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JP2008057734A - ころ軸受 - Google Patents

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Abstract

【課題】軸受回転時に外輪がハウジング内で回転するのを防止し、かつ、外輪の硬度不足に伴うトラブルを防止したころ軸受を提供する。
【解決手段】ころ軸受としての針状ころ軸受21は、円弧形状の外輪部材22aを円周方向に複数連ねて形成される外輪22と、外輪22の内径面に沿って配置される複数のころとしての針状ころ23とを備える。そして、外輪部材22aは、炭素含有量が0.15wt%以上、1.1wt%以下の材料を出発材料として形成され、その円周方向端部にハウジングと係合するように径方向外側に折り曲げられた係合爪22cを有する。
【選択図】図1

Description

この発明は、自動車エンジン用のカムシャフト、クランクシャフト、およびロッカーシャフト等を支持するころ軸受に関するものである。
自動車用エンジンのカムシャフトを支持する従来の軸受が、例えば、特開2005−90696号公報(特許文献1)に記載されている。図10を参照して、同公報に記載されているカムシャフト101は、カムローブ101aと、ころ軸受102により支持される円筒状のジャーナル部101bと、端部大径部101cとを有している。
ここで、ジャーナル部101bの外径寸法は、カムローブ101aの外径の最大寸法および端部大径部101cの外径寸法より小さくなっている。そのため、ジャーナル部101bに配置されて、カムシャフト101を回転自在に支持するころ軸受102は、カムシャフト101の軸方向から挿入することができない。
そこで、ころ軸受102は、複数のころ103と、周方向に二分された略半円筒状の保持体104,105と、シリンダヘッド108およびキャップ109の間に配置される周方向に二分された略半円筒状のレース板106,107とを有している。また、図11を参照して、レース板107は円周方向両端部それぞれに径方向外側に突出する2つの突起107aを有し、キャップ109は突起107aに対応するくぼみ109aを有する。
そして、この突起107aとくぼみ109aとを係合させることによって、ころ軸受102の回転時に、レース板107とキャップ109との間での周方向および軸方向の相対移動を禁止することができると記載されている。なお、レース板106とシリンダヘッド108との間も同様の構成である。
上記構成のレース板106,107は、冷間圧延鋼板(SPC)等の鋼板をプレス加工して製造されるのが一般的である。また、所定の形状に形成後、硬度等の所定の機械的性質を得るために、熱処理が施される。
特開2005−90696号公報
上記公報に記載されているころ軸受102において、突起107aは、レース板107の内径面に径方向外側への力を加えて外径面を押し出すことによって形成される。その結果、ころ103の軌道面となるレース板107の内径面には、くぼみが形成されることとなる。これは、ころ103がくぼみ上を通過する際に振動が発生したり、ころ103の表面が早期に剥離する等、ころ103のスムーズな回転を阻害する原因となる。
さらに、上記構成のレース板106,107の材料となる冷間圧延鋼板(SPC)は、炭素含有量が0.04wt%以上、0.15wt%未満と非常に低いので、加工性に優れている反面、レース板106,107に必要な硬度を得ることが難しい。
そこで、冷間圧延鋼板で形成されたレース板106,107が所定の硬度を得るためには、浸炭窒化処理を施す必要がある。浸炭窒化処理は、大規模な設備を必要とするので、設備費用が高額となる問題がある。また、冷間圧延鋼板は、浸炭窒化処理によっても深い浸炭硬化層を得ることが難しいので、使用時に早期の表面起点型剥離を発生させる恐れがある。
なお、この問題は、カムシャフトを支持するころ軸受のみならず、クランクシャフトやロッカーシャフトを支持する軸受にも同様に起こりうる。
