JP2008069189A - 熱可塑性樹脂中空成形品 - Google Patents
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Abstract
【課題】 塩素系材料を用いることなく復元性、柔軟性および耐衝撃性に優れた熱可塑性樹脂中空成形品を提供する。
【解決手段】 スチレンブタジエンエラストマ60〜80重量部及びポリスチレン40〜20重量部を含み、かつ、スチレンブタジエンエラストマ及びポリスチレンの合計が100重量部である熱可塑性樹脂組成物を原材料として、ブロー成形により、密度が983〜1005kg/m3の熱可塑性樹脂中空成形品を成形する。
【選択図】 なし
【解決手段】 スチレンブタジエンエラストマ60〜80重量部及びポリスチレン40〜20重量部を含み、かつ、スチレンブタジエンエラストマ及びポリスチレンの合計が100重量部である熱可塑性樹脂組成物を原材料として、ブロー成形により、密度が983〜1005kg/m3の熱可塑性樹脂中空成形品を成形する。
【選択図】 なし
Description
本発明は、熱可塑性樹脂組成物を原材料として、ブロー成形により成形されてなる熱可塑性樹脂中空成形品に関するものである。
特開2003−251747号公報(特許文献1)には、ポリ塩化ビニル(PVC)を原材料として成形された中空成形品が開示されている。このようなPVCを用いた中空成形品は、成形加工性、復元性、形態安定性、柔軟性、耐熱性、耐衝撃性に優れるため、医療用品、玩具等の材料として各種用途に広く用いられている。
特開2003−251747号公報
しかしながら、PVCを用いた中空成形品は、可塑剤を多量に含有しているため、可塑剤による特有の不快な臭気を発生する問題がある。またPVCのような塩素系樹脂を基材とする組成物は、焼却処理時にダイオキシン等の有害なガスが発生する。そのため、PVCの代替材料として、不快な臭気が発生せず、焼却処理時に有害なガスが発生しない非塩素系材料を用いた中空成形品のニーズがある。
本発明の目的は、塩素系材料を用いることなく復元性、柔軟性および耐衝撃性に優れた熱可塑性樹脂中空成形品を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、印刷性に優れた熱可塑性樹脂中空成形品を提供することにある。
本発明が改良の対象とする熱可塑性樹脂中空成形品は、熱可塑性樹脂組成物を原材料として、ブロー成形(中空成形)により成形されてなる熱可塑性樹脂中空成形品である。ブロー成形は、熱可塑性樹脂素材を流体圧により金型の内面に向けて膨張させ、中空成形品を成形する一般的な方法である。
本発明の熱可塑性樹脂中空成形品では、スチレンブタジエンエラストマ(SBエラストマ)60〜80重量部及びポリスチレン40〜20重量部を含み、かつ、スチレンブタジエンエラストマ及びポリスチレンの合計が100重量部である熱可塑性樹脂組成物が用いられる。そして、成形された熱可塑性樹脂中空成形品は、密度が985〜1023kg/m3となっている。このような条件の下で、熱可塑性樹脂中空成形品を成形すると、PVCのような塩素系材料を用いることなく、復元性、柔軟性および耐衝撃性が良好な熱可塑性樹脂中空成形品が得られる。
なお、熱可塑性樹脂組成物100重量部に対して、スチレンブタジエンエラストマの重量部が60重量部よりも少なくなると、熱可塑性樹脂中空成形品の柔軟性および復元性が低下し、スチレンブタジエンエラストマの重量部が80重量部よりも多くなると、中空成形品の成形加工性および耐衝撃性が低下する。また、熱可塑性樹脂組成物100重量部に対して、ポリスチレンの重量部が40重量部より多くなると、中空成形品の柔軟性および復元性が低下し、ポリスチレンの重量部が20重量部より少なくなると、中空成形品の成形加工性および耐衝撃性が低下する。また、熱可塑性樹脂中空成形品の密度が983kg/m3より低いと、中空成形品の耐衝撃性が低下し、密度が1005kg/m3より高いと、中空成形品の柔軟性、復元性および成形加工性が低下する。
