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JP2008055430A - 摩擦点接合装置 - Google Patents

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JP2008055430A JP2006231848A JP2006231848A JP2008055430A JP 2008055430 A JP2008055430 A JP 2008055430A JP 2006231848 A JP2006231848 A JP 2006231848A JP 2006231848 A JP2006231848 A JP 2006231848A JP 2008055430 A JP2008055430 A JP 2008055430A
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Abstract

【課題】摩擦点接合装置において、簡単な構成で、接合時の応力による変形を抑制しながら凹部底壁を高品質に接合する。
【解決手段】第2金属部材W2を受けて位置決めする受け治具71と、第1金属部材W1の凹部の底壁67aの隣接する接合位置Pの間を上方から押圧する押圧位置Aと接合位置Pから退避する退避位置Bとに移動する押圧治具72と、押圧治具72を押圧位置Aと退避位置Bとに移動させる移動機構73と、押圧治具72で隣接する接合位置Pの間を押圧した状態で、回転工具16を回転させながら第1金属部材W1に上方から押圧する駆動手段とを設ける。共に凹部を有する第1金属部材W1と第2金属部材W2とを該凹部が重なり合うように重ね、回転工具16の回転及び押圧により、第1金属部材W1の凹部の底壁67aの一部を摩擦熱で軟化させ塑性流動させて第1及び第2金属部材W1,W2を複数箇所でスポット接合する。
【選択図】図4

Description

本発明は、複数の金属部材を複数箇所でスポット接合する摩擦点接合装置に関するものである。
近年、自動車のボディ等において、軽量化等を目的として、アルミニウム合金材料等が多く採用されている。これに伴って、例えばアルミニウム合金材料からなる部材同士を接合させたり、アルミニウム合金材料からなる部材と鉄や鋼材料等からなる部材とを接合させたりする機会が多くなっている。
このような接合を行うものとして、摩擦点接合装置が知られている。この摩擦点接合装置により、複数の金属部材を重ね合わせ、回転工具を回転させながら押圧し、摩擦熱でこれら金属部材を軟化させ、塑性流動を生じさせて金属部材同士がスポット接合される。このとき、接合対象の金属部材は、融点以下の温度で固相接合(溶融を伴わない固相状態のままの接合)される。
例えば、特許文献1では、摩擦撹拌接合によるスポット接合装置において、回転工具回りに接合時に接合点周りを押圧する環状の押圧手段を装着したものが開示されている。
特開2002−120076号公報
しかしながら、上記従来の摩擦点接合装置では、押圧手段を装着することで、回転工具周りが大型化し、接合位置付近の形状に凹部や凸部が存在する場合には、凹部や凸部の形状によっては押圧手段で確実に押圧させることが困難であり、接合位置の制約を受けるという問題がある。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、簡単な構成で、接合時の応力による変形を抑制しながら凹部底壁を高品質に接合することにある。
上記の目的を達成するために、この発明では、第1金属部材の凹部底壁の隣接する接合位置間を押圧治具で押圧するようにした。
具体的には、第1の発明では、共に凹部を有する第1金属部材と第2金属部材とを該凹部が重なり合うように重ね、回転工具の回転及び押圧により、第1金属部材の凹部底壁の一部を摩擦熱で軟化させ塑性流動させて第1及び第2金属部材を複数箇所でスポット接合する摩擦点接合装置を対象とする。
そして、上記摩擦点接合装置は、上記重ね合わされた第1及び第2金属部材の第2金属部材側を受けて位置決めする受け治具と、
上記第1金属部材の凹部底壁の隣接する接合位置の間を上方から押圧する押圧位置と接合位置から退避する退避位置とに移動する押圧治具と、
上記押圧治具を上記押圧位置と退避位置とに移動させる移動機構と、
上記押圧治具で隣接する接合位置の間を押圧した状態で、回転工具を回転させながら第1金属部材側に上方から押圧する駆動手段とを備えている。
