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JP2008069159A - 持続放出ラノラジン製剤 - Google Patents

持続放出ラノラジン製剤 Download PDF

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Abstract

【課題】ピークの変動を生じることなく血漿中ラノラジンが最小有効レベル付近に維持されるように、ラノラジン投与が投与される、不整脈、異型および運動誘発狭心症並びに心筋梗塞から選択される心血管疾患に罹患しているヒト患者を治療する方法の提供。
【解決手段】持続放出ラノラジン製剤が、ラノラジンと、pH4.5以下の水性媒体ではほとんど不溶でpH4.5以上の水性媒体では溶性であるフィルムを形成するように、部分的に中和したpH依存的結合剤の密接な混合物を含む。本製剤は、1日2回のラノラジン投与に適し、ラノラジンの溶解速度を制御してヒト血漿中ラノラジンレベルを850〜4000ng/mLに維持するために有用である。
【選択図】なし

Description

(発明の背景)
本出願は、1999年5月27日に提出された、同時係属中の米国特許出願番号09/321,522号の一部継続出願であり、これは、1998年9月10日に提出された米国仮特許出願番号60/099804号の優先権を主張する。
1.発明の分野
本発明は、経口投与する持続放出ラノラジン投与製剤を使用して、ヒト血漿中ラノラジンレベルを治療レベルに維持する方法に関する。
2.当分野の説明
米国特許第4,567,264号(この明細書は本願に参照として組み込む)は、ラノラジン、(±)−N−(2,6−ジメチルフェニル)−4−[2−ヒドロキシ−3−(2−メトキシフェノキシ)−プロピル]−1−ピペラジンアセトアミド、およびその医薬的に許容される塩、並びに、不整脈、異型および運動誘発狭心症、および心筋梗塞を含む心血管疾患の治療におけるその使用を開示する。
米国特許第5,506,229号(これは本願に参照として組み込む)は、心筋麻痺、心筋または骨格筋または脳組織に対する低酸素または再灌流による損傷を含む、物理的または化学的侵襲を受けた組織を治療する、および、移植に使用する、ラノラジン並びにその医薬的に許容される塩およびエステルの使用を開示する。放出制御製剤を含む、従来の経口および非経口製剤を開示する。特に、米国特許第5,506,229号の実施例7Dは、放出制御ポリマーでコーティングしたラノラジンおよび微結晶セルロースのミクロスフェアを含む、カプセル形の放出制御製剤を記載する。
ラノラジン並びにその医薬的に許容される塩およびエステルの現在好ましい投与経路は経口である。典型的な経口投与形は、圧縮錠剤、粉末混合物または顆粒を充填した硬ゼラチンカプセル、或いは溶液または懸濁液を充填した軟ゼラチンカプセル(ソフトゲル)である。米国特許第5,472,707号(この明細書は本願に参照として組み込む)は、硬ゼラチンカプセルまたはソフトゲルの充填溶液として、過冷却液体ラノラジンを使用した、高用量経口製剤を開示する。
出願実施例3に示すように、狭心症に罹患しているヒトにおけるラノラジンの初回試験は失敗であった。試験では、1日3回、120mgの投与レベルで服用する即時放出ラノラジン製剤を使用した。初回実験に基づくと、狭心症に対して有効である量および様式で、ラノラジンをヒトに投与できるかどうかは不確かであった。
従来の経口投与製剤における1つの問題は、ラノラジンおよびその医薬的に許容される塩に対しては、それらが完全に適してはいないことであり、それはラノラジンの溶解度が、胃内部で生じる低いpHにおいては、比較的高いためである。さらにラノラジンは、血漿中の半減期も比較的短い。酸への溶解度が高いというラノラジンの特性によって、大きくかつ望ましくないラノラジンの血漿中濃度の変動を引き起こす急速な薬物の吸収およびクリアランスが生じ、作用時間が短くなり、このために、適切な治療のためには頻繁な経口投与が必要となる。
従って、ヒト狭心症の治療においては、血漿中治療有効濃度のラノラジンを提供する、経口投与形のラノラジンを1日1または2回投与する方法が必要とされる。
(発明の要約)
第一の態様において、本発明は、製剤の大半が活性ラノラジンからなる、持続放出ラノラジン製剤である。
別の態様において、本発明は、持続放出ラノラジン製剤を患者に1日1または2回投与することによる、狭心症または他の冠血管疾患に罹患しているヒト患者の治療法である。
さらに別の態様において、本発明は、ピークの変動を生じることなく血漿中ラノラジンが最小有効レベル付近に維持されるように、本発明の持続放出ラノラジン製剤を1日1または2回投与することを含む、ラノラジン投与が指示される疾患状態を有する、哺乳動物の治療法である。
本発明のさらに別の態様は、ラノラジン含有投与形を1日1回のみ、または2回のみ投与することにより、有用なヒト血漿中ラノラジンレベルを維持する方法である。
本発明は、不整脈、異型および運動誘発狭心症並びに心筋梗塞から選択される心血管疾患に罹患しているヒト患者を治療する方法を含む。該方法は、1回の投与あたり2個以下の錠剤で、少なくとも50重量%のラノラジンを含む持続放出医薬投与形をヒト患者に投与し、ヒト患者の血漿中ラノラジンレベルを少なくとも24時間、少なくとも850ng塩基/mLに維持することを含み、ここでの投与は、24時間におよび1回、2回および3回から選択した頻度で行われる。
本発明はさらに、不整脈、異型および運動誘発狭心症並びに心筋梗塞から選択した心血管疾患に罹患しているヒト患者を治療する方法を含む。該方法は、1回の投与あたり2個以下の錠剤で、約70から約80重量%のラノラジンを含む持続放出医薬投与形をヒト患者に投与し、ヒト患者の血漿中ラノラジンレベルを少なくとも24時間、約850から約4000ng塩基/mLに維持することを含み、ここでの投与は、24時間におよび1回および2回から選択した頻度で投与する。
(発明の詳細な説明)
「ラノラジン」は、化合物(±)−N−(2,6−ジメチルフェニル)−4−[2−ヒドロキシ−3−(2−メトキシフェノキシ)プロピル]−1−ピペラジン−アセトアミド、またはそのエナンチオマーである(R)−(+)−N−(2,6−ジメチルフェニル)−4−[2−ヒドロキシ−3−(2−メトキシフェノキシ)−プロピル]−1−ピペラジンアセトアミドおよび(S)−(−)−N−(2,6−ジメチルフェニル)−4−[2−ヒドロキシ−3−(2−メトキシフェノキシ)−プロピル]−1−ピペラジンアセトアミドおよびその医薬的に許容される塩、並びにそれらの混合物である。特記しない限り、明細書および実施例で使用した血漿中ラノラジン濃度は、ラノラジン遊離塩基を意味する。