本発明では、熱可塑性樹脂に含まれるポリスチレンとして耐衝撃性ポリスチレン(ハイインパクトポリスチレン)(HIPS)を用いるのが好ましい。ハイインパクトポリスチレン(HIPS)は、一般用ポリエチレン(GP)よりも耐衝撃性が約5〜10倍高いため、ポリスチレンとしてハイインパクトポリスチレンを用いることにより、中空成形品の耐衝撃性が向上する。
本発明では、熱可塑性樹脂中空成形品の多分散度が1.5〜2.0となるように、熱可塑性樹脂中空成形品を成形するのが好ましい。ここで、多分散度は、重量平均分子量Mwを数平均分子量Mnで除して得た値であり、Mw/Mnで示すことができる。一般に、多分散度が相対的に大きい成形品では、耐衝撃性が相対的に低くなる傾向があり、多分散度が相対的に小さい成形品では、耐衝撃性が相対的に高くなる傾向がある。中空成形品の多分散度が1.5〜2.0の範囲を外れた場合、すなわち中空成形品の多分散度が1.5より小さい場合は、中空成形品の柔軟性および復元性が低下し、中空成形品の多分散度Mw/Mnが2.0より大きい場合は、中空成形品の耐衝撃性が低下する。これに対して、本発明のように、多分散度Mw/Mnが1.5〜2.0の範囲になるように熱可塑性樹脂中空成形品を成形すると、復元性、柔軟性を低下させることなく耐衝撃性が良好な中空成形品が得ることができる。
本発明では、ブロー成形で一般に用いられるブロー成形用熱可塑性樹脂を用いても、柔軟性、復元性および耐衝撃性に優れた熱可塑性樹脂中空成形体を得ることができる。しかし、成形された熱可塑性樹脂中空成形品の表面に樹脂塗料を塗布し、中空成形品に印刷する場合は、熱可塑性樹脂としてブロー成形用熱可塑性樹脂をそのまま用いると、熱可塑性中空成形品に対する樹脂塗料の塗膜密着性が弱く、中空成形品に対する印刷性が悪くなる。そこで、本発明では、熱可塑性樹脂としてブロー成形用熱可塑性樹脂の代わりにインジェクション成形(射出成形)用熱可塑性樹脂を用いるのが好ましい。熱可塑性樹脂としてインジェクション成形用熱可塑性樹脂を用いると、中空成形品に対する樹脂塗料の塗膜密着性が良好になり、印刷性に優れた熱可塑性樹脂中空成形品が得られる。
本発明のように、スチレンブタジエンエラストマ60〜80重量部及びポリスチレン40〜20重量部を含み、かつ、スチレンブタジエンエラストマ及びポリスチレンの合計を100重量部の熱可塑性樹脂を用いて、密度が983〜1005kg/m3となるように熱可塑性樹脂中空成形品を成形すると、PVC等の塩素系材料を用いることなく、復元性、柔軟性および耐衝撃性に優れた熱可塑性樹脂中空成形品を得ることができる。
また、本発明によれば、熱可塑性樹脂としてインジェクション成形用熱可塑性樹脂を用いることにより、中空成形品に対する樹脂塗料の塗膜密着性が良好となり、印刷性に優れた熱可塑性樹脂中空成形品が得られる。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。まず、本発明の熱可塑性樹脂中空成形品の製造方法について説明する。この実施の形態では、成形材料である熱可塑性樹脂として、スチレンブタジエンエラストマ(SBエラストマ)、耐衝撃性ポリスチレン(ハイインパクトポリスチレン)(HIPS)及び安定剤の混合材料(台湾 Polychems社製、型番PSR.H8530)を用いた。この混合材料は、後述の実施例に示すように、スチレンブタジエンエラストマの重量部が60〜80重量部、ポリスチレンの重量部が40〜20重量部となり、かつ、スチレンブタジエンエラストマ及びポリスチレンの合計が100重量部となるように適宜配合される。この混合材料としては、後に詳しく説明するように、成形後の印刷性を考慮して、インジェクション用の熱可塑性樹脂材料を用いる。なお、熱可塑性樹脂に含まれる安定剤は、中空成形品の成形加工性を付与するために用いられる一般的な安定剤である。熱可塑性樹脂中に含まれる安定剤は、実施例、比較例を問わず、一律に2重量部となっている。
