を好適に用いることができる。
本発明のβ−ヒドロキシカルボニル化合物の後処理方法によれば、分液操作、抽出操作を行うことなく、化合物を取り出すことができるため、反応の効率化を図ることができる。また、有機溶媒の使用量を少なくすることができため、環境に優しく、実用的な製造方法を提供することができる。
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
<第1実施形態>
本発明の第一実施形態の後処理方法は、ケトンとアルデヒドとを、またはアルデヒドとアルデヒドとを、触媒の存在下で反応させて、β−ヒドロキシカルボニル化合物を製造した後、水を加え有機層を洗浄した後、前記水を除去し、蒸留、または再結晶により、前記β−ヒドロキシカルボニル化合物を取り出すβ−ヒドロキシカルボニル化合物の後処理方法である。
[β−ヒドロキシ化合物の製造工程]
β−ヒドロキシ化合物は、下記一般式(1)で表されるケトンと、下記一般式(2)で表されるアルデヒドとを、触媒(10)の存在下で反応させて製造される。
Figure 2008007457
一般式(1)で表されるケトンは、特に限定されず、通常用いられるケトンを用いることができるが、R11およびR12は、置換基を有していてもよいアルキル基、アルケニル基、またはアルキニル基であることが好ましい。また、R11とR12が一緒になって環を形成していてもよい。また、一般式(2)で表されるアルデヒドは、特に限定されず、通常用いられるアルデヒドを用いることができるが、R13は、置換基を有していてもよいアリール基、ヘテロ環、アルキル基、アルケニル基またはアルキニル基であることが好ましい。
また、下記一般式(4)で表されるアルデヒドと、下記一般式(5)で表されるアルデヒドとを、触媒(10)の存在下で反応させて製造することもできる。
Figure 2008007457
一般式(4)で表されるアルデヒドは、特に限定されず、通常用いられるアルデヒドを用いることができるが、R14は、置換基を有していてもよいアルキル基、アルケニル基、またはアルキニル基であることが好ましい。また、一般式(5)で表されるアルデヒド、としては、上述した一般式(2)で表されるアルデヒドと同様のアルデヒドを用いることができる。
上記反応に用いる触媒としては、下記式(9−1)から(9−10)で表される化合物を使用することができる。
Figure 2008007457
式中、Rはアルキル基、またはアリール基を示す。アルキル基は、炭素数1から20の直鎖状または分岐状のアルキル基であることが好ましく、アリール基は、フェニル基、または炭素数1から20の直鎖状または分岐状のアルキル基を有するアリール基であることが好ましい。また、それぞれのRは同一または異なっていてもよい。
はアルキル基、アリール基、アシル基、トリアルキルシリル基、ジアルキルアリールシリル基、またはアルキルジアリールシリル基を示す。アルキル基は、炭素数1から20の直鎖状または分岐状のアルキル基であることが好ましく、アリール基は、フェニル基、または炭素数1から20の直鎖状または分岐状のアルキル基を有するアリール基であることが好ましい。また、アシル基の炭素数は、1から20であることが好ましい。また、トリアルキルシリル基、ジアルキルアリールシリル基、またはアルキルジアリールシリル基のアルキル基、アリール基としては、Rと同様のアルキル基、アリール基を挙げることができる。
は水素、アルキル基、またはアリール基を示す。アルキル基は、炭素数1から20の直鎖状または分岐状のアルキル基であることが好ましく、アリール基は、フェニル基、または炭素数1から20の直鎖状または分岐状のアルキル基を有するアリール基であることが好ましい。
はアルキル基、またはアリール基を示す。アルキル基は、炭素数1から20の直鎖状または分岐状のアルキル基であることが好ましく、アリール基は、フェニル基、または炭素数1から20の直鎖状または分岐状のアルキル基を有するアリール基であることが好ましい。