「任意」および「任意に」は、その後に記載される事象または状況が、起こっても起こらなくてもよく、そしてその記載は、事象または状況が起こる場合および起こらない場合を含む、ということを意味する。例えば、「任意の医薬賦形剤」は、このように記載した製剤は、存在すると具体的に記載したもの以外の医薬賦形剤を含んでも含まなくてもよく、このように記載した製剤は、任意の賦形剤が存在する場合および存在しない場合を含むことを示す。
「治療する」および「治療」は、哺乳動物、特にヒトの疾患の何らかの治療を意味し、
(i)疾患の素因があり得るが、疾患に罹患しているとはまだ診断されていない、被検者に発生する疾患を予防する;
(ii)疾患を阻止、すなわちその発達を抑止する;または
(iii)疾患を寛解、すなわち疾患の退行を引き起こすこと、
を含む。
「即時放出」(「IR」)は、インビトロで迅速に溶け、胃または上部消化管で完全に溶解し吸収されることを目的とする、製剤または投与単位を意味する。慣用的には、該製剤は、投与後30分以内に、活性成分の少なくとも90%を放出する。
「持続放出」(「SR」)は、約6時間またはそれ以上の期間をかけて、胃および消化管でゆっくりと連続的に溶解および吸収される、本発明の製剤または投与単位を意味する。好ましい持続放出製剤は、下記のように、1回の投与あたり2個以下の錠剤で、1日2回以下投与するのに適した、血漿中ラノラジン濃度を示すものである。
血漿中ラノラジン濃度は、最小5人から最大10人までの、同じ投与スケジュールにあるヒトのラノラジンの濃度を分析することにより決定した平均濃度である。ある人のラノラジンの代謝を平均的な人より速くまたは遅くし得る、体重、代謝、または疾患状態の差異によって引き起こされ得る個体間のラノラジン濃度変動があるために、ラノラジン濃度は平均値であることが重要である。血漿中ラノラジンレベルは、ヘパリン上に採血した血液から決定する。
本出願に使用した他の用語の定義は以下の通りである:
ANOVA=分散分析
ATP=アデノシン三リン酸
ECG=心電図
ETT=運動トレッドミル試験
PDH=ピルビン酸デヒドロゲナーゼ
max=最大濃度
trough=IR製剤の投与8時間後および実施例2のSR製剤A〜Cの投与12時間後における残留濃度
tid=1日3回
bid=1日2回
=時間xにおける濃度
max=最大濃度までの時間
AUC=x時間後または時間間隔における曲線下面積
示した%は、特記しない限り重量%である。本発明は、持続放出ラノラジン投与形、並びに、本発明の持続放出ラノラジン投与形を投与して、ラノラジンの治療血漿中レベルを提供する方法に関する。
本発明の持続放出ラノラジン製剤は、好ましくは、胃内部(典型的には約2)および腸内(典型的には約5.5)のpH範囲の水性媒体でのラノラジン溶解速度を制御する、ラノラジンと部分中和pH依存的結合剤の密接な混合物を含む、圧縮錠剤形である。
ラノラジンの持続放出を提供するために、製剤が胃および消化管を通過する間にゆっくりとかつ連続的にラノラジンを放出するよう、1つ以上のpH依存的結合剤を選択して、ラノラジン製剤の溶出プロファイルを制御する。pH依存的結合剤(群)の溶解制御能は、持続放出ラノラジン製剤では特に重要であり、これは1日2回投与に十分なラノラジンを含む持続放出製剤は、ラノラジンがあまりにも急速に放出された場合には、望ましくない副作用を引き起こし得るからである(「投与ダンピング」)。
従って、本発明での使用に適したpH依存的結合剤は、胃内部(pHは約4.5以下である)における滞留中には、錠剤から薬物の急速な放出を阻止し、下部消化管内(pHは一般に約4.5より高い)においては、投与形からの治療量のラノラジンの放出を促進するものである。医薬分野で「腸溶性」結合剤およびコーティング剤として公知の多くの材料が、所望のpH溶解特性を有する。これらは、ビニルポリマーおよびコポリマーのフタル酸誘導体などのフタル酸誘導体、ヒドロキシアルキルセルロース、アルキルセルロース、セルロースアセテート、ヒドロキシアルキルセルロースアセテート、セルロースエーテル、アルキルセルロースアセテート、およびその部分エステル、並びに、低級アルキルアクリル酸および低級アルキルアクリレートのポリマーおよびコポリマー、およびそのエステルを含む。
持続放出製剤を創造するためにラノラジンと共に使用できる好ましいpH依存的結合剤の材料は、メタクリル酸コポリマーである。メタクリル酸コポリマーは、メタクリル酸と、中性アクリレートまたはメタクリレートエステル、例えばアクリル酸エチルまたはメタクリル酸メチルとのコポリマーである。最も好ましいコポリマーは、USPのC型メタクリル酸コポリマーである(これは、46.0%〜50.6%のメタクリル酸単位を有するメタクリル酸とアクリル酸エチルのコポリマーである)。該コポリマーは、Eudragit(商標)L100−55(粉末として)またはL30D−55(水中30%分散液として)としてRohm Pharmaから商業的に入手できる。持続放出ラノラジン投与形で単独でまたは組合せて使用し得る、他のpH依存的結合剤の材料は、ヒドロキシプロピルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、セルロースアセテートフタレート、ポリビニルアセテートフタレート、ポリビニルピロリドンフタレート等を含む。1つ以上のpH依存的結合剤が、本発明のラノラジン投与形に、約1から約20重量%、より好ましくは約5から約12重量%、最も好ましくは約10重量%の範囲の量で存在する。
1またはそれ以上のpH非依存的結合剤を、持続放出ラノラジン経口投与形に使用してもよい。pH依存的結合剤および粘度増強剤、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、中性ポリ(メタ)アクリレートエステル等は、それ自体、同定したpH依存的結合剤により付与される必要な溶解制御を与えないことを注記する。pH非依存的結合剤は、本発明の製剤に、約1から約10重量%の範囲の量で、好ましくは約1から約3重量%の範囲の量で、最も好ましくは約2.0重量%で存在する。
表1に示したように、ラノラジンは、約6.5以上のpHを有する水溶液には比較的不溶性であるが、溶解度はおよそ6以下のpHでは劇的に増加し始める。
Figure 2008069159