そこで、この発明の目的は、自動車用エンジンのカムシャフト等を支持する軸受であって、軸受回転時に外輪がハウジング内で回転するのを防止し、かつ、外輪の硬度不足に伴うトラブルを防止したころ軸受を提供することである。
この発明に係るころ軸受は、円弧形状の外輪部材を円周方向に複数連ねて形成される外輪と、外輪の内径面に沿って配置される複数のころとを備える。そして、外輪部材は、炭素含有量が0.15wt%以上、1.1wt%以下の材料を出発材料として形成され、その円周方向端部にハウジングと係合するように径方向外側に折り曲げられた係合爪を有する。
上記構成のように、外輪を複数の外輪部材に分割することにより、カムシャフトのように、軸受を軸方向から挿入することのできない場所にも適用することが可能となる。また、ハウジングに係合する係合爪を設けることによって、軸受回転時に、外輪がハウジング内で回転するのを防止することができる。
また、外輪部材の円周方向端部を径方向外側に折り曲げて係合爪を形成することにより、ころの軌道面となる外輪部材の内径面を平滑な状態に保つことができる。その結果、ころがスムーズに回転可能なころ軸受を得ることができる。
さらに、外輪部材を炭素含有量が0.15wt%以上の材料で形成することにより、熱処理によって十分な硬化層を得ることができ、外輪部材に必要な硬度を確保することが可能となる。一方、炭素含有量が1.1wt%を超える材料は、加工性が著しく低下するので適切ではない。なお、自動車用エンジンのカムシャフト等を支持するころ軸受の外輪部材に要求される表面硬さHvは、653以上である。
好ましくは、出発材料の炭素含有量は、0.15wt%以上、0.5wt%以下であって、外輪部材には浸炭焼入処理が施されている。炭素含有量が上記の範囲内にある材料に浸炭焼入処理を施すことによって、外輪部材に必要とされる硬度を得ることができる。その結果、外輪部材の硬度不足に伴うトラブルを防止したころ軸受を得ることができる。なお、浸炭焼入処理設備は、浸炭窒化処理設備と比較して設備費用が安価であるので、製造コストを抑えることもできる。
好ましくは、出発材料の炭素含有量は、0.5wt%以上、1.1wt%以下であって、外輪部材には光輝焼入処理が施されている。さらに好ましくは、出発材料の炭素含有量は、0.5wt%以上、1.1wt%以下であって、外輪部材には高周波焼入処理が施されている。
炭素含有量が上記の範囲内にある材料を使用することによって、さらに深い硬化層を得ることができるので、より耐久性に優れたころ軸受を得ることができる。なお、光輝焼入処理設備は、浸炭窒化処理設備や浸炭焼入処理設備と比較して設備費用が安価であるというメリットがある。さらに、高周波焼入処理設備は、他の熱処理設備と比較して設備費用が大幅に安価であると共に、熱処理工程でガスを使用しないので環境に優しいというメリットがある。
この発明によれば、外輪がハウジング内で回転するのを防止し、かつ、外輪の硬度不足に伴うトラブルを防止したころ軸受を得ることができる。
図1〜図8を参照して、この発明の一実施形態に係る外輪部材の製造装置および製造方法によって製造される外輪部材を使用したころ軸受としての針状ころ軸受21と、この針状ころ軸受21を使用したカムシャフト支持構造を説明する。なお、図1、図7および図8はこの発明の一実施形態に係るカムシャフト支持構造の組込み前後の状態を示す図、図2〜図6はこの発明の一実施形態に係る針状ころ軸受21の各構成要素を示す図である。
まず、図1を参照して、この発明の一実施形態に係るカムシャフト支持構造は、カムシャフト19と、カムシャフト19を収容するハウジングとしてのシリンダヘッド13およびベアリングキャップ13cと、カムシャフト19をハウジングに対して回転自在に支持する針状ころ軸受21とを備える。
針状ころ軸受21は、円弧形状の外輪部材22a,22bを円周方向に複数連ねて形成される外輪22と、外輪22の内径面に沿って配置される複数のころとしての針状ころ23と、円周上の一箇所に軸受の軸線方向に延びる分割線を有し、複数の針状ころ23の間隔を保持する保持器24とを備える。
