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JP2008074218A - ステアリング装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】異音の発生を抑制できて安価なステアリング装置を提供する。
【解決手段】本ステアリング装置1は、ラックアンドピニオン式であり、ラックハウジング15の第1および第2の端部15a,15bに、第1および第2のラックブッシュ28,29を弾性支持する。ピニオン軸13に相対的に近い側にある第1のラックブッシュ28は、ラック軸14の端部14bを軸方向Sに摺動自在に支持する支持孔34を有する。弾性部材31が、第1のラックブッシュ28を介してラック軸14をピニオン軸13に向かう所定の付勢方向Fに付勢する。支持孔34の内周面35は、ラック軸14を付勢方向Fに押圧し、付勢方向Fに直交する方向Cへのラック軸14の移動を規制する。ラック軸14とピニオン軸13との間のバックラッシを小さくでき、従来のラック軸支持装置を廃止でき、構造を簡素化できる。
【選択図】図3

Description

本発明は、ステアリング装置に関する。
ラックアンドピニオン式のステアリング装置は、ピニオン軸およびラック軸を保持するハウジングを有している。このハウジングは、ラック軸の軸方向に延びる筒状をなしていて、ラック軸がハウジングの内部を貫通している(例えば、特許文献1参照。)。
ラック軸の軸方向に関するハウジングの中間部において、ラック軸は、ラック軸支持装置により支持されている。このラック軸支持装置は、ラック軸をその軸方向に摺動自在に支持するサポートヨークを有している。このサポートヨークは、ハウジング内の保持孔に、ラック軸の軸方向に直交する方向に移動自在に保持されていて、この方向にばねにより付勢されることにより、ラック軸をピニオン軸へ向けて付勢している。
また、ラック軸の軸方向に関するハウジングの端部では、ラック軸は環状のラックブッシュにより受けられている。
また、特許文献1では、ラックブッシュは、弾力的に付勢された複数のボールを介してラック軸を受けている。すなわち、ラック軸の周方向に等間隔に配置された3個のボールが、ラック軸の対応する軸方向溝に転がり接触する状態で、ラック軸を軸方向に移動可能に支持している。各ボールとラックブッシュとの間には、ラック軸を径方向に付勢する弾性部材がそれぞれ介在している。これらの弾性部材は互いに協働して、ラック軸を当該ラック軸の中心がハウジングの中心と一致するように付勢している。
特開2004−161117号公報
上述のようなラック軸支持装置を設けた場合、部品点数の増加により製造コストが高くなる。また、サポートヨークが保持孔内でがたつきを生じ、その結果、異音が生じることがある。この異音の発生を抑制するために、サポートヨークと保持孔との間の隙間を所定の微小量に厳密に管理する必要があり、その結果、組立コストが増大し、この点からも製造コストが高くなっていた。また、特許文献1のラックブッシュは、複数のボールを有するので、構造が複雑で高価である。
そこで、本発明の目的は、異音の発生を抑制できる安価なステアリング装置を提供することである。
本発明は、ラックアンドピニオン式のステアリング装置において、ラック軸が挿通され、軸方向に関して第1および第2の端部を有する筒状のハウジングと、このハウジングの第1および第2の端部のうちピニオン軸に相対的に近い第1の端部に保持され、ラック軸の端部を軸方向に摺動自在に支持する支持孔を有するラックブッシュと、このラックブッシュを介してラック軸をピニオン軸に向かう所定の付勢方向に付勢する弾性部材とを備え、上記ラックブッシュは、ハウジングによって上記所定の付勢方向に変位可能に支持されていることを特徴とする。
本発明によれば、もともと必須の構成であるラックブッシュを介して、弾性部材がラック軸をピニオン軸に向けて付勢し、これにより、ラック軸とピニオン軸との間のバックラッシを抑制して、異音の発生を抑制することができる。従来のサポートヨークを用いる複雑な構造のラック軸支持装置を廃止することができ、部品コスト、組立コストの低減を通じて製造コストを安くすることができる。