製剤中のpH依存的結合剤含量を増加することにより、胃で見られる典型的なpHである4.5以下において、製剤からのラノラジンの放出速度は減少する。結合剤により形成される腸溶性コーティングはより溶解度が低く、ラノラジンの溶解度がより低いpH4.5以上では、相対的放出速度は増加する。pH依存的結合剤を適切に選択することにより、低いpHでの放出速度に大きく影響を及ぼしつつ、pH4.5以上においては製剤からのラノラジン放出速度をより速くすることができる。結合剤を部分中和することで、個々のラノラジン顆粒の周囲に形成されるラテックス様フィルムへの結合剤の変換が促進される。従って、pH依存的結合剤の種類および量並びに部分中和組成物の量を選択して、製剤からのラノラジンの溶解速度を緊密に制御する。
本発明の投与形は、低いpH(約4.5以下)で溶解速度が有意に遅くなるように、そこからのラノラジンの放出速度が制御される持続放出製剤の作成に十分な量のpH依存的結合剤を有するべきである。USP(Eudragit(商標)L100−55)C型のメタクリル酸コポリマーの場合、適切な量のpH依存的結合剤は、5%〜15%である。pH依存的結合剤は、典型的には、結合剤のメタクリル酸カルボキシル基の約1から約20%が中和されている。しかし、中和程度は約3から約6%であることが好ましい。
持続放出製剤はまた、ラノラジンおよびpH依存的結合剤と密接に混合した医薬賦形剤を含み得る。医薬的に許容される賦形剤は、例えば、ヒドロキシルプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、中性ポリ(メタ)アクリル酸エステル(例えばRohm Pharmalより登録商標Eudragit(商標)NEとして販売されているメタクリル酸メチル/アクリル酸エチルコポリマー)、澱粉、ゼラチン、糖、カルボキシメチルセルロース、等のような、pH依存的結合剤またはフィルム形成剤を含み得る。他の有用な医薬賦形剤は、希釈剤、例えばラクトース、マンニトール、乾燥澱粉、微結晶セルロース等;表面活性化剤、例えばポリオキシエチレンソルビタンエステル、ソルビタンエステル等;および着色剤および芳香剤を含む。潤滑剤(例えばタルクおよびステアリン酸マグネシウム)および他の錠剤化補助剤も所望により存在する。
本発明の持続放出ラノラジン製剤は、約50重量%から約95重量%以上、より好ましくは約70重量%から約90重量%、最も好ましくは約70から約80重量%のラノラジン含量;5%〜40%、好ましくは5%〜25%、より好ましくは5%〜15%のpH依存的結合剤含量を有し;投与形の残りは、pH非依存的結合剤、充填剤、および他の任意の賦形剤を含む。
本発明の特に好ましい持続放出ラノラジン製剤は、実質的に以下からなる:
Figure 2008069159
本発明の持続放出ラノラジン製剤は、以下のように調製する:ラノラジンおよびpH依存的結合剤およびいずれかの任意の賦形剤を密接に混合(乾燥混合)する。乾燥混合混合物はその後、混合した粉末へ噴霧する強塩基水溶液の存在下で造粒する。顆粒を乾燥し、ふるいにかけ、任意の潤滑剤(例えばタルクまたはステアリン酸マグネシウム)と混合し、圧縮して錠剤にする。好ましい強塩基の水溶液は、アルカリ金属水酸化物、例えば水酸化ナトリウムまたはカリウム、好ましくは水酸化ナトリウムの水溶液(所望により25%までの低級アルコールなどの水混和性溶媒を含む)である。
得られたラノラジン含有錠剤は、同定、味遮蔽目的で、および嚥下し易さを向上させるために、所望のフィルム形成剤でコーティングし得る。フィルム形成剤は、典型的には、錠剤重量の2%〜4%の範囲の量で存在する。適切なフィルム形成剤は、当分野で公知であり、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カチオン性メタクリル酸コポリマー(ジメチルアミノエチルメタクリレート/メチル−ブチルメタクリレートコポリマー−Eudragit(商標)E-Rohm Pharma)等々を含む。これらのフィルム形成剤は、所望により、着色剤、可塑剤、および他の補足的な成分を含み得る。
圧縮錠剤は、好ましくは、8Kp圧縮に耐えるに十分な硬度を有する。錠剤サイズは、主に、錠剤中のラノラジンの量に依存する。錠剤は、300から1100mgのラノラジン遊離塩基を含む。好ましくは、錠剤は、400〜600mg、650〜850mg、および900〜1100mgの範囲のラノラジン遊離塩基の量を含む。
溶解速度に影響を及ぼすために、ラノラジン含有粉末を湿式混合する間の時間を制御する。好ましくは、全粉末混合時間、すなわち粉末を水酸化ナトリウム溶液に暴露する間の時間は、1から10分間、好ましくは2から5分間の範囲である。造粒後、粒子を造粒機から取り出し、乾燥のために約60℃の流動床乾燥機に入れる。
驚くべきことに、これらの方法により、より医薬的に一般的なラノラジン二塩酸塩として、または別の塩またはエステルとしてではなく、ラノラジンをその遊離塩基として使用した場合、投与後12時間およびそれ以上まで、より低いピークの血漿中ラノラジンレベルで依然として効果的な血漿中ラノラジン濃度を与える、持続放出ラノラジン製剤が得られることが判明した。ラノラジン遊離塩基の使用により、少なくとも1つの利点が得られる:ラノラジン遊離塩基の分子量はラノラジン二塩酸塩の僅か85%であるので、錠剤におけるラノラジンの比率を増加できる。このように、投与単位の物理的サイズを制限しつつ、有効量のラノラジンの送達が達成される。
本発明の持続放出ラノラジン製剤の別の利点は、それらが溶媒として実質的に水のみを含む、標準的な医薬的加工技術および装置を使用するプロセスにより調製されることである。
本発明の持続放出ラノラジン製剤は、不整脈、異型および運動誘発狭心症及び心筋梗塞を含む、心血管疾患の治療に;心臓麻痺、心筋または骨格筋または脳組織に対する低酸素または再灌流損傷、および虚血を含む物理的または化学的損傷を受けた組織の治療に;および間欠性跛行などの末梢動脈疾患に使用できる。持続放出投与製剤は、哺乳動物の抗狭心症剤として、最も好ましくはヒト抗狭心症剤として使用することが最も好ましい。
本発明の経口持続放出ラノラジン投与製剤は、24時間の期間中に、1回、2回または3回投与して、域値治療レベルより高く、最大耐容レベルより低い、約550〜7500ng塩基/mLの患者の血漿中ラノラジンレベルを維持する。これは、約644ng/mLから約8782ng/mLの範囲のラノラジン2HClの量に対応する。さらに、ラノラジン経口投与形の経口摂取の時期は、確実に、血漿中ラノラジンレベルが約7500ng塩基/mLを超えない、好ましくは血漿中ラノラジンレベルが約5000ng塩基/mLを超えない、最も好ましくは3800ng塩基/mLを超えないように制御すべきである。ピーク血漿中ラノラジンレベルを約ng塩基/mL以下に制限することが有益であり得る場合もある。同時に、血漿中トラフラノラジンレベルは、好ましくは、約1000ng塩基/mLより下降しないようにすべきであり、場合によっては1700ng塩基/mLより下降しないようにすべきである。