上記の構成によると、凹部が重なり合うように第1及び第2金属部材を重ね、その第1金属部材の凹部底壁における隣接する接合位置の間を押圧治具によって上方から押圧するので、押圧治具で第1金属部材側を押圧させたまま、回転工具を接合位置にアクセスさせて1つの接合位置を接合後、押圧治具による押圧箇所を跨いで他の接合位置の接合が行われる。このため、回転工具周りが大型化せず、接合位置付近の形状に凹部が存在する場合であっても、押圧治具によって第1金属部材側が確実に押圧されるので、接合位置の制約を受けることはない。このとき、接合位置外周は、凹部の底壁と側壁との間のコーナー部により剛性が保たれているので、隣接する接合位置の間を押圧治具によって上方から押圧するだけでも、接合時の応力変形が抑制される。
第2の発明では、上記押圧治具は、中央に配置された押圧部と、該押圧部を跨ぐように配置され、上記回転工具の先端を挿通させる複数の回転工具挿通用孔とを備えている。
上記の構成によると、押圧治具中央の押圧部で凹部底壁を押し付けた状態で、上方から一方の回転工具挿通用孔を通過した回転工具の先端で第1金属部材を摩擦熱で軟化させ塑性流動させて第1及び第2金属部材がスポット接合された後、押圧部を跨いで他方の回転工具挿通用孔を通過した回転工具の先端で他の接合位置の接合が行われる。
第3の発明では、上記移動機構は、押圧治具を支持し押圧位置と退避位置とに回動させる回動アームと、該回動アームを回動させる駆動シリンダとを備えている。
上記の構成によると、押圧治具を押圧位置と退避位置とに回動させる回動アームを駆動シリンダで駆動させる簡単な構成であるため、従来のような昇降式の駆動方式に比べて回転工具周辺のスペースをとらない。このため、回転工具の接合時の干渉が回避されると共に、第1及び第2金属部材の受け治具へのセットも容易である。
第4の発明では、上記回転工具と、該回転工具と対向して配置された受け具と、上記駆動手段とを装着した接合ガンを備え、
上記受け治具を該受け治具を支持するベース部材に固定し、上記接合ガンを接合位置に移動させ、該受け具を受け治具又はベース部材の裏面側に当接させ、回転工具を回転させながら上記第1金属部材側に押圧し、第1及び第2金属部材を各接合位置でスポット接合する移動手段を備えている。
上記の構成によると、接合時に接合ガンの受け具をベース部材下方の空間に挿入して受け治具又はベース部材の裏面側に当接すればよいので、ベース部材下方の空間を大きくする必要がない。このため、受け治具の支持剛性を高いものにすることができるので、接合品質が安定する。
第5の発明では、上記第1金属部材は、アルミニウム合金板であり、
上記第2金属部材は、鋼板であり、
上記第1及び第2金属部材を固相状態でスポット接合するように構成されている。
上記の構成によると、空気中の酸素により第2金属部材の表面に形成されている酸化皮膜が接合位置において破壊されることで、第2金属部材の新生面が露出し、第1金属部材W1と第2金属部材の合わせ面部同士が、摩擦点接合によって固相接合されるので、その接合強度は安定的に高くなる。
第6の発明では、上記第2金属部材の表面は、メッキ加工されている。
上記の構成によると、接合中に、摩擦熱により、第2金属部材表面のメッキ材料が摩擦熱により溶融して第1金属部材に混じり合うと共に、メッキ層が剥がれて第1金属部材と第2金属部材とが確実に圧着される。
第7の発明によると、受け治具は、上記第2金属部材の凹部底壁全体を支持するように構成されている。
上記の構成によると、受け治具が第2金属部材の凹部底壁全体を支持しているので、凹部底壁の一部のみを支持するような場合に比べて第2金属部材表面のメッキが剥がれて受け治具に付着することはない。このため、第2金属部材表面の腐食が回避されると共に、受け治具の表面にメッキ付着による凹凸が形成されないので、第1及び第2金属部材が確実に受け治具に支持される。
以上説明したように、本発明によれば、第1金属部材の凹部底壁の隣接する接合位置間を押圧治具で確実に押圧するようにしたことにより、簡単な構成で、接合時の応力による変形を抑制しながら凹部底壁を高品質に接合することができる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
−摩擦点接合装置の構成−
図1は摩擦点接合装置1の概略構成図である。この摩擦点接合装置1は、主たる構成要素として、接合ガン10と、該接合ガン10を手首に備える、移動手段としてのロボット40とを含んでいる。このロボット40としては、例えば、汎用される6軸垂直多関節型ロボットが好適に用いられる。
ロボット40は、ハーネス51を介して制御盤50と接続されている。また、接合ガン10は、ハーネス52,54,55及び中継器53を介して制御盤50と接続されている。制御盤50内には制御ユニット50aが内蔵されている。この制御ユニット50aがロボット40を制御して、予め設定された所定の位置や傾きとなるように接合ガン10を動作させるようになっている。また、制御ユニット50aは、接合ガン10に搭載された、後述する押圧用モータ14及び回転用モータ15(図2参照)を制御して、回転工具16及び受け具17からなる接合用工具18に、予め設定された所定の動作を行わせるように構成されている。