本実施の形態では、成形装置として、一般的に利用されているブロー成形器を用いる。この成形器を用いて、上記混合材料を、成形温度150〜180℃で軟化して金型に流し込み、これを冷却、乾燥して中空成形品を作成する。これらの中空成形品は、後述の実施例1〜3となる。なお、スチレンブタジエンエラストマおよびハイインパクトポリスチレンの重量部を変更し、または、スチレンブタジエンエラストマおよびハイインパクトポリスチレンの代わりに他の材料[ポリ塩化ビニル(PVC)、エチレン酢酸ビニル樹脂(EVA)等]を用いることにより、下記に示す比較例を作成することができる。
成形した中空成形品の寸法は、金型の形状・寸法に応じて適宜変更することができる。この例では、後述の性能評価(特に柔軟性、復元性、耐衝撃性)を考慮して、人間の掌の大きさに合うように、すなわち、人間の掌で中空成形品を持つことができかつ後述の柔軟性評価等の性能評価ができるように、略卵形の形状・寸法を有する中空成形品を成形する。成形された中空成形品の厚みは、約2mmとなっている。
中空成形品に着色を施す場合は、予め顔料を混合した熱可塑性樹脂材料を用いて成形すれば良い。顔料は、一般的なスチレンブタジエンエラストマ用の顔料を用いることができる。
また、中空成形品に印刷を施す場合は、成形後に樹脂塗料を塗布することが好ましい。樹脂塗料としては、安価で一般的なポリプロピレン樹脂塗料を用いることができる。しかしながら、後に示すように、熱可塑性樹脂塗料としてブロー成形用の材料を用いると、樹脂塗料の塗膜密着性が悪く、印刷性の良好な中空成形品が得られない結果となった。そこで、本実施の形態では、ブロー成形用熱可塑性樹脂材料に代えて、上述のインジェクション用熱可塑性樹脂を用いた。樹脂塗料の塗布は、一般的に利用されているタンポ印刷機(凹版オフセット印刷の一種)を用いて実施した。この例のように、インジェクション用熱可塑性樹脂をブロー成形した中空成形品に、ポリプロピレン樹脂塗料を塗布すると、後述のとおり、塗膜密着性が良好で剥離し難い(印刷性の良好な)中空成形品が得られる。
なお、本実施の形態では、性能評価(特に柔軟性、復元性、耐衝撃性)を考慮して、中空成形品を握りつぶすことができ、かつ、握りつぶした後に中空成形品が元の寸法に復元することができるように、すなわち、中空成形品の内部と外部で空気の出し入れを可能とするために、中空成形品の内部と外部を連通する直径約4mmの貫通孔が設けられている。この例では、貫通孔の数は1つであるが、複数設けても良いのは勿論である。なお、このような貫通孔を有する本実施の形態の中空成形品を、例えば水中で扱う(水中で握りつぶし元に戻す動作を行う)ことにより、玩具の水鉄砲として用いることができる。
本発明の実施の形態において、後述の性能評価を行うため、実施例及び比較例を作成した。まず本実施の形態において、実施例の比較の対象となる比較例について説明する。
[比較例1]
ポリ塩化ビニル(PVC) 100重量部
安定剤 2重量部
比較例1は、本発明の従来技術であり、塩素系材料を用いた熱可塑性樹脂中空成形品の配合である。
ポリ塩化ビニル(PVC) 100重量部
安定剤 2重量部
比較例1は、本発明の従来技術であり、塩素系材料を用いた熱可塑性樹脂中空成形品の配合である。
[比較例2]
エチレン酢酸ビニル樹脂(EVA) 100重量部
安定剤 2重量部
比較例2では、比較例1に対して、ポリ塩化ビニルの代替材料としてエチレン酢酸ビニル樹脂を用いた。
エチレン酢酸ビニル樹脂(EVA) 100重量部
安定剤 2重量部
比較例2では、比較例1に対して、ポリ塩化ビニルの代替材料としてエチレン酢酸ビニル樹脂を用いた。
[比較例3]
エチレンブタジエンエラストマ 100重量部
安定剤 2重量部