また、本発明において、上記ハウジングは、ラックブッシュを保持する保持孔を有し、保持孔の内周面の一部に、上記弾性部材を収容するための凹部が形成されている場合がある(請求項2)。この場合、凹部に収容された弾性部材の付勢方向を規制することができる。
また、本発明において、上記ラックブッシュの支持孔の内周面は、上記所定の付勢方向と直交する方向への、ラック軸の移動を規制する一対の規制部と、上記所定の付勢方向への弾性部材の付勢力によりラック軸のラック歯の背面を押圧する押圧部とを含み、これら一対の規制部および押圧部によって、ラック軸が3点支持されている場合がある(請求項3)。この場合、付勢方向および上述の直交する方向に関してのラック軸のがたつきが確実に防止される。
また、本発明において、上記一対の規制部のそれぞれは、上記所定の付勢方向と平行な平坦面を含む場合がある(請求項4)。この場合、規制部によって上記所定の付勢方向へのラック軸の移動をスムーズに案内することができる。
また、本発明において、上記ラックブッシュの支持孔の内周面は、上記一対の規制部および押圧部の少なくとも1つに対応して凸部を設けている場合がある(請求項5)。この場合、ラックブッシュとラック軸との接触面積を低減して、軸方向に関してのラック軸の移動抵抗を低減することができる。
また、本発明において、上記ラックブッシュの支持孔の内周面は、上記押圧部と対向する対向部を含み、この対向部とラック軸との間に所定の隙間が設けられている場合がある(請求項6)。この場合、軸方向に関してのラック軸の移動抵抗の低減に寄与する。また、ラック軸をラックブッシュに容易に通すことができるので、ステアリング装置を組立易い。
また、本発明において、上記凹部に収容された弾性部材は、ラックブッシュの周方向への移動を規制するように、ラックブッシュと連結されている場合がある(請求項7)。この場合、弾性部材はラックブッシュの回り止めとしても兼用されるので、構造が簡素化される。
また、本発明において、上記保持孔の内周面と、ラックブッシュの外周面との間に、環状のOリングが介在し、このOリングによって、ラック軸が弾性支持されている場合がある(請求項8)。この場合、付勢方向に関しては、弾性部材がラックブッシュを介してラック軸を付勢することができる。しかも、直交する方向に関しては、Oリングの弾性反発力によりラックブッシュのがたつきの発生を抑制することができ、さらに、これらの効果を簡素な構造で達成することができる。
以下では、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。本実施形態では、ステアリング装置がパワーステアリング装置である場合に則して説明するが、これに限らず、例えば、マニュアル操舵のステアリング装置であってもよい。
図1は、本発明の一実施形態のステアリング装置の概略構成を示す模式図である。図1を参照して、ステアリング装置1は、操舵部材としてのステアリングホイール3に加えられる操舵トルクを伝達するステアリングシャフト4と、ステアリングシャフト4からの操舵トルクにより操向輪2を操舵するためのラックアンドピニオン機構からなる操舵機構5と、ステアリングシャフト4および操舵機構5の間に設けられてこの間において回転を伝達する軸継手としての中間軸6とを有している。
ステアリングシャフト4は、ステアリングコラム7の内部を挿通して、ステアリングコラム7により回転自在に支持されている。ステアリングコラム7はブラケット8を介して車体9に支持されている。ステアリングシャフト4の一方の端部にステアリングホイール3が連結されている。ステアリングシャフト4の他方の端部に中間軸6が連結されている。ステアリングホイール3と中間軸6とは連動する。
中間軸6は、動力伝達軸10と、中間軸6の一方の端部に設けられた自在継手11と、中間軸6の他方の端部に設けられた自在継手12とを有している。
操舵機構5は、入力軸としてのピニオン軸13と、自動車の横方向(直進方向と直交する方向である。)に延びる転舵軸としてのラック軸14と、ピニオン軸13およびラック軸14を支持するラックハウジング15とを有している。ピニオン軸13のピニオン歯13aと、ラック軸14のラック歯14aとが互いに噛み合っている。