約1000から約3800ng塩基/mLという好ましい血漿中ラノラジンレベルを達成するために、本明細書に記載の経口ラノラジン投与形は、1日1回または2回投与することが好ましい。投与形を1日2回投与する場合、経口ラノラジン投与形は、約12時間間隔で投与することが好ましい。
血漿中ラノラジンレベルを制御するように本発明の経口持続放出投与形を製剤化および投与することに加えて、血漿中ラノラジンレベルのピークとトラフの間の差異を最小限にすることも重要である。血漿中ラノラジンレベルのピークは、典型的には、投与形を初回摂取した約30分後から8時間後以上で達成され、一方、血漿中ラノラジンレベルのトラフは、ほぼ次に計画した投与形の摂取時に達成される。本発明の持続放出投与形は、ラノラジンレベルのピークが、ラノラジンレベルのトラフの8倍以下、好ましくはラノラジンのトラフの4倍以下、最も好ましくはラノラジンレベルのトラフの2倍以下となるように投与することが好ましい。
本発明の持続放出ラノラジン製剤は、最大1日2回投与できかつ、血漿中ラノラジン濃度の変動を最小限にするという治療利点を与える。製剤は、単独で、または、治療的に有効な血漿中ラノラジン濃度の迅速な達成が望まれる場合、(少なくとも最初は)即時放出製剤と組合せて、または可溶性静注製剤および経口投与形により投与し得る。
以下の実施例は本発明の代表例であるが、特許請求の範囲を制限するものではない。
これらの実施例は、ラノラジン投与形の製造法、並びにラノラジン投与の有効性並びに有効性を評価するため実施した実験を詳述する。これらの実施例全体を通じて、以下を注記すべきである。
(1)即時放出(IR)製剤の経口投与量は、二塩酸塩のカプセルまたは錠剤として投与し、二塩酸塩として表現する。
(2)持続放出(SR)製剤の経口投与量は、ラノラジンン塩基の錠剤として投与し、塩基として表現する。
(3)IRおよびSR製剤を同じ試験で比較した場合、投与量は、塩基および二塩酸塩の両方で表現する。二塩酸塩から塩基への変換係数は0.854である(例えば、400mgの二塩酸塩×0.854=342mgの遊離塩基に相当)。
(4)全ての血漿中レベルおよび薬物動態パラメータは、遊離塩基レベルとして表現する。
(実施例1)
本実施例は、即時放出(IR)ラノラジン製剤の調製法を記載する。ラノラジン二塩酸塩(4000g)、微結晶セルロース(650g)、ポリビニルピロリドン(100g)、およびクロスカルメロースナトリウム(100g)粉末を、Fielder PMA65混合−造粒機中で共に密接に混合し、その後、十分な水を混合しながら加え、顆粒を形成した。顆粒を、Aeromatic Strea-5流動床乾燥機中で乾燥し、ステアリン酸マグネシウム(100g)と混合した。混合物を硬ゼラチンカプセルに、1カプセルあたり例えば500mgの充填重量となるまで充填し、1カプセルあたり400mgのラノラジン二塩酸塩(342mgのラノラジン遊離塩基に相当)の投与量を得たが、30から400mgのラノラジン二塩酸塩の充填重量となるように充填してもよい。
(実施例2)
本実施例は、持続放出(SR)ラノラジン製剤の調製法を記載する。
SR製剤Aで示される、pH依存的およびpH非依存的結合剤を含む持続放出(SR)製剤は、ラノラジン(2500g)、メタクリル酸コポリマー、C型(Eudragit(登録商標)L100−55−Rohm Pharma)(1000g)、微結晶セルロース(Avicel(登録商標))(100g)(710g)を配合することにより調製し、ポリビニルピロリジノン粉末を、Fielder PMA65混合−造粒機中で共に密接に混合した。混合物を、水酸化ナトリウム(40g)水溶液を用いて造粒し、30%メタクリル酸メチル/アクリル酸エチルコポリマー分散水(Eudragit(登録商標)NE30D−Roehm Pharma)(1667g)を湿潤塊に加えた。得られた顆粒を、Aeromatic Strea-5流動床乾燥機中で乾燥し、ふるいにかけ、その後、クロスカルメロースナトリウム(100g)およびステアリン酸マグネシウム(50g)と混合した。混合物を、Manesty B錠剤圧縮機を用いて、684mgの錠剤へと圧縮し、1錠剤あたり342mgのラノラジン遊離塩基の投与量を得た。この製剤はSR製剤Aと表す。
SR製剤Bは、Eudragit(登録商標)L100−55を500gに減らし、Eudragit(登録商標)NE30Dを40%メタクリル酸メチル/アクリル酸エチルコポリマー分散水(Eudragit(登録商標)NE40D−Rohm Pharma)(2500g)に置き換えた以外は、SR製剤Aと同じように調製した。得られた(SR)製剤は、1錠剤あたり342mgのラノラジン遊離塩基を含んでいた。
SR製剤Cでは、ラノラジン遊離塩基(342mg)を、微結晶セルロースおよびポリビニルピロリニノンK25と混合し、水を用いて造粒し、乾燥し、クロスカルメロースナトリウムおよびステアリン酸マグネシウムと混合した。混合物を錠剤に圧縮し、腸溶性コーティングでコーティングした。
pH依存的結合剤のみを含むSR製剤Dを、ラノラジン(7500g)、Eudragit(登録商標)L100−55(1000g)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(Methocel(登録商標)E5−出所)(200G)、および微結晶セルロース(Avicel(登録商標))(1060g)を密接な混合により配合することにより調製した。混合した粉末を、水酸化ナトリウム(40g)水(1900から2500g)溶液を用いて造粒した。顆粒を乾燥し、ふるいにかけ、ステアリン酸マグネシウム(200g)と混合し、例えば667mgの重量の錠剤に圧縮し、1錠剤あたり500mgの用量のラノラジン遊離塩基を得た。錠剤を、OPADRYフィルムコーティング溶液を用い、重量が2〜4%増加するまで24インチのAccelacota(商標名)円柱状パンコーター内で噴霧コーティングする。種々の色のOPADRYフィルムコーティング溶液は、ペンシルベニア州West PointのColorconより入手できる。
SR製剤Dを調製する段階的な手順は以下の通りである。
a)ラノラジン、微結晶セルロース、メタクリル酸コポリマー(C型)、およびヒドロキシプロピルメチルセルロースを一緒に、適切な混合機を使用して混合する。
b)水酸化ナトリウムを精製水に溶かす。
c)適切な造粒装置を使用して、水酸化ナトリウム溶液を、ゆっくりと、常に混合しながら混合物に加える。必要であれば更に分取した水を加える。