比較例3では、比較例1に対して、ポリ塩化ビニルの代替材料としてエチレンブタジエンエラストマを用いた。
エチレンブタジエンエラストマ 100重量部
安定剤 2重量部
比較例3では、比較例1に対して、ポリ塩化ビニルの代替材料としてエチレンブタジエンエラストマを用いた。
[比較例4]
エチレンブタジエンエラストマ 70重量部
エチレン酢酸ビニル樹脂 30重量部
安定剤 2重量部
比較例4では、比較例3に対して、エチレンブタジエンエラストマ30重量部を減量し、新たにエチレン酢酸ビニル樹脂30重量部を加えた。
エチレンブタジエンエラストマ 70重量部
エチレン酢酸ビニル樹脂 30重量部
安定剤 2重量部
比較例4では、比較例3に対して、エチレンブタジエンエラストマ30重量部を減量し、新たにエチレン酢酸ビニル樹脂30重量部を加えた。
[比較例5]
エチレンブタジエンエラストマ 90重量部
ハイインパクトポリスチレン 10重量部
安定剤 2重量部
比較例5では、比較例3に対して、エチレンブタジエンエラストマ10重量部を減量し、新たにハイインパクトポリスチレン10重量部を加えた。
エチレンブタジエンエラストマ 90重量部
ハイインパクトポリスチレン 10重量部
安定剤 2重量部
比較例5では、比較例3に対して、エチレンブタジエンエラストマ10重量部を減量し、新たにハイインパクトポリスチレン10重量部を加えた。
[比較例6]
エチレンブタジエンエラストマ 50重量部
ハイインパクトポリスチレン 50重量部
安定剤 2重量部
比較例6では、比較例3に対して、エチレンブタジエンエラストマ50重量部を減量し、新たにハイインパクトポリスチレン50重量部を加えた。
エチレンブタジエンエラストマ 50重量部
ハイインパクトポリスチレン 50重量部
安定剤 2重量部
比較例6では、比較例3に対して、エチレンブタジエンエラストマ50重量部を減量し、新たにハイインパクトポリスチレン50重量部を加えた。
[比較例7]
エチレンブタジエンエラストマ(ブロー成形用) 70重量部
ハイインパクトポリスチレン(ブロー成形用) 30重量部
安定剤 2重量部
比較例7は、印刷性評価のため、後述の実施例4の比較対象としてのみ用いられるものである。
エチレンブタジエンエラストマ(ブロー成形用) 70重量部
ハイインパクトポリスチレン(ブロー成形用) 30重量部
安定剤 2重量部
比較例7は、印刷性評価のため、後述の実施例4の比較対象としてのみ用いられるものである。
次に、本発明の実施例について説明する。
[実施例1]
エチレンブタジエンエラストマ 80重量部
ハイインパクトポリスチレン 20重量部
安定剤 2重量部
実施例1では、比較例1に対して、PVCの代替材料としてエチレンブタジエンエラストマ及びハイインパクトポリスチレンの配合材料を用いた。実施例1では、スチレンブタジエンエラストマおよびハイインパクトポリスチレンの合計に対して、ハイインパクトポリスチレンが20重量部配合されている。
エチレンブタジエンエラストマ 80重量部
ハイインパクトポリスチレン 20重量部
安定剤 2重量部
実施例1では、比較例1に対して、PVCの代替材料としてエチレンブタジエンエラストマ及びハイインパクトポリスチレンの配合材料を用いた。実施例1では、スチレンブタジエンエラストマおよびハイインパクトポリスチレンの合計に対して、ハイインパクトポリスチレンが20重量部配合されている。
[実施例2(実施例4)]
エチレンブタジエンエラストマ 70重量部
ハイインパクトポリスチレン 30重量部
安定剤 2重量部
実施例2では、実施例1に対して、エチレンブタジエンエラストマ10重量部を減量し、ハイインパクトポリスチレンを10重量部増量した。言い換えると、実施例2では、スチレンブタジエンエラストマおよびハイインパクトポリスチレンの合計に対して、ハイインパクトポリスチレンが30重量部配合されている。なお、この実施例は、副次的に行われる印刷性評価にも用いることができ、インジェクション用熱可塑性樹脂を用いた実施例4と兼用される。