は、官能基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、または置換基を有してもよいヘテロアリール基を示す。官能基としては、例えば、アルコキシ基またはアシル基を挙げることができる。また、置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、メトキシ基、または、ハロゲン原子で置換されたアルキル基を挙げることができる。ハロゲン原子で置換されたアルキル基としては、例えば、トリフルオロメチル基を挙げることができる。また、アルキル基の炭素数は、1から20であることが好ましく、アリール基は、フェニル基、または炭素数1から20のアルキル基を有するアリール基であることが好ましい。さらに、Rは、フェニル基または3,5−ビストリフルオロフェニルであることが好ましい。また、それぞれのRは同一または異なっていてもよい。
さらに、触媒は水への溶解性および、反応点であるアミンと酸性プロトン、脂溶性部位との立体的位置関係の観点から下記式(11)から(34)で表される触媒であることが好ましい。
Figure 2008007457
上記触媒は、例えば、以下に示す方法で製造することができる。出発原料である3−ヒドロキシプロリンあるいは、4−ヒドロキシプロリンにシリル化剤と塩基を加え、アルコールのシリル化を行い、一段階で触媒(11)、(12)および(13)を得ることができる。
触媒(11)から(13)および(20)から(25)は、例えば、以下に示す方法で製造することができる。出発原料である3−ヒドロキシプロリンあるいは、4−ヒドロキシプロリンにベンジルオキシカルボニル化反応試剤、例えばベンジルオキシカルボニルクロリドを塩基性条件下作用させ、窒素原子をベンジルオキシカルボニル基(Z基、Cbz基)で保護する。ベンジル化剤、例えばベンジルクロリドと、塩基を加え、カルボン酸をベンジルエステルとする。アミン塩存在下、シリル化剤、例えばシリルクロリドを加え、水酸基をシリル化する。得られた化合物に接触水素化を行い脱保護することにより、触媒(11)から(13)および(20)から(25)を得ることができる。
また、触媒(14)から(19)は、出発原料である4−ヒドロキシプロリンにベンジルオキシカルボニル化反応試剤、例えばベンジルオキシカルボニルクロリドを塩基性条件下作用させ、窒素原子をZ基で保護する。ベンジル化剤、例えばベンジルクロリドと、塩基を加え、カルボン酸をベンジルエステル化する。塩基存在下、アシル化剤、例えばアシルクロリドを作用させ、エステルを得る。得られた化合物に接触水素化を行い脱保護することにより、触媒(14)から(19)を得る。
触媒(26)から(28)は、出発原料である4−ヒドロキシプロリンにベンジルオキシカルボニル化反応試剤、例えばベンジルオキシカルボニルクロリドを塩基性条件下作用させ、窒素原子をZ基で保護する。カルボン酸に塩基存在下、例えば、クロロ蟻酸エステルを作用させた後、引き続きアンモニアを作用させ、アミドを得る。アミドを例えば、塩基存在下、ホスホラスオキシクロリドを作用させ、ニトリルを得る。ニトリルに例えば、アジ化ナトリウムを作用させ、テトラゾールに変換する。得られた化合物に接触水素化を行い、脱保護する事により、触媒(26)から(28)を得ることができる。
一般式(9−7)で表される触媒は、プロリンにベンジルオキシカルボニル化反応試剤、例えばベンジルオキシカルボニルクロリドを塩基存在下作用させ、窒素原子をZ基で保護する。次に縮合剤と塩基存在下、p−ニトロフェノールを作用させ、カルボン酸をp−ニトロフェノールのエステルに導く。この際縮合剤としては例えば、DCC(1,3−ジシクロへキシルカルボジイミド)等を用い、塩基としてはピリジンを用いる。この活性エステルに塩基存在下、対応するスルホン酸アミドを作用させる。この際、塩基としては例えば、水素化ナトリウムを用いる。得られたスルホン酸アミドに接触水素化を行い、Z基を脱保護することにより、一般式(9−7)で表される触媒を得ることができる。
上記触媒の製造に用いられるベンジルオキシカルボニル化反応試剤としては、ベンジルオキシカルボニルクロリドの他にベンジルシアノホルメイト、ジベンジルカーボナートなどを用いることができる。接触水素化にも用いられる触媒としては、パラジウム−カーボン触媒、水酸化パラジウム触媒などを用いることができる。