ピニオン軸13は、ラックハウジング15に回動自在に支持されている。また、ラック軸14は、その軸方向Sに関して直線往復動自在にラックハウジング15に支持されている。ラックハウジング15は、車体9に固定されている。ラックハウジング15の両端部15a,15bから、ラック軸14の軸方向Sに関してのラック軸14の両端部14bが突出している。これら両端部14bには、継手部材としての一対のボールジョイントユニット26が設けられている。各ボールジョイントユニット26に、タイロッド27およびナックルアーム(図示せず)を介して、対応する操向輪2が連動するように連結されている。
ステアリングホイール3が操舵されると、その操舵トルクがステアリングシャフト4および中間軸6を介して操舵機構5に伝達される。ステアリングホイール3の回動に連動してピニオン軸13が回動し、これに伴ってラック軸14がその軸方向Sに沿って移動する。これにより、操向輪2を操舵することができる。
ステアリング装置1は、操舵トルクに応じて操舵補助力を得られるようになっている。すなわち、ステアリング装置1は、操舵トルクを検出するトルクセンサ16と、制御部としてのECU(Electronic Control Unit :電子制御ユニット)17と、操舵補助用の電動モータ18と、伝動装置としての減速機19とを有している。本実施形態では、電動モータ18および減速機19は、ステアリングコラム7に関連して設けられている。
トルクセンサ16は、ステアリングホイール3からステアリングシャフト4に作用する操舵トルクを検出する。トルク検出結果は、ECU17に与えられる。ECU17は、上述のトルク検出結果や図示しない車速センサから与えられる車速検出結果等に基づいて、電動モータ18を制御する。
ステアリングホイール3が操作されると、操舵トルクがトルクセンサ16により検出され、トルク検出結果および車速検出結果等に応じて電動モータ18が操舵補助力を発生させる。操舵補助力は、減速機19を介してピニオン軸13に伝達される。これとともに、ステアリングホイール3の動きも、操舵機構5に伝わる。その結果、操向輪2が操舵されるとともに、操舵が補助される。
本実施形態のステアリング装置1は、ラックアンドピニオン式のステアリング装置として構成されている。すなわち、操舵機構5は、上述のピニオン軸13と、長尺の上述のラック軸14と、ラック軸14の軸方向中央部を収容し車体9に支持されたハウジングとしてのラックハウジング15とを有している。
ラック軸14は、長尺の棒状部材であり、例えば、断面円形等の断面丸形に形成されている。ラック軸14は、その軸方向Sに関しての一部であってラック歯14aが形成された第1の部分と、この第1の部分を除いた残りの部分であってラック歯14aが形成されていない第2の部分とを有している。第1の部分の外周面は、断面円弧形状をなす湾曲部と、軸方向Sに平行な平坦部とを有している。この平坦部にラック歯14aが形成されている。第2の部分の外周面は、断面円形をなしている。
ラックハウジング15は、筒状をなし、ラック軸14の軸方向Sに沿って延びている。ラックハウジング15には、ラック軸14が挿通されている。ラックハウジング15は、その長手方向(軸方向Sに相当する。)に関する第1および第2の端部15a,15bと、これら両端部15a,15bの間に配置された中間部15cとを有している。
ラックハウジング15の中間部15cは、軸受(図示せず)を介してピニオン軸13を回動自在に支持している。ピニオン軸13は、第1の端部15aに相対的に近くなるように配置され、第2の端部15bに相対的に遠くなるように配置されている。なお、中間部15cでは、従来のラック軸支持装置は廃止されている。
また、操舵機構5は、ラック軸14をその軸方向Sに摺動自在に支持する第1および第2のラックブッシュ28,29と、一対のラックストッパ30と、第1のラックブッシュ28を付勢する弾性部材31とを有している。
第1のラックブッシュ28と、弾性部材31と、一方のラックストッパ30とは、ピニオン軸13に相対的に近い第1の端部15aに保持されている。第2のラックブッシュ29と、他方のラックストッパ30とは、第2の端部15bに保持されている。
本実施形態のステアリング装置1は、第1および第2のラックブッシュ28,29および弾性部材31を除いて、ラック軸14の両端部14bの周辺部分について、同様に構成されており、互いに同様の構成については、同じ符号を付して説明を省略する。