[実施例3]
エチレンブタジエンエラストマ 60重量部
ハイインパクトポリスチレン 40重量部
安定剤 2重量部
実施例3では、実施例1に対して、エチレンブタジエンエラストマを20重量部減量し、ハイインパクトポリスチレンを20重量部増量した。言い換えると、実施例3では、スチレンブタジエンエラストマおよびハイインパクトポリスチレンの合計に対して、ハイインパクトポリスチレンが40重量部配合されている。
エチレンブタジエンエラストマ 70重量部
ハイインパクトポリスチレン 30重量部
安定剤 2重量部
実施例2では、実施例1に対して、エチレンブタジエンエラストマ10重量部を減量し、ハイインパクトポリスチレンを10重量部増量した。言い換えると、実施例2では、スチレンブタジエンエラストマおよびハイインパクトポリスチレンの合計に対して、ハイインパクトポリスチレンが30重量部配合されている。なお、この実施例は、副次的に行われる印刷性評価にも用いることができ、インジェクション用熱可塑性樹脂を用いた実施例4と兼用される。
[実施例3]
エチレンブタジエンエラストマ 60重量部
ハイインパクトポリスチレン 40重量部
安定剤 2重量部
実施例3では、実施例1に対して、エチレンブタジエンエラストマを20重量部減量し、ハイインパクトポリスチレンを20重量部増量した。言い換えると、実施例3では、スチレンブタジエンエラストマおよびハイインパクトポリスチレンの合計に対して、ハイインパクトポリスチレンが40重量部配合されている。
<性能評価>
次に各実施例および比較例の性能評価を行った。
次に各実施例および比較例の性能評価を行った。
[非塩素系化の評価]
比較例及び実施例の配合成分に塩素系材料が含まれていないかどうかを確認し、○または×で非塩素系化の評価を行った。なお、○は塩素系材料が含まれている場合、×は塩素系材料が含まれていない場合とした。
比較例及び実施例の配合成分に塩素系材料が含まれていないかどうかを確認し、○または×で非塩素系化の評価を行った。なお、○は塩素系材料が含まれている場合、×は塩素系材料が含まれていない場合とした。
[成形加工性の評価]
中空成形品サンプルの外観から、形態変形、成形ムラ等が発生していないかを目視で確認し、◎、○、△または×で成形加工性の評価を行った。なお、◎は非常に良好、○は良好、△はやや不良(成形品の表面にムラが生じた場合等)、×は不良(成形不可、または成形品にひび・割れが発生した場合等)。
中空成形品サンプルの外観から、形態変形、成形ムラ等が発生していないかを目視で確認し、◎、○、△または×で成形加工性の評価を行った。なお、◎は非常に良好、○は良好、△はやや不良(成形品の表面にムラが生じた場合等)、×は不良(成形不可、または成形品にひび・割れが発生した場合等)。
[柔軟性の評価]
中空成形品サンプルを握りつぶすときの感触を確認し、◎、○、△または
×で柔軟性の評価を行った。なお、◎は非常に良好、○は良好、△はやや不良、×は不良。
中空成形品サンプルを握りつぶすときの感触を確認し、◎、○、△または
×で柔軟性の評価を行った。なお、◎は非常に良好、○は良好、△はやや不良、×は不良。
[復元性の評価]
中空成形品サンプルを握りつぶした後に、元に戻る状態を目視で確認し、◎、○、△または×で復元性の評価を行った。なお、◎は非常に良好、○は良好、△はやや不良、×は不良。
中空成形品サンプルを握りつぶした後に、元に戻る状態を目視で確認し、◎、○、△または×で復元性の評価を行った。なお、◎は非常に良好、○は良好、△はやや不良、×は不良。
[耐衝撃性の評価]
中空成形品サンプルを握りつぶす動作を1000繰り返した後のサンプルの状態(亀裂、ひび割れ等がないか)を目視で確認し、◎、○、△または×で耐衝撃性の評価を行った。なお、◎は非常に良好、○は良好、△はやや不良、×は不良。