なお、カムシャフト19を支持する軸受としては、針状ころ軸受21が採用されるのが一般的である。針状ころ軸受21は、針状ころ23と軌道面とが線接触するので、軸受投影面積が小さい割に高負荷容量と高剛性が得られる利点を有している。したがって、負荷容量を維持しつつ、支持部分の径方向の厚み寸法を削減することができる点で好適である。
図2〜図4を参照して、外輪部材22aを説明する。なお、図2は外輪部材22aの側面図、図3は図2をIII方向から見た図、図4は図2をIV方向から見た図である。また、外輪部材22bは外輪部材22aと同一の形状であるので、説明は省略する。
まず、図2を参照して、外輪部材22aは、中心角180°の半円形状であって、円周方向の一方側端部にシリンダヘッド13と係合するように径方向外側に折り曲げられた係合爪22cと、軸方向の両端部に径方向内側に突出して保持器24の軸方向への移動を規制する鍔部22dとを有する。そして、この2つの外輪部材22a,22bを円周方向に連ねて円環形状の外輪22を形成する。また、外輪22の内径面の軸方向中央部は、針状ころ23の軌道面として機能する。
また、図3を参照して、外輪部材22aの円周方向一方側端部には、軸方向の両端部に係合爪22cが2つ設けられており、2つの係合爪22cの間には円周方向に凹んだ略V字型の凹部22eが形成されている。なお、2つの係合爪22cは、外輪部材22aの軌道面となる軸方向中央部を避けて両端部に、かつ、針状ころ軸受21の回転軸線と平行な直線上に配置される。すなわち、2つの係合爪22cの間の長さLは、針状ころ23の有効長さlより長く設定されている。なお、本明細書中「ころの有効長さ」とは、ころ長さから両端の面取り部の長さを除いた長さを指すものとする。
また、図4を参照して、外輪部材22aの円周方向他方側端部には、軸方向両端部に係合爪22cの軸方向幅と同一幅の2つの平坦部22fと、2つの平坦部22fの間に先端が円弧形状で円周方向に突出した略V字型の凸部22gとが設けられている。なお、凹部22eは、外輪部材22a,22bを円周方向に連ねたときに隣接する外輪部材の凸部22gを受け入れる。
さらに、図3および図4を参照して、外輪部材22aの外径面には、径方向外側から径方向内側に貫通する油穴22hが設けられている。この油穴22hは、ハウジングに設けられた油路(図示せず)に対応する位置に設けられて、潤滑油を針状ころ軸受21内部に供給する。なお、油穴22hの大きさ、位置、個数は、ハウジングに設けられた油路の大きさ、位置、個数に依存する。
次に、図5および図6を参照して、保持器24を説明する。なお、図5は保持器24の側面図、図6は保持器24の分割部分を含む部分断面図である。図5および図6を参照して、保持器24は、円周上の一箇所に軸受の軸線方向に延びる分割線を有する略C型形状であって、針状ころ23を収容するポケット24cが円周方向の等間隔に設けられている。また、この保持器24は、樹脂材料を射出成型して形成される。
また、分割部分の円周方向一方側の切断端面24aには凹部24dが、他方側の切断端面24bには凹部24dに対応する凸部24eが設けられており、凹部24dおよび凸部24eが係合することにより、円環形状の保持器24を得ることができる。なお、この実施形態においては、凸部24eの先端部分の幅が根元部分より大きく、凹部24dは開口部分の幅が最奥部より小さく設定されている。これにより、凹部24dと凸部24eの係合を確実なものとしている。
上記構成の針状ころ軸受21は、係合爪22cがハウジングと係合するので、軸受回転中に外輪22がハウジング内で回転するのを確実に防止することができる。また、係合爪22cは、外輪部材22a,22bの円周方向端部を曲げ加工によって径方向外側に折り曲げて形成しているので、軌道面を平滑な状態に保つことができる。これにより、針状ころ23が軌道面上をスムーズに回転可能となる。