図2に示すように、接合ガン10は、ロボット40への取付ボックス11と、この取付ボックス11の下面から下方に延びるL字状のアーム12と、このアーム12の上方で取付ボックス11の側面に取り付けられた本体ケース13と、ハーネス54に接続された押圧用モータ14と、ハーネス55に接続された回転用モータ15とを有している。
本体ケース13の下端部には、接合用工具18の一方である回転工具16が設けられている。一方、アーム12の先端部には、回転工具16と該回転工具16の回転軸線X方向に対向して、接合用工具18の他方である受け具17が設けられている。
詳しくは図示しないが、本体ケース13の内部には、互いに平行に上下方向に延びるネジ軸及びスプライン軸がそれぞれの軸心回りに回転自在に設けられている。押圧用モータ14の回転により、ネジ軸が回転駆動され、回転用モータ15の回転により、スプライン軸が回転駆動されるようになっている。ネジ軸に螺合されたブロックには、昇降筒体が一体結合され、スプライン軸には、回転筒体がスプライン結合されている(共に図示せず)。この回転筒体は、昇降筒体の内部に回転自在に設けられている。スプライン軸、昇降筒体及び回転筒体は、互いに同心状に配置されている。
本体ケース13の下面には、円筒状の下方突出部13aが形成されている。上記昇降筒体及び回転筒体の下端部は、下方に突出している。そして、内側にある回転筒体の方が、外側にある昇降筒体よりも長く下方に突出して、その回転筒体の下端部に取付部材36が固着されている。この取付部材36に対し回転工具16の先端部と反対側の端部である基端部が着脱自在(交換自在)に取り付けられている。この取り付けられた回転工具16の回転軸線Xは、上記スプライン軸の軸心の延長線上にある。なお、下部カバー23と昇降筒体の下端部との間は、昇降筒体の外表面を本体ケース13の外部の汚染等から保護する伸縮自在の蛇腹部材34で被われている。
これら押圧用モータ14及び回転用モータ15は、回転工具16を回転させながらワークWに押圧する駆動手段を構成している。
図3は、回転工具16の先端部の拡大図である。この回転工具16の先端部は、円柱状の胴体部16aの下端面(その輪郭は円形である)とされた、ワークWと対向するショルダ部16bと、回転工具16の回転軸線X上に位置し、かつショルダ部16bから該ショルダ部16bの外径よりも小径でワークWに対向する側に所定長さhだけ突出するピン部16cと、該ピン部16cの周囲におけるショルダ部16bに設けられた環状凹部16dとで構成されている。本実施形態では、この環状凹部16dの底面が、径方向外側に向かって凹み量が小さくなるように傾斜している。この環状凹部16dは、回転工具16の回転軸線Xを中心とする円錐形状に凹んでいる。回転工具16の具体的寸法としては、例えば、ショルダ部16bの直径D1が10mm、ピン部16cの直径D2が2mm,ピン部16cの突出長さhが0.3mm〜0.35mm、環状凹部16dの底面のショルダ部16bに対する傾斜角θが5°〜7゜となっている。
但し、回転工具16の最適形状は一義的に決定されるものではなく、ワークWの材質、厚さ、重ね合わせるワークWの枚数等、用途に応じて異なる。したがって、用途別に好適な複数種類の回転工具16を準備しておき、用途に応じて適宜交換して用いるようにするのが望ましい。図3に示すような環状凹部16dを有する回転工具16の形状は、特に融点の異なる異種の金属部材を接合する際に用いると好適である。
図4乃至図6に示すように、一般的に、摩擦点接合は複数の金属部材(2枚の場合は第1金属部材W1と第2金属部材W2)からなるワークWを接合する。つまり、摩擦点接合は、この回転工具16と受け具17とで重ね合わせたワークWを挟むようにして行われる。本実施形態では、図6に示すように、摩擦点接合装置1は、共に凹部67,68を有する第1金属部材W1と第2金属部材W2とを該凹部67,68が重なり合うように重ねた状態で狭持するようになっている。そして、回転工具16の回転及び押圧により、第1金属部材W1の凹部67の底壁67aの一部を摩擦熱で軟化させ塑性流動させて第1及び第2金属部材W1,W2を複数箇所でスポット接合するように構成されている。