図2は、図1に示すステアリング装置1の操舵機構5の要部D2の断面図であり、図3に示すS2−S2断面を示す。図3は、図2のS3−S3断面の断面図である。
ラックハウジング15の第1の端部15aは、保持孔32を有している。保持孔32は、円筒面をなす内周面32aと、この内周面32aの一端から径方向内方へ延びる側壁32bとを有している。また、内周面32aに凹部33が形成されている。
保持孔32の開口端に、ラックストッパ30が固定されている。ラックストッパ30は、環状をなし、ボールジョイントユニット26(図1参照)の一部と当接することにより、ラック軸14の軸方向Sに関してのラックハウジング15に対するラック軸14の移動範囲を規制する。
第1のラックブッシュ28は、ラック軸14の軸方向Sに関して、ラックストッパ30と側壁32bとの間に挟持されている。保持孔32の側壁32bにより軸方向Sの一方の向きへの第1のラックブッシュ28の移動が規制され、ラックストッパ30により軸方向Sの他方の向きへの第1のラックブッシュ28の移動が規制されている。
凹部33は、保持孔32の内周面32aの一部に所定深さで形成されていて、保持孔32の内側へ開放されている。凹部33は、ラック軸14の軸方向Sに関して、保持孔32の内周面32aの中央部に配置されている。また、ラック軸14の軸方向Sに沿って見たときに、凹部33とピニオン軸13とは、ラック軸14を挟んで、互いに反対側に配置されている。
凹部33内に弾性部材31が収容されている。凹部33の底面が、弾性部材31を受けて保持している。また、凹部33の側壁が、ラック軸14の周方向Tに関しての弾性部材31の移動を規制している。
弾性部材31は、弾性体としての合成樹脂材料により形成された板ばねからなる。この板ばねは、互いに反対側にある一対の面を有している。板ばねは、ラック軸14の軸方向Sから見たときに断面湾曲形状をなしている。一方の面が凸湾曲し、他方の面が凹湾曲している。凹湾曲している面の両端部が、第1のラックブッシュ28の外周面39に接続されていて、固定されている。凹湾曲している面の中央部が、対向する部分としての第1のラックブッシュ28との間に隙間を開けている。凸湾曲している面の中央部が、凹部33の底面に接続され、当接している。凸湾曲している面の両端部が、凹部33の側壁にともに当接している。なお、弾性部材31の向きが逆に配置されて、凸湾曲している面の中央部が第1のラックブッシュ28の外周面39に接続され、凹湾曲している面の両端部が凹部33の底面に接続されることも考えられる。
弾性部材31は、湾曲の曲率半径が大きくなるような弾性曲げ変形を受けた状態で、凹部33の底面と第1のラックブッシュ28との間に介在している。これにより弾性部材31は、第1のラックブッシュ28を弾性的に押圧付勢しており、第1のラックブッシュ28を介してラック軸14を所定の付勢方向Fに付勢している。ここで、所定の付勢方向Fは、軸方向Sに直交する方向であってラック軸14とピニオン軸13とが互いに並ぶ方向であり、ラック軸14がピニオン軸13に向かって近づく方向である。
凹部33に収容された弾性部材31は、第1のラックブッシュ28の周方向Tへの移動を規制するように、第1のラックブッシュ28と連結されている。具体的には、弾性部材31と第1のラックブッシュ28とは単一の部材としての合成樹脂部材により一体に形成されている。
第1のラックブッシュ28は、筒状をなしている。第1のラックブッシュ28の筒の中心軸線が、ラック軸14の軸方向Sに平行に配置されている。第1のラックブッシュ28は、摺動特性が優れた材料としての合成樹脂部材により形成されている。
第1のラックブッシュ28は、支持孔34を有している。この支持孔34をラック軸14が貫通している。支持孔34は、内周面35を有している。この内周面35が、ラック軸14の端部14bの上述の第1の部分を軸方向Sに摺動自在に支持している。
支持孔34の内周面35は、ラック軸14の移動を規制する一対の規制部36と、所定の付勢方向Fにラック軸14を押圧する押圧部37と、押圧部37に対向する対向部38とを有している。一対の規制部36と押圧部37と対向部38との端縁同士が互いに接続されることにより、内周面35が形成されている。また、一対の規制部36および押圧部37によって、ラック軸14が3点支持されている。