中空成形品サンプルを握りつぶす動作を1000繰り返した後のサンプルの状態(亀裂、ひび割れ等がないか)を目視で確認し、◎、○、△または×で耐衝撃性の評価を行った。なお、◎は非常に良好、○は良好、△はやや不良、×は不良。
[総合評価]
上記の性能評価項目(非塩素系化、成形加工性、柔軟性、復元性および耐衝撃性)のうち、◎および/または○のみがある場合は、総合評価を○とした(非塩素系化を除く全ての評価項目が◎の場合は、総合評価を◎とした)。また、×は無いが1つでも△があった場合は、総合評価を△とした。また、1つでも×があった場合は、◎、○、△の有無に拘わらず総合評価を×とした。
上記の性能評価項目(非塩素系化、成形加工性、柔軟性、復元性および耐衝撃性)のうち、◎および/または○のみがある場合は、総合評価を○とした(非塩素系化を除く全ての評価項目が◎の場合は、総合評価を◎とした)。また、×は無いが1つでも△があった場合は、総合評価を△とした。また、1つでも×があった場合は、◎、○、△の有無に拘わらず総合評価を×とした。
比較例1は、従来の熱可塑性樹脂中空成形品であり、成形加工性、柔軟性、復元性、耐衝撃性はいずれも◎となった。しかしながら、非塩素系化は×であるため、比較例1の総合評価は×となった。
比較例2は、非塩素系化、成形加工性および柔軟性は○であった。しかしながら、復元性が×となったため、比較例2の総合評価は×となった。なお、比較例2では、復元性が×であったため、耐衝撃性は確認していない(−)。
比較例3は、非塩素系化および復元性は○であり、柔軟性は◎であった。しかしながら、成形加工性が×であったため、比較例3の総合評価は×となった。なお、比較例3では、成形加工性が×であったため、耐衝撃性は確認していない(−)。
比較例4は、非塩素系化、成形加工性および柔軟性は○であったが、復元性が△であり、耐衝撃性が×であった。したがって、比較例4の総合評価は×となった。
比較例5は、非塩素系化および柔軟性は○であった。しかしながら、成形加工性、復元性及び耐衝撃性は△であったため、比較例5の総合評価は△となった。
比較例6は、非塩素系化および成形加工性は○であり、耐衝撃性は△であった。しかしながら、柔軟性及び復元性は×となったため、比較例6の総合評価は×となった。
実施例1は、非塩素系化および成形加工性は○であり、柔軟性、復元性および耐衝撃性は◎であった。実施例1の総合評価は○であった。
実施例2は、非塩素系化は○であり、成形加工性、柔軟性、復元性および耐衝撃性は◎であった。実施例2の総合評価は◎であった。
実施例3は、非塩素系化、柔軟性、復元性および耐衝撃性は○であり、成形加工性は◎であった。実施例3の総合評価は○であった。
以上の比較例および実施例の評価結果(印刷性評価を除く)を説明すると、まず従来の熱可塑性樹脂成形品の材料であるポリ塩化ビニル(比較例1)の代替材料として、エチレン酢酸ビニル樹脂の採用(比較例2)を試みたところ、良好な結果は得られなかった。また、スチレンブタジエンエラストマの採用(比較例3)を試みたところ、柔軟性および復元性の改善は認められたものの、成形加工性の改善は認められなかった。さらに、スチレンブタジエンエラストマにエチレン酢酸ビニル樹脂の配合(比較例4)を試みたところ、成形加工性は良好となったものの、耐衝撃性の改善は認められなかった。
そこで、エチレン酢酸ビニル樹脂の代わりにポリスチレン(ハイインパクトポリスチレン)20重量部をスチレンブタジエンエラストマ80重量部に加えたところ(実施例1)、柔軟性、復元性および耐衝撃性が良好な熱可塑性樹脂中空成形品が得られた。
次に、スチレンブタジエンエラストマおよびポリスチレンとの配合割合の臨界点を確認するため、配合割合を変えて、中空成形品の評価を確認した(比較例5、比較例6、実施例2および実施例3)。まず、スチレンブタジエンエラストマ90重量部及びポリスチレン10重量部(比較例5)、スチレンブタジエンエラストマ50重量部及びハイインパクトポリスチレン50重量部(比較例6)では総合評価が良好な中空成形品は得られなかった。