ここで、本実施形態のワークWについて説明する。図8は、ワークWとしての自動車ボディの構成部材の使用状態を示す。この自動車ボディの構成部材は、自動車のトランクリッド60のレインフォースメント(第1金属部材W1)と、このトランクリッド60にヒンジ70(図9に示す)を取り付けるためのボルトリテーナ(第2金属部材W2)とである。これらの部材W1,W2は、アウタパネル61とインナパネル62とを周縁部でヘミング加工して結合した袋構造のトランクリッド60のコーナー内部に左右一対配置されている。例えば、第1金属部材W1は、6000系のアルミニウム合金(厚み1.4mm)で作製されており、第2金属部材W2は、亜鉛メッキされた鋼鈑(厚み1.0mm)で作製されている。第1金属部材W1と第2金属部材W2の材質は同種でも異種でもよい。
図9に示すように、トランクリッド60のコーナー内部において、第1金属部材W1がインナパネル62に適宜手段で固着されている。そして、この第1金属部材W1に重ね合わせて第2金属部材W2が摩擦点接合されている(接合位置Pは2箇所)。この第2金属部材W2に溶接等で結合されたボルト65のネジ部がインナパネル62から外方に突出し、このボルト65のネジ部にヒンジ70を通して該ヒンジ70をナット66で締め付け固定される。ここで、第1金属部材W1と第2金属部材W2との摩擦点接合は、ヒンジ70をトランクリッド60に組み付けるまでの間、第2金属部材W2をトランクリッド60に仮止めするためのものである。
その場合に、接合位置Pは、第1金属部材W1と、第2金属部材W2とに形成した凹部67,68の底壁67a,68aに設けられている。これらの凹部67,68は、第1金属部材W1の剛性確保のため、或いは摩擦点接合で生成するバリR(図14参照)の逃がし部を作るために設けられたもので、図8に明らかなように、正対視で円形に仕上げられている。
図4に示すように、摩擦点接合装置1は、重ね合わされた第1及び第2金属部材W1,W2の第2金属部材W2側を受けて位置決めする受け治具71を備えている。具体的には、受け治具71は、上記第2金属部材W2の凹部68の底壁68a全体を支持するように、該底壁68aの底面よりも大きなブロック状のもので構成されている。
摩擦点接合装置1は、上記第1金属部材W1の凹部67の底壁67aの隣接する接合位置Pの間を上方から押圧する押圧位置Aと接合位置Pから退避する退避位置Bとに移動する押圧治具72を備えている。
図7は、押圧治具72を斜め下方から見た斜視図である。押圧治具72は最上段の基部72a,中断の中段部72b及び最下段の押圧部72cからなる3段構造になっている。
基部72aは平板状で、四隅にボルト穴72eが設けられている。このボルト穴72eに挿通される図外のボルトによって押圧治具72が後述する回動アーム78の先端に固定されるようになっている。
中段部72bは、基部72aのボルト穴72eよりも内側部分を突設させたような円板状となっている。そして、基部72aと中段部72bとを貫通する孔部72dが設けられている。孔部72dの断面形状は、平面視で2箇所ある接合位置Pを包含する長円形である。
押圧部72cは、中段部72bから突設される壁状の部材である。その先端部がレインフォースメント(第1金属部材W1)の底壁67aにおける、各接合位置Pの間の部分を直接押さえ、摩擦点接合時の浮き上がりを防止するようになっている。押圧部72cは、長円形の孔部72dの直線部分同士を差し渡すように設けられている。このことで、押圧部72cが、回転工具16の先端を挿通させる一対の回転工具挿通用孔72fを跨ぐように設けられ、回転工具16がいずれの接合位置Pに対応する位置にあるときも回転工具16に接触しないようになっている(回転工具16が一方の接合位置Pに対応する位置にある状態を二点鎖線で示す)。
以上の構造によって、押圧治具72は、接合位置Pにおける回転工具16の動作に影響を与えることなく、2箇所の接合位置Pの間という狭い部分を好適に支持することができる。
また、回転工具16は、接合位置Pで降下する際、押圧治具72の孔部72dを通され、かつ押圧部72cに干渉しないように通されて回転工具挿通用孔72fを通過するように構成されている。
図4に示すように、摩擦点接合装置1は、上記押圧治具72を上記押圧位置Aと退避位置Bとに移動させる移動機構73を備えている。この移動機構73は、4本の脚部74と、該脚部74に支持された矩形板状のベース部材75とを備えた作業台76に取り付けられている。すなわち、作業台76の側面には、正面視台形の移動機構取付部76aが形成されている。この移動機構取付部76aには、押圧治具72を支持し押圧位置Aと退避位置Bとに回動させる回動アーム78と、該回動アーム78を回動させる駆動シリンダ79とが揺動可能に取り付けられている。つまり、回動アーム78は、中間部に支持部78aが垂直に突設され、該支持部78aの先端が上記移動機構取付部76aに回動可能に取り付けられている。回動アーム78の後端側には、上記駆動シリンダ79のシリンダロッド79aの先端が回動可能に連結されている。駆動シリンダ79のシリンダ本体79bの先端の上側角部が上記移動機構取付部76aに回動可能に取り付けられている。このような構成であるため、従来のような昇降式の駆動方式に比べて回転工具16周辺のスペースをとらず、回転工具16の接合時の干渉が回避でき、第1及び第2金属部材W1,W2の受け治具71へのセットも容易にできるようになっている。