一対の規制部36は、付勢方向Fとは直交する方向Cとしてのラック軸14の径方向に、互いに対向している。一対の規制部36の間に、ラック軸14が配置されている。一対の規制部36は、上述の直交する方向Cについての両側へのラック軸14の移動を規制している。各規制部36は、所定の付勢方向Fと平行であり且つ軸方向Sに平行な平坦面により形成されていて、ラック軸14に線接触している。
一対の規制部36同士の間隔は、第1のラックブッシュ28の部品単品の状態で、ラック軸14の外周面の直径と等しい距離か、この距離よりもわずかに小さくされていて、これにより、締めしろを付与された状態でラック軸14に接している。
押圧部37は、平坦面に形成されていて、ラック軸14に線接触している。押圧部37の平坦面は、所定の付勢方向Fに直交し且つ軸方向Sに平行な面からなる。ラック軸14の軸方向Sに垂直な断面において、押圧部37は、所定の付勢方向Fへの弾性部材31の付勢力を受けて、ラック軸14のラック歯14aの背面14cを押圧している。この背面14cは、ラック軸14の軸方向Sから見たときに、ラック歯14aとは径方向Rについて反対側にあり軸方向Sに延びる面であり、軸方向Sに関してラック歯14aが形成された部分と、ラック歯14aが形成されていない部分とのいずれにあってもよい。
対向部38と押圧部37とは、所定の付勢方向Fに互いに対向している。対向部38は、凹湾曲面に形成されている。対向部38とラック軸14の外周面のラック歯14aとの間には、所定量の隙間40が開けられている。
第1のラックブッシュ28の外周面39と保持孔32の内周面32aとの間には、所定量の隙間が開けられているとともに、この隙間に環状のOリング41が介在している。このOリング41は、第1のラックブッシュ28を取り囲んで弾性圧縮変形されていて、第1のラックブッシュ28を介してラック軸14を弾性支持している。これにより、第1のラックブッシュ28は、ラック軸14の任意の径方向Rについて、保持孔32内で変位可能に支持されている。
例えば、第1のラックブッシュ28の外周面39に、複数、例えば2本の環状溝が形成されている。各環状溝は、所定深さで周方向Tに延びて、ラック軸14の軸方向Sに関して弾性部材31を避けた位置であって弾性部材31を挟んだ両側に配置されている。各環状溝にOリング41がそれぞれ嵌め入れられている。Oリング41は、弾性体としてのゴム部材や合成樹脂部材により無端状に形成されている。ラック軸14の径方向に関して、Oリング41が弾性圧縮変形を受けた状態で、保持孔32の内周面32aと第1のラックブッシュ28の外周面39との間に介在している。
なお、Oリング41用の環状溝が、保持孔32の内周面32aに形成されていてもよい。また、第1のラックブッシュ28の外周面39と、保持孔32の内周面32aとに互いに対向して形成されてもよい。また、Oリング41は、少なくとも1つがあればよく、Oリング41に代えて、弾性体としてのゴム板を用いることも考えられる。
図1に戻って、ラックハウジング15の第2の端部15bは、保持孔32を有している。この保持孔32は、第2のラックブッシュ29を嵌合状態で保持し、凹部33を廃止されている。第2のラックブッシュ29は、弾性部材31の付勢がない点を除いて、第1のラックブッシュ28と同様に保持孔32に保持されている。
第2のラックブッシュ29は、ラック軸14の任意の径方向Rに関するラック軸14の端部14bの第2の部分の移動を所定量に規制している。第2のラックブッシュ29とラック軸14との間には、締め代が付与されていてもよいし、所定の隙間が設定されていてもよい。また、第2のラックブッシュ29は、第1のラックブッシュ28と同様にOリング41を介してラックハウジング15に弾性支持されているが、ラックハウジング15に固定することも考えられる。
図1および図2を参照して、所定の付勢方向Fに関して、弾性部材31は、Oリング41の弾性反発力に抗しつつ、または、この弾性反発力と協働して、第1のラックブッシュ28を押圧し、ひいては、ラック軸14を押圧している。このとき、支点としての第2のラックブッシュ29がラック軸14の他方の端部14bを受けて、ラック軸14のラック歯14aとピニオン軸13のピニオン歯13aとが、互いにバックラッシを除去された状態で噛み合うようにされている。