さらに、係合爪22cを外輪部材22aの軌道面からはずれた位置に設けることにより、係合爪22cの曲げ加工等による外輪部材22a,22bの微小な変形が針状ころ23の回転に与える影響を極小化することができる。その結果、針状ころ23の回転がさらにスムーズとなる。
次に、図1、図7および図8を参照して、針状ころ軸受21をカムシャフト19に組み込む手順を説明する。
まず、保持器24のポケット24cそれぞれに針状ころ23を組み込む。次に、保持器24の弾性を利用して分割部分を広げ、カムシャフト19に組み込む。さらに、凹部24dと凸部24eとを係合させて、保持器24が外れないようにする。
次に、シリンダヘッド13の上に、一方側の外輪部材22a、カムシャフト19に組み込んだ保持器24、他方側の外輪部材22b、およびベアリングキャップ13cの順に組込み、シリンダヘッド13とベアリングキャップ13cとをボルト等で固定する。このとき、外輪部材22aの凹部22eと外輪部材22bの凸部22g、外輪部材22aの凸部22gと外輪部材22bの凹部22eとがそれぞれ突合するように配置する。
また、外輪部材22aの係合爪22cは、シリンダヘッド13のベアリングキャップ13cとの突合面に設けられた係合溝13dと係合するように配置し、外輪部材22bの係合爪22cは、ベアリングキャップ13cのシリンダヘッド13との突合面に設けられた係合溝13dと係合するように配置する。これにより、外輪部材22a,22bが、軸受回転中にハウジング内部で回転するのを防止することができる。
ここで、一般的にシリンダヘッド13とベアリングキャップ13cとの突合面は、カムシャフト19の軸線方向、すなわち軸受の回転軸線と平行な面となる。そこで、外輪部材22a,22bの円周方向端部に設けた2つ係合爪22cを針状ころ軸受21の回転軸線と平行な直線状に配置することにより、係合爪22cをシリンダヘッド13とベアリングヤップ13cとの間に係合させることができる。
上記の組み込み手順とすることにより、カムシャフト19と、外輪22と、保持器24と、ハウジングとが同心円状に配置され、針状ころ23が安定して回転可能な針状ころ軸受21得ることができる。また、上記構成の針状ころ軸受21は、外輪22を2つの外輪部材22a,22bに分割し、保持器24を円周方向の一箇所で分割したことにより、支持部分の径方向から組み込むことが可能となるので、カムシャフト19を支持する軸受として採用することができる。
なお、外輪部材22a,22bの突合部分は、カムシャフト19を円周方向に負荷領域と非負荷領域に区分した場合に、非負荷領域に配置するのが望ましい。外輪部材22a,22bの突合部分は、温度上昇による膨張を考慮して円周方向および軸方向にある程度の隙間が設けられている。したがって、突合部分が負荷領域に配置されると、突合部分を通過する針状ころ23の円滑な回転が阻害される恐れがあるからである。
なお、本明細書中「負荷領域」とは、外輪部材22a,22bの円周方向において、相対的に大きな荷重が負荷される領域を指すものとする。また、「非負荷領域」とは、外輪部材22a,22bの円周方向において、相対的に小さな荷重しか負荷されない領域を指すものとする。
上記の実施形態においては、カムシャフト19を支持する軸受として針状ころ軸受21を採用した例を示したが、この発明は、他のころ軸受、例えば、円筒ころ軸受や棒状ころ軸受にも適用することができる。
また、上記の実施形態における針状ころ軸受21は、外輪22と、針状ころ23と、保持器24とを含む例を示したが、これに限ることなく、保持器24を省略した総ころ形式のころ軸受であってもよい。
また、上記の実施形態における外輪22は、円周方向の二箇所で外輪部材22a,22bに分割した例を示したが、これに限ることなく、任意の個数に分割することが可能である。例えば、中心角120°の外輪部材を円周方向に3つ連ねて外輪を形成してもよい。さらには、互いに中心角の異なる複数の外輪部材を組み合わせて円環形状の外輪を形成してもよい。同様に、保持器24についても任意の形態のものを採用することができる。