上記作業台76は、ターンテーブル77上に載置されている。ターンテーブル77を回転させることで、ロボット40の真下に作業台76が来るようにすれば、ロボット40でワークWを移動させる必要はない。
上記受け治具71は、平坦なベース部材75の上面に固定されている。ロボット40によって、接合ガン10を接合位置Pに移動させ、受け具17をベース部材75の裏面側に当接させ、回転工具16を回転させながら上記第1金属部材W1に押圧し、第1及び第2金属部材W1,W2を各接合位置Pでスポット接合するように構成されている。
−摩擦点接合装置の動作−
次に、摩擦点接合装置1の摩擦点接合時の動作について説明する。
図5に示すように、まず、手作業により、作業台76のベース部材75上に凹部67,68が重なり合うように重ねた状態のワークWを位置合わせしながら設置する。すなわち、ベース部材75表面に設けられた基準ピン75aと、組付ミス防止用凸部75bに合わせてワークWを位置決めする。すると、図6に示すように、第2金属部材W2に結合したボルト65の頭部が受け治具71に設けたボルト収納部71aに収納されて位置決めされる。このように、受け治具71が凹部67の底壁67a全体を支持しているので、凹部67の底壁67aの一部のみを支持するような場合に比べて第2金属部材W2表面のメッキが剥がれて受け治具71に付着しにくい。このため、第2金属部材W2表面の腐食が回避されると共に、受け治具71の表面にメッキ付着による凹凸が形成されないので、第1及び第2金属部材W1,W2が確実に受け治具71に支持される。
次いで、図4に示すように、駆動シリンダ79のシリンダロッド79aを伸ばして退避位置Bにある回動アーム78を回動させて押圧位置Aとし、押圧治具72の押圧部72cによって、第1金属部材W1の凹部67の底壁67aの隣接する接合位置Pの間を上方から押圧する。この支持により、摩擦点接合を行ったとき、各接合位置Pの間の部分が受け治具71の表面から離れる方向に浮き上がってしまうことが防止される。
次いで、ターンテーブル77を回転させて作業台76に載置されたワークWをロボット40の位置に移動させる。
次に、接合位置Pにおける摩擦点接合時の動作について説明する。接合位置Pにおいて摩擦点接合を行うにあたり、図10に示すように、まずロボット40の作動により、接合ガン10を接合位置Pに近接させ、回転工具16が接合位置Pの第1金属部材W1側に位置し、受け具17が受け治具71の真下のベース部材75裏面側に位置するようにする。
次いで、接合ガン10全体をベース部材75裏面側に移動させる。つまり受け具17をベース部材75裏面に接近させる。受け具17の先端部17aがベース部材75裏面に当接した位置で止める。このように、接合時に接合ガン10の受け具17をベース部材75の裏面側に当接させる構成であるため、受け具17をベース部材75下方の空間に挿入すればよいだけなので、該空間を大きくする必要がなく、受け治具71の支持剛性を高いものにすることができる。このため、接合品質が安定する。
次に、その状態で、押圧用モータ14及び回転用モータ15により、回転工具16を回転させつつ第1金属部材W1に接近させ、図10(a)に示すように押圧して摩擦点接合させる。この摩擦点接合の工程は、詳しくは初期移動工程、第1押圧工程、第2押圧工程、第3押圧工程を順に行うように設定されている。以下、これらの工程について詳述する。
まず、初期移動工程では、回転工具16を降下させて第1金属部材W1の近接位置である初期位置に移動させる。この初期位置は、回転工具16のピン部16cの先端が第1金属部材W1に対し僅かに離れるような位置である。この初期移動工程では、回転工具16を回転させるようにしても、回転させないようにしてもよいが、本実施形態では、次の第1押圧工程へ直ぐに移行できるように、続く第1押圧工程と同じ回転速度(第1回転速度)で回転させるようにしておく。
続く第1押圧工程では、図11に示すように、回転工具16を第1回転速度で回転させながら、押圧用モータ14により、上記初期移動工程における回転工具16の移動抵抗値よりも大きい第1加圧力で、回転工具16のショルダ部16b及びピン部16cを、第1所定時間の間、第1金属部材W1に対し押圧接触させる。図の右半分は第1金属部材W1と第2金属部材W2との間に隙間Sを設けた場合、左半分は隙間Sを設けず、両者を密着させた場合を示す。