本実施形態では、ラックアンドピニオン式のステアリング装置1において、ラック軸14が挿通され、軸方向Sに関して第1および第2の端部15a,15bを有する筒状のラックハウジング15と、このラックハウジング15の第1および第2の端部15a,15bのうちピニオン軸13に相対的に近い第1の端部15aに保持され、ラック軸14の端部14bを軸方向Sに摺動自在に支持する支持孔34を有する第1のラックブッシュ28と、この第1のラックブッシュ28を介してラック軸14をピニオン軸13に向かう所定の付勢方向Fに付勢する弾性部材31とを備え、上記第1のラックブッシュ28は、ラックハウジング15によって所定の付勢方向Fに変位可能に支持されていることを特徴とする。
これにより、もともと必須の構成であるラックブッシュとしての第1のラックブッシュ28を介して、弾性部材31がラック軸14をピニオン軸13に向けて付勢し、これにより、ラック軸14とピニオン軸13との間のバックラッシを抑制して、異音の発生を抑制することができる。従来のサポートヨークを用いる複雑な構造のラック軸支持装置を廃止することができ、部品コスト、組立コストの低減を通じて製造コストを安くすることができる。
また、第1のラックブッシュ28は、ピニオン軸14に近い側にある第1の端部15aに配置されているので、ピニオン軸13に向けてラック軸14を効果的に付勢することができる。
また、第1のラックブッシュ28は、その中央部の支持孔34にラック軸14を挿通させているので、第1のラックブッシュ28が、所定の付勢方向Fに弾性部材31により付勢された状態で、上記所定の付勢方向Fにラックハウジング15により変位可能に保持されている場合であっても、中央部を挿通するラック軸14により第1のラックブッシュ28の姿勢が規制され、従来のサポートヨークに比べて、第1のラックブッシュ28の倒れやがたつきの発生が抑制される。ひいては、ラックハウジング15の保持孔32の内周面32aと第1のラックブッシュ28の外周面39との間の隙間を厳密に管理せずに済み、製造コストを安価にできる。
また、従来のラック軸支持装置を廃止するのに伴い、ラック軸14の軸方向Sの移動抵抗を低減することができる。
また、第1および第2のラックブッシュ28,29は、ラック軸14に摺動自在に接するので、ラック軸との間にボールを介在させる場合に比べて、構造を簡素化できる。
さらに、第1および第2のラックブッシュ28,29は、直交する方向Cについてのラック軸14の移動をともに規制している。これにより、ラック軸14の軸方向移動時に第1および第2のラックブッシュ28,29のがたつきが生じ難く、このがたつきに起因する異音の発生を抑制することができる。
また、本実施形態では、ラックハウジング15は、第1のラックブッシュ28を保持する保持孔32を有し、保持孔32の内周面32aの一部に、弾性部材31を収容するための凹部33が形成されている。この場合、凹部33に収容された弾性部材31の付勢方向Fを規制することができる。また、凹部33の周囲にある内周面32aの部分32cが第1のラックブッシュ28を受けるので、第1のラックブッシュ28が弾性部材31を過度に変形させることを防止することができる。
また、第1のラックブッシュ28の支持孔34の内周面35は、所定の付勢方向Fと直交する方向Cへの、ラック軸14の移動を規制する一対の規制部36と、所定の付勢方向Fへの弾性部材の付勢力によりラック軸14のラック歯14aの背面14cを押圧する押圧部37とを含み、これら一対の規制部36および押圧部37によって、ラック軸14が3点支持されている。この場合、第1のラックブッシュ28は、付勢方向Fおよび上述の直交する方向Cに関してのラック軸14のがたつきを確実に防止できる。
また、一対の規制部36のそれぞれは、所定の付勢方向Fと平行な平坦面を含んでいる。この場合、規制部36によって所定の付勢方向Fへのラック軸14の移動をスムーズに案内することができる。また、規制部36は、弾性部材31による付勢力を受けずに済むので、摩耗が生じ難い結果、ラック軸14をがたつきなく保持するのに好ましい。