また、上記の実施形態における保持器24は、生産効率が高く、かつ、弾性変形能の高い樹脂製保持器の例を示したが、これに限ることなく、切削加工による削り出し保持器でもよく、または、鋼板をプレス加工したプレス保持器であってもよい。
また、上記の実施形態における係合爪22cは、各外輪部材22a,22bの円周方向の両側端部のうち一方側端部にのみ設けた例を示したが、これに限ることなく、外輪部材22aの円周方向両端部に係合爪22cを設けて、外輪部材22bには設けないこととしてもよい。また、係合爪22cは、軸方向両端部の二箇所に設けた例を示したが、これに限ることなく、任意の位置に少なくとも一箇所以上設けられていればよい。例えば、軸方向の一方側端部の一箇所にのみ設けてもよいし、軸方向中央部の一箇所にのみ設けてもよい。
また、上記の実施形態における鍔部22dは、外輪部材22a,22bの円周方向の全域に設けた例を示したが、これに限ることなく、円周方向の一部に部分的に設けてもよい。その際、鍔部の場所や個数は任意に設定することができるが、カムシャフト19に組み込んだときに、非負荷領域に配置されるのが望ましい。
また、上記の実施形態における針状ころ軸受21は、カムシャフト19を支持する軸受としてだけではなく、クランクシャフトやロッカーシャフト等を支持する軸受としても広く使用することが可能である。
さらに、この発明は、単気筒の内燃機関にも適用可能であるが、図10に示すような多気筒エンジンに採用されるカムシャフト101のジャーナル部101bのように、軸方向から針状ころ軸受21を挿入できない箇所を支持する軸受として好適である。
次に、図9を参照して、この発明の一実施形態に係る外輪部材22aの製造方法を説明する。なお、図9は、外輪部材22aの製造工程の一部を示す図であって、上段は平面図、下段は断面図を示す。また、外輪部材22bの製造方法は、外輪部材22aと同様であるので、説明は省略する。
まず、出発材料としては、炭素含有量が0.15wt%以上、1.1wt%以下の炭素鋼を使用する。具体的には、炭素含有量が0.15wt%以上、0.5wt%以下のSCM415やS50C等、または、炭素含有量が0.5wt%以上、1.1wt%以下のSAE1070やSK5等が考えられる。
なお、炭素含有量が0.15wt%未満の炭素鋼は、焼入処理によって浸炭硬化層が形成されにくく、外輪部材22aに必要な硬度を得るためには、浸炭窒化処理を行う必要がある。浸炭窒化処理は、後述する各焼入処理と比較して設備費用が高額になるので、結果として、針状ころ軸受21の製造コストが上昇する。また、炭素含有量が0.15wt%未満の炭素鋼では浸炭窒化処理によっても十分な浸炭硬化層が得られない場合があり、軌道面に表面起点型の剥離が早期に発生する恐れがある。一方、炭素含有量が1.1wt%を超える炭素鋼はで加工性が著しく低下するので、加工精度が低下したり、加工工数の増加による製造コストの上昇が問題となる。
図9を参照して、第1の工程としては、鋼板を打ち抜き加工して外輪部材22aの外輪を形成する(a工程)。また、長手方向の一方側端部に凹部22eおよび係合爪22cとなる部分を形成し、他方側端部に平坦部22fおよび凸部22gを形成する。さらに、外形の形成と同時に油穴22hを加工してもよい。
このとき、外輪部材22aの長手方向の長さは、カムシャフト19の直径に基づいて決定し、短手方向の長さは、使用する針状ころ23のころ長さに基づいて決定する。ただし、短手方向には鍔部22dとなる部分が含まれているので、この工程での短手方向の長さは、外輪部材22aの完成品の軸方向幅寸法より長くなる。
この工程は、一度の打ち抜き加工で全ての部分を打ち抜いてもよいし、打ち抜き加工を複数回繰り返して所定の形状を得てもよい。なお、順送プレスを用いる場合には、各加工工程の加工位置を決めるためのパイロット穴25を形成すると共に、隣接する外輪部材との間に連結部26を設けるとよい。
第2の工程としては、曲げ加工により外輪部材22aの円周方向端部を径方向外側に折り曲げて、係合爪22cを形成する(b工程)。係合爪22cの曲げ角度は、ハウジングの係合溝13cに沿う角度とする。なお、この実施形態では、係合爪22cが、外輪部材22aに対して90°の角度となるように折り曲げている。