d)混合を続け、追加の塊を形成する。必要であれば更に分取した水を加える。
e)流動床乾燥機で乾式造粒する。
f)適切な圧搾機により乾燥顆粒をふるいにかける。
g)ステアリン酸マグネシウムをふるにかけた顆粒に加え、共に混合する。
h)必要であれば、チルソネータに造粒した材料を通す。
i)適切なサイズの道具を使用し、顆粒を錠剤に圧縮する。
j)水にOPADRY粉末を分散し、適切なサイズのコーティング装置を使用して、2〜4重量%の典型的なレベルまでフィルムコーティングする。
k)0.002〜0.003重量%の典型的なレベルを使用してカルナウバ・ワックスで研磨する。
(実施例3)
本実施例は、ラノラジンは、実施例1のIR製剤として投与した場合、抗狭心症剤および抗虚血剤としては無効であることを実証した、Circulation 90: 726〜734(1994)に発表した研究を要約する。
安定狭心症の患者が本試験に参加した。患者の使用した全ての以前の抗狭心症薬物を、医療監督下で中止した。390名の患者が、18日間まで単純盲検プラセボを受け、318名が中程度の重度の狭心症のために運動を停止し、心筋虚血の徴候を示し(≧1mmのST区分下降)、4つの試験群の1つに無作為に割り当てられ、ラノラジン・2HCl 30mg1日3回(n=81);ラノラジン・2HCl 60mg1日3回(n=81);ラノラジン・2HCl 120mg1日3回(n=78);およびプラセボ1日3回(n=79)を投与した。30mg、60mgおよび120mgの投与量を1日3回投与した後、投与1時間後のラノラジン遊離塩基の血漿中濃度の平均ピークは、それぞれ94、219および510ng/mLであり、投与8時間後の血漿中濃度の平均トラフは、それぞれ18、37および90ng/mLであった。
4週間の二重盲検相の後、症状限界性負荷試験を、試験医薬を投与した1時間後(ピーク試験)および8時間後(トラフ試験)に繰り返した。基線における全運動持続時間(±SEM)は、プラセボ群では5.9±0.2分、ラノラジン30、60および120mgの群ではそれぞれ、6.4±0.3、5.9±0.3、および6.6±0.2分であった(P=NS)。基線値と比較した、二重盲検療法の4週間後、医薬を投与した1時間後(ピーク効果)、全運動持続期間(±SEM)は、プラセボ群で0.45±0.2分増加し、ラノラジン30、60および120mgの群でそれぞれ0.3±0.2、0.6±0.2、および0.5±0.2分増加した(プラセボ対ラノラジン、P=NS)。基線での1mmST区分下降までの時間は、4つの群で類似し、各群での4週間の療法後、医薬の投与1時間後に類似の程度で有意に増加した。類似の変化が狭心症の発症までの時間に見られた。投与8時間後(トラフ効果)、全運動時間または任意の他の運動変数における差異は、プラセボとラノラジン群の間に観察されなかった。基線値と比較して、1週間あたりの狭心症発作の回数およびホルターモニタリング中48時間あたりの虚血発症発現の回数および持続時間は、プラセボおよびラノラジン群において類似の程度で有意に減少した。
これらの結果により、ラノラジン・2HCl30、60および120mgの1日3回の治療はプラセボに対し優れてはいないことが示された。研究によりまた、狭心症患者の日常生活における、心筋虚血または運動能力または狭心症発作に対する、類似の用量のラノラジンの有益な効果は示されなかった。
(実施例4)
本実施例では、狭心症患者の大きな群における高い血漿中ラノラジンレベルの安全性および抗虚血効果を評価し、1日2回および1日3回の処方計画による定常状態投与中の、任意の効果の持続時間を評価した。本実施例では、従来の抗狭心症薬に応答性の慢性な安定狭心症患者を、3つのラノラジン・2HCl投与処方:1日3回267mg、1日2回400mg、および1日3回400mgの実施例1のIR製剤で処置した。血漿中ピークおよびトラフレベルにおける、運動試験パラメータおよびラノラジン遊離塩基濃度を決定した。
方法
試験は、4つの処置(プラセボ、ラノラジン・2HCl 400mg1日2回、ラノラジン・2HCl 267mg1日2回、およびラノラジン・2HCl 400mg1日3回)による二重盲検プラセボ対照無作為処置相、4つの処置順序、および、既知の抗狭心症療法に応答性であり、安定な運動時間を有する、予め認定された患者に対する期間の延長されたラテン方格デザインにおける5つの二重盲検処置期間を含んだ。
従来の抗狭心症療法に応答する、少なくとも3ヶ月続いている、慢性安定狭心症のヒト患者を、候補と考えた。さらに、患者は、運動負荷試験中の3回の連続拍動中に持続する≧1mmの水平または下り勾配ST区分下降に基づいた運動誘発虚血という心電図(ECG)徴候、および、ST区分変化の解釈に干渉しないECGパターンを有さなければならない。後者の基準は特に、左心室肥大症、早期興奮、伝導異常、またはペースメーカーリズムを有する患者は除外した。他の除外基準は、以前3ヶ月以内の不安定狭心症または心筋梗塞、ニューヨーク心臓協会の分類IIIまたはIVとして定義された心不全、回復されていない有意な弁または先天性心疾患、ジゴキシンまたは長時間作用型硝酸療法の必要性、不安定糖尿病、または追跡評価を混乱させる他の重度の容態を含んだ。
これらの即時放出ラノラジン・2HCl投与処方(267mg1日3回、400mg1日2回、400mg1日3回)およびプラセボを、処置相中に投与した。患者は、267mgまたは400mgのラノラジン二塩酸塩またはプラセボを含むカプセルを、AM8:00、PM4:00、PM8:00およびAM12:00に服用した。全てのカプセルの外見は同一であった。患者を、4つの処置順序の1つに無作為に割り当て、患者の25%を各々の順序に割り当てた。各処置は1週間投与し、1回の処置は第五の1週間中繰り返した。
その通常の抗狭心症医薬を受けている患者を認定するために、Sheffieldの改変Bruceプロトコールを使用してスクリーニング運動負荷トレッドミル試験(ETT−1)を経た。狭心症発症までの時間が≧3分であるが≦13分である場合、抗狭心症薬物を中止し、単純盲検プラセボを用いた処置を開始した。1から2週間後、患者を別のETT(ETT−2)に戻した。狭心症発症までの時間がETT−1と比べて1分間だけ減少した場合、患者は、最初の認定ETTを完了したと考えた。狭心症発症までの時間の減少が≧1分でない場合、第二の抗狭心症薬物を中止し得、上記の順序を繰り返した。必要であれば、第三の抗狭心症薬物を、患者を認定するために、この手順に従って中止できる。長時間作用型硝酸塩を常に最初に中止し;ベータ−遮断薬;およびカルシウムアンタゴニストを、任意の順序で、長時間作用型硝酸塩を受けていない患者から中止できる。患者が最初の認定ETT(ETT−2)を達成した後、狭心症発症までの時間が、ETT−2中に観察された時間の±15%以内でなければならない、第二の認定ETT(ETT−3)を実施した。さらに、各認定ETTは、虚血のECG兆候を有さなければならない(3回の連続拍動中に≧1mmの水平または下り勾配ST区分下降)。これらの基準を満たす患者を試験に使用した。