また、第1のラックブッシュ28の支持孔34の内周面35は、押圧部37と対向する対向部38を含む。この対向部38とラック軸14との間に所定の隙間40が設けられている。この場合、軸方向Sに関してのラック軸14の移動抵抗の低減に寄与する。また、ラック軸14を第1のラックブッシュ28に容易に通すことができるので、ステアリング装置1を組立易い。
また、凹部33に収容された弾性部材31は、周方向Tへの第1のラックブッシュ28の移動を規制するように、第1のラックブッシュ28と連結されている。この場合、弾性部材31は第1のラックブッシュ28の回り止めとしても兼用されるので、構造が簡素化される。ここで、弾性部材31と第1のラックブッシュ28との連結としては、これらを単一の部材により一体に形成すること、これらを複数の部材により一体に形成すること、これらを互いに固定して一体化することのいずれでもよい。
また、保持孔32の内周面32aと、第1のラックブッシュ28の外周面39との間に、環状のOリング41が介在し、このOリング41によって、ラック軸14が弾性支持されている。この場合、付勢方向Fに関しては、弾性部材31が第1のラックブッシュ28を介してラック軸14を付勢することができる。しかも、直交する方向Cに関しては、Oリング41の弾性反発力により第1のラックブッシュ28のがたつきの発生を抑制することができ、さらに、これらの効果を簡素な構造で達成することができる。
このようにがたつきの抑制が、第1のラックブッシュ28を弾性支持することにより達成されるので、ラックハウジング15の保持孔32の内周面32aと第1のラックブッシュ28との隙間を、所定の微小量に管理せずに済み、製造コストを安価にできる。
また、本実施形態について、以下のような変形例を考えることができる。以下の説明では、上述の実施形態と異なる点を中心に説明し、同様の構成については同じ符号を付して説明を省略する。
図4は、本発明の第2の実施形態のステアリング装置の要部の断面図である。図4を参照して、本実施形態では、弾性部材31と第1のラックブッシュ28とは、互いに別体に形成されていて、互いに分離可能とされている。この場合、弾性部材31および第1のラックブッシュ28を、それぞれに最適な部材によりそれぞれ形成することができる。
また、弾性部材31は、凹部33の底面に2箇所で受けられていて、第1のラックブッシュ28の外周面39に1箇所で接している。なお、弾性部材31を、逆向きにし第1の実施形態のように配置してもよい。
また、保持孔32および第1のラックブッシュ28は、互いに係合することにより相対回動を規制する回り止め部としての一対の係合部42,43を有している。係合部42は、ラックハウジング15に形成された起伏部としての凹部からなる。係合部43は、第1のラックブッシュ28に形成された起伏部としての凸部からなる。係合部42,43が互いに凹凸係合することにより、第1のラックブッシュ28は第1の実施形態と同様に配置され、例えば軸方向Sに沿って見たときに、押圧部37がラック軸14を挟んでピニオン軸13とは反対側に配置されるようになっている。なお、係合部42,43の凹凸関係は、逆であってもよい。
図5は、本発明の第3の実施形態のステアリング装置1の要部の断面図である。図5を参照して、第1のラックブッシュ28の支持孔34の内周面35は、複数の凸部44を有している。これ以外の点では、本実施形態は、第1の実施形態と同様である。
内周面35は、円筒面からなる湾曲部45と、この湾曲部45から径方向内方に突出した上述の凸部44とを有している。第1のラックブッシュ28の支持孔34の内周面35の一対の規制部36および押圧部37は、3つの凸部44の先端に配置されている。各凸部44の先端は、平坦面に形成されている。これらの平坦面は、第1の実施形態における一対の規制部36および押圧部37の対応する平坦面と同様に形成されている。また、各凸部44は、軸方向Sに関して第1のラックブッシュ28の全長にわたって延びていて、断面形状は、軸方向Sに関して一定に形成されている。
なお、凸部44は、内周面35に一体に形成されていてもよいし、内周面35に別体で形成されて固定されていてもよい。また、一対の規制部36および押圧部37の一部に対応して凸部44を設けてもよい。また、第2の実施形態の第1のラックブッシュ28の内周面35に凸部44を設けてもよい。