第3の工程としては、曲げ加工により外輪部材22aの外形を所定の曲率に曲げる工程と、外輪部材22aの軸方向両端部に径方向内側に突出する鍔部22dを形成する工程とを含む(c工程〜g工程)。具体的には、連結部26を含む中央部分を残して、長手方向の両端部側から順に曲げていく(c工程、d工程)。次に、曲げ加工を施した長手方向両端部について、短手方向の両端部に曲げ加工を施して鍔部22dを形成する(e工程)。次に、外輪部材22aの外形が所定の曲率となるように、長手方向中央部についても曲げ加工を行う(f工程)。最後に、連結部26を除去して、長手方向中央部に鍔部22dを形成する(g工程)。
上記のプレス加工工程終了後、外輪部材22aに必要とされる硬度等の所定の機械的性質を得るために、熱処理を行う。なお、軌道輪として機能する外輪部材22aの内径面の表面硬さHvは、635以上が必要となる。
外輪部材22aが十分な深さの硬化層を得るためには、出発材料の炭素含有量によって適切な熱処理方法を選択する必要がある。具体的には、炭素含有量が0.15wt%以上、0.5wt%以下の材料の場合には浸炭焼入処理を、炭素含有量が0.5wt%以上、1.1wt%以下の材料の場合には光輝焼入処理または高周波焼入処理を施す。
浸炭焼入処理は、高温の鋼に炭素が固溶する現象を利用した熱処理方法であって、鋼内部は炭素量が低いまま、炭素量の多い表面層(浸炭硬化層)を得ることができる。これにより、表面は硬く、内部は軟らかく靭性の高い性質が得られる。また、浸炭窒化処理設備と比較して設備費用が安価である。
光輝焼入処理は、保護雰囲気や真空中で加熱することによって、鋼表面の酸化を防止しながら行う焼入処理を指す。また、浸炭窒化処理設備や浸炭焼入処理設備と比較して設備費用が安価である。
高周波焼入処理は、誘導加熱の原理を利用して、鋼表面を急速に加熱、急冷して焼入硬化層を作る方法である。他の焼入処理設備と比較して設備費用が大幅に安価であると共に、熱処理工程でガスを使用しないので環境に優しいというメリットがある。また、部分的な焼入処理が可能となる点でも有利である。
さらに、焼入によって生じた残留応力や内部ひずみを低減し、靭性の向上や寸法を安定化させるために、上記の焼入処理の後に焼戻を行うのが望ましい。
また、ハウジングに係合爪22cには、針状ころ軸受21の回転方向に荷重が負荷される。この荷重によって係合爪22cが破損するのを防止するために、係合爪22cの硬度を他の部分より低くすることによって靭性を高めることが有効である。なお、係合爪22cの硬度Hvは300以上、600以下の範囲に設定するのが望ましい。硬度Hvが600以上になると、突発的な負荷によって係合爪22cが破損等する恐れがある。一方、硬度Hvが300未満になると、係合爪22cが早期に磨耗する恐れがあるからである。
係合爪22cの靭性を高める具体的な方法としては、上記の熱処理工程の後に、係合爪22cにのみ部分焼鈍しを行うか、または、上記の熱処理工程の前に係合爪22cにのみ防浸炭処理を行うことが有効である。なお、部分焼鈍しや防浸炭処理は係合爪22cの全域に施してもよいが、係合爪22cの根元部分にのみ施しても効果がある。
焼鈍しは、焼入処理によって硬化した材料を軟化させて靭性を高めるために行うものであって、材料を所定温度まで加熱後に徐冷することによって行う。なお、焼鈍しの効果が外輪部材22aの軌道面にまで及ぶのを防止するためには、高周波焼鈍しが適している。
防浸炭処理は、浸炭焼入処理等によって材料に炭素が固溶するのを防止するために行うものであって、係合爪22cに被膜を形成する等の処理を指す。これによって、浸炭焼入処理をした場合でも、被膜が形成された係合爪22cの部分に浸炭層が形成されにくくなる。
なお、この実施形態においては、外輪部材22aの外形の曲率を形成する工程と、鍔部22dを形成する工程とを平行して行う例を示したが、これに限ることなく、外形の曲率を形成する工程と、鍔部22dを形成する工程とを独立して行ってもよい。