各1週間の期間後、軽い朝食の少なくとも1時間後、ETTのために、患者を朝に運動実験室に戻した。これはトラフETTと称し;トラフETTは、各患者について1日の同じ時間に実施した。トラフETTを完了した後、患者は、その週に使用したブリスターパックから、次に計画された盲検医薬投与量を受けた。別のETTを、投与した用量の1時間後に実施した。これをピークETTと称した。血液試料を、トラフ(投与の約8時間後)およびピーク(投与の1時間後)に得た。他の標準的な実験室試験を試験全体を通じて規則的にモニタリングした。
血圧(血圧計バンドによる)および心拍数を、全てのETTの前、ETTの最中、試験の各段階の最後の分の間、狭心症発症時、最大運動の時点、および回復中にモニタリングした(4分間の間は1分毎に、その後、数値が基線に戻るまで5分毎に)。心拍数も連続的にモニタリングし、標準的な12−リードECG記録を、患者がトレッドミルに起立したままで運動直前に、各段階の運動の終了時に、最大耐容運動負荷量で、および運動終了時に実施した。
ピークおよびトラフにおける全患者のプラセボおよび異なるラノラジン投与処方(ラノラジン−プラセボ)中の目的の3つの運動変数に関する平均トレッドミル運動時間を、以下の表2に要約する。
Figure 2008069159
血漿中ラノラジンピーク濃度において、全てのETT虚血パラメータは、プラセボより延長し、最も顕著には、1mmST区分下降発症時までの時間が延長した。全患者解析において、プラセボに対する狭心症発症までの時間の増加は、3つの各ラノラジン投与処方および全ての処方計画を合わせたものについて、0.32から0.39分(p≦0.01)の範囲であり、1mmST区分下降開始までの時間は、0.28から0.41分(p≦0.02)の範囲であった。また、運動の全持続時間は、全ての処方計画を合わせたものでは有意に増加し、類似の方向および大きさという傾向が、各投与処方について認められた。プロトコール毎の解析において、3つの各ETTパラメータは、全てのラノラジン投与処方を合わせたものについて延長した(p≦0.01)。全ての個々のラノラジン投与処方により、1mmST区分下降までの時間は有意に延長し、類似の方向および比率という重要でない傾向が、狭心症発症までの時間および運動持続時間について見られた。一般に、プロトコール毎の解析の結果は、効果の大きさを除き、単独療法において幾分高いようであった。
血漿中トラフ濃度では、ラノラジンは、ETTパラメータに対してより少ない作用を示した。全患者およびプロトコール毎の解析の結果は比較的一貫し、運動時間の増加傾向を実証する。全患者解析で合わせた全てのラノラジン処方計画についての1mmST区分下降までの時間のみが、統計学的有意を達成した。
ラノラジン単独療法で観察された運動パラメータのより顕著な増加に鑑みて、異なる併用抗狭心症医薬を受けている患者間のラノラジンに対する応答を解析した。運動時間を向上する作用が最も明らかな場合に、ピークラノラジンデータに、これらの後知恵解析を実施した。長時間作用型硝酸塩を、最初に、単純盲検認定相中に中止したので、どの患者も長時間作用型硝酸塩を受ける二重盲検処置に移行しなかった。ピーク効力データをもつ患者の中で、34%(312名中107名)の患者が、二重盲検処置中にベータ−遮断薬を受け、24%(312名中75名)がカルシウムアンタゴニストを受けた。
運動試験パラメータは、患者がベータ−遮断薬を受けているか否かに関わらず、ラノラジンピーク濃度において向上した(ラノラジン−プラセボ)。これらの向上は、ベータ−遮断薬を受けた107名の患者に比べて、ベータ−遮断薬を受けていない205名の患者で僅かにより高かった。ベータ−遮断薬を受けている患者と、それらを受けていない患者の間の差異は、どの運動パラメータについても統計学的有意を達成しなかった。ベータ−遮断薬を受けていない患者において、全運動パラメータが、各3つのラノラジン処方計画、およびまた全てのラノラジン処方計画を合わせたものにおいて有意に向上した。類似の傾向が、ベータ−遮断薬を受けている少数の患者にも観察された。カルシウムアンタゴニストを受けていない患者と比べて、カルシウムアンタゴニストを服用している患者の運動データの解析により、類似の知見が得られた。
以下の表3は、性別の全患者および各投与処方についての、ラノラジン二塩酸塩基に基づいた、血漿中ラノラジン濃度の平均ピークおよびトラフを要約する。
Figure 2008069159
血漿中平均ピーク濃度は、1346から2128ng/mLのラノラジン遊離塩基の範囲であった。400mg1日3回の投与処方は、最も高い血漿中ラノラジン濃度に結びついた。平均血漿中ラノラジントラフ濃度は、235から514ng/mLの範囲であった。平均血漿中ラノラジンピーク濃度は、男性よりも女性において幾分高かったが、トラフで明白な血漿中濃度には、性別による差異は全くなかった。
血漿中ラノラジンピーク濃度では、二重積において、ラノラジン投与処方のいずれかとプラセボの間には統計学的な有意差はなかった。同様に、血漿中ラノラジントラフ濃度では、静止または最大運動二重積において、プロトコール毎の分析において、3つのラノラジン投与処方とプラセボの間には統計学的な有意差はなかった。
この試験の結果により、ラノラジンは、慢性安定狭心症患者における、効果的な抗狭心症および抗虚血化合物であることが示唆される。血漿中ピーク濃度では、使用した3つのラノラジン投与処方は、狭心症発症までの時間および運動持続時間、並びに、1mmST区分下降までの時間を、プラセボで観察された時間よりも平均で約0.33分延長した。運動パラメータの向上が、本試験において、併用抗狭心症療法(例えばベータ−遮断薬およびカルシウムアンタゴニスト)を受けている患者だけでなく、ラノラジン単独療法のみを受けている亜群にも観察された。後者の患者では、治療効果は、幾分程度がより大きいようであった。これにより、ラノラジンはまた、慢性安定狭心症患者における単独療法にも有用であり得ることが示唆される。
血行力学的知見により、血漿中ラノラジンピーク濃度における運動パラメータの向上は、血圧または心拍数の変化を結びつかなかったことが示される。それ故、非血行力学的なラノラジンの作用機序は、現在臨床使用されている他の抗狭心症薬のそれとは異なる。