このように第1のラックブッシュ28の支持孔34の内周面35は、一対の規制部36および押圧部37の少なくとも1つに対応して凸部44を設けている。この場合、第1のラックブッシュ28とラック軸14との接触面積を低減して、軸方向Sに関してのラック軸14の移動抵抗を低減することができる。
また、上述の各実施形態において、第1のラックブッシュ28が弾性支持されずに所定の付勢方向Fに変位自在に保持される場合、隙間40が設けられずに対向部38がラック軸14に接する場合、一対の規制部36および押圧部37の少なくとも一つが凸湾曲面または凹湾曲面からなる場合、弾性部材31が凹部33のない保持孔32内に保持されている場合も考えられる。その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
本発明の第1の実施形態のステアリング装置の概略構成の側面図である。 図1に示すステアリング装置の要部の断面図であり、図3のS2−S2断面を示す。 図2のS3−S3断面の断面図である。 本発明の第2の実施形態のステアリング装置の要部の断面図であり、図3の断面に相当する。 本発明の第3の実施形態のステアリング装置の要部の断面図であり、図3の断面に相当する。
符号の説明
1…ステアリング装置、13…ピニオン軸、14…ラック軸、14a…ラック歯、14b…(ラック軸の)端部、14c…ラック歯の背面、15…ラックハウジング(ハウジング)、15a…第1の端部、15b…第2の端部、28…第1のラックブッシュ(ラックブッシュ)、31…弾性部材、32…保持孔、32a…(保持孔の)内周面、33…凹部、34…支持孔、35…(支持孔の)内周面、36…規制部、37…押圧部、38…対向部、39…(第1のラックブッシュの)外周面、40…隙間、41…Oリング、44…凸部、C…直交する方向、F…付勢方向、S…軸方向、T…周方向

Claims (8)

  1. ラックアンドピニオン式のステアリング装置において、
    ラック軸が挿通され、軸方向に関して第1および第2の端部を有する筒状のハウジングと、
    このハウジングの第1および第2の端部のうちピニオン軸に相対的に近い第1の端部に保持され、ラック軸の端部を軸方向に摺動自在に支持する支持孔を有するラックブッシュと、
    このラックブッシュを介してラック軸をピニオン軸に向かう所定の付勢方向に付勢する弾性部材とを備え、
    上記ラックブッシュは、ハウジングによって上記所定の付勢方向に変位可能に支持されていることを特徴とするステアリング装置。
  2. 請求項1において、上記ハウジングは、ラックブッシュを保持する保持孔を有し、保持孔の内周面の一部に、上記弾性部材を収容するための凹部が形成されていることを特徴とするステアリング装置。
  3. 請求項1または2において、上記ラックブッシュの支持孔の内周面は、上記所定の付勢方向と直交する方向への、ラック軸の移動を規制する一対の規制部と、上記所定の付勢方向への弾性部材の付勢力によりラック軸のラック歯の背面を押圧する押圧部とを含み、これら一対の規制部および押圧部によって、ラック軸が3点支持されていることを特徴とするステアリング装置。
  4. 請求項3において、上記一対の規制部のそれぞれは、上記所定の付勢方向と平行な平坦面を含むことを特徴とするステアリング装置。
  5. 請求項3において、上記ラックブッシュの支持孔の内周面は、上記一対の規制部および押圧部の少なくとも1つに対応して凸部を設けていることを特徴とするステアリング装置。
  6. 請求項3から5の何れか1項において、上記ラックブッシュの支持孔の内周面は、上記押圧部と対向する対向部を含み、この対向部とラック軸との間に所定の隙間が設けられていることを特徴とするステアリング装置。
  7. 請求項2から6の何れか1項において、上記凹部に収容された弾性部材は、ラックブッシュの周方向への移動を規制するように、ラックブッシュと連結されていることを特徴とするステアリング装置。
  8. 請求項2から7の何れか1項において、上記保持孔の内周面と、ラックブッシュの外周面との間に、環状のOリングが介在し、このOリングによって、ラック軸が弾性支持されていることを特徴とするステアリング装置。
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