また、上記の第1の工程から第3の工程は、この発明に係る外輪部材の製造方法の一例であって、各工程をさらに細分化してもよいし、必要な工程をさらに追加することもできる。また、加工工程の順番も任意に入れ替えることができるものとする。
さらに、上記の各工程(a工程〜g工程)は、それぞれ別々の工程として単能プレスで行ってもよいが、順送プレス、または、トランスファプレスによって行うこととしてもよい。これにより、各工程を連続的に行うことができる。また、上記の各工程(a工程〜g工程)の全部または一部に相当する加工部を有する外輪部材22aの製造装置を使用することにより、生産性を高めることができ、結果として針状ころ軸受21の製品価格を抑えることができる。
なお、本明細書中で「順送プレス」とは、プレス内に複数の加工工程を持ち、材料をプレス入口のフィーダにより各工程を移動させることによって、材料を連続的に加工する方法を指すものとする。また、本明細書中で「トランスファプレス」とは、複数の加工工程を必要とする場合に、各工程を行うステージを必要数分設け、搬送装置によって工程品を移動させながら、各ステージで加工を行う方法を指すものとする。
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示した実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
この発明は、自動車用エンジンのカムシャフトを支持するころ軸受に有利に利用される。
この発明の一実施形態に係るカムシャフト支持構造の組込み前の状態を示す図である。 この発明の一実施形態に係るころ軸受の外輪部材を示す図である。 図2のIII方向から見た図である。 図2のIV方向から見た図である。 この発明の一実施形態に係るころ軸受の保持器の側面図を示す図である。 図5の保持器の分割部分を含む部分断面図である。 図1のカムシャフト支持構造の組込み後の状態を軸方向から見た断面図である。 図1のカムシャフト支持構造の組込み後の状態を径方向から見た断面図である。 この発明の一実施形態に係る外輪部材の製造工程の一部を示す図であって、上段は平面図、下段は断面図である。 従来のカムシャフト支持構造を示す図である。 図10のころ軸受のレース板とキャップとの拡大図である。
符号の説明
13 シリンダヘッド、13c ベアリングキャップ、13d 係合溝、19,101 カムシャフト、101a カムローブ、101b ジャーナル部、101c 端部大径部、21 針状ころ軸受、22 外輪、22a,22b 外輪部材、22c 係合爪、22d 鍔部、22e,24d 凹部、22f 平坦部、22g,24e 凸部、22h 油穴、23 針状ころ、24 保持器、24a,24b 切断端面、24c ポケット、102 ころ軸受、103 ころ、104,105 保持体、106,107 レース板、107a 突起、108 シリンダヘッド、109 キャップ、109a くぼみ。

Claims (4)

  1. 円弧形状の外輪部材を円周方向に複数連ねて形成される外輪と、
    前記外輪の内径面に沿って配置される複数のころとを備え、
    前記外輪部材は、
    炭素含有量が0.15wt%以上、1.1wt%以下の材料を出発材料として形成され、
    その円周方向端部にハウジングと係合するように径方向外側に折り曲げられた係合爪を有する、ころ軸受。
  2. 前記出発材料の炭素含有量は、0.15wt%以上、0.5wt%以下であって、
    前記外輪部材には、浸炭焼入処理が施されている、請求項1に記載のころ軸受。
  3. 前記出発材料の炭素含有量は、0.5wt%以上、1.1wt%以下であって、
    前記外輪部材には、光輝焼入処理が施されている、請求項1に記載のころ軸受。
  4. 前記出発材料の炭素含有量は、0.5wt%以上、1.1wt%以下であって、
    前記外輪部材には、高周波焼入処理が施されている、請求項1に記載のころ軸受。
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