最も重要なことには、我々は、試験した即時放出ラノラジン調製物の抗狭心症効果および抗虚血効果は、投与間隔全体を通じて持続しないことを記録した。虚血型ST区分下降の開始までの時間は有意に延長し、類似の方向の傾向が他のETTパラメータについても認められたが、効果は、血漿中ラノラジントラフ濃度で最小であった。血漿中平均ラノラジン遊離塩基ピーク濃度は、1346から2128ng/mLの範囲であり、一方、平均血漿中トラフ濃度は、235から514ng/mLの範囲であった。ピークで観察されたより高い平均血漿中ラノラジン濃度は、臨床的に意味ある抗狭心症効果および抗虚血効果に結びつき、一方、トラフで得られた濃度には結びつかなかったのは明白と思われる。
本実験の結果に基づいて、ETT中に検出された抗虚血活性に関する域値血漿中ラノラジン遊離塩基濃度は、約550ng/mLより上であるらしい。さらに、血漿中ラノラジン濃度は、投与間隔全体を通じて運動中の抗狭心症および抗虚血活性を確保するために、この間隔全体を通じて域値またはそれ以上に維持ししなければならないようである。
ラノラジンは、本試験で達成された血漿中濃度で十分な耐容性を示した。副作用の発生率は、ラノラジン投与処方およびプラセボ間で異ならず、ECG間隔または複合体形態において、薬物に関連した変化はなかった。さらに、血中グルコース濃度、脂質値または肝臓機能試験の臨床的に有意な変化はなく、これにより、ラノラジンの代謝効果は、全身グルコース調節または脂質代謝にまで及ばないことが示唆される。
ラノラジンは、慢性安定狭心症患者において、心拍数および血圧に検出可能な作用を及ぼすことなく、運動パラメータを向上する。これらの抗狭心症効果および抗虚血効果を検出するためには、約550ng/mL以上の域値血漿中ラノラジン濃度を得なければならないようである。ラノラジンは、広範囲の血漿中濃度で十分な耐容性を示す。虚血管理におけるこの新規な代謝概念を完全に評価するために、より大量の持続放出調製物を使用したさらなる試験が保証される。
(実施例5)
I.インビトロでのIR製剤とSR製剤の比較
実施例1に従って調製したIR製剤および実施例2A〜2Cに従って調製したSR製剤を、胃での溶解をシミュレートするために溶解液として0.1M塩酸900mLを使用し、USP装置2溶解テスター中で試験した。
Figure 2008069159
表の結果は、IR製剤はほんの0.5時間で完全に溶けるが(即時放出製剤で期待されるように)、一方、SR製剤A、BおよびCは、持続放出製剤で望ましいように、低いpHでより長時間の溶解を示すことが示される。

II.インビボでのIR製剤とSR製剤A、B、およびCの比較
実施例1に従って調製したIR製剤の1回投与量および実施例2に従って調製したSR製剤AおよびBを、11人の健康なボランティアに投与し、ラノラジン遊離塩基のその血漿中濃度を、投与の0、20、40、60、90および120分後、1時間毎に6時間まで、1時間に2回18時間まで、および24時間後に測定した(SR製剤のみ)。結果を以下の表5に示す。
Figure 2008069159
表5から、本発明のSR製剤A、BおよびCは、ラノラジンの1日2回投与に適した溶解特性を示すことが明らかである。
(実施例6)
本実施例は、実施例2Dのラノラジン塩基SR製剤の単回経口投与量の安全性および薬物動態プロファイルを評価する、単一漸増投与量のクロスオーバーデザイン試験を詳述する。ヒト被検者を3つの群に分けた。1群は、500、750および1000mgのラノラジンSRを受けた。2群は、1250および1750mgのラノラジンSRを受けた。3群は、1500および2000mgのラノラジンSRを受けた。各群はまた、無作為プラセボ相も有した。ラノラジンSRの単回経口投与量後の、平均薬物動態パラメータを以下の表6に詳述する。
Figure 2008069159
表6に報告した薬物動態結果により、ラノラジンは、SR製剤からゆっくりと放出され、結果的にラノラジンの吸収は溶解度律速であったことが示される。これにより、全投与レベルで観察される血漿中薬物濃度−時間プロファイルは延長し、血漿中ピークレベルは投与4から6時間後である。500から2000mgの投与量範囲におよび、平均CmaxおよびAUC0〜30hrは、ほぼ投与量に比例して増加したが、2群内では比例から幾分逸脱しているようであった。
(実施例7)
本実施例は、1日2回投与を評価するための、二重盲検でプラセボ対照の複数の漸増投与量のクロスオーバーデザインされたボランティア試験を詳述する。6人の被検者が、500、750、および1000mgで1日2回、実施例2Dに従って調製したラノラジンSR製剤の投与を4日間受け、続いて5日目に朝の投与量を受けた。薬物動態結果を以下の表7に報告する。
Figure 2008069159
表7によると、ラノラジンはSR製剤からゆっくりと放出され、従って薬物動態が溶解度律速であった。これにより、結果として全投与レベルにおいて血漿中薬物濃度−時間プロファイルは延長することになり、ピーク血漿レベルは投与後2から4時間に観察された。
これらの結果により、有用な血漿中ラノラジンレベルは、ヒトにおいて、1日2回の計画で、このSR製剤を投与することにより達成できることが示される。
(実施例8)
本実施例は、実施例2Dのようなラセミラノラジン遊離塩基製剤を投与することの安全性および耐容性を評価した。ラセミラノラジンおよびそのエナンチオマーである(R)−(+)−N−(2,6−ジメチルフェニル)−4−[2−ヒドロキシ−3−(2−メトキシフェノキシ)−プロピル]−1−ピペラジンアセトアミド、(S)−(−)−N−(2,6−ジメチルフェニル)−4−[2−ヒドロキシ−3−(2−メトキシフェノキシ)−プロピル]−1−ピペラジンアセトアミドの、ヒト血漿中での個々および平均の濃度も決定した。
試験は、持続放出ラノラジン投与形の漸増投与量を用いて実施した。投与期間の前、および期間中の合間、および投与期間後に、血液試料をラノラジンアッセイのために採取し、血圧、心拍数、ECGおよび症状を全体に渡ってモニタリングした。データ要約は、次の相の試験に進行する前に各相後に再検討した。
全員18〜40歳の健康な男性ボランティアである8人の被検者が参加して、全員試験を完了し、薬物動態および安全性解析に利用可能であった。被検者の各々に、500mgおよび750mgの錠剤を含む様々なタイプの持続放出錠剤形態のラノラジン遊離塩基の投与量、または1500および2000mgの単位経口投与量を作成するのに必要な、適合したプラセボ(2×750mgサイズと1×500mgサイズ)を投与した。
各相において、4日間1日2回の単回投与量と、5日目に単回投与量。5日目に各ボランティアは、仰臥位および立位血圧(BP)および心拍数、ECGデータ、副作用、臨床化学反応および血液学的結果、検尿結果を含む、全体的な薬物動態プロファイルを受けた。