また、上記触媒の製造方法においては、窒素の保護にベンジルオキシカルボニル基(Z基)を用いているが、t−ブトキシカルボニル基(Boc基)を用いることができる。この場合の試剤としてはジ−t−ブチルジカーボナート等を用いることができる。Boc基を用いた場合は、接触水素化ではなく、酸による脱保護により製造することができる。
β−ヒドロキシカルボニル化合物の製造方法において、反応温度は−20℃から50℃、反応時間1時間から48時間で反応させ、溶媒として、水、有機溶媒、または溶媒を用いないで反応させることができる。有機溶媒としては、ヘキサン、CHCl(ジクロロメタン)、AcOEt(酢酸エチル)、THF(テトラヒドロフラン)、トルエン、ベンゼン、EtO(ジエチルエーテル)、CHCl(クロロホルム)、ジオキサン、DME(ジメトキシエタン)、アセトニトリル等を用いることができる。また、有機溶媒の量としては、原料であるケトンまたはアルデヒドに対して、5当量以下であることが好ましい。
[水添加工程]
β−ヒドロキシカルボニル化合物の製造後、水を反応液に添加し、有機層を水で洗浄することにより、触媒を洗浄液である水層に含ませることができる。水の添加量としては、触媒が溶解でき、水層と有機層が分離できる量を添加すればよく、例えば、反応液に対して、10質量%以上200質量%以下の範囲で添加することが好ましい。
水で洗浄することにより、触媒を水に溶解させることができるため、β−ヒドロキシカルボニル化合物のみが溶解した有機層を容易に取り出すことができる。また、反応溶媒として水を用いた場合、水の量が少量であると、反応終了後、水が反応溶液中に分散しているため、水を添加することで、有機層と水層の分離を行うことができる。
[水除去工程]
次に、反応溶液中から、水の除去を行う。除去方法としては、従来公知の方法により行うことができる。例えば、分液ロートを用いて分液する、ピペットなどを用いて、水層を取り除くこともできる。これにより、反応に用いた触媒などを除去することができ、従来のように、有機層を有機溶媒にて、抽出および分液操作を行う必要がなく、β−ヒドロキシカルボニル化合物が溶解した有機層を得ることができる。したがって、有機層を下記の単離工程により、容易に取り出すことができる。
[単離工程]
次に、分液工程により得られた有機層から、蒸留または再結晶を行いβ−ヒドロキシカルボニル化合物を単離する。生成されたβ−ヒドロキシカルボニル化合物が溶液の場合は、蒸留により取り出す。また、β−ヒドロキシカルボニル化合物が結晶の場合は、再結晶により取り出すことが好ましい。
蒸留方法としては、特に限定されず、従来公知の方法により蒸留することができる。蒸留の条件としては、原料、生成されたβ−ヒドロキシカルボニル化合物および濾過で用いた有機溶媒により適宜選択され用いることができる。
また、再結晶の方法についても、特に限定されず、従来公知の方法により行うことができる。具体的には、β−ヒドロキシカルボニル化合物を、例えば、濾過に用いることができる溶剤に溶解し、融点以上の温度からβ−ヒドロキシカルボニル化合物が析出する温度まで、冷却することによりβ−ヒドロキシカルボニル化合物を析出させる。析出したβ−ヒドロキシカルボニル化合物を濾過あるいは遠心分離によって得た後、乾燥し、溶媒を除去することによりβ−ヒドロキシカルボニル化合物を取り出すことができる。
<第2実施形態>
本発明の第2実施形態の後処理方法は、ケトンとアルデヒドとを、またはアルデヒドとアルデヒドとを、触媒の存在下、水溶媒中または溶媒を用いないで反応させてβ−ヒドロキシカルボニル化合物を製造した後、シリカゲルを加え、前記水および前記触媒をシリカゲルに吸着させた後、シリカゲルを除去し、蒸留、または再結晶により、前記β−ヒドロキシカルボニル化合物を取り出すβ−ヒドロキシカルボニル化合物の後処理方法である。
[製造工程]
β−ヒドロキシカルボニル化合物の製造方法としては、水溶媒中または溶媒を用いないで行う以外は、第1実施形態と同様の原料、触媒を用いて行うことができる。また、アルデヒド、ケトンの溶解性を向上させるため、少量の有機溶剤を添加することもできる。有機溶剤としては、ヘキサン、CHCl(ジクロロメタン)、AcOEt(酢酸エチル)、THF(テトラヒドロフラン)、トルエン、ベンゼン、EtO(ジエチルエーテル)、CHCl(クロロホルム)、ジオキサン、DME(ジメトキシエタン)、アセトニトリル等を用いることができる。