上記第1加圧力、第1回転速度及び第1所定時間は、回転工具16が第1金属部材W1に対し、環状凹部16dの底面の一部(深さが深い回転軸線X側の部分)が第1金属部材W1に接触しないで、ショルダ部16bの周縁部及びピン部16cが第1金属部材W1に接触する程度に押し込まれるようにそれぞれ設定する。
上記第1押圧工程においては、ショルダ部16bの周縁部及びピン部16cが回転工具16の回転軸線X回りに回転しながら第1金属部材W1に対し押圧接触されることで、その2箇所の接触部位で摩擦熱が生じ、この摩擦熱は、ワークWにおける該2箇所の接触部位の間の部分(環状凹部16dの底面が接触していない部分)、延いては接合位置P全体に速やかに拡散され、第1金属部材W1におけるショルダ部16bに対向する部分(接合位置P)全体が良好に軟化する。また、第2金属部材W2の表面に施されている亜鉛メッキ層Zも、接合位置Pにおいて軟化する。このように、上記第1加圧力、第1回転速度及び第1所定時間を、上記好ましい範囲に設定することで、第1金属部材W1を剪断破壊させることなく良好に軟化させることができるようになる。
また、この第1押圧工程の初期段階において、ショルダ部16bよりも所定長さhだけ突出したピン部16cが、ショルダ部16bよりも先に第1金属部材W1に当接する。このように細い径のピン部16cを最初に当接させることにより、小さな摩擦抵抗で回転工具16の位置決めが良好になされ、回転軸線Xに垂直な方向の回転振れが抑制される(アンカー機能)。
続く第2押圧工程では、図12に示すように、回転用モータ15により、回転工具16を第2回転速度で回転させながら、押圧用モータ14により、上記第1加圧力よりも大きい第2加圧力で、回転工具16のショルダ部16b及びピン部16cを、第2所定時間の間、第1金属部材W1に押し込む。
この第2押圧工程では、加圧力が大きくなることで、回転工具16のショルダ部16b及びピン部16cが第1金属部材W1に対し徐々に深く入り込み、環状凹部16dの底面全体、つまりピン部16c及び環状凹部16dを含むショルダ部16b全体が第1金属部材W1に接触する。これに伴い、第1金属部材W1の軟化に加えて塑性流動が行われる(図では模式的に破線で塑性流動Qを示す)。ここで、第1金属部材W1と第2金属部材W2との間に隙間Sを設けた場合、塑性流動Qによって、第1金属部材W1が第2金属部材W2側に押し出され、両者が密着する。
また、塑性流動Qにおいて、ショルダ部16bに環状凹部16dが設けられている(特に環状凹部16dが円錐形状をなしている)ことから、塑性流動する第1金属部材W1が、図の上下方向に流動して、回転工具16の直下部分(接合位置P)から外側へ流出することが抑制される。また、環状凹部16dにより、第2加圧力が接合位置Pに集中して、第1金属部材W1の塑性流動Qが促進される。さらに、第1金属部材W1と第2金属部材W2との接合境界面において、上記軟化した亜鉛メッキ層Zが接合位置Pから押し出されることで、第2金属部材W2の新生面が露出するとともに、図示しないが、空気中の酸素により第1金属部材W1の表面に形成されている酸化皮膜が接合位置Pにおいて破壊されることで、第1金属部材W1の新生面が露出する。
上記第2加圧力、第2回転速度及び第2所定時間は、回転工具16が第1金属部材W1に対し所定の挿入位置よりも深く押し込まれないようにそれぞれ設定する。この所定の挿入位置は、該挿入位置よりも回転工具16が深く入り込むと第1金属部材W1が過度に薄くなって引きちぎられるような位置である。
こうして第2押圧工程が完了する。この第2押圧工程の完了により、接合位置Pでの接合を終了するようにしてもよいが、本実施形態では、さらに第3押圧工程を行うようにしている。
第3押圧工程では、図13に示すように、回転用モータ15により回転工具16を第3回転速度で回転させながら、押圧用モータ14により、第2加圧力よりも小さい第3加圧力で、回転工具16のショルダ部16b及びピン部16cを、第3所定時間の間、第1金属部材W1に対し押圧接触させる。
この第3押圧工程では、加圧力を第2押圧工程よりも小さくすることで、回転工具16が第1金属部材W1に対し上記所定の挿入位置よりも深く押し込まれず、第2押圧工程が終了したときの位置で押圧し続けることとなる。これにより、第1金属部材W1が過度に薄くなって引きちぎれるようなことがなくなるとともに、第2押圧工程時と同じ程度の温度が維持されて、良好な塑性流動が長時間に亘って行われる。この第3押圧工程の終了により、1つの接合位置Pでの接合が終了することになる。