定常状態を、分散分析により、および、時間に対する係数が0と有意に異なるかどうか(p<0.05として規定)を試験することにより、C48h、C72hおよびC96hおよびlog変換データを使用して、各投与レベルで試験した。これらの試験は、ANOVAモデル由来の可変性の推定値により、両側t検定を使用して実施した。定常状態も、混合効果ANOVAモデルおよび非変換およびlog変換データを使用して、C48h、C72hおよびC96hについての平均を比較することにより評価した。血行力学的パラメータでは、1日目の前投与処置平均および5日目のデータを、混合効果ANOVAモデル由来のばらつきの推定値を使用して、両側t検定を介して処置間で比較した。処置を比較するために、90および95%信頼区間を計算した。複数の比較について調整はしなかった。
ラノラジン遊離塩基の5日目の平均および標準偏差の薬物動態パラメータを以下の表8に詳述し、平均血漿プロファイルを図に示す。血漿中ラノラジン遊離塩基の定常状態レベルは、4日目までに得られるようであった。投与間隔内で、最大レベルまでゆっくりと上昇し、tmax値は投与1から6時間後の範囲であった。その後レベルはゆっくりと下降し、投与間隔におよび血漿中レベルの小さな程度の変動が生じた。このSR製剤での複数回の投与後に、ラノラジンの(+)Rおよび(−)Sエナンチオマーの薬物動態パラメータの差異はないようであった。
Figure 2008069159
何人かの被検者は症候性が強すぎたため、通常投与後2〜6時間の、ラノラジン1500mg(n=3が8つ)および2000mg(n=2が8つ)に対するBP測定を完了できなかった。統計学的に有意な起立収縮期血圧の低下が、5日目に、1500mg(−9.8mmHg;投与4時間後)および2000mg(−8.4mmHg;投与6時間後)で認められた。副作用のパターンはラノラジンおよびプラセボで類似していたが、頭痛、めまい、および鼻づまりが、ラノラジンでより頻繁に見られるようであった。
(実施例9)
安定狭心症におけるラノラジンの単独療法評価(MARISA)
MARISAは、安定狭心症における持続放出ラノラジン(SR)の最初の試験である。
背景:ラノラジン(Ran)は、脂肪酸酸化の部分的阻害剤(pFOX阻害剤)である。ATP生成を、脂肪酸酸化から炭水化物酸化にシフトすることにより、Ranは、心臓の仕事量を減少することなく酸素要求量を減少し、解糖のピルビン酸酸化への共役を維持し、これは乳酸の蓄積を最小限にする。3つの初期のプラセボ対照安定狭心症試験では、単独または他の抗狭心症薬と組合わせた≧240mgでの経口Ran(即時放出)は、休止時または運動時心拍数の変化または休止時または運動時血圧の減少を伴うことなく運動時間を増加する。これらの初期の試験では、運動時間の統計学的に有意な増加が、血漿中Ranピークレベル(投与1〜3時間後)付近でのみ生じた。この調査は、持続放出(SR)製剤を評価して、製剤が、1日2回の投与で治療範囲に血漿中レベルを維持できるかどうかを決定する。
方法:再現性の狭心症限界性運動持続時間および≧1mmのST下降を有する他の抗狭心症薬物から抽出した患者を、Ran(500mg1日2回、1000mg1日2回および1500mg1日2回)および相当するプラセボ(Pbo)に、二重盲検で4期間のラテン方格クロスオーバーデザインに無作為に割り当てた。改変Bruceプロトコールを用いた運動試験を、トラフ(投与12時間後)およびピーク(投与4時間後)の両方で実施した。結果:米国、チェコ共和国、ポーランドおよびカナダの49のセンターが191人の患者を無作為に割り当てた。168人が、全4つの二重盲検処置期間を完了し;他の7人が4期間のうち3つを完了した。これらの175人の患者を、以下の表9および図1〜3に示した、一次効力解析に含めた。
Figure 2008069159
結果:Ranは、プラセボと比べて、運動持続時間を改善した。血漿中ピークおよびトラフ濃度を、以下の表10に記録する。Ranは、休止時または運動時血圧または心拍数に関しては、Pboに対し臨床的に意味ある効果を全く示さなかった。
Figure 2008069159
表10から、約850ng/mLまたはそれ以上および少なくとも4000ng/mLまでの血漿中Ran濃度レベルが有益な結果を与えるようである。
図1は、実施例9に報告のように、1日2回のプラセボまたは種々の量のラノラジン持続製剤で処置されたヒト患者の、症状限界性運動持続期間のプロットである。 図2は、実施例9に報告のように、1日2回のプラセボまたは種々の量のラノラジン持続放出投与製剤を投与されたヒト患者における、狭心症までの運動時間のプロットである。 図3は、実施例9に報告のように、1日2回のプラセボまたは種々の量のラノラジン持続放出投与製剤を投与されたヒト患者における、1mmST下降となるまでの運動時間のプロットである。

Claims (10)

  1. 1回の投与あたり2個以下の錠剤で、少なくとも50重量%のラノラジンを含む持続放出医薬投与形をヒト患者に投与して、ここでの該投与量は、24時間におよび1回、2回および3回から選択した頻度で投与する、ヒト患者の血漿中ラノラジンレベルを少なくとも24時間最小850ng塩基/mLに維持することにより、不整脈、異型および運動誘発狭心症、および心筋梗塞から選択した心血管疾患に罹患しているヒト患者を治療するための方法。
  2. 血漿中ラノラジン最大レベルは約4000ng塩基/mLである、請求項1の方法。
  3. 医薬投与形は、ヒト患者に、24時間におよび1回および2回から選択した頻度で投与する、請求項1の方法。
  4. 医薬投与形は、ヒト患者に、24時間におよび2回投与量で投与し、各投与量は2個の錠剤からなる、請求項1の方法。
  5. 医薬投与形は、約50重量%から約95重量%のラノラジンを含む、請求項1の方法。
  6. 医薬投与形は、約70重量%から約80重量%のラノラジンを含む、請求項1の方法。
  7. ヒト患者血漿中ラノラジンレベルのピーク対トラフは、24時間におよび4:1未満である、請求項1の方法。
  8. ヒト患者血漿中ラノラジンレベルのピーク対トラフは、24時間におよび3:1未満である、請求項1の方法。
  9. ヒト患者血漿中ラノラジンレベルのピーク対トラフは、24時間におよび2:1未満である、請求項1の方法。
  10. 投与量は、約500から1500mgのラノラジンを含む、請求項1の方法。
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