[吸着工程]
β−ヒドロキシカルボニル化合物の製造後、シリカゲルを反応溶液に添加し、水溶媒、触媒をシリカゲルに吸着させる。シリカゲルの添加量は反応溶液に対して質量比で2%以上100%以下、より好ましくは5%以上30%以下であることが好ましい。上記範囲とすることで、水および触媒を充分に吸着することができる。
[濾過工程]
次に濾過により、シリカゲルの除去を行う。濾過の方法は、特に限定されず、従来公知の方法により濾過を行うことができる。例えば、ヌッチェ式濾過装置、加圧濾過装置などにより濾過することができる。また、濾過工程での温度は、特に、限定されず、任意の温度で行うことができる。
濾過工程において、濾過を容易に行い、また、シリカゲルに吸着した生成物であるβ−ヒドロキシカルボニル化合物を溶出するため、有機溶剤を用いて行う。用いる有機溶剤としては、生成物であるβ−ヒドロキシカルボニル化合物を溶解することができれば、特に限定されず、酢酸エチル、エーテル、クロロホルム、アセトン、THFなどを用いることができる。
[単離工程]
次に、濾過工程により濾過された溶液から、蒸留または再結晶を行いβ−ヒドロキシカルボニル化合物を単離する。単離方法としては、第1実施形態と同様の方法により単離することができる。
<第3実施形態>
本発明の第3実施形態の後処理方法は、ケトンとアルデヒドとを、またはアルデヒドとアルデヒドとを、触媒の存在下、水溶媒中または溶媒を用いずに反応させてβ−ヒドロキシカルボニル化合物を製造した後、カラムクロマトグラフィーにより前記β−ヒドロキシカルボニル化合物を取り出す後処理方法である。
β−ヒドロキシカルボニル化合物の製造方法としては、水溶媒中または溶媒を用いないで行う以外は、第1実施形態と同様の原料、触媒を用いて行うことができる。
単離方法としては、β−ヒドロキシカルボニル化合物の製造後の反応液を直接カラムクロマトグラフィーにより処理することで、分液操作、抽出操作を行う必要が無く、単離することができる。
カラムクロマトグラフィーの方法としては、特に限定されず、従来公知の方法により、行うことができる。用いる充填剤、反応条件については、生成されたβ−ヒドロキシカルボニル化合物等により、適宜選択することができる。具体的には、充填剤を充填したカラムに、反応液を通液する。その後、カラム内を水洗し、次いで、カラムに吸着されているβ−ヒドロキシカルボニル化合物を、移動相として用いる溶媒を通液し溶出させ、β−ヒドロキシカルボニル化合物と触媒を分離することができる。その後、蒸留により、溶媒を除去することによりβ−ヒドロキシカルボニル化合物を取り出すことができる。
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明する。
(実施例1)
≪2−ヒドロキシメチルフェニルシクロヘキサノンの製造≫
触媒として、(2S,4R)−4−(tert−ブチルジフェニルシリルオキシ)−ピロリジン−2−カルボン酸(13)(259mg、0.70mmol)を室温でベンズアルデヒド(7.4g、70mmol)、シクロヘキサノン(13.7mL、140mmol)、水(3.8mL、210mmol)の懸濁液中に加えた。48時間撹拌した後、系内にシリカゲル(2.5g)を加えた。混合物はシリカゲルを通して酢酸エチル(60mL)を用いて濾過され、蒸留して2−ヒドロキシメチルフェニルシクロヘキサノン(10g、70%)を透明な液体で得た。
Figure 2008007457
ジアステレオ選択性はH NMR解析により、光学収率はHPLC分析により決定した。結果を以下に示す。
anti:syn=10:1(反応粗精製物のH NMR解析により)、
>99%ee (HPLCにより、(chiralcel OD-H column, λ=213nm, iPrOH/hexane=1:100, 1.0ml/min, tr=19.4min (major), tr=25.9min (minor))).