これに対して、スチレンブタジエンエラストマ70重量部及びポリスチレン30重量部(実施例2)、スチレンブタジエンエラストマ60重量部及びハイインパクトポリスチレン40重量部(実施例3)では総合評価が良好な熱可塑性樹脂中空成形品が得られなかった。
これらの結果から、スチレンブタジエンエラストマおよびポリスチレン(ハイインパクトポリスチレン)の重量部の合計が100重量部(これに安定剤2重量部が加えられた)の条件の下、スチレンブタジエン60重量部〜80重量部およびポリスチレン(ハイインパクトポリスチレン)20重量部〜40重量部の配合割合の熱可塑性樹脂から成形した中空成形品は、非塩素系化、成形加工性、柔軟性、復元性および耐衝撃性のいずれも良好となった。特に実施例2の総合評価が最も良好な結果となった。
なお、中空成形品への印刷は、任意に行われるため、総合評価の項目から印刷性の評価は除外している。したがって、印刷性の評価は、上記総合評価とは別に、以下のように副次的に行った。
[印刷性の評価]
中空成形品にポリプロピレン塗料(PP塗料)を塗布して乾燥した後に形成された塗膜の密着性(印刷性)を目視で確認し、○、△または×で印刷性の評価を行った。なお、○は良好、△はやや不良(耐衝撃性試験中に塗膜が剥離等)、×は不良(印刷不可)。次に印刷性の評価の結果について説明する。印刷性の評価の結果を表3に示す。
中空成形品にポリプロピレン塗料(PP塗料)を塗布して乾燥した後に形成された塗膜の密着性(印刷性)を目視で確認し、○、△または×で印刷性の評価を行った。なお、○は良好、△はやや不良(耐衝撃性試験中に塗膜が剥離等)、×は不良(印刷不可)。次に印刷性の評価の結果について説明する。印刷性の評価の結果を表3に示す。
比較例7は、実施例2と同じ配合割合で、実施例2と同じブロー成形用熱可塑性樹脂を用いた中空成形体である(表1参照)。また実施例4は、実施例2と配合割合は同じだが、インジェクション成形用熱可塑性樹脂を用いた中空成形体である点で実施例2と異なる(表1参照)。比較例7と実施例4の印刷性を評価したところ、比較例7の印刷性の評価が×であったのに対して、実施例4の印刷性の評価は○であった。この結果は、ブロー成形により成形されるにも拘わらず、成形材料としてブロー成形用熱可塑性樹脂材料よりも、インジェクション成形用熱可塑性樹脂材料を用いた方が、印刷性が良好になることを示している。
<物性の確認>
[密度の測定]
上記の性能評価が終了した一部の比較例及び実施例(スチレンブタジエンエラストマ及びハイインパクトポリスチレンの配合のみ)について、中空成形品の密度を測定した。具体的には、比較例3,5,6及び実施例1〜3の中空成形品から、一部をカミソリで切り出したものを密度測定用サンプルとし、これらのサンプルを密度勾配管(恒温水槽付き)(池田理化社製RMB−6)に投入して、15分後の位置から各サンプルの密度を測定した。密度の測定結果を表4に示す。
[密度の測定]
上記の性能評価が終了した一部の比較例及び実施例(スチレンブタジエンエラストマ及びハイインパクトポリスチレンの配合のみ)について、中空成形品の密度を測定した。具体的には、比較例3,5,6及び実施例1〜3の中空成形品から、一部をカミソリで切り出したものを密度測定用サンプルとし、これらのサンプルを密度勾配管(恒温水槽付き)(池田理化社製RMB−6)に投入して、15分後の位置から各サンプルの密度を測定した。密度の測定結果を表4に示す。
[多分散度の測定]