上記第3加圧力、第3回転速度及び第3所定時間は、回転工具16が第1金属部材W1に対し、第2押圧工程が終了したときの位置で押圧し続けかつ第1金属部材W1の塑性流動が生じるようにそれぞれ設定する。
上記第3押圧工程においては、回転工具16で押し出された金属材料がバリRとなって第1金属部材W1の表面に隆起するとともに、亜鉛メッキ層Zがさらに接合位置Pから押し出され、また第1金属部材W1及び第2金属部材W2の酸化皮膜がさらに破壊されて、第1金属部材W1及び第2金属部材W2の各新生面の露出範囲が拡大する(図13中、×印で表示した範囲)。この結果、第1金属部材W1と第2金属部材W2の合わせ面部同士が、摩擦点接合によって固相接合され、その接合強度は安定的に高くなる。
なお、亜鉛メッキ層Zにおける接合位置Pの近傍部分には、第1金属部材W1を構成する金属(アルミニウム合金)と、亜鉛メッキ層Zを構成する金属との金属混合物層Yが生成される。
接合位置Pでの接合が終了すると、押圧用モータ14により、ネジ軸を回転駆動させることで、図10(b)に示すように、回転工具16を上昇させるとともに、接合ガン10全体を回転工具16の下降方向に移動させることにより受け具17をベース部材75から離す。摩擦点接合が完了した後の接合位置Pにおいては、図14に示すように、第1金属部材W1の表面に、ショルダ部16b及びピン部16cの痕が残り、ショルダ部16bの周囲には、バリRが生じている。
第1及び第2金属部材W1,W2の1つの接合位置Pでのがスポット接合された後、押圧部72cを跨いで他の接合位置Pの接合が行われる。そして、摩擦点接合が完了すると、制御ユニット50aはロボット40によって接合ガン10を待機状態とする。或いは次の接合位置Pがある場合、接合ガン10をその接合位置Pへと移動させ、上記と同様の摩擦点接合を繰り返し行わせる。
このように、押圧治具72によって第1金属部材W1の凹部67の底壁67aの隣接する接合位置Pの間を上方から押圧するので、押圧治具72で第1金属部材W1を押圧させたまま、回転工具16を接合位置Pにアクセスさせて1つの接合位置Pを接合後、押圧治具72による押圧位置Aを跨いで他の接合位置Pの接合が行われる。このため、回転工具16周りが大型化せず、接合付近の形状に凹部67,68が存在する場合であっても、押圧治具72によって第1金属部材W1が確実に押圧されるので、接合位置Pの制約を受けることはない。このとき、接合位置P外周は、剛性の高い凹部67,68の底壁67a,68aと側壁67b,68bとの間のコーナー部67c,68c(図9に示す)の剛性により、接合時の応力変形が抑制される。
−実施形態の効果−
以上説明したように、本実施形態によれば、第1金属部材W1の凹部67の底壁67aの隣接する接合位置P間を押圧治具72で確実に押圧するようにしたことにより、簡単な構成で、接合時の応力による変形を抑制しながら凹部67,68の底壁67a,68aを高品質に接合することができる。
(その他の実施形態)
本発明は、上記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
すなわち、上記実施形態では、本発明を第1金属部材W1(アルミニウム合金)と第2金属部材W2(亜鉛メッキ鋼板)との摩擦点接合に適用した場合について説明しているが、他の部材の摩擦点接合に適用してもよい。その際、その材質も特に限定するものではなく、同種の材質からなる部材の接合であっても、異種の材質からなる部材の接合であってもよい。また枚数も2枚に限定するものではなく、3枚以上の部材を同時に接合するものであってもよい。
また、回転工具挿通用孔72fは、押圧部72cを跨ぐように一対設けているが、二対以上設けてもよい。
本実施形態では、受け具17の先端部17aが受け治具71及びベース部材75を介してワークWに当接するようにしている。しかし、ベース部材75に開口を設け、受け治具71に受け具17の先端部17aを当接させてもよい。また治具を介さず、受け具17が直接ワークWに当接するようにしてもよい。治具を介在させることによって、受け具17がワークWに直接当接することによって起こる問題を確実に回避することができる。例えば本実施形態の場合、摩擦点接合時の熱と加圧力とによって受け具17に第2金属部材W2の亜鉛メッキ層Zが付着することが避けられる。また、ワークWの受け具17に当接する面が自動車パネルの外表面である場合に、受け具17によって付着する僅かな圧痕によって商品性が低下することも避けられる。
回転工具16或いは接合ガン10は、ロボット40に搭載されていなくてもよい。但し回転工具16や接合ガン10をロボット40に搭載した場合は、その移動自由度の高さを利用し、狭い場所での接合でも容易に行わせることができるという利点がある。
また回転工具16のショルダ部16bの形状は、環状凹部16dが形成されたものである必要はない。