(実施例2)
≪(2S,1’R)−2−(ヒドロキシ−o−クロロフェニルメチル)シクロペンタン−1−オンの製造≫
o−クロロベンズアルデヒド(7.9mL、70mmol)、L−プロリン(2.42g、21mmol)および水(3.8mL)の混合物に室温下、シクロペンタノン(30.9mL、350mmol)を加えた。室温下で25時間撹拌した後、水(40mL)、ブライン(20mL)を加え、10分間撹拌した。水層を除去した後、圧力0.8mmHg、温度140℃にて蒸留し、(2S,1’R)−2−(ヒドロキシ−o−クロロフェニルメチル)シクロペンタン−1−オン(11.7g、52.1mmol)をジアステレオマー混合物(anti:syn=1.7:1、99%ee(anti))として収率75%で得た。
化合物は、NMR、IR、HRMS、HPLCの結果により同定した。以下に化合物の同定結果を示す。
[(2S,1’R)−2−(ヒドロキシ−o−クロロフェニルメチル)シクロペンタン−1−オンのNMR、IR、HRMS、HPLC]
1H NMR (400MHz, CDCl3): δ 1.64-1.78 (3H, m), 1.93-2.07 (1H, m), 2.22-2.35 (1H, m), 2.36-2.52 (2H, m), 4.47 (1H, d, J=1.2Hz), 5.29 (1H, br, d, J=9.3Hz), 7.15-7.23 (1H, m), 7.26-7.36 (2H, m), 7.52 (1H, m);
13C NMR (100MHz, CDCl3): δ 20.5, 26.4, 38.7, 55.6, 70.4, 127.4, 128.4, 128.9, 129.3, 132.5, 139.2, 222.8;
IR (neat): ν 3447, 2965, 1735, 1695, 1440, 1402, 1156, 1024, 749 cm-1;
HRMS (FAB): [M+Na] calcd for [C12H13ClO2 Na]: 247.0604, found: 247.0506;
[α]D 22 -51.7 (c 0.31, CHCl3), 94%ee for anti.
Enantiomeric excess was determined by HPLC with a Chiralpak AD-H column (100:1 hexane:2-propanol, λ=220nm), 1.0mL/min; major enantiomer tr=25.7min, minor enantiomer tr=30.3min.
(実施例3)
≪(2S,1’R)−2−[ヒドロキシ−(p−トリフルオロメチルフェニル)メチル]シクロヘキサン−1−オンの製造≫
p−トリフルオロメチルベンズアルデヒド(8.6mL、57.4mmol)、L−プロリン(1.98g、17.2mmol)および水(3.1mL)の混合物に室温下、シクロヘキサノン(29.6mL、287mmol)を加えた。室温下で96時間撹拌した後、水(50mL)で3回洗浄しプロリンを除去し、有機層を真空下で濃縮した。シクロヘキサン(57.6mL)を用いて、再結晶により精製を行い、(2S,1’R)−2−[ヒドロキシ−(p−トリフルオロメチルフェニル)メチル]シクロヘキサン−1−オン(11.4g、41.8mmol)(anti:syn=>20:1、99%ee(anti))として収率73%で得た。
化合物は、NMR、IR、HRMS、HPLCの結果により同定した。以下に化合物の同定結果を示す。
[(2S,1’R)−2−[ヒドロキシ−(p−トリフルオロメチルフェニル)メチル]シクロヘキサン−1−オンのNMR、IR、HRMS、HPLC]
1H NMR (400MHz, CDCl3): δ 1.24-1.37 (1H, m), 1.48-1.70 (3H, m), 1.77-1.82 (1H, m), 2.09 (1H, ddd, J=1.2, 6.0, 12.8Hz), 2.34 (1H, ddt, J=0.8, 6.0, 13.6Hz), 2.44-2.50 (1H, m), 2.54-2.61 (1H, m), 3.99 (1H, br s), 4.83 (1H, d, J=8.8Hz), 7.42 (2H, d, J=8.0Hz), 7.59 (2H, d, J=8.0Hz);
13C NMR (100MHz, CDCl3): δ 24.7, 27.7, 30.7, 42.7, 57.2, 74.3, 123.2, 125.3, 127.4, 130.1, 144.9, 215.2,;
IR (KBr): ν 3752, 3361, 2948, 2910, 1700, 1328, 1170, 1138, 1109, 845 cm-1;
HRMS (FAB): [M+Na] calcd for [C14H15F3O2 Na]: 295.0916, found: 295.0907;
[α]D 22 -35.2 (c 1.00, MeOH), >99%ee for anti.