上記の性能評価が終了した一部の比較例及び実施例(スチレンブタジエンエラストマ及びハイインパクトポリスチレンの配合のみ)について、中空成形品の多分散度を測定した。具体的には、まず、密度の測定と同様に、比較例3,5,6及び実施例1〜3の中空成形品から、一部をカミソリで切り出したものをプレサンプルとし、これを30mg秤量した。秤量したプレサンプルをo−ジクロロベンゼン20mlに145℃で溶解させてプレサンプル溶液とした。このプレサンプル溶液は若干白濁した。次にこのプレサンプル溶液を孔径が0.45μmの焼結フィルターでろ過し、ろ過液を多分散度測定用サンプルとした。このとき、ろ過液は透明であった。次に、クロス分別クロマトグラフィー(CFC)装置(三菱油化製T−150A型)を用いたクロマトグラフィーを実施し、平均分子量を測定し分子量曲線を作成した。なお、分子量の校正は、ポリスチレン換算でおこなった。
上記の性能評価が終了した一部の比較例及び実施例(スチレンブタジエンエラストマ及びハイインパクトポリスチレンの配合のみ)について、中空成形品の多分散度を測定した。具体的には、まず、密度の測定と同様に、比較例3,5,6及び実施例1〜3の中空成形品から、一部をカミソリで切り出したものをプレサンプルとし、これを30mg秤量した。秤量したプレサンプルをo−ジクロロベンゼン20mlに145℃で溶解させてプレサンプル溶液とした。このプレサンプル溶液は若干白濁した。次にこのプレサンプル溶液を孔径が0.45μmの焼結フィルターでろ過し、ろ過液を多分散度測定用サンプルとした。このとき、ろ過液は透明であった。次に、クロス分別クロマトグラフィー(CFC)装置(三菱油化製T−150A型)を用いたクロマトグラフィーを実施し、平均分子量を測定し分子量曲線を作成した。なお、分子量の校正は、ポリスチレン換算でおこなった。
このクロマトグラフィーは、GPCカラム(昭和電工社製のShodex AT−806MS×3本)を用いて、GPCモード(GPC−IRモード)で実施した。このクロマトグラフィーでは、カラム温度を140℃とし、カラム校正には単分散ポリスチレン(東ソー社製)を用いた。また、このクロマトグラフィーでは、溶離液としてo−ジクロロベンゼン(ODCB)を用い、流速を1.0ml/min、試料濃度を30mg/20ml、注入量を500μl、サンプリング間隔を0.5sとした。なお、流量校正用の外部標準物質として、0.05%のジブチルヒドロキシトルエン(BHT)溶液を用いた。なお、各サンプルを通常の屈折率計で検出すると、スチレン成分とブタジエン成分のポラリティが反対となる。そのため、本実施の形態では、組成による検出レスポンスの変化が小さい赤外分光光度計(IR)(Miran社製1ACVF型)で検出した。検出波長は、3.42μmで行った。算出された重量平均分子量、数平均分子量、多分散度の測定結果を表5に示す。
これらの測定結果から、性能評価が良好な実施例1〜3の中空成形品では、密度が983〜1005kg/m3、多分散度がMw/Mn1.5〜2.0の範囲となった。
このように、本発明の実施の形態により、ポリ塩化ビニルのような塩素系材料を用いることなく、また成形加工性を低下させることなく、従来のPVC材料を用いた中空成形品と同様の柔軟性、復元性および耐衝撃性を有する熱可塑性樹脂中空成形品を得ることができる。
Claims (4)
- 熱可塑性樹脂組成物を原材料として、ブロー成形により成形されてなる熱可塑性樹脂中空成形品であって、
前記熱可塑性樹脂組成物は、スチレンブタジエンエラストマ60〜80重量部及びポリスチレン40〜20重量部を含み、かつ、前記スチレンブタジエンエラストマ及び前記ポリスチレンの合計が100重量部であり、
密度が983〜1005kg/m3であることを特徴とする熱可塑性樹脂中空成形品。 - 前記ポリスチレンが、ハイインパクトポリスチレンである請求項1に記載の熱可塑性樹脂中空成形品。
- 重量平均分子量Mwを数平均分子量Mnで除して得た多分散度Mw/Mnが1.5〜2.0である請求項2に記載の熱可塑性樹脂中空成形品。
- 前記熱可塑性樹脂組成物は、インジェクション成形用熱可塑性樹脂組成物である請求項1乃至3に記載の熱可塑性樹脂中空成形品。
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