回転工具16の形状(各部寸法)や加圧力等の各種パラメータは、用途や各種条件に応じて適宜変更してもよい。
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物や用途の範囲を制限することを意図するものではない。
本発明の実施形態に係る摩擦点接合装置の概略構成図である。 図1に示す接合ガンの正面図である。 図1に示す回転工具の先端部を拡大して示す部分断面図である。 摩擦点接合装置の主要な部分を示す正面図である。 摩擦点接合装置の主要な部分を示す平面図である。 押圧治具がワークを押圧する様子を拡大して示す正面図である。 押圧治具を下側から見た斜視図である。 本発明の実施形態に係るワークであって、自動車のトランクリッドのヒンジ取り付け部を一部切り欠いてインナパネル側から見た平面図である。 図8のIX−IX線断面図であって、(a)はトランクリッドにヒンジを取り付ける前の状態を示す分解断面図、(b)はその組立状態を示す断面図である。 (a)は摩擦点接合中の状態を示す断面図、(b)は摩擦点接合直後の状態を示す断面図である。 図10(a)の状態を詳細に示す断面図であり、摩擦点接合における第1押圧工程の説明図である。 上記第1押圧工程に続く第2押圧工程の説明図である。 上記第2押圧工程に続く第3押圧工程の説明図である。 上記第3押圧工程後、摩擦点接合が完了した状態を示す断面図である。
符号の説明
1 摩擦点接合装置
10 接合ガン
14 押圧用モータ(駆動手段)
15 回転用モータ(駆動手段)
16 回転工具
17 受け具
67,68 凹部
67a,68a 底壁
71 受け治具
72 押圧治具
72c 押圧部
72f 回転工具挿通用孔
73 移動機構
75 ベース部材
78 回動アーム
79 駆動シリンダ
W1 第1金属部材
W2 第2金属部材

Claims (7)

  1. 共に凹部を有する第1金属部材と第2金属部材とを該凹部が重なり合うように重ね、回転工具の回転及び押圧により、第1金属部材の凹部底壁の一部を摩擦熱で軟化させ塑性流動させて第1及び第2金属部材を複数箇所でスポット接合する摩擦点接合装置であって、
    上記重ね合わされた第1及び第2金属部材の第2金属部材側を受けて位置決めする受け治具と、
    上記第1金属部材の凹部底壁の隣接する接合位置の間を上方から押圧する押圧位置と接合位置から退避する退避位置とに移動する押圧治具と、
    上記押圧治具を上記押圧位置と退避位置とに移動させる移動機構と、
    上記押圧治具で隣接する接合位置の間を押圧した状態で、回転工具を回転させながら第1金属部材側に上方から押圧する駆動手段とを備えている
    ことを特徴とする摩擦点接合装置。
  2. 請求項1に記載の摩擦点接合装置において、
    上記押圧治具は、中央に配置された押圧部と、該押圧部を跨ぐように配置され、上記回転工具の先端を挿通させる複数の回転工具挿通用孔とを備えている
    ことを特徴とする摩擦点接合装置。
  3. 請求項1又は2に記載の摩擦点接合装置において、
    上記移動機構は、押圧治具を支持し押圧位置と退避位置とに回動させる回動アームと、該回動アームを回動させる駆動シリンダとを備えている
    ことを特徴とする摩擦点接合装置。
  4. 請求項1乃至3のいずれか1つに記載の摩擦点接合装置において、
    上記回転工具と、該回転工具と対向して配置された受け具と、上記駆動手段とを装着した接合ガンを備え、
    上記受け治具を該受け治具を支持するベース部材に固定し、上記接合ガンを接合位置に移動させ、該受け具を受け治具又はベース部材の裏面側に当接させ、回転工具を回転させながら上記第1金属部材側に押圧し、第1及び第2金属部材を各接合位置でスポット接合する移動手段を備えている
    ことを特徴とする摩擦点接合装置。
  5. 請求項1乃至4のいずれか1つに記載の摩擦点接合装置において、
    上記第1金属部材は、アルミニウム合金板であり、
    上記第2金属部材は、鋼板であり、
    上記第1及び第2金属部材を固相状態でスポット接合するように構成されている
    ことを特徴とする摩擦点接合装置。
  6. 請求項5に記載の摩擦点接合装置において、
    上記第2金属部材の表面は、メッキ加工されている
    ことを特徴とする摩擦点接合装置。
  7. 請求項6に記載の摩擦点接合装置において、
    上記受け治具は、上記第2金属部材の凹部底壁全体を支持するように構成されている
    ことを特徴とする摩擦点接合装置。
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