Enantiomeric excess was determined by HPLC with a Chiralcel AD-H column (10:1 hexane:2-propanol, λ=254nm), 1.0mL/min; major enantiomer tr=12.9min, minor enantiomer tr=9.5min.
(実施例4)
≪(2S,3S)−3−ヒドロキシ−2−メチルペンタナール、(2S,3R)−3−ヒドロキシ−2−メチルペンタナールの製造≫
触媒として、(S)−ピロリジン−2−カルボキサミド(17mg、0.15mmol)を室温でプロパナール(0.22mL、3.0mmol)、水(0.33mL)の懸濁液中に加えた。11時間撹拌した後、反応溶液を直接シリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=2:1〜1:1)で精製することにより(2S,3S)−3−ヒドロキシ−2−メチルペンタナールおよび(2S,3R)−3−ヒドロキシ−2−メチルペンタナールのジアステレオ混合物(63mg、収率36%)を透明な液体で得た。
Figure 2008007457
ジアステレオ選択性はH NMR解析により決定した。光学純度は生成物を水素化ホウ素ナトリウムにより還元して得られるジオール体を、ピリジン中、塩化ベンゾイルを作用させることにより誘導したモノベンゾイル体のHPLC分析により決定した。結果を以下に示す。
anti:syn=1:1(生成物のH NMR解析により)、
78%ee(anti), 74%ee(syn) (HPLC分析により、(Chiralpak IA column (hexane:2-propanol=100:1 λ=254nm), 1.0mL/min; major enantiomer(syn) tr=24.6min, minor enantiomer(syn) tr=29.9min, major enantiomer(anti) tr=31.5min, minor enantiomer(anti) tr=34.4min.

Claims (5)

  1. ケトンとアルデヒドとを、またはアルデヒドとアルデヒドとを、触媒の存在下、水溶媒あるいは有機溶媒を用いて、または溶媒を用いないで反応させて、β−ヒドロキシカルボニル化合物を製造した後、
    水を加え有機層を洗浄した後、前記水を除去し、
    蒸留、または再結晶により、前記β−ヒドロキシカルボニル化合物を取り出すβ−ヒドロキシカルボニル化合物の後処理方法。
  2. 前記有機溶媒が、ケトンまたはアルデヒドに対して、5当量以下である請求項1記載のβ−ヒドロキシカルボニル化合物の後処理方法。
  3. ケトンとアルデヒドとを、またはアルデヒドとアルデヒドとを、触媒の存在下、水溶媒中または溶媒を用いないで反応させてβ−ヒドロキシカルボニル化合物を製造した後、
    シリカゲルを加え、前記水および前記触媒をシリカゲルに吸着させた後、
    シリカゲルを除去し、
    蒸留、または再結晶により、前記β−ヒドロキシカルボニル化合物を取り出すβ−ヒドロキシカルボニル化合物の後処理方法。
  4. ケトンとアルデヒドとを、またはアルデヒドとアルデヒドとを、触媒の存在下、水溶媒中または溶媒を用いないで反応させてβ−ヒドロキシカルボニル化合物を製造した後、
    カラムクロマトグラフィーにより前記β−ヒドロキシカルボニル化合物を取り出すβ−ヒドロキシカルボニル化合物の後処理方法。
  5. 前記触媒が、下記一般式(9−1)から(9−10)で表される化合物である請求項1から4いずれか記載のβ−ヒドロキシカルボニル化合物の後処理方法。
    Figure 2008007457
    (式中Rは、アルキル基、またはアリール基を示す。なお、それぞれのRは同一または異なっていてもよい。Rは、アルキル基、アリール基、アシル基、トリアルキルシリル基、ジアルキルアリールシリル基、またはアルキルジアリールシリル基を示す。Rは、水素、アルキル基、またはアリール基を示す。Rは、アルキル基、またはアリール基を示す。Rは、官能基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、または置換基を有してもよいヘテロアリール基を示す。nは1から15の整数を示す。)
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